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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】ワーク在荷検出装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/67 20060101AFI20241009BHJP
   B65H 7/04 20060101ALI20241009BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
H01L21/68 L
B65H7/04
H01L21/304 622G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020140433
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035849
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100169960
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 貴光
(72)【発明者】
【氏名】藤山 秀人
(72)【発明者】
【氏名】成田 聡
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-016028(JP,A)
【文献】特開昭59-165433(JP,A)
【文献】実公昭47-038861(JP,Y2)
【文献】特開昭62-173168(JP,A)
【文献】特開2020-123677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67
B65H 7/04
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置台に載置されているか否かを検出可能な在荷検出手段を備えるワーク在荷検出装置であって、
前記在荷検出手段は、
超音波発信体と、前記超音波発信体からの超音波信号を受けて信号を出力する前記載置台に設けられた超音波受信体と、を有する超音波センサと、
前記超音波発信体と前記超音波受信体との間の水を前記載置台から排出して前記超音波発信体と前記超音波受信体との間の前記載置台に空気層を形成する、前記載置台に設けられた排水手段と、
前記ワークの在荷検出を実行する際に前記排水手段を制御して前記超音波発信体と前記超音波受信体との間の水を排出し、前記超音波受信体の出力に基づいて前記ワークの在荷検出を実行する制御部と、
を備えている、ことを特徴とするワーク在荷検出装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記超音波受信体の出力が閾値を越えていない場合に、前記ワークが前記載置台に在荷していると判定する、ことを特徴とする請求項1に記載のワーク在荷検出装置。
【請求項3】
前記載置台は、前記ワークと前記超音波受信体との間に水を供給可能な給水穴を有する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のワーク在荷検出装置。
【請求項4】
前記超音波発信体が、超音波発信部と、前記超音波発信部で発信された超音波信号を前記超音波受信体と対向する位置まで伝導して、前記超音波信号を前記超音波受信体に向けて放射する超音波伝導筒を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のワーク在荷検出装置。
【請求項5】
前記排水手段が、前記超音波受信体に対応している領域と略隣接している位置に設けられている、ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載のワーク在荷検出装置。
【請求項6】
前記載置台が、前記載置台の外周から前記排水手段に向かって、前記載置台の上面に設けられている空気誘導溝を備える、ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載のワーク在荷検出装置。
【請求項7】
前記ワークが、半導体ウエハである、ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載のワーク在荷検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はワーク在荷検出装置に関するものであり、特に、例えばワークであるウエハ等の基板に、CMP加工を施すウエハ研磨装置などにおいて、載置台の上にワークが載置されているか否かを検出するワーク在荷検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造分野では、シリコンウエハ等の半導体ウエハ(以下、単に「ウエハ」という)の表面を研磨するウエハ研磨装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載されている研磨装置は、化学的機械的研磨、いわゆるCMP(Chemical Mechanical Polishing)技術を適用した研磨装置である。この研磨装置では、ロード・アンロード部3とウエハ42との間で、ウエハWを移送する際に、ウエハWを仮置きするウエハ転置台431,432を備えたウエハ研磨装置1が開示されている。なお、符号は特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3510177号公報(図1図2
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、載置台には、ワークが載置されているか否かを判定する在荷センサが設けられている。このような在荷センサの種類としては、反射型又は透過型、あるいはスイッチ型のものが一般的である。
【0006】
図6(a)、(b)に示すように、ワーク100の在荷検知を反射型の在荷センサで行う構成の場合では、トレイ101に一対のファイバーセンサ102、103を設け、一方のファイバーセンサ102から照射された光がワーク100で反射し、この反射光を他方のファイバーセンサ103で受光するようにしたものであり、ファイバーセンサ103の受光光量が所定閾値を超えたときに、ワーク100がトレイ101に載置されていると判定する。
【0007】
一方、図6(c)に示すように、ワーク100がトレイ101に載置されていない場合には、ファイバーセンサ103の受光光量が所定閾値を超えないため、ワーク100がトレイ101に載置されていないと判定する。
【0008】
また、図7(a)、(b)に示すように、ワーク100の在荷検知を透過型の在荷センサで行う構成の場合では、トレイ104に設けられたファイバーセンサ105に向けて光を照射する照明106を配置し、照明106から照射された光がワーク100で遮られ、受光光量が所定閾値を下回ったときに、ワーク100がトレイ104に載置されていると判定する。
【0009】
一方、図7(c)に示すように、ワーク100がトレイ104に載置されていない場合には、ファイバーセンサ105の受光光量が所定閾値を超えて、ワーク100がトレイ104に載置されていないと判定する。
【0010】
しかしながら、上述したような反射型の在荷センサを用いる構成の場合には、ワーク100が梨地面を有している、あるいは、ワーク100に水やスラリー等の薬液が付着している等して、ワーク100で反射した反射光が乱反射すると、反射光がファイバーセンサ103に戻らないことがある。また、図6(d)に示すように、ワーク100とファイバーセンサ102との間が水で密に満たされていると、光が界面で反射せずにワーク100を透過してしまい、ワーク100がトレイ101に載置されているにもかかわらず、ワークの在荷を検知できないという問題があった。
【0011】
また、透過型の在荷センサを用いる場合には、透過性を有するワーク100に対しては、照明106から照射された光がワーク100を透過してしまい、また、図7(d)に示すように、ワーク100とファイバーセンサ105との間が水で満たされていると材料境界面の透過率が上がり、透過光の光量が増えてしまうため、ワーク100がトレイ104に載置されているにもかかわらず、ワークの在荷を検知できないという問題があった。
【0012】
また、図8に示すように、ワーク100の在荷検知をトレイ104に設けられたスイッチ200を用いて行う構成では、ワーク100の重みでスイッチ200が押されてオンされたときに、ワーク100がトレイ104に載置されていると判定し、スイッチ200がオンされていないときに、ワーク100がトレイ104に載置されていないと判定する。
【0013】
しかしながら、上述したようなスイッチ200を用いて在荷検知を行う場合には、図8に示すようにワーク100の剛性が低く、ワーク100が湾曲変形した状態でトレイ104上に載置されたりすると、湾曲変形した部分がトレイ104上に当接されて、スイッチ200がワーク100の重量を受けずに押されない。そのため、スイッチ200がオフのままでオンにならず、ワーク100がトレイ104に載置されていないと誤判定をするという問題があった。
【0014】
そこで、多種多様なワークの在荷検知に対応可能なワーク在荷検出装置を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、ワークが載置台に載置されているか否かを検出可能な在荷検出手段を備えるワーク在荷検出装置であって、前記在荷検出手段は、超音波発信体と、前記超音波発信体からの超音波信号を受けて信号を出力する前記載置台に設けられた超音波受信体と、を有する超音波センサと、前記超音波発信体と前記超音波受信体との間の水を前記載置台から排出して前記超音波発信体と前記超音波受信体とのの前記載置台に空気層を形成する、前記載置台に設けられた排水手段と、前記ワークの在荷検出を実行する際に前記排水手段を制御して前記超音波発信体と前記超音波受信体との間の水を排出し、前記超音波受信体の出力に基づいて前記ワーク在荷検出を実行する制御部と、を備えている。
【0016】
この構成によれば、ワーク在荷検出を行うとき、超音波発信体から超音波信号を超音波受信体に向けて発信し、その超音波信号を受けて出力される、超音波受信体から制御部に入力される信号の大きさが、所定閾値を超えているか否かにより、制御部でワークの有無の判定を行うことができる。しかし、載置台とワークの間に水が密に溜まった状態で、超音波発信体から超音波信号を超音波受信体に向けて発信された場合には、材料境界面の超音波透過率が上がる。このため、載置台にワークが載置されていても超音波がワークを通過して、ワーク(在荷)無しとして誤検知する虞がある。しかし、この発明の構成では、超音波発信体超音波受信体との間の水を排出して抜き、超音波発信体超音波受信体との間に空気層を設けて、超音波発信体から超音波受信体に向けて超音波信号を発信すると、空気層により載置台とワークとの間の超音波透過率が低下する。これにより、載置台上にワークが載置されているときには、超音波受信体に入る超音波信号の通過が断たれて、超音波受信体からの出力値が所定閾値を超えることがない。これにより、制御部ではワーク(在荷)有りと判定されて、ワークの在荷を精度良く検出することができる。
【0017】
また、本発明は、前記載置台が、前記載置台と前記載置台上に載置された前記ワークとの間に水の供給を可能にする給水穴を有するのが好ましい
【0018】
この構成によれば、ワークが、載置台に載せられて待機しているとき、給水穴から載置台とワークとの間に水を供給して、供給した水でワークの下面を濡らして保湿することができる。したがって、例えば半導体ウエハのように、ワーク表面を乾燥させてはいけない環境下の検出作業では、ワーク表面を水等で積極的に濡らして保湿し、乾燥をなくした状態で待機させておくことができる。
【0019】
また、本発明は、前記超音波発信体が、超音波発信部と、前記超音波発信部で発信された超音波信号を前記超音波受信体と対向する位置まで伝導して、前記超音波信号を前記超音波受信体に向けて放射する超音波伝導筒とを備えるのが好ましい
【0020】
この構成によれば、超音波発信体の超音波発信部を超音波受信体の真上に配置せずに、超音波受信体の真上から外れた自由な位置に配置しておくことができる。そして、超音波発信体の超音波発信部で発信された超音波信号を、超音波伝導筒を介して超音波受信体と対向する位置まで伝導して、超音波受信体に向けて放射することができる。これにより、超音波発信体の超音波発信部を自由な位置に配置することができるので、装置のコンパクト化が可能になる。また、超音波センサの存在がワークを搬入・搬出する際における作業に与える影響を少なくして、タクトタイムのロスを防ぐことが可能になる。さらに、載置台が間に隙間を設けて上下に積み重ねられた状態に並べて配置される場合でも、その上下の載置台の僅かなスペースの間に超音波伝導筒を侵入させて在荷検出を行うことが可能になる。
【0021】
また、本発明は、前記排水手段が、前記超音波受信体に対応している領域と略隣接している位置に設けられているのが好ましい。
【0022】
この構成によれば、ワーク在荷検出のとき、ワークと超音波受信体の間に空気層が発生し易いように、水抜き穴を超音波受信体と対応する領域と隣接して設けている。したがって、給水を停止してから、超音波受信体の周囲において、ワークと超音波受信体の間に空気層が発生するまでの時間が早まり、タイムラグを短くできる。これにより、生産効率の向上が図れる。
【0023】
また、本発明は、前記載置台が、前記載置台の外周から前記排水手段に向かって、前記載置台の上面に設けられている空気誘導溝を備えるのが好ましい。
【0024】
この構成によれば、載置台とワークとの間に外気を誘導する空気誘導溝を、載置台の上面に設けている。したがって、ワーク在荷検出を行うとき、載置台への給水を停止し、排水を開始すると、空気誘導溝を通って外気が載置台とワークとの間に侵入する。したがって、給水を停止してからワークと超音波受信体の間の水を抜く作業が早められ、載置台とワークとの間に空気層を素早く形成することができる。これにより、給水を停止し、排水を開始してから、ワークと超音波受信体の間に空気層が作られるまでのタイムラグを短くすることができ、生産効率の向上が図れる。
【0025】
また、本発明は前記ワークが、半導体ウエハであるのが好ましい
【0026】
この構成によれば、半導体ウエハの加工工程において、半導体ウエハの有無を確実に検出して、適正な環境下で、加工や搬送を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0027】
発明によれば、
超音波センサを用いたワーク在荷検出を行うとき、排水手段により載置台とワークとの間の水を抜き、載置台とワークの間に空気層を設けた状態で、超音波発信体から超音波受信体に向けて超音波信号を発信させてワークの在荷検出を行うことができる。したがって、載置台とワークとの間に水が密に供給されているときには、材料境界面の超音波透過率が上がり、ワークの在荷検出の精度が下がるという問題を解消して、ワーク在荷検出を精度良く行うことができる。
また、ワークを載置台上に待機させているとき、載置台とワークとの間に水を供給し、載置台上のワークの下面を水で濡らして保湿しておく。一方、ワーク在荷検出を行うときには水を抜き、載置台とワークの間に空気層を設けた状態でワーク在荷検出を精度良く行うことができる。
これにより、例えば半導体ウエハのように、ワークの表面(下面)を乾燥させてはいけない環境下での検出作業では、作業待ちのときに、ワークの表面を水等で濡らして保湿しておき、在荷検出を行うときには空気を抜き、載置台とワークの間に空気層を設けた状態で在荷検出を行うことができるので、ワーク表面の保湿の向上と、ワーク在荷の検出精度の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施の形態に係るワーク在荷検出装置を模式的に示す平面図である。
図2図1のA-A線縦断面図で、(a)はワークが載置されていない状態でワーク在荷検出が行われているときの図、(b)はワークが載置されている状態でワーク在荷検出が行われているときの図である。
図3図1のB-B線縦断面図である。
図4】ワーク在荷検出動作状態を説明する図で、(a)は載置台にワークが載置された直後の状態を示す図、(b)はワークと超音波受信体との間に水が密に供給されている状態で示す図、(c)はワークと超音波受信体の間への水の供給を停止した直後の状態で示す図、(d)はワークと超音波受信体との間に空気層を形成して在荷検出をしている状態で示す図である。
図5】載置台上にワークが載置されていない状態でワーク在荷検出が行われたときの説明図である。
図6】反射式在荷センサを用いた載置台を示す平面図及び断面図である。
図7】透過式在荷センサを用いた載置台を示す平面図及び断面図である。
図8】スイッチ式在荷センサを用いた載置台を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は多種多様なワークの在荷検知に対応可能なワーク在荷検出装置を提供するという目的を達成するために、ワークが載置台に載置されているか否かを検出可能な在荷検出手段を備えるワーク在荷検出装置であって、前記在荷検出手段は、超音波発信体と、前記超音波発信体からの超音波信号を受けて前記載置台上における前記ワークの有無に応じた信号を出力する前記載置台上に設けられ超音波受信体と、を有する超音波センサと、前記載置台と前記ワークとの間の水を排出して前記超音波受信体と前記ワークとの間に空気層を形成する、前記載置台に設けられた水抜き穴を有する排水手段と、前記超音波受信体の出力が所定閾値を超えていないときに、前記載置台上に前記ワークが在荷していると判定する制御部と、を備えることにより実現した。
【実施例
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る一実施例を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において、構成要素の数、数値、量、範囲等に言及する場合、特に明示した場合及び原理的に明らかに特定の数に限定される場合を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも構わない。
【0031】
また、構成要素等の形状、位置関係に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似又は類似するもの等を含む。
【0032】
また、図面は、特徴を分かり易くするために特徴的な部分を拡大する等して誇張する場合があり、構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。また、断面図では、構成要素の断面構造を分かり易くするために、一部の構成要素のハッチングを省略することがある。
【0033】
また、以下の説明において、上下や左右等の方向を示す表現は、絶対的なものではなく、本発明のワーク在荷検出装置の各部が描かれている姿勢である場合に適切であるが、その姿勢が変化した場合には姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。また、実施例の説明の全体を通じて同じ要素には同じ符号を付している。
【0034】
図1は、本発明に係るワーク在荷検出装置10を模式的に示す平面図で、図2は、図1のA-A線縦断面図、図3は、図1のB-B線縦断面図である。
【0035】
図1乃至図3において、本実施例におけるワーク在荷検出装置10は、ワークとして半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」という)の在荷検出を行う半導体製造装置に適用した場合を一例として説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、広く一般にワークの在荷を検出する装置として適用できるものである。
【0036】
ワーク在荷検出装置10は、ウエハWが載せられる載置台11と、在荷検出手段12を備えている。
【0037】
載置台11は、半導体製造装置においてウエハWを移送する際に、ウエハWを仮置きするものであり、例えば、搬送ロボットと研磨装置との間に設けられるワーク転置台や、複数の搬送ロボットの間でウエハWを受け渡しする際に用いられるワーク受け台等である。
【0038】
載置台11は、トレイ13と、受け部14と、を備えている。なお、載置台11は、一枚だけ配置される場合、又は複数枚が、間に隙間を設けて上下に積み重ねられた状態で配置される場合もある。
【0039】
トレイ13は、ウエハWが載せられる受け台であり、樹脂材料からなり、円板状に形成される。トレイ13の上面13aには、上面13aの外周部略全体を囲むようにして円環状の支持部15が設けられており、支持部15で囲まれた領域の内側に後述する水35を溜める、上面を開口させた凹部16が形成されている。
【0040】
受け部14は、トレイ13の上面13a側で、かつ、円環状をした支持部15の内周面に沿う同心円上に、略等間隔で並べて4つ設けられている。なお、受け部14は、凹部16内で、トレイ13上に載せられたウエハWの裏面周縁を受ける部分である。一方、円環状をした支持部15は、トレイ13上に凹部16を形成している機能の他に、凹部16内に配置されたウエハWの外周縁を受け、ウエハWの水平方向における移動を規制する機能も有する。また、受け部14の高さは、支持部15aの、上面13aからの高さよりも低く形成されている。したがって、受け部14で受けられて凹部16内に載置されたウエハWは、図2(b)に実線で示すように、凹部16内に略没した状態で配置される。
【0041】
在荷検出手段12は、超音波発信体22と超音波受信体23とを有する超音波センサ21と、制御部24と、を備えている。なお、超音波受信体23は、トレイ13の凹部16の略中央部分に配置されている。また、超音波センサ21としては、例えばP+F社製のUSBE800-F77-SE0-V31。防水性能はIP67。周波数は300KHzである。
【0042】
超音波発信体22は、超音波発信部22Aと超音波伝導筒22Bを有している。
【0043】
超音波発信部22Aは、超音波信号26を超音波発信体22に向けて発信する発信源である。
【0044】
超音波伝導筒22Bは、透明な樹脂材、例えばポリ塩化ビニル(PVC)で潜望鏡形状に成形された、中実状の筒体であり、筒体内部を超音波信号26が伝導できるように構成されている。なお、超音波伝導筒22Bに透明な素材を用いるのは、筒体内に異物が入った際に、目視で確認できるようにするためであり、また素材として樹脂材を使用するのは金属イオンの析出と安全性を考慮した場合である。
【0045】
超音波伝導筒22Bは、一端側を超音波発信部22Aの前面に当接させて、超音波発信部22Aと一体化されて設けられている。そして、超音波伝導筒22Bは、超音波発信部22Aから発信された超音波信号26を他端側まで伝導できるように構成されている。また、超音波伝導筒22Bは、在荷検出の作業を行わないときには、トレイ13上におけるウエハWの搬入・搬出作業の妨げにならない位置に移動でき、在荷検出を行うときには、他端側の下面が、超音波受信体23が配置されたトレイ13の中心位置、すなわち、超音波受信体23と対向する位置に移動可能になっている。なお、超音波伝導筒22Bの他端側には、上面側から下面側に向かって略45度カットされて、そのカットされた内面に屈折反射面25を形成している。また、超音波伝導筒22Bの筒形状は断面円形または4角形等、自由な形状にしてもよいが、加工方法の観点からは四角形の方が好ましい。さらに、超音波発信体22の超音波発信部22Aと関係では、超音波発信部22Aの外径が6ミリ程の大きさとした場合、超音波伝導筒22Bの筒内幅は8ミリ×8ミリの四角形状としている。また、超音波伝導筒22Bの上下方向の厚みは、載置台11が、間に隙間を設けて上下方向に積み重ねられた状態で配置される構成の場合には、その上下の載置台11の間の隙間に入り込める大きさが好ましい。しかし、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0046】
超音波受信体23は、本体部23aと本体部23aに取り付けられた超音波受信部23bとを備える。超音波受信体23の本体部23aは外形形状が四角形で、サイコロ状をした立方体をなしている。そして、超音波受信部23bを、トレイ13の凹部16の略中央の位置に、その超音波受信部23bを上方に向けて凹部16内に露出させた状態にして、本体部23aをトレイ13内にインサートして、トレイ13と一体化して取り付けられている。なお、ここでの超音波受信体23は、耐水性に優れているものが使用される。また、超音波受信部23bは、制御部24に接続されており、超音波発信体22からの超音波信号26を受けて、その超音波信号26の強さに応じた信号を制御部24に出力するようになっている。
【0047】
トレイ13には、凹部16内に水を供給するための給水穴31と、給水穴31から供給されて凹部16内に溜まった水を抜く水抜き穴32と、凹部16内に外気を取り入れるための空気誘導溝33と、が設けられている。
【0048】
給水穴31は、トレイ13の下面から凹部16内まで貫通しており、下面側に給水管34が接続されている。そして、トレイ13の凹部16内には、給水管34を通じて水35を供給できるようになっている。なお、給水管34による給水・停止は、給水管34の途中に設けられている図示しない給水用開閉弁の開閉操作で行うことで可能になっている。また、ここでの給水用開閉弁の開閉操作は、制御部24の指示で行われる。
【0049】
水抜き穴32は、排水手段を構成しているものであり、超音波発信体22から超音波が照射される領域と略隣接する位置で、かつ超音波受信体23における本体部23aの各角部にそれぞれ対応して4つ設けられている。各水抜き穴32は、トレイ13の下面から凹部16内まで貫通している。また、各水抜き穴32には、トレイ13の下面側において図示しない排水管が連結されている。そして、給水管34により、給水穴31を通してトレイ13の凹部16内に溜められた水35を、各水抜き穴32を通して抜き、排水管を通じて排水できるようになっている。排水管を通じた排水・停止は、排水管の途中に設けられている図示しない排水用開閉弁の開閉操作を行うことで可能になっている。また、ここでの排水用開閉弁の開閉操作は、制御部24の指示で行われる。
【0050】
空気誘導溝33は、図1及び図3に示すように、トレイ13の上面13aに、載置台11(トレイ13)の外周からトレイ13の中心(水抜き穴32)に向かって形成された溝である。空気誘導溝33は、在荷検出作業に先立って凹部16内の水35を抜き、超音波受信体23の超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36を積極的に形成するためのものである。また、空気誘導溝33には、超音波受信部23bに近づくに連れて扇状に広がる扇状広がり部分33aを設けている。扇状広がり部分33aは、凹部16内への給水を停止したときに超音波受信体23の超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気(外気)がより入りやすくなるように機能し、給水時には、外周側が狭まっていることで、水35が余分に漏れてしまうのを防ぐ役目をする。具体例としては、空気誘導溝33の深さは2ミリ、幅は6ミリ以上にすると、給水時における水35の漏れを少なくし、排水時における空気の取り入れをしやすくして、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36を容易に形成できる。
【0051】
制御部24は、ワーク在荷検出装置10の全体の動作を制御するものであって、例えばマイクロコンピュータで形成されており、マイクロコンピュータに組み込まれているプログラムに従って所定の手順でワーク在荷検出装置10の全体の動作を制御する。
【0052】
次に、このように構成されたワーク在荷検出装置10の在荷検出動作を、図1図3図4及び図5を加えて説明する。
【0053】
トレイ13上にウエハWの搬入・搬出が行われるとき、超音波伝導筒22Bは、制御部24の制御で搬入・搬出の妨げとならない位置に移動されている。そして、図4の(a)に示すようにウエハWは、図示しない搬入・排出機構によりトレイ13上に搬送されて来て、トレイ13の凹部16内で受け部14上にセットされる。
【0054】
続いて、制御部24の制御で水抜き穴32に接続されている排水管の開閉弁が閉じられ、給水穴31に接続されている給水管34の開閉弁が開かれる。給水管34の開閉弁が開かれると、給水穴31から水35が、凹部16内の超音波受信部23bとウエハWの下面との間に供給されて、図4の(b)に示すようにウエハWの下面が水35に浸される。これによりウエハWの下面が水35で保湿されて、ウエハWの下面の乾燥が防止される。そして、在荷検出作業を待つ。したがって、トレイ13上に載せられたウエハWは、在荷検出作業を行うまでに時間を要しても、ウエハWの下面が乾燥するのを防ぐことができる。なお、給水時に、排水管の開閉弁は閉じずに、水抜き穴32から排出される排水量に対しての給水量を調整するようにすれば、凹部16内に溜めておく水量を一定にして、ウエハWの下面が常に水35で浸された状態を保持することも可能である。また、ウエハWの下面だけでなく、ウエハWの上面側も水35で浸しておくことも可能である。
【0055】
次に、在荷検出の作業を行うとき、図4の(c)に示すように、超音波伝導筒22Bの屈折反射面25を設けている他端側の下面が、トレイ13の中心位置、すなわち超音波受信体23の超音波受信部23bの真上に配置される検出位置まで、制御部24の制御で超音波伝導筒22Bが移動される。なお、ここでの超音波伝導筒22Bの下面(超音波信号26の出口)と超音波受信部23bとの距離は24ミリ程度離し、超音波伝導筒22Bの下面(超音波信号26の出口)から出た超音波信号26が拡散された状態で広がるように構成している。本実施例での超音波信号26の広がりは、超音波受信体23の超音波受信部23bが例えば水平方向に10ミリ程度ずれていたとしても問題なく受信できるように構成している。
【0056】
超音波伝導筒22Bの検出位置への移動と同時に、給水穴31に接続された給水管34の開閉弁が閉じられ、凹部16内への給水が停止される。同時に、水抜き穴32に接続されている排水管の開閉弁も開かれる。これにより、凹部16内に溜められている水35が水抜き穴32を通して排出され、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36が形成される。なお、排水時、トレイ13には外周面に通じる空気誘導溝33が設けられているので、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に溜められている水35に対して、空気誘導溝33を通して入り込む外気圧が付与され、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に溜められている水35が、空気誘導溝33を通して排水管側に抜ける。そして、排水時には、図4の(c)に示すように空気誘導溝33付近の水抜き穴32の周辺から積極的に排水が行われ、最終的には図4の(d)に示すように、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36が形成される。ここでの給水停止から空気層36の発生までのタイムラグは、2秒以内が望ましい。この時間は、トレイ13上にウエハWを搬入・搬出するまでの移動時間である。この給水停止から空気層36が発生するまでの時間は、水抜き穴32の大きさ及び個数と、空気誘導溝33の幅及び深さによって定まる。本実施例では、水抜き穴32の大きさは内径4ミリで、個数は4個としている。また、空気誘導溝33の大きさは、溝深さが2ミリ、溝幅が6ミリに設定している。
【0057】
そして、図4の(d)に示すように、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36ができたら、次に制御部24が在荷検出作業を開始する。この在荷検出作業では、超音波発信体22の超音波発信部22Aから超音波信号26を発生させる。超音波発信部22Aで発生された超音波信号26は、超音波伝導筒22B内を屈折反射面25まで伝導され、屈折反射面25で垂直下側方向、すなわち超音波受信部23bの方向に屈折反射されて、超音波受信部23bに向かって進む。ここでは、トレイ13上にウエハWが載置されているので、超音波受信部23bの上には空気層36とウエハWが存在する形になり、屈折反射面25で屈折反射されて来る超音波信号26は、ウエハWによって遮断され、超音波受信部23bに入力されない。これにより、超音波受信部23bには超音波信号26が届かないので、制御部24では、ウエハWが在荷していると判定する。なお、ここで、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に水35が密に溜まった状態で検出を行った場合では、材料境界面の超音波透過率が上がる性質がある。しかし、トレイ13にウエハWが在荷されていても、超音波信号26がウエハWを通過し、在荷無しとして誤検知する虞があるが、本実施例のように、超音波受信部23bとウエハWの下面との間に空気層36を設けた状態で検出を行った場合では、空気層36が伝導の抵抗となって、超音波透過率を上げることがなく、ウエハWの在荷を精度良く検出することができる。
【0058】
これに対して、トレイ13上にウエハWが存在しないとき、屈折反射面25で屈折反射された超音波信号26は、図5に示すように超音波受信部23bに直接入力される。そして、超音波受信部23bには強い超音波信号26が直接届き、超音波受信部23bから所定閾値を超える信号が出力され、制御部24ではウエハWが在荷していないと判定する。
また、この在荷検出動作では、この検出工程作業を繰り返す。
【0059】
したがって、本実施例のワーク在荷検出装置10によれば、載置台11(トレイ13)の上にウエハWが載せられているとき、トレイ13の凹部16内に水35を供給して載置台11の上のウエハWの下面を水で濡らして保湿しておくことができるので、ウエハWのように、ウエハWの表面を乾燥させてはいけないような環境下の検出では、ウエハWの表面を水等で濡らして保湿し、乾燥を防止することができる。
一方、超音波センサ21を用いたウエハWの在荷検出を行うときには、凹部16内への水35、すなわち超音波受信部23bとウエハWとの間への給水を止めて水を抜き、ウエハWと超音波受信部23bとの間に空気層36を設けた状態で、超音波発信体22から超音波受信体23に向けて超音波信号26を発信するので、空気層36により超音波受信部23bとウエハWとの間の超音波透過率の影響をなくして、ウエハWの在荷を精度良く検出することができる。これにより、ワーク表面の保湿の向上と、ワーク在荷の検出精度の向上が図れることになる。
なお、上記実施例では、トレイ13(載置台11)に対して超音波伝導筒22Bが移動する場合について説明したが、反対にトレイ13が超音波伝導筒22Bに対して移動する構造にしてもよい。
また、ワーク在荷検出を行う待機位置において、トレイ13の凹部16に保湿用に入れた水を、ワーク在荷検知を行う前に抜き、ウエハWと超音波受信体23との間に空気層36を設けてワーク在荷検出を行う場合について説明した。しかし、ウエハWの乾燥を防止する水35に限ることなく、ワーク在荷検出を行うときにウエハWと超音波受信体23との間に存在するあらゆる水35を抜いて、ウエハWと超音波受信体23の間に空気層36を設けて行う場合でも効果が得られる。
【0060】
さらに、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を成すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【符号の説明】
【0061】
10 :ワーク在荷検出装置
11 :載置台
12 :在荷検出手段
13 :トレイ
13a :上面
14 :受け部
15 :支持部
15a :支持部
16 :凹部
21 :超音波センサ
22 :超音波発信体
22A :超音波発信部
22B :超音波伝導筒
23 :超音波受信体
23a :本体部
23b :超音波受信部
24 :制御部
25 :屈折反射面
26 :超音波信号
31 :給水穴
32 :水抜き穴(排水手段)
33 :空気誘導溝
33a :扇状広がり部分
34 :給水管
35 :水
36 :空気層
W :ウエハ(ワーク)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8