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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】感光性組成物
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20241009BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20241009BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20241009BHJP
   C08F 220/20 20060101ALI20241009BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20241009BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20241009BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20241009BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20241009BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241009BHJP
【FI】
G02B5/20
G02B5/20 101
B41M5/00 120
C08F2/44 Z
C08F220/20
C09D11/101
C09D11/30
G03F7/004 502
G03F7/004 507
G03F7/027 502
G09F9/30 349Z
G09F9/30 360
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020207821
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2021105710
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2023-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-16
(31)【優先権主張番号】P 2019237347
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福浦 知浩
(72)【発明者】
【氏名】原田 好寛
(72)【発明者】
【氏名】小松 慶史
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼田 真芳
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】本田 博幸
【審判官】廣田 健介
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/189495(WO,A1)
【文献】特開2012-207084(JP,A)
【文献】特開2013-240979(JP,A)
【文献】特開2016-71362(JP,A)
【文献】特開2016-110065(JP,A)
【文献】特開平4-280201(JP,A)
【文献】国際公開第2018/101348(WO,A1)
【文献】特開2017-167319(JP,A)
【文献】特開2016-108548(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)、及び安定化剤(E)を含む感光性組成物であって、
前記光重合性化合物(C)が、カルボキシル基と、カルボキシル基以外の3つ以上の官能基とを同一分子内に有する化合物(C3)を含み、
前記安定化剤(E)が、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、及び光安定剤からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、8質量%以上である、感光性組成物。
【請求項2】
前記光重合性化合物(C)が、分子量180以下である(メタ)アクリレート化合物(C1)を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記化合物(C1)の25℃における粘度が、1.2cP以下である、請求項2に記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記化合物(C1)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、5質量%以上、50質量%以下である、請求項2又は3に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記光重合性化合物(C)が、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を同一分子内に有する化合物(C2)を含む、請求項1~4のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記化合物(C2)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、5質量%以上、50質量%以下である、請求項5に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、16質量%以上である、請求項1~6のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記半導体粒子(A)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、16質量%以上、45質量%以下である、請求項1~7のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記化合物(C3)の含有量が、前記半導体粒子(A)100質量部に対して、25質量部以上、100質量部以下である、請求項1~8のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記感光性組成物の40℃における粘度が20cP以下である、請求項1~のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記光重合開始剤(D)の含有量が、前記光重合性化合物(C)100質量部に対して、8質量部以上、50質量部以下である、請求項1~10のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記感光性組成物が、更に、体積基準のメディアン径が0.15μm以上の光散乱剤(B)を含む、請求項1~11のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項13】
前記感光性組成物が、更に溶剤(F)を含み、
前記溶剤(F)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、3.5質量%以下である、請求項1~12のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項14】
インクジェットプリンター用インクである、請求項1~13のいずれかに記載の感光性組成物。
【請求項15】
温度40℃以上で、インクジェットプリンターの吐出ヘッドから吐出する、請求項14に記載の感光性組成物の使用。
【請求項16】
請求項1~14のいずれかに記載の感光性組成物から形成される硬化膜。
【請求項17】
垂直寸法が9μm以上および/または水平寸法が10μm以上900μm以下である、請求項16に記載の硬化膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、特にインクジェットプリンター用インクに適する感光性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置等の表示装置に含まれる波長変換膜等の硬化膜を形成するための硬化性樹脂組成物として、半導体量子ドット等の半導体粒子を含有するものが知られている(特許文献1)。また、半導体量子ドットを含むインク組成物を用い、インクジェット法により波長変換膜等を製造する方法が検討されている(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-71362号公報
【文献】国際公開第2018/123821号
【文献】国際公開第2018/123103号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体量子ドット等の半導体粒子は熱に弱く、半導体粒子を含む感光性組成物から形成される波長変換膜等の硬化膜の耐熱性の向上が求められる場合がある。さらに、感光性組成物は、より良好な塗工性が求められることもある。
【0005】
本発明の目的は、半導体粒子を含む感光性組成物であって、耐熱性及び/または塗工性が良好な感光性組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す通りである。
[1] 半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)、及び安定化剤(E)を含む感光性組成物であって、
前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、8質量%以上である、感光性組成物。
[2] 半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、及び光重合開始剤(D)を含む感光性組成物であって、
前記光重合性化合物(C)が、分子量180以下である(メタ)アクリレート化合物(C1)を含む、感光性組成物。
[3] 半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、及び光重合開始剤(D)を含む感光性組成物であって、
前記光重合性化合物(C)が、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を同一分子内に有する化合物(C2)を含む、感光性組成物。
[4] 前記光重合性化合物(C)が、分子量180以下である(メタ)アクリレート化合物(C1)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性組成物。
[5] 前記光重合性化合物(C)が、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を同一分子内に有する化合物(C2)を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性組成物。
[6] 前記感光性組成物が、更に安定化剤(E)を含み、
前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、8質量%以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の感光性組成物。
[7] 前記化合物(C1)の25℃における粘度が、1.2cP以下である、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性組成物。
[8] 前記化合物(C1)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、5質量%以上、50質量%以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性組成物。
[9] 前記化合物(C2)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、5質量%以上、50質量%以下である、[1]~[8]のいずれかに記載の感光性組成物。
[10] 前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、16質量%以上である、[1]~[9]のいずれかに記載の感光性組成物。
[11] 前記半導体粒子(A)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、16質量%以上、45質量%以下である、[1]~[10]のいずれかに記載の感光性組成物。
[12] 前記光重合性化合物(C)が、カルボキシル基と、カルボキシル基以外の3つ以上の官能基とを同一分子内に有する化合物(C3)を含む、[1]~[11]のいずれかに記載の感光性組成物。
[13] 前記化合物(C3)の含有量が、前記半導体粒子(A)100質量部に対して、25質量部以上、100質量部以下である、[12]に記載の感光性組成物。
[14] 前記感光性組成物の40℃における粘度が20cP以下である、[1]~[13]のいずれかに記載の感光性組成物。
[15] 前記光重合開始剤(D)の含有量が、前記光重合性化合物(C)100質量部に対して、8質量部以上、50質量部以下である、[1]~[14]のいずれかに記載の感光性組成物。
[16] 前記感光性組成物が、更に、体積基準のメディアン径が0.15μm以上の光散乱剤(B)を含む、[1]~[15]のいずれかに記載の感光性組成物。
[17] 前記感光性組成物が、更に溶剤(F)を含み、
前記溶剤(F)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、3.5質量%以下である、[1]~[16]のいずれかに記載の感光性組成物。
[18] インクジェットプリンター用インクである、[1]~[17]のいずれかに記載の感光性組成物。
[19] 温度40℃以上で、インクジェットプリンターの吐出ヘッドから吐出する、[18]に記載の感光性組成物の使用。
[20] [1]~[18]のいずれかに記載の感光性組成物から形成される硬化膜。
[21] 垂直寸法が9μm以上および/または水平寸法が10μm以上900μm以下である、[20]に記載の硬化膜。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、耐熱性及び/または塗工性が良好な感光性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、表示部材の一例を表す模式断面図である。
図2図2は、外部量子収率の測定に使用する第1の光学系を示す装置概念図である。
図3図3は、外部量子収率の測定に使用する第2の光学系を示す装置概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<感光性組成物>
本発明に係る感光性組成物は、半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、及び光重合開始剤(D)を含む感光性組成物であって、下記(a)~(c)のいずれか1つ以上を満たす。
(a)更に安定化剤(E)を含み、前記安定化剤(E)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、8質量%以上である
(b)前記光重合性化合物(C)が、分子量180以下である(メタ)アクリレート化合物(C1)を含む
(c)前記光重合性化合物(C)が、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基を同一分子内に有する化合物(C2)を含む
【0010】
本発明の感光性組成物は、上記(a)~(c)のいずれか1つを満たしていればよいが、上記(a)~(c)のいずれか2つを満たしていてもよく、上記(a)~(c)の全てを満たしていてもよい。
【0011】
なお、本明細書において感光性組成物に含まれる、又は含まれ得る各成分として例示する化合物は、特に断りのない限り、単独で、又は、複数種を組み合わせて使用することができる。
【0012】
<半導体粒子(A)>
半導体粒子(A)は、好ましくは発光性(蛍光発光性)の半導体粒子である。発光性の半導体粒子を含む感光性組成物から形成される波長変換膜等の硬化膜は、所望の波長域の蛍光発光を示す色再現性に優れたものであり得る。
【0013】
半導体粒子(A)は、605~665nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、赤色発光性の半導体粒子であってよく、500~560nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、緑色発光性の半導体粒子であってよく、420~480nmの範囲に発光ピーク波長を有する光を発する、青色発光性の半導体粒子であってもよい。また、半導体粒子(A)が吸収する光は、例えば、400nm以上500nm未満の範囲の波長の光(青色光)、又は200nm~400nmの範囲の波長の光(紫外光)であってよい。なお、半導体粒子(A)の発光ピーク波長は、例えば、紫外可視分光光度計を用いて測定される発光スペクトルにおいて確認することできる。
また、半導体粒子(A)の発光スペクトルの半値全幅は、60nm以下であることが好ましく、より好ましくは55nm以下、更に好ましくは50nm以下、特に好ましくは45nm以下である。これにより、より色純度の高い光を得ることができる。また、半導体粒子(A)の発光スペクトルの半値全幅の下限は特に限定されないが、5nm以上であってもよく、15nm以上であってもよい。
【0014】
発光性の半導体粒子は、半導体結晶からなる粒子、好ましくは半導体結晶からなるナノ粒子である。発光性の半導体粒子の好ましい例としては、半導体量子ドット及びペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(以下、「ペロブスカイト化合物」という)が挙げられ、より好ましくは半導体量子ドットである。
【0015】
前記半導体量子ドットの平均粒径は、例えば0.5nm以上20nm以下、好ましくは1nm以上15nm以下(例えば2nm以上15nm以下)である。半導体量子ドットの平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めることができる。
【0016】
半導体量子ドットは、例えば、周期表第2族元素、第11族元素、第12族元素、第13族元素、第14族元素、第15族元素及び第16族元素からなる群より選択される1種又は2種以上の元素を含む半導体材料から構成することができる。
【0017】
半導体量子ドットを構成し得る半導体材料の具体例は、SnS2、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe等の第14族元素と第16族元素との化合物;GaN、GaP、GaAs、GaSb、InN、InP、InAs、InSb、InGaN、InGaP等の第13族元素と第15族元素との化合物;Ga23、Ga23、Ga2Se3、Ga2Te3、In23、In23、In2Se3、In2Te3等の第13族元素と第16族元素との化合物;ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdO、CdS、CdSe、CdTe、HgO、HgS、HgSe、HgTe、ZnSTe、ZnSeS、ZnSeTe、CdSTe、CdSeTe、HgSTe、HgSeS、HgSeTe等の第12族元素と第16族元素との化合物;As23、As23、As2Se3、As2Te3、Sb23、Sb23、Sb2Se3、Sb2Te3、Bi23、Bi23、Bi2Se3、Bi2Te3等の第15族元素と第16族元素との化合物;MgS、MgSe、MgTe、CaS、CaSe、CaTe、SrS、SrSe、SrTe、BaS、BaSe、BaTe等の第2族元素と第16族元素との化合物;Si、Ge等の第14族元素、第15族元素又は第16族元素の単体;を含む。
【0018】
半導体量子ドットは、単一の半導体材料からなる単層構造であってもよいし、単一の半導体材料からなる核粒子(コア層)の表面が、これとは異なる1種又は2種以上の半導体材料からなる被覆層(シェル層)によって被覆されたコアシェル構造であってもよい。後者の場合、シェル層を構成する半導体材料としては通常、コア層を構成する半導体材料よりもバンドギャップエネルギーが大きいものを用いる。半導体量子ドットは、シェル層を2種以上有していてもよい。半導体量子ドットの形状は特に限定されず、例えば、球状又は略球状、棒状、円盤状等であり得る。
【0019】
前記ペロブスカイト化合物は、A、B及びXを成分とする、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物である。
Aは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする6面体の各頂点に位置する成分であって、1価の陽イオンである。
Xは、ペロブスカイト型結晶構造において、Bを中心とする8面体の各頂点に位置する成分を表し、ハロゲン化物イオン及びチオシアン酸イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種のイオンである。
Bは、ペロブスカイト型結晶構造において、Aを頂点に配置する6面体及びXを頂点に配置する8面体の中心に位置する成分であって、金属イオンである。
【0020】
前記ペロブスカイト化合物の平均粒径は、良好に結晶構造を維持させる観点から、3nm以上であることが好ましく、4nm以上であることがより好ましく、5nm以上であることがさらに好ましい。また、感光性組成物においてペロブスカイト化合物の沈殿を抑制する観点から、ペロブスカイト化合物の平均粒径は、5μm以下であることが好ましく、500nm以下であることがより好ましく、100nm以下であることがさらに好ましい。ペロブスカイト化合物の平均粒径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて求めることができる。
【0021】
A、B及びXを成分とするペロブスカイト化合物としては、特に限定されず、3次元構造、2次元構造、疑似2次元構造のいずれの構造を有する化合物であってもよい。
3次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、ABX(3+δ)で表される。
2次元構造の場合には、ペロブスカイト化合物は、A2BX(4+δ)で表される。
ここで、δは、Bの電荷バランスに応じて適宜変更が可能な数であり、-0.7以上0.7以下である。
【0022】
ペロブスカイト化合物であって、ABX(3+δ)で表される、3次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の具体例としては、
CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr(3-y)y(0<y<3)、CH3NH3PbBr(3-y)Cly(0<y<3)、(H2N=CH-NH2)PbBr3、(H2N=CH-NH2)PbCl3、(H2N=CH-NH2
PbI3
CH3NH3Pb(1-a)CaaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)SraBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)LaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)BaaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)DyaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、
CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CsPb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、CsPb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)y(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ-y)y(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)LiaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)LiaBr(3+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)y(0<a≦0.7,
-0.7≦δ<0,0<y<3)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)NaaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<3)、
CsPbBr3、CsPbCl3、CsPbI3、CsPbBr(3-y)y(0<y<3)、CsPbBr(3-y)Cly(0<y<3)、CH3NH3PbBr(3-y)Cly(0<y<3)、
CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0≦δ≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr3(0<a≦0.7)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr3(0<a≦0.7)、
CsPb(1-a)ZnaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)AlaBr(3+δ)(0<a≦0.7,0<δ≦0.7)、CsPb(1-a)CoaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MnaBr3(0<a≦0.7)、CsPb(1-a)MgaBr3(0<a≦0.7)、
CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr(3-y)y(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ-y)y(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr(3-y)y(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr(3-y)y(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr(3-y)y(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)AlaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,0<δ≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)CoaBr(3+δ-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、CH3NH3Pb(1-a)MgaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)、
(H2N=CH-NH2)ZnaBr3(0<a≦0.7)、(H2N=CH-NH2)MgaBr3(0<a≦0.7)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)ZnaBr(3-y)y(0<a≦0.7,0<y<3)、(H2N=CH-NH2)Pb(1-a)ZnaBr(3-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<3)等が好ましいものとして挙げられる。
【0023】
ペロブスカイト化合物であって、A2BX(4+δ)で表される、2次元構造のペロブスカイト型の結晶構造を有する化合物の好ましい具体例としては、
(C49NH32PbBr4、(C49NH32PbCl4、(C49NH32PbI4、(C715NH32PbBr4、(C715NH32PbCl4、(C715NH32PbI4、(C49NH32Pb(1-a)LiaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C49NH32Pb(1-a)NaaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C49NH32Pb(1-a)RbaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(C715NH32Pb(1-a)NaaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C715NH32Pb(1-a)LiaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、(C715NH32Pb(1-a)RbaBr(4+δ)(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0)、
(C49NH32Pb(1-a)NaaBr(4+δ-y)y(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)LiaBr(4+δ-y)y(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)RbaBr(4+δ-y)y(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(C49NH32Pb(1-a)NaaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)LiaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)RbaBr(4+δ-y)Cly(0<a≦0.7,-0.7≦δ<0,0<y<4)、
(C49NH32PbBr4、(C715NH32PbBr4
(C49NH32PbBr(4-y)Cly(0<y<4)、(C49NH32PbBr(4-y)y(0<y<4)、
(C49NH32Pb(1-a)ZnaBr4(0<a≦0.7)、(C49NH32Pb(1-a)MgaBr4(0<a≦0.7)、(C49NH32Pb(1-a)CoaBr4(0<a≦0.7)、(C49NH32Pb(1-a)MnaBr4(0<a≦0.7)、
(C715NH32Pb(1-a)ZnaBr4(0<a≦0.7)、(C715NH32Pb(1-a)MgaBr4(0<a≦0.7)、(C715NH32Pb(1-a)CoaBr4(0<a≦0.7)、(C715NH32Pb(1-a)MnaBr4(0<a≦0.7)、
(C49NH32Pb(1-a)ZnaBr(4-y)y(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)MgaBr(4-y)y(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)CoaBr(4-y)y(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)MnaBr(4-y)y(0<a≦0.7,0<y<4)、
(C49NH32Pb(1-a)ZnaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)MgaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)CoaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)、(C49NH32Pb(1-a)MnaBr(4-y)Cly(0<a≦0.7,0<y<4)等が挙げられる。
【0024】
半導体粒子(A)は、半導体粒子に配位する有機配位子を含む配位子含有半導体粒子であってもよい。半導体粒子に配位する有機配位子は、例えば、半導体粒子に対する配位能を示す極性基を有する有機化合物であることができる。配位子含有半導体粒子に含まれる有機配位子は、配位子含有半導体粒子の合成上の制約から、又は、安定化のために添加した有機配位子であってもよい。例えば、特表2015-529698号公報において、配位子含有半導体粒子は、粒子サイズ制御の観点から有機配位子としてヘキサン酸を含み、また、合成後の安定化のために有機配位子をDDSA(ドデセニルコハク酸)に置換している。
有機配位子は、例えば半導体粒子の表面に配位することができる。
【0025】
半導体粒子に配位する有機配位子は、1種の配位子であってもよいし2種以上の配位子であってもよい。有機配位子が極性基を有する有機化合物である場合、有機配位子は通常、その極性基を介して半導体粒子に配位する。有機配位子が配位していることは、有機配位子に好適な分散媒に半導体粒子が均一分散することから確認される。
【0026】
極性基は、例えば、チオール基(-SH)、カルボキシル基(-COOH)及びアミノ基(-NH2)からなる群より選択される少なくとも1種の基であることが好ましい。該群より選択される極性基は、半導体粒子への配位性を高めるうえで有利となり得る。高い配位性は、硬化膜の色ムラの改善及び/又は感光性組成物のパターニング性の改善に貢献し得る。中でも、発光特性により優れる硬化膜(波長変換膜等)を得る観点から、極性基は、チオール基及びカルボキシル基からなる群より選択される少なくとも1種の基であることがより好ましい。有機配位子は、1個又は2個以上の極性基を有し得る。
【0027】
半導体粒子に配位する有機配位子の分子量は特に制限されないが、例えば、50以上500以下であり、好ましくは80以上400以下である。有機配位子の分子量が該範囲内であると、優れた再現性で配位子含有半導体粒子を調製することができる。
【0028】
有機配位子は、例えば、下記式:
Y-Z
で表される有機化合物であることができる。式中、Yは上記の極性基であり、Zはヘテロ原子(N、O、S、ハロゲン原子等)を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。該炭化水素基は、炭素-炭素二重結合等の不飽和結合を1個又は2個以上有していてもよい。該炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状又は環状構造を有していてもよい。該炭化水素基の炭素数は、例えば1以上40以下であり、1以上30以下であってもよい。該炭化水素基に含まれるメチレン基は、-O-、-S-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-、-C(=O)-NH-、-NH-等で置換されていてもよい。該炭化水素基は、配位子含有半導体粒子の調製の簡便さから、通常、ヘテロ原子を含まない場合が多い。
Y-Zで表される有機配位子は、好ましくは炭素数が5以上12以下である飽和脂肪酸又は炭素数が5以上12以下である不飽和脂肪酸である。
【0029】
基Zは、極性基を含んでいてもよい。該極性基の具体例については極性基Yに係る上記記述が引用される。基Zは、配位子含有半導体粒子の調製の簡便さから、通常、極性基を含まない場合が多い。
【0030】
極性基Yとしてカルボキシル基を有する有機配位子の具体例として、ギ酸、酢酸、プロピオン酸のほか、飽和又は不飽和脂肪酸を挙げることができる。飽和又は不飽和脂肪酸の具体例は、ブチル酸、ペンタン酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等の飽和脂肪酸;ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、イコセン酸、エルカ酸、ネルボン酸等の一価不飽和脂肪酸;リノール酸、α-リノレン酸、γ-リノレン酸、ステアドリン酸、ジホモ-γ-リノレン酸、アラキドン酸、エイコサテトラエン酸、ドコサジエン酸、アドレン酸(ドコサテトラエン酸)等の多価不飽和脂肪酸を含む。
【0031】
極性基Yとしてチオール基又はアミノ基を有する有機配位子の具体例は、上で例示した極性基Yとしてカルボキシル基を有する有機配位子のカルボキシル基がチオール基又はアミノ基に置き換わった有機配位子を含む。
【0032】
半導体粒子(A)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは16質量%以上、更に好ましくは17質量%以上、より更に好ましくは18質量%以上、特に好ましくは20質量%以上、最も好ましくは25質量%以上であり、また45質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。半導体粒子(A)の含有量が上記の範囲内にあると、硬化膜(波長変換膜等)において十分な光変換効率が得られる。
【0033】
<光散乱剤(B)>
本発明の感光性組成物は、光散乱剤(B)を含むことが好ましい。光散乱剤(B)を含むことにより、感光性組成物から形成される波長変換膜に照射された光源からの光の散乱性が向上する。光散乱剤(B)としては、金属又は金属酸化物の粒子、ガラス粒子等を挙げることができる。金属酸化物としては、TiO2、SiO2、BaTiO3、ZnO等を挙げることができる。
【0034】
光散乱剤(B)の体積基準のメディアン径は、例えば0.03μm以上、好ましくは0.10μm以上、より好ましくは0.15μm以上、更に好ましくは0.20μm以上であり、例えば20μm以下、好ましくは5μm以下、更に好ましくは1μm以下である。
【0035】
光散乱剤(B)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、通常0.001質量%以上50質量%以下であり、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上であり、また、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
【0036】
<光重合性化合物(C)>
光重合性化合物(C)としては、光の照射によって、ラジカル重合反応により硬化する光ラジカル重合性化合物、並びに光の照射によって、カチオン重合反応により硬化する光カチオン重合性化合物等が挙げられる。光重合性化合物(C)としては、光ラジカル重合性化合物であることが好ましい。光重合性化合物(C)の重量平均分子量は、3000以下であることが好ましい。
【0037】
光ラジカル重合性化合物としては、重合性のエチレン性不飽和結合を有する化合物等が挙げられ、中でも(メタ)アクリレート化合物が好ましい。(メタ)アクリレート化合物としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマー、分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する2官能(メタ)アクリレートモノマー及び分子内に3個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0038】
単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、こはく酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]フタルイミド、N-[2-(アクリロイルオキシ)エチル]テトラヒドロフタルイミド、2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート等が挙げられる。
【0039】
2官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコ-ルヒドロキシピバリン酸エステルジ(メタ)アクリレ-ト、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるトリオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイド若しくはプロピレンオキサイドを付加して得られるジオールの2つの水酸基が(メタ)アクリロイルオキシ基によって置換されたジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0040】
多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールデカ(メタ)アクリレート、テトラペンタエリスリトールノナ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エチレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エチレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロピレングリコール変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートコハク酸モノエステル、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートコハク酸モノエステル等が挙げられる。
【0041】
光カチオン重合性化合物としては、分子内に少なくとも1個のオキセタン環(4員環エーテル)を有する化合物(以下、単に「オキセタン化合物」と称することがある。)、分子内に少なくとも1個のオキシラン環(3員環エーテル)を有する化合物(以下、単に「エポキシ化合物」と称することがある。)、及びビニルエーテル化合物等を挙げることができる。
【0042】
オキセタン化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス〔(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル〕ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ〔(3-エチル-3-オキセタニル)メチル〕エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられる。これらのオキセタン化合物は、市販品を容易に入手することが可能であり、市販品としては、いずれも東亞合成(株)から販売されている商品名で、“アロンオキセタン(登録商標) OXT-101”、“アロンオキセタン(登録商標) OXT-121”、“アロンオキセタン(登録商標) OXT-211”、“アロンオキセタン(登録商標) OXT-221”、“アロンオキセタン(登録商標) OXT-212”などが挙げられる。
【0043】
エポキシ化合物としては、芳香族エポキシ化合物、脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテル、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物などが挙げられる。
【0044】
芳香族エポキシ化合物としては、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ビスフェールFのジグリシジルエーテル及びビスフェノールSのジグリシジルエーテルのようなビスフェノール型エポキシ樹脂;フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂及びヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラックエポキシ樹脂のようなノボラック型のエポキシ樹脂;テトラヒドロキシフェニルメタンのグリシジルエーテル、テトラヒドロキシベンゾフェノンのグリシジルエーテル及びエポキシ化ポリビニルフェノールのような多官能型のエポキシ樹脂などが挙げられる。
【0045】
脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルとしては、芳香族ポリオールを触媒の存在下、加圧下で芳香環に選択的に水素化反応を行うことにより得られる核水添ポリヒドロキシ化合物を、グリシジルエーテル化したものが挙げられる。芳香族ポリオールとしては、ビスフェノールA、ビスフェールF、ビスフェノールSのようなビスフェノール型化合物;フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ヒドロキシベンズアルデヒドフェノールノボラック樹脂のようなノボラック型樹脂;テトラヒドロキシジフェニルメタン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、ポリビニルフェノールのような多官能型の化合物などが挙げられる。これら芳香族ポリオールの芳香環に水素化反応を行って得られる脂環式ポリオールに、エピクロロヒドリンを反応させることにより、グリシジルエーテルとすることができる。このような脂環式環を有するポリオールのグリシジルエーテルのなかでも好ましいものとして、水素化されたビスフェノールAのジグリシジルエーテルが挙げられる。
【0046】
脂肪族エポキシ化合物としては、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。具体的には、1,4-ブタンジオールのジグリシジルエーテル;1,6-ヘキサンジオールのジグリシジルエーテル;グリセリンのトリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル;ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル;プロピレングリコールのジグリシジルエーテル;ネオペンチルグリコールのジグリシジルエーテル;エチレングリコール、プロピレングリコール若しくはグリセリンのような脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイドやプロピレンオキサイド)を付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0047】
脂環式エポキシ化合物は、脂環式環の炭素原子とともにオキシラン環を形成している構造を分子内に少なくとも1個有する化合物であり、“セロキサイド”シリーズ及び“サイクロマー”(全て、株式会社ダイセル製)、“サイラキュア UVR”シリーズ(ダウケミカル社製)等が使用できる。
【0048】
ビニルエーテル化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、トリエチレングリコールビニルモノエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0049】
光重合性化合物(C)は、分子量180以下である(メタ)アクリレート化合物(C1)(以下、単に「化合物(C1)」という場合がある)を含むことが好ましい。化合物(C1)は、分子量が180以下であり、かつ(メタ)アクリロイルオキシ基を有する化合物であれば特に限定されない。感光性組成物が化合物(C1)を含むことにより、組成物の粘度を低減でき、塗工性がより向上する。
【0050】
化合物(C1)としては、分子内に1個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する分子量が180以下の単官能(メタ)アクリレートモノマー、及び分子内に2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する分子量が180以下の2官能(メタ)アクリレートモノマー等が挙げられるが、粘度低減の観点から、分子量が180以下の単官能(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0051】
分子量が180以下の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、上記単官能(メタ)アクリレートモノマーとして説明した化合物の中で、分子量が180以下の化合物等が挙げられる。分子量が180以下の単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、分子量が180以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステル、分子量が180以下である(メタ)アクリル酸アリールエステル、及び分子量が180以下である(メタ)アクリル酸アラルキルエステルから選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0052】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アリールエステルとしては、フェニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アラルキルエステルとしては、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステル中のアルキル基が有する水素原子、前記(メタ)アクリル酸アリールエステル中のアリール基が有する水素原子、及び前記(メタ)アクリル酸アラルキルエステル中のアラルキル基が有する水素原子は、化合物の分子量が180を超えない限り、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基(好ましくはC1-4アルコキシ基
)等の置換基に置換されていてもよいが、置換されていないことが好ましい。
【0054】
化合物(C1)としては、分子量が180以下である(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、より好ましくは (メタ)アクリル酸C1-4アルキルエステル、特に好ましくはエチル(メタ)アクリレートである。
また、化合物(C1)の分子量は、160以下であることが好ましく、より好ましくは150以下、更に好ましくは140以下であり、また例えば86以上である。
【0055】
化合物(C1)は、25℃における粘度が2.5cP以下であることが好ましく、より好ましくは2.0cP以下、更に好ましくは1.2cP以下、特に好ましくは1.0cP以下、最も好ましくは0.8cP以下であり、また例えば0.1cP以上である。
【0056】
光重合性化合物(C)が化合物(C1)を含む場合、その含有量は、光重合性化合物(C)の総量に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは15質量%以上、更に好ましくは25質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、また、75質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下、特に好ましくは50質量%以下である。
また、光重合性化合物(C)が化合物(C1)を含む場合、その含有量は、感光性組成物の総量に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは8質量%以上、更に好ましくは10質量%以上、特に好ましくは13質量%以上、最も好ましくは17質量%以上であり、また、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
【0057】
光重合性化合物(C)は、ビニルエーテル基と(メタ)アクリロイル基(好ましくは、(メタ)アクリロイルオキシ基)を同一分子内に有する化合物(C2)(以下、単に「化合物(C2)」という場合がある)を含むことが好ましい。感光性組成物が化合物(C2)を含むことにより、半導体粒子の凝集を抑制でき、半導体粒子の分散性が向上し、その結果感光性組成物から得られる硬化膜の光変換効率がより向上する。また、感光性組成物が化合物(C2)を含むことにより、感光性組成物の粘度を低減でき、塗工性がより向上する。
【0058】
化合物(C2)が有するビニルエーテル基の数は、1以上4以下であることが好ましく、より好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1である。
化合物(C2)が有する(メタ)アクリロイル基の数は、1以上4以下であることが好ましく、より好ましくは1以上2以下、特に好ましくは1である。
【0059】
化合物(C2)としては、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸(4-ビニロキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(3-ビニロキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(2-ビニロキシメチルシクロヘキシル)メチル、(メタ)アクリル酸(4-ビニロキシメチルフェニル)メチル、(メタ)アクリル酸(3-ビニロキシメチルフェニル)メチル、(メタ)アクリル酸2-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}エチル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}プロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)イソプロポキシ}イソプロピル、(メタ)アクリル酸2-[2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2-[2-{2-(2-ビニロキシイソプロポキシ)エトキシ}エトキシ]エチル、(メタ)アクリル酸2-(2-[2-{2-(2-ビニロキシエトキシ)エトキシ}エトキシ]エトキシ)エチル等が挙げられる。
【0060】
化合物(C2)としては、(メタ)アクリル酸ビニロキシC1-6アルキル又は(メタ)アクリル酸(ビニロキシC1-4アルコキシ)C1-4アルキルが好ましく、(メタ)アクリル酸(ビニロキシC1-4アルコキシ)C1-4アルキルがより好ましく、(メタ)アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチルが特に好ましい。
【0061】
光重合性化合物(C)が化合物(C2)を含む場合、その含有量は、光重合性化合物(C)の総量に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、85質量%以下であることが好ましく、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下、最も好ましくは40質量%以下である。
また、光重合性化合物(C)が化合物(C2)を含む場合、その含有量は、感光性組成物の総量に対して、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、また、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは35質量%以下、更に好ましくは25質量%以下である。
【0062】
光重合性化合物(C)は、カルボキシル基と、カルボキシル基以外の3つ以上の官能基とを同一分子内に有する化合物(C3)(以下、単に「化合物(C3)」という場合がある)を含むことが好ましい。感光性組成物が化合物(C3)を含むことにより、半導体粒子の凝集を抑制でき、半導体粒子の分散性が向上し、その結果感光性組成物から得られる硬化膜の光変換効率がより向上する。また、感光性組成物が化合物(C3)を含むことにより、感光性組成物の硬化性が向上する。さらに、感光性組成物が化合物(C3)を含むことにより、感光性組成物の耐熱性がより向上し、特に、感光性組成物が化合物(C3)及び感光性組成物の総量に対して8質量%以上の安定化剤(E)を含むことにより、感光性組成物の耐熱性がよりさらに向上する。
【0063】
官能基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタン基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイルオキシ基が好ましい。化合物(C3)1分子が有する官能基の数は、3~5であることが好ましく、3がより好ましい。化合物(C3)1分子が有するカルボキシ基の数は、1であることが好ましい。
【0064】
化合物(C3)としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の3つ以上の官能基(特に(メタ)アクリロイルオキシ基)及びヒドロキシ基とを有する化合物と、ジカルボン酸とをエステル化して得られた化合物が挙げられる。具体的に、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸とをモノエステル化した化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとコハク酸とをモノエステル化した化合物、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとマレイン酸とをモノエステル化した化合物、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとマレイン酸とをモノエステル化した化合物等が挙げられる。中でも、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとコハク酸とをモノエステル化した化合物が好ましい。
【0065】
光重合性化合物(C)が化合物(C3)を含む場合、その含有量は、光重合性化合物(C)の総量に対して、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは20質量%以上であり、また、70質量%以下であることが好ましく、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
また、光重合性化合物(C)が化合物(C3)を含む場合、その含有量は、半導体粒子(A)100質量部に対して、20質量部以上であることが好ましく、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上、特に好ましくは40質量部以上であり、また、110質量部以下であることが好ましく、より好ましくは100質量部以下、更に好ましくは85質量部以下、特に好ましくは70質量部以下である。
【0066】
光重合性化合物(C)は、化合物(C1)、化合物(C2)、及び化合物(C3)から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましく、少なくとも化合物(C3)を含むことがより好ましく、化合物(C3)及び化合物(C2)の組み合わせ、又は化合物(C3)及び化合物(C1)の組み合わせを含むことが更に好ましく、化合物(C1)、化合物(C2)、及び化合物(C3)を全て含むことが特に好ましい。
【0067】
光重合性化合物(C)が化合物(C1)及び化合物(C3)を含む場合、化合物(C3)1質量部に対する化合物(C1)の含有量は、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、また、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
光重合性化合物(C)が化合物(C2)及び化合物(C3)を含む場合、化合物(C3)1質量部に対する化合物(C2)の含有量は、0.3質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.5質量部以上、さらに好ましくは0.8質量部以上であり、また、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは3質量部以下、さらに好ましくは1.5質量部以下である。
光重合性化合物(C)が化合物(C1)、化合物(C2)及び化合物(C3)を含む場合、化合物(C3)1質量部に対する化合物(C1)及び化合物(C2)の合計量は、0.5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは1.0質量部以上、さらに好ましくは1.5質量部以上であり、また、5質量部以下であることが好ましく、より好ましくは4質量部以下、さらに好ましくは3質量部以下である。
【0068】
化合物(C1)、化合物(C2)、及び化合物(C3)の合計量は、光重合性化合物(C)の全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。
特に、光重合性化合物(C)が化合物(C1)及び化合物(C3)を含む場合、化合物(C1)及び化合物(C3)の合計量は、光重合性化合物(C)の全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
また、光重合性化合物(C)が化合物(C2)及び化合物(C3)を含む場合、化合物(C2)及び化合物(C3)の合計量は、光重合性化合物(C)の全量に対して、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは60質量%以上であり、また100質量%であってもよく、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0069】
光重合性化合物(C)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、10質量%以上であることが好ましく、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは40質量%以上であり、80質量%以下であることが好ましく、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下、特に好ましくは60質量%以下である。
【0070】
<光重合開始剤(D)>
光重合開始剤(D)は、光の作用により活性ラジカル、酸等を発生し、重合を開始し得る化合物であれば特に限定されることなく、公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0071】
光重合開始剤(D)としては、O-アシルオキシム化合物等のオキシム系化合物、アルキルフェノン化合物、ビイミダゾール化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物等が挙げられる。
【0072】
O-アシルオキシム化合物は、下記式(d)で表される構造を有する化合物である。以下、*は結合手を表す。
【0073】
【化1】
【0074】
このようなO-アシルオキシム化合物としては、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)オクタン-1-オン-2-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-(4-フェニルスルファニルフェニル)-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-{2-メチル-4-(3,3-ジメチル-2,4-ジオキサシクロペンタニルメチルオキシ)ベンゾイル}-9H-カルバゾール-3-イル]エタン-1-イミン、N-アセトキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-イミン、N-ベンゾイルオキシ-1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-3-シクロペンチルプロパン-1-オン-2-イミン、N-アセチルオキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエチルオキシ)フェニルスルファニルフェニル]プロパン-1-オン-2-イミン、N-アセチルオキシ-1-[4-(1-メチル-2-メトキシエトキシ)-2-メチルフェニル]-1-(9-エチル-6-ニトロ-9H-カルバゾール-3-イル)メタン-1-イミン等が挙げられる。イルガキュア(登録商標)OXE01、同OXE02、同OXE03(以上、BASF社製)、N-1919、NCI-930、NCI-831(以上、ADEKA社製)等の市販品を用いてもよい。これらのO-アシルオキシム化合物は、リソグラフィ性能を向上させ得る点で有利である。
【0075】
アルキルフェノン化合物は、下記式(d4)で表される部分構造又は下記式(d5)で表される部分構造を有する化合物である。これらの部分構造中、ベンゼン環は置換基を有していてもよい。
【0076】
【化2】
【0077】
式(d4)で表される構造を有する化合物としては、2-メチル-2-モルホリノ-1-(4-メチルスルファニルフェニル)プロパン-1-オン、2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-2-ベンジルブタン-1-オン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]ブタン-1-オン等が挙げられる。OMNIRAD(登録商標)369、同907、同379(以上、IGM Resins社製)等の市販品を用いてもよい。
【0078】
式(d5)で表される構造を有する化合物としては、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-〔4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル〕プロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペニルフェニル)プロパン-1-オンのオリゴマー、α,α-ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等が挙げられる。
【0079】
感度の点で、アルキルフェノン化合物としては、式(d4)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【0080】
ビイミダゾール化合物としては、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2,3-ジクロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール(例えば、特開平6-75372号公報、特開平6-75373号公報等参照。)、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラフェニルビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(アルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(ジアルコキシフェニル)ビイミダゾール、2,2’-ビス(2-クロロフェニル)-4,4’,5,5’-テトラ(トリアルコキシフェニル)ビイミダゾール(例えば、特公昭48-38403号公報、特開昭62-174204号公報等参照。)、4,4’,5,5’-位のフェニル基がカルボアルコキシ基により置換されているイミダゾール化合物(例えば、特開平7-10913号公報等参照)等が挙げられる。中でも、下記式で表される化合物又はこれらの混合物が好ましい。
【0081】
【化3】
【0082】
トリアジン化合物としては、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシナフチル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-ピペロニル-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-(4-メトキシスチリル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(5-メチルフラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(フラン-2-イル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-〔2-(3,4-ジメトキシフェニル)エテニル〕-1,3,5-トリアジン等が挙げられる。
【0083】
アシルホスフィンオキサイド化合物としては、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0084】
さらに光重合開始剤(D)としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物;ベンゾフェノン、o-ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、3,3’,4,4’-テトラ(tert-ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン等のベンゾフェノン化合物;9,10-フェナンスレンキノン、2-エチルアントラキノン、カンファーキノン等のキノン化合物;10-ブチル-2-クロロアクリドン、ベンジル、フェニルグリオキシル酸メチル、チタノセン化合物等が挙げられる。これらは、アミン化合物、アルコキシアントラセン化合物、チオキサントン化合物及びカルボン酸化合物等の重合開始助剤と組み合わせて用いることが好ましい。
【0085】
光重合開始剤(D)としては、アルキルフェノン化合物、トリアジン化合物、アシルホスフィンオキサイド化合物、O-アシルオキシム化合物及びビイミダゾール化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む光重合開始剤が好ましく、感度の観点からアルキルフェノン化合物を含む光重合開始剤がより好ましい。
【0086】
光重合開始剤(D)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、3質量%以上であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上であり、また、40質量%以下であることが好ましく、より好ましくは30質量%以下であり、20質量%以下であってもよく、15質量%以下であってもよい。
光重合開始剤(D)の含有量は、光重合性化合物(C)100質量部に対して、3質量部以上であることが好ましく、より好ましくは8質量部以上であり、また、70質量部以下であることが好ましく、より好ましくは55質量部以下、更に好ましくは30質量部以下であり、20質量部以下であってもよい。光重合開始剤(D)の含有量が上記範囲内にあると、高感度化して露光時間が短縮される傾向があるため、波長変換膜等の硬化膜の生産性が向上する傾向にある。
また、光重合開始剤(D)の含有量を、光重合性化合物(C)100質量部に対して、40質量部以下とすることが好ましく、30質量部以下とすることがより好ましく、25質量部以下とすることが更に好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が上記範囲内にあると、粘度がより低減された感光性組成物を提供することができる。
さらに、光重合開始剤(D)の含有量を、光重合性化合物(C)100質量部に対して、例えば15質量部以上、40質量部以下、より好ましくは15質量部以上、30質量部以下、更に好ましくは15質量部以上、25質量部以下とすることも好ましい。光重合開始剤(D)の含有量が上記範囲内にあると、耐熱性により優れた硬化膜を提供し得る感光性組成物を提供することができる。
【0087】
<安定化剤(E)>
本発明の感光性組成物は、更に安定化剤(E)を含んでいてもよい。安定化剤(E)としては、熱や光などの作用により発生する炭素ラジカル、発生した炭素ラジカルの酸化により生成するパーオキシラジカル、パーオキシラジカルから生成されるハイドロパーオキサイド等の劣化因子を不活性化させる機能を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、酸化防止剤、光安定剤等が挙げられる。
【0088】
酸化防止剤としては、工業的に一般に使用される酸化防止剤であれば特に限定はなく、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤等を用いることができる。
【0089】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、イルガノックス(登録商標)1010(Irganox 1010:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1076(Irganox 1076:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、BASF(株)製)、同1330(Irganox 1330:3,3’,3’’,5,5’,5’’-ヘキサ-t-ブチル-a,a’,a’’-(メシチレン-2,4,6-トリイル)トリ-p-クレゾール、BASF(株)製)、同3114(Irganox 3114:1,3,5-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同3790(Irganox 3790:1,3,5-トリス((4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-キシリル)メチル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、BASF(株)製)、同1035(Irganox 1035:チオジエチレンビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、BASF(株)製)、同1135(Irganox 1135:ベンゼンプロパン酸,3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ,C7-C9側鎖アルキルエステル、BASF(株)製)、同1520L(Irganox 1520L:4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、BASF(株)製)、同3125(Irganox 3125、BASF(株)製)、同565(Irganox 565:2,4-ビス(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ3’,5’-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)AO-80(アデカスタブ AO-80:3,9-ビス(2-(3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン、(株)ADEKA製)、スミライザー(登録商標)BHT、同GA-80、同GS(以上、住友化学(株)製)、サイアノックス(登録商標)1790(Cyanox 1790、(株)サイテック製)及びビタミンE(エーザイ(株)製)等が挙げられる。
【0090】
フェノール系酸化防止剤としては、フェノール性ヒドロキシ基の少なくとも一方のオルト位に嵩高い有機基が結合したヒンダードフェノール構造を有する酸化防止剤が好ましい。前記嵩高い有機基としては、2級又は3級アルキル基が好ましく、具体的には、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、s-アミル基、t-アミル基等が挙げられる。中でも、3級アルキル基が好ましく、t-ブチル基又はt-アミル基が特に好ましい。
【0091】
リン系酸化防止剤としては、例えば、イルガフォス(登録商標)168(Irgafos 168:トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、BASF(株)製)、同12(Irgafos 12:トリス[2-[[2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフィン-6-イル]オキシ]エチル]アミン、BASF(株)製)、同38(Irgafos 38:ビス(2,4-ビス(1,1-ジメチルエチル)-6-メチルフェニル)エチルエステル亜りん酸、BASF(株)製)、アデカスタブ(登録商標)329K、同PEP36、同PEP-8(以上、(株)ADEKA製)、Sandstab P-EPQ(クラリアント社製)、Weston(登録商標)618、同619G(以上、GE社製)、Ultranox626(GE社製)及びスミライザー(登録商標)GP(6-[3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-t-ブチルジベンズ[d,f][1.3.2]ジオキサホスフェピン)(住友化学(株)製)等が挙げられる。
【0092】
リン系酸化防止剤としては、下記式(e1)で表される基を有する酸化防止剤が好ましい。
【0093】
【化4】

[式(e1)中、Re1~Re5はそれぞれ独立して水素原子又はアルキル基を表し、*は結合手を表す。]
【0094】
e1は、水素原子又は炭素数1~4のアルキル基であることが好ましく、より好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、又はt-ブチル基である。
e2及びRe4は、メチル基又は水素原子であることが好ましく、より好ましくは水素原子である。
e5及びRe3は、それぞれ独立して、アルキル基であることが好ましく、より好ましくは2級又は3級アルキル基であり、さらに好ましくはt-ブチル基又はt-アミル基である。
括弧で括られる2つの単位は、Re1同士で結合して環を形成してもよい。Re1同士で結合するとは、Re1から水素原子を除いた基同士が結合する態様を指し、例えば2つのRe1がどちらも水素原子である場合には、一方のベンゼン環におけるRe1が結合する炭素原子と、もう一方のベンゼン環におけるRe1が結合する炭素原子同士が直接結合する態様を指す。
【0095】
硫黄系酸化防止剤としては、チオジプロピオン酸ジラウリル、ジミリスチル又はジステアリール等のジアルキルチオジプロピオネート化合物及びテトラキス[メチレン(3-ドデシルチオ)プロピオネート]メタン等のポリオールのβ-アルキルメルカプトプロピオン酸エステル化合物等が挙げられる。
【0096】
光安定剤としては、工業的に一般に使用される光安定剤であれば特に限定はなく、例えばヒンダードアミン系光安定剤等を用いることができる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、アデカスタブ(登録商標)LA-52、同LA-57、同LA-63P、同LA-68、同LA-72、同LA-77Y、同LA-77G、同LA-81、同LA-82、同LA-87、同LA-402AF、同LA-40MP、同LA-40Si(以上、株式会社ADEKA製)、Chimassorb(登録商標)944FDL、同2020FDL、TINUVIN622SF(以上、BASF社製)等が挙げられる。
【0097】
安定化剤(E)としては、酸化防止剤が好ましく、フェノール系酸化防止剤またはリン系酸化防止剤がより好ましく、上記ヒンダードフェノール構造及び式(e1)で表される基の少なくとも一方を有する酸化防止剤であることがより好ましく、上記ヒンダードフェノール構造及び式(e1)で表される基の両方を有する酸化防止剤であることがさらに好ましく、スミライザー(登録商標)GPが特に好ましい。
【0098】
安定化剤(E)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、例えば1質量%以上であり、2質量%以上であってもよく、また、例えば60質量%以下であってもよく、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下である。
耐熱性を向上させる観点からは、安定化剤(E)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、8質量%以上であることが好ましく、より好ましくは9質量%以上、更に好ましくは12質量%以上、特に好ましくは16質量%以上である。また、粘度低減の観点からは、安定化剤(E)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、例えば60質量%以下であってもよく、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは30質量%以下、よりさらに好ましくは20%以下、特に好ましくは18質量%以下である。
【0099】
<溶剤(F)>
本発明の感光性組成物は、溶剤(F)を含んでいてもよいが、溶剤(F)を含む場合、その含有量は少ない方が好ましい。感光性組成物が溶剤(F)を含む場合、その含有量は、感光性組成物の総量に対して、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3.5質量%以下、特に好ましくは3.2質量%以下であり、また、0質量%であってもよく、0.5質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。溶剤(F)の含有量を少なくすることにより、硬化膜を形成する際の膜厚のコントロールが容易になり、また製造コストや溶剤による地球環境や作業環境への負荷を低減することができる。
【0100】
溶剤(F)としては、エステル溶剤(-C(=O)-O-を含む溶剤)、エステル溶剤以外のエーテル溶剤(-O-を含む溶剤)、エーテルエステル溶剤(-C(=O)-O-と-O-とを含む溶剤)、エステル溶剤以外のケトン溶剤(-C(=O)-を含む溶剤)、アルコール溶剤、芳香族炭化水素溶剤、アミド溶剤及びジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0101】
エステル溶剤としては、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、2-ヒドロキシイソブタン酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル及びγ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0102】
エーテル溶剤としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、3-メトキシ-1-ブタノール、3-メトキシ-3-メチルブタノール、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、アニソール、フェネトール及びメチルアニソール等が挙げられる。
【0103】
エーテルエステル溶剤としては、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-エトキシプロピオン酸メチル、2-エトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシ-2-メチルプロピオン酸メチル、2-エトキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0104】
ケトン溶剤としては、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、アセトン、2-ブタノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、4-メチル-2-ペンタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びイソホロン等が挙げられる。
【0105】
アルコール溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等が挙げられる。
【0106】
芳香族炭化水素溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレン等が挙げられる。
【0107】
アミド溶剤としては、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド及びN-メチルピロリドン等が挙げられる。
【0108】
溶剤(F)としては、エステル溶剤、エーテルエステル溶剤、アルコール溶剤、又はアミド溶剤が好ましく、エーテルエステル溶剤がより好ましい。
【0109】
<レベリング剤(G)>
本発明の感光性組成物は、更にレベリング剤(G)を含んでいてもよい。レベリング剤(G)としては、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤及びフッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。これらは、側鎖に重合性基を有していてもよい。
【0110】
シリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、トーレシリコーンDC3PA、同SH7PA、同DC11PA、同SH21PA、同SH28PA、同SH29PA、同SH30PA、同SH8400(商品名:東レ・ダウコーニング(株)製)、KP321、KP322、KP323、KP324、KP326、KP340、KP341(信越化学工業(株)製)、TSF400、TSF401、TSF410、TSF4300、TSF4440、TSF4445、TSF4446、TSF4452及びTSF4460(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)等が挙げられる。
【0111】
フッ素系界面活性剤としては、分子内にフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、フロラード(登録商標)FC430、同FC431(住友スリーエム(株)製)、メガファック(登録商標)F142D、同F171、同F172、同F173、同F177、同F183、同F554、同R30、同RS-718-K(DIC(株)製)、エフトップ(登録商標)EF301、同EF303、同EF351、同EF352(三菱マテリアル電子化成(株)製)、サーフロン(登録商標)S381、同S382、同SC101、同SC105(旭硝子(株)製)及びE5844((株)ダイキンファインケミカル研究所製)等が挙げられる。
【0112】
フッ素原子を有するシリコーン系界面活性剤としては、分子内にシロキサン結合及びフルオロカーボン鎖を有する界面活性剤等が挙げられる。具体的には、メガファック(登録商標)R08、同BL20、同F475、同F477及び同F443(DIC(株)製)等が挙げられる。
【0113】
レベリング剤(G)の含有量は、感光性組成物の総量に対して、通常0.001質量%以上0.5質量%以下であり、好ましくは0.005質量%以上0.3質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下である。
【0114】
本発明の感光性組成物は、半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、及び光重合開始剤(D)を含む感光性組成物であって、光重合性化合物(C)が化合物(C1)及び/又は化合物(C2)を含むか、感光性組成物の総量に対して8質量%以上の安定化剤(E)を含む。本発明の感光性組成物は、前記化合物(C1)、化合物(C2)、及び所定量以上の安定化剤(E)を全て含むことが好ましい。
感光性組成物が、化合物(C1)及び/又は化合物(C2)を含むことにより、感光性組成物を低粘度化できる。また、感光性組成物が化合物(C1)及び/又は化合物(C2)を含む場合耐熱性が低下しやすくなる場合があるが、所定量以上の安定化剤(E)を加えることで耐熱性の低下を抑制できる。
前記感光性組成物は、さらに化合物(C3)を含むことが好ましい。感光性組成物が化合物(C3)を含むことにより、半導体粒子の凝集を抑制でき、半導体粒子の分散性が向上し、その結果感光性組成物から得られる硬化膜の光変換効率がより向上する。なお感光性組成物が化合物(C3)を含む場合、感光性組成物が高粘度化し易くなる場合があるが、前記感光性組成物は、化合物(C1)及び/又は化合物(C2)を含んでいるためこの高粘度化は抑制される。また粘度低減のために化合物(C1)及び/又は化合物(C2)を含ませることにより耐熱性が低下しやすくなる場合があるが、上述した様に、所定量以上の安定化剤(E)を含有しているので耐熱性の低下を抑制できる。
さらに、前記感光性組成物における半導体粒子(A)の含有量が、感光性組成物の総量に対して、16質量%以上、45質量%以下であることが好ましい。半導体粒子(A)の含有量が上記の範囲内にあると、硬化膜において十分な光変換効率が得られる。
【0115】
本発明の感光性組成物の40℃における粘度は、20cP以下であることが好ましく、より好ましくは15cP以下、更に好ましくは10cP以下である。下限は特に限定されないが、2cP以上であってもよく、3cP以上であってもよく、5cP以上であってもよい。感光性組成物の粘度を上記範囲とすることにより、塗工性が向上する。特に、感光性組成物の粘度を上記範囲とすることにより、インクジェットプリンターの吐出ヘッドから、感光性組成物を円滑に吐出させることができ、インクジェットプリンター用インクとして好適に使用できる。
【0116】
インクジェットプリンター用インクとして用いる場合、本発明の感光性組成物を、温度40℃以上で、インクジェットプリンターの吐出ヘッドから吐出することができる。本発明の感光性組成物の中には、耐熱性に優れているものもあり、感光性組成物の温度を40℃以上の条件で吐出する場合であっても、得られる硬化膜の物性(特に光変換効率)は良好である。インクジェットプリンターの吐出ヘッドから吐出する際の感光性組成物の温度は、50℃以上であってもよく、60℃以上であってもよく、また、80℃以下であってもよい。
【0117】
本発明の感光性組成物は、その他の成分として、分散剤、可塑剤、充填剤等の添加剤を必要に応じて使用してもよい。
【0118】
前記分散剤としては、例えば、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性、ポリエステル系、ポリアミン系、アクリル系等の界面活性剤等が挙げられるが、これに限定されない。分散剤は、感光性組成物が光散乱剤(B)を含有している際に併用することが好ましい。感光性組成物が分散剤を含有することにより、感光性組成物における光散乱剤(B)の分散性が向上する。
【0119】
感光性組成物が分散剤を含む場合、その含有量は、感光性組成物の総量に対して、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、また、0質量%であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、0.3質量%以上であってもよい。また、粘度低減の観点から、3質量%以下であることが好ましく、より好ましくは2質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。
【0120】
また、添加剤の含有量は、感光性組成物の総量に対して、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは5質量%以下、更に好ましくは3質量%以下、特に好ましくは1質量%以下であり、また、0質量%であってもよい。
【0121】
<感光性組成物の製造方法>
本発明の感光性組成物は、半導体粒子(A)、光重合性化合物(C)、光重合開始剤(D)、及び必要に応じて使用される、光散乱剤(B)、安定化剤(E)、溶剤(F)、レベリング剤(G)、その他添加剤を混合することにより調製することができる。
【0122】
各成分の混合順序は特に限定されないが、半導体粒子(A)及び光重合性化合物(C)を混合して得られた分散液、並びに、光散乱剤(B)及び溶剤(F)を混合して得られた光散乱剤溶液を先に調製し、得られた分散液、光散乱剤溶液、及びその他成分を混合することが好ましい。
【0123】
半導体粒子(A)としての配位子含有半導体粒子は、例えば、有機配位子が配位している半導体粒子を用意又は調製し、次いで、上記半導体粒子に対する有機配位子の配位量を低減させる配位子低減処理を施したものであってもよい。配位子低減処理は、例えば、半導体粒子に配位している有機配位子を適切な溶剤に抽出させる処理であることができる。
【0124】
<硬化膜、パターニングされた硬化膜、波長変換膜及び表示装置>
感光性組成物からなる膜(層)を硬化させることによって硬化膜を得ることができる。具体的には、基材上に感光性組成物を塗布して塗布膜を形成し、得られた塗布膜を露光することにより硬化膜を得ることができる。
【0125】
基板としては、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸塩ガラス、表面をシリカコートしたソーダライムガラス等のガラス板や、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂板、シリコン、上記基板上にアルミニウム、銀、銀/銅/パラジウム合金薄膜等を形成したもの等を用いることができる。
【0126】
感光性組成物の塗布には、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、凸版印刷法、スクリーン印刷法、転写印刷法、静電印刷法、無版印刷法といった各種印刷方法や、グラビアコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、バーコート法、ディップコート法、キスコート法、スプレーコート法、ダイコート法、コンマコート法、インクジェット法、スピンコート法、スリットコート法などの方法といった塗工方法やこれらを組合せた方法を適宜用いることができる。
【0127】
露光に用いられる光源としては、250nm以上450nm以下の波長の光を発生する光源が好ましい。例えば、350nm未満の光を、この波長域をカットするフィルタを用いてカットしたり、436nm付近、408nm付近、365nm付近の光を、これらの波長域を取り出すバンドパスフィルタを用いて選択的に取り出したりしてもよい。光源としては、水銀灯、発光ダイオード、メタルハライドランプ、ハロゲンランプ等が挙げられる。
【0128】
また、フォトリソグラフ法、インクジェット法、印刷法等の方法によってパターニングすることにより、パターニングされた硬化膜を感光性組成物から形成することもできる。なお、フォトリソグラフ法では、高価な組成物材料のロスが生じてしまうため、材料のロスを減らす観点からは、インクジェット法を採用することが好ましい。
【0129】
インクジェット法によりパターニングされた硬化膜を製造する方法としては、例えば、基材上にバンクを形成した後、基材上のバンクによって区画された領域に、感光性組成物をインクジェット法により選択的に付着させ、露光することにより感光性組成物を硬化させる方法が挙げられる。
【0130】
基板としては、上記硬化膜の製造方法の説明において例示した基材を用いることができる。
【0131】
バンクを形成させる方法としては、フォトリソグラフ法及びインクジェット法等が挙げられ、インクジェット法によりバンクを形成することが好ましい。
【0132】
インクジェット法としては、エネルギー発生素子として電気熱変換体を用いたバブルジェット(登録商標)方式、或いは圧電素子を用いたピエゾジェット方式等が挙げられる。
【0133】
露光に用いられる光源としては、上記硬化膜の製造方法の説明において例示した光源を用いることができる。
【0134】
パターニングされていない硬化膜又はパターニングされた硬化膜は、LEDなどの発光部などから入射する光の波長とは異なる波長の光を出射する波長変換膜(波長変換フィルタ)として好適に用いることができる。特にパターニングされた硬化膜は、各パターンに対応するLEDなどの発光素子の上方に位置づけられていることが好ましい。各発光素子を個別に波長変換することで、赤、緑、青などの発光スペクトルの形状を適切にでき、高い色再現性をもたせることができる。波長変換膜を有する表示部材は、液晶表示装置、有機EL装置等の表示装置に好適に用いることができる。
【0135】
図1は、インクジェット法により形成された表示部材の一実施形態の模式断面図である。図1の表示部材10は、基板1上に形成されたバンク2と、バンク2間に設置されたLED等の発光素子3とを有し、バンク2間の発光素子3の上に本発明の感光性組成物をインクジェット法により付着させた後、硬化して得られた硬化膜4(波長変換膜)(以下、バンク2間のサイズにパターニングされた各硬化膜を「硬化膜ピクセル」と称する場合がある)を有する。各硬化膜ピクセル4上にはカラーフィルタ5やガスバリア層6などが位置づけられていてもよい。
【0136】
硬化膜ピクセル4をインクジェット法により形成することにより、比較的大きなサイズでのパターニングが可能となり、デジタルサイネージ等の大型ディスプレイ等に好適に適用できる。
従って、インクジェット法を採用する際には、本発明の感光性組成物から形成される硬化膜ピクセル4の垂直寸法(L1)は、9μm以上であることが好ましく、より好ましくは12μm以上、更に好ましくは15μm以上であり、40μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。なお、前記垂直寸法(L1)は、発光素子の水平寸法(L3)と同じ長さであってもよい。
また、インクジェット法を採用する際には、本発明の感光性組成物から形成される硬化膜ピクセル4の水平寸法(L2)は、10μm以上であることが好ましく、より好ましくは30μm以上、更に好ましくは50μm以上、より更に好ましくは80μm以上、特に好ましくは100μm以上であり、900μm以下であってもよく、800μm以下であってもよく、700μm以下であってもよい。
【0137】
なお、上記硬化膜ピクセル4の垂直寸法(L1)とは、基板に対して垂直方向に切り出した断面での基材厚さ方向の寸法である。なお前記断面は、硬化膜ピクセル4の垂直寸法が最大となる場所で切り出される。図1は、硬化膜ピクセル4の垂直寸法が最大となる場所で、基材に対して垂直方向に切り出した断面を示している。
上記硬化膜ピクセル4の水平寸法(L2)とは、基材に対して水平となる方向での硬化膜ピクセル4の最大寸法であり、垂直方向から基材を見たときの寸法(平面視寸法)を指す。
発光素子の水平寸法(L3)とは、基材に対して水平となる方向での発光素子の最大寸法であり、垂直方向から基材を見たときの寸法(平面視寸法)を指す。
【0138】
なお、硬化膜に上記安定化剤(E)が含まれていることは、該硬化膜を熱脱着GC/MSで分析することによって確認することが可能である。安定化剤(E)の熱脱着条件及び検出条件は、後述の実施例に記載の条件を使用することができる。硬化膜の熱脱着GC/MSを行った際に、安定化剤(E)が持つ特定の分子構造に起因したMSスペクトルが現れることをもって、硬化膜に安定化剤(E)が含まれていることを確認することができる。
【実施例
【0139】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、以下においては、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味する。
【0140】
実験例及び比較例では、以下の材料を使用した。
・量子ドット分散液1:有機配位子を含み、InP/ZnSeSの構造を有する量子ドットのトルエン分散液(発光スペクトルの最大ピーク波長530nm、半値全幅42nm)
・量子ドット分散液2:有機配位子を含み、InP/ZnSeSの構造を有する量子ドットのトルエン分散液(発光スペクトルの最大ピーク波長630nm、半値全幅42nm)
・光重合性化合物(C3-1):ペンタエリスリトールコハク酸モノエステル
・光重合性化合物(C-2):ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックス(登録商標)M-5300)
・光重合性化合物(C-3):グリセリントリアクリレート(東亞合成株式会社製 アロニックス(登録商標)MT-3547)
・光重合性化合物(C-4):イソボニルアクリレート
・光重合性化合物(C2-5):アクリル酸2-(2-ビニロキシエトキシ)エチル(株式会社日本触媒製 VEEA(登録商標))
・光重合性化合物(C1-6):エチルメタクリレート(共栄社化学株式会社製 ライトエステルE、25℃における粘度 0.7cP)
・光重合開始剤(D-1):IGM Resins社製 OMNIRAD(登録商標)907
・光重合開始剤(D-2):IGM Resins社製 OMNIRAD(登録商標)369
・安定化剤(E-1):住友化学株式会社製 スミライザー(登録商標)GP
・溶剤(F-1):プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する)
・レベリング剤(G-1):DIC株式会社製 メガファック(登録商標)F-554
【0141】
<量子ドット1の調製>
量子ドット分散液1から、減圧蒸留によりトルエンを除去することによって、量子ドット1の乾燥物を得た。
【0142】
<量子ドット2の調製>
量子ドット分散液2から、減圧蒸留によりトルエンを除去することによって、量子ドット2の乾燥物を得た。
【0143】
<光散乱剤溶液の調製>
酸化チタン粒子(体積基準のメディアン径0.23μm)60部に分散剤を10部(固形分換算)、PGMEAを合計で30部混合し、ビーズミルを用いて、酸化チタン粒子を十分に分散させた。
【0144】
実験例1>
上記量子ドット1に、表1に記載の光重合性化合物を投入し、超音波洗浄機、タッチミキサーで固形物が消失するまで撹拌することによって、量子ドットモノマー分散液を得た。得られた分散液に、表1に記載の配合となるように、光散乱剤溶液、光重合開始剤、安定化剤、レベリング剤を投入し、タッチミキサーで撹拌することによって量子ドットインクを得た。
【0145】
実験例2~14、比較例1~3>
半導体粒子、光散乱剤、光重合性化合物、光重合開始剤、安定化剤、レベリング剤、及び溶剤の、種類及び量を表1に記載の配合に変更したこと以外は、実験例1と同様の方法により量子ドットインクを得た。
【0146】
【表1】
【0147】
<評価試験>
(1)硬化性試験
5cm角のガラス基板(イーグル2000;コーニング社製)上に、量子ドットインクを、スピンコート法で塗布した後、露光機(TME-150RSK;トプコン(株)製)を用いて、大気雰囲気下、200mJ/cm2の露光量(365nm基準)で光照射した。光照射後、硬化膜が得られた場合は○、光照射後も液状であった場合は×とした。結果を表1に示す。
【0148】
(2)外部量子収率の測定
図2に記載の光学系10aを用いてIncident photon numberを評価した。光学系10aでは、445nmに最大ピーク波長を有する青色発光ダイオードを並べた基板上に、光拡散板を設置し、これをバックライト11aとした。このバックライト11aの上に、硬化膜を塗工する前のガラス基板12aを乗せ、基板表面の垂直上方に、光ファイバーを備えた電子冷却裏面入射型高S/Nファイバマルチチャンネル分光器 QE65Pro(オーシャンオプティクス株式会社製)を配置し、スペクトル測定した。基板12aの表面と分光器検出部13aの間の距離は5cmに固定した。得られたスペクトルI(λ)について式1に従ってIncident photon numberを得た。
【0149】
【数1】
【0150】
次に図3に記載の光学系10bを用いてEmittied photon numberを評価した。光学系10bでは、445nmに最大ピーク波長を有する青色発光ダイオードを並べた基板上に、光拡散板を設置し、これをバックライト11bとした。このバックライト11bの上に、上述の硬化性試験において作製した硬化膜14を有する基板12bを乗せ、基板表面の垂直上方に、光ファイバーを備えた電子冷却裏面入射型高S/Nファイバマルチチャンネル分光器 QE65Pro(オーシャンオプティクス株式会社製)を配置し、スペクトル測定した。硬化膜14の表面と分光器検出部13bの間の距離は5cmに固定した。得られたスペクトルI(λ)について式2に従ってEmitted photon numberを得た。
【0151】
【数2】
【0152】
上述のIncident photon numberおよびEmitted photon numberから、式3に従って外部量子収率を得た。外部量子収率が20%未満を×、20%以上26%未満を△、26%以上を〇とした。結果を表1に示す。
【0153】
【数3】
【0154】
(3)変換効率の測定
上述の硬化性試験において作製した硬化膜を有する基板を1cm角に切り出し、変換効率評価用サンプルを得た。変換効率評価用サンプルについて絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス製、商品名C9920-02、励起光450nm、室温、大気下)を用いて変換効率を測定した。変換効率が45%以上を〇、35%以上45%未満を△、35%未満を×とした。結果を表1に示す。
【0155】
(4)粘度の測定
BROOKFIELD社 デジタル粘度計(型式:DV2T)を用いて、40℃における量子ドットインクの粘度を測定した。量子ドットインクの粘度が14cP未満であれば◎、14cP以上16cP未満であれば〇、16cP以上20cP以下であれば△、20cPを超える場合は×とした。結果を表1に示す。
【0156】
(5)耐熱性試験
上記硬化性試験において得られた硬化膜を、80℃のオーブンにて3日間加熱した。耐熱性試験後の変換効率が、耐熱性試験前の変換効率の95%以上であればS、80%以上95%未満であればA、50%以上80%未満であればB、50%未満であればCとした。結果を表1に示す。
【0157】
(6)安定化剤の検出
熱脱着GC/MSによって、上述の硬化性試験において作製した実験例1~14の硬化膜を以下条件で分析した。
装置 :Agilent社製7890B/5977A(2号機)
カラム :DB-5(0.25mm×30m、膜厚:250mm)
キャリアガス :He、1mL/min
カラム温度 :50℃(5分)→10℃/分→320℃(8分)
検出器 :EI、m/z 20-600
注入口温度 :250℃
AuX温度 :250℃
スプリット :50:1
試料量 :300~600mg
熱脱着条件 :180℃(30分)
この時、スミライザー(登録商標)GPを同上条件で測定したときに現れる形状と同様のスペクトル形状が、実験例1~14の硬化膜で確認された。スミライザー(登録商標)GPが持つ特定の分子構造に起因したMSスペクトルが現れることをもって、実験例1~14の硬化膜からスミライザー(登録商標)GPが、上記熱脱着条件で昇華したことを確認した。
【符号の説明】
【0158】
10…表示部材
1…基板
2…バンク
3…発光素子
4…硬化膜(波長変換膜)
5…カラーフィルタ
6…ガスバリア層
L1…垂直寸法
L2…水平寸法
L3…発光素子の水平寸法
10a、10b…光学系
11a、11b…バックライト
12a、12b…基板
13a、13b…分光器検出部
14…硬化膜
図1
図2
図3