(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】麺用ほぐれ向上剤
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20241009BHJP
A23L 7/113 20160101ALI20241009BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/113
A23L7/109 C
A23L7/109 E
(21)【出願番号】P 2021550590
(86)(22)【出願日】2020-09-16
(86)【国際出願番号】 JP2020035132
(87)【国際公開番号】W WO2021065520
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2019178450
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】山縣 海
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 采香
(72)【発明者】
【氏名】石川 千弘
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 三四郎
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-211851(JP,A)
【文献】国際公開第2014/132534(WO,A1)
【文献】特許第6408732(JP,B1)
【文献】特開2000-125792(JP,A)
【文献】特開2000-083610(JP,A)
【文献】特開平06-276972(JP,A)
【文献】国際公開第2018/037759(WO,A1)
【文献】特開2008-283888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/109
A23L 7/113
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)を有効成分として含む、麺用ほぐれ向上剤
であって、麺の生地全体に対して1質量%以上16質量%以下配合して用いられる、麺用ほぐれ向上剤。
成分(A):条件(1)
~(
3)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)25℃における冷水膨潤度が5以上40以下
(3)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×10
3
以上5×10
4
以下
【請求項2】
前記成分(A)を当該麺用ほぐれ向上剤全体に対して15質量%以上100質量%以下含有する、請求項1に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項3】
前記澱粉の由来原料が、キャッサバ、とうもろこしおよびコメからなる群から選ばれる1種または2種以上である、請求項1または2に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項4】
前記成分(A)が、造粒物または前記造粒物の粉砕物である、請求項1乃至3いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項5】
前記成分(A)が、以下の条件(4)をさらに満たす、請求項1乃至
4いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
(4)目開き0.5mmの篩の篩下の画分の含有量が40質量%以上100質量%以下
【請求項6】
麺が、即席麺およびチルド麺から選ばれる1種である、請求項1乃至
5いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項7】
成分(B):アセチル化タピオカ澱粉をさらに含む、請求項1乃至
6いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項8】
前記成分(A)の含有量に対する
前記成分(B)の含有量が、質量比で0.2以上5以下である、請求項
7に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項9】
即席麺用である、請求項
7または
8に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項10】
成分(C):卵白をさらに含む、請求項1乃至
6いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項11】
前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で0.005以上0.5以下である、請求項
10に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項12】
チルド麺用である、請求項
10または
11に記載の麺用ほぐれ向上剤。
【請求項13】
請求項1乃至
12いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む、麺のほぐれ向上方法。
【請求項14】
請求項1乃至
12いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む、喫食時の麺の湯戻し時間短縮方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺用ほぐれ向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類のほぐれ性を向上しようとする技術として、特許文献1(特開2018-85959号公報)に記載のものがある。同文献には、10質量%水溶液における粘度が100mPa・s以下である加工澱粉及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する水分散液を麺の表面に付着させて、麺類のほぐれ性を改良することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、麺のほぐれ性を向上させるという点で依然として改善の余地があることが明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、以下の麺用ほぐれ向上剤、麺の製造方法、麺のほぐれ向上方法および喫食時の麺の湯戻し時間短縮方法が提供される。
[1] 以下の成分(A)を有効成分として含む、麺用ほぐれ向上剤。
成分(A):条件(1)および(2)を満たす粉粒状物
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)25℃における冷水膨潤度が5以上40以下
[2] 前記成分(A)を当該麺用ほぐれ向上剤全体に対して15質量%以上100質量%以下含有する、[1]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[3] 前記澱粉の由来原料が、キャッサバ、とうもろこしおよびコメからなる群から選ばれる1種または2種以上である、[1]または[2]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[4] 前記成分(A)が、造粒物または前記造粒物の粉砕物である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[5] 前記成分(A)が、以下の条件(3)をさらに満たす、[1]乃至[4]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
(3)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、前記低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
[6] 前記成分(A)が、以下の条件(4)をさらに満たす、[1]乃至[5]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
(4)目開き0.5mmの篩の篩下の画分の含有量が40質量%以上100質量%以下
[7] 麺が、即席麺およびチルド麺から選ばれる1種である、[1]乃至[6]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[8] 成分(B):アセチル化タピオカ澱粉をさらに含む、[1]乃至[7]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[9] 前記成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量が、質量比で0.2以上5以下である、[8]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[10] 即席麺用である、[8]または[9]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[11] 成分(C):卵白をさらに含む、[1]乃至[7]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[12] 前記成分(A)の含有量に対する前記成分(C)の含有量が、質量比で0.005以上0.5以下である、[11]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[13] チルド麺用である、[11]または[12]に記載の麺用ほぐれ向上剤。
[14] [1]乃至[13]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する工程を含む、麺の製造方法。
[15] 麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する前記工程が、前記麺用ほぐれ向上剤を前記麺の生地に配合する工程であり、
前記生地を製麺する工程をさらに含む、[14]に記載の麺の製造方法。
[16] 麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する前記工程が、前記麺用ほぐれ向上剤を前記麺の表面に添加する工程である、[14]に記載の麺の製造方法。
[17] [1]乃至[13]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む、麺のほぐれ向上方法。
[18] [1]乃至[13]いずれか1項に記載の麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む、喫食時の麺の湯戻し時間短縮方法。
【0006】
なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
たとえば、本発明によれば、前記本発明における麺の製造方法により得られる麺が提供される。
また、本発明によれば、前記本発明における麺用ほぐれ向上剤の麺の製造のための使用が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ほぐれ性に優れた麺を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、数値範囲の「~」は、断りがなければ、以上から以下を表し、両端の数値をいずれも含む。また、本実施形態において、組成物は、各成分を単独でまたは2種以上組み合わせて含むことができる。
【0009】
(麺用ほぐれ向上剤)
本実施形態において、麺用ほぐれ向上剤は、以下の成分(A)を有効成分として含む。成分(A)は、以下の条件(1)および(2)を満たす粉粒状物である。
(1)澱粉含量が75質量%以上
(2)25℃における冷水膨潤度が5以上40以下
【0010】
(成分(A))
成分(A)は、具体的には、澱粉を主成分としてなる粉粒状物である。ここで、粉粒状物とは、粉状物および粒状物のうち少なくとも一方を含むものであり、粉状物および粒状物の両方を含むものであってもよい。
【0011】
条件(1)に関し、成分(A)は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、麺用ほぐれ向上剤全体に対して澱粉を75質量%以上含み、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは85質量%以上含む。
また、成分(A)中の澱粉の含有量の上限に制限はなく、麺用ほぐれ向上剤全体に対して100質量%以下であるが、麺の性状等に応じて99.5質量%以下、99質量%以下等としてもよい。
【0012】
条件(2)に関し、麺のほぐれ性を向上させる観点から、成分(A)の冷水膨潤度は5以上であり、好ましくは6以上であり、さらに好ましくは6.5以上である。
また、同様の観点から、成分(A)の冷水膨潤度は40以下であり、好ましくは35以下、より好ましくは20以下、さらに好ましくは17以下、さらにより好ましくは13以下、よりいっそう好ましくは12以下、殊更好ましくは11以下である。
ここで、成分(A)の冷水膨潤度の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0013】
成分(A)において、澱粉は、たとえば食品用の澱粉であり、各種由来のものを用いることができる。たとえば、澱粉として、とうもろこし澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コメ澱粉などの澱粉;およびこれらの澱粉を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉などから、1種以上を適宜選ぶことができる。麺のほぐれ性を向上させる観点から、澱粉は、好ましくはタピオカ澱粉、とうもろこし澱粉、コメ澱粉から選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくは、タピオカ澱粉およびとうもろこし澱粉から選ばれる1種または2種である。
同様の観点から、澱粉の由来原料は、好ましくはキャッサバ、とうもろこしおよびコメからなる群から選ばれる1種または2種以上である。
【0014】
成分(A)は、麺のほぐれ性を向上させ、湯戻し時間を短縮する観点から、好ましくは以下の条件(3)をさらに満たす。
(3)アミロース含量5質量%以上である澱粉の低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、低分子化澱粉のピーク分子量が3×103以上5×104以下
【0015】
まず、低分子化澱粉のピーク分子量は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、好ましくは3×103以上であり、より好ましくは8×103以上である。
同様の観点から、低分子化澱粉のピーク分子量は、好ましくは5×104以下であり、より好ましくは3×104以下であり、さらに好ましくは1.5×104以下である。なお、低分子化澱粉のピーク分子量の測定方法については、実施例の項に記載する。
【0016】
また、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは12質量%以上、さらに好ましくは22質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは45質量%以上、さらにまた好ましくは55質量%以上、とりわけ好ましくは65質量%以上である。なお、低分子化澱粉の原料澱粉中のアミロース含量の上限に制限はなく、100質量%以下であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0017】
低分子化澱粉の原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉として、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ等のとうもろこし澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、ハイアミロース小麦澱粉、米澱粉、および、これらの原料を化学的、物理的または酵素的に加工した加工澱粉からなる群から選択される1種または2種以上を用いることができる。麺のほぐれ性を向上させる観点から、アミロース含量5質量%以上の澱粉は、ハイアミロースコーンスターチ、コーンスターチ、および、タピオカ澱粉から選択される1種または2種以上であり、より好ましくはハイアミロースコーンスターチである。ハイアミロースコーンスターチとしては、たとえばアミロース含量40質量%以上のものが入手可能である。アミロース含量5質量%以上の澱粉は、より好ましくはアミロース含量が40質量%以上のコーンスターチである。
【0018】
成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは8質量%以上、さらに好ましくは13質量%以上である。
同様の観点から、成分(A)中の低分子化澱粉の含有量は、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは35質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0019】
ここで、低分子化澱粉は、その製造安定性に優れる観点から、好ましくは、酸処理澱粉、酸化処理澱粉および酵素処理澱粉からなる群から選択される1種または2種以上であり、より好ましくは酸処理澱粉である。
【0020】
酸処理澱粉を得る際の酸処理の条件は問わないが、たとえば、以下のように処理することができる。
まず、原料であるアミロース含量5質量%以上の澱粉と水を反応装置に投入した後、さらに酸を投入する。あるいは水に無機酸をあらかじめ溶解させた酸水と原料の澱粉を反応装置に投入する。酸処理をより安定的におこなう観点からは、反応中の澱粉の全量が水相内に均質に分散した状態、またはスラリー化した状態にあることが望ましい。そのためには、酸処理をおこなう上での澱粉スラリーの濃度を、たとえば10質量%以上50質量%以下、好ましくは20質量%以上40質量%以下の範囲になるように調整する。スラリー濃度が高すぎると、スラリー粘度が上昇し、均一なスラリーの攪拌が難しくなる場合がある。
【0021】
酸処理に用いられる酸として、具体的には塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸が挙げられ、種類、純度などを問わず利用できる。
【0022】
酸処理反応条件については、たとえば酸処理時の無機酸濃度は、酸処理澱粉を安定的に得る観点から、0.05規定度(N)以上4N以下が好ましく、0.1N以上4N以下がより好ましく、0.2N以上3N以下がさらに好ましい。また、同様の観点から、反応温度は、30℃以上70℃以下が好ましく、35℃以上70℃以下がより好ましく、35℃以上65℃以下がさらに好ましく、反応時間は、同様の観点から、0.5時間以上120時間以下が好ましく、1時間以上72時間以下がより好ましく、1時間以上48時間以下がさらに好ましい。
【0023】
成分(A)が低分子化澱粉を含むとき、具体的には、成分(A)は低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉とを含む。成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉としては、たとえば前述した澱粉の中から選択して使用することができる。好ましくは、成分(A)中の低分子化澱粉以外の澱粉は、コーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉およびこれらの架橋澱粉からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0024】
また、成分(A)の他の好ましい例として、α化コーンスターチおよびα化ハイアミロースコーンスターチからなる群から選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0025】
成分(A)は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、好ましくは造粒物または造粒物の粉砕物である。
【0026】
また、成分(A)の粒度については、成分(A)は、舌ざわりを向上させる観点から、好ましくは以下の条件(4)をさらに満たす。
(4)目開き0.5mmの篩の篩下の画分の含有量が40質量%以上100質量%以下
【0027】
すなわち、成分(A)中の目開き0.5mmの篩の篩下の画分の含有量は、舌ざわりを向上させる観点から、成分(A)全体に対して好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上である。
同様の観点から、目開き0.5mmの篩の篩下の画分の含有量は、成分(A)全体に対してたとえば100質量%以下である。
【0028】
また、成分(A)中の目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、麺の食感を好ましいものとする観点から、成分(A)全体に対して好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上、よりいっそう好ましくは90質量%以上である。
同様の観点から、成分(A)中の目開き0.038mmの篩の篩上の画分の含有量は、成分(A)全体に対してたとえば100質量%以下であり、また、たとえば99質量%以下であってもよく、好ましくは97質量%以下であり、より好ましくは95質量%以下である。
【0029】
本実施形態において、麺用ほぐれ向上剤中の成分(A)の含有量は、麺のほぐれ性を向上させる観点から、麺用ほぐれ向上剤全体に対して好ましくは15質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上、さらにより好ましくは40質量%以上、よりいっそう好ましくは46質量%以上である。
また、麺用ほぐれ向上剤中の成分(A)の含有量の上限に制限はなく、100質量%以下であるが、たとえば99質量%以下であってもよく、食感を好ましいものとする観点から、好ましくは85質量%以下であり、より好ましくは80質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下である。
また、麺用ほぐれ向上剤は、成分(A)から構成されてもよいし、成分(A)以外の成分を含んでもよい。
【0030】
たとえば、麺用ほぐれ向上剤は好ましくは成分(B):アセチル化タピオカ澱粉をさらに含む。このとき、麺用ほぐれ向上剤は好ましくは即席麺用である。
成分(B)として、様々なアセチル基含量のものが使用可能であるが、麺のほぐれ性を向上させる観点から、加工澱粉のアセチル基含量は、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、また、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、さらにより好ましくは1.0質量%以下である。加工澱粉のアセチル基含量の測定方法は実施例の項で後述する。
【0031】
麺用ほぐれ向上剤中の成分(B)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、麺用ほぐれ向上剤全体に対して好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、よりいっそう好ましくは30質量%以上である。
また、麺のほぐれ性を向上させる観点から、成分(B)の含有量は、麺用ほぐれ向上剤全体に対してたとえば85質量%以下であり、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。
【0032】
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.5以上、さらにより好ましくは1.2以上である。
また、麺のほぐれ性を向上させる観点から、成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量は、好ましくは5以下であり、より好ましくは4以下である。
【0033】
また、麺用ほぐれ向上剤は、好ましくは成分(C):卵白をさらに含む。このとき、麺用ほぐれ向上剤は好ましくはチルド麺用である。
成分(C)として、生卵白、粉末卵白等を用いることができ、取り扱い容易性向上の観点から、粉末卵白を用いることが好ましい。
【0034】
麺用ほぐれ向上剤中の成分(C)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、麺用ほぐれ向上剤全体に対して好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは4質量%以上である。
同様の観点から、成分(C)の含有量は、麺用ほぐれ向上剤全体に対してたとえば85質量%以下であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下、さらにより好ましくは10質量%以下、よりいっそう好ましくは8質量%以下、殊更好ましくは6質量%以下である。
成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.005以上であり、より好ましくは0.01以上、さらに好ましくは0.02以上である。
同様の観点から、成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量は、質量比で好ましくは0.5以下であり、より好ましくは0.3以下、さらに好ましくは0.2以下である。
【0035】
また、麺用ほぐれ向上剤は好ましくは成分(D):グルテンをさらに含む。このとき、麺用ほぐれ向上剤は、好ましくはチルド麺用またはそば用である。
成分(D)のグルテンは、小麦、ライ麦などの穀物から得られるものであるが、好ましくは小麦由来のものである。また、グルテンとしては小麦粉から小麦タンパクを抽出して乾燥粉末にした活性グルテンが好ましい。活性グルテンとしては、たとえば、生グルテンを細かく裁断しながら気流中で乾燥させるフラッシュドライ製法で製造されたもの、生グルテンに酸やアルカリを加えてグルテン分散液を調製した後、乾熱気中に噴霧して乾燥させるスプレードライ製法で製造されたもの等が挙げられる。
【0036】
麺用ほぐれ向上剤中の成分(D)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、麺用ほぐれ向上剤全体に対して好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上である。
また、麺のほぐれ性を向上させる観点から、成分(D)の含有量は、麺用ほぐれ向上剤全体に対してたとえば85質量%以下であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。
【0037】
成分(A)の含有量に対する成分(D)の含有量は、麺の食感を向上する観点から、質量比で好ましくは0.05以上であり、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上である。
また、麺のほぐれ性を向上させる観点から、成分(A)の含有量に対する成分(D)の含有量は、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下、さらにより好ましくは1.5以下、よりいっそう好ましくは1.0以下、殊更好ましくは0.35以下である。
【0038】
麺用ほぐれ向上剤には、本発明の効果を妨げない範囲で、前述の成分(A)~(D)以外に、穀粉原料として、強力粉、準強力粉、中力粉等の各種小麦粉、そば粉、コーンフラワー、ライ麦粉、大麦粉、オーツ粉、米粉を配合してもよい。穀粉原料のうち、小麦粉の例として、上記のものの他、デュラム小麦粉が挙げられる。
また、麺用ほぐれ向上剤には、前述の澱粉以外の未加工澱粉およびこれらにエステル化、エーテル化、架橋等の加工を施した加工澱粉等を配合してもよい。また、麺用ほぐれ向上剤には、副原料として、食塩;かんすい;卵黄粉、全卵粉等の成分(C)以外の卵粉;山芋粉、抹茶、海藻粉末、野菜粉末等の素材パウダー:難消化性澱粉、コンニャク、グルコマンナン等の食物繊維;キサンタンガム、グァーガム、ローカストビーンガム、アルギン酸およびその塩、寒天、ゼラチン、ペクチン等の増粘剤;動植物油脂、乳化油脂、ショートニング等の油脂類;レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の乳化剤;炭酸塩、リン酸塩等の無機塩類;大豆蛋白質、カゼイン等の成分(D)以外の蛋白類;その他ソルビット、エチルアルコール、トランスグルタミナーゼ等の酵素剤等を配合することもできる。
【0039】
次に、麺用ほぐれ向上剤の製造方法を説明する。
麺用ほぐれ向上剤の製造方法は、たとえば成分(A)を準備する工程を含む。また、麺用ほぐれ向上剤が成分(A)以外の成分を含むとき、成分(A)と他の成分とを混合する工程をさらに含んでもよい。
【0040】
ここで、成分(A)が低分子化澱粉を含むとき、たとえば以下の工程を含む製造方法により成分(A)を得ることができる。
(低分子化澱粉の調製工程)アミロース含量5質量%以上の澱粉を低分子化処理してピーク分子量が3×103以上5×104以下の低分子化澱粉を得る工程。
(造粒工程)原料に低分子化澱粉を3質量%以上45質量%以下含み、かつ低分子化澱粉と低分子化澱粉以外の澱粉の合計が75質量%以上である、原料を加熱糊化して造粒する工程。
【0041】
低分子化澱粉の調製工程は、アミロース含量5質量%以上の澱粉を分解して低分子化澱粉とする工程である。ここでいう分解とは、澱粉の低分子化を伴う分解をいい、代表的な分解方法として酸処理や酸化処理、酵素処理による分解が挙げられる。この中でも、分解速度やコスト、分解反応の再現性の観点から、好ましくは酸処理である。
【0042】
また、造粒工程には、澱粉の造粒に使用されている一般的な方法を用いることができるが、所定の冷水膨潤度とする点で、澱粉の加熱糊化に使用されている一般的な方法を用いることが好ましい。具体的には、ドラムドライヤー、ジェットクッカー、エクストルーダー、スプレードライヤーなどの機械を使用した方法が知られているが、本実施形態において、冷水膨潤度が上述した特定の条件を満たす成分(A)をより確実に得る観点から、エクストルーダーやドラムドライヤーによる加熱糊化が好ましく、エクストルーダーがより好ましい。
エクストルーダー処理する場合は通常、澱粉を含む原料に加水して水分含量を10~60質量%程度に調整した後、たとえばバレル温度30~200℃、出口温度80~180℃、スクリュー回転数100~1,000rpm、熱処理時間5~60秒の条件で、加熱膨化させる。
【0043】
たとえば上記特定の原料を加熱糊化する工程により、冷水膨潤度が特定の条件を満たす成分(A)を得ることができる。
また、加熱糊化して得られた造粒物を、必要に応じて、粉砕し、篩い分けをし、大きさを適宜調整して、条件(4)等の前述の粒度の条件を満たす成分(A)の粒状物、粉状物またはこれらの混合物を得るとよい。
【0044】
本実施形態においては、麺用ほぐれ向上剤が有効成分として成分(A)を含むため、ほぐれ性に優れる麺を得ることができる。また、本実施形態における麺用ほぐれ向上剤を用いることにより、たとえば喫食時の麺の湯戻し時間を短縮することも可能となる。また、本実施形態によれば、たとえば麺のほぐれ性と食感とのバランスを好ましいものとすることも可能となる。
【0045】
また、本実施形態において、麺のほぐれ向上方法は、麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む。
また、本実施形態において、喫食時の麺の湯戻し時間短縮方法は、麺用ほぐれ向上剤を麺に適用することを含む。
次に、麺について説明する。
【0046】
(麺)
本実施形態の麺用ほぐれ向上剤が適用される麺類の種類としては、そば、うどん、中華麺、パスタ類、冷や麦、素麺等が挙げられ、好ましくは、そば、うどんおよび中華麺から選ばれる1種であり、より好ましくはそばおよび中華麺から選ばれる1種である。また、麺類の形態としては、生麺、乾麺(半乾燥麺を含む。)、茹で麺、蒸し麺、即席麺、茹でまたは蒸し処理された後に保存および流通の少なくとも1つが冷蔵でなされる冷蔵麺(チルド麺)のいずれでもよいが、好ましくは即席麺およびチルド麺から選ばれる1種である。
【0047】
麺は、ほぐれ性を安定的に向上する観点から、好ましくは即席麺およびチルド麺から選ばれる1種である。
同様の観点から、麺は、製麺後、加熱前または加熱後に冷凍される、冷凍麺であることも好ましく、より好ましくは冷凍パスタであり、さらに好ましくは製麺および加熱後に冷凍される冷凍パスタである。
麺の加熱方法としては、茹で、蒸し、電子レンジ加熱等が挙げられる。
また、冷凍麺の冷凍後の加熱方法としては、茹で、蒸し、電子レンジ加熱等が挙げられ、好ましくは電子レンジ加熱である。
【0048】
次に、麺の製造方法を説明する。本実施形態において、麺の製造方法は、たとえば前述した麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する工程を含む。
ここで、麺用ほぐれ向上剤を適用するタイミングに制限はなく、たとえば麺の生地の調製段階で麺用ほぐれ向上剤を適用することにより、生地中に麺用ほぐれ向上剤を練り込んでもよいし、製麺後の麺線に麺用ほぐれ向上剤を適用してもよい。
【0049】
麺の生地の調製段階で麺用ほぐれ向上剤を適用する場合、たとえば麺の製造方法において、麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する工程は、麺用ほぐれ向上剤を麺の生地に配合する工程であり、麺の製造方法は生地を製麺する工程をさらに含む。
麺用ほぐれ向上剤を麺の生地に配合する工程において、麺用ほぐれ向上剤は、生地の調製前に他の原材料と混合されていてもよいし、生地の調製後、麺用ほぐれ向上剤を生地中に練り込んでもよい。
【0050】
麺用ほぐれ向上剤を麺の生地に配合する場合の配合量は、麺のほぐれ性を向上させる観点から生地全体に対し好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。
また、麺の食感を向上する観点から、麺用ほぐれ向上剤を麺の生地に配合する場合の配合量は生地全体に対し好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは16質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下、さらにより好ましくは9質量%以下である。
【0051】
また、製麺後の麺線に麺用ほぐれ向上剤を適用する場合、たとえば麺の製造方法において、麺用ほぐれ向上剤を麺に適用する工程は、麺用ほぐれ向上剤を麺の表面に添加する工程であり、好ましくは麺の表面に付着させる工程である。
麺用ほぐれ向上剤を麺の表面に添加する方法として、たとえば、噴霧、滴下が挙げられる。また、麺用ほぐれ向上剤を麺の表面に添加した後、麺用ほぐれ剤を一様に行き渡らせるため、全体を和える操作をおこなってもよい。
【実施例】
【0052】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明の趣旨はこれらに限定されるものではない。
【0053】
原材料として、主に以下のものを使用した。
準強力粉:特ナンバーワン、日清製粉社製
強力粉:オーション、日清製粉社製
そば粉:富沢商店社製
デュラム粉:デュラムセモリナ粉、富澤商店社製
コーンスターチ:J-オイルミルズ社製、コーンスターチY
ハイアミロースコーンスターチ:J-オイルミルズ社製、HS-7、アミロース含量70質量%
粉粒状物1:製造例1で得られた粉粒状物
粉粒状物2:製造例1で得られた粉粒状物
粉粒状物3:製造例1で得られた粉粒状物
アセチル化タピオカ澱粉:製造例2で得られた澱粉
グルテン:A-グルGB、グリコ栄養食品社製
粉末卵白:サンキララRS、太陽化学社製
茹で槽用pH調整剤製剤:ニューメンソルト、扶桑化学工業社製
【0054】
(製造例1)
以下の方法で低分子化澱粉として酸処理澱粉を含む粉粒状物を製造した。
【0055】
(酸処理ハイアミロースコーンスターチの製造方法)
ハイアミロースコーンスターチを水に懸濁して35.6%(w/w)スラリーを調製し、50℃に加温した。そこへ、攪拌しながら4.25Nに調製した塩酸水溶液をスラリー質量比で1/9倍量加え反応を開始した。16時間反応後、3%NaOHで中和し、水洗、脱水、乾燥し、酸処理ハイアミロースコーンスターチを得た。
得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチのピーク分子量を以下の方法で測定したところ、ピーク分子量は1.2×104であった。
【0056】
(ピーク分子量の測定方法)
ピーク分子量の測定は、東ソー社製HPLCユニットを使用しておこなった(ポンプDP-8020、RI検出器RS-8021、脱気装置SD-8022)。
(1)試料を粉砕し、JIS-Z8801-1規格の篩で、目開き0.15mm篩下の画分を回収した。この回収画分を移動相に1mg/mLとなるように懸濁し、懸濁液を100℃3分間加熱して完全に溶解した。0.45μmろ過フィルター(ADVANTEC社製、DISMIC-25HP PTFE 0.45μm)を用いてろ過をおこない、ろ液を分析試料とした。
(2)以下の分析条件で分子量を測定した。
カラム:TSKgel α-M(7.8mmφ、30cm)(東ソー社製)2本
流速:0.5mL/min
移動相:5mM NaNO3含有90%(v/v)ジメチルスルホキシド溶液
カラム温度:40℃
分析量:0.2mL
(3)検出器データを、ソフトウェア(マルチステーションGPC-8020modelIIデータ収集ver5.70、東ソー社製)にて収集し、分子量ピークを計算した。
検量線には、分子量既知のプルラン(Shodex Standard P-82、昭和電工社製)を使用した。
【0057】
(粉粒状物の製造方法)
β澱粉(コーンスターチ)79質量%、上述の方法で得られた酸処理ハイアミロースコーンスターチ20質量%、および、炭酸カルシウム1質量%を充分に均一になるまで袋内で混合した。2軸エクストルーダー(幸和工業社製KEI-45)を用いて、混合物を加圧加熱処理した。処理条件は、以下の通りである。
原料供給:450g/分
加水:17質量%
バレル温度:原料入口から出口に向かって50℃、70℃および100℃
出口温度:100~110℃
スクリューの回転数250rpm
このようにしてエクストルーダー処理により得られた加熱糊化物を110℃にて乾燥し、水分含量を約10質量%に調整した。
【0058】
次いで、乾燥した加熱糊化物を、卓上カッター粉砕機で粉砕した後、JIS-Z8801-1規格の篩で篩分けした。篩分けした加熱糊化物を、表1に示す配合割合で混合し、粉粒状物1~3を調製した。また、各粉粒状物の冷水膨潤度を後述の方法で測定した。
【0059】
(冷水膨潤度の測定方法)
(1)試料を、水分計(研精工業社製、型番MX-50)を用いて、125℃で加熱乾燥させて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)この乾燥物質量換算で試料1gを25℃の水50mLに分散した状態にし、30分間25℃の恒温槽の中でゆるやかに撹拌した後、3000rpmで10分間遠心分離(遠心分離機:日立工機社製、日立卓上遠心機CT6E型;ローター:T4SS型スイングローター;アダプター:50TC×2Sアダプタ)し、沈殿層と上澄層に分けた。
(3)上澄層を取り除き、沈殿層質量を測定し、これをB(g)とした。
(4)沈殿層を乾固(105℃、恒量)したときの質量をC(g)とした。
(5)BをCで割った値を冷水膨潤度とした。
【0060】
【0061】
(製造例2)
以下の方法でアセチル化タピオカ澱粉を製造した。
500mLセパラブルフラスコに、タピオカ澱粉(J-オイルミルズ社製)を用い、澱粉160gにスラリー質量に対する澱粉乾物換算質量濃度が38%(dry starch weight/slurry weight)となるよう水を加えたスラリーを調製した。得られたスラリーの温度を30℃にした後、pH8.4で酢酸ビニル2.2gを加え、その後、適時水酸化ナトリウム水溶液を滴下して、反応終了までpHを設定値±0.03以内に維持し、60分間反応させた。その後、スラリーに3質量%水酸化ナトリウムを添加してpH6まで中和し、洗浄脱水したのち乾燥させ、アセチル化タピオカ澱粉を得た。後述の方法でアセチル基含量を測定したところ、得られたアセチル化タピオカ澱粉のアセチル基含量は0.5質量%であった。
【0062】
ここで、「アセチル基含量」は、以下の方法により測定した。
(1)澱粉試料を130℃で加熱乾燥させた後、水分計(研精工業社製、電磁水分計:型番MX-50)を用いて水分測定し、得られた水分値から乾燥物質量を算出した。
(2)乾燥質量換算で5gの澱粉試料に水50mLおよび数滴の1.0w/v%フェノールフタレインエタノール溶液を加えた。
(3)0.1N水酸化ナトリウム水溶液を、(2)の液の赤色が消えなくなるまで加えた後、0.45N水酸化ナトリウム水溶液8mLを加え、室温で30分間激しく撹拌した。
(4)0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値A(mL)を求めた。
(5)ブランクとして25mLの0.45N水酸化ナトリウム水溶液を同様に0.2N塩酸にて液の赤色が消失するまで滴定し、滴定値B(mL)を求めた。
(6)アセチル基含量は次式より算定した。
アセチル基含量=[(滴定値B-滴定値A)×塩酸規定度×0.43×100]÷試料質量
(上記式中、試料質量=5g、塩酸規定度=0.2Nである。)
【0063】
(実施例1~6、対照例1)
表2に記載の配合で各例の即席麺(中華麺)を製造し、評価した。評価は専門パネラー2名でおこない、合議により評点を決定した。
【0064】
(即席麺の製造方法)
各例について、表2に記載の配合であらかじめほぐれ向上剤を準備した。そして、以下の手順および条件で即席麺を製造した。
【0065】
(製麺)
以下の条件で麺を製造した。
[ミキシング]
ヌードルメーカーHR2365/01(フィリップス社製)を用いて、以下の手順でミキシングをおこなった。
1.準強力粉とほぐれ向上剤を袋内で混合し、ヌードルメーカーへ投入した。
2.水に食塩、炭酸K、炭酸Na、トリポリリン酸Naを溶解し、水溶液を得た。
3.ヌードルメーカー内の上記1.をミキシングしつつ、上記2.で得られた水溶液を1分かけてヌードルメーカーへ投入した。
4.上記水溶液投入完了後、さらに1分間ミキシングした。
5.壁面に付着した生地を落とし、さらに8分間ミキシングした。
【0066】
[圧延~切り出し]
製麺機(Terauchi Co.,LTD製)にて以下の条件でおこなった。
・複合1回
・生地休め15分
・圧延4回
・最終厚み1.0~1.4mm
・切り出し:角刃20(刃の後に続く数字は幅30mmに対して麺線が何本あるかを意味する。)
【0067】
得られた麺について、以下の手順で加熱、調味等の調理工程をおこなった。
蒸し:コンベクションオーブン(Maruzen社製、SSC-03)、スチームモード、98℃、2分
着味:着味水26gを蒸し後の麺70gに加え、麺が着味水をすべて吸水するまで和えた。着味水の配合を以下に示す。
【0068】
(着味水の配合)
成分 質量部
塩 5
グルタミン酸Na 5
クエン酸 1
水 1000
【0069】
フライ:キャノーラ油で150℃、2min
湯戻し:プラスチック容器に即席麺を入れ、熱湯を注いでフタをして、以下に記載の所定時間静置後に評価に供した。
【0070】
(評価)
(湯戻し時間)
製麺、蒸し、着味およびフライまでの各工程を前述の条件でおこなった即席麺をプラスチック容器に入れて、熱湯を即席麺が十分に浸かるように加え、フタをして湯切りした。湯切り後、湯戻し前の麺質量に対する歩留まりが200以上となる時間を以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。
3:4分0秒以上4分30秒未満
2:4分30秒以上5分0秒未満
1:5分0秒以上
【0071】
(蒸し後のほぐれ)
製麺した即席麺80gをコンベクションオーブンのスチームモード(98℃、2分)で蒸し、蒸し後の麺70gと26gの着味水を混合した。着味水吸水後の麺を手でほぐした際のほぐれ性を以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。
4:よくほぐれる
3:僅かに付着するがほぐれる
2:付着するが軽い力でほぐれる
1:付着してほぐれにくい
【0072】
(湯戻し後のほぐれ)
製麺、蒸し、着味およびフライまでの各工程を前述の条件でおこなった即席麺をプラスチック容器に入れて、熱湯を即席麺が十分に浸かるように加え、フタをして湯切りした。湯切り後5分静置したあとに箸でほぐした際のほぐれ性を以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。
4:よくほぐれる
3:僅かに付着するがほぐれる
2:付着するが軽い力でほぐれる
1:付着してほぐれにくい
【0073】
(官能評価)
製麺、蒸し、着味およびフライまでの各工程を前述の条件でおこなった即席麺をプラスチック容器に入れて、熱湯を即席麺が十分に浸かるように加え、フタをして湯切りした。湯切り後、湯戻し前の麺質量に対する歩留まりが200~205となるまで湯戻しした。湯戻しした麺の食感を基準で評価し、2点以上を合格とした。
4:良好な硬さと粘りがある
3:適度な硬さと粘りがある
2:やや硬く、やや粘りが弱いが麺としては許容範囲
1:硬く粘りが弱く、麺として不適
【0074】
【0075】
表2より、実施例で得られた即席麺は、対照例のものに比べて、湯戻し時間が短く、麺のほぐれ性に優れていた。
麺用ほぐれ向上剤中の成分(A)の含有量について、実施例2および4~6より、蒸し後のほぐれにおいては、25質量%以上100質量%以下の時優れており、75質量%以上100質量%以下の時、より優れていた。湯戻し後のほぐれにおいては25質量%以上100質量%以下の時優れており、50質量%以上100質量%以下の時、より優れていた。食感においては25質量%以上100質量%以下の時優れており、25質量%以上75質量%以下の時より優れており、25質量%以上50質量%以下の時さらに優れていた。
麺用ほぐれ向上剤中の成分(B)の含有量について、実施例4~6より、蒸し後のほぐれにおいては、25質量%以上75質量%以下の時優れており、25質量%の時、より優れていた。湯戻し後のほぐれにおいては25質量%以上75質量%以下の時優れており、25質量%以上50質量%以下の時、より優れていた。食感においては25質量%以上75質量%以下の時優れており、50質量%以上75質量%以下の時より優れていた。
成分(A)の含有量に対する成分(B)の含有量(表中の(B)/(A))について、実施例4~6より、蒸し後のほぐれにおいては、質量比で0.333以上3.000以下の時優れており、0.333の時、より優れていた。湯戻し後のほぐれにおいては0.333以上3.000以下の時優れており、0.333以上1.000以下の時、より優れていた。食感においては0.333以上3.000以下の時優れており、1.000以上3.000以下の時、より優れていた。
【0076】
(実施例7~14、対照例2)
表3に記載の配合で各例のチルド麺(そば)を製造し、評価した。評価は専門パネラー2名でおこない、合議により評点を決定した。
【0077】
(チルド麺の製造方法)
各例について、表3に記載の配合でほぐれ向上剤を準備した。かかるほぐれ向上剤を含むすべての成分を混合し、以下の条件でチルド麺を製造した。
【0078】
(製麺)
以下の条件で麺を製造した。
[ミキシング]
ヌードルメーカーHR2365/01(フィリップス社製)を用いて、以下の手順でミキシングをおこなった。
1.準強力粉とほぐれ向上剤を袋内で混合し、ヌードルメーカーへ投入した。
2.食塩水を調製した。
3.ヌードルメーカー内の上記1.をミキシングしつつ、上記2.で得られた食塩水を1分かけてヌードルメーカーへ投入した。
4.食塩水投入完了後、さらに1分ミキシングした。
5.壁面に付着した生地を落とし、さらに8分間ミキシングした。
【0079】
[圧延~切り出し]
製麺機(Terauchi Co.,LTD製)にて以下の条件でおこなった。
・複合1回
・生地休め15分
・圧延4回
・最終厚み1.0~1.4mm
・切り出し:角刃22(刃の後に続く数字は幅30mmに対して麺線が何本あるかを意味する。)
【0080】
得られたそばを以下の手順で加熱調理した。
茹で:対流状態、茹で槽用pH調整剤製剤0.10%を含む水、98℃、1.5分
冷却:水道水30秒、その後氷水30秒
水切り:10回
保管:得られたゆで後のそば30gを直径10.5cmのプラスチックカップに入れ、フタをして4℃で一晩保管した。保管後のそばのほぐれおよび食感を以下の方法で評価した。
【0081】
(評価)
(チルド保管後のほぐれ)
保管後のそばを箸で持ち上げた際のほぐれを以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。
4:よくほぐれる
3:僅かに付着するがほぐれる
2:付着するが軽い力でほぐれる
1:かなり付着しほぐれない
【0082】
(チルド保管後の官能評価)
保管後のそばの食感を以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。
4:カドがあり歯切れが良い
3:ややカドがあり歯切れが良い
2:僅かにカドがあり歯切れがやや良い
1:カドがなく歯切れが悪い
【0083】
【0084】
表3より、実施例で得られたチルド麺は、対照例のものに比べて、麺のほぐれ性と好ましい食感とのバランスに優れていた。
麺用ほぐれ向上剤を麺の生地に配合する場合の配合量は、実施例7~14より、麺のほぐれ性の観点から、生地全体に対し4.0質量%以上14.2質量%以下の時、優れており、9.4質量%以上14.2質量%以下の時、より優れていた。食感の観点からは4.0質量%以上14.2質量%以下の時、優れており、9.4質量%以上9.9質量%以下の時、より優れていた。
麺用ほぐれ向上剤中の成分(A)の含有量は、麺のほぐれ性の観点から、45.5質量%以上75.5質量%以下の時優れており、71.4質量%以上75.5質量%以下の時、より優れていた。食感の観点からは45.5質量%以上75.5質量%以下の時優れており、71.4質量%以上74.1質量%以下の時、より優れていた。
麺用ほぐれ向上剤中の成分(C)の含有量は、麺のほぐれ性の観点から、1.9質量%以上7.1質量%以下の時優れていた。食感の観点からは1.9質量%以上7.1質量%以下の時優れており、3.7質量%以上7.1質量%以下の時、より優れていた。
麺用ほぐれ向上剤中の成分(D)の含有量は、麺のほぐれ性の観点から、21.4質量%以上54.5質量%以下の時優れており、21.4質量%以上28.6質量%以下の時、より優れていた。食感の観点からは21.4質量%以上54.5質量%以下の時優れており、21.4質量%以上22.6質量%以下の時、より優れており、21.4質量%以上22.2質量%以下の時、より優れていた。
成分(A)の含有量に対する成分(C)の含有量は、麺のほぐれ性の観点から、質量比で0.025以上0.1以下の時優れていた。食感の観点からは0.025以上0.1以下の時優れており、0.05以上0.1以下の時、より優れていた。
成分(A)の含有量に対する成分(D)の含有量は、麺のほぐれ性の観点から、質量比で0.300以上1.200以下の時優れており、0.300以上0.400以下の時、より優れていた。食感の観点からは0.300以上1.200以下の時優れており、0.300の時、より優れていた。
【0085】
(麺用ほぐれ向上剤の調製例1)
成分(A)として粉粒状物3を、成分(B)として製造例2で得られたアセチル化タピオカ澱粉を用いた。粉粒状物3を40質量部、アセチル化タピオカ澱粉を40質量部、馬鈴薯澱粉(BP-200、J-オイルミルズ社製)を40質量部混合し、本例の麺用ほぐれ向上剤を得た。
【0086】
(麺用ほぐれ向上剤の調製例2)
成分(A)として粉粒状物1、成分(C)として粉末卵白、成分(D)としてグルテンを用いた。粉粒状物1を1200質量部、粉末卵白を75質量部、グルテンを350質量部、山芋粉(山芋パウダー、オタフクソース社製)を375質量部混合し、本例の麺用ほぐれ向上剤を得た。
【0087】
(麺用ほぐれ向上剤の調製例3)
成分(A)として粉粒状物2、成分(C)として粉末卵白を用いた。粉粒状物2を100質量部、粉末卵白を7質量部、強力粉を300質量部混合し、本例の麺用ほぐれ向上剤を得た。
【0088】
(実施例15、対照例3)
表4に記載の配合で各例のパスタ(生パスタのスパゲッティ)を製造し、評価した。評価は専門パネラー3名でおこない、合議により評点を決定した。
【0089】
(パスタの製造方法)
1.ヌードルメーカー(フィリップス社製、HR2365/01)のミキサーに表4に記載の成分のうち、粉原料を入れ、その後、30秒かけて液体原料を投入した。
2.合計5分ミキシングし、生地を得た。
3.2mm丸麺の製麺キャップで生地を押し出し、麺を得た。
4.製麺後のミキサー内への生地の付着状態を確認(作業性評価)した。また、得られた麺の麺同士の付着状態すなわちほぐれ性を評価した。
5.以下の条件にて麺を茹でた。得られた麺の歯切れ及び歯ごたえを官能評価した。
茹で:対流状態、茹で槽用pH調整剤製剤0.10%を含む水、98℃、3分~3分30秒
6.上記5.で得られた麺を25℃以下まで真空冷却した。
7.その後、麺を-30℃、4時間冷凍した。
8.冷凍後の麺を700Wで2分間電子レンジ加熱した。
【0090】
(評価)
(ほぐれ性)
上記4.で得られた麺を手でほぐした際のほぐれ性を以下の基準で評価し、2点以上を合格とした。評価結果を表4に示す。
4:よくほぐれる
3:僅かに付着するがほぐれる
2:付着するが軽い力でほぐれる
1:付着してほぐれにくい
【0091】
(官能評価)
上記5.における麺の歯切れおよび歯ごたえを以下の基準で評価し、3点以上を合格とした。評価結果を表4に示す。
<歯切れ>
4:とても歯切れが良い
3:やや歯切れが良い
2:あまり歯切れが良くない
1:歯切れが悪い
上記5.における麺の歯切れを以下の基準で評価し、3点以上を合格とした。評価結果を表4に示す。
<歯ごたえ>
4:とても歯ごたえがあり好ましい
3:やや歯ごたえがありやや好ましい
2:あまり歯ごたえがなく好ましくない
1:柔らかくて歯ごたえがなく全く好ましくない
【0092】
【0093】
実施例15においては、パスタのほぐれ性に優れており、また、茹で後のパスタの歯切れおよび歯ごたえに優れていた。また、上記工程4.におけるヌードルメーカー内への付着性も対照例3より抑制されており、作業性に優れていた。
【0094】
<即席麺(中華麺)の製造例>
実施例2と実施例4のうち、成分(A)として粉粒状物1の代わりにα化ハイアミロースコーンスターチ(J-オイルミルズ社製、ジェルコールAH-F、冷水膨潤度6.5)に置き換えた以外は、同じ製造方法で即席麺を得た。
【0095】
この出願は、2019年9月30日に出願された日本出願特願2019-178450号を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。