IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図1
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図2
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図3
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図4
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図5
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図6
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図7
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図8
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図9
  • 特許-プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-08
(45)【発行日】2024-10-17
(54)【発明の名称】プラズマ処理方法及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20241009BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
H01L21/302 101D
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023552550
(86)(22)【出願日】2022-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2022017754
(87)【国際公開番号】W WO2023199450
(87)【国際公開日】2023-10-19
【審査請求日】2023-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】弁理士法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アメンド アンドレ
(72)【発明者】
【氏名】桑原 謙一
(72)【発明者】
【氏名】薬師寺 守
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/161368(WO,A1)
【文献】特開2020-004710(JP,A)
【文献】特表2002-503029(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103400800(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングされる目標層に配設されるエッチングマスクを有する基板を含むウェハをプラズマ処理室内の試料台に提供することと、
前記プラズマ処理室へプロセスガスを提供して前記ウェハに関するエッチング及び蒸着を促進することと、
前記エッチングマスクの上面部分に関する目標正味エッチング速度と、前記エッチングマスクの側壁部分に関する目標正味蒸着速度とを満たすように、第1バイアス電圧周波数で前記試料台へ供給されるバイアス電圧が第1電圧値と前記第1電圧値より低い第2電圧値との間で変動される、前記ウェハに関する複合的エッチング蒸着操作を実施することと、
を有するプラズマ処理方法。
【請求項2】
前記エッチングマスクの前記上面部分に関する現在エッチング速度に基づいて、前記目標正味エッチング速度を満たすべく前記バイアス電圧の平均出力を設定すること、
を更に有する、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項3】
前記エッチングマスクの前記側壁部分に関する現在蒸着速度に基づいて、前記目標正味蒸着速度を満たすべく前記第1バイアス電圧周波数を設定すること、
を更に有する、請求項2に記載のプラズマ処理方法。
【請求項4】
前記エッチングマスクの前記側壁部分に関する前記現在蒸着速度に基づいて、前記バイアス電圧の前記第1電圧値を、前記目標正味蒸着速度を満たす最大出力値に設定することと、
前記バイアス電圧の前記第2電圧値をゼロ値に設定することと、
を更に有する、請求項3に記載のプラズマ処理方法。
【請求項5】
目標エッチング量を満たすように前記複合的エッチング蒸着操作のプロセス時間を設定すること、
を更に有する、請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
前記エッチングマスクの高さの変化速度と前記エッチングマスクの幅の変化速度とが毎分1ナノメートル以下となるように、前記目標正味エッチング速度と前記目標正味蒸着速度とを設定すること、
を更に有する、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項7】
前記プロセスガスが希釈ガスと蒸着ガスとエッチングガスとを含む、請求項1に記載のプラズマ処理方法。
【請求項8】
前記エッチングガスのガス流速度が前記蒸着ガスのガス流速度の3~15倍である、請求項7に記載のプラズマ処理方法。
【請求項9】
プラズマ処理室と、
エッチングされる目標層に配設されるエッチングマスクを有する基板を含むウェハを置く為に前記プラズマ処理室内に配置構成された試料台と、
前記プラズマ処理室へプロセスガスを提供して前記ウェハに関するエッチング及び蒸着を促進する為のガス供給装置と、
前記プラズマ処理室にプラズマを発生させて前記ウェハに関する複合的エッチング蒸着操作を実施する為の電磁波発生電源と、
前記エッチングマスクの上面部分に関する目標正味エッチング速度と、前記エッチングマスクの側壁部分に関する目標正味蒸着速度とを満たすように、前記試料台へ供給されるバイアス電圧を第1電圧値と前記第1電圧値より低い第2電圧値との間において第1バイアス電圧周波数で変動する為の制御ユニットと、
を具備するプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造産業は、装置小型化というほぼ不変の傾向を主な特徴としている。この傾向はまだ続いており、最小サイズの特徴ハーフピッチ(すなわち、半導体アレイの同一特徴間の距離の半分)は、現在、商業的に製造されている装置では20ナノメートル(nm)を下回る。高開口数を持つEUVリソグラフィなど新規のパターニング技術の導入後には、IRDSつまり装置及びシステムについての国際的ロードマップ(TM)(https://irds.ieee.org/editions/2021)によれば、2028年までにハーフピッチは8nmに達すると予想されている。加えて、装置製造において高さの大きい垂直構造をますます利用するという最近の産業傾向から、大きなエッチング深さの達成が可能であるエッチングプロセスが必要である。これらの傾向の結果、高いアスペクト比(AR)を持つ半導体構造、すなわち幅が小さく奥行が大きい半導体構造を製造できる製造プロセスが必要とされる。
【0003】
概して、目標の基板にパターンを作成するには、エッチングマスクでこれをエッチングすることが必要である。パターン完全性を確保するには、必要とされるエッチング量(EA)が基板から除去されるまで、基板エッチング中にエッチングマスクが無傷のままでなければならない。従って、このエッチングプロセス中のエッチングマスクのエッチング速度が充分に低いか、その高さが充分に大きくなければならない。大きなEAが求められる場合には、エッチングマスク自体の高さを増加させることが必要であり得る。しかしながら、最初のフォトレジストエッチングマスクの高さはフォトリソグラフィの要件により制限されるので、エッチングマスクの高さ制限を補って大きなEAを達成するには、基板よりもエッチングマスクでのエッチング速度が著しく低い(つまりエッチング選択性が高い)エッチングプロセスが必要である。
【0004】
高ARのエッチングの為には、それ自体が比較的高いARを有するハードマスク(HM)が、求められるエッチング深さを達成するのに必要とされ得る。更に、このようなHMが高いエッチング選択性を有することが必要である。シリコン(Si)をエッチングする事例では、例えば、二酸化ケイ素(SiO)又は窒化ケイ素(SiN)あるいは他の材料でハードマスクが製作され得る。背の高いHMのエッチングは困難であるので、このようなHMを製作するのに充分な高さを持つエッチングマスクを形成するには一般的に三層構造が使用される。その為、目標EAを達成する為には、追加の処理ステップを製作に必要とし得る高さの大きいエッチングマスクが必要である。
【0005】
しかしながら、エッチングマスクに関してエッチング選択性の高いHM材料を提供するエッチングプロセスを考案することにより、上に記載の高AR製作プロセスが簡素化され、故に改良され得る。エッチングマスクの有効選択性を拡張する可能性の一つは、追加の材料をこれに蒸着してその高さを増加することによるものであり、これは選択的蒸着のプロセスにより行われ得る。しかしながら、大量の材料をエッチングマスクに蒸着すると、エッチングマスクの形状を変化させ、側面蒸着、高さ及び重量の増加、その他によりこれを不安定化し得る。エッチングマスクのこのような不安定化はパターン不規則性の増大を招くか、圧潰又はピンチオフ(エッチングマスクの上方側壁がマッシュルーム形状に膨張する現象)を起こし、これはエッチング結果に負の影響を与え得る。従って、幾つかの事例では、必要なマスク高さが得られる前にエッチングマスクパターンが劣化するので、単純な蒸着は有効なエッチング選択性を高めるのに不充分である。
【0006】
上記を考慮して、所望のエッチング結果を達成する為の技術が検討されてきた。一例として、特許文献1には、「本明細書で提供されるのは、エッチングプロセスでのマスク再構成の為の方法及び関連の機器である。この方法はマスク層への犠牲層の蒸着を伴う。マスク層のエッチング又は蒸着を抑止することにより、再形成中にマスク層の幾つかの部分を保護するのに犠牲層が使用され得る。マスク再形成の後で、目標材料をエッチングするのに使用されるのと同じエッチングプロセスを使用して犠牲層が除去され得る。」と開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2020/176582号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上に記載したように、エッチングを通して背の高いマスクを製作することから生じるプロセス全体の複雑性を低下させる為に、エッチングマスクの高さを増大するのにマスク蒸着が使用され得るが、これはマスク形状に影響して望ましくないエッチング結果につながり得る。蒸着により生じるエッチングマスクの劣化を回避する為に、特許文献1は、マスクの高さ及び形状が復元され得るマスク再形成プロセスに続く基板エッチング及びマスク蒸着のシーケンスを提案している。このプロセスは、別々のプロセスステップにおけるエッチングマスクの上部への犠牲層の選択的蒸着とマスク突出部のエッチングと犠牲層の除去とを伴う。特許文献1によれば、20nmより大きいかこれと等しいパターン特徴サイズの為にマスクを再形成及び修復するのに記載の技術を使用することが可能である。しかしながら、特許文献1に記載されている技術はマスク安定性とパターン完全性とに依存し、これらはパターンサイズが減少するにつれて制御がより困難になる。その為、特許文献1に記載されている技術は、小さいパターンサイズについての有効性が制限されている。
【0009】
近年、20nm未満の特徴サイズ小型化は、蒸着によりマスクパターンへ導入される割れ目のリスクを高めている。例として、このような割れ目は、壁部蒸着によりパターン空間がピンチオフした後に、蒸着したマスク壁部の傾動及び圧潰とマスクパターンの埋没とを含み得る。従って、マスク特徴の体積と比較すると蒸着量が比較的大きい直接蒸着プロセスがあまり有益ではなくなり、小さいパターンサイズについては有用性が制限される。更に、上に記載された一以上の割れ目が発生する事例では、特許文献1に記載された技術を使用してもマスクパターンが修復され得ない。
【0010】
蒸着プロセスの持続時間を短縮すると、エッチングマスクに同時的に存在する蒸着量が減少することでマスク不安定性のリスクを下げるので、この短縮によりパターン劣化を回避することが可能である。エッチング選択性を最大化する為には、後で蒸着量の増加を必要としないように蒸着プロセス持続時間の短縮に応じてエッチングプロセス持続時間を短縮することが望ましい。その為、蒸着及びエッチングプロセスの持続時間の短縮を補うには、必要なEAを達成する為に付加的な蒸着及びエッチングサイクルが追加されなければならない。
【0011】
しかしながら、パターン小型化が進むにつれて、マスクパターンを保持する蒸着プロセスの為の持続時間閾値が減少し、こうして所望のEAを達成するのに必要な別々のプロセスステップの数の増加を招く。こうして単純な蒸着ステップに依存する技術は小さいパターンについてはますます非実用的になるが、それは、プロセスガス交換(すなわちエッチングガスと蒸着ガスとを切り替えるプロセス)により各ステップ変化が測定不能な時間遅延を導入するからである。従って、プロセス時間を劇的に増加せずに小さいパターンサイズでの蒸着を使用する為には、それ故、蒸着中にマスク形状を制御することによりマスクパターンを安定化させることが必要である。高精度のマスク蒸着を実施することにより、20nm未満の小さいパターンでも目標材料エッチングプロセスに関する有効なエッチングマスク選択性を高めることで高品質の結果の達成が可能になる。
【0012】
従って、上に記載の問題を考慮すると、基板をエッチングしている間にエッチングマスク形状を制御することで高いエッチングマスク選択性を達成するとともに、小さいマスクサイズ(例えば20nm未満)についてのマスクパターンの安定化を促進する為のプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することが、本開示の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一つの代表例は、エッチングされる目標層に配設されたエッチングマスクを有する基板を含むウェハをプラズマ処理室内の試料台に提供することと、プラズマ処理室へプロセスガスを提供してウェハに関するエッチング及び蒸着を促進することと、エッチングマスクの上面部分に関する目標正味エッチング速度と、エッチングマスクの側壁部分に関する目標正味蒸着速度とを満たすように、第1バイアス電圧周波数で試料台へ供給されるバイアス電圧が第1電圧値と第1電圧値より低い第2電圧値との間で変動されるウェハに関する複合的エッチング蒸着操作を実施することとを含むプラズマ処理方法に関する。
【発明の効果】
【0014】
本開示の実施形態によれば、基板をエッチングしている間にエッチングマスク形状を制御することで、高いエッチングマスク選択性を達成するとともに小さい特徴サイズ(例えば20nm未満)についてマスクパターンの安定化を促進する為のプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することが可能である。
【0015】
上に記載されたもの以外の問題、構成、及び効果は、発明を実行する為の実施形態についての以下の記載により、明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本開示の実施形態によるプラズマ処理装置のハードウェア構成を示す図である。
図2】本開示の実施形態による2サイクル中の無線周波数バイアス電圧の概略を示すグラフである。
図3】マスク材料としてスピンオンカーボン(SOC)層が使用される事例における本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のフローを示す図である。
図4】100Hzのバイアス電圧周波数での多様な平均バイアス電圧出力におけるArFフォトレジストブランケットウェハに対する本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のエッチング速度を示すグラフである。
図5】100Hzのバイアス電圧周波数での多様な平均バイアス電圧出力におけるSOCエッチングマスクの上部に対する本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のエッチング速度を示すグラフである。
図6】200Wのバイアス電圧出力及び20%のデューティ比における多様なバイアス電圧周波数におけるSOCエッチングマスクの壁部に対する側面蒸着速度を示すグラフである。
図7】多様なバイアス電圧周波数についてのバイアス電圧オフ段階(白色背景)及びバイアス電圧オン段階(陰影背景)におけるエッチングマスクでの蒸着速度を示す一連のグラフを示す図である。
図8】100Hzのバイアス電圧周波数での多様な最大バイアス電圧出力におけるSOCエッチングマスクの側面蒸着速度を示すグラフである。
図9】プロセス時間に関する目標材料SiO及びSOCエッチングマスクの平均エッチング量のグラフであり、プロセスバイアス電圧出力は229W、デューティ比は14%、周波数は100Hzであった。
図10】本開示の実施形態によるパラメータ調節プロセスのフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、図を参照して本発明の実施形態が記載される。本明細書に記載される実施形態では請求項により発明を制限する意図はないことが留意されるべきであり、実施形態に関して記載された要素及びその組み合わせの各々は本発明の態様を具現するのに厳密には必要ではないことが理解されるはずである。
【0018】
以下の記載及び関係の図面には様々な態様が開示されている。開示の範囲から逸脱することなく代替的な態様が考案されてもよい。付加的に、関連する開示の詳細を曖昧にしないように、開示の周知の要素が詳細には記載されないか省略される。
【0019】
「例示的(exemplary)」及び/又は「例(example)」という単語は、本明細書において「例、実例、又は例示として作用する」を意味するのに使用される。「例示的」及び/又は「例」として本明細書に記載されるいかなる態様も、必ずしも他の態様よりも好適又は有利であると解釈されるものではない。同じく、「開示の態様(aspects of the disclosure)」の語は、開示の全ての態様が考察される特徴、利点、又は操作モードを含むことを必要としていない。
【0020】
更に、例えばコンピューティング装置の要素により実施される動作について多くの態様が記載されている。本明細書に記載される様々な動作が、特定の回路(例えば特定用途向け集積回路(ASIC))により、一以上のプロセッサにより実行されるプログラム命令により、あるいは両方の組み合わせにより実施され得る。付加的に、本明細書に記載される動作シーケンスは、実行時に本明細書に記載された機能性を関連のプロセッサに実施させる対応のコンピュータ命令集合が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体の形態で全体が具体化されると考えられ得る。故に、本開示の様々な態様は幾つかの異なる形態で具体化され、その全てが請求項に記載の主題の範囲内にあることが想定されている。
【0021】
本明細書に記載のように、従来のエッチング技術は、小さい特徴サイズについてのマスクパターン安定性の維持に関する課題に直面している。従って、本開示の態様は、同じプロセスステップ(例えば複合的エッチング蒸着操作)の中でエッチング及び蒸着を実施することが可能なプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置に関する。エッチング及び蒸着段階の持続時間及び周波数を変化させる周期的バイアス信号は、プロセス中にエッチングマスクの高さ及び幅を制御するように調整され、一方で蒸着速度が低い基板は継続的にエッチングされ得る。
【0022】
本開示の実施形態によれば、基板をエッチングしている間にエッチングマスク形状を制御することで高いエッチングマスク選択性を達成するとともに小さい特徴サイズ(例えば20nm未満)についてのマスクパターンの安定化を促進する為のプラズマ処理方法及びプラズマ処理装置を提供することが可能である。マスク形状のこのような制御は、正、負、又はゼロの高さ変化量を設定することと、正又は充分に少量の幅変化を設定することとを含み得る。本開示の実施形態の詳細な説明は以下に記載される。
【0023】
本開示の実施形態において、基板エッチングプロセス中のエッチングマスクの形状及びエッチング選択性は、プラズマとエッチングされる基板との間に印加されるバイアス電圧と、エッチング及び蒸着段階のタイミングとを制御することにより管理される。
【0024】
概して、蒸着を実施するのに使用されるガス(以下、「蒸着ガス」と呼ばれる)は、その材料特性ゆえに、そして基板がエッチングマスクにより部分的に遮蔽されているので、エッチングマスクに優先的に蒸着する。更に、エッチングマスクの上面及び側壁のエッチング及び蒸着速度の微細制御を実施することにより、エッチングマスクの高さ及び幅の変化が軽減され得る。その結果、マスクパターンに露出される基板がエッチングされているプラズマ処理操作の間にわたって、エッチングマスクにより形成されるパターンは安定したままである。言い方を変えると、基板においてエッチング速度ではなく蒸着速度を低く保ちながらエッチングマスクでのエッチングと蒸着とのバランスを維持することにより、無限のエッチング選択性が効果的に達成され、小さい特徴サイズについてもエッチングマスクの完全性が保持され得る。
【0025】
さて図に目を向けて、本開示の実施形態によるプラズマ処理装置のハードウェア構成が図1を参照して記載される。
【0026】
図1は、本開示の実施形態によるプラズマ処理装置100のハードウェア構成を示す図である。プラズマ処理装置100は、本開示の実施形態によるプラズマ処理操作を実施するのに使用される機器であり、例として、電子共鳴(ECR)マイクロ波プラズマエッチング装置を含み得るが、本開示はこれに限定されない。
【0027】
図1に示されているように、プラズマ処理装置100では、真空容器101へプロセスガスを供給する為のシャワープレート102と、誘電体窓103とが、真空容器101の上方部分に設置されている。実施形態において、シャワープレート102と誘電体窓103とは例えば石英で形成され得る。上方部分と接続された真空容器101とが密閉されてプラズマ処理室104を形成する。プロセスガスのフローを提供する為のガス供給装置105が、シャワープレート102に接続されている。ここでプロセスガスは、希釈ガスとエッチングガスと蒸着ガスとの混合物を含み得る。
【0028】
更に、排気オンオフバルブ117と排気速度可変バルブ118とを介して真空排気装置106が真空容器101に接続されている。プラズマ処理室104の内側は、排気オンオフバルブ117を開放して真空排気装置106を駆動することにより減圧され、圧力が大気圧から低下した真空状態となる。排気速度可変バルブ118を使用することにより、プラズマ処理室104の圧力が所望の圧力に調節される。
【0029】
プロセスガスは、シャワープレート102を介してガス供給装置105からプラズマ処理室104へ供給され、排気速度可変バルブ118を介して真空排気装置106により排出される。試料台として作用する試料載置電極111は、シャワープレート102に対向するように真空容器101の下方部分に設けられる。
【0030】
プラズマを発生させる為の無線周波数出力信号(第1無線周波数出力信号)をプラズマ処理室104に供給する為に、電磁波を伝達するように構成されている導波管107が、誘電体窓103の上方に設けられる。導波管107へ伝達される電磁波は、マイクロ波電源である電磁波発生電源109から整合ユニット119を介して発振される。パルス発生ユニット121が電磁波発生電源109に装着され、こうしてマイクロ波は設定された繰り返し周波数でパルス変調され得る。電磁波の周波数は特に制限されず、本実施形態では2.45GHzのマイクロ波が使用される。
【0031】
プラズマ処理室104の外側には、磁場を発生させる磁場発生コイル110が設けられる。この磁場発生コイル110により発生された磁場との相互作用により、電磁波発生電源109から発振された電磁波がプラズマ処理室104に高密度プラズマを発生させ、試料載置電極111に配設されたウェハ112でエッチング及び蒸着が実施され得る。
【0032】
シャワープレート102と試料載置電極111と磁場発生コイル110と排気オンオフバルブ117と排気速度可変バルブ118とウェハ112とは、プラズマ処理室104の中心軸に関して同軸に配設され、それ故、プロセスガス、プラズマにより発生される塩基及びイオン、そしてエッチングにより発生される反応生成物は、ウェハ112へ同軸に供給されて排出される。この同軸の配置構成により、ウェハ112の平面でのエッチング速度及びエッチング形状の均一性はほぼ軸対称であり、ウェハ処理の均一性が高められ得る。
【0033】
試料載置電極111は、その電極表面において噴霧膜(不図示)でコーティングされ、無線周波数フィルタ115を介してDC電源116に接続されている。更に、無線周波数バイアス電源114は整合回路113を介して試料載置電極111に接続されている。無線周波数バイアス電源114はパルス発生ユニット121に接続され、時間変調による無線周波数出力信号(第2無線周波数出力信号)を試料載置電極111へ選択的に供給できる。無線周波数バイアスの周波数は特に制限されず、本実施形態では、400kHzの無線周波数バイアスが使用される。
【0034】
上述したプラズマ処理装置100を制御する制御ユニット120は、繰り返し周波数、あるいは電磁波発生電源109と無線周波数バイアス電源114とパルス発生ユニット121とのパルスのオン/オフタイミングを含むデューティ比とともに、エッチングを実施する為のガス流速度、処理圧力、マイクロ波出力、無線周波数バイアス出力、コイル電流、パルスオン時間、パルスオフ時間などのエッチングパラメータを制御する。実施形態において、制御ユニット120により実施される制御操作は、プラズマ処理装置100に接続された入力ユニット(不図示)を介して受理されるユーザ入力に基づいて実施され得る。
【0035】
制御ユニット120により制御されるデューティ比は、パルスのオン周期と全周期との比である。本実施形態において、パルスの繰り返し周波数は10Hzから2kHzまで変化し、デューティ比は2%から90%まで変化し得る。更に、時間変調の設定はオン周期又はオフ周期であり得る。
【0036】
次に、無線周波数バイアス電圧の一例が図2を参照して記載される。
【0037】
図2は、本開示の実施形態による2回のサイクルでの無線周波数バイアス電圧の概略を示すグラフである。サイクル持続時間はバイアス電圧周波数の逆数である。ここで、バイアス電圧デューティ比は25%であり、故にオン段階は各サイクルの持続時間の4分の1にわたって持続する一方で、残りはオフ段階である。無線周波数バイアス電圧について、オン段階中に電圧を発生させる出力は最大バイアス電圧出力と呼ばれ、最大出力にデューティ比を掛けたものは平均バイアス電圧出力と呼ばれる。図2の例で、平均バイアス電圧出力は、最大バイアス電圧出力の4分の1である。
【0038】
次に、上に記載されたプラズマ処理装置100が、本開示によるプラズマ処理操作を実施するのに使用される実施形態が図3乃至図9を参照して記載される。本開示で、「プラズマ処理操作」は、ウェハに関して複合的エッチング蒸着操作が実施される操作を指す。より詳しく記すと、希釈ガスとエッチングガスと蒸着ガスとの混合物である処理ガスがプラズマ処理装置100のプラズマ処理室へ供給され、試料台へ供給されるバイアス電圧を高い値と低い値との間で交互させることにより、エッチングプロセス及び蒸着プロセスの効果が交互段階で支配的になる。従って、バイアス電圧とともに他のエッチングパラメータを適切に調節することにより、エッチング速度及び蒸着速度が高い精度で制御されて、エッチングマスクの高さ及び幅を所望の範囲内に維持できる。
【0039】
以下の記載は、下の表1に挙げられているように、所定のガス圧、マイクロ波電源出力、無線周波数バイアス電圧源出力、周波数、そしてデューティ比の条件下で、アルゴン(Ar)と四フッ化炭素(CF)とメタン(CH)ガスとを含有する混合ガスを使用してエッチングが実施された一例を参照して行われる。しかしながら、この例は例示の為に挙げられたに過ぎず、本発明の実施形態は以下の条件に限定されず、必要に応じて変更され得ることが留意されるべきである。例えば、エッチングガスのガス流速度が蒸着ガスのガス流速度の3~15倍である事例では、好ましい結果が得られる。
【表1】
【0040】
図3は、本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のフローを示す図である。図3は、エッチング前状態310とエッチング中状態320とエッチング後状態330とを示す図を含む。本開示によるプラズマ処理操作は、図3に示されている矢印の方向に、エッチング前状態310からエッチング中状態320へ、そして最後にエッチング後状態330へ進む。
【0041】
図3のエッチング前状態310に示されているように、例として、エッチング材料202とエッチングマスク203とがそれぞれ配置構成されている基板201を具備するウェハ200が、図1に示されているプラズマ処理装置100の真空容器101の下方部分で試料載置電極111に配設される。ここで、この例では、基板201がシリコン(Si)で形成され、エッチング材料202が二酸化ケイ素(SiO)で形成され、エッチングマスクがスピンオンカーボン(SOC)層である構成が、一例として記載されるが、本実施形態はこれに限定されない。プラズマ処理操作の完了後に、試料を割って走査電子顕微鏡(SEM)でこれを観察することにより、エッチング材料202とエッチングマスク203とのエッチング速度が評価され得る。
【0042】
エッチング中状態320では、或る最大出力とデューティ比と周波数とを持つ無線周波数バイアス電圧(以下、「バイアス電圧」と呼ばれる)がウェハ200に印加される。ここで、バイアス電圧は高い値(第1電圧値)と低い値(第2電圧値)との間で周期的に変動される。バイアス電圧が高い値(例えば最大バイアス電圧値)で印加される段階では、ガスプラズマからの加速イオン204がエッチングマスク203及びエッチング材料202に向かって加速されることでエッチングが発生する。対照的に、バイアス電圧が低い値(例えば0など最小値)で印加される段階では、蒸着が発生する。ここで、エッチングマスク203の材料特性ゆえに、そして基板201がエッチングマスク203により部分的に遮蔽されているので、蒸着ガスはエッチングマスク203に優先的に蒸着し、こうして基板201よりもエッチングマスク203で大量の蒸着が行われて、薄い蒸着層205が作成される。
【0043】
平均出力、最大出力、周波数、及びデューティ比などバイアス電圧のパラメータ(以下、「エッチングパラメータ」と呼ばれる)は、エッチングマスク203での蒸着及びエッチングプロセスを制御するのに使用され得る。本開示の実施形態によるプラズマ処理操作では、エッチングプロセスと蒸着プロセスとが互いの効果をほぼ相殺するので、多くのバイアス電圧パルスの後で発生するエッチングマスク203の形状変化量が減少するように、これらのエッチングパラメータが設定される。こうして、所定のエッチングパラメータにより高低の値の間でバイアス電圧を交互させることにより、エッチングマスク203での蒸着及びエッチング段階の効果が制御されて、エッチングマスク203よりもエッチング材料202について大きな正味エッチング速度が得られ、エッチングマスク203の高さ及び幅を所望の範囲内に維持できる。その結果、プラズマ処理操作を通してエッチングマスク203の高さ及び幅が事実上は無変化のままとなる。
【0044】
更に、エッチングと蒸着の両方のガスがプラズマ処理室に存在する複合的エッチング蒸着操作でエッチング及び蒸着プロセスが実施されるので、エッチング及び蒸着ガスの間でのプロセスガス交換を実施することが不要となる。その結果、このプロセスガス交換から生じる時間遅延が回避されるので、迅速かつ効率的なやり方でプラズマ処理操作が実施され得る。
【0045】
図4は、100Hzのバイアス電圧周波数での多様な平均バイアス電圧出力におけるArF(フッ化アルゴン)フォトレジストブランケットウェハに対する本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のエッチング速度を示すグラフである。図4は、最大バイアス電圧出力とそのデューティ比との積である平均バイアス電圧出力と炭素系材料のエッチング速度との間の関係を示している。図4には広範囲の平均バイアス電圧出力が示されており、特徴を備えていないArFフォトレジスト層からの結果が記されている。より詳しく記すと、図4は、バイアス電圧が周期的にオフ(つまり平均出力が0W)になるとともに周期的にオン(平均出力が400W)になる事例から得られた結果を含む。図4に示されているように、ウェハの正味エッチング速度は、或る平均バイアス電圧出力でゼロに達する。この例における事例では、正味エッチング速度がゼロに達する平均バイアス電圧出力は32Wであることが分かった。
【0046】
図5は、100Hzのバイアス電圧周波数の多様な平均バイアス電圧出力におけるSOCエッチングマスクの上部に対する本開示の実施形態によるプラズマ処理操作のエッチング速度を示すグラフである。図5は、狭い範囲の平均バイアス電圧出力値を示しており、線形及び空間パターンのSOCマスクの上部でのエッチング速度が記されている。
【0047】
概して、(図3に示されているもののように)上面部分と側壁部分の両方を備えるエッチングマスクについて、バイアス電圧によるエッチング速度は、加速イオンの移動経路内に完全に位置する上面部分において最大である。バイアス電圧の平均出力を調節することにより、エッチングマスクの上面部分でのエッチング速度はバイアス電圧の平均出力に強い影響を受けるので、上面部分でのエッチング速度が所望の値に変更され得る。図5において、エッチング速度がゼロに近づく点では、平均バイアス電圧出力を微調整することによりエッチング速度(例えば毎分1nm以内)に対して高度の制御を達成することが可能である。
【0048】
上に記載された図4及び図5において、正味エッチング速度がゼロであることは、エッチングマスクに対するエッチング及び蒸着プロセスの効果が互いに相殺されるので、エッチングプロセスによりエッチングマスクからエッチングされる材料の量は蒸着プロセスによりエッチングマスクに蒸着される材料の量に実質的に等しいことを表している。従って、平均バイアス電圧出力を適切な値に設定することにより、エッチングマスクの上面部分で実質的にゼロの正味エッチング速度を達成することにより高さを一定の値に維持することが可能である。
【0049】
本明細書に記載されるように、平均バイアス電圧出力を適切な値に設定することによりエッチングマスクの高さを維持することが可能である。しかしながら、パターン完全性を確保する為には、エッチングマスクの高さを維持することに加えて、エッチングマスクの側壁部分でのエッチング速度を制御することが同じく望ましい。従って、エッチングマスクにおける側壁蒸着速度(例えば第2エッチング速度)の間の関係が、図6を参照して記載される。
【0050】
図6は、200Wのバイアス電圧出力及び20%のデューティ比での多様なバイアス電圧周波数におけるSOCエッチングマスクの壁への側面蒸着速度を示すグラフである。バイアス電圧周波数を調節することにより、(蒸着及びエッチング段階の持続時間を含む)バイアス電圧サイクルの持続時間を変更し、こうしてエッチングマスクでの側壁蒸着速度を制御することが可能である。
【0051】
エッチングマスクの側壁蒸着速度とバイアス電圧周波数との間の関係に関する本発明の発明者らの研究の結果として、三つの周波数レジームが特定された。図6に示されているように、これらは、バイアス電圧周波数の上昇に伴ってエッチングマスクの側壁蒸着速度が低下するレジームX610と、エッチングマスクの側壁蒸着速度の最大値に達するレジームY620と、バイアス電圧周波数の上昇に伴って側壁蒸着が増加するレジームZ630とを含む。周波数レジームの各々の詳細は図7に関して記載される。
【0052】
図7は、多様なバイアス電圧周波数についてのバイアス電圧オフ段階(白色背景)とバイアス電圧オン段階(陰影背景)とにおけるエッチングマスクへの側壁蒸着速度を示す一連のグラフを示す概略図である。より詳しく記すと、グラフ710は、レジームX610に対応するバイアス電圧周波数についてのプロセス時間に関する側壁蒸着速度を示し、グラフ720は、レジームY620に対応するバイアス電圧周波数についてのプロセス時間に関する側壁蒸着速度を示し、グラフ730は、レジームZ630に対応するバイアス電圧周波数についてのプロセス時間に関する側壁蒸着速度を示す。
【0053】
グラフ710に示されているように、蒸着段階の最初には、蒸着速度が低く、エッチングマスクの材料特性に依存する或る定温放置時間の後に初めて急速に上昇する。その後、エッチング段階において、エッチングマスクの材料特性とバイアス電圧によりエッチングマスクに達するイオンとに依存する或る脱着時間にわたって蒸着材料が除去される。エッチング段階でエッチングマスクの表面から蒸着材料が充分に脱着された場合には、次の蒸着段階の開始時に等しい定温放置時間が存在するだろう。グラフ710に示されているレジームXでは蒸着とエッチングの両方の段階の持続時間が蒸着定温放置及び脱着の時間よりそれぞれ長いことが留意されるべきである。こうして、バイアス電圧周波数を上昇させることにより、定温放置時間全体が増加し、故に平均蒸着速度が低下する。
【0054】
グラフ720に示されているレジームYの事例では、蒸着段階の大半又は全てにおいて蒸着速度がその飽和値にまだ達していないので、レジームXと比較して平均蒸着を減少させるのに充分なほどバイアス電圧周波数が上昇した。しかしながら、レジームYでは、脱着時間がエッチング段階より短くなるのに充分なほどバイアス電圧周波数が低い。
【0055】
グラフ730のレジームZに示されているように、バイアス電圧周波数が上昇した場合に、エッチング段階は脱着時間より短くなる。レジームZでは、蒸着段階の開始時に前のサイクルからの表面蒸着が残り、故に定温放置時間が短縮される。それ故、このレジームでの周波数の上昇は結果的に平均蒸着速度の上昇を招く。
【0056】
上に記載のバイアス周波数レジームの傾向により示されるように、エッチングマスクの側壁蒸着速度は特定のバイアス周波数で最小に達する。平均バイアス電圧出力は主にエッチングマスクの上部のエッチング速度に影響するので、平均バイアス電圧出力を必要に応じて調節することによりエッチングマスクの上部でのエッチング速度を制御して、バイアス電圧周波数を調節することによりエッチングマスクの側壁でのエッチング速度を制御することが可能である。例として、エッチングマスクの高さ及び幅の変化を最小化することが望ましい事例では、実質的にゼロであるエッチングマスク上部での正味エッチング速度を達成する平均バイアス電圧(例えば図4に示されているように32W)と、エッチングマスクの側壁で最低蒸着速度を達成するバイアス電圧周波数(例えば図6に示されているようにおよそ200Hz)とが使用され得る。
【0057】
更に、図7を参照して上に記載されたバイアス電圧周波数と側壁蒸着速度との間の関係に加えて、最大バイアス電圧出力とエッチングマスクの側壁蒸着速度との間の関係が存在することが本発明の発明者らにより発見された。最大バイアス電圧出力とエッチングマスクの側壁蒸着速度との間の関係が、図8を参照して更に記載される。
【0058】
図8は、二つの異なる平均バイアス電圧出力について100Hzのバイアス電圧周波数での多様な最大バイアス電圧出力におけるSOCエッチングマスクの側面蒸着速度を示すグラフである。ここで参照される最大バイアス電圧出力が、最大バイアス電圧出力とデューティ比との積である平均バイアス電圧出力とは異なっていることが留意されるべきである。従って、44W及び48Wという二つの異なる平均バイアス電圧についてのデータ点を収集するように最大バイアス電圧出力が増大されたので、デューティ比が必要に応じて変更された。
【0059】
図8に示されているように、最大バイアス電圧出力の変化はマスク壁部への蒸着量を変化させる。より詳しく記すと、最大バイアス電圧出力が大きくなると、大きな運動エネルギーを持つガスプラズマの個々のイオンが生じ、その結果、高いエッチング速度と低い有効側壁蒸着速度とが得られる。エッチングマスクの側面蒸着は平均バイアス電圧出力よりも最大バイアス電圧出力に影響されやすいので、最大バイアス電圧出力はエッチングマスクの上面でのエッチング量に影響するが、エッチングマスクの側壁蒸着速度の追加制御を行なうには最大バイアス電圧出力が使用され得る。例えば、エッチングマスクの側面蒸着速度を低下させるように最大バイアス電圧が上げられ得る。
【0060】
図9は、エッチングマスクの形状を安定化させるように上に記載された関係に従ってエッチングパラメータが調節されたプラズマ処理操作におけるSiOエッチング材料及びSOCエッチングマスクの平均エッチング量のグラフである。より詳しく記すと、図9は、プロセスバイアス電圧出力が229Wに設定され、デューティ比が14%に設定され、バイアス電圧周波数が100Hzに設定されたプラズマ処理操作におけるSiOエッチング材料及びSOCエッチングマスクの平均エッチング量を示す。
【0061】
図9に示されているように、エッチングマスク層の下方でのSiOエッチング材料のエッチングはプラズマ処理プロセスを通して線形に進むのに対して、エッチングマスクの上面でのエッチング速度はほぼゼロに維持される。その結果、エッチングマスクの高さが、プラズマ処理操作にわたって所望の範囲に維持されて非常に高いエッチング選択性をもたらし得る(この事例では80を超えるエッチング選択性が達成された)。
【0062】
図10は、本開示の実施形態によるパラメータ調節プロセス1000のフローを示すフローチャートである。図10のフローチャートでは、エッチングパラメータ調節プロセス1000が三つの工程にまとめられており、平均バイアス電圧出力が0Wに設定された時にエッチングマスク材料で蒸着が行われるようにエッチングパラメータが設定され、平均バイアス電圧出力が充分高い値に設定される時に正味エッチングが発生する。
【0063】
第1工程S1010では、エッチングマスクの上面での目標正味エッチング速度が満たされるように平均バイアス電圧出力が設定される。ここで、目標正味エッチング速度とは、エッチングマスクの最初の高さを参照して、エッチングマスクの上面からエッチングされる所望の材料量を時間に関して言及するものである。目標正味エッチング速度は特定の目標値(例えば0nm/分)、閾値(例えば1nm/分未満)、又は目標範囲(例えば、-1nm/分と1nm/分の間)として表現され得る。
【0064】
実施形態では、プラズマ処理操作が既に開始されていると、エッチングマスクの上面での現在エッチング速度とエッチングマスクの上面での目標正味エッチング速度とに基づいて平均バイアス電圧出力が設定され得る。例として、平均バイアス電圧出力が増加するとエッチングマスクの上面でのエッチング速度が上昇し、減少するとエッチングマスクの上面でのエッチング速度が低下し得る。図4に示されているグラフで図示されているように、エッチングマスクの上面でのエッチング速度が平均バイアス出力とともに単調に増加するので、これが起こり得る。
【0065】
次に、第2工程S1020では、エッチングマスクの側壁での目標正味蒸着速度が満たされるようにバイアス電圧周波数と最大バイアス電圧出力とが設定される。ここで、目標正味蒸着速度とは、エッチングマスクの最初の幅を参照して、エッチングマスクの側壁に蒸着される所望の材料量を時間に関して言及するものである。目標正味蒸着速度は、特定の目標値(例えば0nm/分)、閾値(例えば、1nm/分未満)、又は目標範囲(例えば-1nm/分と1nm/分との間)として表現され得る。
【0066】
実施形態では、プラズマ処理操作が既に開始されていると、エッチングマスクの側壁での現在蒸着速度とエッチングマスクの側壁での目標正味蒸着速度とに基づいてバイアス電圧周波数と最大バイアス電圧出力とが設定され得る。例として、バイアス電圧周波数は、高低の周波数において異なる高い速度の間の最低側壁蒸着速度が得られるようにバイアス電圧周波数が設定され、最大バイアス電圧出力が側壁蒸着速度を低下させるように増加されるか側壁蒸着速度を上昇させるように減少されて、目標蒸着速度が達成される。バイアス電圧周波数と最大バイアス電圧出力との調節による特徴的な変化がそれぞれ上で考察されるとともに図6乃至図8に示されているので、その詳細な記載はここでは省略される。
【0067】
再度、平均バイアス電圧出力と無関係に最大バイアス電圧出力が調節され得ることが留意されるべきである。しかしながら、第2工程S1020の調節後に、エッチングマスクの上面でのエッチング速度が目標正味エッチング速度を満たさないという事象では、このプロセスは第1工程S1010へ戻り、エッチングマスクの上面での所望のエッチング速度とエッチングマスクの側壁での所望の蒸着速度とが達成されるまで、第1工程S1010と第2工程S1020とが繰り返される。
【0068】
第3工程S1030では、エッチングマスクの下方のエッチング材料(例えばSiO層)の目標エッチング量を満たすように、プラズマ処理操作のプロセス時間が設定される。ここで、目標エッチング量は、エッチング材料からエッチングされる所望の材料量を指す。目標エッチング量は、特定の目標値(例えば5nm)、又は目標範囲(例えば3nmと5nmの間)として表現され得る。実施形態では、エッチング材料の所定のエッチング量が得られるまでプロセス時間が延長され得る。
【0069】
こうして、エッチングマスクの上部での目標正味エッチング速度を満たすとともにエッチングマスクの側壁での目標蒸着速度を満たすように平均バイアス電圧出力とバイアス電圧周波数と最大バイアス電圧出力とを含むエッチングパラメータを設定することにより、エッチングマスクの高さ及び幅が高い精度で制御され、小さいパターンサイズ(例えば20nm未満)についても安定したエッチングマスクパターンと高いマスク選択性とを備えるプラズマ処理操作が得られる。更に、エッチングと蒸着の両方のガスがプラズマ処理室に存在する複合的エッチング蒸着操作でエッチング及び蒸着プロセスが実施されるので、エッチングガスと蒸着ガスとの間で切り替えるようにプロセスガス交換を実施することが不要になる。その結果、このプロセスガス交換から生じる時間遅延が回避され得るので、迅速かつ効率的なやり方でプラズマ処理操作が実施され得る。
【0070】
表1に示されている条件が使用されるとともに、図10に記載された工程に従ってエッチングパラメータが調節された一例を参照して前出の実施形態が考察されたが、エッチングマスクの材料とエッチング材料とに応じて、安定したエッチング及び蒸着を促進するプロセスを得るには多様なプロセス条件が適切であることが留意されるべきである。
【0071】
例として、上に記載された例では、エッチングマスクとしてSOC層が使用されたが、本発明の他の実施形態はこの材料に限定されず、非晶質炭素又はダイヤモンド状炭素など多様な炭素系材料を利用してもよい。
【0072】
加えて、上に記載された例では、SiOで形成されたエッチング材料が使用されたが、本発明の他の実施形態はこれに限定されず、SiN、SiON、TiNのマスク、又は他のチタン系金属ハードマスク材料を使用してもよい。
【0073】
加えて、上に記載された例では、Arガスが希釈ガスとして使用されたが、He、Ne、Kr、Xe、あるいは希釈ガスとして作用し得る他のガスが代わりに使用されてもよい。更に、上に記載された例では蒸着ガスとしてCHガスが使用されたが、他の実施形態は、C、C、又は炭素Cと水素Hとを含有する他のガスなど、他の蒸着ガスを代わりに使用し得る。
【0074】
加えて、上に記載された例では、SiOエッチング材料の為のエッチングガスとしてCFが使用されているが、本開示の他の実施形態は、CHF、C、C、SF、あるいはフッ素Fを含有する他のガスを使用し得る。付加的に、幾つかの実施形態では、エッチングガスに含有される炭素(C)は、蒸着膜形成に寄与する為にも採用され得る。
【0075】
上に記載された実施形態では、マイクロ波を使用するECR(電子サイクロトロン共鳴)エッチング機器がプラズマの点火に使用されることが想定されていた。しかしながら、本開示の実施形態はこれに限定されず、例えばCCP(容量結合プラズマ)又はICP(誘導結合プラズマ)など、プラズマ処理を裏付ける多様な原理を使用するものを含めて多様な装置を使用する構成を更に含む。
【0076】
更に、上に記載された実施形態では、試料に印加されるバイアス電圧が各サイクル中にオン及びオフに調整された一例が記載されたが、本発明の実施形態は、これに代わって交互のエッチング及び蒸着段階を促進するのに充分なほど高い値と低い値との間でバイアス電圧が交互する構成を含む。
【0077】
本発明は、システム、方法、及び/又は、コンピュータプログラム製品として具体化され得る。コンピュータプログラム製品は、本発明の態様をプロセッサに実行させる為のコンピュータ可読プログラム命令を有する単数(又は複数)のコンピュータ可読記憶媒体を含み得る。
【0078】
コンピュータ可読記憶媒体は、命令実行装置による使用の為の命令を保持及び記憶できる有形の装置であり得る。コンピュータ可読記憶媒体は、例えば、電子記憶装置、磁気記憶装置、光学記憶装置、電磁記憶装置、半導体記憶装置、又は上記の適当な組み合わせであり得るが、これらに限定されるわけではない。コンピュータ可読記憶媒体の更に具体的な例の非網羅的なリストは、以下を含む。ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、静的ランダムアクセスメモリ(SRAM)、ポータブルコンパクトディスクリードオンリメモリ(CD‐ROM)、デジタル多用途ディスク(DVD)、メモリスティック、フロッピーディスク、パンチカードや命令が溝に記録された隆起構造などの機械的コード化装置、そして上記の適当な組み合わせ。
本明細書で使用されるコンピュータ可読記憶媒体は、電波又は他の自由伝搬電磁波、導波管又は他の伝達媒体内を伝搬する電磁波(例えば光ファイバケーブル内を通る光パルス)、あるいはワイヤ内を伝達される電気信号など、一時的信号それ自体として解釈されてはならない。
【0079】
発明の実施形態による方法、機器(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して、本発明の態様が本明細書に記載されている。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロックと、フローチャート図及び/又はブロック図のブロックの組み合わせとがコンピュータ可読プログラム命令により具現され得ることが理解されるだろう。
【0080】
これらのコンピュータ可読プログラム命令が、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又は他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサに提供されてマシンを形成するので、コンピュータ又は他のプログラマブルデータ処理機器のプロセッサを介して実行される命令は、フローチャート及び/又はブロック図の単数又は複数のブロックに指定された機能/動作を具現する為の手段となる。これらのコンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、プログラマブルデータ処理機器、及び/又は他の装置に特定のやり方で機能するように命令できるコンピュータ可読記憶媒体にも記憶されるので、命令が記憶されたコンピュータ可読記憶媒体は、フローチャート及び/又はブロック図の単数又は複数のブロックに指定された機能/動作の態様を具現する命令を含む製造品を包含する。
【0081】
コンピュータ可読プログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理機器、又は他の装置にロードされ、コンピュータ、他のプログラマブル機器、又は他の装置で一連の操作ステップを実施させてコンピュータ具現プロセスを生成するので、コンピュータ、他のプログラマブル機器、又は他の装置で実行される命令は、フローチャート及び/又はブロック図の単数又は複数のブロックに指定された機能/動作を具現する。
【0082】
本開示による実施形態は、クラウドコンピューティングインフラストラクチャを通してエンドユーザに提供され得る。クラウドコンピューティングは概ね、ネットワーク経由のサービスとして拡張可能なコンピューティングリソースの提供を指す。より形式的には、クラウドコンピューティングは、管理努力又はサービスプロバイダ相互作用を最小にして迅速に提供及び公開され得る設定可能コンピューティングリソースの共有プールへの便利なオンデマンドネットワークアクセスを可能にする基礎的な技術アーキテクチャ(例えば、サーバ、ストレージ、ネットワーク)とコンピューティングリソースとの間に抽象性を付与するコンピューティング性能として定義され得る。故に、クラウドコンピューティングにより、コンピューティングリソースを提供するのに使用される基礎的な物理システム(又はこれらのシステムの場所)に関わらず、「クラウド」での仮想コンピューティングリソース(例えば、ストレージ、データ、アプリケーション、及び完全仮想化コンピューティングシステム)へのユーザのアクセスが許容される。
【0083】
図のフローチャート及びブロック図は、本発明の様々な実施形態によるシステム、方法、及びコンピュータプログラム製品の可能な具現形態のアーキテクチャ、機能性、及び操作を示している。これに関して、フローチャート又はブロック図の各ブロックは、指定された論理機能を具現する為の一以上の実行可能命令を有する命令のモジュール、セグメント、又は部分を表し得る。幾つかの代替的な具現形態において、ブロックに記された機能は図に記された順序以外でも発生し得る。例えば、関連する機能性に応じて、連続で示されている二つのブロックが実質上は同時的に実行されてもよく、あるいはブロックが時には逆の順序で実行されてもよい。ブロック図及び/又はフローチャート図の各ブロックと、ブロック図及び/又はフローチャート図のブロック組み合わせとは、指定の機能又は動作を実施するか、専用のハードウェア及びコンピュータ命令の組み合わせを実行する専用のハードウェアベースシステムにより具現され得る。
【0084】
上記は例示的実施形態についてのものであるが、本発明の他の更なる実施形態が基本的な範囲を逸脱することなく考案されてもよく、その範囲は以下の請求項により決定される。本開示の様々な実施形態についての記載は、例示を目的として提示されており、網羅的であることも、開示された実施形態に限定されることも意図されていない。記載の実施形態の範囲及び趣旨を逸脱することのない多くの変更及び変形が当業者には明白であろう。本明細書で使用される用語は、実施形態の原理、実践的な用途、又は市場に見られる技術に対する技術的改良を説明するか、あるいは本明細書に開示されている実施形態を他の当業者が理解できるように選択された。
【0085】
本明細書に使用の用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的とし、様々な実施形態を限定することは意図されていない。本明細書で使用される際に、単数形の“a”、“an”、“the”は、そうではないことが文脈に明示されない限り、複数形も同じく含むことが意図されている。「~の集合(set of)」、「~のグループ(group of)」、「多くの(bunch of)」等は、一以上を含むことが意図されている。更に理解されるように、「含む(includes)」及び/又は「含む(including)」は、本明細書で使用される時に、記された特徴、整数、ステップ、操作、要素、及び/又は、コンポーネントの存在を明記するものであるが、一以上の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、コンポーネント、及び/又は、そのグループの存在又は追加を除外するものではない。様々な実施形態の例示的実施形態についての前出の詳細な記載では、その一部を形成して、様々な実施形態が実践される特定の例示的実施形態が例示として示されている添付図面(同様の数字は同様の要素を表す)が参照された。これらの実施形態は、当業者が実施形態を実践するのに充分なほど詳細に記載されているが、他の実施形態が使用されてもよく、論理的、機械的、電気的な、また他の変更が、様々な実施形態の範囲を逸脱することなく行われてもよい。前出の記載では、様々な実施形態の完全な理解を与えるように多数の特定の詳細が提示された。しかし、これらの特定の詳細を伴わずに様々な実施形態が実践されてもよい。他の実例では、実施形態を曖昧にしない為に、周知の回路、構造、及び技術が詳細には示されていない。
【符号の説明】
【0086】
100 プラズマ処理装置
101 真空容器
102 シャワープレート
103 誘電体窓
104 プラズマ処理室
105 ガス供給装置
106 真空排気装置
107 導波管
109 電磁波発生電源
110 磁場発生コイル
111 試料載置電極
112 ウェハ
113 整合回路
114 無線周波数バイアス電源
115 無線周波数フィルタ
116 DC電源
117 排気オンオフバルブ
118 排気速度可変バルブ
119 整合ユニット
120 制御ユニット
121 パルス発生ユニット
201 基板
202 エッチング材料
203 エッチングマスク
204 加速イオン
205 薄い蒸着層
610 レジームX
620 レジームY
630 レジームZ
710,720,730 グラフ
1000 パラメータ調節プロセス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10