(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】植物に害虫が接触したか否かを検出する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20241010BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20241010BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20241010BHJP
C12Q 1/6888 20180101ALI20241010BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6851 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6888 Z
(21)【出願番号】P 2020189959
(22)【出願日】2020-11-16
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】藤川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】井上 広光
(72)【発明者】
【氏名】藤原 和樹
【審査官】安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-141621(JP,A)
【文献】Environmental DNA,2020年06月10日,Vol.2, No.4,pp.627-634
【文献】第1回環境DNA学会東京大会要旨集, 2018, p.29
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q 1/686
C12Q 1/6851
C12Q 1/6869
C12Q 1/6888
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に
ミカンキジラミが接触したか否かを検出する方法であって、
前記植物から抽出したDNAを鋳型として、前記
ミカンキジラミ由来のDNAを増幅可能な
フォワードおよびリバースのPCRプライマー
のセットを用いてPCRを行う工程と、
前記PCRにおける増幅産物を検出する工程とを含み、
前記検出する工程において、前記
ミカンキジラミに特異的な増幅産物が検出された場合には、前記植物に前記
ミカンキジラミが接触したと判定する、方法。
【請求項2】
前記
ミカンキジラミ由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーの複数のセットを用いて、それぞれ前記PCRを行う工程と前記検出する工程とを行い、少なくとも1つの前記セットにおいて前記
ミカンキジラミに特異的な増幅産物が検出された場合には、前記植物に前記
ミカンキジラミが接触したと判定する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
次世代シーケンシング(NGS)を用いて前記
ミカンキジラミにおけるコピー数の多い遺伝子を同定し、当該遺伝子の配列から前記
ミカンキジラミ由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを設計する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物は、前記
ミカンキジラミが接触した痕跡が目視で確認できない植物である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記
ミカンキジラミ由来のDNAは、前記
ミカンキジラミのミトコンドリアゲノムに含まれる遺伝子または前記
ミカンキジラミの共生微生物の遺伝子である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記共生微生物は、前記
ミカンキジラミの唾液腺または腸管に生息する微生物である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記PCRプライマー
のセットを構成するフォワードプライマーおよびリバースプライマーが、
下記(1)~(14)のいずれか
の組み合わせであり、それぞれ表される塩基配列における連続した
15以上の塩基からなる配列を含む、請求項
1~6のいずれか1項に記載の方法
:
(1)配列番号1および2、(2)配列番号3および4、(3)配列番号5および6、(4)配列番号7および8、(5)配列番号9および10、(6)配列番号11および12、(7)配列番号13および14、(8)配列番号15および16、(9)配列番号17および18、(10)配列番号19および20、(11)配列番号21および22、(12)配列番号23および24、(13)配列番号25および26、または(14)配列番号27および28。
【請求項8】
下記(1)~(14)のいずれか
の組み合わせのフォワードプライマーおよびリバースプライマーからなり、それぞれ表される塩基配列における連続した
15以上の塩基からなる配列を含む、植物にミカンキジラミが接触したか否かを検出するための、PCRプライマー
のセット:
(1)配列番号1および2、(2)配列番号3および4、(3)配列番号5および6、(4)配列番号7および8、(5)配列番号9および10、(6)配列番号11および12、(7)配列番号13および14、(8)配列番号15および16、(9)配列番号17および18、(10)配列番号19および20、(11)配列番号21および22、(12)配列番号23および24、(13)配列番号25および26、または(14)配列番号27および28。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に害虫が接触したか否かを検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
農業害虫および衛生害虫などの害虫の多くは、その個体の有無を目視で確認しない限り、特定の空間に存在していたかどうか、または対象物に付着もしくは寄生していたかどうかを判別することは困難である。たとえば、ある食品の近くでハエが視認されたとしても、そのハエがその食品に付着したかどうかは、観察時点では目視では分からない。このため、害虫が対象物に付着したかどうかを調べるために、特定の空間または対象物に対して常時モニタリングする方法が考えられる。しかし、自然環境のような開放空間に対して、あるいは生物のような量およびサイズが変化する対象物に対して、常時モニタリングすることは非常に困難である。このため、害虫の対象物への付着、寄生および侵入を逐次検出することは、現在の技術ではほぼ不可能である。その結果、農業においては、現地未発生の害虫の侵入および定着、さらには、害虫の園地でのまん延を察知することが遅れてしまい、農作物および環境に大きな被害を及ぼす場合が多々ある。
【0003】
カンキツグリーニング病は、カンキツ生産に壊滅的な影響をもたらすことで世界的に重要視されている。カンキツグリーニング病の病原細菌は、ミカンキジラミによって媒介される。カンキツグリーニング病についても、ミカンキジラミの侵入、定着およびまん延を察知することが遅れることによる農作物への被害が懸念される。また、ミカンキジラミを防除した地域において、ミカンキジラミが再侵入および再定着した場合に、その発見が遅れると、カンキツグリーニング病の感染が拡大する可能性が高まる。
【0004】
そこで、これまでにミカンキジラミなどの害虫の侵入、定着およびまん延を確認(侵入、定着およびまん延がないことの確認も含む)するための発生調査が様々な手法で行われている。たとえば、最も簡単な方法として、調査者が調査園または調査樹上に害虫がいるかどうかを目視で調査する「見取り調査」が行われている(非特許文献1、2)。また、網または棒を樹上の葉に当てて落下してきた昆虫群の中から調査対象の害虫を目視で見分ける「ビーティング・スウィーピング」が行われている(非特許文献1、2)。また、予め調査園または調査樹に粘着性の(黄色の)シートを設置し、そのシートに貼り付いた昆虫群の中から調査対象の害虫を見分ける「黄色粘着トラップ」なども行われている(非特許文献1、2)。
【0005】
また、特許文献1には、粘着トラップに付着した虫を区画に分けて計数する方法が開示されている。具体的には、特許文献1には、片面又は両面に粘着層を備える長尺な捕虫シートであって、長手方向に一定間隔で仕切られて複数の区画を有する捕虫シートを複数並列してセットするためのステージと、該ステージ上にセットされた複数の捕虫シートを同時期的に撮像可能な撮像手段と、該撮像手段により取得された全体画像から、選択的に何れかの区画を切り出し、それを一つの画像データとして区画画像を生成する画像処理手段と、該画像処理手段により生成された区画画像を表示する表示手段とを備えることを特徴とする捕虫シートの検査装置が開示されている。
【0006】
特許文献2には、トコジラミを誘因しその糞や抜け殻を検出する方法が開示されている。具体的には、特許文献2には、トコジラミ検出装置において、a.トコジラミから走性反応を引き出す潜伏場と、b.前記トコジラミに糞便又は抜け殻の様なトコジラミの存在の標示となるものを残させることのできる非捕捉式標示面と、を備えており、前記潜伏場は前記非捕捉式標示面に密に近接して配置され、前記トコジラミが前記潜伏場に出入りする途中に前記標示面を横切って進んでいく際に前記トコジラミの存在の標示となるものを残してゆけるようにしている、トコジラミ検出装置が開示されている。
【0007】
これらの方法は、いずれも簡便ではあるものの、定量性に乏しく再現性にも問題があることが知られている。加えて、調査対象の害虫の形態が維持されていない残骸(たとえば脚のみまたは触角のみ)を見つけたとしても、それが調査対象の害虫であると判別することができない。また仮に上述の調査を行っても、その時に調査対象の害虫が発見されない限り、調査対象の害虫は存在しないという判定になるため、調査対象の害虫の定着を見逃す可能性もある。すなわち、上述した方法では、低密度で侵入している害虫を見つけることが困難である。また、季節、植物および環境の関係で偶然見つけることができないといった誤診に至る可能性がある。この結果、調査対象の害虫の定着を見逃すことにつながる。
【0008】
さらに、上述の従来の調査方法のうち、「トラップ法」については、予め調査園や調査樹に粘着トラップを設置し、さらにそのトラップを一定期間後に回収しなければならない。したがって、この方法は、調査対象の害虫の発生が疑わる地域で定期的に行われる調査方法であって、新規に調査をする地域では事前準備(予めトラップを仕掛けること)および事後調査(一定期間後にトラップを回収し調査すること)が必要となる。
【0009】
本発明者らは、上述したトラップ法を改良し、黄色トラップ等に貼り付いた昆虫群の中から、その形態を参照せずにミカンキジラミを検出する方法を開発した。本発明者らは、ミカンキジラミのDNAを検出対象とする遺伝子検査法を開発した(非特許文献3)。本方法は、害虫の残骸のみであっても、DNAを抽出することさえできれば、ミカンキジラミを高精度に検出することが可能である。このため、トラップ法による現地調査において十分に活用できる技術である。しかし一般的なトラップ法と同じく、やはり事前準備等を必要とするため、調査全体に時間や労力が掛かることになる。
【0010】
また、昆虫の多くは、その体内(腸管内および唾液腺等)に細菌を生息させていることが知られている。これらのうち、昆虫を宿主として共生的に生息している細菌群は共生細菌と呼ばれ、その昆虫特異的な菌種が含まれていたり、特異的な菌叢を形成していたりすることが知られている。ミカンキジラミの場合においても、Wolbachia属、Carsonella属およびProfftella属細菌などの共生細菌が存在することが知られている(非特許文献4~6)。しかし、これら共生細菌について、ミカンキジラミとの宿主相互作用における基礎研究やゲノム研究は実施されているものの、これら共生細菌のDNAを利用した検出技術等の開発は全く想定されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2008-99598号公報
【文献】特表2012-514995号公報
【非特許文献】
【0012】
【文献】石井実,“農業土木技術者のための生き物調査(その4)”,農業土木学会誌,2002年,第70巻,第12号,p.1147-1152
【文献】“Chapter 15-Sampling insects; general techniques, strategies and remarks”,Manual on field recording techniques and protocols for all taxa biodiversity inventories and monitoring (Eymann, Degreef, Hauser, Monje, Samyan and VandenSpiegel eds.),2010年
【文献】Journal of Applied Entomology,2017, Vol.141, p.61-66
【文献】PLoS One, 2012, Vol.7, No.11, e50067
【文献】Microbial Ecology, 2016, Vol.71, p.999-1007
【文献】Current Biology, 2013, Vol.23, No.15, p.1478-1484
【文献】Molecular and Cellular Probes, 2012, Vol.26, No.5, p.194-197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述したような従来の調査方法では、調査対象の害虫が発見されない限り、調査対象の害虫は存在しないという判定になってしまい、害虫の定着を見逃すおそれがある。特に低密度で侵入しているような害虫を発見することは困難である。また、トラップの設置を必要とする方法では、事前にトラップを設置し、一定期間後に回収しなければならず、時間や労力を必要とする。
【0014】
そこで本発明の目的は、迅速かつ高精度に害虫を検出することが可能な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上述した従来技術の問題点を解決するために鋭意検討を行い、植物から抽出したDNAを鋳型として、調査対象の害虫(ミカンキジラミ等)由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを用いてPCRを行うことにより、植物に害虫が接触したか否かを検出することができることを見出した。この方法であれば、これまでに調査履歴の無いような場所や植物であっても、調査したい植物の葉等を採集しDNAを抽出して、調査対象の害虫由来の遺伝子をPCR法(リアルタイムPCR法を含む)によって検出することができる。
【0016】
また、本発明者らは、調査対象の害虫由来の遺伝子として、害虫のゲノムDNAはもちろんのこと、その共生微生物のゲノムDNAも害虫由来の遺伝子として用いることができることを見出した。また、検出の標的となる遺伝子は、コピー数が多いものが望ましいことがわかった。たとえば害虫ゲノムDNAのうちでは、ミトコンドリアに含まれる遺伝子が望ましい。また、共生微生物ゲノムDNAのうちでは、容易に害虫体外に排出される唾液腺や腸管に生息する微生物の遺伝子が望ましいことを見出した。これらの遺伝子は、害虫の残骸(肢や翅の一部等)だけでなく、卵、甘露および唾液等の害虫由来物にも含まれることから、目視では調査対象の害虫の有無あるいは害虫が食い荒らした跡などを確認できないような植物からでも、高精度に調査対象の害虫の痕跡を検出できることが分かった。
【0017】
すなわち、本発明は、植物に害虫が接触したか否かを検出する方法であって、植物から抽出したDNAを鋳型として、害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを用いてPCRを行う工程と、PCRにおける増幅産物を検出する工程とを含み、検出する工程において、害虫に特異的な増幅産物が検出された場合には、植物に害虫が接触したと判定する、方法を提供する。
【0018】
本発明はまた、上記方法において、害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーの複数のセットを用いて、それぞれPCRを行う工程と検出する工程とを行い、少なくとも1つのセットにおいて害虫に特異的な増幅産物が検出された場合には、植物に害虫が接触したと判定する、方法を提供する。
【0019】
本発明はまた、上記方法において、次世代シーケンシング(NGS)を用いて害虫におけるコピー数の多い遺伝子を同定し、当該遺伝子の配列から害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを設計する工程をさらに含む、方法を提供する。
【0020】
本発明はまた、上記方法において、植物が、害虫が接触した痕跡が目視で確認できない植物である、方法を提供する。
【0021】
本発明はまた、上記方法において、害虫由来のDNAが、害虫のミトコンドリアゲノムに含まれる遺伝子または害虫の共生微生物の遺伝子である、方法を提供する。
【0022】
本発明はまた、上記方法において、共生微生物が、害虫の唾液腺または腸管に生息する微生物である、方法を提供する。
【0023】
本発明はまた、上記方法において、害虫がミカンキジラミである、方法を提供する。
【0024】
本発明はまた、上記方法において、害虫がミカンキジラミであって、PCRプライマーが、配列番号1~28のいずれかで表される塩基配列における連続した10以上の塩基からなる配列を含む、方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、配列番号1~28のいずれかで表される塩基配列における連続した10以上の塩基からなる配列を含む、植物にミカンキジラミが接触したか否かを検出するための、PCRプライマーを提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明であれば、調査対象の害虫が目視で確認できないような場合であっても、害虫が存在していたことを迅速かつ高精度に検出することができる。本発明では、害虫の残骸だけでなく、害虫が寄主の樹液を吸汁したり、甘露を排出したりする際に排出される共生細菌または腸管細胞を由来とする遺伝子を検出対照とするため、より高精度に害虫の痕跡を検出できる。本発明は、迅速かつ高精度に害虫を検出することが可能であるため、様々な農業現場および環境モニタリングにおいて利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】シークエンス解読した10頭のミカンキジラミにおけるシークエンスリード数および平均のサイズ(bp)を示す図。
【
図2】ミカンキジラミが居たゲッキツの葉を用いて、本発明の実施例のPCRプライマーによりPCRを行った結果を示す図。
【
図3】ミカンキジラミが居たゲッキツの葉を用いて、本発明の実施例のPCRプライマーによりPCRを行った結果を示す図。
【
図4】ミカンキジラミが居たゲッキツの葉を用いて、本発明の実施例のPCRプライマーによりPCRを行った結果を示す図。
【
図5】ミカンキジラミが居たゲッキツの葉を用いて、本発明の実施例のPCRプライマーによりPCRを行った結果を示す図。
【
図6】ゲッキツ葉上から採集した種々の昆虫を用いて、本発明の実施例2、4、6、8、10、12および14のプライマーセットによりPCRを行った結果を示す図。
【
図7】ミカンキジラミが寄生していることがわかっているゲッキツ(奄美大島由来)と寄生していないことがわかっているゲッキツ(つくば由来)を示す図。
【
図8】実施例2(12S-rDNA-2)、実施例4(COI-2)、実施例6(NOD4-2)および実施例8(Wol-2)のプライマーセットを用いたPCRの結果を示す図。
【
図9】本発明の実施例のプライマーセットを用いてリアルタイムPCR法を行った結果を示す図。
【
図10】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例2のプライマーセット(12S)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図11】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例4のプライマーセット(COI)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図12】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例8のプライマーセット(Wolbachia)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図13】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例10のプライマーセット(Wolbachia phage)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図14】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例12のプライマーセット(Carsonella)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図15】日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例14のプライマーセット(Profftella)を用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図16】沖永良部島における各地域から採取したカンキツおよびゲッキツを対象に、本発明の実施例のプライマーセットを用いてPCRを行った結果を示す図。
【
図17】ミカンキジラミ付着時間による検出感度の違いを試験する方法を説明する図。
【
図18】ミカンキジラミ付着時間の異なるゲッキツを対象に、本発明の実施例のプライマーセットを用いてPCRを行った結果を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、植物に害虫(調査対象の害虫)が接触したか否かを検出する方法を提供する。
【0029】
本発明において、「接触」には、害虫の植物への付着、寄生および侵入などが含まれる。本発明は、たとえば、害虫が植物を食べた痕跡、植物の汁を吸った痕跡、ならびに植物上に卵、甘露および唾液等の害虫由来物を残した痕跡などを検出することができる。本明細書では、害虫の植物への接触を「付着履歴」または「痕跡」とも呼ぶこととする。
【0030】
本発明において、調査対象となる「害虫」は、特に限定されないが、穀物、野菜および果物等の農産物に対して害を与える農業害虫を含む。本発明において、害虫は、たとえば植物の葉、実および根等に接触して表面を加害したり、植物の汁を吸ったり、植物を食い荒らしたりすることにより、植物または農産物等に被害を与える虫(動物)であることができ、植物寄生性動物とよぶこともできる。
【0031】
本発明において、調査対象の害虫には、特に限定されないが、昆虫、ダニ類およびセンチュウ等が含まれる。害虫は、たとえばカメムシ目、アザミウマ目、ハエ目、ダニ目、ヨウセンチュウ(葉線虫)目およびハリセンチュウ目などであることができる。
【0032】
カメムシ目には、たとえばアオキコナジラミ(Aleurotuberculatus aucubae)、アブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscata)、アオクサカメムシ(Nezara antennata)、アオバハゴロモ(Geisha distinctissima)、アカスジカスミカメ(Stenotus rubrovittatus)、アカスジカメムシ(Graphosoma rubrolineatum)、アカヒゲホソミドリカスミカメ(Trigonotylus coelestialium)、アカヒメヘリカメムシ(Aeschynteles maculatus)、アカホシカスミカメ(Creontiades pallidifer)、アカホシカメムシ(Dysdercus cingulatus)、アカホシマルカイアガラムシ(Chrysomphalus ficus)、アカマルカイガラムシ(Aonidiella aurantii)、アメリカコバネナガカメムシ(Blissusleucopterus)、イセリヤカイガラムシ(Icerya purchasi)、イチモンジカメムシ(Piezodorus hybneri)、イネカメムシ(Lagynotomus elongatus)、イネキイロヒメヨコバイ(Thaia subrufa)、イネクロカメムシ(Scotinophara lurida)、イバラヒゲナガアブラムシ(Sitobion ibarae)、イワサキカメムシ(Stariodes iwasakii)、ウスイロマルカイガラムシ(Aspidiotus destructor)、ウスモンミドリカスミカメ(Taylorilygus pallidulus)、ウメコブアブラムシ(Myzus mumecola)、ウメシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis prunicola)、エンドウヒゲナガアブラムシ(Acyrthosiphon pisum)、オオクモヘリカメムシ(Anacanthocoris striicornis)、オオクロトビカスミカメ(Ectometopterus micantulus)、オオトゲシラホシカメムシ(Eysarcoris lewisi)、オオヘリカメムシ(Molipteryx fulginosa)、オオヨコバイ(Cicadella viridis)、オカボノアカアブラムシ(Rhopalosiphum rufiabdominalis)、オリーブカタカイガラムシ(Saissetia oleae)、オンシツコナジラミ(Trialeurodes vaporariorum)、カシトガリキジラミ(Trioza remota)、カシヒメヨコバイ(Aguriahana quercus)、カスミカメムシ類(Lygus sp.)、カバワタフキマダラアブラムシ(Euceraphis punctipennis)、カシカキカイガラムシ(Andaspis kashicola)、カンキツカタカイガラムシ(Coccus pseudomagnoliarum)、カンシャコバネナガカメムシ(Cavelerius saccharivorus)、キクグンバイ(Galeatus spinifrons)、キクヒメヒゲナガアブラムシ(Macrosiphoniella sanborni)、キマルカイガラムシ(Aonidiella citrina)、ギンネムキジラミ(Heteropsylla cubana)、クサギカメムシ(Halyomorpha mista)、クスグンバイ(Stephanitis fasciicarina)、クストガリキジラミ(Trioza camphorae)、クモヘリカメムシ(Leptocorisa chinensis)、クリトガリキジラミ(Trioza quercicola)、クルミグンバイ(Uhlerites latius)、グレープリーフホッパー(Erythroneura comes)、クロアシホソナガカメムシ(Paromius exguus)、クロカタマルカイガラムシ(Duplaspidiotus claviger)、クロスジキジラミ(Cacopsylla melanoneura)、クロスジツマグロヨコバイ(Nephotettix nigropictus)、クロトビカスミカメ(Halticiellus insularis)、クロフツノウンカ(Perkinsiella saccharicida)、クロリンゴキジラミ(Cacopsylla malivorella)、クワキジラミ(Anomomeura mori)、クワコナカイガラムシ(Pseudococcus longispinis)、クワシロカイガラムシ(Pseudaulacaspis pentagona)、クワワタカイガラムシ(Pulvinaria kuwacola)、ゲッケイジュトガリキジラミ(Trioza alacris)、コアオカスミカメ(Apolygus lucorum)、コバネヒョウタンナガカメムシ(Togo hemipterus)、コミカンアブラムシ(Toxoptera aurantii)、サツマキジラミ(Cacopsylla satsumensis)、サトウキビコナカイガラムシ(Saccharicoccus sacchari)、サトウキビネワタムシ(Geoica lucifuga)、サトウノウスイロウンカ(Numata muiri)、サンホーゼカイガラムシ(Comstockaspis perniciosa)、シトラススノースケール(Unaspis citri)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ(Aulacorthum solani)、シラホシカメムシ(Eysarcoris ventralis)、シルバーリーフコナジラミ(Bemisia argentifolii)、シロオオヨコバイ(Cicadella spectra)、シロマルカイガラムシ(Aspidiotus hederae)、スカシヒメヘリカメムシ(Liorhyssus hyalinus)、セグロヒメキジラミ(Calophya nigridorsalis)、セジロウンカ(Sogatella furcifera)、セリトガリキジラミ(Trioza apicalis)、ソラマメヒゲナガアブラムシ(Megoura crassicauda)、ダイコンアブラムシ(Brevicoryne brassicae)、ダイズアブラムシ(Aphis glycines)、タイワンクモヘリカメムシ(Leptocorisa oratorius)、タイワンツマグロヨコバイ(Nephotettix virescens)、タイワンヒゲナガアブラムシ(Uroeucon formosanum)、タバコカスミカメ(Cyrtopeltis tennuis)、タバココナジラミ(Bemisia tabaci)、チャトゲコナジラミ(Aleurocanthus camelliae)、チャノカタカイガラムシ(Lecanium persicae)、チャノクロホシカイガラムシ(Parlatoria theae)、チャノマルカイガラムシ(Pseudaonidia paeoniae)、チャノミドリヒメヨコバイ(Empoasca onukii)、チャバネアオカメムシ(Plautia crossota stali)、チュウゴクナシキジラミ(Cacopsylla jukyungi)、チューリップネアブラムシ(Dysaphis tulipae)、チューリップヒゲナガアブラムシ(Macrosiphum euphorbiae)、ツツジグンバイ(Stephanitis pyrioides)、ツノロウムシ(Ceroplastes ceriferus)、ツバキクロホシカイガラムシ(Parlatoria camelliae)、ツマグロアオカスミカメ(Apolygus spinolai)、ツマグロヨコバイ(Nephotettix cincticeps)、ツヤアオカメムシ(Glaucias subpunctatus)、テンサイカスミカメ(Orthotylus flavosparsus)、トウモロコシアブラムシ(Rhopalosiphum maidis)、トウモロコシウンカ(Peregrinus maidis)、トガリキジラミ科の一種(Bactericera nigricornis)、トガリキジラミ科の一種(Bactericera trigonica)、トガリキジラミ科の一種(Bactericera tremblay)、トゲシラホシカメムシ(Eysarcoris parvus)、トコジラミ(Cimex lectularius)、トドキジラミ(Cacopsylla abieti)、トビイロウンカ(Nilaparvata lugens)、トベラキジラミ(Cacopsylla tobirae)、ナガメ(Eurydema rugosum)、ナシアブラムシ(Schizaphis piricola)、ナシキジラミ(Cacopsylla burckhardti)、ナシクロホシカイガラムシ(Parlatoreopsis pyri)、ナシグンバイ(Stephanitis sashi)、ナシコナカイガラムシ(Dysmicoccus wistariae)、ナシシロナガカイガラムシ(Lepholeucaspis japonica)、ナシマルアブラムシ(Sappaphis piri)、ナシミドリオオアブラムシ(Nippolachnus piri)、ニセダイコンアブラムシ(Lipaphis erysimi)、ニッケイトガリキジラミ(Trioza cinnamomi)、ネギアブラムシ(Neotoxoptera formosana)、ハスクビレアブラムシ(Rhopalosophum nymphaeae)、バラヒメヨコバイ(Edwardsiana rosae)、ハランナガカイガラムシ(Pinnaspis aspidistrae)、ハンノキジラミ(Psylla alni)、ハンノナガヨコバイ(Speusotettix subfusculus)、ハンノヒメヨコバイ(Alnetoidia alneti)、ヒエウンカ(Sogatella panicicola)、ヒゲナガカスミカメ(Adelphocoris lineolatus)、ヒメアカホシカメムシ(Dysdercus poecilus)、ヒメクロカイガラムシ(Parlatoria ziziphi)、ヒメグンバイ(Uhlerites debile)、ヒメトビウンカ(Laodelphax striatellus)、ヒメナガメ(Eurydema pulchrum)、ヒメハリカメムシ(Cletus trigonus)、ヒメフタテンナガアワフキ(Clovia punctata)、ヒメヨコバイ類(Empoasca sp.)、ヒラタカタカイガラムシ(Coccus hesperidum)、ヒラタヒョウタンナガカメムシ(Pachybrachius luridus)、ビワキジラミ(Cacopsylla biwa)、フジコナカイガラムシ(Planococcus kraunhiae)、フタスジカスミカメ(Stenotus binotatus)、フタテンヒメヨコバイ(Arboridia apicaris)、フタテンヨコバイ(Macrosteles fascifrons)、フタホシナシキジラミ(Cacopsylla pyricola)、ブチヒゲカメムシ(Dolycoris baccarum)、ブチヒゲクロカスミカメ(Adelphocoris triannulatus)、ブドウネアブラムシ(Viteus vitifolii)、ベニキジラミ(Cacopsylla coccinea)、ホオズキカメムシ(Acanthocoris sordidus)、ホソクモヘリカメムシ(Leptocorisa acuta)、ホソコバネナガカメムシ(Macropes obnubilus)、ホソハリカメムシ(Cletus punctiger)、ホソヘリカメムシ(Riptortus clavatus)、ジャガイモトガリキジラミ(Bactericera cockerelli)、マエキアワフキ(Aphrophora costalis)、マキバカスミカメ(Lygus disponsi)、マダラカスミカメ(Lygus saundersi)、マツコナカイガラムシ(Crisicoccus pini)、マツヒメヨコバイ(Empoasca abietis)、マツモトコナカイガラムシ(Crisicoccus matsumotoi)、マデイラコナカイガラムシ(Phenacoccus madeirensis Green)、マメアブラムシ(Aphis craccivora)、マルカメムシ(Megacopta punctatissimum)、マルシラホシカメムシ(Eysarcoris guttiger)、マンゴーキジラミ(Calophya mangiferae)、ミカンカキカイガラムシ(Lepidosaphes beckii)、ミカンキジラミ(Diaphorina citri)、ミカンクロアブラムシ(Toxoptera citricidus)、ミカンコナカイガラムシ(Planococcus citri)、ミカンコナジラミ(Dialeurodes citri)、ミカントガリトガリキジラミ(Trioza erytreae)、ミカントゲコナジラミ(Aleurocanthus spiniferus)、ミカンヒメコナカイガラムシ(Pseudococcus citriculus)、ミカンヒメヨコバイ(Zyginella citri)、ミカンヒメワタカイガラムシ(Pulvinaria citricola)、ミカンヒラタカイガラムシ(Coccus discrepans)、ミカンマルカイガラムシ(Pseudaonidia duplex)、ミカンワタカイガラムシ(Pulvinaria aurantii)、ミズキカタカイガラムシ(Lecanium corni)、ミナミアオカメムシ(Nezara viridula)、ミナミトゲヘリカメムシ(Paradasynus spinosus Hsiao)、ムギカスミカメ(Stenodema calcaratum)、ムギクビレアブラムシ(Rhopalosiphum padi)、ムギヒゲナガアブラムシ(Sitobion akebiae)、ムギミドリアブラムシ(Schizaphis graminum)、ムギヨコバイ(Sorhoanus tritici)、ムギワラギクオマルアブラムシ(Brachycaudus helichrysi)、ムラサキカメムシ(Carpocoris purpureipennis)、モモアカアブラムシ(Myzus persicae)、モモコフキアブラムシ(Hyalopterus pruni)、ヤツデキジラミ(Cacopsylla fatsiae)、ヤナギアブラムシ(Aphis farinose yanagicola)、ヤナギグンバイ(Metasalis populi)、ヤノネカイガラムシ(Unaspis yanonensis)、ヤマアサキジラミ(Mesohomotoma camphorae)、ユキヤナギアブラムシ(Aphis spiraecola)、リンゴアブラムシ(Aphis pomi)、リンゴカキカイガラムシ(Lepidosaphes ulmi)、リンゴキジラミ(Cacopsylla mali)、リンゴキジラミ属の一種(Cacopsylla picta)、リンゴキジラミ属の一種(Cacopsylla pruni)、リンゴキジラミ属の一種(Cacopsylla pyri)、リンゴキジラミ属の一種(Cacopsylla pyrisuga)、リンゴクロカスミカメ(Heterocordylus flavipes)、リンゴコブアブラムシ(Myzus malisuctus)、リンゴネアブラムシ(Aphidonuguis mali)、リンゴマダラヨコバイ(Orientus ishidai)、リンゴミドリアブラムシ(Ovatus malicolens)、リンゴワタムシ(Eriosoma lanigerum)、ルビーロウムシ(Ceroplastes rubens)およびワタアブラムシ(Aphis gossypii)等が含まれる。
【0033】
アザミウマ目には、たとえばアカオビアザミウマ(Selenothrips rubrocinctus)、イネアザミウマ(Stenchaetothrips biformis)、イネクダアザミウマ(Haplothrips aculeatus)、カキクダアザミウマ(Ponticulothrips diospyrosi)等、キイロハナアザミウマ(Thrips flavus)、クサキイロアザミウマ(Anaphothrips obscurus)、クスクダアザミウマ(Liothrips floridensis)、グラジオラスアザミウマ(Thrips simplex)、クロゲハナアザミウマ(Thrips nigropilosus)、クロトンアザミウマ(Heliothrips haemorrhoidalis)、クワアザミウマ(Pseudodendrothrips mori)、コスモスアザミウマ(Microcephalothrips abdominalis)、シイオナガクダアザミウマ(Leeuwenia pasanii)、シイマルクダアザミウマ(Litotetothrips pasaniae)、シトラススリップス(Scirtothrips citri)、シナクダアザミウマ(Haplothrips chinensis)、ダイズアザミウマ(Mycterothrips glycines)、ダイズウスイロアザミウマ(Thrips setosus)、チャノキイロアザミウマ(Scirtothrips dorsalis)、チャノクロアザミウマ(Dendrothrips minowai)、ツメクサクダアザミウマ(Haplothrips niger)、ネギアザミウマ(Thrips tabaci)、ネギクロアザミウマ(Thrips alliorum)、ハナアザミウマ(Thrips hawaiiensis)、ハナクダアザミウマ(Haplothrips kurdjumovi)、ヒゲブトアザミウマ(Chirothrips manicatus)、ヒラズハナアザミウマ(Frankliniella intonsa)、ビワハナアザミウマ(Thrips coloratus)、ミカンキイロアザミウマ(Franklinella occidentalis)、ユリキイロアザミウマ(Frankliniella lilivora)およびユリノクダアザミウマ(Liothrips vaneeckei)等が含まれる。
【0034】
ハエ目には、たとえばアカイエカ(Culex pipiens pallens)、アカザモグリハナバエ(Pegomya hyoscyami)、アシグロハモグリバエ(Liriomyza huidobrensis)、イエバエ(Musca domestica)、イネキモグリバエ(Chlorops oryzae)、イネクキミギワバエ(Hydrellia sasakii)、イネハモグリバエ(Agromyza oryzae)、イネヒメハモグリバエ(Hydrellia griseola)、イネミギワバエ(Hydrellia griseola)、インゲンモグリバエ(Ophiomyia phaseoli)、ウリミバエ(Dacus cucurbitae)、オウトウショウジョウバエ(Drosophila suzukii)、オウトウハマダラミバエ(Rhacochlaena japonica)、オオイエバエ(Muscina stabulans)、オオキモンノミバエ(Megaselia spiracularis)等のノミバエ類、オオチョウバエ(Clogmia albipunctata)、キクノネハネオレバエ(Psila nigricornis Meigen)、キリウジガガンボ(Tipula aino)、クロキンバエ(Phormia regina)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、シナハマダラカ(Anopheles sinensis)、ダイコンバエ(Hylemya brassicae)、ダイズサヤタマバエ(Asphondylia yushimai)、タネバエ(Delia platura)、タマネギバエ(Delia antiqua)、チェリーフルーツフライ(Rhagoletis cerasi)、チカイエカ(Culex pipiens molestus)、チチュウカイミバエ(Ceratitis capitata)、チビクロバネキノコバエ(Bradysia agrestis)、テンサイモグリハナバエ(Pegomya cunicularia)、トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae)、ナスハモグリバエ(Liriomyza bryoniae)、ナモグリバエ(Chromatomyia horticola)、ネギハモグリバエ(Liriomyza chinensis)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、マメハモグリバエ(Liriomyza trifolii)、ミカコミバエ(Dacus dorsalis)、ミカンバエ(Dacus tsuneonis)、ムギアカタマバエ(Sitodiplosis mosellana)、ムギキモグリバエ(Meromuza nigriventris)、メキシコミバエ(Anastrepha ludens)およびリンゴミバエ(Phagoletis pomonella)等が含まれる。
【0035】
ダニ目には、たとえばアシノワハダニ(Tetranychus ludeni)、オウトウハダニ(Tetranychus viennensis)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、クワオオハダニ(Panonychus mori)、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、ニセククローバービラハダニ(Bryobia rubrioculus)、パシフィックスパイダーマイト(Tetranychus pacificus)、マンゴーツメハダニ(Oligonychus coffeae)、ミツユビナミハダニ(Tetranychus evansi)、ブドウヒメハダニ(Brevipalpus lewisi)、ミナミヒメハダニ(Brevipalpus phoenicis)、ランヒメハダニ(Tenuipalpus pacificus)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)等のハダニ科(Tetranychidae sp.)、ケナガコナダニ(Tyrophagus putrescentiae)、シャンハイゴミコナダニ、ホウレンソウケナガコナダニ(Tyrophagus similis)等のコナダニ科(Acaridae spp.)、シクラメンホコリダニ(Phytonemus pallidus)、チャノホコリダニ(Polyphagotarsonemus latus)、ロビンネダニ(Rhyzoglyphus robini)等のホコリダニ科(Tarsonemidae spp.)、チャノナガサビダニ(Acaphylla theavagrans)、チャノサビダニ(Calacarus carinatus)、トマトサビダニ(Aculops lycopersici)、チューリップサビダニ(Aceria tulipae)、ニセナシサビダニ(Eriophyes chibaensis)、ミカンサビダニ(Aculops pelekassi)、モモサビダニ(Aculus fockeui)、リュウキュウミカンサビダニ(Phyllocoptruta citri)、リンゴサビダニ(Aculus schlechtendali)等のフシダニ科(Eriophyidae spp.)、チャノヒメダニ(Brevipalpus obovatus)等のヒメダニ科(Argasidae spp.)およびネダニモドキ類(Sancassania sp.)等が含まれる。
【0036】
ヨウセンチュウ目には、たとえばイネシンガレセンチュウ(Aphelenchoides besseyi)およびマツノザイセンチュウ(Bursaphelenchus xylophilus)等が含まれる。
【0037】
ハリセンチュウ目には、たとえばジャガイモシストセンチュウ(Globodera rostochiensis)、ムギシストセンチュウ(Heterodera avenae)、ダイズシストセンチュウ(Heterodera glycines)、アレナリアネコブセンチュウ(Meloidogyne arenaria)、キタネコブセンチュウ(Meloidogyne hapla)、サツマイモネコブセンチュウ(Meloidogyne incognita)、ジャワネコブセンチュウ(Meloidogyne javanica)、ミナミネグサレセンチュウ(Pratylenchus coffeae)、チャネグサレセンチュウ(Pratylenchus loosi)、キタネグサレセンチュウ(Pratylenchus penetrans)およびクルミネグサレセンチュウ(Pratylenchus vulnus)等が含まれる。
【0038】
本発明において、調査対象の害虫は、ミカンキジラミ(Diaphorina citri)であってもよい。ミカンキジラミは、カメムシ目ヒラズキジラミ科に属する昆虫であり、柑橘類およびゲッキツを好む。ミカンキジラミは、カンキツグリーニング病菌を媒介することで、柑橘類にカンキツグリーニング病を引き起こすことが知られている。本発明の方法は、たとえば柑橘類またはゲッキツなどの植物にミカンキジラミが接触した否かを検出するために用いることができる。
【0039】
また、本発明の方法では、上述した害虫に限らず、たとえば昆虫および節足動物の絶滅危惧種および希少昆虫等を調査対象とすることもできる。本発明の方法を適用可能な昆虫には、たとえば環境省のレッドデータ検索システム(http://jpnrdb.com/search.php?mode=kind)に収載されている昆虫等が含まれる。具体的には、絶滅危惧I類(CR+EN)または同II類(VU)として、イシイムシ(Galloisiana notabilis)等のガロアムシ目;ミヤコホラアナゴキブリ(Nocticola uenoi miyakoensis)等のゴキブリ目;アオナガイトトンボ(Pseudagrion microcephalum)、アカメイトトンボ(Erythromma humerale)、アサトカラスヤンマ(Chlorogomphus brunneus keramensis)、エゾアカネ(Sympetrum flaveolum flaveolum)、オオキトンボ(Sympetrum uniforme)、オオサカサナエ(Stylurus annulatus)、オオセスジイトトンボ(Paracercion plagiosum)、オオモノサシトンボ(Copera tokyoensis)、オガサワラアオイトトンボ(Indolestes boninensis)、オガサワライトトンボ(Ischnura ezoin)、オガサワラトンボ(Hemicordulia ogasawarensis)、オキナワミナミヤンマ(Chlorogomphus okinawensis)、カラフトイトトンボ(Coenagrion hylas)、コバネアオイトトンボ(Lestes japonicus)、コフキオオメトンボ(Zyxomma obtusum)、サキシマヤマトンボ(Macromidia ishidai)、シマアカネ(Boninthemis insularis)、トビイロヤンマ(Anaciaeschna jaspidea)、ナゴヤサナエ(Stylurus nagoyanus)、ナニワトンボ(Sympetrum gracile)、ハナダカトンボ(Rhinocypha ogasawarensis)、ハネナガチョウトンボ(Rhyothemis severini)、ハネビロエゾトンボ(Somatochlora clavata)、ヒヌマイトトンボ(Mortonagrion hirosei)、ベッコウトンボ(Libellula angelina)、マダラナニワトンボ(Sympetrum maculatum)、ミナミトンボ(Hemicordulia mindana nipponica)、ミヤジマトンボ(Orthetrum poecilops)およびメガネサナエ(Stylurus oculatus)等のトンボ目;アカハネバッタ(Celes akitanus)、マボロシオオバッタ(Ogasawaracris gloriosus)およびオガサワライナゴ(Oxya ogasawarensis)等のバッタ目;イシガキニイニイ(Platypleura albivannata)、イトアメンボ(Hydrometra albolineata)、エグリタマミズムシ(Heterotrephes admorsus)、エサキタイコウチ(Laccotrephes maculatus)、エノキカイガラキジラミ(Celtisaspis japonica)、オオサシガメ(Triatoma rubrofasciata)、カワムラナベブタムシ(Aphelocheirus kawamurae)、クロイワゼミ(Muda kuroiwae)、ケブカオヨギカタビロアメンボ(Xiphovelia boninensis)、ケヤキワタムシ(Hemipodaphis persimilis)、コオイムシ(Appasus japonicus)、コバンムシ(Ilyocoris cimicoides exclamationis)、ゴミアシナガサシガメ(Myiophanes tipulina)、シオアメンボ(Asclepios shiranui)、シロウミアメンボ(Halobates matsumurai)、ダイトウヒメハルゼミ(Euterpnosia chibensis daitoensis)、タイワンコオイムシ(Diplonychus rusticus)、タイワンタイコウチ(Laccotrephes grossus)、タイワンタガメ(Lethocerus indicus)、タガメ(Kirkaldyia deyrolli)、チャマダラキジラミ(Cacopsylla maculipennis)、チョウセンケナガニイニイ(Suisha coreana)、ツツジコブアブラムシ(Elatobium itoe)、トゲアシアメンボ(Limnometra femorata)、トゲナベブタムシ(Aphelocheirus nawae)、ハウチワウンカ(Trypetimorpha japonica)、ハシバミヒゲナガアブラムシ(Unisitobion corylicola)、ハハジマハナカメムシ(Kitocoris hahajima)、フサヒゲサシガメ(Ptilocerus immitis)、ブチヒゲツノヘリカメムシ(Dicranocephalus medius)およびムニンヤツデキジラミ(Cacopsylla boninofatsiae)等のカメムシ目;
アイヌキンオサムシ(Carabus kolbei)、アオキクスイカミキリ(Phytoecia coeruleomicans)、アオナミメクラチビゴミムシ(Yamautidius anaulax)、アオノネクイハムシ(Donacia frontalis)、アオヘリアオゴミムシ(Chlaenius praefectus)、アカガネオサムシ(Carabus granulatus)、アカツヤドロムシ(Zaitzevia rufa)、アカムネハナカミキリ(Macropidonia ruficollis)、アサカミキリ(Thyestilla gebleri)、アブクマナガチビゴミムシ(Trechiama abcuma)、アマミスジアオゴミムシ(Haplochlaenius insularis)、アマミナガゴミムシ(Pterostichus plesiomorphs)、アマミマルバネクワガタ(Neolucanus protogenetivus)、アヤスジミゾドロムシ(Graphelmis shirahatai)、アラゲオガサワラカミキリ(Boninella hirsuta)、イカリモンハンミョウ(Abroscelis anchoralis)、イスミナガゴミムシ(Pterostichus isumiensis)、イリオモテボタル(Rhagophthalmus ohbai)、イワタメクラチビゴミムシ(Daiconotrechus iwatai)、ウスケメクラチビゴミムシ(Rakantrechus mirabilis)、エゾゲンゴロウモドキ(Dytiscus marginalis czerskii)、オオイチモンジシマゲンゴロウ(Hydaticus pacificus conspersus)、オオクワガタ(Dorcus hopei binodulosus)、オオズウミハネカクシ(Liparocephalus tokunagai)、オオキバナガミズギワゴミムシ(Bembidion sumaoi)、オオコブスジコガネ(Omorgus chinensis)、オオヒラタトックリゴミムシ(Oodes virens)、オオメクラゲンゴロウ(Morimotoa gigantea)、オガサワラアオゴミムシ(Chlaenius ikedai)、オガサワラオビハナノミ(Glipa ogasawarensis)、オガサワラキボシハナノミ(Hoshihananomia trichopalpis)、オガサワラキンオビハナノミ(Variimorda inomatai)、オガサワラクチキゴミムシ(Morion boninense)、オガサワラトビイロカミキリ(Allotraeus boninensis)、オガサワラハンミョウ(Cylindera bonina)、オガサワラムツボシタマムシ(Chrysobothris boninensis)、オガサワラムネスジウスバカミキリ(Nortia kusuii)、オガサワラモリヒラタゴミムシ(Colpodes laetus)、オガサワラモンハナノミ(Tomoxia relicta)、オキナワサビカミキリ(Diboma costata)、オキナワスジゲンゴロウ(Prodaticus vittatus)、オキナワマルバネクワガタ(Neolucanus okinawanus)、オビヒメコメツキモドキ(Anadastus pulchelloides)、カガミムカシゲンゴロウ(Phreatodytes latiusculus)、カダメクラチビゴミムシ(Trechiama morii)、カミヤコガシラミズムシ(Haliplus kamiyai)、カワラハンミョウ(Chaetodera laetescripta)、キイロコガシラミズムシ(Haliplus eximius)、キイロホソゴミムシ(Drypta fulveola)、キタノツブゲンゴロウ(Laccophilus vagelineatus)、キタヤマメクラチビゴミムシ(Stygiotrechus kitayamai)、キバネキバナガミズギワゴミムシ(Bembidion aestuarii)、ギフムカシゲンゴロウ(Phreatodytes elongatus)、キベリマルクビゴミムシ(Nebria livida angulata)、キボシチビコツブゲンゴロウ(Neohydrocoptus bivittis)、キムネキボシハナノミ(Hoshihananomia ochrothorax)、キュウシュウコルリクワガタ(Platycerus viridicuprus kanadai)、ギョウトクコミズギワゴミムシ(Paratachys gyotokuensis)、キンモンオビハナノミ(Glipa asahinai)、クシヒゲアリヅカムシ(Ctenistes oculatus)、クスイキボシハナノミ(Hoshihananomia kusuii)、クチキゴミムシ(Morion japonicum)、クメジマボタル(Luciola owadai)、クロサワオビハナノミ(Glipa kurosawai)、クロホシコガシラミズムシ(Haliplus basinotatus)、ケスジドロムシ(Pseudamophilus japonicus)、ケズネオガサワラカミキリ(Boninella anoplos)、ケバネメクラチビゴミムシ(Chaetotrechiama procerus)、ケハラゴマフカミキリ(Mesosa hirtiventris)、ケブカオガサワラカミキリ(Boninella takakuwai)、ゲンゴロウ(Cybister chinensis)、コオナガミズスマシ(Orectochilus punctipennis)、コカシメクラチビゴミムシ(Kusumia australis)、コガタガムシ(Hydrophilus bilineatus cashimirensis)、コガタノゲンゴロウ(Cybister tripunctatus lateralis)、コクロオバボタル(Lucidina okadai)、コシマチビゲンゴロウ(Nebrioporus hostilis)、コセスジゲンゴロウ(Copelatus parallelus)、コハンミョウモドキ(Elaphrus punctatus)、コミズスマシ(Gyrinus curtus)、サツマキバナガミズギワゴミムシ(Bembidion nakamurai)、サトウオガサワラカミキリ(Boninella satoi)、サトウカラヒメドロムシ(Sinonychus satoi)、シジミガムシ(Laccobius bedeli)、ジャアナヒラタゴミムシ(Jujiroa ana)、シャープゲンゴロウモドキ(Dytiscus sharpi)、ズグロヒメハナノミ(Ermischiella nigriceps)、スナハラゴミムシ(Diplocheila elongata)、スリカミメクラチビゴミムシ(Trechiama oopterus)、セスジアカガネオサムシ(Carabus maeander)、セスジガムシ(Helophorus auriculatus)、セスジマルドロムシ(Georissus granulosus)、セダカオサムシ(Cychrus morawitzi)、セマルヒメドロムシ(Orientelmis parvula)、ダイコクコガネ(Copris ochus)、ダイトウスジヒメカタゾウムシ(Ogasawarazo daitoensis)、ダイトウヒラタクワガタ(Dorcus titanus daitoensis)、タカモリメクラチビゴミムシ(Stygiotrechus kadanus)、チビアオゴミムシ(Eochlaenius suvorovi)、チャイロヒメカミキリ(Ceresium simile simile)、チャバネエンマコガネ(Onthophagus gibbulus)、チュウブホソガムシ(Hydrochus chubu)、チョウセンゴモクムシ(Harpalus crates)、ツヅラセメクラチビゴミムシ(Rakantrechus lallum)、ツマキレオナガミズスマシ(Orectochilus agilis)、ツマベニタマムシ(Tamamushia virida)、ツヤキベリアオゴミムシ(Chlaenius spoliatus motschulskyi)、ツヤケシマグソコガネ(Aphodius gotoi)、ドウキョウオサムシ(Carabus uenoi)、トサムカシゲンゴロウ(Phreatodytes sublimbatus)、トサメクラゲンゴロウ(Morimotoa morimotoi)、トダセスジゲンゴロウ(Copelatus nakamurai)、ナカオメクラチビゴミムシ(Trechiama nakaoi)、ナカジマツブゲンゴロウ(Laccophilus nakajimai)、ニセコケシゲンゴロウ(Hyphydrus orientalis)、ニセチャイロヒメハナノミ(Falsomordellistena rosseoloides)、ニセミヤマヒメハナノミ(Falsomordellistena pseudalpigena)、ノブオフトカミキリ(Peblephaeus nobuoi)、ハガマルヒメドロムシ(Optioservus hagai)、ハチジョウヒラタクワガタ(Dorcus titanus hachijoensis)、ハハジマヒメカタゾウムシ(Ogasawarazo mater)、
ハハジマモリヒラタゴミムシ(Colpodes yamaguchii)、ハラビロハンミョウ(Lophyridia sumatrensis niponensis)、ヒゲシロアラゲカミキリ(Bonipogonius fujitai)、ヒサマツサイカブト(Oryctes hisamatsui)、ヒメオガサワラカミキリ(Boninella igai)、ヒメカタゾウムシ(Ogasawarazo rugosicephalus)、ヒメケシゲンゴロウ(Hyphydrus laeviventris laeviventris)、ヒメフチトリゲンゴロウ(Cybister rugosus)、ヒメミズスマシ(Gyrinus gestroi)、フサヒゲルリカミキリ(Agapanthia japonica)、フタモンアメイロカミキリ(Pseudiphra bicolor)、フタモンマルクビゴミムシ(Nebria pulcherrima)、フチトリゲンゴロウ(Cybister limbatus)、ホソガムシ(Hydrochus aequalis)、ホソハンミョウ(Cylindera gracilis)、ボニンヒメハナノミ(Falsomordellistena formosana boninensis)、マスゾウメクラチビゴミムシ(Suzuka masuzoi)、マイキンオビハナノミ(Variimorda maiae)、マークオサムシ(Carabus maacki)、マダラゲンゴロウ(Rhantaticus congestus)、マダラコガシラミズムシ(Haliplus sharpi)、マダラシマゲンゴロウ(Hydaticus thermonectoides)、マックレイセアカオサムシ(Carabus macleayi)、マルガタゲンゴロウ(Graphoderus adamsii)、マルコガタノゲンゴロウ(Cybister lewisianus)、マルダイコクコガネ(Copris brachypterus)、ミイロトラカミキリ(Xylotrechus takakuwai)、ミカワオサムシ(Carabus arrowianus)、ミズスマシ(Gyrinus japonicus)、ミチノクケマダラカミキリ(Agapanthia sakaii)、ムコジマオガサワラカミキリ(Boninella karubei)、ムコジマキイロトラカミキリ(Chlorophorus masatakai)、ムコジマトラカミキリ(Chlorophorus kusamai)、ムツボシツヤコツブゲンゴロウ(Canthydrus politus)、ムモンチビコツブゲンゴロウ(Neohydrocoptus sp.)、モニワメクラチビゴミムシ(Trechiama paucisaeta)、ヤクシマエンマコガネ(Onthophagus yakuinsulanus)、ヤシャゲンゴロウ(Acilius kishii)、ヤマアリヤドリ(Thiasophila shinanonis)、ヤンバルテナガコガネ(Cheirotonus jambar)、ヨコハマナガゴミムシ(Pterostichus yokohamae)、ヨコミゾドロムシ(Leptelmis gracilis)、ヨツボシカミキリ(Stenygrinum quadrinotatum)、ヨドシロヘリハンミョウ(Callytron inspecularis)、ヨナグニマルバネクワガタ(Neolucanus insulicola donan)、リュウキュウヒメミズスマシ(Gyrinus ryukyuensis)、リュウノイワヤツヤムネハネカクシ(Quedius kiuchii)、リュウノメクラチビゴミムシ(Awatrechus hygrobius)、ルイスツブゲンゴロウ(Laccophilus lewisius)、ルイスハンミョウ(Cicindela lewisi)、ロミキンオビハナノミ(Variimorda hiromiae)、ワタナベヒメハナノミ(Falsomordellistena watanabei)およびワタラセハンミョウモドキ(Elaphrus sugai)等のコウチュウ目;
アサヒナハキリバチ(Megachile asahinai)、イケダメンハナバチ(Hylaeus ikedai)、エゾアカヤマアリ(Formica yessensis)、オオナギナタハバチ(Megaxyela togashii)、オガサワラアナバチ(Isodontia boninensis)、オガサワラギングチバチ(Lestica rufigaster)、オガサワラキホリハナバチ(Lithurgus ogasawarensis)、オガサワラセイボウ(Chrysis boninensis)、オガサワラツヤハナバチ(Ceratina boninensis)、オガサワラメンハナバチ(Hylaeus boninensis)、オガサワラヤドリキバチ(Orussus boninensis)、ガマアシナガアリ(Aphaenogaster gamagumayaa)、キアシハナダカバチモドキ(Stizus pulcherrimus)、キムネメンハナバチ(Hylaeus incomitatus)、チチジマヌカダカバチ(Tachysphex morosus titidzimaensis)、チチジマピソン(Pison tosawai)、ツヤカバフドロバチ(Pararrhynchium oceanicum)、トゲアリ(Polyrhachis lamellidens)、ニッポンハナダカバチ(Bembix niponica)、ノヒラセイボウ(Chrysis nohirai)、ハハジマピソン(Pison hahadzimaense)、ヤスマツメンハナバチ(Hylaeus yasumatsui)、ヤツシロハマダラカ(Anopheles yatsushiroensis)およびヨナクニウォレスブユ(Simulium yonakuniense)等のハチ目;イソメマトイ(Hydrotaea glabricula)、カニギンモンアミカ(Neohapalothrix kanii)、キスジモモブトモリカ(Hyperoscelis eximia insignis)、クロオドリバエモドキ(Hilarimorpha nigra)、クロモモブトモリカ(Hyperoscelis veternosa)、ケンランアリノスアブ(Microdon katsurai)、ゴヘイニクバエ(Sarcophila japonica)、サツマツノマユブユ(Simulium satsumense)、ニホンアミカモドキ(Deuterophlebia nipponica)、ヒメケヅメカ(Symmerus akikoae )およびヨナハニクバエ(Sarcophaga yonahaensis)等のハエ目;
アカセセリ(Hesperia florinda florinda)、アキヨシトガリエダシャク(Hypoxystis pulcheraria)、アサギリヨトウ(Sideridis incommoda)、アサヒナキマダラセセリ(Ochlodes subhyalinus asahinai)、アサマシジミ(Plebejus subsolanus)、アシナガモモブトスカシバ(Macroscelesia longipes yamatoensis)、イチモジヒメヨトウ(Xylomoia fusei)、ウスイロオナガシジミ(Antigius butleri)、ウスイロヒョウモンモドキ(Melitaea protomedia)、ウラギンスジヒョウモン(Argyronome laodice japonica)、ウラナミジャノメ(Ypthima multistriata)、エゾクシヒゲモンヤガ(Pseudohermonassa velata)、エゾスジヨトウ(Doerriesa striata)、オイワケクロヨトウ(Lacanobia aliena)、オオイチモンジ(Limenitis populi jezoensis)、オオウラギンヒョウモン(Fabriciana nerippe)、オオチャバネヨトウ(Nonagria puengeleri)、オオルリシジミ(Shijimiaeoides divinus)、オガサワラシジミ(Celastrina ogasawaraensis)、オガサワラシロガ(Chasmina takakuwai)、オガサワラセセリ(Parnara ogasawarensis)、オガサワラヒゲヨトウ(Dasypolia fani)、カシワアカシジミ(Japonica onoi)、カバシタムクゲエダシャク(Sebastosema bubonaria)、ガマヨトウ(Capsula aerata)、キスジウスキヨトウ(Capsula sparganii)、ギフチョウ(Luehdorfia japonica)、キュウシュウスジヨトウ(Doerriesa coenosa)、ギンモンアカヨトウ(Plusilla rosalia)、クシロモクメヨトウ(Xylomoia graminea)
クモマツマキチョウ(Anthocharis cardamines)、クロコシロヨトウ(Leucapamea hikosana)、クロシジミ(Niphanda fusca)、クロヒカゲモドキ(Lethe marginalis)、クロフカバシャク(Archiearis notha okanoi)、ゴイシツバメシジミ(Shijimia moorei moorei)、コヒョウモンモドキ(Melitaea ambigua niphona)、ゴマシジミ(Phengaris teleius)、コンゴウミドリヨトウ(Staurophora celsia)、サキシマオオエダシャク(Amraica kimurai)、サキシマウスクモナミシャク(Heterophleps endoi)、シラユキコヤガ(Eulocastra sasakii)、シルビアシジミ(Zizina emelina)、スキバホウジャク(Hemaris radians)、ソトオビエダシャク(Isturgia arenacearia)、タイワンツバメシジミ(Everes lacturnus)、タイワンモンシロチョウ(Pieris canidia)、タカネキマダラセセリ(Carterocephalus palaemon)、タカネヒカゲ(Oeneis norna)、チャホシホソバナミシャク(Brabira kasaii)、チャマダラセセリ(Pyrgus maculatus maculatus)、チョウセンアカシジミ(Coreana raphaelis yamamotoi)、ツシマウラボシシジミ(Pithecops fulgens tsushimanus)、ツマグロキチョウ(Eurema laeta betheseba)、ツマジロウラジャノメ(Lasiommata deidamia)、ヌマベウスキヨトウ(Chilodes pacificus)、ノシメコヤガ(Sinocharis korbae)、ハマヤマトシジミ(Zizeeria karsandra)、ヒトスジシロナミシャク(Epirrhoe hastulata)、ヒメイチモンジセセリ(Parnara bada)、ヒメカクモンヤガ(Chersotis deplanata)、ヒメシロチョウ(Leptidea amurensis)、ヒメチャマダラセセリ(Pyrgus malvae unomasahiroi)、ヒメヒカゲ(Coenonympha oedippus)、ヒョウモンチョウ(Brenthis daphne)、ヒョウモンモドキ(Melitaea scotosia)、ヒロバカレハ(Gastropacha quercifolia)、ベニモンマダラ(Zygaena niphona)、ヘリグロヒメヨトウ(Condica illustrata)、ホシチャバネセセリ(Aeromachus inachus inachus)、マガリスジコヤガ(Protodeltote wiscotti)、ミスズコヤガ(Paraphyllophila confusa)、ミスジコスカシバ(Scalarignathia montis)、ミツモンケンモン(Cymatophoropsis trimaculata)、ミヤノスゲドクガ(Laelia miyanoi)、ミヤマシジミ(Plebejus argyrognomon praeterinsularis)、ミヤマシロチョウ(Aporia hippia japonica)、ミヨタトラヨトウ(Oxytrypia orbiculosa)、ヤマキチョウ(Gonepteryx maxima maxima)およびルーミスシジミ(Panchala ganesa loomisi)等のチョウ目;
準絶滅危惧(NT)として、オオヒョウタンゴミムシ(Scarites sulcatus)、シマゲンゴロウ(Prodaticus bowringii)、ガムシ(Hydrophilus acuminatus)、ミクラミヤマクワガタ(Lucanus gamunus)、ヤエヤママルバネクワガタ(Neolucanus insulicola insulicola)、キンオニクワガタ(Prismognathus dauricus)、オオチャイロハナムグリ(Osmoderma opicum)、ミヤコマドボタル(Pyrocoelia miyako)、オガサワラビロウドカミキリ(Acalolepta boninensis)、オガサワラトラカミキリ(Chlorophorus boninensis)、オガサワラキイロトラカミキリ(Chlorophorus kobayashii)、オガサワラモモブトコバネカミキリ(Merionoeda tosawai)、オガサワラゴマフカミキリ(Mesosa rufa)、オガサワラコバネカミキリ父島亜種(Psephactus scabripennis chichijimensis)、オガサワライカリモントラカミキリ(Xylotrechus ogasawarensis)、オオルリハムシ(Chrysolina virgata)、アカガネネクイハムシ(Donacia hirtihumeralis)およびキンイロネクイハムシ(Donacia japana)等のコウチュウ目;
タカネキマダラセセリ飛騨山脈亜種(Carterocephalus palaemon satakei)、ギンイチモンジセセリ(Leptalina unicolor)、スジグロチャバネセセリ名義タイプ亜種(Thymelicus leoninus leoninus)、ヒメギフチョウ本州亜種(Luehdorfia puziloi inexpecta)、ウスバキチョウ(Parnassius eversmanni daisetsuzanus)、クモマツマキチョウ北アルプス・戸隠亜種(Anthocharis cardamines isshikii)、ミヤマモンキチョウ浅間連山亜種(Colias palaeno aias)、イワカワシジミ(Artipe eryx okinawana)、ベニモンカラスシジミ名義タイプ亜種(四国亜種"(Fixsenia iyonis iyonis)、カバイロシジミ(Glaucopsyche lycormas)、オオゴマシジミ(Phengaris arionides takamukui)、ゴマシジミ北海道・東北亜種(Phengaris teleius ogumae)、リュウキュウウラボシシジミ(Pithecops corvus ryukyuensis)、ヒメシジミ本州・九州亜種(Plebejus argus micrargus)、キマダラルリツバメ(Spindasis takanonis)、クロツバメシジミ九州沿岸・朝鮮半島亜種(Tongeia fischeri caudalis)、Vacciniina optilete daisetsuzana)、ヒョウモンチョウ北海道・本州北部亜種(Brenthis daphne)、Clossiana freija asahidakeana)、Clossiana iphigenia)、シロオビヒメヒカゲ北海道西部亜種(Coenonympha hero neoperseis)、クモマベニヒカゲ本州亜種(Erebia ligea takanonis)、ベニヒカゲ本州亜種(Erebia neriene niphonica)、アカボシゴマダラ奄美亜種(Hestina assimilis shirakii)、コノハチョウ(Kallima inachus eucerca)、キマダラモドキ(Kirinia fentoni)、シロオビヒカゲ(Lethe europa pavida)、ダイセツタカネヒカゲ(Oeneis melissa daisetsuzana)、タカネヒカゲ飛騨山脈亜種(Oeneis norna asamana)、フタオチョウ(Polyura eudamippus weismanni)、オオムラサキ(Sasakia charonda charonda)、マサキウラナミジャノメ(Ypthima masakii)、リュウキュウウラナミジャノメ(Ypthima riukiuana)、ヤエヤマウラナミジャノメ(Ypthima yayeyamana)およびヨナグニサン(Attacus atlas)等のチョウ目が含まれる。
【0040】
本発明において、調査対象の植物の種類は特に限定されず、調査対象の害虫の種類に応じて、害虫が好んで接触する植物などを適宜選択することができる。たとえば、調査対象の害虫がミカンキジラミである場合、植物は柑橘類およびゲッキツなどであってもよい。また、植物は、イネ、オオムギ、コムギ、ライムギ、オートムギ、トウモロコシおよびコウライ等の穀類;ダイズ、アズキ、ソラマメ、エンドウマメおよびラッカセイ等の豆類;リンゴ、ミカン、オレンジ、レモン、ライム、グレープフルーツ、カリン、マルメロ、ナシ、セイヨウナシ、ニホンナシ、ブドウ、ブルーベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー、イチゴ、モモ、スモモ、ネクタリン、ウメ、オウトウ、アンズ、プルーン、クルミ、ハシバミ、アーモンド、ピスタチオ、カシューナッツ、マカダミアナッツ、バナナ、カキ、オリーブ、ビワ、ナツメヤシ、ココヤシおよびアブラヤシ等の果樹および果実類;キャベツ、トマト、ホウレンソウ、レタス、タマネギ、ネギ、ピーマン、ナス、コールラビ、ハクサイ、カラシナ、ブロッコリー、カリフラワー、シュンギク、アーティチョーク、アスパラガス、パセリ、セロリ、アメリカボウフウおよびフダンソウ等の野菜類;ニンジン、ゴボウ、ジャガイモ、サツマイモ、ヤマノイモ、サトイモ、ダイコン、レンコンおよびカブ等の根菜類;ワタ、アサ、コウゾ、ミツマタ、ナタネ、オイルパーム、ナンヨウアブラギリ、ソバ、ビート、ホップ、サトウキビ、テンサイ、オリーブ、ゴム、コーヒー、タバコ、クワおよびチャ等の加工用作物類;カボチャ、キュウリ、ズッキーニ、スイカおよびメロン等の瓜類;オーチャードグラス、ソルガム、チモシー、クローバーおよびアルファルファ等の牧草類;ノシバ、コウライシバ等のシバ類、ギョウギシバ等のバミューダグラス類、コヌカグサ、ハイコヌカグサ、イトコヌカグサ等のベントグラス類、ナガハグサ、オオスズメノカタビラ等のブルーグラス類、オニウシノケグサ、イトウシノケグサ、ハイウシノケグサ等のフェスク類、ネズミムギ、ホソムギ等のライグラス類、カモガヤおよびオオアワガエリ等の芝類;ラベンダー、ローズマリー、タイム、パセリ、コショウ、トウガラシ、ワサビ、ショウガ、ニンニク、シソ、ミントおよびバジル等のハーブ類;バラ、カーネーション、キク、トルコギキョウ、カスミソウ、ヒマワリ、ガーベラ、マリーゴールド、サルビア、ペチュニア、バーベナ、チューリップ、アスター、リンドウ、ユリ、パンジー、シクラメン、ラン、スズラン、ラベンダー、ストック、ハボタン、プリムラ、ポインセチア、グラジオラス、カトレア、デージー、バーベナ、シンビジューム、ハイビスカス、ブーゲンビリアおよびベゴニア等の花卉類;トネリコ、カバノキ、ハナミズキ、ユーカリ、イチョウ、ライラック、カエデ、カシ、ポプラ、ハナズオウ、フウ、プラタナス、ケヤキ、クロベ、モミノキ、ツガ、ネズ、マツ、トウヒ、イチイ、ニレ、トチノキ、サンゴジュ、イヌマキ、スギ、ヒノキ、クロトン、マサキ、アカギ、シャリンバイ、ガジュマル 、トベラ、ヤブニッケイおよびカナメモチ等の樹木類であってもよい。
【0041】
本発明の方法は、植物から抽出したDNAを鋳型として、害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを用いてPCRを行う工程と、PCRにおける増幅産物を検出する工程とを含む。
【0042】
本発明の方法において、DNAの抽出に用いられる植物の部位は、植物体の一部であれば特に限定されない。たとえば、害虫が接触する可能性の高い部位を選択することができ、たとえば植物の葉、実、茎、根、花、枝および幹などを用いることができる。本発明の方法では、たとえば害虫が食べた跡などの害虫が接触した痕跡が目視で確認できない植物を用いた場合でも、害虫が接触したか否かを検出することが可能である。
【0043】
植物からDNAを抽出する方法は、特に限定されず、フェノール・クロロホルム法およびCTAB法などの公知のDNAの抽出方法を用いることができる。また、DNAは、たとえばNucleoSpin(登録商標) Food(タカラバイオ株式会社製)などの市販のDNA抽出キットを用いて抽出してもよい。
【0044】
PCRの方法は、一般的なPCR法(コンベンショナルPCR法)およびリアルタイムPCR法などを用いることができる。リアルタイムPCR法を用いる場合、インターカレーター法およびハイブリダイゼーション法などを用いることができる。PCRの反応条件には、一般的な反応条件を用いることができ、たとえば94℃30秒、60℃30秒および72℃30秒の3ステップを35~45サイクル行ってもよい。
【0045】
本発明において、検出対象となる害虫由来のDNAには、害虫のゲノムまたはミトコンドリアゲノムに含まれるDNAだけでなく、害虫の共生微生物ゲノムに含まれるDNAも含まれる。害虫由来のDNAとして、たとえば害虫のミトコンドリアゲノムに含まれる遺伝子または害虫の共生微生物の遺伝子などを用いることができる。
【0046】
検出対象となる害虫由来のDNAは、コピー数の多い遺伝子であることができる。コピー数の多い遺伝子は、たとえば複数個体の害虫から得たDNAをランダムに切断したDNA断片の塩基配列を次世代シーケンサ―等により解読し、これらのシークエンスリードをゲノム配列に対してマッピングさせることによって同定することができる。また、全シークエンスリードをde novoアッセンブリ等によりつなぎ合わせてコンティグ配列を作成し、BLAST検索等により害虫および共生微生物の遺伝子配列を決定(予測)することができる。このときに高頻度に出現する遺伝子をコピー数の多い遺伝子として同定することができる。このようにコピー数の多い遺伝子を検出対象とすることにより、検出の精度を高めることができる。
【0047】
害虫の共生微生物は、特に限定されないが、たとえば害虫の唾液腺または腸管に生息する微生物であることができる。このような共生微生物であれば、害虫が植物上に排出する甘露および唾液等の害虫由来物に含まれる可能性が高いため、検出の精度を高めることができる。害虫がミカンキジラミである場合、共生微生物は、たとえばWolbachia属、Carsonella属およびProfftella属細菌などであることができる。
【0048】
PCRプライマーは、害虫由来のDNAを増幅可能なプライマーであれば、特に限定されない。PCRプライマーは、たとえば上述した方法により同定した害虫または共生微生物におけるコピー数の多い遺伝子の配列を増幅するプライマーであることができる。
【0049】
PCRプライマーのフォワードおよびリバースのセットは、増幅産物のサイズが150~300bpとなるように設定されることができる。このようなサイズであれば、一般的なPCR法において電気泳動等により確認しやすく、かつリアルタイムPCR法にも用いることができ、検出方法の選択肢を増やすことができる。
【0050】
害虫がミカンキジラミである場合、PCRプライマーは、たとえば配列番号1~28のいずれかで表される塩基配列における連続した10以上、好ましくは15以上の塩基からなる配列を含んでもよい。PCRプライマーは、たとえば配列番号1~28のいずれかで表される塩基配列からなってもよい。フォワードおよびリバースからなるプライマーセットは、たとえば(1)配列番号1および2、(2)配列番号3および4、(3)配列番号5および6、(4)配列番号7および8、(5)配列番号9および10、(6)配列番号11および12、(7)配列番号13および14、(8)配列番号15および16、(9)配列番号17および18、(10)配列番号19および20、(11)配列番号21および22、(12)配列番号23および24、(13)配列番号25および26、ならびに(14)配列番号27および28の組み合わせであることができる。PCRプライマーは、特に限定されないが、たとえば10~35塩基、好ましくは20~25塩基の長さであることができる。
【0051】
PCRにおける増幅産物を検出する工程では、特に限定されないが、たとえば電気泳動法、インターカレーター法、プローブ法(5'-ヌクレアーゼ法)、サイクリングプローブ検出およびSYBRグリーン法などの任意の方法を用いて増幅産物を検出することができる。電気泳動法には、アガロースゲル電気泳動法およびキャピラリー電気泳動法などが含まれる。また、融解曲線分析により増幅産物を検出してもよい。その結果、害虫に特異的な増幅産物が検出された場合には、植物に害虫が接触したと判定する。害虫に特異的な増幅産物とは、検出対象である害虫由来のDNAの配列を含むDNA断片である。検出する工程では、用いたプライマーセットにより増幅されるべき増幅産物のサイズに基づき、増幅産物が目的の増幅産物であるか否かを判定することができる。たとえば増幅産物の長さを電気泳動等で確認することにより判定してもよい。また、検出する工程では、増幅産物の塩基配列を特定することにより、目的の増幅産物であるか否かを判定してもよい。
【0052】
本発明の方法では、害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーの複数のセットを用いて、それぞれPCRを行う工程と検出する工程とを行ってもよい。そして、少なくとも1つのPCRプライマーのセットにおいて害虫に特異的な増幅産物が検出された場合には、植物に害虫が接触したと判定してもよい。たとえば2つ以上、好ましくは3つ以上、より好ましくは4つ以上のプライマーセットを用いてPCRを行い、少なくとも1つのプライマーセットにおいて害虫に特異的な増幅産物が検出された場合に、植物に害虫が接触したと判定してもよい。複数のプライマーセットを用いることにより、検出の精度をさらに高めることができる。
【0053】
複数のプライマーセットのそれぞれによって増幅されるDNA断片は、全て同じゲノム由来のDNAであってもよいし、少なくとも2つ以上の異なるゲノム由来のDNAを含んでもよい。すなわち、複数のプライマーセットは、特に限定されないが、全て同じゲノム由来のDNAを増幅可能なプライマーセットであってもよいし、複数のプライマーセットのいくつかまたは全てがそれぞれ異なるゲノム由来のDNAを増幅可能なプライマーセットであってもよい。たとえば、複数のプライマーセットのそれぞれによって増幅されるDNA断片は、害虫のゲノム由来のDNA、害虫のミトコンドリアゲノム由来のDNAまたは害虫の共生微生物ゲノム由来のDNAのいずれかまたはこれらの組み合わせであってもよい。また、複数のプライマーセットのいくつかまたは全ては、害虫における複数の共生微生物のそれぞれのゲノム由来のDNAを増幅可能なプライマーセットであってもよい。
【0054】
害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーは、害虫ゲノム、害虫ミトコンドリアゲノムおよび害虫の共生微生物のゲノムの配列から設計してもよい。また、PCRプライマーは、調査対象の害虫におけるコピー数の多い遺伝子の配列から設計してもよい。
【0055】
本発明の方法は、次世代シーケンシング(NGS)を用いて、調査対象の害虫におけるコピー数の多い遺伝子を同定し、当該遺伝子の配列から害虫由来のDNAを増幅可能なPCRプライマーを設計する工程をさらに含んでもよい。
【0056】
コピー数の多い遺伝子は、たとえば以下に説明するマッピング法およびコンティグ法などにより同定することができる。まず、複数個体の害虫から得たDNAをランダムに切断したDNA断片の塩基配列を次世代シーケンシング(NGS)等により解読し、シークエンスリードを得る。マッピング法では、得られたシークエンスリードを、害虫のゲノム配列、害虫のミトコンドリアのゲノム配列および害虫の共生微生物のゲノム配列などに対してマッピングさせる。そして、マッピングされた遺伝子のうち、リード数の多いものを、コピー数の多い遺伝子として同定することができる。また、コンティグ法では、得られたシークエンスリードをde novoアッセンブル等によりつなぎ合わせてコンティグ配列を作成する。得られたコンティグ配列を問合せ配列として、BLAST検索およびFASTA検索等を行い、公開データベースから害虫および共生微生物の遺伝子配列を取得することができる。このときに高頻度に出現する遺伝子をコピー数の多い遺伝子として同定することができる。このようにコピー数の多い遺伝子を検出対象とすることにより、検出の精度を高めることができる。
【0057】
本発明はまた、配列番号1~28のいずれかで表される塩基配列における連続した10以上、好ましくは15以上の塩基からなる配列を含む、植物にミカンキジラミが接触したか否かを検出するための、PCRプライマーを提供する。本発明はまた、以下のフォワードプライマーおよびリバースプライマーの組み合わせからなるプライマーセットを提供する:(1)配列番号1および2、(2)配列番号3および4、(3)配列番号5および6、(4)配列番号7および8、(5)配列番号9および10、(6)配列番号11および12、(7)配列番号13および14、(8)配列番号15および16、(9)配列番号17および18、(10)配列番号19および20、(11)配列番号21および22、(12)配列番号23および24、(13)配列番号25および26、ならびに(14)配列番号27および28。
【0058】
本発明のプライマーセットは、一般的なPCR法(コンベンショナルPCR法)およびリアルタイムPCR法などのPCR法のプライマーセットとして利用することができる。本発明のプライマーセットを用いて、試料を鋳型としてPCR法を行い、増幅断片を検出することによって、植物にミカンキジラミが接触したか否かだけでなく、試料中にミカンキジラミが存在するか否かをも迅速かつ高精度に診断することができる。
【0059】
本発明のPCRプライマーは、1または数個の塩基、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基が、付加、欠失および/または置換されてもよい。本発明のPCRプライマーは、プライマーとしての機能を損なわない範囲で、1または数個の塩基、たとえば1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の塩基が、付加、欠失および/または置換されてもよい。たとえば、PCRプライマーは、5’末端に1または数個の塩基が付加した配列であってもよい。
【0060】
本発明のPCRプライマーは、PCRプライマーを構成するヌクレオチドのいずれかが修飾されていてもよい。たとえば、PCRプライマーは、5’末端のヌクレオチドもしくは3’末端のヌクレオチドまたはその両方が修飾されていてもよい。また、PCRプライマーは、末端以外の内部に位置するヌクレオチドが修飾されていてもよい。修飾には、放射性同位体、酵素、蛍光物質、発光物質および有機化合物などが含まれる。放射性同位体には、32P、33Pおよび35Sなどが含まれる。酵素にはアルカリホスファターゼおよびペルオキシダーゼなどが含まれる。蛍光物質には、Cy2、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、EvaGreen(登録商標)、フルオレセイン(FAM)(商標)、テトラクロロフルオレセイン(TET)(商標)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)(商標)、テトラメチルローダミン(TAMRA)(商標)、JOE(商標)、VIC(登録商標)、NED(商標)、PET(登録商標)、Alexa(登録商標)蛍光色素、テキサスレッド(登録商標)、ローダミンレッドX(ROX)(商標)およびExciton色素などが含まれる。発光物質には、アクリジニウムエステルなどの発光化合物などが含まれる。有機化合物には、ジゴキシゲニンおよびビオチンなどが含まれる。
【0061】
本発明の実施例として、ミカンキジラミの検出方法を以下に記載するが、本発明はミカンキジラミに限定されるものではない。本発明は、調査対象とする任意の害虫(農業害虫および環境モニタリングのための昆虫等)の痕跡をトレースするために使用することが可能である。本発明は、農業現場における害虫のリスク解析ならびに環境モニタリングにおける外来種および在来種の定着調査などに用いることができる。
【実施例】
【0062】
〔1.標的遺伝子の同定〕
まず、ミカンキジラミを検出するための標的遺伝子を同定した。標的となるミカンキジラミ由来遺伝子として、国内の複数の地域から採集した複数個体のミカンキジラミからゲノムを解読し、コピー数が多く検出頻度が高いものを選抜した。
【0063】
ミカンキジラミにおいてコピー数の多い遺伝子及び共生微生物の遺伝子を把握するために、沖縄本島、奄美大島および与論島などの日本国内複数地域から採集した10頭を1群とするミカンキジラミ個体10群の全DNAを、次世代ゲノムシークエンサーIonPGM(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いてシークエンス解読した。それぞれのミカンキジラミにおけるシークエンスリード数および平均のサイズ(bp)を
図1に示す。
【0064】
各シークエンスリード(10群で計6,500,668リード、平均リード長277.4bp)を、(1)ミカンキジラミゲノム(GenBank accession no. AWGM01)、(2)ミカンキジラミミトコンドリアゲノム(MG489916)、(3)Wolbachia wPip (AM999887) 、(4)Wolbachia wMau (CP034335)、(5)Wolbachia phage WO (KX522565)、(6)Carsonella ruddii YCCY (CP012411)および(7)Profftella armature YCPA (CP012591)の各ゲノム配列に対してマッピングした。その結果、(1)ミカンキジラミゲノム(GenBank accession no. AWGM01)に5,543,959リード、(2)ミカンキジラミミトコンドリアゲノム(MG489916)に7,957リード、(3)Wolbachia wPip (AM999887)に95,794リード 、(4)Wolbachia wMau (CP034335)に50,518リード、(5)Wolbachia phage WO (KX522565)に11,026リード、(6)Carsonella ruddii YCCY (CP012411)に55,203リードおよび(7)Profftella armature YCPA (CP012591)に147,512リードがそれぞれマッピングされた。マッピングされた遺伝子のうちリード数が多いものを、国内ミカンキジラミ個体で共通してコピー数が多い遺伝子として、ミカンキジラミミトコンドリアゲノムおよび共生細菌ゲノムより見出すことができた。
【0065】
また、解読したシークエンスリードのうち1群について、de novoアッセンブルによってコンティグ配列を223個作成した。これらのコンティグ配列の平均の長さは878bp、N50は878bpであった。これらのコンティグ配列を問合せ配列としてBLAST検索を行った結果、143個がミカンキジラミゲノムの配列であり、27個がミカンキジラミミトコンドリアゲノムの遺伝子の配列であり、16個が共生細菌の1つであるWolbachia pipentisのゲノムの配列であり、2個が共生細菌の1つであるWolbachia phageの配列であり、11個が共生細菌の1つであるCarsonella ruddiiの配列であり、2個が共生細菌の1つであるProfftella armaturaの配列であることを見出した。これらの遺伝子は、ミカンキジラミの個体間差によらずに、コピー数が多く安定して検出される遺伝子といえることから、検出の標的遺伝子として適していることがわかった。
【0066】
ミカンキジラミ及び共生細菌の遺伝子でコピー数が多い領域(ミカンキジラミミトコンドリアゲノムの12S rDNA部分配列、COI部分配列およびNOD4部分配列、Wolbachia pipentisのゲノム部分配列、Wolbachiaファージのゲノム部分配列、Carsonella ruddiiのゲノム部分配列ならびにProfftella armaturaのゲノム部分配列)を、リードがマッピングしたリファレンスゲノムの領域及びコンティグ配列をもとに抽出しプライマーを設計した。
【0067】
〔2.プライマーセット設計〕
同定されたコピー数の多い遺伝子の配列をもとに、ミカンキジラミ検出用PCRプライマーセットを設計した。
【0068】
ミカンキジラミ検出用PCRプライマーのうち、ミカンキジラミミトコンドリアゲノム由来遺伝子を標的とするプライマーセット(実施例1~6)を表1に、共生細菌由来遺伝子を標的とするプライマーセット(実施例7~14)を表2に示した。
【0069】
表1に示す配列番号1~12で表される塩基配列からなるPCRプライマーは、ミカンキジラミのミトコンドリアゲノムのDNAを増幅可能なプライマーである。すなわち、実施例1~6のプライマーセットは、ミカンキジラミのミトコンドリアゲノムのDNAを増幅可能なプライマーセットである。
【0070】
表2の配列番号13~16で表される塩基配列からなるPCRプライマーは、ミカンキジラミの共生微生物であるWolbachia pipentisのDNAを増幅可能なプライマーである。表2の配列番号17~20で表される塩基配列からなるPCRプライマーは、ミカンキジラミの共生微生物であるWolbachia phageのDNAを増幅可能なプライマーである。表2の配列番号21~24で表される塩基配列からなるPCRプライマーは、ミカンキジラミの共生微生物であるCarsonella ruddiiのDNAを増幅可能なプライマーである。表2の配列番号25~28で表される塩基配列からなるPCRプライマーは、ミカンキジラミの共生微生物であるProfftella armaturaのDNAを増幅可能なプライマーである。
【0071】
【0072】
【0073】
〔3.ミカンキジラミの検出〕
ミカンキジラミが居たゲッキツ(ミカンキジラミの寄主植物の一つ)の葉を用いて、本実施例のPCRプライマーによるミカンキジラミの検出が可能かを検討した。
【0074】
ミカンキジラミ個体(成虫および幼虫)ならびにミカンキジラミが居たゲッキツ葉のそれぞれからDNAを抽出した。ミカンキジラミが居たゲッキツ葉は、ミカンキジラミを取り除いた後、表面をエタノールで洗浄し、葉の一部を切断し、DNAを抽出した。DNA抽出は、NucleoSpin(登録商標) Food(タカラバイオ株式会社製)を用いて行った。
【0075】
本実施例では、PCRは、94℃4分、(94℃30秒、60℃30秒、72℃30秒)を40サイクル、72℃7分の条件で行ったが、本発明はこの条件に限定されない。PCRは、たとえば非特許文献3に記載の条件と同じ条件で行うことができる。PCR試薬はTaKaRa Ex Taq(登録商標) HS(タカラバイオ株式会社製)を用いたが、本発明では特に限定されず、市販の試薬等を用いることができる。
【0076】
PCR産物を電気泳動で確認した結果を
図2~
図5に示す。ミカンキジラミ個体(成虫および幼虫)から抽出したDNAを鋳型としたPCR(
図2~5のレーン3および4)では、実施例1~14の全てのプライマーセット(12S-rDNA-1、12S-rDNA-2、COI-1、COI-2、NOD4-1、NOD4-2、Wol-1、Wol-2、wφ-1、wφ-2、Car-1、Car-2、Prof-1およびProf-2)によりミカンキジラミを検出できることが分かった。また、ミカンキジラミが居たゲッキツ葉から抽出したDNAを鋳型としたPCR(
図2~5のレーン2)では、いくつかのプライマーセット(12S-rDNA-1、12S-rDNA-2、COI-1、COI-2、NOD4-1、NOD4-2、wφ-2、Prof-1およびProf-2)によりミカンキジラミを検出できた。この結果から、ミカンキジラミが植物に接触したか否かを検出することが可能なプライマーおよびプライマーセットを選抜することができた。
【0077】
〔4.プライマーセットの特異性〕
次に、本実施例のプライマーセットがミカンキジラミを特異的に検出できるものかどうか検討した。ミカンキジラミが生息する奄美大島のゲッキツ葉上から複数の微小昆虫を採集した。採集した昆虫は、それぞれミカンクロアブラムシ、クロバネキノコバエの仲間、ハナカメムシの仲間、ハエの仲間(大;ケース1)およびハエの仲間(小;ケース2)であった。これらの個体からDNAを抽出し、上述の方法でPCRを行った。
【0078】
12S-rDNA-2(実施例2)、COI-2(実施例4)、NOD4-2(実施例6)、Wol-2(実施例8)、wφ-2(実施例10)、Car-2(実施例12)およびProf-2(実施例14)のプライマーセットによるPCRの結果を
図6に示す。
図6に示すように、本実施例の各PCRプライマーセットは、ミカンキジラミを特異的に検出可能であることがわかった。また、本実施例のプライマーセットのいくつかを組み合わせて用いれば、少なくとも1つのプライマーセットで目的の増幅産物が検出された場合にミカンキジラミを検出することが可能であるため、検出精度をより高めることができる。
【0079】
〔5.ミカンキジラミの痕跡を検出〕
ミカンキジラミ寄生履歴のあるゲッキツと寄生履歴のないゲッキツとで、ミカンキジラミの痕跡を正しく判別できるか検討した。ミカンキジラミが寄生していることがわかっているゲッキツ(奄美大島由来)と寄生していないことがわかっているゲッキツ(つくば由来)(
図7)からDNAを抽出し、上述の方法でPCRを行った。実施例2(12S-rDNA-2)、実施例4(COI-2)、実施例6(NOD4-2)および実施例8(Wol-2)のプライマーセットを用いたPCRの結果を
図8に示す。
図8に示すように、ミカンキジラミ寄生履歴のあるゲッキツ(奄美ゲッキツ1~3)からはミカンキジラミが検出されたが、寄生履歴のないゲッキツ(つくばゲッキツ1~3)からはミカンキジラミが検出されなかった。このように、本実施例のプライマーセットにより、ミカンキジラミの寄生履歴の有無を判別することができることが確認できた。
【0080】
〔6.リアルタイムPCR法により検出〕
本実施例のプライマーセットについて、ミカンキジラミの寄生履歴のあるゲッキツと寄生履歴のないゲッキツとを用いて、リアルタイムPCR法における有効性を検討した。リアルタイムPCR法は、インターカレーター法を採用し、TB Green(登録商標) Premix ExTaqII(タカラバイオ株式会社製)を用いたが、本発明ではこれに限定されず、任意の方法および試薬を用いることができる。
【0081】
実施例4(COI-2)、実施例10(Wφ-2)、実施例12(Car2)および実施例14(Prof2)の4つのプライマーセットを用いてリアルタイムPCR法を行った結果を
図9に示す(
図9中、ND=not detected)。
図9に示すように、ミカンキジラミ成虫個体(Dcitri-Afult)からはいずれのプライマーセットでもミカンキジラミが検出された。ミカンキジラミ寄生履歴のあるゲッキツ(Gekkitsu-kijirami-1~28)からも、ほとんどの場合にミカンキジラミの痕跡が検出された。一方、寄生履歴のないゲッキツ(Gekkitsu-Healthy-1~3)では検出されなかった。この結果からも、本実施例のプライマーセットがミカンキジラミの接触を特異的に検出可能であることが示された。
【0082】
また、
図9に示すように、全ての寄生履歴のあるゲッキツにおいて、4つのプライマーセットのうち少なくとも1つのプライマーセットによりミカンキジラミの接触が検出された。このように、4つのプライマーセットを用いて検出することにより、ミカンキジラミの接触を確実に検出できることが示された。
【0083】
〔7.日本各地のミカンキジラミの検出〕
日本各地で採取されたミカンキジラミを対象に、実施例2、4、8、10、12および14のPCRプライマーセットを用いてPCRを行った。ミカンキジラミは、沖縄県名護市・勝山地区、鹿児島県沖永良部島、鹿児島県奄美大島・鹿児島県農業開発総合センター大島支場ガラス室、鹿児島県与論島および鹿児島県徳之島において採取した。PCRの方法は、〔3.ミカンキジラミの検出〕において上述した方法を用いた。
【0084】
実施例2のプライマーセット(12S-2)を用いてPCRを行った結果を
図10に、実施例4のプライマーセット(COI-2)を用いた結果を
図11に、実施例8のプライマーセット(Wol-2)を用いた結果を
図12に、実施例10のプライマーセット(wφ-2)を用いた結果を
図13に、実施例12のプライマーセット(Car-2)を用いた結果を
図14に、実施例14のプライマーセット(Prof-2)を用いた結果を
図15に示す。
図10~15に示す電気泳動図において、レーン1は水(ネガティブコントロール)、レーン2および3は沖縄県名護市・勝山地区のゲッキツから採取したミカンキジラミ、レーン4は勝山地区のシークワーサーから採取したミカンキジラミ、レーン5は鹿児島県沖永良部島で採取したミカンキジラミ、レーン6は鹿児島県奄美大島・鹿児島県農業開発総合センター大島支場ガラス室で採取したミカンキジラミ、レーン7は鹿児島県与論島で採取したミカンキジラミ、レーン8は鹿児島県徳之島で採取したミカンキジラミ、レーン9はD. citri adultを用いたポジティブコントロールを示す。
【0085】
図10~15に示すように、各実施例のプライマーセットはいずれも、採取地域にかかわらずミカンキジラミを検出できることが確認された。
【0086】
〔8.現地調査への利用可能性〕
現在、カンキツグリーニング病感染樹があることがわかっている沖永良部島において、ランダムな各地域よりカンキツおよびゲッキツ(いずれもミカンキジラミの寄主植物)を採取した。それらの植物をエタノール浸漬後、葉表面を洗浄し、洗浄後の葉から上述した方法によりDNAを抽出し、上述した方法によりPCRを実施した。PCRには、実施例2、4、6、8、10、12および14のプライマーセットを用いた。
【0087】
各プライマーセットを用いたPCRの結果を
図16に示す。
図16において、+はPCRによりミカンキジラミが検出されたことを表す。
【0088】
図16に示すように、採取した植物のいくつかにおいてミカンキジラミが検出された。これらの植物は、ミカンキジラミの付着履歴があると判断することができる。
【0089】
また、これらの試料について、非特許文献7に記載の公知のカンキツグリーニング病を特異的に検出可能なプライマーセットを用いてPCRを行ったところ、
図16に示すように、いくつかの試料について陽性結果を得た(
図16のLas606/LSS)。これらの植物は、ミカンキジラミが媒介するカンキツグリーニング病に感染している可能性が高い。本実施例のプライマーセットによりミカンキジラミの付着履歴が検出された試料のほとんどが、カンキツグリーニング病検出プライマーセットでも陽性となった。
【0090】
このように、本発明の方法およびプライマーセットを用いれば、現地において目視によらず植物を盲検的に採取し、ミカンキジラミの付着履歴がある植物を特定することができる。そのため、ミカンキジラミが存在する地域の選定が可能になる。したがって、本発明の方法は、現地のミカンキジラミ存在地域を集中調査することに利用できる。また、ミカンキジラミによって媒介されるカンキツグリーニング病菌の検出も同時に可能であり、感染樹の確認にも利用できる。
【0091】
〔9.ミカンキジラミ付着時間による検出感度の違い〕
ミカンキジラミは、寄主植物(ゲッキツ)にどれくらいの時間付着(共存)した場合に、痕跡を葉に残すかを試験した。具体的には、
図17に示すように、健全ゲッキツの実生苗10cm程度に、複葉1つを残して他の葉を除去し、針穴(空気穴)を多数空けたチャック袋で地上部全体を覆って、中にミカンキジラミ10個体を投入した。投入後、10分、30分、1時間、3時間、24時間または45時間共存させた後、ゲッキツ葉のみを回収した。なお、この間、ミカンキジラミは連続または不連続にゲッキツ葉上に付着し、樹液を吸汁し、その際に、ミカンキジラミ由来のDNAを葉に残すと考えられる。
【0092】
回収したゲッキツ葉は、葉の表面を洗浄後、葉から上述した方法でDNAを抽出し、PCRを実施した。PCRは、〔3.ミカンキジラミの検出〕において上述した方法で行った。PCRには、実施例2、4、6、8、10、12および14のプライマーセットを用いた。
【0093】
各プライマーセットを用いたPCRの結果を
図18に示す。
図18において、+はPCRによりミカンキジラミが検出されたことを表す。
【0094】
図18に示すように、本実施例のプライマーセットによって、投入後10分でも、ミカンキジラミの痕跡を検出することが可能であった。したがって、本発明の方法を用いれば、ミカンキジラミが植物に短時間付着した場合であっても、その痕跡を検出することが可能であることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、農業分野において、侵入、再侵入、定着およびまん延が疑われるような侵入害虫(越境性害虫)が生産園地に存在しているかを調べるために利用できる。また、本発明は、既存の害虫の園地での発生状況を把握するために利用できる。すなわち、本発明は、農業分野における害虫によるリスク分析およびモニタリングに利用可能である。本発明は、たとえば、植物防疫所および各県の病害虫防除所等における活用が期待できる。
【0096】
また、本発明は、環境分野において、外来種の侵入および在来種の生息をモニタリングすることにも活用できる。本発明は、さらに、たとえば衛生害虫の工場等における痕跡をトレースすることにも利用できる。このように、本発明は、多方面の産業現場での利活用が期待できる。
【配列表】