IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構の特許一覧

<>
  • 特許-散布装置 図1
  • 特許-散布装置 図2
  • 特許-散布装置 図3
  • 特許-散布装置 図4
  • 特許-散布装置 図5
  • 特許-散布装置 図6
  • 特許-散布装置 図7
  • 特許-散布装置 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】散布装置
(51)【国際特許分類】
   A01M 7/00 20060101AFI20241010BHJP
   A01M 21/04 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
A01M7/00 J
A01M21/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021030412
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131456
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(72)【発明者】
【氏名】中村 卓司
(72)【発明者】
【氏名】横地 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 悟
(72)【発明者】
【氏名】前田 知己
(72)【発明者】
【氏名】笠井 健二
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-282524(JP,A)
【文献】特開2013-215127(JP,A)
【文献】米国特許第04439948(US,A)
【文献】特許第6818383(JP,B1)
【文献】実開昭60-165069(JP,U)
【文献】特開2007-259781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 7/00
A01M 21/04
B05B 17/00-17/08
B05D 1/00-7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両にけん引されて移動しながら散布対象を散布する散布装置であって、
移動時に、列をなして植えられた作物を掻き分ける掻き分け部を含み、前記車両に設けられた接続部材に吊り下げられて接続されるカバーユニットと、
前記カバーユニットに形成された空間に前記散布対象を導入するノズルと、を備え、
前記カバーユニットは、上下左右に揺動可能であり、
前記カバーユニットは、前記接続部材に吊り下げられた骨格部及び前記骨格部を覆って空間を形成するカバーを備え、
前記骨格部は、薄板状の滑走部を備える、
散布装置。
【請求項2】
前記接続部材は、前記車両の後端部に接続された接続リンクと、前記車両の後方に突出する支持部から吊り下げられた吊持部とを備える、
請求項1に記載の散布装置。
【請求項3】
前記カバーユニットは、接続リンクを介して前記車両のピッチ方向に揺動可能に前記車両に接続されており、
前記カバーユニットと前記接続リンクを接続する接続部には、前記カバーユニットを前記車両のヨー方向に揺動させる遊びが設けられている、
請求項2に記載の散布装置。
【請求項4】
前記カバーユニットの前方の形状は、前方向に向けて凸となる凸形状を含む、
請求項1から3のうちいずれか1項に記載の散布装置。
【請求項5】
前記掻き分け部には、前方に行くほど高くなる傾斜が設けられている、
請求項1から4のうちいずれか1項に記載の散布装置。
【請求項6】
前記カバーは、柔軟性を備えるシートを含む、
請求項1から5のうちいずれか1項に記載の散布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作物が植えられた圃場では、例えば、雑草を排除するための非選択性除草剤などの薬剤が散布される。圃場に散布された薬剤が育成途中の作物に掛かってしまうと、作物の成長を阻害するおそれがある。そこで、従来、薬剤の飛散を防止しながら畝間を通過して、畝に植えられた作物を避けるようにして薬剤を散布する散布装置がある(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2007-282524号公報
【文献】実用新案登録第3133005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
畝に列をなして植えられた作物を避けるため、畝間を通過するように散布装置を移動させて薬剤を散布するにあたり、例えば、畝の裾部分を散布装置が通過すると、散布装置が畝の起伏によって上下動してしまい、散布装置を安定して移動させることが難しい。散布装置を安定して移動させ、列をなして植えられた作物の間に安定して薬剤などの散布対象を散布できないと、薬剤が作物にまで飛散することを防ぎきれず、作物に薬剤が散布されてしまうおそれがある。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、列をなして植えられた作物の間を安定して移動することにより、作物の間に散布対象を確実に散布できる散布装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決した散布装置は、車両にけん引されて移動しながら散布対象を散布する散布装置であって、移動時に、列をなして植えられた作物を掻き分ける掻き分け部を含み、前記車両に設けられた接続部材に吊り下げられるカバーユニットと、前記カバーユニットに形成された空間に前記散布対象を導入するノズルと、を備え、前記カバーユニットは、上下左右に揺動可能である。
【0007】
また、前記接続部材は、前記車両の後端部に接続された接続リンクと、前記車両の後方に突出する支持部から吊り下げられた吊持部とを備えるものでもよい。
【0008】
また、前記カバーユニットは、接続リンクを介して前記車両のピッチ方向に揺動可能に前記車両に接続されており、前記カバーユニットと前記接続リンクを接続する接続部には、前記カバーユニットを前記車両のヨー方向に揺動させる遊びが設けられているものでもよい。
【0009】
また、前記カバーユニットの前方の形状は、前方向に向けて凸となる凸形状を含むものでもよい。
【0010】
また、前記掻き分け部の前方には、前方に行くほど高くなる傾斜を設けられているものでもよい。
【0011】
また、前記カバーユニットは、前記接続部材に吊り下げられた骨格部及び前記骨格部を覆って空間を形成するカバーを備えるものでもよい。
【0012】
また、前記カバーは、柔軟性を備えるシートを含むものでもよい。
【0013】
また、前記骨格部は、薄板状の滑走部を更に備えるものでもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る散布装置によれば、列をなして植えられた作物の間を安定して移動することにより、作物の間に散布対象を確実に散布できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の畝間散布装置1の斜視図である。
図2】滑走部42及び掻き分け部43を形成する工程の一例を示す図である。
図3】滑走部42及び掻き分け部43を形成する工程の一例を示す図である。
図4】滑走部42及び掻き分け部43を形成する工程の一例を示す図である。
図5】畝間散布装置1の側面図である。
図6】畝間散布装置1の正面図である。
図7】畝間散布装置1が圃場Fに薬剤Lを散布する状態を背面側から見た図である。
図8】畝間散布装置1が圃場Fに薬剤Lを散布する状態を正面側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る畝間散布装置1の実施形態を、図面に基づいて説明する。畝間散布装置1は、畝が設けられた圃場に薬剤を散布する際に利用される。図1は、実施形態の畝間散布装置1の斜視図である。以下の説明においては、トラクタMの進行方向(畝間散布装置1の進行方向)Pを前(前方)とし、トラクタMを後方から見た右側と左側をそれぞれ左(左方)及び右(右方)と定義する。畝間散布装置1は、散布装置の一例である。薬剤は、散布対象の一例である。
【0017】
図1に示すように、畝間散布装置1は、トラクタMにけん引されて走行する。トラクタMは、車両の一例である。畝間散布装置1は、トラクタMに複数、実施形態では3個並べてけん引される。3個の畝間散布装置1は、左右方向に等間隔で並べられている。畝間散布装置1は、3個以外の複数並べられてもよい。畝間散布装置1は、例えば3個、5個、7個、・・・など、奇数で並べられるが、2個または4個等、偶数で並べられていてもよい。
【0018】
畝間散布装置1は、互いに同一の構造をなしている。トラクタMの後端には、トラクタMの後方に突出するフレーム2が接続されている。フレーム2は、左右方向に延在し、トラクタMに近い側に設けられた第1フレーム2Aと、左右方向に延在し、第1フレーム2AよりもトラクタMから遠い側に設けられた第2フレーム2Bと、を備える。畝間散布装置1は、フレーム2を介してトラクタMに接続されている。フレーム2は、支持部の一例である。
【0019】
畝間散布装置1は、例えば、カバーユニット10と、薬剤タンク20と、散布ノズル30と、ポンプ60と、を備える。カバーユニット10は、例えば、骨格部40と、カバー50と、を備える。カバー50は、骨格部40を覆って空間Sを形成する。骨格部40は、例えば、門型フレーム41と、滑走部42と、掻き分け部43と、連結軸44と、取付部45と、支持部46と、を備える。
【0020】
骨格部40は、門型フレーム41を2個備える。門型フレーム41は、正面視して門型をなしている。2個の門型フレーム41は、互いに同一の形状をなしている。門型フレーム41は、例えば金属製の薄板を折り曲げて形成されている。門型フレーム41が薄板であるため、門型フレーム41の形状は、例えば作業員の手作業で容易に変形可能である。2個の門型フレーム41は、前後方向に並べて設けられている。
【0021】
骨格部40は、滑走部42及び掻き分け部43を2本備える。滑走部42及び掻き分け部43は、いずれも1本の板材を加工して形成される。図2から図4は、滑走部42及び掻き分け部43を形成する工程の一例を示す図である。滑走部42及び掻き分け部43を形成するにあたり、図2に示す長尺の板材Xを用意する。続いて、図3に示すように、板材Xの長手方向中央部分にV字状の切り込みZを入れる。続いて、図4に示すように、切り込みZの部分を折り曲げて、端部同士を溶接Yすることで、滑走部42及び掻き分け部43を形成する。
【0022】
カバーユニット10は、例えばそり型であり、2個の門型フレーム41の下端部には、前後方向に延在する滑走部42が設けられている。滑走部42の厚さは、門型フレーム41の厚さと同一である。滑走部42は、薄板状をなし、左右に2本設けられている。滑走部42は、薄板状であるが、滑走部42は、下端部が下方に突出する突出形状を含み、板材の下端部を尖らせて形成されたものでもよい。滑走部42は、前後方向に並べて設けられた2個の門型フレーム41のうち、前側の門型フレーム41よりも前方から後ろ側の門型フレーム41よりも後方まで延在している。
【0023】
カバーユニット10の前方において、掻き分け部43は、滑走部42の前端部からさら延びて設けられている。骨格部40は、左右対象に設けられている。カバーユニット10の前方の形状は、前方に向けて凸となる凸形状を含む。カバーユニット10の前方形状は、掻き分け部43を備えることにより、前方に向けて凸となる凸形状を含む。
【0024】
掻き分け部43は、畝間散布装置1がトラクタMにけん引されて移動する移動時に畝に植えられた作物を掻き分ける。掻き分け部43となるフレームの厚さは、滑走部42の厚さと同一である。掻き分け部43には、前方に行くほど高くなる傾斜が設けられている。掻き分け部43は、前方に行くほど内側に移行する形状をなしている。
【0025】
掻き分け部43における2本のフレームの前端部は、互いに平行になるように折り曲げられている。掻き分け部43における2本のフレームの前端部の間には、連結軸44が掛け渡されている。連結軸44は、掻き分け部43の前端部に固定された筒状の部材である。連結軸44は、トラクタMの幅方向に相当する水平方向(左右方向)に延在する。
【0026】
トラクタMに取り付けられたフレーム2における第1フレーム2Aと畝間散布装置1との間には、トラクタMの後端部に接続された接続リンク3が介在されている。接続リンク3の一端にはリング状の第1接続部3Aが設けられ、他端には、リング状の第2接続部3Bが設けられている。第1フレーム2Aには、U字形状の接続部が設けられている。フレーム2及び接続リンク3は、接続部材の一例である。
【0027】
支持部46は、門型フレーム41の前方上端部と、掻き分け部43における折り曲げられた部分との間にかけ渡されている。門型フレーム41、取付部45、及び支持部46は、1枚の薄板を切断、接触するなどの加工をして設けられている。門型フレーム41の下端部が滑走部42に溶接されて骨格部40が設けられている。
【0028】
図5は、実施形態の畝間散布装置1の側面図である。図6は、実施形態の畝間散布装置1の正面図である。接続リンク3は、第1接続部3Aにおける穴部を第1フレーム2Aの接続部が貫通することによって第1フレーム2Aと接続されている。接続リンク3の第1接続部3Aが第1フレーム2Aの接続部と接続されることにより、接続リンク3は、トラクタMに対して上下左右方向に揺動可能とされている。
【0029】
接続リンク3は、第2接続部3Bにおける穴部を連結軸44が貫通することによって連結軸44と接続されている。接続リンク3における第2接続部3Bの穴部の径は、連結軸44の径より大きい。接続リンク3における第2接続部3Bの左右方向の幅の長さは、連結軸44の長さ(掻き分け部43における2本のフレームの前端部の間の幅)よりも短い。
【0030】
こうして、カバーユニット10は、接続リンク3を介してトラクタMのピッチ方向(トラクタMの幅方向である左右方向を軸とした回転方向)R1に揺動可能にトラクタMに接続されている。また、カバーユニット10と接続リンクを接続する第2接続部3Bには、カバーユニット10をトラクタMのヨー方向(鉛直軸周りの方向)R2に揺動させる遊びが設けられている。
【0031】
前後の門型フレーム41における左右方向中央位置同士の間には、取付部45が掛け渡されている。取付部45の厚さは、門型フレーム41の厚さと同一である。門型フレーム41、滑走部42、掻き分け部43、及び取付部45は、1枚の金属板、例えばステンレス製の板を切断したり折り曲げたりする加工を行って形成されている。金属板は、ステンレス以外の金属製、例えばアルミ製でもよい。金属に代えて他の素材、例えば繊維強化プラスチックなどの樹脂などを用いてもよい。取付部45には、貫通穴が形成されている。
【0032】
2個の門型フレーム41のうち、後方の門型フレーム41における左右方向中央位置には、吊り下げワイヤ4が取り付けられている。吊り下げワイヤ4は、例えば金属製のひも状の部材である。吊り下げワイヤ4は、トラクタMに接続されたフレーム2の第2フレーム2Bに吊り下げられており、骨格部40は、吊り下げワイヤ4によって第2フレーム2Bに吊り下げられている。骨格部40において、掻き分け部43がピッチ方向R1に揺動可能に接続され、門型フレーム41がフレーム2に吊り下げられていることにより、畝間散布装置1は、上下方向Hに移動可能である。吊り下げワイヤ4は、吊持部の一例である。
【0033】
図1に示すように、薬剤タンク20は、例えば、トラクタMの後方におけるフレーム2よりも前方位置に設けられている。薬剤タンク20には、圃場に散布する薬剤が収容されている。薬剤タンク20に収容された薬剤は、例えば液状の薬剤である。薬剤は、液状以外のものでもよい。薬剤は、例えば、泡状でもよい。
【0034】
散布ノズル30は、骨格部40の取付部45に形成された貫通穴を貫通して設けられている。散布ノズル30の吹き出し口は、下方を向いている。散布ノズル30には、散布ホース5が接続されている。散布ホース5は、ポンプ60を介して、薬剤タンク20に接続されている。散布ノズル30は、散布ホース5を介して供給された薬剤をカバーユニット10に形成された空間Sに導入する。
【0035】
カバー50は、骨格部40における2個の門型フレーム41、取付部45、及び支持部46を覆っている。門型フレーム41及び支持部46によってカバー50が支持され、空間Sが形成されるようにカバー50の形状が維持される。カバー50は、例えば、柔軟性を備えるシートを含んで形成されている。このため、門型フレーム41が変形した場合でも、カバー50は、門型フレーム41に変形に追従して変形可能である。カバー50は、半透明である。散布ノズル30及び吊り下げワイヤ4は、いずれもカバー50を貫通して骨格部40に取り付けられている。カバー50は、半透明でなくてもよく、例えば透明でもよいし不透明でもよい。
【0036】
続いて、畝間散布装置1を用いて圃場Fに薬剤Lを散布する手順について説明する。図7は、畝間散布装置1が圃場Fに薬剤Lを散布する状態を背面側から見た図、図8は、畝間散布装置1が圃場Fに薬剤Lを散布する状態を上面側から見た図である。この例では、圃場Fの畝には、作物Dとして大豆が植えられている。
【0037】
圃場Fに薬剤Lを散布するにあたり、まず、トラクタM(図1)に複数の畝間散布装置1を接続する。このとき、複数の畝間散布装置1同士の間の幅は、例えば圃場Fに設けられた畝の幅に合わせて調整される。例えば、作業員は、畝間散布装置1の滑走部42が畝の裾部分を滑走するように複数の畝間散布装置1同士の間の幅を調整する。複数の畝間散布装置1は、例えば、圃場Fにおける畝の幅に合わせて位置の調整がされた状態でフレーム2に取り下げられた状態としておき、フレーム2をトラクタMに取り付けることでトラクタMに接続されるものでもよい。
【0038】
畝間散布装置1をトラクタMに接続したら、トラクタMを圃場Fの端から畝に沿って走行させ、畝間散布装置1を畝に追従させて移動させる。畝間散布装置1を移動させている間、散布ノズル30は、薬剤Lをカバーユニット10に形成された空間S内に導入し、圃場Fにおけるカバーユニット10に囲まれた領域に薬剤Lを散布する。その後、トラクタMによって圃場Fの全領域にわたって畝間散布装置1を移動させて薬剤Lを散布することにより、圃場Fへの薬剤Lの散布が終了する。
【0039】
圃場Fでは、畝間における害虫や雑草を防除するため、畝間に薬剤Lが散布される。ところが、作物Dの生育が進むと、圃場Fにおける畝間は、作物Dの葉などに覆われていく。畝間散布装置1は、畝に追従させて移動する際に、図8に示すように、両側における作物Dを掻き分け部43が前方から掻き分ける。さらに、掻き分け部43によって作物Dが掻き分けられた畝間の上をカバーユニット10が通過し、カバーユニット10に導入された薬剤Lが畝間に散布される。このため、作物Dの葉などに薬剤Lが掛からないようにすることができる。
【0040】
上記の実施形態の畝間散布装置1が移動する圃場Fは、平坦ではないため、畝間散布装置1を畝に追従させて直進させて移動させようとしても、畝間散布装置1は、圃場Fの凹凸に滑走部42を取られてしまう。このとき、畝間散布装置1は、トラクタMのけん引力によって水平かつ前方に移動する方向に力がかかるので、畝間散布装置1の走行が安定せず、薬剤Lを散布する範囲が畝間からずれてしまったり、カバーユニット10を損傷させたりする原因となりえる。
【0041】
また、カバーユニット10が宙に浮いてしまい、カバーユニット10が地面から離れると、カバーユニット10と地面との間に隙間が生じてしまう。この隙間が大きくなると、カバーユニット10内に導入された薬剤が隙間から漏れてしまい、育成中の作物に散布されてしまう可能性が高くなる。
【0042】
この点、カバーユニット10は、上下左右に揺動可能とされている。このため、滑走部42が圃場Fの凹凸に滑走部42が取られた場合でも、カバーユニット10は、上下左右(トラクタMのピッチ方向R1及びヨー方向R2)に揺動しながらトラクタMのけん引力によってやがて水平に直進する方向にスムーズに戻される。したがって、滑走部42は、カバーユニット10の畝に対する追従性を高めることになるので、畝間散布装置1は、畝間を安定して走行する。さらに、カバーユニット10が上下方向に揺動することにより、カバーユニット10が地面から離れて宙に浮いた場合でも、迅速に降下して接地するので、カバーユニット10と地面との間に生じる隙間を小さくすることができる。したがって、薬剤Lが作物Dに散布されることを防ぐことができる。
【0043】
また、上記の実施形態の畝間散布装置1において、カバーユニット10は、トラクタMに接続されたフレーム2に吊り下げワイヤ4によって吊り下げられている。このため、カバーユニット10を上下左右方向に揺動可能な状態でトラクタMに取り付ける際に、簡素な構造とすることができる。
【0044】
また、上記の実施形態において、カバーユニット10は、接続リンク3を介してトラクタMのピッチ方向R1に揺動可能にトラクタMに接続されており、カバーユニット10と接続リンク3を接続する第2接続部3Bには、カバーユニット10をトラクタMのヨー方向R2に揺動させる遊びが設けられている。このため、カバーユニット10を上下左右方向に揺動可能とするための構造を簡素にすることができる。
【0045】
また、カバーユニット10の前方における掻き分け部43の形状は、前方向に向けて凸となる凸形状を含む。このため、カバーユニット10が、トラクタMでけん引されて前方に移動する際に、畝に植えられた作物を掻き分け部43で側方に逃がすことができる。したがって、薬剤の散布領域に対する作物の進入を阻止するので、列をなして植えられた作物の間に薬剤を確実に散布することができ、作物に薬剤が掛かることを好適に防止することができる。
【0046】
また、カバーユニット10における掻き分け部43には、前方に行くほど高くなる傾斜が設けられている。このため、畝間散布装置1が前方に移動する際に、掻き分け部43の先端部が圃場Fの畝などに当たったり刺さったりしにくくされている。したがって、畝間散布装置1をスムーズに前方に移動させることができる。
【0047】
また、カバーユニット10におけるカバー50は、柔軟性を備えるシートを含んで構成されている。このため、骨格部40の大きさや形状に合わせてカバー50を容易に変形させることができるので、カバーユニット10内に導入された薬剤Lがカバーユニット10の側方から漏れ出して作物Dに掛かってしまう事態を防ぐことができる。
【0048】
また、畝間散布装置1が畝に追従して移動する際に、カバーユニット10が地面から離れて宙に浮いた状態となると、カバーユニット10の向きが安定せず、畝に対する追従性が低くなる懸念がある。特に、畝間散布装置1がトラクタMの車輪の轍を通過する際には、カバーユニット10の畝に対する追従性が低くなる傾向にある。この点、滑走部42の下端部は、薄板状をなしている。このため、滑走部42は、圃場Fに食い込みやすくなる。したがって、カバーユニット10の畝に対する追従性を高めることができる。
【0049】
また、カバーユニット10におけるカバーは、半透明である。このため、カバーユニット10の内部の状態を外部から視認することができるので、例えば、散布ノズル30が詰まって薬剤Lがカバーユニット10内に導入されていないなどの不具合が生じた場合でも、このような不具合を畝間散布装置1の外部から察知することができる。
【0050】
上記の実施形態において、薬剤タンク20がトラクタMに設けられているが、薬剤タンク20は、他の位置に設けられていてもよいし、トラクタM以外の場所に設置されていてもよい。散布ノズル30により導入される薬剤は、薬剤タンク20に収容されているが、薬剤は、薬剤タンクに収容されたものでなくてもよい。例えば、骨格部40内に設けられたカートリッジホルダに収められるカートリッジ式の容器に収容された薬剤でもよい。また、上記の実施形態では、散布対象が薬剤であるが、散布対象は薬剤以外でもよい。散布対象は、例えば、肥料でもよい。
【0051】
また、上記の実施形態では、圃場Fで育成される作物Dは大豆であるが、作物Dは、大豆以外の作物でもよい。作物Dは、例えば、ビートなどの畝状に栽培されている作物でもよい。また、上記の実施形態では、吊持部として吊り下げワイヤ4を利用しているが、吊持部は、他の部材、例えば、布製のロープなどでもよい。その他、作物は、畝に植えられるものではなく、列をなして植えられた作物でもよい。
【0052】
また、散布ノズル30に接続される散布ホース5を吊持部として利用してもよい。この場合、吊り下げワイヤ4などの散布ホース5以外の吊持部は不要となるが吊り下げワイヤ4などを併用してもよい。散布ホース5を吊持部として利用する場合には、散布ホース5の外周を補強するなどしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…畝間散布装置
2…フレーム
2A…第1フレーム
2B…第2フレーム
3…接続リンク
4…吊り下げワイヤ
5…散布ホース
10…カバーユニット
20…薬剤タンク
30…散布ノズル
40…骨格部
41…門型フレーム
42…滑走部
43…掻き分け部
44…連結軸
45…取付部
46…支持部
50…カバー
60…ポンプ
D…作物
F…圃場
H…上下方向
L…薬剤
M…トラクタ
P…進行方向
R1…ピッチ方向
R2…ヨー方向
S…空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8