(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】監視されたガス供給プロセスの類似性を決定するための識別分類子を備えた計算システム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241010BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021062646
(22)【出願日】2021-04-01
【審査請求日】2023-12-21
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】コチアディフェロー エドワード
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-184121(JP,A)
【文献】特開2019-125369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/00-23/02
G05D 7/00- 7/06
F16K 31/00-31/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、前記プロセッサに対する実行可能な命令を格納する不揮発性メモリとを含み、
前記命令が、前記プロセッサによる実行に応答して、前記プロセッサに、
監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む監視ガス供給プロセスデータを受信させ、
ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含むゴールデンガス供給プロセスデータを受信させ、
少なくとも1つの人工知能モデルを含む識別分類子を実行させるものであり、
前記識別分類子が、
前記監視ガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
抽出した前記監視ガス供給プロセスデータの特徴と、抽出した前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴とに基づいて、前記監視ガス供給プロセスの類似性値を算出し、
前記類似性値を出力するように構成されている計算システム。
【請求項2】
前記類似性値が構造的類似性値であり、
抽出された前記監視ガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
抽出された前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
前記識別分類子が、前記監視ガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、それらに基づいて前記構造的類似性値を出力するように構成された構造的類似性評価モジュールをさらに含み、
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、前記構造的類似性値を入力として受け付けて、再現性信頼値を算出するように構成された畳み込みニューラルネットワークである、請求項1に記載の計算システム。
【請求項3】
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、第1入力画像から前記監視ガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成された第1人工知能モデルであり、
前記識別分類子が、
第2入力画像から前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成された第2人工知能モデルと、
ユークリッド距離関数を適用して、前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルの出力に基づいて、前記第1入力画像と前記第2入力画像との間の類似性指標値を算出するように構成されたユークリッド距離関数モジュールと、
対照損失関数を適用して、前記類似性指標値に基づいて再現性信頼値を算出するように構成された対照損失関数モジュールと、をさらに含み、
前記類似性値が前記類似性指標値及び前記再現性信頼値の少なくとも1つである、請求項1に記載の計算システム。
【請求項4】
前記第1入力画像及び前記第2入力画像が、複数のチャンネルを有する画素でそれぞれ構成され、前記各画素がある時点に対応するものである請求項3に記載の計算システム。
【請求項5】
前記各チャンネルが個別のセンサ又はバルブに対応するものであり、
前記各チャンネルの前記各画素の強度が、正規化されたセンサの測定値又は正規化されたバルブ位置の値を示す請求項4に記載の計算システム。
【請求項6】
前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルの重みを更新するように構成されたオプティマイザをさらに含む請求項3に記載の計算システム。
【請求項7】
前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルが畳み込みニューラルネットワークであり、
前記第1人工知能モデルの重みと前記第2人工知能モデルの重みとが等しい、請求項3に記載の計算システム。
【請求項8】
前記識別分類子がさらに、
前記再現性信頼値、又は前記再現性信頼値を算出するために使用される前記類似性指標値が、所定の閾値を超えたかを判断し、
前記再現性信頼値又は前記類似性指標値が前記所定の閾値を超えたと判断するとアラームを出力するように構成されている請求項3に記載の計算システム。
【請求項9】
監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含
む監視ガス供給プロセスデータを受信するステップと、
ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含
むゴールデンガス供給プロセスデータを受信するステップと、
少なくとも1つの人工知能モデルを含む識別分類子を実行するステップとを含み、
前記識別分類子が、
前記監視ガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
抽出した前記監視ガス供給プロセスデータの特徴と抽出した前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴とに基づいて、前記監視ガス供給プロセスの類似性値を算出し、
前記類似性値を出力するように構成されたものである計算方法。
【請求項10】
前記類似性値が構造的類似性値であり、
抽出された前記監視ガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
抽出された前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
前記識別分類子が、前記監視ガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、それらに基づいて前記構造的類似性値を出力するように構成された構造的類似性評価モジュールをさらに含み、
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、前記構造的類似性値を入力として受け取り、再現性信頼値を算出するように構成された畳み込みニューラルネットワークである、請求項9に記載の計算方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、第1入力画像から前記監視ガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成された第1人工知能モデルであり、
前記識別分類子が、第2入力画像から前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成された第2人工知能モデルをさらに含み、
前記類似性値を算出するステップが、
ユークリッド距離関数を適用して、前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルの出力に基づいて、前記第1入力画像と前記第2入力画像との間の類似性指標値を算出するステップと、
対照的損失関数を適用することで、前記類似性指標値に基づいて再現性信頼値を算出するステップとを含み、
前記類似性値が前記類似性指標値及び前記再現性信頼値の少なくとも1つである請求項9に記載の計算方法。
【請求項12】
前記第1入力画像及び前記第2入力画像が、複数のチャンネルを有する画素で構成され、当該各画素がある時点に対応するものであり、
前記各チャンネルが個別のセンサ又はバルブに対応し、
前記各チャンネルの前記各画素の強度が、正規化されたセンサの測定値又は正規化されたバルブの位置の値を示すものである請求項11に記載の計算方法。
【請求項13】
前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルの重みを更新するステップをさらに含み、
前記第1人工知能モデルの重みと前記第2人工知能モデルの重みとが等しい請求項11に記載の計算方法。
【請求項14】
再現性信頼値、又は当該再現性信頼値を算出するために使用される類似性指標値が所定の閾値を超えたかを判断するステップと、
前記再現性信頼値又は前記類似性指標値が前記所定の閾値を超えたと判断すると、アラームを出力するステップとをさらに含み、
前記類似性値が、前記類似性指標値及び前記再現性信頼値の少なくとも1つである請求項9に記載の計算方法。
【請求項15】
複数のバルブ及びセンサと、
前記複数のバルブ及びセンサに動作可能に接続されたプロセッサと、
前記プロセッサに動作可能に接続され、監視ガス供給プロセスデータ、ゴールデンガス供給プロセスデータ及び識別分類子を格納する不揮発性メモリとを含むガス供給装置であって、
前記不揮発性メモリが、前記プロセッサによる実行に応答して、前記プロセッサに対する実行可能な命令を格納し、
前記命令が、前記プロセッサに、
監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む前記監視ガス供給プロセスデータを受信させ、
ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む前記ゴールデンガス供給プロセスデータを受信させ、
少なくとも1つの人工知能モデルを含む識別分類子を実行させるものであり、
前記識別分類子が、
前記監視ガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、
抽出した前記監視ガス供給プロセスデータの特徴と、抽出した前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴とに基づいて、前記監視ガス供給プロセスの類似性値を算出し、
前記類似性値を出力するように構成されているガス供給装置。
【請求項16】
前記類似性値は構造的類似性値であり、
抽出された前記監視ガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
抽出された前記ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴が構造的類似性の特徴であり、
前記識別分類子が、前記監視ガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記構造的類似性の特徴を抽出し、それらに基づいて前記構造的類似性値を出力するように構成された構造的類似性評価モジュールをさらに含み、
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、前記構造的類似性値を入力として受け付けて、再現性信頼値を算出するように構成された畳み込みニューラルネットワークである、請求項15に記載のガス供給装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つの人工知能モデルが、第1入力画像から前記監視ガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成された第1人工知能モデルであり、
前記識別分類子が、
第2入力画像から前記ゴールデンガス供給プロセスデータの前記特徴を抽出するように構成されたものであって、その重みが前記第1人工知能モデルの重みと等しい第2人工知能モデルと、
ユークリッド距離関数を適用して、前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルの出力に基づいて、前記第1入力画像と前記第2入力画像との間の類似性指標値を算出するように構成されたユークリッド距離関数モジュールと、
対照損失関数を適用して、前記類似性指標値に基づいて再現性信頼値を算出するように構成された対照損失関数モジュールと、をさらに含み、
前記類似性値が前記類似性指標値及び前記再現性信頼値の少なくとも1つである、請求項15に記載のガス供給装置。
【請求項18】
前記第1入力画像及び前記第2入力画像が複数のチャンネルを有する画素でそれぞれ構成され、前記各画素がある時点に対応するものであり、
前記各チャンネルが個別のセンサ又はバルブに対応するものであり、
前記各チャンネルの前記各画素の強度が、正規化されたセンサの測定値又は正規化されたバルブの位置の値を示すものである、請求項17に記載のガス供給装置。
【請求項19】
前記第1人工知能モデル及び前記第2人工知能モデルが畳み込みニューラルネットワークであり、
前記第1人工知能モデルの重みと前記第2人工知能モデルの重みとが等しい請求項17に記載のガス供給装置。
【請求項20】
前記プロセッサが、
再現性信頼値、又は前記再現性信頼値を算出するために使用され
る類似性指標値が所定の閾値を超えたかを判断し、
前記再現性信頼値又は前記類似性指標値が前記所定の閾値を超えたと判断するとアラームを出力するように更に構成され、
前記類似性値が前記類似性指標値及び前記再現性信頼値の少なくとも1つである請求項15に記載のガス供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月23日に出願された米国仮特許出願第63/042,723号を基礎として優先権を主張するものであり、参照することによりその全体があらゆる目的のために本明細書に取り込まれる。
【背景技術】
【0002】
半導体製造において様々な種類のガスを供給するために使われるガス供給システムの装置では、複数のガス供給路に異なるガスが流され、様々な製造工程に応じてこれらが混合され供給されることがある。各ガス供給流路には、ガスの流量を調整するためにマスフローコントローラが設けられる。
【0003】
あるガス供給システムでは、複数のマスフローコントローラはいずれもネットワークを介して中央制御ユニットに接続されてよく、この中央制御ユニットは、ネットワークを介して遠隔で、複数のマスフローコントローラに対してコマンドを送信し、そしてプロセスのデータを要求する。各マスフローコントローラは、中央制御ユニットからネットワーク経由で送られてくるコマンドに同期して、中央制御ユニットとの間で独自の制御ループを維持する。所定のガス供給プロセスは、例えば半導体プロセスチャンバーのような下流の機器に、1種類又は複数種類のガスを様々な流量と圧力で順次供給することを含んでいる。このガス供給プロセスは、ローカルコンピュータネットワークを介して複数のマスフローコントローラに、流量コマンドと設定とを順次送信することで実現される。制御ユニットは、各マスフローコントローラからフィードバックを受け、これを各マスフローコントローラのフィードバック制御や、品質保証のための実際のガス供給プロセスの記録のために使用する。しかし、高精度な制御を行うためには、センサの解像度が高くなり且つデータの流れが大きくなるので、特にローカルコンピュータネットワークの容量及び帯域幅が制約されている場合には、個々のマスフローコントローラ上のセンサ及びプロセッサからのデータの制御ユニットによるリアルタイムな取得が困難になる場合がある。さらに、たとえそのようなデータが制御ユニットによって取得されたとしても、ガス供給システムの対象プロセス(すなわち、リアルタイムで発生しているカレントプロセス、又は過去に実行され後に分析されるプロセス)を、理想化されたプロセス定義からのわずかな逸脱について監視することは困難である。
【発明の概要】
【0004】
本開示の一態様に係るガス供給装置は、複数のバルブ及びセンサと、前記複数のバルブ及び前記センサに動作可能に接続されたプロセッサと、前記プロセッサに動作可能に接続され、監視ガス供給プロセスデータ、ゴールデンガス供給プロセスのデータ及び識別分類子を格納する不揮発性メモリとを備える。また本開示の一態様に係るガス供給装置は、前記揮発性メモリは、プロセッサによる実行に応答して、前記プロセッサに対する実行可能な命令を格納しており、当該命令は、前記プロセッサに、監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む監視ガス供給プロセスデータを受信させ、ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含むゴールデンガス供給プロセスデータを受信させ、少なくとも1つの人工知能モデルを含む識別分類子を実行させるものである。
また本開示の一態様に係るガス供給装置は、識別分類子が、監視ガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴を抽出し、抽出した監視ガス供給プロセスデータの特徴と、抽出したゴールデンガス供給プロセスデータの特徴とに基づいて、監視ガス供給プロセスの類似性値を算出し、そして類似性値を出力するように構成されている。
【0005】
本概要は、後述する詳細な説明に記載されている概念の一部を簡略化して紹介するものである。本概要は、請求項に記載の対象の主要な特徴または必須の特徴を特定することを意図したものではなく、請求項に記載の対象の範囲を限定するために使用することを意図したものでもない。さらに、請求項に記載の対象は、本開示のいずれかの部分で指摘された任意のまたは全ての欠点を解決する実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】本開示の一実施例によるガス供給システムの概略図。
【
図2】
図1のガス供給システムの一実施例による流量制御回路に関するデータ信号及び制御信号の流れを示す概略図。
【
図3】
図1のガス供給システムの一実施例による監視ガス供給プロセスデータとゴールデンガス供給プロセスデータの一例を示す図。
【
図4】
図1のガス供給システムの一実施例による、3次元配列として具現化された監視ガス供給プロセスデータの一例を示す図。
【
図5A】
図1のガス供給システムの一実施例による、訓練フェーズにおける中央データリポジトリ、監視ガス供給プロセスデータ、ゴールデンガス供給プロセスデータ、及び識別分類子(discriminative classifier)の詳細な概略図。
【
図5B】
図1のガス供給システムの一例による、実行フェーズにおける中央データリポジトリ、監視ガス供給プロセスデータ、ゴールデンガス供給プロセスデータ、及び識別分類子の詳細な概略図。
【
図5C】
図1のガス供給システムの別の一実施例による、中央データリポジトリ、監視ガス供給プロセスデータ、ゴールデンガス供給プロセスデータ、及び識別分類子の詳細な概略図。
【
図6】
図1のガス供給システムの一実施例による、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値(又は類似性尺度)の一例を示す図。
【
図7A】
図1のガス供給システムの一実施例による、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値及び/又は再現性信頼値が所定の閾値よりも低い場合にアラームを出力する第1の方法を示す図。
【
図7B】
図1のガス供給システムの一実施例による、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値及び再現性信頼値を出力し、人工知能モデルを訓練する第2の方法を示す図。
【
図7C】
図1のガス供給システムの別の一実施例による、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値及び/又は再現性信頼値を出力する第3の方法を示す図。
【
図8】
図1及び
図2のガス供給システムで使用される方法が実施され得るコンピュータ環境の一例を示す概略図。
【
図9】
図1のガス供給システムの例示的なグラフィカルユーザインターフェイスを示しており、監視ガス供給プロセスの、ゴールデンガス供給プロセスからの繰り返される逸脱(deviations)又は一過的逸脱(excursions)をユーザに通知するためのアラームを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0007】
上記の課題に鑑み、
図1に示すように、ガス供給システム10は、統合された高速電気バックプレーン18を含んでいる。この高速電気バックプレーン18は、第1のメモリインターフェイス22Aを介してシステムコントローラ12に動作可能に接続され、第2のメモリインターフェイス22Bを介して複数のマスフロー制御回路30A~Pに動作可能に接続され、第3のメモリインターフェイス22Cを介して入出力モジュール20に動作可能に接続され、第4のメモリインターフェイス22Dを介して複数の圧力コントローラ24A~Dに動作可能に接続され、第5のメモリインターフェイス22Eを介して複数の流量比制御回路26A~Dに動作可能に接続されている。ガス供給システム10の集約化(又は集中化、centralization)は、ガス供給システム10の全てのセンサと制御回路を、1つのシステムコントローラ12と1つの中央データリポジトリ15に接続させることによって達成されることが理解されるであろう。典型的には、電気バックプレーン18はプリント回路基板を含み、電気バックプレーンとこれらのシステム要素との間の動作可能な接続は、電気コネクタを介したこれらの要素間の電気的な接続によって達成される。複数のマスフローコントローラ30A~30Pはそれぞれ、例えばプリント回路基板のようなマスフロー制御回路を含む。これらの回路はそれぞれ、電気バックプレーン18のプリント回路基板内における対応する電気コネクタに直接取り付けられている。ガス供給システム10は、筐体11内に収容されるガス供給装置として構成されてもよい。電気バックプレーン18は、典型的には、それに電気的に接続された様々な構成要素間の高速通信のために構成される。さらに、クライアントコンピュータデバイス110は、システムコントローラ12を介してガス供給システム10に動作可能に接続され、システムコントローラ12とデータ通信を行ってもよい。これらのデータ通信は、例えば、ガス供給システム10の指令又はコマンド、流量診断情報、及び流量監視情報を含んでもよい。
【0008】
システムコントローラ12は、プロセッサ12Aと揮発性メモリ12Bとを含む。ある一実施形態では、システムコントローラ12は、SOM(システム・オン・モジュール)として構成されてもよい。プロセッサ12Aは、例えば、マルチコアプロセッサで構成されてもよい。またシステムコントローラ12は、例えば、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)又はASIC(特定用途向け集積回路)回路を組み込んでもよい。またシステムコントローラ12は、中央データリポジトリ15を格納する不揮発性メモリ14に動作可能に接続されており、この中央データリポジトリ15には、監視ガス供給プロセスデータ40と、ゴールデンガス供給プロセスデータ42と、識別分類子44とが格納されている。マスフロー制御回路30A~Pと、流量比制御回路26A~Dと、及び圧力コントローラ24A~Dはそれぞれ、システムコントローラ12及び不揮発性メモリ14とは独立した、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのメモリとを含んでいてもよい。I/Oモジュール20と、コントローラ24A~D、26A~D及び30A~Pとは、代替的に、追加のプロセッサ無しにFPGA回路を含んでもよい。
【0009】
流路長及びケーブル長を短くするために、システムコントローラ12、マスフロー制御回路30A~P、流量比制御回路26A~D、及び圧力コントローラ24A~Dの回路基板は、対応する電気コネクタを介して、電気バックプレーン18のプリント回路基板上に、物理的及び電気的に実装されている。したがって、全てのコントローラは、ガス供給システム10の筐体11内に集約されており、一つの場所でのデータの収集を容易にする。これは、これらのコントローラから遠隔地にデータを送信して遠隔処理及び遠隔保存(リモートストレージ)をするために必要な遅延時間(レイテンシー)及び帯域幅を軽減できるという利点がある。
【0010】
電気バックプレーン18はさらに電力供給部16に動作可能に接続されていてもよい。この電力供給部16は、電気バックプレーン18に物理的に取り付けられている全てのモジュール及びコントローラ(システムコントローラ12、入出力モジュール20、圧力コントローラ24A~D、流量比制御回路26A~D、及びマスフロー制御回路30A~Pを含む)に電力を供給するように構成されている。したがって、ガス供給システム10に必要な電力ケーブルの長さを大幅に短くすることができる。例えば、電力供給部16は、システム内の全てのモジュールで共有される単一の電力供給部DC24V、150Vで構成されてもよい。
【0011】
電気バックプレーン18は、ガス供給システム10全体の基幹(バックボーン)を形成している。電気バックプレーン18には、通信、制御信号及び電力供給部の全てを含むデータが組み込まれているので、システムコントローラ12は、ガス流路内の全てのセンサ及びアクチュエータにリアルタイムにアクセスすることができる。さらにシステムコントローラ12は、中央データリポジトリ15を格納する大規模な高速データ記憶装置である不揮発性メモリ14に動作可能に接続されているので、プロセス後の分析や長期保存のために、監視ガス供給プロセスデータ40に大量のセンサデータ及びアクチュエータデータをリアルタイムに格納することが可能である。
【0012】
電気バックプレーン18は、シリアル通信及び制御ラインのために、高速LVDS(低電圧差動信号)インターフェイス要素を備えた、メインプリント回路基板(PCB)を含んでもよい。しかしながら、PCBは特にLVDS要素に限定されるものではなく、電気的バックプレーン18上で高速データレートを実現するために、他の規格やインターフェイス要素がPCBに代替的に実装されてもよいことが理解されるであろう。
【0013】
電気バックプレーン18は、設定用(for configuration)(設定バス18A)と制御用(制御バス18B)の2つの独立したシリアル通信システムを含んでもよい。これらは、共に動作してもよく、互いに完全に独立して動作してもよく、同時に動作してもよい。システムの起動中、及びジュールとシステムを設定している間、制御バス18Bはスタンバイモードであってもよい。設定及びシステムチェックが完了すると、制御バス18Bは動作モードに移行してもよい。適切な設定データ、モジュール識別データ及び校正データ等が、設定バス18Aを介して、各個別のモジュール20、24A~D、26A~D、30A~Pに転送される。さらに、動作中には、電気バックプレーン18に接続された全てのモジュールの動作ログを含む履歴データが、設定バス18Aを介して転送される。設定バス18Aが、電気バックプレーン18の制御バス18B及びメモリインターフェイス22Aとは独立して動作することが理解されよう。
【0014】
ガス供給システム10では、システムコントローラ12を制御モジュール12とし、マスフロー制御回路30A~P、流量比制御回路26A~D、圧力コントローラ24A~D及び入出力モジュール20を被制御モジュールとすることができる。完全な非同期システムとして、制御モジュール12と、被制御モジュール20、24A~D、26A~D、30A~Pと、電気バックプレーン18とは全て独立して非同期的に動作し、ローカルプロセッサにおける待機状態や強制割り込みはない。電気バックプレーン18は、制御モジュール12と、全ての被制御モジュール20,24A~D,26A~D,30A~Pとの間の全ての通信を処理する全二重のシリアルバスとして機能し、各サイクルにおいて、読み出しデータ及び書き込みデータを同時に転送する。第1のメモリインターフェイス22Aに動作可能に接続されたコプロセッサ13は、システムコントローラ12と、被制御モジュール20、24A~D、26A~D、30A~Pとの間のデータ交換の調停又は調整を行う。他の実施形態では、コプロセッサ13は、第1のメモリインターフェイス22Aに組み込まれてもよい。
【0015】
図2は、第1のマスフロー制御回路30A及び第1の流量比制御回路26Aに関する、データ及び制御信号の流れを描いた例示的な模式図である。簡潔にするために、他の被制御モジュールに関するデータ及び制御信号の流れは、この模式図には示していない。
【0016】
図2を参照して、流量センサ38からのデータ信号の非同期的な流れの一例を説明する。流量センサ38は、第1のマスフロー制御回路30Aに対応する流路内の流量を感知するとともに、第1のマスフロー制御回路30Aに流量信号を送信する。そして、第1のマスフロー制御回路30Aは、第1のマスフロー制御回路30A及び流量センサ38に対応するアドレスをデータ列に埋め込み、埋め込まれたアドレス及び流量信号を含むデータ列を第2のメモリインターフェイス22Bに送る。第2のメモリインターフェイス22Bはデータ列を電気バックプレーン18に向かわせ、電気バックプレーン18はデータ列を第1のメモリインターフェイス22Aに送る。コプロセッサ13は、データ列をデシリアライズし、このデータ列を、第1のマスフロー制御回路30Aに対応する、第1のメモリインターフェイス22Aの読み出しデータレジスタに格納する。この第1のマスフロー制御回路30Aから第1のメモリインターフェイス22Aへのデータ列の送信は、コプロセッサ13による要求をトリガーとして行われてもよい。それから、システムコントローラ12は、第1のマスフロー制御回路30Aに対応する、第1のメモリインターフェイス22Aの読み出しデータレジスタにアクセスし、流量信号が第1のマスフロー制御回路30Aに対応する流量センサ38からのものであることを認識する。そしてこのデータは、不揮発性メモリ14の中央データリポジトリ15内の監視ガス供給プロセスデータ40に格納され、監視ガス供給プロセスデータ40が、識別分類子44を介して後の分析に利用できるようになる。第1の流量比制御回路26Aの温度センサ36からの温度信号と圧力センサ34からの圧力信号は、流量比制御回路26A、第5のメモリインターフェイス22E、電気バックプレーン18、第1のメモリインターフェイス22A及びシステムコントローラ12によって同様に処理され、温度センサ36の温度信号と圧力センサ34の圧力信号とが、監視ガス供給プロセスデータ40に格納されることが理解されるであろう。したがって、システムコントローラ12は、複数のマスフロー制御回路30A~P及び流量比制御回路26A~Dに動作可能に接続された少なくとも複数のセンサ及びバルブから、バルブ位置情報とセンサ情報とを収集し、このバルブ位置情報とセンサ情報とを、不揮発性メモリ14に格納された監視ガス供給プロセスデータ40に格納してもよい。
【0017】
なお、システムコントローラ12は、情報の収集及び記憶に特に限定されるものではなく、また記憶したバルブ位置及びセンサ情報に基づいて演算を行うようにも構成されている。本実施形態では、システムコントローラ12は、動作中のマスフロー制御回路及び動作中の流量比制御回路からのバルブ位置情報及びセンサ情報に基づいて、流量及び制御値を算出するようにも構成されている。例えば、システムコントローラ12は、第1のマスフロー制御回路30Aから、第1の流量制御バルブ32Aの圧力情報、温度情報及びバルブ位置情報を取得すると、流量を算出するとともに、それに応じて新たな適切なバルブ位置を決定し、次いで新たなバルブ位置を第1のメモリインターフェイス22Aに格納してもよい。コプロセッサ13は新しいバルブ位置を第1のマスフロー制御回路30Aに送り返し、そして第1の流量制御バルブ32Aは新しいバルブ位置に調整するようにしてもよい。言い換えれば、システムコントローラ12は、ガス供給システム10のデータを処理し、制御計算を行ってもよい。
【0018】
図2に示すように、本実施形態では、第1のマスフロー制御回路30Aは、バルブ32Aに動作可能に接続されている。第1のマスフロー制御回路30Aは、バルブ32Aに制御信号を送って、バルブ32Aの開度位置を制御してもよい。バルブ32Aは、バルブ32Aの開度位置を示すデータ信号を、第1のマスフロー制御回路30Aに送ってもよい。同様に、第1の流量比制御回路26Aは、バルブ32Bに動作可能に接続されている。第1の流量比制御回路26Aは、バルブ32Bに制御信号を送り、バルブ32Bの開度位置を制御してもよい。バルブ32Bは、バルブ32Bの開度位置を示すデータ信号を第1の流量比制御回路26Aに送ってもよい。遮断バルブとして構成される場合、開度位置は、オン又はオフのいずれかの状態であってもよい。また、リニアバルブとして構成されている場合、その開度位置は、複数の可能な開度位置のうち直線的な開度位置であってもよい。
【0019】
例えば、システムコントローラ12が非同期処理で遮断バルブ32Aを閉じると、システムコントローラ12は、第1上流側遮断バルブ32Aと第1マスフロー制御回路30Aのアドレスが埋め込まれたデータ列を送信する。データ列は、第1のマスフロー制御回路30Aに対応する第1のメモリインターフェイス22Aの書き込みデータレジスタに入る。その後、コプロセッサ13は、データ列をシリアル化して電気バックプレーン18に送信し、そこでデータ列は第2のメモリインターフェイス22Bに導かれる。第2のメモリインターフェイス22Bは、データ列に埋め込まれたアドレスを読み出し、このデータ列を第1のマスフロー制御回路30Aに送信する。そして、第1のマスフロー制御回路30Aは、データ列に含まれるシステムコントローラ12からの指示に従って、第1の上流側遮断バルブ32Aに制御信号を送り、第1の上流側遮断バルブ32Aの開度を制御する。システムコントローラ12が、ガス供給システム10内の他のバルブを、同様の完全に非同期な方法で制御してもよいことが理解されるであろう。
【0020】
以下にさらに詳細に説明するように、ガス供給システム10は、製造プロセス中に、複数のセンサからのセンサ情報と、複数のバルブからのバルブ位置情報とに基づいて、識別分類子44を訓練する。システムコントローラ12は、その後、識別分類子44を実行して、ゴールデン(又は高品質な、golden)製造プロセスに対する製造プロセスの性能のばらつきを監視したり、あるいはセンサ情報とバルブ位置情報とに基づいて、識別分類子44のフィードバック訓練を行う。また、システムコントローラ12は、再現性信頼値(repeatability confidence value)を算出し、この再現性信頼値が所定の閾値を越えた場合に、アラームを送信してもよい。
【0021】
監視ガス供給プロセスデータ40及びゴールデンガス供給プロセスデータ42の一例を
図3に示す。監視ガス供給プロセスデータ40は、監視ガス供給プロセスにおけるセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む。これらの例では、圧力測定値(Pセンサ測定値)と、温度測定値(Tセンサ測定値)と、流量測定値(Qセンサ測定値)とが一定の時間間隔で記録される。
図3に示す例では、センサの測定値が0.1秒ごとに記録されている。
【0022】
ゴールデンガス供給プロセスデータ42は、ゴールデンガス供給プロセスにおけるセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む。言い換えれば、このゴールデンガス供給プロセスデータ42は、ベースラインセンサ測定値として指定されるセンサ測定値の記録であり、監視ガス供給プロセスデータ40のセンサ測定値と比較対照される。ゴールデンガス供給プロセスは、生産開始前の段階において、ガス供給システムを厳密に監視した条件下で、オペレータによって確立されたモデルプロセスのことであり、量産段階では、より多数のガス供給システムがこのゴールデンガス供給プロセスに従うことになることが理解されるであろう。ゴールデンガス供給プロセスデータ42のセンサ測定値は、プロセスの構成要素(バルブ、センサ、マスフローコントローラ、電子回路)が、交換、修正又は意図的な改変や意図しない消耗によって変更される前の、プロセスの正常な状態又は理想的な状態を反映してもよく、これによりゴールデンガス供給プロセスの実施は、システムによって異なる可能性がある。これらの例に示すように、各センサの測定値は、0と1の間の値に正規化される。
【0023】
図4には、3次元配列、又は、赤、緑及び青の3つのチャンネルを持つRGB画像のような入力画像に変換された、監視ガス供給プロセスデータ40の例が描かれている。ゴールデンガス供給プロセスデータ42も同様の変換を受けることが理解されるであろう。入力画像は、複数のチャンネルと共に複数の画素を含んでおり、各画素はある時点に対応している。各チャンネルは、1つのセンサ又は1つのバルブのセンサ測定値のために(専用で)設けられる。言い換えれば、各チャンネルは、別々のセンサ又はバルブに対応している。この例では、チャンネル1は流量センサのデータ専用であり、チャンネル2は温度センサのデータ専用であり、チャンネル3は圧力センサのデータ専用である。各画素は、ある特定の時点でのデータポイントを表している。したがって、各画素は、監視ガス供給プロセスデータ40の行(row)を表すことができる。各画素は、各チャンネルの強度に関する情報を格納する。
【0024】
各チャンネルにおける各画素の強度は、正規化されたセンサ測定値又は正規化されたバルブ位置の値を示してもよい。この例では,画像の左上の画素は、流量センサの測定値を示すチャンネル1の0秒の時の強度が11、温度センサの測定値を示すチャンネル2の0秒の時の強度が102、圧力センサの測定値を示すチャンネル3の0秒の時の強度が35となっている。この画像では3つのチャンネルが表現されているが、チャンネルの数は特に限定されるものではなく、監視ガス供給プロセスデータで監視されるセンサの数に合わせて、必要に応じて画像にチャンネルを追加してもよいことが理解されるであろう。
【0025】
図5Aには、監視ガス供給プロセスデータ40及びゴールデンガス供給プロセスデータ42の詳細な概略図が描かれている。2つの人工知能モデル、すなわち第1人工知能モデル50と第2人工知能モデル52とが、同じ重みを有する関数Gwである同一の人工知能モデルとして設けられている。言い換えれば、第1人工知能モデル50の重みと、第2人工知能モデル52の重みとは等しい。なお、第1人工知能モデル50と第2人工知能モデル52とは、畳み込みニューラルネットワークとして構成することができる。
【0026】
不揮発性メモリ14は、プロセッサ12Aによる実行に応答して、プロセッサ12Aに、監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む許容可能(acceptable)な監視ガス供給プロセスデータ40を受信させ、ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含むゴールデンガス供給プロセスデータ42を受信させ、そして識別分類子44を実行させる命令を格納している。この模式図では、識別分類子44は、第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52を訓練する訓練フェーズにある。
【0027】
許容可能な監視ガス供給プロセスデータ40の圧力センサデータ40Aと、温度センサデータ40Bと、流量センサデータ40Cは、第1入力画像46として識別分類子44の第1人工知能モデル50に送り込まれ、第1入力画像46の特徴が抽出され、第1出力G(X1)が得られる。また、ゴールデンガス供給プロセスデータ42の圧力センサデータ42Aと、温度センサデータ42Bと、流量センサデータ42Cは、第2入力画像48として識別分類子44の第2人工知能モデル52に送り込まれ、第2入力画像48の特徴が抽出され、第2出力G(X2)が得られる。
【0028】
第1人工知能モデル50と第2人工知能モデル52の出力G(X
1)、G(X
2)は、ユークリッド距離関数54によって評価され、類似性の値として、2つの出力の間のユークリッド距離D
W(G
W(X
1),G
W(X
2))が算出される。続いて、ユークリッド距離関数54は、2つの出力の間の類似性又は非類似性を示す類似性指標値58(
図6参照)を出力する。ユークリッド距離は式1のように定義される。
ここで、G
wは,人工知能モデルの1つの関数である。X
1とX
2は入力データのペアである。代わりに、例えばミンコフスキー距離、マンハッタン距離、コサイン距離等の距離に適した他の関数を使用してもよい。
【0029】
さらに、第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52の出力層は、対照損失関数56に送り込まれ、算出された類似性指標値に基づいて、2つの画像の間の対照損失が類似値として算出される。対照損失関数は以下のように与えられる。
ここで、Dwは、第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52の出力の間のユークリッド距離として定義される。続いて、対照損失関数56は、対照損失に基づいて、監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスと同一であることの信頼度を示す再現性信頼値60を出力する。例えば、再現性信頼値60は、0~1の範囲の値であってもよく、1の値は、監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスと同一であるという信頼度が100%であることを示してよい。類似性指標値58及び再現性信頼値60は、その後、表示装置のグラフィカルユーザインターフェイスに出力される。識別分類子44は、類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60が所定の閾値以下であるかどうかを判断するように構成された閾値評価部63を含んでいる。識別分類子44は、類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60が所定の閾値を下回っていると判断すると、閾値を超え、かつ監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスと一致しないことを示すアラーム64を出力する。識別分類子44が類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60が所定の閾値を下回っていないと判断すると、監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスに許容できる程度に一致することを示すインジケータ66が出力される。
【0030】
識別分類子44の訓練フェーズにおいて、勾配は、対照損失、ユークリッド距離、及び出力された再現性信頼値60を介した関数Gwの2つのインスタンスを使って、誤差逆伝搬(バック・プロパゲーション)によって算出される。第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52の重みは、算出された勾配に基づいて、オプティマイザ62を用いて更新される。したがって、訓練プロセスにより識別分類子44の精度が向上する。
【0031】
上記の例では、第1人工知能モデルによって処理された第1入力画像と、第2人工知能モデルによって処理された第2入力画像と、第1及び第2人工知能モデルの出力がユークリッド距離関数によって評価され、その後に類似性指標値が出力されることと、が開示されている。他の例では、後述するように、プロセスのデータは、代替的に構造的類似性評価モジュールによって処理されてもよいことが理解されよう。このモジュールは、構造的特徴の類似性に基づいて、カレントプロセスデータとゴールデンプロセスデータとの間の類似性指標値を出力するものであり、この構造的特徴は、例えば、輝度及び明暗差(すなわち、画像の画素データにおける輝度及び明暗差として符号化されたガス供給プロセスのデータ)等を含んでもよい。それから、構造的類似性評価モジュールの出力は、人工知能モデルによって処理されて、監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスと同一であるという信頼度(必要に応じて、さらに閾値の分散の範囲内で同一であるという信頼度)を示す再現性信頼値を出力してもよい。
【0032】
図5Bは、実行(ランタイム)フェーズにおける、カレント監視ガス供給プロセスデータ41、ゴールデンガス供給プロセスデータ42、及び識別分類子44の詳細な概略図を示す。通常、実行フェーズの間では第1人工知能モデル及び第2人工知能モデルは訓練されないが、製造中の現場のプロセス結果に基づくリアルタイムのフィードバック訓練を実施することができる。この例では、訓練データセットからの、許容可能な監視ガス供給プロセスデータ40の代わりに、例えば製造運転におけるカレント監視ガス供給プロセスデータ41が識別分類子44に送信される。これは、プロセスの発生に合わせてリアルタイムで実行されてもよいし、非同期的にバッチジョブで実行されてもよい。
図5Bの実施例は、許容可能な監視ガス供給プロセスデータ40と、オプティマイザ62と、誤差逆伝搬(バック・プロパゲーション)による勾配の算出と、算出された勾配に基づいてオプティマイザ62を使用して第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52の重みを更新することを省略していることを除いて、
図5Aの実施例と実質的に類似しているので、
図5Bの実施例の詳細な説明は、簡潔にするためにここでは省略する。
【0033】
図5Bでは、カレント監視ガス供給プロセスデータ41の圧力センサデータ41Aと、温度センサデータ41Bと、流量センサデータ41Cとが、識別分類子44の第1人工知能モデル50に第1入力画像46として送られ、そして第1入力画像46の特徴が抽出され、第1出力G(X
1)が得られる。また、ゴールデンガス供給プロセスデータ42の圧力センサデータ42Aと、温度センサデータ42Bと、流量センサデータ42Cとが、識別分類子44の第2人工知能モデル52に第2入力画像48として送られ、そして第2入力画像48の特徴が抽出され、第2出力G(X
2)が得られる。識別分類子44が、類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60が所定の閾値を下回っていると判断する場合、閾値を超えたことを示すアラーム64が出力され、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが一致しないことを示す。識別分類子44が、類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60が所定の閾値を下回っていないと判断する場合、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが許容できる程度に一致することを示すインジケータ66が出力される。
【0034】
図5Cは、本開示の他の実施例として、監視ガス供給プロセスデータ140及びゴールデンガス供給プロセスデータ142の詳細な概略図を示している。この例では、
図5Aの例の第1人工知能モデル50及び第2人工知能モデル52の代わりに、構造的類似性評価モジュール150が設けられている。
図5A~Cの例では、識別分類子44、144はそれぞれ、異なる構成の人工知能モデルを少なくとも1つ含むことが理解されるであろう。
【0035】
不揮発性メモリ14の中央データリポジトリ115は、プロセッサ12Aによる実行に応答して、プロセッサ12Aに、監視ガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含む監視ガス供給プロセスデータ140を受信させ、ゴールデンガス供給プロセスのセンサ情報及び/又はバルブ位置情報を含むゴールデンガス供給プロセスデータ142を受信させ、識別分類子144を実行させる命令を格納している。
【0036】
監視ガス供給プロセスデータ140の圧力センサデータ140Aと、温度センサデータ140Bと、流量センサデータ140Cとは、識別分類子144の構造的類似性評価モジュール150に送られる。また、ゴールデンガス供給プロセスデータ142の圧力センサデータ142Aと、温度センサデータ142Bと、流量センサデータ142Cとは、識別分類子144の構造的類似性評価モジュール150に供給される。
【0037】
次に、構造的類似性評価モジュール150は、監視ガス供給プロセスデータ140からのデータとゴールデンガス供給プロセスデータ142からのデータとを比較して、例えば、輝度及び明暗差(すなわち、画像の画素における輝度及び明暗差として符号化されたガス供給プロセスのデータ)等を含む構造的特徴の類似性を評価する。したがって、構造的類似性評価モジュール150は、符号化(暗号化、コード化)された圧力データ140A、142A、温度データ140B、142B及び流量データ140C、142Cを含むチャンネルを含む第1入力画像46及び第2入力画像48を受け取り、そして画像全体の比較に基づいて、構造的類似性指標値(SSIM)152を算出するように構成されてもよい。次に、類似性指標値158が算出されてもよく、これはSSIM152の生(未加工、raw)の値であってもよく、あるいは正規化された値、スケーリングされた値、又はSSIM152から導出されたその他の値であってもよい。類似性指標値158は、2つの画像の間の類似性又は非類似性を示す。算出後、構造的類似性評価モジュール150は、下流における算出で使用するため、及び/又は表示するために、類似性指標値158を出力する。
【0038】
第1入力画像46及び第2入力画像48の全体の比較のためのSSIM値の算出に代えて、又はこれに加えて、構造的類似性評価モジュール150は、各センサデータセットのチャンネル固有の類似性指標値を算出して出力してもよい。この例では、構造的類似性評価モジュール150は、監視ガス供給プロセスデータ140の圧力センサデータ140Aとゴールデンガス供給プロセスデータ142の圧力センサデータ142Aとの間の類似性を評価する類似性値を算出する第1構造的類似性指標値(SSIM)152Aと、監視ガス供給プロセスデータ140の温度センサデータ140Bとゴールデンガス供給プロセスデータ142の温度センサデータ142Bとの間の類似性を評価する類似性値としての第2SSIM値152Bと、監視ガス供給プロセスデータ140の流量センサデータ140Cとゴールデンガス供給プロセスデータ142の流量センサデータ142Cとの間の類似性を評価する類似性値としての第3SSIM値152Cとを出力する。
【0039】
さらに、SSIM値152と、追加的又は代替的に第1SSIM値152A、第2SSIM値152B及び第3SSIM値152Cとは、人工知能モデル155の畳み込みニューラルネットワーク156に送られ、算出された類似性指標値152A-Cに基づいて、2つのデータセットの間の再現性信頼値が類似性値として算出される。続いて、人工知能モデル155は、第1SSIM値152Aと、第2SSIM値152Bと、第3SSIM値152Cとに基づいて、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが同一であることの信頼度を示す再現性信頼値160を出力する。例えば、再現性信頼値160は、0から1までの範囲の値であってもよく、1の値は、監視ガス供給プロセスがゴールデンガス供給プロセスと同一である(または、任意選択で、閾値の分散の範囲内で同一である)という100%の信頼度を示すものであってよい。畳み込みニューラルネットワーク156は、教師あり学習入力168により訓練されてもよく、これは現場での訓練による正解ラベル(又はグランドトゥルースラベル、ground truth labels)を含んでもよい。続いて、類似性指標値158と再現性信頼値160とは、
図9を参照して説明したように、表示装置のグラフィカルユーザインターフェイスに出力される。
【0040】
識別分類子144は、類似性指標値158及び/又は再現性信頼値160が所定の閾値以下かどうかを判断するように構成された閾値評価部163を含む。識別分類子144が、類似性指標値158及び/又は再現性信頼値160が所定の閾値を下回っていると判断する場合、閾値を超えたことを示すアラーム164が出力され、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが一致しないことが示される。また識別分類子144が類似性指標値158及び/又は再現性信頼値160が所定の閾値を下回っていないと判断する場合、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが許容的に一致することを示すインジケータ166が出力される。
【0041】
図6は、ユークリッド距離関数54が出力する類似性指標値58の一例を示しており、監視プロセスがまだゴールデンガス供給プロセスから逸脱していないプロセスの開始時(時間区分1~11の時)においては類似性指標値が1であり、監視プロセスがゴールデンガス供給プロセスから大きく逸脱する時間があったプロセスの終了時(時間区分81~91の時)において類似性指標値が1よりも小さくなるようになっている。この例では、監視ガス供給プロセスの類似性指標値が一貫して1未満であり(
図6における下の表を参照)、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが何らかの非類似性を有していることを示している。
図6の上の表は、監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとが完全に一致した場合の仮想的なベースライン類似性指標値(hypothetical baseline similarity index)の結果を示しており、全ての類似性指標値が1の値を示している。
【0042】
図7Aは、本開示の一態様にかかる第1方法200の一例を示すフローチャートをある。以下の第1方法200の説明は、上述し、且つ
図1、
図2及び
図5Bに示した、ソフトウェア及びハードウェアの構成要素を参照して提供される。この第1方法200のフローチャートは、実行フェーズにおいて、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値及び/又は再現性信頼値が所定の閾値よりも低い場合にアラームを出力するプロセスを示す。
【0043】
ステップ202では、監視ガス供給プロセスデータが受信される。ステップ204では、ゴールデンガス供給プロセスデータが受信される。ステップ206では、監視ガス供給プロセスデータの特徴が抽出される。監視ガス供給プロセスの特徴の抽出は、第1人工知能モデル又は構造的類似性評価モジュールによって実行されてもよい。ステップ208では、ゴールデンガス供給プロセスデータの特徴が抽出される。ゴールデンガス供給プロセスの特徴の抽出は、第2人工知能モデル又は構造的類似性評価モジュールによって実行されてもよい。
【0044】
ステップ210では、抽出された監視ガス供給プロセスデータの特徴と、抽出されたゴールデンガス供給プロセスデータの特徴とに基づいて、再現性信頼値が算出される。再現性信頼値の算出は、構造的類似性評価モジュールによって算出された類似性指標値に基づいて、例えば畳み込みニューラルネットワーク等の人工知能モデルによって実行されてもよい。あるいは再現性信頼値の算出は、距離関数によって算出された類似性指標値に基づいて、対照損失関数を用いて実行されてもよい。ステップ212では、再現性信頼値が出力される。ステップ214では、類似性指標値及び/又は再現性信頼値が所定の閾値よりも低いと判定(判断)される。ステップ216では、類似性指標値及び/又は再現性信頼値が所定の閾値よりも低いと判定されたことに応じて、アラームが出力される。
【0045】
図7Bは、本開示の一態様に係る第2方法300の一例を示すフローチャートである。以下の第2方法300の説明は、上述し、かつ
図1、
図2及び
図5Aに示した、ソフトウェア及びハードウェアの構成要素を参照して提供される。この第2方法300のフローチャートは、訓練フェーズにおいて、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスの類似性指標値及び/又は再現性信頼値が所定の閾値よりも低い場合にアラームを出力するプロセスを示す。
【0046】
ステップ302では、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスデータが第1入力画像として受信され、ガス供給システムのゴールデンガス供給プロセスデータが第2入力画像として受信される。ステップ304では、監視ガス供給プロセスデータの第1入力画像の特徴が、関数Gwの第1人工知能モデルを用いて抽出され、第1出力G(X1)が得られる。ステップ306では、ゴールデンガス供給プロセスデータの第2入力画像の特徴が、関数Gwの第2人工知能モデルを用いて抽出され、第2出力G(X2)が得られる。ステップ308では、類似性指標値に基づいて再現性信頼値が算出される。ステップ308Aでは、第1出力及び第2出力に基づいて、ユークリッド距離DW(GW(X1),GW(X2))を用いて類似性指標値が算出される。ステップ308Bでは、算出された第1出力G(X1)及び第2出力G(X2)の類似性指標値に基づいて、対照損失L=1/2・(DW)2を用いて、再現性信頼値を算出する。ステップ310では、再現性信頼値は、表示装置のグラフィカルユーザインターフェイスに出力される。ステップ312では、第1人工知能モデル及び第2人工知能モデルが訓練される。その際、ステップ312Aでは、対照損失と、ユークリッド距離と、関数Gwの2つのインスタンスとを用いて誤差逆伝搬によって勾配が算出される。ステップ312Bでは、第1人工知能モデル及び第2人工知能モデルの重みが、算出された勾配に基づいてオプティマイザを使用して更新される。訓練フェーズの間、第1方法300はステップ304及び306に戻り、入力画像の特徴の抽出を再開する。
【0047】
図7Cは、本開示の一態様による第2方法400の一例を示すフローチャートである。以下の第2方法400の説明は、上述し、かつ
図1、
図2及び
図5Cに示した、ソフトウェア及びハードウェアの構成要素を参照して提供される。
【0048】
ステップ402では、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスデータと、ガス供給システムのゴールデンガス供給プロセスデータとが構造的類似性評価モジュールにより受信される。ステップ404では、監視ガス供給プロセスデータとゴールデンガス供給プロセスデータとの間で構造的特徴の類似性が評価される。その際ステップ404Aでは、2つのデータセットに基づいて類似性指標値が算出される。ステップ404Bでは、データセットの各センサデータセットに対してSSIM値が算出される。ステップ406では、人工知能モデルを用いて、SSIM値に基づいて再現性信頼値が算出される。ステップ408では、表示装置のグラフィカルユーザインターフェイスに再現性信頼値が出力される。ステップ410では、表示装置のグラフィカルユーザインターフェイスに類似性指標値が出力される。
【0049】
本開示にかかる統合されたリアルタイムな(又は実時間処理可能な)中央制御装置によれば、全てのセンサデータを1か所で処理し、ガス供給全体を制御し、全てのデータを中央データリポジトリにリアルタイムで記録することができる。さらに、全てのリアルタイムなセンサデータが1つの場所に保存されているため、流量パラメータの機械学習と、処理中における流量パラメータのリアルタイムな調整とを用いることで高度な性能分析を行うことができ、これによりガス供給システムの性能及び再現性を向上させることができる。また識別分類子を用いることで、ガス供給システムの監視ガス供給プロセスとゴールデンガス供給プロセスとをリアルタイムで比較することができ、さらにゴールデンガス供給プロセスからの監視ガス供給プロセスの逸脱をリアルタイムで直ちに検出することができるので、監視ガス供給プロセスの正常なパラメータからの微妙な変化を、効果的に監視することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されている複数の方法及びプロセスは、1つ又は複数のコンピュータデバイスからなる計算システムに適用されてもよい。特にそのような方法及びプロセスは、コンピュータアプリケーションプログラム、若しくはサービス、アプリケーションプログラミングインターフェイス(API)、ライブラリ及び/又は他のコンピュータプログラム製品として実装されてもよい。
【0051】
図8は、計算システム500の非限定的な実施形態を概略的に示す。この計算システム500は、上述したプロセスの1つ又は複数を実施することができる。ここでは、計算システム500は簡略化された形で示されている。計算システム500は、上述し、かつ
図1及び
図2に示した、制御モジュール12、又は被制御モジュール20、24A~D、26A~D、30A~Pを具現化してもよい。計算システム500は、1つ又は複数の、パーソナルコンピュータ、サーバコンピュータ、タブレットコンピュータ、ホームエンターテイメントコンピュータ、ネットワークコンピュータデバイス、ゲームデバイス、モバイルコンピュータデバイス、モバイル通信デバイス(例えば、スマートフォン)及び/又は他のコンピュータデバイスと、スマートリストウォッチ及びヘッドマウント型拡張現実デバイスなどのウェアラブルコンピュータデバイスと、の形態をとってもよい。
【0052】
計算システム500は、論理プロセッサ502、揮発性メモリ504及び不揮発性記憶装置506を含む。計算システム500は、任意で、表示サブシステム508、入力サブシステム510、通信サブシステム512及び/又は、
図8に示されていない他の構成要素を含んでもよい。
【0053】
論理プロセッサ502は、命令を実行するように構成された、1つ又は複数の物理デバイスを含む。例えば論理プロセッサは、1つ又は複数のアプリケーション、プログラム、ルーチン、ライブラリ、オブジェクト、構成要素、データ構造又は他の論理構造の一部である命令を実行するように構成されてもよい。このような命令は、タスクを実行したり、データタイプを実装したり、1つ又は複数の部品の状態を変換したり、技術的効果を達成したり、又はその他の所望の結果へ到達したりするために実装されてもよい。
【0054】
論理プロセッサは、ソフトウェア命令を実行するように構成された1つ又は複数の物理プロセッサ(ハードウェア)を含んでもよい。追加的又は代替的に、論理プロセッサは、ハードウェアで実装された論理命令又はファームウェア命令を実行するように構成された1つ又は複数のハードウェア論理回路又はファームウェアのデバイスを含んでもよい。論理プロセッサ502のプロセッサは、シングルコア又はマルチコアであってもよく、それにより実行される命令は、逐次処理、並列処理及び/又は分散処理のために構成されてもよい。論理プロセッサの個々の構成要素は、任意で2つ以上の別個の装置に分配されてもよい。論理プロセッサの複数の態様は、仮想化され、クラウドコンピューティング構成で構成された遠隔地からアクセス可能なネットワーク化されたコンピューティングデバイスによって実行されてもよい。このような場合、これらの仮想化された様態は、様々な異なるコンピュータの異なる物理的な論理プロセッサ上で実行されることが理解されるであろう。
【0055】
不揮発性記憶装置506は、本明細書に記載された方法及びプロセスを実施するための論理プロセッサにより実行可能な命令を保持するように構成された1つ又は複数の物理デバイスを含む。そのような方法及びプロセスが実施されると、不揮発性記憶装置506の状態は、例えば、異なるデータを保持するように変換されてもよい。
【0056】
不揮発性記憶装置506は、取り外し可能及び/又は内蔵式である物理デバイスを含んでもよい。不揮発性記憶装置506は、光学メモリ(例えば、CD、DVD、HD-DVD、Blu-Ray Disc等)、半導体メモリ(例えば、ROM、EPROM、EEPROM、FLASHメモリ等)、及び/又は磁気メモリ(例えば、ハードディスクドライブ、フロッピーディスクドライブ、テープドライブ、MRAM等)、若しくは他の大容量記憶装置技術を含んでもよい。不揮発性記憶装置506は、不揮発性、ダイナミック、スタティック、リード/ライト、リードオンリー、シーケンシャルアクセス、ロケーションアドレス可能、ファイルアドレス可能、及び/又はコンテンツアドレス可能なデバイスを含んでもよい。不揮発性記憶装置506は、不揮発性記憶装置506への電力が切断された場合でも命令を保持するように構成されていることが理解されよう。
【0057】
揮発性メモリ504は、ランダムアクセスメモリを含む物理デバイスを含んでもよい。揮発性メモリ504は、典型的には、ソフトウェア命令の処理中に情報を一時的に格納するために、論理プロセッサ502によって利用される。揮発性メモリ504は、典型的には、揮発性メモリ504への電力が切断されたときに命令を記憶し続けないことが理解されよう。
【0058】
論理プロセッサ502、揮発性メモリ504及び不揮発性記憶装置506の態様は、1つ又は複数のハードウェアロジックコンポーネントに一緒に統合されてもよい。そのようなハードウェアロジックの構成要素は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、PASIC/ASIC(Program- and Application-Specific Integrated Circuit)、PSSP/ASSP(Program- and Application-Specific Standard Products)、SOC(System-On-a-Chip)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)を含んでもよい。
【0059】
「モジュール」、「プログラム」及び「エンジン」という用語は、揮発性メモリの一部を使用して特定の機能を実行するために、プロセッサによってソフトウェアで実装されるコンピューティングシステム500の態様を説明するのに使用されてよく、この機能は、その機能を実行するためのプロセッサを特別に構成する変換処理を含む。したがって、モジュール、プログラム又はエンジンは、揮発性メモリ504の一部を使用して、不揮発性記憶装置506によって保持される命令を実行する論理プロセッサ502を介してインスタンス化されてもよい。異なるモジュール、プログラム及び/又はエンジンが、同じアプリケーション、サービス、コードブロック、オブジェクト、ライブラリ、ルーチン、API、関数等からインスタンス化されてもよいことが理解されよう。同様に、同じモジュール、プログラム及び/又はエンジンが、異なるアプリケーション、サービス、コードブロック、オブジェクト、ルーチン、API、関数などによってインスタンス化されてもよい。「モジュール」、「プログラム」及び「エンジン」という用語は、実行可能なファイル、データファイル、ライブラリ、ドライバ、スクリプト、データベースレコード等を個々に又はグループで包含してもよい。
【0060】
表示サブシステム508が含まれる場合、この表示サブシステム508は、不揮発性記憶装置506によって保持されるデータの視覚的表現を提示するために使用されてもよい。視覚的表現は、グラフィカルユーザインターフェイス(GUI)の形態をとってもよい。本明細書で説明した方法及びプロセスが、不揮発性記憶装置において保持されるデータを変更し、不揮発性記憶装置の状態を変換する場合、表示サブシステム508の状態も同様に変換されて、基礎となるデータの変化を視覚的に表すようにしてもよい。表示サブシステム508は、事実上あらゆるタイプの技術を利用する1つ以上の表示装置を含んでもよい。そのような表示装置は、共通の筐体内の論理プロセッサ502、揮発性メモリ504及び/又は不揮発性記憶装置506と組み合わされてもよく、あるいは周辺機器としての表示装置であってもよい。
【0061】
入力サブシステム510が含まれる場合、この入力サブシステム510は、キーボード、マウス、タッチスクリーン又はゲームコントローラといった1つ又は複数のユーザ入力デバイスを含んでもよく、これらと連動して(インターフェイスをとって)もよい。いくつかの実施形態では、入力サブシステムは、選択された(厳選された)NUI(ナチュラルユーザインターフェース)の構成部品を含んでもよく、あるはこれらと連動してもよい。このような構成部品は、統合されていてもよく、又は周辺機器であってもよく、入力アクションの伝達及び/又は処理は、オンボード又はオフボードで行われてもよい。NUIの構成部品の例としては、音声認識及び/又は声認識をするためのマイク;及び/又は、マシンビジョン及び/又はジェスチャー認識のための赤外線カメラ、カラーカメラ、ステレオスコピックカメラ及び/又はデプスカメラ;及び/又は、モーション検知及び/又は意図認識のためのヘッドトラッカー、アイトラッカー、加速度計及び/又はジャイロスコープ;及び/又は、脳活動を評価するための電界検出コンポーネント;及び/又はその他の適切なセンサを含んでも良い。
【0062】
通信サブシステム512が含まれる場合、この通信サブシステム512は、本明細書に記載される様々なコンピュータデバイスを互いに通信可能に接続してもよく、さらには他のデバイスと通信可能に接続するように構成されてもよい。通信サブシステム512は、1つ又は複数の異なる通信プロトコルと互換性のある有線及び/又は無線通信デバイスを含んでもよい。非限定的な例として、通信サブシステムは、無線電話ネットワーク、有線又は無線のローカル又はワイドエリアネットワークを介した通信のために構成されてもよく、例えばHDMI over Wi-Fi接続等が挙げられる。いくつかの実施形態では、通信サブシステムは、計算システム500がインターネットなどのネットワークを介して他のデバイスとの間でメッセージを送信及び/又は受信することを可能にしてもよい。
【0063】
図9は、本開示の一実施例によるGUI600を示す。この例では、ゴールデンガス供給プロセスからの監視ガス供給プロセスの再現性の逸脱又は一過的逸脱は、表示サブシステム508に表示されたGUI600に示されるアラーム602、604を介してユーザに通知される。GUI600は、ガス供給システム10の専用の表示装置に表示されてもよいし、この例のように複数のガス供給システムに提供するDCS(分散制御システム)の表示装置に表示されてもよい。この例では、ガス供給システムは、単にチャンバーM5にガスを流すガス供給装置である。このガス供給装置からチャンバーM5へのガスの流れを調整するバルブXYには、圧力センサと流量センサが設けられている。GUI600上で、ユーザは、ガス供給プロセスの類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60を折れ線グラフのようなグラフ形式で見て、類似性指標値58及び/又は再現性信頼値60の経時変化を視覚的に評価してもよい。ユーザは、ゴールデンプロセス選択ボタン(a SELECT GOLDEN PROCESS button)を操作して、カレントガス供給プロセスと比較されるゴールデンガス供給プロセスを設定するためのオプションにアクセスしてよい。またユーザは、当該選択ボタンを操作して、所定の閾値であって、類似性指標値58又は再現性信頼値60が交差した(超えた)場合に、システムコントローラ12に逸脱又は一過的逸脱が検出されたことを示す第1アラーム602及び/又は第2アラーム604を送信させる閾値を設定するためのオプションにアクセスしてもよい。この例では、類似性指標値58及び再現性信頼値60が所定の閾値を超えたという一過的逸脱が検出されたので、GUI600上に、「警告!類似性指標値が逸脱」と表示する警告ボックスが第1アラーム602として表示され、「警告!プロセス再現性が逸脱」と表示する警告ボックスが第2アラーム604として表示される。ユーザは、「分類子タイプ選択ボタン」を操作して、人工知能モデルを用いた識別分類子と、人工知能モデルを搭載していない構造的類似性評価モジュールを用いた識別分類子とを選択することができる。
【0064】
前記した所定の閾値は、複数の所定の閾値又は限界値であってもよいことが理解されるであろう。例えば、複数のアラームレベルが提供されてもよく、例えば、第1下限閾値を下回った場合にLOレベルのアラームが作動し、第1下限閾値よりも低い第2下限閾値を下回った場合にLO-LOレベルのアラームが作動してもよい。
【0065】
本明細書に記載されている構成及び/又はアプローチは、本質的に例示的なものであり、多くの他のバリエーションが可能であり、これらの特定の実施形態又は実施例は限定的に考慮されるべきではないことを理解されたい。また、本明細書に記載された特定のルーチン又は方法は、任意の数の処理戦略の1つ又は複数を表してもよい。そのため、図示及び/又は記載された様々な行為は、図示及び/又は説明された順序で、他の順序で、並行して、又は省略して実行してもよい。同様に、上述した処理の順序を変更してもよい。
【0066】
本開示は、本明細書に開示された様々な特徴及び技術の、全ての新規及び非自明の組合せ及びサブコンビネーションを含む。本明細書に開示された様々な特徴及び技術は、本開示の全ての実施例に必ずしも要求されるものではない。さらに、本明細書で開示された様々な特徴及び技術は、開示された実施例とは別に特許性のある主題を定義し、本明細書で明示的に開示されていない他の実装において有用性を見出してもよい。
【0067】
本明細書で使われる「及び/又は」とは、論理的な選言操作を意味し、したがって、A及び/又はBは以下の真理値表を持つことが理解されよう。
【0068】
“含む(includes)”、“含む(including)”、“備える(has)”、“含む(contains)”等の用語が本明細書で使用されている範囲において、これらの用語は、追加要素やその他の要素を排除することなく、開放的な移行語としての“含む(comprises)”と同様に、包括的であることが意図されている。