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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】流量制御弁又は流量制御装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/14 20060101AFI20241010BHJP
   F16K 37/00 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
F16K7/14 A
F16K37/00 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021543634
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(86)【国際出願番号】 JP2020026251
(87)【国際公開番号】W WO2021044721
(87)【国際公開日】2021-03-11
【審査請求日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】P 2019162379
(32)【優先日】2019-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127961
【氏名又は名称】株式会社堀場エステック
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】プライス アンドリュー
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-172813(JP,A)
【文献】特開2000-213667(JP,A)
【文献】国際公開第2019/107215(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/119265(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/060176(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/107123(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/42
F16K 1/52
F16K 7/12 - 7/17
F16K 37/00
G05D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに接触する座面を有した一対の弁部材を備えており、当該弁部材の少なくともいずれか一方にその内部を挿通して前記座面に向かって開口する内部流路が設けられているとともに、前記座面の離間距離を調節することによって、前記内部流路を通って外部に流出する流体の流量を制御するように構成されたものであって、
前記内部流路内に絞り流路が形成され、当該絞り流路の上流側及び下流側に差圧が発生するように構成されており、
前記絞り流路が、前記内部流路が設けられた弁部材と別の部材であって、前記内部流路における流路径が一定である領域にその全体が挿し込まれる嵌挿部材により形成されたものである流量制御弁。
【請求項2】
前記内部流路の座面側の開口から前記絞り流路が形成されている請求項1記載の流量制御弁。
【請求項3】
前記内部流路が、前記一対の弁部材によって流量が制御された後の流体を流出するものである請求項1又は2のいずれかに記載の流量制御弁。
【請求項4】
前記嵌挿部材が、セラミックスによって形成されている請求項1記載の流量制御弁。
【請求項5】
前記請求項1乃至のいずれかに記載の流量制御弁と、
前記絞り流路の上流側及び下流側の各圧力に基づき前記流量制御弁から流出される流体の流量を算出する流量算出部と、
前記流量算出部で算出された流量に基づき前記流量制御弁から流出される流体の流量が予め定められた設定流量に近づくように前記流量制御弁の弁開度を制御する弁開度制御部とを備えることを特徴とする流量制御装置。
【請求項6】
前記流量制御弁の上流側に第2の流量制御弁をさらに備える請求項記載の流量制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量制御弁又は流量制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の流量制御装置として、例えば、特許文献1には、流量制御弁から外部へ流出された流体が流れる外部流路の途中に絞り流路を形成し、当該絞り流路の上流側及び下流側の間の圧力差に基づき当該流量制御弁から流出される流体の流量を測定するように構成した差圧式のものがある。
【0003】
ところが、前記差圧式の流量制御装置では、外部流路の途中に絞り流路が形成されているため、流量制御弁で流量制御された流体が絞り流路に至るまでの流路長が長くなり、その流路容積(デッドボリューム)が大きくなる。これにより、流量が小さくなるように弁開度を制御した場合に、デッドボリューム内の圧力が変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化するまでに時間を要し、これが流量制御の応答性を低下させる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-57319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、差圧式の流量制御装置における流量制御の応答性を向上できる流量制御弁を得ることをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る流量制御弁は、互いに接触する座面を有した一対の弁部材を備えており、当該弁部材の少なくともいずれか一方にその内部を挿通して前記座面に向かって開口する内部流路が設けられているとともに、前記座面の離間距離を調節することによって、前記内部流路を通って外部に流出する流体の流量を制御するように構成されたものであって、前記内部流路内に絞り流路が形成され、当該絞り流路の上流側及び下流側に差圧が発生するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
このような構成によれば、弁部材に設けられた内部流路に絞り流路を形成したので、従来の構造のものに比べて、絞り流路から当該絞り流路が形成された弁部材の座面までの流路容積(デッドボリューム)が小さくなる。これにより、弁開度を変更した場合に、デッドボリューム内の圧力が短時間で変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化する。その結果、当該流量制御弁を差圧式の流量制御装置に用いた場合、弁開度を変更した後、前記従来の構造に比べて短時間で当該変更後の弁開度に応じた流量を測定できるようになり、流量制御の応答性が向上する。
【0008】
また、前記内部流路の座面側の開口から前記絞り流路が形成されているものであってもよい。
【0009】
このような構成のものであれば、デッドボリュームの容量を最小限に止めることができる。これにより、当該流量制御弁を差圧式の流量制御装置に用いた場合、弁開度を変更した後、より短時間で当該変更後の弁開度に応じた流量を測定できるようになり、流量制御の応答性がさらに向上する。
【0010】
また、前記内部流路が、前記一対の弁部材によって流量が制御された後の流体を流出するものであってもよい。
【0011】
このような構成にすれば、流量が小さくなるように弁開度を変更した場合に、デッドボリューム内の圧力が短時間で変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化する。
【0012】
さらに、前記絞り流路が、前記内部流路が設けられた弁部材と別の部材であって、前記内部流路に挿し込まれる嵌挿部材に形成されたものであってもよい。
【0013】
このような構成によれば、従来の流量制御弁の構造を変更することなく、嵌挿部材を内部流路に挿し込むだけで絞り流路を形成できるため、製造コストを削減できる。
【0014】
また、前記嵌挿部材が、セラミックスによって形成されているものであってもよい。
【0015】
このような構成によれば、例えば、嵌挿部材に絞り流路を形成する場合に、当該絞り流路をセラミックスの焼成工程を利用して簡易に形成できる。具体的には、焼成前の成形体に対し、焼成によって溶解する棒体を貫通させる。この後、当該成形体を焼成すると、棒体が溶解して焼成後の成形体(嵌挿部材)に絞り流路が形成される。これにより、機械加工によらず、嵌挿部材に絞り流路を簡易に形成できる。
【0016】
また、前記絞り流路が、前記内部流路が設けられた弁部材と同じ部材に形成されたものであってもよい。
【0017】
このような構成によれば、弁部材に直接絞り流路を形成するため、弁部材と別部材に絞り流路を形成する場合に比べて、別途嵌挿部材を形成する工程や当該嵌挿部材を内部流路に挿し込む工程等を省略することができ、製造工程を簡略化できる。
【0018】
また、本発明に係る流量制御装置は、前記流量制御弁と、前記絞り流路の上流側及び下流側の各圧力に基づき前記流量制御弁から流出される流体の流量を算出する流量算出部と、前記流量算出部で算出された流量に基づき前記流量制御弁から流出される流体の流量が予め定められた設定流量に近づくように前記流量制御弁の弁開度を制御する弁開度制御部とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
このような構成によれば、弁部材に設けられた内部流路に絞り流路を形成したので、外部流路内にリストリクタが設けられた従来の流量制御装置に比べて、デッドボリュームが小さくなる。これにより、デッドボリューム内の圧力が短時間で変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化する。その結果、従来の流量制御装置に比べて短時間で変更後の弁開度に応じた流量を測定できるようになり、流量制御の応答性が向上する。
【0020】
また、前記流量制御装置において、前記流量制御弁の上流側に第2の流量制御弁をさらに備えるものであってもよい。
【0021】
このような構成によれば、流量制御弁の一次側に第2の流量制御弁を設けたので、第2の流量制御弁により、流量制御弁の一次側の圧力を下げることができる。これにより、流量制御弁の上流側と下流側との間に生じる圧力差が小さくなり、流量制御弁によって低流量の流体が制御し易くなる。
【0022】
本発明の流量制御弁によれば、弁部材に設けられた内部流路に絞り流路を形成したので、外部流路内にリストリクタが設けられた従来の構造のものに比べて、デッドボリュームが小さくなる。これにより、弁開度を変更した場合に、デッドボリューム内の圧力が短時間で変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化する。その結果、当該流量制御弁を差圧式の流量制御装置に用いた場合、弁開度を変更した後、前記従来の構造に比べて短時間で当該変更後の弁開度に応じた流量を測定できるようになり、流量制御の応答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】第1の実施形態に係る流量制御装置を示す全体模式図である。
図2】第1の実施形態に係る流量制御弁を示す部分拡大断面図である。
図3】第1の実施形態に係る流量制御弁の弁座部材を示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係る流量制御弁の弁座部材を示す底面図である。
図5】第1の実施形態に係る流量制御弁の弁座部材を示すA-A断面図である。
図6】第1の実施形態に係る流量制御弁の弁座部材を示すB-B断面図である。
図7】第1の実施形態に係る嵌挿部材を模式的に示す図である。
図8】その他の実施形態に係る流量制御装置を示す全体模式図である。
図9】その他の実施形態に係る流量制御弁を示す模式図である。
図10】その他の実施形態に係る流量制御弁を示す模式図である。
【符号の説明】
【0024】
MFC 流量制御装置
B 本体ブロック
11 外部流入路
12 外部流出路
V 流量制御弁
20 弁座部材(弁部材)
21 弁座面(座面)
L 内部流路
L1 上流側内部流路
L2 下流側内部流路
R 絞り流路
30 弁体部材(弁部材)
31 着座面(座面)
50 嵌挿部材
P1 第1圧力センサ
P2 第2圧力センサ
C 制御部
C1 流量算出部
C2 設定流量記憶部
C3 弁開度制御部
V2 第2の流量制御弁
【発明を実施するための形態】
【0025】
本実施形態に係る流量制御弁を組み込んだ流量制御装置は、例えば、半導体製造プロセスにおいて、成膜チャンバへ供給する材料ガスの流量を制御するために用いられるものである。
【0026】
<第1の実施形態> 本実施形態の流量制御装置MFCは、図1に示すように、本体ブロックBと、本体ブロックBの一面に設置された流量制御弁V、第1圧力センサP1、及び、第2圧力センサP2と、これらの機器に接続される制御部Cと、を備えている。
【0027】
前記本体ブロックBは、上流側接続口B1と下流側接続口B2とを有し、上流側接続口B1に繋がる外部流入路11(外部流路)と、下流側接続口B2に繋がる外部流出路12(外部流路)と、外部流入路11及び外部流出路12の間に設けられた収容凹部13と、を有している。
【0028】
前記外部流入路11は、その下流端が収容凹部13の内面に開口しており、前記外部流出路12は、その上流端が収容凹部13の内面に開口している。本実施形態では、外部流入路11の下流端が、収容凹部13の側面に開口しており、外部流出路12の上流端が、収容凹部13の底面に開口している。
【0029】
前記流量制御弁Vは、弁座面21を有した弁座部材20(弁部材)と、弁座面21に着座する着座面31を有した弁体部材30(弁部材)と、弁体部材30を弁座部材20に対して接離方向に駆動させるアクチュエータ40と、を備え、これらをこの順番で直列状に配置した構成になっている。そして、流量制御弁Vは、アクチュエータ40によって弁体部材30を駆動させることにより、弁座面21と着座面31との離間距離を調節するように構成されている。本実施形態の流量制御弁Vは、所謂ノーマルオープンタイプのものであり、弁体部材30は、弁座部材20に支持された板バネ50(図2参照)によって弁座部材20と離間する方向へ付勢されている。
【0030】
次に、前記弁座部材20の構成を図2図6に基づき詳述する。ここで、図3は、弁座部材20を弁座面21側から視た平面図であり、点線は後述する上流側内部流路L1等を示している。図4は、弁座部材20を弁座面21と反対面側から視た底面図である。図5は、図3のA-A断面図である。図6は、図3のB-B断面図である。
【0031】
前記弁座部材20は、概略回転体形状をなすものであり、収容凹部13に収容され、当該収容凹部13の開口方向を向く一端面(図2中、上面)が弁座面21となっている。そして、弁座部材20には、その内部を挿通して弁座面21に向かって開口する内部流路Lが形成されている。具体的には、前記弁座部材20には、弁座面21と着座面31とが離間した状態で、当該弁座面21と当該着座面31との間に形成される空間(隙間)に流体を流入する上流側内部流路L1(内部流路L)と、当該空間から流体を流出する下流側内部流路L2(内部流路L)と、がそれぞれ複数形成されている。
【0032】
前記各上流側内部流路L1は、図5及び図6に示すように、弁座面21から軸方向に沿って所定位置まで延伸する部分路(垂直路)L1mと、垂直路L1mと連通し、径方向に沿って側周面22まで延伸する部分路(水平路)L1nと、からなっている。また、前記各下流側内部流路L2は、弁座面21から軸方向に沿って底面23まで直線状に延伸している。
【0033】
そして、図2に示すように、前記弁座部材20が収容凹部13に収容された状態で、弁座部材20の側周面22と収容凹部13を形成する側壁とにより、外部流入路11と弁座部材20の上流側内部流路L1とを繋げる流路が形成される。また、前記弁座部材20が収容凹部13に収容された状態で、弁座部材20の底面23と収容凹部13を形成する底壁とにより、外部流出路12と弁座部材20の下流側内部流路L2とを繋げる流路が形成される。
【0034】
すなわち、前記各上流側内部流路L1は、その上流端が側周面22に向かって開口すると共に、その下流端が弁座面21に向かって開口している。また、前記各下流側内部流路L2は、その上流端が弁座面21に向かって開口すると共に、その下流端が底面23に向かって開口している。
【0035】
また、前記弁座面21には、同心円状に形成された複数の環状凹溝21Mと、凹溝21Mを仕切る複数の環状凸条21Tと、が形成されている。そして、弁座面21は、各凸条21Tの上面が弁体部材30の着座面31と接触するようになっている。本実施形態では、弁座面21の中心に下流側内部流路L2の上流端が開口しており、当該開口と同心円状となるように3つの凹溝21Mが形成され、3つの凸条21Tが形成されている。
【0036】
ここで、前記各上流側内部流路L1の下流端は、凹溝21Mの底面21sに開口しており、前記各下流側内部流路L2の上流端は、上流側内部流路L1の下流端が開口した凹溝21Mと異なる凹溝21Mの底面21sに開口している。
【0037】
そして、前記弁座面21には、前記上流側内部流路L1の下流端が開口する凹溝21Mと、前記下流側内部流路L2の上流端が開口する凹溝21Mと、がそれぞれ交互になるように形成されている。これにより、弁座面21と着座面31とが離間した状態で、上流側内部流路L1と下流側内部流路L2とが連通し、一方、弁座面21と着座面31とが接触した状態で、上流側内部流路L1と下流側内部流路L2とが連通しないように構成されている。
【0038】
このような構成により、外部流入路11から収容凹部13に流入した流体は、複数の上流側内部流路L1を介して分岐した後、複数の下流側内部流路L2を介して再び合流して外部流出路12に流出するようになっている。
【0039】
また、前記内部流路L内には、絞り流路Rが形成されており、当該絞り流路Rの上流側と下流側との間に差圧が発生するようになっている。本実施形態では、下流側内部流路L2内に絞り流路Rが形成されている。すなわち、本実施形態では、内部流路L内における、弁座部材20及び弁体部材30によって流量が制御された後の流体が流れる部分に絞り流路Rが形成されている。絞り流路Rは、少なくとも内部流路Lの内径よりも小さい内径を有している。
【0040】
本実施形態の絞り流路Rは、下流側内部流路L2内に挿し込まれた図7に示す嵌挿部材60に形成されている。具体的には、嵌挿部材60は、円柱状のものであり、下流側内部流路L2に挿し込まれた状態で、上流側を向く一端面60a(図5図7中、上面)から下流側を向く他端面60b(図5図7中、下面)へ貫通する複数の絞り流路Rが形成されている。また、嵌挿部材60は、下流側内部流路L2に挿し込まれた状態で、下流側内部流路L2の内周面と密着する外周面60cを有している。そして、複数の絞り流路Rは、嵌挿部材60の一端面60aから他端面60bへ直線状に延伸している。また、複数の絞り流路Rは、嵌挿部材60の一端面60a側から視て当該嵌挿部材60の中心軸を囲む環状の列をなすように並んでいる。また、複数の絞り流路Rは、嵌挿部材60の一端面60a側から視て周方向に沿って等間隔に配置されている。本実施形態では、複数の絞り流路Rは、嵌挿部材60の中心軸を囲む多重環状(具体的には、二重環状)の列をなすように並んでいる。
【0041】
また、前記嵌挿部材60は、図5に示すように、下流側内部流路L2の弁座面21側を向く一端面60aが凹溝21Mの底面21sと面一になるように挿し込まれている。これにより、絞り流路Rが、下流側内部流路L2(内部流路)の弁座面21(座面)側を向く開口から当該下流側内部流路L2の他方の開口へ向かって延伸するように形成されている。このように構成することにより、絞り流路Rから当該絞り流路Rが形成された弁座部材20(弁部材)の弁座面21(座面)までの流路容積(以下、デッドボリュームDともいう)を最小限に止めることができる。
【0042】
また、本実施形態の嵌挿部材60は、セラミックスによって形成されている。具体的には、先ず、焼成前の成形体に対し、焼成によって溶解する棒体を貫通させる。この後、当該成形体を焼成すると、棒体が溶解して焼成後の成形体(嵌挿部材60)の内部に絞り流路Rとなる貫通孔が形成される。
【0043】
前記アクチュエータ40は、図1及び図2に示すように、電圧を印加した状態で膨張変形するピエゾ素子を複数枚積層して形成されるピエゾスタック41と、ピエゾスタック41を弁体部材30に接続する接続機構42と、を備えている。そして、アクチュエータ40は、ピエゾスタック41の伸長を接続機構42を介して弁体部材30に伝達し、当該弁体部材30を弁座部材20へ向けて押圧するように構成されている。なお、アクチュエータ40は、弁体部材30と共に本体ブロックBの一面に設置される収容ケース70内に収容されている。
【0044】
前記接続機構42は、弁体部材30の着座面31と反対面に接触するダイアフラム42aと、ダイアフラム42aからピエゾスタック41に向かって延びるプランジャ42bと、プランジャ42bとピエゾスタック41との間に介在する真球43cと、を備えている。また、接続機構42は、ピエゾスタック41に押圧された状態で、収容ケース70内に支持されたコイルバネ71によってピエゾスタック41側へ付勢されるようになっている。
【0045】
前記第1圧力センサP1は、図1に示すように、本体ブロックBの一面に設置されており、本体ブロックBの内部に形成された外部流入路11に接続されている。これにより、第1圧力センサP1は、絞り流路Rよりも上流側の圧力を測定するようになっている。
【0046】
前記第2圧力センサP2は、第1圧力センサP1と同様に本体ブロックBの一面に設置されており、本体ブロックBの内部に形成された外部流出路12に接続されている。これにより、第2圧力センサP2は、絞り流路Rよりも下流側の圧力を測定するようになっている。
【0047】
前記制御部Cは、流量制御弁V、第1圧力センサP1、第2圧力センサP2のそれぞれに接続されるものである。具体的には、制御部Cは、CPU、メモリ、入出力手段等を備えた所謂コンピュータによって構成してあり、前記メモリに格納されているプログラムが実行され、図1に示す流量算出部C1、設定流量記憶部C2、弁開度制御部C3等としての機能が実現されるようにしてある。
【0048】
前記流量算出部C1は、第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2で測定された各圧力に基づき、流量制御弁Vから流出される流体の流量を算出するものである。
【0049】
前記設定流量記憶部C2は、目標流量である設定流量を記憶するものである。なお、設定流量記憶部C2は、図示しない入力手段に接続されており、当該入力手段によって入力できるようになっている。
【0050】
前記弁開度制御部C3は、流量算出部C1で算出された測定流量が、設定流量記憶部C2に記憶された設定流量に近づくように流量制御弁Vの弁開度を制御するものである。具体的には、弁開度制御部C3は、測定流量と設定流量とに基づき導かれる開度制御信号によってアクチュエータ40を駆動し、その開度制御信号の値に応じた弁開度に制御して流体の流量を制御するものである。
【0051】
次に、本実施形態の流量制御弁Vの動作について説明する。
【0052】
本実施形態の流量制御弁Vは、ノーマルオープンタイプのものであり、アクチュエータ40のピエゾスタック41に駆動電圧が印加されていない状態では、弁座面21と着座面31とが離間した状態となる。これにより、上流側内部流路L1と下流側内部流路L2とが連通した状態となる。そして、外部流入路11を流れる流体が、内部流路Lを介して外部流出路12へ流れる。
【0053】
一方、アクチュエータ40のピエゾスタック41に所定値以上の駆動電圧を印加された状態では、弁座面21と着座面31とが接触した状態となる。これにより、上流側内部流路L1と下流側内部流路L2とが連通していない状態となる。そして、外部流入路11を流れる流体が、一対の弁部材20,30によって遮断される。
【0054】
また、本実施形態では、デッドボリュームDの容積が小さいため、弁開度の変化に伴うデッドボリュームD内の圧力変動を遅延させる要因となる当該デッドボリュームD内の流体が少ない。このため、流量が小さくなるように弁開度を変更した場合、デッドボリュームD内の圧力が短時間で変更後の弁開度に応じた圧力に変化し、弁開度を変更した後、流量算出部C1によって変更後の弁開度に応じた流量が算出されるまでの時間が短くなる。その結果、流量制御装置MFCにおける流量制御の応答性が向上する。
【0055】
このような構成した本実施形態に係る流量制御装置MFCによれば、下流側内部流路L2に絞り流路Rを形成したので、デッドボリュームDの容積が小さくなる。これにより、流量が小さくなるように弁開度を制御した場合に、デッドボリュームD内の圧力が短時間で変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化する。その結果、短時間で当該変更後の弁開度に応じた流量を測定できるようになり、流量制御の応答性が向上する。また、下流側内部流路L2に挿し込まれる嵌挿部材60に絞り流路Rを形成したので、従来の流量制御弁Vの構造を変更することなく、内部流路Lに絞り流路Rを形成できる。さらに、嵌挿部材60をセラミックスによって形成したので、絞り流路Rを簡易に形成できる。
【0056】
<その他の実施形態> その他の実施形態としては、図8に示すような構成の流量制御装置MFCを挙げることができる。図8に示す流量制御装置MFCは、前記実施形態の流量制御装置MFCの第1圧力センサP1よりも上流側にさらに上流側流量制御弁V0を設けた構成になっている。なお、当該上流側流量制御弁V0が、請求項における第2の流量制御弁に該当する。
【0057】
このような構成にすれば、流量制御弁Vの一次側に上流側流量制御弁V0を設けたので、上流側流量制御弁V0によって流量制御弁Vの一次側の圧力を下げることができる。これにより、流量制御弁Vの上流側と下流側との間に生じる圧力差が小さくなり、流量制御弁Vの弁開度に対する流量のレンジが下がる。これに伴って流量制御弁Vによって低流量の流体を制御する場合における分解能が上がり、流量制御弁Vによって低流量の流体が制御し易くなる。
【0058】
前記実施形態においては、流量制御弁Vとしてノーマルオープンタイプのものを例示しているが、本発明はノーマルクローズタイプのものに適用することもできる。
【0059】
また、前記実施形態においては、絞り流路Rの上流側及び下流側のそれぞれに圧力センサ(第1圧力センサP1及び第2圧力センサP2)を設置したが、例えば、絞り流路Rの上流側又は下流側の一方の圧力が既知である場合には、他方にのみ圧力センサを設置すればよい。また、絞り流路Rの上流側と下流側との圧力差を検出する差圧計を設置してもよい。
【0060】
また、前記実施形態においては、弁部材に形成された内部流路Lに挿し込まれる嵌挿部材60に絞り流路Rを形成しているが、弁部材に直接絞り流路Rを形成してもよい。すなわち、絞り流路Rを、内部流路が設けられた弁部材と同じ部材に形成してもよい。
【0061】
また、前記従来の流量制御装置において、流量制御弁から流れる流体の流量を測定するために、流量制御弁によりも上流側の外部流路に絞りを設置する場合がある。この場合、流量を大きくするように弁開度を制御すると、デッドボリュームD内の圧力が変更前の弁開度に応じた圧力から変更後の弁開度に応じた圧力に変化するのに時間を要する。そこで、この場合には、絞り流路Rを、内部流路Lにおける、一対の弁部材20,30によって流量が制御される前の流体が流れる部分(上流側内部流路L1)に形成すればよい。また、絞り流路Rは、内部流路Lの座面側を向く開口から当該内部流路Lの他方の開口へ延伸するように形成すれば、デッドボリュームDの容量を最小限に止めることができる。
【0062】
また、前記実施形態においては、弁座部材20に上流側内部流路L1及び下流側内部流路L2を形成しているが、弁体部材30に上流側内部流路L1及び下流側内部流路L2を形成してもよい。また、一対の弁部材20,30のうちで一方に上流側内部流路L1を形成し、他方に下流側内部流路L2を形成してもよい。これらの場合には、上流側内部流路L1又は下流側内部流路L2のいずれか一方に絞り流路Rを形成すればよい。さらに、一対の弁部材20,30のいずれか一方に、上流側内部流路L1又は下流側内部流路L2のいずれか一方のみを形成する構成としてもよい。
【0063】
例えば、ノーマルクローズタイプの流量制御弁Vに適用する場合には、図9に示すように、弁座部材20に、本体ブロックBに形成された外部流入路11と連通する上流側内部流路L1を形成し、弁体部材30に、本体ブロックBに形成された外部流出路12に連通する下流側内部流路L2を形成する。そして、絞り流路Rを、弁体部材30の下流側内部流路L2に形成すればよい。なお、当該流量制御弁Vは、弁体部材30が弁座部材20側へ付勢されており、弁座部材20を貫通するアクチュエータ40によって弁体部材30を押圧することにより、弁座面21と着座面31との離間距離を調節するように構成されている。
【0064】
また、本発明の流量制御弁Vは、例えば、図10に示すように、弁座部材20と弁体部材30を収容する収容ブロックbを備え、収容ブロックbに弁座面21と着座面31との間に形成される空間へ流体を流入する上流側流路L3を形成し、弁体部材30に当該空間から流体を流出する下流側内部流路L2を形成した構造になっている。そして、絞り流路Rが、下流側内部流路L2に形成されている。このような形態のものであってもよい。
【0065】
また、前記実施形態においては、絞り流路Rを、内部流路Lの座面側の開口から当該内部流路Lの他方の開口に延伸するように形成したが、内部流路Lの座面側の開口よりも内方から当該内部流路Lの他方の開口に延伸するように形成してもよい。
【0066】
その他、本発明は前記各実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0067】
差圧式の流量制御装置における流量制御の応答性を向上できる流量制御弁を得ることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10