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特許75697972パートシアノアクリレート/カチオン硬化性接着剤系
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】2パートシアノアクリレート/カチオン硬化性接着剤系
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20241010BHJP
   C08F 22/32 20060101ALI20241010BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20241010BHJP
   C08K 3/011 20180101ALI20241010BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20241010BHJP
   C09J 4/04 20060101ALI20241010BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20241010BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241010BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C08L33/14
C08F22/32
C08K3/36
C08K3/011
C08K9/06
C09J4/04
C09J163/00
C09J11/04
C09J11/06
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2021552557
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-20
(86)【国際出願番号】 EP2020054946
(87)【国際公開番号】W WO2020178082
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】1902903.2
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】391008825
【氏名又は名称】ヘンケル・アクチェンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチェン
【氏名又は名称原語表記】Henkel AG & Co. KGaA
【住所又は居所原語表記】Henkelstrasse 67,D-40589 Duesseldorf,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー、 アイン
(72)【発明者】
【氏名】ライリー、 スーザン
(72)【発明者】
【氏名】ムーア、 デボラ
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-515153(JP,A)
【文献】特表2013-540852(JP,A)
【文献】特開平06-200214(JP,A)
【文献】特開2010-150422(JP,A)
【文献】特開昭62-020577(JP,A)
【文献】特表昭60-502106(JP,A)
【文献】特表昭60-502088(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 33/14
C08F 20/34
C08K 3/36
C08K 3/011
C08K 9/06
C09J 4/04
C09J 163/00
C09J 11/04
C09J 11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)シアノアクリレート成分、その表面に疎水性基及び水性基を有するシリカ、及びカチオン性触媒を含む第1パートであって、シリカの表面の疎水性基が、ヘキサデシルトリメトキシシラン基を含む、第1パート;及び
(b)カチオン硬化性成分を含む第2パートであって、一緒に混合されると、カチオン性触媒が、カチオン硬化性成分の硬化を開始する、第2パート
を含む2パート硬化性組成物。
【請求項2】
シアノアクリレート成分がHC=C(CN)-COOR(式中、Rはアルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アラルキル、アリール、アリル、及びハロアルキル基から選択される。)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
カチオン性触媒が、リチウム及び周期律表第2族の金属の塩、並びに非求核性の酸を含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
カチオン性触媒が、10重量%水溶液として測定したときに1.0未満のpHを有する非求核性酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
カチオン性触媒が、フルオロホウ酸、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸、及びフルオロリン酸;テトラフルオロホウ酸リチウム、ジテトラフルオロホウ酸カルシウム、ジテトラフルオロホウ酸マグネシウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジヘキサフルオロリン酸カルシウム、ジヘキサフルオロリン酸マグネシウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、及びヘキサフルオロヒ酸リチウム;ランタニドトリフラート塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、ランタントリフラート、イッテルビウムトリフラート、トリメトキシボロキシン、トリメトキシボロキシン-アルミニウムアセチルアセトナート、アミン-ホウ素トリハライド錯体、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びジアゾニウム塩;トリアルコキシボロキシン系硬化剤;並びにそれらの組み合わせからなる群から選択されるメンバーである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
カチオン硬化性成分が、エポキシ成分、エピスルフィド成分、オキセタン成分、ビニルエーテル成分、及びそれらの組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
カチオン硬化性成分が、脂環式エポキシ、芳香族エポキシ、脂肪族エポキシ、及び水素化芳香族エポキシからなる群から選択されるエポキシ成分である、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
エポキシ成分が、エポキシ官能化水素化ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールE、ビスフェノールS、及びビフェニルからなる群から選択されるメンバーを含む、請求項6又は請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
第1パートがデュアルチャンバーシリンジの第1のチャンバーに収容され、第2パートがデュアルチャンバーシリンジの第2のチャンバーに収容されている、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
第1パートがリン酸をさらに含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
第2パートが、可塑剤、充填剤、チキソトロープ、及び強靭化剤のうちの少なくとも1種をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
強靭化剤が、(1)(a)エチレン、アクリル酸メチル、及びカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物、(2)(b)エチレンとアクリル酸メチルのジポリマー、(3)(a)と(b)の組み合わせ、(4)塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー、(5)塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー、(6)ポリエチレンとポリ酢酸ビニルのコポリマー、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるメンバーである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
第1パートと第2パートが約1:1の体積比で存在する、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
第1パート及び第2パートが、各々、デュアルチャンバー容器の別々のチャンバーに収容されている、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
シリカの表面の親水性基がシラノール基を含む、請求項1~14のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項16】
シアノアクリレート成分、その表面に疎水性基及び親水性基を有するシリカ、及びカチオン性触媒を含む、組成物であって、シリカがヘキサデシルシランで後処理されている、組成物
【請求項17】
シリカが170~210のBET表面積、及び0.9~1.8%の炭素含有量を有する、請求項16に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2パートシアノアクリレート/カチオン硬化性接着剤系が提供される。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
シアノアクリレート接着剤などの硬化性組成物は、一般に数分で、また特定の基材によってはしばしば数秒で、広範囲の基材を迅速に接合する優れた能力でよく認められている。
【0003】
シアノアクリレートの重合は、大部分の表面で通常の大気条件下で見られる求核剤によって開始される。表面化学による開始は、2つの表面がその2つの表面間のシアノアクリレートの小さな層と密接に接触しているときに十分な開始種が利用可能であることを意味する。これらの条件下では、短時間で強い接合が得られる。したがって、本質的に、シアノアクリレートはしばしば瞬間接着剤として機能する。
【0004】
シアノアクリレート接着剤の性能、特に耐久性は、高温条件及び/又は高相対湿度条件にばく露されると疑わしくなる。これらの用途依存性の欠点に対抗するために、シアノアクリレート接着剤配合物に含めるための多数の添加剤が同定されている。改善は依然として有益であると見られる。
【0005】
カチオン硬化性組成物は一般によく知られており、その中でも主要な例は、広く使用されているエポキシ組成物である。エポキシ組成物は、一旦硬化すると、様々な種類の材料からなる基材間に強固な接合を形成することが知られている。しかし、エポキシ組成物は、1液型であっても、2液型であっても、シアノアクリレートに何ら近い迅速な固定時間を有することはなく、また、特定の材料、いくつか例示すると、ポリカーボネート(「PC」)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(「ABS」)、ポリメチルメタクリレート(「PMMA」)、及びポリ塩化ビニル(「PVC」)などのプラスチック基材上では、性能が低下する傾向がある。
【0006】
シアノアクリレートと相溶性を有する従来のチキソトロピー添加剤は、ヘンケルがLOCTITEの商品名で推奨している、例えばLOCTITE 4090などの、近年開発された2液型シアノアクリレート/カチオン硬化性接着剤系で使用されるカチオン性触媒と相溶性を有しないことが証明されている(例えば、米国特許第8,742,048号を参照されたい。)
【0007】
このように非相溶性であるために、これらの革新的な接着剤系のチキソトロピータイプ及び非垂れ(non-sagging)タイプの開発が妨げられている。
【0008】
シアノアクリレートに観察される速い固定時間及び金属、プラスチックなどの広範囲の基材を接合する能力などの点での瞬間接着剤の特徴と、エポキシ組成物に観察される強固な接着強度との両方を有し、かつ、接着剤系にチキソトロピー性を与える接着剤系を提供することが望ましいであろう。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、その表面に疎水性基と親水性基を有するシリカは、シアノアクリレートをベースとしたパートA組成物中に存在するカチオン性触媒との優れた相溶性を有することが示されている。
【0010】
したがって、一態様では、シアノアクリレート成分、その表面に疎水性基及び親水性基を有するシリカ、及びカチオン性触媒を含む組成物が提供される。
【0011】
別の態様では、前項に記載の組成物は、2パート硬化性組成物中で、第1パートとして、エポキシ成分、エピスルフィド成分、オキセタン成分、及びこれらの組み合わせなどのカチオン硬化性成分を含む第2パートとともに使用される。一緒に混ぜると、カチオン性触媒がカチオン硬化性成分の硬化を開始する。さらに、カチオン硬化性成分は、シアノアクリレートの硬化を開始し得る。
【0012】
室温硬化性のこの組成物は、ポリカーボネート(「PC」)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(「ABS」)、ポリメチルメタクリレート(「PMMA)、ポリ塩化ビニル(「PVC」)などの多種多様な材料から構成される基材上で良好な性能をもたらし、従来のシアノアクリレート組成物に比べて耐久性の向上をもたらし、また従来のカチオン硬化性組成物に比べて固定時間及びプラスチック接着性の改善をもたらす。
【0013】
(詳細な説明)
<パートA>
シアノアクリレート成分としては、シアノアクリレートモノマー、例えばHC=C(CN)-COOR(式中、RはC1-15アルキル、C2-15アルコキシアルキル、C3-15シクロアルキル、C2-15アルケニル、C7-15アラルキル、C6-15アリール、C3-15アリル、及びC3-15ハロアルキル基から選択される。)により表されるものが挙げられる。望ましくは、シアノアクリレートモノマーは、メチルシアノアクリレート、エチル-2-シアノアクリレート、プロピルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート(n-ブチル-2-シアノアクリレート)、オクチルシアノアクリレート、アリルシアノアクリレート、β-メトキシエチルシアノアクリレート、及びそれらの組み合わせから選択される。特に好ましいものは、エチル-2-シアノアクリレート(「ECA」)である。
【0014】
シアノアクリレート成分は、パートA組成物中に、約50重量パーセントから約99.98重量パーセントの範囲内の量で含まれるべきであり、例えば、パートA組成物全体の約65重量パーセントから約85重量パーセントが望ましく、約75重量パーセントから約97重量パーセントが特に望ましい。
【0015】
その表面に疎水性基及び親水性基を有するシリカは、厳密な疎水性シリカ充填剤ではなく、また厳密な親水性シリカ充填剤でもない。シリカの表面の疎水性基と親水性基の両方のバランスが、パートA組成物が本明細書に記載の2パート硬化性組成物における使用に望ましいと思われる物理的特性(チキソトロピーなど)を達成できるようにする上で重要であると思われる。
【0016】
その表面に疎水性基及び親水性基を有するシリカは、パートA組成物中に、パートA組成物全体の約0.50重量パーセントから約10重量パーセントの範囲内の量で含まれるべきであり、パートA組成物全体の約1重量パーセントから約7.5重量パーセントが望ましく、パートA組成物全体の約2.5から約5重量パーセントが特に望ましい。
【0017】
その表面に疎水性基及び親水性基を有するシリカは、例えば、EvonikからAEROSILの商品名で市販されている。その表面に疎水性基及び親水性基を有する特に望ましい市販のシリカは、AEROSIL(登録商標)R816である。製造業者Evonikは、その化学名を、シリカとのヘキサデシルトリメトキシシラン加水分解生成物(silane, hexadecyltrimethoxy-, hydrolysis products with silica)(CAS-No.199876-45-4)と報告しており、これは、ヘキサデシルシラン、具体的にはヘキサデシルトリメトキシシランで後処理されたヒュームドシリカである。本発明において重要であるこの表面処理されたヒュームドシリカの特徴の一部としては、170~210のBET表面積(ISO 9277に見られる試験方法による)及び0.9~1.8の炭素含有量(ISO 3262-20に見られる試験方法による)が挙げられる。
【0018】
2パート接着剤系のパートA組成物に含有させるカチオン性触媒としては、ハードカチオン非求核性アニオン触媒を用いるべきである。このような触媒の例としては、リチウム及び周期律表第2族の金属の塩、並びに非求核性酸が挙げられる。このような非求核性酸は,10重量%の水溶液として測定したときのpHが1.0未満であり、そのような酸のアニオン部分は、有機ハライドとの置換反応に容易に関与する。第2族金属塩の例としては、カルシウム及びマグネシウムが挙げられる。非求核性酸の例としては、フルオロホウ酸、フルオロヒ酸、フルオロアンチモン酸、及びフルオロリン酸が挙げられる。したがって、ハードカチオン非求核性アニオン塩の例としては、テトラフルオロホウ酸リチウム、ジテトラフルオロホウ酸カルシウム、ジテトラフルオロホウ酸マグネシウム、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ジヘキサフルオロリン酸カルシウム、ジヘキサフルオロリン酸マグネシウム、ヘキサフルオロアンチモン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウムが挙げられる。適当な組み合わせを使用してもよい。
【0019】
カチオン性触媒はまた、ランタニドトリフラート塩、アリールヨードニウム塩、アリールスルホニウム塩、ランタントリフラート、イッテルビウムトリフラート、トリメトキシボロキシン、トリメトキシボロキシン-アルミニウムアセチルアセトナート、アミン-ホウ素トリハライド錯体、第4級アンモニウム塩、第4級ホスホニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、及びジアゾニウム塩を含んでもよい。適切な組み合わせを使用することができる。
【0020】
本明細書においてパートA組成物中で使用するのに適した別のカチオン性触媒は、米国特許第4,336,367号及び第6,617,400号(これらの各々の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されているようなトリアルコキシボロキシンのクラスの硬化剤である。当然ながら、これらのカチオン性触媒の任意の2種以上の組み合わせも同様に使用することができる。
【0021】
また、カチオン性触媒の一部又は全部として使用するのに適しているのは、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三酸化硫黄(及びその加水分解物)、及びメタンスルホン酸であり、これらは、貯蔵安定化(shelf life stabilization)において既知の問題であるアニオン重合(下記参照)に対してシアノアクリレートモノマーを安定化させるためにしばしば使用される。適切な組み合わせを使用することができる。
【0022】
典型的には、カチオン性触媒の量は、パートA組成物の約0.001重量%~約10.00重量%、望ましくはパートA組成物の約0.01重量%~約5.00重量%、例えばパートA組成物の約0.50~2.50重量%の範囲に入ることとなる。
【0023】
固化速度の向上、貯蔵安定性の向上、柔軟性、チキソトロピー、粘度の増加、色、及び強靭性の向上などの物理的特性を付与するために、接着剤系のパートA組成物に添加剤を含めてもよい。したがって、そのような添加剤は、促進剤、フリーラジカル安定剤、アニオン安定剤、ゲル化剤、増粘剤[PMMAなど]、チキソトロピー付与剤(ヒュームドシリカなど)、染料、強靭化剤、可塑剤、及びそれらの組み合わせから選択することができる。
【0024】
これらの添加剤について、以下でより詳細に説明する。しかし、ここでは、促進剤及び安定剤について説明する。
【0025】
また、シアノアクリレート成分の硬化を促進するために、1種以上の促進剤を接着剤系、特にパートA組成物に使用してもよい。そのような促進剤は、カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーン、シラクラウン、クラウンエーテル、シクロデキストリン、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ヒドロキシ化合物、及びそれらの組み合わせから選択されてよい。
【0026】
カリックスアレーン及びオキサカリックスアレーンのうち、多くのものが知られており、特許文献に報告されている。例えば、米国特許第4,556,700号、第4,622,414号、第4,636,539号、第4,695,615号、第4,718,966号、及び第4,855,461号(これらの各々の開示内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)を参照されたい。
【0027】
例えば、カリックスアレーンに関しては、以下の構造に含まれるものが本明細書において有用である:
【0028】
【化1】
(式中、Rは、C1-4アルキル、アルコキシ、置換アルキル、又は置換アルコキシであり;Rは、H又はC1-4アルキルであり;そしてnは、4、6、又は8である)。
【0029】
1つの特に望ましいカリックスアレーンはテトラブチルテトラ[2-エトキシ-2-オキソエトキシ]カリックス-4-アレーンである。
【0030】
多数のクラウンエーテルが知られている。例えば、本明細書において、個々に又は組み合わせて使用され得るものの例としては、15-クラウン-5、18-クラウン-6、ジベンゾ-18-クラウン-6、ベンゾ-15
-クラウン-5-ジベンゾ-24-クラウン-8、ジベンゾ-30-クラウン-10、トリベンゾ-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、ジベンゾ-14-クラウン-4、ジシクロヘキシル-18-クラウン-6、ジシクロヘキシル-24-クラウン-8、シクロヘキシル-12-クラウン-4、1,2-デカリル-15-クラウン-5、1,2-ナフト-15-クラウン-5、3,4,5-ナフチル-16-クラウン-5、1,2-メチル-ベンゾ-18-クラウン-6、1,2-メチルベンゾ-5,6-メチルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-18-クラウン-6、1,2-ビニルベンゾ-15-クラウン-5、1,2-ビニルベンゾ-18-クラウン-6、1,2-t-ブチル-シクロヘキシル-18-クラウン-6、asym-ジベンゾ-22-クラウン-6、及び1,2-ベンゾ-1,4-ベンゾ-5-酸素-20-クラウン-7が挙げられる。米国特許第4,837,260号(Sato)(その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)を参照されたい。
【0031】
シラクラウンもまた、その多くのものが知られており、文献に報告されている。例えば、典型的なシラクラウンは、以下の構造に表され得る:
【0032】
【化2】
(式中、R及びRは、それ自体はシアノアクリレートモノマーの重合を引き起こさない有機基であり、Rは、H又はCHであり、そしてnは、1~4の整数である。)。好適なR基及びR基の例は、R基、アルコキシ基、例えばメトキシ基、及びアリールオキシ基、例えばフェノキシである。R基及びR基は、ハロゲン又は他の置換基を含んでいてもよく、その例はトリフルオロプロピルである。しかしながら、アミノ、置換アミノ、及びアルキルアミノなどの塩基性基は、R基及びR基として適していない。
【0033】
本発明の組成物に有用なシラクラウン化合物の特定の例としては:
【0034】
【化3】
ジメチルシラ-11-クラウン-4;
【0035】
【化4】
ジメチルシラ-14-クラウン-5;
【0036】
【化5】
及びジメチルシラ-17-クラウン-6が挙げられる。例えば、米国特許第4,906,317号(Liu)(その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)を参照されたい。
【0037】
多くのシクロデキストリンが本発明に関して使用され得る。例えば、少なくとも部分的にシアノアクリレートに可溶性であるα-、β-、又はγ-シクロデキストリンのヒドロキシル基誘導体として、米国特許第5,312,864号(Wenz)(その開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載及び特許請求されているものは、本明細書において促進剤成分として用いるのに適切な選択肢であろう。
【0038】
さらに、本明細書における使用に好適なポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレートとしては、以下の構造に含まれるものが挙げられる:
【0039】
【化6】
(式中、nは3より大きく、例えば3~12の範囲内であり、nが9であることが特に望ましい。)。より具体的な例としては、PEG 200 DMA(式中、nは約4)、PEG 400 DMA(式中、nは約9)、PEG 600 DMA(式中、nは約14)、及びPEG 800 DMA(式中、nは約19)が挙げられ、ここで、数字(例えば、400)は、2つのメタクリレート基を除いた、該分子のグリコール部分の平均分子量を表し、グラム/モル(すなわち、400g/モル)として表される。特に望ましいPEG DMAはPEG 400 DMAである。
【0040】
またエトキシル化ヒドロキシ化合物(又は、用いられ得るエトキシル化脂肪アルコール)のうち、以下の構造に含まれるものから適切なものを選択してもよい:
【0041】
【化7】
(式中、Cは、直鎖又は分枝のアルキル又はアルケニル鎖であることができ、mは、1~30、例えば5~20の整数であり、nは、2~30、例えば5~15の整数であり、そしてRは、H、又はアルキル、例えばC1-6アルキルであってよい。)
【0042】
そのような材料の市販の例としては、BASF,Dusseldorf,GermanyからDEHYDOLの商品名で提供されているもの、例えばDEHYDOL 100が挙げられる。
【0043】
さらに、以下の構造内に包含される促進剤が挙げられる。
【0044】
【化8】
(式中、Rは、水素、C1-6アルキル、C1-6アルキルオキシ、アルキルチオエーテル、ハロアルキル、カルボン酸及びそのエステル、スルフィン酸、スルホン酸、及び亜硫酸、並びにそれらのエステル、ホスフィン酸、ホスホン酸、及び亜リン酸、並びにそれらのエステルであり、Zはポリエーテル結合であり、nは1~12であり、pは1~3であり、これらは上に定義されるとおりであり、R’はRと同じであり、gはnと同じである。)。
【0045】
このクラスに包含される促進剤成分として特に望ましい化合物は、
【0046】
【化9】
(式中、nとmの合計は12以上である。)である。
【0047】
促進剤は、パートA組成物全体の約0.01重量%から約10重量%の範囲内の量で組成物中に含まれるべきであり、パートA組成物全体の約0.1重量%から約0.5重量%の範囲が好ましく、パートA組成物全体の約0.4重量%が特に好ましい。
【0048】
接着剤系のパートA組成物において有用な安定剤としては、フリーラジカル安定剤、アニオン性安定剤、及びそれらの組み合わせを含む安定剤パッケージが挙げられる。このような安定剤の種類及び量は、当業者にはよく知られている。例えば、米国特許第5,530,037号及び第6,607,632号(これらの各々の開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。)を参照されたい。一般的に使用されるフリーラジカル安定剤としては、ハイドロキノンが挙げられ、一方、一般的に使用されるアニオン性安定剤としては、三フッ化ホウ素、三フッ化ホウ素エーテラート、三酸化硫黄(及びその加水分解物)、及びメタンスルホン酸が挙げられる。これらのアニオン性安定剤は、また、上述のように、カチオン性触媒又はその一部としても機能することができる。適切な組み合わせを使用することができる。
【0049】
<パートB>
パートBの組成物で使用するためのカチオン硬化性モノマーとしては、エポキシモノマー、エピスルフィドモノマー、オキセタンモノマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0050】
組成物のパートBにおいて使用するためのエポキシモノマーとしては、様々なエポキシモノマーが挙げられ、エポキシモノマーの一部は芳香族であり、他のものは脂肪族であり、さらに他のものは脂環式である。このようなエポキシモノマーの例としては、ビスフェノールFジグリシジルエーテル(及びその水素化型)、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(及びその水素化型)、ビスフェノールSジグリシジルエーテル(及びその水素化型)、ビスフェノールEジグリシジルエーテル(及びその水素化型)、ビフェニルジグリシジルエーテル(及びその水素化型)、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキサイド、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、リモネンジエポキサイド、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、アニリンジグリシジルエーテル、プロピレングリコールのジグリシジルエーテル、シアヌル酸トリグリシジルエーテル、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、リノールダイマー酸のジグリシジルエステル、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、テトラクロロビスフェノールAグリシジルエーテル、1,1,1-トリス(p-ヒドロキシフェニル)エタングリシジルエーテル、テトラキス(4-ヒドロキシフェニル)エタンのテトラグリシジルエーテル、エポキシフェノールノボラック樹脂、エポキシクレゾールノボラック樹脂、テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタンなどが挙げられる。適切な組み合わせを使用することができる。
【0051】
市販のエポキシ樹脂の中で使用に適したものは、フェノール化合物のポリグリシジル誘導体、例えば、Shell Chemical Co.からEPON 828、EPON 1001、EPON 1009、及びEPON 1031;Dow Chemical Co.からDER 331、DER 332、DER 334、及びDER 542;Vantico,Tarrytown,NYからGY285;及び日本化薬からBREN-Sの商品名で入手できるもの;エポキシ化ポリブタジエン、例えば、SartomerからPolyBD、DaicelからEPOLEAD PB 3600、日本曹達からJP-100及びJP-200の商品表示で販売されているもの、KurarayからのKL-610、KL-613、及びKL-630Tなどのエポキシ化液状イソプレンゴム;並びに、Sanyo CorporationからのEPOXYPRENE25及びEPOXYPRENE50などのエポキシ化液状ポリイソプレンである。他の好適なエポキシ樹脂としては、ポリオールなどと、フェノール-ホルムアルデヒドノボラックのポリグリシジル誘導体と(後者はDow Chemical CompanyからDEN 431、DEN 438、及びDEN 439の商品名で市販されている。)から調製されるポリエポキシドが挙げられる。また、クレゾール類縁体は、Ciba Specialty ChemicalsからECN 1235、ECN 1273、及びECN 1299で市販されている。SU-8はResolutionから入手可能なビスフェノールA型のエポキシノボラックである。当然ながら、CYRACUREの商品名で入手可能なものなどの脂環式エポキシ樹脂、及びEPALLOYの商品名で入手可能なものなどの前述の水素化ビスフェノール及びビフェニル型エポキシ樹脂は、本明細書での使用に適している。適切な組み合わせを使用してもよい。
【0052】
脂環式エポキシ樹脂は、少なくとも1つの脂環式基と少なくとも1つのオキシラン基、多くの場合2つのオキシラン基を含む。代表的な脂環式エポキシ樹脂としては、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ-(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキサンジオキシド、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、エキソ-エキソビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、エンド-エキソビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル、2,2-ビス(4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル)プロパン、2,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシシクロヘキシル-p-ジオキサン)、2,6-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ノルボルネン、リノール酸二量体のジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、3-ビニルシクロヘキセンオキシド、エポキシ化ポリ(1,3-ブタジエン-アクリロニトリル)、エポキシ化大豆油、エポキシ化ヒマシ油、エポキシ化アマニ油、2,2-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル)プロパン、ジシクロペンタジエンジオキシド、トリシクロペンタジエンジオキシド、テトラシクロペンタジエンジオキシド、1,2-エポキシ-6-(2,3-エポキシプロポキシ)ヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、p-(2,3-エポキシ)シクロペンチルフェニル-2,3-エポキシプロピルエーテル、1-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル-5,6-エポキシヘキサヒドロ-4,7-メタノインダン、o-(2,3エポキシ)シクロペンチルフェニル-2,3-エポキシプロピルエーテル)、1,2-ビス[5-(1,2-エポキシ)-4,7-ヘキサヒドロメタノインダノキシル]エタン、シクロペンテニルフェニルグリシジルエーテル、シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル、及びジグリシジルヘキサヒドロフタレートが挙げられる。1,3-ビス(3,4-エポキシシクロヘキシル-2-エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン、及び、米国特許第7,777,064号(その開示内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)に開示されているような他のエポキシ官能性直鎖/環状シロキサンなどのシロキサン官能性エポキシ樹脂も利用することができる。特定の実施形態では、脂環式エポキシ樹脂は、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート及び3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレートである。本明細書での使用に適した脂環式エポキシの他の例としては、米国特許第6,429,281号(Dershem)(その開示内容は参照により本明細書に明示的に組み込まれる。)に開示及び記載されているものが挙げられる。
【0053】
そして当然ながら、エポキシ樹脂の組み合わせも本明細書における使用に望ましい。
【0054】
エピスルフィドモノマーは、単純に、ベースのエポキシモノマーの完全又は部分的な硫黄含有3員環バージョンであってもよい。
【0055】
オキセタンモノマーは、以下から選ぶことができる。
【0056】
【化10】
【0057】
A-Cと表示されたオキセタンは、東亜合成株式会社、日本から入手できる。適切な組み合わせも使用することができる。
【0058】
ビニルエーテルモノマーは、多数の材料、例えば、Vertellus Performance Materials Inc.,Greensboro,NCからVEctomerの商品名で市販されているものなどから選択することができる。例としては、VEctomerビニルエーテル4010[ビス-(4-ビニルオキシブチル)イソフタレート]、VEctomerビニルエーテル4060[ビス-(4-ビニルオキシブチル)アジペート]、及びVEctomerビニルエーテル5015[トリス(4-ビニルオキシブチル)トリメリテート]が挙げられる。
【0059】
エポキシ、エピスルフィド、オキセタン、及び/又はビニルエーテルモノマーは、1種以上のアルコキシシラン基で官能化されたものであってもよい。そのような材料の例としては、Gelest Inc.,Morrisville,PAから市販されているものが挙げられる。
【0060】
上述したように、様々な性能特性に影響を与えるために、パートA又はパートB組成物のいずれか又は両方に添加剤を含んでもよい。
【0061】
任意選択で使用が企図される充填剤としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、マグネシア、その表面に疎水性基及び親水性基を有するもの以外のシリカ、例えば、ヒュームドシリカ若しくはフューズドシリカ、アルミナ、パーフッ素化炭化水素ポリマー(すなわち、TEFLON(登録商標))、熱可塑性ポリマー、熱可塑性エラストマー、マイカ、ガラス粉末などが挙げられる。好ましくは、これらの充填剤の粒径は、約20ミクロン以下であろう。
【0062】
それらの他のシリカに関して、シリカは、ナノ粒子サイズの平均粒径;すなわち、10-9メートルのオーダーの平均粒径を有することができる。シリカナノ粒子は、エポキシ樹脂に予め分散させることができ、Nanoresins,GermanyからNANOPOXの商品名で入手できるものから選択することができる。NANOPOXは、材料特性の優れた組み合わせを示す、シリカナノ粒子強化エポキシ樹脂ファミリーの商品名である。シリカ相は、直径50nm未満で非常に狭い粒度分布を有する、表面改質された合成SiOナノスフェアから構成されている。このSiOナノスフェアは、エポキシ樹脂マトリックス中に凝集することなく分散しており、その結果、最大50重量%のシリカを含む樹脂で低粘度を実現している。
【0063】
本明細書で使用するのに特に望ましいNANOPOX製品の市販の例としては、NANOPOX A610(脂環式エポキシ樹脂マトリックス中の40重量%分散体)が挙げられる。NANOPOX製品は、製造者は50nm未満の粒径と報告しているが、約5nm~約80nmの粒径を有すると考えられている。
【0064】
シリカ成分は、組成物の総重量を基準にして、約1~約60重量%、例えば約3~約30重量%、望ましくは約5~約20重量%の範囲の量で存在すべきである。
【0065】
使用が企図されている柔軟剤(可塑剤とも呼ばれる)としては、組成物のTを低下させることができる分岐したポリアルカン又はポリシロキサンが挙げられる。そのような柔軟剤としては、例えば、ポリエーテル、ポリエステル、ポリチオール、及びポリスルフィドなどが挙げられる。使用される場合、柔軟剤は、典型的には、パートB組成物全体の約0.5重量%~約30重量%の範囲で存在する。
【0066】
柔軟剤はまた、反応性であってもよく、すなわち、反応して硬化反応生成物へとなるように官能化されていてもよい。このような場合、ヒドロキシル官能化樹脂を使用することができるが、これは、エポキシ樹脂などのカチオン硬化性成分と共反応する傾向があり、したがって使用されると、硬化生成物の機械的特性を改質することができるからである。
【0067】
例えば、ヒドロキシ官能化脂肪族ポリエステルジオールは、硬化組成物に柔軟性の改善をもたらす。ジオールの1つの市販例は、King IndustriesからK-FLEX A307の商品名で入手可能である。K-FLEX A307は、製造者によって、低粘度、固形分100%の、第1級ヒドロキシル基を有する直鎖状の飽和脂肪族ポリエステルジオールであると報告されている。K-FLEX A307は、アクリル/イソシアネート系及びアクリル/メラミン系の柔軟性改質剤として設計されていると推奨されている。商用用途としては、自動車OEM、自動車再塗装、航空宇宙、工業メンテナンス、プラスチックコーティングと広告されている。
【0068】
その他には、PolyTHF 650/1400/2000/2900(TERATHANEの商品名で販売)、ポリカプロラクトンジオール及びトリオール(Aldrich)、ポリジメチルシロキサン-ポリカプロラクトンジオール(WackerのWAX 350 OH Dなど)、K-PURE CDR-3441、CDR-3319(King Industry)、及び第一級又は第二級ヒドロキシル末端ポリブタジエン/水素化ポリブタジエン(Cray Valley、PolyBd/Krasol材料など)が挙げられる。
【0069】
パートA組成物において特に使用が企図されている強靭化剤としては、低級アルケンモノマーと(i)アクリル酸エステル、(ii)メタクリル酸エステル、若しくは(iii)酢酸ビニルとのエラストマーコポリマーから選択されるエラストマーポリマー、例えばアクリルゴム;ポリエステルウレタン;エチレン-酢酸ビニル;フッ素ゴム;イソプレン-アクリロニトリルポリマー;クロロスルフィネートポリエチレン;及びポリ酢酸ビニルのホモポリマーなどが特に有用であることが分かった[米国特許第4,440,910号(O’Connor)を参照されたい。これらの各々の開示内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まる。]。エラストマーポリマーは、アクリル酸のアルキルエステルのホモポリマー;低級アルケンなどの他の重合性モノマーとアクリル酸のアルキルエステル又はアルコキシエステルとのコポリマー;及びアクリル酸のアルキルエステル又はアルコキシエステルのコポリマーのいずれかとして、’910特許に記載されている。アクリル酸のアルキルエステル及びアルコキシエステルと共重合することができる他の不飽和モノマーとしては、ジエン、反応性ハロゲン含有不飽和化合物、及びアクリルアミドなどの他のアクリルモノマーが挙げられる。好適な組み合わせを用いることができる。
【0070】
例えば、このようなエラストマーポリマーの1つのグループは、VAMACの名称でDuPontが製造しているアクリル酸メチルとエチレンとのコポリマー、例えば、VAMAC N123及びVAMAC B-124である。VAMAC N123及びVAMAC B-124は、DuPontからエチレン/アクリル系エラストマーのマスターバッチであると報告されている。DuPontの材料であるVAMAC Gは同じようなコポリマーであるが、色を出すための充填剤又は安定剤を含まない。VAMAC VCSゴムはベースゴムであり、これからVAMAC製品ラインの残りのメンバーが配合されるものと思われる。VAMAC VCS(VAMAC MRとしても知られている)は、エチレン、アクリル酸メチル、及びカルボン酸硬化部位を有するモノマーの組み合わせの反応生成物であり、これは、いったん形成されると、離型剤であるオクタデシルアミン、複合有機リン酸エステル(complex organic phosphate ester)、及び/又はステアリン酸、並びに、置換ジフェニルアミンなどの酸化防止剤などの加工助剤を実質的に含まない。適切な組み合わせを使用することができる。
【0071】
近年、DuPont社は、エチレン及びアクリル酸メチルからできたゴムを商品表示VAMAC VMX 1012及びVCD 6200で市場に提供している。VAMAC VMX 1012ゴムは、ポリマー主鎖中にカルボン酸をほとんど又は全く有さないと考えられている。VAMAC VCSゴムと同様に、VAMAC VMX 1012及びVCD 6200ゴムは、上記の離型剤のオクタデシルアミン、複合有機リン酸エステル、及び/又はステアリン酸、並びに、置換ジフェニルアミンなどの抗酸化剤などの加工助剤を実質的に含まない。これらのVAMACエラストマーポリマーはすべて本明細書において有用である。
【0072】
さらに、塩化ビニリデン-アクリロニトリルコポリマー[米国特許第4,102,945号(Gleave)参照]及び塩化ビニリデン/酢酸ビニルコポリマー[米国特許第4,444,933号(Columbus)参照]をパートA組成物に含めてもよい。当然ながら、これらの各米国特許の開示内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0073】
LANXESS LimitedからLEVAMELTの商品名で市販されているポリエチレンとポリ酢酸ビニルのコポリマーが有用である。
【0074】
様々なLEVAMELT試薬が利用可能であり、例えば、LEVAMELT 400、LEVAMELT 600、及びLEVAMELT 900が挙げられる。LEVAMELT製品は、存在する酢酸ビニルの量が異なる。例えば、LEVAMELT 400は、40重量%の酢酸ビニルを含むエチレン-酢酸ビニルコポリマーから構成される。LEVAMELTブランドの製品は、顆粒状で提供される。顆粒はほぼ無色で、シリカ及びタルクがまぶされている。LEVAMELTブランドの製品は、ペンダント型の酢酸基を有する飽和主鎖を形成するメチレン単位で構成されている。完全に飽和した主鎖の存在は、LEVAMELTが特に安定したポリマーであることの指標である。これは、従来のゴムを老化反応、オゾン、及び紫外線に晒されやすくする反応性の二重結合を含まない。飽和主鎖により堅牢になることが報告されている。
【0075】
興味深いことに、ポリエチレン/ポリ酢酸ビニルの比率に応じて、これらのLEVAMELTエラストマーの異なるモノマーへの溶解度が変化し、また、溶解度の結果として強靭化能も変化する。
【0076】
LEVAMELTエラストマーは、ペレット状で入手可能であり、他の既知のエラストマー強靭化剤よりも配合が容易である。
【0077】
Wacker Chemie AG,Munich,Germanyから市販されているVINNOLブランドの表面コーティング樹脂は、様々な産業用途での使用が推奨されている広範囲の塩化ビニル由来のコポリマー及びターポリマーを表す。これらのポリマーの主な構成要素は、塩化ビニルと酢酸ビニルの異なる様々な組成物である。VINNOL製品ラインのターポリマーは、追加的にカルボキシル基又はヒドロキシル基を含む。これらの塩化ビニル/酢酸ビニルコポリマー及びターポリマーも使用することができる。
【0078】
カルボキシル基を有する表面コーティング樹脂VINNOLは、塩化ビニル、酢酸ビニル、及びジカルボン酸のターポリマーであり、そのモル組成、並びに重合度及び重合過程が様々に異なっている。これらのターポリマーは、特に金属基材上で優れた接着性を示すことが報告されている。
【0079】
ヒドロキシル基を有するVINNOL表面コーティング樹脂は、塩化ビニル、ヒドロキシアクリレート及びジカルボキシレートのコポリマー及びターポリマーであり、それらの組成及び重合度が様々に異なっている。
【0080】
官能基を有しないVINNOL表面コーティング樹脂は、さまざまなモル組成と重合度を有する塩化ビニルと酢酸ビニルのコポリマーである。
【0081】
ゴム粒子、特に比較的小さい平均粒径(例えば、約500nm未満又は約200nm未満)を有するゴム粒子も、特にパートB組成物に含まれてもよい。ゴム粒子は、既知のコアシェル構造に共通するシェルを有していても有していなくてもよい。
【0082】
コア-シェル構造を有するゴム粒子の場合、そのような粒子は一般に、エラストマー性又はゴム性の特性(すなわち、約0℃未満、例えば、約-30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材料で構成されたコアを有し、該コアは、非エラストマー性ポリマー材料(すなわち、周囲温度よりも大きい、例えば、約50℃よりも大きいガラス転移温度を有する熱可塑性又は熱硬化性/架橋ポリマー)で構成されたシェルで取り囲まれている。例えば、コアは、ジエン系ホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンと、ビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレートなどの1種以上のエチレン性不飽和モノマーとのコポリマー)で構成されていてもよく、一方、シェルは、適切に高いガラス転移温度を有する、(メタ)アクリレート(例えば、メタクリル酸メチル)、ビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン)、ビニルシアニド(例えば、アクリロニトリル)、不飽和酸及び無水物(例えば、アクリル酸)、(メタ)アクリルアミドなどの1種以上のモノマーのポリマー又はコポリマーで構成されていてもよい。また、ポリアクリル酸ブチル、ポリシロキサンエラストマー(例えば、ポリジメチルシロキサン、特に架橋ポリジメチルシロキサン)など、他のゴム質ポリマーもコアに好適に使用することができる。
【0083】
ゴム粒子は、2以上の層で構成されていてもよい(例えば、1つのゴム質材料の中心コアが、異なるゴム質材料の第2コアに囲まれていてもよいし、ゴム質コアが異なる組成の2つのシェルに囲まれていてもよいし、あるいは、ゴム粒子が、ソフトコア、ハードシェル、ソフトシェル、ハードシェルという構造を有していてもよい。)。本発明の一実施形態では、使用されるゴム粒子は、コアと、異なる化学組成及び/又は特性を有する少なくとも2つの同心円状のシェルとから構成される。コア若しくはシェルのいずれか、又はコアとシェルの両方が(例えば、イオン的又は共有結合的に)架橋されていてもよい。シェルはコアにグラフトされていてもよい。シェルを構成するポリマーは、本発明の組成物の他の成分と相互作用することが可能な1種、又は複数の異なるタイプの官能基(例えば、エポキシ基)を有していてもよい。
【0084】
典型的には、コアは、ゴム粒子の約50重量%~約95重量%を構成し、一方、シェルは、ゴム粒子の約5重量%~約50重量%を構成することになる。
【0085】
好ましくは、ゴム粒子は比較的小さなサイズである。例えば、平均粒径は、約0.03ミクロンから約2ミクロン、又は約0.05ミクロンから約1ミクロンであってもよい。ゴム粒子は、約500nm未満、例えば約200nm未満の平均直径を有していてもよい。例えば、コア-シェルゴム粒子は、約25nmから約200nmの範囲内の平均直径を有してもよい。
【0086】
コア-シェル構造を有するゴム粒子を調製する方法は、当該技術分野ではよく知られており、例えば、米国特許第4,419,496号、第4,778,851号、第5,981,659号、第6,111,015号、第6,147,142号、及び第6,180,693号に記載されており、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0087】
コアシェル構造を有するゴム粒子は、ゴム粒子がビスフェノールAのジグリシジルエーテルなどの1種以上のエポキシ樹脂に分散されたマスターバッチとして調製されてもよい。例えば、ゴム粒子は、典型的には、水性分散体又はエマルションとして調製される。このような分散体又はエマルションは、所望のエポキシ樹脂又はエポキシ樹脂の混合物と組み合わせてもよく、水及び他の揮発性物質を蒸留などによって除去してもよい。そのようなマスターバッチを調製する1つの方法は、国際特許公開第WO2004/108825号に詳細に記載されており、その開示内容は参照によりその全体が本明細書に明示的に組み込まれる。例えば、ゴム粒子の水性ラテックスを、水に部分溶解性を有する有機媒体と接触させ、次いで、第1の有機媒体よりも水への部分溶解性が低い別の有機媒体と接触させて水を分離し、第2の有機媒体中のゴム粒子の分散体を提供してもよい。次いで、この分散体を、所望のエポキシ樹脂と混合し、蒸留などにより揮発性物質を除去して、マスターバッチを提供することができる。
【0088】
エポキシ樹脂マトリックス中にコアシェル構造を有するゴム粒子の特に好適な分散体は、株式会社カネカから入手可能である。
【0089】
例えば、コアは、ポリブタジエン、ポリアクリレート、ポリブタジエン/アクリロニトリル混合物、ポリオール、及び/若しくはポリシロキサン、又は低いガラス転移温度を与える任意の他のモノマーのフィードストックを主体として形成することができる。シェルは、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、若しくはポリ塩化ビニル、又はより高いガラス転移温度を与える任意の他の任意のモノマーのフィードストックを主体として形成することができる。
【0090】
コアシェルゴムは、0.07ミクロン~10ミクロン、例えば0.1ミクロン~5ミクロンの範囲の粒径を有していてもよい。
【0091】
このようにして製造されたコアシェルゴムは、エポキシマトリックスやフェノール系マトリックスなどの熱硬化性樹脂マトリックス中に分散されていてもよい。エポキシマトリックスの例としては、ビスフェノールA、F若しくはS、又はビフェノールのジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ、及び脂環式エポキシが挙げられる。フェノール樹脂の例としては、ビスフェノールA系フェノキシが挙げられる。マトリックス材料は、通常、常温で液体である。
【0092】
コアシェルゴム分散体は、約5重量%~約50重量%の範囲の量で存在してもよく、粘度を考慮すると約15重量%~約25重量%が望ましい。これらの量は、パートB組成物全体を基準とするものである。
【0093】
使用される場合、これらのコアシェルゴムにより、組成物中で、しばしば予測可能な方法で--硬化に向けた温度中立性の点で--強靭化を起こすことができるが、これは、市販品として提供されている際にコアシェルゴムにおいて通常観察される、実質的に均一な分散によるものである。
【0094】
KANEACEの商品名で入手可能なものなど、Kanekaから入手可能なコアシェルゴム構造の多くは、エポキシ樹脂中に分散された、(メタ)アクリレート-ブタジエン-スチレンのコポリマー(ここで、ブタジエンが相分離粒子の主成分である。)からなるコアを有すると考えられている。エポキシ樹脂に分散させたコアシェルゴム粒子の他の市販のマスターバッチとしては、GENIOPERL M23A(ビスフェノールAジグリシジルエーテルをベースとする芳香族エポキシ樹脂中30重量%のコアシェル粒子の分散体;コアシェル粒子の平均直径は約100nmで、エポキシ官能化アクリレートコポリマーがグラフトされている架橋シリコーンエラストマーコアを含む;シリコーンエラストマーコアはコアシェル粒子の約65重量%を占める)が挙げられ、これは、Wacker Chemie GmbHから入手可能である。
【0095】
そのようなシェルを有しないゴム粒子の場合は、ゴム粒子は、そのような構造のコアに基づいてもよい。
【0096】
好ましくは、ゴム粒子は比較的小さなサイズである。例えば、平均粒径は、約0.03ミクロンから約2ミクロン、又は約0.05ミクロンから約1ミクロンであってもよい。本発明の特定の実施形態では、ゴム粒子は、約500nm未満の平均直径を有する。他の実施形態では、平均粒径は約200nm未満である。例えば、ゴム粒子は、約25nm~約200nm又は約50nm~約150nmの範囲内の平均直径を有してもよい。
【0097】
ゴム粒子は、一般に、エラストマー又はゴム性の特性(すなわち、約0℃未満、例えば、約-30℃未満のガラス転移温度)を有するポリマー材料で構成される。例えば、ゴム粒子は、ジエン系ホモポリマー又はコポリマー(例えば、ブタジエン又はイソプレンのホモポリマー、ブタジエン又はイソプレンとビニル芳香族モノマー、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和モノマーの1種又は2種以上とのコポリマー)、及びポリシロキサンで構成されていてもよい。また、ゴム粒子は、カルボキシレート基、ヒドロキシル基などの官能基を含んでいてもよく、直鎖状、分岐状、架橋状、ランダムコポリマー、又はブロックコポリマーの構造を有していてもよい。
【0098】
例えば、ゴム粒子は、ブタジエンなどのジエン類、(メタ)アクリレート類、アクリロニトリルなどのエチレン性不飽和ニトリル類、及び/又は、重合若しくは共重合すると低いガラス転移温度を有するポリマー若しくはコポリマーをもたらす他の任意のモノマーのフィードストックを主体として形成されてもよい。
【0099】
ゴム粒子は、上述のように、乾燥形態で使用してもよいし、マトリックス中に分散させてもよい。
【0100】
典型的には、組成物は、約5~約35重量%の量のゴム粒子を含んでもよい。
【0101】
本発明では、異なるゴム粒子の組み合わせを有利に使用することができる。ゴム粒子は、例えば、それぞれの材料の粒子径、ガラス転移温度、材料が官能化されているかどうか、どの程度及びどのような材料で官能化されているか、並びに、表面処理されているか及びどのような方法で表面処理されているかが異なっていてよい。
【0102】
ゴム粒子の一部は、粒子がエポキシ樹脂マトリックス中に安定的に分散しているマスターバッチの形態で供給されてもよく、別の一部は、乾燥粉末(すなわち、エポキシ樹脂又は他のマトリックス材料を含まない)の形態で接着剤組成物に供給されてもよい。例えば、接着剤組成物は、約0.1ミクロンから約0.5ミクロンの平均粒子径を有する乾燥粉末形態の第1のタイプのゴム粒子と、約25nmから約200nmの平均粒子径を有し、約5重量%から約50重量%の濃度で液体ビスフェノールAジグリシジルエーテルのマトリックス中に安定的に分散された第2のタイプのゴム粒子との両方を使用して調製されてもよい。第1のタイプ:第2のタイプのゴム粒子の重量比は、例えば、約1.5:1から約0.3:1であってよい。
【0103】
ゴム粒子の化学組成は、各粒子全体で本質的に均一であってもよい。しかしながら、接着剤組成物中にゴム粒子を分散させる能力を高める(例えば、ゴム粒子の凝集を低減する、接着剤組成物から沈降するゴム粒子の傾向を低減する)ように、カップリング剤、酸化剤などとの反応によって、粒子の外表面を改質してもよい。また、ゴム粒子の表面を改質することで、接着剤を硬化させたときにエポキシ樹脂マトリックスのゴム粒子への接着性が向上し得る。あるいは、ゴム粒子に放射線を照射して、ゴム粒子を構成するポリマーの架橋の程度を粒子の異なる領域で変化させてもよい。例えば、ゴムが粒子の中心部よりも粒子の表面付近でより高度に架橋されるように、ゴム粒子をガンマ線で処理してもよい。
【0104】
本発明で使用するのに適したゴム粒子は、商業的供給源から入手できる。例えば、Eliokem,Inc.から供給されるゴム粒子、例えば、NEP R0401及びNEP R401S(両方ともアクリロニトリル/ブタジエンコポリマーをベースとする)の商品名で入手できるもの;NEP R0501(カルボキシル化アクリロニトリル/ブタジエンコポリマーをベースとする;CAS No.9010-81-5);NEP R0601A(ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンをベースとする;CAS No.70131-67-8);並びに、NEP R0701及びNEP 0701S(ブタジエン/スチレン/2-ビニルピリジンコポリマーをベースとする;CAS No.25053-48-9)を使用することができる。また、Dow Chemical Co.,Philadelphia,PAからPARALOID 2314、PARALOID 2300、及びPARALOID 2600などのPARALOIDの商品名で入手可能なもの、並びにガンツ化成株式会社、大阪、日本からSTAPHYLOID AC-3832などのSTAPHYLOIDの商品名で入手可能なものが挙げられる。
【0105】
例えば、粒子表面に極性基(例えば、ヒドロキシル基、カルボン酸基)を設けることによって粒子の外表面を改質するために、反応性ガス又は他の試薬で処理されているゴム粒子も、本発明での使用に適している。例示的な反応性ガスとしては、例えば、オゾン、Cl、F、O、SO、及び酸化性ガスが挙げられる。そのような試薬を使用してゴム粒子を表面改質する方法は、当技術分野で知られており、例えば、米国特許第5,382,635号、同第5,506,283号、同第5,693,714号、及び同第5,969,053号に記載されており、これらは、各々、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。また、好適な表面改質ゴム粒子は、Exousia CorporationからVISTAMERの商品名で販売されているゴムのように、商業的供給源からも入手可能である。
【0106】
ゴム粒子が最初に乾燥形態で提供される場合、接着剤組成物を硬化させる前に、そのような粒子を、接着剤組成物中に確実によく分散させることが有利であり得る。すなわち、ゴム粒子の凝集体は、好ましくは、分離した個々のゴム粒子となるように分解され、これは、乾燥したゴム粒子を接着剤組成物の他の成分と緊密かつ徹底的に混合することによって達成することができる。例えば、乾燥したゴム粒子をエポキシ樹脂と混合し、ゴム粒子を本質的に完全に分散させ、ゴム粒子の全ての凝集体を分解するのに有効な時間、粉砕又は溶融混練してもよい。
【0107】
さらに、Nanoresinsは、ALBIDUR(コアシェルシリコーンゴム粒子を含有するエポキシ樹脂:EP 2240、EP 2240A、EP 5340など);ALBIFLEX(エポキシ-シロキサンブロックコポリマー樹脂);及びALBIPOX(エポキシ-ニトリル-ブタジエンゴム付加物を含有するエポキシ樹脂)の商品名の製品を商業的に提供している。適切な組み合わせを使用することができる。
【0108】
増粘剤も有用である。
【0109】
また、他の添加剤がパートA組成物に含まれてもよい。例えば、リン酸がパートA組成物に含まれてもよい。約50ppm~約1,000ppm、例えば約100~約500ppmの範囲のレベルで含むものを、接合アセンブリにおいて接合しようとする少なくとも1つのアルミニウム基材に適用すると、強度及び強度保持の改善が観察される場合がある。より具体的には、湿度、熱老化及び溶剤浸漬試験では、リン酸を本発明の2パートシアノアクリレート/カチオン硬化性接着剤系に添加することで、金属及びプラスチックの両方、特にアルミニウムの耐久性に優れた特性を有する劇的に改善された接着剤がもたらされ得ることが示されている。
【0110】
実際には、パートA及びパートBの各組成物は、使用前に装置内の別々の格納容器に収容され、使用時には容器から2つのパートが現れ、混合され、基材表面に塗布される。容器は、デュアルチャンバーカートリッジのチャンバーであってもよく、この場合、別々のパートが、プランジャーによって、チャンバー内を通過し、開口部(共通のものであっても、隣接したものであってもよい)を通過した後、混合ディスペンスノズルを通過する。あるいは、容器は、同軸又は横並びのパウチであってもよく、これらのパウチを、切断又は引き裂いて、その内容物を混合し、基板表面に塗布してもよい。
【0111】
本発明は、以下の実施例を再考察することによりより容易に理解されるであろう。
【実施例
【0112】
実施例において、CA又はシアノアクリレートという表記は、特記のない限り、エチル-2-シアノアクリレートを指す。
【0113】
表1を参照して、以下のように、記載された量の列挙された成分から、ベースのパートA組成物としてストック溶液1を調製した。
【0114】
【表1】
【0115】
ストック溶液1に、カチオン性触媒(LiBF)及びシリカ成分としてヒュームドシリカ(CAB-O-SIL TS 720)を記載の量で加えて、表2に示したサンプルA~Eを調製した。
【0116】
【表2】
【0117】
サンプルA~Eについて、各々を20グラムボトルに入れ、82℃の温度で3日間老化させた後、加速老化試験を行った。
【0118】
各サンプルの外観及び粘度を老化前後に記録し、表3に示した。比較のためにストック溶液1を使用した。
【0119】
【表3】
【0120】
粘度比が3未満のものは許容範囲である。
【0121】
表4を参照して、表4に記載された量の列挙された成分から、カチオン性触媒としてLiBFが添加されたストック溶液2を、ベースのパートA組成物として以下のように調製した。
【0122】
【表4】
【0123】
ストック溶液2に、シアノアクリレート中のカチオン性触媒との相溶性を測定するために、様々なシリカ充填剤を添加した。表5にサンプルF~Iの構成成分を示す。
【0124】
【表5】
【0125】
サンプルF~Iについて、各々を20グラムボトルに入れ、82℃の温度で3日間老化させた後、加速老化試験を行った。
【0126】
各サンプルの外観と粘度を老化後に記録したものを、表6に示す。比較のためにストック溶液2を使用した。
【0127】
【表6】
【0128】
ここで評価した4種類のフュームドシリカのうち、CAB-O-SIL TS 530は、エチルシアノアクリレート中でLiBFと組み合わせて使用した場合、82℃の温度で3日後にゲル化を起こさなかった唯一のものである。
【0129】
しかしながら、CAB-O-SIL TS 530は、(粘度比から分かるように)高いチキソトロピー効果をもたらさない。したがって、ゲルとするためには、かなりの量--約5重量%から約15重量%もの量--が使用される。
【0130】
今度は、LOCTITE454をベースとして、シリカ成分としてAEROSIL R 816、CAB-O-SIL TS 720及びAEROSIL R 805のそれぞれを、各々6重量パーセントで、カチオン性触媒を使用して、及び使用しないで、配合物を調製した。これらのうち、AEROSIL R 816、カチオン性触媒、及びシアノアクリレートエチルの組み合わせのみが、抗垂れ特性を示すゲル配合物を実現した。
【0131】
事実、AEROSIL R 816、カチオン性触媒及びシアノアクリレートの組み合わせは、優れた安定性及びチキソトロピー特性を有するパートA組成物を生成する。
【0132】
LOCTITE 4090のパートAをベースとして用いてAEROSIL R 816を用いた配合物を調製し、比較のためにAEROSIL R 805を用いて調製した配合物と一緒に評価した。AEROSIL R 816は、製造業者のEvonikの報告によれば、170~210のBET表面積(ISO 9277に基づく)及び0.9~1.8の炭素含有量(ISO 3262-20に基づく)を有する。これは、ヘキサデシルシランで後処理されたフュームドシリカである。AEROSIL R 805は、製造業者のエボニックの報告によると、125~175のBET表面積(ISO 9277に基づく)及び4.5~6.5の炭素含有量(ISO-3262-20に基づく)を有する。これは、オルガノシロキサンで後処理されたフュームドシリカである。
【0133】
AEROSIL R 816を用いた配合物は、加速老化後にカチオン性触媒との優れた相溶性を示した。
【0134】
次に、この配合物を、パートB組成物と1:1の混合比で性能を評価し、LOCTITE(登録商標)4090に対して、同様の特性を有する接着剤を生成することが分かった。
【0135】
国際特許公開第WO85/01055号は、AEROSIL R 805をシアノアクリレートに添加して非流動性ゲルを与えることができることを示している。
【0136】
従って、AEROSIL(登録商標)R 805を使用してサンプルを調製し、これにカチオン性触媒を含む追加の成分を添加した。以下の表7は、サンプルJの構成成分を示す。
【0137】
【表7】
【0138】
サンプルJをパートA組成物として使用し、50グラムの1:1デュアルカートリッジに入れ、82℃の温度で1日、2日、3日間、老化させた(カートリッジのもう一方のチャンバーにはパートB組成物を入れなかった)。
【0139】
粘度測定は、上記のようにPhysica MCR-100(25℃、CP-50コーン)を用いて実施し、表8に示す。
【0140】
【表8】
【0141】
サンプルJは、良好な抗垂れ特性を示し、82℃の温度で3日間の老化後にサンプルがゲル化したAEROSIL 200及びAEROSIL R 973を用いて作製したサンプルよりも改善された安定性及び相溶性をもたらす。
【0142】
AEROSIL R 805又はAEROSIL R 816のいずれかを用いて、カチオン性触媒を使用してサンプルを調製した。以下の表9に、サンプルK及びLの構成成分を示す。
【0143】
【表9】
【0144】
各サンプルを3グラムアルミニウムチューブに入れ、82℃の温度で3日間老化させた。
【0145】
上記のようにPhysica MCR-100(25℃、CP-50コーン)を用いて、初期及び老化後に粘度測定を実施した。表10及び11に、観察されたそれぞれの外観及び粘度測定値を示す。
【0146】
【表10】
【0147】
【表11】
【0148】
比較のために、LOCTITE 454を使用し(パートAのみ)、3グラムアルミニウムチューブ中で35℃の温度で老化させた。結果を以下の表12に示す。
【0149】
【表12】
【0150】
パートA組成物としてのサンプルLの加速老化を、3グラムアルミニウムチューブ中で35℃の温度で行った。
【0151】
粘度測定は、上記と同様にPhysica MCR-100(25℃、CP-50コーン)を用いて実施した。結果を以下の表13に示す。
【0152】
【表13】
【0153】
これらの結果は、サンプルL(エチルシアノアクリレート、カチオン性触媒、及びAEROSIL R 816を含む配合物)は、許容できる安定性を有し、加速老化試験において、LOCTITE 454で測定されたものに合致する粘度比を有することを示す。