(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】無線周波数支援プラズマ生成におけるインピーダンス変換
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20241010BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
H05H1/46 R
H01L21/31 C
H05H1/46 M
(21)【出願番号】P 2022530889
(86)(22)【出願日】2020-12-02
(86)【国際出願番号】 US2020062924
(87)【国際公開番号】W WO2021113387
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2023-10-04
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592010081
【氏名又は名称】ラム リサーチ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジュコ・エラー・ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック・トーマス・リー
(72)【発明者】
【氏名】リーサー・カール・フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】コンコラ・ポール
【審査官】藤田 健
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/031839(WO,A1)
【文献】特開2018-011050(JP,A)
【文献】特表2019-517125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号をデバイスに提供するための装置であって、
1つまたは複数の無線周波数(RF)信号発生器と、
前記1つまたは複数のRF信号発生器からの信号を製作チャンバに結合する1つまたは複数の電気的に小さい伝送線路と、
前記1つまたは複数の電気的に小さい伝送線路の各々のインピーダンスを、第1のインピーダンス感度を有する領域から第2のインピーダンス感度を有する領域に変換するリアクティブ回路と
を備
え、
前記1つまたは複数の電気的に小さい伝送線路のうちの一つの電気的に小さい伝送線路は、前記伝送線路の媒体において
、前記1つまたは複数のRF信号発生器
のうちの一つのRF信号発生器によって生成された前記信号
の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路に対応する、装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスを備える、装置。
【請求項3】
請求項1に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくともシャントサセプタンスを備える、装置。
【請求項4】
請求項1に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスおよびシャントサセプタンスを備える、装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記第1のインピーダンス感度を有する領域は、インピーダンス空間内の比較的高いインピーダンス感度の領域に対応し、前記インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する、装置。
【請求項6】
請求項1に記載の装置であって、
前記第2のインピーダンス感度を有する領域は、インピーダンス空間内の比較的低いインピーダンス感度の領域に対応し、前記インピーダンスの実数部は、約100オーム未満の値に対応する、装置。
【請求項7】
請求項1に記載の装置であって、
前記インピーダンスを変換する前記リアクティブ回路は、前記1つまたは複数のRF信号発生器からの前記信号の周波数よりも低い任意の周波数での共振伝送線路の可能性を回避する、装置。
【請求項8】
請求項1に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路の損失と組み合わされた前記電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する、装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、10%未満に相当する、装置。
【請求項10】
RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、
前記電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路であって、前記リアクティブ回路は、ある長さの伝送線路によって移動される方向とは反対の方向にインピーダンス制御点を移動させるように動作するリアクティブ回路と
を備
え、
前記電気的に小さい伝送線路は、前記伝送線路の媒体において
、一つのRF信号発生器によって生成された前記信号
の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路
である、装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスを備える、装置。
【請求項12】
請求項10に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくともシャント誘導性サセプタンスを備える、装置。
【請求項13】
請求項10に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスおよびシャント誘導性サセプタンスを備える、装置。
【請求項14】
請求項10に記載の装置であって、
前記リアクティブ回路の損失と組み合わされた前記電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する、装置。
【請求項15】
請求項10に記載の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路
の抵抗損失は、10%未満に相当する、装置。
【請求項16】
集積回路製作チャンバであって、
複数の集積回路製作ステーションと、
無線周波数(RF)信号を前記複数の集積回路製作ステーションの少なくとも1つに結合するための1つまたは複数の入力ポートと、
RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を前記集積回路製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、
前記電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路と
を備
え、
前記電気的に小さい伝送線路は
、一つのRF信号発生器によって生成された前記信号
の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路
である、集積回路製作チャンバ。
【請求項17】
請求項16に
記載の集積回路製作チャンバ
であって、
前記比較的高いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する、
集積回路製作チャンバ。
【請求項18】
請求項16に記載の集積回路製作チャンバであって、
前記比較的低いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンス
の実数部は、約100オーム未満の値に対応する、
集積回路製作チャンバ。
【請求項19】
請求項1に記載の装置であって、
第1のインピーダンス感度を有する前記領域は、低インピーダンス感度を有する領域に対応し、第2のインピーダンス感度を有する前記領域は、高インピーダンス感度を有する領域に対応する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
参照による援用
本出願の一部として、本明細書と同時にPCT出願願書が提出される。この同時出願されたPCT出願願書に明記され、本出願が利益または優先権を主張する各出願は、参照によりその全体があらゆる目的で本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本明細書に含まれる背景および状況の説明は、本開示の内容を概ね提示することのみを目的として提供される。本開示の多くは発明者らによる研究を提示し、そのような研究が背景技術のセクションで説明されているか、または本明細書の他の場所で文脈として提示されているという理由だけで、そのような研究が先行技術であると認められることを意味しない。
【0003】
集積回路を形成するために利用される半導体ウエハの製作は、多数の多様な処理ステップを含み得る。様々な材料が半導体ウエハ上に堆積された後に発生し得る特定の処理ステップでは、金属などの追加の材料が堆積されることを可能にするために材料がエッチング除去され得る。そのような堆積は、導電性トレース、トランジスタゲート、ビア、回路要素などの形成を伴う場合がある。しかし、少なくともいくつかの例では、プラズマベースのエッチング、プラズマ強化原子層堆積、または他のプロセスを伴うものなどの半導体製作プロセス、制御不可能なプロセス変動は、より低い歩留まり、コスト、半導体レイアウトおよびマスクの再設計などをもたらす可能性がある。場合によっては、そのような制御不可能なプロセス変動は、プラズマを形成するために利用される製作チャンバに結合されたエネルギーの変動に応じてもたらされることがある。したがって、プラズマベースのウエハエッチングおよび/もしくはプラズマ強化原子層堆積、または他の製作プロセスにおける制御を向上させる技術は、引き続き活発な調査領域である。
【発明の概要】
【0004】
一態様では、信号をデバイスに提供するための装置が提供され、装置は、1つまたは複数の無線周波数(RF)信号発生器と、RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する1つまたは複数の電気的に小さい伝送線路(electrically-small transmission line)と、電気的に小さい伝送線路の各々のインピーダンスを、第1のインピーダンス感度を有する領域から第2のインピーダンス感度を有する領域に変換するリアクティブ回路とを含む。
【0005】
いくつかの態様では、リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスを含む。いくつかの態様では、リアクティブ回路は、少なくともシャントサセプタンスを含む。いくつかの態様では、リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスおよびシャントサセプタンスを含む。いくつかの態様では、比較的高いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する。いくつかの態様では、比較的低いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、インピーダンスの実数部は、約100オーム未満の値に対応する。いくつかの態様では、インピーダンスを変換するリアクティブ回路は、RF信号発生器の1つまたは複数からの信号の周波数よりも低い任意の周波数での共振伝送線路の可能性を回避する。いくつかの態様では、電気的に小さい伝送線路は、伝送線路の媒体においてRF信号発生器によって生成された信号の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路に対応する。いくつかの態様では、リアクティブ回路の損失と組み合わされた電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する。いくつかの態様では、電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、10%未満に相当する。
【0006】
別の態様では、装置が提供され、装置は、RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路であって、リアクティブ回路は、ある長さの伝送線路によって移動される方向とは反対の方向にインピーダンス制御点を移動させるように動作するリアクティブ回路とを含む。
【0007】
いくつかの態様では、電気的に小さい伝送線路は、伝送線路の媒体においてRF信号発生器によって生成された信号の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンス制御点を比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に移動させる伝送線路に対応する。いくつかの態様では、リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスを含む。いくつかの態様では、リアクティブ回路は、少なくともシャント誘導性サセプタンスを含む。いくつかの態様では、リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスおよびシャント誘導性サセプタンスを含む。いくつかの態様では、リアクティブ回路の損失と組み合わされた電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する。いくつかの態様では、電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、10%未満に相当する。
【0008】
別の態様では、集積回路製作チャンバが提供され、集積回路製作チャンバは、複数の集積回路製作ステーションと、無線周波数(RF)信号を複数の集積回路製作ステーションの少なくとも1つに結合するための1つまたは複数の入力ポートと、RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路とを含む。
【0009】
いくつかの態様では、比較的高いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する。いくつかの態様では、比較的低いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、インピーダンスの実数部は、約100オーム未満の値に対応する。いくつかの態様では、第1のインピーダンス感度を有する領域は、低インピーダンス感度を有する領域に対応し、第2のインピーダンス感度を有する領域は、高インピーダンス感度を有する領域に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、任意の数のプロセスを利用して半導体基板上に膜を堆積するための基板処理装置を示す図である。
【0011】
【
図2】
図2は、一実施形態による、半導体製作プロセスを実施するために利用されるシステムの様々な構成要素を示すブロック図である。
【0012】
【
図3】
図3は、一実施形態による、マルチステーション集積回路製作チャンバのステーションに結合された無線周波数(RF)電力の電力対時間プロファイルを示す図である。
【0013】
【
図4】
図4は、一実施形態による、インピーダンス空間における対応するインピーダンスプロットと共に、異なる長さの伝送線路を通して負荷(Z
L)に結合されたRF整合ユニットを示す図である。
【0014】
【
図5A】
図5Aは、一実施形態による、様々な長さの伝送線路に対応するRF整合ユニットの制御点におけるインピーダンス感度を示す図である。
【
図5B】
図5Bは、一実施形態による、様々な長さの伝送線路に対応するRF整合ユニットの制御点におけるインピーダンス感度を示す図である。
【0015】
【
図6A】
図6Aは、一実施形態による、制御点のインピーダンスをインピーダンス空間の比較的高いインピーダンス感度領域からインピーダンス空間の比較的低いインピーダンス感度領域に変換するように配置された電気的に小さい伝送線路およびリアクティブ成分の使用を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態による、制御点のインピーダンスをインピーダンス空間の比較的高いインピーダンス感度領域からインピーダンス空間の比較的低いインピーダンス感度領域に変換するように配置された電気的に小さい伝送線路およびリアクティブ成分の使用を示す図である。
【0016】
【
図7】
図7は、一実施形態による伝送線路モデルの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特定の実施形態または実施態様では、無線周波数(RF)支援プラズマ生成におけるインピーダンス変換は、プラズマベースのウエハ製作などの様々な半導体製作プロセスで利用することができる。インピーダンス変換は、プロセスチャンバのステーションによって提示される様々な負荷に対する動的調整を可能にする方式で、マルチステーションプロセスチャンバの1つまたは複数のステーションに送給されるRF電力をより容易に制御する機能をもたらすことができる。そのような動的調整は、製作プロセスの過程でそのような負荷が大幅に増減する可能性がある場合であっても、ステーション内のプラズマによって提示される負荷のインピーダンスを1つまたは複数のRF発電機のソースインピーダンスに整合させるリアルタイム機能を提供する。したがって、個々のステーションに送給されるRF電力を増加させることができ、RF発電機から反射されるRF電力を減少させることができる。
【0018】
特定の実施形態または実施態様は、様々なプラズマ強化原子層堆積(ALD)プロセス、様々なプラズマ強化化学気相堆積(CVD)プロセスなどの多くのウエハ製作プロセスで利用することができ、または単一の堆積プロセス中にオンザフライで利用することができる。特定の実施態様では、RF電力整合ネットワークは、簡略化された回路トポロジーを利用して、中周波数(例えば、300kHz~3MHzの周波数)、高周波数(例えば、3MHz~30MHzの周波数)、および非常に高い周波数(例えば、30MHz~300MHzの周波数)などの任意の信号周波数での負荷変化に対応する。しかし、他の実施態様では、RF電力整合ネットワークは、任意の信号周波数、例えば50kHz~300kHzなどの比較的低い周波数、ならびに300MHzを超える周波数などのより高い信号周波数で動作してもよい。
【0019】
本明細書に記載の特定の実施形態は、プロセスチャンバの4ステーションで使用するための電気的に小さい伝送線路およびリアクティブ要素を示しかつ/または説明し得るが、他の実施形態では、1ステーション、2ステーション、または3ステーションなど、より少ない数のプロセスチャンバのステーションが利用されてもよいことに留意されたい。他の実施形態では、電気的に小さい伝送線路およびリアクティブ要素は、5ステーション、6ステーション、7ステーション、8ステーション、10ステーション、12ステーション、または任意の他の数のプロセスチャンバのステーションなど、より多くの数のプロセスチャンバのステーションで利用されてもよい。
【0020】
半導体デバイスの製造は、典型的には、集積製作プロセスにおいて、平面または非平面基板上に1つまたは複数の薄膜を堆積することを伴う。集積プロセスのいくつかの態様では、基板トポグラフィに適合する薄膜を堆積することが有用であり得る。いくつかの場合に有用である1つのタイプの反応は、化学気相堆積(CVD)を伴う。典型的なCVDプロセスでは、気相反応剤が反応チャンバのステーションに同時に導入され、気相反応を受ける。反応生成物は、基板の表面上に堆積する。反応は、プラズマによって駆動され得、その場合にプロセスは、プラズマ強化化学気相堆積(PECVD)反応と呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、CVDという用語は、特に明記しない限り、PECVDを含むことを意図している。CVDプロセスは、いくつかの状況においてプロセスをより適切でないものにする特定の欠点を有する。例えば、CVD気相反応の物質移動制限は、上面(例えば、ゲートスタックの上面)におけるより厚い堆積および凹面(例えば、ゲートスタックの底部コーナー)におけるより薄い堆積を示す「ブレッドローフィング」堆積効果を引き起こす場合がある。さらに、いくつかのダイは異なるデバイス密度の領域を有し得るので、基板表面を横切る物質移動効果は、ダイ内およびウエハ内の厚さの変動をもたらす可能性がある。これらの厚さの変動は、いくつかの領域のオーバーエッチングおよび他の領域のアンダーエッチングをもたらす可能性があり、これはデバイスの性能およびダイの歩留まりを低下させる場合がある。CVDプロセスに関連する別の問題は、プロセスが高アスペクト比のフィーチャに共形膜を形成することができない場合が多いことである。デバイスの寸法が縮小し続けるにつれて、この課題はますます問題になる。
【0021】
別の例では、いくつかの堆積プロセスは、複数の膜堆積サイクルを伴い、各々が別個の膜厚を発生する。例えば、原子層堆積(ALD)では、膜の薄層であり、反復的かつ連続的な物質で使用される薄層は、堆積の複数のサイクルを伴うと見なすことができる。デバイスおよびフィーチャのサイズが半導体業界において縮小し続け、三次元デバイス構造が集積回路(IC)設計においてより一般的になるにつれて、薄い共形膜(非平面であっても、基礎となる構造の形状に対して均一な厚さを有する材料の膜)を堆積する能力が重要性を増し続けている。ALDは、ALDの単一のサイクルが材料の単一の薄層を堆積するという事実のために、共形膜の堆積に非常に適した膜形成技術であり、厚さは、膜形成化学反応自体の前に、基板表面上に吸着する(すなわち、吸着制限層を形成する)ことができる1つまたは複数の膜前駆体反応剤の量によって制限される。次に、複数のALDサイクルを使用して所望の厚さの膜を構築することができ、各層が薄くて共形であるため、得られる膜は、基礎となるデバイス構造の形状に実質的に適合する。特定の実施形態では、各ALDサイクルは、以下のステップを含む。
【0022】
第1の前駆体への基板表面の曝露。
【0023】
基板が位置する反応チャンバのパージ。
【0024】
典型的にはプラズマおよび/または第2の前駆体を利用する、基板表面の反応の活性化。
【0025】
基板が位置する反応チャンバのパージ。
【0026】
ALDサイクルの持続時間は、典型的には、25秒未満または10秒未満または5秒未満であってもよい。ALDサイクルのプラズマ曝露ステップ(または複数のステップ)は、1秒以下の持続時間などの短い持続時間であり得る。
【0027】
図1は、任意の数のプロセスを使用して半導体基板上に膜を堆積するための基板処理装置を示す。
図1の装置100は、真空ポンプ118によって真空下に維持され得る内部容積内に単一の基板ホルダ108(例えば、台座)を備えたプロセスチャンバの単一の処理ステーション102を利用する。また、(例えば)膜前駆体、キャリアガスおよび/またはパージガスおよび/またはプロセスガス、二次反応剤などを送給するために、ガス送給システム101およびシャワーヘッド106がプロセスチャンバに流体結合される。プロセスチャンバ内でプラズマを生成するための機器もまた、
図1に示されている。
図1に概略的に示されている装置は、特にプラズマ強化CVDを実施するように適合させることができる。
【0028】
簡略化のために、処理装置100は、低圧環境を維持するためのプロセスチャンバの独立したプロセスステーション(102)として図示されている。しかし、本明細書に記載されるように、複数のプロセスステーションが共通のプロセスツール環境に、例えば、共通の反応チャンバ内に含まれ得ることが理解されよう。例えば、
図2は、マルチステーション処理ツールの実施態様を図示しており、以下でさらに詳細に説明される。さらに、いくつかの実施態様では、本明細書で詳細に説明されるものを含む、処理装置100の1つまたは複数のハードウェアパラメータが、1つまたは複数のシステムコントローラによってプログラム的に調整され得ることが理解されよう。
【0029】
プロセスチャンバのステーション102は、液体および/またはガスを含み得るプロセスガスを分配シャワーヘッド106に送給するために、ガス送給システム101と流体連通する。ガス送給システム101は、シャワーヘッド106に送給するためのプロセスガスをブレンドおよび/または調整するための混合容器104を含む。1つまたは複数の混合容器入口弁120は、混合容器104へのプロセスガスの導入を制御することができる。
【0030】
いくつかの反応剤は、気化およびその後のプロセスチャンバのステーション102への送給の前に液体形態で貯蔵され得る。
図1の実施態様は、混合容器104に供給される液体反応剤を気化させるための気化ポイント103を含む。いくつかの実施態様では、気化ポイント103は、加熱された液体注入モジュールであり得る。いくつかの他の実施態様では、気化ポイント103は、加熱された気化器であり得る。さらに他の実施態様では、気化ポイント103は、プロセスステーションから排除されてもよい。いくつかの実施態様では、気化されて処理ステーション102に送給される液体の質量流量を制御するために、液体流コントローラ(LFC)を気化ポイント103の上流に設けることができる。
【0031】
シャワーヘッド106は、プロセスガスおよび/または反応剤(例えば、膜前駆体)をプロセスステーションで基板112に向けて分配し、その流れは、シャワーヘッドの上流の1つまたは複数の弁(例えば、弁120、120A、105)によって制御される。
図1に示す実施態様では、基板112は、シャワーヘッド106の下に位置し、台座108上に載って示されている。シャワーヘッド106は、任意の適切な形状を有し得、プロセスガスを基板112に分配するための任意の適切な数および配置のポートを有し得る。2つ以上のステーションを伴ういくつかの実施態様では、ガス送給システム101は、シャワーヘッドの上流にある弁または他の流れ制御構造を含み、これは、ガスが1つのステーションに流れても別のステーションには流れることができないように、各ステーションへのプロセスガスおよび/または反応剤の流れを独立して制御することができる。さらに、ガス送給システム101は、異なるステーションに提供されるガス組成が異なるように、例えば、ガス成分の分圧が同時にステーション間で変化し得るように、マルチステーション装置内の各ステーションに送給されるプロセスガスおよび/または反応剤を独立して制御するように構成され得る。
【0032】
容積107は、シャワーヘッド106の下に位置する。いくつかの実施態様では、台座108を上昇または下降させて基板112を容積107に露出させ、かつ/または容積107の容積を変えることができる。任意選択で、台座108は、堆積プロセスの一部の間に下降および/または上昇され、容積107内のプロセス圧力、反応剤濃度などを調節することができる。
【0033】
図1では、シャワーヘッド106および台座108は、プラズマ発生器に電力を供給するために、無線周波数電源114および整合ネットワーク116に電気結合される。いくつかの実施態様では、プラズマエネルギーは、プロセスステーション圧力、ガス濃度、RF電力源などの1つまたは複数を制御することによって(例えば、適切な機械可読命令および/または制御論理を有するシステムコントローラを介して)制御され得る。例えば、無線周波数電源114および整合ネットワーク116は、任意の適切な電力で動作させ、ラジカル種の所望の組成を有するプラズマを形成することができる。同様に、RF電源114は、任意の適切な周波数または周波数のグループのRF電力、および電力を提供することができる。
【0034】
いくつかの実施態様では、プラズマの点火および維持条件は、一連の入出力制御(IOC)命令を介して制御命令を提供し得るシステムコントローラ内の適切なハードウェアおよび/または適切な機械可読命令で制御される。一例では、プラズマの点火または維持のためのプラズマ条件を設定するための命令は、プロセスレシピのプラズマ活性化レシピの形態で提供される。場合によっては、プロセスレシピは順に配置されてもよく、その結果、プロセスに対するすべての命令がそのプロセスと同時に実行される。いくつかの実施態様では、1つまたは複数のプラズマパラメータを設定するための命令が、プラズマプロセスに先行するレシピに含まれ得る。例えば、第1のレシピは、不活性(例えば、ヘリウム)および/または反応剤ガスの流量を設定するための命令、プラズマ発生器を電力設定ポイントに設定するための命令、ならびに第1のレシピのための時間遅延命令を含んでもよい。第2の後続のレシピは、プラズマ発生器を有効にするための命令、および第2のレシピのための時間遅延命令を含んでもよい。第3のレシピは、プラズマ発生器を無効にするための命令、および第3のレシピのための時間遅延命令を含んでもよい。これらのレシピは、本開示の範囲内で任意の適切な方法でさらに細分化および/または反復され得ることが理解されよう。
【0035】
いくつかの堆積プロセスでは、プラズマストライクは、持続時間が数秒以上のオーダーで持続する。本明細書に記載の特定の実施態様では、はるかに短いプラズマストライクを処理サイクル中に適用することができる。これらは50ミリ秒未満のオーダーであり得るが、特定の例では25ミリ秒である。
【0036】
簡略化のために、処理装置100は、低圧環境を維持するためのプロセスチャンバの独立したステーション(102)として
図1に図示されている。しかし、複数のプロセスステーションが、マルチステーション処理ツールの一実施形態の概略図を図示する
図2に示すようなマルチステーション処理ツール環境に含まれ得ることが理解され得る。
【0037】
処理装置200は、複数の製作プロセスステーションを含む集積回路製作チャンバ263を採用し、製作プロセスステーションの各々を使用して、特定のプロセスステーションにおいて、
図1の台座108などのウエハホルダに保持された基板上で処理動作を実施することができる。
図2の実施形態では、集積回路製作チャンバ263は、4つのプロセスステーション251、252、253、および254、ならびに入力ポート267を通してRF電力を4つのプロセスステーションの各々に提供する4ケーブル266を有するものとして示されている。他の同様のマルチステーション処理装置は、実施態様、例えば、並列ウエハ処理の所望のレベル、サイズ/スペースの制約、コストの制約などに応じて、より多くのまたはより少ない数のプロセスステーションを有し得る。
図2には基板ハンドラロボット275も示されており、これは、システムコントローラ290の制御下で動作し、ウエハカセット(
図2には図示せず)からの基板をローディングポート280から集積回路製作チャンバ263に、そしてプロセスステーション251、252、253、および254の1つに移動させるように構成され得る。
【0038】
図2はまた、処理装置200のプロセス条件およびハードウェア状態を制御するために用いられるシステムコントローラ290の一実施形態を図示する。システムコントローラ290は、1つまたは複数のメモリデバイスと、1つまたは複数の大容量記憶デバイスと、1つまたは複数のプロセッサとを含むことができる。1つまたは複数のプロセッサは、中央処理装置、アナログおよび/またはデジタル入出力接続、ステッピングモータコントローラボードなどを含み得る。いくつかの実施形態では、システムコントローラ290は、処理ツール200のすべての活動を制御する。システムコントローラ290は、大容量記憶デバイスに記憶され、メモリデバイスにロードされ、システムコントローラのハードウェアプロセッサ上で実行され得るシステム制御ソフトウェアを実行する。システムコントローラ290のプロセッサによって実行されるソフトウェアは、タイミング、ガスの混合、製作チャンバ圧力および/またはステーション圧力、製作チャンバ温度および/またはステーション温度、ウエハ温度、基板台座、チャック位置および/またはサセプタ位置、1つまたは複数の基板上で実施されるサイクル数、ならびに処理ツール200によって実施される特定のプロセスの他のパラメータを制御するための命令を含み得る。これらのプログラムされたプロセスは、限定はしないが、チャンバ内部の表面上への蓄積量の決定に関連するプロセス、サイクル数を含む基板上への膜の堆積に関連するプロセス、およびチャンバの洗浄に関連するプロセスを含む、様々なタイプのプロセスを含み得る。システムコントローラ290の1つまたは複数のプロセッサによって実行され得るシステム制御ソフトウェアは、任意の適切な方法で構成され得る。例えば、様々なプロセスツール構成要素サブルーチンまたは制御オブジェクトは、様々なツールプロセスを実行するために必要なプロセスツール構成要素の動作を制御するために書かれてもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ290のプロセッサを介して実行するためのソフトウェアは、上述の様々なパラメータを制御するための入出力制御(IOC)シーケンス命令を含み得る。例えば、基板の堆積および堆積サイクルの各段階は、システムコントローラ290によって実行するための1つまたは複数の命令を含み得る。ALD/CFD堆積プロセス段階についてのプロセス条件を設定するための命令は、対応するALD/CFD堆積レシピ段階に含まれ得る。いくつかの実施態様では、レシピ段階は、プロセス段階についてのすべての命令がそのプロセス段階と同時に実行されるように、順に配置され得る。
【0040】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ290の大容量記憶デバイスおよび/またはシステムコントローラ290にアクセス可能なメモリデバイスに記憶された他のコンピュータソフトウェアおよび/またはプログラムが用いられてもよい。この目的のためのプログラムの例またはプログラムのセクションの例は、基板位置決めプログラム、プロセスガス制御プログラム、圧力制御プログラム、ヒータ制御プログラム、およびプラズマ制御プログラムを含む。基板位置決めプログラムは、基板を(
図2の)台座108にロードし、基板と処理装置200の他の部分との間の間隔を制御するために使用されるプロセスツール構成要素についてのプログラムコードを含むことができる。位置決めプログラムは、基板上に膜を堆積してチャンバを洗浄するために必要に応じて、基板を反応チャンバの内外に適切に移動させるための命令を含み得る。
【0041】
プロセスガス制御プログラムは、プロセスステーション内の圧力を安定させるために、ガス組成および流量を制御するためのコード、ならびに任意選択で堆積前にガスを1つまたは複数のプロセスステーションに流すためのコードを含むことができる。いくつかの実施形態では、プロセスガス制御プログラムは、反応チャンバ内の基板上に膜を形成する間にガスを導入するための命令を含む。これは、基板のバッチ内の1つまたは複数の基板に対して異なるサイクル数についてのガスを導入することを含み得る。圧力制御プログラムは、例えば、プロセスステーションの排気システムのスロットル弁、プロセスステーションへのガス流などを調節することによってプロセスステーション内の圧力を制御するためのコードを含み得る。圧力制御プログラムは、バッチの処理中に1つまたは複数の基板上への異なるサイクル数の堆積の間に同じ圧力を維持するための命令を含み得る。
【0042】
ヒータ制御プログラムは、基板を加熱するために使用される(
図1の)加熱ユニット110への電流を制御するためのコードを含むことができる。あるいは、ヒータ制御プログラムは、基板への熱伝達ガス(ヘリウムなど)の送給を制御することができる。
【0043】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ290に関連するユーザインターフェースが存在してもよい。ユーザインターフェースは、ディスプレイ画面、装置および/またはプロセス条件のグラフィカルソフトウェアディスプレイ、ならびにポインティングデバイス、キーボード、タッチスクリーン、マイクロフォンなどのユーザ入力デバイスを含むことができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、システムコントローラ290によって調整されたパラメータは、プロセス条件に関係するものであってもよい。非限定的な例として、プロセスガス組成および流量、温度、圧力、プラズマ条件などが挙げられ得る。これらのパラメータは、レシピの形態でユーザに提供されてもよく、ユーザインターフェースを利用して入力することができる。基板のバッチ全体についてのレシピは、バッチを処理する過程での厚さの傾向を考慮するために、バッチ内の1つまたは複数の基板に対する補償されたサイクルカウントを含み得る。
【0045】
プロセスを監視するための信号は、様々なプロセスツールセンサからシステムコントローラ290のアナログおよび/またはデジタル入力接続によって提供されてもよい。プロセスを制御するための信号は、処理ツール200のアナログおよび/またはデジタル出力接続を介して出力することができる。監視することができるプロセスツールセンサの非限定的な例は、マスフローコントローラ、圧力センサ(圧力計など)、熱電対などを含む。センサはまた、チャンバの内部の1つまたは複数の表面上の蓄積および/またはチャンバ内の基板上の材料層の厚さを監視および決定するために含まれ、使用することができる。適切にプログラムされたフィードバックおよび制御アルゴリズムをこれらのセンサからのデータと共に使用して、プロセス条件を維持することができる。
【0046】
システムコントローラ290は、上述の堆積プロセスを実施するためのプログラム命令を提供することができる。プログラム命令は、DC電力レベル、圧力、温度、基板についてのサイクル数、チャンバ内部の少なくとも1つの表面上への蓄積量などのような様々なプロセスパラメータを制御することができる。命令は、本明細書に記載の様々な実施態様に従って、膜スタックのin-situ堆積を動作させるようにパラメータを制御することができる。
【0047】
例えば、システムコントローラは、本明細書に記載の技術を実施する(例えば堆積チャンバ内部の少なくとも内部領域上に現在蓄積されている堆積材料の量を決定し、決定された堆積材料の量、またはそれから導出されたパラメータを、(i)目標堆積厚さを達成するために必要な多数のALDサイクルと、(ii)蓄積堆積材料の量を表す変数との間の関係に適用する)ための制御論理を含み、それにより補償された数のALDサイクルを得ることができ、堆積チャンバ内部の内部領域上に現在蓄積されている堆積材料の量を考慮して目標堆積厚さを得て、基板のバッチ内の1つまたは複数の基板上で補償された数のALDサイクルを実施する。システムはまた、チャンバ内の蓄積が蓄積限界に達したことを決定し、その決定に応じて基板のバッチの処理を停止し、チャンバ内部の洗浄を開始するための制御論理を含み得る。
【0048】
図2のシステムコントローラ290によって実施される上記の機能および/または動作に加えて、コントローラは、無線周波数入力ポート267を介してRF電力を集積回路製作チャンバ263に生成および伝達することができるRFサブシステム295の動作をさらに制御および/または管理することができる。本明細書でさらに説明するように、そのような動作は、集積回路製作チャンバ263に送給されるRF電力についての上限および下限閾値、集積回路製作チャンバ263に送給されるRF電力の実際の(リアルタイムなどの)レベルの決定、RF電力のアクティブ化/非アクティブ化時間、RF電力のオン/オフ持続時間、動作周波数などを決定することに関係し得る。
【0049】
特定の実施形態では、集積回路製作チャンバ263は、入力ポート267に加えて、入力ポートを備え得る(
図2には示されていない追加の入力ポート)。したがって、集積回路製作チャンバ263は、8つのRF入力ポートを利用することができる。特定の実施形態では、集積回路製作チャンバ165のプロセスステーション251~254は各々、第1および第2の入力ポートを利用することができ、第1の入力ポートは、第1の周波数を有する信号を伝達し得、第2の入力ポートは、第2の周波数を有する信号を伝達し得る。デュアル周波数を使用すると、プラズマ特性が向上する可能性があり、これにより特定の制限内の堆積速度および/またはより容易に制御される堆積速度を得ることができる。デュアル周波数は、本明細書に記載されているもの以外の他の望ましい結果をもたらす可能性がある。特定の実施形態では、約300kHz~約300MHzの周波数を利用することができる。
【0050】
図2では、RF信号源276からのRF電力は、4つの出力チャネルに分割され得、これらは集積回路製作チャンバ263の入力ポート267の対応する1つに結合することができる。少なくとも特定の実施形態では、RF信号源276からのRF電力が比較的等しい部分(約+1%など)に分割されることが有用であり得る。したがって、一例では、RF信号源276が1000Wの出力電力を提供する場合、約250W(+1%)が製作チャンバ263の入力ポート267の各々に伝達される。
【0051】
図3は、一実施形態による、マルチステーション集積回路製作チャンバのステーションに結合されたRF電力の電力対時間プロファイルを示す。
図3では、縦軸は、送給された電力を示し、これは(
図2の)単一入力RF分配ユニット289などのRF分配ユニットによって製作チャンバに送給された総電力に対応する。総電力入力の変動プロファイルによって示されるように、単一入力RF分配ユニットに送給される電力は、例えば、最大100W、150W、または200ワットの変動を含み得る、有意な変動を受ける可能性がある。
図3は第1および第2のプロセスステーション(Sta1およびSta2)についての電力入力プロファイルと共に総電力入力を図示しているが、他の実施形態では、電力は、3ステーション、4ステーション、5ステーションなど、マルチステーション製作チャンバのより多くの数のステーションに結合されてもよい。
【0052】
単一入力RF分配ユニットに送給される電力の変動は、マルチステーション集積回路製作チャンバ263の個々のステーションに対応する非常に異なるRF負荷に応じて発生する可能性がある。例えば、原子層堆積プロセス中に利用されるガスのパージ中など、製作チャンバ263のステーション内で発生する遷移中、個々のステーション(例えば、ステーション251、252、253、254のうちの1つ)によって提示されるRF負荷インピーダンスは、増加する場合がある。場合によっては、前駆体ガスがプロセスステーションからパージまたは排気される原子層堆積サイクルのパージ部分中、特定のステーションによって提示される負荷インピーダンスは、大幅に増加する可能性がある。負荷インピーダンスにおけるそのような増加は、プロセスステーションに結合された電力を減少させるように動作し得る。対照的に、ある量の前駆体ガスが製作チャンバに注入される原子層分配サイクルの一部の間、マルチステーション製作チャンバの特定のステーションによって提示される入力インピーダンスは、大幅に減少する可能性がある。
【0053】
図3に示すように、ステーション2(Sta2)に結合されたRF電力と組み合わされたステーション1(Sta1)に結合されたRF電力は、総電力入力に合計される。したがって、
図3には示されていないが、総電力入力が増加すると、マルチステーション製作チャンバの各ステーションに結合された電力が比例して増加する可能性があることが理解され得る。加えて、総電力入力が減少すると、マルチステーション製作チャンバの各ステーションに結合された電力は、比例して減少する可能性がある。しかし、マルチステーション製作チャンバへの総電力入力が減少する一方で特定のステーション(例えば、Sta1)に結合された電力が増加すると、1つまたは複数の他のステーション(例えば、Sta2)に結合された電力が減少し、それにより実質的に一定の総電力入力を維持し得ることも理解され得る。
【0054】
2つのプロセスステーション(Sta1およびSta2)を有するマルチステーション製作チャンバに関連し得る
図3の例では、総電力入力が例えば公称値の100%のレベルで安定に保たれている場合、マルチステーション製作チャンバの個々のステーションに結合された電力は、例えば、公称値の約50%に近い値のままであり得る。しかし、また
図3に示すように、場合によっては、特定のステーション(例えば、Sta1)に結合されたRF電力は、例えば、イオン化プラズマ材料へのガス状前駆体の変換に起因する負荷インピーダンスの減少に応じて、おそらく短期間増加し得る。Sta1で増加するRF電力に応じて、Sta2に結合されたRF電力は、総電力入力に合計されるように、同様の短期間の増加に対応する量だけ減少し得る。しかし、
図3に示すように、製作チャンバへの総電力入力は時々減少することがあり、これはRF発電機の出力インピーダンスと製作チャンバの入力インピーダンスとの間の不一致に応じて起こり得る。そのような状況下では、総電力入力が減少し、個々のステーション(例えば、Sta1)への電力が増加すると、異なるステーション(例えば、Sta2)に結合された電力は、
図3に示す下限閾値に近づく可能性がある。
【0055】
特定の実施形態では、個々のステーションに結合された電力が特定の下限閾値に近づくかまたは達することは、望ましくない場合がある。場合によっては、下限閾値を下回るマルチステーション製作チャンバのステーションへの電力流に応じて、ステーションは高インピーダンス負荷を表し得る。したがって、マルチステーション製作チャンバの他のステーションに結合された電力が増加する場合があり、これは他の製作ステーションのプラズマ密度を望ましくなく増加させる可能性がある。場合によっては、マルチステーション集積回路製作チャンバのステーションにおけるそのような電力消費の増加は、アーク放電または他の異常なプラズマ事象を引き起こす可能性がある。場合によっては、閾値レベルよりも低い電力結合は、マルチステーション製作チャンバ内で発生する堆積速度の不均衡をさらにもたらす可能性がある。したがって、例えば、ステーションに結合された電力がSta2で下限閾値を下回る場合、Sta2での製作プロセスを延長する必要があり得る。そのような延長は、原子層堆積サイクルなどの追加のサイクルを含み得るか、またはそのような電力の減少が製作されたウエハの品質に悪影響を及ぼしたかどうかを決定するために他の追加の処理および/もしくは計測を伴い得る。
【0056】
したがって、下限閾値を下回る電力流の発生率を低減するために、RF発電機(RF信号源276など)から結合されたRF電力が、一貫した比較的高いレベルに維持されることを確実にすることが有用であり得る。したがって、
図2の単一入力RF分配ユニット289の出力ポートなどの出力ポートは、リアクティブ成分(例えば、直列容量、直列インダクタンス、シャント容量、シャントインダクタンス)をRF信号源276からの入力信号経路に挿入するためにユーザ入力なしで動作することができる整合ユニット(
図2には図示せず)を備えることができる。場合によっては、単一入力RF分配ユニット289は、1つまたは複数のメモリ回路に結合された1つまたは複数のコンピュータプロセッサを利用して、リアクティブ成分をRF信号源276からの信号経路に動的に挿入するように動作し得る一組のコンピュータ実装命令(例えば、アルゴリズム)の実行を可能にしてもよい。
【0057】
図4は、一実施形態による、代表的なインピーダンス空間における対応するインピーダンスプロットと共に、第1または第2の長さの伝送線路を通して負荷インピーダンス(Z
L)に結合されたRF整合ユニットを示す図である。
【0058】
図4において、
図401は、RF信号源276が、単一入力RF分配ユニット289への入力を提供するものとして示されていることを示す。本明細書で前述したように、単一入力RF分配ユニット289は、
図4にCserおよびCshuとして示されているリアクティブ成分(例えば、直列容量、直列インダクタンス、シャント容量、シャントインダクタンス)を利用することができる。リアクティブ成分CserおよびCshuの値は、コンピュータを介して制御され得、それによりマルチステーション集積回路製作チャンバ263の個々のステーションによって提示される様々な負荷に従って動的に調整される。製作チャンバ263の個々のステーションによって提示される負荷インピーダンスは、
図4にZ
Lとして示されている。
図4には示されていないが、追加の負荷インピーダンスは、製作チャンバ263の他のステーション(例えば、Sta1、Sta2、Sta3など)によって提示される。特定の実施形態では、個々のステーション負荷Z
Lは、比較的小さい実数部および比較的大きな虚数部を有する負荷に対応し得る。
図4の特定の例では、Z
Lの平面で測定されたインピーダンスは、約1~10オームの実数インピーダンス値を有し、かつ約10~40オームの虚数インピーダンスを有するものとして特徴付けられ得る。
【0059】
特定の実施形態では、約35インチ~約45インチ(約89cm~約114cm)の同軸ケーブルなどの電気的に短いケーブル266を利用して、単一入力RF分配ユニット289をマルチステーション集積回路製作チャンバのステーションの入力ポートに結合することができる。したがって、
図4の例では、代表的なインピーダンス空間402においてZ
Lによって提示される負荷インピーダンスをZ
Lの平面から単一入力RF分配ユニット289の出力ポートでの制御点に変換することは、伝送媒体(例えば、同軸ケーブル)内の波長のほぼ一部にわたってZ
Lの平面を回転させることに対応する。この場合、伝送媒体は、50オームの同軸ケーブルに対応し得る。したがって、(代表的なインピーダンス空間402の中心点に関して)信号周波数で波長の一部にわたって負荷を回転させると、負荷は、約25~50オームの実数成分および約100~200オームのリアクティブ成分を有するインピーダンスに対応するインピーダンス値に変換される。代表的なインピーダンス空間402は、点(1)が経路(2)を通って回転していることを示しており、これは、点(3)に到達するための1つの波長のほぼ一部に対応する。
【0060】
図4の代表的なインピーダンス空間402は、比較的低いインピーダンス感度の領域を含むことが理解され得る(インピーダンスの実数成分および虚数成分が約100オーム未満である代表的なインピーダンス空間のエリアに対応する)。代表的なインピーダンス空間402は、比較的高いインピーダンス感度の領域をさらに含み得る(インピーダンスの実数成分および虚数成分が約100オームよりも大きいインピーダンス空間のエリアに対応する)。したがって、波長の一部にわたって負荷インピーダンスZ
Lの平面を回転させると、インピーダンスZ
Lを比較的低い実数インピーダンスおよび虚数インピーダンス(例えば、抵抗に対するリアクタンスの比<2.5)に対応する領域などの低インピーダンス感度の領域から、比較的高い実数および虚数インピーダンス(例えば、抵抗に対するリアクタンスの比>2.5)に対応する領域などの高インピーダンス感度の領域に変換する効果を有することが理解され得る。しかし、
図5Aに関連してさらに説明されるように、場合によっては、
図4のCserおよびCshuなどのリアクティブ成分の正確な値を決定し、それにより負荷インピーダンスZ
Lへの最大電力流および最小反射電力を提供するように動作する共役整合または他のタイプの整合を提供する容量性リアクタンスまたは誘導性サセプタンスに到達するのは困難である場合がある。
【0061】
図5Aおよび
図5Bは、一実施形態による、様々な長さの伝送線路に対応するRF整合ユニットの制御点におけるインピーダンス感度を図示する。
図5Aに図示されるように、共役整合などの整合をもたらすために必要な実数成分および虚数成分を決定することで、高インピーダンス感度の領域に位置決めされた負荷インピーダンスが問題となる可能性があるかどうかについてから、低い反射係数がもたらされる。したがって、電気的に短い伝送線路(10~100MHzの周波数)などを通してインピーダンスを変換すると、抵抗性要素およびリアクティブ回路要素によって導入されるインピーダンスの望ましくない高い標準偏差が生じる可能性がある。したがって、そのような負荷を整合させるための努力は、抵抗性要素およびリアクティブ要素が整合ネットワークに挿入され、反射係数(または電圧定在波比)に対するそのような要素の挿入の影響を決定するためにテストされ、次いで反射係数を閾値未満に駆動するために調整および再測定されるので、複数の反復を必要とし得る。そのようなインピーダンス変換は、点(1)での負荷インピーダンスZ
Lが低インピーダンス感度の領域にある
図4の代表的なインピーダンス空間402に示されている。代表的なインピーダンス空間の経路(2)を通る点(1)の回転は、高インピーダンス感度の領域内において点(3)への負荷インピーダンスZ
Lの変換をもたらす。
【0062】
しかし、代表的なインピーダンス空間403において再び
図4を参照すると、約10MHz~約100MHzの周波数でより大きい電気長を有するRFケーブル(266)の使用は、負荷インピーダンスZ
Lを低インピーダンス感度の第1の領域から低インピーダンス感度の第2の領域に変換するように動作し得る。
図4の代表的なインピーダンス空間403に示すように、点(1)から経路(4)を通って点(5)に到達するための回転は、低インピーダンス感度の領域内の点から低インピーダンス感度の領域内の第2の点へのインピーダンス変換に対応する。経路(4)の長さは、10MHz~100MHzの動作周波数での10~20ケーブルによって表される波長の数に対応する。
図4(右下部分)のような例では、15フィート(457.2cm)の同軸ケーブル伝送線路は、半波長よりもわずかに長い波長を表す。経路(4)を通るそのような回転は、高インピーダンス感度の領域内で共役整合を提供する可能性を回避することも理解され得る。
【0063】
図5Bは、(
図4の)代表的なインピーダンス空間403に示される点(5)に対応する実数インピーダンスおよび虚数インピーダンスの不確実性を示している。
図5Bに示すように、点(5)を覆う不確実性は、共役整合を提供するためにリアクティブ要素によって導入されるインピーダンスの比較的低い標準偏差に対応する。したがって、そのような負荷を整合させることは、反射係数の単一の測定と、それに続く適切な抵抗性要素および/またはリアクティブ回路要素の挿入のみを必要とし得、測定された反射係数を閾値未満の値に駆動する。
【0064】
しかし、低インピーダンス感度および高インピーダンス感度の領域に加えて、
図4の代表的なインピーダンス空間402および403は、共振および反共振のエリアを含み得ることに留意されたい。例えば、インピーダンス空間403を参照すると、電気的に長い(例えば、約10フィート~約20フィート(約305cm~約610cm))同軸ケーブルを介した点(1)から点(5)への負荷インピーダンス(Z
L)の変換は、インピーダンス空間の交差する共振点および反共振点に対応する。例えば、代表的なインピーダンス空間403に示す点(1)から経路(4)を通る負荷インピーダンスZ
Lの変換は、交差点(6)として示され、これは理論的に無限のインピーダンスの点に対応し得る。そのような点において、伝送線路(例えば、同軸ケーブル)に存在する電圧は、電流が比較的低い値に減少する一方で、比較的高い値に増加する可能性がある。反共振点(6)を通過することに応じて伝送線路で発生するそのような高い値の電圧は、同軸ケーブルの誘電体の破壊を引き起こし、かつ/または他の望ましくない結果をもたらす可能性がある。
【0065】
特定の実施形態では、インピーダンス変換は、第1のインピーダンス感度を有する領域から第2のインピーダンス感度を有する領域へと起こり得ることに留意されたい。
【0066】
代表的なインピーダンス空間403に示す経路(4)は、理論的に0(ゼロ)インピーダンスの点を表すことができる点(7)をさらに横切るかまたは通過する。そのような点において、伝送線路(例えば、同軸ケーブル)に存在する電圧は、電流が非常に高い値に増加する一方で、非常に低い値または無視できる値に減少する可能性がある。そのような高い値の電流は、同軸ケーブルの過度の加熱を引き起こす場合があり、これは同軸ケーブルおよび/またはRF信号源276を損傷し得る。
【0067】
さらに、共振(例えば、高電流/低電圧)点および反共振(例えば、高電圧/低電流)点の通過を除いて、15フィート(457.2cm)のケーブルなどのより長いケーブルの使用は、抵抗損失の増加などの他の望ましくない結果をもたらす可能性がある。加えて、より長いケーブルの使用は、ケーブル配線の懸念を生じさせる場合があり、余分なケーブル長は、製作チャンバに関連する他の機器と干渉しないようにコイル状に巻くか、収納するか、あるいは取っておかなければならない。例えば、余分なケーブル長のそのようなコイルは、コイル状ケーブルの隣接するセクションが互いに相互作用する寄生効果を引き起こし得、これは次にケーブルの特性インピーダンス(Z0)に影響を及ぼし得る静電容量の増加を生じさせることがある。
【0068】
したがって、上記の理由により、電気的に長い伝送線路(例えば、約10フィート~20フィート(約305cm~約610cm)の同軸ケーブル)ではなく、電気的に小さい伝送線路(例えば、約10インチ~50インチ(約25cm~127cm)の同軸ケーブル)を利用することが望ましい場合がある。この文脈において、「電気的に小さい」という用語は、伝送線路の共振、または伝送線路の媒体においてRF信号発生器によって生成される信号の周波数よりも低い周波数での伝送線路の反共振を通過することなく、インピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路を指す。したがって、例として、1MHz~50MHzの周波数を有する信号を伝達する40インチ(101.6cm)の伝送線路は、代表的なインピーダンス空間の点(1)から点(3)への負荷インピーダンスZLの変換が反共振点(6)を通過しないという点で、電気的に小さいものとして分類され得る。一方、約1MHz~50MHzの周波数を有する信号を伝達する15フィート(457.2cm)の伝送線路は、代表的なインピーダンス空間の点(1)から点(5)への負荷インピーダンスZLの変換が反共振点(6)を通過するという点で、電気的に小さくないものとして分類され得る。
【0069】
図6Aおよび
図6Bは、一実施形態による、制御点のインピーダンスをインピーダンス空間の比較的高いインピーダンス感度領域からインピーダンス空間の比較的低いインピーダンス感度領域に変換するように配置された電気的に小さい伝送線路およびリアクティブ成分の使用を示す図である。
【0070】
図6Aに示すように、電気的に長い(例えば、15フィート(457.2cm))ケーブルは、マルチステーション集積回路製作チャンバ263のプロセスステーションによって提示される負荷を表す負荷インピーダンス(Z
L)を変換するために利用される。
図4ならびに
図5Aおよび
図5Bを参照して前述したように、負荷インピーダンス(Z
L)は、低インピーダンス感度の領域の第1の点から低インピーダンス感度の領域の第2の点に変換され得る。そのような制御は、単一入力RF分配ユニット289でのコンピュータ制御の整合ネットワークを介して(例えば、適切なアルゴリズムの実行を介して)もたらされ得る。しかし、前述のように、電気的に長い(例えば、15フィート(457.2cm))ケーブル、または代表的なインピーダンス空間の共振点または反共振点の通過を可能にする他の伝送線路の使用は、抵抗損失の増加、寄生容量の変化、ケーブル配線/収納の問題などの望ましくない結果をもたらす可能性がある。
【0071】
したがって、上記の欠点を回避するために、電気的に小さいケーブルを適切なリアクティブ回路と共に利用して、負荷インピーダンスをマルチステーション製作チャンバのステーションの入力ポートに対応する平面から所望の制御点に変換することができる。特定の実施形態は、負荷インピーダンスを低インピーダンス感度の領域から高インピーダンス感度の領域に変換するなど、電気的に小さいケーブルを使用する際の不利な点を克服することができる。したがって、
図6Bでは、負荷インピーダンス(Z
L)は、点(1)から点(2A)に変換されるものとして示されている。本明細書で前述したように、そのような変換は、低インピーダンス感度の領域から高インピーダンス感度の領域へのインピーダンスの変換に対応する。しかし、集中素子シャントインダクタ(例えば、
図6BのL1)の挿入により、単一のRF分配ユニットの制御点でのインピーダンスは、L1の挿入によって形成された経路を通って代表的なインピーダンス空間内で移動される。したがって、制御点のインピーダンスのそのような変換は、かかる変換がインピーダンス空間の高インピーダンス感度部分での整合の必要性を回避するのを支援するという点で望ましいものであり得ることが理解され得る。
図6Bに示すように、高インピーダンス感度のエリアから低インピーダンス感度のエリアへの負荷インピーダンスの追加の変換は、回路におけるC1の挿入などの集中素子直列リアクタンスを使用することによって達成することができる。そのようなリアクタンスの挿入は、
図6Bのインピーダンス空間における点(3A)から点(4)へのような制御点の移動をもたらすことが理解され得る。
【0072】
したがって、特定の実施形態では、電気的に小さい伝送線路を利用して、RF分配ユニットをマルチステーション製作チャンバのステーションへの入力ポートに結合することができる。このような電気的に小さい伝送線路の使用により、高インピーダンス感度のエリアで共役整合が提供される可能性など、様々な欠点を回避することができる。このような電気的に小さい伝送線路は、容量性リアクタンスまたは誘導性サセプタンスをもたらす回路要素の挿入と組み合わせて利用することができる。そのような回路要素の使用は、インピーダンスを高インピーダンス感度のエリアから低インピーダンス感度のエリアに戻して変換するのを支援する。さらに、直列デバイスまたはシャントデバイスとして結合され得る適切な誘導性/容量性回路要素と共にこのような電気的に小さい伝送線路を使用することで、比較的低い抵抗損失、より長く、場合によってはコイル状の伝送線路の隣接するセグメント間などの容量性結合の減少を提供し、ケーブル配線の懸念を回避し得る。特定の実施形態では、電気的に小さい伝送線路(10インチ~50インチ(25.4cm~127cm)の同軸ケーブルなど)を使用することにより、伝送線路の抵抗損失を最小量、例えば5%未満、10%未満、または15%未満に低減することができる。加えて、シャントインダクタおよび直列コンデンサなどの様々な回路要素を挿入すると、抵抗損失が発生する可能性がある。伝送線路損失ならびに様々な回路要素からの損失を含む複合損失は、公称レベル未満、例えば約20%未満に維持され得る。
【0073】
図6Bの例は誘導性サセプタンスを提供するためにシャントインダクタの挿入を利用し、容量性リアクタンスを提供するために直列コンデンサを利用するが、他の実施形態では、異なる回路トポロジーが利用されてもよい。したがって、他の実施形態は、特定のインピーダンス変換要件に従って、容量性要素、誘導性要素、抵抗性要素、伝送線路長などの様々な組み合わせを含み得る。
【0074】
図7は、一実施形態による伝送線路モデルの回路図である。
【0075】
図7では、直列インダクタンス(L)およびシャント容量(C)が示されている。
図7の集中素子は、直列容量(C1)およびシャントインダクタンス(L1)が利用される
図6Bの集中素子とは対照的である。したがって、
図6Bの集中回路要素は、
図7の標準伝送線路モデルの反対(または逆)を表す。
【0076】
前述の詳細な説明では、提示された実施形態または実施態様の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載されている。開示された実施形態または実施態様は、これらの具体的な詳細の一部またはすべてがなくても実践することができる。他の例では、開示された実施形態または実施態様を不必要に曖昧にしないように、周知のプロセス動作は詳細には説明されていない。開示された実施形態または実施態様が特定の実施形態または実施態様と併せて説明されているが、そのような説明は、開示された実施形態または実施態様を限定することを意図していないことが理解されよう。
【0077】
前述の詳細な説明は、開示された態様を説明する目的で、特定の実施形態または実施態様に向けられている。しかし、本明細書の教示は、多くの異なる方法で適用および実施することができる。前述の詳細な説明では、添付の図面が参照されている。開示された実施形態または実施態様は、当業者が実施形態または実施態様を実践することを可能にするのに十分詳細に説明されているが、これらの例は限定的ではないことを理解されたい。他の実施形態または実施態様が使用されてもよく、それらの精神および範囲から逸脱することなく、開示された実施形態または実施態様に変更を加えることができる。加えて、接続詞「または」は、特に明記しない限り、適切な場合には包括的な意味で本明細書において意図されており、例えば、「A、B、またはC」という語句は、「A」、「B」、「C」、「AおよびB」、「BおよびC」、「AおよびC」、ならびに「A、B、およびC」の可能性を含むことを意図していることを理解されたい。
【0078】
本出願では、「半導体ウエハ」、「ウエハ」、「基板」、「ウエハ基板」、および「部分的に製作された集積回路」という用語は、互換的に使用される。当業者は、「部分的に製作された集積回路」という用語が、集積回路製作の多くの段階のいずれかにあるシリコンウエハを指すことができることを理解するであろう。半導体デバイス業界で使用されるウエハまたは基板は、典型的には、200mm、または300mm、または450mmの直径を含み得る。前述の詳細な説明は、実施形態または実施態様がウエハ上に、またはウエハの形成もしくは製作に関連するプロセスと併せて実施されることを想定している。しかし、特許請求される主題は、そのように限定されない。ワークピースは、様々な形状、サイズ、および材料のものであり得る。半導体ウエハに加えて、特許請求される主題を利用することができる他のワークピースとしては、プリント回路基板、またはプリント回路基板の製作物などの様々な製品が挙げられ得る。
【0079】
本開示の文脈が明確に要求しない限り、説明および特許請求の範囲全体を通して、「備える」、「備えている」などの単語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で、すなわち「~を含むがこれに限定されない」という意味で解釈されるべきである。単数形または複数形を使用する単語は、一般に、それぞれ複数形または単数形も含む。「または」という単語が2つ以上の項目のリストを参照して使用されている場合、その単語は、単語の以下の解釈のすべて:リスト内の項目のいずれか、リスト内のすべての項目、およびリスト内の項目の任意の組み合わせをカバーする。「実施態様」という用語は、本明細書に記載の技術および方法の実施態様、ならびに構造を具現化する、ならびに/または本明細書に記載の技術および/もしくは方法を組み込む物理的物体を指す。
本開示は、たとえば、以下のような態様で実現することもできる。
適用例1:
信号をデバイスに提供するための装置であって、
1つまたは複数の無線周波数(RF)信号発生器と、
前記RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する1つまたは複数の電気的に小さい伝送線路と、
前記電気的に小さい伝送線路の各々のインピーダンスを、第1のインピーダンス感度を有する領域から第2のインピーダンス感度を有する領域に変換するリアクティブ回路と
を備える、装置。
適用例2:
適用例1の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスを備える、装置。
適用例3:
適用例1の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくともシャントサセプタンスを備える、装置。
適用例4:
適用例1の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくとも直列リアクタンスおよびシャントサセプタンスを備える、装置。
適用例5:
適用例1の装置であって、
比較的高いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する、装置。
適用例6:
適用例1の装置であって、
比較的低いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンスの前記実数部は、約100オーム未満の値に対応する、装置。
適用例7:
適用例1の装置であって、
前記インピーダンスを変換する前記リアクティブ回路は、前記RF信号発生器の1つまたは複数からの前記信号の周波数よりも低い任意の周波数での共振伝送線路の可能性を回避する、装置。
適用例8:
適用例1の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路は、前記伝送線路の媒体において前記RF信号発生器によって生成された前記信号の前記周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、インピーダンスを前記比較的高いインピーダンス感度の領域から前記比較的低いインピーダンス感度の領域に変換する伝送線路に対応する、装置。
適用例9:
適用例1の装置であって、
前記リアクティブ回路の損失と組み合わされた前記電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する、装置。
適用例10:
適用例1の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路の前記抵抗損失は、10%未満に相当する、装置。
適用例11:
RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、
前記電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路であって、前記リアクティブ回路は、ある長さの伝送線路によって移動される方向とは反対の方向にインピーダンス制御点を移動させるように動作するリアクティブ回路と
を備える、装置。
適用例12:
適用例11の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路は、前記伝送線路の媒体において前記RF信号発生器によって生成された前記信号の周波数よりも低い周波数で伝送線路共振を通過することなく、前記インピーダンス制御点を前記比較的高いインピーダンス感度の領域から前記比較的低いインピーダンス感度の領域に移動させる伝送線路に対応する、装置。
適用例13:
適用例11の装置であって、
前記リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスを備える、装置。
適用例14:
適用例11の装置であって、
前記リアクティブ回路は、少なくともシャント誘導性サセプタンスを備える、装置。
適用例15:
適用例11の装置であって、
前記リアクティブ回路は、直列容量性リアクタンスおよびシャント誘導性サセプタンスを備える、装置。
適用例16:
適用例11の装置であって、
前記リアクティブ回路の損失と組み合わされた前記電気的に小さい伝送線路の抵抗損失は、約20%未満に相当する、装置。
適用例17:
適用例12の装置であって、
前記電気的に小さい伝送線路の前記抵抗損失は、10%未満に相当する、装置。
適用例18:
集積回路製作チャンバであって、
複数の集積回路製作ステーションと、
無線周波数(RF)信号を前記複数の集積回路製作ステーションの少なくとも1つに結合するための1つまたは複数の入力ポートと、
前記RF信号発生器の1つまたは複数からの信号を前記製作チャンバに結合する電気的に小さい伝送線路と、
前記電気的に小さい伝送線路のインピーダンスを比較的高いインピーダンス感度の領域から比較的低いインピーダンス感度の領域に変換するリアクティブ回路と
を備える、集積回路製作チャンバ。
適用例19:
適用例18の装置であって、
前記比較的高いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンスの実数部は、約100オームよりも大きい値に対応する、装置。
適用例20:
適用例18の装置であって、
前記比較的低いインピーダンス感度の領域は、インピーダンス空間内の領域に対応し、前記インピーダンスの前記実数部は、約100オーム未満の値に対応する、装置。
適用例21:
適用例1の装置であって、
第1のインピーダンス感度を有する前記領域は、低インピーダンス感度を有する領域に対応し、第2のインピーダンス感度を有する前記領域は、高インピーダンス感度を有する領域に対応する、装置。