(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-09
(45)【発行日】2024-10-18
(54)【発明の名称】めっき装置、及びめっき方法
(51)【国際特許分類】
C25D 17/00 20060101AFI20241010BHJP
C25D 7/12 20060101ALI20241010BHJP
C25D 17/06 20060101ALI20241010BHJP
C25D 17/10 20060101ALI20241010BHJP
【FI】
C25D17/00 H
C25D7/12
C25D17/06 C
C25D17/06 F
C25D17/06 H
C25D17/10 A
(21)【出願番号】P 2024535246
(86)(22)【出願日】2024-03-07
(86)【国際出願番号】 JP2024008674
【審査請求日】2024-06-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100146710
【氏名又は名称】鐘ヶ江 幸男
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】山本 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】富田 正輝
【審査官】隅川 佳星
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-027290(JP,A)
【文献】特開2004-250776(JP,A)
【文献】特開2014-118634(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0051423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 7/12
C25D 17/00 - 17/06
H01L 21/288
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
めっき液を保持するためのめっき槽と、
被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、
前記基板に対向して配置されるアノードと、
前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、
前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、
を備え、
前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心は、前記基板ホルダの回転中心から偏心している、
めっき装置。
【請求項2】
請求項1に記載のめっき装置において、
前記複数の第1形状の開口からなる構造は、ハニカム構造である、めっき装置。
【請求項3】
請求項2に記載のめっき装置において、
前記複数の第2形状の開口は、前記ハニカム構造の最外周の頂点から前記
隔膜支持部の外周部に連結される、放射状に延びる複数の梁の間に形成されている、めっき装置。
【請求項4】
請求項1に記載のめっき装置において、
前記アノードは、複数の貫通孔を有する板状部材であり、前記隔膜の下面に密着して配置され、
前記アノードの下方に所定の距離をもって離間された裏面プレートを更に備え、
前記裏面プレートにより、前記アノードから発生するガスが前記アノードの下面において滞留する量を調整する、めっき装置。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載のめっき装置において、
前記隔膜の上方に配置された可変アノードマスクを更に備える、めっき装置。
【請求項6】
請求項1に記載のめっき装置において、
前記複数の第1形状の開口及び前記複数の第2形状の開口は、複数の梁によって規定されており、
少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する側で面取りが行われている、めっき装置。
【請求項7】
請求項6に記載のめっき装置において、
前記複数の第1形状の開口を規定する前記梁において面取りが行われている、めっき装置。
【請求項8】
めっき液を保持するためのめっき槽と、
基板を保持する基板ホルダと、
前記基板に対向して配置されるアノードと、
前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、
前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、表面及び裏面を有し、前記表面と前記裏面との間を貫通する複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する前記裏面側で面取りが行われている、隔膜支持部と、
を備える、めっき装置。
【請求項9】
被めっき面を下向きにして基板をめっきするめっき方法であって、
前記基板に対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、
前記基板の回転中心が、前記隔膜支持
部の前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心から偏心した状態で、前記基板を回転しつつ前記基板をめっきする、めっき方法。
【請求項10】
基板をめっきするめっき方法であって、
前記基板に対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する側で面取りが行われている隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、
前記めっき槽を使用して前記基板をめっきする、
めっき方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき装置、及びめっき方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板にめっき処理を施すことが可能なめっき装置として、国際公開2003/079684号公報(特許文献1)に記載されたような、いわゆるフェースダウン式又はカップ式のめっき装置が知られている。このようなめっき装置は、めっき液を貯留するとともにアノードが配置されためっき槽と、アノードよりも上方に配置されて、カソードとしての基板を保持する基板ホルダ(めっきヘッドとも称する)とを備えている。
【0003】
このようなフェースダウン式のめっき装置では、構造上、アノードがめっき槽の最下部に配置されるため、アノード交換などのメンテナンス作業において、アノード上部のパーツを全て取り外す必要がある。この一連の作業は作業性が悪く、時間もかかり、めっき装置の稼働率も悪化するという問題がある。この問題を解決するため、国際公開2003/079684号公報(特許文献1)では、めっき槽から引き出し可能な引き出しユニットを設け、引き出しユニットにアノードを配置する構成を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、めっき槽には、アノードの他にアノード上方に配置され、アノード側のアノード室と基板側のカソード室とを区画するメンブレン(隔膜)が配置される場合がある。隔膜は、アノード室及びカソード室の各室のめっき液を互いに密閉し、アノード室からカソード室にめっき液中の金属イオンを透過させる一方、カソード室からアノード室にめっき液中の添加剤が透過することを防止するものである。このような隔膜は、定期的に交換する必要がある消耗部材であるが、抵抗体、パドル等の基板ホルダ側の部材の下方に配置されており、かつ、各室を互いに区画及び密閉するように密閉構造を介してめっき槽に取り付けられているため、交換時に取り外し及び取り付けに手間がかかる問題がある。また、隔膜とアノードとが離れているので、統合したユニットの高さ方向の寸法が大きくなる懸念がある。
また、基板に形成されるめっき膜の品質を向上させる観点から、基板とアノードとの間に配置される各部材の形状、移動等がめっき膜に転写されることを抑制ないし防止する必要がある。また、めっき膜の品質を向上させる観点から、カソード室内の気泡残りを低減することにも留意する必要がある。
【0006】
本発明は、上述した問題の少なくとも一部を解決することにある。本発明の目的の1つは、フェースダウン式のめっき装置に配置される隔膜等のメンテナンスを容易にすることである。また、本発明の目的の1つは、フェースダウン式のめっき装置において、めっき槽への隔膜の取り付けを容易にすることにある。また、本発明の目的の1つは、フェースダウン式のめっき装置において、めっき槽内の各室を隔膜により容易かつ確実に密閉することにある。本発明の目的の1つは、基板とアノードとの間に配置される各部材の形状、移動等がめっき膜に転写されることを抑制ないし防止することにある。本発明の目的の1つは、カソード室内の気泡残りを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、 めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記基板に対向して配置されるアノードと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、 前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を備え、 前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心は、前記基板ホルダの回転中心から偏心している、 めっき装置が提供される。
また、本発明の一側面によれば、めっき液を保持するためのめっき槽と、 基板を保持する基板ホルダと、 前記基板に対向して配置されるアノードと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、 前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、表面及び裏面を有し、前記表面と前記裏面との間を貫通する複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する前記裏面側で面取りが行われている、隔膜支持部と、を備える、めっき装置が提供される。
【0008】
本発明の一側面によれば、 被めっき面を下向きにして基板をめっきするめっき方法であって、 前記基板に対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、 前記基板の回転中心が、前記隔膜支持部の前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心から偏心した状態で、前記基板を回転しつつ前記基板をめっきする、めっき方法が提供される。
また、本発明の一側面によれば、基板をめっきするめっき方法であって、 前記基板に
対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する側で面取りが行われている隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、 前記めっき槽を使用して前記基板をめっきする、めっき方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】一実施形態に係るめっき装置の全体構成を示す平面図である。
【
図3】めっきモジュールを前方側下方から見た斜視図である。
【
図6A】アノードホルダ組立体の一部を示す拡大斜視図である。
【
図6B】隔膜及びアノードの取り付け構造を説明する説明図である。
【
図7】カソード液入口におけるめっきモジュールの縦断面の斜視図である。
【
図9】アノードホルダ組立体の上方からみた斜視図である。
【
図10】アノードホルダ組立体の下方からみた斜視図である。
【
図11】アノード固定板を透明にした状態における、アノードホルダ組立体の下方からみた斜視図である。
【
図13A】隔膜支持部の一部を拡大した斜視図である。
【
図13B】隔膜支持部一部を更に拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係るめっき装置1000について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面は、物の特徴の理解を容易にするために模式的に図示されており、各構成要素の寸法比率等は実際のものと同じであるとは限らない。また、いくつかの図面には、参考用として、X-Y-Zの直交座標が図示されている。この直交座標のうち、Z方向は上方に相当し、-Z方向は下方(重力が作用する方向)に相当する。
【0011】
図1は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す斜視図である。
図2は、本実施形態のめっき装置1000の全体構成を示す平面図である。
図1及び
図2に示すように、めっき装置1000は、ロードポート100、搬送ロボット110、アライナ120、プリウェットモジュール200、プリソークモジュール300、めっきモジュール400、洗浄モジュール500、スピンリンスドライヤ600、搬送装置700、及び、制御モジュール800を備える。
【0012】
ロードポート100は、めっき装置1000に図示していないFOUPなどのカセットに収容されたウェハ(基板)を搬入したり、めっき装置1000からカセットに基板を搬出するためのモジュールである。本実施形態では4台のロードポート100が水平方向に並べて配置されているが、ロードポート100の数及び配置は任意である。搬送ロボット110は、基板を搬送するためのロボットであり、ロードポート100、アライナ120、プリウェットモジュール200及びスピンリンスドライヤ600の間で基板を受け渡すように構成される。搬送ロボット110及び搬送装置700は、搬送ロボット110と搬送装置700との間で基板を受け渡す際には、仮置き台(図示せず)を介して基板の受け渡しを行うことができる。
【0013】
アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせるためのモジュールである。本実施形態では2台のアライナ120が水平方向に並べて配置されているが、アライナ120の数及び配置は任意である。プリウェットモジュール200は、めっき処理前の基板の被めっき面を純水または脱気水などの処理液で濡らすことで、基板表面に形成されたパターン内部の空気を処理液に置換する。プリウェットモジュール200は、めっき時にパターン内部の処理液をめっき液に置換することでパターン内部にめっき液を供給しやすくするプリウェット処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリウェットモジュール200が上下方向に並べて配置されているが、プリウェットモジュール200の数及び配置は任意である。
【0014】
プリソークモジュール300は、例えばめっき処理前の基板の被めっき面に形成したシード層表面等に存在する電気抵抗の大きい酸化膜を硫酸や塩酸等の処理液でエッチング除去してめっき下地表面を洗浄または活性化するプリソーク処理を施すように構成される。本実施形態では2台のプリソークモジュール300が上下方向に並べて配置されているが、プリソークモジュール300の数及び配置は任意である。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。本実施形態では、上下方向に3台かつ水平方向に4台並べて配置された12台のめっきモジュール400のセットが2つあり、合計24台のめっきモジュール400が設けられているが、めっきモジュール400の数及び配置は任意である。
【0015】
洗浄モジュール500は、めっき処理後の基板に残るめっき液等を除去するために基板に洗浄処理を施すように構成される。本実施形態では2台の洗浄モジュール500が上下方向に並べて配置されているが、洗浄モジュール500の数及び配置は任意である。スピンリンスドライヤ600は、洗浄処理後の基板を高速回転させて乾燥させるためのモジュールである。本実施形態では2台のスピンリンスドライヤ600が上下方向に並べて配置されているが、スピンリンスドライヤ600の数及び配置は任意である。搬送装置700は、めっき装置1000内の複数のモジュール間で基板を搬送するための装置である。制御モジュール800は、めっき装置1000の複数のモジュールを制御するように構成され、例えばオペレータとの間の入出力インターフェースを備える一般的なコンピュータまたは専用コンピュータから構成することができる。
【0016】
めっき装置1000による一連のめっき処理の一例を説明する。まず、ロードポート100にカセットに収容された基板が搬入される。続いて、搬送ロボット110は、ロードポート100のカセットから基板を取り出し、アライナ120に基板を搬送する。アライナ120は、基板のオリエンテーションフラットやノッチなどの位置を所定の方向に合わせる。搬送ロボット110は、アライナ120で方向を合わせた基板をプリウェットモジュール200へ受け渡す。
【0017】
プリウェットモジュール200は、基板にプリウェット処理を施す。搬送装置700は、プリウェット処理が施された基板をプリソークモジュール300へ搬送する。プリソークモジュール300は、基板にプリソーク処理を施す。搬送装置700は、プリソーク処理が施された基板をめっきモジュール400へ搬送する。めっきモジュール400は、基板にめっき処理を施す。
【0018】
搬送装置700は、めっき処理が施された基板を洗浄モジュール500へ搬送する。洗浄モジュール500は、基板に洗浄処理を施す。搬送装置700は、洗浄処理が施された基板をスピンリンスドライヤ600へ搬送する。スピンリンスドライヤ600は、基板に乾燥処理を施す。搬送ロボット110は、スピンリンスドライヤ600から基板を受け取り、乾燥処理を施した基板をロードポート100のカセットへ搬送する。最後に、ロードポート100から基板を収容したカセットが搬出される。
【0019】
なお、
図1や
図2で説明しためっき装置1000の構成は、一例に過ぎず、めっき装置1000の構成は、
図1や
図2の構成に限定されるものではない。
【0020】
[めっきモジュール]
続いて、めっきモジュール400について説明する。なお、本実施形態に係るめっき装置1000が有する複数のめっきモジュール400は同様の構成を有しているので、1つのめっきモジュール400について説明する。
【0021】
図3は、めっきモジュールを前方側下方から見た斜視図である。
図4は、めっきモジュールの縦断面の斜視図である。
図5は、めっきモジュールの横断面の斜視図である。
図6Aは、アノードホルダ組立体の一部を示す拡大斜視図である。
図6Bは、隔膜及びアノードの取り付け構造を説明する説明図である。
図7は、カソード液入口におけるめっきモジュールの縦断面の斜視図である。
図8は、アノードホルダ組立体の平面図である。
図9は、アノードホルダ組立体の上方からみた斜視図である。
図10は、アノードホルダ組立体の下方からみた斜視図である。なお、
図3中の矢印Yで示す方向がめっきモジュール400の前後方向を示し、アノードホルダ610の前板(蓋部)640側を前方、反対側を後面側とする。
【0022】
本実施形態に係るめっき装置1000は、
図4に示すように、基板Wfを水平に保持してめっきするフェースダウン式又はカップ式と称されるタイプのめっき装置である。本実施形態に係るめっき装置1000のめっきモジュール400は、主として、めっき槽10と、基板Wfを保持するめっきヘッドとも称される基板ホルダ20と、基板ホルダ20を回転、傾斜及び昇降させる回転機構、傾斜機構及び昇降機構(図示略)と、めっき槽10内をカソード室Cc及びアノード室Caとに区画する隔膜50と、基板Wfの下方において基板Wfと対向して配置されるアノード60と、を備えている。但し、傾斜機構は省略されてもよい。
【0023】
本実施形態に係るめっき槽10は、上方に開口を有する有底の容器によって構成されている。本実施形態に係るめっき槽10は、上部槽11と、下部槽12とを備えている。めっき槽10は、上部槽11と下部槽12とで、めっき液を貯留する概ね円筒形状の内部空間を形成する。めっき液としては、めっき皮膜を構成する金属元素のイオンを含む溶液であればよく、その具体例は特に限定されるものではない。本実施形態においては、めっき処理の一例として、銅めっき処理を用いており、めっき液の一例として、硫酸銅溶液を用いている。また、本実施形態において、めっき液には所定の添加剤が含まれている。但し、この構成に限定されるものではなく、めっき液は添加剤を含んでいない構成とすることもできる。
【0024】
めっき槽10の内部において基板Wfの近傍にはパドル30が配置されている。パドル30は、基板Wfの被めっき面に対して概ね平行方向に往復運動して、基板Wf表面に強いめっき液の流れを発生させる。これにより、基板Wfの表面近傍のめっき液中のイオンを均一化し、基板Wf表面に形成されるめっき膜の面内均一性を向上させる。
【0025】
めっき槽10の内部においてパドル30の下方には、多孔質の抵抗体40が配置されている。具体的には、抵抗体40は、複数の孔(細孔)を有する多孔質の板部材によって構成されている。抵抗体40よりも下方側のめっき液は、抵抗体40を通過して、抵抗体40よりも上方側に流動することができる。この抵抗体40は、アノード60と基板Wfとの間に形成される電場の均一化を図るために設けられている部材である。このような抵抗体40がめっき槽10に配置されることで、基板Wfに形成されるめっき皮膜(めっき層)の膜厚の均一化を容易に図ることができる。なお、抵抗体40は本実施形態において必須の構成ではなく、本実施形態は抵抗体40を備えていない構成とすることもできる。
【0026】
本実施形態では、めっき槽10の下部槽12内にアノードホルダ組立体6が配置されており、アノードホルダ組立体6が、隔膜50、アノード60、及び可変アノードマスク650を備える構成となっている。即ち、アノードホルダ組立体6をめっき槽10に挿入及び装着することで、めっき槽10内に隔膜50、アノード60、及び可変アノードマスク650が配置される構成となっている。
【0027】
本実施形態では、隔膜50及びアノード60が、めっき槽10の内部において可変アノードマスク650の下方に配置されている(
図5、
図6A)。本実施形態では、隔膜50の下にアノード60が密着して配置されている構成を採用している。隔膜50は、めっき槽10内部をアノード室Ca(隔膜50の下側の室)とカソード室Cc(隔膜50の上側の室)とに上下に仕切る/区画する。隔膜50は、例えば、中性膜と、イオン交換膜とを重ねて構成されている。隔膜50の構成は、一例であり、他の構成をとることができる。隔膜50は、その外周部において、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)との間にシール704を挟んだ状態で下方よりシール押さえリング51によりホルダ本体620に対して押し付けられて固定される(
図6A、
図6B)。ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)の下面と、隔膜50の外周部の上面との間にシール面704Aが形成される。シール704は、例えば、ホルダ本体620/アノードホルダ610の環状部621の下面に全周に亘って環状に設けられたシール溝に配置することができる。このように、本実施形態では、アノードホルダ組立体6において、めっき槽10内が隔膜50により上下に区画された構成とすることができる。従って、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)とめっき槽10との間をシールすれば、めっき槽10内は隔膜50を境界としてアノード室Caとカソード室Ccとに区画される構成となる。
【0028】
アノード室Caには、めっき槽10の底壁に設けられたアノード液入口12Cからアノード液(めっき液)が供給され、例えば、めっき槽10の側壁に設けられたアノード液出口(図示せず)からアノード液が排出される。カソード室Ccには、カソード液入口680からカソード液(めっき液)が供給され、カソード液出口(図示せず)から排出される。カソード室Ccには、促進剤等の添加物を含むめっき液(カソード液)が導入され、アノード室Caには添加物を含まない又は添加物濃度が低いめっき液(アノード液)が導入される。隔膜50は、アノード室Caからカソード室Ccにめっき液中の金属イオンを透過させると共に、カソード室Ccからアノード室Caにめっき液中の添加剤が透過することを防止する。
【0029】
アノード60は、隔膜50の下面に密着して配置されている。アノード60の具体的な種類は特に限定されるものではなく、溶解アノードや不溶解アノードを用いることができる。本実施形態においては、アノード60として不溶解アノードを用いている。この不溶解アノードの具体的な種類は特に限定されるものではなく、白金や酸化イリジウム等を用いることができる。
【0030】
本実施形態では、アノード60及び隔膜50の上面側(基板Wf側)に可変アノードマスク650が設けられている。可変アノードマスク650は、ブレード651の内側にアノード60を露出する開口部を有し、ブレード651によってアノード60が露出する範囲を調節することにより、アノード60から基板Wfに向かう電場を調節する電場調節部材である。本実施形態の可変アノードマスク650は、
図5に示すように、複数のブレード651を備え、カメラの絞りと同様の機構により、アノード60を露出する開口部の開口寸法を調整する。
【0031】
<アノードホルダ組立体>
以下、アノードホルダ組立体(引き出しユニットとも称す)6の詳細について説明する。本実施形態では、隔膜50、アノード60、可変アノードマスク650は、アノードホルダ610に取り付けられ、これらが、アノードホルダ組立体6として一体に構成されている(
図3、
図4)。他の実施形態では、可変アノードマスク650は、省略されても良いし、アノードホルダ組立体6とは別に設けられても良い。アノードホルダ組立体6は、めっき槽10(下部槽12)に引き抜き可能に取り付けられている。
図3及び
図4に示すように、アノードホルダ組立体6は、めっき槽10の前方側に設けられた開口12Bからめっき槽10に挿入され、めっき槽10に装着される。めっき槽10の開口12Bは、アノードホルダ610の前板(蓋部)640によって塞がれ、シール702、703(後述)により液密にシールされる。
【0032】
アノードホルダ組立体6は、アノードホルダ610と、アノードホルダ610に取り付けられた隔膜50、アノード60、及び可変アノードマスク650と、を備えている。他の実施形態では、可変アノードマスク650は、省略されても良いし、アノードホルダ組立体6とは別に設けられても良い。
【0033】
(アノードホルダ)
アノードホルダ610は、ホルダ本体620と、前板640とを備えている。ホルダ本体620は、隔膜50、アノード60、及び可変アノードマスク650を保持する部材である。前板640は、めっき槽10の開口12Bを塞ぎ、めっき槽10内を外部から液密に封止する部材である。ホルダ本体620は、アノードホルダ610の主要部を成す部分であるため、アノードホルダ610の外周部は、ホルダ本体620の外周部を示し、及び、ホルダ本体620の外周部は、アノードホルダ610の外周部を示す。
【0034】
・ホルダ本体
ホルダ本体620は、環状部621と、環状部621の内側に一体的に設けられた隔膜支持部622と、環状部621の上面に設けられたフランジ623と、を備えている。環状部621及びフランジ623は、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部を構成する。環状部621及びフランジ623をまとめてホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部と称しても良く、それぞれをホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部と称しても良い。
【0035】
環状部621は、
図4に示すように、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部の下部を構成し、その内側に、隔膜50(アノード60に対応する領域)を露出する複数の開口を有する隔膜支持部622が配置されている。他の実施形態では、隔膜支持部622が省略され、隔膜支持部622の部分が単一の開口であってもよい。
【0036】
隔膜支持部622は、
図8及び
図9に示すように、複数の開口を含む網状部分であり、
図4及び
図5に示すように、隔膜50の上面に当接して隔膜50を上方から支持するものである。隔膜支持部622は、
図4及び
図5に示すように、六角形に配置された梁622Aがハニカム形状に並んでハニカム形状の複数の開口を有するハニカム構造(外接円Rmの内側)と、ハニカム構造の最外周の頂点からホルダ本体620/アノードホルダ610の環状部621に連結される、放射状に延びる複数の梁622Bと、を備えている。
図8中のRmは、ハニカム構造の外接円を示し、この外接円Rmの内側が概ねハニカム構造を示す。外接円Rmは、概ね基板Wfの外形(投影形状)に対応する。但し、本実施形態では、
図8に示すように、ハニカム構造の中心、即ち外接円Rmの中心Cmは、基板ホルダ20(基板Wf)の回転中心/回転中心軸Cwから偏心している。この構成により、基板Wfに形成されるめっき膜が隔膜支持部622のパターンを拾わないようにし、めっき膜厚の均一性の低下を抑制ないし防止している。ハニカム構造の中心Cmと基板Wfの回転中心Cwとが偏心(オフセット)しない場合には、基板Wfを回転させても、梁622Aにより電場が遮蔽される割合が高い領域ができる可能性が高い。
【0037】
フランジ623は、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部の上部を構成し、めっき槽10の内部への取付部を構成する。フランジ623は、
図8及び
図9に示すように、環状の部材であり、中央部において隔膜50(アノード60に対応する領域)を露出する開口を有している。フランジ623は、ホルダ本体620/アノードホルダ610の環状部621に対して、締結部材による固定方式、溶接、接合等による固定方式により、堅固に液密に固定される。フランジ623と環状部621との間にシールを配置して両者の間を液密に固定してもよい。本実施形態では、フランジ623は、環状部621と別体で設けられているが、可変アノードマスク650がアノードホルダ610に取り付けられない場合には、フランジ623を環状部621と一体に設けても良い。フランジ623の上面には、全周に亘って環状のシール溝が形成され、シール溝に環状のシール701が配置されている。本実施形態では、
図4等に示すように、フランジ623の上面内側の部分において他の部分より若干高い環状の突起部を設け、この環状の突起部にシール701を配置するようにしている。
【0038】
・前板
前板640は、
図3及び
図4に示すように、前板本体641と、枠部材642とを備えている。枠部材642は、前板本体641に対して前後方向に移動可能に前板本体641の外周面に篏合されている。前板本体641と枠部材642とは、互いに脱落しない強度で篏合している。
図4に示すように、前板本体641の外周面には、例えば、全周にわたって環状のシール703が配置されており、シール703は、前板本体641と枠部材642との間を液密にシールする。シール703は、例えば、前板本体641の外周面に全周に亘って環状に設けられるシール溝内に配置される。シール703は、枠部材642の内周面に全周に亘って環状に設けられるシール溝内に配置されても良い。めっき槽10の下部槽12の開口12Bの周囲には、下方及び左右方向に突出するフランジ12Aが設けられている。フランジ12Aの前面の開口12Bの周囲に全周に亘って環状のシール702が配置されており、シール702がフランジ12Aと前板640(枠部材642)との間をシールする。シール702は、例えば、フランジ12Aの前面の開口12Bの周囲には全周に亘って設けられた環状のシール溝内に配置される。フランジ12Aは、下部槽12の一部を構成するが、下部槽12に一体に設けられても良く、又は下部槽12の他の部分とは別体に設けられ、締結部材による固定方式、溶接、接合等による固定方式により、他の部分に液密に固定されてもよい。なお、シール702は、枠部材642の背面に全周に亘って環状に設けられるシール溝内に配置されてもよい。
【0039】
なお、下部槽12の側壁(前面)において、前板640の枠部材642が当接できる十分な面積が確保できるのであれば、フランジ12Aが省略されてもよい。
【0040】
図3及び
図4に示すように、前板640は、枠部材642を貫通する複数の締結部材802によって下部槽12のフランジ12Aに固定される。締結部材802は、ボルト、ねじ、その他任意の締結部材であってよい。但し、アノードホルダ組立体6(アノードホルダ610)のメンテナンスの観点から取り外しが容易なものが好ましい。前板640の枠部材642が締結部材802によってめっき槽10のフランジ12Aに固定されることにより、枠部材642とフランジ12Aとの間がシール702によってシールされる。このとき、枠部材642が前板本体641に対して前後方向に移動し、シール702を適切に弾性変形させることができ、シール702によるシール性能を十分に発揮できるようになっている。この結果、アノードホルダ610(アノードホルダ組立体6)をめっき槽10に装着したとき、アノードホルダ610の前板640とめっき槽10のフランジ12Aとの間のシール702により、めっき槽10内が外部から液密にシールされる。
【0041】
(隔膜)
ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)の下面には、
図4、
図6Aに示すように、隔膜50の外周部がシール704を介して取り付けられている。
図6Aに示すように、複数の締結部材803が、シール押さえリング51、隔膜50、及びシール704を貫通して環状部621に螺合することで、隔膜50の外周部が、シール704によりシールされた状態で、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)に取り付けられている。シール704は、例えば、環状部621の下面に全周に亘って環状に形成されたシール溝に配置されることができる(
図6A)。複数の締結部材803は、ボルト、ねじ、その他任意の締結部材であって良く、例えば、シール押さえリング51の全周に亘って均等に配置される。隔膜支持部622及び環状部621をまとめて隔膜支持部と称しても良い。
【0042】
(アノード)
アノード60は、
図6Bに示すように、アノード固定板62及び隔膜押さえ810によって隔膜50の下面に密着するようにホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)に取り付けられる。アノード固定板62を貫通してアノード60の下面に当接しアノード60を隔膜50に対して押し付ける複数の隔膜押さえ810により、アノード60が下方より支持され所定位置に保持される。このとき、
図6A及び
図6Bには表れていないが、隔膜50の上面がホルダ本体620/アノードホルダ610の隔膜支持部622(
図5等)により上方から押さえられるため、隔膜50及びアノード60は、上方の隔膜支持部622と下方の隔膜押さえ810とによって挟まれて保持される。アノード固定板62は、裏面プレートとも称される。
【0043】
隔膜押さえ810は、ボルト、スペーサ、その他任意の支持部材とすることができる。なお、
図6Bは、複数の隔膜押さえ810により形成されるアノード60とアノード固定板62との間の隙間を強調して示すために、模式的な表現で記載している。
【0044】
アノード固定板62は、
図6Aに示すように、シール押さえリング51の外側で、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)に複数のスペーサ804A(
図6Aでは1つのみ図示)を介して固定される。アノード固定板62は、アノード固定板62及びスペーサ804Aを貫通して環状部621に螺合する複数の締結部材804によって、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)に固定される。これにより、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部とアノード固定板62との間(シール押さえリング51とアノード固定板62との間、並びに、環状部材621とアノード固定板62との間)には、隙間が形成される。これらの隙間を通って、アノード60で発生したガス(例えば、酸素)がホルダ本体620/アノードホルダ610の外側に移動することができる。
【0045】
複数の締結部材804は、ボルト、ねじ、その他任意の締結部材であって良く、例えば、シール押さえリング51の外側で全周に亘って均等に配置される。
【0046】
図6Bに示すように、アノード60下面とアノード固定板62と、の間には、隔膜押さえ810の先端側により所定の隙間が形成される。また、アノード60の外周側では、周方向の1又は複数の箇所において、シール押さえリング51とアノード固定板62との間、並びに、環状部材621とアノード固定板62との間に隙間が設けられ、これらの隙間を通って、アノード60下面とアノード固定板62との間に蓄積したガスが外側に排出されるようになっている。アノード固定板(裏面プレート)62は、アノード60下面に溜まるガスの蓄積量を所定量に調整し、大量のガスがアノード下面から一時に離脱してアノードの電圧が変動するのを抑制する機能を有する。これにより、めっき膜厚の均一性が低下することを抑制することができる。
【0047】
本実施形態では、アノード60は、多数の貫通孔(図示略)を有する板状部材である。アノード60は、ラス(金網)構造、その他、複数の貫通孔が設けられた板状部材とすることができる(国際公開2023/188371号公報参照)。アノード60は多数の貫通孔を有するため、アノード60の上面は、電極反応中においても貫通孔より供給されるめっき液(アノード液)で常に湿潤した状態に保たれる。隔膜50は、めっき液が浸透・湿潤可能なイオン透過性を有する膜であるので、アノード60は、基板側の面(隔膜50が密着した箇所又はその近傍)において、めっき液と反応し、陽イオン(例えば水素イオンH+)が隔膜50を通してカソード室Cc、つまり基板側に伝達される。従って、アノード60の基板側の面(隔膜50が密着した箇所又はその近傍)から隔膜50の内部を通って基板Wfに至るイオン伝導パス(電流パス)が形成される。一方、アノード60の表面で発生したガスの気泡は、隔膜50を通過することができず、アノード60の多数の貫通孔を通じてアノード60の裏面(下面)側へ移動する。気泡は、アノード60の下面(アノード60と裏面プレート62との間)に蓄積された後、シール押さえリング51の外側に移動し、排気通路(図示略)を通じて、めっき槽10外部へ排出される。
【0048】
アノード60の上面が隔膜50の下面に密着しているので、アノード60から発生するガスが、アノード60と隔膜50との間に蓄積することが抑制ないし防止され、及びカソード室に移動することが抑制又は防止され、アノード60と基板Wfとの間の電場(電界)に影響を与えて、基板Wfに形成されるめっき膜厚の均一性が低下することを抑制ないし防止することができる。
【0049】
(可変アノードマスク)
可変アノードマスク650は、
図4に示すように、ホルダ本体620/アノードホルダ610の環状部621上に隔膜支持部622(
図5等)より若干高い位置で取り付けられている。可変アノードマスク650は、複数のブレード651と、複数のブレード651が取り付けられ、これらのブレード651による絞り(開口径)を調整する円環状の駆動部材652と、を備えている。駆動部材652には、
図3、
図5に示すような駆動シャフト670が取り付けられており、駆動シャフト670がアクチュエータ(図示略)により前後方向に移動されることで、駆動部材652が回転し、複数のブレード651による絞り(開口径)が調整されるようになっている。一例では、アノードホルダ610の前板640(下部槽12の開口12B)に隣接するめっき槽10の下部槽12の側面にアクチュエータ(図示略)が配置され、このアクチュエータのシャフトが駆動シャフト670と平行に延びており、連結部材671を介して、アクチュエータのシャフトと駆動シャフト670とが、それらの先端間で連結される構成とすることができる(国際公開2003/079684号公報(特許文献1)参照)。駆動シャフト670と前板640(前板本体641)との間は適切なシール(図示略、例えば特許文献1参照。)でシールされている。アクチュエータは、公知のリニアアクチュエータ(例えば、モータ及びボールねじ)により構成することが可能である。
【0050】
(第1シール面)
ホルダ本体620/アノードホルダ610のフランジ623は、
図9に示すように、環状の部材であり、中央において隔膜50(アノード60に対応する領域)を露出する開口を有している。フランジ623の上面には、
図4、
図5、
図8及び
図9に示すように、シール701が全周にわたって配置されている。このシール701は、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(フランジ623)と、めっき槽10のフランジ12Dの下面との間をシールする。シール701を挟んで互いに対向する、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(フランジ623)の上面、及びめっき槽10のフランジ12Dの下面の間に、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部とめっき槽10との間をシールするシール面701Aが形成される(
図4参照)。
図4、
図5に示すように、めっき槽10の上部槽11のフランジ11A及び下部槽12のフランジ12Dを貫通して、ホルダ本体620/アノードホルダ610のフランジ623に締結される複数の締結部材801によって、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(フランジ623)が、めっき槽10のフランジ12Dに固定されたときに、シール701が適切な圧力で弾性変形されてシール性を発揮するように構成されている。複数の締結部材801は、例えば、全周に亘って均等に設けられる。締結部材801は、ボルト、ねじ、その他任意の締結部材であってよい。
【0051】
(第2シール面)
めっき槽10の下部槽12のフランジ12Aの前面には、
図4に示すように、開口12Bの周りに全周に亘って環状のシール702が配置されている。このシール702は、めっき槽10のフランジ12Aと、前板640の枠部材642との間をシールする。言い換えれば、めっき槽10の開口12Bを液密にシールする。シール702を挟んで互いに対向する、めっき槽10のフランジ12Aの前面、及び、前板640の枠部材642の背面との間に、前板640とめっき槽10との間をシールするシール面702Aが形成される(
図4参照)。
図3、
図4に示すように、アノードホルダ610の前板640を複数の締結部材802によってめっき槽10のフランジ12Aに固定すると、シール702が適切な圧力で弾性変形され、シール性を発揮するように構成されている。このとき、前板640の枠部材642が前板本体641に対して前後方向に移動可能であるので、複数の締結部材802の締付の程度によって枠部材642がシール702を適切な圧力で弾性変形させるように、枠部材642を前板本体641に対して移動させることができる。複数の締結部材802は、例えば、
図4等に示すように、全周に亘って均等に配置することができる。
【0052】
ここで、ホルダ本体620/アノードホルダ610のフランジ623をめっき槽10のフランジ12Dに締結部材801で固定する際、即ち、シール701を弾性変形させる際に、めっき槽10のフランジ12Dが締結部材801により上下方向の力を受けるため、めっき槽10のフランジ12Aに配置されたシール702が上下方向の力を受け、フランジ12Aと枠部材642との間を適切にシールする状態にならない虞がある。そこで、本実施形態では、前板640において枠部材642を前板本体641に対して前後方向に移動可能とし、締結部材802の締め付けにより枠部材642を前板本体641から独立してフランジ12Aに押し付け、これにより、シール703を適切に圧縮及び弾性変形させ、適切にシールする状態にするようにした。例えば、上部及び下部の締結部材802の締付の程度を変えることにより、上部と下部とで適切な押し付け力でシール702を弾性変形させることができる。
【0053】
(第3シール面)
また、前板640において、前板本体641と枠部材642との間は、環状のシール703によりシールされる。シール703を挟んで互いに対向する、前板本体641の外周面及び枠部材642の内周面の間に、前板本体641と枠部材642との間をシールするシール面703Aが形成される(
図4参照)。この結果、めっき槽10内が外部から適切にシールされることになる。枠部材642は、前板本体641から脱落しない強度で前板本体641に対して篏合されて取り付けられている。シール703は、例えば、前板本体641の外周面に全周に亘って設けられた環状のシール溝に配置される。なお、シール703は、枠部材642の内周面に全周に亘って環状に設けられるシール溝に配置されてもよい。
【0054】
(カソード液通路)
図7及び
図10に示すように、アノードホルダ610には、ホルダ本体620/アノードホルダ610の下部において、前板640のカソード液入口680に連通するカソード液通路681が設けられている。カソード液通路681は、ホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部(環状部621)の下部において一部の肉厚を取り除き、ホルダ本体620/アノードホルダ610の環状部621の薄肉部の下面と、前板本体641と、底壁613と、側壁614~617とによって区画される。側壁614は、隔膜支持部622の外周に沿った形状で設けられており(
図7、
図10)、側壁614の上部には、1又は複数の切り欠き614aが設けられている(
図7)。切り欠き614aは、カソード液通路681の出口を構成する。即ち、カソード液通路681は、カソード液入口680に連通する入口と、隔膜50の上方に開口する出口(切り欠き614a)とを有する。カソード液入口680からに流入したカソード液は、カソード液通路681を通って、切り欠き614aから隔膜支持部622の上方(即ち、隔膜50の上方であるカソード室Cc)に供給される。
【0055】
カソード液入口680は、
図7に示すように、ホルダ本体620/アノードホルダ610の下部において、カソード室Ccの最下部に配置されるようにするため、カソード室Cc内に残るカソード液の残液の量を最小限にすることができる。カソード液通路681の底面(底壁613)も、アノード固定板62よりも下方にあり、カソード室Ccの最下部にある。
【0056】
(バスバー)
前板640(前板本体641)の幅方向の中央付近には、バスバー660が配置されている(
図3、
図5)。バスバー660は、
図10に示すように、前板640(前板本体641)からアノード60の下面中央付近まで後方に延び、アノード60の下面中央付近にアノード60と電気的及び機械的に接続され下方に突出するボス60A(ターミナル部)に、例えば、締結部材805により、電気的及び機械的に接続される。バスバー660と前板640(前板本体641)との間は、適切なシールによりシールされる(図示略、例えば特許文献1参照)。締結部材805は、ボルト、ねじ、その他任意の締結部材であってよい。
【0057】
図11は、アノード固定板62を透明にした状態における、アノードホルダ組立体6の下方斜視図である。
図12は、隔膜支持部622の底面図である。
図13Aは、隔膜支持部622の一部を拡大した斜視図である。
図13Bは、隔膜支持部622の一部を更に拡大した斜視図である。
【0058】
アノードホルダ組立体6を下方からみた場合、隔膜支持部材622は、アノード60及び隔膜50の奥に配置されている(
図4、
図5)が、
図11では、説明の便宜上、アノード60の位置に隔膜支持部材622が透けて見えるように記載している。
図11では、シール押さえリング51及び隔膜50を締結する締結部材803(
図6A)、アノード固定板62を締結する締結部材804(
図6A)、下方からアノード60を介して隔膜50を押さえる隔膜押さえ810(
図6B)の配置例も見て取れる。
【0059】
図12、
図13A及び
図13Bに示すように、隔膜支持部622の梁622Aの下面側、即ち隔膜50に接触する側では、面取りが行われ、面取り部624Aが形成されている。なお、隔膜支持部622の上面及び下面をそれぞれ表面及び裏面と称する場合もある。この例では、面取り部624AがC面取りである構成を示している。なお、
図12に示すように、ハニカム構造の最外周の梁622Aには、ハニカム構造に面する側のみに面取りを形成してもよい。言い換えれば、ハニカム構造の最外周の梁622Aに設けられる面取り部624Aは、ハニカム構造に面する側のみに設けられてもよい。別の言い方をすれば、隔膜支持部622の梁622Aの隔膜接触側且つハニカム開口に面する側において面取り部624Aが設けられてもよい。他の実施形態では、ハニカム構造の最外周の梁622Aに設けられる面取り部624Aは、ハニカム構造に面する側及び面しない側に設けられてもよい。
【0060】
面取り部624Aを設ける理由は、カソード室Ccの液入れ時に、隔膜50と接触する梁の部分(隔膜と梁の間)に気泡が閉じ込められることで気泡残りが発生する可能性があり、これを改善するためである。このような気泡残りは、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を発生させ得る。
【0061】
前述のように、隔膜50のカソード室Cc側に配置された梁622Aの下面側に面取り部624Aを設けることにより、梁622Aの隔膜50との接触面積を低減させ、カソード室Ccにおける気泡残りを低減することができる。これにより、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を奏し得る。また、梁622Aの下面にのみ面取り部624Aを設けることで、梁強度と気泡残りの低減を両立させることができる。
【0062】
図8に示す外接円Rmが概ね基板Wfの投影に対応するため、外接円Rmの内側のハニカム構造の梁622Aに面取り部624Bを設ければ、基板Wfへの気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を期待できるが、梁622Bにも同様の面取り部を設けても良い。なお、ハニカム構造の中心Cmと、基板ホルダ20(基板Wf)の回転中心/回転中心軸Cwとが偏心しているか、していないかに関らず、上述の面取り部が、気泡残りを低減できることは言うまでもない。上述の面取り部は、縦型めっき装置の隔膜支持部に対しても適用可能である。なお、上述の面取りは、C面取りに限定されず、気泡付着等の効果を奏する限り任意の形状の面取りとすることができる。
【0063】
上記実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
(1)アノードホルダ610において、隔膜50の外周部とホルダ本体620/アノードホルダ610の外周部との間をシール704により適切にシールすることができる。
(2)めっき槽10の内部を上下の室(アノード室、カソード室)に区画するように、アノードホルダ610の外周部とめっき槽10の内部との間をシール701により適切にシールすることができる。
(3)上記構成(1)、(2)によれば、アノードホルダ610をめっき槽10に装着することで、めっき槽10の内部を隔膜50の上下においてカソード室及びアノード室に区画及び密閉することができる。
(4)アノードホルダ610の前板640とめっき槽10の開口12Bの周りとの間をシール702により適切にシールすることができる。このとき、前板640の枠部材642を前後方向に移動させることで、シール702を適切に弾性変形させることができる。
(5)前板640の枠部材642と前板本体641との間をシール703により適切にシールすることができる。
(6)上記(4)、(5)の構成により、アノードホルダ610をめっき槽10に装着することで、めっき槽10内を外部から適切に密閉することができる。
【0064】
(他の実施形態)
(1)前板640とめっき槽10との間のシール704の構成を工夫する等の手段により、シール704でめっき槽10内を外部から液密に封止することができる場合には、前板本体641と枠部材642を一体の前板640とし、シール703を省略してもよい。
(2)上記実施形態では、アノード60の下面側にガスの蓄積量を調整する裏面プレート62を設けたが、裏面プレート62に代えて、アノード60を囲むように設けられる気泡バッファ用リングを設け、アノードから発生し下面上に蓄積する気泡の量を気泡バッファ用リングの高さにより調節するようにしてもよい(国際公開2023/188371号公報)。
【0065】
上述した実施形態から少なくとも以下の形態が把握される。
[1]一形態によれば、 めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記めっき槽の側壁の開口を介して前記めっき槽に水平方向に引抜き自在に装着されたアノードホルダ組立体であって、中央部に1又は複数の開口を有するアノードホルダと、前記アノードホルダに取り付けられたアノードと、前記アノードの上方において前記アノードホルダに取り付けられた隔膜と、を有するアノードホルダ組立体と、を備え、 アノードホルダ組立体は、前記めっき槽内を外部からシールする1又は複数のシール面と、前記めっき槽内を上下の室に区画する1又は複数のシール面とを有する、めっき装置が提供される。説明の便宜上、めっき槽内を外部からシールする1又は複数のシール面を、めっき槽密閉用のシール面と称し、めっき槽内を上下の室に区画する1又は複数のシール面を、めっき槽内区画用のシール面と称する場合がある。
【0066】
この形態によれば、フェースダウン式のめっき装置において、定期的にメンテナンスが必要な隔膜及びアノードを引き抜き自在なアノードホルダに一体化して、隔膜及びアノードのメンテナンスを容易にすることができる。即ち、めっき槽の下部に配置されるアノード及び隔膜を保持するアノードホルダ組立体をめっき槽から取り出して、めっき槽の外部でアノード及び隔膜の交換(アノードホルダ組立体全体を交換することを含む)を行うことができる。
【0067】
この形態によれば、めっき槽にアノードホルダ組立体(アノードホルダ)を装着することで、めっき槽内を外部からシールすると共に、めっき槽内を上下の室(アノード室、カソード室)に区画することができる。即ち、めっき槽密閉用の1又は複数のシール面によりめっき槽内を外部からシールすると共に、めっき槽内区画用の他の1又は複数のシール面によりめっき槽内を上下の室(アノード室、カソード室)に区画することができる。
【0068】
また、アノードホルダをめっき槽に装着することによりめっき槽への隔膜の取り付けも行われるため、めっき槽への隔膜の取り付けを容易にすることができる。
【0069】
[2]一形態によれば、前記めっき槽内を上下の室に区画する1又は複数のシール面は、前記隔膜と前記アノードホルダとの間をシールする第1シール面と、前記アノードホルダの外周部と前記めっき槽との間をシールする第2シール面とを有する。
【0070】
この形態によれば、アノードホルダ組立体のめっき槽への装着前に隔膜がシールされた状態でアノードホルダに取り付けられるので、アノードホルダ組立体のめっき槽への装着時にアノードホルダの外周部とめっき槽との間をシールすれば、めっき槽内を上下の室に区画することができる。
【0071】
[3]一形態によれば、前記隔膜は、前記隔膜の外周部において、第1シール部材を介して前記アノードホルダの外周部に取り付けられており、前記隔膜の外周部と前記アノードホルダの外周部との間に前記第1シール面が形成されている。
【0072】
この形態によれば、簡易な構成で、隔膜とアノードホルダとの間をシールすることができる。
【0073】
[4]一形態によれば、前記めっき槽は、前記めっき槽内の空間に露出する下面を有する第1フランジを有し、 前記アノードホルダは、外周部の上部に設けられた第2フランジを有し、 前記アノードホルダは、前記第2フランジの上面において、環状の第2シールを介して前記めっき槽の前記第1フランジの前記下面に取り付けられており、 前記アノードホルダの前記第2フランジの前記上面と前記めっき槽の前記第1フランジの前記下面との間に前記第2シール面が形成される。
【0074】
この形態によれば、アノードホルダ及びめっき槽の上下方向で対向する面を介して、アノードホルダ及びめっき槽の間を全周に亘って確実にシールすることができる。これにより、めっき槽側壁の開口を塞ぐシール面の影響を受けずに、アノードホルダ及びめっき槽の間を全周に亘って確実にシールすることができる。
【0075】
[5]一形態によれば、前記アノードホルダの前記第2フランジは、前記めっき槽の前記第1フランジに対して、1又は複数の締結部材によって取り付けられ、前記締結部材が締め付けられることで、前記第2シール部材が前記第1フランジと前記第2フランジとの間で弾性変形されるように構成されている。
【0076】
この形態によれば、1又は複数の締結部材によって、アノードホルダの外周部をめっき槽内の所定位置に固定できると共に、アノードホルダの外周部とめっき槽との間を確実にシールするように第2シール部材を弾性変形させることができる。
【0077】
[6]一形態によれば、前記めっき槽内を外部からシールする1又は複数のシール面は、前記アノードホルダと前記めっき槽の前記開口の周囲とをシールする第3シール面を有する。
【0078】
この形態によれば、アノードホルダ組立体を挿入するめっき槽側壁の開口の周囲で、めっき槽内を外部からシールすることができる。
【0079】
[7]一形態によれば、前記アノードホルダは、一端側に設けられ前記めっき槽の前記開口を塞ぐ前板を有し、前記前板は、前板本体と、前記前板本体の周囲に前記前板本体に対して摺動自在に篏合される枠部材とを有し、 前記枠部材は、第3シールを介して、前記めっき槽の前記開口の周囲の側壁、又は前記めっき槽の前記開口の周囲に設けられた第3フランジに対して取り付けられており、前記枠部材と、前記めっき槽の前記開口の周囲の側壁、又は前記めっき槽の前記開口の周囲に設けられた前記第3フランジとの間に、第3シール面が形成されており、 前記枠部材は、第4シールを介して前記前板本体に篏合され、前記枠部材の内周面と前記前板本体の外周面との間に第4シール面が形成されている。第3フランジを設ける場合、第3フランジは、めっき槽の一部とする。
【0080】
この形態によれば、第3シール部材が上下方向の力でずれたとしても、枠部材をめっき槽側壁/第3フランジに対して前後方向に押し付けることができ、第3シール部材を確実にめっき槽と枠部材との間で適切に弾性変形させてシール性を発揮させることができる。これにより、第3シール部材により、めっき槽と枠部材との間を確実にシールすることができる。また、第4シール部材により、前板本体と枠部材との間をシールすることができる。この結果、めっき槽内を外部から確実にシールすることができる。
【0081】
[8]一形態によれば、前記枠部材は、前記めっき槽の前記開口の周囲の側壁、又は前記めっき槽の前記開口の周囲に設けられた前記第3フランジに対して、1又は複数の締結部材により取り付けられ、前記締結部材が締め付けられることで、前記第3シール部材が前記枠部材と前記側壁又は前記第3フランジとの間で弾性変形されるように構成されている。
【0082】
この形態によれば、1又は複数の締結部材によって、前板をめっき槽の側壁に取り付けることができると共に、めっき槽の開口と前板との間を確実にシールするように第3シール部材を変形させることができる。
【0083】
[9]一形態によれば、 前記枠部材が前記前板本体に篏合されることで、前記第4シール部材が前記枠部材と前記前板本体との間で弾性変形するように構成されている。
【0084】
この形態によれば、枠部材を前板本体に篏合させることにより、枠部材と前板本体との間を確実にシールするように第4シール部材を弾性変形させることができる。
【0085】
[10]一形態によれば、前記アノードホルダは、外周部と、前記外周部の内側において複数の開口を有し、前記隔膜の上面を支持する隔膜支持部と、を有する。
【0086】
この形態によれば、アノードホルダの隔膜支持部により隔膜の上面を適切に押さえることができ、隔膜が上方に向かって撓むことを抑制できる。
【0087】
[11]一形態によれば、 前記隔膜支持部の前記複数の開口は、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置された複数の第2形状の開口とを有し、 前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心は、前記基板ホルダの回転中心から偏心している。
【0088】
この形態によれば、隔膜支持部のパターンの中心が基板の回転中心/回転中心軸から偏心しているので、めっき膜が隔膜支持部のパターンの形状を転写されることを抑制し、めっき膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0089】
[12]一形態によれば、前記複数の第1形状の開口からなる構造は、ハニカム構造である。
【0090】
この形態によれば、隔膜支持部は、撓みがより大きくなる可能性が高い隔膜の中央部において十分な強度で支持しつつ、より大きな開口面積を確保できる。即ち、隔膜の撓みを抑制しつつ、基板-アノード間の電場への影響を抑制することができる。
【0091】
[13]一形態によれば、前記複数の第2形状の開口は、前記ハニカム構造の最外周の頂点から前記外周部に連結される、放射状に延びる複数の梁の間に形成されている。
【0092】
この形態によれば、撓みが大きくなる可能性の低い隔膜の外周部近傍領域で、必要な支持の強度を確保しつつ、より大きな開口面積を確保できる。
【0093】
[14]一形態によれば、前記アノードは、複数の貫通孔を有する板状部材であり、前記隔膜の下面に密着して配置され、 前記アノードの下方に所定の距離をもって離間された裏面プレートを更に備え、 前記裏面プレートにより、前記アノードから発生するガスが前記アノードの下面において滞留する量を調整する。
【0094】
この形態によれば、アノード及び隔膜が互いに密着した構成であるため、アノード及び隔膜を統合したアノードホルダ組立体の高さ方向の寸法を抑制し、アノードホルダ組立体をコンパクトに構成することができる。
この形態によれば、アノードが隔膜に密着した構成であるため、アノードで発生したガスが隔膜とアノードとの間に溜まることを抑制又は防止し、アノードと基板との間の電場(電界)がガスによる影響を受けてめっき膜厚の均一性に影響を与えることを抑制又は防止できる。また、アノードの複数の貫通孔を通じて下面に滞留するガスの量を裏面プレートにより調整し、大量のガスが一時にアノード下面から離脱してアノード電圧が変動することを抑制又は防止できる。これにより、めっき膜の膜厚均一性が低下することを抑制又は防止できる。
【0095】
[15]一形態によれば、前記アノードホルダは、カソード液としてのめっき液を前記カソード室に供給するためのカソード液入口を有する。
【0096】
この形態によれば、カソード液入口をアノードホルダに設けるため、めっき槽の構成をよりコンパクトにすることができる。
【0097】
[16]一形態によれば、前記カソード液入口は、前記隔膜より下方に配置され、 前記アノードホルダには、前記隔膜より下方の前記カソード液入口に連通する入口と、前記隔膜の上方に開口する出口とを有するカソード液通路が設けられている。
【0098】
この形態によれば、カソード液入口が、隔膜より下方にあり、カソード室の最下部に位置するため、カソード室に残るカソード液の残液を最小限にすることができる。また、アノードホルダの下部からカソード液を導入し、隔膜の上方(カソード室)にカソード液を供給するため、アノードホルダ外周部の上部でめっき槽に対するシール面を形成することが容易になる。この構造によれば、簡易な構成でアノードホルダ外周部とめっき槽との間のシール面を形成し易く、アノード室の体積を十分に確保し易い。
【0099】
[17]一形態によれば、前記隔膜の上方に配置された可変アノードマスクを更に備える。
【0100】
この形態によれば、可変アノードマスクも引抜き自在のアノードホルダに一体化することができ、可変アノードマスクのメンテナンスが容易になる。
【0101】
[18]一形態によれば、めっき槽をアノード室とカソード室とに区画する方法であって、 アノード及び隔膜が取り付けられたアノードホルダであって、前記めっき槽内を外部からシールする1又は複数のシール面と、前記めっき槽内を上下の室に区画する1又は複数のシール面とを有する、アノードホルダを準備すること、 前記アノードホルダを前記めっき槽の側壁の開口を介して前記めっき槽に装着し、前記アノードホルダで前記めっき槽の前記開口を塞いで前記めっき槽内を外部からシールすると共に、前記隔膜の上下で前記めっき槽内を前記アノード室と前記カソード室とに区画すること、を含む方法が提供される。
【0102】
[A1]一形態によれば、めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記基板に対向して配置されるアノードと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、 前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を備え、 前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心は、前記基板ホルダの回転中心から偏心している、 めっき装置が提供される。
【0103】
この形態によれば、隔膜支持部のパターンの中心が基板の回転中心/回転中心軸から偏心しているので、めっき膜が隔膜支持部のパターンの形状を転写されることを抑制し、めっき膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0104】
[A2]一形態によれば、前記複数の第1形状の開口からなる構造は、ハニカム構造である。
【0105】
この形態によれば、隔膜支持部は、撓みがより大きくなる可能性が高い隔膜の中央部において十分な強度で支持しつつ、より大きな開口面積を確保できる。即ち、隔膜の撓みを抑制しつつ、基板-アノード間の電場への影響を抑制することができる。
【0106】
[A3]一形態によれば、前記複数の第2形状の開口は、前記ハニカム構造の最外周の頂点から前記隔膜支持部の外周部に連結される、放射状に延びる複数の梁の間に形成されている。
【0107】
この形態によれば、撓みが大きくなる可能性の低い隔膜の外周部近傍領域で、必要な支持の強度を確保しつつ、より大きな開口面積を確保できる。
【0108】
[A4]一形態によれば、前記アノードは、複数の貫通孔を有する板状部材であり、前記隔膜の下面に密着して配置され、 前記アノードの下方に所定の距離をもって離間された裏面プレートを更に備え、 前記裏面プレートにより、前記アノードから発生するガスが前記アノードの下面において滞留する量を調整する。
【0109】
この形態によれば、アノード及び隔膜が互いに密着した構成であるため、アノード及び隔膜を統合したアノードホルダ組立体の高さ方向の寸法を抑制し、アノードホルダ組立体をコンパクトに構成することができる。
この形態によれば、アノードが隔膜に密着した構成であるため、アノードで発生したガスが隔膜とアノードとの間に溜まることを抑制又は防止し、アノードと基板との間の電場(電界)がガスによる影響を受けてめっき膜厚の均一性に影響を与えることを抑制又は防止できる。また、アノードの複数の貫通孔を通じて下面に滞留するガスの量を裏面プレートにより調整し、大量のガスが一時にアノード下面から離脱してアノード電圧が変動することを抑制又は防止できる。これにより、めっき膜の膜厚均一性が低下することを抑制又は防止できる。
【0110】
[A5]一形態によれば、前記隔膜の上方に配置された可変アノードマスクを更に備える。
【0111】
この形態によれば、可変アノードマスクによりアノードの露出面積を調整することによる、めっき膜厚の膜厚均一性の向上も図れる。
【0112】
[A6]一形態によれば、 前記複数の第1形状の開口及び前記複数の第2形状の開口は、複数の梁によって規定されており、 少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する側で面取りが行われている。
【0113】
この形態によれば、隔膜のカソード室側に配置された梁の形状に面取りを設けることにより、梁の隔膜との接触面積を低減させ、カソード室における気泡残りを低減することができる。これにより、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を奏し得る。また、梁の下面にのみ面取りを設けることで、梁強度と気泡残りの低減を両立させることができる。
【0114】
[A7]一形態によれば、 前記複数の第1形状の開口を規定する前記梁において面取りが行われている。
【0115】
基板の投影に概ね対応する複数の第1形状の開口の領域で、気泡残りを効果的に低減することができ、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を奏し得る。
【0116】
[A8]一形態によれば、めっき液を保持するためのめっき槽と、 基板を保持する基板ホルダと、 前記基板に対向して配置されるアノードと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、 前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、表面及び裏面を有し、前記表面と前記裏面との間を貫通する複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する前記裏面側で面取りが行われている、隔膜支持部と、を備える、めっき装置が提供される。
隔膜支持部は、隔膜に対して基板側及び/又はアノード側に配置することができる。
【0117】
この形態によれば、隔膜支持部の梁において隔膜との接触側に面取りを設けることにより、梁の隔膜との接触面積を低減させ、めっき液中における気泡残りを低減することができる。これにより、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を奏し得る。また、梁の接触側にのみ面取りを設けることで、梁強度と気泡残りの低減を両立させることができる。
【0118】
[A9]被めっき面を下向きにして基板をめっきするめっき方法であって、 前記基板に対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、 前記基板の回転中心が、前記隔膜支持部の前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心から偏心した状態で、前記基板を回転しつつ前記基板をめっきする、めっき方法が提供される。
【0119】
この形態によれば、隔膜支持部のパターンの中心が基板の回転中心/回転中心軸から偏心しているので、めっき膜が隔膜支持部のパターンの形状を転写されることを抑制し、めっき膜の膜厚の均一性を向上させることができる。
【0120】
[A10]一形態によれば、基板をめっきするめっき方法であって、 前記基板に対向するアノードと、前記基板と前記アノードとの間に配置される隔膜と、前記隔膜を押さえる隔膜支持部であって、複数の開口を規定する複数の梁を有し、少なくとも一部の前記梁は、前記隔膜と接触する側で面取りが行われている隔膜支持部と、を有するめっき槽を準備し、 前記めっき槽を使用して前記基板をめっきする、めっき方法が提供される。
隔膜支持部は、隔膜に対して基板側及び/又はアノード側に配置することができる。
【0121】
この形態によれば、隔膜支持部の梁において隔膜との接触側に面取りを設けることにより、梁の隔膜との接触面積を低減させ、めっき液中における気泡残りを低減することができる。これにより、基板への気泡付着、部分的なめっきムラなど、めっき品質不具合を防止する効果を奏し得る。また、梁の接触側にのみ面取りを設けることで、梁強度と気泡残りの低減を両立させることができる。
【0122】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその均等物が含まれることはもちろんである。また、上述した課題の少なくとも一部を解決できる範囲、または、効果の少なくとも一部を奏する範囲において、実施形態および変形例の任意の組み合わせが可能であり、特許請求の範囲および明細書に記載された各構成要素の任意の組み合わせ、または、省略が可能である。
国際公開2003/079684号公報(特許文献1)、国際公開2023/188371号公報の明細書、特許請求の範囲、図面及び要約書を含む全ての開示は、参照により全体として本願に組み込まれる。
【符号の説明】
【0123】
6 アノードホルダ組立体
10 めっき槽
11 上部槽
12 下部槽
12A フランジ
12B 開口
12C アノード液入口
12D フランジ
20 基板ホルダ
30 パドル
40 抵抗体
50 隔膜
51 シール押さえリング
60 アノード
60A ボス
62 アノード固定板
400 めっきモジュール
610 アノードホルダ
613 底壁
614~617 側壁
614a 切り欠き
620 ホルダ本体
621 環状部
622 隔膜支持部
622A 梁
622B 梁
623 フランジ
640 前板
641 前板本体
642 枠部材
650 可変アノードマスク
651 ブレード
652 駆動部材
660 バスバー
670 駆動シャフト
671 連結部材
680 カソード液入口
681 カソード液通路
701~704 シール
701A~704A シール面
801~805 締結部材
804A スペーサ
810 隔膜押さえ
1000 めっき装置
Rm 外接円
Cm 外接円の中心
Cw 回転中心(回転中心軸)
Wf 基板
【要約】
基板とアノードとの間に配置される各部材の形状、移動等がめっき膜に転写されることを抑制ないし防止することにある。
めっき液を保持するためのめっき槽と、 被めっき面を下向きにして基板を保持する基板ホルダと、 前記基板に対向して配置されるアノードと、 前記基板と前記アノードとの間に配置された隔膜と、 前記隔膜の上面を押さえる隔膜支持部であって、複数の第1形状の開口と、該複数の第1形状の開口の外側に配置される複数の第2形状の開口とを有する隔膜支持部と、を備え、 前記複数の第1形状の開口を包含する外接円の中心は、前記基板ホルダの回転中心から偏心している、 めっき装置。