IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大陽日酸株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-サセプタ搬送機構 図1
  • 特許-サセプタ搬送機構 図2
  • 特許-サセプタ搬送機構 図3
  • 特許-サセプタ搬送機構 図4
  • 特許-サセプタ搬送機構 図5
  • 特許-サセプタ搬送機構 図6
  • 特許-サセプタ搬送機構 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】サセプタ搬送機構
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20241011BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021017128
(22)【出願日】2021-02-05
(65)【公開番号】P2022120312
(43)【公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 忍
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】実開平6-34251(JP,U)
【文献】特開2015-12083(JP,A)
【文献】特開2009-70915(JP,A)
【文献】特開2001-93969(JP,A)
【文献】実開平1-110486(JP,U)
【文献】特開2016-82138(JP,A)
【文献】特表2011-504658(JP,A)
【文献】特開2010-166008(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送治具を備え、収納容器の棚板に対してサセプタの取り出し又は収納動作を行うためのサセプタ搬送機構において、
前記棚板は、前記収納容器内に多段に配置されるとともに、各段のそれぞれに手前側端部から奥側へ向かって延びる切欠きが設けられ、
前記搬送治具は、上面に前記サセプタを支持する支持板と、該支持板の下面に設けられて前記切欠きに摺動自在に係合する凸部とを有し、
前記棚板と前記搬送治具との間には、互いに摺接する上下一組のスライド部が介在され、該スライド部は、前記切欠きの両側部に設けられた一対の棚板側スライド部と、前記凸部の両側部に設けられた一対の治具側スライド部とで構成され、
前記棚板側スライド部の摺接面は、手前側から奥側へ向かうにつれて徐々に低くなる勾配を有し、前記治具側スライド部の摺接面は、前記棚板側スライド部の摺接面と反対の勾配を有していることを特徴とするサセプタ搬送機構。
【請求項2】
多段に配置された前記棚板は、前記切欠きの終端部の位置が奥行き方向に全て揃えられていることを特徴とする請求項1記載のサセプタ搬送機構。
【請求項3】
多段に配置された前記棚板は、下段が上段よりも手前側に突出した段差部を有していることを特徴とする請求項1又は2記載のサセプタ搬送機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サセプタ搬送機構に関し、詳しくは、気相成長装置においてサセプタを搬送するためのサセプタ搬送機構に関する。
【背景技術】
【0002】
各種化合物半導体の薄膜を製造するための装置として、気相成長装置が知られている。薄膜の製造プロセスにおいては、気相成長装置内に、基板に対して処理を行うモジュールが複数設けられ、これらモジュール間をロボットアームと呼ばれる基板搬送装置を作動させて基板を順次搬送することにより、所定の処理が行われている。ロボットアームには、先端部に載置した基板を解放可能に保持するために、吸着機構や把持機構からなる保持手段を備えている。これにより、ロボットアームの動作を制御することで、収納カセットに収納された複数の基板を順次取り出すことが可能になっている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-201556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
気相成長では、装置用治具である円盤状のサセプタに基板を載置して行われるが、収納カセットからサセプタを取り出して、これをチャンバーへ搬送する場合、サセプタが収納カセットの定位置に正確に配置されている必要がある。しかしながら、収納カセットは使い勝手を考慮して間口(空間)が設定されていることから、サセプタを出し入れする際に位置ずれや傾きが生じやすいという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、複雑な動作を必要とすることなく、収納容器に対してサセプタの設置・回収を正確に行うことができるサセプタ搬送機構を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明のサセプタ搬送機構は、搬送治具を備え、収納容器の棚板に対してサセプタの取り出し又は収納動作を行うためのサセプタ搬送機構において、前記棚板は、前記収納容器内に多段に配置されるとともに、各段のそれぞれに手前側端部から奥側へ向かって延びる切欠きが設けられ、前記搬送治具は、上面に前記サセプタを支持する支持板と、該支持板の下面に設けられて前記切欠きに摺動自在に係合する凸部とを有し、前記棚板と前記搬送治具との間には、互いに摺接する上下一組のスライド部が介在され、該スライド部は、前記切欠きの両側部に設けられた一対の棚板側スライド部と、前記凸部の両側部に設けられた一対の治具側スライド部とで構成され、前記棚板側スライド部の摺接面は、手前側から奥側へ向かうにつれて徐々に低くなる勾配を有し、前記治具側スライド部の摺接面は、前記棚板側スライド部の摺接面と反対の勾配を有していることを特徴としている。
【0007】
また、多段に配置された前記棚板は、前記切欠きの終端部の位置が奥行き方向に全て揃えられ、さらに、下段が上段よりも手前側に突出した段差部を有していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サセプタ搬送機構として、サセプタの支持板に凸部を備えた搬送治具を採用し、収納容器の棚板に搬送治具の凸部を摺動自在に係合させる切欠きを設けているので、ひとたび搬送治具と棚板とが掛かり合えば、搬送治具の位置が横にずれてしまうことはなく、あとは搬送治具を押し進めるだけの簡単な動作で凸部を切欠きの終端部に係止すること、すなわち、サセプタを収納容器の定位置に設置することができる。
【0009】
しかも、棚板と搬送治具との間に介在されるスライド部のうちの棚板側スライド部が、手前側から奥側へ向かう下り勾配の摺接面を有しているので、棚板に保持したサセプタの静止状態が安定するとともに、サセプタの設置時及び回収時のいずれにおいても、移動の途中で搬送治具の向きが横に傾くことを防ぎ、サセプタの搬送を精度よく安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一形態例を示すサセプタ搬送機構の要部平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】同じく搬送治具を支持板の下面側から見た図である。
図4図3のIV-IV断面図である。
図5】同じく搬送治具で支持したサセプタを収納容器に収納する説明図である。
図6】同じく搬送治具で支持したサセプタを収納容器から取り出す説明図である。
図7】同じく収納状態のサセプタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至図7は、本発明のサセプタ搬送機構の一形態例を示すものである。サセプタ搬送機構11は、半導体薄膜を成膜する気相成長装置の一要素であって、図7に示すように、基板載置部12aを有する円盤状のサセプタ12と、該サセプタ12を収納するための収納容器(収納カセット)13と、該収納容器13の棚板14に対してサセプタ12の取り出し又は収納動作を行うための搬送治具15と、棚板14と搬送治具15との間に介在されるスライド部(摺動部材)16とを備えている。
【0012】
収納容器13は、図1及び図2にも示すように、容器本体(図示せず)の内部に複数のサセプタ12を上下多段状に収納可能な程度の大きさで、高さ、幅及び奥行きの各寸法が設定されている。各段に配置される棚板14は、サセプタ12を搬送治具15により支持状態のまま保持し、幅方向(図1の上下方向)の中央部において、サセプタ12の出し入れ口のある手前側(図1において右側)端部から奥側(図1において左側)へ向かって延びる切欠き14aが設けられている。切欠き14aは、搬送治具15の一部(凸部20)を摺動自在に係合させる幅寸法と、その係合状態を保ちつつ収納空間内にサセプタ12全体が収まる程度に深く切り欠いた長さ寸法とを有している。
【0013】
こうした各段の棚板14には、サセプタ12の収納性の観点から、棚板14同士の間に一定の上下間隔が設けられるとともに、切欠き14aの終端部17の位置が奥行き方向に垂直な同一平面上に全て揃えられている(図2)。また、各棚板14は、下段が上段よりも手前側(図2において右側)に突出した段差部18を有し、サセプタ12の設置や回収動作を行う際の操作性が確保されている。
【0014】
搬送治具15は、図3及び図4にも示すように、上面にサセプタ12を支持する支持板19と、該支持板19の下面に設けられて棚板14の切欠き14aに摺動自在に係合する凸部20とを有している。支持板19は、サセプタ12のサイズに対応した円形の支持板本体19aと、該支持板本体19aの外縁部から径方向に延びて設けられたアーム部(把持部)19bとからなる。また、支持板本体19aの上面外縁部には、サセプタ12を同心に固定するための係止片19cが周方向の複数箇所に設けられている。
【0015】
前記凸部20は、支持板本体19aの下面中央部に配置され、棚板14の切欠き14aの幅と同じ2面幅をもつブロック体(四角柱)であって、角部分が丸みを帯びた形状となっている。これにより、凸部20を切欠き14aに挿入して嵌め合わせると、棚板14上において搬送治具15の幅方向の位置が確定される。
【0016】
ところで、搬送用ロボットを使用してサセプタ12を収納容器13からチャンバー(反応炉)へ搬送するためには、サセプタ12は収納容器13に対して常に正確な位置にあることが求められる。そこで、棚板14と搬送治具15との間には、互いに摺接する上下一組のスライド部16が介在され、これによりサセプタ12の設置が容易かつ正確に行えるようになっている。
【0017】
スライド部16は、例えば、強度のある樹脂製の板状部材であって取付対象にねじ止めされるもので、棚板14の上面において切欠き14aの幅方向両側部に設けられた一対の棚板側スライド部21,21と、搬送治具15における支持板本体19aの下面において凸部20の幅方向両側部に設けられた一対の治具側スライド部22,22とで構成されている。
【0018】
上下各スライド部21,22は、図7にも示すように、奥行き方向に厚みを変化させて形成した傾斜状の摺接面21a,22aを有し、両スライド部21,22を重ね合わせた状態で、棚板14及び搬送治具15の板面同士を平行に保持することが可能である。具体的には、棚板側スライド部21の摺接面21aは、手前側から奥側へ向かうにつれて徐々に低くなる勾配を有している。一方、治具側スライド部22の摺接面22aは、棚板側スライド部21の摺接面21aと反対の勾配、すなわち、棚板側スライド部21の下り勾配と同角度で逆向きの勾配を有している。
【0019】
このように形成されたサセプタ搬送機構11を用いて、サセプタ12を収納容器13の棚板14に設置するためには、サセプタ12を搬送治具15により支持した片持ち状態で、図5に示すように、搬送治具15の凸部20を棚板14の切欠き14aに挿入する。このとき、棚板側スライド部21と治具側スライド部22との先端部同士を掛かり合わせることで、両者の摺接面21a,22a同士が当接した状態となる。この当接状態では、サセプタ12の重量が搬送治具15を介して棚板14に預けられているので、搬送治具15のアーム部19bには、図5の矢印で示す押込み方向の力のみを作用させることが可能になる。
【0020】
ここで、治具側スライド部22を棚板側スライド部21上で滑らせながら搬送治具15を押し進めると、搬送治具15の凸部20は、図6に示すように、棚板14の切欠き14aにガイドされながら手前側から奥側へと直線的に移動し、切欠き14aの最も奥の部分に至って終端部17に係止される。すなわち、サセプタ12を搬送治具15と共に収納容器13の開口部に差し込み、搬送治具15のアーム部19bを押すと、これらは棚板14を緩やかに下りながら移動し、搬送治具15の凸部20が切欠き14aの終端部17に当接した時点で、収納容器13内の定位置(収納位置)に位置決めされて設置状態となる。
【0021】
一方、サセプタ12を収納容器13の棚板14から回収するためには、搬送治具15のアーム部19bを把持し、図6の矢印で示す引出し方向の力を作用させる。これにより、サセプタ12は、設置時と逆の手順に従って奥側から手前側へと直線的に移動して、収納容器13から円滑に引き出される。
【0022】
このように、本発明によれば、サセプタ搬送機構11として、サセプタ12の支持板19に凸部20を備えた搬送治具15を採用し、収納容器13の棚板14に搬送治具15の凸部20を摺動自在に係合させる切欠き14aを設けているので、ひとたび搬送治具15と棚板14とが掛かり合えば、搬送治具15の位置が横(幅方向)にずれてしまうことはなく、あとは搬送治具15を押し進めるだけの簡単な動作で凸部20を切欠き14aの終端部17に係止すること、すなわち、サセプタ12を収納容器13の定位置に設置することができる。
【0023】
しかも、棚板14と搬送治具15との間に介在されるスライド部16のうちの棚板側スライド部21が、手前側から奥側へ向かう下り勾配の摺接面21aを有しているので、棚板14に保持したサセプタ12の静止状態が安定するとともに、サセプタ12の設置時及び回収時のいずれにおいても、移動の途中で搬送治具15の向きが横に傾くことを防ぎ、サセプタ12の搬送を精度よく安定して行うことができる。
【0024】
また、多段に配置された棚板14において、切欠き14aの終端部17の位置を奥行き方向に全て揃えているので、サセプタ12を順に取り出すときに、連続した動作が安定的に行え、しかも、下段が上段よりも手前側に突出した段差部18を有しているので、搬送治具15が棚板14の各段に置きやすくなり、サセプタ12の設置や回収動作を行う際の操作性の向上に寄与するものである。
【0025】
さらに、棚板14上の搬送治具15に水平方向の力を与えるだけでサセプタ12を移動させることができるため、棚板14同士の上下間隔を必要最小限に狭くしても、サセプタ12の位置決めを含む設置・回収作業が容易に行え、こうした作業に従事するオペレータの作業負担軽減を図ることができる。しかも、製作の観点では、収納容器13の仮組立て時において上下各棚板14の切欠き14aの位置が揃えばよいので、治具設計が容易となり、収納容器13のコストアップを抑えることもできる。
【0026】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、サセプタ搬送は、未処理の基板に対して行う場合のみならず、成膜がなされた処理済の基板に対して行う場合にも適用することができる。また、サセプタ搬送機構は、これに用いられる搬送治具や棚板、スライド部などの各構成部品をサセプタのサイズに応じて適宜に変更することができ、例えば、棚板の段数を増大して、搬送効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0027】
11…サセプタ搬送機構、12…サセプタ、12a…基板載置部、13…収納容器、14…棚板、14a…切欠き、15…搬送治具、16…スライド部、17…終端部、18…段差部、19…支持板、19a…支持板本体、19b…アーム部、19c…係止片、20…凸部、21…棚板側スライド部、21a…摺接面、22…治具側スライド部、22a…摺接面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7