IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20241011BHJP
   G01N 35/00 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G01N35/10 C
G01N35/00 C
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022553440
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007440
(87)【国際公開番号】W WO2022070459
(87)【国際公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2020162911
(32)【優先日】2020-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】南 礼孝
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/198400(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/198493(WO,A1)
【文献】特開2008-190959(JP,A)
【文献】国際公開第2009/031503(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/055929(WO,A1)
【文献】特開2012-007998(JP,A)
【文献】国際公開第2008/035777(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
G01N 33/48-33/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動分析装置であって、
システム試薬容器が設置される設置板と、
前記システム試薬容器から試薬を吸引する液体吸引部と、
前記液体吸引部が結合され、試薬容器交換位置と試薬吸引位置との間で移動可能な支持部と、
前記支持部を昇降動作させる昇降機構と、
第1の条件を満たすとき、前記支持部を試薬容器交換位置へと上昇させ、第2の条件を満たすとき、前記支持部を試薬吸引位置に下降させるよう前記昇降機構を制御する制御部と、を備え、
前記第1の条件は、前記設置板に設置された前記システム試薬容器内の残存液量が規定値以下となったことであり、
前記第2の条件は、前記設置板に設置された複数の前記システム試薬容器の内容物が正常なものであり、あらかじめ定められた所定の位置に設置されていることである、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項2】
請求項1記載の自動分析装置であって、
前記設置板には複数の前記システム試薬容器が設置可能であり、
前記液体吸引部は、対応する前記システム試薬容器の各々に挿入される、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項3】
請求項1記載の自動分析装置であって、
複数の前記システム試薬容器に対応する液体検知器を備え、
前記制御部は、個々の前記液体検知器から得られた検知情報に基づき、前記システム試薬容器内の残量を判断する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項4】
請求項1記載の自動分析装置であって、
情報読取り器を備え、前記システム試薬容器には収容する試薬に関する情報を内包する情報格納手段が付与されており、
前記情報読取り器は、前記システム試薬容器が前記設置板に設置された状態で、前記情報格納手段に記憶された前記システム試薬容器に収容されている試薬に関する情報を読み取り、前記制御部は、前記情報読取り器により読み取られた前記情報に基づき、前記第2の条件を満たすか否かを判定する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項5】
請求項1記載の自動分析装置であって、
複数の前記システム試薬容器に対応する液体検知器を備え、
前記制御部は、前記システム試薬容器の設置時に前記液体検知器の出力により、液体が封入された前記システム試薬容器の設置状態を判別し、前記第2の条件を満たすか否かを判定する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項6】
請求項記載の自動分析装置であって、
前記液体検知器をアクティブにする信号を発生させる信号発生器を備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項7】
請求項記載の自動分析装置であって、
前記制御部は、前記液体検知器の検知情報に基づく、前記システム試薬容器内の残量判断の後、前記システム試薬容器の情報読取を開始するよう制御する、
ことを特徴とする自動分析装置。
【請求項8】
請求項1記載の自動分析装置であって、
電力供給が停止された場合に、複数の停止位置で前記昇降機構と勘合し、前記昇降機構が下降動作を行わないようにロックするロック機構と、電力が供給された状態で、前記昇降機構と前記ロック機構との嵌合を解除可能なロック解除機構と、を備える、
ことを特徴とする自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液や尿などの生体検体の定性・定量分析を行う自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿等の生体試料に含まれる特定の成分の定性、定量分析を行う。一般的な動作としては、試料を専用ノズルによって試料容器から反応容器へ分注した後、試薬を試薬容器から反応容器に専用ノズルによって分注し、撹拌を行った後に、一定時間反応させ、反応液から得られる吸光度や発光量などの情報から目的とする項目の濃度演算を行っている。このような自動分析装置においては、正確な測定を行うために検体と試薬を反応させる容器や、検体および試薬を吸引するノズルを適切なタイミングで洗剤により洗浄する必要がある。
【0003】
自動分析装置では、主にアルカリ洗剤や酸性洗剤といったシステム試薬が消耗品として使用されており、その交換作業は一般に作業者により手動で行われている。また、自動分析装置ではこれらの試薬容器それぞれに対し専用の吸引ノズルを備えていることが多く、装置上にシステム試薬が載置されている間は、常に専用の吸引ノズルと試薬とが接液している状態となっていることが一般的である。交換作業は、この専用ノズルを容器から別離させ、試薬容器を交換し、専用ノズルをそれぞれの試薬容器内に再度配置するところまでが一連の作業となる。
【0004】
近年では検体検査の需要が高まり、上記の自動分析装置が使用される場面が多い。需要が増加する一方で、多くの医療機関や検査機関において、検査の質の向上やコスト削減が掲げられ、より少ない労力で効率的に作業を行うことが求められている。こういった中で、上記した試薬容器交換作業はメンテナンス回数が多いことから、作業者の負担やミス発生の原因となることが考えられている。
【0005】
特許文献1では、試薬のコンタミネーション防止の措置として、試薬容器にRFIDのような情報記憶媒体を付し、分析装置にはその情報を読み取る情報読取部を備えることで、作業者に間違った試薬や、残量が不足している試薬、有効期限が切れている試薬であることを作業者に通知する機能を備えた検体分析装置が開示されている。さらに、特許文献1では装置電源の投入状態にかかわらず、吸引ノズルをロックするように制御する機構及びその制御部を備えることで作業者による専用ノズルの接液間違いの防止措置が図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開番号WO2019/198400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の分析装置においては、試薬容器交換作業における、試薬容器へのノズルの出し入れ作業は手動で行われている。手動で試薬容器交換作業が実施できれば、駆動源を必要としないため機構を簡易化することができる利点がある。その一方で、手動でノズル支持部を昇降させるため、交換時にノズルに触れてしまい、作業者の手や装置または試薬同士を汚染したり、交換時にノズルを曲げたりするおそれがある。これらの結果として、正しい測定結果が得られなくなったり、消耗品である試薬が使用不可能になったり、装置の試薬流路の洗浄が必要になったり、といった問題が生じるおそれがある。したがって、試薬交換作業時において、作業者はノズル付近に触れることなく、ノズルの昇降が可能な機構を有していることが望ましい。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、作業者が手動で洗剤・試薬交換作業を行う際に発生しうる題を解決すると共に作業者の作業負担を軽減する自動分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明においては、システム試薬容器が設置される設置板と、システム試薬容器から試薬を吸引する液体吸引部と、液体吸引部が結合され、試薬容器交換位置と試薬吸引位置との間で移動可能な支持部と、支持部を昇降動作させる昇降機構と、第1の条件を満たすとき、支持部を試薬容器交換位置へと上昇させ、第2の条件を満たすとき、支持部を試薬吸引位置に下降させるよう昇降機構を制御する制御部と、を備え、第1の条件は、設置板に設置されたシステム試薬容器内の残存液量が規定値以下となったことであり、第2の条件は、設置板に設置された複数のシステム試薬容器の内容物が正常なものであり、あらかじめ定められた所定の位置に設置されていることである、自動分析装置を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、システム試薬容器の交換作業時において、作業者の作業負担を軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】各実施例に係る、自動分析装置の全体概略図。
図2】各実施例に係る、システム試薬供給機構の概略図。
図3A】実施例1に係る、システム試薬容器設置部であり、吸引ノズルが試薬吸引位置にある状態を示す図。
図3B】実施例1に係る、システム試薬容器設置部であり、吸引ノズルが試薬交換位置にある状態を示す図。
図3C】実施例1に係る、システム試薬容器設置部の鳥瞰図。
図4】実施例1に係る、ロック機構とロック解除機構の第1の構成例を示す図。
図5A】実施例1に係る、ノズル支持部がロック機構によりロックされた状態を示す図。
図5B】実施例1に係る、ノズル支持部がロック解除機構によりロック解除された状態を示す図。
図6A】実施例1に係る、装置電源投入時状態における試薬容器交換フロー例を示す図。
図6B】実施例1に係る、装置電源遮断時状態における試薬容器交換フロー例を示す図。
図7A】実施例2に係る、ロック機構とロック解除機構であり、ノズル支持部がロック解除機構によりロック解除された状態を示す図。
図7B】実施例2に係る、ロック機構とロック解除機構であり、ノズル支持部がロック機構により上限点にてロックされた状態を示す図。
図8】実施例2に係る、ロック機構とロック解除機構であり、ノズル支持部がロック機構により上限点以外でロックされた状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の種々の実施の形態を図面に従い説明する。すなわち、システム試薬容器が設置される設置板と、システム試薬容器から試薬を吸引する液体吸引部と、液体吸引部が結合され、試薬容器交換位置と試薬吸引位置との間で移動可能な支持部と、支持部を昇降動作させる昇降機構と、第1の条件を満たすとき、支持部を試薬容器交換位置へと上昇させ、第2の条件を満たすとき、支持部を試薬吸引位置に下降させるよう昇降機構を制御する制御部と、を備える自動分析装置の実施の形態である。以下の実施の形態において、その構成要素、要素ステップ等は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。
【0013】
ここで、第1の条件とは、設置板に設置されたシステム試薬容器内の残存液量が規定値以下となったことであり、第2の条件とは、設置板に設置された複数のシステム試薬容器の内容物が正常なものであり、あらかじめ定められた所定の位置に設置されていることである。
【0014】
図1は自動分析装置の全体概略図である。自動分析装置100は、反応容器102内で化学反応させた反応液を測定して成分分析を行うための装置である。この自動分析装置100は、主要な構成として、反応ディスク101、洗浄機構103、分光光度計104、撹拌機構105、洗浄槽106、試薬分注機構107a、試薬分注プローブ107b、試薬分注プローブ洗浄槽108、試薬ディスク109、試料分注機構111a、試料分注プローブ111b、試料分注プローブ洗浄槽113、試料搬送機構116、操作部117、を有している。
【0015】
反応ディスク101には、反応容器102が円周状に配置されている。反応容器102は試料と試薬とを混合させた混合液を収容するための容器であり、反応ディスク101上に複数並べられている。反応ディスク101の近くには、試料容器114を搭載した試料ラック115を搬送する試料搬送機構116が配置されている。
【0016】
反応ディスク101と試料搬送機構116との間には、回転及び上下動可能な試料分注機構111aが配置されており、各々試料分注プローブ111bを備えている。試料分注プローブ111bは回転軸を中心に円弧を描きながら水平移動し、上下移動して試料容器114から反応容器102への試料分注を行う。
【0017】
試薬ディスク109は、その中に試薬を収容した試薬ボトル110や洗剤ボトル112等が複数個円周上に載置可能となっている保管庫である。試薬ディスク109は保冷されている。
【0018】
反応ディスク101と試薬ディスク109の間には、回転及び上下動が可能な試薬分注機構107a、が設置されており、それぞれ試薬分注プローブ107bを備えている。試薬分注プローブ107bは、上下および水平移動が行われる。試薬分注機構107aは、試薬分注プローブ107bを介して試薬ボトル110、洗剤ボトル112、希釈液ボトル、前処理用試薬ボトル等から吸引した試薬、洗剤、希釈液、前処理用試薬等を反応容器102に分注する。
【0019】
反応ディスク101の周囲には、反応容器102内部を洗浄する洗浄機構103、反応容器102内の混合液を通過した光の吸光度を測定するための分光光度計104、反応容器102へ分注した試料と試薬とを混合する撹拌機構105等が配置されている。
【0020】
また、試薬分注機構107aの動作範囲上に、試薬分注プローブ107b用の洗浄槽108が、試料分注機構111aの動作範囲上に、試料分注プローブ111b用の洗浄槽113が、撹拌機構105の動作範囲上に、撹拌機構105用の洗浄槽106が、それぞれ配置されている。また、撹拌機構105による反応液攪拌が液非接触式であった場合、洗浄槽106は必ずしも必要ではない。
【0021】
各機構は操作部117に接続され、操作部117によりその動作が制御されている。このように、操作部117は後で説明する制御部として機能する。この操作部117は、コンピュータ等から構成され、自動分析装置内の上述した各機構の動作を制御するとともに、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求める演算処理を行う。また、演算処理や各種操作の結果を画面に表示する役割も担う。
【0022】
上述のような自動分析装置100による検査試料の分析処理は、以下の順に従い実行される。まず、試料搬送機構116によって反応ディスク101近くに搬送された試料ラック115の上に載置された試料容器114内の試料を、試料分注機構111aの試料分注プローブ111bにより反応ディスク101上の反応容器102へと分注する。次に、分析に使用する試薬を、試薬ディスク109上の試薬ボトル110から試薬分注機構107aの試薬分注プローブ107bにより、先に試料を分注した反応容器102に対して分注する。続いて、撹拌機構105で反応容器102内の試料と試薬との混合液の撹拌を行う。
【0023】
その後、光源から発生させた光を混合液の入った反応容器102を透過させ、透過光の吸光度を分光光度計104により測定する。分光光度計104により測定された吸光度を、A/Dコンバータ及びインターフェイスを介して操作部117に送信する。そして操作部117によって演算を行い、血液や尿等の液体試料中の所定の成分の濃度を求め、結果を操作部117の表示部等に表示させる。
【0024】
また、洗浄工程で使用されるシステム試薬を収容したシステム試薬容器を装置の作業面以下に設置可能となっている。システム試薬の送液は、システム試薬供給機構200により行われる。
【0025】
図2にシステム試薬供給部の全体概略図を示す。システム試薬供給機構200は、システム試薬容器201、システム試薬容器から試薬を吸引するノズル202、気泡検知器203、電磁弁、送液機構、希釈部を含み、各洗浄工程に必要なシステム試薬を供給する。測定を行う場合には、反応容器や試料分注プローブを洗浄するために、システム試薬としてアルカリ性洗剤が使用される。図2では、試薬設置部にシステム試薬容器201がセットざれた状態を示している。同図に示すように、複数のシステム試薬容器201が設置板上に設置可能であり、液体吸引部のノズル202は、対応するシステム試薬容器201の各々に挿入される、
システム試薬容器201は、気泡検知機を介して洗浄機構103および試料分注プローブ洗浄槽113に接続されている。ボトルが複数設置される場合、例えば、図2のように2本設置された場合、電磁弁209、210を制御することで、使用ボトルが切替る構成をとる場合がある。これは、システム試薬容器が空になった場合、試薬の供給源となる容器を切り替えることで、装置を継続して運用可能とするために設けられているものである。
【0026】
試薬の供給機構について、送液機構204、給水ポンプ205、真空ポンプ206、真空タンク207、真空ビン208、電磁弁209、210、211、212、213、214、215、216、217を含み、反応容器102および試料分注プローブ洗浄槽113への送液動作を担う。例えば、試料分注プローブ洗浄槽113に対しては、送液機構204および電磁弁211の動作により試薬の送液が実施される。反応容器102に対しては、電磁弁212、213、214が開放されたとき、真空ビン208の負圧力をもって試薬が洗剤希釈部218へと吸引され、その後、電磁弁212、213、214が閉じ、電磁弁216、217が開放されることで、水で希釈された試薬が水圧により供給される。
【実施例1】
【0027】
実施例1は、上述した自動分析装置のシステム試薬供給部のシステム試薬容器設置部の構成の実施例である。
【0028】
図3A図3B図3Cを用いて、本実施例のシステム試薬容器設置部の一構成例について説明する。システム試薬容器設置部は、装置で使用されるシステム試薬容器が設置される設置板、システム試薬容器から試薬を吸引する液体吸引部、液体吸引部が結合され、試薬容器交換位置と試薬吸引位置との間で移動可能な支持部と、支持部を昇降動作させる昇降機構とを含む。
【0029】
図3Aに示すシステム試薬容器設置部には、設置板を構成する基板301上にシステム試薬容器架台307が設けられている。吸引ノズル202は、ハンドル305、及びシステム試薬容器架台307から昇降可能なノズル支持部306に結合されている。また、システム試薬容器設置部には制御部309および電源装置310が接続されており、動作に電力および制御が必要となる昇降機構308、RFIDリーダライタ303、液体検知器304に電力を供給する。電源装置310は、分析装置が外部電源から電力供給を受けるときにはシステム試薬容器設置部に電力を供給し、分析装置が外部電源から電力供給を受けないときにはシステム試薬容器設置部への電力供給は行えない。同図では、ノズル支持部306が試薬容器架台307に収容された状態を示している。なお、制御部309および電源装置310は図1の操作部117に対応する。液体検知器304は、複数のシステム試薬容器各々に対応し、制御部309は、個々の液体検知器304から得られた検知情報に基づき、システム試薬容器内の残量を判断する。
【0030】
図3Bに、本実施例のシステム試薬容器設置部のノズル支持部306が試薬交換位置で停止している状態を示す。装置電源が投入されている間は、液体検知器304が、システム試薬容器201内の残液量が少ないと判断した場合、吸引ノズル支持部306が昇降機構308によって上限点まで持ち上げられる。この位置をシステム試薬交換位置という。このとき、上述の通り吸引ノズル支持部306が昇降機構308によって引き上げられるため、作業者はハンドル305及び吸引ノズル202に触れることなく、システム試薬容器201から吸引ノズル202を離脱させることができる。
【0031】
吸引ノズル202は、システム試薬容器201の載置位置に対して、ノズル先端位置がずれないように固定された、金属製のパイプで構成することが望ましい。これにより、吸引ノズル202を柔軟な樹脂製のパイプとした場合に想定される、吸引ノズル202の昇降動作に伴う吸引ノズル202先端の振れにより試薬が周囲に飛散することを防止することができる。一方、吸引ノズル202のハンドル305側の端部は、図示しない配管と接続され、吸引ノズル202を装置の流路に接続する。吸引ノズル202端部に接続される配管は柔軟な樹脂製のパイプとすることで、ノズル支持部306の昇降を容易にすることができる。
【0032】
また、ノズル支持部306がシステム試薬交換位置にある状態において、吸引ノズル202先端とシステム試薬容器201の開口部との間に所定の距離εを有するようにすることが望ましい。これにより、作業者はシステム試薬容器201の交換にあたってシステム試薬容器201と吸引ノズル202先端とをぶつけたり、システム試薬容器201を傾けて試薬容器設置部に載置したりしなくて済むことから、交換時におけるシステム試薬容器201からの試薬のこぼれや、吸引ノズル202先端からの試薬の飛散等の発生リスクを抑制できる。
【0033】
図3Cにシステム試薬容器が2個の場合のシステム試薬設置部の外観模式図を示す。昇降機構308は、モータ308aとプーリ308b、308cと、ベルト308dがノズル支持部に接合されており、モータを駆動させることでノズル支持部を上下方向に移動させることができる。この昇降機構の構成は一例であり、たとえば、ボールねじとステージを用いたり、歯車とチェーンを用いたりして昇降動作を行ってもよい。
【0034】
昇降機構308を用いるうえで、装置電源が投入されている間は昇降機構308の駆動部自身の保持力によりノズル支持部306が自重で下降することはない。一方、装置電源が投入されていない状況下においては、自重によりノズル支持部306が下降するおそれがあり、ロックする機構が必要となる場合がある。
【0035】
図4に本実施例のノズル支持部のロック機構401とロック解除機構402の構成例を示す。ロック機構401は固定側ベース501と可動側ベース502とを有し、固定側ベース501と可動側ベース502との間には、ばね504が設けられている。また、可動側ベース502のばね504が設けられた面と対向する面にはベアリング503が接続されている。ロック解除機構402はソレノイド511を有し、ソレノイド511は可動側ベース502に接続されている。
【0036】
図4の(a)平常時では、ソレノイド511はオフとなり、ベアリング503はノズル支持部306のガイド部306aに接している。このとき、ばね504が圧縮されることにより、ばね504の弾性力によりベアリング503はガイド部306aに押し付けられている。
【0037】
同図の(b)ロック時の試薬容器設置部は図5Aに示す状態である。ロック時においてもソレノイド511はオフとされている。方向521にノズル支持部306が持ち上げられることにより、ベアリング503はノズル支持部306に設けられたロック用凹部306bと嵌合される。これにより、ノズル支持部306は自重下降しないようロックされる。このとき、ばね504の長さは自然長近傍の長さとなる。
【0038】
このように、装置に電源が投入されている、いないにかかわらず、ばねの弾性力を用いることにより、ノズル支持部306を持ち上げて吸引ノズル202をシステム試薬容器201から引き出し、その状態でロックすることが可能になる。なお、ばねに限らず弾性体を用いることができ、またその作動に電力を必要としない限りにおいて、他の機械的な作用によりノズル支持部306をロックするようにしてもよい。
【0039】
同図の(c)ロック解除時の試薬容器設置部は図5Bの状態である。ソレノイド511がオンとされ、ベアリング503及び可動側ベース502を方向522にひきつける。これにより、ベアリング503がロック用凹部306bから引き抜かれ、方向523にノズル支持部306は下降する。所定時間後にソレノイド511がオフとされ、ベアリング503はノズル支持部306のガイド部306aに接するようになる。ノズル支持部306が下降しきったところで、平常時の状態に戻る。
【0040】
ソレノイド511を動作させるためには、ソレノイド511に電力が供給され、制御部309よりソレノイド511をオンする制御がなされる必要がある。これにより、ノズル支持部306のロックを解除し、吸引ノズル202をシステム試薬容器に挿入するには、装置の電源が供給されていなければならないことになる。なお、ロック解除動作が制御部309により制御される限りにおいて、ロック解除機構402は別の作用によりノズル支持部306のロックを解除するようにしてもよい。例えば、ばねの弾性力に勝る空圧によりロックを解除するようにしてもよい。
【0041】
さらに、システム試薬容器201には、図3Aに示したように、試薬の種別、オペレーションが実行可能な残り回数、有効期限、ロット番号などの試薬に関する情報が格納されたRFIDタグ302が付されている。RFIDタグ302と情報をやり取りするため、システム試薬容器架台307には、システム試薬容器が載置された状態で、対向する位置にRFIDリーダライタ303が設けられている。また、システム試薬容器載置位置に液体があることを検知する液体検知器304が設けられている。液体検知器304は例えば、光軸が容器を通過するように設置された光源と受光部を有する。光源から容器を透過し、受光部に到達した光量によって液体の有無を検出器が検出する。容器を透過した光量が指定した値以上となったとき、指定した残量以下となったと判断される。これにより設置されたシステム試薬容器に液体が充填されていることを判定する。なお、RFIDタグ302とRFIDリーダライタ303は一例であり、収容する試薬に関する情報を記憶する情報記憶媒体がシステム試薬容器201に貼付され、システム試薬容器設置部に設置された情報読取り器により、当該情報記憶媒体に記憶された、収容する試薬に関する情報を読み出すことができれば良い。
【0042】
すなわち、本実施例の自動分析装置は、RFIDリーダライタ303などの情報読取り器を備え、システム試薬容器には収容する試薬に関する情報を内包する情報格納手段が付与されており、情報読取り器は、システム試薬容器が設置板に設置された状態で、情報媒体に記憶されたシステム試薬容器に収容されている試薬に関する情報を読み取り、制御部309は、情報読取り器により読み取られた情報に基づき、第2の条件を満たすか否かを判定する。
【0043】
次に、図6Aを用いて、装置電源が投入された状態におけるシステム試薬容器交換フローについて説明する。電源が投入された(S601)のち、作業者が操作部で入力した分析作業指示をもとに、分析オペレーションが実行される(S602)。オペレーションの実行中、上述したように、液体検知器304の検知情報より、使用中のシステム試薬容器201内の残液量がなくなったと判断された場合(S603)、昇降機構308によりノズル支持部306が持ち上げられ(S604)、試薬交換位置において停止する。システム試薬容器201が複数設置されていた場合は、前述したノズル上昇動作の開始と同時に、制御部309からの指令により電磁弁が制御され、使用する容器の切り替えが行われる(S605)。これにより、システム試薬が供給される状態が維持されるため、オペレーションを継続することが可能となる。
【0044】
次に、作業者はシステム試薬容器201を設置部から離脱させる(S606)。次に、作業者はあらためてシステム試薬容器設置部に新しいシステム試薬容器201を載置し(S607)、このときに新しいシステム試薬容器201を設置した旨を伝達する信号を制御部309へ発信する(S608)。信号の発信方法は例えば、図示を省略した反射型センサや重量センサなどを設置しその検知情報をもとに発信してもよいし、作業者が手動でボタン押下や操作画面からの入力により手動で発信する形式をとってもよい。液体検知器304は、発信された信号をトリガとして新しい試薬容器内の液体の検知を行う(S609)。すなわち、本実施例の自動分析装置は、液体検知器304をアクティブにする信号を発生させるための信号発生器を備えている。
【0045】
液体検知器304の検知情報より、システム試薬容器内に液体が充填されていると判断された場合、RFIDリーダライタ303は、液体検知器304による液体の検知(正常)をトリガとして、システム試薬容器201のRFIDタグ302の情報読取を開始する(S610)。このように、液体検知器304の検知の後、RFIDリーダライタ303での検知を行うことにより、無駄なRFIDリーダライタ検知を防ぐことができる。
【0046】
制御部309は、RFID情報が正常かどうかを判断する。判定内容としては、例えば、試薬の種別が本来その載置場所に置かれるべき試薬であるかどうか、残液量が十分か、試薬の有効期限を経過していないか、といったことが挙げられる。RFID情報が正常であった場合は、制御部309は読み取ったRFID情報を登録し(S611)、昇降機構308が動作し吸引ノズル202はシステム試薬容器201内の所定の吸引位置へ下降する(S612)。
【0047】
液体検知器304の検知情報より、システム試薬容器201内に液体が充填されていないと判断された場合、またRFID情報が正常でない場合には、その旨を操作部117の表示部に表示するようにする(S614)。これにより、作業者は吸引ノズル202を誤った試薬に接液させる前に即座に設置ミスを認識し、正しいシステム試薬容器201を設置することができる。このように、吸引ノズル202は正常な試薬に対してのみ接液するため、作業者のシステム試薬容器201の置き間違い等によるコンタミネーションを防止することができる。
【0048】
このフローを用いることで、作業者はシステム試薬容器201交換時にハンドル305及びノズル支持部306に触れることなく試薬交換が可能となるため、吸引ノズル202に誤って触れることによる試薬などを汚染するリスクが低減される。また、作業者はシステム試薬容器201を回収、設置するだけで試薬交換可能となるため、作業手順が単純化され作業者の負担が軽減される。
【0049】
次に、図6Bを用いて、装置電源遮断状態での試薬容器交換フローについて説明する。電源投入時と交換フローと同じ内容のステップについては同じ符号を付して示している。電源が投入されているときにはシステム試薬容器設置部に電力が供給され、電源が遮断されているときには試薬容器設置部へ電力が供給されない。したがって、電源非投入時においては、昇降機構308も動作しない。装置電源遮断時において、たとえば、容器内残液量が少なかったり、メンテナンスを実行したりするために設置部からシステム試薬容器を離脱させる必要がある場合に備え、作業者はハンドル305を手動で引き上げることで、吸引ノズルに触れることなくシステム試薬容器から吸引ノズルを離脱させることができるようになっている。
【0050】
作業者はハンドル305を把持してノズル支持部306を持ち上げ(S622)、ノズル支持部306がロックされた状態で(S623)、システム試薬容器201を交換する(S606,S607)。本実施例のロック機構401は電源供給なしに、機械仕掛けでノズル支持部306をロックすることができる。作業者により装置電源が投入される(S624)と、装置は初期化処理の一つとして、液体検知器304の検知情報より、システム試薬容器の設置状態が確認され(S609)、試薬が充填されたシステム試薬容器201が設置されていると判断された場合は、その判断をトリガとしてRFID情報の確認を行う(S610)。
【0051】
設置状態の確認とは、システム試薬容器がシステム試薬設置部に正しく設置されていることを確認することを言う。例えば、液体検知器304は、透過型センサであって、システム試薬容器内の液体の有無を確認する。液体があれば液体検知器304の光源からの光が液体により遮蔽され液体があると認識できる。加えて、液体を認識することでシステム試薬容器が正しい位置に設置されていることを認識することができる。一方、透過型センサの光源からの光が遮蔽されない場合は、液体が無い又はシステム試薬容器が正しい位置に設置されていないと認識することができる。なお、設置状態の確認は、液体検知器304とは別の検知器を用いて液体の有無とシステム試薬容器の設置状態とを個々に認識できるようにしても良い。
【0052】
RFID情報が正常であった場合には、操作部117は、読み取ったRFID情報を登録し(S611)、ロック解除機構402によるロック機構401の解除動作を行う(S625)。ロック解除後、昇降機構が動作し、ノズルが吸引位置まで下降するか(S612)。一方、試薬が充填されたシステム試薬容器が検知されない、またはRFID情報が正常でない場合には、交換未成立として(S614)、その旨を操作部117の表示部に表示するようにする。この場合、既に装置電源が投入されているので、図6AのステップS604に移行し、試薬の交換処理を実行する。交換が正常に終了すれば(S613)、操作部117からの指令により、必要であればその後、流路内の液置換動作や分析準備動作などを自動で実行する。
【0053】
本実施例の自動分析装置によれば、システム試薬容器の交換作業時において、手作業に伴う、試薬による装置、装置周辺などの汚染や、触手により汚染されたノズルによる試薬の汚染リスクを低減させると共に作業者の作業負担を軽減することができる。
【実施例2】
【0054】
実施例2は、システム試薬容器設置部の構成の他の実施例であり、吸引ノズル202の昇降動作が行われている状態で作業者がシステム試薬設置部に手などを挿入した場合、作業者の安全を考え昇降動作を停止する安全機能の追加した構成である。
【0055】
すなわち、電力供給が停止された場合に、複数の停止位置で昇降機構と嵌合し、昇降機構が下降動作を行わないようにロックするロック機構と、電力が供給された状態で、昇降機構とロック機構との嵌合を解除可能なロック解除機構と、を備える自動分析装置の実施例である。
【0056】
安全機能作動時に電源がオフとなる場合、昇降機構308の電源がオフとなるため、吸引ノズル202が自重下降するおそれがある。したがって、電源非投入時に任意の位置でロック可能な機構が求められる。実施例1で記述したロック機構は、固定位置が上限点に限定されるため、昇降動作中に安全機能が作動した場合、吸引ノズル202が自重下降し、試液の飛散りや接触を意図していない対象への接触などが発生するリスクがある。したがって、電源非投入時に任意の位置でロック可能な機構が必要な場合がある。
【0057】
例えば、安全機能作動時とは、装置稼働中にシステム試薬容器を収納する位置に設ける扉が開いたことを検知する検知器や、人手がシステム試薬容器に触れそうな位置に設けられ誤ってシステム試薬容器に触れそうな人手を検知する検知器が、作業したタイミングである。なお、他の手段でも良い。このような検知器が装置に設けられ、検知器の検知をトリガとして昇降機構308の電源はオフとなる。このように、自動分析装置には、電力供給停止の元になる、ロック検知用の検知器が複数設置されている。
【0058】
図7Aおよび7Bは、本実施例に係る、ロック機構701とロック解除機構702の構成例を示す図である。ロック機構701は固定側ベースと可動側ベースとを有しており、固定側ベースと可動側ベースとの間にはばねが設けられている。また、昇降機構のプーリ308dにはストッパb703が接続されている。ストッパb703の先端にはベアリング821が接続されている。また、昇降機構の回転には、今回図示したようなプーリを用いた構造の他、例えば、ボールねじなどを使用してもよい。この場合も同様の機能を構成することが可能である。
【0059】
(a)ロック解除時の試薬容器設置部は図7Aの状態である。ソレノイドはONとなり、ストッパa801及び可動側ベースをソレノイド側にひきつける。これにより、ストッパa801が引き抜かれ、ノズル支持部306は下降することが可能となる。
【0060】
ソレノイドを動作させるためには、ソレノイドに電力が供給され、制御部よりソレノイドをオンする制御がなされる必要がある。これにより、ノズル支持部のロックを解除し、吸引ノズル202を試薬容器に挿入するには、装置の電源が供給されていなければならないことになる。なお、ロック解除動作が制御部により制御される限りにおいて、ロック解除機構702は別の作用によりノズル支持部306のロックを解除するようにしてもよい。例えば、ばねの弾性力に勝る空圧によりロックを解除するようにしてもよい。
【0061】
(b)上限点においてロックされた状態の試薬容器設置部図7Bの状態である。ロックがかかるのは装置電源および昇降機構電源がオフとなった場合であるため、ソレノイドもオフとなっている。このとき、ばねの張力によりストッパa801及び可動側ベースは昇降機構308側に伸長する。伸長してきたストッパa801とストッパb703が嵌合される。これにより、ノズル支持部306は昇降機構308の電源がオフとなっている場合においても、自重により下降することはない。このとき、ばねの長さは自然長近傍の長さとなる。
【0062】
(c)上限点以外でロックされた状態の試薬容器設置部は、図8の(1)の状態である。この場合、上述の(b)同様、ストッパa801は伸長した状態となる。吸引ノズル202が下降する方向に動作しようとする場合、ストッパa801とストッパb703が嵌合しているため下降することができない。一方、上昇する方向に動作仕様とした場合、図8の(2)に示すように、ストッパ703のベアリング821がストッパ801の斜面と接し押すことでロック機構701を収縮させる。回転後は、図8の(3)に示すように、ばね802の弾性力により再度ロック機構701伸長し、ロックがかかる。
【0063】
本実施例のこの機構によって、任意の高さにおいて吸引ノズル202の自重下降を防止することができる。また、吸引ノズルを手動にて上昇させることが可能となる。また、電源非投入時において、吸引ノズルを手動で上昇させたい場合においても、ハンドルを手動で引き上げることで吸引ノズルに触れることなくシステム試薬容器から吸引ノズルを離脱させることができる。
【0064】
本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、さらに、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0065】
200 システム試薬供給機構
201 システム試薬容器
202 ノズル
301 基板
302 RFIDタグ
303 RFIDリーダライタ
304 液体検知器
305 ハンドル
306 ノズル支持部
307 システム試薬容器架台
308 昇降機構
309 制御部
310 電源部
401 ロック機構
402 ロック解除機構
501 固定側ベース
502 可動側ベース
503 ベアリング
504 ばね
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8