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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】注射デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/32 20060101AFI20241011BHJP
   A61M 5/24 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
A61M5/32 510K
A61M5/24 540
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023121190
(22)【出願日】2023-07-26
(62)【分割の表示】P 2020529271の分割
【原出願日】2018-11-30
(65)【公開番号】P2023139212
(43)【公開日】2023-10-03
【審査請求日】2023-07-26
(31)【優先権主張番号】17306675.4
(32)【優先日】2017-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504456798
【氏名又は名称】サノフイ
【氏名又は名称原語表記】SANOFI
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ベアーテ・フランケ
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ・ブリュッゲマン
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ・カブリク
【審査官】中村 一雄
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/173895(WO,A1)
【文献】米国特許第04976701(US,A)
【文献】米国特許第03967621(US,A)
【文献】国際公開第2017/089277(WO,A1)
【文献】特開2007-075610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射デバイスであって:
ハウジングと、
薬剤用のリザーバを有するカートリッジと、
針を含み、ハウジングに可動に取り付けられたニードルユニットであって、注射デバイスの使用前、リザーバは針から封止されるニードルユニットと、
ニードルスリーブであって、該ニードルスリーブが注射部位にあてられたときに、ニードルユニットを動かしてカートリッジと係合させ、その結果、針が動かされてリザーバと流体連通するように構成されたニードルスリーブと、
ニードルユニットが動いてカートリッジと係合するとき、ニードルユニットの回転を生じさせるように適用されたねじ山と
を含み、
ニードルスリーブは、ニードルユニットが回転した後、該ニードルユニットから係合解除するように適用され、その結果、ニードルスリーブは、ニードルユニットとは別に動くことが可能になる、前記注射デバイス。
【請求項2】
ねじ山は、ニードルユニットとハウジングおよび/またはカートリッジとの間に配置される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項3】
ねじ山は、ニードルユニットの回転後に、該ニードルユニットをカートリッジおよび/またはハウジングに連結するように配置される、請求項1または請求項2に記載の注射デバイス。
【請求項4】
ハウジングは、カートリッジの少なくとも一部を囲むカートリッジ取付部分を含み、ねじ山は、ニードルユニットとカートリッジ取付部分の間に配置される、請求項1~3のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項5】
カートリッジ取付部分はねじ山を含み、ニードルユニットは、ねじ山を係合するように配置されたねじ山係合部材を含む、請求項4に記載の注射デバイス。
【請求項6】
カートリッジ取付部分は、ねじ山へ通じる溝をさらに含み、溝は、ニードルユニットが動く間、ニードルユニットが直線的に動いた後にねじ山がニードルユニットを回転させるように配置される、請求項5に記載の注射デバイス。
【請求項7】
針は針軸を含み、ニードルユニットは、針軸周りで回転するように適用される、請求項1~6のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項8】
ニードルスリーブは、ニードルユニットを係合するフランジを含み、ニードルユニットは凹部を含み、該凹部は、ニードルユニットを回転させた後、フランジが凹部と位置合わせされるように配置される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項9】
ニードルスリーブは螺旋係合部材を含み、ニードルユニットは、螺旋係合部材を係合する突出部を含み、螺旋係合部材は、ニードルユニットの回転によって突出部が動き、螺旋係合部材との係合を解除するように配置される、請求項1に記載の注射デバイス。
【請求項10】
ニードルスリーブは溝を含み、ニードルユニットは突出部を含み、突出部は、該溝に受け入れられ、その結果、ニードルスリーブが突出部を介してニードルユニットを押すように配置され、溝は、ニードルユニットのニードルスリーブに対する回転を可能にする周縁部分を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項11】
溝は、ニードルユニットの回転後に、ニードルスリーブがハウジング内へ摺動することを可能にするように配置された移動部分をさらに含む、請求項10に記載の注射デバイス。
【請求項12】
カートリッジは、リザーバ内に薬剤を含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の注射デバイス。
【請求項13】
注射デバイスを使用する方法であって、注射デバイスは、薬剤用のリザーバを有するカートリッジと、注射デバイスの使用前はリザーバから封止される針を含むニードルユニットと、摺動可能に取り付けられたニードルスリーブとを含み、
該方法は:
ニードルスリーブがニードルユニットを係合し、ニードルユニットを押してカートリッジと係合させ、その結果、針が動いてリザーバと流体連通するように、ニードルスリーブをハウジング内へ摺動させること、および
ニードルユニットが押されてカートリッジと係合するとき、ニードルユニットをカートリッジに対して回転させること
を含み、
ニードルスリーブは、ニードルユニットが回転した後、該ニードルユニットから係合解除するように適用され、その結果、ニードルスリーブは、ニードルユニットとは別に動くことが可能になる、前記注射デバイスを使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤用の注射デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
カートリッジ注射デバイス、たとえばカートリッジ自動注射器は、通常、薬剤を含む封止されたカートリッジと、最初はカートリッジから分離されている針とを有する。開始の動きによってカートリッジと針が一緒に動き、針がカートリッジを穿孔する。次いで、使用者への注射のために、プランジャをカートリッジ内へ動かし、針を通して薬剤を投薬することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、最初は針から封止されている薬剤用のリザーバを備えたカートリッジと、使用前に針を動かしてリザーバと流体連通させるための機構とを有する有利な注射デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によれば、注射デバイスが提供され、注射デバイスは:
ハウジングと、
薬剤用のリザーバを有するカートリッジと、
針を含み、ハウジングに可動に取り付けられたニードルユニットであって、注射デバイスの使用前、リザーバは針から封止されるニードルユニットと、
注射デバイスの使用中にハウジング内へ摺動するように、ハウジングに摺動可能に取り付けられたニードルスリーブであって、ニードルユニットを係合し、ニードルユニットを押してカートリッジと係合させ、その結果、針が動かされてリザーバと流体連通するように構成されたニードルスリーブと、
ニードルユニットが押されてカートリッジと係合するとき、ニードルユニットの回転を生じさせるように適用されたねじ山と
を含む。
【0005】
ねじ山は、ニードルユニットとハウジングおよび/またはカートリッジとの間に配置することができる。たとえば、ねじ山は、ニードルユニットとハウジングの間、またはニードルユニットとカートリッジの間に配置することができる。
【0006】
ねじ山は、ニードルユニットの回転後に、ニードルユニットをカートリッジおよび/またはハウジングに連結するように配置することができる。
【0007】
いくつかの例において、ハウジングは、カートリッジの少なくとも一部を囲むカートリッジ取付部分を含み、ねじ山は、ニードルユニットとカートリッジ取付部分の間に配置される。
【0008】
カートリッジ取付部分はねじ山を含むことができ、ニードルユニットは、ねじ山を係合するように配置されたねじ山係合部材を含むことができる。たとえば、ねじ山係合部材は、カートリッジ取付部分のねじ山を係合する突出部とすることができる。
【0009】
あるいは、カートリッジ取付部分は雄ねじを含むことができ、ニードルユニットは、雄ねじを係合する雌ねじを含むことができる。他の例において、ニードルユニットは雄ねじ
を含むことができ、カートリッジ取付部分は、雄ねじを係合する雌ねじを含むことができる。
【0010】
カートリッジ取付部分は、ねじ山へ通じる溝をさらに含むことができ、溝は、ニードルユニットが動く間、ニードルユニットが直線的に動いた後にねじ山がニードルユニットを回転させるように配置することができる。こうして、アクチュエータがニードルユニットを押すと、ねじ山係合部材が溝に沿って動き、次いでねじ山に入り、その結果、ニードルユニットは最初は直線的に動き、次いで回転される。
【0011】
針は針軸を含むことができ、ニードルユニットは、針軸周りで回転するように適用することができる。
【0012】
いくつかの例において、ニードルスリーブは、ニードルスリーブがニードルユニットを押してカートリッジと係合させるまで、針を覆う。この位置からニードルスリーブがさらに動くと、患者に注射するための針が露出する。注射デバイスは、ニードルスリーブを伸長位置へ付勢するように配置されたばねをさらに含むことができ、したがって、使用後、ニードルスリーブがハウジングの外へ摺動して針を覆う。
【0013】
いくつかの例において、ニードルスリーブは、ニードルユニットが回転した後、ニードルユニットから係合解除するように適用することができ、その結果、ニードルスリーブは、ニードルユニットとは別に動くことが可能になる。こうして、ニードルスリーブのハウジング内への最初の動きによってニードルユニットが押されてカートリッジと係合し、この動きの間、針は回転され、その結果、ニードルスリーブが、ニードルユニットから係合解除し、ニードルユニットとは別に引き続きハウジング内へ動くことが可能になる。
【0014】
ニードルユニットを回転させた後のニードルスリーブのハウジング内への動きは、薬剤の放出をトリガするように作用することができる。たとえば、ニードルスリーブのハウジング内への動きによって、ピストン駆動機構がピストンをカートリッジ内へ押しやり、針から薬剤を排出することができる。一例において、ピストン駆動機構は、ばね、プランジャ、ならびにばねおよびプランジャを前負荷状態に保持するキャッチを含む。ニードルスリーブのハウジング内への動きによってキャッチが解放され、その結果、ばねが、プランジャをカートリッジ内へ付勢して薬剤を投薬する。
【0015】
ニードルスリーブは、ニードルユニットを係合するフランジを含むことができ、ニードルユニットは凹部を含むことができる。凹部は、ニードルユニットを回転させた後、フランジが凹部と位置合わせされるように配置される。こうして、ニードルスリーブは、ニードルユニット上を動くことが可能になる。
【0016】
あるいは、ニードルスリーブは螺旋係合部材を含むことができ、ニードルユニットは、螺旋係合部材を係合する突出部を含むことができる。螺旋係合部材は、ニードルユニットの回転によって突出部が動き、螺旋係合部材との係合を解除するように配置することができる。こうして、ニードルスリーブは、ニードルユニット上を動くことが可能になる。
【0017】
ニードルスリーブは溝を含むことができ、ニードルユニットは突出部を含むことができる。突出部は、溝に受け入れられ、その結果、ニードルスリーブが突出部を介してニードルユニットを押すように配置され、溝は、ニードルユニットのニードルスリーブに対する回転を可能にする周縁部分を含むことができる。こうして、ニードルユニットは、ハウジング内へ押されると、ニードルスリーブに対して回転することが可能になる。
【0018】
溝は、ニードルユニットの回転後に、ニードルスリーブがハウジング内へ摺動すること
を可能にするように配置された移動部分(movement portion)をさらに含むことができる。
【0019】
カートリッジは、リザーバ内に薬剤を含むことができる。
【0020】
本発明の別の態様によれば、注射デバイスを使用する方法も提供され、注射デバイスは、薬剤用のリザーバを有するカートリッジと、注射デバイスの使用前はリザーバから封止される針を含むニードルユニットと、摺動可能に取り付けられたニードルスリーブとを含み、
方法は:
ニードルスリーブがニードルユニットを係合し、ニードルユニットを押してカートリッジと係合させ、その結果、針が動いてリザーバと流体連通するように、ニードルスリーブをハウジング内へ摺動させること、および
ニードルユニットが押されてカートリッジと係合するとき、ニードルユニットをカートリッジに対して回転させること
を含む。
【0021】
本発明のこれらの態様および他の態様は、以下に記載される実施形態から明確になり、そうした実施形態を参照しながら明らかにされるであろう。
【0022】
次に、本発明の実施形態を、添付図面を参照しながら単なる例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明を具体化する注射デバイス、および着脱可能なキャップの概略的な側面図である。
図1B】キャップがハウジングから取り外された状態の、図1Aの注射デバイスの概略的な側面図である。
図2】注射デバイスの断面図である。
図3A】注射デバイスの動作の各段階を示す、注射デバイスの針側端部(needle-end)の断面図である。
図3B】注射デバイスの動作の各段階を示す、注射デバイスの針側端部(needle-end)の断面図である。
図3C】注射デバイスの動作の各段階を示す、注射デバイスの針側端部(needle-end)の断面図である。
図4A】注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
図4B】注射デバイスのニードルユニットを示す図である。
図5】注射デバイスの針側端部の部分断面図である。
図6A】注射デバイスの代替的なニードルスリーブを示す図である。
図6B】注射デバイスの代替的なニードルスリーブを示す図である。
図7】注射デバイス用の代替的なニードルスリーブを示す図である。
図8】注射デバイス用の代替的なニードルユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に記載される薬物送達デバイスは、患者に薬剤を注射するように構成することができる。たとえば、皮下、筋肉内、または静脈内の送達が可能である。そうしたデバイスは、患者、または看護師もしくは医師などの介護者による操作が可能であり、様々なタイプの安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器を含むことができる。デバイスは、使用前に封止されたアンプルを穿孔する必要があるカートリッジベースのシステムを含むことができる。こうした様々なデバイスを用いて送達される薬剤の容量は、約0.5ml~約2mlの範囲とすることができる。さらに別のデバイスは、一定時間(たとえば、
約5、15、30、60、または120分)にわたって患者の皮膚に付着して、「大」容量(通常は、約2ml~約10ml)の薬剤を送達するように構成された大容量デバイス(LVD)またはパッチポンプを含むことができる。
【0025】
特定の薬剤との組み合わせにおいて、本明細書に記載されるデバイスは、必要とされる仕様の範囲内で動作するようにカスタマイズすることもできる。たとえば、デバイスは、ある特定の時間内(たとえば、自動注射器では約3~約20秒、LVDでは約10分~約60分)に薬剤を注射するようにカスタマイズすることができる。他の仕様として、不快感が低いもしくは最低限のレベルであること、または人的要因、有効期間、使用期限、生体適合性、環境的考慮などに関連する特定の条件が含まれることがある。そうした違いは、たとえば、薬物の粘度が約3cP~約50cPの範囲であるなど、様々な要因によって生じる可能性がある。したがって、薬物送達デバイスはしばしば、サイズが約25~約31ゲージの範囲の中空針を含む。一般的なサイズは、17および29ゲージである。
【0026】
本明細書に記載される送達デバイスは、1つまたはそれ以上の自動機能を含むこともできる。たとえば、針とカートリッジの結合、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの1つまたはそれ以上を自動化することができる。1つまたはそれ以上の自動工程のためのエネルギーは、1つまたはそれ以上のエネルギー源によって供給することができる。エネルギー源は、たとえば、機械的、空圧的、化学的、または電気的なエネルギーを含むことができる。たとえば、機械的なエネルギー源は、ばね、てこ、エラストマー、またはエネルギーを蓄積もしくは放出する他の機械的機構を含むことができる。1つまたはそれ以上のエネルギー源を組み合わせて、単一のデバイスにすることができる。デバイスは、歯車、弁、またはエネルギーをデバイスの1つまたはそれ以上の構成要素の動きに変換する他の機構をさらに含むことができる。
【0027】
自動注射器の1つまたはそれ以上の自動機能はそれぞれ、起動機構によって起動することができる。そうした起動機構は、アクチュエータ、たとえば、ボタン、レバー、ニードルスリーブ、または他の起動構成要素のうちの1つまたはそれ以上を含むことができる。自動機能の起動は、1工程または複数工程のプロセスとすることができる。すなわち、使用者は、自動機能をもたらすために、1つまたはそれ以上の起動構成要素の起動が必要になることがある。たとえば、1工程のプロセスにおいて、使用者は、薬剤の注射を行うためにニードルスリーブを押し下げて自身の身体に当てることができる。他のデバイスでは、自動機能の複数工程での起動が必要になることがある。たとえば、使用者は、注射を行うために、ボタンを押し下げ、ニードルシールドを後退させる必要がある場合がある。
【0028】
さらに、1つの自動機能の起動が、1つまたはそれ以上の後続の自動機能機構を起動し、それによって起動シーケンスを形成することができる。たとえば、第1の自動機能の起動により、針とカートリッジの結合、針の挿入、薬剤の注射、および針の後退のうちの少なくとも2つを起動することができる。いくつかのデバイスは、1つまたはそれ以上の自動機能をもたらす工程の特定のシーケンスを必要とすることもある。他のデバイスは、独立した工程のシーケンスで動作することができる。
【0029】
いくつかの送達デバイスは、安全シリンジ、ペン型注射器、または自動注射器の1つまたはそれ以上の機能を含むことができる。たとえば、送達デバイスは、(通常、自動注射器に見られるような)薬剤を自動的に注射するように構成された機械的エネルギー源、および(通常、ペン型注射器に見られるような)用量設定機構を含むことが可能である。
【0030】
本開示のいくつかの実施形態に従って、例示的な薬物送達デバイスが図1Aおよび1Bに示されている。デバイス10は、前述のように、患者の体内に薬剤を注射するように構成されている。デバイス10は、通常は注射予定の薬剤を含むリザーバを画成するカート
リッジを含むハウジング11、および送達プロセスの1つまたはそれ以上の工程を容易にするために必要な構成要素を含む。
【0031】
デバイス10は、ハウジング11に着脱可能に取り付けることができるキャップ12も含むことができる。通常、使用者は、デバイス10を操作可能にする前に、ハウジング11からキャップ12を取り外さなければならない。
【0032】
示されるように、ハウジング11は略円筒形であり、長手方向軸A-Aに沿って実質的に一定の直径を有する。ハウジング11は、遠位領域Dおよび近位領域Pを有する。用語「遠位」は、注射部位に相対的に近い位置を指し、用語「近位」は、注射部位から相対的に遠い位置を指す。
【0033】
デバイス10はニードルスリーブ19も含むことができ、ニードルスリーブ19は、スリーブ19のハウジング11に対する動きを可能にするようにハウジング11に連結される。たとえば、スリーブ19は、長手方向に長手方向軸A-Aに平行に動くことができる。具体的には、スリーブ19を近位方向に動かすことによって、針17がハウジング11の遠位領域Dから延びることを可能にすることができる。
【0034】
針17の挿入は、いくつかの機構によって行うことができる。たとえば、針17をハウジング11に対して固定して配置し、最初は、延ばされたニードルスリーブ19の中に配置することができる。スリーブ19の遠位端を患者の身体に押し当て、ハウジング11を遠位方向に動かすことによってスリーブ19が近位に動くと、針17の遠位端が露出する。このような相対的な動きによって、針17の遠位端が患者の体内へ延びることが可能になる。このような挿入は、患者が手動でハウジング11をスリーブ19に対して動かすことによって針17が手動で挿入されるため、「手動」挿入と呼ばれる。
【0035】
別の形態の挿入は「自動」化され、それにより、針17はハウジング11に対して動く。このような挿入は、スリーブ19の動きによって、またはたとえばボタン13などの別の起動形態によってトリガすることができる。図1Aおよび1Bに示すように、ボタン13はハウジング11の近位端に配置される。しかしながら、他の実施形態では、ボタン13をハウジング11の側面に配置することも可能である。
【0036】
他の手動または自動機能は、薬物の注射もしくは針の後退、またはその両方を含むことができる。注射は、カートリッジ18から針17を通して薬剤を押し進めるために、栓またはピストン14を、カートリッジ18のリザーバ内の近位位置からより遠位の位置まで動かすプロセスである。いくつかの実施形態では、デバイス10が起動される前、駆動ばね(図示せず)は圧縮された状態にある。駆動ばねの近位端は、ハウジング11の近位領域P内に固定することができ、駆動ばねの遠位端は、ピストン14の近位面に圧縮力を加えるように構成することができる。起動後、駆動ばねに蓄積されたエネルギーの少なくとも一部を、ピストン14の近位面に加えることができる。この圧縮力はピストン14に作用して、ピストン14を遠位方向に動かすことができる。こうした遠位への動きは、カートリッジ18内の液体薬剤を圧縮し、針17から押し出すように作用する。
【0037】
注射の後、針17をスリーブ19またはハウジング11内に後退させることができる。後退は、使用者が患者の身体からデバイス10を取り外し、スリーブ19が遠位方向に動くときに行うことができる。これは、針17をハウジング11に対して固定して配置したままで行うことができる。スリーブ19の遠位端が動いて針17の遠位端を越え、針17が覆われたとき、スリーブ19をロックすることができる。このようなロックは、ハウジング11に対するスリーブ19の近位への動きをロックすることを含むことができる。
【0038】
針17をハウジング11に対して動かす場合、別の形態の針の後退を行うことができる。このような動きは、ハウジング11内のカートリッジ18をハウジング11に対して近位方向に動かす場合に行うことができる。この近位への動きは、遠位領域Dに位置する後退ばね(図示せず)を使用することによって実現することができる。圧縮された後退ばねは、起動されたとき、カートリッジ18を近位方向に動かすのに十分な力をカートリッジ18に与えることができる。十分に後退した後、針17とハウジング11の間の相対的な動きを、ロッキング機構によってロックすることができる。さらに、必要に応じて、ボタン13またはデバイス10の他の構成要素をロックすることができる。
【0039】
図2は、ハウジング21、カートリッジ22、およびニードルユニット23を有する例示的な注射デバイス20を示している。注射デバイス20は、ピストン24、ピストン駆動機構25、およびニードルスリーブ26をさらに含む。
【0040】
カートリッジ22は、薬剤を含むリザーバ28を画成し、ハウジング21内に取り付けられる。カートリッジ22の遠位端Dは、キャップ29によって封止される。ハウジング21のカートリッジ取付部分30は、カートリッジ22を支持する。示されるように、カートリッジ取付部分30の一部は管状であり、カートリッジ22の遠位端を囲む。カートリッジ取付部分30のこの管状部材は、ハウジング21内に配置された外面を有する。
【0041】
図2に示すように、初期状態では、ニードルユニット23の針31は、カートリッジ22の遠位端に、端部キャップ29から間隔を置いて配置され、したがって、リザーバ28は針31から封止されている。注射デバイス20の使用前または使用中、ニードルユニット23が動かされてカートリッジ22の遠位端と係合し、針31はカートリッジ22の端部キャップ29を穿孔する。こうして、以下にさらに詳しく説明されるように、針31をリザーバ28と流体連通させ、針31を介してリザーバ28から薬剤を排出することができる。
【0042】
図2に示す初期状態では、ピストン24は、カートリッジ22内のリザーバ28の近位端に配置され、ピストン駆動機構25は、ハウジング21の近位端に配置される。ピストン駆動機構25は、ばね32、プランジャ33、およびキャッチ34を含む。使用中、ばね32は、プランジャ33をピストン24に対して付勢し、カートリッジ22に押し込み、リザーバ28から薬剤を排出するように配置される。示されるように、使用前の初期状態では、ばね32はキャッチ34によって圧縮された状態に保たれる。具体的には、キャッチ34がプランジャ33を保持し、プランジャ33がばね32を圧縮状態に保ち、したがって、ピストン24には力が加えられない。この状態において、ピストン駆動機構25は前負荷されている。
【0043】
以下にさらに詳しく説明されるように、注射デバイス20はアクチュエータによって、この例ではニードルスリーブ26によって作動され、ニードルスリーブ26は、ハウジング21内で回転可能かつ摺動可能に動きが可能であり、ハウジング21の遠位端から突出している。こうして、使用中、ニードルスリーブ26は使用者の皮膚に押し当てられ、注射デバイス20は、ハウジング21を保持しながら使用者の皮膚に向かって押され、これによって、ニードルスリーブ26が、軸の近位方向にハウジング21内へ動く。
【0044】
他の例では、アクチュエータは、ニードルスリーブ26を軸方向にハウジング21内へ動かすレバー、またはボタン、または、たとえばモータなどの駆動機構とすることができる。
【0045】
ニードルスリーブ26は、ニードルスリーブ26が近位方向にハウジング21内へ動いたとき、キャッチ34を解放するように働く。キャッチ34が解放されたとき、ばね32
は、プランジャ33をピストン24に対して付勢し、リザーバ28に押し込む。
【0046】
図2に示すように、キャッチ34は、プランジャ33およびばね32を囲む管状要素35を含むことができる。管状要素35は、プランジャ33内の凹部37を係合する突出部36を含み、図2に示す位置では、プランジャ33は、突出部36および凹部37によって、遠位方向に動かないようになっている。
【0047】
ニードルスリーブ26が近位方向にハウジング21内へ動くとき、ニードルスリーブ26の端部は管状要素35を係合し、管状要素35を注射デバイス20の軸A周りで回転させる。この回転によって突出部36が凹部37から係合解除し、それによってプランジャ33が解放され、次いで、プランジャ33が、ばね32の力を受けてリザーバ28内へ動く。
【0048】
一例では、管状要素35を係合するニードルスリーブ26の端部は、管状要素35上の突出部を係合して回転を生じさせる面取り部(すなわち、傾斜した縁部)を含むことができる。他の例では、管状要素35は、ニードルスリーブ26上の突出部によって係合されて回転を生じさせる面取り部(すなわち、傾斜した縁部)を含むことができる。
【0049】
他の例では、キャッチ34は、プランジャ33を係合する突出部を含むアームを含むことができる。この場合、ニードルスリーブ26は、アームを持ち上げることによって撓ませて突出部を凹部から係合解除し、それによってプランジャ33を解放することが可能である。
【0050】
付勢部材、たとえば、ばね42を、ハウジング21とニードルスリーブ26の間で作用するように配置し、ニードルスリーブ26がハウジング21の遠位端から突出するように、ニードルスリーブ26を遠位方向に付勢することができる。
【0051】
使用前または使用中、キャッチ34が解放される前に、ニードルユニット23はカートリッジ22と結合される。以下に説明されるように、ニードルスリーブ26が軸の近位方向に動くと、最初にニードルユニット23がカートリッジ22の遠位端を係合し、ニードルスリーブ26がさらに動くと、キャッチ34が解放され、その結果、プランジャ33が針31を介して薬剤の送達を開始する。
【0052】
図3A~3Cは、注射デバイス20の動作を示している。図3Aに示す初期状態では、ニードルスリーブ26は延ばされた状態にあり、ハウジング21の遠位端から突出している。ばね42は、ニードルスリーブ26を遠位方向に付勢する。示されるように、ニードルユニット23によって支持された針31は、カートリッジ22の端部キャップ29から間隔を置いて配置され、したがって、リザーバ28は針31から封止されている。針31は、注射デバイス20の軸Aと心合わせされるように中央に配置される。針31の遠位端は、使用者の皮膚を穿孔するように適用され、針31の近位端は、ニードルユニット23がカートリッジ22を係合すると、カートリッジ22の端部キャップ29を穿孔するように適用される。
【0053】
示されるように、ニードルユニット23は針本体38を含み、針本体38は、針31を支持し、ハウジング21内で近位を向く凹部39を画成する。示されるように、ニードルスリーブ26は、針本体38の遠位端を係合する環状フランジ40を含み、針本体38の近位端は、ハウジング21のカートリッジ取付部分30を係合する。
【0054】
具体的には、この例では、針本体38は、カートリッジ取付部分30とねじ係合される。カートリッジ取付部分30の外面は雄ねじを含み、針本体38は、凹部39内に雌ねじ
を含む。初期状態では、カートリッジ取付部分30と針本体38は、ねじ山の開始点で部分的にねじ係合され、したがって、針31は、カートリッジ22の端部キャップ29から間隔を置いて配置される。
【0055】
ニードルスリーブ26は、軸方向に摺動することができるが、回転しないようにハウジング21内に取り付けられる。ニードルユニット23は、注射デバイス20の長手方向軸A周りで回転すること、および軸方向に動くことができるように、ニードルスリーブ26とハウジング21の間に取り付けられる。カートリッジ22は、カートリッジ22の位置がハウジング21内で固定され、回転することができないように、カートリッジ取付部分30に取り付けられる。
【0056】
こうして、注射デバイスの使用中、ニードルスリーブ26の遠位端は使用者の皮膚に押し当てられ、下方に押される。これにより、図3Bおよび3Cに示すように、ニードルスリーブ26が、近位方向にハウジング21内へ動く。
【0057】
図3Bは、使用中のニードルスリーブ26の中間位置を示している。示されるように、ニードルスリーブ26のハウジング21内への動きにより、ニードルユニット23が動いてカートリッジ取付部分30と係合し、針31がカートリッジ22の端部キャップ29を穿孔し、針はリザーバ28と流体連通している。ニードルスリーブ26の環状フランジ40が針本体38を押し、その結果、ニードルスリーブ26およびニードルユニット23が軸方向にハウジング21内へ動き、ニードルユニット23がカートリッジ22を係合している。
【0058】
これまでに説明したように、針本体38は、カートリッジ取付部分30とねじ係合され、したがって、図3Aに示す位置と図3Bに示す位置との間の軸方向運動中、ニードルユニット23は、カートリッジ22およびハウジング21に対して回転する。特に、ニードルユニット23は、針31に対して心合わせされている注射デバイス20の軸A周りで回転される。
【0059】
針本体38とカートリッジ取付部分30の間のねじ係合は、ピッチが大きいねじ山を有することができ、したがって、ニードルユニット23を回転させる間、ニードルユニット23を軸方向に動かすのに必要な力が小さくなる。一例では、ニードルユニット23は、初期位置(図3A)から中間位置(図3B)まで動く間に約90度回転される。他の例では、ニードルユニット23は、30度から120度の間で回転される。
【0060】
この例では、ニードルユニット23の初期位置(図3A)と中間位置(図3B)の間の回転によって、ニードルスリーブ26が針本体38を係合解除する。具体的には、図4Aおよび4Bを参照すると、針本体38は、回転後にニードルスリーブ26が針本体38上を軸方向に進むことができるように形成されている。
【0061】
図4Bに示すように、針本体38は凹部41を含む。同様に、ニードルスリーブ26の環状フランジ40は、針本体38の凹部41に対応するセグメントおよびセグメント間のギャップを含む。初期状態(図3A)では、ニードルスリーブ26の環状フランジ40のセグメントが、針本体38の非凹部部材(non-recessed part)43と位置合わせされてそれらを係合し、その結果、ニードルスリーブ26がニードルユニット23を軸方向に押すことが可能になる。針本体38が(カートリッジ取付部分30(図3B)とのねじ係合によって)回転されたとき、環状フランジ40のセグメントは、針本体38の凹部41と位置合わせされ、ニードルスリーブ26が針本体38上を軸方向に進むことが可能になり、その結果、ニードルスリーブ26は、ニードルユニット23とは別に軸方向に動くことができるようになる。
【0062】
したがって、図3Cに示すように、中間位置の後、ニードルスリーブ26は引き続き軸方向に動くが、ニードルユニット23は動かない。こうして、針31を露出させ、使用者の皮膚を穿孔することができる。図3Cの位置では、図2を参照してこれまでに説明したように、ニードルスリーブ26の動きによってピストン駆動機構(25、図2参照)のキャッチ(34、図2参照)は解放されており、ピストン(24、図2参照)は、カートリッジ22内へ付勢され、針31を介して薬剤を送達する。
【0063】
使用後、注射デバイス20が皮膚から取り外されると、ばね42がニードルスリーブ26を付勢して初期位置に戻し、その結果、針31は再び覆われる、
【0064】
図3Bに示す位置では、針本体38とカートリッジ取付部分30の間のねじ山が、ニードルユニット23をハウジング21のカートリッジ取付部分30にロックする。
【0065】
さらに、ニードルユニット23をハウジング21のカートリッジ取付部分30にロックするために、ロッキング部材44を設けることができる。たとえば、ねじ山は、図3Bの位置で針本体38の突出部44を受ける窪み45を含み、ニードルユニット23が遠位方向に動いて戻るのを防ぐことができる。代替的に、またはこれに加えて、ハウジング、カートリッジ取付部分、および/または針本体は、図3Bおよび図3Cに示す位置でニードルユニットをロックする1つまたはそれ以上のキャッチを含むことができる。
【0066】
前述の例では、使用中、ニードルユニット23は、最初に回転されてカートリッジ取付部分30と係合し、次いでニードルスリーブ26からデカップリングし、その結果、ニードルスリーブ26は、引き続き軸方向に動き、キャッチ(34、図2参照)を解放することができる。しかしながら、代替的な例では、ニードルユニット23は、ニードルスリーブ26がニードルユニット23を押すと、最初に軸方向にカートリッジ22に向かって摺動するように適用することができ、次いで、ニードルユニット23は、回転されてカートリッジ取付部分30と係合し、ニードルスリーブ26から係合解除する。
【0067】
図5は、カートリッジ取付部分30とニードルユニット23の間の係合の他の例を示している。この例では、カートリッジ取付部分30は、ノッチ46、溝47、およびねじ付セクション48を含む。針本体38は、ニードルユニット23が軸方向にカートリッジ22に向かって動かされると、順番にノッチ46、溝47、およびねじ付セクション48を係合する突出部44を含む。図5は、図3Aに示したものと同等の針本体23およびニードルスリーブ26の初期位置を示している。
【0068】
これまでに説明したように、使用中、ニードルスリーブ26は、ニードルユニット23を軸方向に押し、突出部44は付勢されてノッチ46から外れて溝47に入り、それによって、突出部44がねじ付セクション48と接するまで、ニードルユニット23は回転せずに軸方向に動くことが可能であり、突出部44がねじ付セクション48と接すると、ニードルユニット23は回転する。
【0069】
軸方向運動および/または回転運動の間に、針31は、カートリッジ22の端部キャップ29を穿孔し、リザーバ28と流体連通する。これまでに説明したように、ねじ付セクション48によって生じる回転により、ニードルスリーブ26はニードルユニット23から係合解除することが可能になり、その結果、ニードルスリーブ26はその軸方向運動を続け、キャッチ(34、図2参照)を解放し、薬剤の送達をトリガする。ノッチ46は、注射デバイス20の使用開始時にニードルスリーブ26に力が加えられるまで、針31とカートリッジ22の間の間隔が確実に維持されるのを助ける。
【0070】
図6Aおよび6Bは、ニードルスリーブ26とニードルユニット23の間の係合の他の例を示している。この例では、ニードルスリーブ26は、その内面に螺旋部材49を含む。ニードルユニット23は、その外面に、使用中にニードルスリーブ26の螺旋部材49によって係合される突出部50を含む。こうして、ニードルスリーブ26に加えられた軸方向の力が、螺旋部材49および突出部50を介してニードルユニット23に伝えられ、ニードルユニット23を付勢してカートリッジ取付部分30と係合させる。螺旋部材49の形状も、ニードルスリーブ26が突出部50を押すときのニードルユニット23の回転を助ける。ニードルユニット23とカートリッジ取付部分30の間のねじ係合によってニードルユニット23が回転すると、突出部50が動いて螺旋部材49との係合を解除し、ニードルスリーブ26は、その軸方向運動をニードルユニット23を伴わずに続けることが可能になる。特に図6Aに示すように、ニードルスリーブ26およびニードルユニット23の軸方向運動中、突出部50は、位置50aで螺旋部材49を係合する。次いで、ニードルユニット23が回転すると、突出部50は位置50b、さらに位置cへ動き、位置cでは、突出部50は螺旋部材49と係合せず、したがって、ニードルスリーブ26は、ニードルユニット23とは別にさらに軸方向へ動くことができる。
【0071】
いくつかの例では、ニードルスリーブ26は単一の螺旋部材49を含み、ニードルユニット23は単一の突出部50を含む。しかしながら、図6Bに示すように、ニードルスリーブ26は2つの螺旋部材49を含むことができ、ニードルユニット23は対応して2つの突出部50を含む。他の例では、そうではなく、ニードルスリーブ26は、3つまたはそれ以上の螺旋部材49を含むことができる。
【0072】
図6Bは、所望の回転量に達すれば突出部50が係合して過度の回転を防止する、任意選択の端部止め具51も示している。端部止め具51は、突出部50が螺旋部材49の端部と端部止め具51との間を進むことができるように位置している。
【0073】
図6Aおよび6Bに示すものと同様の代替的な例では、ニードルユニット23は、1つまたはそれ以上の螺旋部材49を含むことができ、ニードルスリーブ26は、対応する突出部50を含むことができる。
【0074】
図7は、ニードルスリーブ26とニードルユニット23の間の係合の代替的な例を示している。この例では、ニードルスリーブ26は、「L」字形スロット52を含み、ニードルユニット23は、「L」字形スロット52を係合する突出部53を含む。「L」字形スロット52は、ニードルスリーブ26の周縁の壁に配置される。示されるように、「L」字形スロット52は、ニードルスリーブ26周りで周方向に延びる周縁部分54、およびニードルスリーブ26の軸方向に延びる軸方向部分55を有する。
【0075】
初期位置では、突出部53は53aで示される位置にある。この位置では、ニードルスリーブ26が「L」字形スロット52の周縁部分54および突出部53を介してニードルユニット23を押すと、ニードルスリーブ26およびニードルユニット23は、一緒に軸方向に動く。次いで、ニードルユニット23がカートリッジ取付部分30のねじ山に螺着されると、突出部53は53bで示される位置へ動き、そこから、ニードルスリーブ26は、突出部53が軸方向部分55に沿って55cで示される位置へ動くとき、ニードルユニット23とは別に軸方向に自由に動く。こうして、ニードルユニット23の回転によって、ニードルスリーブ26がニードルユニット23から係合解除され、その結果、ニードルスリーブ26は軸方向にニードルユニット23上を動き、針31を露出させ、キャッチ(34、図2参照)を解放することができる。
【0076】
図8は、代替的な例のニードルユニット23を示している。この例では、針本体38は、ハウジング21のカートリッジ取付部分30の一部の雌ねじと係合するように配置され
た雄ねじ56を含む。この配置によって、針本体38の外周が小さくなり、それにより、ニードルユニット23を回転させてカートリッジ取付部分30とねじ係合させるために必要なトルクが減ることになる。
【0077】
様々な例において、ニードルユニット23は、(これまでに説明したように)カートリッジ取付部分30、カートリッジ22、またはハウジング21に固定された注射デバイス20の別の部材に回転可能に連結することができることが理解されるであろう。たとえば、注射デバイス20は、図2に示すように、カートリッジ22の端部上に延びるカートリッジ取付部分30を含まなくてもよく、その代わりに、カートリッジ22は、ねじ山、およびこれまでに説明した他の機能を含むことができる。
【0078】
前述の例では、ニードルスリーブ26は、軸方向にハウジング21内へ動くときに回転しない。これを実現するために、ハウジング21およびニードルスリーブ26は、ニードルスリーブ26のハウジング21に対する回転を妨げるように互いに係合される溝および突出部、たとえばレールを含む。
【0079】
様々な例において、端部キャップ29の損傷を生じさせる恐れがある、過度の力がかかる針本体38とカートリッジ22の端部キャップ29との間の接触を防止する助けとなるように、ニードルユニット23とカートリッジ22またはハウジング21との間に弾性の止め具が配置される。
【0080】
用語「薬物」または「薬剤」は、本明細書において同意語として使用され、1つまたはそれ以上の医薬品有効成分または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物と、場合により、薬学的に許容される担体とを含む医薬製剤を示す。医薬品有効成分(「API」)とは、最も広範な言い方で、ヒトまたは動物に生物学的影響を及ぼす化学構造のことである。薬理学では、薬物または薬剤が、疾患の処置、治療、予防、または診断に使用され、またはそれとは別に、身体的または精神的健康を向上させるために使用される。薬物または薬剤は、限られた継続期間、または慢性疾患では定期的に、使用される。
【0081】
以下に説明されるように、薬物または薬剤は、1つまたはそれ以上の疾患を処置するための、様々なタイプの製剤の少なくとも1つのAPI、またはその組み合わせを含むことができる。APIの例としては、分子量が500Da以下である低分子;ポリペプチド、ペプチド、およびタンパク質(たとえばホルモン、成長因子、抗体、抗体フラグメント、および酵素);炭水化物および多糖類;ならびに核酸、二本鎖または一本鎖DNA(裸およびcDNAを含む)、RNA、アンチセンスDNAおよびRNAなどのアンチセンス核酸、低分子干渉RNA(siRNA)、リボザイム、遺伝子、およびオリゴヌクレオチドが含まれ得る。核酸は、ベクター、プラスミド、またはリポソームなどの分子送達システムに組み込まれる。1つまたはそれ以上の薬物の混合物もまた企図される。
【0082】
薬物または薬剤は、薬物送達デバイスで使用するように適用された主要パッケージまたは「薬物容器」内に含まれる。薬物容器は、たとえば、カートリッジ、シリンジ、リザーバ、または1つもしくはそれ以上の薬物の保存(たとえば短期または長期保存)に適したチャンバを提供するように構成された他の固体もしくは可撓性の容器とすることができる。たとえば、場合によって、チャンバは、少なくとも1日(たとえば1日から少なくとも30日まで)の間薬物を収納するように設計される。場合によって、チャンバは、約1ヶ月から約2年の間薬物を保存するように設計される。保存は、室温(たとえば約20℃)または冷蔵温度(たとえば約-4℃から約4℃まで)で行うことができる。場合によって、薬物容器は、投与予定の医薬製剤の2つまたはそれ以上の成分(たとえばAPIおよび希釈剤、または2つの異なるタイプの薬物)を別々に、各チャンバに1つずつ保存するように構成された二重チャンバカートリッジとすることができ、またはこれを含むことがで
きる。そのような場合、二重チャンバカートリッジの2つのチャンバは、ヒトまたは動物の体内に投薬する前、および/または投薬中に2つまたはそれ以上の成分間で混合することを可能にするように構成される。たとえば、2つのチャンバは、これらが(たとえば2つのチャンバ間の導管によって)互いに流体連通し、所望の場合、投薬の前にユーザによって2つの成分を混合することを可能にするように構成される。代替的に、またはこれに加えて、2つのチャンバは、成分がヒトまたは動物の体内に投薬されているときに混合することを可能にするように構成される。
【0083】
本明細書において説明される薬物送達デバイス内に含まれる薬物または薬剤は、数多くの異なるタイプの医学的障害の処置および/または予防に使用される。障害の例としては、たとえば、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病に伴う合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症が含まれる。障害の別の例としては、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチがある。APIおよび薬物の例としては、たとえば、それだけには限らないが、ハンドブックのRote Liste 2014、主グループ12(抗糖尿病薬物)または主グループ86(腫瘍薬物)、およびMerck Index、第15版などに記載されているものがある。
【0084】
1型もしくは2型の糖尿病、または1型もしくは2型の糖尿病に伴う合併症の処置および/または予防のためのAPIの例としては、インスリン、たとえばヒトインスリン、またはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP-1)、GLP-1類似体もしくはGLP-1受容体アゴニスト、またはその類似体もしくは誘導体、ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP4)阻害剤、または薬学的に許容されるその塩もしくは溶媒和物、またはそれらの任意の混合物が含まれる。本明細書において使用される用語「類似体」および「誘導体」は、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から、天然のペプチド中に見出される少なくとも1つのアミノ酸残基を欠失させるおよび/もしくは交換することによって、ならびに/または少なくとも1つのアミノ酸残基を付加することによって式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。付加および/または交換されるアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基、または他の天然の残基もしくは完全に合成によるアミノ酸残基とすることができる。インスリン類似体は「インスリン受容体リガンド」とも呼ばれる。特に、用語「誘導体」は、1つまたはそれ以上の有機置換基(たとえば、脂肪酸)が1つまたはそれ以上のアミノ酸に結合している、天然のペプチドの構造、たとえばヒトのインスリンの構造から式上で得られる分子構造を有するポリペプチドを指す。場合により、天然のペプチド中に見出される1つまたはそれ以上のアミノ酸が、欠失され、かつ/もしくはコード不可能なアミノ酸を含む他のアミノ酸によって置換されていてもよく、または、コード不可能なアミノ酸を含むアミノ酸が、天然のペプチドに付加されていてもよい。
【0085】
インスリン類似体の例としては、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン(インスリングラルギン);Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン(インスリングルリジン);Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン(インスリンリスプロ);Asp(B28)ヒトインスリン(インスリンアスパルト);B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置換されているヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28-B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリンおよびDes(B30)ヒトインスリンがある。
【0086】
インスリン誘導体の例としては、たとえば、B29-N-ミリストイル-des(B30)ヒトインスリン;Lys(B29)(N-テトラデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデテミル、Levemir(登録商標))、B29-N-パル
ミトイル-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ミリストイルヒトインスリン;B29-N-パルミトイルヒトインスリン;B28-N-ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28-N-パルミトイル-LysB28ProB29ヒトインスリン;B30-N-ミリストイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30-N-パルミトイル-ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29-N-(N-パルミトイル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-ω-カルボキシヘプタデカノイル-γ-L-グルタミル-des(B30)ヒトインスリン(インスリンデグルデク、Tresiba(登録商標))、B29-N-(N-リトコリル-γ-グルタミル)-des(B30)ヒトインスリン;B29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)-des(B30)ヒトインスリン、およびB29-N-(ω-カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンがある。
【0087】
GLP-1、GLP-1類似体およびGLP-1受容体アゴニストの例としては、たとえば、リキシセナチド(Lyxumia(登録商標))、エキセナチド(エキセンディン-4、Dyetta(登録商標)、Bydureon(登録商標)、アメリカドクトカゲの唾液腺によって産生される39アミノ酸ペプチド)、リラグルチド(Victoza(登録商標))、セマグルチド、タスポグルチド、アルビグルチド(Syncria(登録商標))、デュラグルチド(Trulicity(登録商標))、rエキセンディン-4、CJC-1134-PC、PB-1023、TTP-054、ラングレナチド/HM-11260C、CM-3、GLP-1エリゲン(Eligen)、ORMD-0901、NN-9924、NN-9926、NN-9927、ノデキセン(Nodexen)、ビアドール(Viador)-GLP-1、CVX-096、ZYOG-1、ZYD-1、GSK-2374697、DA-3091、MAR-701、MAR709、ZP-2929、ZP-3022、TT-401、BHM-034、MOD-6030、CAM-2036、DA-15864、ARI-2651、ARI-2255、エキセナチド-XTENおよびグルカゴン-Xtenがある。
【0088】
オリゴヌクレオチドの例としては、たとえば:家族性高コレステロール血症の処置のためのコレステロール低下アンチセンス治療薬である、ミポメルセンナトリウム(Kynamro(登録商標))がある。
【0089】
DPP4阻害剤の例としては、ビルダグリプチン、シタグリプチン、デナグリプチン、サキサグリプチン、ベルベリンがある。
【0090】
ホルモンの例としては、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、およびゴセレリンなどの、脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストが含まれる。
【0091】
多糖類の例としては、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩が含まれる。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。ヒアルロン酸誘導体の例としては、ハイランG-F20(Synvisc(登録商標))、ヒアルロン酸ナトリウムがある。
【0092】
本明細書において使用する用語「抗体」は、免疫グロブリン分子またはその抗原結合部分を指す。免疫グロブリン分子の抗原結合部分の例には、抗原を結合する能力を保持するF(ab)およびF(ab’)2フラグメントが含まれる。抗体は、ポリクローナル、モ
ノクローナル、組換え型、キメラ型、非免疫型またはヒト化、完全ヒト型、非ヒト型(たとえばネズミ)、または一本鎖抗体とすることができる。いくつかの実施形態では、抗体はエフェクター機能を有し、補体を固定することができる。いくつかの実施形態では、抗体は、Fc受容体と結合する能力が低く、または結合することはできない。たとえば、抗体は、アイソタイプもしくはサブタイプ、抗体フラグメントまたは変異体とすることができ、これはFc受容体との結合を支持せず、たとえば、突然変異した、または欠失したFc受容体結合領域を有する。用語の抗体はまた、四価二重特異性タンデム免疫グロブリン(TBTI)および/または交差結合領域の配向性を有する二重可変領域抗体様結合タンパク質(CODV)に基づく抗体結合分子を含む。
【0093】
用語「フラグメント」または「抗体フラグメント」は、全長抗体ポリペプチドを含まないが、抗原と結合することができる全長抗体ポリペプチドの少なくとも一部分を依然として含む、抗体ポリペプチド分子(たとえば、抗体重鎖および/または軽鎖ポリペプチド)由来のポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、全長抗体ポリペプチドの切断された部分を含むことができるが、この用語はそのような切断されたフラグメントに限定されない。本発明に有用である抗体フラグメントは、たとえば、Fabフラグメント、F(ab’)2フラグメント、scFv(一本鎖Fv)フラグメント、直鎖抗体、単一特異性抗体フラグメント、または二重特異性、三重特異性、四重特異性および多重特異性抗体(たとえば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ)などの多重特異性抗体フラグメント、一価抗体フラグメント、または二価、三価、四価および多価抗体などの多価抗体フラグメント、ミニボディ、キレート組換え抗体、トリボディまたはバイボディ、イントラボディ、ナノボディ、小モジュラー免疫薬(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体、およびVHH含有抗体を含む。抗原結合抗体フラグメントのさらなる例が当技術分野で知られている。
【0094】
用語「相補性決定領域」または「CDR」は、特異的抗原認識を仲介する役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内の短いポリペプチド配列を指す。用語「フレームワーク領域」は、CDR配列ではなく、CDR配列の正しい位置決めを維持して抗原結合を可能にする役割を主に担う重鎖および軽鎖両方のポリペプチドの可変領域内のアミノ酸配列を指す。フレームワーク領域自体は、通常、当技術分野で知られているように、抗原結合に直接的に関与しないが、特定の抗体のフレームワーク領域内の特定の残基が、抗原結合に直接的に関与することができ、またはCDR内の1つまたはそれ以上のアミノ酸が抗原と相互作用する能力に影響を与えることができる。
【0095】
抗体の例としては、アンチPCSK-9mAb(たとえばアリロクマブ)、アンチIL-6mAb(たとえばサリルマブ)、およびアンチIL-4mAb(たとえばデュピルマブ)がある。
【0096】
本明細書において説明される任意のAPIの薬学的に許容される塩もまた、薬物送達デバイスにおける薬物または薬剤の使用に企図される。薬学的に許容される塩は、たとえば酸付加塩および塩基性塩である。
【0097】
本明細書において記載されるAPI、製剤、装置、方法、システム、および実施形態の様々な構成要素の変更(追加および/または削除)は、そうした変更およびそのすべての均等物を包含する本発明の概念の完全な範囲および趣旨から逸脱することなく行うことが可能であることが当業者には理解されるであろう。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7
図8