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特許7570497分析システム及び分析システム用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】分析システム及び分析システム用プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/80 20060101AFI20241011BHJP
   G01N 30/82 20060101ALI20241011BHJP
   G01N 21/65 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
G01N30/80 F
G01N30/80 E
G01N30/82
G01N30/80 Z
G01N21/65
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023510261
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(86)【国際出願番号】 JP2021047821
(87)【国際公開番号】W WO2022209075
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2021058289
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】長井 悠佑
(72)【発明者】
【氏名】若林 慧
(72)【発明者】
【氏名】北村 裕之
(72)【発明者】
【氏名】森長 佳世
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-052940(JP,A)
【文献】国際公開第2014/027652(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/029676(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/177857(WO,A1)
【文献】特表2002-536653(JP,A)
【文献】国際公開第2010/122718(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/00 -30/96
B01J 20/281-20/292
G01N 21/65
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体試料を成分ごとに分離する液体クロマトグラフと、
前記液体クロマトグラフにより分離された試料成分を含む液体を試料保持体に形成された複数の試料保持部に分取するフラクションコレクタと、
前記フラクションコレクタによって分取された各分取液に含まれる各試料成分を分析する分析装置とを含む分析システムであって、
前記各試料保持部に対する操作履歴を記憶する記憶部を備え
前記記憶部が、複数の試料保持部のうち、使用可能な試料保持部又は選択すべき試料保持部を識別するための操作履歴を記憶するものであることを特徴とする分析システム。
【請求項2】
前記分析装置がラマン分光分析装置である、請求項1に記載の分析システム。
【請求項3】
前記記憶部が、前記操作履歴を前記試料保持体に付された標識に紐づけて記憶するものである、請求項1又は2に記載の分析システム。
【請求項4】
前記記憶部が、前記操作履歴として、ある1つの試料保持部が前記分取液の分取に使用されたか否かを記憶するものである、請求項1~3の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項5】
前記記憶部が、前記分取液の分取に使用された試料保持部について、該試料保持部に対して過去に行われた分析の種類及び/又は分析条件を前記操作履歴として記憶するものである、請求項1~4の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項6】
前記操作履歴を表示する履歴表示部をさらに備える、請求項1~5の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項7】
前記記憶部が記憶している前記操作履歴に基づいて、前記各試料保持部に対する操作を制限可能なものである、請求項1~6の何れか一項に記載の分析システム。
【請求項8】
液体試料を成分ごとに分離する液体クロマトグラフと、前記液体クロマトグラフにより分離された試料成分を含む液体を試料保持体に形成された複数の試料保持部に分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタにより分取された各分取液に含まれる各試料成分を分析する分析装置を含む分析システムに用いられるプログラムであって、
前記各試料保持部に対する操作履歴であって、複数の試料保持部のうち、使用可能な試料保持部又は選択すべき試料保持部を識別するための操作履歴を記憶する記憶部としての機能をコンピュータに発揮させることを特徴とする分析システム用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィとラマン分光分析等を組み合わせた分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数の分析手法を組み合わせるハイフネイティッド技術の一種として、液体クロマトグラフィとラマン分光分析等の複数の分析手法を組み合わせる場合には、例えば、特許文献1に記載されているように、液体クロマトグラフによって分離されフラクションコレクタにより分取された分取液を、そのまま他の分析装置に供することができるように、試料保持部としてのウエルが形成されたプレート等の試料保持体を使用する場合がある。
【0003】
前述したようなプレートを使用して液体クロマトグラフから流れ出る液体を分取する場合には、1回の液体クロマトグラフィから得られる分取液の滴下だけではプレートの全てのウエルを使いきらず、未使用のまま残っているウエルを次回以降の液体クロマトグラフィに使用することがある。また、液体クロマトグラフィだけでなく、他の分析をする場合においても、1つのプレートの全てのウエルに対して一度に分析をするのではなく、選択したウエルのみを分析することも考えられる。
【0004】
このような場合において、従来は、どのウエルを分取液の分取や分析に使用したか等というプレートの各ウエルに関する操作履歴をユーザがメモを取る等して管理しているためにユーザの負担が大きい。特に、複数のユーザが同じプレートを共有する場合には、プレートの操作履歴が十分に伝達されず、使用済みのウエルに別の分取液を滴下することによる分取液のコンタミや分析対象となるウエルの選択ミスによる分析漏れ等の人為的ミスが発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-132621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、複数の試料保持部を備えた試料保持体を複数回の液体クロマトグラフィにわたって使用する場合であっても、試料保持体の各試料保持部についての操作履歴の管理に係るユーザの負担を従来よりも小さくし、かつ人為的ミスによる分取液のコンタミや分析対象となるウエルの選択ミスによる分析漏れ等を抑制することができる分析システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明に係る分析システムは、液体試料を成分ごとに分離する液体クロマトグラフと、前記液体クロマトグラフにより分離された試料成分を含む液体を試料保持体に形成された複数の試料保持部に分取するフラクションコレクタと、前記フラクションコレクタによって分取された各分取液に含まれる試料成分を分析する分析装置とを含む分析システムであって、前記各試料保持部に対する操作履歴を記憶する記憶部を備えたことを特徴とする。
【0008】
このように構成された分析システムによれば、前記記憶部が前記各試料保持部に関する操作履歴を記憶するものであるので、前記各試料保持部が前記分取液の分取に使用されたか否か等の操作履歴をユーザがメモなどによって管理しなくともよく、ユーザの負担を従来よりも大幅に軽減することができる。また各試料保持部についての操作履歴をユーザが管理しなくてよいので、人為的ミスによる分取液のコンタミや分析対象となるウエルの選択ミスによる分析漏れ等を抑制することも可能である。
【0009】
本発明の具体的な実施態様としては、前記分析がラマン分光分析である分析システムを挙げることができる。
【0010】
前記記憶部が、前記操作履歴を前記試料保持体に付された標識に紐づけて記憶するものとすることが好ましい。
【0011】
前記記憶部が、前記操作履歴として、ある1つの試料保持部が前記分取液の採取に使用されたか否かを記憶するものであれば、同じ試料保持体を次回以降の液体クロマトグラフィで得られる分取液の採取に使用する場合や別の分析装置で分析する場合に、使用可能な試料保持部や選択すべき試料保持部を簡単に識別することができる。
【0012】
より使い勝手の良い分析システムとするために、前記記憶部が、各試料保持部に対して過去に行われた分析の種類及び/又は分析条件を前記操作履歴として記憶するものとしても良いし、これら操作履歴を表示する履歴表示部をさらに備えるものとしても良い。
【0013】
人為的なミスをより低減させるには、前記記憶部が記憶している前記操作履歴に基づいて、前記各試料保持部に対する操作を制限可能なものとすることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
以上に説明したように、本発明に係る分析システムによれば、試料保持体の管理に係るユーザの負担を従来よりも大幅に軽減し、かつ人為的ミスによる分取液のコンタミや分析対象となるウエルの選択ミスによる分析漏れ等を抑制することができる分析システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態における分析システムの構成を示す模式図。
図2】同実施形態において使用される試料保持体の一例を示す模式図。
図3】同実施形態における統合管理装置、LC制御演算部、フラクション制御演算部、及び、ラマン制御演算部の構成を示す機能ブロック図。
図4】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つであるポータル画面。
図5】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つである滴下範囲設定画面。
図6】同実施形態における操作画面表示部が表示する操作画面の1つである操作履歴表示画面。
【符号の説明】
【0016】
100・・・分析システム
S ・・・液体試料
SS ・・・分取液
PL ・・・プレート(試料保持体)
W ・・・ウエル(試料保持部)
10 ・・・クロマトグラフ
20 ・・・フラクションコレクタ
30 ・・・ラマン分光分析装置
40 ・・・統合管理装置
42 ・・・操作画面表示部(操作履歴表示部)
44 ・・・記憶部
【発明を実施するための形態】
【0017】
本実施形態の分析システム100は、液体クロマトグラフィとラマン分光法との双方を利用したLC―ラマン分析を行うものであり、いわゆるハイフネイティッド技術の一種である。具体的には図1に示すように分析システム100は、クロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、及び、ラマン分光分析装置30と、これらの動作の設定、データ解析、分析結果の表示等を統合管理する統合管理装置40と、を備えている。クロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、及び、ラマン分光分析装置30は、それぞれのハードウェアの動作やデータ解析を行うための専用のソフトウェアである制御演算部1C、2C、3Cを備えている。統合管理装置40はオーバーレイソフトとして動作するように構成されており、統合管理装置40と各機器の制御演算部1C、2C、3Cとが連携することで、1つの分析システム100として一体的に動作する。
【0018】
各機器について詳述する。
【0019】
クロマトグラフ10は、液体クロマトグラフィにより液体試料Sを成分ごとに分離し検出するものである。
【0020】
クロマトグラフ10は、図1に示すように、貯留部11に貯留された移動相Zをポンプ12により流路13に吸い上げるとともに、その流路13に液体試料Sを注入し、移動相Zとともに液体試料Sを分離カラム14に送液することで、液体試料Sを成分ごとに分離するように構成されたものである。分離カラム14の下流側には液体試料Sの分離された成分を検出する成分検出器15が設けられている。
【0021】
なお、移動相Zは、例えば複数種類の液体が混合された混合液であり、ここでは水とエタノール等の有機溶媒との混合液である。ただし、移動相Zとしては、単一の液体からなるものであっても良いし、濃度勾配を有するグラジエント溶媒であっても良い。
【0022】
また、クロマトグラフ10は、ポンプ12等の各機器の制御を司るとともに成分検出器15の出力に基づいて液体試料Sのクロマトグラムを生成するLC制御演算部1Cをさらに備えている。LC制御演算部1Cは専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているクロマトグラフ専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0023】
より具体的にはLC制御演算部1Cは、統合管理装置40からクロマトグラフ設定情報を受け付けて、その情報に基づいてポンプ12の移動相Zの送出速度等を制御するとともに、成分検出器15の出力信号に基づいて液体試料Sのクロマトグラムに関するデータを生成するものである。また、LC制御演算部1Cは生成されたクロマトグラムに関するデータを統合管理装置40に出力する。
【0024】
フラクションコレクタ20は、図1に示すように、クロマトグラフ10の成分検出器15の下流側に設けられ、成分検出器15を通過した液体試料S由来の試料成分を移動相Zとともに分取するものである。この実施形態では、フラクションコレクタ20は、複数のウエルWがマトリクス状に形成されたプレートPLに対して液体クロマトグラフィによって分離された液体試料S由来の試料成分と移動相Zとを含有する液体を所定量ずつ異なるウエルWに滴下することによって分取するように構成されている。なお、以下ではフラクションコレクタ20によりプレートPLに分取される液体を分取液SSと言い、この分取液SSは、移動相Zに液体試料S由来の試料成分が含まれてなるもののみならず、移動相Zのみからなるものも含む概念である。
【0025】
ここで、プレートPLは図2に示すように、個別の標識Aとして、プレート名等を示す識別コードを備えている。識別コードは例えばDataMatrix(登録商標)等の2次元バーコードであって、プレートPLにおいてウエルWが形成されている面に印字又は刻印されている。なお、識別コードはこれに限られるものではなく、QRコード(登録商標)や1次元のバーコードであってもよいし、プレートPLに形成されている切り欠きの固有の位置を識別コードとして用いてもよい。
【0026】
フラクションコレクタ20の構成について詳述すると、成分検出器15の出口流路に接続された移動式プローブ21を具備し、ステージ22上に載置されているプレートPLのウエルWに対して分取液SSを所定量ずつ次々に滴下するように構成されている。ここで、分取液SSがクロマトグラムにおいてピークに相当する部分が分取されている場合には、液体試料S由来の試料成分が含まれているが、ピーク以外の部分に相当する分取液SSにも成分検出器15では検出できない種類の試料成分が含まれている可能性がある。
【0027】
また、移動式プローブ21にはプレートPLに付与されている識別コードを読み取るための第1コードリーダ23が取り付けられている。ステージ22にプレートPLが載置されている状態で移動式プローブ21が初期位置に移動した際にプレートPLの識別コードが第1コードリーダ23で読み取られて、プレートPLのプレート名等が取得されるよう構成されている。
【0028】
加えて、フラクションコレクタ20は、移動式プローブ21等の制御や各プレートPLの各ウエルWへの分取液SSの滴下状態等に関する情報であるフラクション情報を生成するフラクション制御演算部2Cをさらに備えている。
【0029】
フラクション制御演算部2Cは、専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているフラクションコレクタ専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0030】
より具体的にはフラクション制御演算部2Cは、移動式プローブ21の位置や移動式プローブ21からプレートPLに分取される分取液の分取条件(分取流量、分取時間等)の制御をする。また、フラクション制御演算部2Cは、統合管理装置40から入力されるフラクション設定情報に基づいて分取液SSの滴下を行った場合のプレートPLにおけるウエルWの使用範囲である予測フラクション結果や、実際プレートPLに対して分取液SSの滴下を行った場合のフラクション結果等のフラクション情報を生成する。フラクション制御演算部2Cで生成されるフラクション情報に関するデータは統合管理装置40に送信される。
【0031】
次にラマン分光分析装置30について説明する。ラマン分光分析装置30は、プレートPL上のウエルWに滴下された分取液SSを乾燥させた状態で、分取液SSに含まれる試料成分をラマン分光法に基づいて分析するものである。なお、プレートPLについてはフラクションコレクタ20において乾燥が終了した状態のものをユーザがラマン分光分析装置30に運び設置しているが、フラクションコレクタ20とラマン分光分析装置30との間でオートワークチェンジャによってプレートPLが搬送されるようにしてもよい。
【0032】
ラマン分光分析装置30は、図1に示すように、分取液SSが乾燥した液体試料S由来の試料成分を保持するプレートPL上のウエルWにレーザ光等の励起光を照射する光照射器31と、励起光が照射されることにより試料成分から発生するラマン散乱光を分光する分光器32と、分光されたラマン散乱光を検出するラマン散乱光検出器33と、光を照射しているウエルWの顕微鏡写真を撮像するカメラ34と、プレートPLに付与されている識別コードを読み取るための第2コードリーダ35と、を備えている。
【0033】
加えて、ラマン分光分析装置30は、光照射器31が射出するレーザ光がプレートPL上において照射される位置の制御等やラマン散乱光検出器33の出力に基づいてラマンスペクトルを生成するラマン制御演算部3Cをさらに備えている。
【0034】
ラマン制御演算部3Cは、専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されているラマン分光分析装置専用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。
【0035】
より具体的にはラマン制御演算部3Cは、統合管理装置40からラマン分光分析設定情報を受け付けて、その情報に基づいて各機器を制御し、プレートPL上に保持されている各ウエルW上の試料成分についてラマン分光分析を実行する。ラマン制御演算部3Cはまた、各ウエルWの試料成分から得られたラマン散乱光検出器33からの出力に基づいてそれぞれラマンスペクトルに関するデータを生成する。
【0036】
ラマン制御演算部3Cは、各ウエルWの試料成分から得られたラマンスペクトルについて、第2コードリーダ35で読み取られたプレートPLのプレート名等を示す識別コードと、レーザ光を照射したウエルWの位置情報と、カメラ34で撮像されたウエルWの顕微画像データと、を組にして統合管理装置40に送信する。
【0037】
次に統合管理装置40について説明する。統合管理装置40は専用又は汎用のコンピュータにより構成され、メモリに格納されている統合管理装置用のプログラムが実行され、各機器が協業することによりその機能が実現される。また、統合管理装置40は図3に示すように、LC制御演算部1C、フラクション制御演算部2C、ラマン制御演算部3Cと有線又は無線のネットワークで接続されており、統合管理装置40は各制御演算部1C、2C、3Cに対して分析に関するパラメータ等を設定するためのクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報をそれぞれ送信する。また、統合管理装置40は、各制御演算部1C、2C、3Cから得られた分析結果やプレートPLに対して行った動作結果等に関する情報を受信する。
【0038】
具体的には図3に示すように統合管理装置40は、ユーザからの入力を受け付ける入力受付部41と、各装置10、20、30に関する操作画面をディスプレイDPに表示する操作画面表示部42と、操作画面に対するユーザからの入力に基づいて分析に関するクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報を生成し、各装置10、20、30に対して送信する設定情報生成部43と、設定情報生成部43で生成されたクロマトグラフ設定情報、フラクション設定情報、ラマン分光分析設定情報、各装置10、20、30から受信された分析結果や操作結果に関する情報、使用されているプレートPLに関する情報等を記憶するデータベースである記憶部44と、記憶部44に記録されている情報に基づいて統合された分析概要画面をディスプレイDPに表示する分析概要表示部45と、を少なくとも備えている。
【0039】
入力受付部41は、ユーザからキーボードやマウス等の入力デバイスによる操作画面や分析概要画面等に入力を受け付ける。
操作画面表示部42は、分析の設定又は分析結果の表示を行うための操作画面をディスプレイDPに表示する。表示される操作画面の一例として、図4に示すようなポータル画面SC1を挙げることができる。このポータル画面SC1はクロマトグラフ10、フラクションコレクタ20、ラマン分光分析装置30のいずれかの分析に関する設定、又は、記憶部44に記憶されている分析結果の表示を選択するための操作画面である。
【0040】
図5は、例えば、フラクション領域がユーザによって選択された場合にウインドウとして表示されるフラクションコレクタ20の操作画面の一例である。
使用予定のプレートPLが所定の位置にセットされ、読み取りボタンが選択されることでフラクションコレクタ20の第1コードリーダ23により選択されたプレートPLの識別コードが読み込まれ、使用予定のプレートPLについて、プレート名や画像などが表示されるようになっている。この図5の操作画面は、プレートPLに対する分取液SSの滴下範囲を設定用クロマトグラムに基づいて設定する滴下範囲設定画面SC2であり、ユーザはこの操作画面において設定用クロマトグラムを参照しながらクロマトグラフ10の成分検出器15から導出される分取液SSをどのような条件で分取するかを設定することができる。これらの設定が行われると、設定情報生成部43はフラクション設定情報をフラクション制御演算部2Cに送信する。そして、フラクション制御演算部2Cで演算された滴下を開始するウエルWの位置からどの範囲まで滴下されるかの予測結果を統合管理装置40が受信し、操作画面表示部42は滴下範囲設定画面SC2におけるプレートPLのイメージ上に表示するようにしてある。
【0041】
最終的に滴下に関する設定がユーザによって承認されると、設定情報生成部43は、フラクションコレクタ20に送信する分取パラメータ等のフラクション設定情報を生成する。そして、生成されたフラクション設定情報は統合管理装置40からフラクション制御演算部2Cに送信され、フラクション制御演算部2Cによってフラクションコレクタ20の各機器が制御されて実際のプレートPLに対して分取液SSの分取が行われる。そして、クロマトグラフ10で分析された液体試料Sと分取に使用されるプレートPLのプレート名等を示す識別コードが紐付けられて記憶部44に記憶される。
【0042】
なお、操作画面表示部42により表示される操作画面はフラクションコレクタ20に限られるものではなく、図3のポータル画面SC1においてLC領域がユーザにより選択された場合にはクロマトグラフ10の操作画面が表示され、ポータル画面SC1のラマン領域がユーザにより選択された場合にはラマン分光分析装置30の操作画面が表示される。各操作画面に対するユーザからの入力に基づいて設定情報生成部43はクロマトグラフ10又はラマン分光分析装置30のクロマトグラフ設定情報又はラマン分光分析設定情報を生成し、対応する装置10、30に送信する。このように統合管理装置40に対する入力のみで分析を開始するために必要な設定を行うことができ、各装置10、20、30の専用のソフトウェアを操作することなく、一連の分析を行うことができる。
【0043】
しかして、本実施形態に係る分析システム100の統合管理装置40が備える記憶部44は、前述したプレートPLに関する情報として、プレートPLに対して過去に行った操作の種類、操作の条件、操作の結果等に関する操作履歴をも記憶するものである。
【0044】
記憶部44は、この操作履歴をプレートPLに備えられた複数のウエルWの1つ1つについて記憶しており、例えば、操作履歴として、あるプレートPLに設けられたある1つのウエルWが、すでに分取液SSが滴下されて分取に使用されたものであるかどうかという情報を記憶している。
【0045】
また記憶部44は、操作履歴として、既に分取液SSの分取に使用されたウエルWに対して、分取時の液体クロマトグラフィの条件や、分取の乾燥条件、乾燥後にどのような種類の分析がどのような条件でどのような順番で行われたのか等の情報を記憶するようにしてある。
これら各ウエルWに対する操作履歴は、例えば、個別の標識AとしてプレートPLに付されたプレート名等を示す識別コードに紐づけて記憶部44により記憶されている。
【0046】
統合管理装置40が、記憶部44に記憶された各ウエルWに関する操作履歴を表示する履歴表示部をさらに備えていても良い。
【0047】
該操作履歴表示部は、前述した操作画面表示部42がその機能を兼ねるものであり、例えば、滴下範囲設定画面SC2におけるプレートPLのイメージ上であるウエルWを選択すると、操作画面表示部42によってディスプレイDP上に選択されたウエルSWが使用済みか否か等の操作履歴表示画面SC3(図6)を表示する。この図6では、選択されたウエルWについて、LCと表示された液体クロマトグラフィの結果R2と、Ramanと表示されたラマン分光分析の結果R3が示されている。そのため、この表示から、このウエルWについては既に分取液SSが分取されて、ラマン分光分析が行われたことが分かる。図6の操作履歴表示画面SC3では、各分析についての詳細な条件や回数、分取液の乾燥条件等は表示されていないが、これらの情報についても表示するように設定できることは言うまでもない。また滴下範囲設定画面SC2そのものに操作履歴を、例えば、操作履歴ごとにウエルを色分けするなどして簡易表示することも可能である。例えば図5においては使用可能なウエルWの範囲をエリアR1で示すようにしてある。
【0048】
このように構成された分析システム100の動作の一例として、フラクションコレクタ20による分取液の滴下範囲を設定する場合を挙げて説明する。
使用予定のプレートPLをフラクションコレクタ20の所定の位置にセットすると、識別コードを第1コードリーダ23が読み込み、識別コードに紐づけて記憶部44に記憶されている該プレートPLの各ウエルWに関する操作履歴が読み出される。記憶部44から読みだされた操作履歴は、例えば、クロマトグラフ10から流れ出る液体をどのような条件で滴下するかを設定するための操作画面上に表示されたプレート画像に反映される。本実施形態では、記憶部44に記憶された各ウエルWに対する操作履歴に基づいて、例えば、設定情報生成部43がユーザからの入力に対して、既に分取液SSの分取に使用された履歴が記憶されているウエルWを選択することを制限できるようにしてある。操作履歴を利用した分析条件の設定や履歴情報の確認等は、フラクションコレクタ20だけではなく、クロマトグラフ10やラマン分光分析装置30の条件設定画面においても同様に行うことができる。
【0049】
このように構成した分析システム100によれば、多数のウエルWが形成されたプレートPLを使用する場合であっても、各ウエルWの使用状況をユーザがメモを取るなどして管理する必要がない。その結果、プレートPLの管理に係るユーザの負担を大幅に低減することができる。
【0050】
より具体的には、プレートPLの各ウエルWについて、分取液SSの分取に使用されたかどうかを記憶部44が記憶するので、次の分析で分取液SSの分取に使用できるウエルWを容易に判別することができる。また本実施形態では、分取に使用する予定のウエルWを選択する際に、既に使用済みのウエルWを選択できないようにしてあるので、異なる分取液SSを同じウエルに滴下してしまうような人為的ミスをより確実に防ぐことができる。
【0051】
記憶部44には、分取液SSが分取された際の液体クロマトグラフィの分離条件、分取液SSの滴下条件や、分取後の乾燥条件等についても記憶することができるので、多数のウエルWに保持された各試料成分について、分析条件をより厳密に管理することができる。その結果、どのウエルWについてラマン分光分析を行うかについてや、既に行ったラマン分光分析の結果の信頼性等を判断するための判断材料をユーザに与えることができる。
【0052】
また、乾燥後にどのような種類の分析がどのような条件で、どのような順番で行われたかについて記憶することも可能であるので、例えば、ある一群のウエルWについて複数回ずつラマン分光分析を行う場合等において、対象となるウエルWについて定めた回数だけ漏れなく分析ができているかどうかなどを簡単に確認することができるので、非常に使い勝手がよい分析システム100とすることができる。
【0053】
本発明は、前述したものに限られない。
例えば、操作履歴を記憶する記憶部は、前述したように統合管理装置が備えるものに限らず、例えば、分析システムを構成するそれぞれのハードウェア専用のソフトウェアである各制御演算部が備えるものとしても良く、統合管理装置が、これら制御演算部にそれぞれ記憶された操作履歴を読み出して表示するものとしても良い。
【0054】
例えば、各ウエルに対する操作履歴は必ずしもプレートに付された識別コードに紐づけて記憶されるものでなくても良く、各ウエルに付された識別コード等に紐づけて記憶されるものであっても良い。
【0055】
前述したように、各ウエルの使用履歴に基づいて、各ウエルを予定している操作を強制的に制限するものに限らず、予定している操作と同じ操作が以前に同行われた旨のエラーを表示し、それでも操作を続けるかどうかをユーザの判断に委ねるようにしても良い。また、このユーザの判断に委ねるか否かの設定はユーザが入力や設定可能な各操作それぞれについて個別に設定できるようにしても良い。
【0056】
記憶部が、操作履歴として前述した全ての履歴を必ずしも記憶するものでなくても良く、少なくとも何れかの操作履歴を記憶するものとすればよい。
【0057】
分取液又は分取液に含まれる試料成分を保持する試料保持体としては、分取液又は試料成分を保持する試料保持部を複数ひとまとめのものとして備えた試料保持体であれば良く、試料保持体において各試料保持部が必ずしも一体に固定されていなくても良い。このような試料保持体の一例としては、試料保持部として試験管のような独立した容器を使用し、複数の容器とこれら容器を規則的に並べた状態で複数個収容可能な試験管ラックとを含む試料保持体等を挙げることができる。また、複数の試料保持部が一体となっている試料保持体としては、前述したようなウエルを備えるプレートに限らず、試料保持部としてその表面に試料を載置するサンプルチップを複数載置したプレート等を使用するものとしても良い。
【0058】
1つの試料保持体に設けられている試料保持部の数に特に制限はないが、50個以上や、100個以上、200個以上など多ければ多いほど、本願発明の効果を顕著に奏することができる。
【0059】
前記実施形態では、分析システムが液体クロマトグラフ、フラクションコレクタ、ラマン分析装置をそれぞれ一台ずつ備える場合について説明したが、同じ種類の装置を複数台備えるものとしても良い。このような場合には、同じ種類の操作を行える複数の装置の何れかにおいて既に行われた操作を別の装置で繰り返そうとした場合にその操作を制限したり、エラー表示等の警告を行うものとしても良い。
【0060】
本発明の分析システムとしては、必ずしもラマン分光分析装置を備えている必要はなく、液体クロマトグラフィにより分離された液体試料を例えば赤外分光法、核磁気共鳴又は飛行時間型質量分析法などの原理を用いて分析する分析装置を備えていても良いし、これら各種分析装置を複数組み合わせたものであっても良い。
【0061】
統合管理装置を構成する各部については、通常のコンピュータによってその機能が実現されるものに限られない。例えばタブレット端末やスマートフォン等の携帯端末に統合管理装置用ソフトウェアをインストールし、各装置と電子端末間で無線通信によるデータの授受を行うことにより実施形態で説明した各部の機能が実現されるようにしてもよい。また、携帯端末上では実質的な演算を行わずにサーバにおいて各部の機能が実現されるようにし、分析概要表示部が生成する分析概要画面や操作画面表示部で生成される操作画面が携帯端末上で表示されるようにしてもよい。
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、複数の試料保持部を備えた試料保持体を複数回の液体クロマトグラフィにわたって使用する場合であっても、試料保持体の各試料保持部についての操作履歴の管理に係るユーザの負担を従来よりも小さくし、かつ人為的ミスによる分取液のコンタミや分析対象となるウエルの選択ミスによる分析漏れ等を抑制することができる分析システムを提供することができる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6