(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-10
(45)【発行日】2024-10-21
(54)【発明の名称】デュアルアパーチャ方式の高解像度電子ビーム装置
(51)【国際特許分類】
H01J 37/09 20060101AFI20241011BHJP
H01J 37/141 20060101ALI20241011BHJP
【FI】
H01J37/09 A
H01J37/141 A
(21)【出願番号】P 2023546026
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 US2022013959
(87)【国際公開番号】W WO2022169653
(87)【国際公開日】2022-08-11
【審査請求日】2024-09-18
(32)【優先日】2021-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャン シンロン
(72)【発明者】
【氏名】シアーズ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】チュブン ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】グレッラ ルカ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第3846660(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0371564(US,A1)
【文献】国際公開第2020/235003(WO,A1)
【文献】特開2020-064788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、
電子ビームを放出するように構成された電子源と、
前記電子源の近傍に配置された抑制電極と、
前記電子源の近傍に配置された抽出電極と、
第1直径を有する第1ビーム絞りアパーチャと、第2直径を有する第2ビーム絞りアパーチャと、前記第1ビーム絞りアパーチャ及び前記第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルと、を画定するビーム絞りアセンブリであって、前記チャネルは、前記第1ビーム絞りアパーチャの前記第1直径及び前記第2ビーム絞りアパーチャの前記第2直径より大きい第3直径を有し、前記ビーム絞りアセンブリは、前記第1ビーム絞りアパーチャにおいて前記電子ビームを受けるように配置され、
前記第1直径は、前記第2直径より1.5から5.0倍大きい、ビーム絞りアセンブリと、
前記ビーム絞りアセンブリに隣接して配置された少なくとも1つの磁極片と、
を備える、システム。
【請求項2】
前記ビーム絞りアセンブリは、前記ビーム絞りアセンブリの表面に、前記電子源からの前記電子ビームを受けるフランジを備え、前記フランジは、前記電子源と、前記少なくとも1つの磁極片との間に配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1ビーム絞りアパーチャは、前記第2ビーム絞りアパーチャよりも、前記電子源の近くに配置される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記ビーム絞りアパーチャは、前記第1ビーム絞りアパーチャと前記チャネルとの間に遷移領域をさらに備え、前記遷移領域は、前記第1直径から前記第3直径に増加する直径を有し、前記遷移領域は、前記電子ビームの方向に沿って1mmから10mmの長さを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第3直径は、一次電子をクリッピングすることなく、二次電子の多くを止めるように構成される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
対物レンズと、前記ビーム絞りアセンブリ及び前記対物レンズの間の前記電子ビームの経路に配置されたアパーチャと、前記アパーチャ及び前記ビーム絞りアセンブリの間の前記電子ビームの前記経路に配置されたコンデンサレンズと、をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
対物レンズと、前記ビーム絞りアセンブリ及び前記対物レンズの間の前記電子ビームの経路に配置されたアパーチャと、前記アパーチャ及び前記対物レンズの間の前記電子ビームの前記経路に配置されたコンデンサレンズと、をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記ビーム絞りアセンブリは、前記電子源からの前記電子ビームを受ける前記表面上に、窪みを画定し、前記第1ビーム絞りアパーチャは、前記窪みの底に配置され、前記窪みは、前記第1直径及び前記第2直径よりも大きい第4直径を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記第2ビーム絞りアパーチャは、前記電子ビームの経路に沿って、5mmから10mmだけ前記第1ビーム絞りアパーチャから離間する、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記第3直径は約1mmであり、前記チャネルの長さは6mmから12mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
電子ビームを形成することと、
ビーム絞りアセンブリを通じて前記電子ビームを配向することと、を含む方法であって、前記ビーム絞りアセンブリは、第1直径を有する第1ビーム絞りアパーチャと、第2直径を有する第2ビーム絞りアパーチャと、前記第1ビーム絞りアパーチャ及び前記第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルと、を画定し、前記チャネルは、前記第1ビーム絞りアパーチャの前記第1直径及び前記第2ビーム絞りアパーチャの前記第2直径より大きい第3直径を有し、前記ビーム絞りアセンブリは、前記第1ビーム絞りアパーチャにおいて前記電子ビームを受けるように配置され
、前記第1直径は、前記第2直径より1.5から5.0倍大きい、方法。
【請求項12】
前記電子ビームが前記ビーム絞りアセンブリから出た後、クロスオーバーを形成するように前記電子ビームをフォーカスすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電子ビームが前記ビーム絞りアセンブリから出た後、前記電子ビームをデフォーカスすることをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記電子ビームのビーム電流は、1nAから100nAである、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記電子ビームの経路に沿って前記ビーム絞りアセンブリの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、前記電子ビームの前記経路に沿って前記コンデンサレンズの下流に配置されたアパーチャと、前記電子ビームの前記経路に沿って前記アパーチャの下流に配置された対物レンズとを通じて、前記電子ビームを配向することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記電子ビームのビーム電流は、0.1nAから20nAである、又は60nAから500nAである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電子ビームの経路に沿って前記ビーム絞りアセンブリの下流に配置されたアパーチャと、前記電子ビームの前記経路に沿って前記アパーチャの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、前記電子ビームの前記経路に沿って前記コンデンサレンズの下流に配置された対物レンズとを通じて、前記電子ビームを配向することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記電子ビームのビーム電流は、20nAから60nAである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
半導体ウェハの表面に前記電子ビームを配向することをさらに含み、前記第2ビーム絞りアパーチャにより選択されたビーム電流は、前記半導体ウェハの前記表面でのビーム電流と等しい、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記電子源からの前記電子ビームを受ける前記ビーム絞りアセンブリの表面上の窪みを通じて、前記電子ビームを配向することをさらに含み、前記第1ビーム絞りアパーチャは、前記窪みの底に配置され、前記窪みは、前記第1直径及び前記第2直径よりも大きい第4直径を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
前記電子ビームは前記チャネルを通過し、前記第3直径は、一次電子をクリッピングすることなく、二次電子の多くを止めるように構成される、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子ビームシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造業界における革新により、歩留まり管理、そして特に計測及び検査システムに対する要求が高まっている。限界寸法が益々縮小される一方で、業界では歩留まり向上、高価値製造を実現するために、時間短縮が求められている。歩留まり問題検出から、その修正までにかかる合計時間を最短化することにより、半導体製造業者にとっての投資収益率が決定される。
【0003】
論理及びメモリデバイスなどの半導体デバイスの作製は典型的に、半導体デバイスの各種特徴及び複数の段階を形成するため、多数の作製処理を使用して、半導体ウェハを処理することを含む。例えば、リソグラフィは、レチクルからパターンを、半導体ウェハ上に配置されたフォトレジストへと移すことを含む半導体作製処理である。半導体作製処理のさらなる例としては、化学的機械研磨(CMP)、エッチング、堆積、及びイオン注入が挙げられるが、これに限定されない。単一の半導体ウェハ上に作製された複数の半導体デバイスの配列は、個別の半導体デバイスに分離され得る。
【0004】
半導体製造時に、各種工程において検査処理が利用される。これによりウェハ上の欠陥を検出し、製造処理における歩留まり向上、したがって収益向上を促進する。集積回路(IC)等の半導体デバイス作製において、検査はこれまでも常に重要な部分であったが、半導体デバイスの寸法減に伴い、デバイスの故障につながる可能性のある欠陥が小さくなっていることから、製造基準を満たす半導体デバイスを適切に製造するのに、検査は今までになく重要になっている。例えば、半導体デバイスの寸法減に伴い、比較的小さな欠陥でも、半導体デバイスにおける不要な収差を生じ得るため、より小さな欠陥の検出が必要となっている。
【0005】
一方で、デザインルール縮小に伴い、半導体製造処理は、処理の実行能力の限界近くでの作業となり得る。さらに、デザインルール縮小に伴い、デバイスの電気的パラメータに影響し得る欠陥も小さくなっている。したがって、より感度の高い検査が求められる。デザインルール縮小に伴い、検査で検出される、潜在的に歩留まりに関連し得る欠陥の数が大幅に増える。また、検査で検出されるニューサンス欠陥の数も大幅に増える。したがって、ウェハ上でより多くの欠陥が検出され得、全ての欠陥をなくすように処理を修正することは困難且つ高価となり得る。実際にどの欠陥がデバイスの電気的パラメータと歩留まりに影響するのかを判定することで、制御処理方法が、その他多くを無視して、それら欠陥に集中することが可能となり得る。さらに、デザインルールが縮小されると、場合によっては処理による不良が、体系的となる傾向がある。即ち、設計内で多くの場合複数回繰り返される所定の設計パターンで、処理による不良が生じる傾向にある。空間的に体系的な、電気関連欠陥をなくすことは、歩留まりに影響し得る。
【0006】
集積回路の作製において使用されるシリコンウェハ等の物品の微細構造を作る又は調査するのに、一般的にフォーカス式電子ビームシステム(eビーム)が使用される。この電子ビームは、ウェハと相互作用すると、微細構造調査用に微細プローブとして作用する、電子銃におけるエミッタから放射された電子により形成される。
【0007】
図1は、電子ビームを生成する電子銃の従来例の実施形態の一実施形態である。熱電解放出(TFE)機構において、先端からの電子の放出輝度が、エキストラクタにより制御される。サプレッサが、電子のフォーカス(軌跡)を制御する。電子は、アノードにより、10kV、20kV、又は30kV等の特定のビームエネルギー(BE)まで加速される。アノードの設計は可変であり得る。例えば、
図1におけるビーム絞りアパーチャ(BLA)と、BLAのホルダとが、アノードを構成する。アノードは大抵接地されている。磁気銃レンズの磁極片及びコイルは、電子放出及び電子光学系に必要となり得る高真空の汚染を低減するために、一般的に空気中で封止される。
【0008】
磁気銃レンズの磁極片は、フォーカス距離を短くし、銃レンズ収差を小さくするために、フォーカス磁場内に電子源を浸すように設計される。したがって、
図1に示すように、等価銃レンズ(GL)が、先端と、BLAとの間に形成される。
図1は、電子銃の光学系を示す。ここで、放出電子の多くはBLAにより止められ、BLAは、半導体ウェハの評価及び検査等、ウェハ調査用途のための生ビーム電流(Iraw)を形成するために、立体角αの電子の中央部分のみを選択する。磁気レンズコイルを通じた電流により、BLAにより選択された電子ビームのフォーカスが制御される。BLAが選択した電子ビームは、ビームクロスオーバー(xо)を形成するようにフォーカスされてもよいし、電子ビームカラム光学系における後段のレンズを照らすようにデフォーカスされてもよい。
【0009】
図2A及び2Bは、従来例の、フォーカス式電子ビーム光学系を示す。
図2A及び2Bに示す4レンズ光学的構成は、固定されたBLA及びカラムアパーチャ(APT)での各種用途に対して、大きな範囲のビーム電流(例えば、約0.1nAから500nA)を選択し、各ビーム電流に対してウェハ(WF)での解像度を最適化するために利用される。
図2Aは、低ビーム電流(例えば、約0.1nAから30nA)用途用の光学系を示し、
図2Bは、高ビーム電流(例えば、約30nAから500nA)用途用の光学系を示す。
【0010】
図2Aにおいて、BLAにより選択された生ビーム電流(Iraw)における電子が、CL1と、APTとの間にクロスオーバ(xо)を形成し、その後、APTを照らすように、第1コンデンサレンズ(CL1)によりフォーカスされる。APTは、生電流Irawからビーム電流(BC)を選択する。第2コンデンサレンズ(CL2)及び対物レンズ(OL)は、アパーチャ数(NA、即ち、ウェハでの電子ビームフォーカス角度)の最適化に使用される。これにより、収差ぼけを最小限に抑える(即ち、レンズ球面収差、レンズ色収差、及び解析収差の組合せと、電子間のクーロン相互作用により生じるぼけを最小限に抑える)。CL1及びCL2は、静電レンズ又は磁気レンズのいずれであってもよい。対物レンズ(OL)は、電子をビームエネルギー(BE)から入射エネルギー(LE)まで減速させる、減速静電界と組み合わされた、油浸磁気レンズであり得る。
【0011】
図2Bにおいて、先端放射電子は、銃レンズ(GL)により強くフォーカスされ、BLAとCL1との間に第1クロスオーバー(xo1)が形成される。
図2BにおけるBLAが選択したIrawは、
図2Aに示すものよりも高い。
図2Bにおける放射角度αが、
図2Aにおけるものよりも大きいからである。APTは、第2クロスオーバー(xo2)におけるCL1フォーカスにより、より高ビーム電流を選択する。CL2は、より高BC用途における最適な解像度のため、最適NAを選択する。
【0012】
図2A及び2Bの設計では、動作を妨げ得る、電子間のクーロン相互作用による光学的解像度劣化が生じ得る。生ビーム電流(Iraw)が高いほど、光学的解像度は低くなる。
【0013】
特定用途向けのBCについて、BLAと、APTとの間の、(Iraw-BC)というビーム電流における残存電子が、ウェハにおいて追加の光学的ぼけを発生させる。これは、光学的解像度を劣化させる。一例において、
図2Aにおける30nAのIrawについて、ウェハ検査用途向けにBCが1nAとして選択されると、残存電子は29nAとなる。これら29nAの電子は、追加のクーロン相互作用(CI)によるぼけを発生させ、光学的解像度を劣化させる。別の例として、
図2Bにおける200nAのIrawについて、ウェハの物理的欠陥検査に対してBCが50nAとして選択された場合、残存電子は150nAとなる。これら150nAの電子は、追加のCIぼけを生成し、50nAのBCでの用途について、解像度を劣化させる。
【0014】
クーロン相互作用は、電子ビームスポットの中央部における解像度を劣化させるだけでなく、ビーム電子分布の裾をより長く、広くする。これはビームの中央電子により抽出される有用信号を汚染する。
【0015】
図2Bの設計を使用したモンテカルロ法によるコンピュータシミュレーションは、
図3A及び3Bに示すように、先端からウェハまでの光学系全体の最適のフォーカスにより、電子がウェハ上で如何に分布するかを示す。10kVのBE及び1keVのLEとともに使用される、50nAのBCに対する
図2Bにおける100nAのIrawについて、
図3Aは、電子が、長い裾及びぼけスポットを伴って、ウェハ上で如何に分布するかを示す。電子光学系におけるスポットサイズ(又は解像度)は、電子分布の中央部分により定義可能である。例えば、ビーム電流における全電子のxx%(例えば、FW50は50%)が含まれる、全幅スポットサイズを定義するのに、FWxxが利用される。
図3Aにおける電子分布を測定するのにFW50、FW75、及びFW85を使用して、
図3Bは、電子分布の裾により、中央スポットサイズが如何に変化するかを示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第8168951号
【文献】米国特許第3846660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、改良した電子ビーム生成システム及び方法が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0018】
第1実施形態において、システムが提供される。システムは、電子ビームを放出するように構成された電子源と、電子源の近傍に配置された抑制電極と、電子源の近傍に配置された抽出電極と、ビーム絞りアセンブリと、ビーム絞りアセンブリに隣接して配置された少なくとも1つの磁極片と、を備える。ビーム絞りアセンブリは、第1直径を有する第1ビーム絞りアパーチャと、第2直径を有する第2ビーム絞りアパーチャと、第1ビーム絞りアパーチャ及び第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルと、を画定する。チャネルは、第1ビーム絞りアパーチャの第1直径及び第2ビーム絞りアパーチャの第2直径より大きい第3直径を有する。ビーム絞りアセンブリは、第1ビーム絞りアパーチャにおいて電子ビームを受けるように配置される。
【0019】
ビーム絞りアセンブリは、ビーム絞りアセンブリの表面に、電子源からの電子ビームを受けるフランジを備え得る。フランジは、電子源と、少なくとも1つの磁極片との間に配置される。
【0020】
第1ビーム絞りアパーチャは、第2ビーム絞りアパーチャよりも、電子源の近くに配置され得る。
【0021】
ビーム絞りアパーチャは、第1ビーム絞りアパーチャとチャネルとの間に遷移領域をさらに備え得る。遷移領域は、第1直径から第3直径に増加する直径を有する。遷移領域は、電子ビームの方向に沿って1mmから10mmの長さを有するである。第3直径は、一次電子をクリッピングすることなく、二次電子の多くを止めるように構成され得る。
【0022】
第1直径は、第2直径より1.5から5.0倍大きい。
【0023】
システムは、対物レンズと、ビーム絞りアセンブリ及び対物レンズの間の電子ビームの経路に配置されたアパーチャと、アパーチャ及びビーム絞りアセンブリの間の電子ビームの経路に配置されたコンデンサレンズと、をさらに備え得る。
【0024】
システムは、対物レンズと、ビーム絞りアセンブリ及び対物レンズの間の電子ビームの経路に配置されたアパーチャと、アパーチャ及び対物レンズの間の電子ビームの経路に配置されたコンデンサレンズと、をさらに備え得る。
【0025】
ビーム絞りアセンブリは、電子源からの電子ビームを受ける表面上に、窪みを画定し得る。第1ビーム絞りアパーチャは、窪みの底に配置される。窪みは、第1直径及び第2直径よりも大きい第4直径を有する。
【0026】
第2ビーム絞りアパーチャは、電子ビームの経路に沿って、5mmから10mmだけ第1ビーム絞りアパーチャから離間し得る。
【0027】
一例において、第3直径は約1mmであり、チャネルの長さは約6mmから12mmである。
【0028】
第2実施形態において、方法が提供される。方法は、電子ビームを形成することと、ビーム絞りアセンブリを通じて電子ビームを配向することと、を含む。ビーム絞りアセンブリは、第1直径を有する第1ビーム絞りアパーチャと、第2直径を有する第2ビーム絞りアパーチャと、第1ビーム絞りアパーチャ及び第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルと、を画定する。チャネルは、第1ビーム絞りアパーチャの第1直径及び第2ビーム絞りアパーチャの第2直径より大きい第3直径を有する。ビーム絞りアセンブリは、第1ビーム絞りアパーチャにおいて電子ビームを受けるように配置される。
【0029】
一例において、電子ビームのビーム電流は、1nAから100nAである。
【0030】
方法は、電子ビームがビーム絞りアセンブリから出た後、クロスオーバーを形成するように電子ビームをフォーカスすることをさらに含み得る。
【0031】
方法は、電子ビームがビーム絞りアセンブリから出た後、電子ビームをデフォーカスすることをさらに含み得る。
【0032】
方法は、電子ビームの経路に沿ってビーム絞りアセンブリの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、電子ビームの経路に沿ってコンデンサレンズの下流に配置されたアパーチャと、電子ビームの経路に沿ってアパーチャの下流に配置された対物レンズとを通じて、電子ビームを配向することをさらに含み得る。一例において、電子ビームのビーム電流は、0.1nAから20nA、又は60nAから500nAである。
【0033】
方法は、電子ビームの経路に沿ってビーム絞りアセンブリの下流に配置されたアパーチャと、電子ビームの経路に沿ってアパーチャの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、電子ビームの経路に沿ってコンデンサレンズの下流に配置された対物レンズとを通じて、電子ビームを配向することをさらに含み得る。一例において、電子ビームのビーム電流は、20nAから60nAである。
【0034】
方法は、半導体ウェハの表面に電子ビームを配向することをさらに含み得る。第2ビーム絞りアパーチャにより選択されたビーム電流は、半導体ウェハの表面でのビーム電流と等しい。
【0035】
方法は、電子源からの電子ビームを受けるビーム絞りアセンブリの表面上の窪みを通じて、電子ビームを配向することをさらに含み得る。第1ビーム絞りアパーチャは、窪みの底に配置される。窪みは、第1直径及び第2直径よりも大きい第4直径を有する。
【0036】
電子ビームは、第1ビーム絞りアパーチャ及び第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルを通過可能である。チャネルは、第1ビーム絞りアパーチャの第1直径及び第2ビーム絞りアパーチャの第2直径より大きい第3直径を有する。第3直径は、一次電子をクリッピングすることなく、二次電子の多くを止めるように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
本開示の性質及び目的を完全に理解できるよう、次に列挙する添付の図面に基づく、以下の詳細な説明を参照されたい。
【
図1】電子銃の従来例の実施形態の実施形態である。
【
図2A】電子ビーム光学系の従来例の実施形態の実施形態である。
【
図2B】電子ビーム光学系の従来例の実施形態の実施形態である。
【
図3A】電子間のクーロン相互作用効果を示す電子光学的構成のコンピュータシミュレーションである。
【
図3B】電子間のクーロン相互作用効果を示す電子光学的構成のコンピュータシミュレーションである。
【
図4】本開示に係るデュアルアパーチャを有する電子銃の実施形態である。
【
図6A】
図4の電子銃を使用した光学的構成を示す。
【
図6B】
図4の電子銃を使用した光学的構成を示す。
【
図6C】
図4の電子銃を使用した光学的構成を示す。
【
図7】
図4及び
図5のデュアルアパーチャ電子銃に関する、ビームスポット電子分布による、電子銃の解像度向上を示す。
【
図8】BLA1と、BLA2との間の領域における、一次電子(PE)と、二次電子(SE)との間のクーロン相互作用を示す。
【
図9】二次電子移動経路を低減するための、BLA1と、BLA2との間の狭いチャネルを示す。
【
図10】デュアルアパーチャと、窪んだアノードを有する電子銃の実施形態である。
【
図12A】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図12B】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図12C】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図12D】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図12E】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図12F】本明細書に開示の実施形態を使用した実験による光学的画像である。
【
図13】本開示に係る方法の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
特定の実施形態に関して、特許請求される主題が記載されるが、本明細書に記載の全ての効果及び特徴を提供しないような実施形態を含むその他実施形態も本開示の範囲に含まれる。様々な構造的、論理的、処理ステップに対する、及び電子的変更が、本開示の範囲から逸脱することなく成され得る。したがって、本開示の範囲は、添付の請求項を参照することのみによって定義される。
【0039】
フォーカス式電子ビーム装置の性能は、一般的に、所与のビーム電流(スループット)に対するスポットサイズ(解像度)により特定される。高ビーム電流による高スループット及び小スポットサイズによる高解像度を実現するための一手段として、レンズの幾何収差を最小限に抑えた後に、高ビーム電流における電子間のクーロン相互作用を低減することが挙げられる。
【0040】
本明細書の実施形態は、銃領域における電子の移動に伴うクーロン相互作用の影響を低減することで、高解像度電子銃を構成するための、デュアルアパーチャの概念を開示する。これは、クーロン相互作用による軌跡変位効果が、距離累積ぼけを生じるという事実に基づく。高ビーム電流に対する電子ビーム解像度の向上がシミュレーション及び実験により示される。
【0041】
クーロン相互作用による解像度(スポットサイズ)劣化効果を軌道変位効果と称する。
軌道変位効果による電子ビームスポットぼけdTDは、以下の式1により表される距離累積効果である。
【数1】
【0042】
式中、zは、先端(Z_source)からウェハ(Z_wafer)への光軸であり、Fは、先端からウェハへのビーム形状軌跡r(z)と、ビーム電圧又はビームエネルギーV(z)と、ビーム電流I(z)との関数である。
【0043】
図2Aから2Bの設計について、式中の積分は2部位に分割され得る。一つの部位は、関数F[r(z),V(z),Iraw]による先端(Z_source)からカラムアパーチャ(Z_APT)までの積分であり、別の部位は、関数F[r(z),V(z),BC]によるカラムアパーチャ(Z_APT)からウェハ(Z_wafer)までの積分である。BCがIraw未満であれば、距離(Z_APT-Z_source)が短いほど、式1のCI(クーロン相互作用)ぼけd
TDが小さくなる。
【0044】
図4は、CIぼけを低減するデュアルアパーチャを有する電子銃の実施形態を示す。システム200は、電子ビーム204を発する電子源201を備える。電子源201は、先端であり得、或いは先端を含み得る。抑制電極202及び抽出電極203が、電子源201の近傍に配置される。
【0045】
ビーム絞りアセンブリ205は、少なくとも2つのビーム絞りアパーチャを画定する。第1ビーム絞りアパーチャ206(BLA1とも称する)は、第1直径212を有する。第2ビーム絞りアパーチャ207(BLA2とも称する)は、第2直径213を有する。第2直径213は、第1直径212よりも小さくなり得る。例えば、第1直径212は、第2直径213より1.5から5.0倍大きくあり得る。一例において、第1ビーム絞りアパーチャ206は、第2ビーム絞りアパーチャ207の約2から3倍の大きさであり得る。第1ビーム絞りアパーチャ206は、十分な電子により第2ビーム絞りアパーチャ207が照らされるように第2ビーム絞りアパーチャ207よりも大きく、開示の範囲はこの効果を呈する。第2ビーム絞りアパーチャ207は、クーロン相互作用を低減するように、電子源201近傍に配置され得る。例えば、
図4において、アパーチャはクーロン相互作用効果を低減するために、電子源201の近くに移動される(即ち、元の位置(OH開口位置)からBLA2位置まで、アパーチャを100mm超又はカラム長さの1/4超移動する)。概して、アパーチャは、銃磁場侵入が弱い位置に移動され得る。BLA2からの二次電子は、侵入する銃レンズ磁場によって強くフォーカスされる前に、SEチャネル壁により大部分クリッピング可能であり、これを
図8に示す。一例において、BLA2は、BLA1の下方で、約5mmから10mm、又は5mmから20mmだけ上方に移動される。
【0046】
図4を使用した例では、第1ビーム絞りアパーチャ206は直径150μmであり、第2ビーム絞りアパーチャ207は直径60μmである。1nAから500nAのビーム電流を選択するためにこれら寸法が選択される。1nAから100nAのビーム電流は、一般的に、評価及び検査における画像形成用である。100nAから500nAのビーム電流は、一般的に、電圧コントラスト(VC)検査用の、ウェハ上のフラッド帯電用である。第1ビーム絞りアパーチャ206及び第2ビーム絞りアパーチャ207は、特定の用途又は特定のビーム電流用に最適化され得る。
【0047】
ビーム絞りアセンブリ205はさらに、第3直径214を有するチャネル215を備える。第3直径214は、第1直径212又は第2直径213よりも大きい。チャネル215は、第1ビーム絞りアパーチャ206と、第2ビーム絞りアパーチャ207との間にあり、したがって第1ビーム絞りアパーチャ206と、第2ビーム絞りアパーチャ207とを接続する。電子ビーム204は、第1ビーム絞りアパーチャ206と、チャネル215と、第2ビーム絞りアパーチャ207とを通過可能である。
【0048】
一例において、第3直径214は約1mmであり、チャネル15の長さ(即ち、第1ビーム絞りアパーチャ206から第2ビーム絞りアパーチャ207まで)は約6mmから12mmである。第3直径214は、PEをクリッピングすることなく、SEの大部分を止めることができる。
図4、
図8、及び
図9において、チャネル15の長さは約12mmであり、
図10において、チャネル15の長さは約6mmである。
【0049】
図4に示すように、第1ビーム絞りアパーチャ206、第2ビーム絞りアパーチャ207、及びチャネル215がビーム絞りアセンブリ205に含まれる。第1ビーム絞りアパーチャ206は、第2ビーム絞りアパーチャ207よりも電子源201の近くに配置される。したがって、電子ビーム204は、第2ビーム絞りアパーチャ207に入る前に、第1ビーム絞りアパーチャ206に入る。
【0050】
第2ビーム絞りアパーチャ207は、
図2のカラムアパーチャ(APT)と同様の機能を提供可能である。したがって、カラムアパーチャの機能が電子銃領域に再配置される。これにより、先端(Z_source)からカラムアパーチャ(Z_APT)への距離が低減される。したがって、解像度に対するクーロン相互作用の影響が低減される。本明細書に記載のとおり、
図3B及び
図7での縮尺は同一である。解像度(又はスポットサイズ)は一般的にFW50により測定される。同一ビーム電流で、
図3BにおけるFW50は約3マスであり、
図7では約1.5マスである。したがって、本明細書に開示の実施形態によると、スポットサイズの約1/2の縮小、又はビーム電流密度の約4倍増が実現される。さらに、裾(FW75及びFW85)が狭まる。
図3Bと
図7とを比較すると、裾はFW75についてはそれぞれ約6マス、約3マスで、FW85についてはそれぞれ約8マス、約6.5マスである。
【0051】
電子間のクーロン相互作用の理論において、ビームスポットにおける電子分布は、ホルツマルク分布及びペンシルビーム分布に分割され得る。これらはいずれも非ガウス分布である。これら分布の裾は、一般的なガウス分布の裾よりも長い。クーロン相互作用はこの裾に関連し、これらクーロン相互作用はガウス裾よりも劣る。単一電子ビームシステムにおいて、電子分布は通常、ペンシルビーム分布である。複数ビームシステムにおいては、電子分布は通常、ホルツマルク分布である。式1と同様の原理において、分布の裾は距離累積による。したがって、カラムアパーチャが電子源の可能な限り近くに上方移動すれば、裾は狭まる。
【0052】
ビーム絞りアパーチャは、第1ビーム絞りアパーチャ206と、チャネル215との間に遷移領域210を備え得る。遷移領域210において、直径は、第1直径212から第3直径214に増加する。したがって、遷移領域210は、第1ビーム絞りアパーチャ206の内面、又はチャネル215の壁に対して傾斜又は湾曲し得る。遷移領域210は、電子ビームの方向に沿った長さが、1mmから10mmであり得る。理想的なのは、第2ビーム絞りアパーチャ207近傍で、二次電子の大部分を止めることである。これにより、
図8から11に示すように、一次電子と、二次電子との間のクーロン相互作用が最小限に抑えられる。
【0053】
少なくとも1つの磁極片208が、ビーム絞りアセンブリに隣接して配置される。
【0054】
ビーム絞りアセンブリ205は、電子源201からの電子ビーム204を受ける、ビーム絞りアセンブリ205の表面上に、フランジ209を備え得る。
図4に示すように、フランジ209は、磁極片208と、電子源201との間に配置される。フランジ209は、電子ビーム204から磁極片208を保護できる。
【0055】
図4のシステム200における電子銃は、
図5における銃電子光学系により説明され得る。
図5の銃レンズ(GL)は、先端及びBLA1(
図4における第1ビーム絞りアパーチャ206)の間に配置された、静電加速レンズと磁気収束レンズの組合せであり得る。BLA2(
図4における第2ビーム絞りアパーチャ206)により選択されたビーム電流は、第2生ビーム電流(Iraw2)となる。BLA1により選択されたビーム電流は、第1生ビーム電流(Iraw1)となる。BLA1のサイズは、BLA2のサイズよりも大きい(例えば、約1.5から5.0倍の大きさ)。BLA1と、BLA2との間の距離は、数ミリメートル等、比較的短くてもよい。例えば、BLA1と、BLA2との間の距離は、6mmから12mmであり得る。Iraw1及びIraw2は、銃磁気レンズの励起により制御される。BLA2後の電子ビームは、BLA2の下でクロスオーバー(xo)を形成するようにフォーカスされ得る。また、BLA2後の電子ビームは、後続のレンズを照らす、分散、テレセントリック、又は収束ビームを形成するようにデフォーカスされ得る。
【0056】
図6Aから6Cは、
図4の電子銃が使用され、BLA1及びBLA2のサイズが固定された、光学的構成を示す。
図6Aは、低ビーム電流(例えば、約0.1nAから20nA)用の例示的な銃光学系である。
図6Bは、中ビーム電流(例えば、約20nAから60nA)用の例示的な銃光学系である。
図6Cは、高ビーム電流(例えば、約60nAから500nA)用の例示的な銃光学系である。
【0057】
図6Aから6Cにおいて、
図2に示すカラムアパーチャ(APT)は、ここで、電子ビームブランキングのみに使用される開口(OH)である。開口アパーチャ(OH APT)は、あらゆるビーム電流の使用に関するあらゆる電子をカットすることなく、十分大きくなるように設計される。
【0058】
図6Aから6Cにおける電子光学的カラムはここでも、4枚のレンズを有する(又は、一実施形態では、4枚のレンズのみからなる)。これは、銃レンズ(GL)と、第1及び第2コンデンサレンズ(CL1及びCL2)と、対物レンズ(OL)と、を含む。開口アパーチャは、ビーム絞りアセンブリと、対物レンズとの間の電子ビームの経路に配置され得る。コンデンサレンズは、アパーチャ及びビーム絞りアセンブリの間、又はアパーチャ及び対物レンズの間の電子ビームの経路に配置され得る。
【0059】
動作時、特定のビーム電流に対して使用されるレンズは3枚のみであり得る。例えば、
図6A及び
図6Bにおいて、CL2は非動作となる。別の例として、
図6Bにおいて、CL1が非動作となる。
【0060】
BLA1と、BLA2との間の距離が短い(例えば、数ミリメートル)ため、残存電子(Iraw1-Iraw2)間のクーロン相互作用による距離累積ぼけは、無視できるほど十分に低減される。したがって、開口アパーチャによりビーム電流からの電子がクリッピングされていなければ、最終的なビーム電流(BC)は、Iraw2と完全に、又はほぼ等しくなる。
【0061】
したがって、BLA2の下の大多数、又は全ての残存電子が、
図6Aから6Cにおける電子光学的構成により除去され得る。このため、
図2及び
図3におけるCI軌道変位効果による追加のぼけの大部分が除去される。
図6Aから6Cにおける光学的構成によると、光学的解像度及び電子分布裾が改善される。
図7は、モンテカルロ法を利用したコンピュータシミュレーションによる改善を示す。
図7は、
図4及び
図5のデュアルアパーチャ電子銃による、ビームスポット電子分布を有する電子銃の解像度改善を示す。
【0062】
参照として、
図3Bは、従来の設計を使用した、ウェハでのビームスポットの電子分布を示す。
図7は、
図6Cの光学的構成による、ウェハでのビームスポットの電子分布を示す。
図3B及び
図7のシミュレーション条件は同じである。いずれの条件も、10kV BEで移動し、1keV LEで入射する、100nAのIraw電子において50nA BCである。
図7における最も有用な中央スポットサイズ(FW50)は、
図3Bのせいぜい半分である。
図7における電子分布の裾は、
図3Bと比べて大分狭い。
【0063】
多数のメモリ孔、チャネル孔、段差、及び深い溝により、3D NANDフラッシュ、3D DRAM、及び3D論理等の多数のチップデバイスが構成され得る。これら孔のボトム信号を収集できるよう、孔チャネル壁及びチャネル表面の縁からの信号汚染を低減するのに、裾の短い狭い一次電子ビームが寄与し得る。したがって、
図7の電子ビームは、
図3Bと比較して、より良い解像度と、より良い二次電子/後方散乱電子信号品質を実現可能である。
【0064】
図8は、BLA1と、BLA2との間の領域内で、一次電子と、二次電子との間のクーロン相互作用がどうように生じ得るかを示す。
図8に一次電子及び二次電子の軌跡を示す。エキストラクタの選択により、先端からBLA1平面への放射電子から、アノード電流(Ianode)が形成される。
図8には、Ianode電子軌跡の一部のみを示す。BLA1を通過するアノード電流電子の中央部分が、第1生ビーム電流Iraw1を形成する。加速エネルギー(即ち、ビームエネルギー、BE)により、Iraw1電子の一部がBLA2に衝突する。中央の電子の大部分の内のほんの一部が、BLA2を通過して、第2生ビーム電流Iraw2を形成する。Iraw2は、ウェハへの最終ビーム電流(BC)にほぼ等しくなり得る。
【0065】
Iraw1電子がBLA2に衝突すると、二次電子(SE)が一次電子の反対方向に生成される。これら二次電子は、BLA1へとかなりの低速で螺旋状に移動する。これにより、BLA1と、BLA2との間に二次電子雲が形成される。これら螺旋状のSE軌跡は、BLA1と、BLA2との間の領域における磁気レンズ磁場の侵入により形成される。BLA2近傍位置が低いほど、侵入する磁場が弱くなり得る。よって、BLA1近傍位置が高いほど、侵入する磁場が強くなり得る。したがって、BLA1に近いほど、侵入する磁気レンズ磁場が強くなるため、より短い空間周期で二次電子のより大きい螺旋運動となり得る。この結果、クーロン相互作用を通じて、これら電子軌跡が二次電子により変位させられるため、一次電子ビーム解像度を劣化させ得る。
【0066】
二次電子雲を低減するため、BLA1及びBLA2の間のチャネルの直径(例えば、
図8における寸法d)が、PEと、SEとの間のクーロン相互作用を最小限に抑えるように調整され得る。SE雲は、チャネル直径dが小さくなるほど減少する傾向にある。これを
図9に示す。
【0067】
図9において、より大きい極角(
図9において例えば、10度から90度)のSEの大部分が、侵入する磁場によりフォーカスされる前にチャネルの壁に当たるように、チャネル直径dは比較的小さく設計される(例えば、約1mm)。一次電子と、二次電子との間のクーロン相互作用の、解像度への影響が無視できるよう、極角が5度を超える二次電子を全てチャネルがクリッピングできるように、1mmの直径が選択された。dが小さいほど、より多くの二次電子が止められ得るが、高精度及び良好な真空ポンプでの製造は困難となり得る。
【0068】
侵入する磁場は、チャネルの底領域でかなり弱くなり得る。極角が小さい(例えば5度以下)のSEのみが、侵入する磁場によりフォーカスされ、BLA1へと螺旋状に上方に移動し得る。したがって、反対方向にPE近傍に移動するSEの数が大幅に低減するため、クーロン相互作用によるPE軌跡変位が低減可能である。
【0069】
デュアルアパーチャを有する電子銃の実施形態は、カラムアパーチャを銃領域へと上方に移動させ、BLA2下で、後クロスオーバー動作を利用して、ビーム電流を選択する。BLA2下の残存電子の大部分又は全てが除去され、これにより、クーロン相互作用の光学的解像度に対する影響が低減され得る。従来、
図2のように前クロスオーバー方法によりビーム電流が選択されていた。この場合、1つ又は複数のクロスオーバーが、カラムアパーチャの前に移動される。銃BLAと、カラムアパーチャとの間に、多数の残存電子が留まる。ビーム電流の大きな範囲を選択するため、銃BLAと、カラムアパーチャとの間の距離は、100mmから200mm(例えば、140mmから150mm)等のように長くなり得る。総合的な結果として、長距離にわたって分散された残存電子は、強いクーロン相互作用につながり、軌道変位効果を通じて光学的解像度を劣化させ得る。
【0070】
本明細書に開示の実施形態は、電子光学的カラム内の電子光学系を簡略化する。前クロスオーバーBC選択方法による従来の設計は、
図2示すように4枚のレンズカラムを使用していた。後クロスオーバーBC選択方法により、任意の所与のビーム電流に対して、カラム光学系内の3枚のレンズが使用され得る。したがって、光学的整合が簡略化され、信頼性が向上する。
【0071】
本明細書に開示の実施形態はさらに、PEと、SEとの間のクーロン相互作用を最小限に抑えられる。BLA1と、BLA2との間の狭いチャネルは、より大きい極角(例えば、10度から90度)の二次電子を、それらSEが長距離移動するようにフォーカスされる前に収集できる。BLA1と、BLA2との間の距離を縮めるために窪んだアノードが使用され、より小さな極角(例えば、5度以下)の二次電子でも、短い移動経路を移動するように高度に圧縮され得る。
【0072】
銃磁気レンズ磁場は、SEを低速で螺旋運動させ得る。これにより、
図8で、BLA1と、BLA2との間の領域内にSE雲を形成する。BLA1近傍で侵入する磁気レンズ磁場が強くならないように、
図10に示すように窪んだアノードが使用され得る。ビーム絞りアセンブリは、電子源からの電子ビーム204を受ける表面上に、窪み211を画定する。第1ビーム絞りアパーチャ206(BLA1)が、窪み211の底に配置される。窪みは、BLAの第1直径及び第2直径よりも大きい第4直径を有する。第4直径はさらに、チャネルの第3直径よりも大きくなり得る。
【0073】
窪み211は、BLA1からの低エネルギーSEが約1mmの螺旋運動(
図11A及び11B)で即座にBLA1に撥ね返されるように、エキストラクタからアノードへの加速場が十分にBLA1表面へと侵入することを可能とし得る。これによって、PEと、SEとの間のクーロン相互作用が抑制される。窪み211はさらに、BLA1及びBLA2の間のチャネルの長さを圧縮し、BLA2からのSEを、銃レンズ磁場侵入がかなり弱い、BLA1近傍のみへの移動に制限可能とし得る。
【0074】
図10におけるBLA1は、BLA1と、BLA2との間の距離を圧縮するように下方に変位される。これによりさらに、Iraw1電子が衝突することによる、BLA2で生成されるSEの螺旋運動距離を圧縮できる。
【0075】
図10における、BLA1及びBLA2の間のチャネルの直径(d)は、チャネルが短いため、
図4のものと同じ、もしくはそれ未満であり得る。窪んだアノードの内径及び円錐形の切り込みは、加速場(エキストラクタからアノードまで)が十分にBLA1の上面へと侵入し、アノード電流電子がBLA1に衝突することにより生成された二次電子を撥ねることができるように、コンピュータシミュレーションにより設計可能である。
【0076】
図11Aは、
図10の窪んだアノード及びデュアルアパーチャを有する電子銃による、二次電子低減を示す。コンピュータシミュレーションにより、
図11Aにおいて二次電子軌跡がプロットされる。
図11Bは、
図11AにおけるSE軌跡の拡大図を示す。
【0077】
アノード電流電子が衝突することにより、BLA1から放射された、螺旋状に移動するSEは、加速場により、BLA1表面へと即座に撥ね返される。BLA1-SE雲の高さは、1mm未満ほどになり得る。この高さは、式1の距離累積の原理に応じたクーロン相互作用を通じた、PE軌跡変位への影響を無視できるものとなり得る。
【0078】
Iraw1電流電子の衝突によりBLA2から放射された、螺旋状に移動するSEの大部分は、高さ約1mm以下の、狭いチャネルの壁に分散的に当たる。
図11Bのコンピュータシミュレーションに示すように、約10度から90度の極角のSEは、チャネル壁により即座に収集され、極角が5度以下のSEのほんの一部のみが、BLA2に向かって上方に螺旋状に移動する。窪んだアノードによりBLA1と、BLA2との間の距離が低減されているため、螺旋状に移動するSEは、
図11BのSE軌跡を
図9のものと比較すると、より少ない螺旋周期となるように圧縮される。
図9又は
図11Bに示すように、二次電子が、BLA2を避けることが防止され得る。
【0079】
図12Aから12Fは、ビーム電流(約1nAから100nA)の範囲による実験結果を示す。これにより、欠陥調査、物理的欠陥、ホットスポット検査、及び電圧コントラスト検査が評価される。
図12Aから12Fは、それぞれ、1nA、3nA、10nA、50nA、75nA、及び100nAビーム電流の画像である。
図12Aから12Fの解像度は、これら低(入射)エネルギー(1keV)用途に対してはかなり良好である。高BC(例えば、約50nAから100nA)に対する良好な画像解像度は、本明細書に開示の実施形態により、電子間のクーロン相互作用が大幅に抑制されていることを示す。
【0080】
実験結果は、電圧コントラストウェハ検査に対する、高ビーム電流(例えば、50nAから100nA)について有利であった。クーロン相互作用(
図7)が抑制されているため、ビーム電流の100nAへの上昇に対する、実験画像又は解像度の劣化はかなり緩やかである。従来のCDSEM装置又は評価装置は、ビーム電流が低いために高解像度を実現可能である。一例において、CDSEMにおけるビーム電流は約0.1nA以下であり、評価ツールにおけるビーム電流は、約0.1nAから5nAである)。本明細書に記載の実施形態は、100nAまでの高ビーム電流でのウェハ検査(具体的には、電圧コントラスト検査)に対して高解像度を実現可能である。
【0081】
図13は、方法300の実施形態のフローチャートである。これは、本明細書に開示の任意の実施形態を利用可能である。301において、電子ビームが形成される。302において、ビーム絞りアセンブリを通じて電子ビームが配向される。ビーム絞りアセンブリは、第1直径を有する第1ビーム絞りアパーチャと、第2直径を有する第2ビーム絞りアパーチャと、第1ビーム絞りアパーチャ及び第2ビーム絞りアパーチャの間のチャネルとを画定する。チャネルは、第1ビーム絞りアパーチャの第1直径、及び第2ビーム絞りアパーチャの第2直径よりも大きい第3直径を有する。ビーム絞りアセンブリは、第1ビーム絞りアパーチャにおける電子ビームを受けるように配置される。
【0082】
電子ビームは、電子ビームがビーム絞りアセンブリから出た後にクロスオーバーを形成するようにフォーカスされ得る。電子ビームはさらに、電子ビームがビーム絞りアセンブリから出た後にデフォーカスされ得る。
【0083】
一例において、電子ビームの経路に沿ってビーム絞りアセンブリの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、電子ビームの経路に沿ってコンデンサレンズの下流に配置されたアパーチャと、電子ビームの経路に沿ってアパーチャの下流に配置された対物レンズとを通じて、電子ビームを配向可能である。電子ビームのビーム電流は、0.1nAから20nA、又は60nAから500nAであり得る。
【0084】
別の例において、電子ビームの経路に沿ってビーム絞りアセンブリの下流に配置されたアパーチャと、電子ビームの経路に沿ってアパーチャの下流に配置され、作動させたコンデンサレンズと、電子ビームの経路に沿ってコンデンサレンズの下流に配置された対物レンズとを通じて、電子ビームを配向可能である。電子ビームのビーム電流は20nAから60nAであり得る。
【0085】
電子ビームは、半導体ウェハの表面に配向され得る。第2ビーム絞りアパーチャにより選択されたビーム電流は、半導体ウェハの表面でのビーム電流と等しくなり得る。
【0086】
電子ビームは、電子源からの電子ビームを受ける、ビーム絞りアセンブリの表面の窪みを通じて配向され得る。第1ビーム絞りアパーチャは、窪みの底に配置される。窪みは、第1直径及び第2直径よりも大きい第4直径を有する。
【0087】
本明細書に開示の実施形態は、電子ビームについて説明したが、イオンビーム又は粒子ビームにも使用され得る。
【0088】
本開示を1つ又は複数の具体的実施形態に関して説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の別の実施形態が構築され得ることが理解されよう。したがって、本開示は、添付の請求項と、その合理的解釈のみによって限定されるものとされる。