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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】規格ウエーハ対応トレーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 19/00 20060101AFI20241015BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20241015BHJP
   H01L 21/673 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
B24B19/00 Z
B24D5/12
H01L21/68 U
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020185925
(22)【出願日】2020-11-06
(65)【公開番号】P2022075252
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】大前 巻子
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-187272(JP,A)
【文献】特開2011-235399(JP,A)
【文献】特開2019-012724(JP,A)
【文献】特開2012-020344(JP,A)
【文献】特開2007-208145(JP,A)
【文献】特開2013-187275(JP,A)
【文献】特開2004-140297(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0259635(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B1/00-1/04
B24B9/00-19/28
B24D3/00-99/00
H01L21/304;21/463
H01L21/67-21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハを収容する規格ウエーハ対応トレーの製造方法であって、
規格ウエーハと同じ形状の板状物を準備する準備工程と、
回転可能で直線移動可能なチャックテーブルに板状物を保持させる保持工程と、
回転する切削ブレードを板状物の上面に位置づけて所定深さ切り込むと共に該チャックテーブルを回転させて環状溝を形成し、順次切削ブレードを該チャックテーブルの径方向に割り出し送りして、収容すべきウエーハの直径に対応する直径を有する環状凹部を形成する環状凹部加工工程と、
板状物の該環状凹部の内側に残存する未加工領域に切削ブレードを位置づけて該環状凹部と同じ深さだけ切り込むと共に該チャックテーブルを直線移動させて直線溝を形成し、順次切削ブレードを割り出し送りして直線溝を形成して該未加工領域を該環状凹部と同じ深さに形成する直線溝加工工程と、
を含む規格ウエーハ対応トレーの製造方法。
【請求項2】
切削ブレードの切り刃の厚みをWとした場合、割り出し送り量は0.8W~0.9Wである請求項1記載の規格ウエーハ対応トレーの製造方法。
【請求項3】
切削ブレードの切り刃の厚みは0.5mm~1.5mmである請求項1または2記載の規格ウエーハ対応トレーの製造方法。
【請求項4】
該環状凹部加工工程において、該チャックテーブルの径方向外側から径方向内側に向かって切削ブレードを割り出し送りする請求項1記載の規格ウエーハ対応トレーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハを収容する規格ウエーハ対応トレーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等の複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され、分割された各デバイスチップは携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置を含む各種の加工装置、ウエーハを検査する検査装置等の処理装置は、規格化されたウエーハの径に対応したテーブルを備えており(たとえば特許文献1参照)、規格より小さいウエーハを処理することが困難であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-116802号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハであっても処理装置において適正な処理を可能とする規格ウエーハ対応トレーの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題を解決する以下の規格ウエーハ対応トレーの製造方法が提供される。すなわち、処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハを収容する規格ウエーハ対応トレーの製造方法であって、規格ウエーハと同じ形状の板状物を準備する準備工程と、回転可能で直線移動可能なチャックテーブルに板状物を保持させる保持工程と、回転する切削ブレードを板状物の上面に位置づけて所定深さ切り込むと共に該チャックテーブルを回転させて環状溝を形成し、順次切削ブレードを該チャックテーブルの径方向に割り出し送りして、収容すべきウエーハの直径に対応する直径を有する環状凹部を形成する環状凹部加工工程と、板状物の該環状凹部の内側に残存する未加工領域に切削ブレードを位置づけて該環状凹部と同じ深さだけ切り込むと共に該チャックテーブルを直線移動させて直線溝を形成し、順次切削ブレードを割り出し送りして直線溝を形成して該未加工領域を該環状凹部と同じ深さに形成する直線溝加工工程と、を含む規格ウエーハ対応トレーの製造方法が提供される。
【0007】
好ましくは、切削ブレードの切り刃の厚みをWとした場合、割り出し送り量は0.8W~0.9Wである。切削ブレードの切り刃の厚みは0.5mm~1.5mmであるのが好適である。該環状凹部加工工程において、該チャックテーブルの径方向外側から径方向内側に向かって切削ブレードを割り出し送りするのが望ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の規格ウエーハ対応トレーの製造方法は、規格ウエーハと同じ形状の板状物を準備する準備工程と、回転可能で直線移動可能なチャックテーブルに板状物を保持させる保持工程と、回転する切削ブレードを板状物の上面に位置づけて所定深さ切り込むと共に該チャックテーブルを回転させて環状溝を形成し、順次切削ブレードを該チャックテーブルの径方向に割り出し送りして、収容すべきウエーハの直径に対応する直径を有する環状凹部を形成する環状凹部加工工程と、板状物の該環状凹部の内側に残存する未加工領域に切削ブレードを位置づけて該環状凹部と同じ深さだけ切り込むと共に該チャックテーブルを直線移動させて直線溝を形成し、順次切削ブレードを割り出し送りして直線溝を形成して該未加工領域を該環状凹部と同じ深さに形成する直線溝加工工程と、を含むので、本発明の方法によって製造したトレーを用いることにより、処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハであっても処理装置において適正な処理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハおよび板状物の斜視図。
図2】ダイシング装置の斜視図。
図3】環状凹部加工工程を実施している状態を示す斜視図。
図4】環状凹部が形成された板状物の斜視図。
図5】直線溝加工工程を実施している状態を示す斜視図。
図6図1に示すウエーハおよび規格ウエーハ対応トレーの斜視図。
図7】(a)図6に示すウエーハが図6に示す規格ウエーハ対応トレーに収容された状態を示す斜視図、(b)(a)に示すウエーハおよび規格ウエーハ対応トレーの断面図。
図8】環状凹部加工工程において、ウエーハの外周のオリエンテーションフラットに対応する直線溝を形成している状態を示す斜視図。
図9】環状凹部加工工程において、ウエーハの外周の円弧状部分に対応するC形状溝を形成している状態を示す斜視図。
図10】オリエンテーションフラットを有するウエーハと、このウエーハを収容する規格ウエーハ対応トレーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の規格ウエーハ対応トレーの製造方法の好適実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図示の実施形態では、まず、規格ウエーハと同じ形状の板状物を準備する準備工程を実施する。準備工程で準備する板状物は、図1に示すような円板状の板状物2でよい。板状物2の直径D1は、各種の加工装置、検査装置等の処理装置に対応した規格ウエーハの直径と同一であり、たとえば4インチ、6インチ、8インチ等である。また、板状物2の厚みは規格ウエーハの厚みと同一であり、たとえば700μm程度でよい。
【0012】
板状物2の材質としては、規格ウエーハよりも小さいウエーハと同じ材質(たとえばシリコン)を用いることができる。あるいは、板状物2の材質は、ガラス、セラミックスまたはポリエチレンテレフタレート(PET)等の適宜の合成樹脂であってもよい。図1に示すとおり、図示の実施形態の板状物2の外周には、直線部2aが設けられているが、ノッチが形成されていてもよい。なお、板状物2は、直線部2aやノッチが形成されていない単純な円形であってもよい。
【0013】
図1には、規格ウエーハよりも小さい円板状のウエーハ4も示されている。ウエーハ4の直径D2は、各種の加工装置、検査装置等の処理装置に対応した規格ウエーハの直径よりも小さく、板状物2の直径D1よりも小さい。ウエーハ4は、シリコン等の適宜の半導体材料から形成され得る。図示の実施形態のウエーハ4の表面4aは、格子状の分割予定ライン6によって複数の矩形領域に区画されており、複数の矩形領域のそれぞれにはIC、LSI等のデバイス8が形成されている。また、図1に示すウエーハ4の外周には、ウエーハ4の結晶方位を示すノッチ10が設けられている。
【0014】
準備工程を実施した後、回転可能で直線移動可能なチャックテーブルに板状物2を保持させる保持工程を実施し、次いで、回転する切削ブレードを板状物2の上面に位置づけて所定深さ切り込むと共にチャックテーブルを回転させて環状溝を形成し、順次切削ブレードをチャックテーブルの径方向に割り出し送りして、収容すべきウエーハ4の直径D2に対応する直径を有する環状凹部を形成する環状凹部加工工程を実施する。
【0015】
保持工程および環状凹部加工工程は、たとえば図2に示すダイシング装置12を用いて実施することができる。ダイシング装置12は、被加工物を保持するチャックテーブル14と、チャックテーブル14に保持された被加工物を切削する環状の切削ブレード16を回転可能に備えた切削手段18とを少なくとも備える。
【0016】
チャックテーブル14の上端部分には、吸引手段(図示していない。)に接続された多孔質の円形状の吸着チャック20が配置されている。チャックテーブル14は、吸引手段で吸着チャック20の上面に吸引力を生成することにより吸着チャック20の上面に載せられた被加工物を吸引保持する。図2に示すとおり、チャックテーブル14の外周には、周方向に間隔をおいて複数のクランプ22が配置されている。
【0017】
チャックテーブル14は、吸着チャック20の径方向中心を通って上下方向に延びる軸線を回転中心としてモータ(図示していない。)によって回転されると共に、図2に矢印Xで示すX軸方向に加工送り手段(図示していない。)によって直線移動されるようになっている。このように、チャックテーブル14は、回転可能、X軸方向に直線移動可能に構成されている。
【0018】
切削手段18における切削ブレード16の切り刃の厚みは0.5mm~1.5mmでよい。また、図示していないが、切削手段18は、X軸方向に直交するY軸方向(図2に矢印Yで示す方向)に延びる軸線を中心として切削ブレード16を回転させるモータと、Y軸方向に切削ブレード16を割り出し送りする割り出し送り手段と、X軸方向およびY軸方向のそれぞれに直交するZ軸方向(図2に矢印Zで示す上下方向)に切削ブレード16を切り込み送りする切り込み送り手段とを含む。なお、X軸方向およびY軸方向によって規定されるXY平面は実質上水平である。
【0019】
ダイシング装置12は、さらに、チャックテーブル14に保持された被加工物を撮像する撮像手段24と、被加工物を複数枚収容したカセット26が設置される昇降自在なカセット設置台28と、カセット26から加工前の被加工物を引き出し、仮置きテーブル30まで搬出すると共に仮置きテーブル30に位置づけられた加工済みの被加工物をカセット26に搬入する搬出入手段32と、カセット26から仮置きテーブル30に搬出された加工前の被加工物をチャックテーブル14に搬送する第一の搬送手段34と、加工済みの被加工物を洗浄する洗浄手段36と、加工済みの被加工物をチャックテーブル14から洗浄手段36に搬送する第二の搬送手段38とを備える。
【0020】
図示の実施形態における保持工程では、まず、カセット26に収容された板状物2を搬出入手段32によって引き出し、仮置きテーブル30に仮置きする。次いで、第一の搬送手段34によって仮置きテーブル30からチャックテーブル14に板状物2を搬送し、チャックテーブル14の回転中心と板状物2の径方向中心とを整合させた状態で、チャックテーブル14に板状物2を吸引保持させる。なお、ダイシング装置12によって板状物2に加工を施す際は、図2に示すとおり、外周が環状フレーム40に固定されたダイシングテープ42に板状物2を貼り付け、ダイシングテープ42を介して環状フレーム40に板状物2を支持させてもよい。この場合には、ダイシングテープ42側から板状物2をチャックテーブル14に吸引保持させると共に、クランプ22によって環状フレーム40を固定する。
【0021】
保持工程を実施した後、環状凹部加工工程を実施する。環状凹部加工工程では、まず、チャックテーブル14を撮像手段24の下方に移動させ、撮像手段24によって上方から板状物2を撮像し、切削加工を施すべき領域を検出する。次いで、チャックテーブル14を切削手段18の下方に移動させ、撮像手段24によって撮像した板状物2の画像に基づいて、板状物2と切削ブレード16との位置関係を調整する。図示の実施形態では、チャックテーブル14の回転中心から、収容すべきウエーハ4の半径に対応する位置に切削ブレード16を位置づける。
【0022】
次いで、図3に示すとおり、切削ブレード16を下降させ、矢印R1で示す方向に所定の回転速度(たとえば20000rpm)で回転させた切削ブレード16の切り刃を板状物2の上面に所定深さ切り込ませると共に、切削ブレード16の刃先を切り込ませた部分に切削水を供給しながら、チャックテーブル14を矢印R2で示す方向に所定の回転速度(たとえば3°/秒)で回転させる。これによって、板状物2を貫通しない程度の深さの環状溝44を形成する。図3に示す環状溝44は、切削加工途中の環状溝44であるため環状に示されていないが、実際には、端部のない環状の溝を形成する。なお、当然のことであるが、環状溝44の幅は、切削ブレード16の切り刃の厚みに相当する寸法である。
【0023】
次いで、切削ブレード16を上昇させて板状物2から離間させた後、割り出し送り手段によって切削ブレード16をチャックテーブル14の径方向内側に割り出し送りする。割り出し送り量は、切削ブレード16の切り刃の厚みをWとした場合、0.8W~0.9Wであるのが好ましい。これによって、最初に形成した環状溝44と、次に形成する環状溝44とを確実に連結させ、隣接する環状溝44の間に壁が形成されることを防止できる。そして、環状溝44の形成と、割り出し送りとを繰り返すことによって、図4に示すとおり、収容すべきウエーハ4の直径D2に対応する直径(外径)を有する環状凹部46を板状物2の上面に形成する。
【0024】
なお、ダイシング装置12によって板状物2に形成することができる環状溝44の直径には最小限界値があるため、本工程で形成する凹部46は環状となり、環状凹部46の径方向内側に円形状の未加工領域48が残存することになる。
【0025】
また、図示の実施形態では、チャックテーブル14の径方向外側から内側に向かって切削ブレード16を順次割り出し送りしているが、これとは逆に、チャックテーブル14の径方向内側から外側に向かって切削ブレード16を順次割り出し送りしてもよい。なお、径方向内側から外側に割り出し送りして環状溝44を形成する場合よりも、径方向外側から内側に割り出し送りして環状溝44を形成する場合の方が、切削加工時に切削ブレード16に作用する負荷が小さくなるため、径方向外側から内側に割り出し送りするのが好ましい。
【0026】
環状凹部加工工程を実施した後、板状物2の環状凹部46の内側に残存する未加工領域48に切削ブレード16を位置づけて環状凹部46と同じ深さだけ切り込むと共に、切り込み部分に切削水を供給しながらチャックテーブル14を直線移動させて直線溝を形成し、順次切削ブレード16を割り出し送りして直線溝を形成して未加工領域48を環状凹部46と同じ深さに形成する直線溝加工工程を実施する。
【0027】
直線溝加工工程は、環状凹部加工工程と同様に、ダイシング装置12を用いて実施することができる。直線溝加工工程では、まず、チャックテーブル14を撮像手段24の下方に移動させ、撮像手段24によって上方から板状物2を撮像し、切削加工を施すべき未加工領域48を検出する。次いで、チャックテーブル14を切削手段18の下方に移動させ、撮像手段24によって撮像した板状物2の画像に基づいて、未加工領域48の外周部分の上方に切削ブレード16を位置づける。
【0028】
次いで、図5に示すとおり、切削ブレード16を下降させ、R1方向に所定の回転速度(たとえば20000rpm)で回転させた切削ブレード16の切り刃を未加工領域48の外周部分に環状凹部46と同じ深さだけ切り込ませると共に、切り込み部分に切削水を供給しながらチャックテーブル14をX軸方向に所定の加工送り速度で加工送りする。これによって、環状凹部46と同じ深さの直線溝を未加工領域48に形成する。すなわち、環状凹部46と同じ深さの直線溝の分だけ未加工領域48の上面を除去する。
【0029】
次いで、切削ブレード16を上昇させて板状物2から離間させた後、直線溝が延びる方向(X軸方向)と直交する方向(Y軸方向)に割り出し送り手段によって切削ブレード16を割り出し送りする。割り出し送り量は、切削ブレード16の切り刃の厚みをWとした場合、0.8W~0.9Wであるのが好適である。そして、直線溝の形成と割り出し送りとを繰り返すことによって未加工領域48を環状凹部46と同じ深さに形成する。これによって、図6に示すとおり、収容すべきウエーハ4の直径D2に対応する直径(外径)を有する円形凹部50を板状物2の上面に形成して、規格ウエーハ対応トレー2’を製造することができる。
【0030】
以上のとおりにして製造された規格ウエーハ対応トレー2’は、図7に示すとおり、円形凹部50にウエーハ4を収容することができるので、規格ウエーハ対応トレー2’を用いることにより、処理装置に対応した規格ウエーハより小さいウエーハ4であっても処理装置において適正な処理が可能となる。たとえば、上記ダイシング装置12のチャックテーブル14がウエーハ4のサイズに適合しておらず、チャックテーブル14によってウエーハ4を吸引保持することができない場合でも、図示の実施形態の方法で製造された規格ウエーハ対応トレー2’にウエーハ4を収容することにより、規格ウエーハ対応トレー2’を介してチャックテーブル14にウエーハ4を吸引保持させることができ、ダイシング装置12を用いて、個々のデバイス8ごとのデバイスチップにウエーハ4を分割することができる。
【0031】
なお、規格ウエーハ対応トレー2’の円形凹部50にウエーハ4を収容する際には、ウエーハ4のノッチ10を規格ウエーハ対応トレーの2’の直線部2aの中央に位置づけることにより、ダイシング装置12等の処理装置においてウエーハ4の結晶方位を検出するのが容易になる。また、図7(b)を参照することによって理解されるとおり、規格ウエーハ対応トレー2’の円形凹部50の深さは、ウエーハ4の厚みよりも小さい寸法でよい。
【0032】
上述の実施形態においては、外周にノッチ10が形成されたウエーハ4を収容する規格ウエーハ対応トレーの製造方法を説明したが、本発明の規格ウエーハ対応トレーの製造方法においては、ウエーハの結晶方位を示すオリエンテーションフラットが外周に形成されたウエーハを収容可能な規格ウエーハ対応トレーを製造することもできる。この例について、図8ないし図10を参照して説明する。
【0033】
図10には、外周にオリエンテーションフラット52が形成されたウエーハ54が示されている。ウエーハ54は、ノッチ10の代わりにオリエンテーションフラット52が形成されている点で図1に示すウエーハ4と異なる点以外については、ウエーハ4の構成と同一でよい。
【0034】
ウエーハ54を収容可能な規格ウエーハ対応トレーを製造する際は、まず、板状物2を準備し(準備工程)、次いで、チャックテーブル14に板状物2を吸引保持させる(保持工程)。次いで、環状凹部加工工程において、板状物2の直線部2aをX軸方向に整合させた後、図8に示すとおり、R1方向に所定の回転速度で回転させた切削ブレード16の切り刃を板状物2の上面に所定深さ切り込ませると共に、切り込み部分に切削水を供給しながらチャックテーブル14をX軸方向に所定の加工送り速度で加工送りして、ウエーハ54のオリエンテーションフラット52に対応する長さの直線溝56を形成する。なお、直線溝56の長さはオリエンテーションフラット52の長さよりも僅かに長くてもよい。
【0035】
次いで、図9に示すとおり、R1方向に所定の回転速度で回転させた切削ブレード16の切り刃を直線溝56の一端部56aから板状物2の上面に所定深さ切り込ませると共に、切り込み部分に切削水を供給しながらチャックテーブル14をR2方向に所定の回転速度で回転させ、直線溝56の一端部56aから他端部56bまで延びるC形状溝58を形成する。これによって、ウエーハ54の外周のオリエンテーションフラット52に対応する直線溝56(直線部)と、ウエーハ54の外周の円弧状部分に対応するC形状溝58(円弧状部)とを有する環状溝(全体として環状の溝)を形成することができる。
【0036】
そして、割り出し送り手段によって切削ブレード16をチャックテーブル14の径方向内側に割り出し送りしながら、C形状溝ないし環状溝の形成を繰り返すことによって、ウエーハ54の直径に対応する直径(外径)を有する環状凹部を板状物2の上面に形成する。
【0037】
環状凹部加工工程を実施した後は、上述した直線溝加工工程と同様に、R1方向に所定の回転速度で回転させた切削ブレード16の切り刃を未加工領域の外周部分に環状凹部と同じ深さだけ切り込ませると共に、切り込み部分に切削水を供給しながらチャックテーブル14をX軸方向に所定の加工送り速度で加工送りして、環状凹部と同じ深さの直線溝を形成する。そして、直線溝と直交する方向に切削ブレード16を割り出し送りしながら直線溝の形成を繰り返すことによって、未加工領域を環状凹部と同じ深さに形成する。これによって、図10に示すとおり、外周にオリエンテーションフラット52が形成されたウエーハ54に対応した形状の凹部60を有する規格ウエーハ対応トレー2”を製造することができる。
【符号の説明】
【0038】
2:板状物
2’:規格ウエーハ対応トレー
4:ウエーハ
12:ダイシング装置(処理装置の一例)
14:チャックテーブル
16:切削ブレード
44:環状溝
46:環状凹部
48:未加工領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10