(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/20 20060101AFI20241015BHJP
H01L 21/324 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H01L21/20
H01L21/324 X
(21)【出願番号】P 2022048244
(22)【出願日】2022-03-24
【審査請求日】2023-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 崇
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 伸也
(72)【発明者】
【氏名】道田 典明
(72)【発明者】
【氏名】山本 克彦
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-021209(JP,A)
【文献】特開2002-280304(JP,A)
【文献】特開2002-093702(JP,A)
【文献】特開平03-096224(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149663(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/20
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属含有膜と、前記金属含有膜に接触して設けられ、前記金属含有膜と原子と原子の距離が近似するシリコン含有膜とが形成された基板を処理室内に搬入する工程と、
前記
金属含有膜に
マイクロ波を照射する工程と、
前記
マイクロ波の照射により前記
金属含有膜を発熱させ、発熱された
前記金属含有膜と接触する面から順に結晶格子が揃うことにより、前記シリコン含有膜を結晶化させて指向性を持って改質処理する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記指向性は、前記
シリコン含有膜と前記
金属含有膜が接触する面から離れる方向に結晶化を行うことである請求項1記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記
金属含有膜は、前記
シリコン含有膜の表面を覆うように形成される請求項1
又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記金属含有膜は、チタンまたはニッケルの少なくともいずれかを含有する膜である
請求項1から3のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
更に、前記金属含有膜を除去する工程を有する
請求項1から4のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
金属含有膜と、前記金属含有膜に接触して設けられ、前記金属含有膜と原子と原子の距離が近似するシリコン含有膜とが形成された基板を処理室内に搬入する工程と、
前記
金属含有膜に
マイクロ波を照射する工程と、
前記
マイクロ波の照射により前記
金属含有膜を発熱させ、発熱された
前記金属含有膜と接触する面から順に結晶格子が揃うことにより、前記シリコン含有膜を結晶化させて指向性を持って改質処理する工程と、
を備える基板処理方法。
【請求項7】
金属含有膜と、前記金属含有膜に接触して設けられ、前記金属含有膜と原子と原子の距離が近似するシリコン含有膜とが形成された基板を基板処理装置の処理室内に搬入する手順と、
前記
金属含有膜に
マイクロ波を照射する手順と、
前記
マイクロ波の照射により前記
金属含有膜を発熱させ、発熱された
前記金属含有膜と接触する面から順に結晶格子が揃うことにより、前記シリコン含有膜を結晶化させて指向性を持って改質処理する手順と、
をコンピュータを介して前記基板処理装置に実行させるプログラム。
【請求項8】
金属含有膜と、前記金属含有膜に接触して設けられ、前記金属含有膜と原子と原子の距離が近似するシリコン含有膜とが形成された基板を処理する処理室と、
前記処理室に
マイクロ波を供給する
マイクロ波発振器と、を有し、
前記基板に対して、前記
マイクロ波の照射により、前記
金属含有膜を発熱させ、発熱された
前記金属含有膜と接触する面から順に結晶格子が揃うことにより、前記シリコン含有膜を結晶化させて指向性を持って改質処理することが可能なように前記
マイクロ波発振器を制御する制御部と、
を備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置の製造方法、基板処理方法、プログラム、及び基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体装置(半導体デバイス)の製造工程の一工程として、例えば、加熱装置を用いて処理室内の基板を加熱し、基板の表面に成膜された薄膜中の組成や結晶構造を変化させたり、成膜された薄膜内の結晶欠陥等を修復したりするアニール処理に代表される改質処理がある。近年の半導体デバイスにおいては、微細化、高集積化が著しくなっており、これに伴い、高いアスペクト比を有するパターンが形成された高密度の基板への改質処理が求められている。このような高密度基板への改質処理方法としてマイクロ波を用いた熱処理方法が検討されている。一例として、特許文献1に記載の技術が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のマイクロ波を用いた処理では、基板上に形成された膜によっては、熱履歴の影響を受ける膜も存在し、デバイス製造工程で要求される熱履歴を満たしつつ、基板上に形成された膜を低温で均一に処理(改質処理)することが困難となってしまう場合がある。
【0005】
本開示の目的は、基板の温度の低温化を図りながら基板上に形成された膜を均一に処理することが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、
処理対象膜と作用対象膜とが形成された基板を処理室内に搬入する工程と、
前記作用対象膜に電磁波を照射する工程と、
前記電磁波の照射により前記作用対象膜を発熱させ、発熱された前記作用対象膜によって前記処理対象膜を加熱して指向性を持って改質処理する工程と、
を備える技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、基板の温度の低温化を図りながら基板上に形成された膜を均一に処理することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成を示した縦断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成を示した横断面図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態で好適に用いられる基板処理装置の枚葉型処理炉の概略構成図であり、処理炉部分を縦断面図で示す図である。
【
図4】
図4は、本開示で好適に用いられる基板処理装置のコントローラの概略構成図である。
【
図5】
図5は、本開示における基板処理のフローを示す図である。
【
図6】
図6(A)は、本開示の実施形態で好適に用いられる、基板上の膜の構成を模式的に示す断面図である。
図6(B)は、
図6(A)に示す基板に対して、本開示における改質処理を行った後の基板上の膜の構成を模式的に示す断面図である。
【
図7】
図7(A)は、比較例における基板上の膜の構成を模式的に示す断面図である。
図7(B)は、
図7(A)に示す基板に対して、本開示における改質処理を行った後の基板上の膜の構成を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8は、比較例1~比較例3における改質処理後の非晶質Si膜の屈折率と、本実施例における改質処理後の非晶質Si膜の屈折率を比較して示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
本実施形態において、本開示に係る基板処理装置100は、ウエハに各種の熱処理を施す枚葉式熱処理装置として構成されており、後述する電磁波を用いたアニール処理(改質処理)を行う装置として説明を行う。本実施形態における基板処理装置100では、基板としてのウエハ200を内部に収容した収納容器(キャリア)としてFOUP(Front Opening Unified Pod:以下、ポッドと称する)110が使用される。ポッド110は、ウエハ200を種々の基板処理装置間を搬送する為の搬送容器としても用いられる。
【0011】
図1および
図2に示すように、基板処理装置100は、ウエハ200を搬送する搬送室(搬送エリア)203を内部に有する搬送筐体(筐体)202と、搬送筐体202の側壁に設けられ、ウエハ200を処理する処理室201-1、201-2をそれぞれ内部に有する後述する処理容器としてのケース102-1、102-2を備えている。搬送室203の筐体前側である
図1の向かって右側(
図2の向かって下側)には、ポッド110の蓋を開閉し、ウエハ200を搬送室203に搬送・搬出するための、ポッド開閉機構としてのロードポートユニット(LP)106が配置されている。ロードポートユニット106は、筐体106aと、ステージ106bと、オープナ106cとを備え、ステージ106bは、ポッド110を載置し、搬送室203の筐体前方に形成された基板搬入搬出口134にポッド110を近接させるように構成され、オープナ106cによってポッド110に設けられている図示しない蓋を開閉させる。また、筐体202は、搬送室203内をN
2などのパージガスを循環させるためのクリーンユニット166を設けたパージガス循環構造を有している。
【0012】
搬送室203の筐体202後側である
図1の向かって左側(
図2の向かって上側)には、処理室201-1、202-2を開閉するゲートバルブ205-1、205-2がそれぞれ配置されている。搬送室203には、ウエハ200を移載する基板移載機構(基板移載ロボット)としての移載機125が設置されている。移載機125は、ウエハ200を載置する載置部としてのツィーザ(アーム)125a-1、125a―2と、ツィーザ125a-1、125a―2のそれぞれを水平方向に回転または直動可能な移載装置125bと、移載装置125bを昇降させる移載装置エレベータ125cとで構成されている。ツィーザ125a-1、125a-2、移載装置125b、移載装置エレベータ125cの連続動作により、後述する基板保持具(ボート)217やポッド110にウエハ200を装填(チャージング)または脱装(ディスチャージング)することを可能な構成としている。以降、ケース102-1、102-2、処理室201-1、201-2、ツィーザ125a-1および125a-2のそれぞれは、特に区別して説明する必要が無い場合には、単にケース102、処理室201、ツィーザ125aとして記載する。
【0013】
図1に示すように、搬送室203の上方空間であって、クリーンユニット166よりも下方には処理したウエハ200を冷却するためのウエハ冷却用載置具108がウエハ冷却テーブル109上に設けられている。ウエハ冷却用載置具108は、後述する基板保持具としてのボート217と同様の構造を有しており、複数のウエハ保持溝(保持部)によって複数枚のウエハ200を垂直多段に水平保持することが可能なように構成されている。ウエハ冷却用載置具108およびウエハ冷却テーブル109は、基板搬入搬出口134およびゲートバルブ205の設置位置よりも上方に設けられることで、ウエハ200を移載機125によってポッド110から処理室201へ搬送する際の動線上から外れるため、ウエハ処理のスループットを低下させることなく、処理後のウエハ200を冷却することを可能としている。以降、ウエハ冷却用載置具108とウエハ冷却テーブル109を合わせて冷却エリア(冷却領域)と称する場合もある。
【0014】
ここで、ポッド110内の圧力、搬送室203内の圧力および処理室201内の圧力は、すべて大気圧、または大気圧よりも10~200Pa(ゲージ圧)程度の高い圧力にて制御される。搬送室203内の圧力の方が処理室201の圧力よりも高く、また、処理室201内の圧力の方がポッド110内の圧力よりも高くするのが好ましい。
【0015】
(処理炉)
図1の破線で囲まれた領域Aには、
図3に示すような基板処理構造を有する処理炉が構成される。
図2に示すように、本実施形態においては処理炉が複数設けられているが、処理炉の構成は同一である為、一方の構成を説明するに留め、他方の処理炉構成の説明は省略する。
【0016】
図3に示すように、処理炉は、金属などの電磁波を反射する材料で構成されるキャビティ(処理容器)としてのケース102を有している。また、ケース102の天井面には金属材料で構成されたキャップフランジ(閉塞板)104が、封止部材(シール部材)としてのOリング(図示せず)を介してケース102の天井面を閉塞するように構成する。主にケース102とキャップフランジ104の内側空間をシリコンウエハ等の基板を処理する処理室201として構成している。ケース102の内部に電磁波を透過させる石英製の図示しない反応管を設置してもよく、反応管内部が処理室となるように処理容器を構成してもよい。また、キャップフランジ104を設けずに、天井が閉塞したケース102を用いて処理室201を構成するようにしてもよい。
【0017】
処理室201内には載置台210が設けられており、載置台210の上面には、基板としてのウエハ200を保持する基板保持具としてのボート217が載置されている。ボート217には、処理対象であるウエハ200と、ウエハ200を挟み込むようにウエハ200の垂直方向上下に載置された断熱板としての石英プレート101a、101bが所定の間隔で保持されている。また、石英プレート101a、101bとウエハ200のそれぞれの間には、例えば、シリコンプレート(Si板)や炭化シリコンプレート(SiC板)などの、サセプタ103a、103bを載置してもよい。本実施形態において、石英プレート101a、101b、および、サセプタ103a、103bは、それぞれ同一の部品であり、以後、特に区別して説明する必要が無い場合には、石英プレート101、サセプタ103と称して説明する。
【0018】
処理容器としてのケース102は、例えば横断面が円形であり、平らな密閉容器として構成されている。また、搬送筐体202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料などにより構成されている。なお、ケース102に囲まれた空間を処理空間としての処理室201又は反応エリア201と称し、搬送筐体202に囲まれた空間を搬送空間としての搬送室203又は搬送エリア203と称する場合もある。なお、処理室201と搬送室203は、本実施形態のように水平方向に隣接させて構成することに限らず、垂直方向に隣接させる構成としてもよい。
【0019】
図1、
図2および
図3に示すように、搬送筐体202の側面には、ゲートバルブ205に隣接した基板搬入搬出口206が設けられており、ウエハ200は基板搬入搬出口206を介して処理室201と搬送室203との間を移動する。
【0020】
ケース102の側面には、後に詳述する加熱装置としての電磁波供給部が設置されており、電磁波供給部から供給されたマイクロ波等の電磁波が処理室201に導入されてウエハ200等を加熱し、ウエハ200を処理する。
【0021】
載置台210は回転軸としてのシャフト255によって支持される。シャフト255は、ケース102の底部を貫通しており、更には搬送容器202の外部で回転動作を行う駆動機構267に接続されている。駆動機構267を作動させてシャフト255及び載置台210を回転させることにより、ボート217上に載置されるウエハ200を回転させることが可能となっている。なお、シャフト255下端部の周囲はベローズ212により覆われており、処理室201および搬送エリア203内は気密に保持されている。
【0022】
ここで、載置台210は基板搬入搬出口206の高さに応じて、駆動機構267によって、ウエハ200の搬送時にはウエハ200がウエハ搬送位置となるよう上昇または下降し、ウエハ200の処理時にはウエハ200が処理室201内の処理位置(ウエハ処理位置)まで上昇または下降するよう構成されていてもよい。
【0023】
処理室201の下方であって、載置台210の外周側には、処理室201の雰囲気を排気する排気部が設けられている。
図3に示すように、排気部には排気口221が設けられている。排気口221には排気管231が接続されており、排気管231には、処理室201内の圧力に応じて弁開度を制御するAPCバルブなどの圧力調整器244、真空ポンプ246が順に直列に接続されている。
【0024】
ここで、圧力調整器244は、処理室201内の圧力情報(後述する圧力センサ245からのフィードバック信号)を受信して排気量を調整することができるものであればAPCバルブに限らず、通常の開閉バルブと圧力調整弁を併用するように構成されていてもよい。
【0025】
主に、排気口221、排気管231、圧力調整器244により排気部(排気系または排気ラインとも称する)が構成される。なお、載置台210を囲むように排気口を設け、ウエハ200の全周からガスを排気可能に構成してもよい。また、排気部の構成に、真空ポンプ246を加えるようにしてもよい。
【0026】
キャップフランジ104には、不活性ガス、原料ガス、反応ガスなどの各種基板処理のための処理ガスを処理室201内に供給するためのガス供給管232が設けられている。
【0027】
ガス供給管232には、上流から順に、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)241、および、開閉弁であるバルブ243が設けられている。ガス供給管232の上流側には、例えば不活性ガスである窒素(N2)ガス源が接続され、MFC241、バルブ243を介して処理室201内へ供給される。基板処理の際に複数種類のガスを使用する場合には、ガス供給管232のバルブ243よりも下流側に、上流側から順に流量制御器であるMFCおよび開閉弁であるバルブが設けられたガス供給管が接続された構成を用いることで複数種類のガスを供給することができる。なお、ガス種毎にMFC、バルブが設けられたガス供給管を設置してもよい。
【0028】
主に、ガス供給管232、MFC241、バルブ243によりガス供給系(ガス供給部)が構成される。ガス供給系に不活性ガスを流す場合には、不活性ガス供給系とも称する。不活性ガスとしては、N2ガスの他、例えば、Arガス、Heガス、Neガス、Xeガス等の希ガスを用いることができる。
【0029】
キャップフランジ104には、非接触式の温度測定装置として温度センサ263が設置されている。温度センサ263により検出された温度情報に基づき後述するマイクロ波発振器655の出力を調整することで、基板を加熱し、基板温度が所望の温度分布となる。温度センサ263は、例えばIR(Infrared Radiation)センサなどの放射温度計で構成されている。温度センサ263は、石英プレート101aの表面温度、または、ウエハ200の表面温度を測定するように設置される。上述したサセプタが設けられている場合にはサセプタの表面温度を測定するように構成してもよい。
【0030】
なお、本開示においてウエハ200の温度(ウエハ温度)と記載した場合は、後述する温度変換データによって変換されたウエハ温度、すなわち、推測されたウエハ温度のことを意味する場合と、温度センサ263によって直接ウエハ200の温度を測定して取得した温度を意味する場合と、それらの両方を意味する場合を指すものとして説明する。
【0031】
温度センサ263によって石英プレート101またはサセプタ103と、ウエハ200のそれぞれに対し、温度変化の推移を予め取得しておくことで石英プレート101またはサセプタ103と、ウエハ200の温度の相関関係を示した温度変換データを記憶装置121cまたは外部記憶装置123に記憶させてもよい。このように予め温度変換データを作成することによって、ウエハ200の温度は、石英プレート101の温度のみを測定することで、ウエハ200の温度を推測可能とし、推測されたウエハ200の温度を基に、マイクロ波発振器655の出力、すなわち加熱装置の制御を行うことが可能となる。
【0032】
なお、ウエハ200の温度を測定する手段として、上述した放射温度計に限らず、熱電対を用いて温度測定を行ってもよいし、熱電対と非接触式温度計を併用して温度測定を行ってもよい。ただし、熱電対を用いて温度測定を行った場合、熱電対をウエハ200の近傍に配置して温度測定を行う必要がある。すなわち、処理室201内に熱電対を配置する必要があるため、後述するマイクロ波発振器から供給されたマイクロ波によって熱電対自体が加熱されてしまうので正確に測温することができない。したがって、非接触式温度計を温度センサ263として用いることが好ましい。
【0033】
また、温度センサ263は、キャップフランジ104に設けることに限らず、載置台210に設けるようにしてもよい。また、温度センサ263は、キャップフランジ104や載置台210に直接設置するだけでなく、キャップフランジ104や載置台210に設けられた測定窓からの放射光を鏡等で反射させて間接的に測定するように構成されてもよい。さらに、温度センサ263は1つ設置することに限らず、複数設置するようにしてもよい。
【0034】
ケース102の側壁には電磁波導入ポート653-1、653-2が設置されている。電磁波導入ポート653-1、653-2のそれぞれには処理室201内に電磁波を供給するための導波管654-1、654-2のそれぞれの一端が接続されている。導波管654-1、654-2それぞれの他端には処理室201内に電磁波を供給して加熱する加熱源としての電磁波発振器としてのマイクロ波発振器(電磁波源)655-1、655-2が接続されている。マイクロ波発振器655-1、655-2はマイクロ波などの電磁波を導波管654-1、654-2にそれぞれ供給する。また、マイクロ波発振器655-1、655-2は、マグネトロンやクライストロンなどが用いられる。以降、電磁波導入ポート653-1、653-2、導波管654-1、654-2、マイクロ波発振器655-1、655-2は、特にそれぞれを区別して説明する必要のない場合には、電磁波導入ポート653、導波管654、マイクロ波発振器655と記載して説明する。
【0035】
マイクロ波発振器655によって生じる電磁波の周波数は、好ましくは13.56MHz以上24.125GHz以下の周波数範囲となるように制御される。さらに好適には、2.45GHzまたは5.8GHzの周波数となるように制御されることが好ましい。ここで、マイクロ波発振器655-1、655-2のそれぞれの周波数は同一の周波数としてもよいし、異なる周波数で設置されてもよい。
【0036】
また、本実施形態において、マイクロ波発振器655は、ケース102の側面に2つ配置されるように記載されているが、これに限らず、1つ以上設けられていればよく、また、ケース102の対向する側面等の異なる側面に設けられるように配置してもよい。主に、マイクロ波発振器655―1、655-2、導波管654-1、654-2および電磁波導入ポート653-1、653-2によって加熱装置としての電磁波供給部(電磁波供給装置、マイクロ波供給部、マイクロ波供給装置とも称する)が構成される。
【0037】
マイクロ波発振器655-1、655-2のそれぞれには後述するコントローラ121が接続されている。コントローラ121には処理室201内に収容される石英プレート101aまたは101b、若しくはウエハ200の温度を測定する温度センサ263が接続されている。温度センサ263は、上述した方法によって石英プレート101またはサセプタ103、若しくは、ウエハ200の温度を測定してコントローラ121に送信し、コントローラ121によってマイクロ波発振器655-1、655-2の出力を制御し、ウエハ200の加熱を制御する。
【0038】
ここで、マイクロ波発振器655-1、655-2は、コントローラ121から送信される同一の制御信号によって制御される。しかし、これに限らず、マイクロ波発振器655-1、655-2それぞれにコントローラ121から個別の制御信号を送信することでマイクロ波発振器655-1、655-2が個々に制御されるように構成してもよい。
【0039】
(制御装置)
図4に示すように、制御部(制御装置、制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a、RAM(Random Access Memory)121b、記憶装置121c、I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b、記憶装置121c、I/Oポート121dは、内部バス121eを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0040】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、アニール(改質)処理の手順や条件等が記載されたプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、プロセスレシピを、単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0041】
I/Oポート121dは、上述のMFC241、バルブ243、圧力センサ245、APCバルブ244、真空ポンプ246、温度センサ263、駆動機構267、マイクロ波発振器655等に接続されている。
【0042】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピを読み出すことが可能なように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC241による各種ガスの流量調整動作、バルブ243の開閉動作、圧力センサ245に基づくAPCバルブ244による圧力調整動作、真空ポンプ246の起動および停止、温度センサ263に基づくマイクロ波発振器655の出力調整動作、駆動機構267による載置台210(またはボート217)の回転および回転速度調節動作、または、昇降動作等を制御することが可能なように構成されている。
【0043】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、CD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリ、SSD等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、それらの両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0044】
(2)基板処理工程
次に、上述の基板処理装置100の処理炉を用いて、半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、例えば、ウエハ200上に形成された熱処理(改質処理)の対象となる膜(処理対象膜、ターゲット膜)としての非晶質シリコン(Si)膜2002を改質(結晶化)する方法の一例について
図5に示した処理フローに沿って説明する。非晶質Si膜2002として、例えば、リン(P)を含有する(Pが添加された)Si膜であって、例えば、P含有シリコン膜等を用いることができる。
【0045】
ウエハ200上には、
図6(A)に示すように、シリコン酸化膜(SiO膜)2001、処理対象膜である非晶質Si膜2002が形成されている。また、この非晶質Si膜2002の表面には、この熱処理(改質処理)の対象となる膜(処理対象膜、ターゲット膜)に対する加熱をアシストする膜(アシスト膜、作用対象膜)として、金属を含有する金属含有膜2003が形成されている。すなわち、金属含有膜2003は、非晶質Si膜2002の表面を覆うように形成されている。言い換えると、非晶質Si膜2002と金属含有膜2003とが接触して設けられ、非晶質Si膜2002に隣接して金属含有膜2003が形成されている。金属含有膜2003として、例えばチタン(Ti)やニッケル(Ni)等を含有する膜であって、例えば、窒化チタン(TiN)膜等を用いることができる。
【0046】
なお、SiO膜2001は、所定の温度(例えば、900℃)の反応室内を酸素雰囲気にしてシリコン基板の表面に酸素(O)を拡散させて形成される膜である。また、非晶質Si膜2002は、例えばP含有Si膜である場合、所定の温度(例えば、500℃~650℃)の反応室内に、例えば、SiH4(モノシラン)とPH3(ホスフィン)を供給することで形成される膜である。また、金属含有膜2003は、所定の温度の反応室内に、金属含有ガスを供給して形成される膜であって、例えばTiN膜である場合、所定の温度(例えば、300℃~500℃)の反応室内に、例えば、TiCl4(四塩化チタン)とNH3(アンモニア)を供給することで形成される膜である。これらSiO膜2001、非晶質Si膜2002、金属含有膜2003は、上述の基板処理装置100とは、別の基板処理装置で、例えば、バッチ式の基板処理装置によりウエハ200に成膜される。
【0047】
以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。また、上述した処理炉構造と同様に本実施形態における基板処理工程においても、処理内容、すなわちレシピについては複数設けられた処理炉において同一レシピを使用する為、一方の処理炉を使用した基板処理工程について説明するに留め、他方の処理炉を用いた基板処理工程の説明は省略する。
【0048】
ここで、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものを意味する場合や、ウエハとその表面に形成された所定の層や膜との積層体を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、ウエハそのものの表面を意味する場合や、ウエハ上に形成された所定の層等の表面を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0049】
(基板搬入工程(S501))
図3に示されるように、ツィーザ125a-1、125a―2のいずれか一方、または両方に載置されたウエハ200はゲートバルブ205の開閉動作によって所定の処理室201に搬入(ローディング)される(S501)。すなわち、SiO膜2001と非晶質Si膜2002と金属含有膜2003とが形成されたウエハ200が処理室201内に搬入される。
【0050】
(炉内圧力・温度調整工程(S502))
処理室201内へのウエハ200の搬入が完了したら、処理室201内が所定の圧力(例えば10~102000Pa)となるよう処理室201内の雰囲気を制御する。具体的には、真空ポンプ246により排気しつつ、圧力センサ245により検出された圧力情報に基づいて圧力調整器244の弁開度をフィードバック制御し、処理室201内を所定の圧力とする。また、同時に予備加熱として電磁波供給部を制御し、所定の温度まで加熱を行うように制御してもよい(S502)。電磁波供給部によって、所定の基板処理温度まで昇温させる場合、ウエハ200が変形・破損しないように、後述する改質工程の出力よりも小さな出力で昇温を行うことが好ましい。なお、大気圧下で基板処理を行う場合、炉内圧力調整を行わず、炉内の温度調整のみを行った後、後述する不活性ガス供給工程S503へ移行するように制御してもよい。
【0051】
(不活性ガス供給工程(S503))
炉内圧力・温度調整工程S502によって処理室201内の圧力と温度を所定の値に制御すると、駆動機構267は、シャフト255を回転させ、載置台210上のボート217を介してウエハ200を回転させる。このとき、窒素ガス等の不活性ガスがガス供給管232を介して供給される(S503)。さらにこのとき、処理室201内の圧力は10Pa以上102000Pa以下の範囲となる所定の値であって、例えば101300Pa以上101650Pa以下となるように調整される。なお、シャフトは基板搬入工程S501時、すなわち、ウエハ200を処理室201内に搬入完了後に回転させてもよい。
【0052】
(改質工程(S504))
処理室201内を所定の圧力となるように維持すると、マイクロ波発振器655は上述した各部を介して処理室201内に所定時間(加熱時間、処理時間)として、例えば600秒間マイクロ波を供給する。処理室201内にマイクロ波が供給されることによって、金属含有膜2003がマイクロ波に照射されて加熱される。つまり、金属含有膜2003がマイクロ波に照射されることにより発熱し、隣接している非晶質Si膜2002が加熱される。
【0053】
ここで、マイクロ波の照射により金属含有膜2003が発熱すると、金属含有膜2003との界面の非晶質Si膜2002中の原子と原子の距離(結晶格子の距離ともいう)が、金属含有膜2003中の原子と原子の距離に近似しているので、金属含有膜2003に揃って非晶質Si膜2002が結晶化していく。より具体的には、金属含有膜2003が窒化チタン(TiN)膜の場合は、TiNの面間隔は約2.1Åで、Siの面間隔は約1.9Åであるのであって、TiNに近いので、非晶質Si膜2002はTiNに揃って結晶化することになる。これにより、金属含有膜2003側の非晶質Si膜2002から順に結晶格子が揃って、非晶質Si膜2002を結晶化させることができる。すなわち、作用対象粒である金属含有膜2003の結晶を、マイクロ波により選択的に加熱することにより、金属含有膜2003の界面から、隣接する非晶質Si膜2002の非結晶Siを結晶化させる。これにより、非晶質Si膜2002の結晶化が膜内で均一に、かつ結晶粒径を大きく結晶化させることができる。
【0054】
上述したように非晶質Si膜2002は、金属含有膜2003と接触しているため、マイクロ波の照射により金属含有膜2003が発熱すると、
図6(B)において矢印で示すように、金属含有膜2003との接触面側から指向性をもって改質処理(結晶化)される。つまり、非晶質Si膜2002は、金属含有膜2003側から指向性をもって改質処理(結晶化)される。ここで、指向性をもって結晶化されるとは、作用対象膜との接触面から、接触面と離れる方向に結晶化が行われることを意味する。
【0055】
よって、非晶質Si膜2002を、金属含有膜2003との接触面側から指向性をもって結晶Si膜2004に改質させることができ、ウエハ200表面上に形成されているアモルファスシリコン膜をポリシリコン膜へと改質(結晶化)させることができる。したがって、ウエハ200を均一に改質することが可能となる。
【0056】
なお、作用対象膜として、金属含有膜2003の結晶格子定数が、処理対象膜である非晶質Si膜2002の結晶格子定数と同じもの若しくは近いものを用いるのが好ましい。これにより、結晶化させる速度を速くすることができ、結晶化させる領域を広くすることができる。
【0057】
ここで、
図7(A)に示すように、表面にSiO膜2001と非晶質Si膜2002が形成されたウエハ200に対して、本工程における改質処理を行うと、
図7(B)に示すように、非晶質Si膜2002は、周囲から発熱し、ランダムに結晶化されてしまう。
【0058】
また、抵抗加熱による熱アニール処理では、ヒータからの熱がふく射や対流や伝熱によりウエハ200上に形成された膜種や構造によらず、一様に温度が上昇してしまう。また、アモルファスシリコン膜をポリシリコン膜に改質させる際に、通常の結晶化温度以上の加熱温度でアニール処理を行うため、結晶面を揃える固相結晶化(Solid Phase Crystallization)、結晶温度を低下させて粒径制御を行う金属誘起結晶化(Metal Induced Crystallization)等の手法により温度制御を行う必要がある。固相結晶化や金属誘起結晶化等の手法における温度範囲は、結晶化する混晶温度範囲となるため狭い。また、結晶粒径のばらつきを抑えて結晶化させるためには、長時間の熱アニール処理が必要となる。
【0059】
本開示においては、非晶質Si膜2002と接触して設けた金属含有膜2003を、マイクロ波により加熱することにより、上述した課題を解消することができる。また、非晶質Si膜中の内部から加熱できるため、結晶粒径を大きくすることができ、金属含有膜203側から非晶質Si膜を均一に改質する(結晶化する)ことが可能となる。
【0060】
予め設定された処理時間が経過すると、ボート217の回転、ガスの供給、マイクロ波の供給および排気管の排気が停止する。
【0061】
(基板搬出工程(S505))
処理室201内の圧力を大気圧復帰させた後、ゲートバルブ205を開放し処理室201と搬送室203とを空間的に連通させる。その後、ボートに載置されているウエハ200を移載機125のツィーザ125aによって、搬送室203に搬出する(S505)。
【0062】
以上の動作が繰り返されることにより、ウエハ200が改質処理され、次の基板処理工程に移行することとなる。
【0063】
次の基板処理工程としては、例えば上述の金属含有膜(作用対象膜、アシスト膜)2003が、デバイス特性上、不必要な膜であれば、この金属含有膜を除去する工程を有することが必要である。なお、作用対象膜が、デバイス特性上、有用であれば除去する必要はない。
【0064】
本開示では、ウエハ200及び非晶質Si膜2002を除いたウエハ200上の他の膜(例えば、SiO膜2001)よりも金属含有膜2003のマイクロ波吸収率が大きくなることが重要であり、その差が大きいほど他の膜(例えば、SiO膜2001)の熱履歴を抑えることが可能となる。
【0065】
上述ではマイクロ波を用いて説明したが、作用対象膜(アシスト膜)に含有させる物質の吸収特性は、電磁波の波長にも依存しているので、本開示は、マイクロ波以外にも様々な電磁波の波長を用いることができる。
【0066】
(3)本実施形態による効果
本実施形態によれば以下に示す1つまたは複数の効果が得られる。
【0067】
(a)非晶質Si膜(処理対象膜)2002を改質処理(熱処理)する際に、金属含有膜(作用対象膜)2003を用いて、この金属含有膜2003に対してマイクロ波を照射することで、非晶質Si膜2002を指向性をもって改質処理(結晶化)することが可能となる。
【0068】
したがって、金属含有膜203側から非晶質Si膜を均一に改質する(結晶化する)ことが可能となり、ウエハ200の温度の低温化を図りながら基板上に形成された膜を均一に処理することが可能となる。
【0069】
(b)金属含有膜(作用対象膜)2003を選択的に加熱させることが可能となり、非晶質Si膜2002の内部から加熱できるため、結晶粒径を大きくすることができる。
【0070】
(c)金属含有膜(作用対象膜)2003を選択的に加熱させることができるため、拡散させたい領域のみ温度を高くすることが可能となる。また、処理温度を短縮化できる。
【0071】
以上述べたように、本開示によれば、基板の温度の低温化を図りながら基板に形成され膜を改質処理する技術を提供することができる。
【0072】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0073】
図8は、比較例1~比較例3のそれぞれの試料における非晶質Si膜の屈折率と、本実施例における試料の非晶質Si膜の屈折率を比較して示した図である。
【0074】
図8において比較例1は、
図7(A)に示すように、ウエハ200上にSiO膜2001と非晶質Si膜2002が形成された試料の、非晶質Si膜2002の屈折率を示している。すなわち、比較例1は、上述した改質処理を未処理の場合の非晶質Si膜の屈折率を示している。非晶質Si膜の屈折率は、未処理では約4.3でありアモルファスであることが示されている。
【0075】
比較例2は、
図7(A)に示す試料に対して、600℃で10分間、熱アニール処理を行った後の試料の、非晶質Si膜の屈折率を示している。ここで、熱アニール処理とは、抵抗加熱によるアニール処理を意味する。
図7(A)に示す試料の熱アニール処理後の非晶質Si膜の屈折率は、約4.3強でありアモルファスであることが示されている。
【0076】
比較例3は、
図7(A)に示す試料に対して、600℃で10分間、マイクロ波を照射して上述した改質処理を行った後の試料の、非晶質Si膜の屈折率を示している。
図7(A)に示す試料のマイクロ波照射後の非晶質Si膜の屈折率は、4.3弱であり結晶化は不十分であることが示されている。
【0077】
本実施例は、
図6(A)に示す試料に対して、600℃で10分間、マイクロ波を照射して上述した改質処理を行った後の試料の、非晶質Si膜の屈折率を示している。
図6(A)に示す試料のマイクロ波照射後の非晶質Si膜の屈折率は、4.2未満となり結晶化していることが示されている。すなわち、非晶質Si膜が、結晶格子がそろった結晶Si膜(ポリシリコン膜、クリスタルシリコン膜)に改質されていることが確認された。
【0078】
すなわち、マイクロ波を用いることにより、マイクロ波を用いない場合と比較して、非晶質Si膜の屈折率を小さくすることが確認できた。また、非晶質Si膜と接触させて金属含有膜を用いてマイクロ波を照射して加熱することにより、非晶質Si膜が結晶化されることが確認できた。すなわち、上述した作用対象膜を用いてマイクロ波(電磁波)を照射して加熱することにより、効率的に加熱され、非晶質膜を結晶化することができることが確認できた。
【符号の説明】
【0079】
100 基板処理装置
200 ウエハ(基板)
201 処理室
655 マイクロ波発振器(電磁波源、電磁波発振器)
2002 非晶質Si膜(処理対象膜、ターゲット膜)
2003 金属含有膜(作用対象膜、アシスト膜)