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特許7571156オートサンプラの流路洗浄方法及びオートサンプラの流路洗浄装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】オートサンプラの流路洗浄方法及びオートサンプラの流路洗浄装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 30/24 20060101AFI20241015BHJP
   G01N 30/18 20060101ALI20241015BHJP
   G01N 30/02 20060101ALI20241015BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20241015BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
G01N30/24 E
G01N30/18 G
G01N30/02 Z
G01N1/00 101N
G01N35/10 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022569945
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2021045517
(87)【国際公開番号】W WO2022131153
(87)【国際公開日】2022-06-23
【審査請求日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】P 2020208705
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕至
(72)【発明者】
【氏名】橋本 雄一郎
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106213(JP,A)
【文献】特開平04-169851(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213061(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154083(WO,A1)
【文献】特開2012-117945(JP,A)
【文献】特開2011-179839(JP,A)
【文献】国際公開第2013/099660(WO,A1)
【文献】特開2011-220928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105057294(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/20,30/24,
G01N 35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を吸引するノズルと前記ノズルから吸引された前記試料を保持するサンプルループとを含む第1流路と、前記ノズルの少なくとも外壁を洗浄する洗浄槽を含む第2流路と、のうちの流路切替機構により切り替えた流路に、洗浄液供給機構により洗浄液を供給するとき、
前記試料の測定項目に応じた洗浄パターンを示す洗浄情報のうち、前記試料の第1測定項目に応じた洗浄パターンを示す第1洗浄情報と、前記第1測定項目の次に測定する第2測定項目に応じた洗浄パターンを示す第2洗浄情報とに基づいて、前記第1測定項目の測定と前記第2測定項目の測定との間に供給される前記洗浄液の流速を制御装置によって変更するとともに、更に、前記第1洗浄情報と、前記第1測定項目の前に測定する第3測定項目に応じた洗浄パターンを示す第3洗浄情報と、に基づいて、前記制御装置によって前記洗浄液の流速を変更する
ことを特徴とするオートサンプラの流路洗浄方法。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第1洗浄情報と、前記第2洗浄情報又は前記第3洗浄情報の少なくとも一方と、に基づいて、前記洗浄液の供給時間を変更する
ことを特徴とする請求項に記載のオートサンプラの流路洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄情報は、前記第1流路を洗浄する洗浄液の種類、前記第2流路を通じて前記洗浄槽に供給される洗浄液の種類、前記洗浄液の流速、前記第1流路の洗浄時間、及び前記洗浄槽での前記ノズルの外壁の洗浄時間のうちの少なくとも1つを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオートサンプラの流路洗浄方法。
【請求項4】
前記制御装置は、前記洗浄液を供給する少なくとも直前に使用した前記試料又は前記測定項目の少なくとも何れか一方のキャリーオーバーのし易さに基づいて、前記洗浄液の流速を変更する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオートサンプラの流路洗浄方法。
【請求項5】
試料を吸引するノズルと、前記ノズルから吸引された前記試料を保持するサンプルループとを含む第1流路と、
前記ノズルの少なくとも外壁を洗浄する洗浄槽を含む第2流路と、
前記第1流路と、前記第2流路を通じて前記洗浄槽とにそれぞれ洗浄液を供給する洗浄液供給機構と、
前記洗浄液供給機構から供給される洗浄液の供給先を前記第1流路と前記第2流路とに切り替える流路切替機構と、
前記試料の測定項目に応じた洗浄パターンを示す洗浄情報のうち、第1測定項目に応じた洗浄パターンを示す第1洗浄情報と、前記第1測定項目の次に測定する第2測定項目に応じた洗浄パターンを示す第2洗浄情報とに基づいて、前記第1測定項目の測定と前記第2測定項目の測定との間に供給される前記洗浄液の流速を変更するとともに、更に、前記第1洗浄情報と、前記第1測定項目の前に測定する第3測定項目に応じた洗浄パターンを示す第3洗浄情報と、に基づいて、前記洗浄液の流速を変更する制御装置と、を備える
ことを特徴とするオートサンプラの流路洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の測定項目の分析を実施する自動分析装置の試料導入部であるオートサンプラの流路洗浄方法及びオートサンプラの流路洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置の一例としては、液体クロマトグラフ質量分析装置(HPLC/MS)が挙げられる。液体クロマトグラフ質量分析装置は、液体クロマトグラフと質量分析計とを組み合わせた装置である。液体クロマトグラフ(HPLC)による測定対象物質の化学的構造及び物性による分離と、質量分析計(MS)による測定対象物質の質量による分離及び検出を組み合わせることで、試料中の各成分を定性及び定量することができる。この特長により、例えば生体試料中の医薬品のように体内で代謝され多数の類似物質が混在しているような場合においても測定対象物質の定性及び定量が可能であり、臨床検査分野への応用が期待されている。
【0003】
自動分析装置の一例である液体クロマトグラフ質量分析装置では、複数の試料の分析を行う場合、キャリーオーバーを低減するための方法として、試料注入ニードルの洗浄方法、及び、洗浄を行う洗浄機構に工夫を行う技術が開示されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、液体クロマトグラフのオートサンプラにおいて、洗浄液を洗浄槽に供給しながらニードルの洗浄を行うこと、及び、ニードルに付着した試料の種類等に応じて洗浄液の種類を切り替えてニードルの洗浄を行うことができるオートサンプラが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、試料導入用ニードル及びサンプルループ内等を洗浄する際に、洗浄液の送液にダイアフラムポンプを用いるようにしたことで、従来のポンプやシリンジ機構のように送液時に時間ロスすることなく送液を維持できるオートサンプラ洗浄機構が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-271241号公報
【文献】特開2008-145112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の自動分析装置に対するニーズとして、多くの検体を短時間で処理すること、つまりスループット向上と、処理検体数の増加に伴う検査コストの増大の抑制とが挙げられる。このため、一検体当たりの処理時間の短縮によるスループット向上と、一検体当たりの試薬消費量微量化及び洗浄液消費量低減による検査コスト低減とが好ましい。一方、一検体あたりの処理時間の短縮及び洗浄液消費量の低減により、測定試料分注前後に行う試料導入部の洗浄が不十分となり、複数の試料間で測定誤差の原因となるキャリーオーバーが検出されることがある。このため、スループット向上と洗浄液消費量低減、そしてキャリーオーバー低減を同時に実現することが好ましい。
【0008】
しかし、複数試料を連続で分析する場合、試料を所定量導入(分注)するノズルが一検体の処理に費やすことのできる時間には限りがあり、分注後にノズルを十分に洗浄する時間が確保できない場合がある。
【0009】
特許文献1において、洗浄液を洗浄槽に供給しながらニードルの洗浄を行うこと、又はニードルに付着した試料の種類等に応じて洗浄液の種類を切り替えてニードルの洗浄を行うことで、キャリーオーバーの影響を低減することは可能である。しかし、高濃度試料を測定した後等、キャリーオーバー低減のために洗浄に長い時間をかけることが好ましい場合がある。即ち、所定の洗浄時間では洗浄が不十分となる場合、分析のスループットを犠牲にして洗浄が行われ、分析のスループットが低下し得る。
【0010】
特許文献2では、試料注入用ニードル及びサンプルループ内等を洗浄する際に、洗浄液の送液にダイアフラムポンプを用いるようにしたことで、洗浄液の送液に伴う時間ロスを低減できるため、限られた洗浄時間を効率よく利用できる。キャリーオーバーの影響を限りなく小さくする場合、洗浄ポンプの流速を予め高めに設定しておくことにより、十分な洗浄効果が得られることが期待できる。しかし、キャリーオーバーの影響が無視できるような測定及び洗浄が必要ない測定の場合にも洗浄液を高流速で送液することになり、過剰な洗浄を実施することで洗浄液消費量が増大し易い。
【0011】
本開示が解決しようとする課題は、分析のスループットの低下抑制と、洗浄液消費量の増大抑制とを両立可能なオートサンプラの流路洗浄方法及びオートサンプラの流路洗浄装置の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示のオートサンプラの流路洗浄方法は、試料を吸引するノズルと前記ノズルから吸引された前記試料を保持するサンプルループとを含む第1流路と、前記ノズルの少なくとも外壁を洗浄する洗浄槽を含む第2流路と、のうちの流路切替機構により切り替えた流路に、洗浄液供給機構により洗浄液を供給するとき、前記試料の測定項目に応じた洗浄パターンを示す洗浄情報のうち、前記試料の第1測定項目に応じた洗浄パターンを示す第1洗浄情報と、前記第1測定項目の次に測定する第2測定項目に応じた洗浄パターンを示す第2洗浄情報とに基づいて、前記第1測定項目の測定と前記第2測定項目の測定との間に供給される前記洗浄液の流速を制御装置によって変更するとともに、更に、前記第1洗浄情報と、前記第1測定項目の前に測定する第3測定項目に応じた洗浄パターンを示す第3洗浄情報と、に基づいて、前記制御装置によって前記洗浄液の流速を変更することを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、分析のスループットの低下抑制と、洗浄液消費量の増大抑制とを両立可能なオートサンプラの流路洗浄方法及びオートサンプラの流路洗浄装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施形態に係るオートサンプラの概略図である。
図2A】本実施形態に係る試料導入バルブを示す6ポート2ポジションバルブの概略図であり、第1ポジションを示す図である。
図2B】本実施形態に係る試料導入バルブを示す6ポート2ポジションバルブの概略図であり、第2ポジションを示す図である。
図3】本実施形態に係る洗浄ポンプへの印加電圧と流速との関係である。
図4】本実施形態に係る洗浄槽の概略図である。
図5】本実施形態に係るサンプルテーブルの概略図である。
図6】本実施形態に係る試料分注前の洗浄条件を決めるテーブルの一例である。
図7】本実施形態に係るオートサンプラの流路洗浄方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本開示を実施するための形態(実施形態と称する)を説明する。以下の一の実施形態の説明の中で、適宜、一の実施形態に適用可能な別の実施形態の説明も行う。本開示は以下の一の実施形態に限られず、異なる実施形態同士を組み合わせたり、本開示の効果を著しく損なわない範囲で任意に変形したりできる。また、同じ部材については同じ符号を付すものとし、重複する説明は省略する。更に、同じ機能を有するものは同じ名称を付すものとする。図示の内容は、あくまで模式的なものであり、図示の都合上、本開示の効果を著しく損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0016】
以下の説明では、複数の測定項目の分析を実施する自動分析装置の試料導入部をオートサンプラと呼称する。また、本実施形態では自動分析装置の試料導入部を主な対象としているが、本開示は自動分析装置に限らず、試料導入部を備える分析装置全般に適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係るオートサンプラ1の概略図である。オートサンプラ1は、試料導入バルブ101、サンプルループ102、計量ユニット103、ギアポンプ104、システム水105、洗浄ポンプ106、洗浄槽107、サンプルカップ108、ノズル109、電磁弁110,111,112、送液ポンプ113、分離カラム114、検出器115、及び洗浄液116,117(洗浄液の容器)を備える。これらはいずれも配管(不図示)等の流路で接続される。システム水105及び洗浄液116,117は、例えば、いずれも不図示のタンクに貯留される。
【0018】
オートサンプラ1の流路洗浄装置10は、第1流路11と、第2流路12と、洗浄液供給機構13と、流路切替機構14と、制御装置118とを備える。第1流路11は、試料を吸引するノズル109と、ノズル109から吸引された試料を保持するサンプルループ102とを含む。第1流路11への洗浄液116,117の流通により、ノズル109の内壁が洗浄される。ノズル109の内壁の洗浄は、必要に応じ、超純水、システム水105等の水を洗浄液として使用して行ってもよい。
【0019】
第2流路12は、ノズル109の少なくとも外壁を洗浄する洗浄槽107を含む。洗浄液供給機構13は、第1流路11と、第2流路12を通じて洗浄槽107とにそれぞれ洗浄液116,117を供給する。詳細は後記するが、洗浄液116,117を入れた洗浄槽107にノズル109を入れ、洗浄液116,117と接触させることで、ノズル109の少なくとも外壁が洗浄される。ノズル109の外壁の洗浄は、必要に応じ、超純水、システム水105等の水を洗浄液として使用して行ってもよい。洗浄液供給機構13は、洗浄ポンプ106を含む。
【0020】
流路切替機構14は、洗浄液供給機構13から供給される洗浄液の供給先を第1流路11と第2流路12とに切り替える。流路切替機構14は、電磁弁110,111,112を含む。
【0021】
制御装置118は、オートサンプラ1の駆動を制御し、電気信号線(不図示)を通じて、オートサンプラ1に接続される。制御装置118は、図5及び図6を参照して後記するが、第1測定項目に応じた洗浄パターンを示す第1洗浄情報と、前記第1測定項目の次に測定する第2測定項目に応じた洗浄パターンを示す第2洗浄情報とに基づいて、前記第1測定項目の測定と前記第2測定項目の測定との間に供給される洗浄液116,117の流速を変更する。第1洗浄情報及び第2洗浄情報は、いずれも、試料の測定項目に応じた洗浄パターンを示す洗浄情報の一例である。
【0022】
制御装置118は、いずれも図示はしないが、例えばCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備えて構成さ
れる。制御装置118は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがRAMに展開され、CPUによって実行されることにより具現化される。
【0023】
本実施形態では、試料は自動分析装置(不図示)のサンプル処理部(不図示)に設置され、前処理部(不図示)に移送される。試料は前処理部で精製及び濃縮され、試料を含むサンプルカップ108がオートサンプラ1のサンプルカップ保持部(不図示)に移送される。試料導入バルブ101としては、本実施形態では6ポート2ポジションバルブが用いられ、高圧(例えば100MPa)の耐圧機能を有する高圧バルブが用いられる。
【0024】
図2Aは、本実施形態に係る試料導入バルブ101を示す6ポート2ポジションバルブの概略図であり、第1ポジションを示す図である。試料導入バルブ101は6つのポート201,202,203,204,205,206を有する。ポート201は、分離カラム114に接続され、ポート202,205は、サンプルループ102に接続され、ポート203は、電磁弁111(図1)に接続され、ポート204は、ノズル109(図1)に接続され、ポート206は、送液ポンプ113に接続される。
【0025】
試料導入バルブ101は、いずれも不図示であるが、バルブヘッドが2つのポジションに回転することで内部のローターシールに備わった溝の流路が切替わることで隣接するポート同士が導通される状態が交互に切り替わる構造を有する。図2Aに示す第1ポジションでは、送液ポンプ113とサンプルループ102と分離カラム114とが、試料導入バルブ101中の流路(不図示)を介して接続される。第1ポジションでは送液ポンプ113からの流路がサンプルループ102に繋がるため、例えば最大100MPaの高圧力条件下で送液が行われる。
【0026】
図2Bは、本実施形態に係る試料導入バルブ101を示す6ポート2ポジションバルブの概略図であり、第2ポジションを示す図である。図2Bに示す第2ポジションでは、ノズル109(図1)とサンプルループ102と電磁弁111(図1)とが、試料導入バルブ101中の流路(不図示)を介して接続される。第2ポジションでは計量ユニット103、又は計量ユニット103の後段のギアポンプ104(図1)がサンプルループ102に繋がる。このため、最大でも例えば1MPa以下、典型的には例えば300KPaの低圧力条件下で送液が行われる。
【0027】
第1ポジション(図2A)から第2ポジション(図2B)に切替わる場合には、サンプルループ102内の流路は高圧力から低圧力へと変動する。一方、第2ポジションから第1ポジションに切替わる場合には、サンプルループ102内の流路は低圧力から高圧力へと変動する。
【0028】
図1に戻って、サンプルループ102は本実施形態では材質がステンレス鋼(SUS)であり、例えば、内径0.3mm、外径1/16インチ、長さ283mm、体積20μLの配管である。材質はSUS以外でのポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、PEEKsil(フューズドシリカの外面をPEEKでコーティングしたもの)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体(PFA)等の樹脂配管でもよい。寸法も測定条件にあわせて適宜変更してもよい。
【0029】
計量ユニット103は、シリンジ及びステッピングモータ(何れも不図示)を備え、パルス制御によりシリンジ(不図示)の駆動量を制御する。本実施形態では、例えば、内径23.8mm、長さ85mm、プランジャ容量723μLのシリンジが用いられる。シリンジの駆動はステッピングモータではなく、サーボモータにより行われてもよい。
【0030】
ギアポンプ104は、計量ユニット103の後段に配置され、システム水105である純水を計量ユニット103及びそのシリンジ(不図示)の前段の流路に供給する。計量ユニット103とシステム水105との間には2方電磁弁(不図示)が配置され、この2方電磁弁の開閉制御により、システム水105が計量ユニット103内に供給される。供給時の圧力は本実施形態では例えば300kPaである。この圧力は、例えば、ギアポンプ104の前段に配置される2方電磁弁又は電磁弁111の耐圧によって適宜変更される。また、ギアポンプ104によって、システム水105の流速が変更されてもよい。
【0031】
洗浄ポンプ106は、本実施形態ではチューブポンプが用いられる。洗浄ポンプ106はダイアフラムポンプでもよい。洗浄ポンプ106の流路は電磁弁110に接続される。
【0032】
図3は、本実施形態に係る洗浄ポンプ106への印加電圧と流速(送液流量)との関係である。この関係は、例えば図示のグラフとして制御装置118(図1)に記憶されている。流速は、洗浄ポンプ106への印加電圧を変更することで、変更できる。例えば印加電圧を大きくすることで、例えば線型的に流速を速くできる。印加電圧は、例えば、制御装置118によって制御される。
【0033】
図1に戻って、洗浄ポンプ106の上流には例えば3方電磁弁である電磁弁112が備えられ、電磁弁112の切り替えにより、洗浄液116,117が使用される。本実施形態では、洗浄液116は例えばアセトニトリル、洗浄液117は例えばメタノールである。洗浄液116,117の種類は、ユーザが測定項目ごとに設定した洗浄パターン(洗浄条件)によって決定され、洗浄液116,117を使用して、ノズル109及びサンプルループ102を含む第1流路11の洗浄が行われる。洗浄液116,117は、電磁弁110の切り替えにより、洗浄槽107に供給できる。
【0034】
図4は、本実施形態に係る洗浄槽107の概略図である。洗浄槽107は、供給された洗浄液116,117にノズル109を浸すことで、ノズル109の少なくとも外側の洗浄を行うものである。洗浄槽107は、ドレインポート402、有機溶媒洗浄ポート403、水洗浄ポート404を備える。有機溶媒洗浄ポート403には洗浄液116,117(図1)が供給され、水洗浄ポート404にはシステム水105(図1)が供給される。なお、詳細は後記するが、ノズル109の内側の洗浄に使用した洗浄液及びシステム水105は、ドレインポート402に排出される。
【0035】
図1に戻って、サンプルカップ108は、精度管理されたカップである。本実施形態では、例えば材質がポリプロピレンであり、例えば下部内径5mm、上部内径6mm、高さ26mm、体積250μLのものが用いられる。サンプルカップ108は、サンプルカップ保持位置(不図示)に保持される。サンプルカップ108には、例えば、前処理部(不図示)で処理された測定対象成分を含む試料が移送され、試料を収容したサンプルカップ108がサンプルカップ保持位置に保持される。
【0036】
ノズル109は、本実施形態では、例えば材質がステンレス鋼(SUS)であり、例えば内径0.8mm、外径1.5mm、長さ50mm、体積25μLの配管である。内側にはキャリーオーバー低減のために表面研磨加工が施される。ノズル109と、試料導入バルブ101とを繋ぐ配管との接続部(不図示)には、デッドボリューム抑制のため、ゼロデッドボリューム対応のフィッティングが用いられる。これにより、試料の拡散抑制及びキャリーオーバーの低減が図られる。
【0037】
電磁弁110は、本実施形態ではロッカータイプの3方電磁弁である。3方電磁弁において、COM(共通ポート。不図示)側には洗浄ポンプ106の流路が接続され、ノーマルオープン(常時開。不図示)側には電磁弁111の流路が接続され、ノーマルクローズ(常時閉。不図示)側には洗浄槽107が接続される。サンプルループ102、試料導入バルブ101、ノズル109の内側の洗浄時には、流路は、ノーマルオープン側に接続される。洗浄槽107への洗浄液116,117の供給時には、流路は、ノーマルクローズ側に接続される。これにより、有機溶媒洗浄ポート403に洗浄溶液が供給される。
【0038】
電磁弁111は、本実施形態ではロッカータイプの3方電磁弁である。3方電磁弁において、COM(共通ポート。不図示)側には試料導入バルブ101の流路が接続され、ノーマルオープン(常時開。不図示)側には電磁弁110が接続され、ノーマルクローズ(常時閉。不図示)側には計量ユニット103の流路が接続される。計量ユニット103を用いた吸引及び吐出、及びギアポンプ104からの送液時には、流路はノーマルクローズ側に接続される。洗浄ポンプ106からの洗浄液116,117の洗浄液供給時には、流路は、ノーマルオープン側に接続され、これにより、サンプルループ102、試料導入バルブ101及びノズル109を含む第1流路11の洗浄が行われる。
【0039】
送液ポンプ113は、2本のプランジャ(何れも不図示)を備え、パルス制御により2本のプランジャを往復駆動させることで、2種の送液溶媒を連続的に高圧力、例えば100MPaで送液する。本実施形態では、送液ポンプ113は、2つのポンプ(何れも不図示)を内蔵し、ユーザが測定項目ごとに設定したグラジエント条件によって、各ポンプの駆動比率を変えながら送液を行う。
【0040】
送液ポンプ113の後段にはミキサー(不図示)が備えられ、2つのポンプから送液される送液溶媒はミキサーによってミキシングされる。ミキサーは例えば低圧力の電磁弁(不図示)である。ユーザが測定対象成分ごとに設定したミキシング条件に従って低圧力の電磁弁を駆動することで、送液溶媒の溶媒比率を変更できる。本実施形態では、送液溶媒として、超純水、アセトニトリル、メタノール、1mol/Lのギ酸、1mol/Lのアンモニア水、及び1mol/Lの酢酸アンモニウムの6種の液体が使用される。これら6種の液体は、低圧力の電磁弁でミキシングされた後に2つのポンプに送り込まれ、2つのポンプの駆動比率を変化させながらグラジエント送液される。送液ポンプ113により、送液溶媒の流速が変更されてもよい。
【0041】
分離カラム114は、本実施形態では例えば内径1.0mm、長さ50mm、粒子径2.6mmの充填剤をカラム本体(不図示)に収容して構成される。分離モードとしては例えば逆相モードが用いられる。ただし、分離モードは、逆相モードでなくとも、順相モード、分子量分画モード、親水性相互作用クロマトグラフィモード(HILICモード)及び抗原抗体反応モードのいずれでもよい。
【0042】
検出器115としては、本実施形態では例えば三連四重極質量分析計(Triple Q-MS)に使用される検出器が用いられる。これは、定量性に優れているためである。質量分析装置は三連四重極質量分析計でなくともよく、イオントラップ型質量分析計(Iontrap-MS)、飛行時間型質量分析(TOF-MS)であってもよい。また、質量分析計でなくとも、ダイオードアレイ検出器、UV検出器又は蛍光検出器であってもよい。
【0043】
次に、本実施形態におけるノズル109の洗浄方法及び洗浄条件の決定手順について説明する。
【0044】
図5は、本実施形態に係るサンプルテーブルの概略図である。測定する検体数(不図示)及び各検体の測定項目毎に、試料分注前、即ち、任意の測定項目の測定と、その測定項目の次に行う測定項目の測定との間に行う洗浄パターンが指定される。測定項目毎の洗浄パターンは、検体中の測定対象成分(試料中の測定項目)の検出感度、ダイナミックレンジの大小、キャリーオーバーの影響の大小等を考慮して決定することが好ましい。自動分析装置の制御装置118(図1)は、設定された洗浄パターンに規定された洗浄条件に応じて洗浄を実行するように、流路洗浄装置10(図1)を制御する。
【0045】
サンプルテーブルにおける洗浄パターンの割り当ては、ユーザが行ってもよいし、自動で設定してもよい。自動で設定する場合、例えば、任意の1つ目(例えばNo.1)の測定項目及びその次(例えばNo.2)の測定項目の組と、この組におけるそれぞれの測定項目に対する適切な分注前洗浄パターンとの組合せのデータベースが予め設定される。そして、このデータベースに基づき、測定項目の順序から該当する適切な洗浄パターンを取得できる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る試料分注前の洗浄条件を決めるテーブルの一例である。各測定項目に対し、試料分注前に行う洗浄パターンの具体的条件(洗浄条件)が示される。例えば洗浄パターンA~Dのように、測定項目毎に洗浄パターンを示す洗浄条件が選択できる。テーブルは、試料の測定項目に応じた洗浄パターンを示す洗浄情報を含む。洗浄情報は、第1流路11(図1)を洗浄する洗浄液116,117及び洗浄液としての水の種類、第2流路12(図1)を通じて洗浄槽107(図1)に供給される洗浄液116,117の種類、洗浄液116,117の流速、第1流路11の洗浄時間、及び洗浄槽107でのノズル109の外壁の洗浄時間のうちの少なくとも1つを含む。図示の例では、洗浄液116,117及び洗浄液としての水の種類(ノズル09の内壁及び外壁のそれぞれ)と、洗浄液116,117及び洗浄液としての水の流速、洗浄箇所毎の洗浄時間(ノズル09の内壁及び外壁のそれぞれ)とを含む。
【0047】
上記の図3に例示したように、洗浄液の流速は、印加電圧を変えることにより、例えば流速1~10ml/minの範囲で変更できる。洗浄液の供給方法によっては、印加電圧の代わりに洗浄ポンプ106(図1)の動作周期等を変えて流速を変更する方法でもよい。また、洗浄時間は例えば、ノズル109の内壁洗浄時間及び外壁洗浄時間の合計が0~20秒の範囲で選択することが好ましい。
【0048】
例として、洗浄パターンAでは、ノズル109(図1)の内壁及び外壁のそれぞれの洗浄液としてメタノール(MeOH)を使用し、洗浄液の流速は2ml/min、内壁の洗浄時間は10秒、外壁の洗浄時間は10秒として、洗浄が実行される。
洗浄パターンBでは、洗浄液としてメタノール(MeOH)を使用し、洗浄液の流速は5ml/min、内壁の洗浄時間は15秒、外壁の洗浄時間は5秒として、洗浄が実行される。洗浄パターンBは、例えば、次の分析の測定項目の測定対象成分の検出感度が低く、前の分析からのキャリーオーバーの影響を極力低減する場合に好ましい。
【0049】
洗浄パターンCでは、内壁の洗浄液として超純水を、外壁の洗浄液としてシステム水105を使用し、洗浄液の流速は2ml/min、内壁の洗浄時間は10秒、外壁洗浄は10秒として、洗浄が実行される。洗浄パターンCは、例えば、次の分析の測定項目の測定対象成分が親水性で、水系溶媒での洗浄が行われる場合に好ましい。
洗浄パターンDでは、内壁の洗浄液として洗浄液として超純水を、外壁の洗浄液としてシステム水105を使用し、洗浄液の流速は5ml/min、内壁の洗浄時間は15秒、外壁の洗浄時間は5秒として、洗浄が実行される。洗浄パターンDは、測定項目の測定対象成分が親水性で、かつ検出感度が低く、前の分析からのキャリーオーバーの影響を極力低減する場合に好ましい。
【0050】
なお、洗浄パターン毎の洗浄条件の内容はユーザの意思により変更可能としてもよい。測定項目毎に洗浄条件を設定する場合は、洗浄条件毎に同様の手順にて設定を行うことが好ましい。
【0051】
図7は、本実施形態に係るオートサンプラ1(図1)の流路洗浄方法を示すフローチャートである。図7に示す流路洗浄方法は、流路洗浄装置10(図1)により行うことができる。例として、測定項目がテストステロン(図5のNo.1)であり、測定前に洗浄パターンAによる洗浄動作及び試料分注動作について、更に図1を参照しながら説明する。
【0052】
まず、初回洗浄工程S1では、例えば洗浄パターンAを実行する指令を受けた制御装置118は、図6に示したテーブルを検索し、洗浄パターンAの洗浄方法を読み出し、それに従った洗浄方法でノズル109の内壁及び外壁を洗浄する。
【0053】
内壁の洗浄時、制御装置118は、ノズル109を洗浄槽107のドレインポート402(図4)に移動する。その後、制御装置118は、電磁弁110,111,112をノーマルオープン側にし、洗浄ポンプ106を動作させ、第1流路11(図1)を通じて洗浄液117(メタノール)をノズル109に移送する。このとき、制御装置118は、洗浄ポンプ106に印加する電圧を調整し、洗浄液117の流速を2ml/minに調節する。
【0054】
外壁の洗浄時、制御装置118は、ノズル109を洗浄槽107の有機溶媒洗浄ポート403(図4)の内側に移動した後、電磁弁110をノーマルクローズ側に切り替え、電磁弁112はノーマルオープン側にする。制御装置118は、洗浄ポンプ106を動作させ、洗浄液117(メタノール)を第2流路12(図1)を通じて洗浄槽107の有機溶媒洗浄ポート403に移送する。このとき、制御装置118は、洗浄ポンプ106に印加する電圧を調整し、洗浄液117の流速を2ml/minにする。ノズル109の外壁洗浄が行われている間に、洗浄槽107の有機溶媒洗浄ポート403から溢れ出た洗浄液117は洗浄槽107の吐出ポート(不図示)に排出される。
【0055】
次に、パージ工程S2では、制御装置118は、ノズル109を洗浄槽107のドレインポート402(図4)に移動した後、ノズル109内のパージを実行する。パージは、システム水105を用いて実行され、これにより、ノズル109の内壁が洗浄される。具体的には、制御装置118は、計量ユニット103とギアポンプ104との間に備えられた2方電磁弁(不図示)を開弁し、システム水105をノズル109に供給することで、ノズル109のパージが行われる。
【0056】
次いで、エア吸引工程S3では、制御装置118は、ノズル109を、試料吸引のためにサンプルカップ108上に移動する。その際、制御装置118は、分節空気としてのエア吸引を同時に実行する。実行時、制御装置118は、電磁弁111をノーマルクローズ側に切替えた後、計量ユニット103を駆動させ、空気を吸引する。試料吸引前に分節空気を挟み込むことで、ノズル109内の洗浄液と試料溶液との混合を抑え、試料吸引工程S4(後記)での試料の拡散が低減される。本実施形態では、計量ユニット103が例えば25パルス分駆動し、5μL分の空気が吸引される。
【0057】
エア吸引工程S3後、試料吸引工程S4では、制御装置118は、ノズル109を高さ方向(Z方向)に試料吸引位置まで下降させ、計量ユニット103を駆動させることで、試料を吸引する。本実施形態では、計量ユニット103が例えば175パルス分駆動し、35μL分の試料が吸引される。試料は、生体試料であれば、血清、血漿、尿、生体組織等であり、生体試料以外ではキャリブレーション用試料、QC(品質管理)試料である。制御装置118は、試料を前処理部(不図示)で処理し、試料を含むサンプルカップ108をオートサンプラ1のサンプルカップ保持部(不図示)に移送する。
【0058】
次に、試料移送工程S5では、試料が移送される。制御装置118は、ノズル109を高さ方向(Z方向に)ホーム位置まで戻した後、計量ユニット103を駆動させて空気を吸引することで、吸引した試料をサンプルループ102近傍まで移送する。本実施形態では、例えば計量ユニット103が150パルス分駆動し、30μL分の空気が吸引される。
【0059】
次に、バックラッシュ工程S6では、バックラッシュが実行される。試料移送工程S5までのシリンジ駆動により流路内に生じた圧力差を解消するため、シリンジ駆動を吐出側に動作させる。本実施形態では、計量ユニット103が5パルス分駆動し、1μL分空気が吐出される。
【0060】
次に、バルブ切替工程S7では、試料導入バルブ101の切り替えが行われる。制御装置118は、試料導入バルブ101を第1ポジション(図2A)から第2ポジション(図2B)に切替える。これにより、図2Bに示すように、ノズル109とサンプルループ102と電磁弁111とが接続される。
【0061】
次に、第1試料導入工程S8では、サンプルループ102への試料導入が行われる。試料導入バルブ101の切替え後、制御装置118は、計量ユニット103を駆動させ、試料をサンプルループ102に吐出する。本実施形態では、例えば計量ユニット103が50パルス分駆動し、10μL分の試料がサンプルループ102に吐出される。計量ユニット103の駆動量に応じて、サンプルループ102への試料導入量は可変である。
【0062】
次に、第2試料導入工程S9では、分離カラム114への試料導入が行われる。サンプルループ102の試料導入後、制御装置118は、試料導入バルブ101を第2ポジション(図2B)から第1ポジション(図2A)に切替える。これにより、図2Aに示すように、送液ポンプ113とサンプルループ102と分離カラム114とが接続される。サンプルループ102内の試料溶液は、送液ポンプ113から送液される移動相により、分離カラム114へと導入される。
【0063】
次に、移動工程S10では、制御装置118は、計量ユニット103をホーム位置に移動させる。これにより、一連の試料導入が完了し、分離カラム114で試料中から目的成分が分離され、検出器115で検出される。
【0064】
制御装置118は、他に試料がなく分析を終了する場合には(判断工程S11のYes)、運転を終了する。一方で、他に試料があり分析を継続する場合には(判断工程S11のNo)、制御装置118は、流路洗浄工程S12を行った後、上記パージ工程S2以降を繰り返す。
【0065】
流路洗浄工程S12は、第1測定項目の測定と第2測定項目の測定との間に洗浄液116,117を第1流路11又は第2流路12に供給することで実行される。制御装置118は、第1流路11と第2流路12とのうちの流路切替機構14により切り替えた流路に、洗浄液供給機構13により洗浄液116,117を供給する。これにより、ノズル109の内壁及びサンプルループ102を含む第1流路11と、洗浄槽107でのノズル109の外壁との洗浄が可能になる。洗浄液116,117の供給時、制御装置118は、試料の第1測定項目に応じた洗浄パターンを示す第1洗浄情報と、第1測定項目の次に測定する第2測定項目に応じた洗浄パターンを示す第2洗浄情報とに基づいて、洗浄液116,117の流速を変更する。変更は、例えば、上記の図6に示した標準的な洗浄条件(標準条件)に対して行うことができる。
【0066】
例えば、測定項目としてテストステロン(図5のNo.1。第1測定項目)を測定した次にエストラジオール(図5のNo.2。第2測定項目)を測定する場合、エストラジオールに対応する洗浄パターンB(図6)における洗浄液116,117の流速が、図6に示す流速から変更される。なお、テストステロンが繰り返し測定される場合には、図5に示すように、1回の測定終了後毎に、テストステロンに対応する洗浄パターンAが行われる。
【0067】
このようにすることで、第1測定項目に使用した試料、試薬等に起因してキャリーオーバーが生じ易いと考えられる場合には、例えば流速(所定の洗浄時間における合計流量)を速くして十分に洗浄し、キャリーオーバーを抑制して精度低下を抑制できる。一方で、例えばキャリーオーバーの影響が無視できるような場合には、例えば洗浄を省略又は簡略化できる。そこで、このような場合等には流速(所定の洗浄時間における合計流量)を遅くして簡便に洗浄又は洗浄せず、分析のスループットの低下抑制と、洗浄液消費量の増大抑制とを両立できる。
【0068】
3回目以降の測定項目の場合、制御装置118は、更に、第1洗浄情報(例えば2回目の測定項目)と、第1測定項目の前に測定する第3測定項目(例えば1回目の測定項目)に応じた洗浄パターンを示す第3洗浄情報と、基づいて、3回目の測定項目の直前に行われる洗浄時の洗浄液116,117の流速を変更する。これにより、例えば1回目及び2回目の測定項目の測定で使用した試料、試薬等の影響を考慮し、3回目の測定項目の測定の前に洗浄できるため、より効率的に分析のスループットの低下抑制と、洗浄液消費量の増大抑制とを両立できる。
【0069】
制御装置118は、上記の第1洗浄情報と、上記第2洗浄情報又は上記第3洗浄情報の少なくとも一方と、に基づいて、洗浄液116,117の供給時間を変更する。第1流路11への供給時間は、ノズル109の内壁の洗浄時間(図6)である。洗浄槽107への供給時間は、洗浄槽107でのノズル109の外壁との接触時間であり、外壁の洗浄時間(図7)である。流速とともに供給時間を変更することで、より更に効率的に分析のスループットの低下抑制と、洗浄液消費量の増大抑制とを両立できる。
【0070】
制御装置118は、洗浄液116,117を供給する少なくとも直前に使用した試料又は測定項目の少なくとも何れか一方のキャリーオーバーのし易さに基づいて、洗浄液116,117の流速を変更する。洗浄液116,117の種類は維持され、変更されないことが好ましい。キャリーオーバーのし易さは、試料及び測定項目によってある程度決まるため、このようにすることでキャリーオーバーの発生を抑制できる。例えば、キャリーオーバーし易い試料又は測定項目の場合には、流速を図6に示した標準条件よりも速くすることで、キャリーオーバーの影響を低減できる。このとき、必要に応じ、洗浄時間(洗浄液116,117の供給時間)を長くしてもよい。一方で、キャリーオーバーし難い試料又は測定項目の場合には、流速を図6に示した標準条件よりも短くすることで、洗浄液116,117の使用量を抑制できる。このとき、必要に応じ、洗浄液116,117の供給時間(洗浄時間)を短くしてもよい。
【0071】
ただし、洗浄液116,117の流速を速くした場合、必ずしも供給時間も長くする必要は無く、供給時間は変更しなくてもよく、短くしてもよい。一方で、洗浄液116,117の流速を遅くした場合、必ずしも供給時間も短くする必要は無く、供給時間は変更しなくてもよく、長くしてもよい。従って、供給時間は、流速に応じて、キャリーオーバーのし易さ等の各条件に基づいて、適宜決定すればよい。
【0072】
以上のように、本開示の実施形態によれば、サンプルテーブル(図5)及び洗浄パターン(図6)で指定した条件に応じてノズル109の洗浄条件を適切に切り換えることにより、分析スループットの低下を抑制できる。これにより、限られた検体処理時間の中において、洗浄液消費量の浪費を抑えながら、複数試料間のキャリーオーバーを抑制でき、測定結果の正確性を向上可能なオートサンプラ1の流路洗浄方法及び流路洗浄装置10を提供できる。
【0073】
なお、本開示は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1 オートサンプラ
10 流路洗浄装置
11 第1流路
12 第2流路
13 洗浄液供給機構
14 流路切替機構
101 試料導入バルブ
102 サンプルループ
103 計量ユニット
104 ギアポンプ
105 システム水
106 洗浄ポンプ
107 洗浄槽
108 サンプルカップ
109 ノズル
110,111,112 電磁弁
113 送液ポンプ
114 分離カラム
115 検出器
116,117 洗浄液
118 制御装置
201,202,203,204,205,206 ポート
402 ドレインポート
403 有機溶媒洗浄ポート
404 水洗浄ポート
S1 初回洗浄工程
S2 パージ工程
S3 エア吸引工程
S4 試料吸引工程
S5 試料移送工程
S6 バックラッシュ工程
S7 バルブ切替工程
S8 第1試料導入工程
S9 第2試料導入工程
S10 移動工程
S11 判断工程
S12 流路洗浄工程
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7