(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-11
(45)【発行日】2024-10-22
(54)【発明の名称】液処理装置および液処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241015BHJP
H01L 21/306 20060101ALI20241015BHJP
【FI】
H01L21/304 648G
H01L21/304 648K
H01L21/306 J
(21)【出願番号】P 2023188864
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2019123898の分割
【原出願日】2019-07-02
【審査請求日】2023-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】信國 力
(72)【発明者】
【氏名】尾嶋 智明
(72)【発明者】
【氏名】板橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】堀口 亮一
(72)【発明者】
【氏名】若山 翔太
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/086158(WO,A1)
【文献】特開2018-137367(JP,A)
【文献】特開平10-303164(JP,A)
【文献】特開2016-115924(JP,A)
【文献】特開2018-133558(JP,A)
【文献】特開2010-045300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
H01L 21/306
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理液供給部から供給される処理液を貯留するタンクと、
前記タンクに接続された循環通路と、
前記循環通路に設けられたポンプと、
基板に液処理を行う複数の液処理部と、
前記複数の液処理部にそれぞれ処理液を供給する複数の供給通路と、
を備え、
前記循環通路は、前記ポンプが設けられた主通路部分と、前記主通路部分から分岐した第1分岐通路部分および第2分岐通路部分とを有し、前記タンクから流出した処理液は、前記主通路部分を通過した後に、前記第1分岐通路部分および第2分岐通路部分に流入し、前記第1分岐通路部分および第2分岐通路部分を通って前記タンクに戻るように構成されており、
前記複数の液処理部は、複数の液処理部が属する第1処理部群と複数の液処理部が属する第2処理部群とに分割され、
前記複数の供給通路は、複数の供給通路が属する第1通路群と複数の供給通路が属する第2通路群とに分割され、
前記第1処理部群に属する液処理部はそれぞれ、前記第1通路群に属する供給通路を介して前記第1分岐通路部分に接続され、
前記第2処理部群に属する液処理部はそれぞれ、前記第2通路群に属する供給通路を介して前記第2分岐通路部分に接続され、
前記第1分岐通路部分に、第1濾過部および第1温調部が設けられ、
前記第2分岐通路部分に第2濾過部および第2温調部が設けられている、
液処理装置。
【請求項2】
前記第1分岐通路部分の前記第1温調部よりも下流側の位置、および前記第2分岐通路部分の前記第2温調部よりも下流側の位置にそれぞれ設けられた第1温度センサと、
前記主通路部分が第1分岐通路部分および第2分岐通路部分へと分岐する分岐点と、前記タンクとの間において前記主通路部分に設けられた第2温度センサと、
制御部と、
をさらに備え、
前記制御部は、
前記第1分岐通路部分に設けられた前記第1温度センサをフィードバック制御し、前記第2分岐通路部分に設けられた前記第1温度センサをフィードバック制御し、
前記制御部は、前記タンクに前記処理液供給部から処理液が補充されたときに、前記第2温度センサの検出温度に基づくフィードフォワード制御を併用して、前記第1または第2温調部を制御する、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項3】
前記処理液供給部は、前記タンクに前記処理液それ自体または前記処理液の構成成分としての液体を供給する液供給ラインと、前記液供給ラインに設けられ、前記液体を温調する温調機構と、を有している、請求項1に記載の液処理装置。
【請求項4】
前記液体は、工場用力として提供される液体であり、前記温調機構は、工場冷却水を冷却媒体として用いる冷却用の熱交換器である、請求項3に記載の液処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液処理装置および液処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程には、半導体ウエハ等の被処理体に所定の処理液を供給して、洗浄あるいはウエットエッチング等の液処理を行う工程が含まれる。このような液処理を行う液処理装置に設けられる処理液供給機構の一例が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された処理液供給機構は、処理液を貯留する貯留タンクと、貯留タンクに両端が接続された循環ライン(循環管路)を有している。循環ラインには、貯留タンクから出て上流側から順に、処理液を加熱するヒータ、処理液を送る循環ポンプと、処理液中に含まれるパーティクル等の汚染物質を除去するフィルタと、が設けられている。循環ラインから複数の分岐供給ラインが分岐し、各循環ラインが、基板を処理する液処理部に処理液を供給する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、液処理装置の処理液供給機構の部品点数を削減することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
液処理装置の一実施形態は、処理液供給部から供給される処理液を貯留するタンクと、前記タンクに接続された循環通路と、前記循環通路に設けられたポンプと、基板に液処理を行う複数の液処理部と、前記複数の液処理部にそれぞれ処理液を供給する複数の供給通路と、を備え、前記循環通路は、前記ポンプが設けられた主通路部分と、前記主通路部分から分岐した第1分岐通路部分および第2分岐通路部分とを有し、前記タンクから流出した処理液は、前記主通路部分を通過した後に、前記第1分岐通路部分および第2分岐通路部分に流入し、前記第1分岐通路部分および第2分岐通路部分を通って前記タンクに戻るように構成されており、前記複数の液処理部は、複数の液処理部が属する第1処理部群と複数の液処理部が属する第2処理部群とに分割され、前記複数の供給通路は、複数の供給通路が属する第1通路群と複数の供給通路が属する第2通路群とに分割され、前記第1処理部群に属する液処理部はそれぞれ、前記第1通路群に属する供給通路を介して前記第1分岐通路部分に接続され、前記第2処理部群に属する液処理部はそれぞれ、前記第2通路群に属する供給通路を介して前記第2分岐通路部分に接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、液処理装置の処理液供給機構の部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る液処理装置の流体回路図である。
【
図2】第2実施形態に係る液処理装置の流体回路図である。
【
図3】第3実施形態に係る液処理装置の概略流体回路図である。
【
図4】第4実施形態に係る液処理装置の概略流体回路図である。
【
図5】第5実施形態に係る液処理装置の概略流体回路図である。
【
図6】第6実施形態に係る液処理装置の概略流体回路図である。
【
図7】第7実施形態に係る液処理装置の流体回路図である。
【
図8】第7実施形態に係る液処理装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図9】第7実施形態に係る液処理装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図10】第7実施形態に係る液処理装置の動作を説明するためのタイムチャートである。
【
図11】処理液供給部の構成の一例を示す流体回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
液処理装置の実施形態を、添付図面を参照して説明する。各図において、同一または概ね同一の部材には同じ参照符号が付けられている。
【0009】
図1は液処理装置の第1実施形態を示している。液処理装置は、処理液供給機構を有し、処理液供給機構は、処理液供給部70から供給される処理液を貯留するタンク10と、タンク10に接続された循環通路20と備える。循環通路20に設けられたポンプ30が、タンク10から出発して循環通路20を通ってタンク10に戻る処理液の循環流を形成する。
【0010】
循環通路20は、上流側の主通路部分(幹管部)22と、下流側の複数の(図示例では2つの)分岐通路部分(枝管部)24A,24B(以下、「第1分岐通路部分24A」および「第2分岐通路部分24B」とも呼ぶ)とを有する。
【0011】
なお、以下、本明細書において、第1分岐通路部分24Aに付属する構成要素に与えられた参照符号の末尾の文字は「A」であり、第2分岐通路部分24Bに付属する構成要素に与えられた参照符号の末尾の文字は「B」である。第1分岐通路部分24Aに付属する構成要素と第2分岐通路部分24Bに付属する構成要素は互いに同じであるか、または実質的に互いに同じものである。第1分岐通路部分24Aに付属する構成要素と第2分岐通路部分24Bに付属する構成要素とを互いに区別する必要が無い場合には、末尾の文字「A」、「B」を削除して表記する場合もある(例えば40A,40Bを40と表記する)。また、参照符号の末尾の文字が「A」である構成要素は「第1(の)(構成要素の名称)」と呼び、参照符号の末尾の文字が「B」である構成要素は「第2(の)(構成要素の名称)」と呼ぶこともある。また、「第1(の)~」および「第2(の)」が省略される場合もある。
【0012】
濾過部40は、当該濾過部を通過する処理液中に含まれるパーティクル等の汚染物質を除去する。濾過部40は、並列に設けられた複数(図示例では3つ)のフィルタモジュールを含んでいる。1つの濾過部40に属するフィルタモジュールの数は、濾過部に求められる濾過能力および濾過部において許容される圧力降下等を考慮して決定することができる。なお、本願に添付された全ての図において、中央に縦線が描かれた菱形(正方形)で示された1つのシンボルが1つのフィルタモジュールを表している。
【0013】
主通路部分22は、その下流端つまりポンプ30の下流側に設定された分岐(分岐点)23で、第1分岐通路部分24Aと第2分岐通路部分24Bへと分岐する。タンク10から流出した処理液は、主通路部分22を通過した後に、第1分岐通路部分24Aおよび第2分岐通路部分24Bに流入し、第1分岐通路部分24Aおよび第2分岐通路部分24Bを通ってタンク10に戻る。
【0014】
液処理装置は、基板W(例えば半導体ウエハ)に液処理を施す複数の液処理部60を有している。液処理部60は互いに同じ構成を有している。各液処理部60は、例えば、基板Wを保持して回転させるスピンチャックと、スピンチャックにより保持されて回転する基板Wに処理液を供給するノズル66を有したものとすることができる。
【0015】
液処理部60は、分岐通路部分(24A,24B)と同じ数(図示例では2つ)のグループに分割されている。第1グループに属する液処理部60Aには、第1分岐通路部分24Aから処理液が供給される。このため、第1分岐通路部分24Aから複数の供給通路62(62A)が並列に分岐し、第1グループに属する液処理部60Aのいずれか一つに接続されている。第2グループに属する液処理部60Bには、第2分岐通路部分24Bから処理液が供給される。このため、第2分岐通路部分24Bから複数の供給通路62(62B)が並列に分岐し、第1グループに属する液処理部60Bのいずれか一つに接続されている。各グループに属する液処理部(60A,60B)の数は互いに同一である。
【0016】
図面の簡略化のため、
図1(
図2、
図7においても同じ)には1つのグループに3個の液処理部60が属している例が描かれているが、1つのグループに属する液処理部の数はこれには限定されない。例えば、1つのグループに属する液処理部の数は、6~10個程度とすることができる。
【0017】
各供給通路62には、流れ制御機器64が設けられている。流れ制御機器64には、開閉弁、流量制御弁、流量計、リキッドフローコントローラ等のうちの1つ以上が含まれている。供給通路62の下流端は、基板Wに処理液を供給するノズル66に接続されている。従って、ノズル66から、制御された流量で処理液を液処理部60内にロードされた基板Wに供給することが可能である。
【0018】
分岐通路部分24Aには、上流側から順に、温調部50(50A)、温度センサ21Q(21QA)、流量計25(25A)、開度調整機能付きの開閉弁26(26A)、温度センサ21R(21RA)が設けられている。分岐通路部分24Bにも、上流側から順に、温調部50(50B)、温度センサ21Q(21QB)、流量計25(25B)、開度調整機能付きの開閉弁26(26B)、温度センサ21R(21RB)が設けられている。
【0019】
温調部50は、当該温調部を通過する処理液の温度を調節する。各温調部50は、並列に設けられた複数(図示例では4つ)の温調モジュールを含んでいる。温調モジュールは、抵抗加熱ヒータまたはランプヒータのような専ら加熱のみを行うモジュールであってもよいし、温調素子(例えばペルチェ素子)を備えた加熱および冷却の両方が可能な加熱/冷却モジュールであってもよい。
【0020】
1つの温調部50に属する温調モジュールの数は、温調部50に求められる温調能力および温調部50において許容される圧力降下等を考慮して決定することができる。図示例では、各温調部50(50A,50B)は、並列に配置された2つの温調モジュールにより構成されている。なお、本願に添付された全ての図において、中央に2つの反対向きの縦矢印が描かれた菱形(正方形)で示された1つのシンボルが1つの温調モジュールを表している。
【0021】
液処理装置は制御部100を有している。制御部100は例えばコンピュータであり、制御演算部と記憶部とを有する。記憶部には、液処理措置において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御演算部は、記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって液処理装置の各種構成部品の動作を制御する。プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0022】
制御部100は、ポンプ30の出口付近にある温度センサ21P、温調部50Aの出口付近にある温度センサ21QA、第1分岐通路部分24Aの供給通路62Aの接続領域の直ぐ上流にある温度センサ21RAの検出温度に基づいて温調部50Aの温調動作(加熱および/または冷却動作)を制御することにより、第1分岐通路部分24Aから液処理部60Aに供給される処理液の温度を目標値に維持する。
【0023】
同様に、制御部100は、ポンプ30の出口付近にある温度センサ21P、温調部50Bの出口付近にある温度センサ21QB、第2分岐通路部分24Bの供給通路62Bの接続領域の直ぐ上流にある温度センサ21RBの検出温度に基づいて温調部50Bの温調動作(加熱および/または冷却動作)を制御することにより、第2分岐通路部分24Bから液処理部60Bに供給される処理液の温度を目標値に維持する。
【0024】
温調部50Aの制御と温調部50Bの制御とは互いに独立している。
【0025】
具体的には、制御部100は、温調部50A(50B)の出口付近にある温度センサ21QA(21QB)の検出温度に基づいて、温度センサ21QA(21QB)の検出温度が設定温度に維持されるように、温調部50A(50B)の温調動作(加熱および/または冷却動作)をフィードバック制御する。上記の設定温度はフィードバック制御系における設定値SVに該当し、温度センサ21QA(21QB)の検出温度はフィードバック制御系における測定値PVに該当する。
【0026】
液処理部60A(60B)の近くにある温度センサ21RA(21RB)の検出温度は、基板Wに実際に供給される処理液の温度に最も近い。処理液は、温調部50A(50B)から流出した後に基板Wに供給される迄の間に、分岐通路部分24A(24B)における自然放熱により、温度が低下する。制御部100は、温度センサ21QA(21QB)の検出温度と温度センサ21RA(21RB)の検出温度との差に応じて、フィードバック制御系における設定値(SV)または操作量(MV)を補正する。具体的には、温度センサ21RA(21RB)の検出温度が温度センサ21QA(21QB)の検出温度よりも例えば1℃低いのであれば、設定値(SV)に補正値(CV)として1℃を加えることが考えられる。温度センサ21RA(21RB)の検出温度と温度センサ21QA(21QB)の検出温度との差が無視できる程度であるならば、温度センサ21RA(21RB)の検出温度に基づく補正を行わなくてもよい。
【0027】
ポンプ30の出口付近にある温度センサ21Pは、フィードフォワード制御を行うために設けられる。処理液供給部70からタンク10に新しい処理液が補充されると、タンク10から比較的温度の低い処理液が温調部50A(50B)に流入する。フィードバック制御は、温調部50A(50B)の出口付近にある温度センサ21QA(21QB)の検出温度に基づいて行われているため、温度センサ21QA(21QB)の検出温度が低下する迄の間、温調部50A(50B)の発熱量は増えない。このため、フィードフォワード制御を行わない場合には、比較的温度の低い処理液が一時的に液処理部60A(60B)に向けて分岐通路部分24A(24B)を流れることになる。また、温度センサ21QA(21QB)の検出温度の低下を補償しようとするときに、温調部50A(50B)から流出する処理液の温度がふらつく現象が生じうる。
【0028】
フィードフォワード制御では、温度センサ21Pの検出温度と設定温度(温度センサ21QA(21QB)により検出されるべき温度)との差に応じて、フィードバック制御系における設定値(SV)または操作量(MV)を補正する。具体的には例えば、温度センサ21RA(21RB)の検出温度が設定温度より例えば5℃低くなったことが検出されたならば、設定値(SV)に一時的に補正値(CV)として5℃を加えることが考えられる。設定値(SV)に補正値(CV)を加算するタイミングは、処理液の流れが温度センサ21Pから温調部50A(50B)に到達するまでの時間、フィードバック制御系の制御応答性等を考慮して実験的に定めることができる。フィードフォワード制御を行うことにより、温調部50A(50B)に流入する処理液の温度が比較的急激に低下するとときに、液処理部60A(60B)に供給される処理液の温度変動を抑制することができる。
【0029】
フィードフォワード制御は、処理液供給部70からタンク10に新しい処理液が補充される等の温度制御系への大きな外乱が与えられることが予想されるときだけ行ってもよい。
【0030】
開度調整機能付きの開閉弁26A(26B)は、分岐通路部分24A(24B)を流れる処理液の流量を調節することができ、また、分岐通路部分24A(24B)の処理液の流れを遮断することができる。流量計25A(25B)は、分岐通路部分24A(24B)を流れる処理液の流量を監視することができる。
【0031】
分岐通路部分24A(24B)の最下流部分には、背圧弁27A(27B)が設けられている。
【0032】
処理液供給部70は、タンク10に処理液を供給(または補充)することができる。処理液供給部70から供給される処理液として、DHF(希フッ酸)が例示される。処理液供給部70は、HF(フッ酸)の供給源から供給されたHFを、DIW(純水)の供給源から供給されたDIWにより希釈することによりDHFを生成する機能を有していてもよい。この場合、DIW供給源およびHFの供給源は半導体装置製造工場の工場用力として提供されるものとすることができる。処理液供給部70は、予め調合された処理液を貯留するタンク(タンク10とは別のタンク)を備えていてもよい。処理液供給部70は、複数の成分を混合してなる処理液を供給するものであってもよいし、単一成分の処理液を供給するものであってもよい。
【0033】
図2は液処理装置の第2実施形態を示している。第2の実施形態では、第1分岐通路部分24Aに温調部50Aおよび濾過部40Aが設けられ、第2分岐通路部分24Bの温調部50Bおよび濾過部40Bが設けられている点が異なる。温調部50A(50B)は、濾過部40A(40B)の上流側に設けられている。温調部50A(50B)は、並列に設けられた4つの温調モジュールを有する。また、濾過部40A(40B)は、並列に設けられた2つの濾過モジュールを有する。上記の事項を除き、第2実施形態は第1実施形態と同一であり重複説明は省略する。
【0034】
図3~
図6は、液処理装置の第3~第6実施形態におけるポンプ30、濾過部40および温調部50の配置のみを簡略化して示している。第3~第6実施形態は、第1および第2実施形態が備えている構成要素と同様の構成要素(60,21P,21Q,21R,25,26等)を有しているが、それらの図示は省略されている。
【0035】
図3に示す第3実施形態では、主通路部分22にポンプ30が設けられている。第1分岐通路部分24Aに濾過部40Aおよび温調部50Aが設けられている。第2分岐通路部分24Bに濾過部40Bおよび温調部50Bが設けられている。各濾過部(40A,40B)は1つの濾過モジュールを有しており、各温調部(50A,50B)は1つの温調モジュールを有している。
【0036】
図4に示す第4実施形態では、主通路部分22にポンプ30および濾過部40が設けられている。第1分岐通路部分24Aに温調部50Aが設けられ、第2分岐通路部分24Bに温調部50Bが設けられている。濾過部40は1つの濾過モジュールを有しており、各温調部(50A,50B)は1つの温調モジュールを有している。
【0037】
図5に示す第5実施形態では、主通路部分22にポンプ30、濾過部40および温調部50が設けられている。濾過部40は1つの濾過モジュールを有しており、温調部50は1つの温調モジュールを有している。
【0038】
図6に示す第6実施形態では、主通路部分22にポンプ30および濾過部40が設けられ、第1分岐通路部分24Aに温調部50Aが設けられ、第2分岐通路部分24Bに温調部50Bが設けられている。第6実施形態は、各温調部(50A,50B)が2つずつ温調モジュールを有している点が第4実施形態と異なる。
【0039】
第1~第6実施形態に共通することは、循環通路20の主通路部分22にポンプ30が設けられ、共通のポンプ30が発生した駆動力により、循環通路20の第1分岐通路部分24Aおよび第2分岐通路部分24Bの両方での処理液の循環が生じることである。これにより、2つの循環通路にそれぞれポンプを設けた構成と比較して、ポンプの数を減らすことができ、液処理装置の装置コストを低減することができる。
【0040】
図4に示す第4実施形態では、主通路部分22にポンプ30に加えて濾過部40が設けられており、濾過部40が1つの濾過モジュールを有している。この構成は、濾過部40に高いパーティクル捕集能力が必要無い場合に用いることができる。この構成によれば、
図3に示す第3実施形態と比較して、フィルタモジュールの数を減らすことができ、液処理装置の装置コストを低減することができる。
【0041】
濾過部40に高いパーティクル捕集能力が必要な場合は、
図3に示す第3実施形態のように各分岐通路部分(24A,24B)にそれぞれ濾過部(40A,40B)を設ければよい。さらに高いパーティクル捕集能力が必要な場合は、
図2に示す第2実施形態のように、各分岐通路部分(24A,24B)にそれぞれ濾過部(40A,40B)を設け、かつ、各濾過部が2つ(あるいはそれ以上)のフィルタモジュールを有するような構成とするのがよい。
【0042】
図1に示す第1実施形態では、主通路部分22に設けられた濾過部40が並列に設けられた3つの濾過モジュールを有している。
図1に示す第1実施形態では、各々が1つのフィルタモジュールを有する2つの濾過部40A,40Bが設けられている場合(
図3に示す第3実施形態)と比較して全体としての濾過能力は高くなる。奇数個(この場合3個の)の濾過モジュールにより1つの濾過部40を構成することにより、循環系全体として要求されるパーティクル捕集能力に過不足無く適合させることができる場合には、主通路部分22に濾過部40を設けてもよい。これにより、フィルタモジュールの数を減らすことができ(必要以上の数のフィルタモジュールを設けることを回避することができ)、液処理装置の装置コストを低減することができる。
【0043】
図5に示す第5実施形態では、主通路部分22にポンプ30に加えて濾過部40および温調部50が設けられており、温調部50が1つの温調モジュールを有している。この構成は、温調部50に高い温調能力が必要無い場合に用いられる。この構成によれば、
図4に示す第4実施形態と比較して、温調モジュールの数を減らすことができ、液処理装置の装置コストを低減することができる。
【0044】
温調部50に高い温調能力が必要な場合は、
図4に示す第4実施形態のように各分岐通路部分(24A,24B)にそれぞれ温調部(50A,50B)を設ければよい。さらに高い温調能力が必要な場合には、
図6に示す第6実施形態のように各分岐通路部分(24A,24B)にそれぞれ温調部(50A,50B)を設け、かつ、各温調部が2つ(あるいはそれ以上)の温調モジュールを有するような構成とするのがよい。
【0045】
先に説明した濾過部と同様に、奇数個(この場合3個の)の温調モジュールにより構成された1つの温調部50を主通路部分22に設けてもよい。
【0046】
処理液の流れ方向に沿ったポンプ30、濾過部40および温調部50の並び順の決め方について簡単に説明する。
【0047】
液処理部60に供給される処理液の温調精度が特に重視される場合は、最も下流側に温調部50を配置することが好ましい。この場合、例えば、上流側から順にポンプ30、濾過部40および温調部50を配置することができる。
図1,
図3~
図6の実施形態が、この配置に該当する。
【0048】
液処理部60に供給される処理液中に含まれるパーティクルの量を減少させることが特に重視される場合には、最も下流側に濾過部40を配置することが好ましい。温調部50で発塵が生じる可能性があるからである。この場合、例えば、上流側から順にポンプ30、温調部50および濾過部40を配置することができる。例えば、処理液が乾燥用溶剤として用いられるIPA(イソプロピルアルコール)である場合には、この配置が好ましい。
図2および
図7の実施形態が、この配置に該当する。
【0049】
温調部50を構成する温調モジュール例えばヒータモジュールには、耐圧性が低いものがある。この場合、温調モジュールの破損防止のため、ポンプ30よりも上流側に温調部50を配置することが好ましい。この場合、例えば、上流側から順に温調部50、ポンプ30および濾過部40を配置することができる。
【0050】
図7は液処理装置の第7実施形態を示している。第7実施形態では、主通路部分22にポンプ30および温調部50が設けられており、各分岐通路部分(24A,24B)にそれぞれ濾過部(40A,40B)が設けられている。第7実施形態の他の構成要素は、
図1および
図2に示した第1および第2実施形態の構成要素と同一であり、重複説明は省略する。
【0051】
図8~
図10は第7実施形態に係る液処理装置の動作を説明するタイムチャートである。タイムチャート中の項目は以下の通りである。以下に説明する動作は、制御部100に格納されたレシピに従い、制御部100による制御の下で自動的に実行することができる。
「PUMP」:ポンプ30が動作している(ON)か、停止している(OFF)かを表している。
「PUMP RPM」:ポンプ30の回転数を表している。「ZERO」はゼロ回転、「RI」は立ち上げ時の低回転、「RS」は一方の分岐通路部分(24A,24B)のみに処理液を流すときの中回転、「RW」は両方の分岐通路部分(24A,24B)に処理液を流すときの高回転、をそれぞれ意味している。ZERO<RI<RS<RWである。
「VA」:第1分岐通路部分24Aの開閉弁26Aが開いている(OPEN)か、閉じている(CLOSE)かを表している。
「VB」:第2分岐通路部分24Bの開閉弁26Bが開いている(OPEN)か、閉じている(CLOSE)かを表している。
「HEATER」:温調部50の温調モジュール(ここでは電気ヒータモジュールとする)に通電されている(ON)か、通電されていない(OFF)かを表している。なお、「ON」の場合、電気ヒータモジュールへの供給電力はフィードバック制御されているため一定ではない。
「A Ready」:第1分岐通路部分24Aに接続された液処理部60Aへの処理液供給の準備ができている(ON)か、準備ができていない(OFF)かを表している。
「B Ready」:第2分岐通路部分24Bに接続された液処理部60Bへの処理液供給の準備ができている(ON)か、準備ができていない(OFF)かを表している。
【0052】
まず、
図8のタイムチャートを参照して液処理装置の立ち上げ時の動作について説明する。
【0053】
今、タンク10が空であるとする。この状態から、開閉弁26A,26Bが共に閉じた状態で、処理液供給部70からタンク10に処理液の供給が開始される(時点t0)。このとき、ポンプは停止しており(OFF)、温調部50の電気ヒータモジュールへの通電はされていない(OFF)。
【0054】
タンク10内の処理液の液位が上昇し予め定められた下限液位以上となったことが図示しない液位センサにより検出されたら(時点t1)、予め定められた遅延時間の経過後に(時点t2)、一方の開閉弁26Aのみを開き、ポンプ30を起動する。これにより、タンク10から主通路部分22および第1分岐通路部分24Aを通って、タンク10に戻る処理液の循環流が形成される。このとき、第2分岐通路部分24Bには処理液は流れない。
【0055】
ポンプ30は低回転(RI)で起動し、低回転(RI)を予め定められた時間保持した後に(時点t3)、徐々に高回転(RW)まで回転数を上昇させる。ポンプ30の回転速度を起動と同時に高回転(RW)まで上昇させると、濾過部40Aのフィルタモジュールの一次側と二次側との間の差圧が一時的に過大となり、フィルタモジュール(例えばフィルタエレメント)が破損するおそれがある。上述した手順でポンプ30を立ち上げることにより、フィルタモジュールの破損を防止することができる。
【0056】
ポンプ30の回転数が高回転(RW)となったら(時点t4)、予め定められた遅延時間(例えば10秒程度)の経過後に(時点t5)、流量計25Aによる分岐通路部分24A内の処理液流量の監視を開始する。時点t4から予め定められた時間が経過し(時点t6)、かつ、流量計25Aによる流量監視結果に問題がなければ、開閉弁26Bを開き、開閉弁26Aを閉じる。これにより、タンク10から主通路部分22および第2分岐通路部分24Bを通って、タンク10に戻る処理液の循環流が形成される。このとき、第1分岐通路部分24Aには処理液は流れない。
【0057】
時点t6から予め定められた遅延時間(例えば10秒程度)の経過後に(時点t7)、流量計25Bによる分岐通路部分24B内の処理液流量の監視を開始する。時点t6から予め定められた時間が経過し(時点t8)、かつ、流量計25Bによる流量監視結果に問題がなければ、開閉弁26Bを開いたまま開閉弁26Aを開く。これにより、タンク10から主通路部分22、並びに第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方を通って、タンク10に戻る処理液の循環流が形成される。時点t6から時点t8までの時間は例えば60秒程度である。
【0058】
時点t8から予め定められた時間が経過したら(時点t9)、温調部50の電気ヒータモジュールへの給電を開始し、処理液の加熱を開始する。電気ヒータモジュールへの供給電力は、前述したフィードバック制御(フィードフォワード制御を組み合わせてもよい)を用いた温調方法により制御することができる。
【0059】
この第7実施形態では、主通路部分22に設けられた温調部50が、第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方に流入する処理液を加熱している。この場合には、1つだけ存在する温度センサ21Qの検出温度と、温度センサ21RAおよび21RBのいずれか一方(例えば温度センサ21RA)の検出温度との差を前述した補正値(CV)の算出のために用いることができる。温度センサ21RAの検出温度と温度センサ21RBの検出温度との平均値を補正値(CV)の算出のために用いてもよい。
【0060】
処理液の加熱開始後、処理液の温度が目標温度で安定するまで待機する。処理液の温度が安定したら(時点t10)、第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方に接続された全ての液処理部60への処理液供給の準備が完了する(Ready状態)。その後は、予め定められた処理スケジュールに従い、各液処理部60で処理が行われる。このとき、各液処理部(60A,60B)には分岐通路部分(24A,24B)から分岐する供給通路(62A,62B)を介して、流れ制御機器64により制御された流量で、処理液が供給される。
【0061】
液処理部60で予定されていた全ての液処理が終了したら、ポンプ30が停止され、開閉弁26A,26Bが閉じられ、温調部50の電気ヒータモジュールへの給電が停止される(時点t11)。
【0062】
上記実施形態によれば、両方の分岐通路部分(24A,24B)に処理液を流すときに用いられる高回転(RW)でポンプ30を駆動した状態で、まず、一方の分岐通路部分24Aのみに大流量で処理液を流し、その後他方の分岐通路部分24Bのみに大流量で処理液を流している。ここで「大流量」とは、液処理装置の通常運転時に1つの分岐通路部分(24A,24B)を流れる処理液の流量の例えば約2倍である。しかしながら、ここでの「大流量」は、液処理装置の通常運転時(液処理部60A,60Bで予定通りに順次処理が行われているとき)に1つの分岐通路部分(24A,24B)を流れる処理液の流量よりも大きな流量であればよい。このような操作を行うことにより、循環通路20(主通路部分22並びに第1および第2分岐通路部分24A,24B)内に残留しているエア(気泡)を短時間で排出することができる。このため、分岐通路部分24A,24Bの両方に接続された全ての液処理部60への処理液供給の準備を短時間で完了させることができる。液処理装置の通常運転中は、循環通路20内にはエア(気泡)が全く存在していないことが望ましい。
【0063】
次に、
図9のタイムチャートを参照して、第1および第2分岐通路部分24A,24Bのうちの一方(ここでは第1分岐通路部分24A)に付属する液処理装置の構成要素にエラーが生じたときの動作(動作の停止および再開)について説明する。この例では、エラーが検出されたときに第1分岐通路部分24Aへの処理液の供給を停止し、その後エラーが解消したときに第1分岐通路部分24Aへの処理液の供給を再開する手順に関する。
【0064】
この動作は、
図8のタイムチャートにおいて液処理装置が時点t10と時点t11との間の状態(Ready状態)から開始される。
図9の時点t20(時点t10と時点t11との間の時点に相当する)において、第1分岐通路部分24Aに付属する液処理装置の構成要素にエラーが生じたものとする。
【0065】
一方の分岐通路部分24A(24B)への処理液の供給が停止されるようなエラーとしては、第1分岐通路部分24Aに付属する配管からの処理液のリーク、第1分岐通路部分24Aに付属する温調部50Aの故障、液処理部60Aでの排気圧の低下、液処理部60A側のメンテナンスパネルの開放等が例示される。
【0066】
なお、両方の分岐通路部分24A,24Bへの処理液の供給が停止されるようなエラーとしては、ポンプ30の故障、タンク10およびタンク10に付属するセンサ類(液位センサ等)の故障、主通路部分22で生じたリーク、処理液供給キャビネット(タンク、配管等を収容する部分)のパネルの開放等が例示される。
【0067】
時点t20でエラーが検出されると、ポンプ30の回転数が一方の分岐通路部分(24A,24B)のみに処理液を流すのに適した中回転RSまで低下させられ、開閉弁26Aが閉じられる。これにより、第1分岐通路部分24Aには処理液が流入しなくなり、第2分岐通路部分24Bのみに処理液が流れるようになる。第2分岐通路部分24Bを流れる処理液の流量は、時点t20の前後で実質的に変化しない。従って、第2分岐通路部分24Bに接続された全ての液処理部60では引き続き液処理を行うことができる。
【0068】
時点t20に至るまでの間に温度センサ21RAの検出値を前述した補正値(CV)の算出のために用いていたのならば、温度センサ21RBの検出値が補正値(CV)の算出値に用いられるよう、前述したフィードバック制御系の切り替えを行う。
【0069】
なお、時点t20の前後で温調部50の電気ヒータモジュールを通過する処理液の流量が半減するため、時点t20の後予め定められた期間内に、温調部50の電気ヒータモジュールに給電される電力を一時的に低下させてもよい。フィードバック制御系が十分な制御応答性を有しているなら、このような操作を行わなくてもよい。
【0070】
エラーが解消されたことが検出されたら(時点t21)、ポンプ30の回転数が両方の分岐通路部分24A,24Bに処理液を流すのに適した高回転RWまで上昇させられ、開度調整機能付きの開閉弁26Aが開かれる。これにより、第1分岐通路部分24Aにも処理液が流入するようになり、第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方に処理液が流れるようになる。
【0071】
時点t21の後、処理液が流れていなかった第1分岐通路部分24Aの処理液の温度及び流量が安定したら(時点t22)、分岐通路部分24Aに接続された全ての液処理部60への処理液供給の準備が完了する(Ready状態)。つまり、第1および第2分岐通路部分24A,24Bに接続された全ての液処理部60で液処理を行うことが可能となる。
【0072】
時点t21まで処理液が流れていなかった第1分岐通路部分24A(管壁)の温度は低下している。このため、第1分岐通路部分24Aを流れる処理液の温度が安定したことを、温度センサ21RAの検出温度に基づいて判定してもよい。第1分岐通路部分24Aを流れる処理液の流量が安定したことは、流量計25Aの検出値に基づいて判定することができる。
【0073】
次に、
図10のタイムチャートを参照して、第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方に付属する液処理装置の構成要素にエラーが生じたときに、運転を再開させる動作について説明する。この動作は、第2分岐通路部分24Bに付属する液処理装置の構成要素のエラーが解消し、その後、第1分岐通路部分24Aに付属する液処理装置の構成要素のエラーが解消した場合を想定している。
【0074】
時点t30における液処理装置の状態は、
図8のタイムチャートの時点t11直後の液処理装置の状態と等価である。つまり、循環通路20内の全域は、実質的に処理液で満たされている。
【0075】
時点t31において、第2分岐通路部分24Bに付属する液処理装置の構成要素のエラーが解消したものとする。すると、第2分岐通路部分24Bの開閉弁26Bが開かれ、ポンプ30が起動される。これにより、タンク10から主通路部分22および第2分岐通路部分24Bを通って、タンク10に戻る処理液の循環流が形成される。このとき、第1分岐通路部分24Aには処理液は流れない。
【0076】
ポンプ30は低回転(RI)で起動し、低回転(RI)を予め定められた時間保持した後に(時点t32)、徐々に中回転(RS)まで回転数を上昇させる。ポンプ30の回転数を徐々に高めるのは、前述したようにフィルタモジュールの破損を防止するためである。
【0077】
ポンプ30の回転数が中回転(RS)となったら(時点t33)、予め定められた遅延時間(例えば10秒程度)の経過後に、流量計25Bによる第2分岐通路部分24B内の処理液流量の監視を開始する。流量が安定したら(時点t34)、温調部50の電気ヒータモジュールへの給電を開始し、処理液の加熱を開始する。電気ヒータモジュールへの供給電力は、前述したフィードバック制御(フィードフォワード制御を組み合わせてもよい)を用いた温調方法により制御することができる。このとき、温度センサ21RBの検出温度が前述した補正値(CV)の算出のために用いられる。その後、処理液の温度が安定したら(時点t35)、第2分岐通路部分24Bに接続された全ての液処理部60への処理液供給の準備が完了する(Ready状態)。
【0078】
時点t36において、第1分岐通路部分24Aに付属する液処理装置の構成要素のエラーが解消したものとする。すると、第1分岐通路部分24Aの開閉弁26Aが開かれる。これにより、第1および第2分岐通路部分24A,24Bの両方を通って、処理液が流れるようになる。流量計25Aによる第1分岐通路部分24A内の処理液流量の監視も開始される。第1分岐通路部分24A内での処理液の温度および処理液の流量が安定したら(時点t37)、第1分岐通路部分24Aに接続された全ての液処理部60への処理液供給の準備も完了する(Ready状態)。以上により液処理装置は、通常運転状態に復帰したことになる。
【0079】
図11を参照して、処理液供給部70の構成の一例について説明する。前述したように、処理液がDHFであり、処理液供給部70は、HFの供給源から供給されたHFを、DIWの供給源から供給されたDIWにより希釈することによりDHFを生成するものであったとする。工場用力としてのDIW供給源から供給されるDIWの温度が、所望の温度より高い場合がある。この場合、循環通路20に設けられた温調部50の温調モジュールが十分な冷却機能を有していないと、処理液の温度を所望の温度(例えば、常温付近の温度)に制御することができなくなることがある。
図11に示した構成は、そのような場合に対応しうるものである。
【0080】
DIW供給源701から、DIW供給ライン702を介してタンク10にDIWが供給されるようになっている。DIW供給ライン702には、上流側から順に、開閉弁703、熱交換器704、温度センサ705、開閉弁706、開閉弁707が設けられている。温度センサ705と開閉弁706との間おいて、DIW供給ライン702から戻しライン708が分岐している。戻しライン708には開閉弁709が設けられている。
【0081】
熱交換器704には冷却媒体として、工場用力として提供されるPCW(Plant Cooling Water,工場冷却水)供給源710から、PCWが、PCW供給ライン711を介して供給される。熱交換器704に供給されたPCWはPCW排出ライン712を介して排出される。PCW供給ライン711には、上流側から順に、開閉弁713と、流量制御機器(例えば流量制御弁)714とが設けられている。PCW排出ライン712には、上流側から順に、流量計715と、開閉弁716が設けられている。PCWは、熱交換器704内を通過するDIWと熱交換することにより、DIWを冷却する。
【0082】
図11の処理液供給部70の動作について説明する。処理液供給部70の動作も前述した制御部100による制御の下で行うことができる。開閉弁703および開閉弁709が開かれ、かつ、開閉弁706が閉じられる。DIW供給源701から供給されたDIWは、熱交換器704を通過した後、戻しライン708に流入して、DIW供給源701に戻される(あるいは廃棄される)。この状態で、温度センサ705により検出された温度が所望の温度より高い場合には、開閉弁713、716が開かれ、PCW供給ライン711から熱交換器704にPCWが供給され、熱交換器704を通過するDIWが冷却される。温度センサ705により検出されたDIWの温度が所望の温度となるように、温度センサ705の検出温度に基づいて、流量制御機器714が熱交換器704を通過するPCWの流量を制御する。DIWの温度が所望の範囲内で安定したら、開閉弁709が閉じられ、開閉弁706,707が開かれる。これにより所望の温度範囲内にあるDIWがタンク10に供給される。
【0083】
図示しないHFの供給源から供給されるHFは、タンク10に直接供給され、タンク10内でDIWと混合されてもよい。図示しないHFの供給源から供給されるHFは、例えば開閉弁706と開閉弁707との間に接続された図示しないHF供給ラインによりDIW供給ライン702に供給されてもよい。この場合、DIW供給ライン702内でHFと混合されることにより生成されたDHFがタンク10に供給される。
【0084】
熱交換器704は、温度が高い液を冷却するものに限らず、温度が低い液を温めるものであってもよい。
【0085】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【符号の説明】
【0086】
10 タンク
20 循環通路
22 主通路部分
24A 第1分岐通路部分
24B 第2分岐通路部分
70 処理液供給部
30 ポンプ30
60(60A,60B) 液処理部
62(62A,62B) 供給通路