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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物及び電子部品装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/24 20060101AFI20241016BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08G59/24
C08G59/62
H01L23/30 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020125773
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021900
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 実佳
(72)【発明者】
【氏名】竹内 勇磨
(72)【発明者】
【氏名】助川 雄太
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188494(JP,A)
【文献】特開2013-008896(JP,A)
【文献】特開2004-292515(JP,A)
【文献】特開2010-077303(JP,A)
【文献】特開2015-203066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
H01L23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、硬化した状態でのストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下であり、130℃で成形及び硬化させたときのTgと175℃で成形及び硬化させたときのTgとの差が10℃以内である、封止用樹脂組成物。
【請求項2】
硬化した状態でのストレスインデックスが150GPa×ppm/℃以上である、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記硬化剤はトリフェニルメタン型フェノール樹脂を含む、請求項1又は請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
シリコーン化合物をさらに含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記エポキシ樹脂は無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を含む、請求項1~請求項4のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
支持体と、前記支持体上に配置された素子と、前記素子を封止している請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封止用樹脂組成物及び電子部品装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、樹脂封止材を用いた半導体実装技術として、ウエハレベルパッケージ(Wafer Level Package、WLP)と呼ばれる手法が検討されている。この手法では、半導体チップと配線基板とを接続した状態でパッケージ化が行われるフリップチップ型の手法と異なり配線基板を必要としないため、パッケージの薄型化が可能となる。また、支持体上に複数の半導体チップを配置して一括して封止した後にパッケージごとに個片化するため、生産性に優れる実装技術として注目されている。
【0003】
WLPでは比較的大面積の支持体の片面を封止材で封止するため、封止材の硬化収縮などに起因する反りが生じやすい。封止後の支持体の反りを抑制する手段としては、充填材の量を増やすことが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-10940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
封止材中の充填材の量を増やすと封止材の熱膨張率が低下して支持体の熱膨張率との差が小さくなり、支持体の反りが抑制されるが、支持体が大面積化すると反りの抑制効果が充分得られない場合があった。したがって、充填材の増量以外の観点から支持体の反りを抑制できる封止材の開発が求められている。
本発明は上記事情に鑑み、支持体の反りを抑制できる封止用樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、硬化した状態でのストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下である、封止用樹脂組成物。
<2>130℃で成形及び硬化させたときのTgと175℃で成形及び硬化させたときのTgとの差が10℃以内である、<1>に記載の封止用樹脂組成物。
<3>前記硬化剤はトリフェニルメタン型フェノール樹脂を含む、<1>又は<2>に記載の封止用樹脂組成物。
<4>シリコーン化合物をさらに含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<5>前記エポキシ樹脂は無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物。
<6>支持体と、前記支持体上に配置された素子と、前記素子を封止している<1>~<5>のいずれか1項に記載の封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える電子部品装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、支持体の反りを抑制できる封止用樹脂組成物、及びこれを用いて得られる電子部品装置が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0009】
本開示において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本開示において段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本開示において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0010】
<封止用樹脂組成物>
本開示の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤とを含み、硬化した状態でのストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下である、封止用樹脂組成物である。
【0011】
本発明者らの検討の結果、封止用樹脂組成物を用いて半導体ウエハなどの支持体の片面に層を形成した状態での支持体の反りの量は、封止用樹脂組成物のストレスインデックスの値と強い正の相関関係にあることがわかった、また、ストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下であると、支持体の反りの量が充分に小さいことがわかった。
【0012】
本開示において「ストレスインデックス」とは、下記式で表される値である。
ストレスインデックス(GPa×ppm/℃)=E1(GPa)×CTE1(ppm/℃)
【0013】
上記式においてE1は、封止用樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物の25℃における曲げ弾性率(GPa)である。具体的には、後述する実施例に記載された方法で測定される。
【0014】
上記式においてCTE1は、封止用樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物の測定温度40℃~80℃の範囲における線膨張係数(CTE)の平均値(ppm/K)である。具体的には、後述する実施例に記載された方法で測定される。
【0015】
封止用樹脂組成物の硬化物のストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下となるように制御する方法としては、硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂を使用すること、封止用樹脂組成物にシリコーン化合物を添加することなどが挙げられる。
硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂を使用すると硬化物のCTE1が低下する傾向にあり、シリコーン化合物を添加すると硬化物のE1が低下する傾向にある。このため、E1とCTE1の積であるストレスインデックスが低減する傾向にある。
【0016】
封止用樹脂組成物の硬化物のストレスインデックスは、支持体の反り抑制の観点からは210GPa×ppm/℃以下であることがより好ましく、200GPa×ppm/℃以下であることがさらに好ましい。
封止用樹脂組成物の硬化物のストレスインデックスは、150GPa×ppm/℃以上であってもよく、160GPa×ppm/℃以上であってもよく、170GPa×ppm/℃以上であってもよい。
【0017】
封止用樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物のCTE1は、基板との熱膨張率の差を低減する観点から20ppm/℃以下であることが好ましく、15ppm/℃以下であることがより好ましく、12ppm/℃以下であることがさらに好ましい。また、基板との熱膨張率の差を低減する観点から3ppm/℃以上であることが好ましく、6ppm/℃以上であることがより好ましく、8ppm/℃以上であることがさらに好ましい。
【0018】
封止用樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物のE1は、低応力化の観点から25GPa以下であることが好ましく、21GPa以下であることがより好ましく、19GPa以下であることがさらに好ましい。また、クラック防止の観点から、5GPa以上であることが好ましく、10GPa以上であることがより好ましく、14GPa以上であることがさらに好ましい。
【0019】
封止用樹脂組成物は、封止作業で低融点のはんだ、熱に弱い材料(仮固定フィルム、離型フィルム等)などを使用する場合には、低温での硬化性に優れていることが好ましい。
具体的には、封止用樹脂組成物を130℃で成形及び硬化させたときのガラス転移温度(Tg)と175℃で成形及び硬化させたときのTgとの差が10℃以内であることが好ましく、7℃以内であることがより好ましく、5℃以内であることがさらに好ましい。
【0020】
封止用樹脂組成物の硬化物のTgは、成形及び硬化の温度が低いほど低い傾向にある。 130℃で成形及び硬化させたときのTgと175℃で成形及び硬化させたときのTgとの差が10℃以内であることは、封止用樹脂組成物を低温(130℃)で成形及び硬化させたときの硬化反応が充分に進行している(すなわち、低温硬化性が良好である)ことを意味する。
【0021】
130℃で成形及び硬化させたときのTgと175℃で成形及び硬化させたときのTgとの差が10℃以内となるように制御する方法としては、エポキシ樹脂として無置換のビフェニル構造を有するエポキシ樹脂を使用することが挙げられる。
【0022】
硬化物のTgは、後述する実施例に記載された方法で測定する。
【0023】
(エポキシ樹脂)
封止用樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂は特に制限されず、封止用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0024】
エポキシ樹脂として具体的には、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド等の脂肪族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものであるノボラック型エポキシ樹脂(フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等);上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるトリフェニルメタン型エポキシ樹脂;上記フェノール化合物及びナフトール化合物と、アルデヒド化合物とを酸性触媒下で共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したものである共重合型エポキシ樹脂;ビスフェノールA、ビスフェノールF等のジグリシジルエーテルであるジフェニルメタン型エポキシ樹脂;アルキル置換又は非置換のビフェノールのジグリシジルエーテルであるビフェニル型エポキシ樹脂;スチルベン系フェノール化合物のジグリシジルエーテルであるスチルベン型エポキシ樹脂;ビスフェノールS等のジグリシジルエーテルである硫黄原子含有エポキシ樹脂;ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルコール類のグリシジルエーテルであるエポキシ樹脂;フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸等の多価カルボン酸化合物のグリシジルエステルであるグリシジルエステル型エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等の窒素原子に結合した活性水素をグリシジル基で置換したものであるグリシジルアミン型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンとフェノール化合物の共縮合樹脂をエポキシ化したものであるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;分子内のオレフィン結合をエポキシ化したものであるビニルシクロヘキセンジエポキシド、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシ)シクロヘキシル-5,5-スピロ(3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン等の脂環型エポキシ樹脂;パラキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるパラキシリレン変性エポキシ樹脂;メタキシリレン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるメタキシリレン変性エポキシ樹脂;テルペン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるテルペン変性エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるジシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるシクロペンタジエン変性エポキシ樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂のグリシジルエーテルである多環芳香環変性エポキシ樹脂;ナフタレン環含有フェノール樹脂のグリシジルエーテルであるナフタレン型エポキシ樹脂;ハロゲン化フェノールノボラック型エポキシ樹脂;ハイドロキノン型エポキシ樹脂;トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂;オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂;フェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂をエポキシ化したものであるアラルキル型エポキシ樹脂;などが挙げられる。さらにはシリコーン樹脂のエポキシ化物、アクリル樹脂のエポキシ化物等もエポキシ樹脂として挙げられる。これらのエポキシ樹脂は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
耐リフロー性と流動性のバランスの観点から、エポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジフェニルメタン型エポキシ樹脂、硫黄原子含有型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、共重合型エポキシ樹脂及びアラルキル型エポキシ樹脂からなる群より選ばれるエポキシ樹脂が好ましい。
【0026】
ビフェニル型エポキシ樹脂の具体例としては、下記一般式(II)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。一般式(II)で表されるエポキシ樹脂の中でもRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であるYX-4000H(三菱ケミカル株式会社、商品名)、全てのRが水素原子である4,4’-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ビフェニル、全てのRが水素原子の場合及びRのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基でそれ以外のRが水素原子である場合の混合品であるYL-6121H(三菱ケミカル株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0027】
【化8】
【0028】
式(II)中、Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数4~18の芳香族基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0029】
スチルベン型エポキシ樹脂として具体的には、下記一般式(III)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。一般式(III)で表されるエポキシ樹脂の中でも、Rのうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のRが水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合と、Rのうち3,3’,5,5’位のうちの3つがメチル基であり、1つがt-ブチル基であり、それ以外のRが水素原子であり、R10の全てが水素原子である場合との混合品であるESLV-210(住友化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0030】
【化9】
【0031】
式(III)中、R及びR10は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0032】
ジフェニルメタン型エポキシ樹脂として具体的には、下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。下記一般式(IV)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R11の全てが水素原子であり、R12のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’,5,5’位がメチル基であり、それ以外のR12が水素原子であるYSLV-80XY(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0033】
【化10】
【0034】
式(IV)中、R11及びR12は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0035】
硫黄原子含有型エポキシ樹脂として具体的には、下記一般式(V)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。一般式(V)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R13のうち酸素原子が置換している位置を4及び4’位としたときの3,3’位がt-ブチル基であり、6,6’位がメチル基であり、それ以外のR13が水素原子であるYSLV-120TE(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0036】
【化11】
【0037】
式(V)中、R13は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0038】
ノボラック型エポキシ樹脂として具体的には、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂等のノボラック型フェノール樹脂をグリリシジルエーテル化等の手法を用いてエポキシ化して得られるエポキシ樹脂が挙げられる。中でも、一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂が好ましい。下記一般式(VI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R14の全てが水素原子であり、R15がメチル基であり、i=1であるESCN-190、ESCN-195(住友化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0であるN-770、N-775(DIC株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=0である部分とi=1であり、R15が-CH(CH)-Phである部分を有するスチレン変性フェノールノボラック型エポキシ樹脂であるYDAN-1000-10C(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、R14の全てが水素原子であり、i=1であり、R15がメチル基である部分とi=2であり、R15のうち一つがメチル基で一つがベンジル基である部分を有するベンジル基変性クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるHP-5600(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0039】
【化12】
【0040】
式(VI)中、R14は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R15は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0041】
ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂として具体的には、下記一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。一般式(VII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、i=0であるHP-7200(DIC株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0042】
【化13】
【0043】
式(VII)中、R16は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0044】
トリフェニルメタン型エポキシ樹脂は、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば特に制限されない。例えば、トリフェニルメタン骨格を持つ化合物とフェノール性水酸基を有する化合物とのノボラック型フェノール樹脂等のトリフェニルメタン型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(VIII)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、kが0である1032H60(三菱ケミカル株式会社、商品名)、EPPN-502H(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0045】
【化14】
【0046】
式(VIII)中、R17及びR18は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0047】
ナフトール化合物及びフェノール化合物と、アルデヒド化合物とから得られるノボラック樹脂をエポキシ化した共重合型エポキシ樹脂は、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を原料とするエポキシ樹脂であれば、特に限定されない。例えば、ナフトール骨格を有する化合物及びフェノール骨格を有する化合物を用いたノボラック型フェノール樹脂をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂が好ましく、下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂がより好ましい。下記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂の中でも、R21がメチル基でiが1であり、jが0であり、kが0であるNC-7300(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0048】
【化15】
【0049】
式(IX)中、R19~R21は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数、jは各々独立に0~2の整数、kは各々独立に0~4の整数を示す。l及びmはそれぞれ平均値であり、0~10の数であり、(l+m)は0~10の数を示す。式(IX)で表されるエポキシ樹脂の末端は、下記式(IX-1)又は(IX-2)のいずれか一方である。式(IX-1)及び(IX-2)において、R19~R21は、i、j及びkの定義は式(IX)におけるR19~R21は、i、j及びkの定義と同じである。nは1(メチレン基を介して結合する場合)又は0(メチレン基を介して結合しない場合)である。
【0050】
【化16】
【0051】
上記一般式(IX)で表されるエポキシ樹脂としては、l個の構成単位及びm個の構成単位をランダムに含むランダム共重合体、交互に含む交互共重合体、規則的に含む共重合体、ブロック状に含むブロック共重合体等が挙げられる。これらのいずれか1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
アラルキル型エポキシ樹脂として具体的には、下記一般式(X)及び(XI)で表されるエポキシ樹脂が挙げられる。
下記一般式(X)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、R38が水素原子であるNC-3000S(日本化薬株式会社、商品名)、iが0であり、R38が水素原子であるエポキシ樹脂と一般式(II)の全てのRが水素原子であるエポキシ樹脂を質量比80:20で混合したCER-3000(日本化薬株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。また、下記一般式(XI)で表されるエポキシ樹脂の中でも、iが0であり、jが0であり、kが0であるESN-175(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0053】
【化18】
【0054】
式(X)及び(XI)において、R38は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R37、R39~R41は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、lはそれぞれ独立に0~6の整数を示す。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
【0055】
上記一般式(II)~(XI)中のR~R21及びR37~R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8~88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR~R21及びR37~R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R~R21及びR37~R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)~(XI)における炭素数1~18の有機基はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
上記一般式(II)~(XI)中のR~R21及びR37~R41について、「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」とは、例えば、式(II)中の8~88個のRの全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。他のR~R21及びR37~R41についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも異なっていてもよいことを意味している。また、R~R21及びR37~R41はそれぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、RとR10の全てについて同一でも異なっていてもよい。
また、一般式(III)~(XI)における炭素数1~18の有機基はアルキル基又はアリール基であることが好ましい。
【0056】
上記一般式(II)~(XI)中のnは、平均値であり、それぞれ独立に0~10の範囲であることが好ましい。nが10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、硬化性樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低下し、充填不良、ボンディングワイヤ(素子とリードを接続する金線)の変形等の発生が抑制される傾向にある。nは0~4の範囲に設定されることがより好ましい。
【0057】
低温での硬化反応性の観点からは、エポキシ樹脂は、下記一般式(A)で表される構造(無置換ビフェニル構造)を有するエポキシ樹脂を含むことが好ましい。無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂は、無置換ビフェニル構造以外の構造(トリフェニルメタン構造等)をさらに有していてもよい。
【0058】
【化1】

【0059】
一般式(A)において、*は隣接する原子との結合位置を表し、*の少なくとも一方はエポキシ含有基との結合位置を表す。
【0060】
封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂として無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂のみを含んでも、エポキシ樹脂として無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂と、無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂とを含んでもよい。
エポキシ樹脂として無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂と、無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂以外のエポキシ樹脂とを含む場合、無置換ビフェニル構造を有するエポキシ樹脂の割合はエポキシ樹脂全体の30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることがさらに好ましい。
【0061】
エポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性及び電気的信頼等の各種特性バランスの観点からは、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、100g/eq~1000g/eqであることが好ましく、150g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0062】
エポキシ樹脂が固体である場合、その軟化点又は融点は特に制限されない。封止用樹脂組成物の調製の際の取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることが好ましい。
【0063】
エポキシ樹脂の融点は示差走査熱量測定(DSC)で測定される値とし、エポキシ樹脂の軟化点はJIS K 7234:1986に準じた方法(環球法)で測定される値とする。
【0064】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂の含有率は、強度、流動性、耐熱性、成形性等の観点から0.5質量%~50質量%であることが好ましく、2質量%~30質量%であることがより好ましい。
【0065】
(硬化剤)
封止用樹脂組成物に含まれる硬化剤は特に制限されず、封止用樹脂組成物の所望の特性等に応じて選択できる。
【0066】
硬化剤として具体的には、フェノール硬化剤、アミン硬化剤、酸無水物硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、ポリアミノアミド硬化剤、イソシアネート硬化剤、ブロックイソシアネート硬化剤等が挙げられる。硬化性及びポットライフの両立の観点からはフェノール硬化剤、アミン硬化剤及び酸無水物硬化剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、電気的信頼性の観点からはフェノール硬化剤がより好ましい。
【0067】
フェノール硬化剤としては、例えば、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール樹脂及び多価フェノール化合物が挙げられる。具体的には、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、置換又は非置換のビフェノール等の多価フェノール化合物;フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール化合物及びα-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール化合物からなる群より選ばれる少なくとも一種のフェノール性化合物と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジメトキシパラキシレン、ビス(メトキシメチル)ビフェニル等とから合成されるフェノールアラルキル樹脂、ナフトールアラルキル樹脂等のアラルキル型フェノール樹脂;パラキシリレン及び/又はメタキシリレン変性フェノール樹脂;メラミン変性フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ジシクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノール樹脂及びジシクロペンタジエン型ナフトール樹脂;シクロペンタジエン変性フェノール樹脂;多環芳香環変性フェノール樹脂;ビフェニル型フェノール樹脂;上記フェノール性化合物と、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等の芳香族アルデヒド化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるトリフェニルメタン型フェノール樹脂;これら2種以上を共重合して得たフェノール樹脂などが挙げられる。これらのフェノール硬化剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0068】
フェノール硬化剤の中でも、耐リフロー性の観点からはアラルキル型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、トリフェニルメタン型フェノール樹脂、ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂、及びノボラック型フェノール樹脂からなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。低温速硬化性の観点からは、ノボラック型フェノール樹脂であることがより好ましい。
【0069】
アラルキル型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XII)~(XIV)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0070】
【化13】

【0071】
式(XII)~(XIV)において、R23は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R22、R24、R25及びR28は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R26及びR27は水酸基又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、jはそれぞれ独立に0~2の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、pはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、それぞれ独立に0~10の数である。
【0072】
上記一般式(XII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、R23が全て水素原子であるMEH-7851(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0073】
上記一般式(XIII)で表されるフェノール樹脂の中でも、iが0であり、kが0であるXL-225、XLC(三井化学株式会社、商品名)、MEH-7800(明和化成株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0074】
上記一般式(XIV)で表されるフェノール樹脂の中でも、jが0であり、kが0であり、pが0であるSN-170(新日鉄住金化学株式会社、商品名)、jが0であり、kが1であり、R27が水酸基であり、pが0であるSN-395(新日鉄住金化学株式会社、商品名)等が市販品として入手可能である。
【0075】
ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XV)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0076】
【化14】

【0077】
式(XV)中、R29は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0078】
トリフェニルメタン型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVI)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0079】
【化15】

【0080】
式(XVI)中、R30及びR31は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数である。nは平均値であり、0~10の数である。
【0081】
ベンズアルデヒド型フェノール樹脂とアラルキル型フェノール樹脂との共重合型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVII)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0082】
【化16】

【0083】
式(XVII)中、R32~R34は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iはそれぞれ独立に0~3の整数であり、kはそれぞれ独立に0~4の整数であり、qはそれぞれ独立に0~5の整数である。l及びmはそれぞれ平均値であり、それぞれ独立に0~11の数である。ただし、lとmの合計は1~11の数である。
【0084】
ノボラック型フェノール樹脂の具体例としては、下記一般式(XVIII)で表されるフェノール樹脂が挙げられる。
【0085】
【化17】

【0086】
式(XVIII)中、R35は水素原子又は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。R36は炭素数1~18の1価の有機基を示し、それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい。iは各々独立に0~3の整数を示す。nは平均値であり、0~10の数を示す。
【0087】
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるR22~R36について記載した「それぞれ全てが同一でも異なっていてもよい」は、例えば、式(XII)中のi個のR22の全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。他のR23~R36についても、式中に含まれるそれぞれの個数について全てが同一でも相互に異なっていてもよいことを意味している。また、R22~R36は、それぞれが同一でも異なっていてもよい。例えば、R22及びR23の全てについて同一でも異なっていてもよく、R30及びR31の全てについて同一でも異なっていてもよい。
【0088】
上記一般式(XII)~(XVIII)におけるnは、0~10の範囲であることが好ましい。nが10以下であると樹脂成分の溶融粘度が高くなりすぎず、封止用樹脂組成物の溶融成形時の粘度が低くなる傾向にある。1分子中の平均nは、0~4の範囲に設定されることが好ましい。
【0089】
硬化物のストレスインデックスを低減する観点からは、硬化性樹脂組成物は、硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂(多官能フェノール樹脂)を含むことが好ましい。
【0090】
硬化性樹脂組成物が硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂のみを含んでもよく、硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂と、トリフェニルメタン型フェノール樹脂以外の硬化剤とを含んでもよい。
硬化剤としてトリフェニルメタン型フェノール樹脂と、トリフェニルメタン型フェノール樹脂以外の硬化剤とを含む場合、トリフェニルメタン型フェノール樹脂の割合は硬化剤全体の50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることがさらに好ましい。
【0091】
硬化剤の官能基当量(フェノール硬化剤の場合は水酸基当量)は、特に制限されない。成形性、耐リフロー性、電気的信頼性等の各種特性バランスの観点からは、70g/eq~1000g/eqであることが好ましく、80g/eq~500g/eqであることがより好ましい。
【0092】
硬化剤が固体である場合、その軟化点又は融点は、特に制限されない。成形性と耐リフロー性の観点からは、40℃~180℃であることが好ましく、封止用樹脂組成物の製造時における取扱い性の観点からは、50℃~130℃であることがより好ましい。
【0093】
硬化剤の融点又は軟化点は、エポキシ樹脂の融点又は軟化点と同様にして測定される値とする。
【0094】
エポキシ樹脂と硬化剤との当量比、すなわちエポキシ樹脂中の官能基数に対する硬化剤中の官能基数の比(硬化剤中の官能基数/エポキシ樹脂中の官能基数)は、特に制限されない。それぞれの未反応分を少なく抑える関連からは、0.5~2.0の範囲に設定されることが好ましく、0.6~1.3の範囲に設定されることがより好ましい。成形性と耐リフロー性の観点からは、0.8~1.2の範囲に設定されることがさらに好ましい。
【0095】
(硬化促進剤)
封止用樹脂組成物は、硬化促進剤を含んでいてもよい。硬化促進剤の種類は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、1,5-ジアザ-ビシクロ(4,3,0)ノネン、5,6-ジブチルアミノ-1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7等のシクロアミジン化合物、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の三級アミン化合物、及び2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジルー2-フェニルイミダゾール、1-ベンジルー2-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、2,4-ジアミノ-6-(2'-メチルイミダゾリル-(1'))-エチル-s-トリアジン、2-ヘプタデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリアルキルホスフィン(トリブチルホスフィン等)、ジアルキルアリールホスフィン(ジメチルフェニルホスフィン等)、アルキルジアリールホスフィン(メチルジフェニルホスフィン等)、トリフェニルホスフィン、アルキル基置換トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン化合物、及びこれらの有機リン化合物に無水マレイン酸、1,4-ベンゾキノン、2,5-トルキノン、1,4-ナフトキノン、2,3-ジメチルベンゾキノン、2,6-ジメチルベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-5-メチル-1,4-ベンゾキノン、2,3-ジメトキシ-1,4-ベンゾキノン、フェニル-1,4-ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物、並びにこれらの誘導体が挙げられる。さらには、2-エチル-4-メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N-メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のフェニルボロン塩が挙げられる。硬化促進剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0096】
エポキシ樹脂と硬化剤との低温での反応を促進する観点からは、封止用樹脂組成物はイミダゾール化合物を含むことが好ましい。
【0097】
封止用樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、その量は、樹脂成分(エポキシ樹脂及び硬化剤の合計)100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.1質量部以上であると、短時間で良好に硬化する傾向にある。硬化促進剤の量が樹脂成分100質量部に対して30質量部以下であると、硬化速度が速すぎず良好な成形品が得られる傾向にある。
【0098】
(無機充填材)
封止用樹脂組成物は、無機充填材を含んでもよい。特に、封止用樹脂組成物を半導体パッケージの封止材として用いる場合には、無機充填材を含むことが好ましい。
【0099】
無機充填材の種類は、特に制限されない。具体的には、溶融シリカ、結晶シリカ、ガラス、アルミナ、炭酸カルシウム、ケイ酸ジルコニウム、ケイ酸カルシウム、窒化珪素、窒化アルミ、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、ジルコン、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、マイカ等の無機材料が挙げられる。難燃効果を有する無機充填材を用いてもよい。難燃効果を有する無機充填材としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムと亜鉛の複合水酸化物等の複合金属水酸化物、硼酸亜鉛などが挙げられる。中でも、線膨張係数低減の観点からは溶融シリカが好ましく、高熱伝導性の観点からはアルミナが好ましい。無機充填材は1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。無機充填材の状態としては粉未、粉末を球形化したビーズ、繊維等が挙げられる。
【0100】
封止用樹脂組成物が無機充填材を含む場合、その含有率は特に制限されない。流動性及び強度の観点からは、封止用樹脂組成物全体の30体積%~90体積%であることが好ましく、35体積%~80体積%であることがより好ましく、40体積%~70体積%であることがさらに好ましい。無機充填材の含有率が封止用樹脂組成物全体の30体積%以上であると、硬化物の熱膨張係数、熱伝導率、弾性率等の特性がより向上する傾向にある。無機充填材の含有率が封止用樹脂組成物全体の90体積%以下であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇が抑制され、流動性がより向上して成形性がより良好になる傾向にある。
【0101】
無機充填材の平均粒子径は、特に制限されない。例えば、体積平均粒子径が0.2μm~10μmであることが好ましく、0.5μm~5μmであることがより好ましい。体積平均粒子径が0.2μm以上であると、封止用樹脂組成物の粘度の上昇がより抑制される傾向がある。体積平均粒子径が10μm以下であると、狭い隙間への充填性がより向上する傾向にある。無機充填材の体積平均粒子径は、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により、体積平均粒子径(D50)として測定することができる。
【0102】
封止用樹脂組成物又はその硬化物中の無機充填材の体積平均粒子径は、公知の方法によって測定することができる。例えば、有機溶剤、硝酸、王水等を用いて、封止用樹脂組成物又は硬化物から無機充填材を抽出し、超音波分散機などで充分に分散して分散液を調製する。この分散液を用いて、レーザー回折散乱法粒度分布測定装置により測定される体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒子径を測定することができる。あるいは、硬化物を透明なエポキシ樹脂等に埋め込み、研磨して得られる断面を走査型電子顕微鏡にて観察して得られる体積基準の粒度分布から、無機充填材の体積平均粒子径を測定することができる。更には、FIB装置(集束イオンビームSEM)などを用いて、硬化物の二次元の断面観察を連続的に行い、三次元構造解析を行なうことで測定することもできる。
【0103】
封止用樹脂組成物の流動性の観点からは、無機充填材の粒子形状は角形よりも球形が好ましく、また無機充填材の粒度分布は広範囲に分布したものが好ましい。
【0104】
[各種添加剤]
封止用樹脂組成物は、上述の成分に加えて、以下に例示するカップリング剤、イオン交換体、離型剤、難燃剤、着色剤、応力緩和剤等の各種添加剤を含んでもよい。封止用樹脂組成物は、以下に例示する添加剤以外にも必要に応じて当技術分野で周知の各種添加剤を含んでもよい。
【0105】
(カップリング剤)
封止用樹脂組成物が無機充填材を含む場合は、樹脂成分と無機充填材との接着性を高めるために、カップリング剤を含んでもよい。カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等のシラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート化合物、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などの公知のカップリング剤が挙げられる。
【0106】
封止用樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の量は、無機充填材100質量部に対して0.05質量部~5質量部であることが好ましく、0.1質量部~2.5質量部であることがより好ましい。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して0.05質量部以上であると、フレームとの接着性がより向上する傾向にある。カップリング剤の量が無機充填材100質量部に対して5質量部以下であると、パッケージの成形性がより向上する傾向にある。
【0107】
(イオン交換体)
封止用樹脂組成物は、イオン交換体を含んでもよい。特に、封止用樹脂組成物を封止用成形材料として用いる場合には、封止される素子を備える電子部品装置の耐湿性及び高温放置特性を向上させる観点から、イオン交換体を含むことが好ましい。イオン交換体は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハイドロタルサイト化合物、並びにマグネシウム、アルミニウム、チタン、ジルコニウム及びビスマスからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の含水酸化物等が挙げられる。イオン交換体は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、下記一般式(A)で表されるハイドロタルサイトが好ましい。
【0108】
Mg(1-X)Al(OH)(COX/2・mHO ……(A)
(0<X≦0.5、mは正の数)
【0109】
封止用樹脂組成物がイオン交換体を含む場合、その含有量は、ハロゲンイオン等のイオンを捕捉するのに充分な量であれば特に制限はない。例えば、樹脂成分100質量部に対して0.1質量部~30質量部であることが好ましく、1質量部~15質量部であることがより好ましい。
【0110】
(離型剤)
封止用樹脂組成物は、成形時における金型との良好な離型性を得る観点から、離型剤を含んでもよい。離型剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、カルナバワックス、モンタン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩、モンタン酸エステル等のエステル系ワックス、酸化ポリエチレン、非酸化ポリエチレン等のポリオレフィン系ワックスなどが挙げられる。離型剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0111】
封止用樹脂組成物が離型剤を含む場合、その量は樹脂成分100質量部に対して0.01質量部~15質量部が好ましく、0.1質量部~10質量部がより好ましい。離型剤の量が樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上であると、離型性が充分に得られる傾向にある。15質量部以下であると、より良好な接着性が得られる傾向にある。
【0112】
(難燃剤)
封止用樹脂組成物は、難燃剤を含んでもよい。難燃剤は特に制限されず、従来公知のものを用いることができる。具体的には、ハロゲン原子、アンチモン原子、窒素原子又はリン原子を含む有機又は無機の化合物、金属水酸化物等が挙げられる。難燃剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0113】
封止用樹脂組成物が難燃剤を含む場合、その量は、所望の難燃効果を得るのに充分な量であれば特に制限されない。例えば、樹脂成分100質量部に対して1質量部~300質量部であることが好ましく、2質量部~150質量部であることがより好ましい。
【0114】
(着色剤)
封止用樹脂組成物は、着色剤をさらに含んでもよい。着色剤としてはカーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の公知の着色剤を挙げることができる。着色剤の含有量は目的等に応じて適宜選択できる。着色剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0115】
(応力緩和剤)
封止用樹脂組成物は、応力緩和剤を含んでもよい。応力緩和剤を含むことにより、パッケージの反り変形及びパッケージクラックの発生をより低減させることができる。応力緩和剤としては、一般に使用されている公知の応力緩和剤(可とう剤)が挙げられる。具体的には、シリコーン系、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系等の熱可塑性エラストマー、NR(天然ゴム)、NBR(アクリロニトリル-ブタジエンゴム)、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンパウダー等のゴム粒子、メタクリル酸メチル-スチレン-ブタジエン共重合体(MBS)、メタクリル酸メチル-シリコーン共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸ブチル共重合体等のコア-シェル構造を有するゴム粒子などが挙げられる。応力緩和剤は、1種を単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0116】
応力緩和剤の中でも、シリコーン系応力緩和剤が好ましい。シリコーン系応力緩和剤としては、エポキシ基を有するもの、アミノ基を有するもの、これらをポリエーテル変性したもの等が挙げられ、エポキシ基を有するシリコーン化合物、ポリエーテル系シリコーン化合物等のシリコーン化合物がより好ましい。
【0117】
(封止用樹脂組成物の調製方法)
封止用樹脂組成物の調製方法は、特に制限されない。一般的な手法としては、所定の配合量の成分をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機等によって溶融混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。より具体的には、例えば、上述した成分の所定量を均一に撹拌及び混合し、予め70℃~140℃に加熱してあるニーダー、ロール、エクストルーダー等で混練し、冷却し、粉砕する方法を挙げることができる。
【0118】
封止用樹脂組成物は、常温常圧下(例えば、25℃、大気圧下)において固体であることが好ましい。封止用樹脂組成物が固体である場合の形状は特に制限されず、粉状、粒状、タブレット状等が挙げられる。封止用樹脂組成物がタブレット状である場合の寸法及び質量は、パッケージの成形条件に合うような寸法及び質量となるようにすることが取り扱い性の観点から好ましい。
【0119】
(封止用樹脂組成物の用途)
封止用樹脂組成物は、種々の電子部品装置の封止材として用いることができる。
本実施形態の封止用樹脂組成物は支持体の反りを抑制する効果に優れているため、比較的大面積を封止する(例えば、パッケージを個片化する前に封止工程を行う)実装技術にも好適に用いられる。このような実装技術としては、FO-WLP(Fan Out Wafer Level Package)、WI-WLP(Fan In Wafer Level Package)等のウエハレベルパッケージ技術が挙げられる。
【0120】
封止用樹脂組成物を用いて半導体チップを封止する方法としては、圧縮成形法、トランスファ成形法、インジェクション成形法等が挙げられ、これらのいずれも採用できる。
【0121】
封止用樹脂組成物を用いて封止する支持体の材質は、特に制限されない。例えば、シリコン等の半導体、ガラス、セラミックス等が挙げられる。支持体の形状は特に制限されず、円盤状(ウエハ)でもその他の形状であってもよい。支持体の面積は特に制限されないが、本実施形態の封止用樹脂組成物は支持体の反りを抑制する効果に優れているため、比較的大面積であってもよい。例えば、直径が12インチ以上のウエハであってもよい。
【0122】
封止用樹脂組成物を用いて封止する際の封止厚は特に制限されず、封止する半導体チップの大きさ等に応じて選択できる。本実施形態の封止用樹脂組成物は支持体の反りを抑制する効果に優れているため、封止厚が大きい(例えば、200μm~1000μm)場合にも好適に用いることができる。
【0123】
<電子部品装置>
本開示の電子部品装置は、支持体と、前記支持体上に配置された素子と、前記素子を封止している上述した封止用樹脂組成物の硬化物と、を備える。
電子部品装置としては、リードフレーム、配線済みのテープキャリア、配線板、ガラス、シリコンウエハ、有機基板等の支持部材に、素子(半導体チップ、トランジスタ、ダイオード、サイリスタ等の能動素子、コンデンサ、抵抗体、コイル等の受動素子など)を搭載して得られた素子部を封止用樹脂組成物で封止したものが挙げられる。
より具体的には、リードフレーム上に素子を固定し、ボンディングパッド等の素子の端子部とリード部とをワイヤボンディング、バンプ等で接続した後、封止用樹脂組成物を用いてトランスファ成形等によって封止した構造を有するDIP(Dual Inline Package)、PLCC(Plastic Leaded Chip Carrier)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、SOJ(Small Outline J-lead package)、TSOP(Thin Small Outline Package)、TQFP(Thin Quad Flat Package)等の一般的な樹脂封止型IC;テープキャリアにバンプで接続した素子を封止用樹脂組成物で封止した構造を有するTCP(Tape Carrier Package);支持部材上に形成した配線に、ワイヤボンディング、フリップチップボンディング、はんだ等で接続した素子を、封止用樹脂組成物で封止した構造を有するCOB(Chip On Board)モジュール、ハイブリッドIC、マルチチップモジュール等;裏面に配線板接続用の端子を形成した支持部材の表面に素子を搭載し、バンプ又はワイヤボンディングにより素子と支持部材に形成された配線とを接続した後、封止用樹脂組成物で素子を封止した構造を有するBGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、MCP(Multi Chip Package)などが挙げられる。また、プリント配線板においても封止用樹脂組成物を好適に使用することができる。
【0124】
封止用樹脂組成物を用いて電子部品装置を封止する方法としては、低圧トランスファ成形法、インジェクション成形法、圧縮成形法等が挙げられる。これらの中では、低圧トランスファ成形法が一般的である。
さらには、モールドアンダーフィル(Molded Underfill;MUF)と呼ばれる方法が挙げられる。モールドアンダーフィルとは、半導体チップと基板の間のギャップの封止(アンダーフィル)と半導体チップ上部の封止(オーバーモールド)とを一括して行う方法である。
【0125】
<再配置ウエハ>
本開示の再配置ウエハは、支持体と、前記支持体上に配置された素子と、前記素子を封止している上述した封止用樹脂組成物の硬化物と、を有する。
【0126】
上記再配置ウエハは、本開示の封止用樹脂組成物の硬化物で封止されているため、支持体の反りが抑制されている。このため、比較的大面積の支持体であっても好適に用いることができる。例えば、支持体は直径12インチ以上のウエハであってもよい。
【0127】
素子を封止している封止用樹脂組成物の硬化物の厚さは特に制限されず、封止する素子の大きさ等に応じて選択できる。封止用樹脂組成物は支持体の反りを抑制する効果に優れているため、封止厚が大きい(例えば、200μm~1000μm)場合にも好適に用いられる。
【0128】
(電子部品装置の製造方法)
上述した再配置ウエハを作製した後、再配置ウエハを個片化することで、電子部品装置を製造することができる。
具体的には、素子を支持体上に配置する工程と、前記素子が配置された前記支持体上に上述した封止用樹脂組成物を配置する工程と、前記支持体上に配置された封止用樹脂組成物を硬化して前記素子を封止する工程と、前記支持体を個片化する工程と、を含む方法により、電子部品装置を製造することができる。
【0129】
上記方法では、封止用樹脂組成物を硬化して素子を封止した後も支持体の反りが抑制されている。このため、封止後の工程における位置ずれ等の発生が少なく、製品の歩留まりに優れている。
【0130】
素子が配置された支持体上に封止用樹脂組成物を配置する方法は、特に制限されない。例えば、封止用樹脂組成物が粉末状である場合は支持体上に封止用樹脂組成物を散布して行ってもよい。
【0131】
支持体上に配置された封止用樹脂組成物を硬化して素子を封止する方法は、特に制限されない。例えば、圧縮成形により行ってもよい。圧縮成形は、例えば、圧縮成形機を用いて所定の圧力(例えば、2MPa~10MPa)、温度(例えば、120℃~150℃)及び時間(例えば、200秒~600秒)の条件下で行うことができる。
【実施例
【0132】
以下、上記実施形態を実施例により具体的に説明するが、上記実施形態の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0133】
<樹脂組成物の調製>
下記に示す成分を表1に示す配合割合(質量部)で予備混合(ドライブレンド)した後、混練温度80℃で、二軸ニーダーで混練し、冷却粉砕して粉末状の樹脂組成物を製造した。
【0134】
【表1】
【0135】
表1に示す材料の詳細は、下記の通りである。
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:無置換ビフェニル構造と、トリフェニルメタン構造とを有するエポキシ樹脂、エポキシ当量175g/eq、軟化点60℃~100℃
エポキシ樹脂2:4,4’-ビフェニルジイルビス(グリシジルエーテル)と、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビス(グリシジルオキシ)-1,1’-ビフェニルとの混合物(質量比1:1)(三菱ケミカル株式会社、商品名「YL6121HA」)、エポキシ当量170~180g/eq、軟化点105℃
エポキシ樹脂3:トリフェニルメタン型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社、商品名「EPPN-501HY」)、エポキシ当量169g/eq、軟化点60℃
エポキシ樹脂4:ビフェニル型エポキシ樹脂、エポキシ当量196g/eq(三菱ケミカル株式会社、品名「YX-4000」)
【0136】
(B)硬化剤
硬化剤1:オルトクレゾールノボラック樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH5100-5S」)、水酸基当量116g/eq、軟化点64℃
硬化剤2:トリフェニルメタン型フェノール樹脂(明和化成株式会社、商品名「MEH7500-3S」)、水酸基当量103g/eq、軟化点83℃
硬化剤3:フェノールノボラック樹脂(明和化成株式会社、商品名「H-4」)、水酸基当量106g/eq、軟化点83℃
【0137】
(C)硬化促進剤
硬化促進剤1:トリフェニルホスフィンのp-ベンゾキノン付加物
硬化促進剤2:2-フェニル-4-メチルイミダゾール
【0138】
(D)カップリング剤
カップリング剤1:3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、品名「KBM-503」)
カップリング剤2:フェニルアミノトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社、品名「KBM-573」)
【0139】
(E)離型剤
離型剤:モンタン酸エステルワックス
【0140】
(F)着色剤
顔料:カーボンブラック
【0141】
(G)添加剤
シリコーン化合物1:エポキシ基とポリエーテル基を側鎖に有する液状シリコーン
シリコーン化合物2:エポキシ基とジメチルシロキサン構造を有するシリコーン
シリコーン化合物3:シロキサンとカプロラクトンの重合体
改質剤:スチレン・インデン共重合体レジン
【0142】
(H)無機充填材
無機充填材1:球状溶融シリカ(体積平均粒子径6.5μm)
無機充填材2:微細球状溶融シリカ(体積平均粒子径0.5μm)
【0143】
<評価>
調製した樹脂組成物を用いて、下記の試験を行った。結果を表2に示す。
【0144】
[流動性(スパイラルフロー試験)]
流動性の評価の指標として、スパイラルフロー試験を行った。具体的には、EMMI-1-66に準じたスパイラルフロー測定用金型を用いて、成形圧力6.9MPaにて、硬化時間120秒/175℃における樹脂組成物の流動距離(cm)を求めた。
【0145】
[熱時硬度]
トランスファ成形機により、金型温度130℃、成形圧力6.9MPaにて、硬化時間200秒の条件で試験片(直径50mm×厚さ3mmの円板)を成形した。成形後直ちにショアD型硬度計を用いて試験片の硬度(熱時硬度)を測定した。
【0146】
[反り]
12インチシリコンウエハの上に、コンプレッションモールド装置(CPM1080 TOWA社)を用いて、金型温度130℃、硬化時間400秒にて、厚み300μmの成形物を成形した。得られた成形物の反り(μm)をモアレ測定装置(Akrometrix APX、Akrometrix社)を用いて測定し、得られた値をAM(成形後、After Molding)反りとした。この成形物を175℃で6時間の条件で完全に硬化させた後、モアレ測定装置を用いて反り(μm)を測定し、得られた値をAC(硬化後、After Curing)反りとした。
【0147】
[曲げ弾性率]
トランスファ成形機により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で、127mm×12.7mm×4mmの形状の試験片を作製した。その後、後硬化を175℃で6時間の条件で行った。次いで、テンシロン(A&D社)を用いてJIS-K-7171(2016)に準拠した3点支持型曲げ試験を25℃において行い、25℃における試験片の曲げ弾性率E1(GPa)を求めた。
なお、曲げ弾性率は下記式にて定義される。下記式中、Eは曲げ弾性率(GPa)、Pはロードセルの値(N)、yは変位量(mm)、lはスパン=64mm、wは試験片幅=12.7mm、hは試験片厚さ=4mmである。
【0148】
【数1】
【0149】
[成形収縮率]
トランスファ成形機により、金型温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間90秒の条件で、127mm×12.7mm×6.4mmの形状の試験片を作製した。その後、後硬化を175℃で6時間の条件で行った。次いで、得られた試験片の寸法をd、室温(25℃)で測定した金型の寸法をDとして、以下の式より、成形収縮率МS(%)を算出した。
【0150】
【数1】
【0151】
[Tg及びCTE1(175℃成形/硬化品)]
トランスファ成形機により、金型温度175℃、硬化時間90秒、成形圧6.9MPaの条件で、4mm×4mm×20mmの成形物を得た。得られた成形物を175℃で6時間の条件で完全に硬化させ、熱機械分析装置(NETZSCH社、TMA4000SE)を用いて線膨張係数(CTE)を測定した。測定温度範囲は30℃~260℃とし、昇温速度は10℃/分とした。
40℃~80℃の範囲におけるCTEの平均値をCTE1とし、200℃~240℃のCTEの平均値をCTE2とした。
40℃~80℃の範囲におけるCTEの接線と、200℃~240℃におけるCTEの接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0152】
[Tg及びCTE1(130℃成形/硬化品)]
トランスファ成形機により、金型温度130℃、硬化時間300秒、成形圧6.9MPaの条件で、4mm×4mm×20mmの成形物を得た。得られた成形物を130℃で6時間の条件で硬化させ、熱機械分析装置(NETZSCH社、TMA4000SE)を用いて線膨張係数(CTE)を測定した。測定温度範囲は30℃~260℃とし、昇温速度は10℃/分とした。
40℃~80℃の範囲におけるCTEの平均値をCTE1とし、200℃~240℃のCTEの平均値をCTE2とした。
40℃~80℃の範囲におけるCTEの接線と、200℃~240℃におけるCTEの接線との交点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0153】
【表2】
【0154】
表中の「ストレスインデックス」は、樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物の25℃における曲げ弾性率E1と、樹脂組成物を175℃で成形及び硬化させて得られる硬化物のCTE1とから算出した値である。
表中の「硬化剤多官能割合」は硬化剤全体に占める「硬化剤2」の割合(質量%)である。
【0155】
表2に示すように、硬化物のストレスインデックスが220GPa×ppm/℃以下である実施例の樹脂組成物は、硬化物のストレスインデックスが220GPa×ppm/℃を超える比較例の樹脂組成物に比べ、半導体ウエハの上に層を形成した状態での反りの量が効果的に抑制される。