(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】画像処理装置、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H04N 1/00 20060101AFI20241016BHJP
H04N 1/387 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H04N1/00 L
H04N1/387 101
(21)【出願番号】P 2020141819
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-06-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】林 浩司
(72)【発明者】
【氏名】大内 敏
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-102551(JP,A)
【文献】特開2006-060590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/00
H04N 1/387
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿を読み取る読取部と、
前記読取部によって読み取った前記原稿の画像データを配信する配信部と、
前記原稿の所定領域に基づいて、前記画像データの解像度を決定する決定部と、
前記読取部によって読み取る前記原稿の種類である原稿種類を判別する判別部と、
前記判別部により判別される前記原稿種類に応じて、前記所定領域を切り替える切替部と、
を備え
、
前記判別部は、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の比率である特徴量に基づいて、前記原稿種類を判別する画像処理装置。
【請求項2】
前記決定部は、前記所定領域に基づいて前記解像度を決定する第1決定方法、または、前記原稿種類に応じて前記解像度を決定する第2決定方法によって、前記解像度を決定し、
前記切替部は、さらに、前記原稿種類に応じて、前記第1決定方法または前記第2決定方法を切り替える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記原稿種類は、前記原稿が含む線の太さの種類、および当該線の間隔を含み、
前記切替部は、前記原稿が含む線の太さの種類、および当該線の間隔の少なくとも一方に応じて、前記所定領域を切り替える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記原稿種類は、前記原稿が含む文字内の細線の間隔を含み、
前記切替部は、前記細線の間隔に応じて、前記所定領域を切り替える、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記原稿種類は、前記原稿が含む文書内の文字の重要度を含み、
前記第2決定方法は、前記重要度に対応する読み易さを特定し、当該特定した読み易さに対応するデフォルトの解像度を、前記解像度に決定する、請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第2決定方法は、さらに、前記原稿が含む文書内の文字の大きさ、文字数、および文字の密集度に基づいて、決定した前記解像度を調整する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記判別部は、さらに、ユーザ操作に応じて、前記重要度を調整する、請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項8】
コンピュータを、
読取部によって読み取った原稿の画像データを配信する配信部と、
前記原稿の所定領域に基づいて、前記画像データの解像度を決定する決定部と、
前記読取部によって読み取る前記原稿の種類である原稿種類を判別する判別部と、
前記判別部により判別される前記原稿種類に応じて、前記所定領域を切り替える切替部と、
して機能させ
、
前記判別部は、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の比率である特徴量に基づいて、前記原稿種類を判別する、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
カラーMFP(Multi-Function Peripheral)等の画像処理装置のスキャンアプリには、PDFファイルを作成する等の機能が搭載されている。そして、画像処理装置は、スキャンアプリによって原稿を読み取る前に、原稿を読み取る解像度をユーザが設定し、当該設定された解像度によって原稿が読み取られる。
【0003】
また、スキャンアプリによって原稿を読み取った後、画像データの内容に応じて、自動的に、当該画像データの解像度を決定し、当該決定した解像度に変換された画像データを配信する自動解像度判定装置も開発されている。なお、解像度を変換した画像データは、必ずしも、外部装置に配信する必要は無く、予め設定されているフォルダ等に保存しても良い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の自動解像度判定装置では、原稿を忠実に再現したい細線を含む図面の画像データやビジーな地図の画像データ等が、高解像度の画像データに変換されない場合がある。例えば、図面の画像データに含まれる文字サイズが低解像度で可読な場合に、図面が低解像度で読み取られることによる斜め細線のジャギーを低減したい画像データや、太さが異なる線の再現性を高めるために高解像度で配信したい画像データが、高解像度で配信されない場合がある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、図面や地図等の画像データを自動的に高解像度に変換することができる画像処理装置、およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、原稿を読み取る読取部と、前記読取部によって読み取った前記原稿の画像データを配信する配信部と、前記原稿の所定領域に基づいて、前記画像データの解像度を決定する決定部と、前記読取部によって読み取る前記原稿の種類である原稿種類を判別する判別部と、前記判別部により判別される前記原稿種類に応じて、前記所定領域を切り替える切替部と、を備える。前記判別部は、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の比率である特徴量に基づいて、前記原稿種類を判別する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、図面や地図等の画像データを自動的に高解像度に変換することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施の形態にかかる画像処理装置を適用した複写機の全体構成の一例を示す図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態にかかる複写機に内蔵される制御系の一例を説明するための図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態にかかる複写機を適用したMFPのハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態にかかるMFPの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態にかかるMFPにおける画像データの解像度の決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿種類の判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施の形態にかかるMFPにより読み取る原稿の一例を示す図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態にかかるMFPによる原稿の特徴量の算出結果の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿の文書タイプの判別処理の他の例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿が含む微細文字内の細線の間隔の検出処理の一例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態にかかるMFPにおける画像データの解像度の決定処理の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、画像処理装置、およびプログラムの実施の形態を詳細に説明する。
【0010】
図1は、本実施の形態にかかる画像処理装置を適用した複写機の全体構成の一例を示す図である。
図2は、本実施の形態にかかる複写機に内蔵される制御系の一例を説明するための図である。まず、
図1および
図2を用いて、本実施の形態にかかる複写機本体101の機構の概略を説明する。
【0011】
図1および
図2において、複写機本体101のほぼ中央部に5つ並んで配置された像担持体としてのφ30[mm]の感光体(OPC)ドラム102c~102dの周囲には、この感光体ドラム102c~102dの表面を帯電する帯電チャージャー、一様帯電された感光体ドラム102c~102dの表面上に半導体レーザ光を照射して静電潜像を形成するレーザ光学系、静電潜像に各色トナーを供給して現像し、各色毎にトナー像を得る、透明トナー現像装置105a、黒現像装置105b、イエローY、マゼンタM,シアンCの3つのカラー現像装置105c、105d、105e、感光体ドラム102c~102d上に形成された各色毎のトナー像を順次転写する中間転写ベルト109、この中間転写ベルト109に転写電圧を印加するバイアスローラ110a~110e、転写後の感光体ドラム102c~102dの表面に残留するトナーを除去するクリーニング装置111d、および転写後の感光体ドラム102c~102dの表面に残留する電荷を除去する除電部等が順次配列されている。
【0012】
また、中間転写ベルト109には、転写されたトナー像を転写材に転写する電圧を印加するための転写バイアスローラおよび転写材に転写後に残留したトナー像をクリーニングするためのベルトクリーニング装置114が配設されている。また、中間転写ベルト109から剥離された転写材を搬送する加圧ローラ115の出口側端部には、トナー像を加熱および加圧して定着させる定着装置116が配置され、この定着装置116の出口部には、排紙トレイ117が取り付けられている。
【0013】
レーザー光学系104の上部には、複写機本体101の上部に配置された原稿載置台としてのコンタクトガラス118、このコンタクトガラス118上の原稿に走査光を照射する露光ランプ119が配置され、原稿からの反射光を反射ミラーによって結像レンズに導き、光電変換素子であるCCD(Charge Coupled Device)のイメージセンサアレイに入光させる。CCDのイメージセンサアレイで電気信号に変換された画像信号は図示しない画像処理部を経て、レーザー光学系104中の半導体レーザーのレーザー発振を制御する。
【0014】
次に、
図2を用いて、本実施の形態にかかる複写機に内蔵される制御系の一例について説明する。
【0015】
図2に示すように、本実施の形態にかかる複写機の制御系は、メイン制御部としてのコントローラ910を備える。また、コントローラ910には、インターフェースI/O133を介して、レーザー光学系駆動部134、電源回路135、YMCK各作像部に設置された光学センサー136a~136c、YMCK各現像器内に設置されたトナー濃度センサー137、環境センサー138、電位センサー139、トナー補給回路140、中間転写ベルト駆動部141、操作パネル940、駆動制御部163、電源・バイアス制御部161、各種センサ制御部160、通信制御部162、記憶制御部182、および記憶装置181がそれぞれ接続されている。通信制御部162は、通信インターフェース518を介して、インターネットやイントラネット512と通信可能である。レーザー光学系駆動部134は、レーザー光学系のレーザー出力を調整する装置であり、また、電源回路135は、帯電チャージャー113に対して所定の帯電用放電電圧を与えるとともに、現像装置105a~105eに対して所定電圧の現像バイアスを与え、かつバイアスローラ110a~110eに対して所定の転写電圧を与える回路である。
【0016】
なお、光学センサー136は、それぞれ感光体102c~102dに対向させ、感光体102c~102d上のトナー付着量を検知するための光学センサー136aと、中間転写ベルト109に対向させ、中間転写ベルト109上のトナー付着量を検知するための光学センサー136bと、搬送ベルトに対向させ、搬送ベルト上のトナー付着量を検知するための光学センサー136cについて図示している。なお、実用上は光学センサー136a~136cのいずれか1つで検知すれば良い。
【0017】
光学センサー136a~136cは、感光体ドラム102c~102dの転写後の領域に近接配置される発光ダイオード等の発光素子とフォトセンサー等の受光素子とからなり、感光体ドラム102c~102d上に形成される検知パターン潜像のトナー像におけるトナー付着量および地肌部におけるトナー付着量が各色毎にそれぞれ検知されるとともに、感光体除電後のいわゆる残留電位も検知されるようになっている。
【0018】
この光学センサー136a~136cからの検知出力信号は、図示を省略した光学センサー制御部に印加されている。光学センサー制御部は、検知パターントナー像におけるトナー付着量と地肌部におけるトナー付着量との比率を求め、その比率値を基準値と比較して画像濃度の変動を検知し、YMCK各色のトナー濃度センサー137の制御値の補正を行なっている。
【0019】
さらに、トナー濃度センサー137は、現像装置105a~105e内に存在する現像剤の透磁率変化に基づいてトナー濃度を検知する。トナー濃度センサー137は、検知されたトナー濃度値と基準値とを比較し、トナー濃度が一定値を下回ってトナー不足状態になった場合に、その不足分に対応した大きさのトナー補給信号をトナー補給回路140に印加する機能を備えている。
【0020】
また、電位センサー139は、像担持体である感光体102c~102dのそれぞれの表面電位を検知するセンサーであり、中間転写ベルト駆動部141は、中間転写ベルト109の駆動を制御する装置である。
【0021】
黒現像装置105b内には黒トナーとキャリアを含む現像剤が収容されている。これは、現像剤撹拌部材の回転によって撹拌され、現像スリーブ上で、現像剤撹拌部材によってスリーブ上に汲み上げられる現像剤量を調整する。この供給された現像剤は、現像スリーブ上に磁気的に担持されつつ、磁気ブラシとして現像スリーブの回転方向に回転する。
【0022】
図3は、本実施の形態にかかる複写機を適用したMFPのハードウェア構成の一例を示す図である。次に、
図3を用いて、本実施の形態にかかる複写機を適用したMFP9のハードウェア構成の一例について説明する。
【0023】
図3に示されているように、本実施の形態にかかるMFP(Multi-Function Peripheral/Product/Printer)9は、コントローラ910、近距離通信回路920、エンジン制御部930、操作パネル940、ネットワークI/F950を備えている。
【0024】
これらのうち、コントローラ910は、コンピュータの主要部であるCPU(Central Processing Unit)901、システムメモリ(MEM-P)902、ノースブリッジ(NB)903、サウスブリッジ(SB)904、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)906、記憶部であるローカルメモリ(MEM-C)907、HDD(Hard Disk Drive)コントローラ908、および、記憶部であるHD909を有し、NB903とASIC906との間をAGP(Accelerated Graphics Port)バス921で接続した構成となっている。
【0025】
これらのうち、CPU901は、MFP9の全体制御を行う制御部である。NB903は、CPU901と、MEM-P902、SB904、およびAGPバス921とを接続するためのブリッジであり、MEM-P902に対する読み書きなどを制御するメモリコントローラと、PCI(Peripheral Component Interconnect)マスタおよびAGPターゲットとを有する。
【0026】
MEM-P902は、コントローラ910の各機能を実現させるプログラムやデータの格納用メモリであるROM902a、プログラムやデータの展開、およびメモリ印刷時の描画用メモリ等として用いるRAM902bとからなる。なお、RAM902bに記憶されているプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、CD-R、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0027】
SB904は、NB903とPCIデバイス、周辺デバイスとを接続するためのブリッジである。ASIC906は、画像処理用のハードウェア要素を有する画像処理用途向けのIC(Integrated Circuit)であり、AGPバス921、PCIバス922、HDD908およびMEM-C907をそれぞれ接続するブリッジの役割を有する。このASIC906は、PCIターゲットおよびAGPマスタ、ASIC906の中核をなすアービタ(ARB)、MEM-C907を制御するメモリコントローラ、ハードウェアロジック等により画像データの回転等を行う複数のDMAC(Direct Memory Access Controller)、並びに、スキャナ部931(原稿を読み取る読取部の一例)およびプリンタ部932との間でPCIバス922を介したデータ転送を行うPCIユニットとからなる。なお、ASIC906には、USB(Universal Serial Bus)のインターフェースや、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronics Engineers 1394)のインターフェースを接続するようにしてもよい。
【0028】
MEM-C907は、コピー用画像バッファおよび符号バッファとして用いるローカルメモリである。HD909は、画像データの蓄積、印刷時に用いるフォントデータの蓄積、フォームの蓄積を行うためのストレージである。HD909は、CPU901の制御にしたがってHD909に対するデータの読出または書込を制御する。AGPバス921は、グラフィック処理を高速化するために提案されたグラフィックスアクセラレータカード用のバスインタフェースであり、MEM-P902に高スループットで直接アクセスすることにより、グラフィックスアクセラレータカードを高速にすることができる。
【0029】
また、近距離通信回路920には、近距離通信回路920aが備わっている。近距離通信回路920は、NFC、Bluetooth(登録商標)等の通信回路である。更に、エンジン制御部930は、スキャナ部931およびプリンタ部932によって構成されている。また、操作パネル940は、現在の設定値や選択画面等を表示させ、操作者からの入力を受け付けるタッチパネル等のパネル表示部940a、並びに、濃度の設定条件等の画像形成に関する条件の設定値を受け付けるテンキーおよびコピー開始指示を受け付けるスタートキー等からなる操作パネル940bを備えている。コントローラ910は、MFP9全体の制御を行い、例えば、描画、通信、操作パネル940からの入力等を制御する。スキャナ部931またはプリンタ部932には、誤差拡散やガンマ変換等の画像処理部分が含まれている。
【0030】
なお、MFP9は、操作パネル940のアプリケーション切り替えキーにより、ドキュメントボックス機能、コピー機能、プリンタ機能、およびファクシミリ機能を順次に切り替えて選択することが可能となる。ドキュメントボックス機能の選択時にはドキュメントボックスモードとなり、コピー機能の選択時にはコピーモードとなり、プリンタ機能の選択時にはプリンタモードとなり、ファクシミリモードの選択時にはファクシミリモードとなる。
【0031】
また、ネットワークI/F950は、通信制御部162や通信インターフェース518を含み、通信ネットワーク100(インターネットやイントラネット512)を利用してデータ通信をするためのインターフェースである。近距離通信回路920およびネットワークI/F950は、PCIバス922を介して、ASIC906に電気的に接続されている。
【0032】
図4は、本実施の形態にかかるMFPの機能構成の一例を示すブロック図である。次に、
図4を用いて、本実施の形態にかかるMFP9の機能構成の一例について説明する。
【0033】
本実施の形態にかかるMFP9は、CPU901が、RAM902bを作業領域として用いて、ROM902aに記憶されるプログラムを実行することによって、配信部201、決定部202、判別部203、および切替部204を実現する。
【0034】
配信部201は、スキャナ部931によって読み取った原稿の画像データを配信する配信部の一例である。本実施の形態では、配信部201は、ネットワークI/F950を介して、外部装置に対して、画像データを配信したり、HDDコントローラ908を介して、HD909等の記憶部に対して、画像データを保存したりする。
【0035】
決定部202は、スキャナ部931によって読み取る原稿の所定領域に基づいて、画像データの解像度を決定(変換)する決定部(変換部)の一例である。ここで、所定領域は、原稿内における予め設定された領域であり、画像データの解像度を決定する際に原稿内において重視する領域である。また、所定領域は、後述する切替部204によって切り替えられる。
【0036】
本実施の形態では、決定部202は、第1決定方法または第2決定方法によって、画像データの解像度を決定する。ここで、第1決定方法は、原稿内の所定領域に基づいて、画像データの解像度を決定する方法である。また、第2決定方法は、原稿の種類(以下、原稿種類と言う)に基づいて、画像データの解像度を決定する方法である。
【0037】
本実施の形態では、第2決定方法は、原稿が含む文書内の文字の重要度に対応する読み易さ(ランク)を特定(指定)し、当該特定したランクに対応するデフォルトの解像度を、画像データの解像度に決定する。ここで、原稿が含む文書内の文字の重要度は、原稿種類の一例である。また、本実施の形態では、第2決定方法は、原稿が含む文書内の文字の大きさ、文字数、および文字の密集度に基づいて、決定した画像データの解像度を調整することも可能である。例えば、第2決定方法は、原稿が含む文書内の文字が微細な文字で、デフォルトの解像度では読みにくい場合、原稿が含む文書内の文字の大きさ、文字数、および文字の密集度に基づいて、決定した解像度を調整する。
【0038】
判別部203は、スキャナ部931によって読み取る原稿の原稿種類を判別する判別部の一例である。ここで、原稿種類は、上述したように、原稿の種類であり、例えば、原稿が含む線の太さの種類、当該線の間隔、原稿が含む文字内の細線の間隔、当該文字の重要度等の少なくとも1つを含む。また、判別部203は、操作パネル940を介して入力される、MFP9のユーザの操作に応じて、原稿が含む文書内の文字の重要度を調整することも可能である。
【0039】
切替部204は、判別部203によって判別される原稿種類に応じて、所定領域を切り替える切替部の一例である。これにより、図面や地図等の画像データに含まれる文字サイズが低解像度で可読な場合でも、図面や地図等の画像データを自動的に高解像度を変換することができる。本実施の形態では、切替部204は、原稿が含む線の太さの種類および当該線の間隔の少なくとも一方に応じて、所定領域を切り替える。または、本実施の形態では、切替部204は、原稿が含む文字内の細線の間隔に応じて、所定領域を切り替える。さらに、切替部204は、判別部203による原稿種類の判別結果に基づいて、画像データの解像度の決定方法を、第1決定方法または第2決定方法に切り替える。
【0040】
図5は、本実施の形態にかかるMFPにおける画像データの解像度の決定処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図5を用いて、本実施の形態にかかるMFPにおける画像データの解像度の決定処理の流れの一例について説明する。
【0041】
まず、スキャナ部931は、原稿を読み取り、当該原稿の画像データを生成する(ステップS501)。次いで、判別部203は、スキャナ部931によって読み取った原稿の文書タイプ(原稿種類)を判別する(ステップS502)。
【0042】
本実施の形態では、判別部203は、スキャナ部931によって読み取った原稿を、文書タイプA~Dの4つの原稿種類に判別する。ここで、文書タイプAは、図面または地図の原稿である。文書タイプBは、一般的なオフィスの文書である。文書タイプCは、原稿内の一部に微細文字を含む原稿である。文書タイプDは、写真の原稿である。
【0043】
次に、判別部203により判別された原稿種類が文書タイプAである場合(ステップS503:Yes)、切替部205は、第2決定方法に切り替える。そして、決定部202は、判別部203により判別された原稿種類である文書タイプAに応じて、スキャナ部931によって生成される画像データの解像度を、図面または地図が可読な解像度(高解像度)に決定する(ステップS504)。
【0044】
また、判別部203により判別された原稿種類が文書タイプAではなく(ステップS503:No)、当該原稿種類が文書タイプDである場合(ステップS505:Yes)、切替部205は、第2決定方法に切り替える。そして、決定部202は、判別部203により判別される原稿種類である文書タイプDに応じて、スキャナ部931によって生成される画像データの解像度を、写真が可読な解像度(低解像度)に決定する(ステップS506)。
【0045】
また、判別部203により判別された原稿種類が文書タイプDではなく(ステップS505:No)、当該原稿種類が文書タイプBである場合(ステップS507:Yes)、切替部205は、第2決定方法に切り替える。そして、決定部202は、機械学習等によって、判別部203により判別される原稿種類である文書タイプBに応じて、スキャナ部931によって生成される画像データの解像度を、文書内の微細文字が可読な解像度に決定する(ステップS508)。
【0046】
また、判別部203により判別される原稿種類が文書タイプBではなく(ステップS507:No)、当該原稿種類が文書タイプCである場合、切替部205は、第1決定方法に切り替える。そして、切替部205は、スキャナ部931によって読み取る原稿のうち微細文字を含む領域(すなわち、画像データの解像度を決定する際に原稿内において重視する領域)を特定し、所定領域を当該特定した領域に切り替える(ステップS509)。そして、決定部202は、機械学習等によって、スキャナ部931によって生成される画像データの解像度を、所定領域内の微細文字が可読な解像度に決定する(ステップS508)。
【0047】
ここで、機械学習とは、コンピュータに人のような学習能力を獲得させるための技術であり、コンピュータが、データ識別等の判断に必要なアルゴリズムを、事前に取り込まれる学習データから自律的に生成し、新たなデータについてこれを適用して予測を行う技術のことをいう。機械学習のための学習方法は、教師あり学習、教師なし学習、半教師学習、強化学習、深層学習のいずれかの方法でもよく、さらに、これらの学習方法を組み合わせた学習方法でもよく、機械学習のための学習方法は問わない。
【0048】
図6は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿種類の判別処理の流れの一例を示すフローチャートである。次に、
図6を用いて、本実施の形態にかかるMFP9による原稿種類の判別処理の流れの一例について説明する。
【0049】
まず、判別部203は、スキャナ部931により生成される画像データの特徴量を算出する(ステップS601)。本実施の形態では、判別部203は、下記の表1に示すように、予め設定される画素数(例えば、1画素、3画素、7画素、非エッジ画素)の幅(以下、画素幅と言う)の細線の濃度毎の比率(濃度ヒストグラム)を、特徴量として算出する。ここで、非エッジ画素とは、1,3,6画素以外の画素数の画素である。
【表1】
【0050】
次に、判別部203は、特徴量の算出結果に基づいて、スキャナ部931により読み取った原稿の文書タイプ(原稿種類)を判別する(ステップS602)。
【0051】
図7は、本実施の形態にかかるMFPにより読み取る原稿の一例を示す図である。
図8は、本実施の形態にかかるMFPによる原稿の特徴量の算出結果の一例を示す図である。
図8において、縦軸は、原稿の特徴量を表し、横軸は、原稿の読取値を表す。次に、
図7および
図8を用いて、本実施の形態にかかるMFP9による原稿種類の判別処理の一例について説明する。
【0052】
例えば、スキャナ部931によって、
図7に示す図面の原稿を読み取った場合、判別部203は、
図8に示すように、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の比率(頻度)を、特徴量として算出する。そして、判別部203は、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の特徴量に基づいて、原稿の文書タイプ(原稿種類)を判別する。
【0053】
本実施の形態では、判別部203は、判別部203は、予め設定された画素幅の細線の濃度毎の特徴量に基づいて、原稿が含む文字の重要度を、文書タイプとして判別する。例えば、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが大きくかつ文字がかたまりで存在する場合、文字の重要度が高い文書タイプ(例えば、一般の文字文書)と判別する。また、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが大きく、かつ文字がかたまりで存在しないが、原稿内での文字の割合が大きいか若しくは中程度である場合、文字の重要度が高い文書タイプ(例えば、帳票の文字)と判別する。また、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが大きく、かつ文字がかたまりで存在しないが、かつ原稿内での文字の割合が少ない場合、文字の重要度が高い文書タイプ(例えば、写真のタイトル文字)と判別する。
【0054】
また、例えば、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが小さく、かつ文字がかたまりで存在する場合、文字の重要度が高い文書タイプ(例えば、カタログや仕様表等の細かい文字)と判別する。また、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが小さく、かつ文字がかたまりで存在しないが、原稿内での文字の割合が大きい場合、文字の重要度が高い文書タイプ(例えば、地図の文字)と判別する。また、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが小さく、かつ文字がかたまりで存在しないが、原稿内での文字の割合が中程度である場合、文字の重要度が中程度の文書タイプ(例えば、カタログの絵柄内の文字)と判別する。さらに、判別部203は、下記の表2に示すように、原稿内の文字の大きさが小さく、かつ文字がかたまりで存在しないが、原稿内での文字の割合が少ない場合、文字の重要度が低い文書タイプ(例えば、カタログの絵柄内の文字や、ごくわずかな注釈)と判別する。
【表2】
【0055】
本実施の形態では、判別部203は、文字の重要度を切り替える基準を、操作パネル940を介して、ユーザが調整することも可能である。これにより、原稿が含む文書内の文字の重要度が高くなり易くしたり、当該文字の重要度が低くなり易くしたりすることも可能である。また、本実施の形態では、判別部203は、原稿内の文字の大きさが小さい場合および当該文字の大きさが大きい場合のそれぞれにおける文書タイプを、4つの文書タイプに分類しているが、これに限定するものではなく、5つ以上の文書タイプに分類することも可能である。
【0056】
図9は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿の文書タイプの判別処理の他の例を説明するための図である。次に、
図9を用いて、本実施の形態にかかるMFP9における原稿の文書タイプの判別処理の他の例について説明する。
【0057】
例えば、判別部203は、
図9に示すように、判別対象の原稿が、当該原稿が含む文書内の文字の大きさが小さくかつ文字数が少ない図面原稿である場合、すなわち、ごくわずかな注釈を含む図面原稿である場合、文字の重要度が低い文書タイプと判別する。そして、決定部202は、第2決定方法によって、原稿の画像データの解像度を決定する場合、当該判別した重要度に対応する読み易さのランクを特定し、当該特定した読み易さのランクに対応するデフォルトの解像度(低解像度)を、図面原稿の画像データの解像度に決定する。
【0058】
図10は、本実施の形態にかかるMFPにおける原稿が含む微細文字内の細線の間隔の検出処理の一例を説明するための図である。
図10(a)は、原稿が含む文書内の文字の一例を示す図である。また、
図10(b)は、原稿が含む文書内の文字の読取値の一例を示す図である。
図10(b)において、縦軸は、原稿が含む文書内の文字の上下方向の位置(Y座標の相対値)を表し、横軸は、原稿が含む文書内の文字の読取値を表す。次に、
図10を用いて、本実施の形態にかかるMFP9における読み易さの特定処理の一例について説明する。
【0059】
本実施の形態では、第2決定方法によって画像データの解像度を決定する場合、決定部202は、原稿が含む微細文字内の細線の間隔を検出する。例えば、
図10(a)に示すように、原稿が含む文書内の文字が、「擾」である場合、決定部202は、読取値およびY座標の相対値(画素数)の位置に基づいて、原稿が含む文書内の文字の細線1001の間隔である画素数(例えば、5画素)を検出する。そして、決定部202は、検出した画素数に基づいて、微細文字が読み易くなるランクを特定する。
【0060】
図11は、本実施の形態にかかるMFPにおける画像データの解像度の決定処理の一例を説明するための図である。
図11において、縦軸は、原稿内の文字の読み易さを表し、横軸は、原稿が含む文字内の細線の間隔を表す。次に、
図11を用いて、本実施の形態にかかるMFP9における画像データの解像度の決定処理の一例について説明する。
【0061】
第2決定方法により画像データの解像度を決定する際、決定部202は、微細文字が読み易くなるランクを特定した後、
図11に示すように、特定したランク(例えば、「4」)に対応する、文字内の細線の間隔(例えば、4画素)を特定し、文字内の細線の間隔が当該特定した間隔になるように、原稿の画像データの解像度を決定する。
【0062】
このように、本実施の形態にかかるMFP9によれば、判別部203によって判別される原稿種類に応じて、所定領域を切り替えることにより、図面や地図等の画像データに含まれる文字サイズが低解像度で可読な場合でも、図面や地図等の画像データを自動的に高解像度に変換することができる。
【0063】
なお、本実施の形態のMFP9で実行されるプログラムは、ROM902a等に予め組み込まれて提供される。本実施の形態のMFP9で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0064】
さらに、本実施の形態のMFP9で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、本実施の形態のMFP9で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0065】
本実施の形態のMFP9で実行されるプログラムは、上述した各部(配信部201、決定部202、判別部203、切替部204)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU901(プロセッサの一例)が上記ROM902aからプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、配信部201、決定部202、判別部203、切替部204が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0066】
なお、上記実施の形態では、本発明の画像処理装置を、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能のうち少なくとも2つの機能を有する複合機(MFP9)に適用した例を挙げて説明するが、複写機、プリンタ、スキャナ装置、ファクシミリ装置等の画像処理装置であればいずれにも適用することができる。
【0067】
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。
【符号の説明】
【0068】
9 MFP
901 CPU
902a ROM
902b RAM
931 スキャナ部
201 配信部
202 決定部
203 判別部
204 切替部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】