(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】シート材を搬送する装置、シート材を加熱する装置、液体を吐出する装置、印刷装置
(51)【国際特許分類】
B65H 5/02 20060101AFI20241016BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241016BHJP
B65H 5/22 20060101ALI20241016BHJP
B65G 15/60 20060101ALI20241016BHJP
B65G 23/19 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
B65H5/02 F
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B65H5/02 S
B65H5/22 C
B65G15/60
B65G23/19
(21)【出願番号】P 2020155613
(22)【出願日】2020-09-16
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】川道 源一郎
(72)【発明者】
【氏名】小川 雅人
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/02
B41J 2/01
B65H 5/22
B65G 15/60
B65G 23/19
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート材を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを介して吸引する吸引手段と、
前記搬送ベルトと前記吸引手段との間に配置され、前記搬送ベルトの裏面を支える複数の支え部材と、を備え、
前記支え部材は、搬送方向と交差する方向に延びるように配置され、
前記複数の支え部材は、搬送方向に沿って並べて配置されて
おり、
前記支え部材は、搬送方向と交差する方向の中央部が、搬送方向に沿う断面形状において半円形状であり、搬送方向と交差する方向の両端部が、搬送方向に沿う断面形状において円形状である支え部材を含む
ことを特徴とするシート材を搬送する装置。
【請求項2】
前記搬送ベルトは、吸引孔を有する平ベルト又はメッシュベルトである
ことを特徴とする請求項
1に記載のシート材を搬送する装置。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載のシート材を搬送する装置と、
前記シート材を搬送する装置で搬送されるシート材を加熱する加熱手段と、を備えている
ことを特徴とするシート材を加熱する装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、赤外線照射手段、紫外線照射手段、送風手段の少なくともいずれかを含む
ことを特徴とする請求項
3に記載のシート材を加熱する装置。
【請求項5】
前記支え部材は、前記加熱手段の直下以外の領域に配置されている
ことを特徴とする請求項
3又は
4に記載のシート材を加熱する装置。
【請求項6】
シート材に液体を付与する液体付与手段と、
前記請求項1
若しくは2に記載のシート材を搬送する装置、又は、請求項
3若しくは
4に記載のシート材を加熱する装置と、を備えている
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項7】
シート材に印刷する手段と、
前記請求項1
若しくは2に記載のシート材を搬送する装置、又は、請求項
3若しくは
4に記載のシート材を加熱する装置と、を備えている
ことを特徴とする印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシート材を搬送する装置、シート材を加熱する装置、液体を吐出する装置、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シート材などの液体付与対象に液体を付与して印刷を行う印刷装置として、液体が付与されたシート材を搬送ベルトで吸引搬送しながらシート材を加熱して、付与された液体の乾燥を促進するものがある。
【0003】
従来、搬送ベルトと吸引手段との間に、搬送ベルトの裏面を下から支える複数の下支え部材を備え、下支え部材は搬送方向に延びる部材であり、複数の下支え部材は搬送方向と直交する方向に並べて配置されている吸引搬送装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示の構成にあっては、下支え部材に接触する搬送ベルトの部分は搬送方向において下支え部材に接触し続けることになり、一方、下支え部材に接触していない搬送ベルトの部分は搬送方向において下支え部材に接触することがない。
【0006】
そのため、搬送ベルトは、搬送方向と直交する方向において、下支え部材に接触し続ける部分と下支え部材に接触しない部分とで波打ち(凹凸)が発生し、搬送ベルトによって搬送されるシート材にも凹凸の変形が発生して残存するという課題がある。
【0007】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、シート材の変形を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明に係るシート材を搬送する装置は、
シート材を搬送する搬送ベルトと、
前記搬送ベルトを介して吸引する吸引手段と、
前記搬送ベルトと前記吸引手段との間に配置され、前記搬送ベルトの裏面を支える複数の支え部材と、を備え、
前記支え部材は、搬送方向と交差する方向に延びるように配置され、
前記複数の支え部材は、搬送方向に沿って並べて配置されており、
前記支え部材は、搬送方向と交差する方向の中央部が、搬送方向に沿う断面形状において半円形状であり、搬送方向と交差する方向の両端部が、搬送方向に沿う断面形状において円形状である支え部材を含む
構成とした。
【0009】
本発明によれば、シート材の変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の概略説明図である。
【
図2】同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るシート材を搬送する装置を含むシート材を加熱する装置の側面説明図である。
【
図5】本発明の第1実施形態におけるシート材を搬送する装置(搬送機構部)の斜視説明図である。
【
図6】同搬送機構部を構成する吸引機構部の斜視説明図である。
【
図7】同吸引機構部の吸引チャンバの説明に供する搬送方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図8】同吸引機構部の作用説明に供する説明図である。
【
図9】本発明の第1実施形態の説明に供する説明図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るシート材を搬送する装置の平面説明図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係るシート材を搬送する装置を含むシート材を加熱する装置の平面説明図である。
【
図15】本発明の第4実施形態に係るシート材を搬送する装置を含むシート材を加熱する装置の側面説明図である。
【
図16】同シート材を搬送する装置の平面説明図である。
【
図18】同実施形態の作用説明に供する断面説明図である。
【
図19】本発明の第5実施形態に係るシート材を搬送する装置の要部側面説明図である。
【
図20】同じく支え部材の取付け構造の説明に供する斜視説明図である。
【
図21】同じく作用説明に供する要部側面説明図である。
【
図22】本発明の第6実施形態に係るシート材を加熱する装置の側面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る液体を吐出する装置としての印刷装置について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は同印刷装置の概略説明図、
図2は同印刷装置の吐出ユニットの平面説明図である。
【0012】
印刷装置1は、シート材Pを搬入する搬入部10と、塗布部である前処理部20と、印刷部30と、第1乾燥部40と、第2乾燥部50と、反転機構部60と、搬出部70とを備えている。
【0013】
印刷装置1は、搬入部10から搬入(供給)されるシート材Pに対し、前処理部20で必要に応じて塗布液としての前処理液を付与(塗布)し、印刷部30でシート材Pに対して所要の液体を付与して所要の印刷を行う。
【0014】
そして、印刷装置1は、第1乾燥部40、第2乾燥部50でシート材Pに付着した液体を乾燥させた後、反転機構部60を介して、そのまま、又は、シート材Pの両面に印刷を行った後、シート材Pを搬出部70に排出する。
【0015】
搬入部10は、複数のシート材Pを収容する搬入トレイ11(下段搬入トレイ11A、上段搬入トレイ11B)と、搬入トレイ11からシート材Pを1枚ずつ分離して送り出す給送装置12(12A、12B)とを備え、シート材Pを前処理部20に供給する。
【0016】
前処理部20は、例えばインクを凝集させ、裏写りを防止する作用効果を有する処理液をシート材Pの印刷面に付与する処理液付与手段である塗布手段21などを備えている。
【0017】
印刷部30は、シート材Pを周面に担持して回転する担持部材(回転部材)であるドラム31と、ドラム31に担持されたシート材Pに向けて液体を吐出する液体吐出部32を備えている。
【0018】
印刷部30は、前処理部20から送り込まれたシート材Pを受け取ってドラム31との間でシート材Pを渡す渡し胴34と、ドラム31によって搬送されたシート材Pを受け取って第1乾燥部40に渡す受け渡し胴35を備えている。
【0019】
前処理部20から印刷部30へ搬送されてきたシート材Pは、渡し胴34に設けられた把持手段(シートグリッパ)によって先端が把持され、渡し胴34の回転に伴って搬送される。渡し胴34により搬送されたシート材Pは、ドラム31との対向位置でドラム31へ受け渡される。
【0020】
ドラム31の表面にも把持手段(シートグリッパ)が設けられており、シート材Pの先端が把持手段(シートグリッパ)によって把持される。ドラム31の表面には、複数の吸引穴が分散して形成され、吸引手段によってドラム31の所要の吸引穴から内側へ向かう吸い込み気流を発生させる。
【0021】
そして、渡し胴34からドラム31へ受け渡されたシート材Pは、シートグリッパによって先端が把持されるとともに、吸引手段による吸い込み気流によってドラム31上に吸着担持され、ドラム31の回転に伴って搬送される。
【0022】
液体吐出部32は、液体付与手段としての液体吐出手段である吐出ユニット33(33A~33D)を備えている。例えば、吐出ユニット33Aはシアン(C)の液体を、吐出ユニット33Bはマゼンタ(M)の液体を、吐出ユニット33Cはイエロー(Y)の液体を、吐出ユニット33Dはブラック(K)の液体を、それぞれ吐出する。また、その他、白色、金色(銀色)などの特殊な液体の吐出を行う吐出ユニットを使用することもできる。
【0023】
吐出ユニット33は、例えば、
図2に示すように、複数のノズル111を配列したノズル列を複数列有する複数の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)101をベース部材103に千鳥状に配置したフルライン型ヘッドを含むヘッドモジュール100を有している。
【0024】
液体吐出部32の各吐出ユニット33は、印刷情報に応じた駆動信号によりそれぞれ吐出動作が制御される。ドラム31に担持されたシート材Pが液体吐出部32との対向領域を通過するときに、吐出ユニット33から各色の液体が吐出され、当該印刷情報に応じた画像がシート材P上に印刷される。
【0025】
第1乾燥部40は、例えばIRヒータなどの加熱手段42を備え、搬送部41で搬送される液体が付与されたシート材Pに赤外線を照射して加熱乾燥する。第2乾燥部50は、例えば紫外線照射部などの加熱手段52を備え、第1乾燥部40を通過し、搬送部51で搬送される液体が付与されたシート材Pに紫外線を照射して加熱乾燥する。なお、搬送部41と搬送部51は同じ搬送手段の一部で構成されている。
【0026】
反転機構部60は、第1乾燥部40及び第2乾燥部50を通過して一面に液体が付与されて乾燥されたシート材Pに対して両面印刷を行うときに、スイッチバック方式で、シート材Pを反転する反転部61と、反転されたシート材Pを印刷部30の渡し胴34よりも上流側に逆送する両面搬送部62とを備えている。
【0027】
搬出部70は、複数のシート材Pが積載される搬出トレイ71を備えている。反転機構部60から搬送されてくるシート材Pは、搬出トレイ71上に順次積み重ねられて保持される。
【0028】
なお、本実施形態では、シート材がカットシート材である例で説明しているが、連帳紙、ロール紙などの連続体(ウェブ)を使用する装置、壁紙などのシート材を使用する装置などにも本発明を適用することができる。
【0029】
次に、本発明の第1実施形態に係るシート材を搬送する装置(搬送装置)を含むシート材を加熱する装置(加熱装置)について
図3及び
図4を参照して説明する。
図3は同シート材を加熱する装置の側面説明図、
図4は同じく正面説明図である。
【0030】
シート材を加熱する装置500は、本発明に係るシート材を搬送する装置である搬送機構部501と、加熱手段52を構成する加熱部502を有している。
【0031】
搬送機構部501は、シート材Pを担持して搬送する搬送ベルト511を有している。搬送ベルト511は、駆動ローラ512と従動ローラ513との間に掛け回されて、周回移動する。なお、搬送機構部501は、本実施形態では、
図1に示すように、印刷部30から反転機構部60に跨ってシート材Pを搬送する機構である。
【0032】
搬送ベルト511は、吸引手段を構成する吸引チャンバ514によって吸引される複数の開口を有するベルトである。例えば、メッシュベルト、吸引穴(開口)を有する平ベルトなどを使用している。
【0033】
吸引チャンバ514は、搬送ベルト511の開口を介して搬送ベルト511上のシート材Pを吸引する。吸引チャンバ514による吸引力は、後述する吸引装置505によって与えられるが、吸引ブロワ、ファンなどで吸引を行うこともできる。
【0034】
搬送ベルト511と吸引手段を構成する吸引チャンバ514との間には、搬送ベルト511の裏面を支える複数の支え部材515が配置されている。
【0035】
支え部材515は、搬送方向と交差する方向に延びるように配置されている。そして、複数の支え部材515は、搬送方向に沿って並べて配置されている。ここで、支え部材515は、例えば、ロッド状、シャフト状、又は線状の部材である。また、支え部材515は、搬送ベルト511と接触する面が曲率を有する面である部材とすることで、搬送ベルト511との接触抵抗を低減できるので好ましい。
【0036】
なお、本実施形態では、支え部材515は搬送方向と直交する方向に延びるように配置されているが、搬送方向に対して斜めに延びるように配置することもできる。
【0037】
加熱部502は、ハウジング503内に、複数の紫外線照射手段521が搬送方向に沿って並べて配置されている。紫外線照射手段521は、搬送機構部501で搬送されるシート材Pに対して紫外線を照射して加熱する。
【0038】
ハウジング503は、
図3に示すように、搬送方向に沿う方向では搬送ベルト511との間に隙間を置いて配置され、
図4に示すように、搬送方向と直交する方向では、高さ方向で搬送ベルト511よりも下方まで延びている部分503aを有している。
【0039】
紫外線照射手段521は、照射面522に粒状のUV-LED発光素子が格子状に並んで配置されている。各UV-LED発光素子が同一の照度で発光することで、全体としては照射面522に沿って均一に発光している状態になる。紫外線光(UV光)の波長としてはピーク波長が395nmで、波長分布は半値全幅が約15nmのものを使用している。
【0040】
紫外線照射を行うことで、選択的な加熱が可能であり、画像部(液体が付与された部分)のみを加熱して白紙部(液体が付与されていない部分)の温度を過度に上げないという効果が得られる。
【0041】
次に、第1実施形態におけるシート材を搬送する装置(搬送機構部)の詳細について
図5ないし
図7も参照して説明する。
図5は同搬送機構部の斜視説明図、
図6は同搬送機構部を構成する吸引機構部の斜視説明図、
図7は同吸引機構部の吸引チャンバの説明に供する搬送方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0042】
搬送機構部501は、搬送ベルト511と、搬送ベルト511によって囲まれたベルト内空間に配置された吸引チャンバ514と、吸引チャンバ514内を吸引する吸引装置505とを備えている。
【0043】
吸引装置505は、搬送方向と直交する方向において、吸引チャンバ514の側方に配置され、吸引チャンバ514の内部を吸引する。
【0044】
吸引装置505は、減圧チャンバ551と、減圧チャンバ551内を吸引する減圧装置552とを備えている。吸引チャンバ514と減圧チャンバ551とはダクト553で接続されている。減圧チャンバ551と減圧装置552とはダクト554で接続されている。
【0045】
吸引チャンバ514の上部には吸引口部材540が配置されている。吸引口部材540は複数の吸引口540aを有している。
【0046】
吸引チャンバ514内には、吸引口部材540の下側に、仕切り部材542を配置し、上チャンバ部514Aと下チャンバ部514Bとに仕切っている。仕切り部材542には、複数の吸引口540aが共通に通じる共通吸引口542a、542bを設けている。
【0047】
複数の共通吸引口542a,542bは、搬送方向に沿って長尺な長孔の貫通穴であり、シート材Pの搬送方向と直交する方向(幅方向)両端端部にそれぞれ対向する位置で開口している。なお、ここでは、共通吸引口542a,542bの数が2つである例で説明しているが、1つ又は3つ以上とすることもできる。
【0048】
仕切り部材542の共通吸引口542a,542bの開口面積は、吸引口部材540の吸引口540aの開口面積より大きくしている。
【0049】
そして、仕切り部材542には通路部材543を設けて、共通吸引口542aを接続通路としてのダクト553に通じさせる吸引通路545aと、共通吸引口542bをダクト553に通じさせる吸引通路545bを形成している。
【0050】
ここで、吸引機構部504の吸引装置505を作動させ、減圧チャンバ551内を吸引することで減圧チャンバ551内が負圧状態になる。減圧チャンバ551内が負圧になることによってダクト553を介して吸引チャンバ514内が吸引される。
【0051】
吸引チャンバ514内が吸引されることにより、下チャンバ部514Bが吸引されて、上チャンバ部514A内の空気(気体)が共通吸引口542a、542bを介して下チャンバ部514Bに吸い込まれる気流が発生する。
【0052】
これにより、搬送ベルト511上にシート材Pがあるとき、上チャンバ部514A内の圧力が減圧されて、搬送ベルト511上にシート材Pが吸引されて吸着される。
【0053】
ここで、搬送ベルト511上のシート材Pが、上チャンバ部514Aの上部を完全に塞ぐように担持されないサイズである場合、
図8に矢印で示すように、シート材Pによって塞がれていない部分から搬送ベルト511の開口を介して空気が上チャンバ部514A内へ流入する。
【0054】
そして、上チャンバ部514A内へ流入した空気は、共通吸引口部材541の共通吸引口542a、542bを通って下チャンバ部514Bへ流れ込み、吸引チャンバ514から吸い出されていくことになる。
【0055】
このように、吸引装置505を作動させることにより、吸引口540aからの吸引が行われ、シート材Pが搬送ベルト511に吸着され、搬送ベルト511の周回移動によって搬送される。
【0056】
次に、本発明の第1実施形態の作用について
図9ないし
図11も参照して説明する。
図9は第1実施形態の説明図であり、(a)は平面説明図、(b)は(a)のA-A線に相当する正面説明図である。
図10は比較例の説明図であり、(a)は平面説明図、(b)は(a)のB-B線に相当する正面説明図である。
図11は比較例の作用説明に供する説明図である。
【0057】
先ず、比較例は、搬送ベルト511と吸引チャンバ514との間に、搬送ベルト511の裏面が接触する複数の支え部材515が搬送方向と直交する方向に並べて配置されている。支え部材515は、搬送方向に沿う方向に配置されている。
【0058】
この比較例において、
図11に示すように、搬送ベルト511を介してシート材Pを吸引すると、吸引によってシート材Pは支え部材515の間が凹む状態になり、搬送方向と直交する方向において凹凸状に変形する。
【0059】
このとき、支え部材515は搬送方向に沿って配置されているので、シート材Pの凹凸の位置は変わることなく搬送ベルト511の周回移動によって搬送され、加熱部502によって加熱乾燥される。
【0060】
そのため、水分及びインクの水分で伸びたシート材Pが加熱部502によって加熱されることで、シート材Pは凹凸状に変形したまま水分が蒸発し、乾燥後に凹凸癖が残ることなり品質が低下する。
【0061】
これに対して、第1実施形態において、各支え部材515は搬送方向と直交する方向に延びるように配置され、複数の支え部材515は搬送方向に並んで配置されている。
【0062】
このとき、搬送方向に並ぶ複数の支え部材515、515の間で、シート材Pには瞬間的に凹凸状態が発生するが、搬送ベルト511の周回移動によってシート材Pは凹凸状態を繰り返しながら搬送されることによって凹凸が均される。
【0063】
これにより、シート材Pの変形が抑制され、シート材Pに凹凸癖が残ることが抑制される。
【0064】
次に、本発明の第2実施形態について
図12を参照して説明する。
図12は同実施形態に係るシート材を搬送する装置の平面説明図である。
【0065】
本実施形態では、搬送方向と交差する方向において支え部材515を三つに分割して支え部材515A、515B、515Cとしている。そして、搬送方向と直交する方向において両側の支え部材515A、515Cの列と中央部の支え部材515Bの列とは、搬送方向における位置をずらして配置している。
【0066】
つまり、本実施形態では、搬送方向と直交する方向に、搬送方向に沿って並ぶ複数の支え部材515A、515B、515Cの列が配置され、支え部材515A、515Cの列と支え部材515Bの列は、搬送方向に沿う方向における支え部材515の位置がずれている構成としている。
【0067】
これにより、シート材Pは、搬送方向と直交する方向におけるいずれかの部位が必ず吸引され、搬送安定性が向上する。
【0068】
なお、搬送方向と交差する方向において、二分割、四分割以上とすることもでき、また、分割した支え部材の長さは同じでも異なってもよい。
【0069】
次に、本発明の第3実施形態について
図13及び
図14を参照して説明する。
図13は同実施形態に係るシート材を搬送する装置を含むシート材を加熱する装置の平面説明図、
図14は同じく側面説明図である。
【0070】
本実施形態では、前記第2実施形態の支え部材の構成において、紫外線照射手段521の照射面522の直下以外の領域に支え部材515が配置されている。なお、加熱手段として第1乾燥部41のように赤外線照射手段を用いる場合には、赤外線照射手段による照射領域の直下以外の領域に支え部材515を配置する。
【0071】
これにより、支え部材515が紫外線照射によって直接加熱されず、部分的な温度上昇を低減させることが可能となり、温度ムラ、乾燥ムラ、コックリング等を抑制して画像品質を安定させることができる。
【0072】
また、シート材Pを搬送する搬送ベルト511などの部分的な温度上昇も低減させることができるので、搬送ベルト511の温度ムラ、部分的温度上昇による変形を抑制でき、耐久性の低減を抑制できる。
【0073】
次に、本発明の第4実施形態について
図15ないし
図17を参照して説明する。
図15は同実施形態に係るシート材を搬送する装置を含むシート材を加熱する装置の側面説明図である。
図16は同シート材を搬送する装置の平面説明図、
図17は同じく支え部材の断面説明図であり、(a)は
図16のC-C線に沿う断面説明図、(b)は
図16のD-D線に沿う断面説明図である。
【0074】
本実施形態のシート材を加熱する装置500は、搬送機構部501の搬送ベルト511と加熱手段である紫外線照射手段521の照射面522との間に流路板561が配置されている。
【0075】
流路板561は、例えば、一般的な金属板でもよいし、シート材Pからの反射光を再度シート材Pに戻すためのリフレクタなどでもよい。流路板561は、紫外線照射手段521の照射面522から出る紫外線光(UV光)を遮らない位置まで照射面522に近づけている。
【0076】
また、加熱手段である紫外線照射手段521の照射面522と流路板561との間に照射面522に沿った気流570を発生させる気流発生手段562を備えている。
【0077】
支え部材515は、搬送方向に沿う断面形状において、搬送方向と直交する方向における両端部を、
図17(a)に示すように、断面円形状とし、中央部を
図17(b)に示すように下流側のみの断面半円形状としている。なお、
図17(a)の断面円形状の部分を中央部に、
図17(b)の断面半円形状の部分を両端部に配置することもできる。
【0078】
本実施形態の作用について前述した
図15ないし
図17と
図18も参照して説明する。
図18は同作用説明に供する断面説明図である。
【0079】
気流発生手段562で発生された気流570は流路板561と紫外線照射手段521の照射面522に沿って搬送方向上流側に流れており、搬送ベルト511上のシート材Pに直接当たらない。これにより、シート材Pが冷やされることながなくなり、乾燥効率が向上する。
【0080】
そして、紫外線照射手段521による紫外線照射で加熱されたシート材Pの液体から発生した蒸気は、紫外線照射手段521の照射面522へ向かって立ち上るが、気流570によって、搬送方向上流に流され、照射面522に到達しない。
【0081】
そして、蒸気を含んだ気流570は、搬送ベルト511のシート材Pが載っていない領域で、吸引チャンバ514による吸い込み気流によって吸引チャンバ514に吸引され、排気される。
【0082】
このように、紫外線照射手段521の照射面522に沿って気流570を流して、立ち上がる蒸気が含まれた気流570は照射面522と反対の搬送ベルト511側の吸引チャンバ514にて吸引して排気することで、気流570は搬送ベルト511上のシート材Pに直接当たらずに排気され、乾燥効率が向上する。
【0083】
ここで、
図18に示すように、気流570を発生させることによって、気流570が支え部材515に当たることで支え部材515の周面に沿う流れが発生する。このとき、支え部材515上にシート材Pの先端が位置すると、シート材Pの先端に気流570が当たり、シート材Pの先端がめくれあがるおそれがある。
【0084】
そこで、支え部材515の中央部の断面形状を、
図17(b)に示したように、下流側のみの半円形状とすることで、気流570は下向きの流れとなって、シート材Pの先端の浮き上がりが抑制され、搬送安定性が向上する。
【0085】
次に、本発明の第5実施形態について
図19ないし
図21を参照して説明する。
図19は同実施形態に係るシート材を搬送する装置の要部側面説明図、
図20は同じく支え部材の取付け構造の説明に供する斜視説明図である。
図21は同じく作用説明に供する要部側面説明図である。
【0086】
支え部材515は、両端部が軸受け516を介して保持部材517に回転自在(回転可能)に保持されている。
【0087】
これにより、搬送ベルト511が周回移動するとき、支え部材515との摺動抵抗が低減する。
【0088】
また、搬送ベルト511に継ぎ目511aがある場合、
図18(a)ないし(d)に示すように、支え部材515が搬送ベルト511に連れ回りすることで、搬送ベルト511に継ぎ目511aがスムーズに支え部材515を通過することができる。
【0089】
次に、本発明の第6実施形態について
図22を参照して説明する。
図22は同実施形態に係るシート材を加熱する装置の側面説明図である。
【0090】
シート材を加熱する装置500の加熱部502は、温風吹き出し手段581を備えている。温風吹き出し手段581は、外気を吸気するファン582と、流路部材583と、吹き出し口(ノズル)584と、赤外線ヒータ585とを含む。
【0091】
温風吹き出し手段581は、流路部材583内にファン582で吸気した空気を赤外線ヒータ585で温めてノズル584からシート材Pに向かって温風586を吹き出す。これにより、シート材Pに付与されたインク中の溶媒や水分の温度を上げつつ、シート材P近傍の蒸気密度を下げることで、蒸発を促す。
【0092】
そして、本実施形態では、前記第3実施形態と同様に、送風手段としての温風吹き出し手段581の吹き出し口584の直下以外の領域に支え部材515が配置されている。
【0093】
これにより、温風586が支え部材515に当たり、シート材Pの先端を持ち上げることが抑制され、搬送安定性が向上する。
【0094】
なお、上記各実施形態は、相互に、矛盾のない範囲で組み合わせることができる。
【0095】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0096】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0097】
また、「液体を吐出する装置」には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0098】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0099】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0100】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0101】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0102】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0103】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0104】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0105】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0106】
1 印刷装置
10 搬入部
20 前処理部
30 印刷部
40 第1乾燥部
50 第2乾燥部
60 反転機構部
70 搬出部
500 シート材を加熱する装置
501 シート材を搬送する装置(搬送機構部)
502 加熱部(加熱手段)
511 搬送ベルト
514 吸引チャンバ
515 支え部材
521 紫外線照射手段
522 照射面
561 流路板
562 気流発生手段
570 気流
581 温風吹き出し手段