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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】長尺の光学積層体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/027 20190101AFI20241016BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241016BHJP
   B32B 27/32 20060101ALN20241016BHJP
【FI】
B32B7/027
B32B27/00 B
B32B27/32 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020196362
(22)【出願日】2020-11-26
(65)【公開番号】P2022084455
(43)【公開日】2022-06-07
【審査請求日】2023-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】摺出寺 浩成
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-102362(JP,A)
【文献】国際公開第2016/067893(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/188160(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/255458(WO,A1)
【文献】特開2016-107503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B
G09F9/00
C09J7/00-7/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)とを含む、長尺の光学積層体であって、
前記積層体(M)は、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなり、
前記樹脂層(C)と前記樹脂層(A)との間に前記接着層(B)が配置されるように、前記積層体(M)が配置され、
前記接着層(B)は、前記樹脂層(C)に直接して設けられ、
前記積層体(M)の、長手方向における熱寸法変化率MDbcの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDbcの絶対値が、下記条件(1)を満たし、
前記光学積層体の、長手方向における熱寸法変化率MDdの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDdの絶対値が、下記条件(2)を満たし
前記樹脂層(A)の厚みta及び前記樹脂層(C)の厚みtcが、下記条件(3)を満たし、かつ
前記樹脂層(A)の、長手方向における熱寸法変化率MDa及び幅方向における熱寸法変化率TDaが、下記条件(4)を満たす、
長尺の光学積層体。
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
3≦tc/ta≦15 (3)
0.15%<MDa≦1% かつ 0.15%<TDa≦1% (4)
【請求項2】
前記樹脂層(A)が、樹脂層(A1)と、樹脂層(A2)と、樹脂層(A3)とからなり、
前記樹脂層(A2)の第一の面に前記樹脂層(A1)が直接して設けられ、前記樹脂層(A2)の第二の面に前記樹脂層(A3)が直接して設けられ、
前記樹脂層(A1)及び前記樹脂層(A3)は、それぞれ前記樹脂(a1)からなり、
前記樹脂層(A2)は、前記樹脂(a1)及び紫外線吸収剤を含む、樹脂(a2)からなる、請求項1に記載の長尺の光学積層体。
【請求項3】
更に少なくとも一つの導電層(E)を含み、
前記導電層(E)が、前記樹脂層(A)の第一の面及び第二の面に、又は、前記樹脂層(A)の前記第一の面もしくは前記第二の面に、直接して設けられる、請求項1又は2に記載の長尺の光学積層体。
【請求項4】
結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)とを含む、長尺の光学積層体であって、
前記樹脂層(A)が、樹脂層(A1)と、樹脂層(A2)と、樹脂層(A3)とからなり、
前記樹脂層(A2)の第一の面に前記樹脂層(A1)が直接して設けられ、前記樹脂層(A2)の第二の面に前記樹脂層(A3)が直接して設けられ、
前記樹脂層(A1)及び前記樹脂層(A3)は、それぞれ前記樹脂(a1)からなり、
前記樹脂層(A2)は、前記樹脂(a1)及び紫外線吸収剤を含む、樹脂(a2)からなり、
前記積層体(M)は、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなり、
前記樹脂層(C)と前記樹脂層(A)との間に前記接着層(B)が配置されるように、前記積層体(M)が配置され、
前記接着層(B)は、前記樹脂層(C)に直接して設けられ、
前記積層体(M)の、長手方向における熱寸法変化率MDbcの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDbcの絶対値が、下記条件(1)を満たし、
前記光学積層体の、長手方向における熱寸法変化率MDdの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDdの絶対値が、下記条件(2)を満たし、かつ
前記樹脂層(A)の厚みta及び前記樹脂層(C)の厚みtcが、下記条件(3)を満たす、
長尺の光学積層体。
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
3≦tc/ta≦15 (3)
【請求項5】
更に少なくとも一つの導電層(E)を含み、
前記導電層(E)が、前記樹脂層(A)の第一の面及び第二の面に、又は、前記樹脂層(A)の前記第一の面もしくは前記第二の面に、直接して設けられる、請求項に記載の長尺の光学積層体。
【請求項6】
結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)と、少なくとも一つの導電層(E)と
を含む、長尺の光学積層体であって、
前記積層体(M)は、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなり、
前記樹脂層(C)と前記樹脂層(A)との間に前記接着層(B)が配置されるように、前記積層体(M)が配置され、
前記接着層(B)は、前記樹脂層(C)に直接して設けられ、
前記導電層(E)が、前記樹脂層(A)の第一の面及び第二の面に、又は、前記樹脂層(A)の前記第一の面もしくは前記第二の面に、直接して設けられ、
前記積層体(M)の、長手方向における熱寸法変化率MDbcの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDbcの絶対値が、下記条件(1)を満たし、
前記光学積層体の、長手方向における熱寸法変化率MDdの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDdの絶対値が、下記条件(2)を満たし、かつ
前記樹脂層(A)の厚みta及び前記樹脂層(C)の厚みtcが、下記条件(3)を満たす、
長尺の光学積層体。
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
3≦tc/ta≦15 (3)
【請求項7】
さらに、前記樹脂層(A)の、長手方向における熱寸法変化率MDa及び幅方向における熱寸法変化率TDaが、下記条件(4)を満たす、請求項4~6のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
0.15%<MDa≦1% かつ 0.15%<TDa≦1% (4)
【請求項8】
前記樹脂(c1)のガラス転移温度Tgcが、150℃以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
【請求項9】
前記樹脂(a1)及び前記樹脂(c1)が、又は、前記樹脂(a1)もしくは前記樹脂(c1)が、脂環式構造を含む重合体を含む、請求項1~のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
【請求項10】
結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)とを含む、長尺の光学積層体の製造方法であって、
前記長尺の光学積層体は、
前記積層体(M)、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなり、
前記樹脂層(C)と前記樹脂層(A)との間に前記接着層(B)が配置されるように、前記積層体(M)が配置され、
前記接着層(B)、前記樹脂層(C)に直接して設けられ、
前記積層体(M)の、長手方向における熱寸法変化率MDbcの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDbcの絶対値が、下記条件(1)を満たし、
前記光学積層体の、長手方向における熱寸法変化率MDdの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDdの絶対値が、下記条件(2)を満たし、かつ
前記樹脂層(A)の厚みta及び前記樹脂層(C)の厚みtcが、下記条件(3)を満たし:
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
3≦tc/ta≦15 (3)
前記製造方法は、
長尺の前記樹脂層(C)を用意する工程(1)、
前記樹脂層(C)の一方の面上に、前記接着層(B)を形成し、前記樹脂層(C)と前記接着層(B)とからなる、長尺の前記積層体(M)を得る工程(2)、
前記樹脂層(A)を用意する工程(3)、及び
前記積層体(M)と前記樹脂層(A)とを積層して、長尺の光学積層体を得る工程(4)を含み、
前記工程(2)は、前記樹脂層(C)の一方の面上に前記接着剤を塗工する工程(2a)を含み、
前記工程(3)は、前記樹脂(a1)を含む組成物を溶融押出して冷却し、長尺の押出フィルムを得る工程(3a)、及び、前記押出フィルムを加熱する工程(3b)を含む、
長尺の光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺の光学積層体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネルなどに用いられる透明導電性フィルムの基材として、環状オレフィン樹脂を含むフィルムが用いられている(特許文献1)。また、結晶性を有する重合体を含む、結晶性樹脂フィルムも、光学要素として用いられている(特許文献2~4)。以下、結晶性を有する重合体を、結晶性重合体ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6738448号公報
【文献】特開2019-155609号公報
【文献】特開2008-239845号公報
【文献】国際公開第2008/026733号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置は、タッチパネルを備える場合がある。タッチパネルは、通常画像表示装置の表示画面に重ねて設けられるが、視認性向上のために、タッチパネルを薄型化することが求められている。
結晶性重合体を含む樹脂から形成された結晶性樹脂フィルムは、機械的強度、耐薬品性に優れると同時に、透明性にも優れている。そのため、厚みの小さい結晶性樹脂フィルムの表面に、導電層などの機能層を積層して積層体とし、当該積層体をタッチパネルの構成要素として用いることが考えられる。
しかし、厚みの小さい結晶性樹脂フィルムは、加熱によりカールする傾向がある。したがって、結晶性樹脂フィルムに導電層などの機能層を積層する工程において、結晶性樹脂フィルムが高温下に置かれると、結晶性樹脂フィルムがカールする場合があり、当該機能層を所望の精度で形成することが難しい場合がある。
特許文献2の技術では、厚みの小さい結晶性樹脂フィルムに保護フィルムを貼合することにより、破断及びしわの発生を防止している。しかし、特許文献2の技術では、結晶性樹脂フィルムを高温下に置いた場合に、結晶性樹脂フィルムのカール量を十分に低減することが難しい。
【0005】
したがって、結晶性重合体を含む樹脂を含む樹脂層を含むと共に、高温下に置かれた場合のカール量が低減された光学積層体及び当該光学積層体の製造方法が、求められる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した結果、光学積層体を、結晶性重合体を含む樹脂を含む樹脂層(A)と、積層体(M)とを含む光学積層体とし、かつ所定の条件を満たす光学積層体とすることで、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0007】
[1] 結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)とを含む、長尺の光学積層体であって、
前記積層体(M)は、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなり、
前記樹脂層(C)と前記樹脂層(A)との間に前記接着層(B)が配置されるように、前記積層体(M)が配置され、
前記接着層(B)は、前記樹脂層(C)に直接して設けられ、
前記積層体(M)の、長手方向における熱寸法変化率MDbcの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDbcの絶対値が、下記条件(1)を満たし、
前記光学積層体の、長手方向における熱寸法変化率MDdの絶対値及び幅方向における熱寸法変化率TDdの絶対値が、下記条件(2)を満たし、かつ
前記樹脂層(A)の厚みta及び前記樹脂層(C)の厚みtcが、下記条件(3)を満たす、
長尺の光学積層体。
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
3≦tc/ta≦15 (3)
[2] さらに、前記樹脂層(A)の、長手方向における熱寸法変化率MDa及び幅方向における熱寸法変化率TDaが、下記条件(4)を満たす、[1]に記載の長尺の光学積層体。
0.15%<MDa≦1% かつ 0.15%<TDa≦1% (4)
[3] 前記樹脂(c1)のガラス転移温度Tgcが、150℃以上である、[1]又は[2]に記載の長尺の光学積層体。
[4] 前記樹脂(a1)及び前記樹脂(c1)が、又は、前記樹脂(a1)もしくは前記樹脂(c1)が、脂環式構造を含む重合体を含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
[5] 前記樹脂層(A)が、樹脂層(A1)と、樹脂層(A2)と、樹脂層(A3)とからなり、
前記樹脂層(A2)の第一の面に前記樹脂層(A1)が直接して設けられ、前記樹脂層(A2)の第二の面に前記樹脂層(A3)が直接して設けられ、
前記樹脂層(A1)及び前記樹脂層(A3)は、それぞれ前記樹脂(a1)からなり、
前記樹脂層(A2)は、前記樹脂(a1)及び紫外線吸収剤を含む、樹脂(a2)からなる、[1]~[4]のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
[6] 更に少なくとも一つの導電層(E)を含み、
前記導電層(E)が、前記樹脂層(A)の第一の面及び第二の面に、又は、前記樹脂層(A)の前記第一の面もしくは前記第二の面に、直接して設けられる、[1]~[5]のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体。
[7] [1]~[5]のいずれか一項に記載の長尺の光学積層体の製造方法であって、
長尺の前記樹脂層(C)を用意する工程(1)、
前記樹脂層(C)の一方の面上に、前記接着層(B)を形成し、前記樹脂層(C)と前記接着層(B)とからなる、長尺の前記積層体(M)を得る工程(2)、
前記樹脂層(A)を用意する工程(3)、及び
前記積層体(M)と前記樹脂層(A)とを積層して、長尺の光学積層体を得る工程(4)を含み、
前記工程(2)は、前記樹脂層(C)の一方の面上に前記接着剤を塗工する工程(2a)を含み、
前記工程(3)は、前記樹脂(a1)を含む組成物を溶融押出して冷却し、長尺の押出フィルムを得る工程(3a)、及び、前記押出フィルムを加熱する工程(3b)を含む、
長尺の光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、結晶性重合体を含む樹脂を含む樹脂層を含むと共に、高温下に置かれた場合のカール量が低減された光学積層体及び当該光学積層体の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の第一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第二実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第三実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第四実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0012】
接着剤とは、別に断らない限り、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa~500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。
【0013】
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの長手方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0014】
以下の説明において、層の面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、590nmである。
【0015】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±3°、±2°又は±1°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0016】
以下の説明において、ある方向におけるフィルム又は層の熱寸法変化率とは、フィルム又は層を145℃で1時間加熱した後の、その方向における寸法変化率を意味する。詳細には、フィルム又は層の、ある方向における、加熱前の寸法をLとし、145℃で1時間加熱後の寸法をLとすると、その方向におけるフィルム又は層の熱寸法変化率は、下記の式(I)により算出される。
熱寸法変化率(%)=[(L-L)/L]×100 (I)
熱寸法変化率の符号が正の場合は、加熱によりその方向においてフィルム又は層が収縮することを示し、熱寸法変化率の符号が負の場合は、加熱によりその方向においてフィルム又は層が伸長することを示す。
【0017】
以下の説明において、フィルム、層、及び積層体における、幅方向とは、フィルム、層、及び積層体における、面内方向であって長手方向と垂直な方向を意味する。
【0018】
以下の説明において、フィルム、層、及び積層体における、搬送方向(machine direction)は、通常長尺のフィルムの長手方向と一致する。
【0019】
以下の説明において、ある層(第一の層という。)が、別のある層(第二の層という。)に直接するとは、第一の層が有する主面と第二の層が有する主面とが、間に別の層を介することなく、接していることを意味する。
【0020】
以下の説明において、組成物は、二種以上の材料から構成される物に限定されず、単一の材料から構成される物であってもよい。
【0021】
[1.光学積層体の概要]
本発明の一実施形態に係る光学積層体は、結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である樹脂層(A)と、積層体(M)とを含み、長尺である。
積層体(M)は、接着剤の層である接着層(B)と、樹脂(c1)の層である樹脂層(C)とからなる。
樹脂層(C)と樹脂層(A)との間に接着層(B)が配置されるように、積層体(M)が配置されている。すなわち、樹脂層(A)と、接着層(B)と、樹脂層(C)とは、この順で配置されている。
接着層(B)は、樹脂層(C)に直接して設けられている。したがって、接着層(B)と樹脂層(C)との間に他の層は存在せず、接着層(B)の面と樹脂層(C)の面とが接している。
光学積層体に含まれる樹脂層(A)、接着層(B)及び樹脂層(C)は、いずれも長尺である。
光学積層体は、樹脂層(A)及び積層体(M)に加えて、任意の層を含んでいてもよい。
【0022】
(光学積層体が満たす条件)
本実施形態の光学積層体は、通常、下記条件(1)~(3)をすべて満たす。
|MDbc|≦0.1% かつ |TDbc|≦0.1% (1)
前記条件(1)において、MDbcは、積層体(M)の長手方向における熱寸法変化率を表す。TDbcは、積層体(M)の幅方向における熱寸法変化率を表す。
|MDbc|は、好ましくは0.09%以下、より好ましくは0.08%以下である。
|TDbc|は、好ましくは0.098%以下、より好ましくは0.095%以下である。
【0023】
|MDd|≦0.15% かつ |TDd|≦0.15% (2)
前記条件(2)において、MDdは、光学積層体の長手方向における熱寸法変化率を表す。TDdは、光学積層体の幅方向における熱寸法変化率を表す。
MDdは、好ましくは0.12%以下、より好ましくは0.1%以下である。
TDdは、好ましくは0.12%以下、より好ましくは0.1%以下である。
【0024】
3≦tc/ta≦15 (3)
前記条件(3)において、taは、樹脂層(A)の厚みを表し、tcは、樹脂層(C)の厚みtcを表す。
tc/taの値は、好ましくは3.3以上、より好ましくは3.5以上であり、光学積層体の巻回体のハンドリングを容易とする観点から、好ましくは14以下、より好ましくは13以下である。
【0025】
光学積層体が、以上の条件(1)~(3)をすべて満たすことにより、高温下に置かれた場合の光学積層体のカール量を低減しうる。また、高温下での加工において光学積層体にしわが発生することを抑制しうる。したがって、光学積層体の表面に導電層をパターニングするなどの、高温下での光学積層体の加工を、精度よく行うことが期待できる。
【0026】
さらに、光学積層体に含まれる樹脂層(A)は、下記条件(4)を満たすことが好ましい。
0.15%<MDa≦1% かつ 0.15%<TDa≦1% (4)
前記条件(4)において、MDaは、樹脂層(A)の長手方向における熱寸法変化率を表す。TDaは、樹脂層(A)の幅方向における熱寸法変化率を表す。
本実施形態に係る光学積層体は、含まれる樹脂層(A)の熱寸法変化率が0.15%より大きいものであっても、高温下に置かれた場合の光学積層体のカール量を低減しうる。
MDaは、好ましくは0.18%以上、より好ましくは0.2%以上であり、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
TDaは、好ましくは0.18%以上、より好ましくは0.2%以上であり、好ましくは0.9%以下、より好ましくは0.8%以下である。
【0027】
[2.第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る光学積層体について、以下図面を用いて説明する。
図1は、本発明の第一実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。光学積層体100は、樹脂層(A)としての樹脂層10と、積層体(M)としての積層体40とを備える。積層体40は接着層(B)としての接着層20と樹脂層(C)としての樹脂層30とから構成されている。樹脂層10は、第一の面10U及び第二の面10Dを有し、樹脂層10の第二の面10Dに積層体40が接するように、樹脂層10及び積層体40が積層されている。樹脂層30と樹脂層10との間に、積層体40が備える接着層20が配置されている。したがって、樹脂層10の第二の面10Dには、接着層20が接している。接着層20は、樹脂層30に直接して設けられている。樹脂層10は、厚みtaを有する。樹脂層30は、厚みtcを有する。厚みta及び厚みtcは、前記条件(3)を満たす。
【0028】
本実施形態では、樹脂層(A)としての樹脂層10は、単層構造を有しているが、別の実施形態では、後述するように、複層構造を有していてもよい。樹脂層(C)としての樹脂層30は、単層構造を有しているが、別の実施形態では、複層構造を有していてもよい。以下、本実施形態に係る光学積層体100が備える構成要素について、説明する。
【0029】
[2.1.樹脂層(A)]
樹脂層(A)は、結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)を含む層である。以下、「結晶性を有する重合体を含む樹脂(a1)」を、「結晶性樹脂(a1)」ともいう。
結晶性を有する重合体とは、融点Tmを有する重合体をいう。「融点Tmを有する」とは、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測できることをいう。以下の説明において、「結晶性を有する重合体」を、「結晶性重合体」ともいう。
【0030】
結晶性樹脂(a1)に含まれる、結晶性重合体としては、分子内に脂環式構造を含む重合体のうち結晶性を有するもの、及び、結晶性を有するポリスチレン系重合体(特開2011-118137号公報参照)が挙げられる。以下、分子内に脂環式構造を含む重合体を、脂環式構造含有重合体ともいう。中でも、機械的強度、耐熱性、及び成形性に優れることから、結晶性を有する脂環式構造含有重合体が好ましい。
【0031】
脂環式構造含有重合体は、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素化物でありうる。脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0033】
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0034】
結晶性を有する脂環式構造含有重合体としては、例えば、下記の重合体(α)~重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂層(A)が得られ易いことから、結晶性を有する脂環式構造含有重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素化物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素化物等であって、結晶性を有するもの。
【0035】
具体的には、脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは100重量%の重合体をいう。
ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物は、ラセモ・ダイアッドの割合が高いことが好ましい。具体的には、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物における繰り返し単位のラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは70%以上、特に好ましくは85%以上である。ラセモ・ダイアッドの割合が高いことは、シンジオタクチック立体規則性が高いことを表す。よって、ラセモ・ダイアッドの割合が高いほど、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の融点が高い傾向がある。
ラセモ・ダイアッドの割合は、後述する実施例に記載の13C-NMRスペクトル分析に基づいて決定できる。
【0036】
前記のような結晶性を有する脂環式構造含有重合体として、国際公開第2018/062067号に開示されている製造方法により得られる重合体を用いうる。
【0037】
結晶性重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する結晶性重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた樹脂層(A)を得ることができる。
【0038】
通常、結晶性重合体は、ガラス転移温度Tgを有する。結晶性重合体の具体的なガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
【0039】
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmは、以下の方法によって測定できる。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷する。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定しうる。
【0040】
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する結晶性重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0041】
結晶性重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する結晶性重合体は、成形加工性に優れる。
結晶性重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0042】
結晶性樹脂(a1)における結晶性重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性重合体の割合を前記範囲の下限値以上とすることにより、樹脂層(A)の耐熱性を効果的に高めることができる。結晶性重合体の割合の上限は、100重量%以下でありうる。
【0043】
結晶性樹脂(a1)に含まれる結晶性重合体は、樹脂層(A)を製造するよりも前においては、結晶化していなくてもよい。しかし、樹脂層(A)が製造された後においては、当該樹脂層(A)に含まれる結晶性重合体は、結晶化していることが好ましく、高い結晶化度を有することが好ましい。具体的な結晶化度の範囲は所望の性能に応じて適宜選択しうるが、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、更に好ましくは30%以上である。樹脂層(A)に含まれる結晶性重合体の結晶化度を前記範囲の下限値以上にすることにより、樹脂層(A)に高い耐熱性及び耐薬品性を付与することができる。樹脂層(A)に含まれる結晶性重合体の結晶化度は、例えば密度法によって測定しうる。
【0044】
結晶性樹脂(a1)は、結晶性重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、酸化防止剤;光安定剤;ワックス;核剤;蛍光増白剤;紫外線吸収剤;無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー;及び、結晶性重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0045】
樹脂層(A)の厚みtaは、前記条件(3)を満たす範囲で任意であるが、好ましくは5μm以上、より好ましくは10μm以上であり、好ましくは80μm以下、より好ましくは70μm以下である。
【0046】
樹脂層(A)が有するレターデーションは、光学積層体の用途により任意に設定しうる。例えば、樹脂層(A)の面内レターデーションReは、好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下であり、通常0nm以上である。樹脂層(A)の面内レターデーションReが、前記範囲内にあることで、光学積層体の樹脂層(A)を、例えばタッチパネルの基材のような、光学的等方性を有することが好ましい部材として好適に用いうる。
【0047】
[2.2.接着層(B)]
接着層(B)は、接着剤の層であり、接着剤で形成されている。接着層を形成するための接着剤としては、各種の重合体をベースポリマーとしたものが挙げられる。かかるベースポリマーの例としては、例えば、アクリル系重合体、ウレタン系重合体、ポリエステル系重合体、ゴム系重合体、エポキシ系重合体、シリコーン系重合体が挙げられる。また、接着剤は、前記のベースポリマーに組み合わせて、重合開始剤、硬化剤、紫外線吸収剤、着色剤、帯電防止剤等の任意の成分を含みうる。
接着剤には、粘着剤(感圧性接着剤)が包含される。
【0048】
接着剤として、市販品を利用することができる。また、接着性を有するフィルムとして各種の接着層が市販されているので、それを利用してもよい。
接着層は、単層構造を有していてもよく、複層構造を有していてもよい。
【0049】
接着層(B)の厚みは、特に限定されず、例えば3μm~30μm、例えば5μm~20μmの範囲としうる。
【0050】
[2.3.樹脂層(C)]
樹脂層(C)は、樹脂(c1)の層であり、樹脂(c1)から形成されている。樹脂(c1)は、好ましくは熱可塑性樹脂である。
【0051】
樹脂(c1)は、通常重合体を含み、本発明の効果を著しく損なわない限り、更に任意の成分を含みうる。樹脂(c1)に含まれうる任意の成分の例としては、樹脂(a1)に含まれうる任意の成分の例と同様の成分が挙げられる。
【0052】
樹脂(c1)は、重合体を、一種単独で含んでいてもよく、二種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。樹脂(c1)における重合体の割合は、樹脂(c1)を100重量%として、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上、更に好ましくは85重量%以上であり、通常100重量%以下であり、100重量%であってもよい。
【0053】
樹脂(c1)に含まれうる重合体の例としては、脂環式構造含有重合体;スチレン系重合体(例、スチレン又はスチレン誘導体の単独重合体又はこれと重合しうる他の単量体との共重合体);トリアシルセルロース等のセルロース系重合体;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリフェニレンサルファイドなどのポリアリーレンサルファイド;ポリビニルアルコール;ポリカーボネート;ポリアリレート;ポリエーテルスルホン;ポリスルホン;ポリアリールスルホン;ポリ塩化ビニル;ポリメチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどの、アクリル系重合体;ポリイミド;ポリアミドが挙げられる。これらの重合体は、単独重合体であっても、共重合体であってもよい。
【0054】
なかでも、機械的強度、耐熱性、及び成形性に優れることから、脂環式構造含有重合体が好ましい。したがって、樹脂(c1)は、好ましくは脂環式構造含有重合体を含む。
【0055】
樹脂(c1)に含まれうる脂環式構造含有重合体の例としては、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物などが挙げられる。前記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002-321302号公報に開示されている重合体から選択されうる。脂環式構造含有重合体としては、例えば、日本ゼオン社製「ZEONOR」、「ZEONEX」;JSR社製「ARTON」;などが挙げられる。
【0056】
樹脂(c1)のガラス転移温度Tgcは、好ましくは150℃以上、より好ましくは155℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下である。
樹脂(c1)のガラス転移温度Tgcが、前記下限値以上であることにより、光学積層体の耐熱性を効果的に向上させうる。また、Tgcが前記上限値以下であることにより、成形性を向上させうる。
【0057】
樹脂層(C)の表面には、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理が施されていてもよい。
【0058】
[3.第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る光学積層体について、以下図面を用いて説明する。
図2は、本発明の第二実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
光学積層体200は、樹脂層(A)としての樹脂層210と、積層体(M)としての積層体240とを備える。樹脂層(A)としての樹脂層210は、複層構造を有しており、樹脂層210は、樹脂層(A1)としての樹脂層211、樹脂層(A2)としての樹脂層212、樹脂層(A3)としての樹脂層213を備える。樹脂層(A2)としての樹脂層212の第一の面212Uには、樹脂層(A1)としての樹脂層211が直接して設けられている。樹脂層212の第二の面212Dには、樹脂層(A3)としての樹脂層213が直接して設けられている。積層体(M)としての積層体240は、接着層(B)としての接着層220と樹脂層(C)としての樹脂層230とから構成されている。樹脂層213は、積層体240が備える接着層220と直接して設けられている。
【0059】
樹脂層210は、第一の面210U及び第二の面210Dを有し、樹脂層210の第二の面210Dに積層体240が接するように、樹脂層210及び積層体240が積層されている。樹脂層230と樹脂層210が備える樹脂層213との間に、接着層220が配置されている。したがって、樹脂層210の第二の面210Dには、接着層220が接している。接着層220は、樹脂層230に直接して設けられている。
【0060】
樹脂層210は、厚みtaを有する。樹脂層(A)としての樹脂層210の厚みtaは、本実施形態では、樹脂層211と、樹脂層212と、樹脂層213との総厚みである。樹脂層230は、厚みtcを有する。厚みta及び厚みtcは、前記条件(3)を満たす。
【0061】
第二実施形態は、樹脂層(A)として、樹脂層10の代わりに樹脂層210を備える以外は、第一実施形態と同様の構成を有する。接着層(B)としての接着層220は、前記接着層20と同様の構成を有し、樹脂層(C)としての樹脂層230は、前記樹脂層30と同様の構成を有するので、それぞれ説明を省略する。以下、本実施形態の光学積層体が備える樹脂層(A)について更に説明する。
【0062】
本実施形態に係る樹脂層(A)は、樹脂層(A1)と、樹脂層(A2)と、樹脂層(A3)とからなり、樹脂層(A1)、樹脂層(A2)、及び樹脂層(A3)から構成されている。
【0063】
[3.1.樹脂層(A1)、樹脂層(A3)]
樹脂層(A1)及び樹脂層(A3)は、それぞれ前記樹脂(a1)からなり、それぞれ樹脂(a1)から形成されている。樹脂層(A1)を形成する樹脂(a1)と、樹脂層(A3)を形成する樹脂(a1)とは、互いに異なる樹脂であってもよいが、樹脂層(A)のカール量を低減し、また樹脂層(A)の積層条件の設定を容易とする観点から、同一の樹脂であることが好ましい。樹脂層(A1)及び樹脂層(A3)を形成しうる樹脂(a1)の例及び好ましい例については、第一実施形態において説明した樹脂(a1)の例及び好ましい例と同様である。
【0064】
樹脂層(A1)の厚みta1と樹脂層(A3)の厚みta3との比(ta1/ta3)は、樹脂層(A)のカール量を低減する観点から、例えば、0.5/1~1.5/1の範囲、好ましくは0.7/1~1.3/1の範囲としうる。
【0065】
[3.2.樹脂層(A2)]
樹脂層(A2)は、前記樹脂(a1)と更に紫外線吸収剤とを含む、樹脂(a2)からなり、樹脂(a2)から形成されている。
樹脂層(A2)を形成する樹脂(a2)に含まれる樹脂(a1)は、樹脂層(A1)を形成する樹脂(a1)及び樹脂層(A3)を形成する樹脂(a1)のそれぞれと、異なる樹脂であってもよいが、樹脂層(A2)と、樹脂層(A1)又は樹脂層(A3)との密着性、製造設備の簡略化の観点から、樹脂(a2)に含まれる樹脂(a1)と、樹脂層(A1)を形成する樹脂(a1)と、樹脂層(A3)を形成する樹脂(a1)とは、同じ樹脂であることが好ましい。
【0066】
樹脂(a2)に含まれうる紫外線吸収剤の例としては、特に限定されず、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤、サリシレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、アゾメチン系紫外線吸収剤、インドール系紫外線吸収剤、ナフタルイミド系紫外線吸収剤、及びフタロシアニン系紫外線吸収剤が挙げられる。市販の紫外線吸収剤の例としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である、ADEKA社製「アデカスタブLA-31」が挙げられる。
【0067】
樹脂(a2)は、紫外線吸収剤を、一種単独で含んでいてもよく、二種以上の任意の比率の組み合わせで含んでいてもよい。
樹脂(a2)における、紫外線吸収剤の量は、樹脂(a2)に含まれる樹脂(a1)の量を100重量%として、好ましくは2重量%以上、より好ましくは5重量%以上であり、好ましくは20重量%以下、より好ましくは15重量%以下である。紫外線吸収剤の量が、前記下限値以上であることにより、樹脂層(A2)に効果的に紫外線吸収特性を付与できる。紫外線吸収剤の量が、前記上限値以下であることにより、樹脂層(A2)からの紫外線吸収剤のブリードアウトを低減しうる。
【0068】
[4.導電層(E)を含む光学積層体]
本発明の一実施形態に係る光学積層体は、樹脂層(A)及び積層体(M)に加えて、更に少なくとも一つの導電層(E)を含んでいてもよい。導電層(E)は、導電性を有する層である。光学積層体が、導電層(E)を二つ備え、樹脂層(A)が備える第一の面及び第二の面のそれぞれに、直接して導電層(E)が設けられていてもよいし、光学積層体が、導電層(E)を一つのみ備え、樹脂層(A)の片面(第一の面又は第二の面)のみに導電層(E)が直接して設けられていてもよい。ここで、樹脂層(A)の第二の面は、樹脂層(C)の主面と、接着層(B)を介して対向する面とする。
本実施形態の光学積層体は、高温下に置かれた場合のカール量が少ない。したがって、本実施形態の光学積層体を、高温下で精度よく加工しうることが期待できる。
【0069】
[4.1.第三実施形態]
本発明の第三実施形態に係る光学積層体は、樹脂層(A)及び積層体(M)と、更に導電層(E)とを含む。図3は、本発明の第三実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。光学積層体300は、樹脂層(A)としての樹脂層310と、積層体(M)としての積層体340と、導電層(E)としての導電層350とを備える。積層体340は、接着層(B)としての接着層320と、樹脂層(C)としての樹脂層330とから構成されている。樹脂層310は、第一の面310U及び第二の面310Dを有し、樹脂層310の第二の面310Dに積層体340が接するように、樹脂層310及び積層体340が積層されている。樹脂層330と樹脂層310との間に、積層体340が備える接着層320が配置されている。したがって、樹脂層310の第二の面310Dには、接着層320が接している。接着層320は、樹脂層330に直接して設けられている。
導電層350は、樹脂層310の第一の面310Uに直接して設けられている。
樹脂層310は、厚みtaを有する。樹脂層330は、厚みtcを有する。
光学積層体300は、前記条件(1)~(3)を満たす。光学積層体300は、導電層350が樹脂層310の第一の面310Uに直接して設けられている以外は、光学積層体100と同様の構成を有する。樹脂層310、接着層320、及び樹脂層330は、樹脂層10、接着層20、及び樹脂層30と、それぞれ同様の構成を有するので、説明を省略し、以下導電層について説明する。
【0070】
(導電層(E))
導電層(E)は、導電性を有する層である。導電層(E)は、通常導電材料を含む。導電材料の例としては、金属、導電性金属酸化物が挙げられる。金属及び金属酸化物の例としては、金、銀、銅、白金、鉛、スズ、ニッケル、アルミニウム、タングステン、モリブデン、クロム、チタン、インジウム、これらの合金、インジウム-スズ酸化物(ITO)が挙げられる。これらの導電材料は、例えば、粒子状、ワイヤ状などの形態でありうる。
【0071】
導電層(E)は、導電材料に加えて、有機材料を含んでいてもよい。導電層(E)は、例えば、導電性粒子と、アルカリ可溶性樹脂と、光重合開始剤とを含む感光性組成物の硬化物であってもよい。
【0072】
アルカリ可溶性樹脂の例としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基などの官能基を有する樹脂が挙げられ、具体例としては、フェノール性ヒドロキシ基を有するノボラック樹脂、ヒドロキシ基を有するモノマーの重合体、及び、ヒドロキシ基を有するモノマーとこれと共重合しうるモノマーとの共重合体が挙げられる。
【0073】
光重合開始剤の例としては、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン誘導体、チオキサントン誘導体、ベンジル誘導体、ベンゾイン誘導体、オキシム系化合物、α-ヒドロキシケトン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、ホスフィンオキシド系化合物、アントロン化合物、及びアントラキノン化合物が挙げられる。
【0074】
感光性組成物は、例えば、光の照射により、現像液への溶解性が低下する組成物であってもよく、光の照射により、現像液への溶解性が上昇する組成物であってもよい。
【0075】
導電層(E)は、樹脂層(A)の全面に形成されていてもよく、樹脂層(A)の一部分に形成されていてもよい。導電層は、メッシュ状、ストライプ状などの、任意のパターンを有していてもよい。
【0076】
導電層(E)は、任意の方法により、形成されうる。導電層(E)の形成方法の例としては、導電性を有する感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィー法により形成する方法;導電性を有するインクを用いて、スクリーン印刷法、グラビア印刷法、インクジェット印刷法などの印刷法により形成する方法が挙げられる。
【0077】
[4.2.第三実施形態の変形例]
別の実施形態では、光学積層体は、樹脂層(A)として、樹脂層310の代わりに紫外線吸収剤を含む樹脂層210を備えていてもよい。これにより、光学積層体から積層体(M)を剥離して、次いで樹脂層(A)の第二の面に更に導電層(E)を紫外線照射を含む方法により形成する際に、樹脂層(A)の第一の面に形成されている導電層(E)への影響を少なくできる。
【0078】
[4.3.第四実施形態]
本発明の第四実施形態に係る光学積層体は、樹脂層(A)及び積層体(M)と、更に導電層(E)とを含む。図4は、本発明の第四実施形態に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。光学積層体400は、樹脂層(A)としての樹脂層410と、導電層(E)としての導電層450と、積層体(M)としての積層体440とをこの順で備える。樹脂層410は、第一の面410U及び第二の面410Dを有する。導電層450は、樹脂層410の第二の面410Dに、直接して設けられている。積層体440は、接着層(B)としての接着層420と、樹脂層(C)としての樹脂層430とから構成されている。接着層420は、樹脂層430に直接して設けられている。樹脂層430と導電層450との間に接着層420が配置されるように、積層体440が配置されている。したがって、樹脂層430と樹脂層410との間に、接着層420及び導電層450が配置されている。
樹脂層410は、厚みtaを有する。樹脂層430は、厚みtcを有する。
光学積層体400は、前記条件(1)~(3)を満たす。
光学積層体400は、高温下に置かれた場合のカール量が少ない。したがって、光学積層体400を、高温下で精度よく加工しうることが期待できる。
光学積層体400が備える樹脂層410、接着層420、及び樹脂層430は、樹脂層10、接着層20、及び樹脂層30と、それぞれ同様の構成を有するので、説明を省略する。また、導電層450は、導電層350と同様の構成を有するので説明を省略する。
【0079】
[4.4.第四実施形態の変形例]
別の実施形態では、光学積層体は、樹脂層(A)として、樹脂層410の代わりに紫外線吸収剤を含む樹脂層210を備えていてもよい。これにより、光学積層体から積層体(M)を剥離して、次いで樹脂層(A)の第一の面に更に導電層(E)を紫外線照射を含む方法により形成する際に、樹脂層(A)の第二の面に形成されている導電層(E)への影響を少なくできる。
【0080】
[5.光学積層体の製造方法]
前記光学積層体は、任意の方法で製造されうる。
例えば、光学積層体は、下記工程(1)~(4)を含む方法により製造されうる。前記光学積層体の製造方法は、下記工程(1)~(4)に加えて、任意の工程を含みうる。
【0081】
[5.1.工程(1)]
工程(1)では、長尺の前記樹脂層(C)を用意する。工程(1)は、通常工程(2)の前に行われる。工程(1)は、工程(3)と同時に行ってもよい。
樹脂層(C)として、市販品を用いてもよい。また、前記樹脂(c1)をフィルム状に溶融押出し、これを冷却ドラムなどの冷却装置により冷却することにより、長尺の樹脂層(C)を製造してもよい。樹脂層(C)の厚みは、溶融した樹脂(c1)の押出し量、フィルムの引き取り速度などを調整することにより、調整しうる。
工程(1)は、樹脂層(C)に、コロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施す工程を含みうる。
【0082】
[5.2.工程(2)]
工程(2)では、前記樹脂層(C)の一方の面上に、前記接着層(B)を形成し、前記樹脂層(C)と前記接着層(B)とからなる、長尺の前記積層体(M)を得る。
【0083】
樹脂層(C)の一方の面上に接着層(B)を形成する方法は、接着層(B)を形成するための接着剤の種類に応じて、任意の方法を採用しうる。
【0084】
工程(2)は、前記樹脂層(C)の一方の面上に前記接着剤を塗工する工程(2a)を含みうる。塗工の方法としては、任意の方法を採用しうる。塗工法の例としては、ワイヤーバーコート法、スプレー法、ロールコート法、グラビアコート法、ダイコート法、カーテンコート法、スライドコート法、及びエクストルージョンコート法が挙げられる。
【0085】
工程(2)は、更に、工程(2a)で得られた塗工層を乾燥する工程(2b)を含みうる。乾燥の方法は、減圧乾燥、加熱乾燥などの任意の方法としうる。
【0086】
接着剤として、紫外線などの光硬化型接着剤を用いた場合は、工程(2)は、更に工程(2a)又は工程(2b)で得られた塗工層に、光を照射する工程(2c)を含んでいてもよい。
接着剤として、熱硬化型接着剤を用いた場合は、工程(2)は、更に工程(2a)又は工程(2b)で得られた塗工層を加熱する工程を含んでいてもよい。
【0087】
[5.3.工程(3)]
工程(3)では、前記樹脂層(A)を用意する。樹脂層(A)として、市販品を用いてもよい。
【0088】
工程(3)は、前記樹脂(a1)を含む組成物を溶融押出して冷却し、長尺の押出フィルムを得る工程(3a)、及び、前記押出フィルムを加熱する工程(3b)をこの順で含みうる。
工程(3a)における溶融押出は、複数種の樹脂の共押出であってもよい。例えば、(樹脂(a1)の層)/(樹脂(a2)の層)/(樹脂(a1)の層)の層構成を有する押出フィルムが得られるように、樹脂(a1)及び樹脂(a2)の溶融共押出を行ってもよい。
【0089】
押出フィルムの厚みは、所望とする樹脂層(A)の厚みに応じて調整しうる。例えば、溶融押出における組成物の押出し量、押出フィルムの引き取り速度などの調整により、押出フィルムの厚みを調整しうる。
【0090】
工程(3a)の後に、押出フィルムを延伸する工程を行ってもよい。例えば、工程(3a)で得られた長尺の押出フィルムから、下記工程(3e1)、(3e2)、(3b)、及び(3c)を含む工程により、樹脂層(A)を製造しうる。
工程(3e1):押出フィルムを予熱する工程
工程(3e2):予熱された押出フィルムを延伸する工程
工程(3b):押出フィルムを加熱する工程
工程(3c):加熱された押出フィルムを冷却して樹脂層(A)を得る工程
【0091】
工程(3e1)、(3e2)、(3b)、及び(3c)は、通常この順で行われる。
【0092】
工程(3e2)における延伸の方向は、特に制限されず、例えば、長手方向、幅方向、斜め方向などが挙げられる。延伸の方向は、一方向であってもよく、二以上の方向であってもよい。延伸倍率は、好ましくは1.1倍以上、より好ましくは1.2倍以上であり、好ましくは10.0倍以下、より好ましくは5.0倍以下、更に好ましくは2.0倍以下である。
【0093】
工程(3)が、工程(3b)を含むことにより、押出フィルムに含まれる結晶性重合体の結晶化が促進される。そのため、樹脂層(A)の耐熱性を向上させうる。
【0094】
工程(3b)における加熱温度は、通常、押出フィルムに含まれうる結晶性重合体の、ガラス転移温度Tg以上融点Tm以下の範囲としうる。
【0095】
工程(3e2)における予熱温度T1、工程(3e2)における延伸温度T2、工程(3b)における加熱温度T3は、下記の関係を満たすことが好ましい。
T1<T2<T3
【0096】
[5.4.工程(4)]
工程(4)では、前記積層体(M)と前記樹脂層(A)とを積層して、長尺の光学積層体を得る。
工程(4)は、通常工程(1)~(3)の後に行われる.積層は、樹脂層(A)と、積層体(M)が備える樹脂層(C)との間に、接着層(B)が配置されるように行われる。
積層は、いわゆるロール・トゥ・ロール方式により行ってよい。積層は、積層体(M)と樹脂層(A)とをニップロールなどで圧することにより行いうる。積層の際に熱を加えてもよい。
【0097】
[5.5.任意の工程]
本実施形態の光学積層体の製造方法は、前記工程(1)~(4)に加えて、更に任意の工程を含みうる。かかる任意の工程の例としては、光学積層体に含まれる樹脂層(A)の表面に、導電層(E)を形成する工程、光学積層体を搬送する工程、光学積層体を巻き取って光学積層体の巻回体を得る工程が挙げられる。
【0098】
[6.光学積層体の用途]
前記光学積層体は、任意の光学装置の構成要素として用いうる。光学積層体は、高温下に置かれた場合のカール量が少ない。したがって、形成工程が高温下で行われる光学要素(例えば、タッチパネルに含まれる導電層)を製造するための基材として、光学積層体を好適に用いうる。
【実施例
【0099】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0100】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0101】
[評価方法]
(重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnの測定方法)
重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnは、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC-8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0102】
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、145℃で、H-NMR測定により測定した。
【0103】
(ガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmの測定は、以下のようにして行った。まず、重合体を、加熱によって融解させ、融解した重合体をドライアイスで急冷した。続いて、この重合体を試験体として用いて、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度(昇温モード)で、重合体のガラス転移温度Tg及び融点Tmを測定した。
【0104】
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法)
重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定は以下のようにして行った。オルトジクロロベンゼン-dを溶媒として、200℃で、inverse-gated decoupling法を適用して、重合体の13C-NMR測定を行った。この13C-NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン-dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0105】
(フィルムの熱寸法変化率の測定方法)
23℃(室温)の環境下で、フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとした。正方形の各辺は、フィルムの搬送方向(すなわち、長尺のフィルムの長手方向)又は幅方向に沿うようにした。この試料フィルムを、145℃のオーブン内で1時間加熱し、23℃(室温)まで冷却した後、試料フィルムの四辺の長さを測定した。
【0106】
測定された四辺それぞれの長さを基に、下記式(I)に基づいて、試料フィルムの熱寸法変化率を算出した。式(I)において、Lは、加熱前の試料フィルムの辺の長さを示し、本測定においてLは150mmであり、Lは、加熱後の試料フィルムの辺の長さを示す。
熱寸法変化率(%)=[(L-L)/L]×100 (I)
熱寸法変化率の符号が正の場合は、加熱によりフィルムが収縮することを示し、熱寸法変化率の符号が負の場合は、加熱によりフィルムが伸長することを示す。
【0107】
そして、フィルムの搬送方向(すなわち、長尺のフィルムの長手方向)に沿った2辺の熱寸法変化率の平均値を、フィルムの搬送方向(MD)の熱寸法変化率、すなわち長尺のフィルムの長手方向における熱寸法変化率として採用した。また、フィルムの幅方向に沿った2辺の熱寸法変化率の平均値を、長尺のフィルムの幅方向(TD)における熱寸法変化率として採用した。
【0108】
(フィルムの厚みの測定方法)
フィルムの厚みは、接触式厚さ計(MITUTOYO社製、Code No.543-390)を用いて測定した。
【0109】
(フィルムの結晶化度の測定方法)
ヘリウムガス置換型の乾式自動密度計「AccuPyc 1340」(Micromeritics社製)を用いてサンプルフィルムの密度を測定した。サンプルフィルム約3gを幅30mm以下の短冊状に切り、丸めて10cmの容器に入れ、25℃に維持して測定した。10回の繰り返し測定から密度を決定した。
【0110】
結晶化度x(%)を次式によって計算した。
x=(1/Da-1/D)/(1/Da-1/Dc)×100
前記式において、xは結晶化度を表す。D(g/cm)は、決定されたサンプルフィルムの密度を表す。Daはサンプルフィルムを形成する重合体の完全非晶密度(g/cm)を示す。Dbは、サンプルフィルムを形成する重合体の完全結晶密度(g/cm)を示す。
【0111】
完全非晶密度Daとして、下記の値を用いた。
・製造例1で製造されたジシクロペンタジエン重合体水素化物(COP)の完全非晶密度Da=1.0157g/cm
・ポリエチレンテレフタレート(PET)の完全非晶密度Da=1.335g/cm
【0112】
完全結晶密度Dcとしては、下記の値を用いた。
・製造例1で製造されたジシクロペンタジエン重合体水素化物(COP)の完全結晶密度Dc=1.0857g/cm
・PETの完全結晶密度Dc=1.455g/cm
【0113】
(カール量の測定方法)
23℃(室温)の環境下で、フィルムを150mm×150mmの大きさの正方形に切り出し、試料フィルムとした。正方形の各辺は、フィルムの搬送方向(すなわち、長尺のフィルムの長手方向)又は幅方向に沿うようにした。この試料フィルムを、145℃のオーブン内で1時間加熱し、23℃(室温)まで冷却した。机の上に載せた試料フィルムの四角が机から浮き上がっている量(カール量)を定規で測定し、四角の平均値を試料フィルムのカール量とした。試料フィルムのカール量を、以下の基準により評価した。
最良:5mm以下
良:5mmより大きく10mm未満
不良:10mm以上
【0114】
(紫外線によるパターニング加工における光学積層体の耐久性)
国際公開第2018/168325号の実施例1を参考にして、得られた光学積層体の樹脂層(A)の表面に、メッシュ状の導電層を形成した。
【0115】
(導電層(E1)の形成)
まず、光学積層体の樹脂層(A)の表面に、感光性導電ペースト(東レ株式会社製「RAYBRID」)をスクリーン印刷法により印刷し、100℃で10分間乾燥させて、感光性導電ペーストの層(E’1)/樹脂層(A)/接着層(B)/樹脂層(C)の層構成を有する積層体1を得た。
積層体1が備える感光性導電ペーストの層(E’1)に、メッシュ状のパターンを有する露光マスクを介して、層(E’1)の側から露光装置を用いて紫外線を照射した。
次いで、0.2重量%炭酸ナトリウム水溶液に積層体を浸漬し、次いで超純水で洗浄し、145℃で30分間乾燥させて、光学積層体の樹脂層(A)の一方の面上に、パターン状の導電層を形成し、パターン状の導電層(E1)/樹脂層(A)/接着層(B)/樹脂層(C)の層構成を有する光学積層体(D2)を得た。
【0116】
次いで、光学積層体(D2)から、接着層(B)及び樹脂層(C)からなる積層体(M)を剥離し、パターン状の導電層(E1)/樹脂層(A)の層構成を有する積層体2を得た。
【0117】
(導電層(E2)の形成)
次いで、積層体2の樹脂層(A)の表面に、積層体1の作製で用いた感光性導電ペーストと同じペーストを、スクリーン印刷法により印刷し、100℃で10分間乾燥させて、感光性導電ペーストの層(E’2)/樹脂層(A)/パターン状の導電層(E1)の層構成を有する積層体3を得た。
積層体3が備える感光性導電ペーストの層(E’2)に、メッシュ状のパターンを有する露光マスクを介して、層(E’2)の側から露光装置を用いて紫外線を照射した。
次いで、0.2重量%炭酸ナトリウム水溶液に積層体を浸漬し、次いで超純水で洗浄し、145℃で30分間乾燥させて、積層体2の樹脂層(A)の他方の面上に、パターン状の導電層(E2)を形成し、パターン状の導電層(E1)/樹脂層(A)/パターン状の導電層(E2)の層構成を有する積層体4を得た。
【0118】
以上の操作において、下記基準により、パターニング加工における光学積層体(D1)の耐久性について評価した。
A:光学積層体(D1)にしわが生じることなく、良好にパターン状の導電層(E1)が形成された。かつ、導電層(E1)を変化させずに、良好にパターン状の導電層(E2)が形成された。
B:光学積層体(D1)にしわが生じることなく、パターン状の導電層(E1)が形成されたが、パターン状の導電層(E2)を形成する際に、導電層(E1)が変化した。
C: パターン状の導電層(E1)の形成工程において、光学積層体(D1)にしわが生じたため、パターン状の導電層(E1)及びパターン状の導電層(E2)を形成できなかった。
評価A又はBの場合に、パターニング加工における光学積層体(D1)の耐久性が優れているといえる。
【0119】
[製造例1.結晶性樹脂(a1)の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1-ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0120】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解し、溶液を調製した。この溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n-ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750及び28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0121】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2-エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP-HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0122】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0123】
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは93℃、融点(Tm)は267℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0124】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合後、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出し機(製品名「TEM-37B」、東芝機械社製)に投入した。ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物及び酸化防止剤の混合物を、熱溶融押出し成形によりストランド状に成形した後、ストランドカッターにて細断して、樹脂(a1)としてのペレット形状の結晶性樹脂(COP1)を得た。前記の二軸押出し機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=270~280℃
・ダイ設定温度=250℃
・スクリュー回転数=145rpm
【0125】
[製造例2.樹脂(a2)の製造]
全長1848mm、直径44mmのスクリューを備える二軸押出機(東芝社製、スクリュー長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=42)を用意した。このスクリューは、当該スクリューの上流端部からの距離が685mm、920mm及び1190mmとなる位置に、合計3か所のニーディングゾーンを有していた。ここで、前記のスクリューの上流端部からニーディングゾーンの位置までの距離とは、スクリューの上流端部からニーディングゾーンの上流端部までの距離をいう。また、上流とは、樹脂の流れ方向における上流をいう。さらに、各ニーディングゾーンの長さLnxとスクリューの直径Dとの比Lnx/Dは、上流のニーディングゾーンから順に、Lnx/D=4、Lnx/D=2及びLnx/D=2であった。
【0126】
この二軸押出機に、上記製造例1で作製した樹脂(a1)としての結晶性樹脂(COP1)を100部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA-31」、分子量659)9部とを投入し、混練して、結晶性樹脂(COP1)に対する紫外線吸収剤の割合が9.0%である、樹脂(a2)としての結晶性樹脂(COP2)を得た。
【0127】
[実施例1]
(1-1.工程(1):樹脂(c1)から樹脂層(C)を得る工程)
樹脂(c1)としての、脂環式構造含有重合体を含む非晶性樹脂(ゼオネックス790R、Tg=163℃;日本ゼオン社製)を準備し、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機を用いて成形し、およそ幅1350mmの長尺の樹脂層(C)としての樹脂フィルム(厚み188μm)を得た。前記のフィルム成形機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=270℃~290℃
・ダイ温度=270℃
・キャストロール温度=150℃
樹脂フィルムを巻き取ってロールの形態とした。
【0128】
(1-2.工程(2):積層体(M)を得る工程)
(1-2-1.工程(2a):樹脂層(C)に接着剤を塗工する工程)
(1-1)で作製した非晶性樹脂からなる樹脂層(C)のロールから樹脂層(C)を引き出して、コロナ処理装置(春日電機社製)を用いて、出力500W、電極長1.35m、搬送速度10m/minの条件で片面に放電処理(コロナ処理)を施した。この放電処理を施した樹脂層(C)の表面に、接着剤としてのアクリル系粘着剤(藤森工業製「マスタックシリーズ」)を、乾燥膜厚が10μmになるようにダイコーターを用いて塗工して、樹脂層(C)の一方の面上に粘着剤の塗工層が形成された塗工フィルムを製造した。
【0129】
(1-2-3.工程(2b):塗工層を乾燥する工程)
その後、塗工フィルムを、100℃の乾燥オーブン中を通過させ、(非晶性である樹脂(c1)からなる樹脂層(C))/(接着層(B))の層構成を有する、積層体(M)としての長尺の2層フィルムを作製した。積層体(M)について、熱寸法変化率を前記の方法により測定した。
【0130】
(1-3.工程(3):樹脂層(A)を用意する工程)
(1-3-1.工程(3a))
製造例1で製造した、結晶性樹脂(COP1)を、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機を用いて成形し、およそ幅1350mmの長尺の押出フィルム(s)(厚み20μm)を得た。前記のフィルム成形機の運転条件は、以下の通りであった。
・バレル設定温度=280℃~300℃
・ダイ温度=270℃
・キャストロール温度=80℃
【0131】
(1-3-2.延伸及び加熱(結晶化)工程(3b))
(1-3-1)で作製した押出フィルム(s)を、テンター法を用いた横延伸機に供給し、引取り張力とテンターチェーン張力とを調整しながら、横方向に1.35倍に延伸した。押出フィルム(s)は、延伸前に温度120℃で予熱した。延伸温度は140℃とし、延伸後に温度160℃で加熱して、樹脂(COP1)の結晶化を促進した。加熱後、温度100℃でフィルムを冷却し、樹脂層(A)としての長尺のフィルムを製造した。樹脂層(A)について、前記の方法で厚み、熱寸法変化率及び結晶化度を測定した。
【0132】
(1-4.積層体(M)及び樹脂層(A)を積層する工程(4))
冷却後の、樹脂層(A)としてのフィルムの片面に、(1-2)で作製した積層体(M)をニップロールで貼合し、樹脂層(C)/接着層(B)/樹脂層(A)の層構成を有する、長尺の光学積層体(D1)を作製した。光学積層体(D1)について、前記の方法により熱寸法変化率を測定した。光学積層体(D1)について、前記の方法でカール量を測定した。また、前記の方法で、紫外線によりパターニング加工における光学積層体(D1)の耐久性を評価した。
【0133】
(1-5.導電層(E)の形成工程)
光学積層体(D1)が有する樹脂層(A)の、露出している表面に、前記の方法で導電層(E)を形成して、光学積層体(D2)を得た。
【0134】
[実施例2、3]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0135】
[実施例4]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルム(s)の厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0136】
[実施例5]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・樹脂層(A)として、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(コスモシャインE5100;東洋紡社製)を、アニール装置(IN-1700;株式会社ラボ製)を用いて、170℃、9.8Nでアニール処理したフィルムを用いた。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0137】
[実施例6]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))を行わず、(1-2.工程(2a))において、樹脂層(C)として、ポリイミド(PI)フィルム(カプトン500V;東レデュポン社製、ガラス転移温度Tg=300℃、厚み125μm)を用いた。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルム(s)の厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0138】
[実施例7]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))を行わず、(1-2.工程(2a))において、樹脂層(C)として、ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム(テオネックスQ51;帝人社製、ガラス転移温度Tg=121℃、厚み188μm)を用いた。
・工程(1-2-3.工程(2b))において、アニール装置(IN-1700;株式会社ラボ製)を用いて、170℃、9.8Nでアニール処理して積層体(M)を作製した。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルム(s)の厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0139】
[実施例8]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(c1)として、脂環式構造含有重合体を含む非晶性樹脂(ゼオネックスT62R、Tg=154℃;日本ゼオン社製)を用いた。
・(1-1.工程(1))におけるフィルム成形機の運転条件を、下記のとおりに変更した。
・バレル設定温度=265℃~285℃
・ダイ温度=265℃
・キャストロール温度=144℃
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルム(s)の厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0140】
[実施例9]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
・(1-3-1.工程(3a))の代わりに、下記工程を行って、押出フィルム(m1)を得て、(1-3-2.工程(3b))において、押出フィルム(s)の代わりに、押出フィルム(m1)を用いた。これにより、(樹脂(COP1)の層)/(樹脂(COP2)の層)/(樹脂(COP1)の層)の層構成を有する、複層構造を有する樹脂層(A)が得られた。樹脂(COP2)の層の両面には、樹脂(COP1)の層が直接している。ここで、樹脂層(COP1)の層が、樹脂層(A1)又は樹脂層(A3)に相当し、樹脂(COP2)の層が、樹脂層(A2)に相当する。
【0141】
(押出フィルム(m1)の製造)
目開き3μmのリーフディスク形状を有するポリマーフィルターを備える、ダブルフライト型単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=28)を用意した。この単軸押出機に製造例2で製造した、紫外線吸収剤を含む結晶性樹脂(COP2)を導入し、溶融させて、フィードブロックを介して単層ダイに供給した。
【0142】
他方、目開き3μmのリーフディスク形状を有するポリマーフィルターを備える単軸押出機(スクリューの直径D=50mm、スクリューの長さLとスクリューの直径Dとの比L/D=30)1台を用意した。この単軸押出機に、製造例1で製造した、樹脂(a1)としての結晶性樹脂(COP1)を導入し、溶解させて、フィードブロックを介して前記の単層ダイに供給した。
【0143】
その後、(樹脂(a1)の層)/(樹脂(a2)の層)/(樹脂(a1)の層)の層構成を有する、フィルム状である積層体として吐出されるように、樹脂(a1)としての結晶性樹脂(COP1)及び樹脂(a2)としての紫外線吸収剤を含む結晶性樹脂(COP2)を、260℃の溶融状態で単層ダイから吐出させて、共押出成形を行った。そして、吐出された積層体を、80℃に温度調整された冷却ロールにキャストし、複層構造を有する、長尺の押出フィルム(m1)を得た。
【0144】
[実施例10]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-3-1.工程(3a))の代わりに、実施例9の(押出フィルム(m1)の製造)と同様の操作を行って、押出フィルム(m1)を得た。
・(1-3-2.工程(3b))において、押出フィルム(s)の代わりに、押出フィルム(m1)を用いた。これにより、複層構造を有する樹脂層(A)が得られた。得られた樹脂層(A)の層構成は、実施例9で得られた樹脂層(A)と同様である。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0145】
[実施例11]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・実施例9の(押出フィルム(m1)の製造)において、下記の事項を変更して、押出フィルム(m2)を得た。
・押出フィルム(m2)の総厚みが42μmとなるように、冷却ロール速度を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、押出フィルム(s)の代わりに、前記の押出フィルム(m2)を用い、延伸倍率を1.2倍にした。これにより、複層構造を有する樹脂層(A)が得られた。得られた樹脂層(A)の層構成は、実施例9で得られた樹脂層(A)と同様である。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0146】
[比較例1]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
【0147】
[比較例2]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルムの厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0148】
[比較例3]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-1.工程(1))において、樹脂層(C)の厚みが、表に示す厚みとなるように、樹脂(c1)の押出量を調整した。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルムの厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0149】
[比較例4]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様に操作して、光学積層体(D1)及び光学積層体(D2)を得た。
・(1-2.工程(2a))において、樹脂層(C)として、PETフィルム(A4100;東洋紡社製、ガラス転移温度70℃、厚み125μm))を用いた。
・工程(1-2-3.工程(2b))において、アニール装置(IN-1700;株式会社ラボ製)を用いて、170℃、9.8Nでアニール処理して積層体(M)を作製した。
・(1-3-1.工程(3a))において、押出フィルムの厚みが42μmとなるように、結晶性樹脂(COP1)の押出し量を調整した。
・(1-3-2.工程(3b))において、延伸倍率を1.2倍とした。
【0150】
各層の構成及び光学積層体(D1)の評価結果について、下表に示す。
下表における略号は、下記の意味を表す。
「COP1」:押出フィルム(s)から製造された単層構造を有する樹脂(COP1)のフィルム
「COP1/COP2/COP1」:押出フィルム(m1)又は押出フィルム(m2)から製造された、(樹脂(COP1)の層)/(樹脂(COP2)の層)/(樹脂(COP1)の層)の層構成を有するフィルム
「PET(E5100)」:ポリエチレンテレフタレートフィルム(コスモシャインE5100;東洋紡社製)
「PET(A4100)」:ポリエチレンテレフタレートフィルム(A4100;東洋紡社製)
「PI」:ポリイミドフィルム(カプトン500V;東レデュポン社製)
「PEN」:ポリエチレンナフタレートフィルム(テオネックスQ51;帝人社製)
「790R」:脂環式構造含有重合体を含む樹脂(ゼオネックス790R;日本ゼオン社製)のフィルム
「T62R」:脂環式構造含有重合体を含む樹脂(ゼオネックスT62R;日本ゼオン社製)のフィルム
「acAD」:アクリル系粘着剤(藤森工業製「マスタックシリーズ」)の層
「Tgc」:樹脂層(C)を構成する樹脂(c1)のガラス転移温度
「MDa」:樹脂層(A)の搬送方向(長手方向)における熱寸法変化率
「TDa」:樹脂層(A)の幅方向における熱寸法変化率
「MDbc」:積層体(M)の搬送方向(長手方向)における熱寸法変化率
「TDbc」:積層体(M)のの幅方向における熱寸法変化率
「MDd」:光学積層体(D1)の搬送方向(長手方向)における熱寸法変化率
「TDd」:光学積層体(D1)の幅方向における熱寸法変化率
「ta」:樹脂層(A)の厚み
「tb」:接着層(B)の厚み
「tc」:樹脂層(C)の厚み
「Ca」:樹脂層(A)の結晶化度(%)
「Tm」:樹脂層(A)を構成する樹脂の融点
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
以上の結果から、以下の事項が分かる。
条件式(1)~式(3)をすべて満たす、実施例に係る光学積層体(D1)は、カール量の評価が良好であった。また、光学積層体(D1)にしわが生じることなく、良好にパターン状の導電層(E1)が形成された。
また、条件式(1)~(3)に加えて条件式(4)を満たす、実施例1~11に係る光学積層体(D1)は、MDa及びTDaが0.15%より大きな樹脂層(A)を備えていても、カール量の評価が良好であることが分かる。
さらに、樹脂層(A)に含まれる樹脂及び樹脂層(C)を形成する樹脂の両方が、脂環式構造含有重合体を含む、実施例1~4、実施例9~11に係る光学積層体(D1)は、カール量の評価が最良であることが分かる。
さらに、樹脂層(A)が、(樹脂(COP1)の層)/(樹脂(COP2)の層)/(樹脂(COP1)の層)の層構成を有する実施例9~11に係る光学積層体(D1)は、パターン状の導電層(E1)を良好に形成できることに加えて、導電層(E1)に影響を及ぼさずにパターン状の導電層(E2)を樹脂層(A)上に形成できることが分かる。したがって、実施例9~11に係る光学積層体(D1)は、樹脂層(A)の両面に導電層が形成されている導電フィルムの製造に特に好適であることが分かる。
【0155】
一方、条件式(1)~式(3)のいずれかを満たさない、比較例に係る光学積層体(D1)は、カール量の評価が不良であり、光学積層体(D1)にしわが生じたため、パターン状の導電層(E1)を形成できないことが分かる。
【0156】
以上の結果は、本発明の光学積層体は、145℃といった高温下に置かれた場合のカール量が少ないことを示す。したがって、本発明の光学積層体を、高温下で精度よく加工しうることが期待できる。
【符号の説明】
【0157】
10 樹脂層(樹脂層(A))
10U 第一の面
10D 第二の面
20 接着層(接着層(B))
30 樹脂層(樹脂層(C))
40 積層体(積層体(M))
100 光学積層体
200 光学積層体
210 樹脂層(樹脂層(A))
210U 第一の面
210D 第二の面
211 樹脂層(樹脂層(A1))
212 樹脂層(樹脂層(A2))
212U 第一の面
212D 第二の面
213 樹脂層(樹脂層(A3))
220 接着層(接着層(B))
230 樹脂層(樹脂層(C))
240 積層体(積層体(M))
300 光学積層体
310 樹脂層(樹脂層(A))
310U 第一の面
310D 第二の面
320 接着層(接着層(B))
330 樹脂層(樹脂層(C))
340 積層体(積層体(M))
350 導電層(導電層(E))
400 光学積層体
410 樹脂層(樹脂層(A))
410U 第一の面
410D 第二の面
420 接着層(接着層(B))
430 樹脂層(樹脂層(C))
440 積層体(積層体(M))
450 導電層(導電層(E))
図1
図2
図3
図4