(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】一液型クロロプレン重合体組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 13/00 20060101AFI20241016BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20241016BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20241016BHJP
C08K 5/05 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C08L13/00
C08L91/00
C08K3/22
C08K5/05
(21)【出願番号】P 2020207300
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】服部 晃幸
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-309586(JP,A)
【文献】特開平09-255928(JP,A)
【文献】特開2002-121517(JP,A)
【文献】特開平08-027447(JP,A)
【文献】特開平06-172730(JP,A)
【文献】特開平10-237404(JP,A)
【文献】特開平01-301776(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基0.005~1重量%を含有するクロロプレン重合体100重量部に対して、石油樹脂1~100重量部、アルコール5~20重量部、有機溶剤200~1000重量部並びに、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上の金属化合物0.5~15重量部を含むことを特徴とする
ホルムアルデヒドフリー一液型クロロプレン重合体組成物。
【請求項2】
前記石油樹脂が、軟化点が60~140℃、重量平均分子量が300~5000の芳香族系石油樹脂又は芳香族/脂肪族共重合石油樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の
ホルムアルデヒドフリー一液型クロロプレン重合体組成物。
【請求項3】
前記金属化合物が、酸化マグネシウム及び/または酸化亜鉛であることを特徴とする請求項1又は2に記載の
ホルムアルデヒドフリー一液型クロロプレン重合体組成物。
【請求項4】
前記アルコールが、イソプロパノール及び/または1-ブタノールであることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の
ホルムアルデヒドフリー一液型クロロプレン重合体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基を含有するクロロプレン重合体、石油樹脂、アルコール、有機溶剤及び金属化合物を含む一液型クロロプレン重合体組成物に関するものであり、更に詳しくは、耐熱性とコンタクト性保持時間の両立を可能とし、特に接着用として優れた特性とホルムアルデヒドフリー性を有する一液型クロロプレン重合体組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
溶剤型クロロプレン重合体は、その優れた初期接着性や接着強度、幅広い被着体への接着性、耐薬品性、耐老化性により多くの工業分野、例えば製靴、木工、建築、自動車、家電などで使用され、工業的に幅広く実用化が進んでいる。その一方で、一般的なクロロプレン接着剤は、クロロプレンゴムの除晶による60℃以上での分子間の凝集力低下による耐熱性に課題を有するものであった。
【0003】
その対策として、イソシアネートの常温架橋を利用することで耐熱性を高める方法が知られている。本法はイソシアネートとクロロプレンゴムの架橋反応が非常に速いため、接着剤の塗工直前にイソシアネートを添加し塗工する二液型となる。二液型は接着可能時間が短時間となることから、その普及は限定されている。
【0004】
一方、一液型としては、アルキルフェノール樹脂と金属酸化物を配合することにより、耐熱性のキレート化合物(分解温度250℃以上)を形成し、クロロプレンゴムの凝集力低下を補完するものが知られている。一液型の耐熱性クロロプレン重合体組成物として、クロロプレンゴム、アルキルフェノール樹脂、酸化マグネシウム,酸化亜鉛に代表される金属酸化物を含む組成物が提案されている(例えば特許文献1参照)。しかし、特許文献1に提案の組成物は、アルキルフェノール樹脂からホルムアルデヒドが徐々に放散されるという環境上の課題を有するものであり、アルキルフェノール樹脂を用いない、環境対応型のホルムアルデヒドフリーの一液型クロロプレン重合体が求められている。
【0005】
そこで、アルキルフェノール樹脂の代替として不飽和多塩基酸やその無水物により変性した石油樹脂を用いる方法(例えば特許文献2参照)、軟化点145℃以上の石油樹脂を用いる方法(例えば特許文献3参照)、等が提案されている。
【0006】
更に、工業的に使用する溶剤型クロロプレン重合体には、接着剤のコンタクト性(被着体に接着剤を塗布、乾燥した後、被着体を軽く貼り合わせるだけで瞬時に高い接着強度を発現する性質であり、自着生と称する場合もある)及びコンタクト性保持時間に優れることが要求される。特にコンタクト性保持時間が長い場合は、被着体表面に接着剤を塗布した後の乾燥時間(オープンタイム)を長くすることができ、作業性が極めて向上する。また、実際の施工時にはオープンタイムの長短により接着強度のバラツキを抑えることができ、製品品質面で極めて有利となる。
【0007】
上述したアルキルフェノール樹脂を用いる一液型のクロロプレン重合体は、ホルムアルデヒド以外に、このコンタクト性保持時間が短いという課題を有するものであった。
【0008】
また、クロロプレン重合体組成物としては、クロロプレン重合体100重量部、粘着付与樹脂10~200重量部、金属酸化物又は金属水酸化物1~15重量部、及び有機溶媒からなるクロロプレン重合体組成物(例えば特許文献4参照)、クロロプレンゴムラテックス、粘着付与樹脂エマルジョン及び金属酸化物エマルジョンからなるクロロプレンゴムラテックス接着剤組成物(例えば特許文献5参照)、等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特公昭54-7820号
【文献】特開昭49-128035号公報
【文献】特公昭56-39355号
【文献】特開平10-212465号公報
【文献】特開平10-237404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、特許文献2,3に提案の一液型組成物については、いずれも実用レベルの耐熱性という点で課題を有するものであった。また、特許文献4に提案の組成物はチキソトロピー性に優れるものであり、接着剤としての接着性、コンタクト性、コンタクト性保持時間に課題を有する場合のあるものであり、特許文献5に提案の組成物は、ラテックス、つまりエマルションであることを特徴とするものであり取扱い性には優れるものではあるが、接着性、耐熱性に課題を有する場合のあるものであった。
【0011】
そこで、本発明は、ホルムアルデヒドを放散するアルキルフェノール樹脂を用いることなく、実用レベルの耐熱性とコンタクト性保持時間を両立する一液型クロロプレン重合体組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、これらの課題を解決しうるべく鋭意研究の結果、特定のクロロプレン重合体、石油樹脂、アルコール、有機溶剤及び、特定の金属化合物を含む一液型クロロプレン重合体組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
即ち、本発明は、カルボキシル基0.005~1重量%を含有するクロロプレン重合体100重量部に対して、石油樹脂1~100重量部、アルコール5~20重量部、有機溶剤200~1000重量部並びに、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上の金属化合物0.5~15重量部を含むことを特徴とする一液型クロロプレン重合体組成物に関するものである。
【0014】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物は、カルボキシル基を含有するクロロプレン重合体、石油樹脂、アルコール、有機溶剤及び金属化合物を含むことにより、ホルムアルデヒドフリーで、実用レベルの耐熱性とコンタクト性保持時間の両立を可能とするものである。
【0016】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物を構成するカルボキシル基を含有するクロロプレン重合体(以下、カルボキシ変性CRと記す場合がある)は、分子中に一般式-COOHで表されるカルボキシル基を含有するクロロプレン重合体であり、カルボキシル基を0.005~1重量%含有するものである。ここで、カルボキシル基が0.005重量%未満である場合、得られる組成物は接着性に劣るものとなる。一方、1重量%を越える場合、得られる組成物は、その安定性が低下するものとなる。
【0017】
該カルボキシ変性CRとしては、カルボキシル基0.005~1重量%を含有するクロロプレン重合体であれば特に制限されず、例えば、クロロプレン単量体と、カルボキシル基含有ビニル単量体とを重合する方法や、クロロプレン単量体と、カルボキシル基含有ビニル単量体とを、必要に応じてその他の共重合可能なエチレン性不飽和単量体と共に重合する方法により製造することができる。その際のカルボキシル基含有ビニル単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、2-メタクリロイロキシエチルコハク酸、2-メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、フマル酸、無水マレイン酸、クロトン酸などの不飽和脂肪酸などを挙げることができ、これらの中でも、クロロプレン単量体との共重合性に優れることから、メタクリル酸であることが好ましい。
【0018】
該カルボキシ変性CRは、市販品であってもよく、例えば、東ソー(株)社製のスカイプレン(登録商標)510(カルボン酸基含有量0.2重量%)、スカイプレン(登録商標)510L(カルボン酸基含有量0.2重量%)、スカイプレン(登録商標)570(カルボン酸基含有量0.2重量%)、スカイプレン(登録商標)580(カルボン酸基含有量0.1重量%)、スカイプレン(登録商標)580L(カルボン酸基含有量0.1重量%)などが挙げられる。これらの中でも、耐熱性や初期強度に優れる点から、スカイプレン(登録商標)570(カルボン酸基含有量0.2重量%)が好ましい。また、該カルボキシ変性CRは、カルボキシル基を含有するクロロプレン重合体と単なるクロロプレン重合体との混合物であってもよく、その際のクロロプレン重合体としては、例えば、東ソー(株)社製のスカイプレン(登録商標)Y-30S、スカイプレン(登録商標)G-40S、スカイプレン(登録商標)G-40Tなどを挙げることができる。
【0019】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物を構成する石油樹脂としては、石油樹脂の範疇に属するものであればよく、中でも特に耐熱性とコンタクト性保持時間のバランスに優れる一液型クロロプレン重合体組成物となることから、軟化点60~140℃を有するものが好ましく、特に70~120℃であるものが好ましい。また、重量平均分子量(以下、Mwと記すこともある)が、300~5000のものであることが好ましく、特に500~4000のものが好ましい。また、石油樹脂としては、脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合石油樹脂を挙げることができ、中でも芳香族系石油樹脂、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂であることが好ましい。
【0020】
芳香族系石油樹脂としては、その原料油として石油類の熱分解により得られる分解油のうち沸点範囲が140~280℃の範囲にあるC9留分を、単独重合又は共重合して得られる樹脂を挙げることができ、脂肪族/芳香族共重合系石油樹脂としては、その原料として石油類の熱分解により得られる沸点範囲が20~110℃のC5留分と、前述のC9留分とを共重合して得られる樹脂を挙げることができる。その際のC5留分を構成する成分としては、例えば、2-メチル-1-ブテン、2-メチル-2-ブテン、1-ペンテン、2-ペンテン、シクロペンテンなどの炭素数4~6のモノオレフィン性不飽和炭化水素類;イソプレン、ピペリレン等の炭素数4~6の直鎖状ジエン類;シクロペンタジエン、メチルシクロペンタジエンなどのシクロペンタジエン類;シクロペンタン、2-メチルペンタン、3-メチルペンタン、n-ヘキサンなどの脂肪族系飽和炭化水素類などが挙げられる。また、C9留分を構成する成分としては、例えば、スチレン、そのアルキル誘導体であるα-メチルスチレンやβ-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン及びそのアルキル誘導体などの炭素数8~10のビニル芳香族炭化水素類、ジシクロペンタジエン及びその誘導体などの環状不飽和炭化水素類、炭素数9以上の飽和芳香族類などが挙げられる。
【0021】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物における石油樹脂の配合量は、カルボキシ変性CR100重量部に対して、石油樹脂10~100重量部であり、中でも特に耐熱性とコンタクト性保持時間のバランスに優れる一液型クロロプレン重合体組成物となることから、20~60重量部、更には30~50重量部であることが好ましい。ここで、石油樹脂が10重量部未満である場合、得られる組成物はコンタクト性保持時間が短いものとなる。一方。100重量部を越えるものである場合、得られる組成物は、耐熱性に劣るものとなる。
【0022】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物を構成する金属化合物は、金属酸化物及び金属水酸化物からなる群より選択される1種以上の金属化合物であり、例えば酸化マグネシウム,酸化カルシウム,酸化カドミウム,酸化鉛,酸化亜鉛,二酸化チタン等の金属酸化物、水酸化マグネシウム,水酸化カルシウム等の金属水酸化物を挙げることができ、その中でも特に耐熱性とコンタクト性保持時間のバランスに優れる一液型クロロプレン重合体組成物となることから、酸化マグネシウム及び/又は酸化亜鉛であることが好ましい。
【0023】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物における金属化合物の配合量は、カルボキシ変性CR100重量部に対して、金属化合物0.5~15重量部である。ここで、金属化合物が0.5重量部未満である場合、得られる組成物は、コンタクト性保持時間の短いものとなる。一方、15重量部を越えるものである場合、得られる組成物は粘度が極めて高いものとなり取扱い性に劣るものとなる。
【0024】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物を構成するアルコールは、クロロプレン重合体組成物の経時的な粘度上昇を抑制し、ポットライフの延長を可能とするものであり、アルコールとの範疇に属するものであればよく、例えば、イソプロパノール、1-プロパノール、イソブタノール、1-ブタノールなどを例示することができ、中でも特にポットライフの延長に優れるものとなることからイソプロパノールが好ましい。
【0025】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物におけるアルコールの配合量としては、クロロプレン重合体組成物の粘度上昇の抑制効果に優れることからカルボキシ変性CR100重量部に対して、5~20質量部である。ここで、アルコールが5重量部未満である場合、得られる組成物は粘度が極めて高く取扱い性に劣るものとなる。一方、20重量部を越える場合、石油樹脂等の析出がみられ、一液型組成物とすることが困難となる場合がある。
【0026】
また、本発明の一液型クロロプレン重合体組成物は、一液型組成物であることから該アルコール以外に有機溶媒を含むものである。該有機溶媒としてはカルボキシ変性CR、石油樹脂等を溶解するものであればよく、炭化水素類、塩素化炭化水素類、ケトン類、エステル類などを挙げることができ、その具体例として、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、石油ベンジン、ガソリン、石油スピリット等の炭化水素類;塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1,1-トリクロロエタン、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン等のケトン類;ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸-n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸-n-ブチル等のエステル類などを挙げることができる。そして、有機溶媒の配合量は、カルボキシ変性CR100重量部に対して、200~1000重量部である。ここで、有機溶媒が200重量部未満又は1000重量部を越えるものである場合、得られる組成物は適度な粘度を有するものではなく、取扱い性に劣るものとなる。
【0027】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物の調製法としては、その調製が可能であれば如何なる方法をも用いることが可能であり、例えばアルコールと石油樹脂、金属化合物とを混合した溶液を作り、その中にカルボキシ変性CRを溶解させる方法;アルコールとカルボキシ変性CRおよび石油樹脂、金属化合物を一度に溶解させる方法、等を挙げることができ、いずれの方法をも使用できる。
【0028】
本発明の一液型クロロプレン重合体組成物は、ホルムアルデヒドフリーで、耐熱性とコンタクト性保持時間に優れる接着性組成物として優れるものであり、接着剤、特に耐熱性接着剤として適用できるものである。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、接着剤として適した耐熱性およびコンタクト性保持時間を両立するとともに、ホルムアルデヒドを放散しない一液型クロロプレン重合体組成物を提供することができる。
【実施例】
【0030】
以下に、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0031】
原料として以下のものを用いた。
(1)脂肪族/芳香族共重合石油樹脂:(商品名)ペトロタック100V(東ソー(株)製)。
(2)芳香族共重合石油樹脂:(商品名)ペトコールLX(東ソー(株)製)。
(3)アルキルフェノール樹脂:(商品名)タマノル521(荒川化学工業(株)製)。
(4)カルボキシ変性CR:スカイプレン(登録商標)570(東ソー(株)製)(カルボキシル基含有量0.2重量%)。
(5)クロロプレン重合体:スカイプレン(登録商標)G-40S(東ソー(株)製)。
(6)MgO:(商品名)キョーワマグ150(協和化学工業(株)製)。
(7)ZnO:堺化学工業(株)製。
【0032】
以下に、分析・評価方法を示す。
【0033】
(a)石油樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定
ポリスチレンを標準物質とし、JIS K-0124(1994年)に準拠してゲル浸透クロマトグラフィーにより測定した。測定結果を表1に示す。
【0034】
(b)石油樹脂の軟化点の測定
JIS K-2531(1960)(環球法)に準拠した方法で測定した。評価結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
(c)接着試験片の作成
9号帆布2枚(150mm×60mm)それぞれの片面に、接着剤を刷毛で230g/m2塗布し、80℃にて5分間乾燥した。室温で30分放冷した後、再度接着剤を刷毛にて90g/m2塗布し、80℃にて5分乾燥する。次に、一定時間(オープンタイム、0~90分)、室温下放置した後、接着剤が塗布された帆布2枚をハンドローラーにより圧着した。最後に、150mm×25mmのサイズに切り出したものを測定用の試験片とした。
【0037】
(d)接着強度
試験片を常温(23℃)一定時間放置した後、ヘッド速度100mm/分でインストロン引張り試験機(東洋ボールドウィン製、(商品名)UTM-4-100)により常温と高温(80℃)のT字剥離接着力を測定した。貼合わせ20分後の剥離強度を初期強度、貼合せ5日後の剥離強度を常態強度、80℃の剥離強度を耐熱強度とした。
【0038】
(e)コンタクト性保持時間
オープンタイム(被着体表面に接着剤を塗布した後の乾燥時間)0分、30分、60分、90分として試験片を作成し、剥離強度を測定する。その際初期剥離強度が10N/25mm未満になった試験片の作成時の最も短いオープンタイムをコンタクト性保持時間とした。
【0039】
(f)ホルムアルデヒド放散速度評価
JISA1901「建築材料の揮発性有機化合物(VOC),ホルムアルデヒド及び他のカルボニル化合物放散測定方法-小形チャンバー法」に準拠した。
【0040】
実施例1
配合剤として原料と溶媒を表2に示す所定量を瓶に投入し、密栓したうえでボールミル架台にて室温下にて48時間回転・混合し、一液型クロロプレン重合体組成物を作製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表2に示す。
【0041】
実施例2
実施例1において、ペトロタック100VをペトコールLXにした以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表2に示す。
【0042】
実施例3
MgOを0重量部、ZnOを0.5重量部とした以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表2に示す。
【0043】
実施例4
MgOを12重量部、ZnOを3重量部にした以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表2に示す。
【0044】
実施例5,6
ペトロタック100Vの配合量を表2に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表2に示す。
【0045】
【0046】
実施例7~9
実施例2において、カルボキシル基含有クロロプレン重合体を市販のカルボキシ変性CR(スカイプレン(登録商標)570(東ソー(株)製))と市販のクロロプレン重合体(スカイプレン(登録商標)G-40S(東ソー(株)製))とのブレンド(表3に示す通り)とした以外は、実施例2と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表3に示す。
【0047】
実施例10,11
実施例1において、イソプロパノールの配合量を表3に示す通りとした以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表3に示す。
【0048】
実施例12
実施例1において、イソプロパノールを1-ブタノールに変更した以外は、実施例1と同様の方法により一液型クロロプレン重合体組成物を調製した。得られた一液型クロロプレン重合体組成物の評価結果を表3に示す。
【0049】
【0050】
比較例1
石油樹脂ペトロタック100Vの代わりにレゾール型のアルキルフェノール樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の評価結果を表4に示す。
【0051】
レゾール型のアルキルフェノール樹脂を使用した場合はコンタクト性保持時間が短く、ホルムアルデヒドの放散が観測された。
【0052】
比較例2
石油樹脂ペトロタック100Vを用いなかった以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の評価結果を表4に示す。
【0053】
得られたクロロプレン重合体組成物は、接着強度が大幅に低下し、実用レベルに達しなかった。
【0054】
比較例3
石油樹脂ペトロタック100Vの配合量を110重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の評価結果を表4に示す。
【0055】
得られたクロロプレン重合体組成物は、接着強度が低下し、実用レベルに達しなかった。
【0056】
比較例4
イソプロパノールを用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の調製後の粘度は100000mPa・s以上となり、塗布ができないため試験片が作成できず、評価を行わなかった。
【0057】
比較例5
イソプロパノールの配合量を30重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の調製後の粘度は100000mPa・s以上となり、塗布ができないため試験片が作成できず、評価を行わなかった。
【0058】
比較例6
MgOとZnOを用いなかったこと以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の評価結果を表4に示す。
【0059】
得られたクロロプレン重合体組成物は、接着強度が大幅に低下し、実用レベルに達しなかった。
【0060】
比較例7
MgOの配合量を16重量部とし、ZnOの配合量を4重量部とした以外は、実施例1と同様の方法によりクロロプレン重合体組成物を調製した。得られたクロロプレン重合体組成物の調製後の粘度は100000mPa・s以上となり、塗布ができないため試験片が作成できず、評価を行わなかった。
【0061】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明によれば、耐熱性とコンタクト性保持時間が両立でき、かつホルムアルデヒドフリーを達成した一液型クロロプレン重合体が製造可能になり、製靴、木工、建築、自動車、家電などに使用することで作業環境の改善、コスト低減が図られる接着剤として、その産業的価値は極めて高いものである。