(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】加工条件設定装置、加工条件設定方法、及びウェーハの製造システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20241016BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20241016BHJP
B24B 37/005 20120101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
B23Q15/00 301H
B23Q15/00 301C
B24B37/005 Z
(21)【出願番号】P 2021026648
(22)【出願日】2021-02-22
【審査請求日】2023-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 裕司
【審査官】宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-267159(JP,A)
【文献】特開2003-085526(JP,A)
【文献】特開2019-165123(JP,A)
【文献】特開2007-220842(JP,A)
【文献】特開2005-317864(JP,A)
【文献】特開2009-065213(JP,A)
【文献】特表2005-520317(JP,A)
【文献】特開2012-228745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23Q 15/00
B24B 37/005
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハ加工装置に適用されるパラメータセットを複数のパラメータセットから選択する制御部を備え、
前記各パラメータセットは、前記ウェーハ加工装置の加工動作を特定する複数の設定項目それぞれに設定される設定値の組み合わせであり、
前記各設定項目は、前記ウェーハ加工装置で実行される1つの加工工程において適用され、
前記制御部は、
前記ウェーハ加工装置が加工対象ウェーハを加工する前に、
前記各パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に加工の前後におけるウェーハの特性の変化を前記各パラメータセットの加工データとして取得し、
前記加工対象ウェーハの加工前特性を取得し、
前記各パラメータセットについて、前記加工対象ウェーハの加工前特性と前記加工データとに基づいて、前記各パラメータセットを適用して前記加工対象ウェーハを加工したと仮定したときの加工後特性を推定し、前記各加工後特性について2種類以上の指標を算出し、
前記指標に関する制約条件を取得し、
前記パラメータセットのうち前記指標が前記制約条件を満たす適合パラメータセットをパラメータグループに分類し、
前記パラメータグループから1つのパラメータグループを選択グループとして選択し、
前記加工対象ウェーハを加工する際に前記ウェーハ加工装置に適用する
加工パラメータセットを
、前記選択グループに分類される前記適合パラメータセットの中から選択する、
加工条件設定装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記指標に関する目標値をさらに取得し、
前記2種類以上の指標それぞれに優先度を設定し、優先度が高い指標が目標値に近づくように前記加工パラメータセットを選択する、請求項
1に記載の加工条件設定装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記各パラメータセットを、前記設定項目それぞれを基底とする多次元ベクトル空間において定義される格子点に対応づけ、
前記適合パラメータセットに対応づけられる格子点のうち、前記多次元ベクトル空間において互いに隣接する格子点を同一の格子点グループに分類し、
前記格子点グループに分類される前記格子点に対応づけられるパラメータセットを同一の前記パラメータグループに分類する、請求項
1又は
2に記載の加工条件設定装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットが存在しない場合、優先度が低い指標の制約条件の範囲を拡大して前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットを抽出する、請求項
2に記載の加工条件設定装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記制約条件の範囲を拡大しても前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットが存在しない場合、前記加工前ウェーハを加工する際に適用するパラメータセットとして、あらかじめ定められている初期パラメータセット、又は、前回の加工のパラメータセットを選択する、請求項
4に記載の加工条件設定装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記パラメータグループに分類されたパラメータセットの数が最大のパラメータグループを1つ選択する、請求項
1から
5までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記パラメータグループに分類された前記パラメータセットについて推定された前記加工後特性の指標の統計値に基づいて1つのパラメータグループを選択する、請求項
1から
5までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記2種類以上の指標それぞれに優先度を設定し、
前記優先度が高い指標について、前記加工後特性の指標の平均値が制約条件の目標値に最も近いパラメータグループを選択する、請求項
7に記載の加工条件設定装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記加工データとして、1つ以上の前記加工工程において2つ以上の前記設定項目それぞれの設定値を仮定した加工の前後における前記ウェーハの特性の変化、又は、2つ以上の前記加工工程において1つ以上の前記設定項目の設定値それぞれの設定値を仮定した加工の前後における前記ウェーハの特性の変化を取得する、請求項1から
8までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
【請求項10】
ウェーハ加工装置に適用されるパラメータセットを複数のパラメータセットから選択する加工条件設定方法であって、
前記各パラメータセットは、前記ウェーハ加工装置の加工動作を特定する複数の設定項目それぞれに設定される設定値の組み合わせであり、
前記各設定項目は、前記ウェーハ加工装置で実行される1つの加工工程において適用され、
前記加工条件設定方法は、
前記ウェーハ加工装置が加工対象ウェーハを加工する前に、前記各パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に加工の前後におけるウェーハの特性の変化を前記各パラメータセットの加工データとして取得するステップと、
前記加工対象ウェーハの加工前特性を取得するステップと、
前記各パラメータセットについて、前記加工対象ウェーハの加工前特性と前記加工データとに基づいて、前記各パラメータセットを適用して前記加工対象ウェーハを加工したと仮定したときの加工後特性を推定し、前記各加工後特性について2種類以上の指標を算出するステップと、
前記指標に関する制約条件を取得するステップと、
前記パラメータセットのうち前記指標が前記制約条件を満たす適合パラメータセットをパラメータグループに分類するステップと、
前記パラメータグループから1つのパラメータグループを選択グループとして選択するステップと、
前記加工対象ウェーハを加工する際に前記ウェーハ加工装置に適用する
加工パラメータセットを
、前記選択グループに分類される前記適合パラメータセットの中から選択するステップと
を含む加工条件設定方法。
【請求項11】
請求項1から
9までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置と、前記ウェーハ加工装置とを備える、ウェーハの製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェーハ加工装置における加工条件の設定装置及び加工条件の設定方法、並びに、ウェーハ加工装置を含むウェーハの製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体ウェーハの研磨装置において研磨時間を最適化する制御手段が知られている(例えば特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ウェーハ加工装置によって加工されたウェーハの品質は、複数の指標で表され得る。各指標で表されるウェーハの品質が向上するように、ウェーハ加工装置を制御することが求められる。
【0005】
そこで、本開示の目的は、ウェーハの品質を向上できる加工条件設定装置、加工条件設定方法、及びウェーハの製造システムを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本開示の一実施形態は、以下のとおりである。
[1]
ウェーハ加工装置に適用されるパラメータセットを複数のパラメータセットから選択する制御部を備え、
前記各パラメータセットは、前記ウェーハ加工装置の加工動作を特定する複数の設定項目それぞれに設定される設定値の組み合わせであり、
前記各設定項目は、前記ウェーハ加工装置で実行される1つの加工工程において適用され、
前記制御部は、
前記ウェーハ加工装置が加工対象ウェーハを加工する前に、
前記各パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に加工の前後におけるウェーハの特性の変化を前記各パラメータセットの加工データとして取得し、
前記加工対象ウェーハの加工前特性を取得し、
前記各パラメータセットについて、前記加工対象ウェーハの加工前特性と前記加工データとに基づいて、前記各パラメータセットを適用して前記加工対象ウェーハを加工したと仮定したときの加工後特性を推定し、前記各加工後特性について2種類以上の指標を算出し、
前記指標に関する制約条件を取得し、
前記加工対象ウェーハを加工する際に前記ウェーハ加工装置に適用するパラメータセットを、前記パラメータセットのうち前記指標が前記制約条件を満たす適合パラメータセットの中から選択する、
加工条件設定装置。
[2]
前記制御部は、前記適合パラメータセットをパラメータグループに分類し、前記パラメータグループから1つのパラメータグループを選択グループとして選択し、前記選択グループに分類される前記適合パラメータセットの中から、前記加工前ウェーハを加工する際に適用するパラメータセットを加工パラメータセットとして選択する、上記[1]に記載の加工条件設定装置。
[3]
前記制御部は、
前記指標に関する目標値をさらに取得し、
前記2種類以上の指標それぞれに優先度を設定し、優先度が高い指標が目標値に近づくように前記加工パラメータセットを選択する、上記[2]に記載の加工条件設定装置。
[4]
前記制御部は、
前記各パラメータセットを、前記設定項目それぞれを基底とする多次元ベクトル空間において定義される格子点に対応づけ、
前記適合パラメータセットに対応づけられる格子点のうち、前記多次元ベクトル空間において互いに隣接する格子点を同一の格子点グループに分類し、
前記格子点グループに分類される前記格子点に対応づけられるパラメータセットを同一の前記パラメータグループに分類する、上記[2]又は[3]に記載の加工条件設定装置。
[5]
前記制御部は、
前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットが存在しない場合、優先度が低い指標の制約条件の範囲を拡大して前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットを抽出する、上記[3]に記載の加工条件設定装置。
[6]
前記制御部は、前記制約条件の範囲を拡大しても前記指標が前記制約条件を満たすパラメータセットが存在しない場合、前記加工前ウェーハを加工する際に適用するパラメータセットとして、あらかじめ定められている初期パラメータセット、又は、前回の加工のパラメータセットを選択する、上記[5]に記載の加工条件設定装置。
[7]
前記制御部は、前記パラメータグループに分類されたパラメータセットの数が最大のパラメータグループを1つ選択する、上記[2]から[6]までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
[8]
前記制御部は、前記パラメータグループに分類された前記パラメータセットについて推定された前記加工後特性の指標の統計値に基づいて1つのパラメータグループを選択する、上記[2]から[6]までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
[9]
前記制御部は、
前記2種類以上の指標それぞれに優先度を設定し、
前記優先度が高い指標について、前記加工後特性の指標の平均値が制約条件の目標値に最も近いパラメータグループを選択する、上記[8]に記載の加工条件設定装置。
[10]
前記制御部は、前記加工データとして、1つ以上の前記加工工程において2つ以上の前記設定項目それぞれの設定値を仮定した加工の前後における前記ウェーハの特性の変化、又は、2つ以上の前記加工工程において1つ以上の前記設定項目の設定値それぞれの設定値を仮定した加工の前後における前記ウェーハの特性の変化を取得する、上記[1]から[9]までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置。
[11]
ウェーハ加工装置に適用されるパラメータセットを複数のパラメータセットから選択する加工条件設定方法であって、
前記各パラメータセットは、前記ウェーハ加工装置の加工動作を特定する複数の設定項目それぞれに設定される設定値の組み合わせであり、
前記各設定項目は、前記ウェーハ加工装置で実行される1つの加工工程において適用され、
前記加工条件設定方法は、
前記ウェーハ加工装置が加工対象ウェーハを加工する前に、前記各パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に加工の前後におけるウェーハの特性の変化を前記各パラメータセットの加工データとして取得するステップと、
前記加工対象ウェーハの加工前特性を取得するステップと、
前記各パラメータセットについて、前記加工対象ウェーハの加工前特性と前記加工データとに基づいて、前記各パラメータセットを適用して前記加工対象ウェーハを加工したと仮定したときの加工後特性を推定し、前記各加工後特性について2種類以上の指標を算出するステップと、
前記指標に関する制約条件を取得するステップと、
前記加工対象ウェーハを加工する際に前記ウェーハ加工装置に適用するパラメータセットを、前記パラメータセットのうち前記指標が前記制約条件を満たす適合パラメータセットの中から選択するステップと
を含む加工条件設定方法。
[12]
上記[1]から[10]までのいずれか一項に記載の加工条件設定装置と、前記ウェーハ加工装置とを備える、ウェーハの製造システム。
【発明の効果】
【0007】
本開示に係る加工条件設定装置、加工条件設定方法、及びウェーハの製造システムによれば、ウェーハの品質が向上され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係るウェーハの製造システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るウェーハ加工装置としてのウェーハの両面研磨装置の上面図である。
【
図4】パラメータセットに対応する点の一例を表す2次元グラフである。
【
図5】各パラメータセットの加工後特性を表す第1指標の値をマッピングした2次元グラフである。
【
図6】各パラメータセットの加工後特性を表す第2指標の値をマッピングした2次元グラフである。
【
図7】
図5の2次元グラフにおいて、第2指標の値に基づいて抽出したパラメータセットを中実円(黒丸)で表している2次元グラフである。
【
図8】
図6の2次元グラフにおいて、第2指標の値に基づいて抽出したパラメータセットを中実円(黒丸)で表している2次元グラフである。
【
図9】
図7の2次元グラフにおいて、第1指標の値に更に基づいて抽出したパラメータセットを中実円(黒丸)で表している2次元グラフである。
【
図10】
図8の2次元グラフにおいて、第1指標の値に更に基づいて抽出したパラメータセットを中実円(黒丸)で表している2次元グラフである。
【
図11】適合パラメータセットをパラメータグループに分類する例を表している2次元グラフである。
【
図12】本開示の一実施形態に係る加工条件設定方法の手順例を示すフローチャートである。
【
図13】加工パラメータセットの選択の手順例を示すフローチャートである。
【
図14】本開示の構成例と比較例とそれぞれで加工したウェーハの加工後特性の第1指標の値の分布を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態に係るウェーハの製造システム100が図面を参照して説明される。
図1に示されるように、ウェーハの製造システム100は、ウェーハ加工装置1と、加工条件設定装置20とを備える。加工条件設定装置20は、ウェーハ加工装置1の加工条件を設定する。
【0010】
(ウェーハ加工装置1の構成例)
本実施形態において、ウェーハ加工装置1は、ウェーハの両面研磨装置として説明される。ウェーハ加工装置1は、研磨装置に限られず、ワイヤーソー装置等の他の加工装置であってもよい。
【0011】
図2は、本開示の一実施形態に係るウェーハ加工装置1の上面図である。
図3は、
図2におけるA-A断面図である。
図2及び
図3に示されるように、ウェーハ加工装置1は、上定盤2およびそれに対向する下定盤3を有する回転定盤4と、回転定盤4の回転中心部に設けられたサンギア5と、回転定盤4の外周部に円環状に設けられたインターナルギア6とを備える。
図3に示されるように、上下の回転定盤4の対向面、すなわち、上定盤2の研磨面である下面側及び下定盤3の研磨面である上面側それぞれの側に、研磨パッド7が貼布されている。
【0012】
ウェーハ加工装置1は、上定盤2と下定盤3との間に設けられ、加工対象のワークW(ウェーハ)を保持する1つ以上の孔8を有する複数のキャリアプレート9を備えている。なお、
図2において、複数のキャリアプレート9のうち1つのキャリアプレート9のみが示されている。また、孔8の数は、1つ以上であればよく、例えば3つであってもよい。ワークWは、孔8に保持されてよい。
【0013】
ウェーハ加工装置1は、サンギア5とインターナルギア6とを回転させることによってキャリアプレート9に公転運動及び自転運動を含む遊星運動をさせることができる、遊星歯車方式の両面研磨装置であるとする。ウェーハ加工装置1は、研磨スラリーを供給しながらキャリアプレート9を遊星運動させるとともに上定盤2及び下定盤3をキャリアプレート9に対して相対的に回転させることによって、上下の回転定盤4に貼布した研磨パッド7とキャリアプレート9の孔8に保持したワークWの両面とを摺動させてワークWの両面を同時に研磨することができる。
【0014】
本実施形態に係るウェーハ加工装置1において、上定盤2は、上定盤2の上面から研磨面である下面まで貫通した1つ以上の孔10を有する。つまり、孔10は、上定盤2に設けられている。孔10は、ワークWの中心付近を通過する位置に1つ配置されている。孔10の数は、1つに限られず2つ以上であってよい。孔10は、上定盤2に限られず下定盤3に設けられてもよい。孔10は、上定盤2及び下定盤3の少なくとも一方に1つ以上設けられてよい。また、孔10は、上定盤2の周上(
図2における一点鎖線上)に複数配置されてもよい。また、
図3に示されるように、孔10は、上定盤2に貼布した研磨パッド7にまで貫通してよい。つまり、孔10は、上定盤2の上面から研磨パッド7の下面まで貫通してよい。
【0015】
ウェーハ加工装置1は、ワークWの両面研磨中に、ワークWの厚みを1つ以上の孔10からリアルタイムで計測可能に構成されてよい。具体的に、ウェーハ加工装置1は、孔10に対応する位置にワーク厚み計測器11を備えてよい。
図3の例において、ワーク厚み計測器11は、上定盤2の上方に配置されている。本実施形態において、ワーク厚み計測器11は、波長可変型の赤外線レーザ装置であるとする。ワーク厚み計測器11は、例えば、ワークWにレーザ光を照射する光学ユニットと、ワークWから反射されたレーザ光を検出する検出ユニットと、検出したレーザ光からワークWの厚みを計算する演算ユニットを備えてよい。例示したワーク厚み計測器11は、ワークWに入射させたレーザ光の、ワークWの表側の表面で反射した反射光と、ワークWの裏面で反射した反射光との光路長の差に基づいて、ワークWの厚みを計算できる。なお、ワーク厚み計測器11は、ワークWの厚みをリアルタイムで計測することができるものであればよく、例示した赤外線レーザを用いた装置に限定されない。
【0016】
本実施形態に係るウェーハ加工装置1は、制御部12を備える。制御部12は、上定盤2、下定盤3、サンギア5、インターナルギア6及びワーク厚み計測器11に接続されている。制御部12は、ウェーハ加工装置1の各構成部を制御する。
【0017】
ウェーハ加工装置1は、ワークWを加工する工程を1つだけ実行してもよいし、2つ以上実行してもよい。ワークWを加工する工程は、加工工程とも称される。ウェーハ加工装置1は、各加工工程において1つ又は複数の設定項目に値を設定することによって、各加工工程におけるウェーハの加工量を制御する。言い換えれば、ウェーハ加工装置1が実行する各設定項目に設定される値は、ウェーハ加工装置1の加工動作を特定する。設定項目に設定される値は、設定値とも称される。つまり、各加工工程におけるウェーハの加工量は、各設定項目の設定値を変更することによって制御される。
【0018】
ウェーハ加工装置1で実行される加工工程における設定項目は、例えば、ワークWの研磨時間、又は、ワークWを研磨する圧力を含んでよい。また、設定項目は、上定盤2の回転数、又は、キャリアプレート9の公転数若しくは自転数等の種々の項目を含んでよい。
【0019】
ウェーハ加工装置1がウェーハを加工することによってウェーハの特性が変化する。ウェーハの特性は、ウェーハの表面若しくは裏面の平坦度、又はウェーハの厚み等によって特定される。ウェーハ加工装置1が加工工程を実行する前後におけるウェーハの特性の変化は、その加工工程におけるウェーハの加工量とも称される。ウェーハ加工装置1で加工する前のウェーハの特性は、加工前特性とも称される。ウェーハ加工装置1で加工した後のウェーハの特性は、加工後特性とも称される。ウェーハの加工量は、実験によって得られた加工前特性と加工後特性との差として算出される。
【0020】
ウェーハ加工装置1が1つの加工工程を実施する場合、その加工工程における複数の設定項目が互いに関連してウェーハの加工後特性に影響を及ぼし得る。また、ウェーハ加工装置1が複数の加工工程を実行する場合、各加工工程の設定項目が互いに関連してウェーハの加工後特性に影響を及ぼし得る。また、ウェーハの製造システム100において、複数のウェーハ加工装置1で実行される加工工程の設定項目が互いに関連してウェーハの加工後特性に影響を及ぼし得る。
【0021】
ウェーハ加工装置1は、互いに関連してウェーハの加工後特性に影響を及ぼす複数の設定項目を1組の設定項目とみなし、各設定項目の設定値をまとめて設定する。1組の設定項目は、加工条件と総称される。ウェーハ加工装置1は、各加工工程において加工条件を適用することによって、ウェーハの加工後特性を制御する。加工条件に含まれる各設定項目の設定値の組み合わせは、1組の設定値を構成し、パラメータセットとも称される。ウェーハ加工装置1は、各加工工程の各設定項目の設定値としてパラメータセットを適用することによって、ウェーハの加工後特性を制御する。複数の設定項目のうち少なくとも1つの設定項目の設定値が異なるパラメータセットは、異なるパラメータセットとして区別される。
【0022】
本実施形態に係るウェーハ加工装置1は、ワークWの両面研磨中に、ワークWの両面研磨を終了するタイミングを決定する演算部13を更に備えてもよい。演算部13は、制御部12に接続されている。演算部13は、ワーク厚み計測器11によって測定されたワーク厚みデータを取得し、ワークWの両面研磨を終了するタイミングを決定する。制御部12は、演算部13が決定したタイミングでウェーハ加工装置1によるワークWの加工動作を終了させてもよい。
【0023】
(加工条件設定装置20の構成例)
加工条件設定装置20は、制御部22を備える。制御部22は、ウェーハ加工装置1の加工条件を特定するパラメータを決定し、ウェーハ加工装置1に出力する。制御部22は、ウェーハ加工装置1の制御部12と通信可能に構成される。制御部22は、少なくとも1つのプロセッサを含んでよい。プロセッサは、制御部22の種々の機能を実現するプログラムを実行しうる。プロセッサは、単一の集積回路として実現されてよい。集積回路は、IC(Integrated Circuit)とも称される。プロセッサは、複数の通信可能に接続された集積回路及びディスクリート回路として実現されてよい。プロセッサは、他の種々の既知の技術に基づいて実現されてよい。
【0024】
加工条件設定装置20は、記憶部24を更に備えてよい。記憶部24は、例えば、外部のウェーハ測定装置で測定されたウェーハの特性の測定結果を格納する。記憶部24は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んでよいし、半導体メモリ又は磁気メモリ等のメモリを含んでもよい。記憶部24は、非一時的なコンピュータ読み取り可能媒体を含んでよい。記憶部24は、各種情報及び制御部22で実行されるプログラム等を格納する。記憶部24は、制御部22のワークメモリとして機能してよい。記憶部24の少なくとも一部は、制御部22とは別体として構成されてもよい。
【0025】
加工条件設定装置20は、ウェーハ加工装置1又は外部装置との間でデータを送受信する通信部を更に備えてもよい。通信部は、他装置とネットワークを介して通信可能に接続されてよい。通信部は、他装置と有線又は無線で通信可能に接続されてよい。通信部は、ネットワーク又は他装置に接続する通信モジュールを備えてよい。通信モジュールは、LAN(Local Area Network)等の通信インタフェースを備えてよい。通信モジュールは、赤外線通信又はNFC(Near Field communication)通信等の非接触通信の通信インタフェースを備えてもよい。通信モジュールは、4G又は5G等の種々の通信方式による通信を実現してもよい。通信部が実行する通信方式は、上述の例に限られず、他の種々の方式を含んでもよい。
【0026】
(加工条件設定装置20の動作例)
ウェーハ加工装置1は、1つ又は複数の加工工程を実行することによって、ワークW(ウェーハ)を加工する。ウェーハの加工後特性は、ウェーハの加工前特性とウェーハ加工装置1が実行する加工工程におけるウェーハの加工量とに基づいて定まる。
【0027】
ウェーハ加工装置1は、各加工工程において1つ又は複数の設定項目を設定することによって、各加工工程におけるウェーハの加工量を制御する。つまり、各加工工程におけるウェーハの加工量は、各加工工程において設定される設定項目の設定値を変更することによって制御される。本実施形態に係るウェーハの製造システム100において、加工条件設定装置20は、ウェーハ加工装置1で実施する各加工工程において設定される各設定項目の設定値を決定し、ウェーハ加工装置1に出力する。ウェーハ加工装置1は、加工条件設定装置20で決定された設定値を各設定項目に設定して各加工工程を実施する。このようにすることで、ウェーハの加工後特性が制御される。
【0028】
本実施形態に係るウェーハの製造システム100において、ウェーハの加工後特性に基づいて、加工後のウェーハの品質が評価される。具体的に、ウェーハの加工後特性が所定条件を満たすことによって、加工後のウェーハが次工程に払出可能である又は出荷可能であると判定されてよい。所定条件は、ウェーハの加工後特性を表す指標の値と基準値との関係に基づいて定められ得る。所定条件は、例えば、ウェーハの加工後特性を表す指標の値が基準値以下であること若しくは基準値未満であること、又は、基準値以上であること若しくは基準値を超えることを含んでよい。所定条件は、例えば、ウェーハの加工後特性を表す指標の値が所定範囲に含まれること、又は、所定範囲外であることを含んでよい。
【0029】
ウェーハの加工後特性を表す指標は、例えば、ウェーハの平坦度を表す指標を含んでよい。ウェーハの平坦度を表す指標は、平坦度指標とも称される。
【0030】
ウェーハの平坦度指標は、例えばGBIR(Global Backside Ideal Range)を含んでよい。GBIRは、ウェーハ全体の平坦度を表す指標である。GBIRは、ウェーハにおける形状分布の最大値と最小値との差として求めることができる。GBIRの値が小さいほど、ウェーハの平坦度が高い。ウェーハの平坦度指標は、例えばESFQD(Edge Site flatness Front reference least sQuare Deviation)を含んでよい。ESFQDは、ウェーハ周縁部の平坦度を表す指標である。ESFQDは、ウェーハ周縁部を複数のサイトに分割した上で、各サイトにおけるサイト内の基準面とウェーハ表面との距離を評価するものである。ESFQDの絶対値の最大値が小さいほど、ウェーハの平坦度が高い。ウェーハの平坦度指標は、ESFQR(Edge flatness metric, Sector based, Front surface referenced, least sQuares fit reference plane, Range of the data within sector)、Bump、又はRollOff等の他の種々の指標を含んでもよい。
【0031】
ウェーハの加工後特性を表す指標は、平坦度指標に限られず、ウェーハの厚みを表す指標等の他の種々の指標を含んでもよい。
【0032】
本実施形態に係るウェーハの製造システム100において、加工条件設定装置20の制御部22がウェーハ加工装置1の各加工工程において設定される設定項目の設定値を決定する。ウェーハ加工装置1で加工されるウェーハは、加工対象ウェーハとも称される。制御部22は、ウェーハ加工装置1で加工対象ウェーハを実際に加工する前に、加工対象ウェーハをウェーハ加工装置1で加工した場合のウェーハの加工後特性を推定し、推定した加工後特性を表す指標の値を算出する。制御部22は、指標の値の算出結果に基づいて各設定項目の設定値を決定する。
【0033】
<加工後特性の推定>
制御部22は、加工対象ウェーハをウェーハ加工装置1で加工した場合のウェーハの加工後特性を推定するために、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程における設定項目に種々の設定値を適用したと仮定する。制御部22は、仮定した設定値を適用してウェーハを加工した場合に得られるウェーハの加工後特性を推定する。ウェーハ加工装置1が複数の設定項目それぞれの設定値としてパラメータセットを適用する場合、制御部22は、設定項目に種々のパラメータセットを適用したと仮定し、各パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に得られるウェーハの加工後特性を推定する。
【0034】
制御部22は、ウェーハの加工前特性をあらかじめ取得し、ウェーハの加工前特性とウェーハ加工装置1が加工工程を実行することによるウェーハの加工量の推定値とに基づいてウェーハの加工後特性を推定できる。ウェーハの加工量は、取代形状又は加工データとも称される。制御部22は、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程における設定項目に種々の設定値を適用したと仮定し、各設定値を適用して加工工程を実行した場合の加工データの推定値を算出する。また、ウェーハ加工装置1が複数の設定項目それぞれの設定値としてパラメータセットを適用する場合、制御部22は、設定項目に種々のパラメータセットを適用したと仮定し、各パラメータセットを適用して加工工程を実行した場合の加工データの推定値を算出する。制御部22は、加工データの推定値とウェーハの加工前特性とに基づいてウェーハの加工後特性を推定できる。
【0035】
ここで、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程の設定項目に適用したと仮定されるパラメータセットが仮想パラメータセットと称されるとする。制御部22は、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程の設定項目に仮想パラメータセットを適用した場合に、ウェーハの加工後特性の推定結果が所望の特性になるか判定する。
【0036】
制御部22は、仮想パラメータセットとして、複数のパラメータセットを設定項目に適用すると仮定してよい。制御部22は、各設定項目の設定値として考えられる全ての値の組み合わせを、仮想パラメータセットとして設定項目に適用すると仮定してもよい。制御部22は、各設定項目の設定値の組み合わせとしてウェーハ加工装置1に設定される可能性が高い組み合わせを、仮想パラメータセットとして設定項目に適用すると仮定してもよい。
【0037】
制御部22は、仮想パラメータセットを適用した場合のウェーハの加工後特性の推定結果が所望の特性になると判定した場合、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程の設定項目に仮想パラメータセットを実際に適用できると判定する。言い換えれば、制御部22は、仮想パラメータセットの中から、ウェーハの加工後特性の推定結果が所望の特性になるパラメータセットを抽出する。制御部22は、設定項目に実際に適用できると判定したパラメータセット、又は、ウェーハの加工後特性の推定結果が所望の特性になるとして抽出したパラメータセットの中から、実際に適用するパラメータセットを選択する。
【0038】
制御部22は、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程の設定項目に仮想パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に得られるウェーハの加工後特性を表す指標の値を算出する。制御部22は、設定項目に仮想パラメータセットを適用してウェーハを加工した場合に得られるウェーハの加工後特性が所望の特性になるかを、加工後特性を表す指標として算出した値に基づいて判定する。
【0039】
<適合パラメータセットの抽出>
制御部22は、加工後特性を表す指標として算出した値が制約条件を満たす場合に、その加工後特性が所望の特性になると判定する。言い換えれば、制御部22は、ウェーハの加工後特性が所望の特性になると判定するために用いる制約条件を設定する。制御部22は、制約条件を取得してもよい。制御部22は、複数の仮想パラメータセットを設定項目に適用すると仮定し、適用すると仮定した各仮想パラメータセットの中から、ウェーハの加工後特性の推定結果が所望の特性になるパラメータセットを抽出する。制御部22が抽出したパラメータセットは、適合パラメータセットとも称される。
【0040】
ウェーハの加工後特性を表す指標の値が大きいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、ウェーハの加工後特性を表す指標の値が所定値以上又は所定値を超えるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してよい。ウェーハの加工後特性を表す指標の値が小さいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、ウェーハの加工後特性を表す指標の値が所定値以下又は所定値未満となるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してよい。
【0041】
制御部22は、ウェーハの加工後特性を表す2種類以上の指標それぞれの値を算出してよい。制御部22は、各指標に対応する制約条件を設定し、各指標の値が制約条件を満たす場合に加工後特性が所望の特性になると判定してよい。言い換えれば、制御部22は、複数の仮想パラメータセットの中から、2種類以上の指標それぞれの値が制約条件を満たすパラメータセットを適合パラメータセットとして抽出してよい。
【0042】
制御部22は、2種類以上の指標それぞれに優先度を設定してよい。ウェーハの加工後特性を表す指標の値が大きいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、優先度が高い指標の値が所定値以上又は所定値を超えるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してよい。ウェーハの加工後特性を表す指標の値が小さいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、優先度が高い指標の値が所定値以下又は所定値未満になるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してよい。
【0043】
制御部22は、2種類以上の指標の値に基づく総合指標を算出してもよい。総合指標の値が大きいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、総合指標の値が所定値以上又は所定値を超えるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してもよい。総合指標の値が小さいほどウェーハの品質が高い場合、制御部22は、総合指標の値が所定値以下又は所定値未満になるように、仮想パラメータセットから適合パラメータセットを抽出してもよい。
【0044】
制御部22が適合パラメータセットを抽出する手順例が以下に説明される。本手順例において、制御部22が2つの設定項目について設定値を決定すると仮定する。2つの設定項目の設定値の組み合わせに対応するパラメータセットは、
図4に例示されるように、2つの設定項目それぞれを軸として有する2次元グラフ上に点としてプロットされる。
図4のグラフは、第1設定項目を横軸として有し、第2設定項目を縦軸として有する。第1設定項目及び第2設定項目それぞれに5つの値の中から1つの値が設定される場合、パラメータセットを表す点は、2次元グラフ上に25個の点としてプロットされる。第1設定項目の設定値は、X1~X5で表されている。第2設定項目の設定値は、Y1~Y5で表されている。
【0045】
制御部22は、25個のパラメータセットそれぞれを設定項目に適用すると仮定した加工によって得られるウェーハの加工後特性を推定する。ウェーハの加工後特性は、第1指標及び第2指標で表されるとする。本例において、第1指標及び第2指標は、それぞれGBIR及びESFQDであるとする。GBIRの値が小さいほどウェーハは平坦に近い。ESFQDの値が大きいほどウェーハは平坦に近い。制御部22は、各パラメータセットを設定項目に適用すると仮定して得られた加工後特性を表す第1指標及び第2指標の値を算出する。
【0046】
制御部22は、第1設定項目又は第2設定項目に離散的に設定されている設定値の間の値を2次元グラフ上で内挿してもよい。例えば各設定項目の5つの設定値の間に値が1つずつ内挿される場合、9×9の81個のパラメータセットが仮定される。制御部22は、内挿値を含むパラメータセットそれぞれを設定項目に適用すると仮定した加工によって得られるウェーハの加工後特性を推定してもよい。
【0047】
適合パラメータセットは、例えば以下に説明されるように抽出されてよい。
【0048】
図5及び
図6に示されるように、各パラメータセットを設定項目に適用して得られた加工後特性を表す第1指標及び第2指標の値は、各パラメータセットを表す点がプロットされている2次元グラフ上にマッピングされる。
【0049】
図5は、第1指標(GBIR)の値をマッピングした2次元グラフである。第1指標の値は、凡例に示されるように8段階に分けてマッピングされている。例えば、白で表される領域(~V0)は、第1指標の値がV0未満であることを表す。また、疎な右上がり斜線で表される領域(V0~V1)は、第1指標の値がV0以上かつV1未満であることを表す。また、密な右上がり斜線で表される領域(V6~)は、第1指標の値がV6以上であることを表す。
【0050】
図6は、第2指標(ESFQD)の値をマッピングした2次元グラフである。第2指標の値は、凡例に示されるように6段階に分けてマッピングされている。例えば、白で表される領域(~W0)は、第2指標の値がW0未満であることを表す。また、疎な右上がり斜線で表される領域(W0~W1)は、第2指標の値がW0以上かつW1未満であることを表す。また、密な右上がり斜線で表される領域(W4~W5)は、第2指標の値がW4以上かつW5以下であることを表す。
【0051】
ここで、制御部22は、第2指標(ESFQD)の値が所定の数値範囲に収まっているパラメータセットを抽出する。
図7及び
図8に示されるように、抽出されたパラメータセットは、中実円(黒丸)で表される。抽出されなかったパラメータセットは、中抜き円(白丸)で表される。
図7における各パラメータセットの第1指標の値は
図5と同一である。
図8における各パラメータセットの第2指標の値は
図6と同一である。
【0052】
さらに、制御部22は、第2指標に基づいて抽出されたパラメータセットから、第1指標(GBIR)の値が所定値以下又は所定値未満になっているパラメータセットを適合パラメータセットとして抽出する。
図9及び
図10に示されるように、抽出された適合パラメータセットは、中実円(黒丸)で表される。抽出されなかったパラメータセットは、中抜き円(白丸)で表される。
図9における各パラメータセットの第1指標の値は
図5及び
図7と同一である。
図10における各パラメータセットの第2指標の値は
図6及び
図8と同一である。
【0053】
制約条件が厳しすぎることによって、適合パラメータセットが存在しないことがある。つまり、制御部22は、適合パラメータセットを抽出できないことがある。適合パラメータセットが存在しない場合、制御部22は、制約条件を変更してよい。例えば、制御部22は、制約条件が表す指標の値の範囲を拡大してよい。制御部22は、指標の値が所定値以上であること又は所定値より大きいことを制約条件として設定する場合、所定値を小さくすることによって指標の値の範囲を拡大してよい。制御部22は、指標の値が所定値以下であること又は所定値未満であることを制約条件として設定する場合、所定値を大きくすることによって指標の値の範囲を拡大してよい。制御部22は、優先度が低い指標の制約条件から変更してもよい。
【0054】
適合パラメータセットは、以上説明されたように抽出され得る。
【0055】
<加工パラメータセットの選択>
制御部22は、適合パラメータセットの中から、ウェーハ加工装置1が加工対象ウェーハを実際に加工する際に設定項目に適用するパラメータセットを選択する。ウェーハ加工装置1が加工対象ウェーハを実際に加工する際に設定項目に適用するパラメータセットは、加工パラメータセットとも称される。
【0056】
制御部22は、例えば、指標に関する目標値を取得し、指標の値と目標値との差がゼロに近づくように加工パラメータセットを選択してよい。制御部22は、指標の値と目標値との差の絶対値が小さくなるように加工パラメータセットを選択してよい。制御部22は、指標の値と目標値との差の絶対値が最小になるように加工パラメータセットを選択してよい。
【0057】
制御部22は、2種類以上の指標に基づいて加工パラメータセットを選択する場合、各指標に優先度を設定し、優先度が高い指標の値と目標値との差がゼロに近づくように加工パラメータセットを選択してよい。
【0058】
<<パラメータグループの分類>>
制御部22は、適合パラメータセットをパラメータグループに分類してよい。適合パラメータセットの数が1つである場合、その1つの適合パラメータセットが1つのパラメータグループに分類される。適合パラメータセットの数が2つ以上である場合、適合パラメータセットは、各パラメータグループそれぞれが少なくとも1つの適合パラメータセットを含むように、1つ以上のパラメータグループに分類されてよい。全ての適合パラメータセットが1つのパラメータグループに分類されてもよい。
【0059】
制御部22は、例えば
図11に示されるように、適合パラメータセットを、第1パラメータグループG1と、第2パラメータグループG2とに分類してよい。第1パラメータグループG1は、実線の枠で囲まれている9点で表されるパラメータセットを含む。第2パラメータグループG2は、破線の枠で囲まれている1点で表されるパラメータセットを含む。
図11における各パラメータセットの第1指標の値は
図5、
図7及び
図9と同一である。
【0060】
制御部22は、2次元グラフ上において隣接する適合パラメータセットを1つのグループに分類してよい。制御部22は、一方の設定項目だけが1つ異なる2つの点を隣接すると判定してよい。具体的に、制御部22は、点(X1,Y1)が点(X2,Y1)及び点(X1,Y2)と隣接すると判定してよい。1つの設定項目だけが異なる場合に隣接すると判定することは、画像処理の分野で用いられる近傍4箇所抽出によるラベリングに対応する。
【0061】
制御部22は、点(X1,Y1)で表される適合パラメータセットと、その点に隣接する点(X2,Y1)及び点(X1,Y2)で表される適合パラメータセットとを第1パラメータグループG1に分類する。制御部22は、さらにそれらの点に隣接する点(X3,Y1)、点(X4,Y1)、点(X2,Y2)、点(X3,Y2)、点(X1,Y3)及び点(X2,Y3)で表される適合パラメータセットを第1パラメータグループG1に分類する。また、適合パラメータセットを表す点(X1,Y5)に隣接する点(X1,Y4)及び点(X2,Y5)は、適合パラメータセットを表さない。したがって、制御部22は、点(X1,Y5)で表される適合パラメータセットを単独で第2パラメータグループG2に分類する。
【0062】
制御部22は、第1設定項目及び第2設定項目がそれぞれ1つずつ異なる2つの点を隣接すると判定してもよい。つまり、制御部22は、2次元グラフ上において互いに斜めに位置する2つの点を隣接すると判定してもよい。具体的に、制御部22は、点(X1,Y1)と点(X2,Y2)とを隣接すると判定してもよい。例えば、点(X4,Y3)で表されるパラメータセットが適合パラメータセットであるとする。この場合、制御部22は、点(X4,Y3)で表されるパラメータセットを、点(X3,Y2)で表される適合パラメータセットと隣接すると判定し、第1パラメータグループG1に分類してよい。2つの設定項目がそれぞれ異なる場合でも隣接すると判定することは、画像処理の分野で用いられる近傍8箇所抽出によるラベリングに対応する。
【0063】
パラメータセットが3つ以上の設定項目の設定値の組み合わせで構成される場合におけるパラメータセットの分類方法は、後述される。
【0064】
制御部22は、パラメータグループのうち1つのパラメータグループを選択してよい。選択されたパラメータグループは、選択グループとも称される。
【0065】
制御部22は、パラメータグループに分類されたパラメータセットの数が最大のパラメータグループを1つ選択してよい。
図11の例において、第1パラメータグループG1に分類されたパラメータセットの数(9個)は、第2パラメータグループG2に分類されたパラメータセットの数(1個)よりも多い。したがって、制御部22は、第1パラメータグループG1を選択グループとして選択してよい。
【0066】
制御部22は、各パラメータグループに分類されたパラメータセットを適用して得られるウェーハの加工後特性の指標の統計値を算出してよい。制御部22は、各パラメータグループに分類されたパラメータセットを適用した場合の指標の平均値又は分散等を、各パラメータグループの統計値として算出してよい。制御部22は、各パラメータグループの統計値に基づいて1つのパラメータグループを選択してもよい。例えば、制御部22は、選択するパラメータグループの指標の平均値が制約条件の目標値に最も近くなるようにパラメータグループを選択してよい。制御部22は、2種類以上の指標それぞれに優先度を設定し、優先度が高い指標について、その平均値が制約条件の目標値に最も近くなるようにパラメータグループを選択してもよい。
【0067】
制御部22は、指標の値の変動が所定値以下に収まりやすいように、各設定項目の設定値の範囲がバランスよく広がるパラメータグループを選択グループとして選択してもよい。仮に、点(X1,Y1)と点(X2,Y1)と点(X3,Y1)と点(X4,Y1)とを含む第3パラメータグループが設定されるとする。また、点(X1,Y3)と点(X2,Y3)と点(X1,Y4)と点(X2,Y4)とを含む第4パラメータグループが設定されるとする。第4パラメータグループは、第3パラメータグループよりも、第1設定項目及び第2設定項目それぞれの広がりが均等に近い。つまり、第4パラメータグループにおける設定値の範囲は、第3パラメータグループよりもバランスよく広がっている。この場合、制御部22は、第3パラメータグループよりも第4パラメータグループを選択グループとして選択してもよい。このようにすることで、後述するように選択グループから加工パラメータセットを選択する場合において、設定値が外乱によって変動しても指標の値が変動しにくくなるように加工パラメータセットを選択しやすい。つまり、加工条件のロバスト性が高まり得る。その結果、加工後のウェーハの品質が向上し得る。
【0068】
<<選択グループからの加工パラメータセットの選択>>
制御部22は、選択グループに含まれる適合パラメータセットから加工パラメータセットを選択してよい。制御部22は、選択グループに含まれる各パラメータセットについて算出される指標の値に基づいて加工パラメータセットを選択してよい。制御部22は、隣接するパラメータセットが最も多いパラメータセットを加工パラメータセットとして選択してもよい。このようにすることで、設定値が外乱によって変動しても、指標の値が変動しにくくなる。つまり、加工条件のロバスト性が高まり得る。その結果、加工後のウェーハの品質が向上し得る。
【0069】
パラメータセットは、設定項目の設定値を離散値で表している。制御部22は、離散値の間の値を設定項目に設定してもよい。例えば、
図11に星型で示されるように、適合パラメータセットを表す点の間に位置する点によって特定される値が設定項目に設定されてもよい。
図11に示される星型の位置は、第1パラメータグループG1の中で第1指標が最小となっている領域(白で表されている領域)の境界から離れた位置(おおよそ中央の位置)に対応するパラメータセットが設定項目に設定されている。このようにすることで、設定値が外乱によって変動しても、指標の値が変動しにくくなる。つまり、加工条件のロバスト性が高まり得る。その結果、加工後のウェーハの品質が向上し得る。
【0070】
(加工条件設定方法の手順例)
制御部22は、例えば
図12に例示されるフローチャートの手順を含む加工条件設定方法を実行することによって加工パラメータセットを選択してよい。加工条件設定方法は、制御部22に実行させる加工条件設定プログラムとして実現されてもよい。
【0071】
制御部22は、指標の目標値又は制約条件を設定する(ステップS1)。
【0072】
制御部22は、加工対象ウェーハの加工前特性を取得する(ステップS2)。
【0073】
制御部22は、複数のパラメータセットそれぞれを設定項目に適用した場合の加工データを取得する(ステップS3)。加工データは、各パラメータセットを設定項目に適用して加工したウェーハの加工前特性と加工後特性との差を表す。
【0074】
制御部22は、各パラメータセットを設定項目に適用して加工したウェーハの加工後特性を推定する(ステップS4)。具体的に、制御部22は、ステップS2で取得した加工対象ウェーハの加工前特性と、ステップS3で取得した加工データとに基づいて、加工対象ウェーハをウェーハ加工装置1で加工する際に各パラメータセットを設定項目に適用した場合のウェーハの加工後特性を推定する。
【0075】
制御部22は、各パラメータセットについて推定した加工後特性を表す指標の値を算出する(ステップS5)。
【0076】
制御部22は、各パラメータセットに対応する指標の値に基づいて適合パラメータセットが存在するか判定する(ステップS6)。具体的に、制御部22は、各パラメータセットに対応する指標の値が制約条件を満たすか判定する。制御部22は、設定項目への適用を仮定したパラメータセットのうち少なくとも1つのパラメータセットに対応する指標の値が制約条件を満たす場合に適合パラメータセットが存在すると判定する。制御部22は、設定項目への適用を仮定した全てのパラメータセットに対応する指標の値が制約条件を満たさない場合に適合パラメータセットが存在しないと判定する。
【0077】
制御部22は、適合パラメータセットが存在する場合(ステップS6:YES)、適合パラメータセットから加工パラメータセットを選択する(ステップS7)。制御部22は、ステップS7の手順として、後述する
図13のフローチャートの手順を実行してもよい。制御部22は、ステップS7の手順の実行後、
図12のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0078】
制御部22は、適合パラメータセットが存在しない場合(ステップS6:NO)、指標の制約条件を変更する(ステップS8)。制御部22は、指標の目標値を変更してもよい。制御部22は、ステップS8の手順の実行後、ステップS6の手順に戻る。
【0079】
制御部22は、
図12のステップS7の手順として、例えば
図13に例示されるフローチャートの手順を実行してもよい。
【0080】
制御部22は、適合パラメータセットをパラメータグループに分類する(ステップS11)。
【0081】
制御部22は、パラメータグループから選択グループを選択する(ステップS12)。パラメータグループの数が1つである場合、制御部22は、その1つのパラメータグループを選択グループとして選択する。パラメータグループの数が2つ以上である場合、制御部22は、1つのパラメータグループを選択グループとして選択する。
【0082】
制御部22は、選択グループに含まれるパラメータセットから加工パラメータセットを選択する(ステップS13)。制御部22は、ステップS13の手順の実行後、
図13のフローチャートの手順の実行を終了する。
【0083】
(比較例)
以上述べてきたように、本実施形態において、加工条件設定装置20は、複数の設定項目の値をまとめて設定する加工パラメータセットを選択する。比較例として、1つの設定項目の値が個別に設定されるとする。
図14を参照して、本実施形態の設定方法によって得られるウェーハの加工後特性と、比較例の設定方法によって得られるウェーハの加工後特性とが比較される。
【0084】
ここで、ウェーハ加工装置1は、本実施形態及び比較例それぞれの設定方法で決定した設定値を設定項目に適用して複数のウェーハを加工したとする。
図14は、加工した各ウェーハの加工後特性を表す第1指標の値の分布を表すグラフである。縦軸は、第1指標の値を表している。横軸は、本実施形態と比較例との区別を表している。
図14において、第1指標の値の平均値に対して標準偏差を増減させた値の範囲が矩形として表されている。また、第1指標の値の最大値から最小値までの範囲が縦線として表されている。また、第1指標の目標値が破線で表されている。
【0085】
第1指標の値のばらつきは、比較例の設定方法で決定した設定値を設定項目に適用した場合よりも、本実施形態の設定方法で決定した設定値を設定項目に適用した場合において小さい。また、第1指標の値の平均値は、比較例の設定方法で決定した設定値を設定項目に適用した場合よりも、本実施形態の設定方法で決定した設定値を設定項目に適用した場合において目標値に近づいている。
【0086】
図14に例示したように、本実施形態に係る加工条件設定方法によれば、複数の設定項目の値をまとめて設定することによって、ウェーハの加工後特性を表す指標が目標値に近づけられやすくなる。
【0087】
以上述べてきたように、本実施形態に係るウェーハの製造システム100において、ウェーハ加工装置1が実行する加工工程における複数の設定項目それぞれの設定値は、加工条件設定装置20によって決定される。複数の設定項目の設定値がまとめて決定されることによって、1つの設定項目の設定値が単独で決定される場合に比べて、加工後のウェーハの品質が向上され得る。つまり、加工後特性の目標となる所望の特性が、ウェーハが高品質であることを表す特性に設定され得る。
【0088】
本実施形態に係るウェーハの製造システム100において、加工条件設定装置20は、加工対象ウェーハを加工する際の加工条件として複数の設定項目に適用する設定値を決定する。加工条件設定装置20は、1つの加工工程における複数の設定項目に適用する設定値を決定してよい。加工条件設定装置20は、1つの加工工程における複数の設定項目に適用する設定値の決定を、複数の加工工程について実行してよい。つまり、加工条件設定装置20は、複数の加工工程それぞれにおける複数の設定項目に適用する設定値を決定してよい。加工条件設定装置20は、複数の加工工程それぞれにおける1つの設定項目に適用する設定値を決定してよい。
【0089】
(他の実施形態)
以下、他の実施形態が説明される。
【0090】
<3つ以上の設定項目に適用するパラメータセットの決定>
上述してきたように、2つの設定項目に適用するパラメータセットは、2次元グラフ(平面)上の点として表された。平面上の点として表される2つのパラメータセットが隣接するか判定することは、現実の3次元空間より低い次元であるから人間の直感で理解されやすい。また、3つの設定項目に適用するパラメータセットは、3次元空間内の点として表され得る。3次元空間内の点として表される2つのパラメータが隣接するか判定することは、現実の3次元空間と同じ次元であるから人間の直感で理解されやすい。
【0091】
しかし、4つ以上の設定項目に適用するパラメータセットは、4次元以上の空間内の点として表されることによって、現実の3次元空間より高い次元であるから直感で理解されにくい。そこで4つ以上の設定項目にパラメータセットを適用する場合の理解を容易にするために、制御部22は、複数の設定項目に適用するパラメータセットを、各設定項目を基底とする多次元ベクトル空間において定義される格子点に対応づけるとする。
【0092】
制御部22は、多次元ベクトル空間において、2つのパラメータセットが隣接するか判定する。格子点は、各設定項目を要素とするベクトルとして表され得る。例えば、4つの設定項目がP、Q、R及びSで表されるとする。ここで、設定項目Pの設定値は、{P1,P2,・・・,Pn}の中のいずれかで表されるとする。設定値のうち、符号の数値が1だけ異なる設定値同士が隣接する。具体的に、P1とP2とが隣接する。同様に、Pn-1とPnとが隣接する。設定項目Q、R及びSについても設定項目Pと同様に設定値が表されるとする。格子点は、例えば(P1,Q1,R1,S1)のように表される。
【0093】
2つの格子点が隣接するかは、格子点の各要素の値を比較することによって判定される。本実施形態において、2つの格子点の各要素の比較において、4つの要素のうち3つの要素の値が同一であり、かつ、他の1つの要素の値が隣接する場合、その2つの格子点が隣接していると判定されるとする。表現を一般化すると、設定項目の数がm個である場合、(m-1)個の要素の値が同一であり、かつ、他の1つの要素の値が隣接する場合、その2つの格子点が隣接していると判定されるとする。
【0094】
2つの格子点が隣接するかの判定において、2つの格子点の各要素の比較において、m個の要素のうち(m-2)個の要素の値が同一であり、かつ、他の2つの要素それぞれの値が隣接する場合、その2つの格子点が隣接していると判定されてもよい。2つの要素の値が隣接する場合は、2次元グラフ(平面)上において、斜めに隣接する場合に対応する。
【0095】
制御部22は、互いに隣接する格子点を同一の格子点グループに分類する。制御部22は、適合パラメータセットのうち、同一の格子点グループに分類される格子点で表されるパラメータセットを、同一のパラメータグループに分類する。
【0096】
以上述べてきたように、制御部22は、パラメータセットを多次元ベクトル空間内の格子点に対応づけることによって、2つのパラメータセットが互いに隣接するか容易に判定できる。その結果、制御部22は、パラメータセットが容易に分類される。
【0097】
<適合パラメータセットが存在しない場合の対応>
制御部22は、適合パラメータセットから加工パラメータセットを選択する。しかし、制約条件が変更されても適合パラメータセットが存在しないことがある。この場合、制御部22は、加工パラメータセットとして、あらかじめ定められている初期パラメータセットを設定してもよい。制御部22は、加工パラメータセットの設定の履歴を記憶部24に格納しておき、以前に設定した加工パラメータセットから今回の加工パラメータセットを選択してもよい。制御部22は、前回の加工において設定した加工パラメータセットを、今回の加工パラメータセットとして設定してもよい。
【0098】
<装置構成例>
ウェーハの製造システム100において、ウェーハ加工装置1は、加工条件設定装置20の少なくとも一部を含んで構成されてもよい。ウェーハ加工装置1と加工条件設定装置20とは、互いに別体で構成されてもよい。
【0099】
ウェーハの製造システム100は、複数のウェーハ加工装置1を備えてもよい。ウェーハの製造システム100は、ワークWを複数のウェーハ加工装置1で加工することによって、ウェーハを製造してよい。各ウェーハ加工装置1は、ワークWに対して異なる加工工程を実行してよい。加工条件設定装置20は、複数のウェーハ加工装置1それぞれで実行される加工工程において加工条件を設定してよい。言い換えれば、加工条件設定装置20は、ウェーハの製造システム100全体の複数の加工工程それぞれにおいて加工条件を設定してよい。
【0100】
<パラメータセットの分類方法の例>
制御部22は、パラメータセットを分類するために、2つの異なるパラメータセットの差異を表す数値を算出してよい。2つの異なるパラメータセットの差異を表す数値は、パラメータ間距離とも称される。制御部22は、2つの適合パラメータセットのパラメータ間距離が所定値以下又は所定値未満となる場合、その2つの適合パラメータセットを同じパラメータグループに分類してよい。
【0101】
例えば3つの設定項目がA、B及びCで表されるとする。制御部22は、第1仮想パラメータセットとして(A1,B1,C1)を設定すると仮定し、第2仮想パラメータセットとして(A2,B2,C2)を設定すると仮定する。第1仮想パラメータセットと第2仮想パラメータセットとのパラメータ間距離(D)は、以下の式(1)で算出されるとする。ω
A、ω
B及びω
Cは、各設定項目の重みづけ係数である。重みづけ係数は、各設定項目がウェーハの加工データに寄与する程度を表す。設定項目がウェーハの加工データに大きく寄与するほど、その設定項目の重みづけ係数が大きく設定されてよい。
【数1】
【0102】
パラメータセットがパラメータ間距離に基づいて分類されることによって、各設定項目に適用すると仮定する設定値が不定間隔である場合でもパラメータセットが分類されやすくなる。その結果、各設定項目に設定される値の自由度が増大し得る。
【0103】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップなどに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示に係る実施形態について装置を中心に説明してきたが、本開示に係る実施形態は装置の各構成部が実行するステップを含む方法としても実現し得るものである。本開示に係る実施形態は装置が備えるプロセッサにより実行される方法、プログラム、又はプログラムを記録した記憶媒体としても実現し得るものである。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0104】
本開示に含まれるグラフは、模式的なものである。スケールなどは、現実のものと必ずしも一致しない。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本開示に係る実施形態によれば、加工したウェーハの品質が向上され得る。
【符号の説明】
【0106】
100 ウェーハの製造システム
1 ウェーハ加工装置(2:上定盤、3:下定盤、4:回転定盤、5:サンギア、6:インターナルギア、7:研磨パッド、8:孔、9:キャリアプレート、10:孔、11:ワーク厚み計測器、12:制御部、13:演算部、W:ワーク(ウェーハ))
20 加工条件設定装置(22:制御部、24:記憶部)