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特許7571634定着装置、画像形成装置および画像形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】定着装置、画像形成装置および画像形成方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G03G15/20 510
G03G15/20 555
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021040538
(22)【出願日】2021-03-12
(65)【公開番号】P2022139944
(43)【公開日】2022-09-26
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一哉
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-039514(JP,A)
【文献】特開2020-149013(JP,A)
【文献】特開2022-030133(JP,A)
【文献】特開2006-154149(JP,A)
【文献】特開2002-318504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0237536(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状の定着部材と、
前記定着部材を内周側から直接加熱する複数の加熱手段と、
前記定着部材の温度を検出する温度検出手段と、
前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、
前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材に当接してニップを形成するニップ形成部材と、
を備え、
前記複数の加熱手段は、前記定着部材の長手方向全域を加熱する少なくとも一つの第一熱源と、前記長手方向に沿った位置で配光の異なる少なくとも一つの第二熱源と、を有し、前記第一熱源のみで動作する第一動作モードと、前記第一熱源と前記第二熱源とで動作する第二動作モードとを持ち、前記第一熱源と前記第二熱源との定格電圧の合算発熱量比を、両端部発熱量が中央部発熱量より5%から15%高くしたことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着部材に対向する位置に配置され、前記定着部材の異常昇温を検知する異常温度検知手段を、さらに備え、
前記異常温度検知手段を、前記複数の加熱手段の発熱量が高い位置に対応させて設置した
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第二熱源の中央部発熱量を、前記第一熱源の中央部発熱量より小さくした
ことを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
少なくとも立上げ時は、前記第一熱源と前記第二熱源との両方を駆動させる
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記定着部材の厚さが0.2mm以下である
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか一項に記載の定着装置を備える画像形成装置。
【請求項7】
請求項に記載の画像形成装置の画像形成方法であって、
前記第一動作モードと前記第二動作モードとのいずれかを用いて、前記定着部材を加熱する加熱工程を有することを特徴とする画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置、画像形成装置および画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタ等の画像形成装置では、記録媒体として様々なサイズの用紙が用いられている。定着装置の加熱源の長さを最大サイズに対応したものにすると、小サイズの用紙を通紙した場合に、端部(非通紙部)の温度上昇が大きくなり、部材耐熱温度を超えて溶融破損しないように、用紙の搬送速度を遅くして生産性を落とす必要がある。
この問題に対処すべく、定着装置の加熱手段として、中央部のみ配光分布が密な熱源と、端部付近のみ配光分布が密な熱源との2つの熱源を設けた定着装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、中央部配光と端部配光との2つの熱源を設けた構成では、中央部配光部と端部配光部とはフィラメント長さの公差があり、重なり部分が長い個体では軸方向で該当部分における温度が上昇し、重なり部分が無く該当部分の発光が無い個体では温度が下がってしまう、という個体ばらつきがあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複数の熱源を用いる定着装置において、熱源の個体ばらつきにより生じる画像品質のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の定着装置は、
無端状の定着部材と、
前記定着部材を内周側から直接加熱する複数の加熱手段と、
前記定着部材の温度を検出する温度検出手段と、
前記定着部材の外周面に当接する加圧部材と、
前記定着部材の内部に配置され、前記定着部材を介して前記加圧部材に当接してニップを形成するニップ形成部材と、
を備え、
前記複数の加熱手段は、前記定着部材の長手方向全域を加熱する少なくとも一つの第一熱源と、前記長手方向に沿った位置で配光の異なる少なくとも一つの第二熱源と、を有し、前記第一熱源のみで動作する第一動作モードと、前記第一熱源と前記第二熱源とで動作する第二動作モードとを持ち、前記第一熱源と前記第二熱源との定格電圧の合算発熱量比を、両端部発熱量が中央部発熱量より5%から15%高くしたものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複数の熱源を用いる定着装置において、熱源の個体ばらつきにより生じる画像品質のばらつきを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を説明する概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る定着装置の構成の一例を説明する概略図である。
図3】実施形態の定着装置が備える複数の加熱手段の構成例を説明する模式図である。
図4】複数の加熱手段と温度検出手段と異常温度検知手段との配置例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。また、各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0009】
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る定着装置が用いられる画像形成装置の一例について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の全体構成の一例を説明する概略図である。
図1に示す画像形成装置1は、カラーレーザープリンタであり、その装置本体の中央には、4つの作像部4Y,4M,4C,4Kが設けられている。各作像部4Y,4M,4C,4Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0010】
具体的に、各作像部4Y,4M,4C,4Kは、潜像担持体としてのドラム状の感光体5と、感光体5の表面を帯電させる帯電装置6と、感光体5の表面にトナーを供給する現像装置7と、感光体5の表面をクリーニングするクリーニング装置8などを備える。なお、図1では、ブラックの作像部4Kが備える感光体5、帯電装置6、現像装置7、クリーニング装置8のみに符号を付しており、その他の作像部4Y,4M,4Cにおいては符号を省略している。
【0011】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの下方には、感光体5の表面を露光する露光装置9が配設されている。露光装置9は、光源、ポリゴンミラー、f-θレンズ、反射ミラー等を有し、画像データに基づいて各感光体5の表面へレーザー光を照射するようになっている。
【0012】
各作像部4Y,4M,4C,4Kの上方には、転写装置3が配設されている。転写装置3には、次の部材が備えられている。転写体としての中間転写ベルト30、一次転写手段としての4つの一次転写ローラ31、二次転写手段としての二次転写ローラ36である。これに加えて、二次転写バックアップローラ32と、クリーニングバックアップローラ33と、テンションローラ34、ベルトクリーニング装置35が備えられている。
【0013】
中間転写ベルト30は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ32、クリーニングバックアップローラ33及びテンションローラ34によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ32が回転駆動することによって、中間転写ベルト30は図の矢印で示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0014】
4つの一次転写ローラ31は、それぞれ、各感光体5との間で中間転写ベルト30を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ31には、図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ31に印加されるようになっている。
【0015】
二次転写ローラ36は、二次転写バックアップローラ32との間で中間転写ベルト30を挟み込んで二次転写ニップを形成している。また、一次転写ローラ31と同様に、二次転写ローラ36にも図示しない電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ36に印加されるようになっている。
【0016】
ベルトクリーニング装置35は、中間転写ベルト30に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置35から伸びた図示しない廃トナー移送ホースは、図示しない廃トナー収容器の入り口部に接続されている。
【0017】
画像形成装置本体の上部には、ボトル収容部2が設けられており、ボトル収容部2には補給用のトナーを収容した4つのトナーボトル2Y,2M,2C,2Kが着脱可能に装着されている。各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kと上記各現像装置7との間には、図示しない補給路が設けてあり、この補給路を介して各トナーボトル2Y,2M,2C,2Kから各現像装置7へトナーが補給されるようになっている。
【0018】
一方、画像形成装置本体の下部には、記録媒体としての用紙Pを収容した給紙トレイ10や、給紙トレイ10から用紙Pを搬出する給紙ローラ11等が設けてある。ここで、記録媒体には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート等が含まれる。また、図示しないが、手差し給紙機構が設けてあってもよい。
【0019】
画像形成装置本体内には、用紙Pを給紙トレイ10から二次転写ニップを通過させて装置外へ排出するための搬送路Rが配設されている。搬送路Rにおいて、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向上流側には、二次転写ニップへ用紙Pを搬送する搬送手段としての一対のレジストローラ12が配設されている。
【0020】
また、二次転写ローラ36の位置よりも用紙搬送方向下流側には、用紙Pに転写された未定着画像を定着するための定着装置100が配設されている。さらに、定着装置100よりも搬送路Rの用紙搬送方向下流側には、用紙を装置外へ排出するための一対の排紙ローラ13が設けられている。また、画像形成装置本体の上面部には、装置外に排出された用紙をストックするための排紙トレイ14が設けてある。
【0021】
次に、図2に基づき、前述の定着装置100の一例について説明する。図2は、本発明の実施形態に係る定着装置の構成の一例を説明する概略図である。
定着装置100は、定着部材としての定着ベルト61と、複数の加熱手段50と、温度検出手段63と、異常温度検知手段65と、加圧部材としての加圧ローラ70と、ニップ形成部材80と、支持部材91と、反射部材93と、を備える。
定着装置100は、用紙Pが矢印A1から矢印A2に搬送される間に、用紙Pに転写された未定着画像Tを定着させる。
【0022】
定着ベルト61は、内部が中空な無端状のベルト部材であり、回転可能に設けられる。詳細には、定着ベルト61は、ニッケルもしくはステンレス(SUS)等の金属材料またはポリイミド(PI)などの樹脂材料で形成された内周側の基材と、テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などで形成された外周側の離型層によって構成されている。また、基材と離型層との間に、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等のゴム材料で形成された弾性層を介在させてもよい。
【0023】
定着ベルト61は、複数の加熱手段50により直接加熱され、定着ベルト61の厚さが0.2mm以下であることが好ましく、さらに望ましくは0.16mm以下の厚さとするのが良い。
厚さを0.2mm以下にすると、定着ベルトの低熱容量が図られるので、省エネ性が向上するという効果を得られる。
【0024】
複数の加熱手段50は、定着ベルト61を内周側(内部)から直接加熱する。複数の加熱手段50は、例えば、ハロゲンヒータを用いるとよい。また、複数の加熱手段50として、ハロゲンヒータ以外に、IH(Induction Heating)、抵抗発熱体、又はカーボンヒータ等を用いてもよい。
【0025】
複数の加熱手段50は、それぞれの両端部が定着装置100の側板(不図示)に固定されている。複数の加熱手段50は、画像形成装置本体に設けられた電源部により出力制御されて発熱するように構成されており、その出力制御は、温度検出手段63による定着ベルト61の表面温度の検知結果に基づいて行われる。このような複数の加熱手段50の出力制御によって、定着ベルト61の温度(定着温度)を所望の温度に設定できるようになっている。
【0026】
複数の加熱手段50は、第一熱源51と第二熱源52とを有する。
複数の加熱手段50の詳細については、図3、4を参照して後述する。
【0027】
温度検出手段63は、定着ベルト61の温度を検出する。温度検出手段63は、例えば温度センサを用いる。
異常温度検知手段65は、定着ベルト61に対向する位置に配置され、定着ベルト61の異常昇温を検知する。異常温度検知手段65は、例えば、NCセンサを用いる。
【0028】
加圧ローラ70は、定着ベルト61の外周面に当接する回転体であり、回転可能に設けられる。
加圧ローラ70は、芯金71と、弾性層72とを有する。
弾性層72は、芯金71の表面に設けられた発泡性シリコーンゴム、シリコーンゴム、又はフッ素ゴム等から成る。弾性層72は、表面にPFA又はPTFE等から成る離型層(図示せず)が設けられている。
加圧ローラ70は、図示しない加圧手段によって定着ベルト61側へ加圧され定着ベルト61を介してニップ形成部材80に当接している。
加圧ローラ70と定着ベルト61とが圧接する箇所では、加圧ローラ70の弾性層72が押しつぶされることで、所定の幅のニップ部Nが形成されている。
【0029】
加圧ローラ70は、画像形成装置本体に設けられた図示しないモータ等の駆動源によって回転駆動するように構成されている。加圧ローラ70が回転駆動すると、その駆動力がニップ部Nで定着ベルト61に伝達され、定着ベルト61が従動回転するようになっている。
【0030】
ニップ形成部材80は、定着ベルト61の内部に配置され、定着ベルト61を介して加圧ローラ70に当接してニップ部Nを形成する。
【0031】
ニップ形成部材80は、パッド81と、パッド81を巻いている均熱板82とを有する。そして、ニップ形成部材80は、定着ベルト61の軸方向又は加圧ローラ70の軸方向に亘って長手状に配設され、支持部材91によって固定支持されている。これにより、加圧ローラ70による圧力でニップ形成部材80に撓みが生じるのを防止し、加圧ローラ70の軸方向に沿って均一なニップ幅が得られるようにしている。なお、支持部材91は、ニップ形成部材80の撓み防止機能を満足するために、ステンレスや鉄等の機械的強度が高い金属材料で形成することが望ましいが、支持部材91を樹脂製とすることも可能である。
【0032】
また、パッド81は、耐熱温度200℃以上の耐熱性部材で構成されている。これにより、トナー定着温度域で、熱によるパッド81の変形を防止し、安定したニップ部Nの状態を確保して、出力画質の安定化を図っている。ニップ形成部材80には、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルニトリル(PEN)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの一般的な耐熱性樹脂を用いることが可能である。
【0033】
支持部材91は、ニップ形成部材80を支持する。
反射部材93は、複数の加熱手段50から放射される光を定着ベルト61へ反射する。
反射部材93は、反射面として表面を利用できるアルミニウムやステンレスなどが用いられて支持部材91と複数の加熱手段50との間に配設されている。本実施形態では、反射部材93が支持部材91に固定されている。また、反射部材93は、複数の加熱手段50によって直接加熱されるため、高融点の金属材料等で形成されることが望ましい。
【0034】
このように反射部材93を配設していることにより、複数の加熱手段50から支持部材91側に放射された光が定着ベルト61へ反射される。これにより、定着ベルト61に照射される光量を多くすることができ、定着ベルト61を効率良く加熱することが可能となる。また、複数の加熱手段50からの輻射熱が支持部材91等に伝達されるのを抑制することができるので、省エネルギー化も図れる。
【0035】
以上、画像形成装置および定着装置について構成の一例の概略を説明した。
次に、定着装置100が備える複数の加熱手段50について説明する。
複数の加熱手段50は、全幅に発光する熱源を、一つ以上搭載し、全幅に発光する熱源のみで動作するモードを持つことを特徴とする。
【0036】
定着装置100は、例えば、複数の加熱手段50として、定着ベルト61の長手方向全域を加熱する、一つ以上の第一熱源51と、定着ベルト61の長手方向に沿った位置で配光の異なる、一つ以上の第二熱源52と、を有する。
また、定着装置100は、複数の加熱手段50を動作させる動作モードとして、第一熱源51のみで動作する第一動作モードと、第一熱源51と第二熱源52とで動作する第二動作モードとを持つ。
定着装置100は、第一動作モードでは、画像安定性を重視した定着処理を実行し、第二動作モードでは、生産性を重視した定着処理を実行する。
このようにすることで、熱源の個体ばらつきに対して記録媒体面内の温度ばらつきを抑制し、温度安定性を高くすることができる。
【0037】
これにより、光沢度や画像濃度などの画像品質のばらつきを抑制することができる。また、近年の省エネ性能の高い、すなわち低熱容量の定着装置において、軸方向の温度分布を均す機能を向上させ、熱源の発熱分布が定着装置としての温度分布になるときの不具合を解消することができる。
【0038】
第一熱源51は、定着ベルト61の長手方向の全域で配光をほぼ均一にするとよい。
第二熱源52は、定着ベルト61の長手方向に沿って、配光の強弱を設けた範囲、配光を無くした範囲などを配置し、発熱量を変化させるとよい。
【0039】
第一熱源と第二熱源とは、例えば、画像形成装置本体が備える電源部により出力制御されて発熱する。電源部は、例えば、画像形成装置本体が備える、装置全体を制御する主制御部により制御される。従って、本発明に係る実施形態の定着装置の一例を備える画像形成装置は、定着部材の加熱工程として、第一熱源51が定着ベルト61を加熱する第一動作モード)と、第一熱源と第二熱源とが定着ベルト61を加熱する第二動作モードとのいずれかを用いて、定着ベルト61を加熱する。
【0040】
図3は、実施形態の定着装置が備える複数の加熱手段の構成例を説明する模式図である。
図3は、縦軸にヒータの発光強度(発熱量)を、横軸に長手方向位置を表し、複数の加熱手段50として、第一熱源51と第二熱源52との2本のハロゲンヒータを有することを基本とする構成例を示す。
図3において、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1、(D)は比較例2を示す。
【0041】
実施例1は、2本のヒータうち、1本の端部発光強度を高くした構成例である。複数の加熱手段50aとして、第一熱源51は、長手方向の全域で配光をほぼ均一にし、第二熱源52aは、両端部の発光強度を中央部より、差分αの発光強度で高くしている。
このようにすると、両方の熱源を使用することで立ち上がり直後の端部の端部温度ダレ(温度上昇の不均一)を解消できる効果がある。
【0042】
実施例2は、小サイズの生産性を最大限出せるようにした構成例である。複数の加熱手段50bとして、第一熱源51は、長手方向の全域で配光をほぼ均一にし、第二熱源52bは、中央部にのみ配光する。このようにすると、小サイズ用のヒータ発光幅以下の紙を印刷する場合には、第二熱源52bを使用する(第二動作モードで、第一熱源51と第二熱源52bとを使用する)ことで端部温度上昇を抑制できる。
【0043】
ここで、中央部は、例えば、定着ベルト61の長手方向(加圧ローラ70の軸方向)の中央部分を含む範囲とし、両端部は、定着ベルト61の長手方向の両側の端部を含む範囲とし、中央部と両端部との範囲は重ならない範囲とする。
【0044】
比較例1は、複数の加熱手段50pとして、中央ヒータ53pと端部ヒータ54pとを有する構成例であり、小サイズの用紙では中央ヒータ53pのみを点灯させ、大サイズの用紙では中央ヒータ53pと端部ヒータ54pとの両方を点灯させる。比較例1では、大サイズの用紙では、記録媒体面内の温度状態が熱源の個体ばらつきによって異なり、画像濃度や光沢度などのばらつきを生む原因となっていた。
【0045】
比較例2は、2本のヒータ両方とも全幅加熱するヒータ2本で構成した構成例である。複数の加熱手段50cとして、第二熱源52cは、第一熱源51と同様に長手方向の全域で配光をほぼ均一にしている。このようにすると、熱源の個体ばらつきを解消し、記録媒体面内の温度安定性を高くすることができるが、実施例1、2に比べて用紙サイズに応じて加熱することが困難となる。
【0046】
上述したように、本実施形態の定着装置100は、記録媒体のサイズの大小により生じる記録媒体面内の温度ばらつきを抑制できるように、記録媒体の大サイズの全幅を均して加熱する第一熱源を少なくとも一つ有し、第一熱源と配光が異なる第二熱源を少なくとも一つ有する。定着装置100は、記録媒体のサイズによって第一熱源と第二熱源とを選択することによって個体ばらつきによる温度ばらつきを抑制する。
【0047】
図4は、複数の加熱手段と温度検出手段と異常温度検知手段との配置例を説明する図である。図4において、複数の加熱手段として図3に示す構成例を用い、(A)は実施例1、(B)は実施例2、(C)は比較例1、(D)は比較例2を示す。
比較例1(図4(C))では、温度検出手段63と異常温度検知手段65とをそれぞれ、中央ヒータ53pと端部ヒータ54pとに対応させて少なくとも二つ配置していた。
一方、実施例1、2(図4(A)、(B))、比較例2(図4(D))では、温度検出手段63と異常温度検知手段65とをそれぞれ、第一熱源と第二熱源とが配置されている位置に一つ配置すればよく、センサの数を削減することができる。
【0048】
また、複数の加熱手段50を有する定着装置100は、以下のようにすることが好ましい。
定着装置100は、異常温度検知手段65を、熱源の発熱量が高い位置に対応する位置に設置することが好ましい(例えば、図4(A)、(B))。
このようにすると、軸方向発熱量が異なる熱源を使用する場合の安全性を担保することができる。
【0049】
また、定着装置100は、第一熱源51と第二熱源52との定格電圧の合算発熱量比を、両端部発熱量が中央部発熱量より5%から15%高くするとよい。
このようにすると、冷間状態からの立ち上げ直後などの端部放熱が大きい場合にも端部側の温度が下がってしまうことによる定着不良を防止できる。
【0050】
さらに、定着装置100は、第一熱源51の中央部発熱量より第二熱源52の中央部発熱量を小さくするとよい。
このようにすると、第二熱源52を冷間からの立ち上げ直後などに限定して補助的に使う場合には、第一熱源51の発熱量をなるべく多くすることが可能になる。これにより例えば、画像形成装置の総電力に制限がある場合(1500Wなど)に有効となる。
【0051】
さらに加えて、定着装置100は、少なくとも立上げ時は、第一熱源51、第二熱源52の両方を駆動させるとよい。
このようにすると、冷間状態からの立ち上げ直後などの端部放熱が大きい場合にも、端部側の温度が下がってしまうことによる定着不良を防止しつつ、短時間で定着装置を立ち上げることが可能になる。
【符号の説明】
【0052】
50、50a、50b、50c、50p 複数の加熱手段
51 第一熱源
52、52a、52b、52c 第二熱源
53p 中央ヒータ
54p 端部ヒータ
61 定着ベルト
63 温度検出手段
65 異常温度検知手段
70 加圧ローラ
80 ニップ形成部材
91 支持部材
93 反射部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【文献】特開2013‐164474号公報
図1
図2
図3
図4