(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】透明センシングデバイス、合わせガラス、及び透明センシングデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G09F 9/33 20060101AFI20241016BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20241016BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20241016BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20241016BHJP
H01L 33/54 20100101ALI20241016BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20241016BHJP
H01L 33/00 20100101ALI20241016BHJP
H01L 31/02 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G09F9/33
G09F9/30 309
G09F9/30 348A
G09F9/30 330
G09F9/00 362
G09F9/00 338
G09F9/30 349Z
B60J1/00 H
H01L33/54
H01L33/62
H01L33/00 L
H01L31/02 B
(21)【出願番号】P 2021532803
(86)(22)【出願日】2020-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2020026469
(87)【国際公開番号】W WO2021010219
(87)【国際公開日】2021-01-21
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019130927
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019183533
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】古賀 将英
(72)【発明者】
【氏名】垰 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】満居 暢子
【審査官】中村 直行
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10048560(US,B1)
【文献】特開2015-180726(JP,A)
【文献】特開2000-252395(JP,A)
【文献】特開2016-050442(JP,A)
【文献】国際公開第2018/066225(WO,A1)
【文献】特開2009-157605(JP,A)
【文献】特開2013-142804(JP,A)
【文献】特開2015-072306(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0058020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00 ー 9/46
B60R 11/02
B60J 1/00
H01L 33/56
H01L 33/54
H01L 33/62
H01L 33/00
H01L 31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材と、
前記透明基材上に配置され、250,000μm
2以下の面積を有するマイクロセンサと、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線と、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を直接覆うように、前記透明基材の全体に形成された封止層と、を備え、
前記封止層が、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂であ
り、
前記透明基材に対する水の接触角と前記封止層に対する水の接触角との差が30°以下である、
透明センシングデバイス。
【請求項2】
前記透明基材及び前記複数の配線の少なくとも一方の表面に凹凸が形成されている、
請求項1に記載の透明センシングデバイス。
【請求項3】
前記封止層と前記複数の配線との剥離接着強さが、1N/25mm以上である、
請求項1
又は2に記載の透明センシングデバイス。
【請求項4】
前記封止層と前記透明基材との剥離接着強さが、1N/25mm以上である、
請求項1
~3のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項5】
前記透明樹脂が、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びケイ素系樹脂のいずれかである、
請求項1~
4のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項6】
前記透明樹脂が、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーである、
請求項
5に記載の透明センシングデバイス。
【請求項7】
前記透明樹脂が、シリコーン樹脂である、
請求項
5に記載の透明センシングデバイス。
【請求項8】
前記透明基材上に配置された前記複数の配線における隣接する配線同士の間隔が3~100μmである、
請求項1~
7のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項9】
前記複数の配線に印加される電圧が、いずれも1.5V以上である、
請求項1~
8のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項10】
前記複数の配線が、銅又はアルミニウムを主成分とする金属である、
請求項1~
9のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項11】
前記透明基材上において画素ごとに少なくとも1つ配置されると共に、それぞれが10,000μm
2以下の面積を有する、発光ダイオード素子と、
前記発光ダイオード素子のそれぞれに接続された複数の表示用配線と、をさらに備えて表示機能を有し、
前記発光ダイオード素子及び前記複数の表示用配線が前記封止層によって覆われた、
請求項1~
10のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項12】
当該透明センシングデバイスが、自動車のウインドウガラスに搭載されており、
前記マイクロセンサが、車内及び車外の少なくともいずれかをモニタリングする、
請求項1~
11のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【請求項13】
一対のガラス板と、
前記一対のガラス板との間に設けられた透明センシングデバイスと、を備えた合わせガラスであって、
前記透明センシングデバイスは、
透明基材と、
前記透明基材上に配置され、250,000μm
2以下の面積を有するマイクロセンサと、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線と、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を直接覆うように、前記透明基材の全体に形成された封止層と、を備え、
前記封止層が、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂であ
り、
前記透明基材に対する水の接触角と前記封止層に対する水の接触角との差が30°以下である、
合わせガラス。
【請求項14】
自動車のウインドウガラスに用いられる、
請求項
13に記載の合わせガラス。
【請求項15】
前記マイクロセンサが、車内及び車外の少なくともいずれかをモニタリングする、
請求項
14に記載の合わせガラス。
【請求項16】
250,000μm
2以下の面積を有するマイクロセンサを透明基材上に配置し、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線を形成し、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を直接覆う封止層を前記透明基材の全体に形成する、透明センシングデバイスの製造方法であって、
前記封止層を、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂から構成
し、
前記透明基材に対する水の接触角と前記封止層に対する水の接触角との差が30°以下である、
透明センシングデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明センシングデバイス、合わせガラス、及び透明センシングデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)素子を画素に用いた表示装置が知られている。特許文献1には、このような表示装置のうち、当該表示装置を介して背面側を視認可能な透明表示装置が開示されている。関連技術として、透明基材上にマイクロセンサが設けられた透明センシングデバイスが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、このような透明表示装置や透明センシングデバイスに関し、以下の問題点を見出した。
このような透明表示装置では、透明基材上に形成されたLED素子やマイクロセンサ及びそれらに接続された配線を透明樹脂によって封止する必要がある。ここで、例えば透明樹脂に含まれる水分等に起因して、配線にエレクトロケミカルマイグレーションが発生し、近接した配線同士がショートする場合があった。その場合、少なくとも一部のLED素子やマイクロセンサは正常に機能しなくなるため、透明表示装置や透明センシングデバイスとしての信頼性に劣るという問題があった。
以下、「エレクトロケミカルマイグレーション」を単に「マイグレーション」という。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下[1]の構成を有する透明センシングデバイスを提供する。
[1]
透明基材と、
前記透明基材上に配置され、250,000μm2以下の面積を有するマイクロセンサと、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線と、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を覆う封止層と、を備え、
前記封止層が、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂である、
透明センシングデバイス。
【0006】
本発明の一態様においては、
[2]前記封止層と前記複数の配線との剥離接着強さが、1N/25mm以上である、
[1]に記載の透明センシングデバイス。
【0007】
[3]前記封止層と前記透明基材との剥離接着強さが、1N/25mm以上である、[1]又は[2]に記載の透明センシングデバイス。
【0008】
[4]前記透明樹脂が、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及びケイ素系樹脂のいずれかである、[1]~[3]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0009】
[5]前記透明樹脂が、シクロオレフィンポリマー又はシクロオレフィンコポリマーである、[4]に記載の透明センシングデバイス。
【0010】
[6]前記透明樹脂が、シリコーン樹脂である、[4]に記載の透明センシングデバイス。
【0011】
[7]前記透明基板上に配置された前記複数の配線における隣接する配線同士の間隔が3~100μmである、[1]~[6]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0012】
[8]前記複数の配線に印加される電圧が、いずれも1.5V以上である、[1]~[7]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0013】
[9]前記複数の配線が、銅又はアルミニウムを主成分とする金属である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0014】
[10]前記透明基材上において画素ごとに少なくとも1つ配置されると共に、それぞれが10,000μm2以下の面積を有する、発光ダイオード素子と、前記発光ダイオード素子のそれぞれに接続された複数の表示用配線と、をさらに備えて表示機能を有し、前記発光ダイオード素子及び前記複数の表示用配線が前記封止層によって覆われた、[1]~[9]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0015】
[11]当該透明センシングデバイスが、自動車のウインドウガラスに搭載されており、前記マイクロセンサが、車内及び車外の少なくともいずれかをモニタリングする、[1]~[10]のいずれか一項に記載の透明センシングデバイス。
【0016】
[12]
一対のガラス板と、
前記一対のガラス板との間に設けられた透明センシングデバイスと、を備えた合わせガラスであって、
前記透明センシングデバイスは、
透明基材と、
前記透明基材上に配置され、250,000μm2以下の面積を有するマイクロセンサと、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線と、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を覆う封止層と、を備え、
前記封止層が、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂である、
合わせガラス。
【0017】
[13]自動車のウインドウガラスに用いられる、[12]に記載の合わせガラス。
【0018】
[14]前記マイクロセンサが、車内及び車外の少なくともいずれかをモニタリングする、[13]に記載の合わせガラス。
【0019】
[15]
250,000μm2以下の面積を有するマイクロセンサを透明基材上に配置し、
前記マイクロセンサに接続された複数の配線を形成し、
前記透明基材上に配置された前記マイクロセンサ及び前記複数の配線を覆う封止層を形成する、透明センシングデバイスの製造方法であって、
前記封止層を、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂から構成する、
透明センシングデバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、配線のマイグレーションが抑制され、信頼性に優れた透明センシングデバイスを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1の実施形態に係る透明表示装置の一例を示す模式的な部分平面図である。
【
図2】
図1におけるII-II切断線による断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図8】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
【
図11】第2の実施形態に係る合わせガラスの一例を示す模式的な平面図である。
【
図12】第3の実施形態に係る透明表示装置の一例を示す模式的な部分平面図である。
【
図13】第4の実施形態に係る透明センシングデバイスの一例を示す模式的な部分平面図である。
【
図15】例2に係る透明表示装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施形態に限定される訳ではない。また、説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜、簡略化されている。
【0023】
本明細書において「透明表示装置」とは、表示装置の背面側に位置する人物や背景等の視覚情報を、所望の使用環境下で視認可能な表示装置を指す。なお、視認可能とは、少なくとも表示装置が非表示状態、すなわち通電されていない状態で判定される。
同様に、本明細書において「透明センシングデバイス」とは、センシングデバイスの背面側に位置する人物や背景等の視覚情報を、所望の使用環境下で視認可能なセンシングデバイスを指す。「センシングデバイス」とは、センサを利用して、各種情報を取得可能な部材を指す。
【0024】
本明細書において、「透明」とは、可視光の透過率が40%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上であることを指す。また、透過率5%以上かつヘイズ値が10以下であることを指していてもよい。透過率が5%以上であれば、室内から日中の屋外を見た際に、室内と同程度以上の明るさで屋外を見ることができ、充分な視認性を確保できる。
【0025】
また、透過率が40%以上であれば、透明表示装置の前面側と背面側との明るさが同程度であっても、透明表示装置の背面側を実質的に問題なく視認できる。また、ヘイズ値が10以下であれば、背景のコントラストを充分に確保できる。
「透明」とは、色が付与されているか否かは問わず、つまり無色透明であってもよく、有色透明であってもよい。
なお、透過率は、ISO9050に準拠する方法により測定された値(%)を指す。ヘイズ値は、ISO14782に準拠する方法により測定された値を指す。
【0026】
(第1の実施形態)
<透明表示装置の構成>
まず、
図1及び
図2を参照して、第1の実施形態に係る透明表示装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施形態に係る透明表示装置の一例を示す模式的な部分平面図である。
図2は、
図1におけるII-II切断線による断面図である。
なお、当然のことながら、
図1及び
図2に示した右手系xyz直交座標は、構成要素の位置関係を説明するための便宜的なものである。通常、z軸正向きが鉛直上向き、xy平面が水平面である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、本実施形態に係る透明表示装置は、透明基材10、発光部20、ICチップ30、配線40、封止層50を備えている。透明表示装置における表示領域101は、複数の画素から構成され、画像が表示される領域である。なお、画像は文字を含む。
図1に示すように、表示領域101は、行方向(x軸方向)及び列方向(y軸方向)に並んだ複数の画素から構成されている。
図1には、表示領域101の一部が示されており、行方向及び列方向に2画素ずつ計4画素が示されている。ここで、1つの画素PIXが一点鎖線によって囲んで示されている。また、
図1では、
図2に示した透明基材10及び封止層50が省略されている。さらに、
図1は平面図だが、理解を容易にするため、発光部20及びICチップ30がドット表示されている。
【0028】
<発光部20、ICチップ30、及び配線40の平面配置>
まず、
図1を参照して、発光部20、IC(Integrated Circuit)チップ30、及び配線40の平面配置について説明する。
図1に示すように、一点鎖線によって囲まれた画素PIXが、行方向(x軸方向)に画素ピッチPxで、列方向(y軸方向)に画素ピッチPyで、マトリクス状に配置されている。ここで、
図1に示すように、各画素PIXは、発光部20及びICチップ30を備えている。すなわち、発光部20及びICチップ30は、行方向(x軸方向)に画素ピッチPxで、列方向(y軸方向)に画素ピッチPyで、マトリクス状に配置されている。
なお、所定の方向に所定の画素ピッチで配置されれば、画素PIXすなわち発光部20の配置形式はマトリクス状に限らない。
【0029】
図1に示すように、各画素PIXにおける発光部20は、少なくとも1つの発光ダイオード素子(以下、LED素子)を含む。すなわち、本実施形態による透明表示装置は、各画素PIXにLED素子を用いる表示装置であり、LEDディスプレイ等と呼ばれる。
【0030】
図1の例では、各発光部20が、赤色系のLED素子21、緑色系のLED素子22、及び青色系のLED素子23を含んでいる。LED素子21~23は、1つの画素を構成する副画素(サブピクセル)に対応する。このように、各発光部20が、光の三原色である赤、緑、青を発光するLED素子21~23を有するため、本実施形態に係る透明表示装置は、フルカラー画像を表示できる。
なお、各発光部20は同系色のLED素子を2つ以上含んでいてもよい。これにより、画像のダイナミクスレンジを拡大できる。
【0031】
LED素子21~23は、微小サイズを有し、いわゆるマイクロLED素子である。具体的には、透明基材10上におけるLED素子21の幅(x軸方向の長さ)及び長さ(y軸方向の長さ)はそれぞれ、例えば100μm以下、好ましくは50μm以下、より好ましくは20μm以下である。LED素子22、23についても同様である。LED素子の幅及び長さの下限は、製造上の諸条件等から例えば3μm以上である。
なお、
図1におけるLED素子21~23の寸法すなわち幅及び長さは同一であるが、互いに異なっていてもよい。
【0032】
また、各LED素子21~23の透明基材10上における占有面積は、例えば10,000μm
2以下、好ましくは1,000μm
2以下、より好ましくは100μm
2以下である。なお、各LED素子の占有面積の下限は、製造上の諸条件等から例えば10μm
2以上である。ここで、本明細書において、LED素子や配線等の構成部材の占有面積は、
図1におけるxy平面視での面積を指す。
なお、
図1に示したLED素子21~23の形状は、矩形状であるが、特に限定されない。例えば、正方形、六角形、錐構造、ピラー形状等でもよい。
【0033】
ここで、LED素子21~23は、例えば、光を視認側に効率よく取り出すためのミラー構造を有している。そのため、LED素子21~23の透過率は、例えば10%以下程度と低い。しかしながら、本実施形態に係る透明表示装置では、上述の通り、面積10,000μm2以下の微小サイズのLED素子21~23を用いている。そのため、例えば数10cm~2m程度の近距離から、透明表示装置を観察するような場合でも、LED素子21~23はほとんど視認できない。また、表示領域101において透過率が低い領域が狭く、背面側の視認性に優れている。その上、配線40等の配置の自由度も大きい。
なお、「表示領域101において透過率が低い領域」とは、例えば、透過率が20%以下の領域である。以下同様である。
【0034】
また、微小サイズのLED素子21~23を用いているため、透明表示装置を湾曲させても、LED素子が損傷し難い。そのため、本実施形態に係る透明表示装置は、自動車用のウインドウガラスのような湾曲した透明板に装着したり、湾曲した2枚の透明板の間に封入したりして使用できる。ここで、透明基材10として可撓性を有する材料を用いれば、本実施形態に係る透明表示装置を湾曲させられる。
【0035】
図示したLED素子21~23は、チップ型であるが、特に限定されない。LED素子21~23は、樹脂によりパッケージングされていなくてもよいし、全体あるいは一部がパッケージングされていてもよい。パッケージング樹脂がレンズ機能を備え、光の利用率や、外部への取り出し効率を上げるものでもよい。また、その場合、LED素子21~23がそれぞれ別々にパッケージングされたものでもよいし、3つのLED素子21~23が一緒にパッケージングされた3in1チップでもよい。あるいは、各LED素子は同一の波長で発光するが、パッケージング樹脂に含まれる蛍光体等により異なる波長の光を取り出せるものであってもよい。
【0036】
なお、LED素子21~23がパッケージングされている場合、上述のLED素子の寸法及び面積はそれぞれ、パッケージングされた状態での寸法及び面積である。3つLED素子21~23が一緒にパッケージングされている場合には、各LED素子の面積は、全体の面積の3分の1とする。
【0037】
LED素子21~23は、特に限定されないが、例えば無機材料である。赤色系のLED素子21は、例えばAlGaAs、GaAsP、GaP等である。緑色系のLED素子22は、例えばInGaN、GaN、AlGaN、GaP、AlGaInP、ZnSe等である。青色系のLED素子23は、例えばInGaN、GaN、AlGaN、ZnSe等である。
【0038】
LED素子21~23の発光効率すなわちエネルギー変換効率は、例えば1%以上、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上である。LED素子21~23の発光効率が1%以上であると、上述のように微小サイズのLED素子21~23でも充分な輝度が得られ、表示装置として日中にも利用できる。また、LED素子の発光効率が15%以上であると、発熱が抑制され、樹脂接着層を用いた合わせガラス内部への封入が容易になる。
【0039】
LED素子21~23は、例えば液相成長法、HVPE(Hydride Vapor Phase Epitaxy)法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法等により成長させた結晶を切断することによって得られる。得られたLED素子21~23が、透明基材10上に実装される。
あるいは、マイクロトランスファープリンティング等によって、半導体ウェハから剥離し、透明基材10上に転写することによって、LED素子21~23を形成してもよい。
【0040】
画素ピッチPx、Pyはそれぞれ、例えば100~3000μm、好ましくは180~1000μm、より好ましくは250~400μmである。画素ピッチPx、Pyを上記範囲とすることによって、充分な表示能を確保しつつ、高い透明性を実現できる。また、透明表示装置の背面側からの光によって生じ得る回折現象を抑制できる。
また、本実施形態に係る透明表示装置の表示領域101における画素密度は、例えば10ppi以上、好ましくは30ppi以上、より好ましくは60ppi以上である。
【0041】
また、1画素PIXの面積はPx×Pyで表すことができる。1画素の面積は、例えば1×104μm2~9×106μm2、好ましくは3×104~1×106μm2、より好ましくは6×104~2×105μm2である。1画素の面積を1×104μm2~9×106μm2とすることで、適切な表示能を確保しつつ、表示装置の透明性を向上させることができる。1画素の面積は、表示領域101のサイズ、用途、視認距離等によって適宜選択すればよい。
【0042】
1画素の面積に対するLED素子21~23の占有面積の割合は、例えば30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは1%以下である。1画素の面積に対するLED素子21~23の占有面積の割合を30%以下とすることで、透明性及び背面側の視認性が向上する。
【0043】
図1では、各画素において、3つのLED素子21~23が、この順にx軸正方向に一列に並べて配置されているが、これに限定されない。例えば、3つのLED素子21~23の配置順を変更してもよい。また、3つのLED素子21~23を、y軸方向に並べてもよい。あるいは、3つのLED素子21~23を三角形の頂点に配置してもよい。
【0044】
また、
図1に示すように、各発光部20が複数のLED素子21~23を備えている場合、発光部20におけるLED素子21~23同士の間隔は、例えば100μm以下、好ましくは10μm以下である。また、LED素子21~23同士は、互いに接するように配置されていてもよい。これにより、第1電源分岐線41aを共通化し易くなり、開口率を向上させることができる。
【0045】
なお、
図1の例では、各発光部20における複数のLED素子の配置順、配置方向等は互いに同じだが、異なっていてもよい。また、各発光部20が波長の異なる光を発する3つのLED素子を含む場合、一部の発光部20では、LED素子をx軸方向又はy軸方向に並べて配置し、他の発光部20では、各色のLED素子を三角形の頂点に配置してもよい。
【0046】
図1の例では、ICチップ30は、画素PIXごとに配置され、発光部20を駆動する。具体的には、ICチップ30は、LED素子21~23のそれぞれに駆動線45を介して接続されており、LED素子21~23を個別に駆動できる。
なお、ICチップ30を複数の画素ごとに配置し、各ICチップ30が接続された複数の画素を駆動してもよい。例えば、ICチップ30を4画素ごとに1個配置すれば、ICチップ30の個数を
図1の例の1/4に削減し、ICチップ30の占有面積を削減できる。
【0047】
ICチップ30の面積は、例えば100,000μm2以下、好ましくは10,000μm2以下、より好ましくは5,000μm2以下である。ICチップ30の透過率は20%以下程度と低いが、上記のサイズのICチップ30を用いることによって、表示領域101において透過率が低い領域が狭くなり、背面側の視認性が向上する。
【0048】
ICチップ30としては、例えば、アナログ領域と論理領域とを備えたハイブリッドICである。アナログ領域は、例えば、電流制御回路及び変圧回路等を含んでいる。
なお、LED素子21~23とICチップ30とが一緒に樹脂封止されたICチップ付LED素子を用いてもよい。また、ICチップ30に代えて、薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)を含んだ回路を用いてもよい。さらに、ICチップ30は必須ではない。
他方、ICチップ30にマイクロセンサが搭載されていてもよい。すなわち、本実施形態に係る透明表示装置は、透明センシングデバイスであってもよい。マイクロセンサの詳細については、第4の実施形態において後述する。
【0049】
本実施形態に係る配線40は表示用配線であって、
図1に示すように、電源線41、グランド線42、行データ線43、列データ線44、及び駆動線45を複数ずつ備えている。
図1の例では、電源線41、グランド線42、及び列データ線44はy軸方向に延設されている。他方、行データ線43は、x軸方向に延設されている。
【0050】
また、各画素PIXにおいて、電源線41及び列データ線44は、発光部20及びICチップ30よりもx軸負方向側に設けられており、グランド線42は、発光部20及びICチップ30よりもx軸正方向側に設けられている。ここで、電源線41は、列データ線44よりもx軸負方向側に設けられている。また、各画素PIXにおいて、行データ線43は、発光部20及びICチップ30よりもy軸負方向側に設けられている。
【0051】
さらに、詳細には後述するが、
図1に示すように、電源線41は、第1電源分岐線41a及び第2電源分岐線41bを備えている。グランド線42は、グランド分岐線42aを備えている。行データ線43は、行データ分岐線43aを備えている。列データ線44は、列データ分岐線44aを備えている。これら各分岐線は、配線40に含まれる。
【0052】
図1に示すように、y軸方向に延設された各電源線41は、y軸方向に並設された各画素PIXの発光部20及びICチップ30に接続されている。より詳細には、各画素PIXにおいて、電源線41よりもx軸正方向側において、LED素子21~23がこの順にx軸正方向に並設されている。そのため、電源線41からx軸正方向に分岐した第1電源分岐線41aが、LED素子21~23のy軸正方向側端部に接続されている。
【0053】
また、各画素PIXにおいて、ICチップ30は、LED素子21~23のy軸負方向側に配置されている。そのため、LED素子21と列データ線44との間において、第1電源分岐線41aからy軸負方向に分岐した第2電源分岐線41bが、直線状に延設され、ICチップ30のy軸正方向側端部のx軸負方向側に接続されている。
【0054】
図1に示すように、y軸方向に延設された各グランド線42は、y軸方向に並設された各画素PIXのICチップ30に接続されている。具体的には、グランド線42からx軸負方向に分岐したグランド分岐線42aが、直線状に延設され、ICチップ30のx軸正方向側端部に接続されている。
ここで、グランド線42は、グランド分岐線42a、ICチップ30、及び駆動線45を介して、LED素子21~23に接続されている。
【0055】
図1に示すように、x軸方向に延設された各行データ線43は、x軸方向(行方向)に並設された各画素PIXのICチップ30に接続されている。具体的には、行データ線43からy軸正方向に分岐した行データ分岐線43aが、直線状に延設され、ICチップ30のy軸負方向側端部に接続されている。
ここで、行データ線43は、行データ分岐線43a、ICチップ30、及び駆動線45を介して、LED素子21~23に接続されている。
【0056】
図1に示すように、y軸方向に延設された各列データ線44は、y軸方向(列方向)に並設された各画素PIXのICチップ30に接続されている。具体的には、列データ線44からx軸正方向に分岐した列データ分岐線44aが、直線状に延設され、ICチップ30のx軸負方向側端部に接続されている。
ここで、列データ線44は、列データ分岐線44a、ICチップ30、及び駆動線45を介して、LED素子21~23に接続されている。
【0057】
駆動線45は、各画素PIXにおいて、LED素子21~23とICチップ30とを接続している。具体的には、各画素PIXにおいて、3本の駆動線45がy軸方向に延設され、それぞれがLED素子21~23のy軸負方向側端部とICチップ30のy軸正方向側端部とを接続している。
【0058】
なお、
図1に示した電源線41、グランド線42、行データ線43、列データ線44、及びそれらの分岐線、並びに駆動線45の配置はあくまでも一例であり、適宜変更可能である。例えば、電源線41及びグランド線42の少なくとも一方が、y軸方向でなくx軸方向に延設されていてもよい。また、電源線41と列データ線44とを入れ換えた構成でもよい。
【0059】
また、
図1に示した構成全体を、上下反転させた構成あるいは左右反転させた構成等でもよい。
さらに、行データ線43、列データ線44、及びそれらの分岐線、並びに駆動線45は必須ではない。
【0060】
配線40は、例えば銅(Cu)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)等の金属である。このうち、低抵抗率であることやコスト的な観点から銅又はアルミニウムを主成分とする金属であることが好ましい。また、配線40は、反射率を低減することを目的として、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、酸化銅、カーボン等の材料で被覆されていてもよい。また、被覆した材料の表面に凹凸が形成されていてもよい。
【0061】
図1に示した表示領域101における配線40の幅は、いずれも例えば1~100μm、好ましくは3~20μmである。配線40の幅が100μm以下であるため、例えば数10cm~2m程度の近距離から、透明表示装置を観察するような場合でも、配線40はほとんど視認できず、背面側の視認性に優れている。他方、後述する厚さの範囲の場合、配線40の幅を1μm以上であれば、配線40の抵抗の過度な上昇を抑制し、電圧降下や信号強度の低下を抑制できる。また、配線40による熱伝導の低下も抑制できる。
【0062】
ここで、
図1に示すように、配線40が主にx軸方向及びy軸方向に延びている場合、透明表示装置の外部から照射された光によってx軸方向及びy軸方向に延びた十字回折像が発生し、透明表示装置の背面側の視認性が低下する場合がある。各配線の幅を小さくすることによって、この回折を抑制し、背面側の視認性をさらに向上させることができる。回折を抑制する観点から、配線40の幅を50μm以下、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下としてもよい。
【0063】
配線40の電気抵抗率は、例えば1.0×10-6Ωm以下、好ましくは2.0×10-8Ωm以下である。また、配線40の熱伝導率は、例えば150~5,500W/(m・K)、好ましくは350~450W/(m・K)である。
【0064】
図1に示した表示領域101における隣接する配線40同士の間隔は、例えば3~100μm、好ましくは5~30μmである。配線40が密になっている領域があると、背面側の視認を妨げる場合がある。隣接する配線40同士の間隔を3μm以上とすることによって、そのような視認の妨げを抑制できる。他方、隣接する配線40同士の間隔を100μm以下とすることによって、充分な表示能を確保できる。
なお、配線40が湾曲していること等によって配線40同士の間隔が一定でない場合、上述の隣接する配線40同士の間隔は、その最小値を指す。
【0065】
また、配線40のマイグレーションは電界強度が大きい程、発生し易い。ここで、電界強度は、「電圧/隣接する配線40同士の間隔」で定義される。そのため、配線40に印加される電圧が大きい程、また、隣接する配線40同士の間隔が小さい程、電界強度が大きくなり、マイグレーションが発生し易くなる。配線40に印加される電圧は、例えば1.5~5Vである。上記の通り、隣接する配線40同士の間隔が3~100μmであれば、最大電界強度は、5V/3μm=1,670kV/m程度となる。
【0066】
1画素の面積に対する配線40の占有面積の割合は、例えば30%以下、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、さらに好ましくは3%以下である。配線40の透過率は、例えば20%以下、あるいは10%以下と低い。しかしながら、1画素において配線40の占有面積の割合を30%以下とすることによって、表示領域101において透過率の低い領域が狭くなり、背面側の視認性が向上する。
さらに、1画素の面積に対する発光部20、ICチップ30、及び配線40の占有面積の合計は、例えば30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下である。
【0067】
<透明表示装置の断面構成>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る透明表示装置の断面構成について説明する。
透明基材10は、絶縁性を有する透明な材料である。
図2の例では、透明基材10は、主基板11及び接着剤層12である2層構造を有している。
主基板11は、詳細には後述するように、例えば透明樹脂である。
接着剤層12は、例えばエポキシ系、アクリル系、オレフィン系、ポリイミド系、ノボラック系等の透明樹脂接着剤である。
なお、主基板11は、厚さが例えば200μm以下、好ましくは100μm以下等の薄いガラス板でもよい。また、接着剤層12は、必須ではない。
【0068】
主基板11を構成する透明樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂、セルロース、アセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリイミド(PI)等のイミド系樹脂、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等のアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂等が挙げられる。
【0069】
上記の主基板11に用いられる材料のうち、耐熱性向上の観点からはポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)が好ましい。また、複屈折率が低く、透明基材を通して見た像の歪みや滲みを低減できる点では、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)、ポリビニルブチラール(PVB)等が好ましい。
上記材料を単一で用いても、2種以上の材料を混合して用いてもよい。さらに、異なる材料の平板を積層させて主基板11を構成してもよい。
【0070】
透明基材10全体の厚さは、例えば3~1000μm、好ましくは5~200μmである。透明基材10の可視光の内部透過率は、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
また、透明基材10は可撓性を有していてもよい。これにより、例えば透明表示装置を湾曲した透明板に装着したり、湾曲した2枚の透明板の間に挟んで使用したりできる。また、100℃以上に加熱した際に収縮する材料であってもよい。
【0071】
図2に示すように、LED素子21~23及びICチップ30は、透明基材10すなわち接着剤層12上に設けられており、透明基材10上に配置された配線40と接続されている。
図2の例では、配線40は、主基板11上に形成された第1メタル層M1、及び接着剤層12上に形成された第2メタル層M2から構成されている。
【0072】
配線40の厚さすなわち第1メタル層M1の厚さと第2メタル層M2の厚さとの合計は、例えば0.1~10μm、好ましくは0.5~5μmである。第1メタル層M1の厚さは、例えば0.5μm程度、第2メタル層M2の厚さは、例えば3μm程度である。
【0073】
詳細には、
図2に示すように、y軸方向に延設されたグランド線42は、電流量が多いため、第1メタル層M1及び第2メタル層M2を含む2層構造を有している。すなわち、グランド線42が設けられた部位では、接着剤層12が除去され、第1メタル層M1上に第2メタル層M2が形成されている。
図2には示されていないが、
図1に示した電源線41、行データ線43、及び列データ線44も、同様に、第1メタル層M1及び第2メタル層M2を含む2層構造を有している。
【0074】
ここで、
図1に示すように、y軸方向に延設された電源線41、グランド線42、及び列データ線44と、x軸方向に延設された行データ線43とは、交差している。
図2には図示されていないが、この交差部では、行データ線43は第1メタル層M1のみから構成され、電源線41、グランド線42、及び列データ線44は第2メタル層M2のみから構成されている。そして、この交差部では、第1メタル層M1と第2メタル層M2との間に接着剤層12が設けられ、第1メタル層M1と第2メタル層M2とが絶縁されている。
同様に、
図1に示した列データ線44と第1電源分岐線41aとの交差部では、第1電源分岐線41aが第1メタル層M1のみから構成され、列データ線44が第2メタル層M2のみから構成されている。
【0075】
また、
図2の例では、グランド分岐線42a、駆動線45、及び第1電源分岐線41aは第2メタル層M2のみから構成され、LED素子21~23及びICチップ30の端部を覆うように形成されている。
図2には示されていないが、第2電源分岐線41b、行データ分岐線43a、及び列データ分岐線44aも、同様に、第2メタル層M2のみから構成されている。
【0076】
なお、第1電源分岐線41aは、上述の通り、列データ線44との交差部では第1メタル層M1のみから構成され、それ以外の部位では第2メタル層M2のみから構成されている。また、透明基材10上に形成された配線40上に、銅、銀、金製等の金属パッドを配置し、その上にLED素子21~23及びICチップ30の少なくとも一方を配置してもよい。
【0077】
封止層50は、発光部20、ICチップ30、及び配線40を覆うように、透明基材10上の略全面に形成されている。封止層50は、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂である。透明樹脂の硬化後の吸水率が、0.1%以下であるとより好ましく、0.01%以下であるとさらに好ましい。このような構成によって、封止層50中の水分に起因する配線40のマイグレーションが抑制され、信頼性に優れた透明表示装置を提供できる。
なお、吸水率は、JIS7209のB法に準拠する方法により測定された値(%)を指す。
【0078】
封止層50を構成する透明樹脂は、例えば、シクロオレフィンポリマー(COP)、シクロオレフィンコポリマー(COC)等のオレフィン系樹脂、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)等のアクリル系樹脂、シリコーン樹脂等のケイ素系樹脂である。また、水酸基(OH基)を含まない透明樹脂が、硬化後の吸水率が低く、好ましい。
【0079】
封止層50の厚さは、例えば3~1000μm、好ましくは5~200μmである。
封止層50の可視光の内部透過率は、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは90%以上である。
【0080】
封止層50と透明基材10との剥離接着強さは、1N/25mm以上であることが好ましい。封止層50と配線40との剥離接着強さも同様である。ここで、剥離接着強さは、JIS K6854-1(90°剥離)に準拠する方法により測定された値を指す。
【0081】
密着性を高める観点から、透明基材10に対する水の接触角と封止層50に対する水の接触角との差が30°以下であることが好ましい。配線40に対する水の接触角と封止層50に対する水の接触角との差も同様である。ここで、水の接触角は、JIS R3257に準拠する方法により測定された値を指す。
【0082】
また、アンカー効果によって密着性が高まるように、透明基材10や配線40の表面に凹凸が形成されていてもよい。封止層50の密着性が高まることによって、外部から侵入する水分に起因する配線40のマイグレーションを抑制できる。
【0083】
以上に説明した通り、本実施形態に係る透明表示装置は、透明基材10上に形成された配線40を覆う封止層50が、硬化後の吸水率が1%以下の透明樹脂である。そのため、封止層50中の水分に起因する配線40のマイグレーションが抑制され、信頼性に優れた透明表示装置を提供できる。
【0084】
<透明表示装置の製造方法>
次に、
図2~
図10を参照して、第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例について説明する。
図3~
図10は、第1の実施形態に係る透明表示装置の製造方法の一例を示す断面図である。
図3~
図10は、
図2に対応した断面図である。
【0085】
まず、
図3に示すように、主基板11上の略全面に第1メタル層M1を成膜した後、第1メタル層M1をフォトリソグラフィーによってパターニングし、下層配線を形成する。具体的には、
図1に示した電源線41、グランド線42、行データ線43、及び列データ線44等が形成される位置に、第1メタル層M1によって下層配線を形成する。
なお、電源線41、グランド線42、及び列データ線44における行データ線43との交差部には下層配線を形成しない。
【0086】
次に、
図4に示すように、主基板11上の略全面に接着剤層12を成膜した後、タック性を有する接着剤層12上にLED素子21~23及びICチップ30を実装する。
次に、
図5に示すように、主基板11及び接着剤層12を含む透明基材10上の略全面にフォトレジストFR1を成膜した後、第1メタル層M1上のフォトレジストFR1をパターニングによって除去する。ここで、
図1に示した行データ線43における電源線41、グランド線42、及び列データ線44との交差部のフォトレジストFR1は除去されない。
【0087】
次に、
図6に示すように、フォトレジストFR1が除去された部位の接着剤層12をドライエッチングによって除去し、第1メタル層M1すなわち下層配線を露出させる。
次に、
図7に示すように、透明基材10上のフォトレジストFR1を全て除去する。その後、透明基材10上の略全面に図示しないめっき用シード層を形成する。
【0088】
次に、
図8に示すように、透明基材10上の略全面にフォトレジストFR2を成膜した後、上層配線を形成する部位のフォトレジストFR2をパターニングによって除去し、シード層を露出させる。
次に、
図9に示すように、フォトレジストFR2が除去された部位すなわちシード層上に、めっきによって第2メタル層M2を形成する。これによって、第2メタル層M2によって上層配線が形成される。
【0089】
次に、
図10に示すように、フォトレジストFR2を除去する。さらに、フォトレジストFR2の除去によって露出したシード層を、エッチングによって除去する。
最後に、
図2に示すように、透明基材10上の略全面に封止層50を形成することによって、透明表示装置が得られる。
【0090】
(第2の実施形態)
<透明表示装置を備える合わせガラスの構成>
次に、
図11を参照して、第2の実施形態に係る合わせガラスの構成について説明する。
図11は、第2の実施形態に係る合わせガラスの一例を示す模式的な平面図である。
図11に示すように、第2の実施形態に係る合わせガラス200は、一対のガラス板を貼り合わせたものであって、当該一対のガラス板の間に第1の実施形態に係る透明表示装置100を備えている。
図11に示された合わせガラス200は、自動車のウインドウガラスのうちフロントガラスに用いられるが、特に限定されない。
【0091】
図11に示すように、合わせガラス200の周縁全体に例えば黒色の遮蔽部201が設けられている。遮蔽部201は、日光を遮蔽し、合わせガラス200を自動車に組み付けるための接着剤を紫外線から保護する。また、遮蔽部201によって、当該接着剤が外部から視認できなくなる。
【0092】
図11に示すように、透明表示装置100は、
図1に示した表示領域101に加え、表示領域の周囲に設けられた非表示領域102を備えている。ここで、表示領域101は、第1の実施形態において説明した通り、多数の画素から構成され、画像が表示される領域であるため、詳細な説明を省略する。
なお、
図11は平面図だが、理解を容易にするため、非表示領域102及び遮蔽部201がドット表示されている。
【0093】
非表示領域102は、画素を備えておらず、画像が表示されない領域である。非表示領域102には、
図1に示した電源線41、グランド線42、行データ線43、及び列データ線44に接続された太幅の配線が密集して設けられている。非表示領域102における配線の幅は、例えば100~10,000μm、好ましくは100~5,000μmである。配線同士の間隔は、例えば3~5,000μm、好ましくは50~1,500μmである。
【0094】
そのため、表示領域101が透明なのに対し、非表示領域102は不透明であって、車内から視認できてしまう。ここで、非表示領域102が視認できると、合わせガラス200の意匠性が低下する。そこで、第2の実施形態に係る合わせガラス200では、透明表示装置100の非表示領域102の少なくとも一部が、遮蔽部201に設けられている。遮蔽部201に設けられた非表示領域102は、遮蔽部201に隠れ、視認できない。そのため、非表示領域102の全体を視認できる場合よりも、合わせガラス200の意匠性が向上する。
【0095】
(第3の実施形態)
<透明表示装置の構成>
次に、
図12を参照して、第3の実施形態に係る透明表示装置の構成について説明する。
図12は、第3の実施形態に係る透明表示装置の一例を示す模式的な部分平面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る透明表示装置は、
図1に示した第1の実施形態に係る透明表示装置の構成に加え、表示領域101にセンサ70を備えている。
【0096】
図12に示した例では、センサ70は所定の画素PIX間に設けられており、電源線41及びグランド線42に接続されている。また、センサ70からy軸方向に延びたデータ出力線46を介して、センサ70による検出データが出力される。他方、センサ70までy軸方向に延びた制御信号線47を介して、制御信号がセンサ70に入力され、センサ70が制御される。センサ70は、単数でも複数でもよい。複数のセンサ70が所定の間隔で、例えばx軸方向もしくはy軸方向に配置されていてもよい。
【0097】
以下の説明では、本実施形態に係る透明表示装置が自動車のウインドウガラスのうちフロントガラスに搭載されている場合について説明する。すなわち、本実施形態に係る透明表示装置は、第2の実施形態に係る合わせガラスにも適用できる。
【0098】
センサ70は、例えば、車内及び車外の照度を検知するための照度センサ(例えば受光素子)である。例えば、センサ70が検知した照度に応じて、LED素子21~23による表示領域101の輝度を制御する。例えば、車内の照度に対して車外の照度が大きい程、LED素子21~23による表示領域101の輝度も大きくする。このような構成によって、透明表示装置の視認性がより向上する。
【0099】
また、センサ70は、観察者(例えば運転者)の視線を感知するための赤外線センサ(例えば受光素子)やイメージセンサ(例えばCMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)イメージセンサ)であってもよい。例えば、センサ70が視線を感知した場合のみ、透明表示装置を駆動する。例えば、透明表示装置を
図11に示した合わせガラスに用いた場合、観察者が透明表示装置に視線を向けない限り、透明表示装置が観察者の視界を遮らなくなるため、好ましい。あるいは、イメージセンサであるセンサ70によって、観察者の動作を検出し、当該動作に基づいて、例えば透明表示装置をオン・オフしたり、表示画面を切り換えたりしてもよい。
その他の構成は第1の実施形態に係る透明表示装置と同様である。
【0100】
(第4の実施形態)
<透明センシングデバイスの構成>
次に、
図13を参照して、第4の実施形態に係る透明センシングデバイスの構成について説明する。
図13は、第4の実施形態に係る透明センシングデバイスの一例を示す模式的な部分平面図である。
図13に示すように、本実施形態に係る透明センシングデバイスは、
図1に示した第1の実施形態に係る透明表示装置の構成において、各画素PIXに発光部20及びICチップ30に代えてセンサ70を備えた構成を有している。すなわち、
図13に示した透明センシングデバイスは、発光部20を備えず、表示機能を有していない。
【0101】
センサ70は特に限定されないが、
図13に示した透明センシングデバイスでは、CMOSイメージセンサである。すなわち、
図13に示した透明センシングデバイスは、行方向(x軸方向)及び列方向(y軸方向)に並んだ複数の画素PIXから構成された撮像領域301を備え、撮像機能を有している。
図13には、撮像領域301の一部が示されており、行方向及び列方向に2画素ずつ計4画素が示されている。ここで、1つの画素PIXが一点鎖線によって囲んで示されている。また、
図13では、
図1と同様に、透明基材10及び封止層50が省略されている。また、
図13は平面図だが、理解を容易にするため、センサ70がドット表示されている。
【0102】
図13に示した例では、センサ70は各画素PIXに1つずつ設けられており、y軸方向に延びた電源線41及びグランド線42の間に配置され、両者に接続されている。また、センサ70からy軸方向に延びたデータ出力線46を介して、センサ70による検出データが出力される。他方、センサ70までy軸方向に延びた制御信号線47を介して、制御信号がセンサ70に入力され、センサ70が制御される。制御信号は例えば、同期信号やリセット信号等である。
なお、電源線41が、図示しない電池に接続されていてもよい。
【0103】
ここで、
図14は、センサ70の模式断面図である。
図14に示したセンサ70は、裏面照射型CMOSイメージセンサである。なお、イメージセンサとしてのセンサ70も特に限定されず、表面照射型CMOSイメージセンサやCCD(Charge-Coupled Device)イメージセンサでもよい。
【0104】
図14に示すように、各センサ70は、配線層、半導体基板、カラーフィルタCF1~CF3、マイクロレンズML1~ML3を備えている。ここで、配線層の内部には内部配線IWが形成されている。また、半導体基板の内部にはフォトダイオードPD1~PD3が形成されている。
【0105】
配線層上に半導体基板(例えばシリコン基板)が形成されている。配線層の内部に形成された内部配線IWは、配線40(電源線41、グランド線42、データ出力線46、及び制御信号線47)とフォトダイオードPD1~PD3とを接続している。フォトダイオードPD1~PD3に光が照射されると、フォトダイオードPD1~PD3から電流が出力される。フォトダイオードPD1~PD3から出力された電流は、それぞれ図示しないアンプ回路によって増幅され、内部配線IW及びデータ出力線46を介して出力される。
【0106】
カラーフィルタCF1~CF3は、半導体基板の内部に形成されたフォトダイオードPD1~PD3上にそれぞれ形成されている。カラーフィルタCF1~CF3は、例えばそれぞれ赤色フィルタ、緑色フィルタ、青色フィルタである。
マイクロレンズML1~ML3は、カラーフィルタCF1~CF3上にそれぞれ載置されている。凸レンズであるマイクロレンズML1~ML3によって集光された光が、それぞれカラーフィルタCF1~CF3を介して、フォトダイオードPD1~PD3に入射する。
【0107】
本実施形態に係るセンサ70は、透明基材10上における占有面積が250,000μm
2以下の微小サイズを有するマイクロセンサである。換言すると、本明細書において、マイクロセンサとは、平面視での面積が250,000μm
2以下の微小サイズを有するセンサである。センサ70の占有面積は、例えば、好ましくは25,000μm
2以下、より好ましくは2,500μm
2以下である。なお、センサ70が占有面積の下限は、製造上の諸条件等から例えば10μm
2以上である。
なお、
図13に示したセンサ70の形状は、矩形状であるが、特に限定されない。
【0108】
本実施形態に係る透明センシングデバイスは、第2の実施形態に係る合わせガラスにも適用できる。本実施形態に係る透明センシングデバイスが車両(例えば自動車)のウインドウガラスのうちフロントガラスに搭載されている場合、センサ70によって、例えば、車内及び車外の少なくともいずれかの画像を取得できる。すなわち、本実施形態に係る透明センシングデバイスは、ドライブレコーダとしての機能を有する。
【0109】
なお、第4の実施形態に係る透明センシングデバイスにおけるセンサ70は、単数でもよい。また、第4の実施形態に係る透明センシングデバイスにおけるセンサ70も、イメージセンサに限らず、第3の実施形態において例示した照度センサ、赤外線センサ等でもよい。さらに、センサ70は、レーダセンサ、Lidarセンサ等でもよい。これらのセンサ70を用いた透明センシングデバイスが搭載された車両用ウインドウガラスによって、例えば車内や車外をモニタリングできる。
【0110】
すなわち、第4の実施形態に係るセンサ70は、透明基材10上における占有面積が250,000μm2以下の微小サイズを有するマイクロセンサであれば、特に限定されない。例えば、センサ70は、温度センサ、紫外線センサ、電波センサ、圧力センサ、音センサ、速度/加速度センサ等であってもよい。
その他の構成は第1の実施形態に係る透明表示装置と同様である。
【実施例】
【0111】
以下に、本発明に係る実施例を示すが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
例1、2に係る透明表示装置について、温度65℃、湿度85%の高温高湿下において連続通電試験を行い、試験前後の輝度の変化を調査した。例1、2はいずれも本発明の実施例である。
まず、
図2~
図10を参照して、例1に係る透明表示装置の製造方法について説明する。
【0112】
<例1>
以下に、例1に係る透明表示装置の製造方法について説明する。
図3に示すように、厚さ0.7mmのガラス板(AGC社製AN-100)を主基板11として用い、主基板11上の略全面に厚さ0.04μmのTi膜、厚さ0.60μmのCu膜、及び厚さ0.10μmのTi膜を含む3層構造の第1メタル層M1をこの順に成膜した。その後、第1メタル層M1をフォトリソグラフィーによってパターニングし、下層配線を形成した。
【0113】
次に、
図4に示すように、主基板11上の略全面にエポキシ樹脂(DowDuPont社製InterVia8023)である接着剤層12を成膜した後、タック性を有する接着剤層12上にLED素子21~23及びICチップ30を実装した。
次に、
図5に示すように、主基板11及び接着剤層12を含む透明基材10上の略全面にフォトレジストFR1を成膜した後、第1メタル層M1、ICチップ30上のフォトレジストFR1をパターニングによって除去した。
【0114】
次に、
図6に示すように、フォトレジストFR1が除去された部位の接着剤層12をドライエッチングによって除去し、第1メタル層M1すなわち下層配線を露出させた。
次に、
図7に示すように、透明基材10上のフォトレジストFR1を全て除去する。その後、透明基材10上の略全面に厚さ0.1μmのW-10Ti合金膜及び厚さ0.15μmのCu膜を含むめっき用シード層を形成する。
【0115】
次に、
図8に示すように、透明基材10上の略全面にフォトレジストFR2を成膜した後、上層配線を形成する部位のフォトレジストFR2をパターニングによって除去し、シード層を露出させた。
次に、
図9に示すように、フォトレジストFR2が除去された部位すなわちシード層上に、めっきによってCuを含む厚さ3.0μmの第2メタル層M2を上層配線として形成した。
【0116】
次に、
図10に示すように、フォトレジストFR2を除去する。さらに、フォトレジストFR2の除去によって露出したシード層を、エッチングによって除去した。
最後に、
図2に示すように、透明基材10上の略全面にシリコーンエラストマー(東レ・ダウコーニング社製Sylgard184)をポッティングによって塗布し、封止層50を形成した。その後、常温で48時間保持し、封止層50を硬化させた。このように、例1に係る透明表示装置を製造した。
【0117】
例1に係る透明表示装置における封止層50の吸水率は0.06%だった。
例1に係る透明表示装置では、上述の連続通電試験前の輝度が181cd/m2であったのに対し、試験後の輝度は115cd/m2であり、輝度低下は36%に留まり、光束維持率は初期値の50%以上であった。封止層50の吸水率が低く、マイグレーションが抑制できたものと推察される。
【0118】
<例2>
次に、
図15を参照して、例2に係る透明表示装置の製造方法について説明する。
図15は、例2に係る透明表示装置を示す断面図である。
図15は、
図2に対応した断面図である。
図15に示すように、例2に係る透明表示装置では、封止層50上にガラス板60が設けられている。すなわち、封止層50によってガラス製の主基板11とガラス板60とが合わせガラス化されている。例2に係る透明表示装置では、封止層50としてシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン社製ゼオノアフィルムZF14)を用いた。
【0119】
図3~
図10に示した工程すなわち
図15に示した封止層50を形成する工程よりも前の工程については例1と同様であるため、説明を省略する。
次に、
図15に示すように、封止層50を形成するために透明基材10上の略全面を厚さ0.762mmのCOPフィルムによって覆い、さらにCOPフィルムを厚さ1.8mmのガラス板60(AGC社製フロートガラス)によって覆った。すなわち、透明基材10とガラス板60とによって、封止層50用のCOPフィルムを挟んだ。
【0120】
続いて、5Pa以下まで減圧し、減圧した状態のまま、COPフィルムのガラス転移温度Tg付近である100℃において1時間加熱し、COPフィルムを透明基材10及びガラス板60に仮圧着させた。
さらに、オートクレーブ装置内において、10気圧、130℃において20分間加熱し、例2に係る透明表示装置を製造した。
【0121】
なお、
図15に示した例2に係る透明表示装置は、一対のガラス板(透明基材10及びガラス板60)に挟持された合わせガラスに透明表示装置が設けられた構成であって、第2の実施形態に係る合わせガラスの変形例である。すなわち、透明基材10が一対のガラス板の一方を構成していてもよい。また、
図11に示した第2の実施形態に係る合わせガラスの断面構成は、
図15における透明基材10の外側(図面下側)にさらに他のガラス板が設けられた構成である。
【0122】
例2に係る透明表示装置における封止層50の吸水率は0.01%未満だった。
例2に係る透明表示装置では、上述の連続通電試験前の輝度が121cd/m2であったのに対し、試験後の輝度は118cd/m2であり、輝度低下は僅か2.5%であった。すなわち、光束維持率は初期値の95%以上であり、極めて良好な結果だった。封止層50の吸水率が極めて低く、マイグレーションが劇的に抑制できたものと推察される。
【0123】
なお、本発明は上記実施形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
例えば、透明表示装置はタッチパネル機能を有していてもよい。
【0124】
この出願は、2019年7月16日に出願された日本出願特願2019-130927及び2019年10月4日に出願された日本出願特願2019-183533を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0125】
10 透明基材
11 主基板
12 接着剤層
20 発光部
21~23 LED素子
30 ICチップ
40 配線
41 電源線
41a 第1電源分岐線
41b 第2電源分岐線
42 グランド線
42a グランド分岐線
43 行データ線
43a 行データ分岐線
44 列データ線
44a 列データ分岐線
45 駆動線
46 データ出力線
47 制御信号線
50 封止層
60 ガラス板
70 センサ
100 透明表示装置
101 表示領域
102 非表示領域
200 合わせガラス(ウインドウガラス)
201 遮蔽部
CF1~CF3 カラーフィルタ
FR1、FR2 フォトレジスト
IW 内部配線
M1 第1メタル層
M2 第2メタル層
ML1~ML3 マイクロレンズ
PD1~PD3 フォトダイオード
PIX 画素