(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】垂直配向用の液晶配向剤、液晶配向膜、及び液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1337 20060101AFI20241016BHJP
C08G 73/10 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
(21)【出願番号】P 2021548925
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 JP2020035773
(87)【国際公開番号】W WO2021060268
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019173271
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000095
【氏名又は名称】弁理士法人T.S.パートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100082887
【氏名又は名称】小川 利春
(74)【代理人】
【識別番号】100181331
【氏名又は名称】金 鎭文
(74)【代理人】
【識別番号】100183597
【氏名又は名称】比企野 健
(74)【代理人】
【識別番号】100161997
【氏名又は名称】横井 大一郎
(72)【発明者】
【氏名】大野 慎躍
(72)【発明者】
【氏名】山本 雄介
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2013-0030908(KR,A)
【文献】特開2011-257736(JP,A)
【文献】PAULVANNAN, K. et al.,Poly(Pyromellitimide)s Containing Naphthoxy/Oxyethylene Linkages,Journal of Polymer Materials,1991年,8(4),p. 311-315,Scheme I
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(0)で表されるジアミン(0)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)を含有することを特徴とする垂直配向用の液晶配向剤。
【化1】
(式(0)中、A及びA’は、それぞれ独立して、単環基、縮合環基、又は前記単環基が2つ結合した基を表し、A及びA’の少なくとも1つは、縮合環基を表す。Lは、単結合、又は-X
1-Q-X
2-基を表す。X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。Qは、炭素数1又は2のアルキレン基を表す。前記縮合環基は、ナフタレン、アントラセン、ピレン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ-ピロン、キノリン、又はイソキノリンのいずれかである縮合環から水素原子を2個除いた2価の基である。)
【請求項2】
前記ジアミン(0)が、下記式(1)で表されるジアミンである請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】
(式(1)中、Aは、単環基、縮合環基、又は前記単環基が2つ結合した基を表し、Lは単結合、又は-X
1-Q-X
2-を表す。X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。Qは、炭素数1又は2のアルキレン基を表す。)
【請求項3】
前記式(1)において、Aがフェニレン基、ピリジニル基、ナフチレン基、アントラセニル基、キノリニル基、ビフェニル構造、又はビピリジニル基である請求項2に記載の液晶配向剤。
【請求項4】
前記式(1)で表されるジアミンが、下記式(d-1)~(d-7)、(d-13)~(d-14)、(d-17)~(d-18)及び(d-21)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項2又は3に記載の液晶配向剤。
【化3】
【化4】
【請求項5】
前記ジアミン(0)が、下記式(d-8)~(d-12)、(d-15)、(d-16)、(d-19)及び(d-20)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項1に記載の液晶配向剤。
【化5】
【請求項6】
前記重合体(P)が、下記式(S1)~(S3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミン(s)を更に含むジアミン成分を用いて得られる請求項1~5のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化6】
(X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH
2)
a1-A
1)
m1-(a1は1~15の整数であり、A
1は酸素原子又は-COO-を表し、m
1は1~2の整数である。m
1が2の場合、複数のa1及びA
1は、それぞれ独立して前記定義を有する)を表す。G
1及びG
2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基、炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m及びnの合計は1~6である。R
1は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R
1を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化7】
(X
3は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。R
2は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R
2を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。)
【化8】
(X
4は、-CONH-、-NHCO-、-O-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-又は-OCO-を表す。R
3はステロイド骨格を有する構造を表す。)
【請求項7】
前記ジアミン(s)が、下記式(d1)又は式(d2)で表されるジアミンである請求項6に記載の液晶配向剤。
【化9】
(Xは、単結合、-O-、-C(CH
3)
2-、-NH-、-CO-、-(CH
2)
m-、-SO
2-、-O-(CH
2)
m-O-、-O-C(CH
3)
2-、-CO-(CH
2)
m-、-NH-(CH
2)
m-、-SO
2-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-NHCO-、-COO-(CH
2)
m-OCO-、-COO-、-CONH-、-NH-(CH
2)
m-NH-又は-SO
2-(CH
2)
m-SO
2-を表す。mは1~8の整数である。Yは、前記式(S1)~(S3)のいずれかの構造を表し、式(d2)における2個のYは同一であっても良く、異なっていても良い。)
【請求項8】
前記式(d1)で表されるジアミンが、下記の式(d1-1)~(d1-18)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項7に記載の液晶配向剤。
【化10】
(nは1~20の整数である。)
【化11】
【請求項9】
前記式(d2)で表されるジアミンが、下記の式(d2-1)~(d2-6)からなる群から選ばれるいずれかのジアミンである請求項7に記載の液晶配向剤。
【化12】
(X
p1~X
p8は、それぞれ独立して、-(CH
2)
a-(aは1~15の整数である。)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-CH
2OCO-、-COO-、又は-OCO-を表す。X
s1~X
s4はそれぞれ独立して、-O-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-又は-OCO-を表す。X
a~X
fは、-O-、-NH-、-O-(CH
2)
m-O-、-C(CH
3)
2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-(CH
2)
m-、-SO
2-、-O-C(CH
3)
2-、-CO-(CH
2)
m-、-NH-(CH
2)
m-、-NH-(CH
2)
m-NH-、-SO
2-(CH
2)
m-、-SO
2-(CH
2)
m-SO
2-、-CONH-(CH
2)
m-、-CONH-(CH
2)
m-NHCO-、又は-COO-(CH
2)
m-OCO-を表す。R
1a~R
1hはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。mは1~8の整数である。)
【請求項10】
前記重合体(P)が、前記ジアミン成分と、下記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分と、の重合反応により得られる請求項1~9のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【化13】
(Xは、下記式(x-1)~(x-13)から選ばれる構造を表す。)
【化14】
(R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はフェニル基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、それぞれ独立して、0又は1の整数である。A
1及びA
2は、それぞれ独立して、単結合、エーテル、カルボニル、エステル、フェニレン、スルホニル又はアミド基を表し、2個のA
2は同一であっても良く、異なっていても良い。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。)
【請求項11】
前記式(T)のXが、前記式(x-1)~(x-7)、(x-11)~(x-13)のいずれかである請求項10に記載の液晶配向剤。
【請求項12】
前記ジアミン(0)が、全ジアミン成分中、1~100モル%含有される請求項1~11のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項13】
前記ジアミン(s)が、全ジアミン成分中、1~99モル%含有される請求項6~12のいずれか1項に記載の液晶配向剤。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の液晶配向剤を用いて形成されてなる垂直配向用の液晶配向膜。
【請求項15】
請求項14に記載の液晶配向膜を具備する液晶表示素子。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成し、液晶分子の層を介して前記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、前記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で前記液晶セルに光照射する液晶表示素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直配向(VA)用の液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を具備する液晶表示素子、並びにそれらに適した新規なジアミン、及び重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、携帯電話、スマートフォンなどの小型用途から、テレビ用、モニター用などの比較的大型の用途まで幅広く使用されている。液晶表示素子は、一般的に、一対の電極基板を所定間隙(数μm)介し互いに対向するように配置するとともに電極基板の間に液晶を封入して構成されている。そして、電極基板の各電極を構成する透明導電膜間に電圧を印加することによって、液晶表示素子における表示を行うようにされている。これら液晶表示素子は、液晶分子の配列状態を制御するために不可欠な液晶配向膜を有する。
【0003】
一方、液晶表示素子としては、電極構造や、使用する液晶分子の物性等が異なる種々の駆動方式が開発されている。例えば、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、VA(Vertical Alignment)方式、IPS(In-Plane Switching)方式、FFS(fringe field switching)方式等の各種のモードが知られている。
なかでも、VA(垂直配向)方式の液晶表示素子は、視野角が広く、応答速度が速く、コントラストが大きく、また、生産プロセス上もラビング処理が不要にできることから、特に、大型化のニーズが高いテレビ用やモニター用を中心に広く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2008/117615号
【文献】日本特開2008-76950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、液晶表示素子における上述した透明導電膜は、通常、酸化インジウムを主成分としこれに数%の酸化錫をドープした組成物(ITO)により形成されるが、その屈折率は、液晶配向膜の屈折率と異なり、高い値を有する。このため、表示光源からの光を電極基板に透過させようとした場合、光が各電極基板における透明導電膜と液晶配向膜との境界面で反射されてしまう。その結果、電極基板の光透過率を十分に得ることができず、表示輝度が低下するという不具合を招いている。
特に、近年では4Kや8Kといった超高精細なパネルが開発されているが、これらのパネルではブラックマトリクス(BM)やTFTなどの占有率が大きくなり、パネルの開口率が低下してしまうため、表示部の透過率向上が重要視されている。
【0006】
そこで、本発明者等は、透明導電膜の屈折率と液晶配向膜の屈折率との差を小さくすれば、上記不具合を解消させ得るという観点から、液晶配向膜の屈折率を高めるためその形成材料につき種々検討した。具体的には、液晶配向膜の屈折率を高めるために、液晶配向膜を形成する液晶配向剤に含有される重合体の種類を種々探索した。
【0007】
その結果、特定の重合体を選択することにより、透明導電膜の屈折率に近似する屈折率を有する液晶配向膜を得ることができたが、一方で、高い屈折率を有する液晶配向膜を形成する重合体は多くの場合、着色性を有することが明らかとなった。着色性を有する重合体を含有する液晶配向剤から形成される液晶配向膜は、光の透過率が低く、表示輝度の低下を招き、結果として上記目的は達成されない。
【0008】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、高い屈折率を有しながら着色性を有しないために高い光透過率を有するVA(垂直配向)用液晶配向膜を形成する液晶配向剤、該液晶配向剤から得られる液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する液晶表示素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った結果、特定の構造を有する一部新規な重合体を含有する液晶配向剤が、上記の目的を達成するために有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明は、下記式(0)で表されるジアミン(0)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)を含有することを特徴とする垂直配向(VA)用の液晶配向剤、該液晶配向剤から得られた液晶配向膜、及び該液晶配向膜を有する垂直配向方式の液晶表示素子にある。
【化1】
(A及びA’は、それぞれ独立して、単環基、縮合環基、又は前記単環基が2つ結合した基を表し、A及びA’の少なくとも1つは、縮合環基を表す。Lは、単結合、又は-X
1-Q-X
2-基を表す。X
1及びX
2は、それぞれ独立して、単結合、酸素原子又は硫黄原子を表す。Qは、炭素数1又は2のアルキレン基を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高い屈折率を有しながらも着色性を有しないために高い光透過率を有する液晶配向膜を形成する垂直配向(VA)用の液晶配向剤が得られる。かかる液晶配向剤が形成される液晶配向膜は、高い屈折率を有するために、液晶表示素子における透明導電膜の屈折率と液晶配向膜の屈折率との差を小さくすることができ、また、着色性を有しないために、光の透過率が高く、かつ表示輝度の高い、垂直配向(VA)方式の液晶表示素子を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液晶配向剤は、上記のように、下記式(0)で表されるジアミン(0)を含むジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体(P)を含有することを特徴とする。
【化2】
上記式(0)において、A、A’、L、X
1、X
2は、それぞれ上記で定義したとおりである。
【0012】
A、A’における単環基とは、単環から水素原子を2個除いた2価の基をいう。単環としては、例えば、ベンゼン;フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾール、ピラゾール等の5員複素環;ピラン、ピロン、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン等の6員複素環が挙げられる。単環は、好ましくは、ベンゼン又はピリジンである。なお、単環がベンゼンである場合、単環基はフェニレン基である。
【0013】
A、A’における縮合環基とは、縮合環から水素原子を2個除いた2価の基をいう。縮合環としては、例えば、ナフタレン、テトラリン、インデン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン等の縮合多環芳香族炭化水素;ベンゾフラン、チオナフテン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ-ピロン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フタラジン、キナゾリン、キノキサリン等の縮合多環式複素環が挙げられる。縮合環は、好ましくは、ナフタレン、アントラセン、ピレン、インドール、カルバゾール、クマリン、ベンゾ-ピロン、キノリン、又はイソキノリンである。
上記単環基が2つ結合した基は、好ましくは、ビフェニル構造、ビピリジン基である。
【0014】
なかでも、A、A’は、本発明の効果を得る観点から、フェニレン基、ピリジニル基、ナフチレン基、アントラセニル基、キノリニル基、ビフェニル構造、又はビピリジニル基が好ましい。
Lは、単結合、-O-(CH2)n-(nは1又は2の整数である。)、又は-O-(CH2)n-O-(nは1又は2の整数である。)が好ましい。
上記式(0)で表されるジアミン(0)の具体例としては、下記式(d-1)~(d-21)が挙げられる。
【0015】
【0016】
上記式(0)で表されるジアミン(0)の好ましい具体例としては、下記式(1)で表されるジアミンが挙げられる。
【化5】
上記式(1)において、A、L、X
1、X
2は、それぞれ上記で定義したとおりである。
【0017】
上記式(1)で表されるジアミン(1)の好ましい具体例としては、上記式(d-1)~(d-21)のうち、式(d-1)~(d-7)、(d-13)~(d-14)、(d-17)~(d-18)及び(d-21)が挙げられる。
【0018】
本発明の液晶配向剤に含有する重合体(P)は、上記式(0)で表されるジアミンに加えて、下記式(S1)~(S3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミン(s)を含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体であるのが好ましい。
【化6】
【0019】
式[S1]において、X1及びX2は、それぞれ独立して、単結合、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-COO-、-OCO-又は-((CH2)a1-A1)m1-(a1は1~15の整数であり、A1は酸素原子又は-COO-を表し、m1は1~2の整数である。m1が2の場合、複数のa1及びA1は、それぞれ独立して前記定義を有する)を表す。G1及びG2は、それぞれ独立して、炭素数6~12の2価の芳香族基、炭素数3~8の2価の脂環式基から選ばれる2価の環状基を表す。前記環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されていてもよい。m及びnは、それぞれ独立して、0~3の整数であり、m及びnの合計は1~6であり、好ましくは1~4である。R1は炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R1を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
また、G1、G2における2価の環状基としては、例えば、シクロプロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基が挙げられる。これらの環状基上の任意の水素原子は、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、炭素数1~3のフッ素含有アルキル基、炭素数1~3のフッ素含有アルコキシ基又はフッ素原子で置換されてもよい。
【0020】
【化7】
式[S2]において、X
3は、単結合、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH
3)-、-NH-、-O-、-CH
2O-、-COO-又は-OCO-を表す。R
2は炭素数1~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表し、R
2を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
また、R
2は、液晶配向性を高める観点から、炭素数3~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基が好ましい。
【0021】
【化8】
式[S3]において、X
4は、-CONH-、-NHCO-、-O-、-CH
2O-、-OCH
2-、-COO-又は-OCO-を表す。R
3はステロイド骨格を有する構造を表す。また、R
3はコレスタニル基、コレステリル基又はラノスタニル基を含む構造が好ましい。
【0022】
式[S1]の好ましい具体例としては、下記式[S1-x1]~[S1-x7]を挙げることができる。
【化9】
【0023】
上記式中、R1は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基である。Xpは、-(CH2)a-(aは1~15の整数である)、-CONH-、-NHCO-、-CON(CH3)-、-NH-、-O-、-CH2O-、-CH2OCO-、-COO-、又は-OCO-である。A1は、酸素原子又は-COO-*(但し、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)、A2は、酸素原子*-COO-(但し、「*」を付した結合手が(CH2)a2と結合する)であり、a3は、0又は1であり、a1、a2は、それぞれ独立して、1~10の整数であり、Cyは1,4-シクロへキシレン基又は1,4-フェニレン基である。
式[S2]の好ましい具体例としては、X3が、-O-、-CH2O-、-COO-又は-OCO-のいずれかであり、R2が炭素数3~20のアルキル基又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基である場合が好ましく、R2が炭素数3~20のアルキル基である場合が更に好ましく、R2を形成する任意の水素原子はフッ素原子で置換されていてもよい。
【0024】
上記式[S3]の好ましい具体例として、下記式[S3-x]が挙げられる。なお、式[S3-x]中、Xは、式[X1]、式[X2]又は[X3]であり、Colは、式[Col1]、式[Col2]又は式[Col3]であり、Gは、式[G1]、式[G2]、式[G3]又は式[G4]である。Meはメチル基を表す。
【0025】
【0026】
上記式(S1)~(S3)で表される構造を有する好ましいジアミン(s)としては、下記式(d1)又は式(d2)で表されるジアミンが挙げられる。
【化11】
【0027】
式(d1)、(d2)中、Yは、上記式[S1]~[S3]で表される側鎖構造を表し、式(d2)における2個のYは同一であっても良く、異なっていても良い。また、Xは、単結合、-O-、-C(CH3)2-、-NH-、-CO-、-(CH2)m-、-SO2-、-O-(CH2)m-O-、-O-C(CH3)2-、-CO-(CH2)m-、-NH-(CH2)m-、-SO2-(CH2)m-、-CONH-(CH2)m-、-CONH-(CH2)m-NHCO-、-COO-(CH2)m-OCO-、-COO-、-CONH-、-NH-(CH2)m-NH-、-SO2-(CH2)m-SO2-を表す。mは1~8の整数である。
【0028】
上記式(d1)のジアミンの好ましい具体例としては、下記式(d1-1)~(d1-18)が挙げられる。
【化12】
(nは1~20の整数である。)
【0029】
【0030】
上記式(d2)で表されるジアミンとしては、下記式(d2-1)~(d2-6)からなる群から選ばれる構造を挙げることができる。
【化14】
【0031】
上記式中、Xp1~Xp8は、それぞれ独立して、上記式[S1-x1]~[S1-x6]におけるXpと同義であり、Xs1~Xs4はそれぞれ独立して、-O-、-CH2O-、-OCH2-、-COO-又は-OCO-を示し、Xa~Xfは、-O-、-NH-、-O-(CH2)m-O-、-C(CH3)2-、-CO-、-COO-、-CONH-、-(CH2)m-、-SO2-、-O-C(CH3)2-、-CO-(CH2)m-、-NH-(CH2)m-、-NH-(CH2)m-NH-、-SO2-(CH2)m-、-SO2-(CH2)m-SO2-、-CONH-(CH2)m-、-CONH-(CH2)m-NHCO-、又は-COO-(CH2)m-OCO-を示し、R1a~R1hはそれぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシ基、又は炭素数2~20のアルコキシアルキル基を表す。mは1~8である。
【0032】
(重合体(P)の製造)
本発明の液晶配向剤に含有される重合体(P)は、それぞれ、上記ジアミン(0)を含有するジアミン成分、好ましくは上記ジアミン(0)に加えてジアミン(s)を含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体、又は該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドである。ここにおいて、ポリイミド前駆体は、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステルなどのイミド化にすることによりポリイミドを得ることができる重合体である。
【0033】
上記重合体(P)のポリイミド前駆体であるポリアミック酸(P)は、上記ジアミン(0)を含有するジアミン成分、好ましくは上記ジアミン(0)に加えてジアミン(s)を含有するジアミン成分とテトラカルボン酸成分との重合反応により得ることができる。
この場合、ジアミン(0)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、1~100モル%が好ましく、1~99モル%がより好ましく、5~95モル%がさらに好ましい。
【0034】
上記ジアミン(0)に加えてジアミン(s)を使用する場合、ジアミン(s)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、1~99モル%が好ましく、1~95モル%がより好ましい。
【0035】
上記ポリアミック酸(P)の製造に用いられるジアミン成分は、ジアミン(0)及びジアミン(s)以外のジアミン(以下、これらをその他のジアミンともいう。)を含んでいてもよい。以下にその他のジアミンの例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0036】
p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、4-(2-(メチルアミノ)エチル)アニリン、3,5-ジアミノ安息香酸などのカルボキシ基を有するジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、1,2-ビス(4-アミノフェニル)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェニル)ブタン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,2-ビス(4-アミノフェノキシ)エタン、1,2-ビス(4-アミノ-2-メチルフェノキシ)エタン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)プロパン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ブタン、1,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ペンタン、1,6-ビス(4-アミノフェノキシ)へキサン、4-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)-3-フルオロアニリン、ジ(2-(4-アミノフェノキシ)エチル)エーテル、4-アミノ-4’-(2-(4-アミノフェノキシ)エトキシ)ビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、1,4-ジアミノナフタレン、1,5-ジアミノナフタレン、2,6-ジアミノナフタレン、2,7-ジアミノナフタレン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、1,3-ビス(4-アミノフェネチル)ウレアなどのウレア結合を有するジアミン、下記式(a-1)~(a-6)で表されるジアミン、好ましくはメタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリンなどの光重合性基を末端に有するジアミン、下記式(R1)~(R5)などのラジカル開始機能を有するジアミン、2,6-ジアミノピリジン、3,4-ジアミノピリジン、2,4-ジアミノピリミジン、3,6-ジアミノカルバゾール、N-メチル-3,6-ジアミノカルバゾール、下記式(z-1)~(z-18)などの複素環を有するジアミン、下記式(Dp-1)~(Dp-3)などのジフェニルアミン骨格を有するジアミン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)-テトラメチルジシロキサンなどのオルガノシロキサン含有ジアミン、下記式(5-1)~(5-11)などの基「-N(D)-」(Dは加熱によって脱離し水素原子に置き換わる保護基を表し、好ましくはtert-ブトキシカルボニル基である。)を有するジアミン、下記式(Ox-1)~(Ox-2)などのオキサゾリン構造を有するジアミン、国際公開第2016/125870号に記載のジアミンなど。
【化15】
【化16】
【化17】
(d1は、2~10の整数を示す。)
【化18】
(nは2~10の整数を表す。)
【化19】
【化20】
(Bocはtert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【化21】
【0037】
なかでも、その他のジアミンとして、本発明の効果を好適に得る観点から,p-フェニレンジアミン、3,5-ジアミノ安息香酸、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、メタクリル酸2-(2,4-ジアミノフェノキシ)エチル、2,4-ジアミノ-N,N-ジアリルアニリン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミン、上記式(5-1)~(5-11)で表されるジアミン、上記式(Ox-1)~(Ox-2)で表されるジアミンが好ましい。
上記ジアミン(0)に加えてその他のジアミンを使用する場合、上記その他のジアミンの使用量は、使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは1~99モル%であり、より好ましくは5~95モル%である。
上記ジアミン(0)及びジアミン(s)に加えてその他のジアミンを使用する場合、ジアミン(s)の使用量は、テトラカルボン酸成分と反応させるジアミン成分に対して、98モル%以下が好ましく、94モル%以下がより好ましい。
【0038】
上記その他のジアミンの使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは5~40モル%であり、より好ましくは10~40モル%である。
【0039】
PSA方式やSC-PVAモードを用いる液晶表示素子では、応答速度を高める点から、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、光重合性基を末端に有するジアミン、上記式(R1)~(R5)で表されるジアミン、上記式(z-1)~(z-18)で表されるジアミンは、ポリアミック酸(P)を製造する場合に1種以上用いることができ、その使用量は、ポリアミック酸(P)の製造に使用される全ジアミン成分に対して、好ましくは1~40モル%であり、より好ましくは5~40モル%である。
【0040】
(テトラカルボン酸成分)
上記ポリアミック酸(P)を製造する場合、ジアミン成分と反応させるテトラカルボン酸成分は、テトラカルボン酸二無水物だけでなく、テトラカルボン酸、テトラカルボン酸ジハライド、テトラカルボン酸ジアルキルエステル、又はテトラカルボン酸ジアルキルエステルジハライドなどのテトラカルボン酸二無水物の誘導体を用いることもできる。
【0041】
上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物若しくは脂環式テトラカルボン酸二無水物、又はこれらの誘導体が挙げられる。ここで、芳香族テトラカルボン酸二無水物は、芳香環に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。脂肪族テトラカルボン酸二無水物は、鎖状炭化水素構造に結合する4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、鎖状炭化水素構造のみで構成されている必要はなく、その一部に脂環式構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0042】
また、脂環式テトラカルボン酸二無水物は、脂環式構造に結合する少なくとも1つのカルボキシ基を含めて4つのカルボキシ基が分子内脱水することにより得られる酸二無水物である。但し、これら4つのカルボキシ基はいずれも芳香環には結合していない。また、脂環式構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状炭化水素構造や芳香環構造を有していてもよい。
【0043】
なかでも、上記テトラカルボン酸二無水物又はその誘導体は、下記式(T)で表されるものが好ましい。
【化22】
但し、式(T)中、Xは、下記(x-1)~(x-13)からなる群から選ばれる構造を表す。
【0044】
【0045】
上記式(x-1)において、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、塩素原子又はフェニル基を表す。R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基を表す。j及びkは、それぞれ独立して、0又は1であり、A1及びA2は、それぞれ独立して、単結合、エーテル(-O-)、カルボニル(-CO-)、エステル(-COO-)、フェニレン、スルホニル基(-SO2-)又はアミド基(-CONH-)を表し、2個のA2は同一であっても良く、異なっていても良い。*1は一方の酸無水物基に結合する結合手であり、*2は他方の酸無水物基に結合する結合手である。
【0046】
上記式(x-12)、(x-13)の好ましい具体例としては、下記式(x-14)~(x-29)が挙げられる。*は結合手を表す。
【化24】
【化25】
【0047】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の好ましい具体例としては、Xが、上記式(x-1)~(x-7)、(x-11)~(x-13)から選ばれるものが挙げられる。
【0048】
上記式(T)で表されるテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体の使用割合は、使用される全テトラカルボン酸成分1モルに対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上がさらに好ましい。
ポリアミック酸(P)の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物及びその誘導体は、上記式(T)以外のテトラカルボン酸二無水物又はその誘導体を含有していてもよい。
【0049】
ポリアミック酸(P)の製造は、上記ジアミン成分と、テトラカルボン酸成分と、を溶媒中で(縮重合)反応させることにより行われる。溶媒としては、生成した重合体が溶解するものであれば特に限定されない。
上記溶媒の具体例としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、γ-ブチロラクトン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。また、重合体の溶媒溶解性が高い場合は、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、又は下記の式[D-1]~式[D-3]で示される溶媒を用いることができる。
【0050】
【化26】
(式[D-1]中、D
1は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-2]中、D
2は炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中、D
3は炭素数1~4のアルキル基を表す。)。
【0051】
これら溶媒は単独で使用しても、混合して使用してもよい。さらに、重合体を溶解させない溶媒であっても、生成した重合体が析出しない範囲で、上記溶媒に混合して使用してもよい。
ジアミン成分とテトラカルボン酸成分とを溶媒中で反応させる際には、反応は任意の濃度で行うことができるが、上記溶媒に対するジアミン成分とテトラカルボン酸成分の濃度は、好ましくは1~50質量%、より好ましくは5~30質量%である。反応初期は高濃度で行い、その後、溶媒を追加することができる。
反応においては、ジアミン成分の合計モル数とテトラカルボン酸成分の合計モル数との比(ジアミン成分の合計モル数/テトラカルボン酸成分の合計モル数)は0.8~1.2であることが好ましい。通常の重縮合反応同様、このモル比が1.0に近いほど生成する特定重合体の分子量は大きくなる。
【0052】
ポリイミド前駆体であるポリアミック酸エステルは、例えば、[I]上記合成反応により得られたポリアミック酸とエステル化剤とを反応させる方法、[II]テトラカルボン酸ジエステルとジアミンとを反応させる方法、[III]テトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物とジアミンとを反応させる方法、などの既知の方法によって得ることができる。
【0053】
[ポリイミド]
本発明の液晶配向剤に含有されるポリイミドは上記ポリイミド前駆体を閉環させて得られるポリイミドである。ポリイミドにおいては、アミック酸基の閉環率(イミド化率ともいう)は必ずしも100%である必要はなく、用途や目的に応じて任意に調整することができる。
【0054】
ポリイミド前駆体をイミド化してポリイミドを得る方法としては、ポリイミド前駆体の溶液をそのまま加熱する熱イミド化、又はポリイミド前駆体の溶液に触媒を添加する触媒イミド化が挙げられる。ポリイミド前駆体を溶液中で熱イミド化させる場合の温度は、100~400℃、好ましくは120~250℃であり、イミド化反応により生成する水を系外に除きながら行う方が好ましい。
【0055】
ポリイミド前駆体の触媒イミド化は、ポリイミド前駆体の溶液に、塩基性触媒と酸無水物とを添加し、-20~250℃、好ましくは0~180℃で撹拌することにより行うことができる。塩基性触媒の量はアミド酸基の0.5~30モル倍、好ましくは2~20モル倍であり、酸無水物の量はアミド酸基の1~50モル倍、好ましくは3~30モル倍である。塩基性触媒としてはピリジン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリブチルアミントリオクチルアミンなどを挙げることができ、なかでも、ピリジンは反応を進行させるのに適度な塩基性を持つので好ましい。酸無水物としては、無水酢酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸などを挙げることができ、なかでも、無水酢酸を用いると反応終了後の精製が容易となるので好ましい。触媒イミド化によるイミド化率は、触媒量と反応温度、反応時間を調節することにより制御することができる。
【0056】
ポリイミド前駆体のイミド化の反応溶液から、生成したポリイミドを回収する場合には、反応溶液を溶媒に投入して沈殿させればよい。沈殿に用いる溶媒としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、ヘキサン、ブチルセルソルブ、ヘプタン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、ベンゼン、水などを挙げることができる。溶媒に投入して沈殿させたポリマーは濾過して回収した後、常圧あるいは減圧下で、常温あるいは加熱して乾燥することができる。また、沈殿回収した重合体を、溶媒に再溶解させ、再沈殿回収する操作を2~10回繰り返すと、重合体中の不純物を少なくすることができる。この際の溶媒として、例えば、アルコール類、ケトン類炭化水素などが挙げられ、これらの内から選ばれる3種以上の溶媒を用いると、より一層精製の効率が上がるので好ましい。
【0057】
ポリイミド前駆体及びポリイミドのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000~500,000であり、より好ましくは2,000~300,000である。また、Mwと、GPCにより測定したポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)との比で表される分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは15以下であり、より好ましくは10以下である。かかる分子量範囲にあることで、液晶表示素子の良好な配向性を確保することができる。
【0058】
(液晶配向剤)
本発明の液晶配向剤は、重合体(P)、及び必要に応じて使用されるその他の成分が、好ましくは適当な溶媒中に分散又は溶解してなる液状の組成物である。
【0059】
本発明の液晶配向剤においては、例えば電気特性、垂直配向性や溶液特性を改善することなどを目的として、重合体(P)のほかに、それ以外の重合体(以下、その他の重合体ともいう。)を含有させてもよい。その他の重合体の具体例としては、垂直配向性を高める観点から、上記重合体(P)に加えて、上記式(S1)~(S3)で表される構造からなる群より選ばれる少なくとも1種を有するジアミンを含有するジアミン成分を用いて得られるポリイミド前駆体及び該ポリイミド前駆体のイミド化物であるポリイミドからなる群から選ばれる少なくとも1種の重合体を含有してもよい。
その他の重合体の含有割合は、液晶配向剤中に含まれる重合体の合計100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、10~90質量部がより好ましく、20~80質量部が更に好ましい。
【0060】
その他の重合体は特に限定されず、例えばポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレン-フェニルマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどの主骨格が挙げられる。なかでも、ポリイミド前駆体、ポリイミド、ポリアミド、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メタ)アクリレート及びポリエステルよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。なかでも、ポリイミド前駆体、ポリイミド及びポリシロキサンよりなる群から選ばれる少なくとも一種であることがより好ましい。なお、その他の重合体は、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0061】
本発明の液晶配向剤は、その他、必要に応じて上記以外の成分を含有していてもよい。当該成分としては、例えば、エポキシ基、イソシアネート基、オキセタニル基、シクロカーボネート基、ブロックイソシアネート基、ヒドロキシ基及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1種の置換基を有する架橋性化合物、並びに重合性不飽和基を有する架橋性化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物、官能性シラン化合物、金属キレート化合物、硬化促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、増感剤、防腐剤、液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物などが挙げられる。
架橋性化合物の好ましい具体例としては、下記式(CL-1)~(CL-11)で示される化合物が挙げられる。液晶配向膜の誘電率や電気抵抗を調整するための化合物としては、3-ピコリルアミンなどの窒素含有芳香族複素環を有するモノアミンが挙げられる。
【化27】
【0062】
本発明の液晶配向剤で使用する有機溶媒としては、例えばN-メチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-エチル-2-ピロリドン、N-(n-プロピル)-2-ピロリドン、N-イソプロピル-2-ピロリドン、N-(n-ブチル)-2-ピロリドン、N-(tert-ブチル)-2-ピロリドン、N-(n-ペンチル)-2-ピロリドン、N-メトキシプロピル-2-ピロリドン、N-エトキシエチル-2-ピロリドン、N-メトキシブチル-2-ピロリドン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロパンアミド、γ-ブチロラクトン、γ-ブチロラクタム、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノメチルエーテル、乳酸ブチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコール-i-プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジイソブチルカルビノール(2,6-ジメチル-4-ヘプタノール)、ジイソブチルケトン、イソアミルプロピオネート、イソアミルイソブチレート、ジイソペンチルエーテル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは、2種以上を混合して使用することができる。
【0063】
液晶配向剤における固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計質量が液晶配向剤の全質量に占める割合)は、粘性、揮発性などを考慮して適宜に選択されるが、好ましくは1~10質量%の範囲である。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上が好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下が好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0064】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向剤を用いた垂直配向用の液晶配向膜は、上記の液晶配向剤を、基板上に塗布、乾燥及び焼成する工程を順次行うことにより製造することができる。この際に用いる基板としては、透明性の高い基板であれば特に限定されず、ガラス基板の他、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板なども用いることができる。プロセスの簡素化の観点からは、液晶駆動のためのITO電極などが形成された基板を用いることが好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならばシリコンウェハーなどの不透明な基板も使用でき、この場合の電極としてはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
【0065】
液晶配向剤の塗布方法は、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷インクジェット法、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などを挙げることができるが、液晶配向膜の製造効率を高める観点でフレキソ印刷又はインクジェット法で塗布する方法が好ましい。
【0066】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブンIR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、液晶配向剤に用いる溶媒に応じて、好ましくは40~150℃で乾燥し、次いで、好ましくは150~300℃、より好ましくは180~250℃の温度で焼成することにより液晶配向膜とすることができる。
【0067】
焼成後の液晶配向膜の厚みは、厚すぎると液晶表示素子の消費電力の面で不利となり、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、好ましくは5~300nm、より好ましくは10~100nmである。
【0068】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向膜を具備するものである。
VA方式の液晶表示素子では、上記のようにして形成された塗膜はそのまま液晶配向膜として用いることができるが、必要に応じてラビング処理又は後述のPSA処理を行ってもよい。
【0069】
本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性化合物を含む液晶組成物を配置し、電極間に電圧を印加しつつ、活性エネルギー線の照射及び加熱の少なくとも一方により、重合性化合物を重合させる工程を経て製造される液晶表示素子にも好ましく用いられる。ここで、印加する電圧は、例えば5~50Vの直流又は交流とすることができる。また、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、波長が300~400nmの波長の光を含む紫外線、好ましくは310~360nmの波長の光を含む紫外線である。光の照射量としては、好ましくは0.1~20J/cm2であり、より好ましくは1~20J/cm2である。
【0070】
本発明の液晶配向剤を用いた液晶表示素子の製造方法としては、例えば、上記液晶配向剤を、導電膜を有する一対の基板上に塗布して塗膜を形成し、液晶分子の層を介して上記塗膜が相対するように対向配置して液晶セルを形成し、上記一対の基板の有する導電膜間に電圧を印加した状態で上記液晶セルに光照射する方法が挙げられる。
【0071】
上記の液晶表示素子は、PSA(Polymer Sustained Alignment)方式により、液晶分子のプレチルトを制御するものである。PSA方式では、液晶材料中に少量の光重合性化合物、例えば光重合性モノマーを混入しておき、液晶セルを組み立てた後、液晶層に所定の電圧を印加した状態で光重合性化合物に紫外線などを照射し、生成した重合体によって液晶分子のプレチルトを制御する。重合体が生成するときの液晶分子の配向状態が電圧を取り去った後においても記憶されるので、液晶層に形成される電界などを制御することにより、液晶分子のプレチルトを調整することができる。また、PSA方式では、ラビング処理を必要としないので、ラビング処理によってプレチルトを制御することが難しい垂直配向型の液晶層の形成に適している。
【0072】
本発明の液晶表示素子は、上記した手法により、本発明の液晶配向剤から液晶配向膜付き基板を得た後、公知の方法で液晶セルを作製して液晶表示素子としたものである。
液晶セルの作製方法としては、液晶配向膜の形成された一対の基板を用意し、片方の基板の液晶配向膜上にスペーサを散布し、液晶配向膜面が内側になるようにして、もう片方の基板を貼り合わせ、液晶を減圧注入して封止する方法、スペーサを散布した液晶配向膜面に液晶を滴下した後に基板を貼り合わせて封止を行う方法などが例示できる。
【0073】
液晶には、前述のとおり紫外線照射又は熱により重合する重合性化合物を混合してもよい。重合性化合物としては、アクリレート基やメタクリレート基などの重合性不飽和基を分子内に1個以上有する化合物、例えば下記式(M-1)~(M-3)で表されるような重合性化合物を挙げることができる。
【0074】
【0075】
その際、重合性化合物の含有量は、液晶成分の100質量部に対して0.01~10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~5質量部である。重合性化合物が0.01質量部未満であると、重合性化合物が重合せずに液晶の配向制御できなくなり、10質量部よりも多くなると、未反応の重合性化合物が多くなって液晶表示素子の焼き付き特性が低下する。液晶セルを作製した後は、液晶セルに交流直流の電圧を印加しながら、熱や紫外線を照射して重合性化合物を重合する。これにより、液晶分子の配向を制御することができる。
【0076】
本発明の液晶配向剤は、電極を備えた一対の基板の間に液晶層を有してなり、上記一対の基板の間に活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方により重合する重合性基を含む液晶配向膜を配置し、電極間に電圧を印加する工程を経て製造される液晶表示素子、すなわち、SC-PVAモードにも用いてもよい。ここで、活性エネルギー線としては、紫外線が好適である。紫外線としては、上記PSA方式で用いる紫外線を好ましい態様も含めて適用することができる。加熱による重合の場合、加熱温度は40~120℃、好ましくは60~80℃である。また、紫外線と加熱を同時に行ってもよい。
【0077】
活性エネルギー線及び熱の少なくとも一方より重合する重合性基を含む液晶配向膜を得るためには、この重合性基を含む化合物を液晶配向剤中に添加する方法や、重合性基を含む重合体成分を用いる方法が挙げられる。重合性基を含む重合体の具体例としては、上記光照射により重合する機能を有するジアミンを用いて得られる重合体が挙げられる。
【実施例】
【0078】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。以下における、化合物の略号、及び各特性の測定方法は次のとおりである。また、特に言及のない限り、数値は、質量基準である。
【0079】
【0080】
【0081】
<その他のジアミン>
【化31】
(Bocは、tert-ブトキシカルボニル基を表す。)
【0082】
【0083】
(有機溶媒)
NMP:N-メチル-2-ピロリドン、 BCS:ブチルセロソルブ
THF: テトラヒドロフラン
【0084】
[粘度]
ポリアミック酸溶液などの粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL(ミリリットル)、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃において測定した。
【0085】
[分子量の測定]
ポリイミド前駆体及びポリイミドなどの分子量は、常温ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)装置(GPC-101)(昭和電工社製)、カラム(KD-803,KD-805)(Shodex社製)を用いて、以下のようにして測定した。
カラム温度:50℃
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(添加剤として、臭化リチウム一水和物(LiBr・H2O)が30mmol/L(リットル)、リン酸・無水結晶(o-リン酸)が30mmol/L、テトラヒドロフラン(THF)が10ml/L)
流速:1.0ml/分
検量線作成用標準サンプル:TSK 標準ポリエチレンオキサイド(分子量;約900,000、150,000、100,000及び30,000)(東ソー社製)及びポリエチレングリコール(分子量;約12,000、4,000及び1,000)(ポリマーラボラトリー社製)。
【0086】
[イミド化率の測定]
ポリイミド粉末20mgをNMR(核磁気共鳴)サンプル管(NMRサンプリングチューブスタンダード,φ5(草野科学社製))に入れ、重水素化ジメチルスルホキシド(DMSO-d6,0.05質量%TMS(テトラメチルシラン)混合品)(0.53ml)を添加し、超音波をかけて完全に溶解させた。この溶液をNMR測定機(JNW-ECA500)(日本電子データム社製)にて、500MHzのプロトンNMRを測定した。イミド化率は、イミド化前後で変化しない構造に由来するプロトンを基準プロトンとして決め、このプロトンのピーク積算値と、9.5~10.0ppm付近に現れるアミド酸のNH基に由来するプロトンピーク積算値とを用い以下の式によって求めた。
イミド化率(%)=(1-α・x/y)×100
上記式において、xはアミド酸のNH基由来のプロトンピーク積算値、yは基準プロトンのピーク積算値、αはポリアミド酸(イミド化率が0%)の場合におけるアミド酸のNH基プロトン1個に対する基準プロトンの個数割合である。
【0087】
<化合物[DA-n-2]の合成例>
以下のスキームに従って化合物[DA-n-2]を合成した。
【化33】
【0088】
(化合物[1]の合成)
ジメチルホルムアミド(1050g)に対して、6-ブロモナフタレン-2-オール(150g、672mmol)を加え、氷冷下に冷やした。それに水素化ナトリウム(60%、29.6g)を少しずつ加え、氷冷下で1時間撹拌した後、ベンジルブロミド(121g)を加え、室温で1時間撹拌した。さらに、水冷下、純水(750g)を少しずつ加えて撹拌し、結晶を析出させ、濾過し、濾物をメタノール(750g)でスラリー洗浄し、濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[1]を得た(収量:207g、収率:98%、白色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):8.13(d,1H,J=2.0Hz),7.85(d,1H,J=9.2Hz),7.78(d,1H,J=8.8Hz),7.58(dd,1H,J=8.8Hz,2.4Hz),7.53-7.48(m,3H),7.44-7.40(m,2H),7.38-7.33(m,1H),7.30(dd,1H,J=9.0Hz,2.6Hz),5.22(s,2H).
【0089】
(化合物[2]の合成)
テトラヒドロフラン(1000g)に対して、tert-ブトキシナトリウム(82.6g)及びベンゾフェノンイミン(126g)を加え、室温で30分撹拌した。これに化合物[1](207g、661mmol)、Pd2(dba)3(トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)、3.03g)及びBINAP(2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル、6.17g)を加え、窒素雰囲気下、65℃で23時間撹拌した。室温まで冷却した後、1規定塩酸(1000g)を加え、室温で15分撹拌し、水層を分取した。更に有機層に対し、酢酸エチル(200g)、ヘキサン(100g)及び1規定塩酸(500g)を加えて、分取した水層に加えた。水冷下、水酸化ナトリウム(80g)を加えてアルカリ性とした。有機層を分取し、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した後、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濾液を濃縮することで粗体を得た(154g)。粗体に対し、酢酸エチル(462g)を加えて70℃で加熱溶解させた後、ヘキサン(770g)を加え、冷却した。そして、これを濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[2]を得た(収量:124g、収率:74%、薄茶色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):7.50-7.43(m,4H),7.42-7.37(m,2H),7.35-7.30(m,1H),7.19(d,1H,J=2.8Hz),7.04(dd,1H,J=8.8Hz,2.8Hz),6.90(dd,1H,J=8.8Hz,2.0Hz),6.80(d,1H,J=2.0Hz),5.13(br,4H).
【0090】
(化合物[3]の合成)
ジクロロメタン(1000g)に対して、化合物[2](124g、497mmol)及び二炭酸ジ-tert-ブチル(130g)を加え、室温で20時間撹拌した。反応が完結していなかったため、二炭酸ジ-tert-ブチル(10g)を追加添加し、さらに室温で20時間撹拌した。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)及びジクロロメタン(300g)を加え、分液した。有機層を純水(450mL)、飽和塩化ナトリウム水溶液(300mL)の順に洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた後、濾過し、濾液を濃縮することで粗体を得た(198g)。粗体に対し、酢酸エチル(600g)を加えて70℃で加熱溶解させた後、ヘキサン(1000g)を加え、冷却した。そして、これを濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[3]を得た(収量:142g、収率:82%、白色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):9.46(s,1H),8.02(s,1H),7.69(t,2H,J=8.6Hz),7.52-7.49(m,2H),7.45(dd,1H,J=9.0Hz,2.2Hz),7.43-7.39(m,2H),7.37-7.32(m,2H),7.17(dd,1H,J=9.0Hz,2.6Hz),5.18(s,2H),1.50(s,9H).
【0091】
(化合物[4]の合成)
エタノール(976g)に対して、化合物[3](122g、349mmol)及び5%パラジウムカーボン(12.2g)を加え、水素雰囲気下、40℃で96時間撹拌した。5%パラジウムカーボンを濾過し、濾液を濃縮することで化合物[4]を得た(収量:89.3g、収率:99%、白色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):9.52(s,1H),9.37(s,1H),7.94(s,1H),7.62-7.59(m,1H),7.56(d,1H,J=9.2Hz),7.39(dd,1H,J=9.0Hz,2.2Hz),7.04-7.00(m,2H),1.50(s,9H).
【0092】
(化合物[5]の合成)
ジメチルスルホキシド(500g)に対して、4-クロロニトロベンゼン(100g、635mmol)、エチレングリコール(551g)及び水酸化ナトリウム(23.1g)を加え、100℃で19時間撹拌した。室温まで冷却した後、酢酸エチル(560g)及び純水(700g)を加え、分液した。上層を回収したうえで、下層に酢酸エチル(300g)を加えて分液し、上層を合わせた。合わせた上層に純水(400g)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(200g)を加えて再度分液し、酢酸エチル層を硫酸ナトリウムで乾燥後、濾過し、濾液を濃縮することで粗体を得た(110g)。粗体に対し、酢酸エチル(330g)を加えて60℃で加熱溶解させた後、ヘキサン(550g)を加え、冷却した。そして、これを濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[5]を得た(収量:64.2g、収率:55%、淡黄色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):8.21(d,2H,J=9.4Hz),7.16(d,2H,J=9.4Hz),4.97(t,1H,J=5.6Hz),4.15(t,2H,J=4.8Hz),3.77-3.73(m,2H).
【0093】
(化合物[6]の合成)
ジクロロメタン(1264g)に対して、化合物[5](63.2g、345mmol)を加え、氷冷下に冷やした。これにトリエチルアミン(52.4g)、トシルクロリド(69.0g)及び4-ジメチルアミノピリジン(1.26g)を加え、室温で19時間撹拌した。純水(632g)を加え、分液してジクロロメタン層を回収し、1規定塩酸(300g)、純水(300g)、飽和塩化ナトリウム水溶液(300g)の順に分液洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させて、濾過し、濾液を濃縮することで化合物[6]を得た(収量:108g、収率:93%、白色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):8.18(d,2H,J=9.2Hz),7.80(d,2H,J=8.6Hz),7.47(d,2H,J=8.6Hz),7.05(d,2H,J=9.2Hz),4.40-4.37(m,2H),4.35-4.31(m,2H),2.41(s,3H).
【0094】
(化合物[7]の合成)
ジメチルホルムアミド(360g)に対して、化合物[4](45.0g、174mmol)、化合物[6](61.5g)及び炭酸カリウム(36.0g)を加え、80℃で21時間撹拌した。室温まで冷却した後、純水(720g)を加えて結晶を析出させた。濾過し、濾物をメタノール(360g)でスラリー洗浄し、濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[7]を得た(収量:67.2g、収率:91%、淡黄土色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):9.47(s,1H),8.23(d,2H,J=9.2Hz),8.02(s,1H),7.72-7.69(m,2H),7.46(dd,1H,J=8.8Hz,2.0Hz),7.31(d,1H,J=2.4Hz),7.24(d,2H,J=9.2Hz),7.14(dd,1H,J=9.0Hz,2.6Hz),4.56-4.53(m,2H),4.46-4.43(m,2H),1.50(s,9H).
【0095】
(化合物[8]の合成)
クロロホルム(1096g)に対して、化合物[7](73.1g、172mmol)を加えて、水冷下で撹拌しながら、トリフルオロ酢酸(98.1g)を加え、50℃で19時間撹拌した。室温まで冷却した後、トリエチルアミン(87.0g)及び純水(1096g)を加えて結晶を析出させた。濾過し、濾物をメタノール(365g)でスラリー洗浄した後、濾過し、濾物を乾燥させることで粗体を得た(49.5g)。粗体に対し、ジメチルホルムアミド(124g)を加え、80℃で加熱溶解させた後、メタノール(248g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[8]を得た(収量:47.3g、収率:85%、橙色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):8.23(d,2H,J=9.2Hz),7.51(dd,1H,J=8.8Hz,2.4Hz),7.45(dd,1H,J=8.8Hz,2.4Hz),7.24(dd,2H,J=9.2Hz,2.4Hz),7.27(s,1H),7.01(d,1H,J=9.2Hz),6.91(d,1H,J=8.8Hz),6.80(s,1H),5.15(br,2H),4.55-4.51(m,2H),4.41-4.37(m,2H).
【0096】
(化合物[DA-n-2]の合成)
ジメチルホルムアミド(371g)に対して、化合物[8](46.4g、143mmol)及び5%パラジウムカーボン(4.6g)を加え、水素雰囲気下、60℃で19時間撹拌した。反応があまり進行していなかったため、オートクレーブ中、0.4MPa水素雰囲気下、60℃で8時間撹拌した。窒素置換した後、5%パラジウムカーボンを濾過し、濾液を濃縮させて内容量を80gとした。ジメチルホルムアミド(46g)を加え、90℃で加熱溶解させた後、メタノール(210g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。そして、これを濾過し、濾物を乾燥させることで、化合物[DA-n-2]を得た(収量:33.4g、収率:79%、淡紫色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):7.50(d,1H,J=8.8Hz),7.44(d,1H,J=8.8Hz),7.13(d,1H,J=2.8Hz),7.00(dd,1H,J=8.8Hz,2.8Hz),6.90(dd,1H,J=8.8Hz,2.4Hz),6.79(d,1H,J=2.4Hz),6.71(d,2H,J=8.8Hz),6.52(d,2H,J=8.8Hz),5.13(br,2H),4.63(br,2H),4.28-4.25(m,2H),4.20-4.17(m,2H).
【0097】
<化合物[DA-n-3]の合成>
以下のスキームに従って化合物[DA-n-3]を合成した。
【0098】
【0099】
(化合物[9]の合成)
4つ口フラスコ中に、6-ブロモ-2-ナフタレンアミン(30.0g,135mmol)、テトラヒドロフラン(450g)、(4-ニトロフェニル)ボロン酸(27.2g,163mmol)、メタノール(300g)、炭酸セシウム(132g,405mmol)、及び水(150g)を仕込み、窒素置換した。そこに、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(3.12g,2.70mmol)を加え、窒素置換し、55℃で終夜撹拌した。反応終了後、反応液を水(750g)中に加えて結晶を析出させ、濾過し、結晶を回収した。得られた結晶に対し、イソプロピルアルコール(216g)を加え、65℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらトルエン(300g)を加えて晶析させた。これを濾過し、トルエン、ヘキサンでケーキ洗浄後、結晶を乾燥させ、化合物[9]を得た(収量:28.0g,106mmol,収率78%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):8.30(d,J=8.5Hz,2H),8.13(s,1H),8.03(d,J=8.6Hz,2H),7.72(d,J=8.8Hz,2H),7.63(d,J=8.7Hz,1H),7.00(d,J=8.5Hz,1H),6.85(s,1H),5.63(s,2H).
【0100】
(化合物[DA-n-3]の合成)
化合物[9](28.0g,106mmol)に対し、N,N-ジメチルホルムアミド(224g)を加え、窒素置換した後、5%パラジウムカーボン(含水品、2.24g)を加え窒素置換し、水素テドラーバッグを取り付け室温で終夜撹拌した。反応終了後、メンブレンフィルターに通しパラジウムカーボンを除去後、濾液を水(248g)中に加えて結晶を析出させ、濾過し、結晶(wet)を回収した。得られた結晶に対し、イソプロピルアルコール(50g)を加え55℃で加熱撹拌し、室温に冷却しながらトルエン(74g)を加えて晶析させた。濾過し、結晶を回収した(結晶A)。濾液を濃縮し、再度イソプロピルアルコール(55℃)-トルエン(室温)で晶析させ、濾過し、結晶を回収した(結晶B)得られた結晶A、Bを乾燥させ、化合物[DA-n-3]を得た。(収量:17.6g,75.1mmol,収率71%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):7.76(s,1H),7.60(d,J=8.7Hz,1H),7.53-7.49(m,2H),7.41(d,J=8.2Hz,2H),6.92(d,J=8.7Hz,1H),6.80(s,1H),6.66(d,J=8.2Hz,2H),5.25(s,4H).
【0101】
<化合物[DA-n-9]の合成例>
以下のスキームに従って化合物[DA-n-9]を合成した。
【0102】
【0103】
(化合物[4]の合成)
[DA-n-2]での合成中間体である化合物[4]を使用した。
(化合物[10]の合成)
ジメチルホルムアミド(607g)中、エチレングリコールジトシラート(60.7g、164mmol)、化合物[4](89.3g)及び炭酸カリウム(56.7g)加え、80℃で22時間撹拌した。室温まで冷却した後、純水(1200g)を加えて結晶を析出させた。そして、濾過し、濾物をメタノール(450g)でスラリー洗浄し、濾過し、濾物を乾燥させることで粗体を得た(83.9g)。粗体に対し、ジメチルホルムアミド(839g)を加え、90℃で加熱溶解させた後、メタノール(839g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。そして、濾過し、濾物を乾燥させることで化合物[10]を得た(収量:71.2g、収率:80%、橙色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):9.43(s,2H),7.99(br,2H),7.67(d,4H,J=8.8Hz),7.43(dd,2H,J=8.8Hz,2.4Hz),7.28(d,2H,J=2.4Hz),7.12(dd,2H,J=8.8Hz,2.4Hz),4.42(s,4H),1.47(s,18H).
【0104】
(化合物[DA-n-9]の合成)
クロロホルム(1143g)中、化合物[10](71.2g、129mmol)を加えて、水冷下に冷やした。これにトリフルオロ酢酸(160g)を加え、50℃で24時間撹拌した。室温まで冷却した後、トリエチルアミン(142g)及び純水(1143g)を加えて結晶を析出させた。そして、濾過し、濾物をメタノール(400g)でスラリー洗浄し、濾過し、濾物を乾燥させることで粗体を得た(37.5g)。粗体に対し、ジメチルホルムアミド(225g)を加え、90℃で加熱溶解させた後、メタノール(225g)を加えて冷却し、結晶を析出させた。濾過、濾物を乾燥させることで化合物DA-n-9を得た(収量:33.5g、収率:75%、淡赤紫色結晶)。
1H-NMR(400MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):7.51(d,2H,J=8.8Hz),7.45(d,2H,J=8.8Hz),7.17(d,2H,J=2.4Hz),7.02(dd,2H,J=8.8Hz,2.4Hz),6.91(dd,2H,J=8.8Hz,2.4Hz),6.80(d,2H,J=2.4Hz),5.14(br,4H),4.37(s,4H).
【0105】
<化合物[DA-n-10]の合成例>
以下のスキームに従って化合物[DA-n-10]を合成した。
【0106】
【0107】
(化合物[11]の合成)
tert-ブチル(5-ヒドロキシ-1-ナフタレニル)カルバメート(27.0g,104mmol)に対し、N,N-ジメチルホルムアミド(216g)及び炭酸カリウム(33g,239mmol)を仕込み、80℃で撹拌した。次に、1,2-ビス(4-メチルベンゼンスルホネート)-1,2-エタンジオール(18.0g,496mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(162g)溶液を滴下ロートにて滴下し、80℃で終夜加熱撹拌した。反応終了後、反応液を水(2268g)に注ぎ、結晶を析出させた。ブフナー漏斗を用いて混合液を濾過し、べたつきのある黒紫色結晶(93g)を得た。得られた粗物にN,N-ジメチルホルムアミドを加えて80℃で加熱溶解させ、室温に冷却しながらメタノールにて晶析し、濾過・乾燥させ、化合物[11]を得た(収量:28.0g,51.4mmol,収率67%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):9.14(s,2H),7.98(d,J=10.0Hz,2H),7.64(d,J=10.0Hz,2H),7.55(d,J=10.0Hz,2H),7.46(t,J=7.5Hz,2H),7.39(t,J=7.5Hz,2H),7.13(d,J=10.0Hz,2H),4.65(s,4H),1.49(s,18H).
【0108】
(化合物[DA-n-10]の合成)
化合物[11](28.0g,51.4mmol)に対し、クロロホルム(374g)及び炭酸カリウム(33g,239mmol)を仕込み、80℃で撹拌した。次に、滴下ロートにてトリフルオロ酢酸(31.0g,313mmol)をゆっくり滴下し、50℃で6時間加熱撹拌したところ、反応系内に灰色結晶が析出した。25℃に冷却した後、反応液を水(374g)に注ぎ、濾過した。得られた結晶に対し、トリエチルアミン及び水を加えて撹拌し、トリフルオロ酢酸塩からジアミンを遊離させ、再度濾過し、メタノール、次いでヘキサンで洗浄後、乾燥させ、化合物[DA-n-10]を得た(収量:9.30g,27.0mmol,収率86%)。
1H-NMR(500MHz,DMSO-d6,δ(ppm)):7.65(d,J=7.5Hz,2H),7.41(d,J=8.0Hz,2H),7.29(t,J=8.0Hz,2H),7.12(t,J=8.0Hz,2H),7.00(t,J=7.5Hz,2H),6.67(d,J=7.5Hz,2H),5.62(s,4H),4.56(s,4H).
【0109】
<DA-v-7の合成>
以下のスキームに従って化合物[DA-v-7]を合成した。「MeO」はメトキシ基を表す。
【化37】
【0110】
(化合物3(3a,3b混合物)の合成)
4つ口フラスコにマグネシウム(15.39g,63.3mmol,1.5eq.)を加え、真空ポンプにて1時間真空乾燥を行った後、THF(100g)をシリンジにて加え、室温にて撹拌した。次に化合物1(100g,42.2mmol)のTHF(300g)溶液を穏やかに還流する程度の速度で徐々に滴下しながら加えた。その後、反応溶液を0℃に冷却し、化合物2(105.60g,42.2mmol,1.0eq.)のTHF(200g)溶液を滴下した。滴下が終了した後、反応液の温度を室温まで戻し、室温にて3時間撹拌を行った。その後、トルエン(1L)を加え、反応液を希釈した後、反応溶液を再び0℃に冷却し、10%酢酸溶液(500g)を徐々に滴下し加えた。
次に、分液操作にて水層を除去し、有機層を飽和食塩水(1L)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(1L)、飽和食塩水(1L)でそれぞれ洗浄し無水硫酸マグネシウムにて有機層を乾燥した。その後、ろ過、エバポレーターにて留去を行い、化合物3の粗結晶172gを得た。得られた粗結晶はそのまま次の反応に使用した。
【0111】
(化合物4の合成)
化合物3の粗結晶(172g,422mmol)、p-トルエンスルホン酸一水和物(4.82g,及び25.3mmol,0.06eq.)の脱水トルエン(MS4A脱水品、2L)混合物を、還流下、水を抜きながら2時間反応させた。反応終了後、エバポレーターにてトルエンを使用量の半分程度留去した後、溶液を室温にて撹拌し、固体を析出させた。得られた固体をろ過し、化合物4の結晶を得た(得量150g、得率91%)。
【0112】
(化合物5(5a,5b混合物)の合成)
化合物4(108g,276mmol)、5%パラジウムカーボン(含水品、11g、10wt%)、酢酸エチル(1L)、及びエタノール(1L)の混合物を、水素存在下にて、室温で撹拌した。反応終了後、トルエン(2L)を加え結晶を溶かした後、反応混合物をセライトにてろ過、セライトをトルエン1Lで洗浄した。ろ液を減圧下にて濃縮したところ、目的化合物5を得た(得量103.3g、得率95%)。
【0113】
(化合物6の合成)
0℃、窒素置換下、化合物5(95.4g,243mmol)の塩化メチレン(800mL)溶液中に、BBr3(1.0M-CH2Cl2,243mL,1.01mol)を滴下した。滴下後、0℃で2時間撹拌した。反応終了後、蒸留水中に、反応液を少しずつ加えた。酢酸エチル(1L)にて抽出し、抽出液を蒸留水500mLで2回洗浄した。有機層を硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下にて留去した。得られた粗物をエタノールにて再結晶、ろ過、エタノールにて洗浄を行ったところ、目的化合物6を得た(得量18.6g、得率21%)。
【0114】
(化合物8の合成)
化合物6(10.0g,26.4mmol)、炭酸カリウム(11.0g,79.2mmol,3eq.)、及びトルエン(50g)の混合物中に、還流下、化合物7(5.35g,26.4mmol)のトルエン(20g)溶液を滴下した。滴下後、還流にて一晩撹拌した。反応終了後、反応液を60℃程度まで冷却した後、酢酸エチル(500g)を加え、蒸留水にて3回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムにて乾燥後、溶媒を減圧下にて留去した。得られた粗物を、アセトニトリル/エタノール(2:1)溶液にて再結晶、ろ過後、ろ過結晶をエタノールにて洗浄し、化合物8の粗結晶を得た。この粗結晶をカラムクロマトグラフィー(SiO2,CHCl3)にて精製し、化合物8の結晶を得た(得量7.1g、得率49%).
【0115】
(DA-v-7の合成)
化合物8(12.2g,22.4mmol)、5%パラジウムカーボン(含水品、1.22g、10wt%)、1,4-ジオキサン(120g)の混合物を、水素存在下、60℃、4時間撹拌した。反応終了後、窒素置換を行なった後、60℃のままセライトでろ過した。ろ液を、減圧下、溶媒留去したところ、粗物を得た。その粗物を2-プロパノール/酢酸エチル(2:1)で再結晶することにより、目的物であるDA-v-7を得た(得量8.0g、得率74%)。
1H-NMR(500MHz,CDCl3,δ(ppm)):7.725(1H,d),7.577(2H,m),7.272(2H,m),7.102(1H,s),6.791(1H,d),6.207(1H,d),6.117(1H,dd),3.621(4H,broad),2.553(1H,m),2.067-0.863(31H,m).
【0116】
[ポリアミック酸の合成]
<合成例1>
撹拌装置付き100mL四つ口フラスコに、DA-4を1.66g(7.00mmol)、DA-5を2.89g(8.75mmol)、DA-v-6を5.30g(7.00mmol)、DA-13を2.43g(12.3mmol)量り取り、NMPを49.1g加えて、撹拌し溶解させた。このジアミン溶液を撹拌しながらDC-3を7.53g(33.6mmol)添加し、さらにNMPを30.1g加え、60℃で15時間撹拌してポリアミック酸(A-R1、粘度:649mPa・s、数平均分子量:14,231)の溶液を得た。
【0117】
<合成例2~13>
ジアミン成分及び酸二無水物成分を、それぞれ、下記表1に示すものに変更したこと以外は、合成例1と同様に実施することにより、下記表1に示す、ポリアミック酸溶液(A-R2)~(A-R9)、(A-B1)~(A-B4)を得た。得られたポリアミック酸の粘度、分子量も下記表1に示す。
【0118】
【0119】
[液晶配向剤の調製]
<例1>
上記で得たポリアミック酸(A-R1)の溶液(6.0g)にNMP(6.0g)及びBCS(8.0g)を加え室温で10時間撹拌して、ポリアミック酸(A-R1)が6質量%、NMPが54質量%、及びBCSが40質量%を含む液晶配向剤(R1)を得た。
【0120】
<合成例2~13>
ポリアミック酸(A-R1)の代りに、下記表2に示すように、ポリアミック酸(A-R2)~(A-R9)、(A-B1)~(A-B4)を使用したこと以外は、例1と同様に実施することにより、それぞれ、表2に示す、例2~13の液晶配向剤(R2)~(R9)、(B1)~(B4)を得た。
なお、表2の例1~13において、例1~3、6~9は比較例であり、例4,5、10~13は、本発明の実施例である。
【0121】
【0122】
上記表2中の固形分比率は、液晶配向剤100質量部に対する重合体固形分の含有比率を表し、溶媒組成比率は、各有機溶媒における含有割合(質量部)を表す。
【0123】
<例14~21>
例1で得られた液晶配向剤(R1)と例4で得られた液晶配向剤(R4)とを、それぞれの質量比が3:7となるように混合して、室温で3時間撹拌し、例14の液晶配向剤(B5)を調製した。
また、例15~21では、使用する液晶配向剤の組み合わせを下記表3に示すものに変更した以外は例14と同様に実施することにより、それぞれ、下記表3に示す、例15~21の液晶配向剤(B6~B8,R10~R13)を調製した。
【表3】
【0124】
<例22~35>
下記のようにして、液晶配向膜及び液晶セルを作製し、作製した各液晶セルの特性を評価した。それらの結果を下記表4に示す。なお、下記の例において、例22~25、28~31は本発明の実施例であり、例26、27、32~35は比較例である。
[液晶配向膜の作製]
上記例1~21で調製した液晶配向剤を用いて、以下のようにして液晶配向膜を作製した。各液晶配向剤を、石英基板又はシリコンウェハーにスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブン(デンコー社製、MB1-1G3030X)で20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0125】
[液晶配向膜の屈折率の測定]
分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製、M-2000)を使用し、CAUCHYモデルによるフィッティングを行って、波長250~800nmにおける屈折率を測定した。結果を表4に示す。表4には、波長550nmにおける屈折率を記した。屈折率が1.62より大きい場合を「良好」とし、1.62以下の場合を「不良」とした。
【0126】
[液晶配向膜の透過率の測定]
石英基板を二枚使用して測定セルを作製した。二枚のうち一枚には液晶配向膜を形成し、液晶配向膜を形成した側の面を内側にして、液晶配向膜を形成していない石英基板を貼り合わせた。その間に屈折液(接触液、島津デバイス製造社製)を、スポイトを用いて挿入し、測定セルを作製した。屈折液は1.60~1.70の0.01刻み11種類の中から、それぞれの屈折率に合わせて使用した。
紫外可視分光光度計(島津製作所社製、UV-2600)を使用し、上記で作製した測定セルの波長380~800nmにおける透過率を測定した。結果を表4に示す。表4には波長380~800nmにおける透過率の平均値を記した。
透過率が99.0%より大きい場合を「良好」とし、99.0%以下の場合を「不良」として評価を行った。
【0127】
「液晶配向膜及び液晶セルの作製」
上記各実施例で調製した液晶配向剤を用いて、以下のようにして液晶セルを作製した。
各液晶配向剤を、画素サイズが100μm×300μmでライン/スペースがそれぞれ5μmのITO電極パターンが形成されているITO電極基板のITO面にスピンコートし、70℃のホットプレートで90秒間乾燥した後、230℃の熱風循環式オーブン(デンコー社製、MB1-1G3030X)で30分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
また、液晶配向剤を電極パターンが形成されていないITO面にスピンコートし、70度のホットプレートで90秒間乾燥させた後、230℃の熱風循環式オーブン(デンコー社製、MB1-1G3030X)で20分間焼成を行い、膜厚100nmの液晶配向膜を形成した。
【0128】
上記の2枚の基板について一方の基板の液晶配向膜上に4μmのビーズスペーサーを散布した後、その上からシール剤(溶剤型熱硬化タイプのエポキシ樹脂)を印刷した。次いで、もう一方の基板の液晶配向膜が形成された側の面を内側にして、先の基板と貼り合せた後、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに重合性化合物を含有する液晶MLC-3023(メルク社製商品名)を減圧注入法によって注入し、液晶セルを作製した。
【0129】
その後、この液晶セルに15VのDC電圧を印加した状態で、この液晶セルの外側から325nm以下の波長をカットするフィルターを通したUVを10J/cm2照射した。なお、UVの照度は、紫外線照射度計(ORC社製UV-MO3A)を用いて測定した。その後、液晶セル中に残存している未反応の重合性化合物を失活させる目的で、電圧を印加していない状態でUV-FL照射装置(東芝ライテック社製)を用いてUV(UVランプ:FLR40SUV32/A-1)を30分間照射した。
【0130】
「液晶セルの評価」
上記のようにして作製した各液晶セルの特性の評価方法は以下のとおりである。
(垂直配向性の評価)
液晶セルをクロスニコルの偏光板で挟み、後部からバックライトを照射した状態で、液晶セルを回転させて、明暗の変化で液晶が垂直配向しているかを目視にて観察した。評価基準は下記のとおりである。
○:液晶は垂直配向している。 ×:液晶が垂直配向していない。
【0131】
【0132】
なお、2019年9月24日に出願された日本特許出願2019-173271号の明細書、特許請求の範囲及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。