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特許7571730液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
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  • 特許-液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】液晶配向剤、液晶配向膜及びそれを用いた液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20241016BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021551330
(86)(22)【出願日】2020-09-29
(86)【国際出願番号】 JP2020036982
(87)【国際公開番号】W WO2021065934
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2019183651
(32)【優先日】2019-10-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】小西 玲久
(72)【発明者】
【氏名】山之内 洋一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 淳
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-112655(JP,A)
【文献】国際公開第2014/010402(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/031604(WO,A1)
【文献】特開2011-256351(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1337
C08G 73/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の重合体(A)および重合体(B)を含有する液晶配向剤。
重合体(A):下記式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを含むジアミン成分と、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物とのみの重縮合で得られるポリアミック酸。
【化1】
(式(3)中、n1とn2はそれぞれ独立して1~3の整数を表す。)
重合体(B):前記式(1)で表される第1のジアミン、前記式(2)で表される第2のジアミン、及び前記式(3)で表される第3のジアミンを同時には含まないジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物との重縮合で得られるポリアミック酸。
【請求項2】
前記重合体(A)における脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物が、下記から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の液晶配向剤。
【化2】
【請求項3】
請求項1又は2に記載の液晶配向剤から得られる液晶配向膜。
【請求項4】
請求項3に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、この液晶配向剤によって得られる液晶配向膜、及び得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、携帯電話、スマートフォン、テレビ等の表示部として幅広く用いられている。液晶表示素子は、例えば、素子基板とカラーフィルタ基板との間に挟持された液晶層、液晶層に電界を印加する画素電極及び共通電極、液晶層の液晶分子の配向性を制御する配向膜、画素電極に供給される電気信号をスイッチングする薄膜トランジスタ(TFT)等を備えている。液晶分子の駆動方式としては、TN方式、VA方式等の縦電界方式や、IPS方式、FFS方式等の横電界方式が知られている。基板の片側のみに電極を形成させ、基板と平行方向に電界を印加する横電界方式では、従来の上下基板に形成された電極に電圧を印加して液晶を駆動させる縦電界方式と比べ、広い視野角特性を有し、また高品位な表示が可能な液晶表示素子として知られている。
【0003】
横電界方式の液晶セルは視野角特性に優れているものの、基板内に形成される電極部分が少ないために、電圧保持率が低いと液晶に十分な電圧がかからず表示コントラストが低下する。また、液晶配向の安定性が小さいと、液晶を長時間駆動させた際に液晶が初期の状態に戻らなくなり、コントラスト低下や残像の原因となるため、液晶配向の安定性が重要である。更に、静電気が液晶セル内に蓄積されやすく、駆動によって生じる正負非対称電圧の印加によっても液晶セル内に電荷が蓄積され、これらの蓄積された電荷が液晶配向の乱れや残像として表示に影響を与え、液晶素子の表示品位を著しく低下させる。また、駆動直後にバックライト光が液晶セルに照射されることによっても電荷が蓄積され、短時間の駆動でも残像が発生したり駆動中にフリッカー(ちらつき)が起きる等の問題を生じてしまう。
【0004】
このような横電界方式の液晶表示素子に用いた際、電圧保持率に優れ、かつ電荷蓄積を低減した液晶配向剤として、特許文献1には、特定ジアミンと脂肪族テトラカルボン酸誘導体とを重縮合して得られる重合体を含有する液晶配向剤が開示されている。しかし、液晶表示素子の高性能化に伴い、液晶配向膜に要求される特性も厳しくなってきており、これらの従来の技術では全ての要求特性を十分に満足することは難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開公報WO2004/021076号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、液晶配向の安定性に優れ、駆動中にフリッカー(ちらつき)が起こりにくい液晶配向膜を得ることができる液晶配向剤、前記液晶配向剤によって得られる液晶配向膜、及び得られた液晶配向膜を具備する液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、液晶配向剤に含まれる重合体中に複数の特定構造を導入することで上記の課題が改善されることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は、かかる知見に基づくものであり、下記を要旨とするものである。
下記の重合体(A)および重合体(B)を含有する液晶配向剤。
重合体(A):下記式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを含むジアミン成分と、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物との重縮合で得られるポリアミック酸。
【化1】
(式(3)中、n1とn2はそれぞれ独立して1~3の整数を表す。)
重合体(B):前記式(1)で表される第1のジアミン、前記式(2)で表される第2のジアミン、及び前記式(3)で表される第3のジアミンを同時には含まないジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物との重縮合で得られるポリアミック酸。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】横電界液晶表示素子の一例を示す概略断面図である。
図2】横電界液晶表示素子の他の例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の液晶配向剤は、以下に述べる重合体(A)および重合体(B)を含有するものである。
<重合体(A)>
本発明に用いられる重合体(A)は、下記式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを含むジアミン成分と、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物との重縮合で得られるポリアミック酸である。
【0011】
【化2】
式(3)中、n1とn2はそれぞれ独立して1~3の整数を表す。
【0012】
重合体(A)における上記式(1)~(3)のジアミンの含有割合は特に限定されないが、重合体(A)を構成する全ジアミン成分に対して、式(1)のジアミンが10~70モル%、式(2)のジアミンが10~70モル%、及び式(3)のジアミンが5~50モル%であると好ましい。
【0013】
また、重合体(A)のジアミン成分は、上記式(1)~(3)以外のジアミンを含有していても良い。式(1)~(3)以外のジアミンの含有割合としては重合体(A)を構成する全ジアミン成分に対して50モル%以下であることが好ましく、より好ましくは30モル%以下である。
【0014】
重合体(A)において、脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物の構造は特に限定されない。また、重合体(A)における脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物の構造は1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
【0015】
以下に、重合体(A)における脂環構造を有するテトラカルボン酸二無水物の好ましい構造を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化3】
【0016】
本発明に用いる重合体(A)は、テトラカルボン酸誘導体成分及び/又はジアミン成分に対して単官能である化合物を用いて、主鎖末端を修飾した重合体であっても構わない。該単官能の化合物としては、モノアミン、モノイソシアネート、酸無水物基を1個有する化合物、酸クロライド基を1個有する化合物などが挙げられる。
【0017】
重合体(A)の分子量は、良好な塗膜が形成できる限りにおいて特に限定されないが、例えば重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0018】
<重合体(B)>
本発明に用いられる重合体(B)は、前記式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを同時には含まないジアミン成分と、テトラカルボン酸二無水物との重縮合で得られるポリアミック酸である。
重合体(B)は、重合体(A)とは異なる重合体である。そこで、重合体(B)が、式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを同時には含まないジアミン成分を用いて得られるポリアミック酸であることを規定している。
【0019】
重合体(B)のジアミン成分に含まれるジアミンとしては下記式(4)で表される化合物を挙げることができる。
【化4】
式(4)において、Yは2価の有機基を表し、2つのRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~5のアルキル基を表す。
【0020】
重合体(B)におけるジアミン成分は1種類のジアミンであってもよく、2種類以上のジアミンが混在していてもよいが、式(1)で表される第1のジアミン、式(2)で表される第2のジアミン、及び式(3)で表される第3のジアミンを同時には含まない。重合体(B)のジアミン成分として、前記式(1)~(3)で表されるいずれのジアミンも含まないことは好ましい。
【0021】
前記式(4)で表される化合物に関して、重合体(B)のジアミン成分として特に好ましい化合物におけるYの構造を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化5】
【0022】
が上記のいずれかの構造である式(4)の化合物は、重合体(B)のジアミン成分中に1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
また、Yが下記のいずれかの構造である式(4)の化合物を追加的に含むことは好ましい。
【化6】
上記でBocは下記で表される基を示す。
【化7】
【0023】
重合体(B)において、テトラカルボン酸二無水物の構造は特に限定されない。また、重合体(B)におけるテトラカルボン酸二無水物の構造は1種類であってもよく、2種類以上が混在していてもよい。
【0024】
以下に、重合体(B)におけるテトラカルボン酸二無水物の好ましい構造を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【化8】
【0025】
本発明に用いる重合体(B)は、テトラカルボン酸誘導体成分及び/又はジアミン成分対して単官能である化合物を用いて、主鎖末端を修飾した重合体であっても構わない。該単官能の化合物としては、モノアミン、モノイソシアネート、酸無水物基を1個有する化合物、酸クロライド基を1個有する化合物などが挙げられる。
【0026】
重合体(B)の分子量は、良好な塗膜が形成できる限りにおいて特に限定されないが、例えば重量平均分子量で2,000~500,000が好ましく、より好ましくは5,000~300,000であり、さらに好ましくは、10,000~100,000である。また、数平均分子量は、好ましくは、1,000~250,000であり、より好ましくは、2,500~150,000であり、さらに好ましくは、5,000~50,000である。
【0027】
<液晶配向剤>
本発明の液晶配向剤において、重合体(A)と重合体(B)の配合比率は特に限定されないが、重合体(A)と重合体(B)の合計に対して、重合体(A)の含有量が50~90質量%であると好ましく、更に好ましくは60~80質量%である。
【0028】
本発明の液晶配向剤は、重合体(A)及び重合体(B)以外のその他の重合体を含有していてもよい。その他の重合体の主骨格は特に限定されないが、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリエステル、セルロース誘導体、ポリアセタール、ポリスチレン誘導体、ポリ(スチレンーマレイミド)誘導体、ポリ(メタ)アクリレートなどを主骨格とする重合体が挙げられる。
【0029】
本発明の液晶配向剤は、重合体以外の成分を含有していてもよい。重合体以外の成分としては、液晶配向膜の誘電率や導電性などの電気特性を変化させる目的の誘電体若しくは導電物質、液晶配向膜と基板との密着性を向上させる目的のシランカップリング剤、液晶配向膜にした際の膜の硬度や緻密度を高める目的の架橋性化合物、さらには塗膜を焼成する際にポリアミック酸のイミド化を効率よく進行させる目的のイミド化促進剤等が挙げられる。
【0030】
本発明の液晶配向剤は、液晶配向膜を作製するために用いられるものであり、均一な薄膜を形成させるという観点から、上記の成分を有機溶媒に溶解させた塗布液であることは好ましい。液晶配向剤中の重合体の濃度は、使用する塗布装置および得ようとする液晶配向膜の厚みによって適宜変更される。均一で欠陥のない塗膜を形成させるという点からは、1質量%以上であることが好ましく、溶液の保存安定性の点からは、10質量%以下とすることが好ましい。特に好ましい重合体の濃度は、2~8質量%である。
【0031】
上記塗布液に用いられる有機溶媒は、重合体成分が均一に溶解するものであれば特に限定されない。その具体例を挙げるならば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、γ-ブチロラクトン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなどを挙げることができる。なかでも、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、又はγ-ブチロラクトンを用いることが好ましい。これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0032】
また、塗膜形成を目的とした組成物においては、上記のような溶媒に加えて塗布性の向上や塗膜表面の平滑性を向上させる溶媒を加えた混合溶媒を使用することが一般的であり、本発明の液晶配向剤においてもこのような混合溶媒は好適に用いられる。混合する有機溶媒の具体例を下記に挙げるが、これらの例に限定されない。
【0033】
例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、1-ペンタノール、2-ペンタノール、3-ペンタノール、2-メチル-1-ブタノール、イソペンチルアルコール、tert-ペンチルアルコール、3-メチル-2-ブタノール、ネオペンチルアルコール、1-ヘキサノール、2-メチル-1-ペンタノール、2-メチル-2-ペンタノール、2-エチル-1-ブタノール、1-ヘプタノール、2-ヘプタノール、3-ヘプタノール、1-オクタノール、2-オクタノール、2-エチル-1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1-メチルシクロヘキサノール、2-メチルシクロヘキサノール、3-メチルシクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジヘキシルエーテル、1,4-ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、1,2-ブトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2-ペンタノン、3-ペンタノン、2-ヘキサノン、2-ヘプタノン、4-ヘプタノン、3-エトキシブチルアセタート、1-メチルペンチルアセタート、2-エチルブチルアセタート、2-エチルヘキシルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、2-(メトキシメトキシ)エタノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソアミルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、2-(ヘキシルオキシ)エタノール、フルフリルアルコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1-(ブトキシエトキシ)プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセタート、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノアセタート、エチレングリコールジアセタート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、2-(2-エトキシエトキシ)エチルアセタート、ジエチレングリコールアセタート、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、乳酸メチル、乳酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸プロピレングリコールモノエチルエーテル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸、3-メトキシプロピオン酸プロピル、3-メトキシプロピオン酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n-プロピル、乳酸n-ブチル、乳酸イソアミル、下記式[D-1]~[D-3]で表される溶媒などを挙げることができる。
【0034】
【化9】
(式[D-1]及び式[D-2]中のRは炭素数1~3のアルキル基を示し、式[D-3]中のRは炭素数1~4のアルキル基を示す。)
【0035】
上記のなかでも、1-ヘキサノール、シクロヘキサノール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、エチレングリコールモノブチルエーテル又はジプロピレングリコールジメチルエーテルが好ましい。このような溶媒の種類及び含有量は、液晶配向剤の塗布装置、塗布条件、塗布環境などに応じて適宜選択される。また、これらの溶媒は2種以上を併用してもよい。
【0036】
<液晶配向膜>
本発明の液晶配向膜は、上記本発明の液晶配向剤から得られる。液晶配向剤から液晶配向膜を得る方法の一例を挙げるなら、塗布液形態の液晶配向剤を基板に塗布し、乾燥し、焼成して得られた膜に対してラビング処理法又は光配向処理法で配向処理を施す方法が挙げられる。
【0037】
液晶配向剤を塗布する基板としては特に限定されず、ガラス基板、窒化珪素基板、アクリル基板やポリカーボネート基板などのプラスチック基板等を用いることもできる。その際、液晶を駆動させるためのITO電極などが形成された基板を用いると、プロセスの簡素化の点から好ましい。また、反射型の液晶表示素子では、片側の基板のみにならば、シリコンウエハーなどの不透明な物でも使用でき、この場合の電極にはアルミニウムなどの光を反射する材料も使用できる。
液晶配向剤の塗布方法は、特に限定されないが、工業的には、スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、インクジェット法などが一般的である。その他の塗布方法としては、ディップ法、ロールコータ法、スリットコータ法、スピンナー法、スプレー法などがあり、目的に応じてこれらを用いてもよい。
【0038】
液晶配向剤を基板上に塗布した後は、ホットプレート、熱循環型オーブン、IR(赤外線)型オーブンなどの加熱手段により、溶媒を蒸発させ、焼成する。液晶配向剤を塗布した後の乾燥、焼成工程は、任意の温度と時間を選択することができる。通常は、含有される溶媒を十分に除去するために、50~120℃で1~10分焼成し、その後、150~300℃で、5~120分焼成する条件が挙げられる。
焼成後の液晶配向膜の厚みは、特に限定されないが、薄すぎると液晶表示素子の信頼性が低下する場合があるので、5~300nmであることが好ましく、10~200nmがより好ましい。
本発明の液晶配向膜は、IPS方式やFFS方式などの横電界方式の液晶表示素子の液晶配向膜として好適であり、特に、FFS方式の液晶表示素子の液晶配向膜として有用である。
【0039】
<液晶表示素子>
本発明の液晶表示素子は、上記液晶配向剤から得られる液晶配向膜付きの基板を得た後、既知の方法で液晶セルを作製し、該液晶セルを使用して素子としたものである。
以下に、液晶セルの作製方法の一例を挙げるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
まず、液晶を駆動させるための電極が形成された1組の基板を用意する。この電極は、例えばITO電極とすることができ、所望の画像表示ができるようパターニングされている。また、画像表示を構成する各画素部分にTFT(Thin Film Transistor)などのスイッチング素子が設けられていてもよい。この基板上に前記のようにして液晶配向膜を形成する。
【0041】
次いで、液晶配向膜を形成した2枚の基板のうちの一方の基板上の所定の場所に例えば紫外線硬化性のシール剤を配置し、さらに液晶配向膜面上の所定の数カ所に液晶を配置した後、液晶配向膜が対向するように他方の基板を貼り合わせて圧着することにより液晶を液晶配向膜全面に押し広げた後、基板の全面に紫外線を照射してシール剤を硬化することで液晶セルを得る。
または、基板の上に液晶配向膜を形成した後の工程として、一方の基板上の所定の場所にシール剤を配置する際に、外部から液晶を充填可能な開口部を設けておき、液晶を配置しないで基板を貼り合わせた後、シール剤に設けた開口部を通じて液晶セル内に液晶材料を注入し、次いで、この開口部を接着剤で封止して液晶セルを得る。液晶材料の注入には、真空注入法でもよいし、大気中で毛細管現象を利用した方法でもよい。
上記のいずれの方法においても、液晶セル内に液晶材料が充填される空間を確保する為に、一方の基板上に柱状の突起を設けるか、一方の基板上にスペーサーを散布するか、シール剤にスペーサーを混入するか、又はこれらを組み合わせるなどの手段を取ることが好ましい。
【0042】
上記の液晶材料としては、ネマチック液晶、及びスメクチック液晶を挙げることができ、その中でもネマチック液晶が好ましく、ポジ型液晶材料やネガ型液晶材料のいずれを用いてもよい。次に、偏光板の設置を行う。具体的には、2枚の基板の液晶層とは反対側の面に一対の偏光板を貼り付けることが好ましい。
【0043】
図1は、横電界液晶表示素子の一例を示す概略断面図であり、IPSモード液晶表示素子の例である。
図1に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2cを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2aと、基材2a上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2bと、基材2a上に線状電極2bを覆うように形成された液晶配向膜2cとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された液晶配向膜4aとを有している。液晶配向膜2c及び液晶配向膜4aの少なくともいずれかが本発明の液晶配向膜である。
この横電界液晶表示素子1においては、線状電極2bに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように線状電極2b間で電界が発生する。
【0044】
図2は、横電界液晶表示素子の他の例を示す概略断面図であり、FFSモード液晶表示素子の例である。
図2に例示する横電界液晶表示素子1においては、液晶配向膜2hを具備する櫛歯電極基板2と液晶配向膜4aを具備する対向基板4との間に、液晶3が挟持されている。櫛歯電極基板2は、基材2dと、基材2d上に形成された面電極2eと、面電極2e上に形成された絶縁膜2fと、絶縁膜2f上に形成され、櫛歯状に配置された複数の線状電極2gと、絶縁膜2f上に線状電極2gを覆うように形成された液晶配向膜2hとを有している。対向基板4は、基材4bと、基材4b上に形成された液晶配向膜4aとを有している。液晶配向膜2h及び液晶配向膜4aの少なくともいずれかが本発明の液晶配向膜である。
この横電界液晶表示素子1においては、面電極2eおよび線状電極2gに電圧が印加されると、電気力線Lで示すように面電極2eおよび線状電極2g間で電界が発生する。
【実施例
【0045】
以下に、本発明について実施例等を挙げて具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、化合物、溶媒の略号は、及び特性評価方法は、以下のとおりである。
【0046】
NMP:N-メチル-2-ピロリドン
GBL:γ-ブチロラクトン
BCS:ブチルセロソルブ
DA-1~DA-9:下記構造式の化合物
CA-1、CA-2:下記構造式の化合物
AD-1、AD-2:下記構造式の化合物
【0047】
【化10】
【化11】
【化12】
【0048】
[粘度の測定]
以下の合成例において、ポリマー溶液の粘度は、E型粘度計TVE-22H(東機産業社製)を用い、サンプル量1.1mL、コーンロータTE-1(1°34’、R24)、温度25℃で測定した。
【0049】
<重合体の合成>
(合成例1)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの5000mLのセパラブルフラスコに、DA-1(99.63g,500mmol)、DA-2(106.64g,500mol)、及びDA-3(74.60g,250mmol)を加えた後、NMP(3663.6g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(228g,1163mmol)、及びNMP(915.8g)を加えた後、23℃で2時間撹拌してポリアミック酸(PAA-A1)のNMP溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は91mPa・sであった。
【0050】
(合成例2)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-4(0.54g,4.99mmol)、DA-5(1.83g,7.49mmol)、DA-6(2.40g,7.49mmol)、及びDA-7(1.99g,4.99mmol)を加えた後、NMP(68.43g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-2(5.31g,23.7mmol)、及びNMP(20.12g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間攪拌することでポリアミック酸(PAA-B1)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は402mPa・sであった。
【0051】
(合成例3)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの3000mLのセパラブルフラスコに、DA-4(17.3g,160mmol)、DA-5(58.6g,240mmol)、DA-6(76.9g,240mmol)、及びDA-8(54.6g,160mmol)を加えた後、NMP(1944g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-2(171g,764mmol)、及びNMP(833g)を加えた後、さらに50℃条件下にて12時間攪拌することでポリアミック酸(PAA-B2)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は426mPa・sであった。
【0052】
(比較合成例1)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-1(4.14g,20.78mmol)、及びDA-9(1.03g,5.20mmol)を加えた後、NMP(71.22g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(4.72g,24.1mmol)、及びNMP(10g)を加えた後、さらに23℃で2時間撹拌してポリアミック酸(PAA-C1)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は130mPa・sであった。
【0053】
(比較合成例2)
撹拌装置付き及び窒素導入管付きの100mLの四つ口フラスコに、DA-1(3.99g,20.03mmol)、及びDA-3(1.49g,4.99mmol)を加えた後、NMP(71.91g)を加え、窒素を送りながら撹拌し溶解させた。この溶液を撹拌しながら、CA-1(4.51g,23.00mmol)、及びNMP(10g)を加えた後、さらに23℃で2時間撹拌してポリアミック酸(PAA-C2)の溶液を得た。このポリアミック酸溶液の粘度は134mPa・sであった。
【0054】
(比較合成例3)
合成例3と同様にして得たポリアミック酸(PAA-B2)の溶液に、無水酢酸、及びピリジンを加え、55℃で3時間反応させた。この反応溶液をメタノールに注ぎ、生成した沈殿物を濾別した。この沈殿物をメタノールで洗浄し、60℃で減圧乾燥しポリイミド(SPI-1)の粉末を得た。このポリイミドのイミド化率は66%であった。得られたポリイミド(SPI-1)の粉末にNMP、及びGBLを加えて70℃にて20hr攪拌して溶解させポリイミド(SPI-1)の溶液を得た。
【0055】
(実施例及び比較例)
合成例1~3及び比較合成例1~3で得られた重合体の溶液、AD-1、AD-2、及び表1に示す溶媒を混合し、室温で2時間撹拌することにより下記に示す組成の液晶配向剤を得た(下段の数字は質量%を表す)。
【表1】
【0056】
以上のようにして得られた液晶配向剤を用いて以下に示す手順でFFS駆動液晶セルを作製し、特性評価を行った。
【0057】
[FFS駆動液晶セルの構成]
フリンジフィールドスィッチング(Fringe Field Switching:FFS)モード用の液晶セルは、面形状の共通電極-絶縁層-櫛歯形状の画素電極からなるFOP(Finger on Plate)電極層が表面に形成されている第1のガラス基板と、表面に高さ4μmの柱状スペーサーを有し裏面に帯電防止の為のITO膜が形成されている第2のガラス基板とを、一組とした。上記の画素電極は、中央部分が内角160°で屈曲した幅3μmの電極要素が6μmの間隔を開けて平行になるように複数配列された櫛歯形状を有しており、1つの画素は、複数の電極要素の屈曲部を結ぶ線を境に第1領域と第2領域を有している。
なお、第1のガラス基板に形成する液晶配向膜は、画素屈曲部の内角を等分する方向と液晶の配向方向とが直交するように配向処理し、第2のガラス基板に形成する液晶配向膜は、液晶セルを作製した時に第1のガラス基板上の液晶の配向方向と第2のガラス基板上の液晶の配向方向とが一致するように配向処理する。
【0058】
[液晶セルの作製]
液晶配向剤を孔径1.0μmのフィルターで濾過した後、上記の電極付き基板(第1のガラス基板)と対向基板(第2のガラス基板)のそれぞれにスピンコートした。次いで、80℃のホットプレート上で5分間乾燥後、230℃で20分間焼成して膜厚100nmの塗膜として、各基板上にポリイミド膜を得た。この塗膜面に偏光板を介して消光比26:1の直線偏光した波長254nmの紫外線を300mJ/cm照射した。更に、この基板を230℃で20分間焼成して、液晶配向膜付き基板を得た。
次に、上記一組の液晶配向膜付き基板の一方にシール剤を印刷し、もう一方の基板を液晶配向膜面が向き合うように貼り合わせ、シール剤を硬化させて空セルを作製した。この空セルに減圧注入法によって、液晶(メルク社製、MLC-3019)を常温で真空注入し、注入口を封止して、FFS駆動液晶セルを得た。その後、得られた液晶セルを120℃で1時間加熱し、一晩放置してから各評価に使用した。
【0059】
<液晶配向の安定性評価>
上記で作成したFFS駆動液晶セルに対し、60℃の恒温環境下、周波数60Hzで±5Vの交流電圧を120時間印加した。その後、液晶セルの画素電極と対向電極との間をショートさせた状態にし、そのまま室温に一日放置した。
上記の処理を行った液晶セルに関して、電圧無印加状態における、画素の第1領域の液晶の配向方向と第2領域の液晶の配向方向とのずれを角度として算出した。
具体的には、偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に液晶セルを設置し、バックライトを点灯させ、画素の第1領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルの配置角度を調整し、次に画素の第2領域の透過光強度が最も小さくなるように液晶セルを回転させたときに要する回転角度を求めた。
液晶配向の安定性は、この回転角度の値が小さいほど良好であると言える。液晶配向の安定性は、回転角度が0.20度以下を維持した場合、「良好」とし、0.20度超の場合、「不良」と定義して評価を行った。
【0060】
<駆動中に起こるフリッカーの評価>
上記で作製した液晶セルを偏光軸が直交するように配置された2枚の偏光板の間に設置し、電圧無印加の状態でLEDバックライトを点灯させておき、透過光の輝度が最も小さくなるように、液晶セルの配置角度を調整した。次に、この液晶セルに周波数30Hzの交流電圧を印加しながらV-Tカーブ(電圧-透過率曲線)を測定し、相対透過率が23%となる交流電圧を駆動電圧として算出した。
【0061】
フリッカーの測定では、点灯させておいたLEDバックライトを一旦消灯して72時間遮光放置した後に、LEDバックライトを再度点灯し、バックライト点灯開始と同時に相対透過率が23%となる周波数30Hzの交流電圧を印加して、液晶セルを60分間駆動させてフリッカー振幅を追跡した。フリッカー振幅は、2枚の偏光板及びその間の液晶セルを通過したLEDバックライトの透過光を、フォトダイオード及びI-V変換アンプを介して接続されたデータ収集/データロガースイッチユニット34970A(Agilent technologies社製)で読み取った。このデータを基に以下の数式を用いて算出した値をフリッカーレベルとした。
フリッカーレベル(%)={フリッカー振幅/(2×z)}×100
【0062】
上記式中、zは相対透過率が23%となる周波数30Hzの交流電圧で駆動した際の輝度をデータ収集/データロガースイッチユニット34970Aで読み取った値である。
フリッカーの評価は、LEDバックライトの点灯及び交流電圧の印加を開始した時点から60分間が経過するまでに、フリッカーレベルが2%未満を維持した場合に、「○」と定義して評価を行った。また、60分間でフリッカーレベルが2%以上に達した場合には、「×」と定義して評価した。
上述した方法に従うフリッカーレベルの評価は、液晶セルの温度が23℃の状態の温度条件下で行った。
【0063】
<評価結果>
上記実施例及び比較例の各液晶配向剤を使用する液晶表示素子に関して実施した液晶配向の安定性、及び駆動中に起こるフリッカーの評価結果を表に示す。
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の液晶配向剤は、TN方式、VA方式等の縦電界方式、特に、IPS方式、FFS方式等の横電界方式の液晶表示素子に広く用いられる。
【符号の説明】
【0065】
1 横電界液晶表示素子
2 櫛歯電極基板
2a 基材
2b 線状電極
2c 液晶配向膜
2d 基材
2e 面電極
2f 絶縁膜
2g 線状電極
2h 液晶配向膜
3 液晶
4 対向基板
4a 液晶配向膜
4b 基材
L 電気力線
図1
図2