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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】紫外光照射システム
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20241016BHJP
   G02B 6/28 20060101ALI20241016BHJP
   G02B 6/26 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
A61L2/10
G02B6/28 P
G02B6/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022539995
(86)(22)【出願日】2020-11-02
(86)【国際出願番号】 JP2020041093
(87)【国際公開番号】W WO2022024406
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/029267
(32)【優先日】2020-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友宏
(72)【発明者】
【氏名】岩城 亜弥子
(72)【発明者】
【氏名】中島 和秀
(72)【発明者】
【氏名】半澤 信智
(72)【発明者】
【氏名】松井 隆
(72)【発明者】
【氏名】寒河江 悠途
(72)【発明者】
【氏名】深井 千里
(72)【発明者】
【氏名】原 一貴
(72)【発明者】
【氏名】河北 敦子
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-013723(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0335773(US,A1)
【文献】特表2001-524354(JP,A)
【文献】特開2016-214842(JP,A)
【文献】特開2004-321784(JP,A)
【文献】国際公開第2006/103938(WO,A1)
【文献】特開2019-073402(JP,A)
【文献】特開2005-043673(JP,A)
【文献】特開2015-045705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/10
G02B 6/26、6/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光源部から一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬する光ファイバと、
を備えており、
前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記紫外光源部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバの経路に沿って設置され、設置場所において前記側面発光光ファイバが漏洩する前記紫外光の部分光量を検出し、前記情報として前記部分光量を前記集中制御部へ通知する複数の検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項2】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光源部から一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬する光ファイバと、
を備えており、
前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記紫外光源部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバを含む前記光ファイバの前記一端側と前記他端側に設置され、それぞれの設置場所において前記光ファイバを伝搬する前記紫外光の伝搬光量を検出し、前記情報として前記伝搬光量を前記集中制御部へ通知する2つの検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項3】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部と、
前記分配機能部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記紫外光源部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバの経路に沿って設置され、設置場所において前記側面発光光ファイバが漏洩する前記紫外光の部分光量を検出し、前記情報として前記部分光量を前記集中制御部へ通知する複数の検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項4】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部と、
前記分配機能部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記紫外光源部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバを含む前記光ファイバの前記一端側と前記他端側に設置され、それぞれの設置場所において前記光ファイバを伝搬する前記紫外光の伝搬光量を検出し、前記情報として前記伝搬光量を前記集中制御部へ通知する2つの検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項5】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部と、
前記分配機能部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記分配機能部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の分配率を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバの経路に沿って設置され、設置場所において前記側面発光光ファイバが漏洩する前記紫外光の部分光量を検出し、前記情報として前記部分光量を前記集中制御部へ通知する複数の検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項6】
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部と、
前記分配機能部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであって、
情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記分配機能部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の分配率を調整する集中制御部と、
前記側面発光光ファイバを含む前記光ファイバの前記一端側と前記他端側に設置され、それぞれの設置場所において前記光ファイバを伝搬する前記紫外光の伝搬光量を検出し、前記情報として前記伝搬光量を前記集中制御部へ通知する2つの検出部と、
をさらに備えることを特徴とする紫外光照射システム。
【請求項7】
前記紫外光源部から前記分配機能部へ前記紫外光を伝搬する伝搬光ファイバが前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであることを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項8】
前記紫外光源部は、波長変換素子を有しており、入力された前記紫外光以外の光を前記波長変換素子で波長変換し、前記紫外光を発生させることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項9】
前記光ファイバの前記他端に接続され、前記紫外光を終端する終端部をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項10】
前記光ファイバの前記他端に接続され、前記紫外光を所望箇所に照射する照射部をさらに備えることを特徴とする請求項1からのいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項11】
前記側面発光光ファイバは、前記紫外光を散乱させる錯乱体を有することを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項12】
前記側面発光光ファイバは、曲げもしくはマイクロベンドが付与されていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項13】
前記光ファイバは、
充実コア光ファイバ、空孔アシスト光ファイバ、空孔構造光ファイバ、中空コア光ファイバ、結合コア型光ファイバ、充実コア型マルチコア光ファイバ、空孔アシスト型マルチコア光ファイバ、空孔構造型マルチコア光ファイバ、中空コア型マルチコア光ファイバ、及び結合コア型マルチコア光ファイバのいずれかであることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の紫外光照射システム。
【請求項14】
前記紫外光以外の光を前記波長変換素子に入力する光ファイバは、
充実コア光ファイバ、空孔アシスト光ファイバ、空孔構造光ファイバ、中空コア光ファイバ、結合コア型光ファイバ、充実コア型マルチコア光ファイバ、空孔アシスト型マルチコア光ファイバ、空孔構造型マルチコア光ファイバ、中空コア型マルチコア光ファイバ、及び結合コア型マルチコア光ファイバのいずれかであることを特徴とする請求項に記載の紫外光照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紫外光を用いて殺菌やウィルスの不活性化を行う紫外光照射システムに関する。
【背景技術】
【0002】
感染症予防などの目的から、紫外光を用いた殺菌やウィルスの不活性化を行うシステムの需要が高まっている。当該システムには、大きく3つのカテゴリの製品がある。なお、本明細書では、「殺菌等」あるいは「除染」と記載する場合、殺菌とウィルスの不活性化を意味するものとする。
(1)移動型殺菌ロボット
非特許文献1の製品は、紫外光を照射する自律移動型のロボットである。当該ロボットは、病室などの建物内の部屋の中を移動しながら紫外光を照射することで、人手を介さず、自動で広い範囲の殺菌等を実現できる。
(2)据え置き型空気清浄機
非特許文献2の製品は、天井や室内の所定の場所に設置され、室内の空気を循環しながら殺菌等する装置である。当該装置は、直接紫外光を照射せず、人体への影響がないため、安全性の高い殺菌等が可能である。
(3)ポータブル型殺菌装置
非特許文献3の製品は、紫外光源を搭載したポータブル型の装置である。ユーザが当該装置を所望のエリアに持って行って紫外光を照射できる。このため、当該装置は様々な場所で使用可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】カンタム・ウシカタ株式会社ウェブサイト(https://www.kantum.co.jp/product/sakkin_robot/sakkinn_robot/UVD_robot)、2020年6月22日検索
【文献】岩崎電気株式会社ウェブサイト(https://www.iwasaki.co.jp/optics/sterilization/air/air03.html)、2020年6月22日検索
【文献】フナコシ株式会社ウェブサイト(https://www.funakoshi.co.jp/contents/68182)、2020年6月22日検索
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、非特許文献に記載される装置には次のような課題がある。
(A)経済性
殺菌ロボットは、紫外光を照射する自律移動型のロボットであり、病室などの建物内において、部屋の中を移動しながら紫外光を照射することで、人手を介さず自動で広い範囲の殺菌を実現できる。しかし、殺菌ロボットには、高出力の紫外光を照射するため、装置が大掛かりなもので高価になってしまい、経済的なシステムの実現が困難という課題がある。
(B)汎用性
据え置き型空気清浄機は、天井や室内の所定の場所に設置し、室内の空気を循環させながら殺菌する装置であり、直接紫外光を照射せず、人体への影響がないため、安全性の高い殺菌が可能である。しかし、据え置き型空気清浄機は、循環させた室内の空気を殺菌する方法のため、殺菌したい場所に直接紫外光を照射することができない。このように、据え置き型空気清浄機には、任意の場所に紫外光を照射することが困難という課題がある。
(C)操作性
ポータブル殺菌器は、紫外光源を搭載したポータブル型の装置であり、ユーザが、殺菌対象のエリアに持って行って照射することで、様々な場所で使用可能である。しかし、ユーザが必ずしもスキルや知識を持ち合わせていないため、使用方法によっては、人体に影響が出るリスクがある他、対象箇所で十分な殺菌効果が得られるように操作したか分からないという可能性がある。このように、ポータブル殺菌器には、ユーザにスキルや知識を要求しており、容易に操作性することが困難という課題がある。
【0005】
このような課題に対して、光通信システムのアーキテクチャーでよく用いられるセンタ側に紫外光源を搭載し、ファイバ伝送によりリモート側に紫外光を供給するシステム(リモート供給方式)が考えられる。このリモート供給方式の紫外光照射システムは、単一の光源を複数の照射部でシェアすることによる経済性の向上、ファイバ先端(照射部)から出力される紫外光をピンポイントで除染したい場所へ照射することにより汎用性の向上、且つ、センタ側で光源の出力制御を行うことで信頼性と安全性を考慮できるため操作性の向上が期待できる。
【0006】
しかしながら、上記の紫外光照射システムでは、除染対象箇所(エリア)はファイバ先端の照射部に限定される。一般的に除染対象(ウイルスや菌)は広範囲であり、除染対象の範囲全体を除染するためには、紫外光照射システムの照射部を移動させて除染する必要がある。照射部の移動にはそのための機構が必要であり、システムの複雑化やコストが増加する。このため、上記の紫外光照射システムには、構造の簡素化と経済的な実現が困難という課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、前記課題を解決するために、簡素な構造でありながら広範囲を除染でき、且つ経済的な紫外光照射システム及び制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る紫外光照射システムは、センタ側に紫外光源を搭載し、光ファイバ伝送によりリモート側に紫外光を供給する構成であり、側面発光光ファイバを用いて、センタ側とリモート側との間からも紫外光を発光させ、除染対象の面積を増やすこととした。
【0009】
具体的には、本発明に係る第1の紫外光照射システムは、
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光源部から一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬する光ファイバと、
を備えており、
前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る第2の紫外光照射システムは、
紫外光を発生させるN個(Nは2以上の整数)の紫外光源部と、
前記紫外光をN個の所望箇所にそれぞれ照射するN個の照射部と、
前記紫外光源部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
N個の前記紫外光源部が一か所に集約されており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであることを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明に係る第3の紫外光照射システムは、
紫外光を発生させる一つの紫外光源部と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部と、
前記分配機能部からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバと、
を備えており、
少なくとも1本の前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであることを特徴とする。
【0012】
第3の紫外光照射システムは、前記紫外光源部から前記分配機能部へ前記紫外光を伝搬する伝搬光ファイバが前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバであってもよい。
【0013】
本紫外光照射システムは、リモート供給方式であり、経済性、汎用性、及び操作性の課題を解決しており、さらに、側面発光光ファイバで光ファイバ長手方向に紫外光照射面積を増やすことで除染対象の面積を増やすことができる。従って、本発明は、簡素な構造でありながら広範囲を除染でき、且つ経済的な紫外光照射システムを提供することができる。
【0014】
上記の第1から第3の紫外光照射システムは、情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記紫外光源部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整する集中制御部をさらに備えてもよい。
【0015】
また、上記の第3の紫外光照射システムは、情報に基づいて前記側面発光光ファイバが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、前記分配機能部に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の分配率を調整する集中制御部をさらに備えてもよい。
【0016】
例えば、本紫外光照射システムは、前記側面発光光ファイバの経路に沿って設置され、設置場所において前記側面発光光ファイバが漏洩する前記紫外光の部分光量を検出し、前記情報として前記部分光量を前記集中制御部へ通知する複数の検出部をさらに備える。
【0017】
また、本紫外光照射システムは、前記側面発光光ファイバを含む前記光ファイバの前記分配機能部側と前記照射部側に設置され、設置場所において前記光ファイバを伝搬する前記紫外光の伝搬光量を検出し、前記情報として前記伝搬光量を前記集中制御部へ通知する2つの検出部をさらに備えることでもよい。
【0018】
本構成により集中制御部は、センタ側とリモート側との間で漏洩する紫外光の光量を調整できるため、確実な除染や安全性(人が存在するときには紫外光を低減する等)を担保できる。
【0019】
また、本発明に係る紫外光照射システムの前記紫外光源は、波長変換素子を有しており、入力された前記紫外光以外の光を前記波長変換素子で波長変換し、前記紫外光を発生させることを特徴とする。
【0020】
紫外光の波長に比べて、赤外光はファイバ伝送損失が小さいため、光源から離れた場所での除染が可能になる。
【0021】
ここで、前記光ファイバの前記他端に接続され、前記紫外光を終端する終端部や、前記光ファイバの前記他端に接続され、前記紫外光を所望箇所に照射する照射部をさらに備えてもよい。
【0022】
前記側面発光光ファイバは、前記紫外光を散乱させる錯乱体を有することや、曲げもしくはマイクロベンドが付与されていることでコアを伝搬する紫外光を側面から放出することができる。
【0023】
前記光ファイバや、前記紫外光以外の光を前記波長変換素子に入力する光ファイバは、
充実コア光ファイバ、空孔アシスト光ファイバ、空孔構造光ファイバ、中空コア光ファイバ、結合コア型光ファイバ、充実コア型マルチコア光ファイバ、空孔アシスト型マルチコア光ファイバ、空孔構造型マルチコア光ファイバ、中空コア型マルチコア光ファイバ、及び結合コア型マルチコア光ファイバのいずれかであることを特徴とする。
【0024】
なお、上記各発明は、可能な限り組み合わせることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、簡素な構造でありながら広範囲を除染でき、且つ経済的な紫外光照射システム及び制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図2】側面発光光ファイバを説明する図である。
図3】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図4】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図5】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図6】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図7】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図8】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図9】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図10】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図11】本発明に係る紫外光照射システムを説明する図である。
図12】光ファイバの断面を説明する図である。
図13】側面発光光ファイバを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0028】
(実施形態1)
図1は、本実施形態の紫外光照射システム301を説明する図である。紫外光照射システム301は、
紫外光を発生させる一つの紫外光源部11と、
前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部12と、
前記紫外光を所望箇所ste1に照射するN個の照射部13と、
前記分配機能部から前記照射部へ前記紫外光を伝搬する光ファイバ14と、
を備えており、
少なくとも1本の光ファイバ14は、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバ14aであることを特徴とする。
【0029】
紫外光源部11は、殺菌に有効である紫外領域の光を出力する。紫外光源部11は、出力、波長、波形(パルスなど)についてのパラメータを持ち、パラメータに応じた出力、波長、波形の紫外光を出力する。例えば、紫外光源部11は、波長が200~400nmの紫外波長領域の光波を出射する。特に、光波が波長222nmであれば人体への影響が十分小さいことが知られており好ましい。例えば、紫外光源部11は、半導体レーザ、ファイバレーザ、又はエキシマレーザである。
【0030】
分配機能部12は、紫外光源部11からの紫外光を、複数の照射部13に分配する。分配機能部12は、分配率や伝送可否についてのパラメータを持ち、パラメータに応じて各照射部13への紫外光の分配や伝送のオン/オフを行う。分配機能部12は、例えば、ファイバ型や空間型の光スイッチである。
【0031】
照射部13(13a~13d)は、光ファイバ14で伝送された紫外光を、殺菌等を行う所定の対象箇所(所望箇所ste1)に照射する。照射部13は、紫外光の波長に対して設計されたレンズなどの光学系で構成されている。
【0032】
光ファイバ14は、分配機能部12で分配された紫外光をそれぞれの照射部13まで伝搬する。光ファイバなので従来技術のロボットや装置が入り込めない細かい場所などにも敷設することができる。ここで、光ファイバ14を側面発光光ファイバ14aに置換することが好ましい。側面発光光ファイバ14aは、伝搬する紫外光を漏洩させるので、その周囲にも除染エリアste2を形成する。このため、紫外光照射システム301は、所望箇所ste1以外に、分配機能部12と照射部13との間も除染が可能であり、除染領域を拡大することができる。ここで、分配機能部12と照射部13bとの接続のように、側面発光光ファイバ14aを除染対象箇所の形状に合わせて敷設することが好ましい。例えば、側面発光光ファイバ14aは柔軟性があるので、殺菌対象箇所が複雑な形状でもその形に合わせて敷設できる。
【0033】
なお、分配機能部12と照射部13cとの接続のように、光ファイバ14の一部を側面発光光ファイバ14aとしてもよい。分配機能部12と照射部13との間の除染エリアste2が一部の区間だけであれば、当該区間だけ側面発光光ファイバ14aとする。また、一部の分配機能部12と照射部13との間を従前の光ファイバ14で接続してもよい(例えば、図1の分配機能部12と照射部13dとの間)。除染対象エリア以外で紫外光の照射をなくし、安全性を高め、さらに分配による紫外線強度の減衰を低減することができる。
【0034】
また、紫外光源11と分配機能部12との間も側面発光光ファイバ14aで接続すれば、より除染エリアを拡大することができる。
【0035】
ここで、図2を用いて側面発光光ファイバ14aの例を説明する。側面発光光ファイバ14aは、前記紫外光を散乱させる錯乱体30を有すること、あるいは曲げもしくはマイクロベンドが付与されていることを特徴とする。
【0036】
図2(a)と図2(b)の側面発光光ファイバ14aは、ファイバ内部の散乱体30で紫外光UV1の一部を散乱させ、それをファイバの側面から漏洩させる。錯乱体30は、例えば気泡や傷である。特に、図2(b)は、散乱体30をファイバ内部に偏在させた例である。
【0037】
図13(b)は、散乱体30をコア1内部に偏在させた側面発光光ファイバ14aの断面図である。錯乱体30は、光ファイバの材料、製造方法、ないし加工によって実現できる。例えば、錯乱体30の発生は、散乱係数の高いガラス材料を通常のガラス材料に混ぜ込んだ母材を使用して紡糸すること、通常のガラスの母材もしくは紡糸工程でコア領域に意図的に気泡を発生させること、あるいはレーザ加工で光ファイバのコアに気泡を発生させることで実現できる。
【0038】
錯乱体30は光ファイバのコアに形成した傷でもよい。図13(c)は、光ファイバ3のコアにレーザ加工で傷5を付与して側面発光光ファイバ14aとする工程を説明する図である。全ての傷5の方向を揃えて所望の方向へ紫外光を漏洩させることができる。
【0039】
このように散乱体30を偏在させることで、コア1内に非同心円状の高屈折率領域31が形成される。高屈折率領域31により紫外光UV1は側面発光光ファイバ14aの一方向へ集中的に漏洩する。UV1が漏洩する方向に除染対象があるように側面発光光ファイバ14aを配置することで、効率的に除染を行うことができる。
【0040】
図2(c)の側面発光光ファイバ14aは、光ファイバを曲げることで紫外光UV1を漏洩させる。例えば、光ファイバをらせん状に曲げると当該部分で連続して紫外光UV1を漏洩させることができる。
【0041】
図2(d)の側面発光光ファイバ14aは、コア内に形成されたグレーティング32で紫外光UV1を漏洩させる。光ファイバの長手方向のうち、紫外光UV1を漏洩させたい区間だけグレーティング32を形成すれば、図1の分岐機能部12と照射部13cとを接続する光ファイバに使用できる。
【0042】
図2(e)と図2(f)の側面発光光ファイバ14aは、エバネッセント光33により紫外光UV1を漏洩させる。例えば、図2(f)のように光ファイバをクラッドより高屈折率の被覆材34で覆うことで紫外光UV1を漏洩させることができる。
【0043】
図13(a)は、光ファイバにマイクロベンドを付与して側面発光光ファイバ14aとする工程を説明する図である。側面発光光ファイバ14aは、光ファイバ3に微小な凹凸を有する凹凸付与部4を押し当てることで実現できる。光ファイバに微小な凹凸を形成することで、放射(マイクロベンド損失)が発生し、コアを伝搬する紫外光を側面から放射させることができる。
【0044】
側面発光光ファイバ14aが側面から発光する原理は図2図13で説明した手法のいずれでもよい。ただし、側面発光光ファイバ14aは、これらの手法に限らない。
【0045】
(実施形態2)
図3は、本実施形態の紫外光照射システム302を説明する図である。紫外光照射システム302は、実施形態1の紫外光照射システム301に対し、集中制御部15が情報に基づいて側面発光光ファイバ14aが長手方向にわたって漏洩する前記紫外光の総漏洩光量を推定し、分配機能部12に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の分配率を調整すること、あるいは紫外光源部11に対し、前記総漏洩光量が所望値となるように前記紫外光の強度を調整することが相違する。
【0046】
集中制御部15が分配機能部12に対して行う調整手法は次の2通りが例示される。
(例1)複数の検出部を側面発光光ファイバに沿って配置する。
紫外光照射システム302は、側面発光光ファイバ14aの経路に沿って設置され、設置場所において側面発光光ファイバ14aが漏洩する前記紫外光の部分光量を検出し、前記情報として前記部分光量を集中制御部15へ通知する複数の検出部16をさらに備える。
【0047】
それぞれの検出部16は、接地された場所で側面発光光ファイバ14aから漏洩する紫外光の光量(部分光量)を測定する。そして、検出部16は、無線通信または有線通信を利用して集中制御部15へその測定結果を通知する。集中制御部15は、それぞれの検出部16の測定結果を積分し、その積分値から除染エリアste2での紫外光強度を推定する。そして、集中制御部15は、除染エリアste2での紫外光強度が所望の値となるように分配機能部12での分配率を調節する、あるいは紫外光源部11が出力する紫外光強度を調節する。
【0048】
(例2)紫外光の入射端と出射端に検出部を設置する。
紫外光照射システム302は、側面発光光ファイバ14aを含む光ファイバ14の分配機能部12側と照射部13側に設置され、設置場所において光ファイバ14を伝搬する前記紫外光の伝搬光量を検出し、前記情報として前記伝搬光量を集中制御部15へ通知する2つの検出部16をさらに備える。
【0049】
一方の検出部16は、分配機能部12で分配された直後の紫外光の光量を測定する。他の検出部16は、光ファイバ14(あるいは側面発光光ファイバ14a)を伝搬し、照射部13に入射する紫外光の光量を測定する。それぞれの検出部16は、無線通信または有線通信を利用して集中制御部15へその測定結果を通知する。集中制御部15は、それぞれの検出部16の測定結果の差分から除染エリアste2での紫外光強度を推定する。そして、集中制御部15は、除染エリアste2での紫外光強度が所望の値となるように分配機能部12での分配率を調節する、あるいは紫外光源部11が出力する紫外光強度を調節する。
【0050】
紫外光照射システム302は、検出部16からの情報により、除染エリアste2で漏洩する紫外光の光量を調整できるため、確実な除染や安全性(人が存在するときには紫外光を低減する等)を担保できる。
【0051】
(実施形態3)
図4は、本実施形態の紫外光照射システム303を説明する図である。紫外光照射システム303は、実施形態1の紫外光照射システム301に対し、紫外光源11が、波長変換素子11bを有しており、入力された前記紫外光以外の光を波長変換素子11bで波長変換し、前記紫外光を発生させることを特徴とする。
【0052】
本実施形態の紫外光源11は、紫外光以外の光を出力する光源11aとその光の波長を紫外光の波長へ変換する波長変換素子11bとを備える。光源11aは、例えば、赤外光を出力する。波長変換素子11bは、例えば、非線形光学結晶を利用し、赤外光の高次高調波ないし和周波から紫外光を発生させる。非線形光学結晶は、LBO(三ホウ酸リチウム)、BBO(β-BaB)、あるいはCLBO(CsLiB10)である。光源11aが出力する光の波長によっては、複数の非線形光学結晶を組み合わせることができる。
【0053】
紫外光に比べて赤外光は光ファイバでの伝送損失が小さい。このため、光源11aと波長変換素子11bとを離すことができる。つまり、紫外光照射システム303は、光源を所望箇所ste1や除染エリアste2から離れた場所に設置でき、システムの管理を容易化することができる。
【0054】
なお、光ファイバ20は、図12に示すような断面を持つ光ファイバを使用することができる。図12(1)のような一般的な添加物を用いた充実型光ファイバの他、図12(2)~(4)に記載した空孔構造を有する光ファイバ、図12(5)、(6)に記載した複数のコア領域を有するマルチコア光ファイバ、もしくはそれらを組み合わせた構造を有する光ファイバ(図12(7)~(10))であっても良い。
【0055】
(実施形態4)
図5及び図6は、本実施形態の紫外光照射システム304を説明する図である。紫外光照射システム304は、紫外光を発生させる一つの紫外光源部11と、紫外光源部11から一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬する光ファイバと、を備えており、前記光ファイバは、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバ14aであることを特徴とする。ここで、前記光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の他端には、図5のように紫外光を終端する終端部17や図6のように紫外光を所望箇所に照射する照射部13が接続されていてもよい。
【0056】
紫外光照射システム304は、光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の先端(他端)をロボットが入れない、あるいは作業者の手が届かないところに配置するだけで、紫外光源11から光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)を配置した周辺を広範囲に除染することができる。
【0057】
(実施形態5)
図7及び図8は、本実施形態の紫外光照射システム305を説明する図である。紫外光照射システム305は、紫外光を発生させるN個(Nは2以上の整数)の紫外光源部11と、紫外光源部11からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバ14と、を備えており、
N個の紫外光源部11が一か所に集約されており、少なくとも1本の光ファイバ14は、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバ14aであることを特徴とする。
ここで、前記光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の他端には、図7のように紫外光を終端する終端部17や図8のように紫外光を所望箇所に照射する照射部13が接続されていてもよい。
【0058】
紫外光照射システム305は、光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の先端(他端)をロボットが入れない、あるいは作業者の手が届かないところに配置するだけで、紫外光源11から光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)を配置した周辺を広範囲に除染することができる。
【0059】
(実施形態6)
図9及び図10は、本実施形態の紫外光照射システム306を説明する図である。紫外光照射システム306は、紫外光を発生させる一つの紫外光源部11と、前記紫外光をN分岐(Nは2以上の整数)する分配機能部12と、分配機能部12からそれぞれ一端に入力された前記紫外光を他端へ伝搬するN本の光ファイバ14と、を備えており、
少なくとも1本の光ファイバ14は、前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバ14aであることを特徴とする。
紫外光照射システム306は、図1の紫外光照射システム301に対して、分配機能部12が紫外光源部11からの入力光をパワー分岐して複数の光ファイバ14に出力するファイバ型やPLC(Planar Lightwave Circuit)型の光スプリッタであること、及び集中制御部15が無いことが相違する。
ここで、前記光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の他端には、図9のように紫外光を終端する終端部17や図10のように紫外光を所望箇所に照射する照射部13が接続されていてもよい。
【0060】
ここで、図11のように、紫外光源部11から分配機能部12へ前記紫外光を伝搬する伝搬光ファイバ19が前記紫外光の一部を側面から漏洩させる側面発光光ファイバ14aであってもよい。また、分配機能部12から終端部17c、あるいは分配機能部12から照射部13cを接続する光ファイバ14のように、一部の区間のみ側面発光光ファイバ14aとしてもよい。
【0061】
紫外光照射システム306は、光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)の先端(他端)をロボットが入れない、あるいは作業者の手が届かないところに配置するだけで、紫外光源11から光ファイバ(側面発光光ファイバ14a)を配置した周辺を広範囲に除染することができる。
【0062】
なお、光ファイバ14及び伝搬光ファイバ19は、図12に示すような断面を持つ光ファイバを使用することができる。図12(1)のような一般的な添加物を用いた充実型光ファイバの他、図12(2)~(4)に記載した空孔構造を有する光ファイバ、図12(5)、(6)に記載した複数のコア領域を有するマルチコア光ファイバ、もしくはそれらを組み合わせた構造を有する光ファイバ(図12(7)~(10))であっても良い。
【0063】
(1)充実コア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中にクラッド60より高屈折率である1つの充実コア52を有する。「充実」とは「空洞ではない」という意味である。尚、充実コアは、クラッド内に円環状の低屈折率領域を形成することでも実現できる。
(2)空孔アシスト光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に充実コア52とその外周に配置された複数の空孔53を有する。空孔53の媒質は空気であり、空気の屈折率は石英系ガラスに比べ十分小さい。このため、空孔アシスト光ファイバは、曲げなどでコア52から漏れた光を再びコア52に戻す機能があり、曲げ損失が小さいという特徴がある。
(3)空孔構造光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に複数の空孔53の空孔群53aを有し、ホスト材料(ガラス等)よりも実効的に屈折率が低い。本構造は、フォトニック結晶ファイバと呼ばれる。本構造には、屈折率を変化させた高屈折率コアが存在しない構造をとることができ、空孔53に取り囲まれた領域52aを実効的なコア領域として、光を閉じ込めることができる。充実コアを有する光ファイバに比べ、フォトニック結晶ファイバは、コアの添加剤による吸収や散乱損失の影響を低減することができるとともに、曲げ損失の低減や非線形効果の制御等、充実型光ファイバでは実現し得ない光学特性を実現できる。
(4)中空コア光ファイバ
この光ファイバは、コア領域が空気で形成される。クラッド領域に複数の空孔によるフォトニックバンドギャップ構造もしくはガラス細線によるアンチレゾナント構造をとることによって光をコア領域に閉じ込めることができる。この光ファイバは、非線形効果が小さく、高出力または高エネルギーレーザ供給が可能である。
(5)結合コア型光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に複数の高屈折率である充実コア52が近接して配置される。この光ファイバは、充実コア52間で光波結合で光を導波する。結合コア型光ファイバは、コア数分だけ光を分散して送れるので、その分ハイパワー化して効率的な殺菌ができる、また、結合コア型光ファイバは、紫外線によるファイバ劣化を緩和し長寿命化できるというメリットがある。
(6)充実コア型マルチコア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に複数の高屈折率である充実コア52が離れて配置される。この光ファイバは、充実コア52間で光波結合を十分小さくして光波結合の影響が無視できる状態で光を導波する。このため、充実コア型マルチコア光ファイバは、各コアを独立な導波路として扱えるというメリットがある。
(7)空孔アシスト型マルチコア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に上記(2)の空孔構造およびコア領域が複数配置された構造である。
(8)空孔構造型マルチコア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に上記(3)の空孔構造が複数配置された構造である。
(9)中空コア型マルチコア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に上記(4)の空孔構造が複数配置された構造である。
(10)結合コア型マルチコア光ファイバ
この光ファイバは、クラッド60の中に上記(5)の結合コア構造が複数配置された構造である。
【0064】
特に、側面発光光ファイバ14aにマルチコア光ファイバを用いる場合、コア配置によって放射方向を制御したり、伝送光の分散により高入力且つ高出力化が図ることができ、好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1:コア
2:クラッド
3:光ファイバ
4:凹凸付与部
5:傷
10:集約型光源部
11:紫外光源部
11a:光源
11b:波長変換素子
12:分配機能部
13、13a、13b、13c、13d:照射部
14:光ファイバ
14a:側面発光光ファイバ
15:集中制御部
16:検出部
17:終端部
19:伝搬光ファイバ
20:光ファイバ
30:散乱体
31:高屈折率領域
32:グレーティング
33:エバネッセント光
34:被覆材
52:充実コア
52a:領域
53:空孔
53a:空孔群
60:クラッド
301~305:紫外光照射システム
ste1:所望箇所(紫外光を照射しようとする領域)
ste2:除染エリア
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13