(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】情報処理方法、情報処理装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/0203 20230101AFI20241016BHJP
【FI】
G06Q30/0203
(21)【出願番号】P 2022563287
(86)(22)【出願日】2020-11-17
(86)【国際出願番号】 JP2020042849
(87)【国際公開番号】W WO2022107222
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】冨永 登夢
(72)【発明者】
【氏名】倉島 健
(72)【発明者】
【氏名】戸田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】山本 修平
【審査官】鈴木 和樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/195927(WO,A1)
【文献】特開2002-032552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザに対する質問を端末に送信し、前記質問に対するユーザからの回答を前記端末から受信する情報処理装置が、
前記端末から、前記ユーザの経験を示す情報である経験データと、前記ユーザによる前記質問への回答を取得する処理と、
前記ユーザの特性を示す情報
である個人特性データと、前記
経験データと、前記
回答の履歴である回答履歴と、を記憶部に記憶する処理と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記回答履歴と、に基づいて、前記ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成する処理と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記モデルとに基づいて、前記ユーザの返答率を推定する処理と、
前記ユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、前記ユーザに対する質問
を前記ユーザの
前記端末に送信する
送信処理と、
を実行する情報処理方法。
【請求項2】
前記
個人特性データには、前記ユーザの性格、精神状態、嗜好、性別、年齢、及び職種の少なくとも一つを示す情報が含まれる、
請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記
経験データには、前記ユーザの端末のセンサにより取得された情報、及び前記ユーザの端末における前記ユーザの行動履歴の少なくとも一つを示す情報が含まれる、
請求項1または2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記
回答履歴には、前記ユーザに対する質問の送付時刻、当該質問に対する回答の有無、及び当該質問に対する回答時刻の少なくとも一つが含まれる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記送信処理は、前記ユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、前記ユーザに対する質問への回答のリマインドを、さらに送信する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の情報処理方法。
【請求項6】
ユーザに対する質問を端末に送信し、前記質問に対するユーザからの回答を前記端末から受信する情報処理装置であって、
前記端末から、前記ユーザの経験を示す情報である経験データと、前記ユーザによる前記質問への回答を取得する取得部と
前記ユーザの特性を示す情報
である個人特性データと、前記
経験データと、前記
回答の履歴である回答履歴とを記憶する記憶部と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記回答履歴と、に基づいて、前記ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成する生成部と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記モデルとに基づいて、前記ユーザの返答率を推定する推定部と。
前記ユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、前記ユーザに対する質問
を前記ユーザの
前記端末に送信する
通知部と、
を有する、情報処理装置。
【請求項7】
ユーザに対する質問を端末に送信し、前記質問に対するユーザからの回答を前記端末から受信する情報処理装置に、
前記端末から、前記ユーザの経験を示す情報である経験データと、前記ユーザによる前記質問への回答を取得する処理と、
前記ユーザの特性を示す情報
である個人特性データと、前記
経験データと、前記
回答の履歴である回答履歴と、を記憶部に記憶する処理と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記回答履歴と、に基づいて、前記ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成する処理と、
前記個人特性データと、前記経験データと、前記モデルとに基づいて、前記ユーザの返答率を推定する処理と、
前記ユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、前記ユーザに対する質問
を前記ユーザの
前記端末に送信する
処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、情報処理方法、情報処理装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、日常生活におけるユーザ(被験者)の行動や経験を、ある一定期間にわたって経時的に自己報告させることでサンプリングする手法であるEMA(Ecological Momentary Assessment)が知られている。このEMAは、特定の時間帯にユーザに対してモバイル端末などを通じて質問を送信し、ユーザからの回答を得ることで実施される。
【0003】
EMAは、ユーザの回答数がデータセットの規模を決定するため、より多くの回答を得ることが望ましい。一方で、質問を受け取ることによるユーザへの認知的及び精神的負担を抑える必要がある。また、ユーザ実験の性質上、ユーザ間で回答量が大きく偏ることは避けるべきである。そのため、質問回数は特定の頻度で固定される場合が多い。
【0004】
一般的な問題設定として、N人のユーザに対してD日間の実験期間を有し、1日K回EMAの質問(EMAアンケート)を送る場合を想定する。この時、ユーザiが日付dである一つのEMAアンケートkに返答する確率(返答率)をR_(i,d,k)∈[0,1]とすると、期待されるEMA回答数Vは、以下の式(1)により算出できる。
【0005】
【数1】
従って、EMA研究における返答数Vの最大化とは、返答率R_(i,d,k)の最大化を指す。
【0006】
従来のEMA研究では、予め決められた回数のEMAアンケートを特定の時間帯にユーザに送る戦略を採用している。実験期間の長さにもよるが、1日1回から数回程度で実施される場合が多い(例えば、非特許文献1を参照)。
【0007】
このような研究では、ユーザへの謝礼を継続的に与える(例えば、非特許文献2を参照)、質問内容を平易化する(例えば、非特許文献3を参照)といった戦略で返答率を上げる試みがなされている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】Rui Wang, Fanglin Chen, Zhenyu Chen, Tianxing Li, Gabriella Harari, Stefanie Tignor, Xia Zhou, Dror Ben-Zeev, and Andrew T. Campbell. 2014. StudentLife: assessing mental health, academic performance and behavioral trends of college students using smartphones. In Proceedings of the 2014 ACM International Joint Conference on Pervasive and Ubiquitous Computing (UbiComp '14). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 3-14. <URL:https://doi.org/10.1145/2632048.2632054>
【文献】Stephen M. Mattingly, Julie M. Gregg, Pino Audia, Ayse Elvan Bayraktaroglu, Andrew T. Campbell, Nitesh V. Chawla, Vedant Das Swain, Munmun De Choudhury, Sidney K. D'Mello, Anind K. Dey, Ge Gao, Krithika Jagannath, Kaifeng Jiang, Suwen Lin, Qiang Liu, Gloria Mark, Gonzalo J. Martinez, Kizito Masaba, Shayan Mirjafari, Edward Moskal, Raghu Mulukutla, Kari Nies, Manikanta D. Reddy, Pablo Robles-Granda, Koustuv Saha, Anusha Sirigiri, and Aaron Striegel. 2019. The Tesserae Project: Large-Scale, Longitudinal, In Situ, Multimodal Sensing of Information Workers. In Extended Abstracts of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI EA '19). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Paper CS11, 1-8. <URL:https://doi.org/10.1145/3290607.3299041>
【文献】John P. Pollak, Phil Adams, and Geri Gay. 2011. PAM: a photographic affect meter for frequent, in situ measurement of affect. In Proceedings of the SIGCHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI '11). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 725-734. <URL:https://doi.org/10.1145/1978942.1979047>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、従来技術では、返答率が低下する場合がある。
【0010】
一側面では、返答率を向上させることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一つの案では、ユーザに対する質問を端末に送信し、前記質問に対するユーザからの回答を前記端末から受信する情報処理装置が、前記端末から、前記ユーザの経験を示す情報である経験データと、前記ユーザによる前記質問への回答を取得する処理と、前記ユーザの特性を示す情報である個人特性データと、前記経験データと、前記回答の履歴である回答履歴と、を記憶部に記憶する処理と、前記個人特性データと、前記経験データと、前記回答履歴と、に基づいて、前記ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成する処理と、前記個人特性データと、前記経験データと、前記モデルとに基づいて、前記ユーザの返答率を推定する処理と、前記ユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、前記ユーザに対する質問を前記ユーザの前記端末に送信する送信処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0012】
一側面によれば、返答率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係る通信システムの構成について説明する図である。
【
図2】実施形態に係る情報処理装置のハードウェア構成例について説明する図である。
【
図3】実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示す図である。
【
図4】実施形態に係る情報処理装置のモデル生成処理の一例について説明するフローチャートである。
【
図5A】実施形態に係る個人特性データベースの一例について説明する図である。
【
図5B】実施形態に係る経験データベースの一例について説明する図である。
【
図5C】実施形態に係る回答履歴データベースの一例について説明する図である。
【
図6】実施形態に係る情報処理装置の推定時の処理の一例について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を説明する。
【0015】
<全体構成>
図1は、実施形態に係る通信システム1の構成について説明する図である。
図1の例では、通信システム1は、情報処理装置10、端末20A、端末20B、及び端末20Cを有する。以下で、端末20A、端末20B、及び端末20Cを区別しなくてよい場合は、単に「端末20」とも称する。なお、情報処理装置10、及び端末20の数は、
図1の例に限定されない。
【0016】
情報処理装置10と端末20とは、例えば、5G(5th Generation、第5世代移動通信システム)、4G、LTE(Long Term Evolution)、3G等の携帯電話網、無線LAN(Local Area Network)、及びインターネット等のネットワークNを介して通信を行う。
【0017】
情報処理装置10は、例えば、サーバ等の情報処理装置である。情報処理装置10は、EMAアンケート(「質問」の一例。)を端末20に送信する。また、情報処理装置10は、EMAアンケートに対するユーザからの回答を端末20から受信する。
【0018】
端末20は、ユーザが利用する端末である。端末20は、例えば、スマートフォン、タブレット、パーソナルコンピュータ、ウェアラブルデバイス等の端末でもよい。
【0019】
<情報処理装置10のハードウェア構成>
図2は、実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成例について説明する図である。
図2の例では、情報処理装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、及びインタフェース装置1005等を有する。
【0020】
情報処理装置10での処理を実現する情報処理プログラムは、記録媒体1001によって提供されてもよい。この場合、情報処理プログラムを記録した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、情報処理プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、情報処理プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされた情報処理プログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0021】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って処理を実行する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0022】
なお、記録媒体1001の一例としては、CD-ROM、DVDディスク、又はUSBメモリ等の可搬型の記録媒体が挙げられる。また、補助記憶装置1002の一例としては、HDD(Hard Disk Drive)又はフラッシュメモリ等が挙げられる。記録媒体1001及び補助記憶装置1002のいずれについても、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に相当する。
【0023】
なお、情報処理装置10は、例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)またはFPGA(Field-Programmable Gate Array)等の集積回路により実現されてもよい。
【0024】
<情報処理装置10の構成>
次に、
図3を参照し、情報処理装置10の構成について説明する。
図3は、実施形態に係る情報処理装置10の構成の一例を示す図である。
【0025】
情報処理装置10は、記憶部11、取得部12、生成部13、推定部14、及び通知部15を有する。これら各部は、情報処理装置10にインストールされた1以上のプログラムと、情報処理装置10のCPU1004等のハードウェアとの協働により実現されてもよい。
【0026】
記憶部11は、各種の情報を記憶する。記憶部11は、例えば、ユーザの特性を示す情報である個人特性データを記憶する個人特性データベース111と、ユーザの経験を示す情報である経験データを記憶する経験データベース112と、ユーザによる質問への回答の履歴である回答履歴を記憶する回答履歴データベース113等を有する。
【0027】
取得部12は、各種の情報を取得し、記憶部11に記憶する。取得部12は、例えば、端末20から受信した経験データを、経験データベース112に記録させる。また、取得部12は、例えば、端末20から受信した回答に関する情報を回答履歴データベース113に記録させる。
【0028】
生成部13は、記憶部11に記憶されている情報に基づいて、ユーザの返答率(回答率)を推定するためのモデルを生成する。
【0029】
推定部14は、記憶部11に記憶されている情報と、生成部13により生成されたモデルとに基づいて、ユーザの返答率を推定する。
【0030】
通知部15は、推定部14により推定されたユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、質問を当該ユーザの端末20に送信する。また、通知部15は、推定部14により推定されたユーザの返答率が所定の条件を満たすタイミングで、質問への回答のリマインド等を当該ユーザの端末20に送信する。
【0031】
<処理>
《モデル生成時の処理》
次に、
図4から
図5Cを参照し、実施形態に係る情報処理装置10のモデル生成処理の一例について説明する。
図4は、実施形態に係る情報処理装置10のモデル生成処理の一例について説明するフローチャートである。
図5Aは実施形態に係る個人特性データベース111の一例について説明する図である。
図5Bは実施形態に係る経験データベース112の一例について説明する図である。
図5Cは実施形態に係る回答履歴データベース113の一例について説明する図である。なお、情報処理装置10は、例えば、所定の周期で、
図4に示す処理を実行してもよい。
【0032】
ステップS101において、情報処理装置10の取得部12は、各ユーザの返答率を推定するモデルを生成するための学習用データを記憶部11の個人特性データベース111、経験データベース112、及び回答履歴データベース113から取得する。
【0033】
(個人特性データベース111)
図5Aの例では、個人特性データベース111には、ユーザIDに対応付けて、個人特性データが記録されている。ユーザIDは、端末20のユーザの識別情報である。個人特性データには、例えば、ユーザの人格(性格)、精神状態、嗜好、性別、年齢、及び職種などを示す情報が含まれてもよい。個人特性データベース111に記録される情報は、例えば、質問紙または端末20等でのアンケート調査に基づいて事前に登録されていてもよい。
【0034】
ステップS101の処理で、取得部12は、ユーザi(なお、iは1以上の整数)の個人特性データに含まれるN項目の個人特性データPi
1,Pi
2,・・・,Pi
Nをそれぞれ多段階の評価値として取得する。なお、Nは1以上の整数である。なお、個人特性データに含まれる各項目の評価値の段階数は同一でもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
(経験データベース112)
図5Bの例では、経験データベース112には、ユーザID及び経験日時の組に対応付けて、経験データが記録されている。経験日時は、経験データに係る経験が発生した日時である。経験日時は、例えば、経験データが情報処理装置10に取得された日時でもよい。経験データには、ユーザの端末20のセンサにより取得された情報が含まれてもよい。当該センサには、例えば、マイクセンサ、深度センサ、光センサ、加速度センサ、温度センサ、GPS(Global Positioning System)センサ、及びカメラセンサなどが含まれてもよい。また、当該センサには、例えば、デジタルデバイスに搭載される各種のセンサが含まれてもよい。
【0036】
経験データには、例えば、端末20のマイクで収集された音声に基づいて解析された、ユーザの会話の累積時間等が含まれてもよい。これにより、例えば、ユーザが誰かと会話している際にアンケートが送信された場合は返答率が低下する等の傾向がある場合に、当該傾向を利用することができる。
【0037】
また、経験データには、例えば、端末20の加速度センサで収集された加速度に基づいて解析された、ユーザの運動の累積時間等が含まれてもよい。これにより、例えば、ユーザが徒歩または走行している際にアンケートが送信された場合は返答率が低下する等の傾向がある場合に、当該傾向を利用することができる。
【0038】
経験データには、ユーザの端末20におけるユーザの行動履歴が含まれてもよい。この場合、当該行動履歴には、例えば、SNS(Social Networking Service)及びメール等でのメッセージの送受信履歴、及び特定のWebサイトの閲覧履歴等が含まれてもよい。
【0039】
これにより、例えば、ユーザがメッセージのやり取り、及びEC(Electronic Commerce)サイトでのオンラインショッピングをしている際にアンケートが送信された場合は返答率が低下する等の傾向がある場合に、当該傾向を利用することができる。また、例えば、ユーザが特定のニュースサイト等を閲覧している際にアンケートが送信された場合は返答率が向上する等の傾向がある場合に、当該傾向を利用することができる。
【0040】
ステップS101の処理で、取得部12は、経験ログに含まれるM項目の直近(日時が新しい順)の経験ログEi,d,t
1,Ei,d,t
2,・・・,Ei,d,t
Mを時系列のログとして取得する。なお、Mは1以上の整数である。
【0041】
ここで、m番目の項目の経験ログEi,d,t
mは、時刻t-hから時刻tまでの間に観測されたn時点分の計測データから構成され、ある時刻tにおける計測値をei,d,t
mとする場合、以下の式(2)のようにベクトルとして表現される。
【0042】
【数2】
なお、経験ログに含まれる各項目のベクトルの要素数(計測回数)は同一でもよいし、異なっていてもよい。また、経験ログに含まれる各項目の単位(回、時間、度、bpmなど)は異なっていてもよい。
【0043】
(回答履歴データベース113)
図5Cの例では、回答履歴データベース113には、ユーザID及び質問IDの組に対応付けて、回答履歴データが記録されている。質問IDは、情報処理装置10が端末20に送信した質問(EMAアンケート)の識別情報である。
【0044】
回答履歴データには、質問IDに係る質問をユーザIDに係るユーザの端末20に送信した時刻(送付時刻)、当該質問への当該ユーザからの回答の有無、及び当該質問への当該ユーザからの回答を受信した時刻(回答時刻)が含まれている。
【0045】
ステップS101の処理で、取得部12は、特定の時間帯[T0,T1]に特定のユーザiに送付した質問kの送付時刻ti,k
s∈[T0,T1]と、当該質問kに対する回答の有無zi,k={0,1}と、当該回答が有った場合の回答時刻ti,k
rを取得する。
【0046】
続いて、情報処理装置10の生成部13は、取得部12により取得された学習用データに基づいて、各ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成する(ステップS102)。ここで、生成部13は、まず、時間帯[T0,T1]における返答率の最大値の推定値Ri,d,kを以下の式(3)により定義してもよい。なお、ユーザの個人特性データをPi、日付dに実施される特定の質問をk、当該kが実施される時間帯を[T0,T1]、ある時刻t-hから時刻tにおける直近の経験データをEi,d,t、返答率と個人特性及び直近の経験との関係を表す(記述する)関数(返答率推定関数)をfとする。
【0047】
【数3】
ここで、Θはパラメータ集合を指す。生成部13は、Θにより、個人特性データP
iと直近の経験データE
i,d,tとを用いて、時刻T
0からT
1までの返答率の時間変化R
i,d,k(t)を推定(導出)できる。
【0048】
生成部13は、以下のような処理により、各ユーザの返答率を推定するためのモデルとして返答率推定関数fを決定してもよい。まず、生成部13は、個人特性データと、直近の経験データと、質問に対する回答の有無と、質問の送付時刻と、質問の送付時刻と回答時刻との差分(質問送付から回答受領までに経過した時間)との対応関係を、機械学習等によりモデル化する。
【0049】
ここで、生成部13は、例えば、あるEMAアンケートkに対する返答率を以下の式(4)ように決定(定義)してもよい。
【0050】
【数4】
また、生成部13は、例えば、個人特性データP
i、直近の経験ログE
i,d,t、及びパラメータ集合Θに基づいて推定される返答率R^
i,d,kを以下の式(5)のように決定(定義)してもよい。
【0051】
【数5】
そして、生成部13は、式(4)及び式(5)に基づいて、以下の式(6)の最適化問題の解を算出(導出)してもよい。
【0052】
【数6】
そして、生成部13は、式(6)から算出されたパラメータ集合Θにより、各ユーザの返答率を推定するためのモデルである返答率推定関数fを生成(決定、構成)する。
【0053】
《推定時の処理》
次に、
図6を参照し、実施形態に係る情報処理装置10の推定時の処理の一例について説明する。
図6は、実施形態に係る情報処理装置10の推定時の処理の一例について説明するフローチャートである。なお、情報処理装置10は、例えば、新規の質問が情報処理装置10のオペレータ等により登録された以降の所定の周期で、
図6に示す処理を実行してもよい。
【0054】
ステップS201において、情報処理装置10の取得部12は、各ユーザの返答率を推定するための推定用データを記憶部11の個人特性データベース111、及び経験データベース112から取得する。
【0055】
ここで、取得部12は、個人特性データベース111から、ステップS101の処理と同様に、ユーザiの個人特性データに含まれるN項目の個人特性データPi
1,Pi
2,・・・,Pi
Nをそれぞれ多段階の評価値として取得する。
【0056】
また、取得部12は、経験データベース112から、ステップS101の処理と同様に、経験ログに含まれるM項目の直近(日時が新しい順)の経験ログEi,d,t
1,Ei,d,t
2,・・・,Ei,d,t
Mを時系列のログとして取得する。
【0057】
続いて、情報処理装置10の推定部14は、上述した
図4の処理で生成部13により生成されたモデルと、取得部12により取得された推定用データに基づいて、各ユーザの返答率を推定する(ステップS202)。ここで、推定部14は、取得部12により個人特性データベース111、及び経験データベース112から取得されたデータを以下の式(7)の返答率推定関数fに代入することにより、時刻T
0からT
1における返答率が最大化する時刻sを推定してもよい。なお、
図6の推定時の処理における時刻T
0及び時刻T
1は、それぞれ、
図4のモデル生成時の処理で説明した時刻T
1よりも後の時刻である。そのため、
図6の推定時の処理における式(2)、式(5)、及び式(7)等における時刻T
0、時刻T
1は、それぞれ、時刻T
2、時刻T
3等と読み替えてもよい。
【0058】
【数7】
続いて、情報処理装置10の通知部15は、推定部14により推定された返答率が所定の条件を満たすタイミングで、質問に関する情報を端末20に送信する(ステップS203)。ここで、通知部15は、例えば、推定部14により推定された、返答率が最大化する時刻sにおいて、質問に関する情報を端末20に送信してもよい。
【0059】
質問に関する情報は、例えば、質問自体のデータでもよいし、質問が閲覧できるWebサイト等のURL(Uniform Resource Locator)等でもよい。また、質問に関する情報は、既に送信した質問に対する回答を促すリマインドのメッセージ等でもよい。
【0060】
通知部15は例えば、ユーザの有するモバイル端末へのメール、当該モバイル端末のアプリケーションまたはOS(Operating System)の機能を用いた通知及びリマインダ等により通知を行ってもよい。
【0061】
<変形例>
図4のステップS102において、生成部13は、例えば、ニューラルネットワーク(Neural Network: NN)等の機械学習手法により、各ユーザの返答率を推定するためのモデルを生成してもよい。
【0062】
情報処理装置10の各機能部のうち少なくとも一部は、例えば1以上のコンピュータにより提供されるクラウドコンピューティングにより実現されていてもよい。この場合、例えば、記憶部11、及び生成部13等を、外部の情報処理装置に設けた構成としてもよい。
【0063】
<本開示の効果>
従来技術は、実験期間中のユーザの返答率は謝礼金額や質問の難易度に依存し、時間に対して一定であるという考え方に基づいて返答率の向上を図っていた。しかしながら、実際にはユーザのある期間における返答率は時間に対して一定ではない。例えば、ある個人が日常生活の中で経験した出来事によって、ある時刻では返答する意欲は高くなり返答率が上昇し、ある時刻では意欲が低下し返答率が下降し得ると考えられる。
【0064】
上述した本開示の技術によれば、ユーザの返答率を推定し、ユーザの返答率が高いと推定されるタイミングでユーザに対して介入を行う。それにより、例えば、返答率を向上させることができる。
【0065】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 通信システム
10 情報処理装置
11 記憶部
12 取得部
13 生成部
14 推定部
15 通知部
20 端末
111 個人特性データベース
112 経験データベース
113 回答履歴データベース