(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】通信システム、制御サーバ装置、基地局配置方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 16/26 20090101AFI20241016BHJP
H04W 24/02 20090101ALI20241016BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20241016BHJP
H04W 84/00 20090101ALI20241016BHJP
H04W 64/00 20090101ALI20241016BHJP
【FI】
H04W16/26
H04W24/02
H04W16/18
H04W84/00
H04W64/00
(21)【出願番号】P 2022581058
(86)(22)【出願日】2021-02-09
(86)【国際出願番号】 JP2021004803
(87)【国際公開番号】W WO2022172336
(87)【国際公開日】2022-08-18
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】中山 章太
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
【審査官】松野 吉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-102872(JP,A)
【文献】特開2018-107504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 - 7/26
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムであって、
前記制御サーバ装置が、エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させる通信システム
であり、
前記制御サーバ装置は、2つの端末クラスタ間における端末装置の組毎の距離に基づいて端末クラスタ間の距離を算出し、端末クラスタ間の距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合して、新たな端末クラスタとする処理を、端末クラスタの数が所望の数になるまで繰り返すことにより、前記1以上の端末クラスタを生成する
通信システム。
【請求項2】
前記制御サーバ装置は、前記2つの端末クラスタにおける一方の端末クラスタにおける第1端末装置と、他方の端末クラスタにおける第2端末装置との間に遮蔽物が存在する場合において、前記第1端末装置と前記第2端末装置との間の距離を、当該遮蔽物の厚さ当たりの減衰量と当該遮蔽物の厚さを用いて算出する
請求項
1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記制御サーバ装置は、前記1以上の端末クラスタにおける各端末クラスタに対して、見通し内の端末装置の数が最大となる位置、電波減衰量の合計が最小となる位置、又は、端末クラスタの重心の位置を前記可動基地局装置の位置として算出する
請求項1
又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御サーバ装置は、前記端末クラスタの重心の位置を算出する際に、当該端末クラスタにおける各端末装置の重みを1として求めた初期重心位置と、ある端末装置との間に遮蔽物が存在する場合に、当該遮蔽物の減衰量に対する重みを当該端末装置に付加して、前記端末クラスタの重心の位置を算出する
請求項
3に記載の通信システム。
【請求項5】
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムにおける前記制御サーバ装置であって、
エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成し、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出する基地局制御計算部と、
各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させる基地局制御部と、を備え、
前記基地局制御計算部は、2つの端末クラスタ間における端末装置の組毎の距離に基づいて端末クラスタ間の距離を算出し、端末クラスタ間の距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合して、新たな端末クラスタとする処理を、端末クラスタの数が所望の数になるまで繰り返すことにより、前記1以上の端末クラスタを生成する
制御サーバ装置。
【請求項6】
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムにおける基地局配置方法であって、
前記制御サーバ装置が、エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成するステップと、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出するステップと、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させるステップと、を備え、
前記制御サーバ装置は、2つの端末クラスタ間における端末装置の組毎の距離に基づいて端末クラスタ間の距離を算出し、端末クラスタ間の距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合して、新たな端末クラスタとする処理を、端末クラスタの数が所望の数になるまで繰り返すことにより、前記1以上の端末クラスタを生成する
基地局配置方法。
【請求項7】
コンピュータを、請求項
5に記載の制御サーバ装置における各部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムにおける可動基地局の設置方法に関連するものである。
【背景技術】
【0002】
大容量のシステム、高速なデータ伝送速度、低遅延、多数の端末の同時接続等を実現する5Gの導入が進められている。5Gでは、現在の移動通信で使用されている周波数帯に加えて、ミリ波帯のような高周波数帯が利用される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】ドコモテクニカルジャーナル(Vol.26-1, P25-32)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波数帯の電波は遮蔽の影響を大きく受けるため、空間環境の変化によって通信品質が低下する恐れがある。基地局を複数台設置しても、空間環境に応じた適切な場所に設置しないと、リソースを最大限有効活用できない場合がある。
【0005】
しかし、従来技術において、基地局を適切な場所に設置するためには、例えば、様々な場所に基地局を設置して、実際の通信品質を測定するなど、試行錯誤を繰り返すことが必要であり、手間と時間がかかっていた。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、無線通信システムにおいて、簡易に基地局を適切な位置に配置することを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
開示の技術によれば、制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムであって、
前記制御サーバ装置が、エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させる通信システムであり、
前記制御サーバ装置は、2つの端末クラスタ間における端末装置の組毎の距離に基づいて端末クラスタ間の距離を算出し、端末クラスタ間の距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合して、新たな端末クラスタとする処理を、端末クラスタの数が所望の数になるまで繰り返すことにより、前記1以上の端末クラスタを生成する
通信システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、無線通信システムにおいて、簡易に基地局を適切な位置に配置することを可能とする技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】棚や物品が置かれている倉庫等の場所を上から見た図である
【
図3】棚や物品が置かれている倉庫等の場所を上から見た図である
【
図5】本発明の実施の形態における無線通信システムの全体構成例を示す図である。
【
図8】可動基地局が可動構造体に搭載される場合の例を示す図である。
【
図9】制御サーバの動作例を示すフローチャートである。
【
図10】可動基地局の動作例を示すフローチャートである。
【
図11】装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施の形態)を説明する。以下で説明する実施の形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施の形態は、以下の実施の形態に限られるわけではない。
【0011】
例えば、下記の実施の形態における説明では、端末や基地局の位置として2次元の位置を例として用いているが、端末や基地局の位置として3次元の位置を使用してもよい。また、本明細書における基地局、可動基地局、端末、制御サーバはいずれも「装置」なので、これらを基地局装置、可動基地局装置、端末装置、制御サーバ装置と呼んでもよい。
【0012】
(実施の形態の概要)
本実施の形態における無線通信システムは、例えば28GHz帯やそれよりも高い周波数帯である高周波数帯の無線を利用した無線通信システムであることを想定している。ただし、本発明は、高周波数帯ではない周波数帯の無線通信システムにも適用可能である。
【0013】
前述したように、高周波数帯は遮蔽の影響を大きく受けるため、空間環境の変化によって通信品質が低下する恐れがある。このことを
図1、
図2を参照して説明する。
【0014】
図1は、棚や物品が置かれている倉庫等の場所を上から見た図である。
図1に示すように、棚や物品等とともに、基地局1、2、及び複数の端末が配置されている。棚や物品は、無線通信(電波伝搬)に対する遮蔽物となる。特に、倉庫等では、棚や物品等の遮蔽物が定期的に移動し、高周波数帯の安定利用の妨げになる可能性がある。
図2には、基地局1、基地局2ともにシステムスループットが低い状態が示されている。
【0015】
図1に示すような環境において、システムスループットを改善するために、基地局1、基地局2を適切な位置に配置する必要がある。そのために、本実施の形態では、「遮蔽物の位置・素材」、及び「端末の位置・数」を考慮し、簡易に最適に近い位置に配置するように基地局の設置位置及び端末の接続先の制御を行うこととしている。
【0016】
より具体的には、
図3に示すように、遮蔽物の位置・素材等を考慮して端末をクラスタ化(端末クラスタを生成)し、それぞれの端末クラスタに対して最適な位置に基地局を配置するようにしている。
図3の例では、クラスタ1に基地局1を配置し、クラスタ2に基地局2を配置している。このような制御により、
図4に示すように各基地局のシステムスループットが向上する。
【0017】
本実施の形態において、基地局を移動させる方法はどのような方法であってもよいが、例えば、ドローン(又はその他の飛行体)に基地局を搭載し、ドローンを移動させることで基地局を移動させることができる。
【0018】
すなわち、本実施の形態により、ドローン等に基地局を搭載し、所定の場所(棚の上など)へ設置することで、移動前の基地局から見通しの無かった端末に対して見通しを確保し、システムスループットを向上させることができる。
【0019】
また、倉庫のように棚や物品が定期的に移動する環境において、基地局の追従性を向上させることができる。また、本実施の形態では、クラスタ間の相互影響を考慮しないため、計算量の削減を実現することが可能である。
【0020】
以下、本実施の形態のシステム構成と動作を詳細に説明する。
【0021】
(全体構成)
図5に、本実施の形態における無線通信システムの全体構成例を示す。
図5に示すように、本実施の形態に係る無線通信システムは、制御サーバ100、可動基地局200、端末300、空間情報DB(データベース)400を有する。可動基地局200と端末300はそれぞれ1つのみ示されているが、それぞれ複数台存在してもよい。
【0022】
制御サーバ100は、クラウド上に配置されていてもよいし、可動基地局200とともにネットワーク(無線LANあるいは有線LAN等)上に配置されてもよい。空間情報DB400も同様にクラウド上に配置されていてもよいし、上記ネットワーク上に配置されていてもよい。
【0023】
空間情報DB400には、遮蔽物の情報や端末の情報が格納されている。より具体的には、空間情報DB400には、各遮蔽物に関して、例えば、形(厚さなどを含む)、エリア内の位置、材質、単位厚さ当たりの減衰量等が格納されている。なお、単位厚さ当たりの減衰量については、制御サーバ100において、材質から計算することとしてもよい。また、空間情報DB400には、各端末に関して、例えば、現在の位置、接続先の基地局等が格納されている。
【0024】
制御サーバ100は空間情報DB400から情報を取得し、取得した情報に基づいて、可動基地局200を制御する。
【0025】
可動基地局200は制御サーバ100と通信が可能な位置に配置され、端末300を収容する。端末300は、可動基地局200に接続し、可動基地局200を介してローカルネットワークやインターネットへ接続する。
【0026】
(制御サーバ100の構成)
図6に、制御サーバ100の構成例を示す。
図6に示すように、制御サーバ100は、情報通信I/F部110、遮蔽物情報取得部120、端末情報取得部130、基地局制御計算部140、基地局制御部150、制御通信I/F部160を備える。
【0027】
情報通信I/F部110は、空間情報DB400と接続し、遮蔽物の情報や端末情報の送受信を行う。
【0028】
遮蔽物情報取得部120は、遮蔽物の形、位置、素材(材質)等の情報を空間情報DB400より取得する。端末情報取得部130は、端末300の位置情報等を空間情報DB400より取得する。
【0029】
基地局制御計算部140は、遮蔽物情報取得部120と端末情報取得部130より、それぞれ遮蔽物と端末300の情報を取得し、可動基地局200の設置位置や、端末300の接続先の計算を行う。
【0030】
基地局制御部150は、基地局制御計算部140で算出した結果に基づいて可動基地局200を制御する。制御通信I/F部160は、可動基地局200と接続し、制御通信の送受信を行う。なお、端末300の接続先の制御に関しては、基地局制御部150は、可動基地局200に対して、端末300への接続先の制御を行うように指示してもよいし、端末300に対して接続先を指示してもよい。
【0031】
(可動基地局200の構成例)
図7に、可動基地局200の構成例を示す。
図7に示すように、可動基地局200は、制御通信I/F部210、可動制御部220、端末接続制御部230、無線送受信部240を有する。なお、
図7は、可動基地局200における位置の制御及び端末の制御に関する機能を特に示している。
【0032】
制御通信I/F部210は、制御サーバ100と接続し、制御情報の送受信を行う。可動制御部220は、制御サーバ100からの制御情報を受信し、可動基地局200の位置を制御する。
【0033】
端末接続制御部230は、制御サーバ100からの制御情報を受信し、端末300の接続を制御する。また、端末接続制御部230は、対象の端末300に対して接続先の変更を行う。無線送受信部240は、端末300と接続し、端末300の接続先制御信号の送受信を行う。
【0034】
なお、可動基地局200が、例えばドローンに搭載されるとする場合、可動制御部220は、制御サーバ100から、可動基地局200が配置されるべき位置の情報を受信し、当該ドローンに対して、当該位置に移動するよう指示する。
【0035】
また、
図8に示すように、可動基地局200は、可能基地局200を支持する可動構造体を有する構成であってもよい。可動構造体は、例えば、制御サーバ100から送信される位置情報に基づいて、可動基地局200を矢印201方向に移動させる。また、可動構造体は、例えば、制御サーバ100から送信される制御情報に基づいて、可動基地局200を、x軸周り(符号203参照)、y軸周り(符号204参照)、z軸周り(符号205参照)に回転移動させることとしてもよい。
【0036】
また、可動基地局200が搭載された可動構造体を後述する端末クラスタの中まで手動で移動させ、細かな位置制御を制御サーバ100から行うこととしてもよい。
【0037】
以下、フローチャートを参照して、各装置の動作について説明する。
【0038】
(制御サーバ100の動作例)
図9のフローチャートの手順に沿って、制御サーバ100の動作例を説明する。
【0039】
<S101>
S101において、遮蔽物情報取得部120が、空間情報DB400から遮蔽物の情報(位置・素材等)を取得し、端末情報取得部130が、空間情報DB400から端末300の情報(各端末の位置)を取得する。
【0040】
<S102>
S102において、基地局制御計算部140は、遮蔽物の情報を考慮して、端末300を所望のクラスタ数にクラスタ化する。ここでの処理の詳細は後述する。
【0041】
<S103>
S103において、基地局制御部150は、クラスタ毎に、可動基地局200の設置位置を算出する。算出方法の詳細は後述する。
【0042】
<S104>
S104において、基地局制御部150が、算出結果を可動基地局200に通知し、制御する。例えば、基地局制御部150は、可動基地局200が配置されるべき位置の情報と、その位置まで移動することを指示する命令を可動基地局200に送信する。基地局制御部150は、更に、当該可動基地局200に対して、その可動基地局200が位置する端末クラスタ内の各端末の識別情報を送信し、当該可動基地局200への接続を行わせる制御信号を各端末に対して送信するよう、指示を送ってもよい。
【0043】
<端末クラスタの生成方法について>
S102における端末クラスタの生成方法について詳細に説明する。基地局制御計算部140は、遮蔽物を考慮し、端末間の距離が小さい端末からクラスタを形成する。具体的な処理手順は下記のとおりである。
【0044】
(S1)
S1において、基地局制御計算部140は、それぞれの端末を別々の端末クラスタ(初期)として設定する。
【0045】
(S2)
S2において、基地局制御計算部140は、全ての端末クラスタ間の距離を求める。端末クラスタ間距離は、2つの端末クラスタ間の要素(端末)の組毎の距離の平均値であってもよいし、2つの端末クラスタの要素(端末)の組毎の距離の中の最も小さい値であってもよいし、2つの端末クラスタの要素(端末)の組毎の距離の中の最も大きい値であってもよいし、これら以外の統計値であってもよい。
【0046】
2つの端末クラスタ間の要素(端末)の組毎の距離とは、例えば、端末クラスタAに端末A1、A2があり、端末クラスタBに端末B1、B2がある場合において、端末A1と端末B1との間の距離、端末A1と端末B2との間の距離、端末A2と端末B1との間の距離、及び端末A2と端末B2との間の距離である。
【0047】
端末クラスタ間の要素(端末)の間の距離の例については下記のとおりである。
【0048】
ある端末クラスタにおける端末xnと別の端末クラスタにおける端末xmとの間の距離をd(xn,xm)とする。
【0049】
もしもxnとxmとの間に遮蔽物が存在する場合には
d(xn,xm)=(xnとxmのユークリッド距離)+a×b
とする。aは遮蔽物の厚さ[m]当たりの減衰量(自由空間損失の換算距離)であり、bは遮蔽物の厚さ[m]である。
【0050】
もしもxnとxmとの間に遮蔽物が存在しない場合には
d(xn,xm)=(xnとxmのユークリッド距離)
とする。
【0051】
(S3)
基地局制御計算部140は、端末クラスタ間距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合し、新たな端末クラスタとする。
【0052】
(S4)
基地局制御計算部140は、所望の端末クラスタ数になるまでS2、S3を繰り返す。所望の端末クラスタ数は可動基地局200の数である。ただし、これに限定されるわけではない。
【0053】
続いて、上述したS103における端末クラスタ毎の可動基地局200の位置の算出方法の例について説明する。以下、可動基地局200の位置の算出方法例1、算出方法例2について説明する。算出方法例1と算出方法例2のうちのどちらを用いてもよい。
【0054】
<可動基地局200の位置の算出方法例1>
可動基地局200の位置の算出方法例1では、基地局制御計算部140は、端末クラスタ毎に可動基地局200の最適場所の探索を行う。具体的には下記の手順で可動基地局200の位置を算出する。
【0055】
(S1)
S1において、基地局制御計算部140は、エリア(例えば、対象とする倉庫内のエリア)をd[m]間隔のメッシュ状(格子状と表現してもよい)に設定し、各メッシュ(正方形)の各頂点を可動基地局200の探索場所として設定する。
【0056】
(S2)
S2において、基地局制御計算部140は、対象の端末クラスタ内の要素(端末)と各探索場所の可動基地局200との間で、見通し内の端末の数をカウントし、見通し内の端末数が最も多い場所を可動基地局200の設置場所とする。このような方法の他、対象の端末クラスタ内の端末と可動基地局200との間の電波減衰量(想定値)の、クラスタ内全端末についての合計が最も小さい場所を可動基地局200の設置場所としてもよい。電波減衰量については、電波伝搬シミュレーション等により求めればよい。
【0057】
(S3)
S3において、基地局制御計算部140は、全ての端末クラスタに対し、S2を実施する。
【0058】
<可動基地局200の位置の算出方法例2>
可動基地局200の位置の算出方法例2では、基地局制御計算部140は、遮蔽物の材質や形を考慮した端末クラスタの重心に可動基地局200を設置する。具体的には下記の手順で可動基地局200の位置を算出する。下記の手順は端末クラスタ毎に実行される。
【0059】
(S1)
S1において、基地局制御計算部140は、端末クラスタの重心Gを求める。S1では、端末クラスタの要素(端末)の重みは全て1とする。
【0060】
(S2)
S2において、基地局制御計算部140は、端末クラスタの重心Gと端末クラスタの要素の間に遮蔽物が存在する場合、その要素の重みをd×bとする。ここで、dは遮蔽物の厚さ[m]当たりの減衰量に対する重みであり、bは遮蔽物の厚さ[m]である。
【0061】
(S3)
S3において、基地局制御計算部140は、再度端末クラスタの重心G´を算出し、G´に可動基地局200を配置すると決定する。
【0062】
例えば、重心G´の座標を(xG,yG)とし、端末UEiの重み無しの位置を(xi,yi)とし、該当クラスタにおける端末数をnとして、例えば端末UE3の位置(x3,y3)と、S1で算出した重心Gとの間に遮蔽物が存在する場合において、G´(xG,yG)は、下記の式により算出することができる。
【0063】
G´(xG,yG)=((x1+x2+dbx3+…+xn)/(1+1+db+…+1),(y1+y2+dby3+…+yn)/(1+1+db+…+1))
なお、重みの計算方法や、重みの重心への付加方法については、上記の方法に限られるわけではなく、他の方法を用いてもよい。
【0064】
(可動基地局200の動作例)
図10のフローチャートの手順に沿って、可動基地局200の動作例を説明する。
【0065】
<S201>
可動基地局200の可動制御部220は、制御サーバ100から、例えば、可動基地局200を配置すべき位置の情報と、その位置まで移動させる命令を制御情報として受信する。また、可動基地局200の端末接続制御部230は、制御サーバ100から、例えば、可動基地局200を配置する位置に該当する端末クラスタに属する各端末の識別情報と、各端末が可動基地局200へ接続するように各端末への指示送信の命令を制御情報として受信する。
【0066】
<S201>
可動基地局200の可動制御部220は、制御情報に従って、可動基地局200を移動させる。また、可動基地局200の端末接続制御部230は、制御情報に従って、端末クラスタに属する各端末に対して接続指示を送信する。
【0067】
(ハードウェア構成例)
本実施の形態における制御サーバ100は、例えば、コンピュータに、本実施の形態で説明する処理内容を記述したプログラムを実行させることにより実現可能である。なお、この「コンピュータ」は、物理マシンであってもよいし、クラウド上の仮想マシンであってもよい。仮想マシンを使用する場合、ここで説明する「ハードウェア」は仮想的なハードウェアである。
【0068】
上記プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(可搬メモリ等)に記録して、保存したり、配布したりすることが可能である。また、上記プログラムをインターネットや電子メール等、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0069】
図11は、上記コンピュータのハードウェア構成例を示す図である。
図11のコンピュータは、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置1000、補助記憶装置1002、メモリ装置1003、CPU1004、インタフェース装置1005、表示装置1006、入力装置1007、出力装置1008等を有する。
【0070】
当該コンピュータでの処理を実現するプログラムは、例えば、CD-ROM又はメモリカード等の記録媒体1001によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体1001がドライブ装置1000にセットされると、プログラムが記録媒体1001からドライブ装置1000を介して補助記憶装置1002にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体1001より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置1002は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0071】
メモリ装置1003は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置1002からプログラムを読み出して格納する。CPU1004は、メモリ装置1003に格納されたプログラムに従って、制御サーバ100に係る機能を実現する。インタフェース装置1005は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。表示装置1006はプログラムによるGUI(Graphical User Interface)等を表示する。入力装置1007はキーボード及びマウス、ボタン、又はタッチパネル等で構成され、様々な操作指示を入力させるために用いられる。出力装置1008は演算結果を出力する。
【0072】
(実施の形態の効果)
以上説明した技術により、無線通信システムにおいて、可動基地局を空間環境に応じた最適な場所に簡易に配置することができ、システムスループットを向上させることができる。
【0073】
(付記)
本明細書には、少なくとも下記各項の通信システム、制御サーバ装置、基地局配置方法、及びプログラムが開示されている。
(第1項)
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムであって、
前記制御サーバ装置が、エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出し、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させる
通信システム。
(第2項)
前記制御サーバ装置は、2つの端末クラスタ間における端末装置の組毎の距離に基づいて端末クラスタ間の距離を算出し、端末クラスタ間の距離が最も小さい端末クラスタの組み合わせを結合して、新たな端末クラスタとする処理を、端末クラスタの数が所望の数になるまで繰り返すことにより、前記1以上の端末クラスタを生成する
第1項に記載の通信システム。
(第3項)
前記制御サーバ装置は、前記2つの端末クラスタにおける一方の端末クラスタにおける第1端末装置と、他方の端末クラスタにおける第2端末装置との間に遮蔽物が存在する場合において、前記第1端末装置と前記第2端末装置との間の距離を、当該遮蔽物の厚さ当たりの減衰量と当該遮蔽物の厚さを用いて算出する
第2項に記載の通信システム。
(第4項)
前記制御サーバ装置は、前記1以上の端末クラスタにおける各端末クラスタに対して、見通し内の端末装置の数が最大となる位置、電波減衰量の合計が最小となる位置、又は、端末クラスタの重心の位置を前記可動基地局装置の位置として算出する
第1項ないし第3項のうちいずれか1項に記載の通信システム。
(第5項)
前記制御サーバ装置は、前記端末クラスタの重心の位置を算出する際に、当該端末クラスタにおける各端末装置の重みを1として求めた初期重心位置と、ある端末装置との間に遮蔽物が存在する場合に、当該遮蔽物の減衰量に対する重みを当該端末装置に付加して、前記端末クラスタの重心の位置を算出する
第4項に記載の通信システム。
(第6項)
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムにおける前記制御サーバ装置であって、
エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成し、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出する基地局制御計算部と、
各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させる基地局制御部と
を備える制御サーバ装置。
(第7項)
制御サーバ装置と可動基地局装置とを備える通信システムにおける基地局配置方法であって、
前記制御サーバ装置が、エリア内の各遮蔽物の位置及び材質に関する情報と、各端末装置の位置とに基づいて、端末装置をクラスタ化した1以上の端末クラスタを生成するステップと、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタに対して、前記可動基地局装置の位置を算出するステップと、
前記制御サーバ装置が、各端末クラスタにおいて、前記算出した位置に前記可動基地局装置を移動させるステップと
を備える基地局配置方法。
(第8項)
コンピュータを、第6項に記載の制御サーバ装置における各部として機能させるためのプログラム。
【0074】
以上、本実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0075】
100 制御サーバ
200 可動基地局
300 端末
400 空間情報DB
110 情報通信I/F部
120 遮蔽物情報取得部
130 端末情報取得部
140 基地局制御計算部
150 基地局制御部
160 制御通信I/F部
210 制御通信I/F部
220 可動制御部
230 端末接続制御部
240 無線送受信部
1000 ドライブ装置
1001 記録媒体
1002 補助記憶装置
1003 メモリ装置
1004 CPU
1005 インタフェース装置
1006 表示装置
1007 入力装置