(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】眼科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 3/10 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
A61B3/10 300
A61B3/10 100
(21)【出願番号】P 2023132636
(22)【出願日】2023-08-16
(62)【分割の表示】P 2021072768の分割
【原出願日】2018-04-13
【審査請求日】2023-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2017089976
(32)【優先日】2017-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 泰弘
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0035294(US,A1)
【文献】特開2003-339643(JP,A)
【文献】特開2015-091309(JP,A)
【文献】特開2017-169671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼の視軸を中心に撮影画角が0度から第1撮影画角で撮影された円形画像である第1眼底画像を取得する第1取得部と、
前記視軸を中心に、前記第1撮影画角よりも小さく0度よりも大きい第2撮影画角以上、且つ、前記第1撮影画角よりも大きい第3撮影画角以内で撮影された環状画像である第2眼底画像を取得する第2取得部と、
前記第1眼底画像と前記第2眼底画像とを合成し、前記被検眼の合成画像を生成する生成部と、を備え、
前記生成部は、前記第1眼底画像内の円形周辺部の血管と前記第2眼底画像内の内周部の血管とを重ねて合成し、前記合成画像を生成する眼科装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記第1眼底画像と前記第2眼底画像との一方の画像を他方の画像に対して、回転処理、拡大処理、及び縮小処理の何れか1つの処理を実施し、前記合成画像を生成する、請求項1に記載の眼科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、眼科装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼科における眼の診断及び眼への外科的処置を目的として対象者の眼(以下、被検眼という。)の内部、特に被検眼の眼底部の観察を可能とする眼科撮影装置が各種実現されている。例えば、被検眼の眼底の実像を作成する観察装置に関する技術が知られている(特許文献1参照)。なお、本明細書では、「眼科」とは、眼に対処する医学の分科をいう。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、角膜の曲率に適合する形状の凹面を有するレンズ要素を、被検眼(角膜)に密着させ、密着されたレンズ要素を含んで被検眼の眼底部の実像を形成する光学系が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
開示の技術は、レンズ要素を被検眼に密着させて被検眼内を観察することに比べて、被検眼を有する対象者に対する負担を軽減しつつ被検眼内を広範囲に観察することができる眼科装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の第1の態様は、被検眼の視軸を中心に撮影画角が0度から第1撮影画角で撮影された円形画像である第1眼底画像を取得する第1取得部と、前記視軸を中心に、前記第1撮影画角よりも小さく0度よりも大きい第2撮影画角以上、且つ、前記第1撮影画角よりも大きい第3撮影画角以内で撮影された環状画像である第2眼底画像を取得する第2取得部と、前記第1眼底画像と前記第2眼底画像とを合成し、前記被検眼の合成画像を生成する生成部と、を備え、前記生成部は、前記第1眼底画像内の円形周辺部の血管と前記第2眼底画像内の内周部の血管とを重ねて合成し、前記合成画像を生成する眼科装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態に係る眼科撮影装置の全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】第1実施形態に係る眼科撮影装置の被検眼に対する照射角の一例を示すイメージである。
【
図3】第1実施形態に係る眼科撮影装置の眼底の撮影可能領域の一例を示すイメージ図である。
【
図4】第1実施形態に係る眼科撮影装置に含まれる走査装置の一例を示す概略構成図である。
【
図5】第1実施形態に係る眼底撮影装置によって得られる2次元画像の一例を示すイメージ図である。
【
図6】第1実施形態に係る眼科撮影装置に含まれる共通光学系における光学システムの模式図である。
【
図7】第1実施例に係る光学システムのレンズ構成の一例を示す構成図である。
【
図8】第1実施例に係る光学システムの横収差図である。
【
図9】第2実施例に係る光学システムのレンズ構成の一例を示す構成図である。
【
図10】第2実施例に係る光学システムの横収差図である。
【
図11】第3実施例に係る光学システムのレンズ構成の一例を示す構成図である。
【
図12】第3実施例に係る光学システムの横収差図である。
【
図13】第4実施例に係る光学システムのレンズ構成であり、第2実施形態の一例を示す構成図である。
【
図14】第4実施例に係る光学システムの横収差図である。
【
図15】第5実施例に係る光学システムのレンズ構成であり、第2実施形態の一例を示す構成図である。
【
図16】第5実施例に係る光学システムの横収差図である。
【
図17】第3実施形態に係る画像システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図18】第3実施形態に係る眼科撮影装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図19】第3実施形態に係る画像表示端末の構成の一例を示すブロック図である。
【
図20】第3実施形態に係る画像表示端末で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図21】第3実施形態に係るディスプレイの表示画面の一例を示すイメージ図である。
【
図22】第3実施形態に係るディスプレイの表示画面の一例を示すイメージ図である。
【
図23】第3実施形態に係るディスプレイの表示画面の一例を示すイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0009】
〔第1実施形態〕
図1に、本実施形態に係る眼科撮影装置10の構成の一例を示す。
図1に示すように、眼科撮影装置10は、被検眼の眼底を撮影する装置本体14及び制御装置16を含む。なお、以下の説明では、「撮影」とは、ユーザが眼科撮影装置10を用いて被写体を示す画像を取得することをいい、「撮像」と称する場合がある。装置本体14は、制御装置16の制御下で作動する。装置本体14は、SLOユニット18、走査装置19、及びOCTユニット20を含む。
【0010】
なお、以下の説明では、眼科撮影装置10が水平面に設置された場合の水平方向を「X方向」、水平面に対する垂直方向を「Y方向」とし、被検眼12の前眼部から眼球中心Oを介して眼底に向かう方向を「Z方向」とする。従って、Y方向及びZ方向の双方に対して垂直な方向が「X方向」となる。
【0011】
本実施形態に係る眼科撮影装置10は、眼科撮影装置10で実現可能な主要な機能の一例として、2つの機能を有している。第1機能は、眼科撮影装置10を走査型レーザ検眼鏡(Scanning Laser Ophthalmoscope。以下、「SLO」という。)として作動させ、SLOによる撮影を行う機能(以下、SLO撮影系機能という。)である。第2機能は、眼科撮影装置10を光干渉断層計(Optical Coherence Tomography。以下、「OCT」という。)として作動させ、OCTによる撮影を行う機能(以下、OCT撮影系機能という。)である。
【0012】
SLO撮影系機能は、眼科撮影装置10の構成のうち、制御装置16、SLOユニット18及び第1光学スキャナ22を含む走査装置19によって実現される。SLOユニット18は、光源、及び検出素子等を含んで、被検眼12の眼底を撮像可能になっている。つまり、眼科撮影装置10は、SLO撮影系機能として作動されることで、被検眼12の眼底(例えば撮影可能領域12A)が被写体として撮像される。具体的には、SLOユニット18からの光(以下、「SLO光」という。)が走査装置19によって被検眼12の瞳孔を通して撮影可能領域12Aに対して、第1スキャナ22によるY方向(鉛直方向)、及び第3スキャナ29によるX方向(水平方向)に走査され、その反射光による画像がSLOユニット18で取得される。なお、SLO撮影系機能は、周知の機能であるため、詳細な説明は省略する。
【0013】
OCT撮影系機能は、制御装置16、OCTユニット20及び第2光学スキャナ24を含む走査装置19によって実現される。OCTユニット20は、光源、分光器、センサ、及び参照光学系等を含んで、眼底の膜厚方向に複数の断層領域を撮像可能になっている。つまり、眼科撮影装置10は、OCT撮影系機能として作動されることで、眼底(例えば撮影可能領域12A)の膜厚方向の領域である断層領域が撮像される。具体的には、OCTユニット20からの光(以下、「測定光」という。)が走査装置19によって被検眼12の瞳孔を通して撮影可能領域12Aに対して、第2スキャナ24によるY方向(鉛直方向)、及び第3スキャナ29によるX方向(水平方向)に走査され、測定光の反射光と参照光とを干渉させて干渉光が生成される。OCTユニット20は、干渉光の各スペクトル成分を検出し、検出結果を用いて制御装置16が断層領域を示す物理量(例えば断層画像)を取得する。なお、OCT撮影系機能は、周知の機能であるため、詳細な説明は省略する。
【0014】
以下の説明では、SLO光及び測定光は共にX方向及びY方向に2次元的に走査される光であるので、SLO光及び測定光を区別して説明する必要がない場合には、SLO光及び測定光を総称して「走査光」という。
【0015】
なお、本実施形態では、走査光を用いた機能を含む眼科撮影装置10の一例を説明するが、走査光を用いた機能を含む眼科撮影装置に限定されるものではなく、被検眼12を観察可能な機能を有していればよい。例えば、走査光の照射に限らず、被検眼12の眼底へ向けて光を照射して被検眼12の眼底観察可能な機能を含む眼科撮影装置への適用が可能である。つまり、走査光を走査した際の被検眼12からの反射光を用いることに限定されず、単に光を照射して被検眼12を観察する機能を含むものである。また、被検眼12への光の照射にも限定されない。例えば、被検眼12に生じさせた蛍光などの光を用いて被検眼12を観察する機能を含むものである。このため、以下、被検眼12を観察する場合の光として、眼底からの反射光及び眼底における発光を含む概念として、「被検眼12からの光」と称して説明する。
【0016】
ここで、本実施形態に係る眼科撮影装置10における被検眼12に対する光束の照射角について説明する。
図2に、本実施形態に係る眼科撮影装置10の被検眼に対する照射角の一例を示す。また、
図3に、眼底の撮影可能領域の一例を示す。
被検眼12の眼底を観察する場合、眼底を観察する観察者の視野角、つまり、眼底の視野角(FOV:Field of View)をより大きな角度とすることで、より広範囲の眼底領域を観察できる。この眼底領域の観察のために、本実施形態に係る眼科撮影装置10では、被検眼12の眼底を走査光により走査して、被検眼12の眼底を撮影する。従って、眼底の視野角は、走査光の照射角に対応する。つまり、被検眼12に対してどの程度の光を提供すればどの程度の眼底領域を撮影可能であるのかを表現することが求められる。眼底への走査光は、被検眼12の瞳孔中心に向けて照射される。そして、被検眼の角膜での屈折のため、眼科装置からの照射光は被検眼の内部ではやや狭い角度となって眼底を照明する。
図2では模式的に、眼科装置からの照射光線が瞳孔中心で屈折する状態として示している。そして、眼科装置による外部からの照射光についての外部照射角Aと、これにより照射させる被検眼の内部での照射角としての内部照射角Bとを区別して表現されなければならない。
【0017】
外部照射角Aとは、眼科撮影装置10側から、すなわち被検眼12の外部からの光照射角である。つまり、被検眼12の眼底に対して照射光が被検眼12の瞳孔中心点27(すなわち、瞳孔の正対視中央点)へ向かう角度を外部照射角Aとする。この外部照射角Aはまた眼底から反射して瞳孔中心点27から被検眼12を射出して眼科撮影装置10へ向かう光の角度に等しい。一方、内部照射角Bとは、被検眼12の眼球中心Oを基準位置として、被検眼12の眼底が走査光により照射されて実質的に撮影される光照射角を表している。外部照射角Aと内部照射角Bとは、対応関係にあるが、以下の説明では、眼科装置としての説明であるため、眼底の視野角に対応する照射角として、外部照射角Aを用いる。なお、以下の説明では、内部照射角を併記する場合があるが、参考値である。
【0018】
従って、
図3に示すように、眼科撮影装置10は、外部照射角Aによる被検眼12の眼底領域である撮影可能領域12A内を撮像する。この撮影可能領域12Aは、例えば、走査装置19による走査光の走査可能な最大領域である。撮影可能領域12Aの一例には、外部照射角Aで、約120度の視野を提供する範囲が挙げられる。この場合の内部照射角は160度程度に対応する。
【0019】
例えば、撮影可能領域12Aは、第1撮影可能領域12A1及び第2撮影可能領域12A2に大別することができる。第1撮影可能領域12A1とは、外部照射角Aaによる被検眼12の瞳孔中心点27と中心Oとを通る視軸CL近傍の視野の範囲であり、第2撮影可能領域12A2とは、第1撮影可能領域12A1の周辺領域で、視軸CLから離れた周辺視野の範囲である。第1撮影可能領域12A1に対応する外部照射角Aaの一例としては約30度(内部照射角Bは45度程度に相当)が挙げられ、第2撮影可能領域12A2に対応する外部照射角Aの一例として約120度(内部照射角160度程度に相当)が挙げられる。
【0020】
走査装置19は、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、ダイクロイックミラー26、及び第3光学スキャナ29を備えた共通光学系28を含む。第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、及びダイクロイックミラー26は、第1光学スキャナ22とダイクロイックミラー26との間の光路長と、第2光学スキャナ24とダイクロイックミラー26との間の光路長とが一致するように配置される。共通光学系28は、SLO光及び照射光に対して共通に用いられる。共通光学系28は、第3光学スキャナ29を含む。これら第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24、及び第3光学スキャナ29は、被検眼12の瞳孔の中心部と共役な位置に配置される。なお、ダイクロイックミラー26は両方のスキャナーに共用されるため、共通光学系に含まれると考えることもできる。
【0021】
なお、本実施形態では、第1光学スキャナ22の一例として、ポリゴンミラーを用いることができる。また、本実施形態では、第2光学スキャナ24の一例として、ガルバノミラーを用いることができる。なお、第1光学スキャナ22及び第2光学スキャナ24は、光束を所定方向に偏向できる光学素子であればよい。
【0022】
図4に、共通光学系28の主要な構成を含む走査装置19の一例を示す。
図4に示すように、共通光学系28は、光学システム28A、及び第3光学スキャナ29を含んでいる。
【0023】
第1光学スキャナ22は、SLOユニット18からのSLO光をダイクロイックミラー26に送り出す。また、第1光学スキャナ22は、SLO光をY方向に走査する。なお、SLO光のY方向への走査はポリゴンミラー等の光偏向素子を動作させることによって実現される。ダイクロイックミラー26は、第1光学スキャナ22から送り出されたSLO光を透過させ、共通光学系28に導く。共通光学系28では、第3光学スキャナ29からのSLO光が光学システム28Aに射出される。また、第3光学スキャナ29は、SLO光をX方向に走査する。なお、SLO光のX方向への走査はガルバノミラー等の光偏向素子を動作させることによって実現される。
【0024】
共通光学系28では、第3光学スキャナ29からのSLO光が光学システム28Aを介して、被検眼12の瞳孔に入射される。SLO光が撮影可能領域12Aで反射すると、SLO反射光がSLO光と同一の光路を逆向きに辿ってSLOユニット18へ到達する。
【0025】
第2光学スキャナ24は、OCTユニット20からの測定光をダイクロイックミラー26に送り出す。また、第2光学スキャナ22は、測定光をY方向に走査する。なお、測定光のY方向への走査はガルバノミラー等の光偏向素子を動作させることによって実現される。ダイクロイックミラー26は、第2光学スキャナ24から送り出された測定光を反射することで、共通光学系28に導く。共通光学系28では、第3光学スキャナ29からの測定光が光学システム28Aに射出される。また、第3光学スキャナ29は、測定光をX方向に走査する。
【0026】
共通光学系28では、第3光学スキャナ29からの測定光が光学システム28Aを介して、被検眼12の瞳孔に入射される。測定光が撮影可能領域12Aに入射されると、測定光は撮影可能領域12Aの膜厚方向の異なる位置において散乱したり、反射したりする。この結果として得られた測定反射光は、測定光と同一の光路を逆向きに辿ってOCTユニット20に到達する。
【0027】
図1に示すように、制御装置16は、装置本体14と各種情報の授受を行うことで装置本体14の動作を制御する。制御装置16は、CPU(Central Processing Unit)、ROM、及びRAM(Random Access Memory)を含むコンピュータによって実現することができる。また、制御装置16は、コンピュータを含む構成に限定されるものではなく、他のハードウェア構成によって実現してもよい。制御装置16は、SLOユニット18からの信号に基づいて、撮影可能領域12Aを示す2次元画像12Gを生成する。2次元画像12Gは、平面視の撮影可能領域12Aを示す平面画像である。また、制御装置16は、OCTユニット20からの信号に基づいて、被検眼12の眼底の断層像、つまり、撮影可能領域12A内の断層画像を生成する。
【0028】
図5に、制御装置16で生成された撮影可能領域12Aを示す2次元画像12Gの一例を示す。
図5に示すように、X方向走査角度範囲は、走査光のX方向の走査角度の範囲である。
図5には、X方向走査角度範囲として、θ0度以上θn度以下の範囲が例示されている。また、Y方向走査角度範囲は、走査光のY方向の走査角度である。
図5には、Y方向走査角度範囲として、φ0度以上φn度以下の範囲が例示されている。
【0029】
図5に示すように、2次元画像12Gは、第1撮影可能領域12A1(
図3参照)に対応する円形の第1眼底画像領域12G1と、第2撮影可能領域12A2(
図3参照)に対応する輪帯形状の第2眼底画像領域12G2とに大別される。ここで、第1眼底画像領域12G1と、第2眼底画像領域12G2との画像を高精度に同じ走査による撮影で得ることは容易ではなかった。
【0030】
つまり、眼科撮影装置10では、被検眼12における眼底の撮影可能領域12A内を広範囲に撮像することが要求される。しかし、光学システム28Aをレンズのみを用いて構成した場合、被検眼12における外部照射角Aを超広角にして、より広角の視野を得ることは困難であった。これは、被検眼12と被検眼12に直近の光学系の面との間の作動距離WD(ワーキングディスタンス)の確保と、高分解画像を得る為の収差性能の向上と、フレア及びゴーストの抑制と、装置本体の大きさ及び重さの軽減と、製造難易度及びコストの軽減という複数の課題を解決することが要求されるためである。これらの課題は、より広角の視野を得ようとするのにしたがって二律相反する場合があった。
【0031】
そこで、本実施形態では、反射面とレンズを組み合わせた反射屈折光学系が光学系全体として色収差の発生を抑制でき、かつ光学系を小型化することが可能であるという点に着目し、眼底中心部位の周辺に対応するより広角での観察が可能である。つまり、本実施形態では、第2撮影可能領域12A2(
図3参照)に対応する輪帯形状の第2眼底画像領域12G2を撮影して、より広角な外部照射角Aで眼底中心部位の周辺観察を可能である。なお、以下の説明では、被検眼12の眼底を撮影する眼底撮影装置を中心として説明するが、上記光学構成によれば、被検眼12との位置関係を適宜に選定することにより、眼底に限らず被検眼の前眼部などを観察する場合にも有効である。
【0032】
図6に、より広角の視野を実現可能にする共通光学系28における光学システム28Aを模式的に示す。
図6に示すように、光学システム28Aは、第1光学ユニット280及び第2光学ユニット282を含んでいる。ところで、光学システム28Aでは、レンズのみによって被検眼12と光学系の作動距離WDを長くすることは容易ではない。これに対して本実施形態では、反射面の中心に透過開口をもつドーナツ形状の輪帯有効反射領域をもつ反射面と、レンズを用い、輪帯形状の広い周辺視野を形成することを可能としている。しかも、超広角領域の画像を十分な収差性能で、フレアやゴーストの発生の小さい小型で構成レンズ枚数の少ない光学系が可能となっている。
【0033】
次に、光学システム28Aを、実施形態の例示である
図7に沿って、詳細に説明する。
被検眼側に配置される第1光学ユニット280において、被検眼12の瞳Pp側より、光が入射する順に、被検眼に凹面を向けた第1屈折面により被検眼12からの光は光束の広がりを抑制された上で中心開口を有する第1反射面(輪帯形状の凹面反射鏡)により、被検眼12へ向かう方向へ反射されて収斂される。次に、第2反射面(輪帯形状の凸面反射鏡)で被検眼12へ向かう方向と逆方向に反射されて、第1反射面の中心開口を通過する。第1光学ユニット280から射出する被検眼からの光は、レンズから構成される第2光学ユニット282により、第2光学ユニットから離れた被検眼と反対側の空間中に、被検眼12の瞳Pp位置と共役となる位置に瞳共役Pcjの像が形成される。このような光学構成において、第1反射面を凹面形状、及び第2反射面を凸面形状とすることで、光学系全体の構成を小型化することが可能になっている。そして、被検眼側に凹面を向けた第1屈折面により、十分な作動距離WDが確保され、第1反射面の小型化が可能とされ、第2反射面及び第1反射面の開口部を透過させることにより、光束分離が可能になる。
そして、この構成の光学系において、被検眼の眼底と共役関係にある眼底共役像Fcjの位置と、前記被検眼の瞳と共役関係にある瞳共役位置像Pcjの位置との間に、正の屈折力を有するレンズ群が配置され、前記レンズ群中には少なくとも1面の負の屈折力を有する面を含むことが収差補正のために有効である。
【0034】
また、中心開口を有する第1反射面、及び中心開口を有する第2反射面は、屈折率1より大きい媒質の両側の面に形成される一体構造となる裏面反射面を採用することで、より長い作動距離WDの確保と反射鏡をより小型に形成することとの両立が可能になる。
【0035】
この場合、次に示す(1)式の条件式を満たすように光学システム28Aを構成することにより、より長い作動距離WDを有しつつ、小型の光学系で、大きな視野を得ることができる。
0.1<D・tan(A/2)/S<1.0 ・・・(1)
ただし、被検眼12の瞳Pp位置から第1屈折面までの距離をD、光学系中の屈折面の最大有効直径をS、瞳の位置への外部照射角としての外部照射角をAとする。
なお、(1)式は、上限が0.9であり、下限が0.2であることがより好ましい。
【0036】
また、本実施形態に係る眼科撮影装置10は、SLO撮影系機能及びOCT撮影系機能を有しており、これらの各機能は、高速でかつ十分な解像力を持ったスキャニング撮像が要求される。この要求は、次に示す(2)式の条件式を満たすように光学システム28Aを形成することで達成可能である。
1<|β|<10 ・・・(2)
ただし、被検眼12の瞳位置と、瞳位置と共役関係の瞳共役の位置との間の結像倍率をβとする。なお、前述の(2)式では、下限を2より大きくすることがより好ましい。
【0037】
なお、被検眼12の瞳Ppと瞳共役Pcjの間の瞳のコマ収差は、瞳共役Pcjの像位置での眼底像の光束画角差となり、眼底の位置で解像力が変化することにつながる。この瞳のコマ収差を補正するために、被検眼12の眼底との眼底共役Fcj位置と瞳共役Pcj位置との間に、全体として正の屈折力を有するレンズ群が配置され、レンズ群中には少なくとも1面の負の屈折力をもつ面が構成されることが好ましい。さらに好ましくは(2)式の結像倍率βを、次に示す(3)式で表し、瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの最大視野の歪曲率Mを加味することができる。この場合、上限は17.0、下限は9.0となる。
|β|/(1-M)・・・(3)
【0038】
(第1実施例)
図7に、第1実施例に係る眼科撮影装置10における光学システム28Aのレンズ構成の一例を示す。
光学システム28Aは、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL01、瞳Pp側に凹面を向けた非球面形状を含む負メニスカスレンズL02、及び瞳Pp側に凸面を向けた正メニスカスレンズL03と負メニスカスレンズL04とが貼り合わされたレンズ成分が順に配列された第1光学ユニット280を含んでいる。また、第1光学ユニット280の光の射出側には、被検眼12の瞳Pp側から、凸レンズL05、及び瞳Pp側に凹面を向けたメニスカスレンズL06が順に配列された第2光学ユニット282を有している。
【0039】
なお、光学システム28Aを構成する全ての光学要素、つまり、第1光学ユニット280に含まれる光学要素(レンズL01、L02、L03、L04)及び第2光学ユニット282に含まれる光学要素(レンズL05、L06)は単一の光軸AXに沿って配置される。
【0040】
そして、第1光学ユニット280から射出する被検眼12からの平行光束がやや発散光となって後続の第2光学ユニット282に入射する。第2光学ユニット282は2つのレンズを有しており、第1光学ユニット280からの弱い発散光を平行光束に変換しており、第1光学ユニット280との構成によって、被検眼12の瞳Ppの共役像を、被検眼12と反対側の空間に形成する。
【0041】
この構成において、
図7中に示した光線は、被検眼12の瞳位置Ppから射出する平行光束が光学システム28Aにより、その被検眼12と反対側に空間内に瞳共役点Pcjを形成する様子を示している。ここでは、眼底からの光が被検眼12を平行光束となって射出することを前提としており、この場合、被検眼12の眼底との共役点は、
図7中の点Fcjで示されている位置であり、輪帯状凹面反射面Mr01と輪帯状凸面反射面Mr02との間に眼底の一次空間像が形成されることを示している。なお、前述したSLOユニット18及びOCTユニット20では、各ユニットからの照射ビーム(レーザ光)が被検眼12の瞳位置Ppを中心とする平行光束として種々の角度(すなわち、外部照射角)で被検眼12に入射することは言うまでもない。後述する各実施例においても同様である。
【0042】
また、各面は適宜非球面形状にすることによって結像性能を向上させることができる。これら非球面は、光軸に垂直な方向の高さをrとし、非球面の頂点における接平面から高さrにおける非球面上の位置までの光軸に沿った距離(サグ量)をzとし、頂点曲率半径の逆数をcとし、円錐係数をkとし、n次の非球面係数をA、B、C、D、Eとしたとき、次に示す(4)式で表されるものとする。
【0043】
z=(c・r2)/〔1+{1-(1+k)・r2・c2}1/2〕
+A・r4+B・r6+C・r8+D・r10+E・r12 ・・・(4)
【0044】
次の表1に、第1実施例における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表1では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が100~132度(50~66度:第1面入射角)とし、作動距離WDが18mmである。また、全長(被検眼12の瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置までの距離L2)が520.88mmとし、瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置の瞳結像倍率βが4.9xとした場合を示す。さらに、歪曲率M1(瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの眼底共役Pcjにおける最大視野の歪曲率)が0.574とした場合を示す。
【0045】
【0046】
レンズL02で第7面の非球面を示す非球面係数は、
A:+0.398342E-06
B:-0.976217E-10
C:-0.544603E-13
である。
【0047】
図8に、表1の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。この横収差図は、本実施例の光学性能を評価するために、瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを便宜的に入れたときの眼底像についての収差図である。後述する各実施例においても同様に無収差理想レンズを入れて収差計算を行っている。
図8に示す収差図では、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5620nmを示し、破線は656.2790nmを示し、一点鎖線は486.1330nmnmを示し、二点鎖線は435.8350nmを示している。
【0048】
図8に示す収差図から明らかなように、第1実施例の光学システム28Aでも、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることがわかる。また、光学システム28Aは、有効視野角(つまり外部照射角A)が100度から132度(50度から66度:第1面入射角)近傍においても、良好に補正されていることがわかる。これは内部照射角では、約130度から165度に対応する。なお、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0049】
(第2実施例)
第2実施例は、第1実施例の変形例であり、有効視野角(つまり外部照射角A)を広げたものである。
なお、第2実施例は、第1実施例と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略し、以下、相違する光学システム28Aを説明する。
【0050】
図9に、第2実施例に係る眼科撮影装置10における光学システム28Aのレンズ構成を示す。
第2実施例に係る光学システム28Aは、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凹面を向けた非球面形状を含む正メニスカスレンズL01、正メニスカスレンズL01の光の射出側の面に瞳Pp側の凹面が張り合わされた非球面形状を含む負メニスカスレンズL02、及び瞳Pp側に凸面を向けた正メニスカスレンズL03と負メニスカスレンズL04とが貼り合わされたレンズ成分が順に配列された第1光学ユニット280を含んでいる。なお、第1光学ユニット280の光の射出側には、
図7に示す第2光学ユニット282と同様のレンズ構成の第2光学ユニットを有している。
【0051】
なお、第1実施例と同様に、光学システム28Aを構成する全ての光学要素(レンズL01、L02、L03、L04、レンズL05、L06)は単一の光軸AXに沿って配置される。
【0052】
次の表2に、第2実施例における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表2では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が110~140度(55~70度:第1面入射角)とし、作動距離WDが18mmとした場合を示す。また、全長(被検眼12の瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置までの距離L2)が565mmとし、瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置の瞳結像倍率βが3.92xとした場合を示す。さらに、歪曲率M2(瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの眼底共役Pcjにおける最大視野の歪曲率)が0.720とした場合を示す。
【0053】
【0054】
レンズL01で第3面及び第5面の非球面を示す非球面係数は共通であり、
A:-0.902137E-07
B:+0.794263E-11
C:-0.318956E-15
である。
また、レンズL02で第7面の非球面を示す非球面係数は、
A:+0.585897E-06
B:-0.983043E-10
C:+0.117076E-12
D:-0.125282E-16
である。
【0055】
図10に、表2の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。
図10に示す収差図では、第1実施例と同様に、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5620nmを示し、破線は656.2790nmを示し、一点鎖線は486.1330nmnmを示し、二点鎖線は435.8350nmを示している。
【0056】
図10に示す収差図から明らかなように、第2実施例の光学システム28Aと同様に、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることがわかる。また、光学システム28Aは、有効視野角が140度(70度:第1面入射角)近傍でも、良好に補正されていることがわかる。これは内部照射角では、約180度に対応する。なお、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0057】
(第3実施例)
第3実施例は、第1実施例の変形例である。
なお、第3実施例は、第1実施例と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0058】
図11に、第3実施例に係る眼科撮影装置10における光学システム28Aのレンズ構成を示す。
第3実施例に係る光学システム28Aは、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL01、瞳Pp側に凹面を向けた非球面形状を含む負メニスカスレンズL02、及び瞳Pp側に凸面を向けた正メニスカスレンズL03と負メニスカスレンズL04とが貼り合わされたレンズが順に配列された第1光学ユニット280を含んでいる。なお、第1光学ユニット280の光の射出側の光学系は、また、第1光学ユニット280の光の射出側には、被検眼12の瞳Pp側から、凸レンズL05、及び瞳面D側に凹面を向けたメニスカスレンズL06が順に配列された第2光学ユニット282を含んでいる。
【0059】
なお、光学システム28Aを構成する全ての光学要素、つまり、第1光学ユニット280に含まれる光学要素(レンズL01、L02、L03、L04)及び第2光学ユニット282に含まれる光学要素(レンズL05、L06)は単一の光軸AXに沿って配置される。
【0060】
次の表3に、第3実施例における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表3では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が100~130度(50~65度:第1面入射角)とし、作動距離WDが18mmとした場合を示す。また、全長(被検眼12の瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置までの距離L2)が549.19mmとし、瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置の瞳結像倍率βが5.64xとした場合を示す。さらに、歪曲率M2(瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの眼底共役Pcjにおける最大視野の歪曲率)が0.517とした場合を示す。
【0061】
【0062】
レンズL02で第7面の非球面を示す非球面係数は、
A:+0.505045E-06
B:-0.185139E-09
C:+0.118203E-12
D:-0.133097E-16
である。
【0063】
図12に、表3の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。
図12に示す収差図では、第1実施例と同様に、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5620nmを示し、破線は656.2790nmを示し、一点鎖線は486.1330nmnmを示し、二点鎖線は435.8350nmを示している。
【0064】
図12に示す収差図から明らかなように、第3実施例の光学システム28Aでは、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、有効視野角が130度(65度:第1面入射角)近傍でも、良好に補正されていることがわかる。これは内部照射角では、約165度に対応する。また、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0065】
〔第2実施形態〕
第2実施形態は、第1実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】
第2実施形態では、レンズ素子の口径を小さくすること、及び反射面の口径を小さくすることの両者を想定した場合に、レンズ素子の口径を小さくすることを支配的にして共通光学系28が形成されている。詳細には、レンズ素子の口径を小さくすることに注力し、反射面の大型化はある程度許容する構成としている。第1光学ユニット280は、被検眼12の瞳Pp側より順に、被検眼12側に凹面を向けた正の屈折力を有するレンズ、入射側が気体となる表面反射面である中心開口を有する輪帯状凹面反射面としての第1反射面、入射側が気体となる表面反射面である輪帯状凸面反射面としての第2反射面、負の屈折力のレンズと正の屈折力のレンズとを有している。このとき、負の屈折力をもつレンズは第1反射面と第2反射面の間に配置されることが好ましい。そして、第1光学ユニット280から射出する被検眼12からの平行光束がやや発散光となって後続の第2光学ユニット282に入射する。第2光学ユニット282は2つのレンズを有しており、第1光学ユニット280からの弱い発散光を平行光束に変換しており、第1光学ユニット280との構成によって、被検眼12の瞳Ppの共役像を、被検眼12と反対側の空間に形成する。
【0067】
(第4実施例)
次に、第2実施形態に係る第4実施例を説明する。第4実施例は、第1実施例から第3実施例の何れかと同様の構成については同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0068】
図13に、第4実施例に係る眼科撮影装置10における光学システム28Aのレンズ構成を示す。
第4実施例に係る光学システム28Aは、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL01、瞳Pp側に凹面を向けた輪帯状の第1反射面Mr01、正メニスカスレンズL01の凸面の中心部に設けられた第2反射面Mr02、瞳Pp側に凹面を向けた負メニスカスレンズL02、及び瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL03が順に配列された第1光学ユニット280を含んでいる。また、第1光学ユニット280の光の射出側には、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凸面を向けたメニスカスレンズL05、及び正レンズL06が順に配列された第2光学ユニット282を含んでいる。
【0069】
なお、光学システム28Aを構成する全ての光学要素、つまり、第1光学ユニット280に含まれる光学要素(レンズL01、L02、L03)及び第2光学ユニット282に含まれる光学要素(レンズL05、L06)は単一の光軸AXに沿って配置される。
【0070】
次の表4に、第4実施例における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表4では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が80~130度(40~65度:第1面入射角)とし、作動距離WDが39.1089mmとした場合を示す。また、全長(被検眼12の瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置までの距離L2)が565mmとし、瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置の瞳結像倍率βが6.4xとした場合を示す。さらに、歪曲率M2(瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの眼底共役Pcjにおける最大視野の歪曲率)が0.518とした場合を示す。
【0071】
【0072】
図14に、表4の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。
図14に示す収差図では、第1実施例と同様に、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5620nmを示し、破線は656.2790nmを示し、一点鎖線は486.1330nmnmを示し、二点鎖線は435.8350nmを示している。
【0073】
図14に示す収差図から明らかなように、第4実施例の光学システム28Aでは、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、有効視野角が100度(50度:第1面入射角)近傍で、良好に補正されていることがわかる。これは内部照射角では、約135度に対応する。また、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0074】
(第5実施例)
第5実施例は、第4実施例の変形例である。詳細には、第1光学ユニット280において、第4実施例では、正メニスカスレンズL01の凸面の中心部に第2反射面Mr02を設けたが、第5実施例は、第2反射面Mr02を正メニスカスレンズL01から独立した素子に設けるようにしたものである。
【0075】
なお、第5実施例は、第4実施例と同様の構成のため、同一部分は同一符号を付し詳細な説明を省略する。
【0076】
図15に、第5実施例に係る光学システム28Aのレンズ構成の一例を示す。
第5実施形態に係る光学システム28Aは、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL01、瞳Pp側に凹面を向けた非球面形状を含む輪帯状の第1反射面Mr01、瞳Ppと反対側の凸面の中心部に設けられた非球面形状を含む第2反射面Mr02、瞳Pp側の凹面を向けた負レンズL02、及び瞳Pp側に凹面を向けた正メニスカスレンズL03が順に配列された第1光学ユニット280を含んでいる。また、第1光学ユニット280の光の射出側には、被検眼12の瞳Pp側から、瞳Pp側に凸面を向けたメニスカスレンズL05、及び正レンズL06が順に配列された第2光学ユニット282を含んでいる。
【0077】
なお、光学システム28Aを構成する全ての光学要素(レンズL01、L02、L03、レンズL05、L06)は単一の光軸AXに沿って配置される。
【0078】
次の表5に、第5実施例における光学システム28Aの諸元の値を示す。
表5では、有効視野角(瞳からの外部照射角A)が70~130度(35~65度:第1面入射角)とし、作動距離WDが34.448mmとした場合を示す。また、全長(被検眼12の瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置までの距離L2)が620mmとし、瞳Pp位置から瞳共役Pcj位置の瞳結像倍率βが7.6xとした場合を示す。さらに、歪曲率M2(瞳共役Pcj位置に無収差理想レンズを入れたときの眼底共役Pcjにおける最大視野の歪曲率)が0.450とした場合を示す。また、反射面の最大径が230mmで、屈折面の最大有効径が106.3mmとした場合を示す。
【0079】
【0080】
第5面の非球面を示す非球面係数は、
A:-0.119695E-08
B:+0.639162E-12
C:+0.383380E-16
D:-0.483487E-20
E:+0.121159E-24
である。
また、第6面の非球面を示す非球面係数は、
A:-0.449100E-06
B:+0.253492E-08
C:-0.308466E-11
D:+0.171588E-14
E:-0.458747E-18
である。
【0081】
図16に、表5の諸元により構成された光学システム28Aの横収差図を示す。
図16に示す収差図では、第1実施例と同様に、縦軸は像高を示し、実線は中心波長587.5620nmを示し、破線は656.2790nmを示し、一点鎖線は486.1330nmnmを示し、二点鎖線は435.8350nmを示している。
【0082】
図16に示す収差図から明らかなように第5実施例の光学システム28Aにより、可視光波長域の光に対して収差のばらつきが抑制され、良好に補正されていることがわかる。有効視野角が130度(65度:第1面入射角)近傍でも、良好に補正されていることがわかる。これは内部照射角では、約165度に対応する。また、図示を省略したが、球面収差、非点収差、歪曲収差などの諸収差も良好に補正されていることが確認されている。
【0083】
次の表6に、上記第1実施例から第5実施例の各構成における前述した各条件式の対応値を示す。
【0084】
【0085】
〔第3実施形態〕
第3実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0086】
第3実施形態は、視野角(FOV)である外部照射角Aによる撮影可能領域12Aの全ての画像を提供することが可能な画像システムである。つまり、第1実施形態及び第2実施形態では、視軸CLによる眼底中心部位の周辺、つまり、輪帯形状の第2撮影可能領域12A2に対応する第2眼底画像領域12G2(
図3参照)の撮影画像を得ることができる。そこで、第3実施形態では、視軸CLによる眼底中心部位、つまり第1撮影可能領域12A1に対応する第1眼底画像領域12G1(
図3参照)の撮影画像を取得して、眼底中心及び眼底中心部位の周辺の各画像を合成し、撮影可能領域12Aの全体の2次元画像12Gを得ることが可能である。
【0087】
図17に、第3実施形態に係る撮影可能領域12Aの全ての画像を提供することが可能な画像システムの一例として画像システム100を示す。画像システム100は、第1眼科撮影装置(眼底撮影装置)110と、第2眼科撮影装置(眼底撮影装置)120と、インターネット及びローカルエリアネットワーク等のネットワーク130と、画像サーバ140と、画像表示端末150とを備えている。
画像システム100は、視軸CLによる眼底中心部位の画像を得る第1眼科撮影装置110を含んでいる。また、画像システム100は、各実施例を含む第1実施形態又は第2実施形態の何れかの眼科撮影装置10を、視軸CLによる眼底中心部位周辺を撮影し、その周辺画像を得る第2眼科撮影装置120として含んでいる。これら第1眼科撮影装置110及び第2眼科撮影装置120は、ネットワーク130に接続されている。また、画像サーバ140及び画像表示端末150もネットワーク130に接続されている。
【0088】
なお、第1眼科撮影装置110が、例えば、視軸CLを中心として撮影画角で0度から305度の眼底領域、つまり、外部照射角度が30度であるものとする。この第1眼科撮影装置110のSLOユニットを用いることで、視軸CLを中心として撮影画角15度の円形領域の眼底画像を得ることができる。また、OCTユニットを用いることで、視軸CLを中心として撮影画角(即ち、外部照射角)30度の円形領域のOCT-3Dボリュームデータを得ることができ、3次元データ解析及び各種マップを作製できる。さらに、OCTユニットを用いることで、網膜断層画像を得ることもできる。
また、第2眼科撮影装置120が、例えば、視軸CLを中心として撮影画角で30度から100度の眼底領域、つまり、外部照射角が30度から100度であるものとする。この第2眼科撮影装置120のSLOユニットを用いることで、視軸CLを中心として、円形領域を取り囲むドーナツ状の環状領域の眼底画像を得ることができる。また、OCTユニットを用いることで、環状領域のOCT-3Dボリュームデータを得ることができ、3次元データ解析及び各種マップを作製できる。さらに、OCTユニットを用いることで、環状領域内の網膜断層画像を得ることもできる。
【0089】
図18に、第2眼科撮影装置120として機能する各実施例を含む第1実施形態又は第2実施形態の何れか1つの眼科撮影装置10について、制御装置16をコンピュータにより構成した一例を模式的に示す。
【0090】
制御装置16は、コンピュータ構成とされ、CPU16A、RAM16B、ROM16C、及び入出力インターフェース(I/O)16Hがバス16Jを介して各々コマンド及びデータを授受可能に接続されている。また、I/O16Hには各種の初期データが予め記憶される不揮発性メモリ16D、操作部16E、ディスプレイ16F、及び外部装置またはネットワーク130と相互にデータ通信する通信部16Gが接続されている。本実施形態では、通信部16Gは、ネットワーク130を介して画像サーバ140又は画像表示端末150との間で画像データ通信を行う。さらに、I/O16HにはSLOユニット18、走査装置19及びOCTユニット20が接続されている。
【0091】
ディスプレイ16Fは、画像及び各種情報を表示するデバイスを含んで構成され、操作部16Eは、制御装置16で用いるデータ及びコマンドを入力するキーボード及びマウス等の入力装置を含んで構成される。なお、操作部16E及びディスプレイ16Fは、操作指示の受け付けを実現する表示ボタンや各種情報が表示されるタッチパネル式のディスプレイによるハードウェア等で兼用してもよい。
【0092】
ROM16Cには、制御装置16を眼底撮影制御を実行させる眼底撮影制御プログラム16Pが格納されている。眼底撮影制御プログラム16Pは、視軸CLによる眼底中心部位の周辺を撮影し、その周辺画像を得る処理機能を有している。つまり、CPU16Aが眼底撮影制御プログラム16PをROM16Cから読み取りRAM16Bに展開し、眼底撮影制御プログラム16Pによる眼底撮影制御処理を実行する。CPU16Aが眼底撮影制御処理を実行することで、制御装置16による眼科撮影装置10は第1眼科撮影装置110として動作する。なお、眼底撮影制御プログラム16Pは、CD-ROM等の記録媒体により提供するようにしても良い。
【0093】
第1眼科撮影装置110は、視軸CLによる眼底中心部位を撮影し、その画像を得る機能以外は第2眼科撮影装置120と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。なお、第1眼科撮影装置110と第2眼科撮影装置120とを区別して説明する場合は、第1眼科撮影装置110の制御装置を制御装置15と表記し区別する。また、本実施形態では、以下の説明を簡単にするため、第1眼科撮影装置110により撮影された視軸CLによる眼底中心部位の画像は、予め取得され、取得された画像が被検眼12の患者を示す患者IDと関連付けて画像サーバ140に記憶されていることとする。
【0094】
図示は省略するが、画像サーバ140は、患者IDと関連付けられた撮影画像を蓄積する蓄積装置を含んでおり、撮影画像の蓄積、及び患者IDを識別子として呼び出された撮影画像を出力する機能を有している。また、画像サーバ140には、患者IDに関連付けて患者名及び来院日付等の患者関連情報も蓄積されている。つまり、画像サーバ140は、第1眼科撮影装置110、第2眼科撮影装置120及び画像表示端末150と接続可能に構成されており、機器間でデータのやりとりを行う機能を有するサーバである。また、画像サーバ140は、第1眼科撮影装置110、第2眼科撮影装置120で撮影された画像、撮影条件、および、患者IDや氏名などの患者データや診察、そして診断結果に関する情報を記録する機能を有するサーバでもある。
【0095】
画像表示端末150は、画像サーバ140からの情報に基づき患者情報と患者の眼底画像及び網膜画像などの画像を表示するためのソフトウェアである画像ビューワがインストールされた端末である。またこの画像ビューワは電子カルテ機能も有している。電子カルテ機能とは、医師の診断結果の入力機能、来院予約機能、眼科撮影装置の検査技師への撮影指示を出力する機能などを有する。
図19に、画像表示端末150をコンピュータにより構成した一例を模式的に示す。
【0096】
画像表示端末150は、コンピュータ構成とされ、CPU151、RAM152、ROM153、及び入出力インターフェース(I/O)158がバス159を介して各々コマンド及びデータを授受可能に接続されている。また、I/O158には各種の初期データが予め記憶される不揮発性メモリ154、操作部155、ディスプレイ156、及び外部装置またはネットワーク130と相互にデータ通信する通信部157が接続されている。本実施形態では、通信部157は、ネットワーク130を介して画像サーバ140又は画像表示端末150との間で画像データ通信を行う。
【0097】
ディスプレイ156は、画像及び各種情報を表示するデバイスを含んで構成され、操作部155は、制御装置16で用いるデータ及びコマンドを入力するキーボード155K及びマウス155M等の入力装置を含んで構成される(
図17参照)。なお、操作部155及びディスプレイ156は、操作指示の受け付けを実現する表示ボタンや各種情報が表示されるタッチパネル式のディスプレイによるハードウェア等で兼用してもよい。
【0098】
ROM153には、画像表示端末150を眼底画像の表示制御を実行させる画像表示プログラム153Pが格納されている。画像表示プログラム153Pは、眼底中心部位の第1眼底画像領域12G1の撮影画像と、眼底中心部位の周辺の第2眼底画像領域12G2の撮影画像とを合成し、2次元画像12Gを表示する処理機能を有している(詳細は後述)。CPU151は、画像表示プログラム153PをROM153から読み取りRAM152に展開し、画像表示プログラム153Pによる画像表示処理を実行する。CPU151が画像表示処理を実行することで、画像表示端末150は撮影可能領域12Aの全ての2次元画像12Gを表示する装置として動作する。なお、画像表示プログラム153Pは、CD-ROM等の記録媒体により提供するようにしても良い。
【0099】
なお、本実施形態では、眼底画像を表示する画像表示端末150を、第1眼科撮影装置110及び第2眼科撮影装置120と独立構成とした場合を説明するが、画像表示端末150は第1眼科撮影装置110及び第2眼科撮影装置120の少なくとも一方で兼用するように構成してもよい。
【0100】
次に、本実施形態の作用を説明する。
図20に、画像表示端末150で実行される画像表示プログラム153Pの処理の流れを示す。画像表示プログラム153Pは、例えば画像表示端末150に電源投入された際に、CPU151により実行される。
【0101】
図21に、画像表示端末150に電源投入された際にディスプレイ156に表示される表示画面の一例として、電子カルテの画面200を示す。
電子カルテの画面200は、被検眼12の患者に関する情報を表示する表示領域201、眼底中心部位の第1眼底画像領域12G1の撮影画像を表示する表示領域202、及び眼底中心部位の周辺の第2眼底画像領域12G2の撮影画像を表示する表示領域204を備えている。表示領域202には、第1眼底画像領域12G1を撮影する第1眼科撮影装置110の型式名を示す情報を表示する表示領域202Aが隣接しており、表示領域202内に第1眼科撮影装置110による撮影画像取得の指示ボタン203が設けられる。また、表示領域204内には、第2眼底画像領域12G2を撮影する第2眼科撮影装置120の型式名を示す情報を表示する表示領域204Aが隣接しており、表示領域204内に第2眼科撮影装置120による撮影画像取得の指示ボタン205が設けられる。なお、電子カルテの画面200には、OCT機能による眼底撮影の指示ボタン206、画像から人工知能による診断実行を指示する指示ボタン207、及び画面200の各種設定を指示する指示ボタン208が含まれている。
【0102】
まず、
図20に示すステップS100では、患者情報の取得処理が実行され、取得された患者情報がディスプレイ156に表示される。具体的には、CPU151は、操作部155によるユーザからの患者IDの入力を受け付けた際に、画像サーバ140に対して患者IDに関連づけられた患者情報を要求し、その応答情報を画像サーバ140から取得し、その患者情報を表示領域201へ表示する。
図21では患者情報の一例として、被検眼12の患者を示す患者ID、患者名、及び患者が前回来院した日付を示す情報が取得され、表示された場合を示している。
【0103】
次のステップS102では、撮影済みの患者の眼底画像が取得され、次のステップS104で電子カルテ上に表示される。具体的には、CPU151は、操作部155による第1眼科撮影装置110による撮影画像取得の指示ボタン203の押圧入力を受け付けた際に、画像サーバ140に対して患者IDに関連づけられた第1眼科撮影装置110による撮影画像を要求し、その応答である撮影画像を画像サーバ140から取得し、表示領域202へ表示する。
【0104】
図22に、表示領域202に第1眼科撮影装置110による撮影画像203Gが表示された電子カルテの画面210の一例を示す。
【0105】
次に、
図20に示すステップS106では、眼底中心部位の周辺である第2眼底画像領域12G2の撮影画像の撮影指示処理が実行され、撮影が完了するまで、ステップS108で否定判断される。ステップS108で肯定判断されると、ステップS110で、患者IDの被検眼12の中央部位周辺の眼底を撮影した撮影画像が取得される。つまり、CPU151は、操作部155による第2眼科撮影装置120による撮影画像取得の指示ボタン205の押圧入力を受け付けた際に、患者IDの被検眼12の中央部位周辺の眼底を撮影する指示を、第2眼科撮影装置120に対して出力する。第2眼科撮影装置120は、画像表示端末150からの指示を受けて患者IDの被検眼12の中央部位周辺の眼底を撮影し、撮影画像を画像表示端末150へ出力する。なお、被検眼12の中央部位周辺の眼底撮影及び撮影画像の出力は、画像サーバ140を介して処理してもよい。
【0106】
次に、ステップS112では、ステップS102で取得した第1眼科撮影装置110による撮影画像と、ステップS110で取得した第2眼科撮影装置120による撮影画像とを合成する画像処理が実行される。次のステップS114では、画像処理により合成された画像が、撮影可能領域12Aの全ての2次元画像12Gとして、表示領域204へ表示する。
【0107】
第1眼科撮影装置110による撮影画像203Gと、第2眼科撮影装置120による撮影画像205Gとの合成処理は、例えば、OCTユニット20から得られた3Dデータ又はスキャンデータを用いて網膜の立体画像、断面画像、表面画像を生成すると共に、セグメンテーション処理を実行する処理が挙げられる。また、SLOユニット18から得られたデータ各々を用いて眼底画像を生成してもよい。
【0108】
例えば、これらの画像を合成する場合、各画像の血管パターンが重なるように画像を回転又は拡大縮小などの画像処理を実行すればよい。合成された画像は、恰も撮影画角が100度である広角画像撮影用の眼科機器で撮影したような、広角画像を得ることができる。画像を合成する画像処理は、上述の手法に限定されるものではなく、既知の手法で用いてもよいことは言うまでもない。そして、合成された画像は画像サーバ140に記憶保持される。
【0109】
図23に、表示領域204に第1眼科撮影装置110による撮影画像203Gと、第2眼科撮影装置120による撮影画像205Gとを合成した、2次元画像12Gが表示された電子カルテの画面220の一例を示す。
【0110】
以上説明したように、第3実施形態では、眼底中心の画像及び眼底中心部位の周辺の画像各々を合成し、撮影可能領域12Aの全ての2次元画像12Gを得ることで、恰も撮影画角が例えば100度である広角画像撮影用の眼科機器で撮影したような、広角画像を得ることができる。
【0111】
第3実施形態に係る画像システム100は、眼科医が被検眼12の眼底を観察して診断する場合に、好適に機能する。つまり、第3実施形態に係る画像システム100で合成された眼底画像に基づき診断を行い、画像ビューワの電子カルテ機能を用いて診断結果を入力する。また、眼底画像CをAI診断する場合はボタンV14を図示せぬインターフェースにより押下/クリックし、AI診断モードに移行する。また、OCT画像が診断に必要な場合は、ボタンV13を押下/クリックしOCTモードに移行する。
眼科医は、撮影画角30度の高解像度の中心部の眼底画像を用いて視神経乳頭及び黄斑など眼底中心部の診断を的確に行えるとともに、撮影画角100度に相当する合成された眼底画像Cを用いて網膜周辺部の病変があるか否かを的確に行うことができる。
一方、眼科医は、眼底及び網膜の高解像度の画像を用いて診断を行うための眼科機器を保有している場合が多い。この高解像度の眼科機器は撮影画角が10~30度の範囲であり、その範囲を超えた眼底及び網膜の周辺部を撮影することが困難である。よって眼科医は、眼底及び網膜の周辺部用に広角及び超広角の眼底機器を別途購入する必要がある。これに対して第3実施形態に係る画像システム100を用いることにより、新規に広角及び超広角の眼底機器を購入することなく、保有している高解像度の眼科機器を有効活用し、眼底及び網膜の中心部を高解像度の画像を用いて診断することができる。また、合成された100度を超える広画角の眼底画像により眼底及び網膜の周辺部を診断することができる。
【0112】
なお、上記では、眼科機器1(第1眼科撮影装置110)の撮影画角αが30度で周辺撮影用眼科機器2(第2眼科撮影装置120)の撮影画角βが30~100度として説明したが、これにかぎらず、眼科機器1の撮影画角に適した周辺撮影用眼科機器2の撮影画角を設定することができる。例えば、
眼科機器の撮影画角45度 周辺撮影用眼科機器2の撮影画角45-100度
眼科機器の撮影画角55度 周辺撮影用眼科機器2の撮影画角55-120度
のような組み合わせで、周辺撮影用眼科機器2の撮影画角を設計することができる。周辺撮影用眼科機器2の最大撮影画角は120度としたが、光学系を調整し120度以上とすることも可能である。眼科医のニーズを満たすように、さまざまな撮影画角に設計変更できる。
また、画像処理プロセスを考慮し、
眼科機器の撮影画角30度、周辺撮影用眼科機器2の撮影画角25-80度
眼科機器の撮影画角45度、周辺撮影用眼科機器2の撮影画角40-100度
眼科機器の撮影画角55度、周辺撮影用眼科機器2の撮影画角45-120度
のような組み合わせで、眼科機器1による円形撮影領域の外周部と周辺撮影用眼科機器2による環状撮影領域の内周部とが重複するように設定するようにしてもよい。
【0113】
なお、前記各実施形態では、第1光学スキャナ22、第2光学スキャナ24及び第3光学スキャナ29の一例としてポリゴンミラー又はガルバノミラーを挙げたが、これに限定されるものではない。例えば、走査光をY方向に走査可能な他の光学素子を用いてもよく、一例としては、MEMS(Micro-electromechanical system)ミラー、回転ミラー、プリズム、又は共振ミラーが挙げられる。
【0114】
また、前記各実施形態で説明した走査装置において、X方向とY方向とを入れ替えても同様の走査が行えることは言うまでもない。
【0115】
なお、周辺領域の超広角での撮影の可能とする光学系においては、光軸を含む中心領域での遮光面を設けることによって、迷光を防止することができる。SLOユニット18やOCTユニット20による走査光の照射領域を、撮影視野の輪帯領域に制限することによって、迷光を低減することが可能となる。
【0116】
さらに、開示の技術を実施の形態を用いて説明したが、開示の技術の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。開示の技術の要旨を逸脱しない範囲で上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も開示の技術の技術的範囲に含まれる。また、本明細書に記載された全ての文献、特許出願及び技術規格は、個々の文献、特許出願及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
【符号の説明】
【0117】
10 眼科撮影装置
12 被検眼
12A 撮影可能領域
12A1 第1撮影可能領域
12A2 第2撮影可能領域
16 制御装置
19 走査装置
28 共通光学系
28A 光学システム
A 外部照射角