IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電信電話株式会社の特許一覧

特許7571875行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム
<>
  • 特許-行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム 図1
  • 特許-行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム 図2
  • 特許-行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム 図3
  • 特許-行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム 図4
  • 特許-行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/34 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
G01C21/34
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023522027
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018675
(87)【国際公開番号】W WO2022244082
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004381
【氏名又は名称】弁理士法人ITOH
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 真智子
(72)【発明者】
【氏名】張 暁曦
(72)【発明者】
【氏名】久田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】田中 百合子
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-015595(JP,A)
【文献】特許第6015467(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のユーザによる経路の探索要求に応じ、複数の第1の経路を探索する経路探索部と、
いずれかの前記第1の経路と重なる区間を含む第2の経路が探索された、前記第1のユーザとの知人である複数の第2のユーザを、前記第1のユーザの関係を示唆する情報に基づいて特定する特定部と、
前記第1のユーザによるインターネットでの検索履歴と、それぞれの前記第2のユーザによるインターネットでの検索履歴とに基づいて、前記第1のユーザと複数の前記第2のユーザとのそれぞれの関係の強さの度合いを算出する第1の算出部と、
前記第2のユーザごとに、当該第2のユーザに係る前記第2の経路で当該第2のユーザが移動して、当該第2の経路と重なる区間を含む前記第1の経路で前記第1のユーザが移動した場合のCO排出量と、当該第2のユーザと前記第1のユーザとが、当該第2の経路又は当該第1の経路とは別の経路で移動した場合のCO排出量との差分を算出する第2の算出部と、
前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を前記関係の強さの度合いと前記差分とに基づいて順位付けして、それぞれの当該第1の経路に係る前記第2のユーザを示す情報とともに出力する出力部と、
を有することを特徴とする行動変容誘発装置。
【請求項2】
第1のユーザによる経路の探索要求に応じ、複数の第1の経路を探索する経路探索部と、
いずれかの前記第1の経路と重なる区間を含む第2の経路が探索された、前記第1のユーザとの知人である複数の第2のユーザを、前記第1のユーザの関係を示唆する情報に基づいて特定する特定部と、
前記第1のユーザと複数の前記第2のユーザとのそれぞれの関係の強さの度合いを算出する第1の算出部と、
前記第2のユーザごとに、当該第2のユーザに係る前記第2の経路で当該第2のユーザが移動して、当該第2の経路と重なる区間を含む前記第1の経路で前記第1のユーザが移動した場合のCO排出量と、当該第2のユーザと前記第1のユーザとが、当該第2の経路又は当該第1の経路とは別の経路で移動した場合のCO排出量との差分を算出する第2の算出部と、
前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を前記関係の強さの度合いと前記差分とに基づいて順位付けして、それぞれの当該第1の経路に係る前記第2のユーザを示す情報とともに出力する出力部と、
を有し、
前記出力部は、前記関係の強さの度合いと前記差分とのそれぞれに異なる重み付けをして合算した結果に基づいて、前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を順位付けする、
ことを特徴とする行動変容誘発装置。
【請求項3】
第1のユーザによる経路の探索要求に応じ、複数の第1の経路を探索する経路探索手順と、
いずれかの前記第1の経路と重なる区間を含む第2の経路が探索された、前記第1のユーザとの知人である複数の第2のユーザを、前記第1のユーザの関係を示唆する情報に基づいて特定する特定手順と、
前記第1のユーザによるインターネットでの検索履歴と、それぞれの前記第2のユーザによるインターネットでの検索履歴とに基づいて、前記第1のユーザと複数の前記第2のユーザとのそれぞれの関係の強さの度合いを算出する第1の算出手順と、
前記第2のユーザごとに、当該第2のユーザに係る前記第2の経路で当該第2のユーザが移動して、当該第2の経路と重なる区間を含む前記第1の経路で前記第1のユーザが移動した場合のCO排出量と、当該第2のユーザと前記第1のユーザとが、当該第2の経路又は当該第1の経路とは別の経路で移動した場合のCO排出量との差分を算出する第2の算出手順と、
前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を前記関係の強さの度合いと前記差分とに基づいて順位付けして、それぞれの当該第1の経路に係る前記第2のユーザを示す情報とともに出力する出力手順と、
をコンピュータが実行することを特徴とする行動変容誘発方法。
【請求項4】
第1のユーザによる経路の探索要求に応じ、複数の第1の経路を探索する経路探索手順と、
いずれかの前記第1の経路と重なる区間を含む第2の経路が探索された、前記第1のユーザとの知人である複数の第2のユーザを、前記第1のユーザの関係を示唆する情報に基づいて特定する特定手順と、
前記第1のユーザと複数の前記第2のユーザとのそれぞれの関係の強さの度合いを算出する第1の算出手順と、
前記第2のユーザごとに、当該第2のユーザに係る前記第2の経路で当該第2のユーザが移動して、当該第2の経路と重なる区間を含む前記第1の経路で前記第1のユーザが移動した場合のCO排出量と、当該第2のユーザと前記第1のユーザとが、当該第2の経路又は当該第1の経路とは別の経路で移動した場合のCO排出量との差分を算出する第2の算出手順と、
前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を前記関係の強さの度合いと前記差分とに基づいて順位付けして、それぞれの当該第1の経路に係る前記第2のユーザを示す情報とともに出力する出力手順と、
をコンピュータが実行し、
前記出力手順は、前記関係の強さの度合いと前記差分とのそれぞれに異なる重み付けをして合算した結果に基づいて、前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を順位付けする、
ことを特徴とする行動変容誘発方法。
【請求項5】
請求項3又は4記載の行動変容誘発方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、行動変容誘発装置、行動変容誘発方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化問題の深刻化により、COの削減が求められている。パリ協定において、日本は、2030年に2013年比26%のCO削減目標を掲げている。CO排出の30%程度を占めている家計部門は、パリ協定において特に大幅な削減が求められているが、十分に削減されていないのが現状である。家計の主なCO排出要因は移動(交通)や食事などであり、これらの側面でのライフスタイルの変革が求められている。
【0003】
交通分野においては、MaaS(Mobility as a service)の普及により、公共交通機関の利便性が向上し、自動車移動から公共交通機関の利用へのシフトを促すことでCO削減につながることが期待されている。
【0004】
MaaSとは、電車やバスなどの公共交通機関を、乗り継ぎのストレスを感じずに1つの移動パッケージのように利用できるサービスである。経路探索サービスやタクシーの乗り放題等がMaaSの主なサービスとして挙げられる。
【0005】
経路探索サービスにおいては、各経路の環境負荷が表示されることもあるが、一般的には所要時間が最短な経路から順に表示される。また、MaaSのメリットとして移動時間の短縮が重視される傾向があることから、環境負荷低減を促す効果は限られると考えられる(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】"MaaS導入なら年間通勤時間が「2.7日分」も減る!?"、自動運転ラボ、[online]、<URL:https://jidounten-lab.com/u_maas-time-2-7>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
環境負荷の低い経路選択を促すためには、楽しさのようなユーザにとってのメリットを付加することが課題である。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、低環境負荷であると共にユーザにとってメリットの有る行動変容を促すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで上記課題を解決するため、行動変容誘発装置は、第1のユーザによる経路の探索要求に応じ、複数の第1の経路を探索する経路探索部と、いずれかの前記第1の経路と重なる区間を含む第2の経路が探索された、前記第1のユーザとの知人である複数の第2のユーザを、前記第1のユーザの関係を示唆する情報に基づいて特定する特定部と、前記第1のユーザによるインターネットでの検索履歴と、それぞれの前記第2のユーザによるインターネットでの検索履歴とに基づいて、前記第1のユーザと複数の前記第2のユーザとのそれぞれの関係の強さの度合いを算出する第1の算出部と、前記第2のユーザごとに、当該第2のユーザに係る前記第2の経路で当該第2のユーザが移動して、当該第2の経路と重なる区間を含む前記第1の経路で前記第1のユーザが移動した場合のCO排出量と、当該第2のユーザと前記第1のユーザとが、当該第2の経路又は当該第1の経路とは別の経路で移動した場合のCO排出量との差分を算出する第2の算出部と、前記第2の経路と重なる区間を含む複数の前記第1の経路を前記関係の強さの度合いと前記差分とに基づいて順位付けして、それぞれの当該第1の経路に係る前記第2のユーザを示す情報とともに出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
低環境負荷であると共にユーザにとってメリットの有る行動変容を促すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態における行動変容誘発装置10のハードウェア構成例を示す図である。
図2】本発明の実施の形態における行動変容誘発装置10の機能構成例を示す図である。
図3】行動変容誘発装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
図4】関係図の一例を示す図である。
図5】各グループの関連度の算出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態では、行動変容の理論である記述的規範に基づき、ユーザにとって楽しく環境負荷低減につながる移動経路を提示する行動変容誘発装置10が開示される。
【0013】
記述的規範とは、他者の行動に影響されて行動変容を起こすという理論である。例えば、信号無視をしている人を見ると、それが正しいことだと知覚し、自分も信号無視をするというものである(「北折ら、"記述的規範が歩行者の信号無視行動におよぼす影響"、社会心理学研究、vol. 16, pp.73-82、2000」)。
【0014】
記述的規範を交通行動に応用すると、車で目的地まで移動しようとしていた人が、友人が電車を利用することを知れば、自分も一緒に電車を利用することが期待できる。本実施の形態では。友人と一緒に移動することは楽しさにつながると捉え、楽しく環境負荷の低減を促すことをコンセプトとする。
【0015】
そこで、本実施の形態の行動変容誘発装置10は、出発地から目的地までの候補となる経路について、ユーザにとっての楽しさとCO削減率との点数をつけ、順位付けして推奨する経路を提示する。友人と一緒に移動することを推奨することで、ユーザにとっての楽しさを実現する。
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態における行動変容誘発装置10のハードウェア構成例を示す図である。図1の行動変容誘発装置10は、それぞれバスBで相互に接続されているドライブ装置100、補助記憶装置102、メモリ装置103、CPU104、及びインタフェース装置105等を有する。
【0017】
行動変容誘発装置10での処理を実現するプログラムは、CD-ROM等の記録媒体101によって提供される。プログラムを記憶した記録媒体101がドライブ装置100にセットされると、プログラムが記録媒体101からドライブ装置100を介して補助記憶装置102にインストールされる。但し、プログラムのインストールは必ずしも記録媒体101より行う必要はなく、ネットワークを介して他のコンピュータよりダウンロードするようにしてもよい。補助記憶装置102は、インストールされたプログラムを格納すると共に、必要なファイルやデータ等を格納する。
【0018】
メモリ装置103は、プログラムの起動指示があった場合に、補助記憶装置102からプログラムを読み出して格納する。CPU104は、メモリ装置103に格納されたプログラムに従って行動変容誘発装置10に係る機能を実行する。インタフェース装置105は、ネットワークに接続するためのインタフェースとして用いられる。
【0019】
図2は、本発明の実施の形態における行動変容誘発装置10の機能構成例を示す図である。図2において、行動変容誘発装置10は、経路探索部11、関係NW生成部12、差分算出部13、分析部14及び出力部15を有する。これら各部は、行動変容誘発装置10にインストールされた1以上のプログラムが、CPU104に実行させる処理により実現される。行動変容誘発装置10は、また、経路探索情報DB16、SNS情報DB17及び検索履歴DB18等のデータベース(記憶部)を利用する。これら各データベースは、例えば、補助記憶装置102、又は行動変容誘発装置10にネットワークを介して接続可能な記憶装置等を用いて実現可能である。
【0020】
以下、行動変容誘発装置10が実行する処理手順について説明する。図3は、行動変容誘発装置10が実行する処理手順の一例を説明するためのフローチャートである。
【0021】
ステップS101において、経路探索部11は、経路の探索要求をユーザAの端末から受信する。当該探索要求には、出発地(例えば、自宅)、目的地及び日付(以下、「指定日」等が指定されている。なお、ここでは、説明の便宜上、指定日において、或る場所で何らかのイベント(以下、「対象イベント」という。)の開催が予定されている場合を想定する。対象イベントは、不特定の者が参加するイベントであってもよいし、ユーザAの友人間におけるプライベートなイベントであってもよい。ユーザAは、対象イベントへ行くための経路の探索を要求したとする。
【0022】
続いて、経路探索部11は、当該探索要求に応じ、当該探索要求に指定されている指定日における、出発地から目的地までの複数の経路を探索する。経路探索において、移動手段は、公共交通機関であってもよいし、車でもよいし、いずれかの区間において徒歩等が含まれてもよい。ここでは、複数種類の移動手段での経路が探索されるとする。経路探索部11は、経路の探索結果(指定日と探索された複数の経路とを含む情報)をユーザAのユーザIDに関連付けて、経路探索情報DB16に記録する。すなわち、経路探索情報DB16には、ユーザAや、ユーザA以外の他のユーザについて過去の経路探索によって得られた経路の探索結果及びユーザIDの履歴が記録される。
【0023】
続いて、関係NW生成部12は、SNS情報DB17に記憶されているSNS(Social Networking Service)情報に基づいて、ユーザAの複数の知人を特定する(S103)。SNS情報とは、SNSから取得かのうな情報をいう。SNS情報は、ユーザAの知人(例えばあ、友人)を示唆する情報を含むと考えられる。例えば、SNSにおいてユーザAの友達として設定されている者や、ユーザAの投稿に対するフォロワー等がユーザAの知人として特定されてもよい。なお、SNS情報は、特定のSNSに関する情報に限られない。複数種類のSNS情報に基づいてユーザAの知人が特定されてもよい。
【0024】
続いて、関係NW生成部12は、ステップS103において特定された各知人による、指定日に対する経路の探索結果を経路探索情報DB16から取得する(S104)。すなわち、指定日において、いずれかの場所に出かけることを予定している知人は、行動変容誘発装置10のユーザとして、指定日について、当該場所までの経路の探索を行っていることが期待される。ステップS103では、このような知人ごとに、指定日に対する経路の探索結果である複数の経路が取得される。
【0025】
続いて、関係NW生成部12は、ユーザAの探索結果に含まれるいずれかの経路と重なる経路が取得された知人(以下、「同行候補者」という。)を、ステップS104において経路が取得された知人の中かを特定する(S105)。経路が重なるとは、一方の経路と他方の経路との間で、同じ移動手段で移動する同一の区間が存在することをいう。すなわち、経路が重なるとは、一方の経路が、他方の経路と重なる区間を含む(すくなくとも一部が重なる)ことをいう。例えば、一方の経路の全区間が車であり、他方の経路の全区間が車である場合、これらの経路の間に重複部分が有れば、これらの経路は重なりを有することになる。また、例えば、双方の経路において、A駅からB駅まで同じ鉄道路線での移動区間を含めば、当該双方の経路は重なりを有することになる。
【0026】
なお、或る経路と他の経路とで重なる区間において、それぞれの経路の探索結果における通過のタイミング(例えば、A駅からB駅までの区間であれば、当該区間の出発時刻及び到着時刻)の一致までは、経路の重なりの条件とされなくてもよい。斯かるタイミングは、ユーザAと同行候補者との間で調整されればよいからである。また、ユーザA及び各知人のそれぞれについて複数の経路が探索されていることが想定されているが、ユーザAの複数の経路の少なくともいずれか一つの経路と少なくとも一部が重なる1以上の経路が探索されている知人が同行候補者とされる。
【0027】
また、同行候補者は、必ずしも目的地が同じ知人でなくてもよい。但し、知人Aの知人の中に、対象イベントへ参加する者が居て、公共交通機関利用した場合に、或る乗り換え地点から対象イベントの開催場所への区間が一つしか無い場合、当該者は、同行候補者として特定される可能性が高い。
【0028】
続いて、関係NW生成部12は、各同行候補者間について、SNS情報DB17に記憶されているSNS情報に基づいて知人関係の有無を判定し、ユーザA及び各同行候補者の知人関係を示す関係図を生成する(S106)。
【0029】
図4は、関係図の一例を示す図である。図4に示すように、関係図は、ユーザA又は同行候補者をノードとし、知人関係を有するノード間が枝で接続されたネットワーク(グラフ)である。関係図は、ユーザAのノードを中心に放射状に同行候補者のノードが配置される構造を有する。知人関係は、ユーザAと各同行候補者の1対1の関係に限らず、ユーザAを含む複数の同行候補者が互いに知人の場合は、3人以上の閉ループ型のグループとなる。
【0030】
図4の例において、「A」のラベルが付与されたノードがユーザAのノードに対応する。図4の例は、同行候補者B~DがステップS105において抽出され、同行候補者Bと同行候補者Cとが知人であること示す。
【0031】
続いて、関係NW生成部12は、SNS情報DB17に記憶されているSNS情報や、検索履歴DB18に記憶されている検索履歴(インターネットでの検索履歴)等に基づいて、関係図において、全員が相互に知人であるグループごとに、当該グループの関係(知人関係)の強さの度合いを示す点数(以下、「関連度」という。)を算出する(S107)。関連度は、値が大きければ大きいほど、関係が強いことを表すとする。
【0032】
図4の例において、全員が相互に知人であるグループとは、A、B及びCの3人のグループと、A及びDの2人のグループと、A及びEの2人のグループとの3つのグループである。但し、同行候補者ごとに、ユーザAと当該同行候補者とのペアがグループして特定されてもよい。
【0033】
例えば、これら各グループの関連度は、グループ内のメンバ間における共通のコミュニティの有無や趣味に基づいて算出される。具体的には、関係NW生成部12は、SNS情報に基づいて、グループ内のメンバが属しているコミュニティを特定し、共通のコミュニティ1つにつき3点を当該グループの関連度に加算する。また、関係NW生成部12は、グループ内の各メンバの検索履歴からグループ内の各メンバの趣味を推定し(例えば、検索キーワード等から推定し)、共通の趣味1つにつき2点を当該グループの関連度に加算する。メンバが3人以上のN人であるグループについては、N人のうちi人に上記のような共通点が有る場合に、<加算ポイント>×i/N点が関連度に加算される。ここで、<加算ポイント>とは、共通のコミュニティについては3点であり、共通の趣味については2点である。
【0034】
なお、上記は、関連度の計算方法の一例を示したに過ぎない。また、コミュニティの共通性や趣味の共通性以外の共通性に基づいて関連度が算出されてもよい。例えば、単に、検索キーワードの共通性に基づいて関連度が算出されてもよい。
【0035】
図5は、各グループの関連度の算出結果の一例を示す図である。図5では、A、B及びCのグループの関連度が2であり、A及びDのグループの関連度が2であり、A及びEのグループの関連度が4である例が示されている。
【0036】
続いて、差分算出部13は、グループごとに、当該グループのメンバが一部の区間が重なる経路で一緒に移動する場合と、別の経路で各メンバが(ここでは、最短時間の経路(以下、「最短経路」という。))が個別に移動する場合とのそれぞれのCO排出量の差分を算出する(S108)。一緒に移動する場合とは、グループの各メンバの経路の間で重なる区間において一緒に移動すること(例えば、当該区間の移動手段が自動者であれば相乗りすること、当該区間の移動手段が公共交通機関であれば同じ電車やバス等に乗ること)をいう。
【0037】
図5における、A、B及びCのグループについて当該差分を算出する例について説明する。ここでは、Aについて探索された経路のうち、電車又はバスを利用する経路aが、Bについて探索された経路bと、Cについて探索された経路cと重なる区間を含む経路であるとする。また、経路b及び経路cは、いずれもバスのみを利用する経路であるとする。したがって、バスの区間において、ユーザAと同行候補者B及び同行候補者Cとは一緒に移動することができることになる。すなわち、本例において、一緒に移動する場合のCO排出量は、それぞれが電車又はバスを利用する経路について算出される。
【0038】
一方、A、B及びCのそれぞれにとっての最短経路は、車で移動する場合の経路であるとする。したがって、各メンバが最短経路で移動する場合のCO排出量は、それぞれが個別に車で移動する経路について算出される。
【0039】
各経路の各人のCO排出量は、移動手段(乗り物)ごとの乗車時間と各移動手段のCO排出原単位から計算する。
【0040】
以上の場合において、当該グループのCO排出量の差分の算出例は、以下の通りである。
【0041】
【数1】
第1項は、各メンバが最短経路で移動する場合のCO排出量を計算するための項である。第2項は、一緒に移動する場合のCO排出量を計算するための項である。第1項及び第2項のそれぞれの左側の行列は、ユーザA、同行候補者B、同行候補者Cそれぞれが電車、車、バスに乗車する時間(分)を示し、右側の行列は各移動手段1分あたりのCO排出原単位(g-CO/分)である。当該CO排出原単位は、例えば、経路探索情報DB16等の所定の記憶部に記憶されていればよい。
【0042】
上記の例では、CO排出量の差分(すなわち、一緒に移動した場合にCO削減量)は、3124.4(g-CO)である。
【0043】
続いて、差分算出部13は、グループごとに、各メンバが一緒に移動した場合のCO削減率を算出し、当該削減率を任意の階級により点数に変換する(S109)。斯かるCO削減率の計算式は、以下の通りである。
【0044】
【数2】
ここで、分子は、ステップS108において算出した差分である。分母は、数1における第1項である。したがって、ABCのグループのCO削減率は65%となる。0%~100%の間を10%ごとに1~10の階級で分割すると、ABCのグループのCO削減率の点数は7点となる。
【0045】
同様に、AD及びAEのそれぞれのグループについてもCO削減率の点数が算出される。ここでは、ADのグループの点数は5点であり、AEのグループの点数は6点であったとする。
【0046】
続いて、分析部14は、以下の式に基づいて、各グループの点数(以下、「推奨度」という。)を算出する(S109)。
【0047】
【数3】
すなわち、グループのCO削減率の点数と、当該グループの関連度とをそれぞれが重み付け係数によって重み付けして合算した結果が、当該グループの推奨度として算出される。
【0048】
例えば、CO削減率に対する重み付け係数aの値が1であり、関連度に対する重み付け係数の値が2だとすると、ABCのグループの推奨度は、以下の通り11となる。
1×7+2×2=11
同様の計算により、ADのグループの点数は9となり、AEのグループの点数は14となる。
【0049】
続いて、出力部15は、ユーザAについて探索された経路のうち、グループごとに特定された、当該グループの他の同行候補者の経路と重なりを有する経路(以下、「重なる経路」という。)を推奨度に基づいて順位付けして、順位付けの結果に基づく順序で、各重なる経路を当該重なる経路に係る同行候補者を示す情報とともに出力(ユーザAの端末へ送信)する(S111)。例えば、推奨度の降順で重なる経路等が表示されるように順位付けの結果が出力されてもよい。本例では、AE、ABC、ADの順番で、それぞれのグループにおいて重なる経路が推奨経路として出力されるとともに、各グループの同行候補者が出力される。なお、或るグループにおいて重なる経路と別のグループにおいて重なる経路とは同じ場合もあるかもしれないし、異なるかもしれない。このような情報を出力することで、例えば、最短経路での車で移動を検討していたユーザAが知人とともに移動可能な経路をユーザAが選択するといった行動変容を誘発できる可能性を高めることができる。
【0050】
なお、ABCのグループとADのグループとでは、CO削減効果はABCの方が大きいが、関連度の影響により、ADの方が推奨度が高く(推奨順位が高く)なる。このように、本実施の形態では、必ずしもCO削減が最大になるとは限らないが、知人と一緒というメリットを付加することで環境負荷低減を促している。
【0051】
なお、上記の例では、最短経路等、知人の経路と重ならない経路が出力対象から除かれてしまう。そこで、ユーザAの利便性を考慮して、出力部15は、これらの経路を出力するようにしてもよい。この場合、これらの経路は、知人の経路と重なる区間を有する経路よりも低い順序で出力されればよい。
【0052】
上述したように、本実施の形態によれば、低環境負荷であると共にユーザにとって(知人と移動するという楽しさという)メリットの有る行動変容を促すことができる。
【0053】
なお、本実施の形態において、関係NW生成部12は、特定部及び第1の算出部の一例である。差分算出部13は、第2の算出部の一例である。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 行動変容誘発装置
11 経路探索部
12 関係NW生成部
13 差分算出部
14 分析部
15 出力部
16 経路探索情報DB
17 SNS情報DB
18 検索履歴DB
100 ドライブ装置
101 記録媒体
102 補助記憶装置
103 メモリ装置
104 CPU
105 インタフェース装置
B バス
図1
図2
図3
図4
図5