(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】無線基地局装置、無線通信システム、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 8/26 20090101AFI20241016BHJP
H04W 84/12 20090101ALI20241016BHJP
H04L 61/5084 20220101ALI20241016BHJP
【FI】
H04W8/26 110
H04W84/12
H04L61/5084
(21)【出願番号】P 2023525314
(86)(22)【出願日】2021-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2021021383
(87)【国際公開番号】W WO2022254695
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-09-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 章
(72)【発明者】
【氏名】山下 史洋
【審査官】桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-077995(JP,A)
【文献】国際公開第2014/034707(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24-7/26
H04W 4/00-99/00
H04L 61/5084
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線基地局装置であって、
無線端末からの電波の受信に応答して、
前記無線端末が前記無線基地局装置に接続される毎に蓄積された前記無線端末の過去の接続実績情報
の蓄積数に基づき前記無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定することと、
前記無線通信サービスの積極利用性の判定では、前記蓄積数が閾値未満である端末は前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であると判定し、前記蓄積数が前記閾値以上である端末については実際の前記無線通信サービスの利用結果との組み合わせによって前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であるかどうかを判定することと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合、前記無線端末によ
り繰り返し所定回数の無線リンク接続処理のリトライが行われたことを条件に前記無線端末に通信リソースを割り当てることと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合、
前記無線端末により前記無線リンク接続処理のリトライが前記所定回数繰り返されたことを条件とすることなく前記無線端末に前記通信リソースを割り当てることと、を実行するように構成された
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線基地局装置において、
前記無線端末に前記通信リソースを割り当てた後、前記無線端末による前記無線通信サービスの利用実績が基準実績未満である場合、前記無線端末に前記通信リソースを返却させること、をさらに実行するように構成された
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の無線基地局装置において、
前記無線端末に前記通信リソースを割り当てた後、所定時間内に前記無線通信サービスが利用されない場合、前記無線端末に前記通信リソースを返却させること、をさらに実行するように構成された
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の無線基地局装置において、
前記電波のレベルが所定の閾値以上であることを条件に前記無線端末と前記無線基地局装置との接続処理を行うこと、をさらに実行するように構成された
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1項に記載の無線基地局装置において、
前記無線端末が前記無線基地局装置に接続したときの処理ログから前記接続実績情報を生成することと、
生成した前記接続実績情報を前記無線基地局装置それ自体に蓄積するか、或いは、前記無線基地局装置を含む複数の無線基地局装置を管理する制御装置に蓄積することと、をさらに実行するように構成された
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の無線基地局装置において、
前記無線通信サービスは公衆無線LANサービスであり、
前記通信リソースはIPアドレスである
ことを特徴とする無線基地局装置。
【請求項7】
無線基地局装置と前記無線基地局装置を管理する制御装置とが通信ネットワークで接続されてなる無線通信システムであって、
無線端末からの電波を前記無線基地局装置が受信したことに応答して、
前記無線端末が前記無線基地局装置に接続される毎に前記無線基地局装置或いは前記制御装置に蓄積された前記無線端末の過去の接続実績情報
の蓄積数に基づき前記無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定することと、
前記無線通信サービスの積極利用性の判定では、前記蓄積数が閾値未満である端末は前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であると判定し、前記蓄積数が前記閾値以上である端末については実際の前記無線通信サービスの利用結果との組み合わせによって前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であるかどうかを判定することと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合、前記無線端末によ
り繰り返し所定回数の無線リンク接続処理のリトライが行われたことを条件に前記無線基地局装置から前記無線端末に通信リソースを割り当てることと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合、
前記無線端末により前記無線リンク接続処理のリトライが前記所定回数繰り返されたことを条件とすることなく前記無線基地局装置から前記無線端末に前記通信リソースを割り当てることと、
を実行するように構成された
ことを特徴とする無線通信システム。
【請求項8】
無線基地局装置による無線通信方法であって、
無線端末からの電波の受信に応答して、
前記無線端末が前記無線基地局装置に接続される毎に蓄積された前記無線端末の過去の接続実績情報
の蓄積数に基づき前記無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定するステップ
であって、前記蓄積数が閾値未満である端末は前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であると判定し、前記蓄積数が前記閾値以上である端末については実際の前記無線通信サービスの利用結果との組み合わせによって前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末であるかどうかを判定するステップと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合、前記無線端末によ
り繰り返し所定回数の無線リンク接続処理のリトライが行われたことを条件に前記無線端末に通信リソースを割り当てるステップと、
前記無線端末が前記無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合、
前記無線端末により前記無線リンク接続処理のリトライが前記所定回数繰り返されたことを条件とすることなく前記無線端末に前記通信リソースを割り当てるステップと、を含む
ことを特徴とする無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線基地局装置、無線基地局装置と制御装置とが通信ネットワークで接続されてなる無線通信システム、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムは、1台の制御装置(統制装置)と複数台の無線基地局装置(無線送受信装置)、及び通信ネットワークから構成されている。制御装置は、通信ネットワークを介して複数台の無線基地局装置に接続されている。無線基地局装置には複数の無線端末が無線接続される。
【0003】
1つの無線基地局装置に複数の無線端末が接続する方式は、一般には多元接続方式(Multiple Access)やメディアアクセス制御方式(Medium Access Control)等と呼ばれ、以下の方式が提案されている。
・デマンドアサイン方式(端末のリソース要求に基づきリソースを割り当てる方式)
・純ALOHA方式
・スロットALOHA方式
・CSMA/CA(Carrier Sense Multiple Access with Collision Avoidance)
・ポーリング方式
【0004】
デマンドアサイン方式とは、無線端末が通信をしたい時に主信号用のリソース割当要求を発し、それを受けたリソース管理装置が無線端末にリソースを割り当てて通信を行う方式である。リソース管理装置は制御局や基地局と称される。
【0005】
純ALOHA方式とは、無線通信や衛星通信による通信プロトコルであり、無線端末が通信をしたい時には任意のタイミングで送信を行う方式である。それぞれの無線端末は、自分以外の無線端末がデータ送信をしている/いないに関わらず、自身が送信したい任意のタイミングでデータを送信する。このため、送信された信号の一部が他の無線端末からの送信データと重なって正しく通信が行えない事象、いわゆる衝突の発生は避けられない。無線端末の数が多くなるほど衝突の確率が上がっていくため、結果的に全体としてデータが正しく送信される機会は減少していくこととなる。一般には、純ALOHA方式のスループットは最大でも18%程度となることが知られている。従って、純ALOHA方式は、1台の無線端末が送信する機会が少ないか、また有ったとしても小容量のデータを送信するような用途に適しているとされる。
【0006】
スロットALOHA方式とは、上記の純ALOHA方式を改良したものである。純ALOHA方式が任意のタイミングでの送信を許可していたのに対し、スロットALOHA方式は一定間隔でタイムスロットを設けて送信タイミングを制御する。純ALOHA方式と比較してスロットALOHA方式のスループットは2倍の36%となることが知られている。
【0007】
CSMA/CA方式は、無線LANのレイヤ2の多元接続方式である。この方式では、無線端末はデータを送信する前に一度受信を試み、他の無線端末がデータを送信していないかを確認する。そして、他の無線端末がデータ送信していなければ、自身のデータを送信する。一方、他の無線端末がデータ送信を行っていれば、そのデータ送信が終了するまで送信を待つ。そして、送信終了を確認したら、さらにランダム時間待った後にデータ送信を行う。
【0008】
ポーリング方式とは、無線基地局装置がいわゆる“御用聞き”になり、無線端末を1台ずつ選んで送信したいデータの有無を確かめていく方式である。この方式は無線端末に対する端末正常性確認(ヘルスチェック)や一定期間ごとのデータ収集等の用途に適している。しかし、データ送信の必要の無い無線端末に対するポーリングの動作は無駄な作業である。
【0009】
以上の方式を「データ送信したい端末が何らかのアクションを起こすか否か」の観点で分類すると以下のようになる。
(1)データ通信したい端末が何らかのアクションを起こす方式
・デマンドアサイン方式
・純ALOHA方式
・スロットALOHA方式
・CSMA/CA
(2)端末がアクションを起こさない方式
・ポーリング方式
【0010】
非常に多くの無線端末を1台の無線基地局装置に収容する場合、限られた通信リソースはなるべく浪費せず有効利用したい。通信リソースの有効利用の観点からすると、データ通信したい無線端末が何らかのアクションを起こす方式では、送信したいデータは無線端末に確実に存在している。しかし、純ALOHA方式とスロットALOHA方式は、最大スループットがそれぞれ18%、36%であることから、理論的には半分以上のリソースを無駄にしていることになる。ゆえに、これらの方式は通信リソースの有効利用の観点では適切ではない。
【0011】
デマンドアサイン方式とポーリング方式は、無線端末を収容する無線基地局装置が一極集中でリソース管理を行う方式である。しかし、デマンドアサイン方式は、データ送信に先んじてリソース割当要求のシーケンスが走るため、データ送信のタイミングが少し遅れることによりその時間だけリソースを無駄にしてしまう。ポーリング方式では、無線端末がデータ送信する/しないに関わらず無線基地局装置が“御用聞き”を行い送信データがあった場合に備えてリソースを確保している。送信データがない無線端末へのポーリング処理はリソースを無駄にしてしまうことになる。
【0012】
上述の無線通信システムには、公衆無線LANシステムや企業内無線LANシステム等の無線LANシステムや、4G及び5G携帯電話サービスにおいて携帯電話基地局と端末とを接続するシステムが含まれる。さらには、高高度基盤ステーション(HAPS:High Altitude Platform Station)や低軌道衛星(LEO:Low Earth Orbit)に基地局機能を搭載し、多数のセンサ端末から監視情報を収集するような衛星IoTシステムも無線通信システムに含まれる。
【0013】
以下、無線通信システムの1つの形態である公衆無線LANシステムに関して説明する。公衆無線LANシステムは、1台の無線LANコントローラ、複数台の無線LANアクセスポイント、及びIPネットワークから構成されている。無線LANコントローラは前述の無線通信システムにおける制御装置に該当し、無線LANアクセスポイントは無線通信システムにおける無線基地局装置に該当する。無線LANコントローラは、IPネットワークを介して複数台の無線LANアクセスポイントと接続している。無線LANコントローラは、複数台の無線LANアクセスポイントの監視制御を行う機能を有する。
【0014】
公衆無線LANシステムには、その構成及び機能の違いによって複数のタイプが存在する。第1のタイプは、鉄道の駅構内やプラットフォームで公衆無線LANサービスを提供するシステムのうち、公衆無線LANサービスを利用する際にユーザ操作に基づくユーザ認証処理を必要としないシステムである。以下、これを「鉄道型」と呼称する。鉄道型は、携帯電話事業者が提供する公衆無線LANサービスにおけるSIM認証方式である。携帯電話のSIM情報によってユーザ認証が完了するため、ユーザは無線LANアクセスポイントの近くに移動するだけで自動的にインターネット接続が可能な状態となる。(非特許文献1参照)。
【0015】
第2のタイプは、ホットスポットにおいて公衆無線LANサービスを提供するシステムである。以下、これを「ホットスポット型」と呼称する。ホットスポット型では、鉄道型の場合と異なり、公衆無線LANサービスを利用する際にWeb認証のようなユーザ操作に基づくユーザ認証処理が必要となる(非特許文献2参照)。
【0016】
第3のタイプは、ハンバーガーショップやコンビニエンスストア等において公衆無線LANサービスを提供するシステムである。以下、これを「コンビニエンスストア型」と呼称する。コンビニエンスストア型では、インターネット接続のためのユーザ認証向け画面の他に、割引クーポン等店舗独自のインセンティブを提供するカスタマーサービス画面も存在する(非特許文献3参照)。
【0017】
従来の公衆無線LANシステムでは、公衆無線LANサービスに一度でも接続したことがある無線LAN子機には、接続した無線LANアクセスポイントのSSIDが保存されている。無線LANアクセスポイントが送信するビーコン信号を受信すると、無線LAN子機に送信データの有る無しにかかわらず、無線LAN子機は無線LANアクセスポイントへの接続を開始する。そして、最終的には、無線LANアクセスポイントからIPアドレスの払い出しを受けるところまで処理が進む。タイプ別に説明すると、鉄道型では、無線LAN子機が無線LANアクセスポイントの近傍に接近した場合、インターネット接続利用が可能な状態まで処理が進む。ホットスポット型とコンビニエンスストア型では、無線LAN子機へのIPアドレス割当処理が完了し、さらにコンビニエンスストア型では、Webブラウザが自動的に開いてサービス画面の表示まで処理が進む。
【0018】
上記の処理は、無線LAN子機を所有するユーザが実際に公衆無線LANサービスへの接続を積極的に行いたいか否かに関わらず、無線LAN子機が無線LANアクセスポイントの近傍に接近したことを受けて実行される。コンビニエンスストア型を例にとると、コンビニエンスストアが人通りの多い道路に面している場合、無線LANの電波が届く範囲であれば、単に近くを通過しただけの人の無線LAN子機に対してもIPアドレスが払い出される。また、コンビニエンスストアに入店したが積極的には公衆無線LANサービスを利用しないユーザの無線LAN子機に対してもIPアドレスが払い出される。
【0019】
このように、従来の公衆無線LANシステムでは、積極的には公衆無線LANサービスを利用しないユーザの無線LAN子機に対してもIPアドレスが自動的に割り当てられ、無駄にIPアドレスのリソースが消費されている。特に問題となるのは、無線LANアクセスポイントのDHCPサーバが無線LAN子機向けに払い出し可能なIPアドレスの数に制限を設けている場合である。この場合、IPアドレスが枯渇してしまい、積極的に公衆無線LANサービスを使用したいユーザの無線LAN子機に対してIPアドレスを割り当てられなくなる恐れがある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0020】
【文献】“スマートフォン、タブレットでのご利用の場合の接続方法”,[令和3年2月26日検索],インターネット<https://www.nttdocomo.co.jp/service/d_wifi/usage_smt.html>
【文献】“パソコンやその他Wi-Fi対応機器の場合の接続方法”,[令和3年2月26日検索],インターネット<https://www.nttdocomo.co.jp/service/d_wifi/usage_pc.html>
【文献】“セブンイレブンアプリから無料Wi-Fi(セブンスポット)に接続する手順”,[令和3年2月26日検索],インターネット<https://sumahosupportline.com/wifi-connection-from-the-seven-eleven-app-to-the-seven-spot/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
公衆無線LANシステムのような無線通信システムでは、1台の無線基地局装置(無線LANアクセスポイント)が収容する無線端末の数は膨大である。しかし、1台の無線基地局装置に割り当てられている通信リソースには限りがあるので、通信する必要がない無線端末(無線LAN子機)に対しての通信リソースの割り当てを極力抑制し、限りある通信リソースの有効利用を図りたい。
【0022】
より具体的には、従来の公衆無線LANシステムでは、公衆無線LANサービスを積極的に利用しないユーザの無線LAN子機に対して無駄なIPアドレスが払い出されている。このような現状を踏まえ、単なる通りすがりや積極的にはサービスを利用する意志のないユーザの無線LAN子機に対する無駄なIPアドレスの払い出しを抑制したい。そうすることで、本当に公衆無線LANサービスに接続したいユーザがIPアドレスの枯渇によりサービスを受けられないような状況を極力回避したい。
【0023】
本開示は、上記事情に着目してなされたもので、限りある通信リソースの有効利用を図ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本開示は、上記目的を達成するため、無線基地局装置を提供する。本開示の無線基地局装置は、以下の処理を実行するように構成されている。第1の処理では、本開示の無線基地局装置は、無線端末からの電波の受信に応答して、無線端末の過去の接続実績情報に基づき無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定する。第2の処理は、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合の処理である。第2の処理では、本開示の無線基地局装置は、無線端末による所定の接続動作を条件に無線端末に通信リソースを割り当てる。第3の処理は、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合の処理である。第3の処理では、本開示の無線基地局装置は、上記所定の接続動作を条件とすることなく無線端末に通信リソースを割り当てる。
【0025】
本開示は、上記目的を達成するため、無線通信システムを提供する。本開示の無線通信システムは、無線基地局装置と無線基地局装置を管理する制御装置とが通信ネットワークで接続されてなる無線通信システムである。本開示の無線通信システムは、以下の処理を実行するように構成されている。第1の処理では、本開示の無線通信システムは、無線端末からの電波を無線基地局装置が受信したことに応答して、無線基地局装置或いは制御装置に蓄積された無線端末の過去の接続実績情報に基づき無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定する。第2の処理は、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合の処理である。第2の処理では、本開示の無線通信システムは、無線端末による所定の接続動作を条件に無線基地局装置から無線端末に通信リソースを割り当てる。第3の処理は、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合の処理である。第3の処理では、本開示の無線通信システムは、上記所定の接続動作を条件とすることなく無線基地局装置から無線端末に通信リソースを割り当てる。
【0026】
また、本開示は、上記目的を達成するため、無線通信方法を提供する。本開示の無線通信方法は、無線基地局装置による無線通信方法である。本開示の無線通信方法は、以下のステップを含む。第1のステップは、無線端末からの電波の受信に応答して、無線端末の過去の接続実績情報に基づき無線端末による無線通信サービスの積極利用性を判定するステップである。第2のステップは、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込めない端末である場合、無線端末による所定の接続動作を条件に無線端末に通信リソースを割り当てるステップである。第3のステップは、無線端末が無線通信サービスの積極利用を見込める端末である場合、上記所定の接続動作を条件とすることなく無線端末に通信リソースを割り当てるステップである。
【発明の効果】
【0027】
本開示に係る無線基地局装置、無線通信システム、及び無線通信方法によれば、限りある通信リソースの有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本開示の各実施形態に共通の公衆無線LANシステムの構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイントの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログの例を示すテーブルである。
【
図4】
図2に示す無線LANアクセスポイントによる接続実績情報の例を示すテーブルである。
【
図5】処理ログと接続実績情報との関係を説明する図である。
【
図6】
図2に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログから接続実績情報への変換例を説明する図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る公衆無線LANシステムにおける無線LAN子機の状態の遷移を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の第1実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末の積極利用性による振り分けフロー)を示すフローチャートである。
【
図9】本開示の第1実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込める場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図10】本開示の第1実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込めない場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図11】本開示の第2実施形態に係るホットスポット型の無線LANアクセスポイントの構成を示すブロック図である。
【
図12】
図11に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログの例を示すテーブルである。
【
図13】
図11に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログから接続実績情報への変換例を説明する図である。
【
図14】本開示の第2実施形態に係る公衆無線LANシステムにおける無線LAN子機の状態の遷移を示すフローチャートである。
【
図15】本開示の第2実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末の積極利用性による振り分けフロー)を示すフローチャートである。
【
図16】本開示の第2実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込める場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図17】本開示の第2実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込めない場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図18】本開示の第3実施形態に係る鉄道型の無線LANアクセスポイントの構成を示すブロック図である。
【
図19】
図18に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログの例を示すテーブルである。
【
図20】
図18に示す無線LANアクセスポイントによる処理ログから接続実績情報への変換例を説明する図である。
【
図21】本開示の第3実施形態に係る公衆無線LANシステムにおける無線LAN子機の状態の遷移を示すフローチャートである。
【
図22】本開示の第3実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末の積極利用性による振り分けフロー)を示すフローチャートである。
【
図23】本開示の第3実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込める場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図24】本開示の第3実施形態に係る無線LANアクセスポイントへの無線LAN子機の接続フロー(端末に積極利用が見込めない場合のフロー)を示すフローチャートである。
【
図25】本開示の各実施形態に共通の無線LANアクセスポイントのハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1.各実施形態に共通の公衆無線LANシステムの構成
まず、本開示の各実施形態に共通の公衆無線LANシステムの構成について
図1を用いて説明する。公衆無線LANシステム2は、1台の無線LANコントローラ4と複数台(n台)の無線LANアクセスポイント10と、IPネットワーク6とから構成され、無線LAN子機8のユーザに対して公衆無線LANサービス(無線通信サービス)を提供する。無線LANアクセスポイント10は、無線端末である多数の無線LAN子機8を収容する無線基地局装置である。IPネットワーク6は、無線LANコントローラ4と複数台の無線LANアクセスポイント10とを接続する通信ネットワークである。無線LANコントローラ4は、複数台の無線LANアクセスポイント10の監視制御を行う制御装置としての機能を有する。
【0030】
以下に説明する各実施形態は、無線LANアクセスポイント10の構成及び機能に違いがある。第1実施形態に係る無線LANアクセスポイント10は、コンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイントである。第2実施形態に係る無線LANアクセスポイント10は、ホットスポット型の無線LANアクセスポイントである。そして、第3実施形態に係る無線LANアクセスポイント10は、鉄道型の無線LANアクセスポイントである。以下の説明では、無線LANアクセスポイント10の3つのタイプを区別する必要がある場合、コンビニエンスストア型は無線LANアクセスポイント10Aと表記し、ホットスポット型は無線LANアクセスポイント10Bと表記し、鉄道型は無線LANアクセスポイント10Cと表記する。
【0031】
2.第1実施形態に係る無線LANアクセスポイント(コンビニエンスストア型)
2-1.無線LANアクセスポイントの構成
図2は、第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aの構成を示すブロック図である。無線LANアクセスポイント10Aは、IPネットワークインタフェース11、無線LAN接続処理部12A、無線LAN通信部13、接続実績情報蓄積部100、及び接続制御部102を備える。
【0032】
IPネットワークインタフェース11は、無線LANアクセスポイント10Aと無線LANコントローラ4との間で、監視制御信号の送受信や無線LAN子機8の主信号トラヒックの送受信を行うためのインタフェースである。無線LAN通信部13は、無線LANアクセスポイント10Aが無線LANの電波を送受信するための装置である。無線LAN通信部13は、図示しないアンテナを備え、複数の無線LAN子機8との間で無線通信を行う。
【0033】
無線LAN接続処理部12Aは、無線LANアクセスポイント10Aに無線LAN子機8が接続する際の処理を行う。無線LAN接続処理部12Aは、無線LANリンク接続処理部14、IPアドレス払い出し処理部15、画面表示処理部16A、カスタマーサービス利用画面表示部17、ユーザ認証処理部18、及びトラヒック監視部19を備える。
【0034】
無線LANリンク接続処理部14は、無線LAN子機8が発する電波を受信した後、無線LAN子機8との無線LANリンク確立を試みる。そして、無線LAN子機8との無線LANリンクが確立したことを受けて、無線LANリンク接続処理部14はIPアドレス払い出し処理部15に処理を渡す。
【0035】
IPアドレス払い出し処理部15は、無線LANリンクが確立した無線LAN子機8に対してIPアドレスを払い出す。IPアドレスは、無線LANアクセスポイント10Aが有する通信リソースである。無線LANアクセスポイント10Aには、予め所定数のIPアドレスが割り当てられている。IPアドレス払い出し処理部15は、無線LANアクセスポイント10Aに割り当てられたIPアドレスのうちの1つをDHCPプロトコルに基づいて無線LAN子機8に払い出す。この処理が正常に終了したことを受けて、IPアドレス払い出し処理部15は次の画面表示処理部16Aに処理を渡す。
【0036】
画面表示処理部16Aは、無線LAN子機8に搭載されたWebブラウザにカスタマーサービス向けの画面や公衆無線LANサービスでインターネット接続をする際に必要なユーザ認証画面を表示する。ユーザ操作によりカスタマーサービス利用のための操作が行われたことを受けて、画面表示処理部16Aはカスタマーサービス利用画面表示部17に処理を渡す。また、ユーザ操作によりユーザ認証のための操作が行われたことを受けて、画面表示処理部16Aはユーザ認証処理部18に処理を渡す。
【0037】
カスタマーサービス利用画面表示部17は、無線LANアクセスポイント10Aが設置された店舗で提供されるカスタマーサービスをユーザが利用するための画面を表示する。カスタマーサービスとしては、例えば、割引クーポン等の店舗独自のインセンティブを挙げることができる。ユーザは、例えば、無線LAN子機8に表示されたカスタマーサービス利用画面を店員に見せることで、割引サービス等の所定のカスタマーサービスを受けることができる。
【0038】
ユーザ認証処理部18は、公衆無線LANサービスによりインターネット接続を行うための認証処理を行う。公衆無線LANサービス用のユーザIDとユーザ認証用パスワードとによる認証が適切に行われた場合、無線LAN子機8はインターネット接続が可能な状態となる。
【0039】
トラヒック監視部19は、無線LAN子機8のインターネット接続が可能となった後、実際のユーザトラヒックがどれだけ流れたかを監視する。詳しくは、無線LAN子機8ごとの主信号トラヒック量を監視する。
【0040】
さて、前述の従来の公衆無線LANシステムでは、公衆無線LANサービスを積極的に利用しない無線LAN子機8に対してもIPアドレスが払い出され、通信リソースの無駄が生じていた。そこで、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを積極的に利用するか否かを判定し、その判定結果に基づいて無線LAN子機8に対する接続処理を制御する仕組みを有する。その仕組みが、接続実績情報蓄積部100と接続制御部102である。
【0041】
接続実績情報蓄積部100は、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aに接続した時の無線LANアクセスポイント10Aの「処理ログ」を加工した「接続実績情報」を蓄積する。「処理ログ」及び「接続実績情報」の内容については追って詳述する。接続実績情報蓄積部100に蓄積された情報は、無線LANコントローラ4に集約される。
【0042】
接続制御部102は、接続実績情報蓄積部100の情報を参照し、無線LANアクセスポイント10Aに接続してきた無線LAN子機8のユーザが積極的な公衆無線LAN利用ユーザなのか否かを判定する。また、無線LANコントローラ4に集約された情報を参照することにより、接続制御部102は、無線LANアクセスポイント10Aに初めて接続してきた無線LAN子機8の他の無線LANアクセスポイントに対する接続実績状況を知ることができる。このような積極利用性判定の判定結果に基づき、接続制御部102は、無線LAN接続処理部12Aが行う処理に対して制御を行う。
【0043】
詳しくは、接続制御部102は、
図2において破線で結線されている無線LANリンク接続処理部14とIPアドレス払い出し処理部15とに対して制御を行う。例えば、接続制御部102は、無線LANリンク接続処理部14に対し、無線LAN子機8からの電波到達電力があるレベルまで達していなければ無線LANリンクを確立しないようにさせる。また、接続制御部102は、IPアドレス払い出し処理部15に対し、無線LANリンクが確立したにもかかわらずIPアドレスを払い出さないようにさせたり、無線LAN子機8のMACアドレス毎に異なるIPアドレス払い出し時間を設定させたりする。
【0044】
2-2.接続実績情報の詳細
2-2-1.処理ログの説明
「処理ログ」とは、
図3のテーブルに示すように、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aに接続し始めてから接続を終了するまでの間に、無線LANアクセスポイント10Aが無線LAN子機8に対してどのような処理を行ったかのログである。具体的には「処理ログ」には以下の情報が含まれる。
・処理ログID
・無線LAN子機MACアドレス
・処理日
・処理時刻
・到達電力
・処理内容
・インターネットトラヒック量
【0045】
「処理ログID」は、無線LANアクセスポイント10Aが無線LAN子機8に何らかの処理を行ったときに記録するログのIDである。ログIDは無線LANアクセスポイント10AにおいてユニークなIDである。処理ログは通番でもよいし、日付+時刻+無線LAN子機MACアドレスを組み合わせた文字列としてもよい。
【0046】
「無線LAN子機MACアドレス」は、無線LANアクセスポイント10Aが何らかの処理を行った対象の無線LAN子機8のMACアドレスである。
【0047】
「処理日」は、無線LANアクセスポイント10Aが何らかの処理をした日付であり、「処理時刻」は、無線LANアクセスポイント10Aが何らかの処理をした時刻である。処理の具体的な内容は「処理内容」に記載される。
【0048】
「到達電力」は、無線LANアクセスポイント10Aが何らかの処理をした時点における、無線LAN子機8の到達電力である。処理の具体的な内容は「処理内容」に記載される。
【0049】
「処理内容」は、無線LANアクセスポイント10Aの無線LAN接続処理部12Aにおける処理に基づく状態遷移を示すものである。無線LANアクセスポイント10Aに無線LAN子機8が接続する流れでは、「処理内容」は以下のいずれかとなる。
・無線LANリンク接続処理開始
・無線LANリンク接続処理終了
・IPアドレス払い出し処理開始
・IPアドレス払い出し処理終了
・サービス画面/ユーザ認証画面表示処理開始
・サービス画面/ユーザ認証画面表示処理終了
・カスタマーサービス利用画面表示開始
・カスタマーサービス利用画面表示終了
・カスタマーサービス利用中状態
・ユーザ認証処理開始
・ユーザ認証処理終了
・インターネット接続利用状態
・IPアドレス返却処理開始
・IPアドレス返却処理完了
【0050】
「インターネットトラヒック量」は、無線LAN子機8が「インターネット接続利用状態」となった後に実際に通信したトラヒック量である。「インターネット接続利用状態」となった無線LAN子機8が積極的にインターネットを利用したのか、それとも単に自動的に「インターネット接続利用状態」になっただけなのか、トラヒック量から区別することができる。
【0051】
2-2-2.接続実績情報の説明
「接続実績情報」とは、
図4に示すように、前述の「処理ログ」から以下の情報を抽出し、接続実績ごとに1行にまとめたテーブルである。より詳しくは、
図5に示すように、無線LANアクセスポイント10に接続した全ての無線LAN子機8の「処理ログ」から以下の情報を抽出し、時系列に並べたものが、無線LANアクセスポイント10の「接続実績情報」である。
・接続実績ID
・無線LAN子機MACアドレス
・処理日
・曜日
・処理開始時刻
・最大到達電力
・無線LAN子機接続時の積極利用性判定結果
・実際の利用結果
【0052】
「接続実績ID」は、接続実績情報に対してユニークなIDである。例えば同一の無線LAN子機8が同一日の異なる時刻に同じ無線LANアクセスポイント10Aに接続した場合、異なる「接続実績ID」が割り振られる。
【0053】
「無線LAN子機MACアドレス」は、無線LANアクセスポイント10Aに接続した無線LAN子機8のMACアドレスである。
【0054】
「処理日」は、上記の「無線LAN子機MACアドレス」をもつ無線LAN子機8に対し、無線LANアクセスポイント10Aが到達電波を検出して無線LAN子機8に対する処理を開始した日付である。
【0055】
「曜日」は、上記の処理日から求められる情報である。「曜日」は、無線LAN子機8の積極利用性判定において、曜日の違いによる傾向も考慮して積極利用性判定の精度を高めるための材料として用いられる。
【0056】
「最大到達電力」は、処理ログに記載されている無線LANアクセスポイント10Aにおける無線LAN子機8からの「到達電力」の最大値である。「最大到達電力」は、無線LAN子機8に対する接続処理を行うにあたり、ある一定レベルの到達電力に達しない無線LAN子機8に対しての処理を予め排除するため、到達電力レベルの閾値を算出するために用いられる。
【0057】
「無線LAN子機接続時の積極利用性判定結果」は、“積極利用性あり”か“積極利用性なし”のいずれかの値をとる。積極利用性判定は、無線LANアクセスポイント10Aに蓄積されている過去の「接続実績情報」と、無線LANコントローラ4に蓄積された他の無線LANアクセスポイント10Aの「接続実績情報」とに基づいて行われる。“積極利用性あり”と判定された無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Aは無条件で無線LANリンク接続処理やIPアドレスの払い出しを行う。一方、“積極利用性なし”と判定された無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Aは極力IPアドレスを払い出さない処理を行う。積極利用性判定の判定方法については後述する。
【0058】
「実際の利用結果」は、“実際利用あり”か“実際利用なし”のいずれかの値をとる。“実際利用あり”とは、IPアドレスの払い出しを受けた無線LAN子機8がインターネット通信等何らかの通信を行った場合である。コンビニエンスストアでの利用の場合、無線LANアクセスポイント10Aから払い出されるIPアドレスは、インターネット利用ではなく店内利用クーポンの取得などのカスタマーサービスの利用に用いられる場合もある。しかし、このような場合でも払い出したIPアドレスは無駄になっていないことから、“実際利用あり”と判断される。なお、インターネットの利用があればインターネットトラヒック量が発生し、この情報は無線LANアクセスポイント10Aで検出できるので、実際利用あり/なしの判断材料になる。また、コンビニエンスストア型(及び後述するホットスポット型)では、インターネットの利用に際しユーザ自身により何らかの端末操作が必要となるので、この操作の有無も実際利用あり/なしの判断材料になる。
【0059】
次に、無線LANアクセスポイント10Aによる処理ログから接続実績情報への変換について、
図6を用いて説明する。
図6は、処理ログから接続実績情報への変換例を具体的に示す図である。
【0060】
図6に示す例では、MACアドレス“yy:yy:yy:yy:yy:yy”を有する無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aに2021年2月1日金曜日に接続し、午前8時1分2秒に処理が開始されたことが処理ログに残っている。また、処理ログに残っている端末接続時の最大到達電力は-70dBmである。これらの情報は、そのまま接続実績情報とされる。
【0061】
図6に示す例では、無線LANリンク接続処理の後に後述する後方保護処理が行われた形跡が処理ログに残っている。後方保護処理が行われた場合、接続実績情報における端末接続時の積極利用性判定結果は、積極利用性“なし”とされる。また、処理ログには、カスタマーサービス利用画面に移行しカスタマーサービス利用中となった形跡が残っている。このことから、払い出されたIPアドレスは無駄にならなかったと判定することができるので、接続実績情報における実際の利用結果は、実際利用“あり”とされる。
【0062】
2-3.無線LAN子機の状態について
上述のように、無線LANアクセスポイント10A及び無線LANコントローラ4に蓄積される接続実績情報には、IPアドレスの払い出しを受けた無線LAN子機8によるインターネット或いはカスタマーサービスの実際の利用結果が含まれている。無線LAN子機8が、インターネット或いはカスタマーサービスを利用しているかは、無線LAN子機の“状態”から判断される。無線LANアクセスポイント10Aとの関係において、無線LAN子機8の“状態”は以下のように定義される。
・「リンク未確立」状態
・「リンク確立」状態
・「IPアドレス割当済」状態
・「インターネット利用中」状態
・「カスタマーサービス利用中」状態
【0063】
「リンク未確立」状態とは、無線LAN子機8と無線LANアクセスポイント10Aとのレイヤ2でのリンクが確立していない状態である。接続を試みる無線LAN子機8は全て「リンク未確立」状態として扱われる。
【0064】
「リンク確立」状態とは、無線LAN子機8と無線LANアクセスポイント10Aとの無線LANリンク確立処理が終了した状態である。
【0065】
「IPアドレス割当済」状態とは、無線LANアクセスポイント10Aから無線LAN子機8へのIPアドレス払い出し処理が終了した状態である。この状態の無線LAN子機8はIP通信が可能な状態である。
【0066】
「インターネット利用中」状態とは、ユーザが無線LAN子機8を操作してWeb閲覧する等、インターネットトラヒックが発生している状態である。「インターネット利用中」に遷移した場合には、接続実績情報の実際利用の値は“実際利用あり”とされる。
【0067】
「カスタマーサービス利用中」状態とは、コンビニエンスストア等でユーザがクーポン取得等ために無線LAN子機8を利用している状態である。「カスタマーサービス利用中」状態に遷移した場合には、「インターネット利用中」状態と同様に接続実績情報の実際利用の値は“実際利用あり”とされる。
【0068】
以上のように定義される無線LAN子機8の“状態”は、無線LAN子機8の無線LANアクセスポイント10Aへの接続時、
図7に示すように遷移する。
図7は、無線LANアクセスポイント10Aとの関係における無線LAN子機8の状態の遷移を示すフローチャートである。
【0069】
無線LANアクセスポイント10Aへの接続時、最初は、どの無線LAN子機8も「リンク未確立」状態となっている(ステップS11)。
【0070】
リンク確立処理が終了することで、無線LAN子機8は「リンク確立」状態になる(ステップS12)。
【0071】
「リンク確立」状態において無線LANアクセスポイント10Aから無線LAN子機8へのIPアドレス払い出し処理が終了しない場合、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0072】
「リンク確立」状態において無線LANアクセスポイント10Aから無線LAN子機8へのIPアドレス払い出し処理が終了した場合、無線LAN子機8は「IPアドレス割当済」状態になる(ステップS13)。
【0073】
「IPアドレス割当済」状態になった後、一定時間以上「IPアドレス割当済」状態に留まっている場合、すなわち、ユーザ認証処理も行われないしカスタマーサービス利用画面表示にも遷移しない場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0074】
「IPアドレス割当済」状態になってから一定時間以内に無線LAN子機8においてユーザ認証処理が終了した場合、無線LAN子機8は「インターネット利用中」状態になる(ステップS14)。
【0075】
「インターネット利用中」状態になった後、一定時間以内に一定量程度のトラヒック量がない場合、すなわち、無線LAN子機8による公衆無線LANサービスの利用実績が基準実績未満である場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0076】
また、「IPアドレス割当済」状態になってから一定時間以内に無線LAN子機8の画面表示がカスタマーサービス利用画面表示に遷移した場合、無線LAN子機8は「カスタマーサービス利用中」状態になる(ステップS15)。
【0077】
「カスタマーサービス利用中」状態になった後、一定時間以内に一定量程度のトラヒック量がない場合、すなわち、無線LAN子機8による公衆無線LANサービスの利用実績が基準実績未満である場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0078】
2-4.積極利用性判定についての説明
2-4-1.接続実績情報を用いた積極利用性判定
限りある通信リソースであるIPアドレスの無駄な払い出しを避けるためには、「インターネット利用中」状態又は「カスタマーサービス利用中」状態に遷移する無線LAN子機8に対してだけIPアドレス払い出し処理を行うのが理想である。しかし、無線LANアクセスポイント10Aへの接続前から無線LAN子機8が最終的に「インターネット利用中」状態又は「カスタマーサービス利用中」状態に遷移するかは分からない。
【0079】
そこで、無線LANアクセスポイント10Aは、前述の接続実績情報に基づいて無線LAN子機8の「インターネット利用中」状態又は「カスタマーサービス利用中」状態への遷移の可能性を判定する。そして、「インターネット利用中」状態又は「カスタマーサービス利用中」状態への遷移の可能性が高いと判定される無線LAN子機8に対し、「積極利用性あり」としてIPアドレス払い出し処理を行う。一方、「インターネット利用中」状態にも「カスタマーサービス利用中」状態にも遷移しない傾向の無線LAN子機8に対しては、「積極利用性なし」としてIPアドレスの払い出しを抑制する。
【0080】
以下は、無線LANアクセスポイント10Aに蓄積された過去の接続実績情報を用いた無線LAN子機8の積極利用判定の具体例である。
【0081】
(判定方法1)接続実績情報の蓄積が全くない無線LAN子機の積極利用性判定方法
無線LANアクセスポイント10Aに過去の接続実績情報が全く蓄積されていない無線LAN子機8は、初めて接続してきた無線LAN子機8である。この場合、無線LANアクセスポイント10Aは“積極利用性あり”と判定する。ただし、無線LANコントローラ4に照会をかけ、他の無線LANアクセスポイント10Aでの接続実績情報や積極利用性判定の結果を参考にしてもよい。
【0082】
(判定方法2)接続実績情報の数が少ない無線LAN子機の積極利用性判定方法
無線LANアクセスポイント10Aに蓄積された過去の接続実績情報が少ない無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Aは“積極利用性あり”と判定する。この場合も、無線LANコントローラ4に照会をかけ、他の無線LANアクセスポイント10Aでの接続実績情報や積極利用性判定の結果を参考にしてもよい。
【0083】
(判定方法3)接続実績情報の数が比較的多い無線LAN子機の積極利用性判定方法
無線LANアクセスポイント10Aに蓄積された過去の接続実績情報が比較定多い無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Aは、「積極利用性判定結果」と「実際の利用結果」との組み合わせにより積極利用性判定を行う。以下に判定方法3による積極利用性判定の具体例を列挙する。
<具体例1>“積極利用性あり”と判定しているのに実際には利用がなかったケースが続いた場合、次回からは積極性判定を“積極利用性なし”に変更する。
<具体例2>“積極利用性なし”と判定しているのに実際には利用があったケースが続いた場合、次回からは積極性判定を“積極利用性あり”に変更する。
<具体例3>“積極利用性あり”と判定しているのに月~金曜日の朝方だけは決まって利用がなかったケースが続いた場合、次回からは処理時刻の情報を加味して朝方に限っては“積極利用性なし”と判定する。
<具体例4>具体例3において、同じ無線LAN子機8でも月~金の夕刻や土日については、過去の接続実績情報に基づいて積極利用性を判定する。
【0084】
判定方法3の具体例3及び4では、曜日や時刻による統計的な傾向により積極利用性判定の精度を高めている。そのより具体的な例が
図4に示されている。
図4に示す例では、接続実績ID=10,30,50,70にて、朝8時近辺での接続実績情報の積極利用性が“あり”で実際利用結果が“なし”になっている。同じ日付の夜には、積極利用性と実際利用結果がともに“あり”になっているにもかかわらず、4回連続で朝方には実際利用が行われない。このため、翌日朝方の接続実績である接続実績ID=90では、積極利用性を“なし”に変更されている。
【0085】
2-4-2.ユーザのカテゴリによる積極利用性判定
さらに、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LANアクセスポイント10Aに接続してきた無線LAN子機8のユーザが属するカテゴリによって、積極利用性のあり/なしを判定する。無線LANアクセスポイント10Aはハンバーガーショップやコンビニエンスストア店内に設置されている。このような無線LANアクセスポイント10Aに接続する無線LAN子機8のユーザは、以下のようなカテゴリに分類することができる。
(1)店舗に入店しないユーザ
(1a)店舗付近をたまたま通ったユーザ
(1b)店舗付近に滞在しインターネット接続を利用するユーザ
(2)店舗に入店するユーザ
(2a)買い物に来たユーザ
(2ai)単に買い物をするだけのユーザ
(2aii)カスタマーサービス(無料クーポン取得等)を使って買い物をするユーザ
(2aiii)店舗内でインターネット接続を利用するユーザ
(2b)買い物をしないユーザ(銀行ATM利用、トイレ借用等)
【0086】
従来の公衆無線LANシステムでは、上記の全てのユーザに対して無線LANアクセスポイントからIPアドレスが払い出されていた。しかし、実際に積極的にIP通信を行っているのは、上記ユーザのうちユーザ(1b)、ユーザ(2aii)、及びユーザ(2aiii)だけである。本実施形態に係る無線LANアクセスポイント10Aは、以下に説明する方法によって他のユーザからユーザ(1b)、ユーザ(2aii)、及びユーザ(2aiii)を区別する。そして、実際に積極的にIP通信を行っているユーザに対してのみ「積極利用性あり」と判定する。
【0087】
まず、一般的な傾向として、店舗に入店する人は、入店しない人と比較して無線LAN子機8が発する無線LANアクセスポイント10Aへの電波到達電力が強い傾向にある。ゆえに、電波到達電力に適切な閾値RLTH(RX level threshold)を設定することで、入店しないユーザの無線LAN子機8が発する電波到達電力と、入店するユーザの無線LAN子機8が発する電波到達電力とを以下のように区別することが可能となる。
アクセスポイントへの電波到達電力<RLTH・・・入店しないユーザ
アクセスポイントへの電波到達電力≧RLTH・・・入店するユーザ
【0088】
また、積極的にサービス利用をしないユーザ(1a)、ユーザ(2ai)、及びユーザ(2b)は、ユーザ認証画面やカスタマーサービス利用画面に遷移せず留まっているので、この点で積極利用をするユーザと区別することができる。なお、店舗に入店して買い物をしたユーザ(2a)がユーザ(2ai)、ユーザ(2aii)、或いはユーザ(2aiii)のどれであるかは、以下の方法によって判断することができる。
・単に買い物をするだけのユーザ(2ai)
→サービス画面/ユーザ認証画面表示で留まる
・カスタマーサービスを使って買い物をするユーザ(2aii)
→サービス画面/ユーザ認証画面表示後、カスタマーサービス利用画面への基準遷移時間であるTa秒以内にカスタマーサービス画面に遷移する
・インターネット接続をするユーザ(2aiii)
→サービス画面/ユーザ認証画面表示後、ユーザ認証画面への基準遷移時間であるTb秒以内に公衆無線LAN接続ユーザ認証画面に遷移する
【0089】
Ta及びTbの各値は、積極的に利用する人がサービス画面/ユーザ認証画面表示で留まっている時間の上限である。ゆえに、様々な無線LAN子機8におけるこれらの時間の値を統計処理することによってIPアドレスを割り当てる時間(DHCPリース時間)の目安とすることができる。
【0090】
2-5.積極利用性の判別結果に基づく通信リソース割当方法の説明
以上のように行われる積極利用性判定の判定結果に基づいて、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LAN子機8への通信リソースの割り当て、すなわち、IPアドレスの払い出しを行う。IPアドレスの払い出しの可否の判定では、以下の3つのパラメータが用いられる。
・RLTH:無線LAN子機8の入店する/しないを判別するための無線LANアクセスポイント10Aへの到達電力閾値
・Ta:カスタマーサービス画面への基準遷移時間、すなわち、サービス画面/ユーザ認証画面表示後、積極的な利用ユーザの大多数がカスタマーサービス利用画面表示に遷移するまでの時間
・Tb:ユーザ認証画面への基準遷移時間、すなわち、サービス画面/ユーザ認証画面表示後、積極的な利用ユーザの大多数がユーザ認証処理に遷移するまでの時間
【0091】
以下、無線LANアクセスポイント10Aによる無線LAN子機8へのIPアドレスの払い出し処理について、
図8乃至
図10を用いて説明する。
図8乃至
図10は、無線LANアクセスポイント10Aへの無線LAN子機8の接続フローを示すフローチャートである。
【0092】
まず、
図8に示すように、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aの近傍に接近したことを受けて(ステップS101)、無線LANアクセスポイント10Aは無線LAN子機8からの電波を受信する(ステップS102)。
【0093】
無線LAN子機8からの電波の受信を受けて、無線LANアクセスポイント10Aは、蓄積されている接続実績情報に基づき、無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを積極的に利用するか否かの積極利用性判定を行う(ステップS103)。積極利用性判定には、無線LANアクセスポイント10A自体が蓄積している接続実績情報に加えて、無線LANコントローラ4に蓄積されている他の無線LANアクセスポイント10Aの接続実績情報も用いることができる。
【0094】
積極利用性判定の結果、公衆無線LANサービスの積極利用が見込める無線LAN子機8に対してはIPアドレスを払い出してもよい。積極利用性ありと判定された無線LAN子機8に対しては、
図9に示すフローAを適用して無線LANアクセスポイント10Aへの接続処理が行われる。一方、公衆無線LANサービスの積極利用が見込めない無線LAN子機8に対しては極力IPアドレスを払い出したくない。積極利用性なしと判定された無線LAN子機8に対しては、
図10に示すフローBを適用して無線LANアクセスポイント10Aへの接続処理が行われる。
【0095】
過去の接続実績情報より積極利用が見込める無線LAN子機8に対して適用されるフローAについて説明する。
図9に示すように、無線LANアクセスポイント10Aは、まず、無線LAN子機8からの電波到達電力がRLTH以上かどうか判定する(ステップS111)。無線LANアクセスポイント10Aは、電波到達電力がRLTH未満の無線LAN子機8に対する処理は行わない。この理由は、積極利用が見込まれるユーザであれば無線LANアクセスポイント10Aに近づいてくるはずだからである。
【0096】
電波到達電力がRLTH以上の場合、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LAN子機8に対する無線LANリンク接続処理を行う(ステップS112)。無線LANリンク接続処理の対象となっている無線LAN子機8は積極利用が見込める端末であるので、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LANリンク接続処理が完了したらそのままIPアドレス払い出し処理に移行する(ステップS113)。
【0097】
IPアドレス払い出し処理の完了により、無線LANアクセスポイント10Aは、無線LAN子機8にサービス画面/ユーザ認証画面表示を行わせる(ステップS114)。
【0098】
サービス画面/ユーザ認証画面表示後、Ta以内にカスタマーサービス画面に遷移した場合、無線LAN子機8を所持するユーザはクーポン等のカスタマーサービスを利用可能となる(ステップS115)。また、サービス画面/ユーザ認証画面表示後、Tb以内にユーザ認証画面に遷移した場合、無線LAN子機8を所持するユーザに対する公衆無線LAN接続ユーザの認証処理が行われる(ステップS116)。また、公衆無線LAN接続ユーザの認証処理は、カスタマーサービスを利用可能になったユーザにも行われる。ユーザ認証処理の完了により、ユーザは無線LAN子機8によるインターネットへの接続と利用が可能となる(ステップS117)。
【0099】
公衆無線LANサービスを積極的に利用するユーザであれば、サービス画面/ユーザ認証画面表示のまま留まることはない。ゆえに、TaとTbのうち大きいほうの時間を越えてサービス画面/ユーザ認証画面表示のまま留まっていれば、そのユーザには積極利用がないと判断することができる。この場合、無線LANアクセスポイント10Aは、払い出したIPアドレスが無駄になることを防ぐため、無線LAN子機8からIPアドレスを回収するIPアドレス返却処理を行う(ステップS118)。
【0100】
次に、過去の接続実績情報より積極利用が見込めない無線LAN子機8に対して適用されるフローBについて説明する。
図10に示すように、フローBは、
図9に示すフローAには存在しないステップS119を備えている。ステップS119では、積極的な利用を見込めない無線LAN子機8に対するIPアドレスの払い出しを極力抑制するための「後方保護処理」が無線LANアクセスポイント10Aにより実行される。「後方保護処理」では、無線LANリンク接続処理の終了後、無条件でIPアドレス払い出し処理を完遂させずに、繰り返しX回の無線LANリンク接続処理のリトライがあったことを条件としてIPアドレスを払い出すようにする。
【0101】
フローBによる処理が選択された無線LAN子機8は積極利用が見込めない端末なので、極力IPアドレス払い出し処理に移行させたくない。しかし、過去の接続実績情報に基づく積極利用性判定の判定結果が実際とは異なる可能性、つまり、無線LAN子機8が積極利用したいユーザの端末である可能性は存在する。「後方保護処理」によりX回のリトライカウントを設けたことで、積極利用のないユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことなく、積極利用したいユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことができる。
【0102】
2-6.第1実施形態に係る無線LANアクセスポイントの効果
上述の通り、無線LANアクセスポイント10Aは、それ自体に蓄積されている過去の接続実績情報や、無線LANコントローラ4に集約された過去の接続実績情報を参照し、無線LAN子機8の積極利用性判定を行う。そして、積極利用性判定の判定結果に基づいて接続処理を行う。これにより、コンビエンスストア等で提供される公衆無線LANサービスにおいて無駄なIPアドレスの払い出しを極力抑制することができ、本当にIPアドレス払い出しが必要な無線LAN子機8に対してIPアドレスの払い出しを行うことができるようになる。
【0103】
無線LAN子機8の接続処理では、積極利用性ありと判定した無線LAN子機8が結果として公衆無線LANサービスを利用しないケースを想定し、無線LANアクセスポイント10Aは、サービス画面/ユーザ認証画面表示から一定時間経過後にIPアドレス返却処理を行う。これにより無駄なIPアドレスの早期回収を行うことができる。逆に、積極利用性なしと判定された無線LAN子機8が実際には公衆無線LANサービスを利用する端末であった場合の救済として、無線LANアクセスポイント10Aは、後方保護処理を行う。これにより実際に公衆無線LANサービスを利用したい無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを利用できない事態を回避することができる。
【0104】
3.第2実施形態に係る無線LANアクセスポイント(ホットスポット型)
3-1.無線LANアクセスポイントの構成
図11は、第2実施形態に係るホットスポット型の無線LANアクセスポイント10Bの構成を示すブロック図である。無線LANアクセスポイント10Bは、IPネットワークインタフェース11、無線LAN接続処理部12B、無線LAN通信部13、接続実績情報蓄積部100、及び接続制御部102を備える。第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aとは、無線LAN接続処理部12Bの構成に違いがある。
【0105】
無線LAN接続処理部12Bは、無線LANアクセスポイント10Bに無線LAN子機8が接続する際の処理を行う。無線LAN接続処理部12Bは、無線LANリンク接続処理部14、IPアドレス払い出し処理部15、画面表示処理部16B、ユーザ認証処理部18、及びトラヒック監視部19を備える。ホットスポット型の無線LANアクセスポイント10Bでは、通常、コンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aのようなカスタマーサービスは行われない。ゆえに、無線LAN接続処理部12Bは、第1実施形態に係る無線LAN接続処理部12Aとは異なりカスタマーサービス利用画面表示部を備えておらず、また、画面表示処理部16Bの機能にも違いがある。
【0106】
画面表示処理部16Bは、無線LAN子機8に搭載されたWebブラウザに公衆無線LANサービスでインターネット接続をする際に必要なユーザ認証画面を表示する。無線LAN接続処理部12Bは、カスタマーサービス利用画面表示部を備えていないので、第1実施形態に係る画面表示処理部16Aで行われるサービス画面表示処理は行わない。ユーザ操作によりユーザ認証のための操作が行われたことを受けて、画面表示処理部16Bはユーザ認証処理部18に処理を渡す。
【0107】
接続実績情報蓄積部100と接続制御部102の機能は、基本的には第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aのものと同じである。接続実績情報蓄積部100は、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Bに接続した時の無線LANアクセスポイント10Bの「処理ログ」を加工した「接続実績情報」を蓄積する。接続実績情報蓄積部100に蓄積された情報は、無線LANコントローラ4に集約される。接続制御部102は、蓄積された接続実績情報を参照し、無線LANアクセスポイント10Bに接続してきた無線LAN子機8が積極的な公衆無線LAN利用ユーザなのか否かを判定する。
【0108】
3-2.接続実績情報の詳細
図12は、無線LANアクセスポイント10Bにおける「処理ログ」の例を示すテーブルである。第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aとは、記録される「処理内容」に違いがある。無線LANアクセスポイント10Bに無線LAN子機8が接続する流れでは、「処理内容」は以下のいずれかとなる。
・無線LANリンク接続処理開始
・無線LANリンク接続処理終了
・IPアドレス払い出し処理開始
・IPアドレス払い出し処理終了
・ユーザ認証画面表示処理開始
・ユーザ認証画面表示処理終了
・ユーザ認証処理開始
・ユーザ認証処理終了
・インターネット接続利用状態
・IPアドレス返却処理開始
・IPアドレス返却処理完了
【0109】
図13は、無線LANアクセスポイント10Bによる処理ログから接続実績情報への変換例を具体的に示す図である。
図13に示す例では、MACアドレス“yy:yy:yy:yy:yy:yy”を有する無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aに2021年2月1日金曜日に接続し、午前8時1分2秒に処理が開始されたことが処理ログに残っている。また、処理ログに残っている端末接続時の最大到達電力は-70dBmである。これらの情報は、そのまま接続実績情報とされる。
【0110】
図13に示す例では、無線LANリンク接続処理の後に後方保護処理が行われた形跡が処理ログに残っていない。後方保護処理が行われていない場合、接続実績情報における端末接続時の積極利用性判定結果は、積極利用性“あり”とされる。また、処理ログには、ユーザ認証画面表示からユーザ認証処理に移行しておらずIPアドレス返却処理に移行した形跡が残っている。このことから、払い出されたIPアドレスは無駄であったと判定することができるので、接続実績情報における実際の利用結果は、実際利用“なし”とされる。
【0111】
3-3.無線LAN子機の状態について
本実施形態では、無線LANアクセスポイント10Bとの関係において、無線LAN子機8の“状態”は以下のように定義される。各状態の内容は、第1実施形態で説明した通りである。
・「リンク未確立」状態
・「リンク確立」状態
・「IPアドレス割当済」状態
・「インターネット利用中」状態
【0112】
本実施形態では、無線LAN子機8の“状態”は、無線LAN子機8の無線LANアクセスポイント10Bへの接続時、
図14に示すように遷移する。
図14は、無線LANアクセスポイント10Bとの関係における無線LAN子機8の状態の遷移を示すフローチャートである。
【0113】
本実施形態は、第1実施形態とは無線LAN子機8が「IPアドレス割当済」状態になった後の状態の遷移に違いがある。本実施形態では、「IPアドレス割当済」状態になった後、一定時間内にユーザ認証処理に遷移しない場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0114】
「IPアドレス割当済」状態になってから一定時間以内に無線LAN子機8においてユーザ認証処理が終了した場合、無線LAN子機8は「インターネット利用中」状態になる(ステップS14)。「インターネット利用中」状態になった後、一定時間以内に一定量程度のトラヒック量がない場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0115】
3-4.積極利用性判定についての説明
無線LANアクセスポイント10Bは、それ自身に或いは無線LANコントローラ4に蓄積された無線LAN子機8の接続実績情報に基づいて、無線LAN子機8の「インターネット利用中」状態への遷移の可能性を判定する。そして、「インターネット利用中」状態への遷移の可能性が高いと判定される無線LAN子機8に対し、「積極利用性あり」としてIPアドレス払い出し処理を行う。一方、「インターネット利用中」状態に遷移しない傾向の無線LAN子機8に対しては、「積極利用性なし」としてIPアドレスの払い出しを抑制する。
【0116】
第1実施形態で説明した過去の接続実績情報を用いた無線LAN子機8の積極利用判定の具体例は、無線LANアクセスポイント10Bにも適用される。
【0117】
3-5.積極利用性の判別結果に基づく通信リソース割当方法の説明
無線LANアクセスポイント10Bは、積極利用性判定の判定結果に基づいて無線LAN子機8への通信リソースの割り当て、すなわち、IPアドレスの払い出しを行う。以下、無線LANアクセスポイント10Bによる無線LAN子機8へのIPアドレスの払い出し処理について、無線LANアクセスポイント10Bへの無線LAN子機8の接続フローを示す
図15乃至
図17を用いて説明する。ただし、第1実施形態で実行される接続フローと共通する処理については説明を簡略化する。
【0118】
まず、
図15に示すように、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Bの近傍に接近したことを受けて(ステップS101)、無線LANアクセスポイント10Bは無線LAN子機8からの電波を受信する(ステップS102)。
【0119】
無線LAN子機8からの電波の受信を受けて、無線LANアクセスポイント10Bは、蓄積されている接続実績情報に基づき、無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを積極的に利用するか否かの積極利用性判定を行う(ステップS103)。
【0120】
積極利用性判定の結果、積極利用が見込める無線LAN子機8に対してはIPアドレスを払い出してもよいため、
図16に示すフローAを適用して無線LANアクセスポイント10Bへの接続処理が行われる。無線LANアクセスポイント10Bは、まず、無線LAN子機8からの電波到達電力がRLTH以上かどうか判定する(ステップS111)。電波到達電力がRLTH未満の無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Bは、無線LANリンク接続処理を行わない。
【0121】
電波到達電力がRLTH以上の場合、無線LANアクセスポイント10Bは、無線LAN子機8に対する無線LANリンク接続処理を行い(ステップS112)、無線LANリンク接続処理が完了したらそのままIPアドレス払い出し処理に移行する(ステップS113)。
【0122】
IPアドレス払い出し処理の完了により、無線LANアクセスポイント10Bは、無線LAN子機8にユーザ認証画面表示を行わせる(ステップS120)。ユーザ認証画面表示後、Tb以内にユーザ認証画面に遷移した場合、無線LAN子機8を所持するユーザに対する公衆無線LAN接続ユーザの認証処理が行われる(ステップS116)。ユーザ認証処理の完了により、ユーザは無線LAN子機8によるインターネットへの接続と利用が可能となる(ステップS117)。一方、ユーザ認証画面表示からTbを越えた場合、そのユーザには積極利用がないと判断することができることから、無線LANアクセスポイント10Bは、無線LAN子機8からIPアドレスを回収するIPアドレス返却処理を行う(ステップS118)。
【0123】
積極利用性判定の結果、公衆無線LANサービスの積極利用が見込めない無線LAN子機8に対しては極力IPアドレスを払い出したくない。このため、
図17に示すフローBを適用して無線LANアクセスポイント10Bへの接続処理が行われる。フローBは、
図16に示すフローAには存在しない「後方保護処理」のステップS119を備えている。「後方保護処理」の内容は第1実施形態と共通である。無線LANリンク接続処理の終了後、無条件でIPアドレス払い出し処理を完遂させずに「後方保護処理」を実行する。これにより、公衆無線LANサービスの積極利用のないユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことなく、公衆無線LANサービスを積極利用したいユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことができる。
【0124】
3-6.第2実施形態に係る無線LANアクセスポイントの効果
上述の通り、無線LANアクセスポイント10Bによれば、ホットスポット型の公衆無線LANサービスにおいて無駄なIPアドレスの払い出しを極力抑制することができる。その結果、本当にIPアドレス払い出しが必要な無線LAN子機8に対してIPアドレスの払い出しを行うことができるようになる。
【0125】
また、無線LAN子機8の接続処理では、無線LANアクセスポイント10Bは、ユーザ認証画面表示から一定時間経過後にIPアドレス返却処理を行う。これにより無駄なIPアドレスの早期回収を行うことができる。さらに、無線LANリンク接続処理の終了後の後方保護処理により、実際に公衆無線LANサービスを利用したい無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを利用できない事態を回避することができる。
【0126】
4.第3実施形態に係る無線LANアクセスポイント(鉄道型)
4-1.無線LANアクセスポイントの構成
図18は、第3実施形態に係る鉄道型の無線LANアクセスポイント10Cの構成を示すブロック図である。無線LANアクセスポイント10Cは、IPネットワークインタフェース11、無線LAN接続処理部12C、無線LAN通信部13、接続実績情報蓄積部100、及び接続制御部102を備える。第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aや第2実施形態に係るホットスポット型の無線LANアクセスポイント10Bとは、無線LAN接続処理部12Cの構成に違いがある。
【0127】
無線LAN接続処理部12Cは、無線LANアクセスポイント10Cに無線LAN子機8が接続する際の処理を行う。無線LAN接続処理部12Cは、無線LANリンク接続処理部14、IPアドレス払い出し処理部15、及びトラヒック監視部19を備える。鉄道型の無線LANアクセスポイント10Cでは、公衆無線LANサービスの利用にユーザ認証処理を必要としない。ゆえに、無線LAN接続処理部12Cは、第2実施形態に係る無線LAN接続処理部12Bとは異なり、画面表示処理部もユーザ認証処理部も備えていない。
【0128】
接続実績情報蓄積部100と接続制御部102の機能は、基本的には第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aのものと同じである。接続実績情報蓄積部100は、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Cに接続した時の無線LANアクセスポイント10Cの「処理ログ」を加工した「接続実績情報」を蓄積する。接続実績情報蓄積部100に蓄積された情報は、無線LANコントローラ4に集約される。接続制御部102は、蓄積された接続実績情報を参照し、無線LANアクセスポイント10Cに接続してきた無線LAN子機8が積極的な公衆無線LAN利用ユーザなのか否かを判定する。
【0129】
4-2.接続実績情報の詳細
図19は、無線LANアクセスポイント10Cにおける「処理ログ」の例を示すテーブルである。第1実施形態に係るコンビニエンスストア型の無線LANアクセスポイント10Aや第2実施形態に係るホットスポット型の無線LANアクセスポイント10Bとは、記録される「処理内容」に違いがある。無線LANアクセスポイント10Cに無線LAN子機8が接続する流れでは、「処理内容」は以下のいずれかとなる。
・無線LANリンク接続処理開始
・無線LANリンク接続処理終了
・IPアドレス払い出し処理開始
・IPアドレス払い出し処理終了
・インターネット接続利用状態
・IPアドレス返却処理開始
・IPアドレス返却処理完了
【0130】
図20は、無線LANアクセスポイント10Cによる処理ログから接続実績情報への変換例を具体的に示す図である。
図20に示す例では、MACアドレス“yy:yy:yy:yy:yy:yy”を有する無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Aに2021年2月1日金曜日に接続し、午前8時1分2秒に処理が開始されたことが処理ログに残っている。また、処理ログに残っている端末接続時の最大到達電力は-85dBmである。これらの情報は、そのまま接続実績情報とされる。
【0131】
図20に示す例では、無線LANリンク接続処理の後に後方保護処理が行われた形跡が処理ログに残っていない。後方保護処理が行われていない場合、接続実績情報における端末接続時の積極利用性判定結果は、積極利用性“あり”とされる。また、処理ログには、IPアドレス返却処理に移行する前にインターネットトラヒックが発生した形跡が残っている。このことから、払い出されたIPアドレスは無駄にはならなかったと判定することができるので、接続実績情報における実際の利用結果は、実際利用“あり”とされる。
【0132】
4-3.無線LAN子機の状態について
本実施形態では、無線LANアクセスポイント10Cとの関係において、無線LAN子機8の“状態”は以下のように定義される。「インターネット利用可能」状態を除く各状態の内容は、第1実施形態で説明した通りである。
・「リンク未確立」状態
・「リンク確立」状態
・「IPアドレス割当済」状態
・「インターネット利用可能」状態
・「インターネット利用中」状態
【0133】
「インターネット利用可能」状態とは、インターネット接続が可能な状態である。これは鉄道型の無線LANアクセスポイント10Cとの関係において特有の状態である。鉄道型では、IPアドレスが割り当てられれば無条件でインターネット接続が可能な状態となる。積極利用性のあり/なしを区別するため、一定時間内にある程度のトラヒックが発生した場合には「インターネット利用中」状態に遷移させ、そうでなければ割り当てたIPアドレスを回収し「リンク未確立」状態に遷移させる。
【0134】
本実施形態では、無線LAN子機8の“状態”は、無線LAN子機8の無線LANアクセスポイント10Cへの接続時、
図21に示すように遷移する。
図21は、無線LANアクセスポイント10Cとの関係における無線LAN子機8の状態の遷移を示すフローチャートである。
【0135】
本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態とは無線LAN子機8が「IPアドレス割当済」状態になった後の状態の遷移に違いがある。本実施形態では、「IPアドレス割当済」状態になった後、無線LAN子機8は無条件で「インターネット利用可能」状態に遷移する(ステップS15)。そして、「インターネット利用可能」状態になってから一定時間以内に一定量程度のトラヒック量があった場合、無線LAN子機8は「インターネット利用中」状態になる(ステップS14)。
【0136】
「インターネット利用可能」状態になってから一定時間以内に一定量程度のトラヒック量がない場合、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。また、「インターネット利用中」状態になった後、一定時間以内に一定量程度のトラヒック量がない場合も、無線LAN子機8に対しIPアドレス返却処理が実施される。これにより、無線LAN子機8は再び「リンク未確立」状態になる(ステップS11)。
【0137】
4-4.積極利用性判定についての説明
無線LANアクセスポイント10Cは、それ自身に或いは無線LANコントローラ4に蓄積された無線LAN子機8の接続実績情報に基づいて、無線LAN子機8の「インターネット利用中」状態への遷移の可能性を判定する。そして、「インターネット利用中」状態への遷移の可能性が高いと判定される無線LAN子機8に対し、「積極利用性あり」としてIPアドレス払い出し処理を行う。一方、「インターネット利用中」状態に遷移しない傾向の無線LAN子機8に対しては、「積極利用性なし」としてIPアドレスの払い出しを抑制する。
【0138】
第1実施形態で説明した過去の接続実績情報を用いた無線LAN子機8の積極利用判定の具体例は、無線LANアクセスポイント10Cにも適用される。
【0139】
なお、無線LANアクセスポイント10Cでは、ユーザが公衆無線LANサービスを積極的に利用したいか否かにかかわらず全ての無線LAN子機8は最終段の「インターネット利用中」状態に遷移する。ゆえに、積極利用性のある/なしは、「インターネット利用中」状態に遷移した後で実際にトラヒックがどの程度流れたかによって区別することができる。このトラヒック量の情報と無線LAN子機8のMACアドレスとを無線LANアクセスポイント10Cへの到達電力と関連付けて蓄積することによって、MACアドレス毎の積極利用の傾向を把握することができる。
【0140】
4-5.積極利用性の判別結果に基づく通信リソース割当方法の説明
無線LANアクセスポイント10Cは、積極利用性判定の判定結果に基づいて無線LAN子機8への通信リソースの割り当て、すなわち、IPアドレスの払い出しを行う。以下、無線LANアクセスポイント10Cによる無線LAN子機8へのIPアドレスの払い出し処理について、無線LANアクセスポイント10Cへの無線LAN子機8の接続フローを示す
図22乃至
図24を用いて説明する。ただし、第1実施形態或いは第2実施形態で実行される接続フローと共通する処理については説明を簡略化する。
【0141】
まず、
図22に示すように、無線LAN子機8が無線LANアクセスポイント10Cの近傍に接近したことを受けて(ステップS101)、無線LANアクセスポイント10Cは無線LAN子機8からの電波を受信する(ステップS102)。
【0142】
無線LAN子機8からの電波の受信を受けて、無線LANアクセスポイント10Cは、蓄積されている接続実績情報に基づき、無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを積極的に利用するか否かの積極利用性判定を行う(ステップS103)。
【0143】
積極利用性判定の結果、公衆無線LANサービスの積極利用が見込める無線LAN子機8に対してはIPアドレスを払い出してもよいため、
図23に示すフローAを適用して無線LANアクセスポイント10Cへの接続処理が行われる。無線LANアクセスポイント10Cは、まず、無線LAN子機8からの電波到達電力がRLTH以上かどうか判定する(ステップS111)。電波到達電力がRLTH未満の無線LAN子機8に対しては、無線LANアクセスポイント10Cは、無線LANリンク接続処理を行わない。
【0144】
電波到達電力がRLTH以上の場合、無線LANアクセスポイント10Cは、無線LAN子機8に対する無線LANリンク接続処理を行い(ステップS112)、無線LANリンク接続処理が完了したらそのままIPアドレス払い出し処理に移行する(ステップS113)。IPアドレス払い出し処理の完了により、ユーザは無線LAN子機8によるインターネットへの接続と利用が可能となる(ステップS117)。
【0145】
無線LAN子機8によるインターネット接続利用が可能になっている間、無線LANアクセスポイント10Cは、所定時間でのトラヒックが一定量以上かどうか判定する(ステップS121)。一定量以上のトラヒックが保たれている間は、無線LAN子機8によるインターネット接続利用が可能な状態が維持される(ステップS117)。一方、所定時間でのトラヒックが一定量未満の場合、そのユーザには積極利用がないと判断できることから、無線LANアクセスポイント10Cは、無線LAN子機8からIPアドレスを回収するIPアドレス返却処理を行う(ステップS118)。
【0146】
積極利用性判定の結果、公衆無線LANサービスの積極利用が見込めない無線LAN子機8に対しては極力IPアドレスを払い出したくない。このため、
図24に示すフローBを適用して無線LANアクセスポイント10Cへの接続処理が行われる。フローBは、
図23に示すフローAには存在しない「後方保護処理」のステップS119を備えている。「後方保護処理」の内容は第1実施形態及び第2実施形態と共通である。無線LANリンク接続処理の終了後、無条件でIPアドレス払い出し処理を完遂させずに「後方保護処理」を実行する。これにより、公衆無線LANサービスの積極利用のないユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことなく、公衆無線LANサービスを積極利用したいユーザの無線LAN子機8にIPアドレスを払い出すことができる。
【0147】
4-6.第3実施形態に係る無線LANアクセスポイントの効果
上述の通り、無線LANアクセスポイント10Cによれば、鉄道型の公衆無線LANサービスにおいて無駄なIPアドレスの払い出しを極力抑制することができる。その結果、本当にIPアドレス払い出しが必要な無線LAN子機8に対してIPアドレスの払い出しを行うことができるようになる。
【0148】
また、無線LAN子機8の接続処理では、無線LANアクセスポイント10Cは、インターネット接続利用時の所定時間でのトラヒック量が一定量未満であればIPアドレス返却処理を行う。これにより無駄なIPアドレスの早期回収を行うことができる。さらに、無線LANリンク接続処理の終了後の後方保護処理により、実際に公衆無線LANサービスを利用したい無線LAN子機8が公衆無線LANサービスを利用できない事態を回避することができる。
【0149】
5.各実施形態に共通の無線LANアクセスポイントのハードウェア構成の例
本開示の各実施形態に共通の無線LANアクセスポイント10のハードウェア構成について
図25を参照して説明する。
図25は、無線LANアクセスポイント10のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【0150】
図2、
図11、及び
図18に示す無線LANアクセスポイント10A,10B,10Cの各機能は、
図25に示すように、CPU21とフラッシュメモリ22とRAM23とにより実現される。フラッシュメモリ22には、CPU21で実行可能な1又は複数のプログラムとそれに関連する種々の情報とが記憶されている。CPU21がプログラムを実行することにより、無線LANアクセスポイント10A,10B,10Cによる各機能、具体的には、無線LAN接続処理部12A,12B,12C、接続実績情報蓄積部100、及び接続制御部102が実現される。なお、プログラムは、補助記憶装置であるコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されることもできるし、ネットワークを通して提供することも可能である。
【0151】
6.その他
上記実施形態は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々に変形して実施することができる。すなわち、上記実施形態において各要素の個数、数量、量、範囲などの数に言及されている場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、本開示に係る技術が限定されるものではない。また、上記実施形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、本開示に係る技術に必ずしも必須のものではない。
【0152】
また、本開示の無線通信システムは、上記実施形態のような公衆無線LANシステムに限らず、企業内無線LANシステム、4G及び5G携帯電話サービスにおいて携帯電話基地局と端末とを接続するシステム、衛星IoTシステムを含む様々な無線通信システムに適用することができる。
【符号の説明】
【0153】
2 公衆無線LANシステム
4 無線LANコントローラ
6 IPネットワーク
8 無線LAN子機
10,10A,10B,10C 無線LANアクセスポイント
11 IPネットワークインタフェース
12A,12B,12C 無線LAN接続処理部
13 無線LAN通信部
100 接続実績情報蓄積部
102 接続制御部