(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物、硬化性組成物、硬化物
(51)【国際特許分類】
C08G 59/22 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
C08G59/22
(21)【出願番号】P 2024538739
(86)(22)【出願日】2024-04-11
(86)【国際出願番号】 JP2024014628
【審査請求日】2024-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2023073461
(32)【優先日】2023-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149445
【氏名又は名称】大野 孝幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163290
【氏名又は名称】岩本 明洋
(74)【代理人】
【識別番号】100186646
【氏名又は名称】丹羽 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 肇
(72)【発明者】
【氏名】桜井 美弥
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-073453(JP,A)
【文献】特開平11-269159(JP,A)
【文献】特開2012-197341(JP,A)
【文献】特開2001-316312(JP,A)
【文献】特開2023-032668(JP,A)
【文献】特表2008-505154(JP,A)
【文献】特開2000-347203(JP,A)
【文献】国際公開第2024/018980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00-59/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、
一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、
6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下である
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物。
【請求項2】
前記化合物(A2)が、グルコースのグリシジルエーテル体(下記式(A2-1)で表される化合物)、1,4-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-2)で表される化合物)、1,2-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-3)で表される化合物)及び1,3-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-4)で表される化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物。
【化1】
(前記式(A2-1)~(A2-4)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【請求項3】
前記化合物(B2)が、下記式(B2-1)~(B2-7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物。
【化2】
(前記式(B2-1)~(B2-7)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【請求項4】
グリセリンのグリシジルエーテル体(下記式(C)で表される化合物)を含有する請求項1記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物。
【化3】
(前記式(C)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【請求項5】
バイオマス資源由来の1,6-ヘキサンジオール組成物から調製されるものである請求項1記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を含有する硬化性組成物。
【請求項7】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂を含有する請求項6記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である請求項7記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である請求項7記載の硬化性組成物。
【請求項10】
ポリアミン化合物を含有する請求項6記載の硬化性組成物。
【請求項11】
酸無水物を含有する請求項6記載の硬化性組成物。
【請求項12】
フェノール性水酸基含有樹脂を含有する請求項6記載の硬化性組成物。
【請求項13】
インキ、コーティング、塗料、接着剤及びクラック補修剤からなる群より選択される少なくとも1種の用途に用いられる請求項6記載の硬化性組成物。
【請求項14】
請求項6記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物、硬化性組成物、及び硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー(HDG)は、原料であるヘキサンジオール(HD)をグリシジルエーテル化して合成されている。HDGの1つであるヘキサンジオールジグリシジルエーテルは、原料であるHDをジグリシジルエーテル化して合成されている。そして、HDGを合成する際には、HDGとHDの反応も起こりHDGのダイマー、トリマーなどのオリゴマー体も副生成物として合成される。
【0003】
原料であるHDは、不純物を含有するHD組成物として製造されている。HD組成物の1つである1,6-ヘキサンジオール(1,6-HD)組成物は、従来から、石油化学製品であるシクロヘキサンを酸化することにより生成するアジピン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、グルタル酸等のカルボン酸混合物を、エステル化した後に水素化し、蒸留精製することで生産されている。
【0004】
一方、近年の環境意識の高まりの中、地球温暖化に影響を及ぼす石油由来の原料ではなく、バイオマス資源由来の原料が望まれており、1,6-ヘキサンジオールにおいてもバイオマス資源由来の原料から微生物により、バイオマス資源由来の1,6-ヘキサンジオール組成物を生産する試みも行われているが上市されている製品は無い。例えば、特許文献1、2では、酵素を使用した1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法に関して、酵素の遺伝子情報及び代謝経路・精製による製造方法に関する記載が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-114227号公報
【文献】特許6680671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物の純度や性能は、原料であるHD組成物の純度や不純物の影響を受けることとなる。しかしながら、特許文献1、2では、環境に配慮したバイオマス資源由来の1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法が開示されているものの、該1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれる不純物に関しては、開示されていない。
【0007】
本発明者らは、特許文献1、2に記載の製造方法により得られる1,6-ヘキサンジオール組成物には、不純物として脂環式ジオールや6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体が多量に含まれることを確認した。
【0008】
更に、本発明者らは、石油化学製品であるシクロヘキサンを酸化することにより生成するアジピン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、グルタル酸等のカルボン酸混合物を、エステル化した後に水素化し、蒸留精製するなどの有機合成による製造方法においても、同様に、得られる1,6-ヘキサンジオール組成物には、不純物として脂環式ジオールや6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体が多量に含まれることを確認した。
【0009】
一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)や6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)のような水酸基を有する化合物がHD組成物に存在すると、ヘキサンジオールをグリシジルエーテル化する反応において、前記化合物(A1)や前記化合物(B1)のような水酸基を有する化合物も、水酸基の全て又は一部がグリシジルエーテル化されてしまい、不純物としてヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に残留する。また、未反応の前記化合物(A1)や前記化合物(B1)も不純物としてヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に残留する。そして、これらの不純物がヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物の性能に悪影響を及ぼすことが本発明者らの検討の結果、明らかとなった。
【0010】
本発明は、前記課題を解決し、物性に優れる硬化物を提供可能なヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物、及びこれを用いた硬化性組成物、硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、前記化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化物、並びに、前記化合物(B1)及び前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化物の含有量をそれぞれ特定量以下にすることにより、物性に優れる硬化物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明(1)は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下であるヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。
【0012】
本発明(2)は、前記化合物(A2)が、グルコースのグリシジルエーテル体(下記式(A2-1)で表される化合物)、1,4-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-2)で表される化合物)、1,2-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-3)で表される化合物)及び1,3-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-4)で表される化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である本発明(1)記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。
【化1】
(前記式(A2-1)~(A2-4)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0013】
本発明(3)は、前記化合物(B2)が、下記式(B2-1)~(B2-7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である本発明(1)又は(2)記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。
【化2】
(前記式(B2-1)~(B2-7)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0014】
本発明(4)は、グリセリンのグリシジルエーテル体(下記式(C)で表される化合物)を含有する本発明(1)~(3)のいずれかに記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。
【化3】
(前記式(C)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0015】
本発明(5)は、バイオマス資源由来の1,6-ヘキサンジオール組成物から調製されるものである本発明(1)~(4)のいずれかに記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。
【0016】
本発明(6)はまた、本発明(1)~(5)のいずれかに記載のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を含有する硬化性組成物に関する。
【0017】
本発明(7)は、前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂を含有する本発明(6)記載の硬化性組成物に関する。
【0018】
本発明(8)は、前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールF型エポキシ樹脂である本発明(7)記載の硬化性組成物に関する。
【0019】
本発明(9)は、前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂が、ビスフェノールA型エポキシ樹脂である本発明(7)又は(8)記載の硬化性組成物に関する。
【0020】
本発明(10)は、ポリアミン化合物を含有する本発明(6)~(9)のいずれかに記載の硬化性組成物に関する。
【0021】
本発明(11)は、酸無水物を含有する本発明(6)~(10)のいずれかに記載の硬化性組成物に関する。
【0022】
本発明(12)は、フェノール性水酸基含有樹脂を含有する本発明(6)~(11)のいずれかに記載の硬化性組成物に関する。
【0023】
本発明(13)は、インキ、コーティング、塗料、接着剤及びクラック補修剤からなる群より選択される少なくとも1種の用途に用いられる本発明(6)~(12)のいずれかに記載の硬化性組成物に関する。
【0024】
本発明(14)はまた、本発明(6)~(13)のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなることを特徴とする硬化物に関する。
【発明の効果】
【0025】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下であるため、物性に優れる硬化物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物>
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下である。これにより、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、エポキシ樹脂(重合性希釈剤)として好適に使用でき、物性、特に、引張強度、硬さ、圧縮強度、曲げ強度に優れる硬化物を提供できる。
このような作用効果が発揮される理由は明らかではないが、以下のように推測される。
【0027】
化合物(A1)及び/又は(B1)はグリシジル基を有しないため、硬化反応に寄与せず、これらを含有した場合、その硬化物の透明性、引張強度、硬さ、圧縮強度、曲げ強度の低下の原因となる。化合物(A2)はその剛直な構造とその立体障害からグリシジル基の反応性が低下し硬化物の物性低下をもたらす。そもそも(A1)が二級の水酸基でグリシジル化の進行に難があり、1官能のグリシジル基を多く含みこれが硬化時の反応停止剤となり物性低下の原因となる。(B2-1)~(B2-4)も1官能のグリシジル体であり同様に硬化物の物性低下をもたらす。(B2-5)~(B2-6)は分子量が大きく硬化性組成物を増粘させ、反応性の低下をもたらし硬化物の物性低下につながる。
【0028】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下である。
【0029】
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー(HDG)としては、以下の式(HDG)で表される化合物である。
【化4】
(式中、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。nは0以上の整数を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0030】
前記式(HDG)において、nは0以上の整数を表すが、上限は好ましくは5以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは3以下である。
【0031】
本明細書において、2級水酸基とは、水酸基が結合する炭素原子が第2級炭素原子である水酸基を意味する。
本明細書において、化合物のグリシジルエーテル化合物とは、化合物のグリシジルエーテル体を意味する。
【0032】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテルとしては、ヘキサンジオールモノグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、より物性に優れる硬化物がより好適に得られるという理由から、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0033】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテルのオリゴマー体としては、ヘキサンジオールグリシジルエーテルのモノグリシジル体、ヘキサンジオールグリシジルエーテルのジグリシジル体等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、より物性に優れる硬化物がより好適に得られるという理由から、ヘキサンジオールジグリシジルエーテルのジグリシジル体が好ましい。
【0034】
ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー(HDG)としては、通常は、多量のヘキサンジオールグリシジルエーテルを含み、副生成物として少量のヘキサンジオールグリシジルエーテルのオリゴマーが含まれる。ヘキサンジオールグリシジルエーテル及びそのオリゴマー(HDG)100質量%中のヘキサンジオールグリシジルエーテルの含有量は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。
【0035】
前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーが有する水酸基及び/又はグリシジルエーテル基の位置は、特に限定されず、例えば、ヘキサンジオール構造単位中の1,2位、1,3位、1,4位、1,5位、1,6位、2,5位、2,4位、2,3位、3,4位等が挙げられる。なかでも、より物性に優れる硬化物がより好適に得られるという理由から、1,6位が好ましい。よって、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーとしては、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーが特に好ましい。
【0036】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物において、前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーの含有量(前記ヘキサンジオールグリシジルエーテル及びそのオリゴマーの合計含有量)は、好ましくは70.00~99.99質量%、より好ましくは80.00~99.99質量%、更に好ましくは90.00~99.99質量%である。前記化合物(A1)及び前記化合物(A2)の合計含有量、前記化合物(B1)及び前記化合物(B2)の合計含有量を前記範囲内としつつ、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物の純度を前記範囲内とすることにより、本発明の効果がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により測定される値である。
【0037】
前記一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)としては、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物であれば特に限定されず、例えば、2,3-ブチレングリコール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、ボレミトールに代表される脂肪族ポリオール;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコース、フルクトース、イノシトール、クエルシトールに代表される脂環族ポリオール;及びこれらの化合物が任意の組合せで脱水縮合してなるオリゴマー;等が挙げられる。これらは単独でもよく2種以上でもよい。なかでも、硬化物の物性への影響が大きいことから、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコースであってもよい。
【0038】
前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)としては、前記化合物(A1)のグリシジルエーテル体であれば特に限定されず、例えば、2,3-ブチレングリコール、エリスリトール、トレイトール、アラビトール、キシリトール、リビトール、イジトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、ボレミトールに代表される脂肪族ポリオールのグリシジルエーテル体;1,2-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコース、フルクトース、イノシトール、クエルシトールに代表される脂環族ポリオールのグリシジルエーテル体;及び前記脂肪族ポリオール、前記脂環族ポリオールが任意の組合せで脱水縮合してなるオリゴマーのグリシジルエーテル体;等が挙げられる。これらは単独でもよく2種以上でもよい。なお、前記化合物(A2)においては、前記化合物(A1)が有する水酸基の全て又は一部がグリシジルエーテル化されている。
【0039】
なかでも、硬化物の物性への影響が大きいことから、グルコースのグリシジルエーテル体(下記式(A2-1)で表される化合物)、1,4-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-2)で表される化合物)、1,2-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-3)で表される化合物)及び1,3-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-4)で表される化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよく、グルコースのグリシジルエーテル体(下記式(A2-1)で表される化合物であって、全てのRがグリシジル基である化合物)、1,4-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-2)で表される化合物であって、全てのRがグリシジル基である化合物)、1,2-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-3)で表される化合物であって、全てのRがグリシジル基である化合物)及び1,3-シクロヘキサンジオールのグリシジルエーテル体(下記式(A2-4)で表される化合物であって、全てのRがグリシジル基である化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよい。
【化5】
(前記式(A2-1)~(A2-4)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0040】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物において、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量(好ましくは1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコース、前記式(A2-1)~(A2-4)で表される化合物の合計含有量)は、100質量ppm以下であるが、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは0質量ppm(含まない)である。これにより、物性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
本明細書において、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定される値である。
【0041】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下である。
【0042】
前記化合物(B1)は、6-ヒドロキシヘキサナール又はその誘導体である。
前記6-ヒドロキシヘキサナールの誘導体としては、6-ヒドロキシヘキサナール(下記式(B1-1)で表される化合物)の誘導体であれば特に限定されず、例えば、環化物、アルドール縮合物、グリセリン反応物、ヘキサンジオール(HDO)反応物等が挙げられ、具体的には、例えば、下記式(B1-2)~(B1-7)で表される化合物等が挙げられる。これらは単独でもよく2種以上でもよい。
【化6】
【0043】
6-ヒドロキシヘキサナール又はその誘導体(B1)としては、硬化物の物性への影響が大きいことから、6-ヒドロキシヘキサナールであってもよい。
【0044】
前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)としては、前記化合物(B1)のグリシジルエーテル体であれば特に限定されず、例えば、6-ヒドロキシヘキサナールのグリシジルエーテル体、6-ヒドロキシヘキサナールの環化物のグリシジルエーテル体、6-ヒドロキシヘキサナールのアルドール縮合物のグリシジルエーテル体、6-ヒドロキシヘキサナールのグリセリン反応物のグリシジルエーテル体、6-ヒドロキシヘキサナールのヘキサンジオール(HDO)反応物のグリシジルエーテル体等が挙げられる。これらは単独でもよく2種以上でもよい。なお、前記化合物(B2)としては、前記化合物(B1)が有する水酸基の全て又は一部がグリシジルエーテル化されている。
【0045】
なかでも、硬化物の物性への影響が大きいことから、下記式(B2-1)~(B2-7)で表される化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよく、下記式(B2-1)~(B2-7)で表される化合物(式中の全てのRがグリシジル基である化合物)からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であってもよく、下記式(B2-1)で表される化合物であってもよい。
【化7】
(前記式(B2-1)~(B2-7)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0046】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物において、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量(好ましくは6-ヒドロキシヘキサナール、6-ヒドロキシヘキサナールのグリシジルエーテル体の含有量)は、1500質量ppm以下であるが、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、特に好ましくは0質量ppm(含まない)である。これにより、物性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
本明細書において、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定される値である。
【0047】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、グリセリンのグリシジルエーテル体(下記式(C)で表される化合物)を含有することが好ましい。これにより、より物性(特に、引張強度、硬さ、圧縮強度、曲げ強度)に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。これは、グリセリングリシジルエーテルとヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーとの相溶性が良い事がグリセリングリシジルエーテルのもたらす高架橋密度構造を硬化物に理想的に導入できた事に由来すると推測される。下記式(C)で表される化合物は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【化8】
(前記式(C)において、Rは、同一又は異なって、水素原子又はグリシジル基を表す。ただし、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基である。)
【0048】
前記式(C)において、Rのうち少なくとも1つは、グリシジル基であるが、Rのうち少なくとも2つは、グリシジル基であることが好ましく、全てのRがグリシジル基であることがより好ましい。
【0049】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物において、グリセリンのグリシジルエーテル体(好ましくはグリセリントリグリシジルエーテル)の含有量は、好ましくは0.1~50000ppm、より好ましくは1~10000ppm、更に好ましくは5~10000ppmである。グリセリンのグリシジルエーテル体の含有量が0.1ppm以上であると、得られる硬化物は架橋密度が向上し曲げ強度、弾性率、引張強度に優れる傾向があり、グリセリンのグリシジルエーテル体の含有量が50000ppm以下であると、得られる硬化物は硬度、弾性率、引張強度に優れる傾向がある。
本明細書において、グリセリンのグリシジルエーテル体の含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により測定される値である。
【0050】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、例えば、1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれる1,6-ヘキサンジオールが有する二つの水酸基のうちの一方又は両方を、公知の方法に従って、エピクロロヒドリン等のエピハロヒドリンにより変性することにより製造すればよい。
【0051】
本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、前記化合物(A1)及び前記化合物(A2)の合計含有量、前記化合物(B1)及び前記化合物(B2)の合計含有量が前記範囲内となるように製造すればよい。ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に含まれる前記化合物(A1)及び前記化合物(A2)の合計含有量、前記化合物(B1)及び前記化合物(B2)の合計含有量が前記範囲内となるようにヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を製造するためには、例えば、前記化合物(A1)の合計含有量が100質量ppm以下、前記化合物(B1)の合計含有量が1500質量ppm以下であるヘキサンジオール組成物(好ましくは1,6-ヘキサンジオール組成物)を原料として、公知の方法に従って、エピハロヒドリンと反応させればよい。もちろん不純物量が多いヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を製造し、該組成物から不純物を精製することによって、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を製造してもよい。
【0052】
前記化合物(A1)の合計含有量が100質量ppm以下、前記化合物(B1)の合計含有量が1500質量ppm以下である1,6-ヘキサンジオール組成物は、石油化学製品であるシクロヘキサンを酸化することにより生成するアジピン酸、6-ヒドロキシカプロン酸、グルタル酸等のカルボン酸混合物を、エステル化した後に水素化し、蒸留精製するなどの有機合成による製造方法により得られたものであってもよく、バイオマス資源由来の原料から微生物を用いた製造方法により得られたものであってもよい。製造方法は限定されない、いずれかの製造方法により得られた1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれる前記化合物(A1)、前記化合物(B1)を除去するために、例えば、後述する工程(2)を行うことにより、前記化合物(A1)の合計含有量が100質量ppm以下、前記化合物(B1)の合計含有量が1500質量ppm以下である1,6-ヘキサンジオール組成物を製造できる。
【0053】
前記化合物(A1)の合計含有量が100質量ppm以下、前記化合物(B1)の合計含有量が1500質量ppm以下である1,6-ヘキサンジオール組成物としては、具体的には、以下の環境に優しい製造方法(本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法)により得られた1,6-ヘキサンジオール組成物(バイオマス資源から誘導された1,6-ヘキサンジオール組成物)を好適に使用できる。
【0054】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法では、バイオマス資源由来の原料から1,6-ヘキサンジオール組成物を生産するため、二酸化炭素排出量削減が可能となる等、環境に配慮した製造方法である。
【0055】
二酸化炭素濃度増加に伴う温暖化、世界的な異常気象の発生からサスティナビリティーを重視した企業活動が求められるようになってきたが、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を、バイオマス資源由来の1,6-ヘキサンジオール組成物から調製されるものとすることにより、環境に配慮した製造方法により得られたヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物とすることができる。
【0056】
<本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法>
まず、本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法により得られる1,6-ヘキサンジオール組成物(本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物とも記載する)について説明する。
【0057】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物は、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量が100質量ppm以下である。
【0058】
一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)としては、硬化物の物性への影響が大きいことから、1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコースであってもよい。
【0059】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物において、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量(好ましくは1,2-シクロヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、グルコースの合計含有量)は、100質量ppm以下であるが、好ましくは50質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下、更に好ましくは5質量ppm以下、特に好ましくは0質量ppm(含まない)である。これにより、物性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
本明細書において、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定される値である。
【0060】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物は、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量が1500質量ppm以下である。
【0061】
6-ヒドロキシヘキサナール及び/又はその誘導体(B1)としては、硬化物の物性への影響が大きいことから、6-ヒドロキシヘキサナールであってもよい。
【0062】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物において、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量(好ましくは6-ヒドロキシヘキサナールの含有量)は、1500質量ppm以下であるが、好ましくは1000質量ppm以下、より好ましくは500質量ppm以下、更に好ましくは200質量ppm以下、特に好ましくは0質量ppm(含まない)である。これにより、物性に優れる硬化物が得られる傾向がある。
本明細書において、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)により測定される値である。
【0063】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物において、グリセリンの含有量は、好ましくは0.1~50000ppm、より好ましくは1~10000ppm、更に好ましくは5~10000ppmである。グリセリンの含有量が0.1ppm以上であると、得られる硬化物は架橋密度が向上し曲げ強度、弾性率、引張強度に優れる傾向があり、グリセリンのグリシジルエーテル体の含有量が50000ppm以下であると、得られる硬化物は硬度、弾性率、引張強度に優れる傾向がある。
本明細書において、グリセリンの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により測定される値である。
【0064】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物において、1,6-ヘキサンジオールの含有量は、好ましくは96.00~99.99質量%、より好ましくは98.00~99.99質量%、更に好ましくは99.50~99.99質量%である。前記化合物(A1)の合計含有量、前記化合物(B1)の合計含有量を前記範囲内としつつ、1,6-ヘキサンジオール組成物の純度を前記範囲内とすることにより、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、1,6-ヘキサンジオールの含有量は、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)により測定される値である。
【0065】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物は、前記化合物(A1)の合計含有量、前記化合物(B1)の合計含有量が前記範囲内となるように製造すればよい。
【0066】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物としては、具体的には、以下の環境に優しい製造方法(本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法)により得られた1,6-ヘキサンジオール組成物(バイオマス資源から誘導された1,6-ヘキサンジオール組成物)を好適に使用できる。
【0067】
次に、本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法について説明する。
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法は、バイオマス資源由来の原料から得られた6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体から、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産する工程(1)と、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物を、イオン交換及び/又は蒸留により精製する工程(2)とを含む。
【0068】
<<工程(1)>>
工程(1)は、バイオマス資源由来の原料から得られた6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体から、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産する工程である。ここで、バイオマス資源由来の原料から得られた6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体から、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産するとは、バイオマス資源由来の原料から、6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体を経由して、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産することを意味する。6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体を経由するとは、6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体を経ていればよく、例えば、微生物の細胞内において、バイオマス資源由来の原料から6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体を経て1,6-ヘキサンジオール組成物に変換する工程であってもよく、微生物によってバイオマス資源由来の原料から6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体を生産し該化合物を含む培養液をそのまま用いて微生物によって1,6-ヘキサンジオール組成物に変換する工程であってもよく、前記培養液に対して精製を行い、異なる反応槽において該化合物を微生物によって1,6-ヘキサンジオール組成物に変換する工程であってもよい。
【0069】
6-ヒドロキシカプロン酸の誘導体としては、6-ヒドロキシカプロン酸の誘導体であれば特に限定されず、例えば、6-ヒドロキシカプロン酸のチオエステルである6-ヒドロキシ-ヘキサノイル-CoA、6-ヒドロキシカプロン酸の環化物、6-ヒドロキシカプロン酸同士の縮合物、6-ヒドロキシカプロン酸と1,6-ヘキサンジオールの縮合物などのエステル化合物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、6-ヒドロキシカプロン酸のチオエステルである6-ヒドロキシ-ヘキサノイル-CoAが好ましい。
本明細書において、CoAとは、補酵素Aを意味する。
【0070】
前記6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体としては、6-ヒドロキシカプロン酸、6-ヒドロキシ-ヘキサノイル-CoAが好ましく、6-ヒドロキシカプロン酸がより好ましい。
【0071】
前記工程(1)が、70℃以下の条件で1,6-ヘキサンジオール組成物を生産する工程であることが好ましく、50℃以下の条件で1,6-ヘキサンジオール組成物を生産する工程であることがより好ましい。温度の下限は特に限定されないが、20℃以上が好ましい。比較的低温で生産を行うことにより、製造時の二酸化炭素排出量削減が可能となる上に、脱水を伴う環状化の様な副反応を低減でき、環状オリゴマー等の副生成物の生成を抑制できる。これにより、自動車内装材等で問題なるフォギングの抑制にもつながる。加えて、高分子鎖のパッキング阻害因子が低減化され、皮膜物性向上が可能である。
【0072】
前記工程(1)は、例えば、1,6-ヘキサンジオールを生産(生合成)可能な微生物を用いて行えばよい。1,6-ヘキサンジオールを生産可能な微生物としては、例えば、特開2020-114227号公報、特許6680671号公報に記載の微生物等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。当業者であれば、前記公報等の公知技術に基づいて、1,6-ヘキサンジオールを生産可能な微生物を容易に製造したり、入手したりすることが可能である。
【0073】
微生物内の代謝経路によって、3-オキソプロピオネート、3-ヒドロキシプロパナールが生産される。
【0074】
3-ヒドロキシプロパナールの微生物における生産の一例について説明する。特許6680671号公報の
図1等に記載の通り、微生物内において、ペントースリン酸経路(PP経路)等の解糖系の代謝経路によって、糖(五炭糖、六炭糖)から3-ホスホ-グリセルアルデヒドが生産される。同様に、微生物内において、代謝経路によって、グリセリンから3-ホスホ-グリセルアルデヒドが生産される。そして、3-ホスホ-グリセルアルデヒドから、微生物が有する複数の酵素が触媒する反応により、3-ヒドロキシプロパナールが生産される。また、ジオールデヒドラターゼ及び/又はグリセロールデヒドラターゼにより、グリセリンから1反応で3-ヒドロキシプロパナールが生産される。
【0075】
3-オキソプロピオネートの微生物における生産の一例について説明する。特許6680671号公報の
図1等に記載の通り、微生物内において、エムデン-マイヤーホフ経路(EM経路)等の解糖系の代謝経路によって、糖(五炭糖、六炭糖)から3-ホスホグリセリン酸、2-ホスホグリセリン酸が生産される。3-ホスホグリセリン酸、2-ホスホグリセリン酸から特許6680671号公報の表1等に記載される酵素、又はグリセリン酸キナーゼの逆反応を利用してグリセリン酸が生産される。グリセリン酸からジオールデヒドラターゼ及び/又はグリセロールデヒドラターゼにより、3-オキソプロピオネートが生産される。更に、TCA回路の代謝中間体であるオキサロ酢酸からケト酸デカルボキシラーゼによって1反応で生産することもできる。オキサロ酢酸はTCA回路を経ずともホスホエノールピルビン酸カルボキシラーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼによって糖から生産することもできる。
【0076】
微生物内の代謝経路によって生産される、3-オキソプロピオネート、3-ヒドロキシプロパナールから、例えば、特許6680671号公報の
図2~5に示されている種々の経路を利用して1,6-ヘキサンジオールが生産される。
3-オキソプロピオネート、3-ヒドロキシプロパナールから、1,6-ヘキサンジオールを生産可能な微生物、すなわち、1,6-ヘキサンジオールを生産可能な微生物の好適な1例としては、以下の微生物が挙げられる。
【0077】
4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸アルドラーゼ(特許6680671号公報の図中の2A)、4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸4-デヒドラターゼ(特許6680671号公報の図中の2B)、6-ヒドロキシ-3,4-デヒドロ-2-オキソヘキサン酸3-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2C)、6-ヒドロキシ-2-オキソヘキサン酸2-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2D)、2,6-ジヒドロキシ-ヘキサン酸CoA-トランスフェラーゼ(特許6680671号公報の図中の2E)、2,6-ジヒドロキシ-ヘキサノイル-CoA2-デヒドラターゼ(特許6680671号公報の図中の2F)、6-ヒドロキシ-2,3-デヒドロ-ヘキサノイル-CoA2,3-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2G)、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoA-トランスフェラーゼ(特許6680671号公報の図中の4F3)、6-ヒドロキシヘキサン酸1-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の5R)、及び6-ヒドロキシヘキサナール1-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の5S)からなる1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する微生物。
【0078】
前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する微生物としては、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する限り特に限定されず、例えば、原核生物、真核生物が挙げられる。
また、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する微生物としては、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有するように、前記遺伝子(酵素)の全て及び/又は一部が導入された遺伝子組み換え微生物であってもよい。例えば、使用しようとする微生物が前記10酵素のうち、8個の酵素しか有さない場合に、残り2個の酵素をコードする遺伝子を当該微生物に導入すればよい。また、使用しようとする微生物が前記10酵素のうち、一部の酵素しか有さない場合に、残りの酵素をコードする遺伝子を有する単一/複数の微生物を併用してもよい。
更に、前記微生物は、ジオールデヒドラターゼ及び/又はグリセロールデヒドラターゼをコードする遺伝子を有することが好ましい。
ここで、遺伝子の導入は、公知の手法により行うことができる。
【0079】
原核生物としては、例えば、細菌等が挙げられる。
真核生物としては、例えば、酵母、糸状菌等が挙げられる。
【0080】
細菌としては、例えば、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)に属する細菌、コリネ型細菌、バチルス属細菌、酢酸菌、放線菌、乳酸菌等が挙げられる。
【0081】
腸内細菌科に属する細菌としては、例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、エンテロバクター(Enterobacter)属、パントエア(Pantoea)属、クレブシエラ(Klebsiella)属、セラチア(Serratia)属、エルビニア(Erwinia)属、フォトラブダス(Photorhabdus)属、プロビデンシア(Providencia)属、サルモネラ(Salmonella)属、モルガネラ(Morganella)属等に属する菌が挙げられる。具体的には、NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Taxonomy/Browser/wwwtax.cgi?id=91347)で用いられている分類法により腸内細菌科に分類されている細菌を用いることができる。
【0082】
エシェリヒア属細菌としては、特に制限されないが、微生物学の専門家に知られている分類によりエシェリヒア属に分類されている細菌が挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、Neidhardtらの著書(Backmann, B. J. 1996. Derivations and Genotypes of some mutant derivatives of Escherichia coli K-12, p.2460-2488. Table 1. In F. D. Neidhardt (ed.), Escherichia coli and Salmonella Cellular and Molecular Biology/Second Edition, American Society for Microbiology Press, Washington, D.C.)に記載されたものが挙げられる。エシェリヒア属細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)が挙げられる。エシェリヒア・コリとしては、例えば、W3110株(ATCC 27325)やMG1655株(ATCC 47076)等のエシェリヒア・コリK-12株;エシェリヒア・コリK5株(ATCC 23506);BL21(DE3)株等のエシェリヒア・コリB株;及びそれらの派生株が挙げられる。
【0083】
エンテロバクター属細菌としては、例えば、エンテロバクター・アグロメランス(Enterobacter agglomerans)やエンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)が挙げられる。パントエア属細菌としては、例えば、パントエア・アナナティス(Pantoea ananatis)、パントエア・スチューアルティ(Pantoea stewartii)、パントエア・アグロメランス(Pantoea agglomerans)、パントエア・シトレア(Pantoea citrea)が挙げられる。エルビニア属細菌としては、例えば、エルビニア・アミロボーラ(Erwinia amylovora)、エルビニア・カロトボーラ(Erwinia carotovora)が挙げられる。クレブシエラ属細菌としては、例えば、クレブシエラ・プランティコーラ(Klebsiella planticola)が挙げられる。
【0084】
コリネ型細菌としては、例えば、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、及びミクロバクテリウム(Microbacterium)属等に属する菌が挙げられる。
【0085】
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような種が挙げられる。
コリネバクテリウム・アセトアシドフィラム(Corynebacterium acetoacidophilum)
コリネバクテリウム・アセトグルタミカム(Corynebacterium acetoglutamicum)
コリネバクテリウム・アルカノリティカム(Corynebacterium alkanolyticum)
コリネバクテリウム・カルナエ(Corynebacterium callunae)
コリネバクテリウム・クレナタム(Corynebacterium crenatum)
コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)
コリネバクテリウム・リリウム(Corynebacterium lilium)
コリネバクテリウム・メラセコーラ(Corynebacterium melassecola)
コリネバクテリウム・サーモアミノゲネス(コリネバクテリウム・エフィシエンス)(Corynebacterium thermoaminogenes (Corynebacterium efficiens))
コリネバクテリウム・ハーキュリス(Corynebacterium herculis)
ブレビバクテリウム・ディバリカタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・フラバム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium flavum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・イマリオフィラム(Brevibacterium immariophilum)
ブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(コリネバクテリウム・グルタミカム)(Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum))
ブレビバクテリウム・ロゼウム(Brevibacterium roseum)
ブレビバクテリウム・サッカロリティカム(Brevibacterium saccharolyticum)
ブレビバクテリウム・チオゲニタリス(Brevibacterium thiogenitalis)
コリネバクテリウム・アンモニアゲネス(コリネバクテリウム・スタティオニス)(Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis))
ブレビバクテリウム・アルバム(Brevibacterium album)
ブレビバクテリウム・セリナム(Brevibacterium cerinum)
ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム(Microbacterium ammoniaphilum)
【0086】
コリネ型細菌としては、具体的には、下記のような菌株が挙げられる。
Corynebacterium acetoacidophilum ATCC 13870
Corynebacterium acetoglutamicum ATCC 15806
Corynebacterium alkanolyticum ATCC 21511
Corynebacterium callunae ATCC 15991
Corynebacterium crenatum AS1.542
Corynebacterium glutamicum ATCC 13020, ATCC 13032, ATCC 13060, ATCC 13869, FERM BP-734
Corynebacterium lilium ATCC 15990
Corynebacterium melassecola ATCC 17965
Corynebacterium efficiens (Corynebacterium thermoaminogenes) AJ12340 (FERM BP-1539)
Corynebacterium herculis ATCC 13868
Brevibacterium divaricatum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 14020
Brevibacterium flavum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13826, ATCC 14067, AJ12418 (FERM BP-2205)
Brevibacterium immariophilum ATCC 14068
Brevibacterium lactofermentum (Corynebacterium glutamicum) ATCC 13869
Brevibacterium roseum ATCC 13825
Brevibacterium saccharolyticum ATCC 14066
Brevibacterium thiogenitalis ATCC 19240
Corynebacterium ammoniagenes (Corynebacterium stationis) ATCC 6871, ATCC 6872
Brevibacterium album ATCC 15111
Brevibacterium cerinum ATCC 15112
Microbacterium ammoniaphilum ATCC 15354
【0087】
なお、コリネバクテリウム属細菌には、従来ブレビバクテリウム属に分類されていたが、現在コリネバクテリウム属に統合された細菌(Int. J. Syst. Bacteriol., 41, 255(1991))も含まれる。また、コリネバクテリウム・スタティオニスには、従来コリネバクテリウム・アンモニアゲネスに分類されていたが、16S rRNAの塩基配列解析等によりコリネバクテリウム・スタティオニスに再分類された細菌も含まれる(Int. J. Syst. Evol. Microbiol., 60, 874-879(2010))。
【0088】
バチルス属細菌としては、例えば、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・アミロリケファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・ポリミキサ(Bacillus polymixa)、バチルス・ステアロサーモフィラス(Bacillus stearothermophilus)が挙げられる。バチルス・サブチリスとして、具体的には、例えば、バチルス・サブチリス168 Marburg株(ATCC 6051)やバチルス・サブチリスPY79株(Plasmid, 1984, 12, 1-9)が挙げられる。バチルス・アミロリケファシエンスとして、具体的には、例えば、バチルス・アミロリケファシエンスT株(ATCC 23842)やバチルス・アミロリケファシエンスN株(ATCC 23845)が挙げられる。
【0089】
酢酸菌としては、例えば、グルコノバクター(Gluconobacter)属、アセトバクター(Acetobacter)属、グルコナセトバクター(Gluconacetobacter)属、アシディカルダス(Acidicaldus)属、アシディフィラム(Acidiphilium)属、アシディスファエラ(Acidisphaera)属、アシドセラ(Acidocella)属、アシドモナス(acidomonas)属、アサイア(asaia)属、ベルナピア(Belnapia)属、クラウロコッカス(Craurococcus)属、グラヌリバクター(Granulibacter)属、コザキア(Kozakia)属、リーアヒバクター(Leahibacter)属、ムリコッカス(Muricoccus)属、ネオアサイア(Neoasaia)属、オレオモナス(Oleomonas)属、パラクラウロコッカス(Paracraurococcus)属、ロドピラ(Rhodopila)属、ロゼオコッカス(Roseococcus)属、ルブリテピダ(Rubritepida)属、サカリバクター(Saccharibacter)属、ステラ(Stella)属、スワミナサニア(Swaminathania)属、テイココッカス属、ザヴァルジニア(Zavarzinia)属等に属する菌が挙げられる。
【0090】
酢酸菌の具体例としては、例えば、グルコノバクター・オキシダンス(Gluconobacter oxydans)、アセトバクター・キシリナム(Acetobacter xylinum)、アシドモナス・ メタノリカス (Asidomonas methanolicus)、アサイア・ボゴレンシス、アサイア・クルングサペンシス、ベルナピア・モアベンシス、グルコナセトバクター・キシリナス (Gluconacetobacter xylinus)、グラヌリバクター・ベセスデンシス(Granulibacter bethesdensis)、コザキア・バリエンシス、オレオモナス・サガラネンシス(Oleomonas sagaranensis)等が挙げられる。
【0091】
放線菌としては、例えば、アクチノマイセス(Actinomyces)属、マイコバクテリウム(Mycobacterium)属、ノカルデイア(Nocardia)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、アクチノプラネス(Actinoplanes)属、ロドコッカス(Rhodococcus)属等に属する菌が挙げられる。
【0092】
放線菌の具体例としては、例えば、ストレプトマイセス・セリカラー()、ストレプトマイセス・グリゼウス(Streptomyces griseus)、ストレプトマイセス・アベルミチリス (Streptomyces avermitilis)、ロドコッカス・ゾフィ(Rhodococcus zopfii)等が挙げられる。
【0093】
乳酸菌としては、例えば、ラクチカゼイバチルス(Lacticaseibacillus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、リジラクトバチルス(Ligilactobacillus)属、リモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)属、リコリラクトバチルス(Liquorilactobacillus)属、ラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属、エンテロコッカス(Enterococcus)属等に属する菌が挙げられる。
【0094】
乳酸菌の具体例としては、例えば、ラクチカゼイバチルス・カゼイ(Lacticaseibacillus casei)、ラクトバチルス・ガセリ(Lactobacillus gasseri)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス・デルブルッキィー サブスピーシーズ.デルブルッキィー(Lactobacillus delbrueckii subsp. delbrueckii)、ラクトバチルス・ジョンソニー(Lactobacillus johnsonii)、リジラクトバチルス・サリバリウス(Ligilactobacillus salivarius)、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)、リコリラクトバチルス・マリ(Liquorilactobacillus mali)、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.ラクチス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、ラクトコッカス・ラクチス サブスピーシーズ.クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラクトコッカス・プランタルム(Lactococcus plantarum)、ラクトコッカス・ラフィノラクチス(Lactococcus raffinolactis)、ラクトコッカス・クレモリス(Lactococcus cremoris)、エンテロコッカス・フェカーリス(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)等が挙げられる。
【0095】
前記細菌以外の細菌としては、例えば、シュードモナス(Pseudomonas)属、アグロバクテリウム(Agrobacterium)属、アリシクロバチルス属(Alicyclobacillus)、アスロバクター(Arthrobacter)属、アゾトバクター(Azotobacter)属、クロマチウム(Chromatium)属、メチロバクテリウム(Methylobacterium)属、ロドバクター(Rhodobacter)属、ロドシュードモナス(Rhodopseudomonas)属、ロドスピリルム(Rhodospirillum)属、ザイモモナス(Zymomonas)属、アクロモバクター(Achromobacter)属、アエロバクター(Aerobacter)属、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、アルスロバクター(Arthrobacter)属、エルウイニア(Erwinia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、プロタミノバクター(Protaminobacter)属、プロテウス(Proteus)属、サルチナ(Sartina)属、キサントモナス(Xanthomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、フラボバクテリウム(Flavobacterium)属、リゾビウム(Rhizobium)属等に属する菌が挙げられる。
【0096】
酵母としては、例えば、サッカロマイセス(Saccharomyces)属、カンジダ(Candida)属、ピキア(Phichia)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、ロードトルラ(Rhodotorula)属、クリプトコッカス(Crytpococcus)属、トルロプシス(Torulopsis)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、イッサチェンキア(Issatchenkia)属、クルイヴェロマイセス(Kluyveromyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属等に属する酵母が挙げられる。
【0097】
酵母の具体例としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・ユティリス(Candida utilis)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、ハンゼヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等が挙げられる。
【0098】
糸状菌(かび)としては、例えば、アスペルギルス(Aspergillus)属、パエシロマイセス(Paecilomyces)属、ペニシリウム(Penicillium)属、ニューロスポラ(Neurospora)属、トリコデルマ(Trichoderma)属、フザリウム(Fusarium)属、クライソスポリウム(Chrysosporium)属等に属する菌が挙げられる。
【0099】
糸状菌(かび)の具体例としては、例えば、アスペルギルス・オリゼー(Aspergillus oryzae)、パエシロマイセス サトゥラタス(Paecilomyces saturatus)、パエシロマイセス ディバリカタス(Paecilomyces divaricatus)、ペニシリウム・カマンベルティ(P.camemberti)等が挙げられる。
【0100】
これらの菌株は、例えば、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(住所12301 Parklawn Drive, Rockville, Maryland 20852 P.O. Box 1549, Manassas, VA 20108, United States of America)より分譲を受けることができる。すなわち各菌株に対応する登録番号が付与されており、この登録番号を利用して分譲を受けることができる(http://www.atcc.org/参照)。各菌株に対応する登録番号は、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションのカタログに記載されている。また、これらの菌株は、例えば、各菌株が寄託された寄託機関から入手することができる。
【0101】
前記微生物は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、原核生物が好ましく、細菌がより好ましく、腸内細菌科に属する微生物が更に好ましく、エシェリヒア属に属する微生物が特に好ましく、エシェリヒア・コリが最も好ましい。すなわち、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する原核生物が好ましく、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する細菌がより好ましく、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有する腸内細菌科に属する微生物が更に好ましく、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有するエシェリヒア属に属する微生物が特に好ましく、前記1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有するエシェリヒア・コリが最も好ましい。
【0102】
前記遺伝子(酵素)を外来的に微生物に導入して発現させる場合は、
前記4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸アルドラーゼは、エシェリヒア・コリのHpaI遺伝子によってコードされる2,4-ジヒドロキシヘプタ-2-エン-1,7-二酸アルドラーゼであり、
前記4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸4-デヒドラターゼは、エシェリヒア・コリのHpcG/HpaH遺伝子によってコードされる2-オキソ-ヘプタ-4-エン-1,7-二酸ヒドラターゼであり、
前記6-ヒドロキシ-3,4-デヒドロ-2-オキソヘキサン酸3-レダクターゼは、アラビドプシス・タリアナのGenBankアクセッション番号CAC01710.1のNADP依存性アルケナールレダクターゼP1であり、
前記6-ヒドロキシ-2-オキソヘキサン酸2-レダクターゼは、ラクトコッカス・ラクティスのpanE遺伝子によってコードされるD-2-ヒドロキシ酸デヒドロゲナーゼであり、
前記2,6-ジヒドロキシ-ヘキサン酸CoA-トランスフェラーゼ及び前記6-ヒドロキシヘキサノイル-CoA-トランスフェラーゼは、クロストリジウム・ディフィシルのHadA遺伝子にコードされるグルタコン酸-CoA-トランスフェラーゼであり、
前記2,6-ジヒドロキシ-ヘキサノイル-CoA2-デヒドラターゼは、クロストリジウム・ディフィシルで発現する2-ヒドロキシイソカプロイル-CoAデヒドラターゼであり、
前記6-ヒドロキシ-2,3-デヒドロ-ヘキサノイル-CoA2,3-レダクターゼは、トレポネーマ・デンティコラのGenBankアクセッション番号AE017248のtrans-2-エノイルCoAレダクターゼであり、
前記6-ヒドロキシヘキサン酸1-レダクターゼは、ノカルジア・イオウェンシスのGenBankアクセッション番号AAR91681.1のATP/NADPH-CARであり、及び/又は
前記6-ヒドロキシヘキサナール1-レダクターゼは、ロドコッカスのGenBankアクセッション番号AAN37489.1の6-ヒドロキシヘキサン酸デヒドロゲナーゼであることが好ましい。
【0103】
前記微生物を使用することにより、(a)アルドール付加を介して、C3アルデヒド及びピルビン酸をC6β-ヒドロキシケトン中間体に変換する工程;及び次いで(b)酵素的工程を介して、該C6β-ヒドロキシケトン中間体を1,6-ヘキサンジオール又はその溶媒和物に変換する工程を行うことが可能である。ここで、変換が、エノイル又はエノエートの還元、ケトンの還元、アルデヒドの還元、脱水、チオエステルの形成、チオエステルの還元、又はそれらの組み合わせを含むことが好ましい。
また、グリセリン、五炭糖、六炭糖、ホスホ-グリセレート、他の炭素源、解糖経路の中間体、プロパン酸代謝の中間体又はそれらの組み合わせから選択される供給源からC3アルデヒド及びピルビン酸を調製する工程を更に含むことが好ましい。
また、C3アルデヒドが、一連の酵素的工程を介して得られ、ここで、該酵素的工程は、ジオールの脱水を含むことが好ましい。
【0104】
より具体的には、前記微生物を使用することにより、微生物内の代謝経路によって生産される、3-オキソプロピオネート、3-ヒドロキシプロパナールから、特許6680671号公報の
図2、5に示されている2A、2B、2C、2D、2E、2F、2G、4F3、5R、5Sの経路により1,6-ヘキサンジオールが生産される。この生合成経路において、2Gまでの経路の酵素反応が進行することにより、6-ヒドロキシ-ヘキサノイル-CoAが生産され、その後、4F3の酵素反応が進行することにより、6-ヒドロキシカプロン酸が生産され、その後、5Rの酵素反応が進行することにより、6-ヒドロキシヘキサナールが生産され、その後、5Sの酵素反応が進行することにより、1,6-ヘキサンジオールが生産される。
【0105】
従って、バイオマス資源由来の原料を含む培地で前記微生物を培養することにより、前記工程(1)を実行することが可能となる。すなわち、バイオマス資源由来の原料を含む培地で前記微生物を培養することにより、バイオマス資源由来の原料から得られた6-ヒドロキシカプロン酸及び/又はその誘導体から、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産できる。
【0106】
前記バイオマス資源由来の原料としては、特に限定されず、キシロース、キシルロース、リブロース、アラビノース、リキソース、リボース等の五炭糖、アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、タロース、ガラクトース、フルクトース、プシコース、ソルボース又はタガトース等の六炭糖等の単糖類、ラクトース、セロビオース、スクロース、マルトース等の二糖類、デンプン、セルロース、アガロース、デキストラン等の多糖類、ソルビトール、エタノール、グリセリン等のアルコール類、ペプトン、トリプトン、カザミノ酸等の培地成分に用いられる炭素源;ペプトン、トリプトン、カザミノ酸、酵母エキス、肉エキス、コーンスティープリカー等の有機窒素化合物等の培地成分に用いられる窒素源が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、培地成分に用いられる炭素源が好ましく、単糖類、アルコール類がより好ましい。
単糖類としては、六炭糖が更に好ましく、グルコースが特に好ましい。
アルコール類としては、グリセリンが更に好ましい。
よって、バイオマス資源由来の原料としては、グルコース、グリセリンが最も好ましい。
【0107】
前記培地としては、前記バイオマス資源由来の原料を含む限り特に限定されず、炭素源、窒素源、無機イオン、更に必要に応じ有機栄養源を含む通常の培地でよく、使用する微生物に応じて適宜調製できる。なかでも、バイオマス資源由来の原料として、前記炭素源を含有することが好ましい。
【0108】
前記成分以外の炭素源としては微生物が利用可能であれば特に限定されず、フマル酸、クエン酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類及びこれらの塩類、パラフィン等の炭水化物類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0109】
前記成分以外の窒素源としては、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等の無機塩のアンモニウム塩、フマル酸アンモニウム、クエン酸アンモニウム等の有機酸のアンモニウム塩、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等の硝酸塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0110】
前記培地には、微量金属塩、ビタミン類、ホルモン等、通常の培地に用いられる栄養源を用いてもよい。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、微量金属塩としてナトリウム及び/又はカリウムを含むことが好ましい。
【0111】
培養条件にも格別の制限はなく、例えば、pH3~11、温度20~70℃(より好ましくは20~50℃)の範囲でpH及び温度を適当に制御しつつ4~140時間程度培養を行えばよい。培養は、好気性条件下でも嫌気性条件下でもよく、使用する微生物に応じて適宜選択すればよいが、好気性条件下が好ましい。
【0112】
前記の通り、バイオマス資源由来の原料を含む培地で前記微生物を培養することにより、1,6-ヘキサンジオール組成物を生産できる。1,6-ヘキサンジオール組成物は、培地中に微生物と共に存在するため、必要に応じて、培地から微生物を除去すればよい。微生物の除去方法は、特に限定されず、例えば、遠心分離及び/又は膜分離により行えばよい。
【0113】
遠心分離は、特に限定されず、例えば、連続遠心分離機による連続的な遠心分離が使用され得る。連続遠心分離機としては、例えば、かご型遠心分離機、ディスク型遠心分離機、ノズル型遠心分離機等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0114】
膜分離に用いる膜は、特に限定されず、例えば、孔径10.0μm以下の膜が挙げられ、具体的には、例えば、マイクロろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。また、膜の形状は特に限定されず、平膜、中空糸膜、スパイラル膜、チューブラー膜、プリーツ状膜等いかなる形状であってもよい。濾過の形式も特に限定されず、デッドエンド方式、タンジェンシャルフロー方式のいずれでも適用可能であるが、タンジェンシャルフロー方式が好ましい。
【0115】
<<工程(2)>>
工程(2)は、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物を、イオン交換及び/又は蒸留により精製する工程である。工程(2)は、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物、例えば、1,6-ヘキサンジオール組成物を含有する微生物除去後の培地、に含まれる不純物を、イオン交換及び/又は蒸留により、適宜除去する工程である限り特に限定されないが、工程(2)は、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物を、イオン交換及び蒸留により精製する工程であることが好ましい。また、イオン交換は、陽イオン交換及び陰イオン交換が好ましく、陽イオン交換及び陰イオン交換をこの順に行うことがより好ましい。また、蒸留は、水の除去、1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分の除去、1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分の除去を行うことが好ましく、水の除去、1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分の除去、1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分の除去をこの順に行うことがより好ましい。
【0116】
工程(2)に供される工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物としては、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物である限り特に限定されないが、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物を含有する培地から微生物を除去した液体であることが好ましく、工程(1)で得られた、1,6-ヘキサンジオール組成物を含有する培地を遠心分離及び膜分離処理に供して微生物を除去した液体であることがより好ましい。
【0117】
以下において、工程(2)の一例について詳細に説明する。
【0118】
[イオン交換工程]
イオン交換工程では下記工程(a)、(b)を順に経由して1,6-ヘキサンジオール組成物を得る。
工程(a):工程(1)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させ、1,6-ヘキサンジオール組成物Aを得る工程
工程(b):工程(a)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Aと陰イオン交換樹脂とを接触させ、1,6-ヘキサンジオール組成物Bを得る工程
【0119】
前記工程(a)における陽イオン交換樹脂との接触で除去する成分として、例えば、金属カチオンやアンモニウムイオン等が挙げられる。
【0120】
前記工程(b)における陰イオン交換樹脂との接触で除去する成分として、例えば、塩化物イオンや硫酸イオンやリン酸イオンや有機酸等が挙げられる。ここで挙げた有機酸には、酸基を有する一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)を含む。
【0121】
イオン交換樹脂による処理は特に制限されるものではないが、バッチ式又はカラム式により処理することが好ましい。
【0122】
<工程(a):1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれている陽イオンの除去工程>
工程(a)では、1,6-ヘキサンジオール組成物と陽イオン交換樹脂とを接触させることで、陽イオンを除去する。
【0123】
使用する陽イオン交換樹脂としては、例えば、強酸性、弱酸性が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、スチレン系、アクリル系、及びハイドロゲル系等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型が挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂の形態としては、例えば、粉状、球状、繊維状、膜状等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0124】
<工程(b):1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれている陰イオンの除去工程>
工程(b)では、1,6-ヘキサンジオール組成物と陰イオン交換樹脂とを接触させることで、陰イオンを除去する。
【0125】
使用する陰イオン交換樹脂としては、例えば、強塩基性、弱塩基性が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、スチレン系、アクリル系、及びハイドロゲル系等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、ゲル型、ポーラス型、ハイポーラス型が挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂の形態としては、例えば、粉状、球状、繊維状、膜状等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0126】
なお、前記説明では、前記工程(a)、前記工程(b)をこの順に行う方法について説明したが、前記工程(b)、前記工程(a)をこの順に行ってもよい。すなわち、工程(1)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物を陰イオン交換樹脂と接触させ、その後に、陽イオン交換樹脂と接触させてもよい。
また、前記工程(a)、前記工程(b)を同時に行ってもよい。すなわち、工程(1)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物と、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂とを同時に接触させてもよい。
【0127】
[蒸留工程]
蒸留は下記工程(c)、(d)、(e)を順に経由して1,6-ヘキサンジオール組成物Eを得る。更に純度を上げたい場合は、任意で工程(f)にて精製する。
工程(c):前記イオン交換工程で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物(例えば、1,6-ヘキサンジオール組成物B)から、1,6-ヘキサンジオール組成物の含有液に含まれている水を除去し、1,6-ヘキサンジオール組成物Cを得る工程
工程(d):工程(c)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Cから、1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分を除去し、1,6-ヘキサンジオール組成物Dを得る工程
工程(e):工程(d)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Dから、1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分を除去し、1,6-ヘキサンジオール組成物Eを得る工程
工程(f):工程(e)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Eを蒸留し、より高純度の1,6-ヘキサンジオールを得る工程
【0128】
前記工程(d)における1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分として、例えば、1,3-プロパンジオール、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)、6-ヒドロキシヘキサナール及び/又はその誘導体(B1)等が挙げられる。
【0129】
前記工程(e)における1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分として、例えば、グリセリン、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)、6-ヒドロキシヘキサナール及び/又はその誘導体(B1)等が挙げられる。
【0130】
蒸留方法は特に制限されるものではないが、連続又は回分蒸留により除去することが好ましい。
【0131】
<工程(c):1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれている水の除去工程>
工程(c)では、前記イオン交換工程で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物(例えば、1,6-ヘキサンジオール組成物B)を水が蒸発する温度に加熱し、必要に応じて減圧することによって、1,6-ヘキサンジオール組成物Bから水を除去する。
【0132】
使用する装置としては、例えば、連続式蒸留塔、多重効用缶、薄膜式エバポレータ、エバポレータ、バッチ蒸留器、霧化分離装置等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0133】
<工程(d):1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分を除去する工程>
工程(d)では、1,6-ヘキサンジオール組成物Cから、1,6-ヘキサンジオールよりも沸点が低い成分を除去する。
【0134】
前記工程(d)は、高純度の1,6-ヘキサンジオールを得るために低沸点の成分を十分に除去することと、微量の着色原因成分の除去を行うことの両方の目的で行う工程である。この操作では、特に着色原因成分そのもの及び着色原因成分の水素化体等の1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分の除去あるいは低減が行われる。
【0135】
前記工程(d)での蒸留は、例えば、常圧蒸留、減圧蒸留、加圧蒸留等、公知の手段及び装置で行うことができる。除去する装置としては、例えば、連続式蒸留塔、多重効用缶、薄膜式エバポレータ、エバポレータ、バッチ蒸留器、霧化分離装置等が挙げられるが、特に限定されるものではない。工程(d)に用いられる操作条件は、1,6-ヘキサンジオール組成物Cの組成、最終的に得るべき純度等を考慮に入れて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0136】
<工程(e):1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分を除去する工程>
工程(e)では、工程(d)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Dから、1,6-ヘキサンジオールよりも沸点が高い成分を除去する。
【0137】
前記工程(e)では、特にアミノ酸及び蛋白由来の窒素含有成分、糖及びその分解物等の発酵法特有の1,6-ヘキサンジオールよりも沸点の高い成分の除去が行われる。
【0138】
除去する装置としては、例えば、連続式蒸留塔、多重効用缶、薄膜式エバポレータ、エバポレータ、バッチ蒸留器、霧化分離装置等が挙げられるが、特に限定されるものではない。工程(e)に用いられる操作条件は、1,6-ヘキサンジオール組成物Dの組成、最終的に得るべき純度等を考慮に入れて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0139】
<工程(f):より高純度の1,6-ヘキサンジオール組成物を得る工程>
工程(f)では、工程(c)、(d)、(e)工程を経由して得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Eを精製して、より高純度の1,6-ヘキサンジオール組成物を得る。
【0140】
より高純度の1,6-ヘキサンジオール組成物を得る装置としては、例えば、連続式蒸留塔、多重効用缶、薄膜式エバポレータ、エバポレータ、バッチ蒸留器、霧化分離装置等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0141】
前記工程(f)に用いられる操作条件は、精製すべき液の組成、最終的に得るべき純度等を考慮に入れて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0142】
前記工程(e)、必要に応じて前記工程(f)を行うことにより、本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物が得られる。
【0143】
なお、前記説明では、前記工程(c)、前記(d)、前記(e)をこの順に行う方法について説明したが、異なる順序で行ってもよい。
【0144】
本発明に好適な1,6-ヘキサンジオール組成物の製造方法は、工程(1)、工程(2)を含んでいればよく、工程(1)、工程(2)に加えて、工程(1)、工程(2)以外の他の工程を含んでいてもよい。
【0145】
前記工程(2)を行うことにより、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量が前記範囲内となるが、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量がより好適に前記範囲内となるように、工程(2)を繰り返し行ってもよい。工程(2)を繰り返すことにより、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)の合計含有量、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)の合計含有量をより低減することが可能となる。
【0146】
<硬化性組成物>
本発明の硬化性組成物は、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物を含有する。
硬化性組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量%中の本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物の含有量は、好ましくは1~60質量%、より好ましくは3~40質量%、更に好ましくは5~30質量%である。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0147】
本発明の硬化性組成物は、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に加えて、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物以外のエポキシ樹脂(他のエポキシ樹脂とも記載する)を含有することが好ましい。両者を併用することにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。他のエポキシ樹脂は単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0148】
前記他のエポキシ樹脂としては、分子内にエポキシ基を有する化合物であれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂等のビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂;ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル等の脂肪族ポリオールポリグリシジルエーテル;ジグリシジルアニリン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル等の環構造含有ポリグリシジル化合物;アルキルフェノールモノグリシジルエーテル等の環構造含有単官能グリシジル化合物;ネオデカン酸グリシジルエステル等のポリグリシジルエステル化合物等が挙げられる。なかでも、より物性に優れる硬化物がより好適に得られるという理由から、ビスフェノール型又はビフェノール型エポキシ樹脂が好ましく、ビスフェノール型エポキシ樹脂がより好ましく、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が更に好ましい。
【0149】
前記他のエポキシ樹脂のエポキシ当量は、好ましくは150~250g/eq、より好ましくは160~200g/eqである。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
本明細書において、エポキシ樹脂のエポキシ当量は、JIS K7236:2001により測定される値である。
【0150】
硬化性組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量%中の前記他のエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは10~90質量%、より好ましくは20~80質量%、更に好ましくは30~70質量%である。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0151】
硬化性組成物中のエポキシ樹脂と硬化剤の合計100質量%中の本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物並びに前記他のエポキシ樹脂の合計含有量、すなわちエポキシ樹脂の含有量は、好ましくは30~95質量%、より好ましくは50~90質量%、更に好ましくは60~80質量%である。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0152】
エポキシ樹脂100質量%中の本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物の含有量は、好ましくは5~70質量%、より好ましくは10~50質量%、更に好ましくは10~30質量%である。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0153】
本発明の硬化性組成物は、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に加えて、硬化剤を含有することが好ましく、本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に加えて、前記他のエポキシ樹脂及び硬化剤を含有することがより好ましい。これにより、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0154】
硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化可能な硬化剤であれば特に限定されず、例えば、ポリアミン化合物、アミド化合物、酸無水物、フェノール性水酸基含有樹脂、リン化合物、イミダゾール化合物、イミダゾリン化合物、尿素系化合物、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。なかでも、より物性に優れる硬化物がより好適に得られるという理由から、ポリアミン化合物、酸無水物及びフェノール性水酸基含有樹脂からなる群より選択される少なくとも1種の硬化剤が好ましく、ポリアミン化合物がより好ましい。
【0155】
前記ポリアミン化合物としては、例えば、トリメチレンジアミン、エチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、ジプロピレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルプロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジメチルアミノプロピルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジブチルアミノプロピルアミン、1,4-ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン(トリエチレンジアミン)、ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エーテル、ジメチルアミノエトキシエトキシエタノール、トリエタノールアミン、ジメチルアミノヘキサノール等の脂肪族アミン化合物;ピペリジン、ピペラジン、メンタンジアミン、イソホロンジアミン、メチルモルホリン、エチルモルホリン、N,N’,N”-トリス(ジメチルアミノプロピル)ヘキサヒドロ-s-トリアジン、3,9-ビス(3-アミノプロピル)-2,4,8,10-テトラオキシスピロ(5,5)ウンデカンアダクト、N-アミノエチルピペラジン、トリメチルアミノエチルピペラジン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、N,N’-ジメチルピペラジン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-ウンデセン(DBU)等の脂環式及び複素環式アミン化合物;o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ベンジルメチルアミン、ジメチルベンジルアミン、m-キシレンジアミン、ピリジン、ピコリン、α-メチルベンジルメチルアミン等の芳香族アミン化合物;エポキシ化合物付加ポリアミン、マイケル付加ポリアミン、マンニッヒ付加ポリアミン、チオ尿素付加ポリアミン、ケトン封鎖ポリアミン、ジシアンジアミド、グアニジン、有機酸ヒドラジド、ジアミノマレオニトリル、アミンイミド、三フッ化ホウ素-ピペリジン錯体、三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体等の変性アミン化合物等が挙げられる。
【0156】
前記アミド化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、ポリアミドアミン等が挙げられる。前記ポリアミドアミンとしては、例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸や、脂肪酸、ダイマー酸等のカルボン酸化合物と脂肪族ポリアミンやポリオキシアルキレン鎖を有するポリアミン等を反応させて得られるものなどが挙げられる。
【0157】
前記酸無水物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0158】
前記フェノール性水酸基含有樹脂としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール-フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール-クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物などが挙げられる。
【0159】
前記リン化合物としては、例えば、エチルホスフィン、ブチルホスフィン等のアルキルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジプロピルホスフィン等のジアルキルホスフィン;ジフェニルホスフィン、メチルエチルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンなどが挙げられる。
【0160】
前記イミダゾール化合物としては、例えば、イミダゾール、1-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、3-メチルイミダゾール、4-メチルイミダゾール、5-メチルイミダゾール、1-エチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、3-エチルイミダゾール、4-エチルイミダゾール、5-エチルイミダゾール、1-n-プロピルイミダゾール、2-n-プロピルイミダゾール、1-イソプロピルイミダゾール、2-イソプロピルイミダゾール、1-n-ブチルイミダゾール、2-n-ブチルイミダゾール、1-イソブチルイミダゾール、2-イソブチルイミダゾール、2-ウンデシル-1H-イミダゾール、2-ヘプタデシル-1H-イミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1,3-ジメチルイミダゾール、2,4-ジメチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-フェニルイミダゾール、2-フェニル-1H-イミダゾール、4-メチル-2-フェニル-1H-イミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、2-フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-メチルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニル-4,5-ジ(2-シアノエトキシ)メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール塩酸塩等が挙げられる。
【0161】
前記イミダゾリン化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾリン、2-フェニルイミダゾリン等が挙げられる。
【0162】
前記尿素化合物としては、例えば、p-クロロフェニル-N,N-ジメチル尿素、3-フェニル-1,1-ジメチル尿素、3-(3,4-ジクロロフェニル)-N,N-ジメチル尿素、N-(3-クロロ-4-メチルフェニル)-N’,N’-ジメチル尿素等が挙げられる。
【0163】
硬化性組成物中に含まれるエポキシ樹脂のエポキシ基1モルに対して、前記硬化剤中の活性水素基が0.1~3.0モルの範囲、より好ましくは0.5~2.0モルの範囲、更に好ましくは0.7~1.2モルの範囲となる割合で硬化剤を配合することが好ましい。硬化剤の量を前記量とすることで、より物性に優れる硬化物がより好適に得られる傾向がある。
【0164】
本発明の硬化性組成物には、前記成分に加えて、各種添加剤、例えば、硬化促進剤、充填剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、増粘剤、低収縮化剤、老化防止剤、可塑剤、骨材、難燃剤、安定剤、繊維強化材、有機溶剤、帯電防止剤、消泡剤、粘度調整剤、酸化防止剤、レベリング剤、分散剤、ワックス等を本発明の効果を損なわない範囲内において用いることができる。これらは単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0165】
本発明の硬化性組成物は、インキ、コーティング、塗料、接着剤、クラック補修剤等の用途に用いられる。なかでも、インキ、コーティング、塗料、接着剤及びクラック補修剤からなる群より選択される少なくとも1種の用途に用いられることが好ましく、塗料、接着剤及びクラック補修剤からなる群より選択される少なくとも1種の用途に用いられることがより好ましい。本発明の硬化性組成物をコーティング又は塗料として用いる場合、低温での作業性が良好で、圧縮強度も良好であるため、床用又は道路用のコーティング又は塗料として好適に用いることが可能である。クラック補修剤は、コンクリートやモルタルのクラックを補修する補修剤であることが好ましい。
【0166】
本発明のインキは本発明の硬化性組成物からなる。また、本発明のコーティングは本発明の硬化性組成物からなる。また、本発明の塗料は本発明の硬化性組成物からなる。また、本発明の接着剤は本発明の硬化性組成物からなる。また、本発明のクラック補修剤は本発明の硬化性組成物からなる。
【0167】
本発明の硬化性組成物をインキとして使用する場合には、例えば、前記各成分を配合してミキサー等で撹拌混合し、三本ロールミル、ビーズミル等の分散機を用いて練肉する方法が挙げられる。そして、得られたインキを各種の基材に印刷後、適宜加温することで硬化塗膜とすることができる。
【0168】
インキの印刷方法としては、例えば、平版オフセット印刷、凸版印刷、グラビア印刷、グラビアオフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等が挙げられる。
【0169】
本発明の硬化性組成物をコーティングや塗料として使用する場合には、例えば、前記各成分を混合ミキサー、ボールミル等の装置を用いて十分に混練、均一に分散させた樹脂組成物(ペースト)を用意し、所望の粘度に有機溶剤等で調製すればよい。得られた樹脂組成物は、各種の塗装方法によって様々な基材に塗布することができる。そして、得られた樹脂組成物を各種の基材に塗布後、適宜加温することで硬化塗膜とすることができる。
【0170】
塗装方法としては、例えば、グラビアコーター、ナイフコーター、ロールコーター、コンマコーター、スピンコーター、バーコーター、刷毛塗り、ディッピング塗布、スプレー塗布等のコーティング方法等が挙げられる。
【0171】
本発明の硬化性組成物を接着剤として使用する場合には、例えば、前記各成分を混合ミキサー、ボールミル等の装置を用いて十分に混練、均一に分散させた樹脂組成物(ペースト)を用意し、所望の粘度に有機溶剤等で調製すればよい。そして、得られた樹脂組成物を各種の基材に塗布した後、適宜加温することで基材の接着を行うことができる。塗布方法としては、コーティングや塗料として使用する場合と同様の方法が挙げられる。
【0172】
本発明の硬化物は、本発明の硬化性組成物を硬化させてなる。例えば、本発明の硬化性組成物を基材に塗布し基材上に該樹脂組成物の層を形成した後、該樹脂組成物の層を適宜加温することにより該樹脂組成物の層を硬化させて、硬化物である硬化層を形成すればよい。ここで、前述の各種用途に応じて調製された樹脂組成物は、適応する用途に応じた塗布方法、硬化方法を適宜採用すればよい。
【0173】
なお、本明細書において「~」の表記は、「~」という記載の前の値以上、「~」という記載の後の値以下を意味する。また、本明細書において、ある特性などについて、複数の数値範囲が「~」の表記により開示されている場合、各数値範囲の上限と下限はいずれの組み合わせでも用いることができる。例えば、ある化合物の含有量について、0.001~500質量ppm、0.05~250質量ppmの2つの数値範囲が開示されている場合、0.001~500質量ppm、0.05~250質量ppm以外にも、0.001~250質量ppm、0.05~500質量ppmの数値範囲も開示されていることを意味する。
【実施例】
【0174】
以下、実施例と比較例により、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0175】
(製造例1)(遺伝子組み換え大腸菌の作成)
シトロバクター・フレウンディ(Citrobacter freundii)由来のグリセロールデヒドラターゼα、β、γサブユニット遺伝子、及びデヒドラターゼ再活性因子遺伝子をpACYC184(ニッポンジーン社)のBamHI、HindIII制限酵素切断サイト間に導入したプラスミドAを作成した。
4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸アルドラーゼとしてエシェリヒア・コリ由来のHpaI遺伝子、4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸4-デヒドラターゼとしてエシェリヒア・コリ由来のHpcG遺伝子、6-ヒドロキシ-3,4-デヒドロ-2-オキソヘキサン酸3-レダクターゼとしてシロイヌナズナ(アラビドプシス・タリアナ)由来のNADPH-dependent oxidoreductase 2-alkenal reductase(GenBank:CAC01710.1)遺伝子、6-ヒドロキシ-2-オキソヘキサン酸2-レダクターゼとしてラクトコッカス・ラクティスのPanE遺伝子、2,6-ジヒドロキシ-ヘキサン酸CoA-トランスフェラーゼかつ6-ヒドロキシヘキサノイル-CoA-トランスフェラーゼとしてクロストリジウム・ディフィシル由来のHadA遺伝子をpUC19(ニッポンジーン社)のマルチクローニングサイト(MCS)のBamHI、EcoRI制限酵素切断サイト間に導入したプラスミドBを作成した。
2-ヒドロキシイソカプロイル-CoAデヒドラターゼのα、βサブユニット遺伝子としてクロストリジウム・ディフィシル由来のHadB、HadC遺伝子、2-ヒドロキシイソカプロイル-CoAデヒドラターゼ活性化酵素としてクロストリジウム・ディフィシル由来のHadI遺伝子、6-ヒドロキシ-2,3-デヒドロ-ヘキサノイル-CoA2,3-レダクターゼとしてトレポネーマ・デンティコラ由来のtrans-2-enoyl-CoA reductase(GenBank: AE017248)遺伝子、6-ヒドロキシヘキサン酸1-レダクターゼとしてノカルジア・イオウェンシス由来のカルボン酸還元酵素(GenBank:AAR91681.1)遺伝子、6-ヒドロキシヘキサナール1-レダクターゼとしてロドコッカス属由来の6-ヒドロキシヘキサン酸デヒドロゲナーゼ(GenBank:AAN37489.1)遺伝子をpCOLADuet-1(Novagen社)にHadB、HadC、HadI遺伝子をMCS1にそれ以外の遺伝子をMCS2に導入したプラスミドCを作成した。
本項における遺伝子とは各酵素をコードする終止コドンを含んだオープンリーディングフレームを指し、各遺伝子はその上流にT7プロモーターとリボソーム結合サイトを含んだ配列を、下流にT7ターミネーターを含んだ配列が存在するような様態でそれぞれプラスミドに導入される。各遺伝子は適切な発現誘導によってT7RNAポリメーラーゼが発現するようなホスト株のエシェリヒア・コリ内で大量発現されることができる。
プラスミドA, B, Cを順次ケミカルコンピテントセル化したBL21 Star(DE3)(Invitrogen社)にヒートショック法によって形質転換させ、適当な抗生物質を含んだLBプレート上で選抜した。その結果、プラスミドA, B, Cを全て含んだBL21 Star(DE3)株を取得した。
これにより、4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸アルドラーゼ(特許6680671号公報の図中の2A)、4,6-ジヒドロキシ-2-オキソ-ヘキサン酸4-デヒドラターゼ(特許6680671号公報の図中の2B)、6-ヒドロキシ-3,4-デヒドロ-2-オキソヘキサン酸3-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2C)、6-ヒドロキシ-2-オキソヘキサン酸2-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2D)、2,6-ジヒドロキシ-ヘキサン酸CoA-トランスフェラーゼ(特許6680671号公報の図中の2E)、2,6-ジヒドロキシ-ヘキサノイル-CoA2-デヒドラターゼ(特許6680671号公報の図中の2F)、6-ヒドロキシ-2,3-デヒドロ-ヘキサノイル-CoA2,3-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の2G)、6-ヒドロキシヘキサノイル-CoA-トランスフェラーゼ(特許6680671号公報の図中の4F3)、6-ヒドロキシヘキサン酸1-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の5R)、及び6-ヒドロキシヘキサナール1-レダクターゼ(特許6680671号公報の図中の5S)からなる1,6-ヘキサンジオール経路の10酵素をコードする遺伝子を有するエシェリヒア・コリを作成した。
【0176】
(製造例2:1,6-ヘキサンジオール組成物1(1,6-HD組成物 1)の調製)
オートクレーブ滅菌した培地(炭素源:グルコース、グリセリン、窒素源:酵素抽出物、無機塩類:リン酸カリウム、水酸化カリウム、ビタミンB12、抗生物質:カルベニシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、pH:7.0、前記成分の中で、グルコース、グリセリンがバイオマス資源由来の原料である)に前記エシェリヒア・コリを植菌し、30℃で2~3時間、好気性条件下で培養を行った。その後、エシェリヒア・コリの600 nmにおける光学密度が0.3~0.6となったところでイソプロピル-β-チオガラクトピラノシドを終濃度0.5mM、硫酸鉄(II)を終濃度10μMとなるように加え、更に30℃で3時間培養を行い、1,6-HD経路の酵素を発現させた。発現後、炭素源(グルコース、グリセリン)を適当量加え、培養器内を窒素雰囲気下とすることで嫌気性条件下とした。この条件下で30℃、48時間培養を行い、1,6-ヘキサンジオールを生産させた(工程(1))。培養液を、4℃、20分間遠心を行い、上清を回収後、適当なポアサイズが0.2~0.4μmのメンブレンフィルターを用いてろ過を行い、ろ液として1,6-ヘキサンジオール組成物を得た。
【0177】
〔1,6-ヘキサンジオール組成物の精製〕
<工程(a):陽イオンを除去するイオン交換>
1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれる陽イオンを除去した。工程(a)はバッチ式にて陽イオン交換を行った。陽イオン交換樹脂と接触させる温度は40℃に設定し、1,6-ヘキサンジオール組成物中に、陽イオン交換樹脂として三菱ケミカル社製DIAION SK1BHを加え、3時間撹拌させた。撹拌後、濾過を行い、ろ液として1,6-ヘキサンジオール組成物Aを得た。
<工程(b):陰イオンを除去するイオン交換>
1,6-ヘキサンジオール組成物A中に含まれる陰イオンを除去した。工程(b)はバッチ式にて陰イオン交換を行った。陰イオン交換樹脂と接触させる温度は40℃に設定し、1,6-ヘキサンジオール組成物中に、陰イオン交換樹脂として三菱ケミカル社製DIAION SA10AOHを加え、3時間撹拌させた。撹拌後、濾過を行い、ろ液として1,6-ヘキサンジオール組成物Bを得た。
【0178】
<工程(c):水を除去する工程>
1,6-ヘキサンジオール組成物に含まれる水を除去した。工程(c)の装置として、薄膜式蒸留器を使用した。ジャケット温度を70℃に設定し、1,6-ヘキサンジオール含有組成物を連続的に導入し、頂部から水分を留出させた。水分の留出と同時に、底部から脱水された1,6-ヘキサンジオール組成物Cを缶出液として連続的に抜き出した。この1,6-ヘキサンジオール組成物C中の水分濃度は0.020質量%(200質量ppm)であった。
【0179】
<工程(d):低沸点成分の蒸留分離>
1,6-ヘキサンジオール組成物Cに含まれる1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分を連続蒸留塔で除去した。工程(d)の蒸留塔として、オルダーショウ蒸留塔を使用した。工程(c)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Cを蒸留塔に連続的に供給して、塔頂温度を240℃の一定の温度に制御した。塔頂部から連続留出を行い、塔底から連続抜き出しを行い、1,6-ヘキサンジオール組成物C中の低沸点成分の除去を行い、塔底から1,6-ヘキサンジオールよりも低沸点の成分を除去した1,6-ヘキサンジオール組成物Dを取り出した。
【0180】
<工程(e):高沸点成分の蒸留分離>
1,6-ヘキサンジオール組成物D中に含まれる1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分を連続蒸留塔で除去した。工程(e)の蒸留塔として、オルダーショウ蒸留塔を使用した。工程(d)で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物Dを蒸留塔に連続的に供給して、塔底温度を260℃で一定となるように制御した。塔底から連続抜き出しを行い、1,6-ヘキサンジオール組成物D中の高沸点成分の除去を行った。塔頂から1,6-ヘキサンジオールよりも高沸点の成分を除去した1,6-ヘキサンジオール組成物E(1,6-HD組成物 1)を得た(塔頂留出液)。
【0181】
得られた1,6-HD組成物1の分析結果を以下に示した。なお、1,6-HD組成物の分析において、グリセリン、グルコース、1,3-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジオール、6-ヒドロキシヘキサナールの検出限界はそれぞれ、5.0質量ppm、5.0質量ppm、5.0質量ppm、5.0質量ppm、10.0質量ppmであった。
グリセリン:800質量ppm
グルコース:検出限界以下
1,3-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
1,4-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
6-ヒドロキシヘキサナール:500質量ppm
【0182】
(製造例3:1,6-ヘキサンジオール組成物2(1,6-HD組成物2)の調製)
製造例2において、バイオ法で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物の精製を繰り返し、グリセリンの含有量が150質量ppm、6-ヒドロキシヘキサナールの含有量が100質量ppmとなる1,6-ヘキサンジオール組成物 2を得た。
【0183】
得られた1,6-HD組成物2の分析結果を以下に示した。
グリセリン:150質量ppm
グルコース:検出限界以下
1,3-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
1,4-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
6-ヒドロキシヘキサナール:100質量ppm
【0184】
(製造例4:1,6-ヘキサンジオール組成物3(1,6-HD組成物3)の調製)
製造例2において、バイオ法で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物の精製を繰り返し、グリセリンの含有量が5質量ppm、6-ヒドロキシヘキサナールの含有量が10質量ppmとなる1,6-ヘキサンジオール組成物3を得た。
【0185】
得られた1,6-HD組成物3の分析結果を以下に示した。
グリセリン:5質量ppm
グルコース:検出限界以下
1,3-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
1,4-シクロヘキサンジオール:検出限界以下
6-ヒドロキシヘキサナール:10質量ppm
【0186】
(製造例5:1,6-ヘキサンジオール組成物4(1,6-HD組成物4)の調製)
製造例4で得られた1,6-HD組成物3に、グリセリンが150質量ppmになるようにグリセリンを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物4(1,6-HD組成物 4)を調製した。
【0187】
(製造例6:1,6-ヘキサンジオール組成物5(1,6-HD組成物5)の調製)
製造例4で得られた1,6-HD組成物3に、1,3-シクロヘキサンジオールが100質量ppmになるように1,3-シクロヘキサンジオールを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物5(1,6-HD組成物5)を調製した。
【0188】
(製造例7:1,6-ヘキサンジオール組成物6(1,6-HD組成物6)の調製)
製造例4で得られた1,6-HD組成物3に、1,4-シクロヘキサンジオールが100質量ppmになるように1,4-シクロヘキサンジオールを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物6(1,6-HD組成物6)を調製した。
【0189】
(製造例8:1,6-ヘキサンジオール組成物7(1,6-HD組成物7)の調製)
製造例4で得られた1,6-HD組成物3に、6-ヒドロキシヘキサナールが1500質量ppmになるように6-ヒドロキシヘキサナールを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物7(1,6-HD組成物 7)を調製した。
【0190】
(製造例9:1,6-ヘキサンジオール組成物8(1,6-HD組成物8)の調製)
製造例4で得られた1,6-HD組成物3に、グリセリンが1%になるようにグリセリンを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物8(1,6-HD組成物 8)を調製した。
【0191】
(実施例1:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル組成物(HDG組成物1)の調製)
攪拌機、温度センサー、デカンター、窒素導入管、冷却管を有する反応容器に、窒素雰囲気下、製造例2で得られた1,6-ヘキサンジオール組成物1 547.2g(4.63mol)、触媒として3フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体 1.0gを加え、撹拌しながら70℃へ昇温し、同温度でエピクロロヒドリン 856.6g(9.26mol)を3時間かけて滴下し、その後同温度で1時間付加反応を継続した。次いでトルエン 2800.0gを加え混合撹拌しながら30℃まで降温した後に48%水酸化ナトリウム水溶液 810.3gを1時間かけ同温度で滴下し、滴下後同温度で1時間閉環反応を行った。イオン交換水 1400.0gを加え1時間撹拌し、静置し水相を取り除いた後に、イオン交換水 700.0gを加え1時間撹拌後静置し、水相を取り除いた。再度イオン交換水 700.0gを加え 30分撹拌混合し、次亜リン酸ナトリウムをpH=7以下になるまで投入する。pH=7以下を確認後に静置し水相を取り除く。デカンターをセットし撹拌下120℃に昇温し水分が出なくなるまで脱水を行う。水分の析出終了後に60℃まで降温し、同温度で珪藻土を用い濾過精製を行う。得られたHDGトルエン溶液を120℃、減圧下トルエンを留去し、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル組成物(HDG組成物1) 1000.0gを得た。HDG組成物1にはHDGのオリゴマー成分も含まれており、HDG組成物1の100質量%中の1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(HDG)の含有量は75質量%であった。
得られたHDG組成物1の分析結果を以下に示した。なお、HDG組成物の分析において、グリセリントリグリシジルエーテル(GTG)、グルコースペンタグリシジルエーテル(GPG、1,3-シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,3CDG)、1,4-シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,4CDG)、6-(オキシラン-2-イルメトキシ)ヘキサナール(OHL)の検出限界はそれぞれ、5.0質量ppm、5.0質量ppm、5.0質量ppm、10.0質量ppmであった。
グリセリントリグリシジルエーテル(GTG):800質量ppm
グルコースペンタグリシジルエーテル(GPG):検出限界以下
1,3-シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,3CDG):検出限界以下
1,4-シクロヘキサンジオールジグリシジルエーテル(1,4CDG):検出限界以下
6-(オキシラン-2-イルメトキシ)ヘキサナール(OHL):500質量ppm
【0192】
(実施例2~8:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル組成物2~8(HDG組成物2~8)の調製)
実施例1で用いた1,6-HD組成物1に変えてそれぞれ1,6-HD組成物2~8を用いた以外は実施例1と同様の操作でHDG組成物2~8を調製した。合成結果を表1に示す。
【0193】
【0194】
(製造例9;硬化性組成物1の製造と評価)
実施例1で得られた 1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル組成物(HDG組成物1) 20.0g、DIC(株)社製EPICLON 850(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂) 80.0g、DIC(株)社製LUCKAMIDE WN-215(マンニッヒ型ポリアミン樹脂硬化剤) 48.7gを混合し硬化性組成物1を得た。
【0195】
硬化性組成物1を用い、以下の如く硬化物の試験片を調製、評価した。
【0196】
<ショアD硬度>
アルミシャーレ-上に硬化物の膜厚が7mmとなるように前記した硬化性組成物を注入し、23℃×7日間養生し硬化物を得る。デュロメーター硬度計タイプDを用い、JIS J7215-1986に従い硬化物のショアD硬度を測定し評価した。
<引張試験>
硬化物の厚さが3mmで得られるように調製されたガラス容器に前記した硬化性組成物を注入し、23℃×7日間養生し硬化物を得た。得られた硬化物をダンベル状1号形に切り出し試験片としJIS-K6911に準じて引張試験を実施した。試験で確認された、最大点応力、伸び、弾性率をそれぞれ引張強度、柔軟性、硬さの指標として評価した。
<圧縮試験>
前記した硬化性組成物を一辺20mmの立方体に調製できる容器に注入し、23℃×7日間養生し同立方体の試験片を調製した。当該試験片をJIS-K6911に準じて圧縮試験を実施した。圧縮強度を得られた最大点応力、弾性率で評価した。
<曲げ試験>
前記した硬化性組成物を10mm×100mmの直方体に調製できる容器に注入し、23℃×7日間養生し同直方体の試験片を調製した。当該試験片をJIS-K7171に準じて曲げ試験を実施した。曲げ強度を得られた最大点応力、弾性率で評価した。
【0197】
(製造例10-16;硬化組成物2-8の製造と評価)
製造例9の配合処方に変えて表2に示した配合処方で製造例9と同様に硬化性組成物を調製し同様に評価した。
【0198】
【0199】
表2中の各成分は、以下の通りである。
850:DIC(株)社製EPICLON 850(ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量=190g/eq)
830:DIC(株)社製EPICLON 830(ビスフェノールF型液状エポキシ樹脂 エポキシ当量=180g/eq)
WN215:DIC(株)社製LUCKAMIDE WN-215(マンニッヒ型ポリアミン樹脂硬化剤 活性水素当量=88g/eq)
WN505:DIC(株)社製LUCKAMIDE WN-505(アミンアダクト型ポリアミン樹脂硬化剤 活性水素当量=58g/eq)
WH610:DIC(株)社製LUCKAMIDE WH-610(変性アミン型ポリアミン樹脂硬化剤 活性水素当量=91g/eq)
EA330:DIC(株)社製LUCKAMIDE EA-330(ポリアミド型ポリアミン樹脂硬化剤 活性水素当量=77g/eq)
【0200】
(比較製造例1:1,6-ヘキサンジオール組成物9(1,6-HD組成物9)の調製)
実施例4で得られた1,6-HD組成物3に、グルコースが150質量ppmになるように添加した1,6-ヘキサンジオール組成物9(1,6-HD組成物9)を調製した。
【0201】
(比較製造例2:1,6-ヘキサンジオール組成物10(1,6-HD組成物10)の調製)
実施例3で得られた1,6-HD組成物3に、1,3-シクロヘキサンジオールが150質量ppmになるように1,3-シクロヘキサンジオールを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物10(1,6-HD組成物10)を調製した。
【0202】
(比較製造例3:1,6-ヘキサンジオール組成物11(1,6-HD組成物11)の調製)
実施例3で得られた1,6-HD組成物 3に、1,4-シクロヘキサンジオールが150質量ppmになるように1,4-シクロヘキサンジオールを添加した1,6-ヘキサンジオール組成物11(1,6-HD組成物11)を調製した。
【0203】
(比較例1~3:1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル組成物9~11(HDG組成物9~11)の調製
実施例1で用いた1,6-HD組成物1に変えてそれぞれ1,6-HD組成物9~11を用いた以外は実施例1と同様の操作でHDG組成物9~11を調製した。合成結果を表3に示す。
【0204】
【0205】
(比較製造例4-8;硬化組成物9-13の製造と評価)
製造例9の配合処方に変えて表4に示した配合処方で製造例9と同様に硬化性組成物を調製し、同様に評価した。
【0206】
【0207】
前記実施例、比較例より、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下である本発明のヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物は、物性(特に、引張強度、硬さ、圧縮強度、曲げ強度)に優れる硬化物を提供できることが分かった。
【要約】
物性に優れる硬化物を提供可能なヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物、及びこれを用いた硬化性組成物、硬化物を提供することを目的とする。本発明の組成物は、ヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマーを含有し、一分子内に2級水酸基を2個以上有する化合物(A1)及び前記化合物(A1)のグリシジルエーテル化合物(A2)の合計含有量が100質量ppm以下、6-ヒドロキシヘキサナール及びその誘導体(B1)並びに前記化合物(B1)のグリシジルエーテル化合物(B2)の合計含有量が1500質量ppm以下であるヘキサンジオールグリシジルエーテル及び/又はそのオリゴマー組成物に関する。