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特許7572126プラズマ処理装置用の電極及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置用の電極及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20241016BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20241016BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H01L21/302 101B
H01L21/205
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021071770
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166511
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2024-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小舩 貴基
【審査官】佐藤 海
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-363552(JP,A)
【文献】特開2012-009624(JP,A)
【文献】特開2011-049592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01J 37/32
C23C 16/509
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理装置用の電極であって、
前記電極は、
導電性の第1の部材と、
前記第1の部材の内部に複数設けられ、前記第1の部材と2次電子放出係数の異なる材質により形成され、その上面と下面との間に段差を有する円柱形状の第2の部材と、を備える、
プラズマ処理装置用の電極。
【請求項2】
前記第2の部材は、前記第2の部材の表面の少なくとも一部がプラズマに晒されるように構成される、
請求項1に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項3】
前記第2の部材の前記2次電子放出係数は、前記第1の部材の前記2次電子放出係数より大きい、
請求項1又は2に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項4】
複数の前記第2の部材は、互いに等間隔に配置される、
請求項1~3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項5】
複数の前記第2の部材は、周方向に互いに等間隔に配置する、
請求項4に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項6】
前記第2の部材は、前記第1の部材を中心から順に径方向に内周領域、中間領域、外周領域に分けたときの前記外周領域に配置される、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項7】
前記第1の部材はシリコンにより形成され、前記第2の部材は石英により形成される、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項8】
前記第2の部材は、前記第2の部材の表面の少なくとも一部が前記第1の部材のプラズマに晒される面から露出し、前記第1の部材のプラズマに晒される面の反対面からは露出しないように構成される、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項9】
前記第2の部材は、前記第1の部材を高さ方向に貫通し、前記第2の部材の表面の少なくとも一部が前記第1の部材のプラズマに晒される面及び当該面の反対面から露出するように構成される、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項10】
前記円柱形状の上側の直径は、前記円柱形状の下側の直径よりも大きい、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項11】
記円柱形状の上側の直径は、前記円柱形状の下側の直径よりも小さい、
請求項1~のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置用の電極。
【請求項12】
プラズマ処理チャンバと、
前記プラズマ処理チャンバ内に配置される基板支持部と、
前記基板支持部に対向して配置される電極と、を有し、
前記電極は、
導電性の第1の部材と、
前記第1の部材の内部に複数設けられ、前記第1の部材と2次電子放出係数の異なる材質により形成され、その上面と下面との間に段差を有する円柱形状の第2の部材と、を備える、
プラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プラズマ処理装置用の電極及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1は、平行平板型の容量結合プラズマ処理装置を開示する。このプラズマ処理装置の上部電極は、載置台に対向し、プラズマ空間に露出する電極板を有する。電極板は一枚のプレートであり、Si又はSiCの単一の材質で構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-109838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、プラズマ電子密度を制御することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一の態様によれば、プラズマ処理装置用の電極であって、前記電極は、導電性の第1の部材と、前記第1の部材の内部に複数設けられ、前記第1の部材と2次電子放出係数の異なる材質により形成され、その上面と下面との間に段差を有する円柱形状の第2の部材と、を備える、プラズマ処理装置用の電極が提供される。
【発明の効果】
【0006】
一の側面によれば、プラズマ電子密度を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るプラズマ処理システムを示す図。
図2】実施形態に係る電極板の断面の一例を示す図。
図3】実施形態に係る電極板の断面、上面及び下面の一例を示す図。
図4】物質(Element)の2次電子放出係数(δmax)等を示す図。
図5】物質(Element)の2次電子放出係数(δmax)等を示す図。
図6】実施形態と比較例に係るプラズマ電子密度の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0009】
[プラズマ処理システム]
以下に、プラズマ処理システムの構成例について、図1を参照しながら説明する。
【0010】
プラズマ処理システムは、容量結合型のプラズマ処理装置1及び制御部2を含む。プラズマ処理装置1は、プラズマ処理チャンバ10、ガス供給部20、電源30及び排気システム40を含む。また、プラズマ処理装置1は、基板支持部11及びガス導入部を含む。ガス導入部は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理チャンバ10内に導入するように構成される。ガス導入部は、シャワーヘッド13を含む。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10内に配置される。シャワーヘッド13は、基板支持部11の上方に配置される。一実施形態において、シャワーヘッド13は、プラズマ処理チャンバ10の天部(ceiling)の少なくとも一部を構成する。プラズマ処理チャンバ10は、シャワーヘッド13、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a及び基板支持部11により規定されたプラズマ処理空間10sを有する。プラズマ処理チャンバ10は、少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10sに供給するための少なくとも1つのガス供給口と、プラズマ処理空間からガスを排出するための少なくとも1つのガス排出口とを有する。側壁10aは接地される。基板支持部11は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。
【0011】
基板支持部11は、本体部111及びリングアセンブリ112を含む。本体部111は、基板(ウェハ)Wを支持するための中央領域(基板支持面)111aと、リングアセンブリ112を支持するための環状領域(リング支持面)111bとを有する。本体部111の環状領域111bは、平面視で本体部111の中央領域111aを囲んでいる。基板Wは、本体部111の中央領域111a上に配置され、リングアセンブリ112は、本体部111の中央領域111a上の基板Wを囲むように本体部111の環状領域111b上に配置される。一実施形態において、本体部111は、基台及び静電チャックを含む。基台は、導電性部材を含む。基台の導電性部材は下部電極として機能する。静電チャックは、基台の上に配置される。静電チャックの上面は、基板支持面111aを有する。リングアセンブリ112は、1又は複数の環状部材を含む。1又は複数の環状部材のうち少なくとも1つはエッジリングである。また、図示は省略するが、基板支持部11は、静電チャック、リングアセンブリ112及び基板のうち少なくとも1つをターゲット温度に調節するように構成される温調モジュールを含んでもよい。温調モジュールは、ヒータ、伝熱媒体、流路、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。流路には、ブラインやガスのような伝熱流体が流れる。また、基板支持部11は、基板Wの裏面と基板支持面111aとの間に伝熱ガスを供給するように構成された伝熱ガス供給部を含んでもよい。
【0012】
シャワーヘッド13は、ガス供給部20からの少なくとも1つの処理ガスをプラズマ処理空間10s内に導入するように構成される。シャワーヘッド13は、少なくとも1つのガス供給口13a、少なくとも1つのガス拡散室13b、及び複数のガス導入口13cを有する。ガス供給口13aに供給された処理ガスは、ガス拡散室13bを通過して複数のガス導入口13cからプラズマ処理空間10s内に導入される。
【0013】
シャワーヘッド13は、電極板13e及び電極板13eを支持する電極支持部13fを有する。電極板13eは、プラズマ処理装置用の電極(上部電極)として機能する。電極板13e及び電極支持部13fの周囲には、環状の絶縁性部材15が設けられ、これにより、上部電極は、プラズマ処理チャンバ10筐体とは電気的に絶縁される。絶縁性部材15の下部には環状のグランド部材16が設けられている。
【0014】
電極板13eは、基板支持部11に対向し、その下面がプラズマ処理空間10sに露出する第1の部材13dと、第1の部材13dの内部に設けられた第2の部材14a、14bとを有する。
【0015】
なお、ガス導入部は、シャワーヘッド13に加えて、側壁10aに形成された1又は複数の開口部に取り付けられる1又は複数のサイドガス注入部(SGI:Side Gas Injector)を含んでもよい。
【0016】
ガス供給部20は、少なくとも1つのガスソース21及び少なくとも1つの流量制御器22を含んでもよい。一実施形態において、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスを、それぞれに対応のガスソース21からそれぞれに対応の流量制御器22を介してシャワーヘッド13に供給するように構成される。各流量制御器22は、例えばマスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器を含んでもよい。さらに、ガス供給部20は、少なくとも1つの処理ガスの流量を変調又はパルス化する1又はそれ以上の流量変調デバイスを含んでもよい。
【0017】
電源30は、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介してプラズマ処理チャンバ10に結合されるRF電源31を含む。RF電源31は、ソースRF信号及びバイアスRF信号のような少なくとも1つのRF信号(RF電力)を、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材(電極板13e)に供給するように構成される。これにより、プラズマ処理空間10sに供給された少なくとも1つの処理ガスからプラズマが形成される。従って、RF電源31は、プラズマ処理チャンバ10において1又はそれ以上の処理ガスからプラズマを生成するように構成されるプラズマ生成部の少なくとも一部として機能し得る。また、バイアスRF信号を基板支持部11の導電性部材に供給することにより、基板Wにバイアス電位が発生し、形成されたプラズマ中のイオン成分を基板Wに引き込むことができる。
【0018】
一実施形態において、RF電源31は、第1のRF生成部31a及び第2のRF生成部31bを含む。第1のRF生成部31aは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に結合され、プラズマ生成用のソースRF信号(ソースRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、ソースRF信号は、13MHz~150MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第1のRF生成部31aは、異なる周波数を有する複数のソースRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のソースRF信号は、基板支持部11の導電性部材及び/又はシャワーヘッド13の導電性部材に供給される。第2のRF生成部31bは、少なくとも1つのインピーダンス整合回路を介して基板支持部11の導電性部材に結合され、バイアスRF信号(バイアスRF電力)を生成するように構成される。一実施形態において、バイアスRF信号は、ソースRF信号よりも低い周波数を有する。一実施形態において、バイアスRF信号は、400kHz~13.56MHzの範囲内の周波数を有する。一実施形態において、第2のRF生成部31bは、異なる周波数を有する複数のバイアスRF信号を生成するように構成されてもよい。生成された1又は複数のバイアスRF信号は、基板支持部11の導電性部材に供給される。また、種々の実施形態において、ソースRF信号及びバイアスRF信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。
【0019】
また、電源30は、プラズマ処理チャンバ10に結合されるDC電源32を含んでもよい。DC電源32は、第1のDC生成部32a及び第2のDC生成部32bを含む。一実施形態において、第1のDC生成部32aは、基板支持部11の導電性部材に接続され、第1のDC信号を生成するように構成される。生成された第1のバイアスDC信号は、基板支持部11の導電性部材に印加される。一実施形態において、第1のDC信号が、静電チャック内の電極のような他の電極に印加されてもよい。一実施形態において、第2のDC生成部32bは、シャワーヘッド13の導電性部材に接続され、第2のDC信号を生成するように構成される。生成された第2のDC信号は、シャワーヘッド13の導電性部材に印加される。種々の実施形態において、第1及び第2のDC信号のうち少なくとも1つがパルス化されてもよい。なお、第1及び第2のDC生成部32a,32bは、RF電源31に加えて設けられてもよく、第1のDC生成部32aが第2のRF生成部31bに代えて設けられてもよい。
【0020】
排気システム40は、例えばプラズマ処理チャンバ10の底部に設けられたガス排出口10eに接続され得る。排気システム40は、圧力調整弁及び真空ポンプを含んでもよい。圧力調整弁によって、プラズマ処理空間10s内の圧力が調整される。真空ポンプは、ターボ分子ポンプ、ドライポンプ又はこれらの組み合わせを含んでもよい。
【0021】
制御部2は、本開示において述べられる種々の工程をプラズマ処理装置1に実行させるコンピュータ実行可能な命令を処理する。制御部2は、ここで述べられる種々の工程を実行するようにプラズマ処理装置1の各要素を制御するように構成され得る。一実施形態において、制御部2の一部又は全てがプラズマ処理装置1に含まれてもよい。制御部2は、例えばコンピュータ2aを含んでもよい。コンピュータ2aは、例えば、処理部(CPU:Central Processing Unit)2a1、記憶部2a2、及び通信インターフェース2a3を含んでもよい。処理部2a1は、記憶部2a2に格納されたプログラム及びレシピに基づいて種々の制御動作を行うように構成され得る。記憶部2a2は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。通信インターフェース2a3は、LAN(Local Area Network)等の通信回線を介してプラズマ処理装置1との間で通信してもよい。
【0022】
[プラズマ処理装置用の電極]
次に、本実施形態に係るプラズマ処理装置用の電極の構成について、図2及び図3を参照しながら説明する。図2及び図3(a)は、実施形態に係る電極板13eの断面の一例を示す。図3(b)及び(c)は、実施形態に係る電極板13eの上面及び下面の一例を示す。
【0023】
図2(a)及び(b)を参照すると、電極板13eの第1の部材13dは、中心軸Oに対して円盤状の一枚のプレートであり、導電性部材としてシリコンで構成されている。第1の部材13dは、SiCで構成されてもよい。第1の部材13dの下面は、プラズマ処理空間10sに露出し、プラズマに暴露される。
【0024】
第2の部材14a、14bは、第1の部材13dの内部に設けられ、第1の部材13dとは2次電子放出係数が異なる材質から構成される。図2(a)では、第2の部材14a、14bは、第1の部材13dの下面に設けられた穴に接合又は嵌め込み、これにより第1の部材13dの内部に固定される。図2(b)では、第2の部材14a、14bは、第1の部材13dに設けられた貫通孔に接合又は嵌め込み、これにより第1の部材13dの内部に固定される。第2の部材14a、14bは石英により形成されてもよい。
【0025】
第2の部材14a、14bの2次電子放出係数は、第1の部材13dの2次電子放出係数より大きい。第2の部材14a、14bは、電極板13eの内部に配置され、第2の部材14a、14bの表面の少なくとも一部がプラズマに晒されるように構成される。
【0026】
図2及び図3の例では、第2の部材14a、14bは、少なくとも一部がプラズマ処理空間10s側に露出する。図2(a)の例では、第2の部材14a、14bの下面が、第1の部材13dの下面から露出している。図2(b)及び図3(a)の例では、第2の部材14a、14bの上面及び下面が、第1の部材13dの下面及び上面から露出している。
【0027】
第2の部材14a、14bは段差のある円柱形状を有し、図2(a)の例では、第2の部材14a、14bの上側の直径が下側の直径よりも小さくなっている。図2(b)及び図3(a)の例では、第2の部材14a、14bの上側の直径が下側の直径よりも大きくなっている。このため、第2の部材14a、14bが第1の部材13dから脱離しにくい構成となっている。ただし、第2の部材14a、14bの形状はこれに限らず、段差のない円柱形状であってもよい。また、図2(a)のように第2の部材14a、14bが電極板13eを貫通しない構成であって、第2の部材14a、14bの上側の直径が下側の直径よりも大きくなってもよい。また、図2(b)のように、第2の部材14a、14bが電極板13eを貫通する構成であって、第2の部材14a、14bの上側の直径が下側の直径よりも小さくなってもよい。
【0028】
図3(b)及び(c)は、図3(a)に示す電極板13eの第1の部材13d及び第2の部材14a、14bの配置の一例を示す。図3(b)は電極板13eの上面を示したものであり、図3(c)は電極板13eの天地を逆転させ、電極板13eの下面を示したものである。図3(a)は、図3(b)のC-C断面を示したものである。
【0029】
第2の部材14a、14bは、第1の部材13dを貫通し、第1の部材13dの内部に複数有している。複数の第2の部材14a、14bは、互いに等間隔に配置される。複数の第2の部材14aは、周方向に互いに等間隔に配置されてもよい。同様に、複数の第2の部材14bは、周方向に互いに等間隔に配置されてもよい。本開示では、第2の部材14a、14bは、第1の部材13dを中心から順に径方向に内周領域、中間領域、外周領域としたときの外周領域に配置される。
【0030】
内周領域、中間領域、外周領域は、例えば、図3(a)に示すように、第1の部材13dを中心軸Oから径方向に3等分したときの中央(内側)、中間、外側の領域である。本開示では、第2の部材14a、14bは外周領域に設けられるが、これに限らない。第2の部材14a、14bは、プラズマ処理空間10sに形成されるプラズマの電子密度分布の特性に応じて、内周領域、中間領域及び外周領域の少なくともいずれかに設けられてもよい。
【0031】
第2の部材14a、14bは、径方向に2段になって周方向に等間隔に配置されることに限らない。第2の部材14a、14bは、径方向に1段又は3段以上配置されてもよい。また、第2の部材14a、14bは、円柱形状に限られず、リング状でもよい。第2の部材14a、14bは、周方向に等間隔に配置されず、局所的に配置されてもよい。
【0032】
[2次電子放出係数]
第1の部材13dの2次電子放出係数と第2の部材14a、14bの2次電子放出係数は異なる。第2の部材14a、14bの2次電子放出係数は、第1の部材13dの2次電子放出係数より大きいことが好ましい。
【0033】
図4及び図5は、元素又は化合物(Element又はCompound)の2次電子放出係数(δmax)等を示す図である。出典は、「"Hand book of chemistry and physic" David R. Lide」である。図4の右側に示す元素(Element)がシリコン(Si)の2次電子放出係数(δmax)は、1.1である。
【0034】
シリコンよりも2次電子放出係数が大きい物質としては、図5の右側に示す化合物(Compound)として石英(SiO(Quartz))が挙げられる。石英の2次電子放出係数(δmax)は、2.1~4であり、シリコンの第2の部材14a、14bよりも大きい。よって、第1の部材13dがシリコン、第2の部材14a、14bが石英の組み合わせが好ましい。
【0035】
また、第2の部材14a、14bは、図5の右側に示す酸化マグネシウム(MgO(crystal))であってもよい。酸化マグネシウムの2次電子放出係数(δmax)は、20~25であり、シリコンの第2の部材14a、14bよりも大きい。よって、第1の部材13dがシリコン、第2の部材14a、14bが酸化マグネシウムの組み合わせであってもよい。
【0036】
また、第2の部材14a、14bは、図5の左側に示すアルミナ(Al)であってもよい。アルミナの2次電子放出係数(δmax)は、2~9である。よって、第1の部材13dがシリコン、第2の部材14a、14bがアルミナの組み合わせであってもよい。
【0037】
第1の部材13d及び第2の部材14a、14bの下面はプラズマに暴露される。このとき、プラズマ中のイオンが第1の部材13d及び第2の部材14a、14bの下面に入射し、第1の部材13d及び第2の部材14a、14bから電子放出が起こる。
【0038】
第1の部材13d及び第2の部材14a、14bから放出される2次電子の量は、2次電子放出係数により決まる。つまり、2次電子放出係数が大きい材質(Element又はCompound)ほどプラズマ中のイオンが入射したときにより多くの2次電子を放出できる。一方、電極板13eに使用される材質としては、プラズマ耐性等を考慮し、単結晶シリコン、SiC、石英が代表的である。
【0039】
よって、本開示のプラズマ処理装置1では、電極板13eの主な材質となる第1の部材13dにはシリコンを使用し、第1の部材13dの内部に設けられる第2の部材14a、14bにはシリコンよりも2次電子放出係数の大きい石英を使用する。これにより、シリコンのみから電極板13eを形成する場合よりも、電極板13eの一部に石英を設けることによって、シリコンに対して2次電子放出係数が大きい石英により2次電子の放出量を増加させることができる。
【0040】
したがって、石英の第2の部材14a、14bは、シリコンの第1の部材13d内のプラズマの電子密度を高めたい位置に配置する。例えば、外周領域のプラズマの電子密度を高めたい場合、第2の部材14a、14bを第1の部材13dの外周領域に配置する。これにより、第1の部材13dの下方よりも第2の部材14a、14bの下方においてより多くの電子を放出させることができる。これにより、プラズマ中の電子密度を制御でき、プラズマ密度の均一性を高め、基板Wのプラズマ処理の均一性を図ることができる。
【0041】
[プラズマの電子密度]
プラズマ処理空間10s内のプラズマの電子密度が相対的に低い箇所の上方に第1の部材13dのシリコンよりも2次電子放出係数の大きい第2の部材14a、14bを配置する一例について図6を参照しながら説明する。図6は、実施形態と比較例に係るプラズマ電子密度の一例を示す図である。
【0042】
図6の横軸は電極板13eの中央を0とした時の径方向の位置を示し、縦軸はプラズマの電子密度Neを示す。横軸の0は基板Wの中心でもあり、横軸の150mmの位置は基板Wのエッジ(外周端部)の位置を示す。丸(〇)の集合体で示した曲線Aは、第1の部材13dがシリコンのみで形成されている電極板の場合のプラズマの電子密度を示す。
【0043】
プラズマの電子密度は、下部電極として機能する基板支持部11の構造と、基板支持部11に流れるRF信号により定められる。図6の曲線Aは、第1の部材13dがシリコンのみにより形成された電極板を使用してプラズマを生成した場合のプラズマの電子密度を示す。この場合、プラズマ電子密度Neは、基板Wの中心0をピークに山なりの分布を示し、基板Wのエッジである150mmの前後でプラズマ電子密度が落ち込む傾向がある。
【0044】
そこで、2次電子放出係数がシリコンよりも大きい石英の第2の部材14a、14bを中心から150mm前後を含む外周領域に配置する。三角(△)の集合体で示した曲線Bは、本実施形態の図3(a)のように第1の部材13dの外周領域に第2の部材14a、14bを配置した電極板13eを使用してプラズマを生成した場合のプラズマの電子密度を示す。
【0045】
この場合、第1の部材13dよりも2次電子放出係数が大きい第2の部材14a、14bにより外周領域のプラズマの電子密度を増加させることができ、プラズマの電子密度の均一化を図ることができる。これにより、エッチングレートの均一性を高め、プラズマ処理の均一性を向上させることができる。なお、図6では、本実施形態を示す曲線Bは、比較例を示す曲線Aに対して全体的にプラズマの電子密度Neが低くなっている。これについては、曲線A、Bの結果を得るためのプラズマ生成条件がそれぞれ異なるためであり、プラズマ生成条件が同一であれば曲線Bは、曲線Aと同等のプラズマの電子密度Neを有し、かつ、プラズマの電子密度を均一にできる。
【0046】
以上に説明した第2の部材14a、14bの配置は一例であり、これに限らない。第1の部材よりも2次電子放出係数が大きい第2の部材はプラズマ電子密度が他の領域よりも低い部分に配置すればよい。例えば、第2の部材はプラズマ電子密度が他の領域よりも低い部分に局所的に配置することもできる。第2の部材の下方にて第1の部材よりも相対的に2次電子の放出量が増加し、これにより、プラズマ電子密度Neの均一性を高めることができる。
【0047】
なお、第2の部材14a、14bの下面が、プラズマ処理空間10sに露出している例を挙げて説明したが、第2の部材14a、14bはプラズマ処理空間10sに露出していなくてもよい。例えば、電極板13eのガス導入口13c(図1参照)を有する貫通孔に第2の部材14a、14bが露出している場合、貫通孔の内部に電子が入り込んで第2の部材に衝突し、第2の部材から2次電子が放出される現象が生じる場合がある。この場合には、第2の部材14a、14bの下面が、必ずしもプラズマ処理空間10sに露出していない。
【0048】
ただし、貫通孔にプラズマが進入すると貫通孔の内部で異常放電が発生するおそれがある。よって、貫通孔の内部にプラズマが進入しないように貫通孔の寸法をプラズマが進入しない大きさに管理する。また、第1の部材13dと第2の部材14a、14bとの間に所定以上の隙間があると、その隙間で2次電子の放出が起き、その隙間にプラズマが進入すると、内部で異常放電が発生するおそれがある。よって、第1の部材13dと第2の部材14a、14bとの間においてもプラズマが進入しないように隙間の寸法をプラズマが進入しない大きさに管理する。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態のプラズマ処理装置用の電極は、導電性の第1の部材と、第1の部材の内部に設けられ、第1の部材と2次電子放出係数の異なる材質により形成された第2の部材と、を有する。かかる構成のプラズマ処理装置用の電極及びプラズマ処理装置1によれば、プラズマ電子密度を制御することができる。これにより、プラズマ電子密度の均一性を図ることができる。この結果、プラズマ処理の均一性を高めることができる。
【0050】
なお、本開示では、プラズマ処理装置用の電極について、上部電極を例に挙げて説明した。しかしながら、これに限らず、プラズマ処理装置用の電極は、プラズマ処理チャンバ10の上部に設けられる部材に適用できる。例えば、プラズマ処理装置用の電極は、プラズマ処理チャンバ10の上部に設けられた環状のグランド部材16であってもよい。この場合、グランド部材16は、導電性の第1の部材と、第1の部材の内部に2次電子放出係数の異なる第2の部材とを有する。これにより、特に基板Wの主に外周領域のプラズマ電子密度を制御することができる。また、これによれば、プラズマ処理チャンバ10の側壁10a付近でプラズマの電子密度を上昇させることができる。このため、プラズマ処理空間10sにクリーニングガスを供給してプラズマを生成した場合に、側壁10a付近におけるクリーニング効果を高め、従来クリーニングできなかった箇所等もクリーニングできる可能性がある。
【0051】
なお、グランド部材16は、絶縁性部材15の下部に設けられ、接地されている。本開示のプラズマ処理装置用の電極は上部電極及びグランド部材16の両方に適用することも可能である。
【0052】
今回開示された実施形態に係るプラズマ処理装置用の電極及びプラズマ処理装置は、すべての点において例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。実施形態は、添付の請求の範囲及びその主旨を逸脱することなく、様々な形態で変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で他の構成も取り得ることができ、また、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0053】
本開示のプラズマ処理装置は、Atomic Layer Deposition(ALD)装置、Capacitively Coupled Plasma(CCP)、Inductively Coupled Plasma(ICP)、Radial Line Slot Antenna(RLSA)、Electron Cyclotron Resonance Plasma(ECR)、Helicon Wave Plasma(HWP)のいずれのタイプの装置でも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 プラズマ処理装置
2 制御部
2a コンピュータ
2a1 処理部
2a2 記憶部
2a3 通信インターフェース
10 プラズマ処理チャンバ
10s プラズマ処理空間
11 基板支持部
13 シャワーヘッド
13e 電極板
13d 第1の部材
14a、14b 第2の部材
16 グランド部材
20 ガス供給部
30 電源
31 RF電源
31a 第1のRF生成部
31b 第2のRF生成部
32a 第1のDC生成部
32b 第2のDC生成部
40 排気システム
111 本体部
112 リングアセンブリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6