(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】真空処理装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/34 20060101AFI20241016BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/316 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23C14/34 G
C23C14/34 M
H01L21/31 D
H01L21/316 Y
(21)【出願番号】P 2021072077
(22)【出願日】2021-04-21
【審査請求日】2023-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中村 貫人
(72)【発明者】
【氏名】横原 宏行
(72)【発明者】
【氏名】元村 祐己
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/064197(WO,A1)
【文献】実開平02-074363(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0345606(US,A1)
【文献】特開2005-350692(JP,A)
【文献】特開2014-040670(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
H01L 21/31
H01L 21/316
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を載置する載置部と、
ターゲットをスパッタして粒子を放出させ、前記載置部に載置された前記基板に金属膜を形成するプラズマ生成部と、
前記載置部を覆う遮蔽位置と前記遮蔽位置から退避した退避位置とを移動可能なシャッターと、を備え、
前記遮蔽位置に配置された前記シャッターは、前記載置部との間に処理空間を形成し、
前記シャッターは、
前記基板に形成された前記金属膜と反応する酸素ガスを前記処理空間
に供給するガス供給部と、
前記ガス供給部よりも中心側で前記処理空間から前記
酸素ガスを排気するガス排気部と、を有する、
真空処理装置。
【請求項2】
前記ガス供給部は、
前記シャッターの外周部から前記処理空間に
前記酸素ガスを供給する第1ガス供給部と、
前記シャッターの中心部から前記処理空間に
前記酸素ガスを供給する第2ガス供給部と、を有し
、
前記ガス排気部は、
前記第1ガス供給部と前記第2ガス供給部との間に配置される、
請求項1に記載の真空処理装置。
【請求項3】
前記第1ガス供給部に供給する前記
酸素ガスの流量を制御する第1流量制御部と、
前記第2ガス供給部に供給する前記
酸素ガスの流量を制御する第2流量制御部と、を有する、
請求項2に記載の真空処理装置。
【請求項4】
前記第1ガス供給部、前記第2ガス供給部及び前記ガス排気部を覆う遮蔽部材を備える
、
請求項2または請求項3に記載の真空処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、真空容器内の載置部上の基板に向くように配置されたターゲットを、プラズマ発生用のガスをプラズマ化して得たプラズマ中のイオンによりスパッタして基板上に金属膜を形成し、次いでこの金属膜を酸化する真空処理装置において、基板を覆う遮蔽位置と基板を覆う位置から退避した退避位置との間で移動自在な遮蔽部材と、基板の上方位置と上方位置から退避した退避位置との間で移動自在に構成され、酸素を含むガスを供給するための酸素供給部と、を備える真空処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、酸素は反応性に富むため、基板から遠い位置から、基板に酸素を含むガスを供給した場合、酸素を含むガスは、基板に到達する前に、例えばターゲットをスパッタして基板上に金属膜を成膜する際にチャンバ内壁等に付着した金属等と反応・吸着することにより、基板上に成膜された金属膜に安定供給ができなくなる。
【0005】
また、特許文献1に開示された真空処理装置に示すように、遮蔽部材を遮蔽位置に移動させるとともに、酸素供給部を上方位置に移動させ、基板に酸素を含むガスを供給した場合、基板の中心付近と外縁との間に圧力差が生じる。
【0006】
上記課題に対して、一側面では、基板に供給される酸素を含むガスの圧力分布を調整可能な真空処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、一の態様によれば、基板を載置する載置部と、ターゲットをスパッタして粒子を放出させ、前記載置部に載置された前記基板に金属膜を形成するプラズマ生成部と、前記載置部を覆う遮蔽位置と前記遮蔽位置から退避した退避位置とを移動可能なシャッターと、を備え、前記遮蔽位置に配置された前記シャッターは、前記載置部との間に処理空間を形成し、前記シャッターは、前記基板に形成された前記金属膜と反応する酸素ガスを前記処理空間に供給するガス供給部と、前記ガス供給部よりも中心側で前記処理空間から前記酸素ガスを排気するガス排気部と、を有する、真空処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
一の側面によれば、基板に供給される酸素を含むガスの圧力分布を調整可能な真空処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】基板処理システムの一例の構成を示す平面図である。
【
図2】基板処理システムで形成される素子の断面図の一例である。
【
図3】本実施形態に係る処理室の構成を示す断面図の一例である。
【
図4】本実施形態に係る処理室による成膜処理を説明するフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係る処理室の状態を説明する模式図である。
【
図6】本実施形態に係る処理室が備えるシャッターを下方から見た模式図である。
【
図7】本実施形態に係る処理室における酸素ガスの流れを説明する図である。
【
図8】参考例に係る処理室が備えるシャッターを下方から見た模式図である。
【
図9】参考例に係る処理室における酸素ガスの流れを説明する図である。
【
図10】ウエハの径方向に対する抵抗面積積の分布を示すグラフの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本開示を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
<基板処理システム100>
基板処理システム100の全体構成の一例について、
図1を用いて説明する。
図1は、基板処理システム100の一例の構成を示す平面図である。
【0012】
図1に示す基板処理システム100は、クラスタ構造(マルチチャンバタイプ)のシステムである。基板処理システム100は、複数の処理室111~115、真空搬送室120、ロードロック室131,132、大気搬送室140、ロードポート150及び制御部200を備えている。
【0013】
処理室(真空処理装置)111~115は、所定の真空雰囲気に減圧され、その内部にてウエハ(基板)Wに所望の処理(クリーニング処理、エッチング処理、成膜処理等)を施す。処理室111~115は、真空搬送室120に隣接して配置される。処理室111~115と真空搬送室120とは、ゲートバルブ(
図2で後述するゲートバルブ24参照)の開閉により連通する。処理室111~115は、ウエハWを載置する載置部(
図2で後述する載置部6参照)を有する。なお、処理室111~115における処理のための各部の動作は、制御部200によって制御される。
【0014】
真空搬送室120は、ゲートバルブを介して、複数の室(処理室111~115、ロードロック室131,132)と連結され、所定の真空雰囲気に減圧されている。また、真空搬送室120の内部には、ウエハWを搬送する真空搬送装置121が設けられている。真空搬送装置121は、処理室111~115のゲートバルブの開閉に応じて、処理室111~115と真空搬送室120との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、真空搬送装置121は、ロードロック室131,132のゲートバルブの開閉に応じて、ロードロック室131,132と真空搬送室120との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。なお、真空搬送装置121の動作、ゲートバルブの開閉は、制御部200によって制御される。
【0015】
ロードロック室131,132は、真空搬送室120と大気搬送室140との間に設けられている。ロードロック室131,132は、ウエハWを載置する載置部(図示せず)を有する。ロードロック室131,132は、大気雰囲気と真空雰囲気とを切り替えることができるようになっている。ロードロック室131,132と真空雰囲気の真空搬送室120とは、ゲートバルブの開閉により連通する。ロードロック室131,132と大気雰囲気の大気搬送室140とは、ドアバルブの開閉により連通する。なお、ロードロック室131,132内の真空雰囲気または大気雰囲気の切り替えは、制御部200によって制御される。
【0016】
大気搬送室140は、大気雰囲気となっており、例えば清浄空気のダウンフローが形成されている。また、大気搬送室140の内部には、ウエハWを搬送する大気搬送装置141が設けられている。また、大気搬送室140には、ウエハWの位置合わせを行うアライナ142が設けられている。
【0017】
また、大気搬送室140の壁面には、ロードポート150が設けられている。ロードポート150は、ウエハWが収容されたキャリアF又は空のキャリアFが取り付けられる。キャリアFとしては、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)等を用いることができる。
【0018】
大気搬送装置141は、ドアバルブの開閉に応じて、ロードロック室131,132と大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、大気搬送装置141は、アライナ142と大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。また、
大気搬送装置141は、ロードポート150に取り付けられたキャリアFと大気搬送室140との間でウエハWの搬入及び搬出を行う。なお、大気搬送装置141の動作、ドアバルブの開閉は、制御部200によって制御される。
【0019】
制御部200は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びHDD(Hard Disk Drive)を有する。制御部200は、HDDに限らずSSD(Solid State Drive)等の他の記憶領域を有してもよい。HDD、RAM等の記憶領域には、プロセスの手順、プロセスの条件、搬送条件が設定されたレシピが格納されている。
【0020】
CPUは、レシピに従って各処理室111~115におけるウエハWの処理を制御し、ウエハWの搬送を制御する。HDDやRAMには、各処理室111~115におけるウエハWの処理やウエハWの搬送を実行するためのプログラムが記憶されてもよい。プログラムは、記憶媒体に格納して提供されてもよいし、ネットワークを通じて外部装置から提供されてもよい。
【0021】
図2は、本実施形態に係る基板処理システム100で形成される素子の断面図の一例である。ここでは、垂直磁化型MTJ(Magnetic Tunnel Junction:磁気トンネル接合)素子(磁気抵抗素子)を形成される場合を例に説明する。
【0022】
基板301は、例えばSi基板である。下部電極302は、基板301の上に形成される。下地層303は、下部電極302の上に形成される。下地層303は、例えばTa膜、Ru膜を積層して形成される。
【0023】
下地層303の上には、SAF(Synthetic Antiferromagnet:人工反強磁性体)構造の固定層307が形成される。固定層307は、第1磁性層304と、スペーサー層305と、第2磁性層306と、を有する。
【0024】
第1磁性層304は、下地層303の上に形成される。第1磁性層304は、非磁性のスペーサー層305を介して、第2磁性層306と反強磁性結合を形成し、第2磁性層306の磁化方向を固定する。第1磁性層304は、例えばCo膜とPt膜を交互に積層した多層膜として形成される。
【0025】
非磁性のスペーサー層305は、第1磁性層304の上に形成される。スペーサー層305は、例えばRu、Rh、Ir等で形成される。
【0026】
第2磁性層306は、スペーサー層305の上に形成される。第2磁性層306は、例えばCoFeB膜で形成される。また、第2磁性層306は、例えばCo膜とPt膜を交互に積層した多層膜、Ta膜、CoFeB膜を積層して形成される。
【0027】
トンネルバリア層310は、第2磁性層306の上に形成される。トンネルバリア層310は、MgO膜で形成される。
【0028】
自由層321は、トンネルバリア層310の上に形成される。自由層321は、例えばCoFeB膜で形成される。これにより、固定層307(第2磁性層306)のCoFeB膜、トンネルバリア層310のMgO膜、自由層321のCoFeB膜で、MTJ素子が形成される。
【0029】
キャップ層322は、自由層321の上に形成される。キャップ層322は、例えばTa膜、Ru膜を積層して形成される。
【0030】
図1に示す基板処理システム100において、処理室111は、下部電極302が形成されたウエハWに対して、プリクリーン処理(エッチング処理)を施す処理室である。また、処理室112は、処理室111で処理が施されたウエハWに対して、下地層303、第1磁性層304、スペーサー層305を形成する処理室である。また、処理室113は、処理室112で処理が施されたウエハWに対して、第2磁性層306を形成する処理室である。また、処理室114は、トンネルバリア層310を形成する処理室である。また、処理室115は、自由層321及びキャップ層322を形成する処理室である。
【0031】
この様な基板処理システム100において、制御部200は、大気搬送装置141及び真空搬送装置121を制御して、ロードポート150に取り付けられたキャリアFに収容されたウエハWを、アライナ142で位置調整を行い、ロードロック室131,132を介して、処理室111に搬送する。次に、制御部200は、処理室111を制御して、ウエハWにプリクリーン処理を施す。次に、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室111で処理が施されたウエハWを、処理室111から処理室112に搬送する。次に、制御部200は、処理室112を制御して、ウエハWに下地層303、第1磁性層304及びスペーサー層305を形成する。次に、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室112で処理が施されたウエハWを、処理室112から処理室113に搬送する。次に、制御部200は、処理室113を制御して、ウエハWに第2磁性層306を形成する。
【0032】
次に、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室113で処理が施されたウエハWを、処理室113から処理室114に搬送する。制御部200は、処理室114を制御して、ウエハWにトンネルバリア層310を形成する。
【0033】
次に、制御部200は、真空搬送装置121を制御して、処理室114で処理が施されたウエハWを、処理室114から処理室115に搬送する。次に、制御部200は、処理室115を制御して、ウエハWに自由層321及びキャップ層322を形成する。これにより、ウエハWに
図2に示す垂直磁化型MTJ素子が形成される。最後に、制御部200は、真空搬送装置121及び大気搬送装置141を制御して、処理室115で処理が施されたウエハWを、ロードロック室131,132を介して、ロードポート150に取り付けられたキャリアFに収容する。
【0034】
<処理室114>
次に、ウエハWに金属酸化膜を成膜する処理室(真空処理装置)114について、
図3を用いて更に説明する。
図3は、本実施形態に係る処理室(真空処理装置)114の構成を示す断面図の一例である。ここでは、処理室114は、ウエハWにトンネルバリア層310としてのMgO膜を成膜するものとして説明する。
【0035】
真空容器2は、ステンレス等の導電性の素材で形成され、接地されている。真空容器2は、円筒部2aと、突出部2bと、を有する。
【0036】
真空容器2の突出部2bの底部には、排気路21が接続されている。排気路21は、圧力調整部21aを介して、真空排気装置22に接続されている。また、真空容器2の円筒部2aの側面部には、ウエハWの搬入出口23を開閉するゲートバルブ24が設けられている。なお、処理室114は、ゲートバルブ24を介して、真空搬送室120(
図1参照)と接続されている。
【0037】
真空容器2の円筒部2aの天井部には、ターゲット電極32a,32bが設けられている。ターゲット電極32a,32bは、平面視して円形に形成され、大きさも略同一である。また、ターゲット電極32a,32bは、左右に並んで(X軸方向に並んで)水平に設けられている。
【0038】
ターゲット電極32aは、リング状の保持体33aに保持される。保持体33aは、リング状の絶縁体25aを介して、円筒部2aの天井部に接合される。同様に、ターゲット電極32bは、リング状の保持体33bに保持される。保持体33bは、リング状の絶縁体25bを介して、円筒部2aの天井部に接合される。これにより、ターゲット電極32a,32bは、真空容器2とは電気的に絶縁された状態で、円筒部2aの上面より低く落とし込まれた位置に配置されている。
【0039】
ターゲット電極32aは、スイッチ35aを介して、電源部34aと接続される。ターゲット31aのスパッタリング実行時において、電源部34aは、ターゲット電極32aに対して、例えば負の直流電圧を印加する。同様に、ターゲット電極32bは、スイッチ35bを介して、電源部34bと接続される。ターゲット31bのスパッタリング実行時に、電源部34bは、ターゲット電極32bに対して、例えば負の直流電圧を印加する。
【0040】
ターゲット電極32aの下面には、ターゲット31aが接合されている。ターゲット31aの材料としては、例えば、酸素や水分を吸収する部材(以下、ゲッタリング部材とも称する。)からなり、例えばチタン(Ti)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、ジルコニウム(Zr)、マグネシウム(Mg)またはハフニウム(Hf)、あるいはこれらの合金などが用いられる。
【0041】
ターゲット電極32bの下面には、ターゲット31bが接合されている。ターゲット31bの材料としては、ウエハWに成膜される金属酸化膜(MgO膜、トンネルバリア層310)の成膜材であるマグネシウム(Mg)が用いられる。
【0042】
ターゲット31a,31bの直下には、シャッター41が備え付けられている。シャッター41は、両方のターゲット31a,31bの投影領域をカバーする大きさを持つ円形の板であり、円筒部2aの上面中心部に回転軸43を介して回転自在に取り付けられている。真空容器2の天井部上方における回転軸43と対応する位置にはマグネット44aを有する回転駆動部44が設けられ、このマグネット44aと回転軸43側に設けられたマグネット43aとの間の磁気結合により、回転軸43が回転するようになっている。
【0043】
また、シャッター41には、ターゲット31a,31bよりも少し大きいサイズの開口部42が1つ形成されている。一方のターゲット31a(または31b)に臨む領域にシャッター41の開口部42を位置させた際、他方のターゲット31b(または31a)はシャッター41により覆われる。これにより、一方のターゲット31a(または31b)にてスパッタリングを実行しているときに、スパッタリングによって発した粒子が他方のターゲット31b(または31a)に付着することを防止できる。
【0044】
ターゲット電極32aの上部には、ターゲット電極32aに近接してマグネット配列体51aが設けられている。マグネット配列体51aは、ターゲット31aのエロージョンの均一性を高める役割を果たす。マグネット配列体51aは、透磁性の高い素材、例えば鉄(Fe)のベース体にN極マグネット群及びS極マグネット群を配列して駆動機構52aによって、回転運動や直進運動(往復運動)をするように構成されている。
【0045】
また、真空容器2内のターゲット31a,31bと対向する位置には、ウエハWを水平に載置する載置部6が設けられている。載置部6は、軸部材6aを介して真空容器2の下方側に配置された駆動機構61に接続されている。駆動機構61は、載置部6を回転させる機能を有している。また、駆動機構61は、昇降ピン63を介して真空搬送装置121と載置部6との間でウエハWの受け渡しを行う際の受渡位置と、スパッタ時における処理位置との間で、載置部6を昇降させる機能を有している。
【0046】
軸部材6aは、真空容器2の底部を貫通して、駆動機構61に接続されている。軸部材6aが真空容器2を貫通する位置には真空容器2内を気密に保つシール部62が設けられている。
【0047】
昇降ピン63は、ウエハWの下面から3ヶ所で支持するように3本設けられ、昇降部64により支持部材65を介して昇降する。
【0048】
また、載置部6内には、加熱機構(図示せず)が設けられており、スパッタ時にウエハWを加熱できるように構成されている。
【0049】
また、真空容器2内部には、ウエハWよりもサイズの大きい円形状のシャッター7が設けられている。シャッター7は、端部に設けられた支柱7aを中心に水平方向に旋回可能に構成され、載置部6に載置されたウエハWを覆う遮蔽位置と、遮蔽位置(ウエハWを覆う位置)から退避した退避位置(二点鎖線参照)との間で旋回する。支柱7aは真空容器2の底部を貫通し、回転駆動部71を介して回転支持部72により回転自在に支持されている。
【0050】
支柱7aは、真空容器2の底部を貫通して、回転駆動部71に接続されている。支柱7aが真空容器2を貫通する位置には真空容器2内を気密に保つシール部62が設けられている。
【0051】
また、シャッター7は、遮蔽機能に加えて、酸素(O
2)ガスをウエハWに供給する機能を有している。なお、酸素ガスを供給する機能については、
図6及び
図7を用いて後述する。
【0052】
また、シャッター7内には、シャッター7を加熱するヒータ(図示せず)が設けられている。電源部72aは、回転支持部72に設けられたスリップリング(図示せず)を介して、シャッター7内のヒータに電力を供給する。これにより、シャッター7は、予備加熱した酸素ガスをウエハWに供給することができる。
【0053】
また、真空容器2の上部側壁には、プラズマ発生用のガスである不活性ガス、例えばArガスを真空容器2内に供給するためのArガス供給路28が設けられている。このArガス供給路28は、バルブやフローメータ等のガス制御機器群27を介してArガス供給源26に接続されている。
【0054】
制御部200は、電源部34a,34bからの電源供給動作、Arガス供給源26からのArガスの供給動作、駆動機構61による載置部6の昇降動作及び回転動作、シャッター7の回転動作及び酸素ガス供給動作、マグネット配列体51a,51bの回転動作、シャッター41の回転動作、真空排気装置22による真空容器2内部の排気動作、その他の処理室114に関する動作を制御する。そして制御部200は、ウエハW上に金属酸化膜の成膜を行うために必要な制御について命令群が組まれたプログラムが、外部記憶媒体、例えばハードディスク、テープストレージ、コンパクトディスク、光磁気ディスク、メモリーカードなどを介して読み込まれ、当該真空処理装置全体の制御を行う。
【0055】
図4は、本実施形態に係る処理室114による成膜処理を説明するフローチャートである。
図5は、本実施形態に係る処理室114の状態を説明する模式図である。ここでは、金属酸化膜の一例として、MgO膜をウエハWに成膜する。
【0056】
ステップS101において、ウエハWを準備する。ここでは、処理室113(
図1参照)で処理された第2磁性層306まで製膜されたウエハWを処理室114の載置部6に載置する。
【0057】
ステップS102において、Mg膜成膜処理を行う。
図5(a)に示すように、制御部200は、回転駆動部44を制御して、シャッター41の開口部42をターゲット31bに臨む領域に位置させる。また、制御部200は、回転駆動部71を制御して、シャッター7を退避位置に移動させる。そして、制御部200は、ガス制御機器群27を制御してArガス供給路28から真空容器2内にArガスを供給する。また、制御部200は、スイッチ35bを制御して、ターゲット電極32bに電圧を印加する。また、制御部200は、駆動機構52bを制御して、マグネット配列体51bを回転させる。また、制御部200は、駆動機構61を制御して、載置部6を回転させる。これにより、Arガスがプラズマ化し、ターゲット31bがスパッタされ、Mg粒子がウエハW上に付着して、Mg膜が成膜される。
【0058】
Mg膜成膜処理が終了すると、制御部200は、ガス制御機器群27を制御して、Arガスの供給を停止する。また、制御部200は、スイッチ35bを制御して、ターゲット電極32bへの電圧の印加を停止する。また、制御部200は、駆動機構52bを制御して、マグネット配列体51bを停止させる。
【0059】
ステップS103において、Mg膜酸化処理を行う。
図5(b)に示すように、制御部200は、回転駆動部44を制御して、シャッター41の開口部42がターゲット31a,31bに臨まない領域に位置させ、換言すれば、シャッター41がターゲット31a,31bを覆うように位置させる。制御部200は、回転駆動部71を制御して、シャッター7を遮蔽位置に移動させる。これにより、シャッター7と載置部6との間に処理空間を形成する。また、制御部200は、駆動機構61を制御して、載置部6を回転させる。そして、制御部200は、酸素ガス制御機器群(
図6で後述する酸素ガス制御機器群82,84)を制御して、処理空間に酸素ガスを供給する。これにより、ウエハWに成膜されたMg膜が酸化されてMgO膜を形成するMg膜酸化処理が終了すると、制御部200は、酸素ガス制御機器群を制御して、ガスの供給を停止させる。
【0060】
ステップS104において、制御部200は、所定回数繰り返したか否かを判定する。所定回数繰り返していない場合(S104・No)、制御部200の処理はステップS102に戻る。所定回数繰り返した場合(S104・Yes)、駆動機構61を制御して、載置部6の回転を停止させ、制御部200の処理を終了する。その後、ウエハWは、処理室115(
図1参照)に搬送される。
【0061】
なお、処理室114による成膜処理は、
図5に示すものに限られない。処理室114による成膜処理は、ゲッタリング部材からなるターゲット31aをスパッタして、真空容器2内の酸素や水分を吸収する工程を含んでいてもよい。
【0062】
図6は、本実施形態に係る処理室114が備えるシャッター7を下方から見た模式図である。
図7は、本実施形態に係る処理室114における酸素ガスの流れを説明する図である。
【0063】
シャッター7は、ガス供給部材77と、遮蔽部材78と、を有する。シャッター7は、支持部材7bを介して、支柱7aに支持される。
【0064】
図7に示すように、シャッター7が遮蔽位置に配置された際、ガス供給部材77と載置部6との間に酸素ガスが供給される処理空間を形成する。
【0065】
ガス供給部材77は、第1ガス供給部74、ガス排気部75、第2ガス供給部76を有し、平面視して円形状に形成される。
【0066】
第1ガス供給部74は、平面視して円環状に形成され、複数のガス供給口74aを有し、シャッター7の外周部から処理空間に酸素ガスを供給する。このガス供給口74aは、バルブやフローメータ等の酸素ガス制御機器群82を介して酸素ガス供給源81に接続されている。
【0067】
第2ガス供給部76は、平面視して第1ガス供給部74よりも中心側に円状に形成され、複数のガス供給口76aを有し、シャッター7の中央部から処理空間に酸素ガスを供給する。このガス供給口76aは、バルブやフローメータ等の酸素ガス制御機器群84を介して酸素ガス供給源83に接続されている。
【0068】
ガス排気部75は、平面視して第1ガス供給部74よりも中心側に配置されている。また、ガス排気部75は、平面視して第1ガス供給部74と第2ガス供給部76との間に円環状に配置されている。ガス排気部75は、ガス供給部材77を板厚方向(上下方向)に貫通するように形成されている。これにより、ガス排気部75は、シャッター7の中心側で処理空間から酸素ガスを排気する。
【0069】
遮蔽部材78は、ガス供給部材77を覆うように形成される。また、ガス供給部材77の上面と遮蔽部材78の下面との間にガスが流れる流路が形成される。
【0070】
ここで、参考例に係る処理室が備えるシャッター7Xについて、
図8及び
図9を用いて説明する。
図8は、参考例に係る処理室が備えるシャッター7Xを下方から見た模式図である。
図9は、参考例に係る処理室における酸素ガスの流れを説明する図である。参考例に係る処理室は、本実施形態に係る処理室114と比較して、シャッター7Xの構造が異なっている。その他の構造は同様であり、重複する説明を省略する。
【0071】
参考例に係るシャッター7Xは、シャッター7Xの下面側に取り付けられたパイプに複数のガス供給口7Xaが形成され、ガス供給口7Xaから酸素ガスを処理空間に供給する。
【0072】
ここで、
図9に示すように、シャッター7Xと載置部6とで形成される処理空間は、外周側が開放されている。このため、ガス供給口7Xaから処理空間に供給された酸素ガス(黒矢印参照)は、ウエハWの表面のMg膜を酸化し、ガス流れ91(白抜き矢印参照)に示すように処理空間の外周側から排気される。
【0073】
このため、ウエハWの中心付近では、ウエハWの外周付近と比較して圧力が高くなる。また、ウエハWの中心付近では、ウエハWの外周付近と比較して酸化処理が促進され、ウエハWの径方向に酸化処理の不均一が生じる。また、ウエハWの径方向にMTJ素子の抵抗面積積(RA)の不均一が生じる。
【0074】
これに対し、
図7に示すように、シャッター7と載置部6とで形成される処理空間は、外周側が開放されているとともに、第1ガス供給部74よりも中心側にガス排気部75が形成されている。このため、ガス供給口74a,76aから処理空間に供給された酸素ガス(黒矢印参照)は、ウエハWの表面のMg膜を酸化し、ガス流れ91(白抜き矢印参照)に示すように処理空間の外周側から排気される。また、ガス流れ92,93(白抜き矢印参照)に示すように処理空間の中心側からも排気される。
【0075】
これにより、ウエハWの中心付近とウエハWの外周付近とにおける圧力差を低減することができる。また、ウエハWの径方向における酸化処理の不均一を低減することができる。また、ウエハWの径方向におけるMTJ素子の抵抗面積積(RA)の不均一を低減することができる。
【0076】
また、第1ガス供給部74から供給される酸素ガスの流量と、第2ガス供給部76から供給される酸素ガスの流量とを、独立して制御することができる。これにより、ウエハWの中心付近とウエハWの外周付近とにおける圧力差を制御することができるまた、ウエハWの径方向における酸化処理を制御することができる。また、ウエハWの径方向におけるMTJ素子の抵抗面積積(RA)を制御することができる。
【0077】
図10は、ウエハWの径方向に対する抵抗面積積(RA)の分布を示すグラフの一例である。横軸は、ウエハWの中心からの径方向距離を示す。縦軸は、ウエハWの中心(0mm)で規格化された抵抗面積積(RA)を示す。
図10(a)は本実施形態に係るシャッター7を用いたMgO膜の成膜処理の結果を示す。
図10(b)は参考例に係るシャッター7Xを用いたMgO膜の成膜処理の結果を示す。また、
図10(a)において、第1ガス供給部74の流量に対する第2ガス供給部76の流量比を0%、25%、50%とした場合の結果をそれぞれ示す。
【0078】
図10(b)に示す参考例において、RA分布は、ウエハWの中心側が高くなっている。
図10(b)に示す結果において、RA分布(1σ,%)は、3.1となった。
【0079】
これに対し、
図10(a)に示す本実施形態において、流量比25%とした場合、RA分布のばらつきが低減している。
図10(a)に示す結果において、流量比25%におけるRA分布(1σ,%)は、1.4となった。即ち、参考例(
図10(b)参照)と比較して、MTJ素子の抵抗面積積(RA)の不均一を低減することができる。
【0080】
また、
図10(a)に示す本実施形態において、流量比0%とした場合、ウエハWの外周側が高くなるRA分布を形成することができる。また、流量比50%とした場合、ウエハWの中心側が高くなるRA分布を形成することができる。即ち、第1ガス供給部74から供給される酸素ガスの流量及び第2ガス供給部76から供給される酸素ガスの流量を制御することにより、MTJ素子のRA分布形状を制御することができる。
【0081】
以上、基板処理システム及び真空処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明に係る基板処理システム及び真空処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0082】
真空処理装置(処理室114)は、ウエハWにMgO膜を成膜するものとして説明したが、これに限られるものではない。真空処理装置(処理室114)は、ウエハWに金属酸化膜を成膜する構成であってもよい。また、シャッター7からウエハWに供給されるガスは、O2ガスであるものとして説明したが、これに限られるものではなく、他の酸化ガスであってもよい。
【符号の説明】
【0083】
6 載置部
7 シャッター
74 第1ガス供給部
74a ガス供給口
75 ガス排気部
76 第2ガス供給部
76a ガス供給口
77 ガス供給部材
78 遮蔽部材
81,83 酸素ガス供給源
82,84 酸素ガス制御機器群
91~93 ガスの流れ
100 基板処理システム
111~115 処理室(真空処理装置)
200 制御部
310 トンネルバリア層
W ウエハ
F キャリア