(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】混合ガス供給装置、金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
C23C 16/448 20060101AFI20241016BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20241016BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23C16/448
H01L21/31 B
H01L21/318 B
(21)【出願番号】P 2020094612
(22)【出願日】2020-05-29
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】320011650
【氏名又は名称】大陽日酸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 逸人
(72)【発明者】
【氏名】水野 理規
(72)【発明者】
【氏名】安達 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 克昌
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-131210(JP,A)
【文献】特開2005-026602(JP,A)
【文献】特開2017-053039(JP,A)
【文献】特開2020-107651(JP,A)
【文献】特表2010-539730(JP,A)
【文献】特開2017-168644(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/448
H01L 21/31
H01L 21/318
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素含有化合物原料として、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを供給する装置であって、
前記ヒドラジン化合物を収容する原料容器と、
前記原料容器の周囲に位置し、前記原料容器を加熱する加熱器と、
前記加熱器の出力を調節する加熱器調節装置と、
前記原料容器にキャリアガスを導入する導入経路と、
前記原料容器から前記ヒドラジン化合物を含むガスを導出する導出経路と、
希釈ガスを供給する希釈ガス供給経路と、
前記アンモニアを供給するアンモニア供給経路と、
前記導出経路と接続され、前記混合ガスを導出する混合ガス導出経路と、
前記希釈ガス供給経路に位置し、前記希釈ガス供給経路に供給される希釈ガス流量を制御する希釈ガス流量制御装置と、
前記アンモニア供給経路に位置し、前記アンモニア供給経路に供給されるアンモニア流量を制御するアンモニア流量制御装置と、
前記混合ガス導出経路に位置し、前記混合ガス導出経路に導出される混合ガス流量を測定する混合ガス流量計と、
前記希釈ガス流量、前記アンモニア流量、及び前記混合ガス流量の値に基づいて、前記混合ガスに含まれるヒドラジン化合物流量を算出する、演算装置と、を備え、
前記アンモニア供給経路が、前記導入経路、前記導出経路、及び前記混合ガス導出経路のうち、少なくともいずれか1つに接続され、
前記希釈ガス供給経路が、前記導入経路及び前記導出経路の一方又は両方と接続され
、
前記キャリアガスが、前記希釈ガス供給経路から供給される希釈ガス、または前記アンモニア供給経路から供給されるアンモニアである、混合ガス供給装置。
【請求項2】
前記導入経路から分岐し、前記原料容器を経由することなく前記導出経路と合流するバイパス経路をさらに備える、請求項1に記載の混合ガス供給装置。
【請求項3】
前記導出経路に位置し、前記原料容器内の圧力を測定する圧力計と、
前記導出経路又は前記混合ガス導出経路に位置し、開度調整が可能な開閉弁と、
前記圧力計の測定値に基づいて、前記開閉弁の開度を調整する圧力調節装置と、を備える、請求項1又は2に記載の混合ガス供給装置。
【請求項4】
前記演算装置が、前記ヒドラジン化合物流量の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記加熱器調節装置の設定値を更新する機能を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項5】
前記演算装置が、前記混合ガスに含まれる前記ヒドラジン化合物の含有割合の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分と前記混合ガス流量とに基づいて、前記希釈ガス流量制御装置及び前記アンモニア流量制御装置の設定値を更新する機能を有する、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項6】
前記演算装置が、前記混合ガスに含まれる前記ヒドラジン化合物の含有割合の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記圧力調節装置の設定値を更新する機能を有する、請求項3に記載の混合ガス供給装置。
【請求項7】
前記窒素含有化合物原料に含まれるH
2O濃度が、0.1ppm以下である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項8】
前記ヒドラジン化合物に含まれるH
2O濃度が、10ppm以下である、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項9】
前記ヒドラジン化合物が、ヒドラジン(N
2H
4)である、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置。
【請求項10】
金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材の表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する、金属窒化膜の製造装置であって、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の混合ガス供給装置を備える、金属窒化膜の製造装置。
【請求項11】
金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材の表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する、金属窒化膜の製造方法であって、
前記窒素含有化合物原料が、ヒドラジンとアンモニアとを含み、
処理室内に前記被処理基材を設置し、前記被処理基材の表面温度を所要の温度に制御する準備工程と、
前記処理室内に、前記金属化合物原料を供給するステップと、
前記金属化合物原料の供給を停止するステップと、
前記処理室内に、前記窒素含有化合物原料を供給するステップと、
前記窒素含有化合物原料の供給を停止するステップと、を含むサイクルを繰り返して行う成膜工程と、を含み、
前記サイクルが、前記処理室内に前記アンモニア、又は不活性ガスで希釈した前記アンモニアを供給するステップをさらに含む、
金属窒化膜の製造方法。
【請求項12】
前記処理室内に、前記窒素含有化合物原料を供給するステップにおいて、
所要の温度に加熱された、前記ヒドラジンを収容する原料容器に前記アンモニアを導入し、前記原料容器から導出される前記ヒドラジンと前記アンモニアとの混合ガスを、前記窒素含有化合物原料として用いる、請求項11に記載の金属窒化膜の製造方法。
【請求項13】
前記混合ガスにおける、前記ヒドラジンと前記アンモニアとの含有割合が、体積流量比で1:99~50:50である、請求項12に記載の金属窒化膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合ガス供給装置、金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属窒化膜は、物理的、化学的、電気的及び機械的特性に起因して、多くの用途に幅広く用いられている。例えば、シリコン窒化膜(SiN)は、トランジスタを形成する際、ゲート絶縁膜やサイドウォールスペーサー等に用いられている。また、チタン窒化膜(TiN)、タンタル窒化膜(TaN)、及び窒化タングステン膜(WN)は、集積回路の配線のバリア膜などに用いられている。
【0003】
特に近年では、先端ロジックにおけるFin-FET(Fin Field-Effect Transistor)などの3次元トランジスタ構造の微細化や、3D-NANDの高集積化が一段と進み、集積回路の水平寸法、垂直寸法が縮小し続ける中で、サブnmオーダーの膜厚制御、ならびに良好なカバレッジ特性を有する薄膜形成技術が求められている。
【0004】
一般的に、金属窒化膜は、処理室(チャンバ)内に原料ガス(金属化合物原料)と反応ガス(窒素含有化合物原料)とを同時に、あるいは交互に供給することで成膜される。具体的に、処理室内では、被処理基材(基板)の表面に吸着した金属化合物が、熱エネルギーによって窒素含有化合物と化学反応を生じ、被処理基材の表面に薄膜が形成される。
【0005】
処理室内に原料ガスと反応ガスとを交互に供給して薄膜を形成する方法は、原子層堆積法(ALD:Atomic Layer Deposition)と呼ばれる。ALD法では、被処理基材の表面に1原子層ずつ膜形成されるため、Åオーダーの微細かつ、ステップカバレッジが良好な薄膜が得られる。その一方で、ALD法の特性上、生産性(すなわち成膜速度)は、化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)に劣る。
【0006】
また、ALD法には、反応ガスをプラズマ活性化させた状態で供給することで比較的低い温度での成膜が実現可能なプラズマ援用方式が知られているが、下地となる被処理基材(基板)へのダメージが避けられない点、良好なステップカバレッジが得られない点、などの大きなデメリットがある。したがって、通常のALD法による、低温での金属窒化膜の成膜が望まれており、成膜に用いる原料や成膜プロセスの開発が行われている。
【0007】
ところで、シリコン窒化膜の成膜では、反応ガスとしてアンモニア(NH3)を用いることが一般的に知られている(非特許文献1および特許文献1)。また、シリコン窒化膜の成膜では、アンモニアの代替としてアミン化合物やヒドジラン化合物を用いることで、低温で成膜可能となることが知られている。具体的に、非特許文献2には、反応ガスとしてヒドラジン(N2H4)を用いたシリコン窒化膜の製造方法が開示されている。
【0008】
一方、シリコン窒化膜以外の金属窒化膜の成膜でも同様に、反応ガスとしてアンモニア(NH3)を用いることが知られている。具体的に、非特許文献3には、原料ガスとしてテトラクロロチタン(TiCl4)を用い、反応ガスとしてアンモニア(NH3)を用いるチタン窒化膜の製造方法が開示されている。
【0009】
また、シリコン窒化膜以外の金属窒化膜の成膜では、アンモニアの代替としてヒドラジン化合物を用いても成膜可能であることが知られている。具体的に、特許文献2には、原料ガスとしてテトラクロロチタン(TiCl4)を用い、反応ガスとしてモノメチルヒドラジン(MMH:NH2NH2Me)を用いるチタン窒化膜の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2002-343793号公報
【文献】特開2010-248624号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】M.Tanaka et al.,J.Electrochem.Soc.147,2284(2000)
【文献】S.Morishita et al.,Appl.Surf.Sci.112,198(1997)
【文献】C.H.Ahn et al.,METALS AND MATERIALS International.,vol.7,No.6,621(2001)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、非特許文献1、特許文献1及び非特許文献3に示すように、金属窒化膜の成膜の際、反応ガスとしてアンモニアを用いた場合、成膜速度が遅く、生産性が低いという課題があった。特に、成膜温度を低く設定(具体的に、チタン窒化膜の成膜では、350℃未満)した場合、成膜速度が著しく減少するだけでなく、膜中に酸素が取り込まれてしまい、膜質が劣化するという課題があった。
【0013】
一方、非特許文献2及び特許文献2に示すように、金属窒化膜の成膜の際、反応ガスとしてヒドラジン化合物(具体的に、ヒドラジン、モノメチルヒドラジンなど)を用いた場合、アンモニアを用いた場合と比較して成膜速度が速く、成膜温度の低温化も可能である。しかしながら、ヒドラジン化合物は、毒性が高く、反応性が高いために取扱いに注意を要し、蒸気圧が比較的低い液体材料であるため、アンモニアに替えて反応ガスとする場合、充分な供給量を維持しつつ、安全に処理室内へ供給することが困難であるという課題があった。
【0014】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、窒化膜を成膜する際の反応ガスとして有用な窒素含有化合物原料を含む混合ガスを安全かつ安定的に供給可能な混合ガス供給装置を提供することを課題とする。
また、本発明は、成膜速度が高く、生産性に優れる金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を備える。
[1] 窒素含有化合物原料として、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを供給する装置であって、
前記ヒドラジン化合物を収容する原料容器と、
前記原料容器の周囲に位置し、前記原料容器を加熱する加熱器と、
前記加熱器の出力を調節する加熱器調節装置と、
前記原料容器にキャリアガスを導入する導入経路と、
前記原料容器から前記ヒドラジン化合物を含むガスを導出する導出経路と、
希釈ガスを供給する希釈ガス供給経路と、
前記アンモニアを供給するアンモニア供給経路と、
前記導出経路と接続され、前記混合ガスを導出する混合ガス導出経路と、
前記希釈ガス供給経路に位置し、前記希釈ガス供給経路に供給される希釈ガス流量を制御する希釈ガス流量制御装置と、
前記アンモニア供給経路に位置し、前記アンモニア供給経路に供給されるアンモニア流量を制御するアンモニア流量制御装置と、
前記混合ガス導出経路に位置し、前記混合ガス導出経路に導出される混合ガス流量を測定する混合ガス流量計と、
前記希釈ガス流量、前記アンモニア流量、及び前記混合ガス流量の値に基づいて、前記混合ガスに含まれるヒドラジン化合物流量を算出する、演算装置と、を備え、
前記アンモニア供給経路が、前記導入経路、前記導出経路、及び前記混合ガス導出経路のうち、少なくともいずれか1つに接続され、
前記希釈ガス供給経路が、前記導入経路及び前記導出経路の一方又は両方と接続される、混合ガス供給装置。
[2] 前記導入経路から分岐し、前記原料容器を経由することなく前記導出経路と合流するバイパス経路をさらに備える、前項[1]に記載の混合ガス供給装置。
[3] 前記導出経路に位置し、前記原料容器内の圧力を測定する圧力計と、
前記導出経路又は前記混合ガス導出経路に位置し、開度調整が可能な開閉弁と、
前記圧力計の測定値に基づいて、前記開閉弁の開度を調整する圧力調節装置と、を備える、前項[1]又は[2]に記載の混合ガス供給装置。
[4] 前記演算装置が、前記ヒドラジン化合物流量の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記加熱器調節装置の設定値を更新する機能を有する、前項[1]乃至[3]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[5] 前記演算装置が、前記混合ガスに含まれる前記ヒドラジン化合物の含有割合の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分と前記混合ガス流量とに基づいて、前記希釈ガス流量制御装置及び前記アンモニア流量制御装置の設定値を更新する機能を有する、前項[1]乃至[3]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[6] 前記演算装置が、前記混合ガスに含まれる前記ヒドラジン化合物の含有割合の算出値と設定値との差分を算出し、前記差分に基づいて、前記圧力調節装置の設定値を更新する機能を有する、前項[3]に記載の混合ガス供給装置。
[7] 前記窒素含有化合物原料に含まれるH2O濃度が、0.1ppm以下である、前項[1]乃至[6]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[8] 前記ヒドラジン化合物に含まれるH2O濃度が、10ppm以下である、前項[1]乃至[7]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[9] 前記ヒドラジン化合物が、ヒドラジン(N2H4)である、前項[1]乃至[8]のいずれかに記載の混合ガス供給装置。
[10] 金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材の表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する、金属窒化膜の製造装置であって、
前項[1]乃至[9]のいずれかに記載の混合ガス供給装置を備える、金属窒化膜の製造装置。
[11] 金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材の表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する、金属窒化膜の製造方法であって、
前記窒素含有化合物原料が、ヒドラジンとアンモニアとを含む、金属窒化膜の製造方法。
[12] 処理室内に前記被処理基材を設置し、前記被処理基材の表面温度を所要の温度に制御する準備工程と、
前記処理室内に、前記金属化合物原料を供給するステップと、
前記金属化合物原料の供給を停止するステップと、
前記処理室内に、前記窒素含有化合物原料を供給するステップと、
前記窒素含有化合物原料の供給を停止するステップと、を含むサイクルを繰り返して行う成膜工程と、を含む、前項[11]に記載の金属窒化膜の製造方法。
[13] 前記サイクルが、前記処理室内に前記アンモニア、又は不活性ガスで希釈した前記アンモニアを供給するステップをさらに含む、前項[12]に記載の金属窒化膜の製造方法。
[14] 前記処理室内に、前記窒素含有化合物原料を供給するステップにおいて、
所要の温度に加熱された、前記ヒドラジンを収容する原料容器に前記アンモニアを導入し、前記原料容器から導出される前記ヒドラジンと前記アンモニアとの混合ガスを、前記窒素含有化合物原料として用いる、前項[12]又は[13]に記載の金属窒化膜の製造方法。
[15] 前記混合ガスにおける、前記ヒドラジンと前記アンモニアとの含有割合が、体積流量比で1:99~50:50である、前項[14]に記載の金属窒化膜の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の混合ガス供給装置は、窒化膜を成膜する際の反応ガスとして有用な窒素含有化合物原料を含む混合ガスを、安全かつ安定的に供給できる。
また、本発明の金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法は、成膜速度が高く、生産性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の金属窒化膜の製造装置の一実施形態の構成を模式的に示す系統図である。
【
図2】本発明の混合ガス供給装置の第1態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図3】本発明の混合ガス供給装置の第2態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図4】本発明の混合ガス供給装置の第3態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図5】本発明の混合ガス供給装置の第4態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図6】本発明の混合ガス供給装置の第5態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図7】本発明の混合ガス供給装置の第6態様の構成を模式的に示す系統図である。
【
図8】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【
図9】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【
図10】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【
図11】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【
図12】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【
図13】本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における下記の用語の意味は以下の通りである。
「窒素含有化合物原料」とは、窒素原子を1以上有する窒素含有化合物を主成分とするものを意味する。また、窒素含有化合物原料は、適切な範囲内で2種以上の窒素含有化合物を含んでいてもよい。また、窒素含有化合物原料は、精製前の素原料、窒素含有化合物を合成する際に発生した副生成物、保管中に発生した副生成物を適切な範囲内で不純物として含んでいてもよい。
「金属窒化膜」とは、金属元素とN原子とを主成分として含む被膜を意味する。また、金属窒化膜は、適切な範囲内で膜中にO原子やC原子を含んでいてもよい。具体的には、金属窒化膜は、膜中にO原子を0~30atm%含んでいてもよいし、C原子を0~30atm%含んでいてもよい。
数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0019】
<金属窒化膜の製造装置>
先ず、本発明の金属窒化膜の製造装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の金属窒化膜の製造装置の一実施形態の構成を模式的に示す系統図である。
図1に示すように、本実施形態の金属窒化膜の製造装置(以下、単に「成膜装置」ともいう)1は、反応場となる処理室(チャンバ)2、処理室2内の被処理基材Pの表面温度を制御する温度制御装置3、処理室2にパージガスを供給するパージガス供給経路L1、処理室2内の雰囲気を排気する排気経路L2、金属化合物原料を原料ガスとして供給する原料ガス供給経路L3、及び窒素含有化合物原料を反応ガスとして供給する反応ガス供給経路L4を備える。
【0020】
本実施形態の成膜装置1は、金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材Pの表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する成膜装置である。成膜装置1は、化学気相成長法に適用可能であれば、特に限定されない。成膜装置1としては、CVD(Chemical Vapor Deposition)装置やALD(Atomic Layer Deposition)装置を用いることができる。
【0021】
被処理基材Pは、表面の少なくとも一部に金属窒化膜を形成可能であれば、特に限定されない。被処理基材Pとしては、特に限定されないが、半導体ウエハ、樹脂、ガラスなどが挙げられる。具体的には、結晶シリコン(Si<100>またはSi<111>など)、酸化シリコン、歪みシリコン、SOI、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、ドープされた又はドープされていないポリシリコン、ドープされた又はドープされていないシリコンウエハ、窒化シリコン、炭化シリコン、炭窒化シリコン、酸窒化シリコン、炭酸化シリコン、炭酸窒化シリコン、Cu、Al、Ru、Ta、W、Ti、Co、Zr、Hfなどの金属、TiN、TaN、WNなどの窒化金属、ZrO、HfO、TiO、TaO、WOなどの酸化金属、パターン形成された又はパターン形成されていないウエハなど、上記少なくとも1以上含まれる半導体ウエハ等を用いることができる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエステル系樹脂などの樹脂を用いることができる。
【0022】
金属窒化膜は、シリコン(Si)、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、インジウム(In)、ハフニウム(Hf)からなる群から選択される1つ以上の金属元素を含むものであれば、特に限定されるものではない。これらの中でも、シリコン、チタン、及びタンタルうち、いずれか1つ以上を含むものが好ましい。
【0023】
具体的に、シリコン含有金属窒化膜としては、シリコン窒化膜(SiN)、シリコン炭窒化膜(SiCN)、シリコン酸窒化膜(SiON)、シリコン酸炭窒化膜(SiOCN)が挙げられる。これらの中でも、シリコン窒化膜及びシリコン炭窒化膜が好ましく、シリコン窒化膜がより好ましい。
【0024】
チタン含有窒化膜としては、チタン窒化膜(TiN)、チタン炭窒化膜(TiCN)、チタン酸窒化膜(TiON)、チタン酸炭窒化膜(TiOCN)が挙げられる。これらの中でも、チタン窒化膜及びチタン炭窒化膜が好ましく、チタン窒化膜がより好ましい。
【0025】
温度制御装置3は、処理室2内の被処理基材Pの表面温度を所要の温度に制御可能なものであれば、特に限定されない。温度制御装置3としては、ヒータと、その制御装置とを用いることができる。
温度制御装置3は、処理室2内の被処理基材Pの表面温度を任意の温度となるように加熱することができる。具体的には、500℃以上の温度となるように制御することができ、500℃未満の温度にも制御することができる。さらに低温での成膜が必要な場合には、被処理基材Pの表面温度を450℃以下に制御することができる。
【0026】
パージガス供給経路L1は、処理室2内にパージガスを供給する。
パージガスとしては、特に限定されないが、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガス、窒素(N2)、水素(H2)などが挙げられる。また、パージガスは、これらのうちいずれか1つを用いてもよいし、2以上を混合して用いてもよい。
【0027】
排気経路L2は、処理室2内のパージガス、原料ガス、及び反応ガス等を含む雰囲気ガスを処理室2内から排出して、処理室2内を減圧する。排気経路L2には、減圧ポンプ等の減圧装置4が配置されている。
【0028】
原料ガス供給経路L3は、パージガス供給経路L1と合流し、このパージガス供給経路L1を介して処理室2内に原料ガスとして金属化合物原料を供給する。原料ガス供給経路L3は、図示略の金属化合物原料の供給源と接続されている。
【0029】
金属化合物原料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ハロゲン金属化合物、有機金属化合物などが挙げられる。
【0030】
具体的に、ハロゲン金属化合物としては、TiCl4、Si2Cl6(HCDS:ヘキサクロロジシラン)、SiCl4、SiHCl3、SiH2Cl2、SiH3Cl、SiI4、SiHI3、SiH2I2、SiH3I、TaCl5、AlCl3、GaCl3、ZrCl4、HfCl4、MoCl5、WF6、WCl6、WCl5が挙げられる。これらのうち、いずれか1つ、又は2つ以上を金属化合物原料として用いることが好ましい。
【0031】
また、有機金属化合物としては、TDMAT(テトラキスジメチルアミノチタン)、3DMAS(トリスジメチルアミノシラン、)BDEAS(ビスジエチルアミノシラン)、BTBAS(ビスターシャリーブチルアミノシラン)、PDMAT(ペンタキスジメチルアミノタンタル)、TMA(トリメチルアルミニウム)、TMG(トリメチルガリウム)が挙げられる。これらのうち、いずれか1つ、又は2つ以上を金属化合物原料として用いることが好ましい。
【0032】
なお、金属化合物原料は、不活性ガス等のキャリアガスとともに処理室2内に供給してもよい。
キャリアガスとしては、特に限定されないが、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガス、窒素(N2)、水素(H2)などが挙げられる。キャリアガスは、これらのうちいずれか1つを用いてもよいし、2以上を混合して用いてもよい。
【0033】
反応ガス供給経路L4は、パージガス供給経路L1と合流し、このパージガス供給経路L1を介して処理室2内に反応ガスとして窒素含有化合物原料を供給する。反応ガス供給経路L4には、混合ガス供給装置10が位置する。すなわち、本実施形態の成膜装置1は、窒素含有化合物原料の供給源として後述する第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60のいずれかを備え、その混合ガス供給装置から供給される混合ガスを反応ガスとして処理室2内に供給する。
【0034】
<混合ガス供給装置>
次に、本発明の混合ガス供給装置について、図面を参照しながら説明する。
本発明の混合ガス供給装置は、窒素含有化合物原料として、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを供給する装置である。
【0035】
(第1態様)
図2は、本発明の混合ガス供給装置の第1態様の構成を模式的に示す系統図である。
図2に示すように、第1態様の混合ガス供給装置10は、ヒドラジン化合物を収容する原料容器11と、原料容器11を加熱する加熱器12と、加熱器12の出力を調節する加熱器調節装置13と、原料容器11に接続される導入経路L11及び導出経路L12と、希釈ガスを供給する希釈ガス供給経路L13と、アンモニアを供給するアンモニア供給経路L14と、導出経路L12と接続される混合ガス導出経路L15と、導入経路L11と導出経路L12との間に位置するバイパス経路L16と、希釈ガス流量制御装置14と、アンモニア流量制御装置15と、混合ガス流量計16と、演算装置17と、を備える。
【0036】
原料容器11は、窒素含有化合物であるヒドラジン化合物を収容する容器(供給源)である。
ヒドラジン化合物としては、特に限定されないが、ヒドラジン(N2H4)、モノメチルヒドラジン、ジメチルヒドラジン、ターシャリーブチルヒドラジン、フェニルヒドラジン、プロピルヒドラジンなどが挙げられる。ヒドラジン化合物としては、これらの群からいずれか1種を選択して用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。なお、本発明の金属窒化膜の製造装置及び製造方法では、ヒドラジン化合物としてヒドラジンを単独で用いることが好ましい。ヒドラジンのみを用いることにより、ヒドラジン化合物由来の炭素が金属窒化膜中に混入することがなく、電気特性の著しい劣化を防ぐことができる。
【0037】
一般的に、ヒドラジン化合物は、宇宙船の推進剤やロケットエンジンの燃料として使用されるように、爆発的な反応を生じることが知られている。加えて、ヒドラジンおよびモノメチルヒドラジンは毒性が高く、その許容濃度(TLV-TWA)は0.01ppmであり、半導体製造プロセスに用いられているアンモニア(許容濃度:25ppm)、ホスフィン(許容濃度:0.3ppm)、モノシラン(許容濃度:5ppm)よりも、大幅に低い。これらの性質は、化学薬品の危険性を示す規格であるNFPA(National Fire Protection Association)において、ヒドラジンが4-4-3(Health-Flammability-Instability)であり、モノメチルヒドラジンが4-3-2であることからも明らかであり、取扱う上で安全面に十分な配慮が求められる。このため、原料容器11は、密封容器であることが好ましい。
【0038】
加熱器12は、原料容器11の周囲に位置し、原料容器11内のヒドラジン化合物が所定の温度範囲となるように原料容器11を加熱する。
加熱器12は、原料容器11を加熱できるものであれば特に限定されない。加熱器12としては、ブリーズヒーター、マントルヒーター、ウォーターバス、オイルバスなどが挙げられる。これらの中でも、容器内のヒドラジン化合物を加温する際、均熱性および安全性の観点から、ウォーターバスやオイルバスを用いることが好ましい。
【0039】
加熱器調節装置13は、加熱器12の出力を調節(制御)可能であれば、特に限定されない。なお、加熱器調節装置13は、加熱器12の出力を調節(制御)する機能を有していればよく、加熱器12と一体化されていてもよい。
【0040】
加熱器12及び加熱器調節装置13による原料容器11を加熱する温度は、ヒドラジン化合物原料の供給流量に応じて適宜設定される。なお、原料容器11の加熱温度は、ヒドラジン化合物を安全に取扱うため、ヒドラジン化合物の分解温度以下に設定される。具体的には、室温(20℃)~100℃の範囲に設定することが好ましく、30~60℃の範囲であることがより好ましい。
【0041】
導入経路L11は、原料容器11にキャリアガスを導入するラインである。導入経路L11のガス流れ方向における先端は、原料容器11に接続されている。すなわち、導入経路L11内の流路と、原料容器11内の空間とが連通されている。
【0042】
導出経路L12は、原料容器11からヒドラジン化合物を含むガスを導出するラインである。導出経路L12のガス流れ方向における基端は、原料容器11に接続されている。すなわち、導出経路L12内の流路と、原料容器11内の空間とが連通されている。
【0043】
本態様の混合ガス供給装置10は、原料容器11に導入経路L11及び導出経路L12が接続されているため、後述するアンモニアや希釈ガスをキャリアガスとして導入経路L11から原料容器11内に導入し、キャリアガスに同伴したヒドラジン化合物を気体(ガス)として導出経路L12に導出できる。なお、原料容器11にキャリアガスを導入する際は、バブリングにより供給してもよいし、容器内の気相(すなわちヒドラジン化合物の蒸気)にキャリアガスを供給してもよい。
【0044】
混合ガス導出経路L15は、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを混合ガス供給装置10の外側に供給する経路である。混合ガス導出経路L15の基端は、導出経路L12の先端Qにおいて、導出経路L12と接続されている。また、混合ガス導出経路L15の先端は、上述した成膜装置1の反応ガス供給経路L4と接続されている。
【0045】
なお、導出経路L12及び混合ガス導出経路L15には、これらの配管の表面を覆うように配管ヒータ18が設けられている。ヒドラジン化合物を含む気体(ガス)が流れる経路に配管ヒータ18を設けることで、原料容器11の温度よりも高い温度に維持できる。これにより、導出経路L12及び混合ガス導出経路L15においてヒドラジン化合物の再液化を防ぐことができ、ヒドラジン化合物を含む混合ガスを安全、かつ安定して反応ガス供給経路L4に供給できる。
【0046】
バイパス経路L16は、導入経路L11から分岐し、原料容器11を経由することなく導出経路L12と合流する。バイパス経路L16を流路として選択することで、導入経路L11に供給されるキャリアガスを原料容器11に導入することなく、原料容器11の二次側の導出経路L12に供給できる。また、導出経路L12に残留したヒドラジン化合物を含む気体を除去する際、バイパス経路L16を介して希釈ガスを供給することにより、残留ガスを効率的にパージ除去できる。
【0047】
希釈ガス供給経路L13は、希釈ガスを供給する経路である。本態様では、希釈ガス供給経路L13は、導入経路L11の基端P及び導出経路L12の先端(すなわち、混合ガス導出経路L15の基端)Qにおいて、導入経路L11、導出経路L12及び混合ガス導出経路L15とそれぞれ接続されている。希釈ガス供給経路L13が導入経路L11と接続されているため、希釈ガスをキャリアガスとして導入経路L11に供給できる。また、希釈ガス供給経路L13が導出経路L12及び混合ガス導出経路L15に接続されているため、導出経路L12から供給されるヒドラジン化合物を含むガスに希釈ガス供給経路L13から供給される希釈ガスを混合して濃度調整した後、混合ガス導出経路L15に供給できる。
【0048】
希釈ガスとしては、特に限定されないが、ヘリウム(He)、アルゴン(Ar)などの希ガス、窒素(N2)、水素(H2)などが挙げられる。希釈ガスは、これらのうちいずれか1つを用いてもよいし、2以上を混合して用いてもよい。なお、本形態の混合ガス供給装置10において、希釈ガスは任意の成分であるため、用いなくてもよい。
【0049】
アンモニア供給経路L14は、窒素含有化合物であるアンモニアを気体(ガス)として供給する経路である。本態様では、アンモニア供給経路L14は、導入経路L11の基端Pにおいて、導入経路L11と接続されている。アンモニア供給経路L14が導入経路L11と接続されているため、アンモニアをキャリアガスとして導入経路L11に供給できる。また、バイパス経路L16を流路として選択することで、原料容器11を経由することなく、原料容器11の二次側の導出経路L12にアンモニアを供給できる。さらに、アンモニア供給経路L14が希釈ガス供給経路L13と接続されているため、導出経路L12から供給されるヒドラジン化合物を含むガスに希釈ガス供給経路L13から供給されるアンモニアを混合して濃度調整した後、混合ガス導出経路L15に供給できる。なお、アンモニアを供給する際は、希釈ガスを含んでいてもよい。
【0050】
本態様の混合ガス供給装置10では、各経路に1以上の開閉弁がそれぞれ設けられており、開閉弁の開閉状態を適宜選択することにより、目的に応じて任意の流路を形成可能となっている。
【0051】
希釈ガス流量制御装置14は、希釈ガス供給経路L13に位置する。希釈ガス流量制御装置14は、希釈ガス供給経路L13に供給される希釈ガス流量を制御する。希釈ガス流量制御装置14は、流量の制御が可能であれば特に限定されない。希釈ガス流量制御装置14としては、例えば、マスフローコントローラ(MFC)や、開度の制御が可能な圧力調整器が挙げられる。
【0052】
アンモニア流量制御装置15は、アンモニア供給経路L14に位置する。アンモニア流量制御装置15は、アンモニア供給経路L14に供給されるアンモニア流量を制御する。アンモニア流量制御装置15は、流量の制御が可能であれば特に限定されない。アンモニア流量制御装置15としては、例えば、マスフローコントローラ(MFC)や、開度の制御が可能な圧力調整器が挙げられる。
【0053】
アンモニア供給経路L14に供給するアンモニア流量は、特に限定されるものではなく、適宜選択できるものである。アンモニア流量制御装置15によるアンモニア流量の制御範囲としては、10~10000sccmの範囲であることが好ましい。
【0054】
混合ガス流量計16は、混合ガス導出経路L15に位置する。混合ガス流量計16は、混合ガス導出経路L15に導出される混合ガス流量を測定する。混合ガス流量計16は、流量の測定が可能であれば特に限定されない。混合ガス流量計16としては、例えば、マスフローメーター(MFM)が挙げられる。
【0055】
演算装置17は、混合ガスに含まれるヒドラジン化合物の流量を算出する。演算装置17は、希釈ガス流量制御装置14、アンモニア流量制御装置15、及び混合ガス流量計16と、有線又は無線により電気信号を送受信可能とされている。これにより、演算装置17は、希釈ガス流量、アンモニア流量、及び混合ガス流量の値を電気信号として受信し、これらの値に基づいて、混合ガスに含まれるヒドラジン化合物流量や、混合ガスに含まれるヒドラジン化合物の含有割合を算出できる。
【0056】
本態様の混合ガス供給装置10によれば、アンモニアをキャリアガスとし、導入経路L11から原料容器11に導入することで、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。これにより、原料容器11内に含まれる多くのヒドラジン化合物の蒸気を効率的に同伴できるため、より好ましい。
【0057】
また、混合ガス供給装置10によれば、キャリアガスとして、希釈ガスを用いてもよいし、アンモニアと希釈ガスとの混合ガスを用いてもよい。
【0058】
また、混合ガス供給装置10によれば、アンモニアをキャリアガスとして用いない場合、希釈ガス供給経路L13を経由して混合ガス導出経路L15にアンモニアを供給するか、アンモニア供給経路L14、導入経路L11、及びバイパス経路L16を経由してアンモニアを導出経路L12に供給する。これにより、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0059】
また、混合ガス供給装置10によれば、希釈ガスをキャリアガスとして用いない場合、希釈ガス供給経路L13から混合ガス導出経路L15に希釈ガスを供給するか、希釈ガス供給経路L13、導入経路L11、及びバイパス経路L16を経由して希釈ガスを導出経路L12に供給することで、任意の濃度に希釈された混合ガスを混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0060】
また、混合ガス供給装置10によれば、演算装置17において希釈ガス流量、アンモニア流量、及び混合ガス流量を監視するため、希釈ガスの有無によらずに混合ガスに含まれるヒドラジン化合物流量や、混合ガスに含まれるヒドラジン化合物の含有割合を把握できる。
【0061】
(第2態様)
図3は、本発明の混合ガス供給装置の第2態様の構成を模式的に示す系統図である。
図3に示すように、第2態様の混合ガス供給装置20は、上述した混合ガス供給装置10を構成するアンモニア供給経路L14に替えて、アンモニア供給経路L24を備える点で混合ガス供給装置10と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本態様の混合ガス供給装置20では、混合ガス供給装置10と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0062】
アンモニア供給経路L24は、窒素含有化合物であるアンモニアを気体(ガス)として供給する経路である。本態様では、アンモニア供給経路L24は、アンモニア流量制御装置15の二次側で経路L24Aと経路L24Bとに分岐する。また、経路L24A及び経路L24Bにはそれぞれ開閉弁が設けられており、これらの開閉弁の開閉状態を組み合わせることで経路を適宜選択可能とされている。
【0063】
経路L24Aは、混合ガス導出経路L15の基端Qにおいて、混合ガス導出経路L15と接続されている。
経路L24Aを選択した場合、経路L24Aが混合ガス導出経路L15に接続されているため、導出経路L12から供給されるヒドラジン化合物を含むガスにアンモニアを供給した後、混合ガスとして混合ガス導出経路L15に供給できる。また、演算装置17において、希釈ガス流量、アンモニア流量、及び混合ガス流量を監視するため、希釈ガスの有無によらずに混合ガスに含まれるヒドラジン化合物流量や、混合ガスに含まれるヒドラジン化合物の含有割合を把握できる。
【0064】
経路L24Bは、混合ガス導出経路L15の混合ガス流量計16の二次側において、混合ガス導出経路L15と接続されている。
経路L24Bを選択した場合、経路L24Bが混合ガス導出経路L15に接続されているため、混合ガス導出経路L15において、ヒドラジン化合物を含むガスとアンモニアとを混合できる。また、演算装置17において、希釈ガス流量、及び混合ガス流量を監視するため、希釈ガスの有無によらずにヒドラジン化合物流量を算出できる。さらに、アンモニア流量の値から、混合ガス流量計16の二次側の混合ガスに含まれるヒドラジン化合物の含有割合を把握できる。
【0065】
本態様の混合ガス供給装置20によれば、上述した混合ガス供給装置10と同様に、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0066】
(第3態様)
図4は、本発明の混合ガス供給装置の第3態様の構成を模式的に示す系統図である。
図4に示すように、第3態様の混合ガス供給装置30は、上述した混合ガス供給装置10の構成に加えて、圧力計31、開閉弁32、及び圧力調節装置33をさらに備える点で混合ガス供給装置10と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本態様の混合ガス供給装置30では、混合ガス供給装置10と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0067】
圧力計31は、導出経路L12に位置に位置し、原料容器11内の圧力を測定する。
開閉弁32は、導出経路L12又は混合ガス導出経路L15に位置する。開閉弁32は、全閉(開度0%)から全開(開度100%)まで自在に開度調整が可能である。
【0068】
圧力調節装置33は、有線又は無線により、圧力計31及び開閉弁32と電気信号を送受信可能とされている。具体的には、圧力調節装置33は、圧力計31から受信した原料容器11内の圧力の測定値に基づいて、開閉弁32の開度を調整するための制御信号を開閉弁32に送信する。
【0069】
本態様の混合ガス供給装置30によれば、上述した混合ガス供給装置10と同様に、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0070】
また、本形態の混合ガス供給装置30によれば、圧力調節装置33を介して圧力計31及び開閉弁32を連動されることにより、原料容器11、導出経路L12、及び混合ガス導出経路L15の圧力を自在に制御できる。
【0071】
また、本形態の混合ガス供給装置30によれば、原料容器11内にキャリアガスが供給されていない場合、圧力計31によってヒドラジン化合物の蒸気圧を測定できる。
【0072】
(第4態様)
図5は、本発明の混合ガス供給装置の第4態様の構成を模式的に示す系統図である。
図5に示すように、第4態様の混合ガス供給装置40は、上述した混合ガス供給装置30の構成に加えて、設定装置41をさらに備える点で混合ガス供給装置30と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本態様の混合ガス供給装置40では、混合ガス供給装置30と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0073】
設定装置41は、混合ガスにおけるヒドラジン化合物流量や、混合ガスにおけるアンモニア及びヒドラジン化合物の含有割合を設定値として入力する装置である。
【0074】
演算装置17は、上述した機能に加えて、有線又は無線により、設定装置41及び加熱器調節装置13と電気信号を送受信可能とされている。具体的には、演算装置17は、ヒドラジン化合物流量の算出値と設定装置41から参照した設定値との差分を算出し、この差分に基づいて、加熱器調節装置13の設定値を更新(修正、変更)する機能を有する。
【0075】
本態様の混合ガス供給装置40によれば、上述した混合ガス供給装置30と同様に、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0076】
また、本態様の混合ガス供給装置40によれば、演算装置17で算出されたヒドラジン化合物の流量および含有割合に対して、設定した流量および含有割合になるように、原料容器11の加熱温度の設定値を自動的に更新できる。すなわち、設定値に対してヒドラジン化合物流量の算出値が足りなかった場合や、混合ガスの供給が進んでいくにつれてヒドラジン化合物流量が減少する場合は、原料容器11内のヒドラジン化合物の蒸気圧が不足しているため、設定値に合うように原料容器11を加熱する温度(すなわち、加熱器調節装置13の設定値)を自動的に調節することで、混合ガスをより安定的に供給できる。
【0077】
これに対して、設定値に対してヒドラジン化合物流量の算出値が超えた場合は、原料容器11内のヒドラジン化合物の蒸気圧が過剰であるため、原料容器11を加熱する加熱器12の出力を一時的に停止して原料容器11内の温度を下げることができる。したがって、本態様の混合ガス供給装置40によれば、混合ガスをより安全に供給できる。
【0078】
なお、本態様の混合ガス供給装置40は、原料容器11近傍の経路に位置する開閉弁を強制的に閉止するインターロックを備えていてもよい。これにより、ヒドラジン化合物流量を確実に停止できる。
また、ヒドラジン化合物の供給停止に合わせて、アンモニア及び希釈ガスの供給も強制的に停止するように構成されていてもよいし、経路内にアンモニア及びヒドラジン化合物が残留しないように希釈ガスのみを自動的に供給するように構成されていてもよい。さらに、混合ガス供給装置40における全ての開閉弁を強制的に閉止するように構成されていてもよい。これらのインターロック機構を備えることで、ヒドラジン化合物の過剰供給を未然に防ぐことができるため、さらに安全に混合ガスを供給できる。
【0079】
(第5態様)
図6は、本発明の混合ガス供給装置の第5態様の構成を模式的に示す系統図である。
図6に示すように、第5態様の混合ガス供給装置50は、上述した混合ガス供給装置40を構成する演算装置17の機能が異なる点で混合ガス供給装置40と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本態様の混合ガス供給装置50では、混合ガス供給装置40と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0080】
演算装置17は、上述した機能に加えて、有線又は無線により、設定装置41、希釈ガス流量制御装置14及びアンモニア流量制御装置15と電気信号を送受信可能とされている。具体的には、演算装置17は、ヒドラジン化合物流量の算出値と設定装置41から参照した設定値との差分を算出し、この差分に基づいて、希釈ガス流量制御装置14及びアンモニア流量制御装置15の設定値を更新(修正、変更)する機能を有する。
【0081】
本態様の混合ガス供給装置50によれば、上述した混合ガス供給装置40と同様に、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0082】
また、本態様の混合ガス供給装置50によれば、演算装置17により算出されたヒドラジン化合物の流量および含有割合に対して、設定した流量および含有割合になるように、希釈ガス流量制御装置14及びアンモニア流量制御装置15の設定値を自動的に更新できる。
【0083】
(第6態様)
図7は、本発明の混合ガス供給装置の第6態様の構成を模式的に示す系統図である。
図7に示すように、第6態様の混合ガス供給装置60は、上述した混合ガス供給装置40,50を構成する演算装置17の機能が異なる点で混合ガス供給装置40,50と異なっており、その他の構成は同一である。したがって、本態様の混合ガス供給装置60では、混合ガス供給装置40,50と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0084】
演算装置17は、上述した機能に加えて、有線又は無線により、設定装置41、及び圧力調節装置33と電気信号を送受信可能とされている。具体的には、演算装置17は、ヒドラジン化合物流量の算出値と設定装置41から参照した設定値との差分を算出し、この差分に基づいて、圧力調節装置33の設定値を更新(修正、変更)する機能を有する。
【0085】
本態様の混合ガス供給装置60によれば、上述した混合ガス供給装置40,50と同様に、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0086】
また、本態様の混合ガス供給装置60によれば、演算装置17で算出されたヒドラジン化合物の流量および含有割合に対して、設定した流量および含有割合になるように、圧力調節装置33の設定値を自動的に更新できる。すなわち、設定値に対してヒドラジン化合物流量の算出値が足りなかった場合や、混合ガスの供給が進んでいくにつれてヒドラジン化合物流量が減少する場合は、原料容器11内のヒドラジン化合物の蒸気圧が不足しているため、設定値に合うように開閉弁32の開度が開く方向に調節されて、設定値の混合ガスを応答性良く供給できる。開閉弁32の開度(すなわち、圧力調節装置33の設定値)を自動的に調節することで、混合ガスをより安定的に供給できる。
【0087】
以上説明したように、本発明の第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60によれば、ヒドラジン化合物とアンモニアとを含む混合ガスを安全、かつ安定的に混合ガス導出経路L15に導出できる。
【0088】
また、第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60によれば、原料容器11の温度あるいは原料容器11内圧力を制御することで、ヒドラジン化合物を1~5000sccmの流量範囲で供給でき、アンモニアとヒドラジン化合物とを含む混合ガスを1~10000sccmの範囲で供給できる。
【0089】
なお、上述した実施形態の成膜装置1において、反応ガスの供給源として第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60を用いる場合、金属窒化膜の品質の観点から、窒素含有化合物原料に含まれるH2O濃度が、0.1ppm以下であることが好ましい。同様に、金属窒化膜の品質の観点から、ヒドラジン化合物に含まれるH2O濃度が、10ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。
窒素含有化合物原料あるいはヒドラジン化合物中の水分濃度が高い場合には、混合ガス供給装置10~60が、吸着剤や分離膜等を含む精製器を備える構成としてもよい。
【0090】
上述した第4態様の混合ガス供給装置40は、原料容器11の加熱、及びヒドラジン化合物の蒸気圧の安定化に時間を要するため、応答性に懸念があるが、ヒドラジン化合物流量及び含有割合の設定値に対して、ヒドラジン化合物の蒸気圧を制御することができるため、精度良くアンモニアとヒドラジン化合物との混合ガスを供給できる。
【0091】
これに対して、第5及び第6態様の混合ガス供給装置50,60は、原料容器11の温度が一定であるため、ヒドラジン化合物の蒸気圧が足りなかった場合、ヒドラジン化合物流量及び含有割合の算出値が設定値に達しない可能性があるが、後段の処理室2の圧力変動が起こった場合であっても、希釈ガス流量及びアンモニア流量の調整、または原料容器11内の圧力値を開閉弁32の開度調整を応答性よく制御できる。
【0092】
なお、上述した第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60の構成は一例であり、これに限定されない。例えば、混合ガス供給装置10の希釈ガス供給経路L13は、導入経路L11の基端P及び導出経路L12の先端(すなわち、混合ガス導出経路L15の基端)Qのうち、いずれか一方に接続される構成であってもよい。
【0093】
また、第2の態様の混合ガス供給装置20が、上述した第3態様と同様に、圧力計31、開閉弁32、及び圧力調節装置33を備える構成であってもよい。
【0094】
また、上述した第4~第6態様の混合ガス供給装置40~60は、演算装置17がそれぞれ異なる機能を一つずつ有する構成を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、いずれか二つの機能、あるいは全ての機能を備える構成であってもよい。
【0095】
上述した第4態様の混合ガス供給装置40が備えるインターロック機能を、他の混合ガス供給装置が備える構成であってもよい。
【0096】
<金属窒化膜の製造方法>
本発明の金属窒化膜の製造方法は、金属化合物原料と窒素含有化合物原料とを用いた化学気相成長法により、被処理基材の表面の少なくとも一部に金属窒化膜を成膜する方法である。
化学気相成長法としては、特に限定されないが、例えば、CVD、プラズマCVD、MOCVD、及びALD、プラズマALDが挙げられる。これらの中でも、CVD、ALDが好ましく、ALDがより好ましい。
【0097】
本発明の金属窒化膜の製造方法は、上述した成膜装置1を用いて行うことができる。
また、本発明の金属窒化膜の製造方法は、上述した第1~第6の態様の混合ガス供給装置10~60のいずれかを用いて、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを窒素含有化合物原料として用いる。
【0098】
なお、混合ガスにおけるヒドラジンとアンモニアとの含有割合は、体積流量比で1:99~50:50であり、ヒドラジンの使用量をより低減する観点から、1:99~10:90とすることが好ましい。ヒドラジンとアンモニアとの合計100体積%中、ヒドラジンの含有割合が1体積%以上であると、金属窒化膜の成膜温度を低温化させる効果が得られる。また、ヒドラジンの含有割合が50%以下であると、比較的に高価なヒドラジンの使用量が少なくなり、コストを低減できるため、生産性が向上する。
【0099】
上述した成膜装置1を用いたシリコン含有薄膜の形成方法として、以下の方法1~方法7について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0100】
(方法1)
先ず、準備工程として、処理室2内に基板(被処理基材)Pを設置し、基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0101】
次に、以下のステップを含む成膜工程を行う。
・ステップ1A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ1B:処理室2内の基板Pに、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを供給する。
【0102】
ステップ1Aでは、上述した金属化合物原料からなる群のうち、いずれか1種、又は2種以上を用いる。
原料ガスは、金属化合物原料以外に、上述したキャリアガスを共存ガスとして含んでもよい。
【0103】
ステップ1Bでは、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを窒素含有化合物原料として用いる。
混合ガスは、上述した第1~第6の態様の混合ガス供給装置10~60のいずれかを用いて供給する。また、反応ガスは、混合ガス以外に、上述したキャリアガスを共存ガスとして含んでもよい。
【0104】
方法1では、基板P上の薄膜が所要の膜厚となるまでステップ1A及びステップ1Bを行う。
ステップ1Aとステップ1Bは、同時に行ってもよいし(CVD法)、交互に行ってもよい(ALD法)。
【0105】
(方法2)
方法2は、ALD法による金属窒化膜の製造方法(成膜方法)である。ここで、
図8は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0106】
次に、以下のステップを含む成膜工程を行う(
図8を参照)。
・ステップ2A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ2B:原料ガスの供給を停止する。
・ステップ2C:処理室2内の基板Pに、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを供給する。
・ステップ2D:反応ガスの供給を停止する。
【0107】
ステップ2Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した原料ガスを適用できる。これにより、基板Pの表面と金属化合物原料の化学吸着反応が生じる。
ステップ2Bでは、上述した化学吸着反応後に原料ガスの供給を停止する。
【0108】
ステップ2Cでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で反応ガスを供給する。反応ガスとしては、上述した方法1のステップ1Bで示した反応ガスを適用できる。これにより、ステップ2Aにおいて基板Pの表面に吸着した金属化合物原料を窒化させる。
ステップ2Dでは、上述した金属化合物原料の窒化反応後に反応ガスの供給を停止する。
【0109】
成膜工程では、金属化合物原料の供給を停止するステップ2Bの後、及び窒素含有化合物原料の供給を停止するステップ2Dの後の一方又は両方に、不活性ガスのみを処理室2内に供給するステップを含めてもよい。
また、不活性ガスの供給を行わずに処理室2内を真空排気するステップを含めてもよい。
また、不活性ガスのみを供給するステップと真空排気するステップとを連続して行うステップを含めてもよい。
さらに、処理室2内に、アンモニア、又は不活性ガスで希釈したアンモニアを供給するステップをさらに含む構成としてもよい。
【0110】
方法2では、上述したサイクルを複数回(例えば、500サイクル)繰り返すことで、基板P上に所望の膜厚の金属窒化膜を製造(成膜)できる。
なお、方法2では、上述したサイクルにおいてステップ2A~2Dをこの順に行うが、直前のステップの完了後に次のステップを開始してもよいし、直前のステップが完了する前に次のステップを開始してもよいし、ステップ2B、2Dのステップを省略してもよい。このように、一部のステップをオーバーラップさせたり、一部のステップを省略したりすることで、1サイクル当たりの時間を短縮できる。さらに、成膜速度が所要の速度となるように制御することができる。
【0111】
(方法3)
図9は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0112】
次に、成膜工程として、以下のステップを含むサイクルを複数回繰り返して行う(
図9を参照)。
・ステップ3A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ3B:原料ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ3C:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板Pに、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを供給する。
・ステップ3D:反応ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ3E:不活性ガスの供給を停止する。
【0113】
ステップ3Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した金属化合物原料を適用できる。これにより、基板Pの表面と金属化合物原料との化学吸着反応が生じる。
ステップ3Bでは、上述した化学吸着反応後に原料ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の金属化合物原料を除去するために不活性ガスを供給し、処理室2内をパージする。
【0114】
ステップ3Cでは、不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板Pに対して、真空下で反応ガスを供給する。反応ガスとしては、上述した方法1のステップ1Bで示したヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを適用できる。これにより、ステップ3Aにおいて基板Pの表面に吸着した金属化合物原料を窒化させる。
ステップ3Dでは、上述した金属化合物原料の窒化反応後に反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の窒素含有化合物原料を除去するために不活性ガスを供給し、処理室2内をパージする。
ステップ3Eでは、不活性ガスの供給を停止する。
【0115】
方法3において、不活性ガスの供給を行わず、処理室2内を真空排気するステップを含めても良いし、不活性ガスのみを供給するステップと処理室2内を真空排気するステップとを連続して行っても良いし、アンモニアまたは不活性ガスで希釈したアンモニアを供給するステップを含めても良い。
【0116】
(方法4)
図10は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0117】
次に、成膜工程として、以下のステップを含むサイクルを複数回繰り返して行う(
図10を参照)。
・ステップ4A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ4B:原料ガスの供給を停止し、処理室2内を真空排気する。
・ステップ4C:処理室2内の基板Pに、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを供給する。
・ステップ4D:反応ガスの供給を停止し、処理室内を真空排気する。
【0118】
ステップ4Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した金属化合物原料を適用できる。これにより、基板Pの表面と金属化合物原料との化学吸着反応が生じる。
ステップ4Bでは、上述した化学吸着反応後に原料ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の金属化合物原料を除去するために、処理室2内を真空排気する。
ステップ4Cでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で反応ガスを供給する。反応ガスとしては、上述した方法1のステップ1Bで示したヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを適用できる。これにより、ステップ4Aにおいて基板の表面に吸着した金属化合物原料を窒化させる。
ステップ4Dでは、上述した金属化合物原料の窒化反応後に反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の窒素含有化合物を除去するために、処理室2内を真空排気する。
【0119】
方法4において、不活性ガスのみを供給するステップを含めても良いし、不活性ガスのみを供給するステップと真空排気するステップとを連続して行っても良いし、アンモニア、または不活性ガスで希釈したアンモニアを供給するステップを含めても良い。
【0120】
(方法5)
図11は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0121】
次に、成膜工程として、以下のステップを含むサイクルを複数回繰り返して行う(
図11を参照)。
・ステップ5A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ5B:原料ガスの供給を停止し、処理室2内を真空排気する。
・ステップ5C:処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ5D:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内を真空排気する。
・ステップ5E:処理室2内の基板に、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを供給する。
・ステップ5F:反応ガスの供給を停止し、処理室2内を真空排気する。
・ステップ5G:処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ5H:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内を真空排気する。
【0122】
ステップ5Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した金属化合物原料を適用できる。これにより、基板の表面と金属化合物原料との化学吸着反応が生じる。
ステップ5Bでは、上述した化学吸着反応後に原料ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の金属化合物原料を除去するために、処理室2内を真空排気する。
ステップ5Cでは、処理室2内に不活性ガスを供給し、処理室2内をパージする。
ステップ5Dでは、不活性ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する不活性ガスを除去するために、処理室2内を真空排気する。
ステップ5Eでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で反応ガスを供給する。反応ガスとしては、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを適用できる。これにより、ステップ5Aにおいて基板Pの表面に吸着した金属化合物原料を窒化させる。
ステップ5Fでは、上述した金属化合物原料の窒化反応後に反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の窒素含有化合物を除去するために、処理室2内を真空排気する。
ステップ5Gでは、処理室2内に不活性ガスを供給し、処理室2内をパージする。
ステップ5Hでは、不活性ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する不活性ガスを除去するために、処理室2内を真空排気する。
【0123】
方法5において、アンモニア、または不活性ガスで希釈したアンモニアを供給するステップを含めても良い。
【0124】
(方法6)
図12は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0125】
次に、成膜工程として、以下のステップを含むサイクルを複数回繰り返して行う(
図12を参照)。
・ステップ6A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ6B:原料ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ6C:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板に、窒素含有化合物原料を含む第1反応ガスを供給する。
・ステップ6D:第1反応ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ6E:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板に、アンモニアを含む第2反応ガスを供給する。
・ステップ6F:第2反応ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ6G:不活性ガスの供給を停止する。
【0126】
ステップ6Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した金属化合物原料を適用できる。
ステップ6Bでは、原料ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の金属化合物原料を除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ6Cでは、不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板に対して、真空下で第1反応ガスを供給する。第1反応ガスとしては、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを適用できる。
ステップ6Dでは、第1反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の第1反応ガスを除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ6Eでは、不活性ガスの供給を停止し、アンモニアを含む第2反応ガスを供給する。
ステップ6Fでは、第2反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の第2反応ガスを除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ6Gでは、不活性ガスの供給を停止する。
【0127】
第2反応ガスとしては、アンモニア、または1種類以上の不活性ガスで希釈したアンモニアを適用できる。
方法6において、ガス供給を行わず処理室2内を真空排気するステップを含めても良いし、不活性ガスのみを供給するステップと真空排気するステップを連続して行っても良い。
【0128】
(方法7)
図13は、本発明の金属窒化膜の製造方法における成膜工程の一例を示すタイミングチャートである。
先ず、方法1と同様に、準備工程として、処理室2内に搬送された基板Pの表面温度を所要の温度に制御する。
【0129】
次に、成膜工程として、以下のステップを含むサイクルを複数回繰り返して行う(
図13を参照)。
・ステップ7A:処理室2内の基板Pに、金属化合物原料を含む原料ガスを供給する。
・ステップ7B:原料ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ7C:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板Pに、アンモニアを含む第1反応ガスを供給する。
・ステップ7D:第1反応ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ7E:不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板Pに、窒素含有化合物原料を含む第2反応ガスを供給する。
・ステップ7F:第2反応ガスの供給を停止し、処理室2内に不活性ガスを供給する。
・ステップ7G:不活性ガスの供給を停止する。
【0130】
ステップ7Aでは、処理室2内の基板Pに対して、真空下で原料ガスを供給する。原料ガスとしては、上述した方法1のステップ1Aで示した金属化合物原料を適用できる。
ステップ7Bでは、原料ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の金属化合物原料を除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ7Cでは、不活性ガスの供給を停止し、処理室2内の基板Pに対して、真空下で第1反応ガスを供給する。反応ガスとしては、アンモニアを含む第1反応ガスを供給する。
ステップ7Dでは、第1反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の第1反応ガスを除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ7Eでは、不活性ガスの供給を停止し、真空下で第2反応ガスを供給する。アンモニアを含む第2反応ガスを供給する。第2反応ガスとしては、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを適用できる。
ステップ7Fでは、第2反応ガスの供給を停止し、処理室2内に残留する未反応の第2反応ガスを除去するために、処理室2内に不活性ガスを供給し、パージする。
ステップ6Gでは、不活性ガスの供給を停止する。
【0131】
第1反応ガスとしては、アンモニア、または1種類以上の不活性ガスで希釈したアンモニアを適用できる。
方法7において、不活性ガスの供給を行わずに処理室2内を真空排気するステップを含めても良いし、不活性ガスのみを供給するステップと真空排気するステップとを連続して行っても良い。
【0132】
本発明の金属窒化膜の製造方法によれば、反応ガスとしてアンモニア単体、及びヒドラジン単体に替えて、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを用いるため、以下の効果が得られる。
(1)ヒドラジンは、アンモニアと比べて反応性に富むため、混合ガスにおけるヒドラジンとアンモニアとの合計100体積%中、ヒドラジンの含有割合が1体積%以上であれば、金属窒化膜の成膜温度を低温化させる効果が得られる。
(2)ヒドラジンは、アンモニアと比べて還元性が高いため、不純物である膜中塩素含有量を低減できる。なお、膜中塩素は、電気抵抗の劣化要因となるだけでなく、膜中水素(H)との反応によって発生する塩化水素(HCl)が基板にダメージを与える。特に、成膜温度を低温化させると、膜中塩素含有量が増加する傾向にある。
(3)ヒドラジンは、アンモニアと比べて反応性に富むため、混合ガスにおけるヒドラジンとアンモニアとの合計100体積%中、ヒドラジンの含有割合が1体積%以上であれば、金属窒化膜の成膜速度が向上して、生産性が向上する効果が得られる。
【0133】
また、本発明の金属窒化膜の製造方法によれば、成膜工程を構成するサイクルが真空排気するステップを含むことにより、原料ガス、反応ガス、不活性ガスなど、処理室内の残留ガスを効率的に除去できる。上述した方法4では、真空排気するステップを成膜サイクルに導入することで残留ガスを効率的に除去できるため、カバレッジ特性が良好な金属窒化膜を形成できる。また、上述した方法5では、原料ガス、反応ガス、不活性ガス、それぞれの供給前後に真空排気するステップを設けるため、パージ効率が方法4よりも向上する。
【0134】
また、本発明の金属窒化膜の製造方法によれば、方法6、7に示すように、3ステップ以上の反応によって成膜することで、基板表面構造を改質しながら薄膜を形成するため、2ステップ反応による一般的な成膜よりも良質な金属窒化膜を形成できる場合もある。具体的には、アンモニア供給により形成したアンモニア窒化表面構造の中で、窒化しなかった基板表面サイトに対して、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを供給することで窒化され、緻密な金属窒化膜を形成する。特に、アンモニア窒化表面構造とヒドラジン窒化表面構造とが隣り合う場合、その後の金属化合物原料(例えば、TiCl4)の化学吸着反応において、立体障害が少なく反応が進行するため活性化エネルギーが低くなる効果が得られる。
【0135】
本発明の金属窒化膜の製造方法によれば、上述した第1~第6態様の混合ガス供給装置10~60を用いるため、窒素含有化合物原料に含まれるH2O濃度が、0.1ppm以下の混合ガスを反応ガスとして供給できる。これにより、金属窒化膜中にH2O由来の不純物(酸素成分)が混入されにくいため、電気特性やフッ酸耐性など、膜質が優れる金属窒化膜が得られる。
【0136】
本発明の金属窒化膜の製造方法によれば、窒素含有化合物としてヒドラジンを用いるため、金属窒化膜に窒素含有化合物由来の炭素原子(C)、塩素(Cl)等のハロゲン原子、及び酸素(O)原子が混入されにくいため、膜質がすぐれる金属窒化膜が得られる。
【0137】
なお、上述した方法1~7は、本発明の金属窒化膜の製造方法の一例であり、これらに限定されない。例えば、方法1~7の他、様々な方法によって、金属化合物原料および窒素含有化合物原料を供給してもよい。
【0138】
<金属窒化膜の評価方法>
本発明の金属窒化膜の製造方法によって得られた金属窒化膜の薄膜は、以下の方法により、膜質、成膜量、及び膜の緻密性を評価できる。
【0139】
(膜質の評価)
薄膜の膜質は、市販の分光エリプソメトリー(例えば、SOPRA社製分光エリプソメーター)を用いた膜厚及び屈折率の測定値から評価できる。
【0140】
例えば、金属窒化膜がチタン窒化膜の場合、屈折率が1.80未満であるとき、一般的に良質なチタン窒化膜であると評価できる。また、屈折率が小さいほど、不純物が少なく、緻密なチタン窒化膜であることを意味する。
一方、屈折率が1.80以上である場合、特に屈折率1.9を超えている場合は、膜中に30%以上酸素成分が混入していることを意味し、チタン酸化膜またはチタン酸窒化膜の性質を示す。
【0141】
また、金属窒化膜がシリコン窒化膜の場合、屈折率が1.8~2.1の範囲内であるとき、一般的に良質なシリコン窒化膜であると評価できる。
一方、屈折率が1.8未満であるとき、シリコン窒化膜は粗な膜構造であると評価できる。なお、屈折率の数値が小さいほど、膜中に酸素成分が混入していることを意味する。
また、屈折率が1.6以下の場合には、一般的にシリコン酸化膜またはシリコン酸窒化膜の性質を示す。
なお、屈折率が1.8を超えている場合、膜中に炭素成分が含まれている場合があり、炭素成分の含有量が多いほど、屈折率の数値が大きくなる傾向がある。
【0142】
(成膜量)
得られた膜厚から、1サイクルあたりの成膜量であるGPC(Growth per cycle)を算出できる。
【0143】
(電気抵抗率)
薄膜の電気抵抗率は、市販の低抵抗率計(例えば、三菱化学アナリテック製:ロレスタ-GP)を用い、室温にて4探針法で測定する。電極探針は、TFPプローブ(探針間隔:1mm)を用いることができる。
得られた抵抗値とサンプルの膜厚とから、電気抵抗率を算出する。例えば、チタン窒化膜であれば、電気抵抗率が低いほど、膜質が良いと評価できる。一方、電気抵抗率が高いほど、酸素、塩素、炭素などの膜中不純物が多く、膜質が悪いと評価できる。
【0144】
(膜の不純物量)
薄膜の不純物量は、二次イオン質量分析法(SIMS)により、膜中塩素、酸素、炭素含有量を評価することができる。装置としては、例えば、アルバックファイ社製:「PHI ADEPT-1010」を用いることができる。
【0145】
(フッ酸耐性)
シリコン窒化膜のフッ酸耐性は、フッ酸エッチングレートによって評価できる。
フッ酸エッチングレートは、フッ化水素(HF):水=1:100の割合で希釈したフッ酸溶液にシリコン含有薄膜のサンプルを浸漬し、所定時間経過した後、速やかに純水で洗浄し、窒素ガス等を吹きかけて乾燥させた後、フッ酸浸漬前後の膜厚変化から単位時間におけるフッ酸エッチングレートを算出する。
【0146】
以上説明したように、本発明の混合ガス供給装置によれば、混合ガスがヒドラジン化合物とアンモニアとを含み、ヒドラジン化合物を大量に使用しないため、窒化膜を成膜する際の反応ガスとして有用な窒素含有化合物原料を含む混合ガスを、安全かつ安定的に供給できる。
また、本発明の混合ガス供給装置によれば、混合ガスにおけるヒドラジン化合物の流量や、アンモニアとの混合割合を安全かつ安定して制御できるため、取扱いが容易である。
【0147】
また、本発明の金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法は、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを反応ガスとして用いるため、アンモニア単独で反応ガスとして用いる場合と比較して、膜質良好な金属窒化膜を得ることができ、成膜速度すなわち生産性も向上できる。
【0148】
さらに、本発明の金属窒化膜の製造装置、及び金属窒化膜の製造方法によれば、ヒドラジンとアンモニアとを含む混合ガスを反応ガスとして用いるため、ヒドラジン単独で反応ガスとして用いる場合と比較して、材料コストを大幅に低減できる。
【0149】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、上述した実施形態の成膜装置1では、原料ガス供給経路L3及び反応ガス供給経路L4を一つずつ備える構成を一例としたが、これに限定されない。原料ガス供給経路L3は、処理室2内に複数種の金属化合物原料を供給するため、複数の経路、あるいは分岐経路を有する構成としてもよい。また、反応ガス供給経路L4は、処理室2内に複数種の窒素含有化合物原料を供給するため、複数の経路、あるいは分岐経路を有する構成としてもよい。
【実施例】
【0150】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例1~7は参考例である。
【0151】
実施例1~7、比較例1~8の金属窒化膜は、
図1に示す成膜装置1を用い、以下の条件によって成膜した。
・成膜手法:ALD
・原料ガス:テトラクロロチタン(TiCl
4)、ヘキサクロロジシラン(HCDS)
・反応ガス:ヒドラジン(N
2H
4)、モノメチルヒドラジン(MMH)、アンモニア(NH
3)
・反応ガス(混合ガス)の体積流量比:表1、表2、表3に記載
・原料ガス分圧:0.004(Torr)
・反応ガス分圧:0.04(Torr)
・成膜温度:表1、表2、表3にそれぞれ記載
・3ステップについて:表2に詳細記載
【0152】
<ALDサイクル>
実施例1~3、5~7、及び比較例1~5は、上述した方法3で成膜した。
・ステップ3A:処理室内の基板に、金属化合物原料を含む原料ガスを2秒供給する。
・ステップ3B:原料ガスの供給を停止し、処理室内に不活性ガスを10秒供給する。
・ステップ3C:不活性ガスの供給を停止し、処理室内の基板に、窒素含有化合物原料を含む反応ガスを2秒供給する。
・ステップ3D:反応ガスの供給を停止し、処理室内に不活性ガスを10秒供給する。
・ステップ3E:不活性ガスの供給を停止する。
・サイクルの繰り返し回数:1000回
【0153】
なお、比較例1、実施例2(成膜温度:400℃)については、インキュベーションタイムを確認するために、膜厚に対するサイクル数依存(100、300、500、1000サイクル)調査を行った。
【0154】
実施例4は、上述した方法7で成膜した。
・ステップ7A:処理室内の基板に、金属化合物原料を含む原料ガスを2秒供給する。
・ステップ7B:原料ガスの供給を停止し、処理室内に不活性ガスを10秒供給する。
・ステップ7C:不活性ガスの供給を停止し、処理室内の基板に、アンモニアを含む第1反応ガスを2秒供給する。
・ステップ7D:第1反応ガスの供給を停止し、処理室内に不活性ガスを10秒供給する。
・ステップ7E:不活性ガスの供給を停止し、処理室内の基板に、窒素含有化合物原料を含む第2反応ガスを2秒供給する。
・ステップ7F:第2反応ガスの供給を停止し、処理室内に不活性ガスを10秒供給する。
・ステップ7G:不活性ガスの供給を停止する。
・サイクルの繰り返し回数:1000回
【0155】
<評価結果>
なお、薄膜の評価結果は、表1~4にそれぞれ示した。
【0156】
[チタン窒化膜]
(1)GPCと膜質
表1に示すように、比較例1と2において、反応ガスとしてヒドラジンを用いた比較例2の方が、各成膜温度において総じてGPCが上昇し、良質なチタン窒化膜(TiN)が形成された。
特に、比較例1に示すように、反応ガスとしてアンモニアを用いた場合、成膜温度が低くなるにつれてGPCが減少し、屈折率が1.8を超える傾向であった。
これに対して、比較例2に示すように、反応ガスとしてヒドラジンを用いた場合、GPCが向上し、屈折率に差異がない傾向であった。
これは、アンモニア(NH3)よりもヒドラジン(N2H4)の方が、反応性が高いため、成膜温度が低温の領域においても窒化反応が進行したといえる。
【0157】
実施例1~3は、反応ガスとしてヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いており、比較例2と比較してヒドラジンの体積流量比が減少しているにもかかわらず、比較例2と同等以上のGPC、膜質であった。
実施例1に示すように、体積流量比(N2H4:NH3)が50:50の混合ガスを反応ガスとして用いた場合では、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例2以上の成膜特性(GPCが向上、屈折率が減少)であった。
実施例3に示すように、体積流量比が1:99までに減少させた混合ガスを反応ガスとして用いた場合でも、反応ガスとしてアンモニア単体を用いた比較例1と比較して、成膜特性(GPC)が向上し、屈折率が減少して、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例2とおおよそ同等の結果が得られた。
以上の結果より、実施例1~3は、反応ガスとしてヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いることで、ヒドラジン(N2H4)の供給流量を低減しつつ、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例2とおおよそ同等の成膜結果が得られた。また、実施例1~3は、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例2よりも、50%以上コストを削減できることがわかった。
【0158】
(2)膜中不純物
表1に示すように、比較例1と2において、反応ガスとしてヒドラジンを用いた比較例2の方が、各成膜温度において総じて塩素や酸素などの膜中不純物が少ない傾向であった。
特に、比較例1に示すように、反応ガスとしてアンモニアを用いた場合、成膜温度が350℃を下回ると、急激に膜中の塩素量及び酸素量が増加した。膜中の塩素量の増加は、成膜温度が低温になるほど基板の表面に吸着したTiCl4構造に対し、窒化エネルギーが足りずに窒化反応が進行しなかったため(すなわち、Ti-Cl結合が多く膜中に残留したため)である。
また、膜中の酸素量の増加は、窒化反応が進行しないことで粗な膜が形成されてしまい、大気中の酸素や水分が膜中に混入されたためである。
これに対して、比較例2に示すように、反応ガスとしてヒドラジンを用いた場合、ヒドラジンの窒化力が高いため、成膜温度が350℃を下回った場合でも、比較例1と比べて膜中不純物が少なく、良質なチタン窒化膜が形成された。
【0159】
実施例1~3は、反応ガスとしてヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いており、比較例2と比較してヒドラジンの体積流量比が減少しているにもかかわらず、比較例2と同等程度の膜中不純物量であった。
実施例3に示すように、体積流量比が1:99までに減少させた混合ガスを反応ガスとして用いた場合でも、反応ガスとしてアンモニア単体を用いた比較例1と比較して、膜中不純物が少ない結果であった。
以上の結果より、アンモニアにヒドラジンが少量でも含まれた混合ガスを反応ガスとして用いることで、膜中不純物が少ないチタン窒化膜が得られることがわかった。
【0160】
これに対して、ヒドラジン化合物としてモノメチルヒドラジン(MMH)を用いた比較例3、4では、膜中の塩素量については、ヒドラジン(N2H4)用いた場合と同等であったが、モノメチルヒドラジンが有する炭化水素由来の炭素が膜中に混入される結果であった。
【0161】
(3)電気特性
表1に示すように、比較例1と2において、反応ガスとしてヒドラジンを用いた比較例2の方が、各成膜温度において総じて電気抵抗率が低い傾向であった。
特に、比較例1に示すように、反応ガスとしてアンモニアを用いた場合、成膜温度が350℃以下になる顕著に増加する傾向が確認された。
これに対して、比較例2に示すように、反応ガスとしてヒドラジンを用いた場合、成膜温度に対して差異が少なく、良好な抵抗率を示す傾向が確認された。
反応ガスとしてアンモニア単体を用いる場合に電気抵抗率が増加するのは、成膜温度が低温であるほど膜中不純物が多く残留し、膜質が大きく劣化するためと推察される。
【0162】
実施例1~3は、反応ガスとしてヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いており、比較例2と比較してヒドラジンの体積流量比が減少しているにもかかわらず、比較例2と同等以上の電気抵抗率であった。
実施例1に示すように、体積流量比(N2H4:NH3)が50:50の混合ガスを反応ガスとして用いた場合では、比較例2以上の低抵抗率であった。
実施例3に示すように、体積流量比が1:99までに減少させた混合ガスを反応ガスとして用いた場合でも、比較例1よりも低い抵抗率を示し、比較例2と同等程度の結果が得られた。
【0163】
これに対して、ヒドラジン化合物としてモノメチルヒドラジン(MMH)を用いた比較例3、4では、実施例1~3の成膜温度400℃と比べて、電気抵抗率が高い傾向であった。これは、モノメチルヒドラジンが有する炭化水素由来の炭素が膜中に混入されたため、電気抵抗率を劣化させたと推察される。
【0164】
(4)その他
表2に示すように、実施例2では、比較例1(成膜温度:400℃)と比べて、インキュベーションタイムを低減できた。
以上の結果より、ヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いることで、インキュベーションタイムの低減効果が確認された。
【0165】
比較例5では、反応ガスとして用いたヒドラジンがH2O:100ppmを含んでおり、膜中酸素が大幅に向上し、電気抵抗率が大きく悪化した。
以上より、良質な金属窒化膜を形成させるためには、窒素含有化合物原料であるヒドラジン中に含まれる水分含有量が10ppm以下、より好ましくは1ppm以下である必要が確認された。
【0166】
実施例4では、2ステップで成膜する実施例2(成膜温度:400℃)と比べて、GPC、屈折率、膜中不純物、および電気抵抗率が向上した。
以上の結果より、3ステップでの成膜の効果が確認された。
【0167】
表3に示すように、比較例6は、比較例2と同様に、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた例であるが、ヒドラジンの供給流量を少なくした場合の例である。
比較例6の反応ガスの供給量は、比較例1、比較例2及び実施例3と比較して1/100であり、実施例3で供給した混合ガスに含まれるヒドラジン流量と同一であった。
比較例2、実施例3、及び比較例6を比較すると、反応ガスとしてヒドラジンのみを少量供給する比較例6では、成膜温度300℃において薄膜が形成されるが、電気抵抗率や膜中不純物などの膜質が悪化した。
また、比較例1に示すように、反応ガスとしてアンモニア単体を用い、供給流量を比較例2や実施例3と同様に多くしたとしても、劣悪な膜質が形成されることが確認された。
以上より、反応ガスとしてヒドラジンを少量供給する場合、良質な金属窒化膜を形成するためには、反応ガスである窒素含有化合物原料としてヒドラジンだけではなくアンモニアを含めることが必要であることが確認された。また、実施例3のように、アンモニア中にヒドラジンを少量添加した混合ガスを反応ガスとして用いた効果が確認された。
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
[シリコン窒化膜]
表4に示すように、比較例7と8において、反応ガスとしてヒドラジンを用いた比較例8の方が、各成膜温度において総じてGPCならびにフッ酸耐性が向上し、良質なシリコン窒化膜が形成された。
これは、アンモニア(NH3)よりもヒドラジン(N2H4)の方が、反応性が高いため、成膜温度が低温の領域においても窒化反応が進行したといえる。
【0172】
実施例5に示すように、体積流量比(N2H4:NH3)が50:50の混合ガスを反応ガスとして用いた場合では、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例8と同等のGPC、屈折率、ならびにフッ酸耐性であった。
実施例6,7に示すように、体積流量比が1:99までに減少させた混合ガスを反応ガスとして用いた場合でも、反応ガスとしてアンモニア単体を用いた比較例7よりもGPC、フッ酸耐性が向上した。また、膜中不純物量についても、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例8と同等の結果であった。
以上の結果より、シリコン窒化膜を成膜する場合においても、反応ガスとしてヒドラジンとアンモニアとの混合ガスを用いることで、ヒドラジン(N2H4)の供給流量を低減しつつ、反応ガスとしてアンモニア単体を用いた比較例7とおおよそ同等の成膜結果が得られた。また、実施例5~7は、反応ガスとしてヒドラジン単体を用いた比較例8よりも、50%以上コストを削減できた。
また、反応ガスとしてヒドラジンを少量供給する場合、膜中不純物が少ないシリコン窒化膜を成膜するためには、反応ガスである窒素含有化合物原料としてヒドラジンだけではなくアンモニアを含めることが必要であることが確認された。
それ以外の結果についても、チタン窒化膜の成膜評価の結果と同様の傾向であった。
【0173】
【0174】
[その他の窒化膜]
その他の窒化膜についても、チタン窒化膜、シリコン窒化膜の成膜評価の結果と同様の傾向であった。
なお、その他の窒化膜を成膜する際の原料ガスとして、タンタル窒化膜(TaN)の成膜では五塩化タンタル(TaCl5)を、窒化アルミニウム(AlN)の成膜ではトリメチルアルミニウム(TMA)や塩化アルミニウム(AlCl3)を、窒化ガリウム(GaN)の成膜では塩化ガリウム(GaCl3)やトリメチルガリウム(TMG)を、それぞれ用いた。
【符号の説明】
【0175】
1・・・成膜装置
2・・・処理室(チャンバ)
3・・・温度制御装置
4・・・減圧装置
10,20,30,40,50,60・・・混合ガス供給装置
11・・・原料容器
12・・・加熱器
13・・・加熱器調節装置
14・・・希釈ガス流量制御装置
15・・・アンモニア流量制御装置
16・・・混合ガス流量計
17・・・演算装置
18・・・配管ヒータ
31・・・圧力計
32・・・開閉弁
33・・・圧力調節装置
41・・・設定装置
P・・・被処理基材(基板)
L1・・・パージガス供給経路
L2・・・排気経路
L3・・・原料ガス供給経路
L4・・・反応ガス供給経路
L11・・・導入経路
L12・・・導出経路
L13・・・希釈ガス供給経路
L14,L24・・・アンモニア供給経路
L15・・・混合ガス導出経路
L16・・・バイパス経路