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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】ホタテエキスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 17/40 20160101AFI20241016BHJP
   B01D 61/14 20060101ALI20241016BHJP
   B01D 61/02 20060101ALI20241016BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20241016BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20241016BHJP
   A23L 23/00 20160101ALN20241016BHJP
【FI】
A23L17/40 C
B01D61/14 500
B01D61/02 500
A23L27/00 D
A23L27/10 Z
A23L23/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020161254
(22)【出願日】2020-09-25
(65)【公開番号】P2022054198
(43)【公開日】2022-04-06
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391036806
【氏名又は名称】和弘食品株式会社
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 梨帆
(72)【発明者】
【氏名】松原 順一
【審査官】井上 政志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭55-050880(JP,A)
【文献】特開2005-278569(JP,A)
【文献】特開平09-271351(JP,A)
【文献】特開平09-308455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、B01D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホタテエキスを、分画分子量(NMWL)が100000Da以下である膜を使って膜処理することで、膜を通過していない分画ホタテエキスAと、膜を通過した分画ホタテエキスBとに分画後、分画ホタテエキスAを70~40質量%と分画ホタテエキスBを30~60質量%とを混合することを特徴とする改良ホタテエキス(ただし、分画前のホタテエキスと同じ成分のホタテエキスを除く。)の製造方法。
【請求項2】
前記膜が、UF膜(限外ろ過膜)、半透膜、及びNF膜(ナノろ過膜)から選ばれる1種又は2種以上の膜であることを特徴とする請求項1に記載の改良ホタテエキスの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の製造方法により製造された改良ホタテエキスを用いた食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホタテエキスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホタテ貝本来の「うまみ」を多く含有した味の良い貝柱を提供するために、ホタテ貝を加熱し、その後水槽に漬けて冷却し、ウロを水洗いにより除去して貝柱のみを取り出すホタテ貝の加工において、加熱時の煮汁を回収し、回収した煮汁を濃縮装置にて濃縮することでホタテ貝のエキスを抽出しておき、取り出した貝柱にホタテ貝のエキスを含浸させる、ホタテ貝の味付け方法が開発されていた(特許文献1)。
このように、貝柱にホタテ貝の煮汁を濃縮して得られたホタテエキスを、貝柱に含侵させることで、「うまみ」を多く含有した味の良い貝柱を製造することは行われていたが、ホタテエキスを膜処理することで、風味や透明度が異なるホタテエキスを製造することについては、これまで何ら検討されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-84574号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、ホタテ貝の煮汁を濃縮して得られるホタテエキスを膜処理により分画し、風味や濃厚感が高いホタテエキス、及び香りが強く、透明度が高いホタテエキスを製造することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、ホタテ貝の煮汁から得られたホタテエキスを、膜処理することにより、風味や濃厚感が高い分画ホタテエキスと、香りが強く、透明度が高い分画ホタテエキスとを製造できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、具体的には、本発明は以下の態様を提供する。
【0006】
〔1〕ホタテエキスを、膜処理することで、膜を通過していない分画ホタテエキスAと、膜を通過した分画ホタテエキスBとに分画することを特徴する分画ホタテエキスの製造方法。
〔2〕前記膜の分画分子量(NMWL)が、100000Da以下であることを特徴とする〔1〕に記載の分画ホタテエキスの製造方法。
〔3〕前記膜が、UF膜(限外ろ過膜)、半透膜、及びNF膜(ナノろ過膜)から選ばれる1種又は2種以上の膜であることを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の分画ホタテエキスの製造方法。
〔4〕〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の製造方法で製造した、膜を通過していない分画ホタテエキスA。
〔5〕〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載の製造方法で製造した、膜を通過した分画ホタテエキスB。
〔6〕〔4〕に記載の分画ホタテエキスAと、〔5〕に記載の分画ホタテエキスBとを混合することにより得られた改良ホタテエキス。
〔7〕〔1〕~〔3〕のいずれか1つに記載された製造方法で製造された分画ホタテエキスAと、分画ホタテエキスBとを混合することを特徴とする改良ホタテエキスの製造方法。
〔8〕〔4〕に記載の分画ホタテエキスA、〔5〕に記載の分画ホタテエキスB、及び〔6〕に記載の改良ホタテエキスから選ばれる1種又は2種以上を含有する食品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、風味や濃厚感が高い分画ホタテエキスB、及び香りが強く、透明度が高い分画ホタテエキスA、及びそれらの製造方法を提供することができる。
また、本発明により得られた風味や濃厚感が高い分画ホタテエキスB、及び香りが強く、透明度が高い分画ホタテエキスAを、各種割合で混合することにより、風味、濃厚感、香り、及び透明度を、使用する食品に合わせたものに調整した改良ホタテエキスを提供することができる。
さらに、風味や濃厚感が高い分画ホタテエキスBを食品に使用することで、風味や濃厚感が強い食品を提供することができる。また、透明度が高い分画ホタテエキスAを、麺つゆ、冷やし中華のタレ等の透明性が要求される調味料に使用することで、透明度の高い調味料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】ホタテエキスの分子量分布曲線のグラフである。
図2】膜処理の装置を示す概略図である。
図3】各サンプルの波長λ=660nmにおける吸光度の測定結果(濁度)を示すグラフである。
図4】各ホタテエキスの官能評価結果のグラフである。
図5】ミネストローネの官能評価結果のグラフである。
図6】麺つゆの官能評価結果のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の具体的な実施形態について、詳細に説明するが、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0010】
本発明の製造方法は、ホタテエキスを膜処理することで、膜を通過していない分画ホタテエキスAと、膜を通過した分画ホタテエキスBとに分画することを特徴する分画ホタテエキスの製造方法である。
【0011】
膜処理をするホタテエキスは、市販品を使用することができ、市販品としては、和弘食品(株)販売の商品「ホタテエキス(SE-72)」等が挙げられる。
また、ホタテエキスは、ホタテ貝の煮汁を、加熱により濃縮することにより製造することもでき、製造途中で、食塩を添加しても良い。
具体的には、例えば、特開2009-225690号公報の〔0017〕に記載された方法で製造することができる。
【0012】
本発明に使用するホタテエキスの水分量は特に制限されないが、60~80質量%であることが好ましく、65~75質量%であることがより好ましく、68~74質量%であることがさらにより好ましい。
ホタテエキスの水分は、赤外線水分計で測定することができる。
【0013】
また、本発明に使用するホタテエキスの塩分量は特に制限されないが、17質量%~27質量%であることが好ましく、18質量%~26質量%であることがより好ましく、19質量%~25質量%であることがさらにより好ましい。
ホタテエキスの塩分は、電位差滴定法で測定することができる。
【0014】
また、本発明に使用するホタテエキスのpHは特に制限されないが、4.5~7.5であることが好ましく、4.5~7.0であることがより好ましく、4.9~6.9であることがさらにより好ましい。
ホタテエキスのpHは、pHメーターで測定することができる。
【0015】
本発明の膜処理に使用する膜は、市販品を使用することができ、後述するように、その分画分子量(NMWL)は、100000Da以下であることが好ましい。
さらに詳しくは、使用する膜の分画分子量(NMWL)の上限は、100000Da以下であることが好ましく、80000Da以下であることがより好ましく、50000Da以下であることがさらにより好ましく、20000Da以下であることが最も好ましい。また、使用する膜の分画分子量(NMWL)の下限は、1000Da以上であることが好ましく、5000Da以上であることがより好ましく、10000Da以上であることがさらにより好ましい。
具体的な膜としては、UF膜(限外ろ過膜)、半透膜、及びNF膜(ナノろ過膜)から選ばれる1種又は2種以上の膜を使用することができる。取り扱いやすさやコスト等を考慮すると、UF膜(限外ろ過膜)が最も好ましい。
例えば、UF膜(限外ろ過膜)の市販品として、旭化成(株)販売の商品名「モジュール形式ACP3013D」が挙げられる。
【0016】
ホタテエキスを膜処理することにより、膜を通過していない分画ホタテエキスAと、膜を通過した分画ホタテエキスBとに分画することができる。
例えば、高分子の分子量分布が、約100000Da(100kDa)~1500000Da(1500kDa)であるホタテエキスを、分画分子量が15000Da(15kDa)のUF膜を使用して膜処理した場合、約100000Da(100kDa)~1500000Da(1500kDa)の高分子が濃縮された分画ホタテエキスA、及び約100000Da(100kDa)~1500000Da(1500kDa)の高分子を除いた成分を含有する分画ホタテエキスBを製造することができる。
【0017】
膜処理は、処理量や条件を調整することで、バッチ式による1回の膜処理でも分画ホタテエキスA、及び分画ホタテエキスBを製造することもできる。
また、次に示すように、膜を通過しなかった液を回収し、再び膜処理をするという循環式の方法によっても分画ホタテエキスA、及び分画ホタテエキスBを製造することもできる。
例えば、膜を通過した液は、そのまま回収をし(分画ホタテエキスB)、膜を通過しなかた液を、膜処理前の液に混合し、再度膜処理するというように、膜を通過しなかった液を循環させて膜処理し、最終的に膜を通過しなかった分画を、分画ホタテエキスAとして回収する。
例えば、500kgのホタテエキスを、膜を通過しなかった液を循環させて膜処理する場合、好ましくは1~5時間、より好ましくは1~3時間、さらに好ましくは1~2時間、循環させて膜処理をするのが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法により得られた分画ホタテエキスAと分画ホタテエキスBを、各種割合で混合することにより、改良ホタテエキスを製造することができる。
分画ホタテエキスAは、風味や濃厚感が強く、分画ホタテエキスBは、香りが強く、透明度が高いため、それらを各種割合で混合することにより、風味、濃厚感、香り、及び透明度を、使用する食品に合わせたものに調整した改良ホタテエキスを製造することができる。
なお、改良ホタテエキスの分画ホタテエキスAと分画ホタテエキスBの混合質量比は、使用する食品に合わせて調整されるので特に制限されず、当業者であれば適宜調整可能である。
【0019】
本発明の分画ホタテエキスA、分画ホタテエキスB、及び改良ホタテエキスは、各種食品に使用することができる。食品としては、例えば、ミネストローネ、麺つゆ、冷やし中華のタレ、あんかけ、なべ出汁、しゃぶしゃぶ出汁等が挙げられる。
分画ホタテエキスAは、分画していないホタテエキスに比べ、濃厚感(厚み)及び後味(後に残る・持続性)が強くなるので、ミネストローネの原料として使用することで、濃厚感や後味が強い高いミネストローネを調整することができる。
また、分画ホタテエキスBは、分画していないホタテエキスに比べて透明度が高いので、透明性が要求される調味料、具体的には、麺つゆ、冷やし中華のタレ、あんかけ、なべ出汁、しゃぶしゃぶ出汁等の調味料に使用することができる。
後述するように、例えば、分画ホタテエキスAと分画ホタテエキスBとを、4:6の質量割合で混合した改良ホタテエキスは、濃厚感(厚み)及び後味(後に残る・持続性)が少し高くなるので、分画していないホタテエキスよりも適度な濃厚感や後味を付与したミネストローネを製造したい場合に使用することができる。
【0020】
本発明の分画ホタテエキスA、分画ホタテエキスB、又は改良ホタテエキスの食品への添加量は、使用する食品によって様々な添加量にすることができ、例えば、1~99質量%であることが好ましく、5~50質量%であることが好ましく、10~30質量%であることがさらにより好ましい。
本発明の分画ホタテエキスA、分画ホタテエキスB、又は改良ホタテエキスを含有する食品は、原料として、これらを使用する以外は、公知の方法で製造することができる。
【実施例
【0021】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれら実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0022】
〔使用したホタテエキス〕
ホタテエキスには、和弘食品(株)販売の商品「SE-72」(水分 71.0質量%、塩分 22.0質量%、pH 5.9)を使用した。なお、ホタテエキスの水分は、株式会社ケツト科学研究所の赤外線水分計「FD-610」で測定し、塩分は東亜ディーケーケー株式会社の塩分分析計(電位差滴定法)「SAT-500」で測定し、pHは株式会社堀場製作所のpHメーター「D-52」で測定をした。
【0023】
〔ホタテエキス中の高分子の分子量分布の測定〕
製造したホタテエキスの高分子の数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、Z平均分子量(Mz)を、液体クロマトグラフィー分析により求めた。
分析に使用した液体クロマトグラフィーのシステム、カラム、溶離液、測定条件を以下に示す。
〔液体クロマトグラフィーのシステム〕
内訳
・デガッサ :(株)島津製作所製、商品名「DGU-20A5R」
・ポンプ :(株)島津製作所製、商品名「LC-30AD」
・オートサンプラ:(株)島津製作所製、商品名「SIL-30AC」
・オーブン :(株)島津製作所製、商品名「CTO-20AC」
・RI検出器 :(株)島津製作所製、商品名「RID-20A」
〔カラムと溶離液〕
・カラム:東ソー(株)商品名「TOSOH TSKgel GMPWXL」78mm*300mmを2本連結。
・溶離液:0.3M硝酸ナトリウム+50mM酢酸水溶液
〔測定条件〕
・流速:1mL/min
・温度:40℃
図1は、上記システムにて分析された結果に基づき導き出された分子量分布曲線で、横軸は分子量(対数)、縦軸は積分分子量分布曲線における割合を示している。
図1から、ホタテエキス中の高分子の分子量分布は、約100000Da(100kDa)~1500000Da(1500kDa)であることがわかった。
また、図1から、製造したホタテエキスの数平均分子量(Mn)は、328607、重量平均分子量(Mw)は、441761、Z平均分子量(Mz)は、583819であることがわかった。以上により、分画分子量は100000Da(100kDa)以下であることが好ましいと思われる。
【0024】
〔分画ホタテエキスA、及び分画ホタテエキスBの製造〕
得られたホタテエキスを、UF膜(限外ろ過膜)の膜モジュール(旭化成(株)販売、商品名「モジュール形式ACP3013D」、分画分子量15000Da)を用いて膜処理して、分画ホタテエキスA、及び分画ホタテエキスBを製造した。
膜処理は、図2に示すように、1KLコンテナ、UF膜、300Lタンクを配管で接続し、1KLコンテナとUF膜の間に、100メッシュストレナーとポンプを接続し装置を用いた。
膜処理は、まず、1kLコンテナにホタテエキス500kgを投入した。投入後、ポンプで圧力(0.2MPa)をかけながら、ホタテエキスをUF膜に通過させた(流れ(1))。
UF膜を通過した液を300Lタンクに貯めた(流れ(2))。
UF膜を通過しなかった液を、1kLコンテナに戻し(流れ(3))、再び、UF膜で処理するというように、UF膜を通過しなかった液を循環させて膜処理をした。
このように、UF膜を通過しなかった液を循環させた膜処理を約1時間行った後、膜処理を終了させた。
UF膜を通過せずに1kLコンテナに貯まった液を容器に充填し、分画ホタテエキスAを製造した。また、UF膜を通過して300Lタンクに貯まった液を容器に充填し、分画ホタテエキスBを製造した。
上述したように、ホタテエキス中の高分子の分子量分布(図1)が、約100000Da(100kDa)~1500000Da(1500kDa)であり、今回、分画分子量が15000Da(15kDa)のUF膜を使用して膜処理をしたので、分画ホタテエキスAには約100kDa~1500kDaの高分子が濃縮され、分画ホタテエキスBには約100kDa~1500kDaの高分子を除いた成分が入っている。
また、ホタテエキス中の高分子の分子量分布から、ホタテエキスを、高分子を含有する分画と、高分子を含有しない分画に分離するためには、高分子の分子量分布から、使用する膜の分画分子量が100000Da(100kDa)以下の膜を使用すれば良いことが確認された。
【0025】
〔改良ホタテエキスの製造〕
製造により得られた分画ホタテエキスAと分画ホタテエキスBを、表1に示す配合で混合することにより、改良ホタテエキスC、Dを製造した。
【0026】
【表1】
【0027】
〔ホタテエキス、分画ホタテエキス、改良ホタテエキスの外観、濁度〕
ホタテエキス、分画ホタテエキスA、B、改良ホタテエキスC、Dの外観を目視で観察した。また、各サンプルを水で20倍希釈したサンプルについても、外観を目視で観察し、濁りの強さの比較も行った。
さらに、各サンプルを水で20倍希釈したサンプルの濁度を測定した。
具体的には、20倍希釈したサンプルについて、株式会社トミー精工製の吸光度測定装置「BIOmaster XB-10/ENVmaster VIS-20」を使用して、波長λ=660nmにおける吸光度を測定(25℃)し、濁度とした。なお、測定セルは、セル幅は、1cmのものを使用した。
結果を表2、及び図3に示す。なお、図中の10:0が分画分画ホタテエキスA、7:3が改良ホタテエキスC、4:6が改良ホタテエキスD、0:10が分画ホタテエキスBである。
なお、希釈前のサンプルの濁度は、測定上限値を超えていたため測定できなかった。
【0028】
【表2】
【0029】
表2及び図3から、分画ホタテエキスA混合割合が少なくなるにつれ、濁度が低くなった。相関係数R値から、得られた濁度の値は相関係数が高く、直線性があることが確認できた。
また、分画ホタテエキスBは、透明度が高いため、麺つゆ等の透明度が要求される調味料に使用し、透明度の高い調味料を提供することができる。
【0030】
〔ホタテエキス、分画ホタテエキス、改良ホタテエキスの官能評価〕
ホタテエキス、分画ホタテエキスA、B、改良ホタテエキスC、Dについて、表3の評価基準を用いて官能評価を行った。官能評価試験は8名の評価パネラーにより行った。
官能評価するサンプルは、各エキスを水で30倍希釈し、喫食時塩分が0.7になるように食塩を添加して補正をした。
具体的には、表3の評価基準の各評価項目について、ホタテエキス(比較対照)の評価点を3点としたときの強弱を0~5点(0.5刻み)で採点した後、各評価項目での8名の採点の平均点を算出し、その値を官能評価の結果とした。結果を表4、及び図4に示す。
なお、図中のエラーバーは標準偏差を示す。
【0031】
【表3】
【0032】
【表4】
【0033】
表4から、分画ホタテエキスAの混合割合が少なくなるにつれ、香りや先味は強くなり、一方で風味、濃厚感、後味は弱くなることがわかった。
分画ホタテエキスAは、風味、濃厚感、後味が強いものであり、分画ホタテエキスBは、香りや先味が強く、透明度が高いものであることもわかった。
改良ホタテC、及び改良ホタテDは、香り、先味、風味、濃厚感、後味の評価のほとんどが、分画ホタテエキスAと分画ホタテエキスBの間の評価になることがわかった。
【0034】
〔ミネストローネの調製、官能評価試験〕
表5に示す配合でミネストローネを調製した。具体的には、表5の原料の液体50gに、約100℃のお湯300mlを入れて希釈し、比較例1、及び実施例1~4のミネストローネを調製した(7倍希釈)。
【0035】
【表5】
【0036】
調製したミネストローネについて、各エキスの官能評価で使用した表3の評価基準を用いて官能評価を行った。官能評価試験は8名の評価パネラーにより行った。
具体的には、表3の評価基準の各評価項目について、ホタテエキスを使用した比較例1のミネストローネ(比較対照)の評価点を3点としたときの強弱を0~5点(0.5刻み)で採点した後、各評価項目での8名の採点の平均点を算出し、その値を官能評価の結果とした。結果を表6、及び図5に示す。
なお、図中のエラーバーは標準偏差を示す。
【0037】
【表6】
【0038】
表6から、実施例1のミネストローネは、比較例1に比べ、特に濃厚感、後味が強くなることがわかった。
また、実施例2のミネストローネは、香りが強くなることがわかった。
【0039】
〔麺つゆの調製、官能評価試験〕
表7に示す配合で麺つゆを調製した。具体的には、表7の原料の液体50gに、約100℃のお湯300mlを入れて希釈し、比較例2、及び実施例5~8の麺つゆを調製した(7倍希釈)。
【0040】
【表7】
【0041】
調製した麺つゆについて、各エキスの官能評価で使用した表3の評価基準を用いて官能評価を行った。また、麺つゆについては、透明度を目視で観察した。透明度の評価基準は、比較対照の麺つゆよりも透き通っているほど大きい点数とし、濁っているものほど小さい点数とした。官能評価試験は8名の評価パネラーにより行った。
具体的には、表3の評価基準の各評価項目及び上述した透明度について、ホタテエキスを使用した比較例2の麺つゆ(比較対照)の評価点を3点としたときの強弱を0~5点(0.5刻み)で採点した後、各評価項目での8名の採点の平均点を算出し、その値を官能評価の結果とした。結果を表8、及び図6に示す。
なお、図中のエラーバーは標準偏差を示す。
【0042】
【表8】
【0043】
表8から、実施例6の麺つゆは、透明度が高く、香り、及び先味が強いものであることがわかった。
このことから、分画ホタテエキスBは、透明性が求められる麺つゆ等に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の分画ホタテエキスの製造方法は、食品分野で広く使用することができ、特に、調味料として使用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:ホタテエキスが入った容器
2:1KLコンテナ
3:1KLコンテナからUF膜への配管
4:100メッシュのストレーナー
5:ポンプ
6:UF膜
7:UF膜から1KLコンテナへの配管
8:UF膜から1KLコンテナへの配管
9:300Lタンク
10:300Lタンクから充填容器への配管
11:充填容器
12:ホタテ貝エキス及びUF膜未通過物の流れ
13:UF膜未通過物の流れ
14:UF膜通過物の流れ
図1
図2
図3
図4
図5
図6