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特許7572200キーワード抽出装置、キーワード抽出プログラム及び発話生成装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】キーワード抽出装置、キーワード抽出プログラム及び発話生成装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20241016BHJP
   G10L 13/00 20060101ALI20241016BHJP
   H04L 51/02 20220101ALI20241016BHJP
【FI】
G06F16/90 100
G10L13/00 100M
H04L51/02
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020168535
(22)【出願日】2020-10-05
(65)【公開番号】P2022060824
(43)【公開日】2022-04-15
【審査請求日】2023-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】上村 真利奈
(72)【発明者】
【氏名】金子 豊
(72)【発明者】
【氏名】村▲崎▼ 康博
(72)【発明者】
【氏名】星 祐太
(72)【発明者】
【氏名】萩尾 勇太
【審査官】酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-126392(JP,A)
【文献】特開2019-197338(JP,A)
【文献】特開2014-048888(JP,A)
【文献】特開2003-308322(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
G10L 13/00
H04L 51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの性格タイプを、性格判定テストに基づき、嗜好の傾向が異なる複数の性格タイプのいずれかに設定するユーザ性格設定部と、
前記ユーザの前記性格タイプを取得すると、前記性格タイプ毎に複数のキーワードに対する興味度が性格データとして管理されているデータベースから、前記ユーザの前記性格タイプに対応するキーワード毎の興味度を、ロボット興味度として取得するロボット興味度取得部と、
前記ユーザのキーワード毎の興味度を、ユーザ興味度として取得するユーザ興味度取得部と、
キーワード毎に、前記ロボット興味度と前記ユーザ興味度との差分を算出し、前記複数のキーワードの中から、当該差分が小さいキーワードを、共感を与えるキーワードとして抽出し、前記ロボット興味度が前記ユーザ興味度より大きく、かつ、前記差分が大きいキーワードを、新たな気付きを与えるキーワードとして抽出するキーワード抽出部と、を備え、
前記ユーザ興味度取得部は、
番組内のキーワードを取得するキーワード取得部と、
前記ユーザの視線方向を判定する視線方向判定部と、
前記キーワード取得部により前記番組内から同一のキーワードが取得された回数のうち、当該キーワードが取得された際に前記視線方向が前記番組の画面を向いていた回数の割合に基づいて、前記ユーザの当該キーワードに対する興味度を算出する興味度算出部と、を備え、
前記ユーザの前記番組内の各キーワードに対する興味度を算出して、算出した前記ユーザのキーワード毎の興味度を、ユーザ興味度として取得するキーワード抽出装置。
【請求項2】
前記キーワード抽出部は、前記差分が最も0に近いキーワードを、前記共感を与えるキーワードとして抽出する請求項1に記載のキーワード抽出装置。
【請求項3】
前記キーワード抽出部は、前記ロボット興味度が前記ユーザ興味度より大きく、かつ、前記差分の大きさが最大のキーワードを、前記新たな気付きを与えるキーワードとして抽出する請求項1又は請求項2に記載のキーワード抽出装置。
【請求項4】
前記キーワード抽出部は、前記ロボット興味度より前記ユーザ興味度が大きく、かつ、前記差分の大きさが最大のキーワードを、前記ユーザの個性を表すキーワードとして抽出する請求項1から請求項3のいずれかに記載のキーワード抽出装置。
【請求項5】
前記キーワード抽出部は、前記共感を与えるキーワード及び前記新たな気付きを与えるキーワードを、前記複数のキーワードのうちの前記ロボット興味度又は前記ユーザ興味度の少なくともいずれかが所定以上のキーワードの中から抽出する請求項1から請求項4のいずれかに記載のキーワード抽出装置。
【請求項6】
一定期間毎に算出された前記ユーザ興味度を平均して当該ユーザ興味度を更新する興味度更新部を備える請求項1から請求項5のいずれかに記載のキーワード抽出装置。
【請求項7】
前記ユーザ興味度を、前記データベースを管理している管理サーバへ出力するユーザ興味度出力部を備え、
前記ロボット興味度取得部は、前記管理サーバにおいて複数のユーザそれぞれの前記ユーザ興味度が前記性格タイプ毎に統計処理され前記性格データとして管理されている前記データベースから、前記ユーザの前記性格タイプに対応するキーワード毎の興味度を、前記ロボット興味度として取得する請求項1から請求項6のいずれかに記載のキーワード抽出装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のキーワード抽出装置と、
前記キーワード抽出装置により抽出された、前記共感を与えるキーワード及び前記新たな気付きを与えるキーワードを含む複数種類のキーワードに基づいて、互いに異なるロジックによりキーワードの種類毎に別個の発話文を生成する発話生成装置と、を備えるロボットシステム。
【請求項9】
請求項1から請求項7のいずれかに記載のキーワード抽出装置としてコンピュータを機能させるためのキーワード抽出プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットが人との対話に用いるキーワードを抽出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、人と一緒にテレビなどを視聴するロボットが番組の内容に沿った発話をする技術が研究されている。
例えば、特許文献1では、テレビ番組の映像、音声、字幕データからキーワードを抽出し、予め保管してあるテンプレート文と組み合わせることで発話文を生成することにより、番組に関連した発話をするロボットが提案されている。
【0003】
また、特許文献2では、ユーザの顔を認識し、年齢及び性別などのユーザの情報をもとに、各ユーザに応じて表現内容を変化させた動作をするロボットが提案されている。
非特許文献1では、ユング心理学に基づき、ユーザの性格を4つのタイプに分け、性格タイプ別に好みの映像をリコメンドする装置が提案されている。
特許文献3では、テレビを視聴しているユーザの操作を伴わずに、撮影された画像データを分析した反応情報により、ユーザの嗜好を認識してコンテンツを薦める装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-185400号公報
【文献】特開2013-99823号公報
【文献】特開2012-9957号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】上村 真利奈 他,「視聴者の性格タイプ別に映像推薦する手法の提案」,2019年映像情報メディア学会冬季大会,22B-2(2019).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人と対話するコミュニケーションロボットにおいては、ロボットが発話により、ユーザと「共感」すること、及びユーザに「新たな興味や嗜好の気付きを与える」ことが重要である。
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、視聴しているテレビ番組の映像又は字幕データなどからキーワードを抽出してロボットが発話を行うため、発話の内容から、たまたまユーザの「新たな興味や嗜好の気付き」に繋がる可能性もあるが、このような効果を意図したキーワードを適切に抽出することは難しかった。また、ユーザの興味及び嗜好は発話に考慮されていないため、ロボットが発話を通じてユーザの興味又は嗜好に「共感」することは難しかった。
【0008】
また、特許文献2、3及び非特許文献1の技術では、ロボットがユーザの要望に応じた動作をするため、ユーザの要望という気持ちに「共感」することは出来ても、ユーザの要望に対応すること以外の動作を行わないため、ユーザに「新たな興味や嗜好の気付き」を提供することは難しかった。
【0009】
本発明は、ユーザに「共感」及び「新たな興味や嗜好の気付き」を同時に提供できるキーワード抽出装置、キーワード抽出プログラム及び発話生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るキーワード抽出装置は、ユーザの性格タイプを設定するユーザ性格設定部と、前記性格タイプに応じたキーワード毎の興味度を、ロボット興味度として取得するロボット興味度取得部と、前記ユーザのキーワード毎の興味度を、ユーザ興味度として取得するユーザ興味度取得部と、キーワード毎に、前記ロボット興味度と前記ユーザ興味度との差分を算出し、当該差分が特定の範囲にある、共感を与えるキーワード及び新たな気付きを与えるキーワードを含む複数種類のキーワードを抽出するキーワード抽出部と、を備える。
【0011】
前記キーワード抽出部は、前記差分が最も0に近いキーワードを、前記共感を与えるキーワードとして抽出してもよい。
【0012】
前記キーワード抽出部は、前記ロボット興味度が前記ユーザ興味度より大きく、かつ、前記差分の大きさが最大のキーワードを、前記新たな気付きを与えるキーワードとして抽出してもよい。
【0013】
前記キーワード抽出部は、前記ロボット興味度より前記ユーザ興味度が大きく、かつ、前記差分の大きさが最大のキーワードを、前記ユーザの個性を表すキーワードとして抽出してもよい。
【0014】
前記キーワード抽出部は、前記ロボット興味度又は前記ユーザ興味度の少なくともいずれかが所定以上のキーワードを抽出してもよい。
【0015】
前記ユーザ興味度取得部は、番組内のキーワードを取得するキーワード取得部と、前記ユーザの視線方向を判定する視線方向判定部と、前記キーワード取得部により前記番組内から同一のキーワードが取得された回数のうち、当該キーワードが取得された際に前記視線方向が前記番組の画面を向いていた割合に基づいて、当該キーワードに対する前記ユーザ興味度を算出する興味度算出部と、を備えてもよい。
【0016】
前記キーワードを抽出装置は、一定期間毎に算出された前記ユーザ興味度を平均して当該ユーザ興味度を更新する興味度更新部を備えてもよい。
【0017】
前記キーワードを抽出装置は、前記ユーザ興味度を管理サーバへ出力するユーザ興味度出力部を備え、前記ユーザ興味度取得部は、同一の性格タイプに設定された複数のユーザそれぞれに対する前記ユーザ興味度に基づいて更新された、前記性格タイプに応じたキーワード毎の興味度を取得してもよい。
【0018】
本発明に係るロボットシステムは、前記キーワード抽出装置と、前記キーワード抽出装置により抽出された、前記複数種類のキーワードに基づいて、互いに異なるロジックにより発話文を生成する発話生成装置と、を備える。
【0019】
本発明に係るキーワード抽出プログラムは、前記キーワード抽出装置としてコンピュータを機能させるためのものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ロボットがユーザに「共感」及び「新たな興味や嗜好の気付き」を同時に提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態におけるロボットシステムの機能構成を示す図である。
図2】実施形態における性格データを例示する図である。
図3】実施形態におけるユーザ興味度の算出方法を示す図である。
図4】実施形態におけるユーザの興味データの更新方法を示す図である。
図5】実施形態におけるユーザ興味度取得部の動作の流れを例示するフローチャートである。
図6】実施形態における種類毎の興味キーワードの抽出方法を例示する図である。
図7】実施形態における興味キーワードDBに格納されるデータを例示する図である。
図8】実施形態における興味キーワード管理部の動作の流れを例示するフローチャート図である。
図9】実施形態におけるロボットシステムでの性格データの更新及び取得の様子を例示する図である。
図10】実施形態における性格データの更新方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態の一例について説明する。
本実施形態では、人(ユーザ)と一緒にテレビ番組を視聴しているロボットが対話に用いるキーワードを抽出するキーワード抽出装置を提供する。
【0023】
キーワード抽出装置は、ユーザが興味を持ちそうなキーワードをロボットの興味として持たせるため、ユーザの性格データをロボットの興味データとし、一方で、テレビ番組の視聴時にユーザがテレビに視線を向けた頻度をユーザの興味データとする。
そして、キーワード抽出装置は、ユーザの性格データ(=ロボットの興味データ)とユーザの興味データとを比較し、各キーワードの興味度の差から、ロボットの興味キーワードの種類を判別することで、ユーザが対話を通じてロボットと興味を共感できる「興味」キーワードの他、ユーザに新しい興味への気付きを与える「気付き」キーワード、及びユーザの個性を表す「個性」キーワードを抽出する。
【0024】
図1は、本実施形態におけるロボットシステム1の機能構成を示す図である。
ロボットシステム1は、ロボットに組み込まれたキーワード抽出装置10及び発話生成装置20と、性格データ管理サーバ30とを備え、キーワード抽出装置10及び性格データ管理サーバ30は、互いに通信接続されている。
性格データ管理サーバ30には、複数のキーワード抽出装置10が接続されてもよい。
【0025】
キーワード抽出装置10は、一人又は複数のユーザの興味データを管理すると共に、ユーザの性格タイプに応じたロボットの興味データを管理し、発話文を生成するためのキーワードを抽出する。
キーワード抽出処理の詳細は後述する。
【0026】
発話生成装置20は、キーワード抽出装置10により抽出された、共感キーワード、気付きキーワード、及び個性キーワードに基づいて、それぞれ互いに異なるロジックにより発話文を生成する。
なお、発話文の生成には、キーワードの種類毎に用意されたテンプレート、又は機械学習モデルなどを用いた既存の手法を適用できる。
【0027】
性格データ管理サーバ30は、性格タイプ毎に、複数のキーワードに対する興味度を性格データとして、性格データベース(DB)31により管理し、要求に応じてキーワード抽出装置10へ提供する。
また、性格データ管理サーバ30は、性格DB31を更新する性格データ更新部32を備える。性格データ更新部32による更新処理は後述する。
【0028】
ここで、性格タイプは、前述の非特許文献1に示されているユングの心理学をもとに、嗜好の傾向が異なる思考、直観、感情、感覚の4つに分けられる。
【0029】
図2は、本実施形態における性格データを例示する図である。
性格データは、4つの性格タイプ毎に、各キーワードに対して、この性格タイプの人の一般的な興味度がそれぞれ、0~1.0の範囲で設定されている。
【0030】
性格データは、一般的な嗜好の傾向で人をタイプ分けしたものである。人はテレビなどから影響を受けることにより、嗜好が短期間で大きく変化するが、性格タイプ毎の性格データは短期間で大きく変化することは少ない。そこで、本実施形態のキーワード抽出方法は、性格タイプ別のキーワードの興味度をロボットの興味データとして設定しておき、大きく変動するユーザの興味データと比較することで、特徴的なキーワードを抽出する。
【0031】
キーワード抽出装置10は、制御部及び記憶部の他、各種インタフェースを備えた情報処理装置であり、記憶部に格納されたソフトウェア(キーワード抽出プログラム)を制御部が実行することにより、本実施形態の各種機能が実現される。
【0032】
キーワード抽出装置10の制御部は、ユーザ性格設定部11と、ユーザ興味度取得部12と、興味キーワード管理部13と、キーワード出力部14と、興味データ出力部15とを備える。
また、キーワード抽出装置10の記憶部は、興味度データベース(DB)16と、興味キーワードデータベース(DB)17とを備える。
【0033】
ユーザ性格設定部11は、ユーザの性格タイプを設定する。性格タイプは、ユングの心理学に基づいた性格判定テストを行うことで判定できる。
本実施形態では、例えば、ユーザが性格判定テストを予め行い、ユーザ性格設定部11に判定結果が入力され、興味キーワード管理部13に提供される。
【0034】
ユーザ興味度取得部12は、ユーザの各キーワードに対する興味度であるユーザ興味度を取得する機能部であり、キーワード取得部121と、視線方向判定部122と、視聴回数分析部123と、興味度算出部124と、興味度更新部125とを備える。
【0035】
キーワード取得部121は、テレビ番組の映像から、例えば、物体検出及び顕著性推定などの既存の技術を用いて検出された人物、風景、物などの単語であるキーワードを逐次に取得する。また、映像に同期した音声、字幕などからキーワードが抽出されてもよい。
【0036】
視線方向判定部122は、ロボットに設けられたカメラから取得したテレビ番組視聴時のユーザの画像から、ユーザの視線方向を判定する。
具体的には、視線方向判定部122は、ユーザの顔を撮影したカメラ画像から、ユーザの視線を検出し、視線の先がテレビ画面であるか否かを判定する。例えば、小型視線検出センサ及び既存の画像処理技術が利用される。
【0037】
視聴回数分析部123は、キーワード取得部121により取得されたキーワードと、取得された際のユーザの視線方向とに基づいて、テレビ番組にキーワードの映像又はキーワードそのものが現れた時に、ユーザがテレビの方向に視線を向けた回数を蓄積する。
ここで、キーワードが現れた同一のシーン、あるいは、現れた時点を含む所定期間において1回以上視線を向けた場合を1回とカウントすることとする。例えば、興味がなく偶然に視線がテレビ画面に向いた場合には、同じキーワードに対して再度視線が向く可能性は低いため、興味度が高いほど回数は多くなる。
【0038】
興味度算出部124は、視聴したテレビ番組に同一のキーワードが現れた回数と、ユーザがこのキーワードの現れた画面に視線を向けた回数とを用いて、各キーワードのユーザ興味度を算出する。
【0039】
図3は、本実施形態におけるユーザ興味度の算出方法を示す図である。
例えば「街並」というキーワードがテレビ番組から取得された場合に、視聴した番組に街並が映った回数l=10、街並が映った際にユーザがテレビ画面に視線を向けた回数m=5とする。このとき、ユーザのキーワード「街並」に対するユーザ興味度sは、
s=m/l=5/10=0.5
と算出される。
これにより、「街並(0.5)」を含むキーワードとユーザ興味度との組み合わせがユーザの興味データとして得られる。
【0040】
興味度更新部125は、興味度DB16に格納されるユーザの興味データ、すなわち、各キーワードに対するユーザ興味度を随時、例えば1日1回などで定期的に更新する。
【0041】
図4は、本実施形態におけるユーザの興味データの更新方法を示す図である。
例えば、興味度算出部124により、一定期間(例えば、24時間)において街並に対するユーザ興味度がa=0.8と算出されたとする。
このとき、興味度DB16に格納されているユーザ興味度がs=0.6とすると、これまでの更新回数n(=1)を用いて、更新後のユーザ興味度xがこれまでの平均値として、次のように算出される。
x=s+(a-s)/(n+1)=0.6+(0.8-0.6)/2=0.7
【0042】
ここで、更新回数nが大きくなるほど、ユーザ興味度xの変動は小さくなる。そこで、更新回数nが大きくなり過ぎないように、値には上限が設けられてもよい。これにより、ユーザの最近の傾向が反映されたユーザ興味度が算出される。
例えば、現在のユーザ興味度s=0.2、新たなユーザ興味度a=0.8の場合、更新回数n=99では、更新後のユーザ興味度は、x=0.2+(0.8-0.2)/100=0.206と僅かな変化だが、nの上限=4が設定されていると、x=0.2+(0.8-0.2)/5=0.32となり、興味の変化がユーザ興味度に反映される。
【0043】
図5は、本実施形態におけるユーザ興味度取得部12の動作の流れを例示するフローチャートである。
本処理は、24時間など一定期間実行され、各パラメータを初期化して繰り返し実行される。
【0044】
ステップS1において、キーワード取得部121は、テレビ番組からキーワードを取得し、このキーワードの出現回数lに1を加算する。
ステップS2において、視線方向判定部122は、ユーザの視線方向を分析し、キーワードが現れている期間内にユーザがテレビ画面を向いたか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS3に移り、判定がNOの場合、処理はステップS4に移る。
【0045】
ステップS3において、視聴回数分析部123は、取得されたキーワードに対する視聴回数mに1を加算する。
ステップS4において、ユーザ興味度取得部12は、開始から一定期間が経過して集計のタイミングとなったか否かを判定する。この判定がYESの場合、処理はステップS5に移り、判定がNOの場合、処理はステップS1に戻る。
【0046】
ステップS5において、興味度算出部124は、キーワードの出現回数l、及びこのキーワードに対するユーザの視聴回数mに基づいて、期間内のキーワード毎のユーザ興味度を算出する。
ステップS6において、興味度更新部125は、算出されたユーザ興味度に基づいて、興味度DB16に格納されているユーザの興味データを更新する。
【0047】
興味キーワード管理部13は、「共感」、「気付き」、「個性」の種類別の興味キーワードを抽出し管理する機能部であり、ロボット興味度取得部131と、キーワード抽出部132とを備える。
【0048】
ロボット興味度取得部131は、ユーザ性格設定部11からユーザの性格タイプを取得すると、性格データ管理サーバ30の性格DB31から該当の性格タイプに対応する性格データを抽出し、ロボットの興味データとして、キーワードと興味度(ロボット興味度)との組み合わせを記憶する。
【0049】
キーワード抽出部132は、興味度DB16からユーザの興味データを取得し、キーワード毎に、ロボット興味度とユーザ興味度との差分を算出する。そして、キーワード抽出部は、算出した差分が特定の範囲にある、共感キーワード、気付きキーワード、個性キーワードを抽出して興味キーワードDB17に記憶する。
キーワード抽出部132は、興味度更新部125による興味度DB16の更新と同じ頻度で、例えば1日1回、興味キーワードDB17を更新することとしてよい。
【0050】
図6は、本実施形態における種類毎の興味キーワードの抽出方法を例示する図である。
例えば、ロボットのユーザが性格タイプとして「感覚」タイプを設定すると、ロボットの興味データには、「感覚」タイプの性格データがコピーされる。
【0051】
ユーザの番組視聴の状況により、ユーザの興味データが作成されると、キーワード抽出部132は、ロボットの興味データとユーザの興味データとを比較し、両者のキーワード毎の興味度の差分を算出する。
【0052】
ロボット興味度が高くユーザ興味度も高い(興味度の差分が小さい)場合は、ユーザ及びロボットの両者の興味度が高いことから共感キーワードと定義される。
ロボット興味度が高くユーザ興味度が低い(興味度の差分が大きい)キーワードは、ユーザの性格上、一般的に興味があるキーワードのため、今後興味を持ってくれる可能性があることから、気付きキーワードと定義される。
ロボット興味度が低くユーザ興味度が高いキーワードは、個性キーワードと定義される。
【0053】
そこで、キーワード抽出部132は、差分(=ロボット興味度-ユーザ興味度)が最も0に近いキーワードを共感キーワードとして抽出し、興味キーワードDB17に記憶する。
また、キーワード抽出部132は、ロボット興味度がユーザ興味度より大きく、かつ、差分の大きさが最大のキーワードを気付きキーワードとして抽出し、興味キーワードDB17に記憶する。
さらに、キーワード抽出部132は、ロボット興味度よりユーザ興味度が大きく、かつ、差分の大きさが最大のキーワードを、個性キーワードとして抽出し、興味キーワードDB17に記憶する。
【0054】
なお、キーワード抽出部132は、これらの種類別の興味キーワードを、ロボット興味度又はユーザ興味度の少なくともいずれかが所定以上のキーワードの中から抽出してもよい。
また、共感、気付き、個性の各種類について、所定数のキーワードが抽出されてもよい。
【0055】
図7は、本実施形態における興味キーワードDB17に格納されるデータを例示する図である。
興味キーワードDB17には、共感、気付き、個性の各種類について、抽出されたキーワードが格納される。さらに、これらのキーワードに対する抽出時でのロボット興味度、ユーザ興味度、差分が対応付けて格納されてもよい。
【0056】
図8は、本実施形態における興味キーワード管理部13の動作の流れを例示するフローチャート図である。
ステップS11において、ロボット興味度取得部131は、ユーザ性格設定部11で設定されたユーザの性格タイプを取得する。
ステップS12において、ロボット興味度取得部131は、性格DB31から、ユーザの性格タイプに対応する性格データを取得する。
ステップS13において、ロボット興味度取得部131は、取得した性格データを、ロボットの興味データとして設定する。
【0057】
ステップS14において、キーワード抽出部132は、興味度DB16から、ユーザの興味データを取得する。
ステップS15において、キーワード抽出部132は、ロボット興味度とユーザ興味度との差分を算出する。
ステップS16において、キーワード抽出部132は、算出された差分に基づいて、興味キーワードを抽出し、興味キーワードDB17に記憶する。
【0058】
キーワード出力部14は、発話生成装置20からの要求に応じて、あるいは、興味キーワードDB17のデータが変化したときなどをトリガとして、興味キーワードDB17に記憶されているキーワードを、発話生成装置20へ送信し、ロボットにユーザとの対話のための発話を行わせる。
【0059】
興味データ出力部15は、興味度DB16に格納されているユーザの興味データを、ユーザの性格タイプと共に、性格データ管理サーバ30へ出力する。
性格データ管理サーバ30の性格データ更新部32は、複数のロボットそれぞれに設けられたキーワード抽出装置10から、ユーザ毎の興味データを受信し、性格DB31を性格タイプ別に更新する。
【0060】
図9は、本実施形態におけるロボットシステム1での性格データの更新及び取得の様子を例示する図である。
キーワード抽出装置10において取得されるユーザ毎の興味データAは、ユーザ毎の性格タイプBと統合され、性格データ更新用のデータCとして、性格データ管理サーバ30へ、適宜送信される。
【0061】
このとき、ロボットのユーザは複数であってよい。複数のユーザで性格タイプが同じ場合、性格タイプ毎に興味データのレコードが複数設けられてもよいし、興味度が平均された1つのレコードが設けられてもよい。
【0062】
また、他のロボットにおいても同様に、性格データ更新用のデータが性格データ管理サーバ30へ送信される。
性格データ管理サーバ30では、受信した複数の性格データ更新用のデータに基づいて、性格タイプ毎に、各キーワードの興味度を所定の手順で更新する。
更新された性格データは、キーワード抽出装置10から適宜取得される。
【0063】
図10は、本実施形態における性格データの更新方法を示す図である。
性格DB31に格納されている性格データにおいて、ある性格タイプのあるキーワードに対する興味度をc、キーワード抽出装置10から取得した同じ性格タイプのユーザの同じキーワードに対するユーザ興味度をxとすると、これまでに更新した回数をnとを用いて、更新後の興味度yがこれまでの平均値として、次のように算出される。
y=c+(x-c)/(n+1)
【0064】
例えば、思考タイプのユーザがキーワード「海」に対して0.6の興味度を持っていた場合、性格DB31における思考タイプの「海」に対する興味度0.8は、更新回数n=1とすると、
0.8+(0.6-0.8)/2=0.7
に更新される。
なお、性格データ更新部32は、興味度更新部125と同様に、更新回数nに上限を設けてもよい。
【0065】
本実施形態によれば、キーワード抽出装置10は、ユーザの性格タイプに応じたロボット興味度と、ユーザ興味度との差分を算出し、この差分の値に基づいて、共感キーワード、気付きキーワード及び個性キーワードをそれぞれ抽出する。
これにより、キーワード抽出装置10は、抽出したキーワードによりロボットに発話させることで、ユーザに「共感」及び「新たな興味や嗜好の気付き」などを同時に提供できる。
【0066】
具体的には、キーワード抽出装置10は、差分が最も0に近いキーワードを、共感キーワードとして抽出し、ロボット興味度がユーザ興味度より大きく、かつ、差分の大きさが最大のキーワードを、気付きキーワードとして抽出し、ロボット興味度よりユーザ興味度が大きく、かつ、差分の大きさが最大のキーワードを、個性キーワードとして抽出する。
これにより、キーワード抽出部は、最も特徴的な興味キーワードを興味度の差分に基づいて容易に抽出できる。
【0067】
ロボット興味度が低く、ユーザ興味度が高い場合、性格タイプによる傾向とは異なるユーザの個性的なキーワードであるため、発話生成装置20は、このキーワードをもとに発話文を生成することで、ユーザが自身の興味の話をするきっかけを与えることができる。すなわち、ユーザは詳しいが他人はあまり知らない事柄に関して、ロボットからユーザに話を促すような言葉を発することで、ユーザの話したい欲求を満たすことができる。
【0068】
このとき、ロボットは、キーワード抽出装置10により抽出された複数種類のキーワードで、互いに異なるロジックにより発話文を生成することにより、興味キーワードの種類に応じた適した発話文により自然な対話を実現できる。
また、キーワード抽出装置10は、ロボット興味度又はユーザ興味度の少なくともいずれかが所定以上のキーワードを抽出することで、興味を引く可能性の低いキーワードが抽出されることを抑制できる。
【0069】
キーワード抽出装置10は、番組内からキーワードを取得すると共に、ユーザの視線方向を判定することで、番組内でキーワードが現れた回数のうち、視線が画面に向いた割合に基づいてユーザ興味度を算出する。
これにより、キーワード抽出装置10は、ユーザの実際の視聴行動に基づいて、キーワードに対する適切な興味度を算出できる。
【0070】
キーワード抽出装置10は、ユーザ興味度を一定期間毎に算出し、過去に算出された値の平均によってユーザ興味度を更新する。
これにより、キーワード抽出装置10は、一時的な興味の変動に大きく影響されることなく、これまでの傾向を適切にユーザの興味データに反映できる。
【0071】
キーワード抽出装置10がユーザ興味度を性格データ管理サーバ30に送信することにより、性格データ管理サーバ30は、複数のユーザの興味データを収集し、性格タイプ別に適切な性格データを更新できる。また、キーワード抽出装置10は、最新の性格データを用いて、適切なキーワードを抽出できる。
【0072】
これにより、複数のロボットの間で性格データが共有され、性格データの更新が可能となる。性格データ管理サーバ30は、ロボットを使用する多くのユーザの興味データを収集し、性格データを更新し続けることで、性格データに含まれるキーワードの数が多くなる。
この結果、キーワード抽出装置10は、3種類の興味キーワードを抽出する上で、ユーザの興味データにあるキーワードが性格データになく、興味度の差分が算出できない可能性を低減できる。また、多くのユーザの興味データをもとに性格DB31が更新されることで、サンプル数が多いため、性格データの信頼性が向上する。
【0073】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前述した実施形態に限るものではない。また、前述の実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本発明による効果は、実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0074】
前述の実施形態では、キーワード抽出装置10は、ロボットに組み込まれるものとして説明したが、これには限られず、ロボットの外部に配置され、ロボットと有線又は無線にて、あるいはネットワークを介して通信接続されてもよい。
【0075】
前述の実施形態では、ロボットの興味データとして、ユーザの性格タイプに応じた性格データがそのままコピーされたが、これには限られない。ロボットの興味データは、性格データの興味度に所定の重みを掛けたものであってもよい。
例えば、性格データに係数>1を掛けることにより、性格タイプに応じた一般的な興味よりも多くのキーワードに対して高い興味度がロボットの興味データに設定される。これにより、各キーワードは、「個性」よりも「共感」又は「気付き」に分類されやすくなる。
このように、キーワード抽出装置10は、よく共感するロボット、新たな気付きをよく与えるロボットなど、ロボットに個性を与えることができる。
【0076】
前述の実施形態では、性格データ管理サーバ30が性格DB31を保持することとしたが、これには限られない。性格DB31は、予めロボットが記憶し、外部サーバと通信することなく、ロボット単独で動作する構成であってもよい。
【0077】
本実施形態では、主にキーワード抽出装置10の構成と動作について説明したが、本発明はこれに限られず、各構成要素を備え、キーワードを抽出するための方法、又はプログラムとして構成されてもよい。
【0078】
さらに、キーワード抽出装置10の機能を実現するためのプログラムをコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。
【0079】
ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器などのハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROMなどの可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスクなどの記憶装置のことをいう。
【0080】
さらに「コンピュータで読み取り可能な記録媒体」とは、インターネットなどのネットワークや電話回線などの通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時刻の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時刻プログラムを保持しているものも含んでもよい。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1 ロボットシステム
10 キーワード抽出装置
11 ユーザ性格設定部
12 ユーザ興味度取得部
13 興味キーワード管理部
14 キーワード出力部
15 興味データ出力部
16 興味度DB
17 興味キーワードDB
20 発話生成装置
30 性格データ管理サーバ
31 性格DB
32 性格データ更新部
121 キーワード取得部
122 視線方向判定部
123 視聴回数分析部
124 興味度算出部
125 興味度更新部
131 ロボット興味度取得部
132 キーワード抽出部
図1
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