(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】金属および熱可塑性ポリウレタンで作製されたポリマー中間層からなるラミネート
(51)【国際特許分類】
B32B 15/095 20060101AFI20241016BHJP
【FI】
B32B15/095
(21)【出願番号】P 2021514376
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(86)【国際出願番号】 EP2019074259
(87)【国際公開番号】W WO2020053295
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-08-18
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デボワ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ジモン,ヤスミナ
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-533133(JP,A)
【文献】特表2013-519543(JP,A)
【文献】特表2013-518147(JP,A)
【文献】特表2002-540982(JP,A)
【文献】特表2014-522426(JP,A)
【文献】特開2018-062710(JP,A)
【文献】特表2012-512063(JP,A)
【文献】特表2002-517338(JP,A)
【文献】特開平11-012458(JP,A)
【文献】特開2013-237735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0183880(US,A1)
【文献】特表2013-533917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08G 18/00-18/87、71/00-71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層、および少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を含むラミネートであって、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC
2~C
20ポリオールと
を重合させて得ることができ、
前記少なくとも1種の第1の金属が、鋼であ
り、
前記ポリマー組成物(PC)の、ISO527-1:2012による弾性率が800~1400MPaである、ラミネート。
【請求項2】
追加的に、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を含み、前記少なくとも1つの第1の層が、前記少なくとも1つの第2の層に、少なくとも1つの更なる層を介して接合している、請求項1に記載のラミネート。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、-150℃~20℃の範囲内のガラス転移温度(T
G(TPU))を有する、請求項1または2に記載のラミネート。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、各事例において成分(A)、(B)および(C)の質量百分率の合計に対して、5質量%~50質量%の範囲内の成分(A)と、20質量%~80質量%の範囲内の成分(B)と、5質量%~40質量%の範囲内の成分(C)とを重合させて得ることができる、請求項1から3のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項5】
成分(B)が、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネートからなる群から選択される、請求項1から4のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項6】
成分(C)が、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールからなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項7】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、800~1400MPaの範囲内の弾性率を有する、請求項1から6のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項8】
成分(A)が、100~8000g/molの範囲内の数平均分子量(Mn)を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項9】
フィルム積層フラット導体でない、請求項1から8のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項10】
前記少なくとも1つの第1の層が、0.1mm~0.6mmの範囲内の厚さを有し、かつ/または少なくとも1つの更なる層が、0.02mm~1.5mmの範囲内の厚さを有する、請求項1から9のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項11】
前記ポリマー組成物(PC)が、更に、安定剤、染料、帯電防止剤、フィラー油、表面改良剤、乾燥剤、離型助剤、剥離剤、酸化防止剤、光安定剤、PVC安定剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、耐衝撃性改質剤、接着促進剤、カップリング剤および核形成剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載のラミネート。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載のラミネートを製造する方法であって、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する工程であり、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC
2~C
20ポリオールと
を重合させて得ることができる、工程と、
b)少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱する工程と、
c)工程b)からの加熱済み第1のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスして、ラミネートを得る工程と
を含む、方法。
【請求項13】
工程b)が、第1のシートを150℃~350℃の範囲内の温度に加熱することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程b)での第1のシートの加熱が、誘導手段によって行われる、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
工程a)が、押出法によってフィルムを生成することを含む、請求項12から14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層、およびポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を含む、ラミネートに、ならびに本発明のラミネートを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近よく遭遇する課題は、特に航空機建造、自動車製造および船舶建造のための、現在まで使用された材料よりも軽量である新規材料を提供することである。同時に、これらの新規材料は、公知の材料と同じ機械的性質、特に強度、剛性および安定性を有し、またはこれらの機械的性質を改善さえするであろう。この新規材料は、その上、公知の方法、例えば深絞り加工、圧延、曲げ、打ち抜きまたは巻き締めによって形成可能であろう。
【0003】
WO2005/014278は、2つの金属外層間に接着剤ポリマー層を含むラミネートについて記載している。このポリマー層は、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-11、ナイロン-12、ナイロン-4,6、ナイロン-6,10またはナイロン-6,12、およびエチレンと、不飽和カルボン酸および/またはカルボン酸誘導体とのコポリマー、および反応性コポリマーを含む。エチレンと、不飽和カルボン酸および/またはカルボン酸誘導体とのコポリマーは、極性基がグラフトされてもよい。
【0004】
WO2005/014278に記載されているラミネートの特に不利な点は、それらが、多湿環境中での保管後に、不良な引張強さしか有さないことである。更に、該ポリマー層は、変動する水分吸収性を有し、結合性を変動させることに帰着することが多い。
【0005】
米国特許出願公開第2011/0200816号は、2つの金属層、および間に挟まれたポリマー層を含むラミネートについて記載している。該ポリマー層は、例えばナイロン-6/6,6コポリマーを含む。また記載されているのは、ポリオレフィンおよびポリイミド等の多様な他の熱可塑性ポリマーである。米国特許出願公開第2011/0200816号に記載されているラミネートはまた、特に多湿環境中での保管後に、不良な引張強さを呈し、または大気湿度によって使用不可能な点まで破壊されることさえある。
【0006】
独国特許第10 2011 084519は、太陽電池用のシール層について記載しており、これは、第1の外層、中間層および第2の外層を含む。これらの層は、ポリアミド、例えばナイロン-6またはナイロン-6,6を含み得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2005/014278
【文献】米国特許出願公開第2011/0200816号
【文献】独国特許第10 2011 084519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明の目的は、先行技術において記載されているラミネートの不利な点を、たとえあったとしても低減した程度でしか有さない、ラミネート、およびその製造の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層、および少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を含むラミネートであって、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、ラミネートによって達成された。
【0010】
驚くべきことに、本発明のラミネートは、特に良好な弾性率、および良好な剥離特性を有することが見出された。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、以下により詳細に説明される。
【0012】
ラミネート
本発明によれば、ラミネートは、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層、およびポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を含む。
【0013】
本発明との関連で「少なくとも1つの第1の層」により意味されるのは、厳密に1つの第1の層、または2つ以上の第1の層のいずれかである。
【0014】
本発明との関連で「少なくとも1種の第1の金属」により意味されるのは、厳密に1種の第1の金属、または2種以上の第1の金属の混合物のいずれかである。
【0015】
本発明との関連で「少なくとも1つの更なる層」により意味されるのは、厳密に1つの更なる層、または2つ以上の更なる層のいずれかである。
【0016】
ラミネートは、好ましくは、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を追加的に含み、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層を、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層に、ポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を介して接合されている。そのようなラミネートでは、少なくとも1つの第1の層は、そのようにして少なくとも1つの更なる層へと続き、これは、次に少なくとも1つの第2の層へと続く。
【0017】
少なくとも1つの第1の層、少なくとも1つの更なる層および少なくとも1つの第2の層を含むそのようなラミネートは、「サンドイッチ材料」としても知られる。
【0018】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を更に含むラミネートであって、少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの第2の層に、少なくとも1つの更なる層を介して接合されている、ラミネートも提供する。
【0019】
少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属は、少なくとも1つの第2の層の少なくとも1種の第2の金属と、同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属は、好ましくは、少なくとも1つの第2の層の少なくとも1種の第2の金属と同一である。
【0020】
ラミネートは、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層を含む。換言すると、ラミネートは、少なくとも1種の第1の金属で作製された少なくとも1つの第1の層を含む。
【0021】
少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層は、例えば、0.1~0.6mmの範囲内、好ましくは0.15~0.4mmの範囲内、特に好ましくは0.18~0.3mmの範囲内の厚さを有する。
【0022】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの第1の層が0.1~0.6mmの範囲内の厚さを有する、ラミネートも提供する。
【0023】
ラミネートは、好ましくは、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を更に含む。換言すると、ラミネートは、好ましくは、少なくとも1種の第2の金属で作製された少なくとも1つの第2の層を更に含む。
【0024】
少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層は、例えば、0.1~0.6mmの範囲内、好ましくは0.15~0.4mmの範囲内、特に好ましくは0.18~0.3mmの範囲内の厚さを有する。
【0025】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を更に含むラミネートであって、少なくとも1つの第2の層が0.1~0.6mmの範囲内の厚さを有する、ラミネートも提供する。
【0026】
少なくとも1つの第2の層の厚さは、少なくとも1つの第1の層の厚さと同一であっても異なっていてもよい。少なくとも1つの第2の層の厚さは、好ましくは、少なくとも1つの第1の層の厚さと同一である。
【0027】
少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属として好適なのは、ラミネートの製造温度および使用温度にて固体である、当業者に公知の任意の金属および金属合金である。少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属は、好ましくは、鉄、アルミニウム、銅、ニッケルおよびマグネシウム、更にはそれらの合金からなる群から選択される。少なくとも1種の第1の金属は、より好ましくは鉄の合金であり、少なくとも1種の第1の金属は、特に好ましくは鋼である。
【0028】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属が、鉄、アルミニウム、銅、ニッケルおよびマグネシウム、更にはそれらの合金からなる群から選択される、ラミネートも提供する。
【0029】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の第1の金属が、鉄、アルミニウム、銅、ニッケルおよびマグネシウム、更にはそれらの合金からなる群から選択される、ラミネートも提供する。
【0030】
鋼は、当業者には公知である。本発明との関連で、「鋼」は、主な構成要素として鉄を含む合金を意味すると理解される。これは、DIN EN 10020:2000-07による鋼の定義と一致する。
【0031】
少なくとも1種の第1の金属は、コーティングされてもコーティングされなくてもよい。少なくとも1種の第1の金属は、好ましくはコーティングされる。少なくとも1種の第1の金属のための好適なコーティングは、当業者にそれ自体公知であり、例えば、接着促進剤層、耐食層、塗料、または亜鉛もしくはマグネシウムコーティングである。
【0032】
少なくとも1種の第1の金属は、好ましくは亜鉛コーティングされる。「亜鉛コーティングされる」は、少なくとも1種の第1の金属が、更なる金属で、特に亜鉛または亜鉛合金でコーティングされることを意味する。
【0033】
したがって、少なくとも1種の第1の金属が、亜鉛でコーティングされた鋼であるのが特に好ましい。
【0034】
少なくとも1種の第1の金属の亜鉛コーティングは、当業者に公知の方法、例えばホットディップ亜鉛コーティングにより、またはガルバニック亜鉛コーティングにより実施することができる。
【0035】
少なくとも1種の第1の金属が亜鉛コーティングされる場合、それは、更なるコーティング、例えば接着促進剤層および/または塗料を更に含んでもよい。これは当業者には公知である。
【0036】
少なくとも1種の第1の金属のコーティングは、当業者に公知の任意の方法で実施されてもよく、例えばコーティングは、水溶液または分散液から行われてもよい。
【0037】
少なくとも1つの第1の層の少なくとも1種の第1の金属について上に記載した説明および優先傾向は、少なくとも1つの第2の層の少なくとも1種の第2の金属に相応して当てはまる。
【0038】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を更に含むラミネートであって、少なくとも1つの第2の層の少なくとも1種の第2の金属が鉄、アルミニウム、銅、ニッケルおよびマグネシウム、更にはそれらの合金からなる群から選択される、ラミネートも提供する。
【0039】
ラミネートは、ポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層を含む。これが意味するのは、換言すると、少なくとも1つの更なる層がポリマー組成物(PC)からなることである。
【0040】
ポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層は、例えば0.02~1.5mmの範囲内、好ましくは0.05~1mmの範囲内、特に好ましくは0.1~0.5mmの範囲内の厚さを有する。
【0041】
したがって、本発明はまた、少なくとも1つの更なる層が0.02~1.5mmの範囲内の厚さを有する、ラミネートも提供する。
【0042】
本発明はまた、少なくとも1つの第1の層が0.1mm~0.6mmの範囲内の厚さを有し、かつ/または少なくとも1つの更なる層が0.02mm~1.5mmの範囲内の厚さを有する、ラミネートも更に提供する。
【0043】
ポリマー組成物(PC)
本発明によれば、ポリマー組成物(PC)は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む。
【0044】
本発明との関連で「少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)」により意味されるのは、厳密に1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、または2種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の混合物(ブレンド)のいずれかである。
【0045】
加えて、ポリマー組成物(PC)は、更に、少なくとも1種の更なるポリマーを含んでもよい。
【0046】
本発明との関連で「少なくとも1種の更なるポリマー」により意味されるのは、厳密に1種の更なるポリマー、または2種以上の更なるポリマーの混合物(ブレンド)のいずれかである。
【0047】
少なくとも1種の更なるポリマーとして好適なポリマーには、当業者に公知の任意の更なるポリマーが挙げられる。少なくとも1種の更なるポリマーが、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)とは異なることが明らかとなる。
【0048】
少なくとも1種の更なるポリマーは、好ましくは、ポリエチレン、ならびにエチレン、アクリル酸、無水マレイン酸、イソブチレン、ブテン、プロピレン、オクテン、アクリ酸アルキルおよびメタクリル酸アルキルからなる群から選択される少なくとも2種のモノマーのコポリマーからなる群から選択される。
【0049】
したがって、本発明はまた、ポリマー組成物(PC)が、ポリエチレン、ならびにエチレン、イソブチレン、ブテン、プロピレン、オクテン、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、アクリル酸および無水マレイン酸からなる群から選択される少なくとも2種のモノマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種の更なるポリマーを追加的に含む、ラミネートも提供する。
【0050】
アクリル酸アルキルは、当業者には公知であり、更には「アクリル酸アルキルエステル」とも称される。アクリル酸アルキルは、アクリル酸の、アルキルアルコールとの反応において形成される。アクリル酸アルキルとして本発明により好ましいのは、アクリル酸n-ブチルである。
【0051】
メタクリル酸アルキルは、同様に当業者には公知であり、更には「メタクリル酸アルキルエステル」とも称される。メタクリル酸アルキルは、例えば、メタクリル酸の、アルキルアルコールとの反応により得ることができる。メタクリル酸アルキルはまた、例えば置換されていてもよい。置換されたメタクリル酸アルキルの一例は、メタクリル酸2,3-エポキシプロピルである。メタクリル酸2,3-エポキシプロピルはまた、「メタクリル酸グリシジル」としても知られる。好ましくは本発明によれば、メタクリル酸アルキルは、メタクリル酸メチルおよびメタクリル酸2,3-エポキシプロピルからなる群から選択される。
【0052】
加えて、ポリマー組成物(PC)は、少なくとも1種のフィラーを追加的に含んでもよい。
【0053】
本発明との関連で「少なくとも1種のフィラー」により意味されるのは、厳密に1種のフィラー、或いは2種以上のフィラーの混合物のいずれかである。
【0054】
好適なフィラーには、当業者に公知のすべてのフィラーが挙げられ、成分(A)(B)および(C)ならびに任意でポリマー組成物(PC)中の少なくとも1種の更なるポリマーと混合され得る。
【0055】
少なくとも1種のフィラーが、無機フィラー、有機フィラーおよび天然のフィラーからなる群から選択されるのが好ましい。
【0056】
少なくとも1種のフィラーは、典型的には、微粒子である。例えば、少なくとも1種のフィラーは、例えば、繊維質の材料であってもよく、または球体の形態をとってもよい。少なくとも1種のフィラーは、例えば、1~15の範囲内の、好ましくは1~10の範囲内の、特に好ましくは1~5の範囲内のアスペクト比を有する。本発明との関連で「アスペクト比」により意味されるのは、少なくとも1種のフィラーの粒子の最大寸法の、少なくとも1種のフィラーの粒子の最小寸法に対する比である。
【0057】
本発明との関連で、「繊維材料」は、繊維、例えば個々の繊維、繊維束(粗紡)、不織布、レイドスクリム、織布または編布を含むすべての材料を意味すると理解される。
【0058】
したがって、例えば、少なくとも1種のフィラーは、珪灰石、タルク、ホウ素繊維材料、ガラス繊維材料、炭素繊維材料、シリカ繊維材料、セラミック繊維材料、玄武岩繊維材料、金属繊維材料、アラミド繊維材料、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維材料、ポリエステル繊維材料、ナイロン繊維材料、ポリエチレン繊維材料、木材繊維材料、亜麻繊維材料、大麻繊維材料、ココナツ繊維材料およびサイザル繊維材料からなる群から選択される。
【0059】
少なくとも1種のフィラーが、ガラス繊維材料、炭素繊維材料、アラミド繊維材料、ポリ(p-フェニレン-2,6-ベンゾビスオキサゾール)繊維材料、ホウ素繊維材料、金属繊維材料およびチタン酸カリウム繊維材料からなる群から選択されるのがとりわけ好ましい。少なくとも1種のフィラーがガラス繊維材料であるのが特に好ましい。
【0060】
ポリマー組成物(PC)は、好ましくはフィラーを一切含まない。
【0061】
ポリマー組成物(PC)は、例えば、各事例において少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の、少なくとも1種の更なるポリマーの、および任意の少なくとも1種のフィラーの質量百分率の合計に対して、好ましくはポリマー組成物(PC)の総質量に対して、0質量%~50質量%の範囲内、好ましくは5質量%~50質量%の範囲内、特に好ましくは10質量%~30質量%の範囲内の少なくとも1種の更なるポリマーを含む。
【0062】
ポリマー組成物(PC)は、例えば、各事例において少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の、少なくとも1種のフィラーの、および任意の少なくとも1種の更なるポリマーの質量百分率の合計に対して、好ましくはポリマー組成物(PC)の総質量に対して、0.1質量%~70質量%の範囲内の少なくとも1種のフィラー、好ましくは0.5%~60%の範囲内、特に好ましくは1%~50%の範囲内の少なくとも1種のフィラーを含む。
【0063】
任意の少なくとも1種の更なるポリマーおよび任意の少なくとも1種のフィラーの、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の質量百分率の合計は、典型的には100質量%である。
【0064】
加えて、ポリマー組成物(PC)は、当業者に公知の添加剤を含んでもよい。ポリマー組成物(PC)中に存在し得る添加剤は、例えば、安定剤、染料、帯電防止剤、フィラー油、表面改良剤、乾燥剤、離型助剤、剥離剤、酸化防止剤、光安定剤、PVC安定剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、耐衝撃性改質剤、接着促進剤、カップリング剤および核形成助剤からなる群から選択される。
【0065】
したがって、本発明はまた、ポリマー組成物(PC)が、安定剤、染料、帯電防止剤、フィラー油、表面改良剤、乾燥剤、離型助剤、剥離剤、酸化防止剤、光安定剤、PVC安定剤、滑剤、難燃剤、発泡剤、耐衝撃性改質剤、接着促進剤、カップリング剤および核形成助剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を追加的に含む、ラミネートを提供する。
【0066】
これらの添加剤は、当業者にはそれ自体公知である。カップリング剤はまた、「架橋剤」としても知られる。本発明との関連で、「接着促進剤」は、少なくとも1つの更なる層のポリマー組成物(PC)の、少なくとも1つの第1の層への、かつ任意に少なくとも1種の第2の層への、接着力を更に改善させる添加剤を意味すると理解される。
【0067】
ポリマー組成物(PC)が添加剤を追加的に含むとき、少なくとも1種の更なるポリマーの、および少なくとも1種のフィラーの、添加剤の、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の質量百分率の合計は、典型的には100質量%である。
【0068】
ポリマー組成物(PC)は、典型的には、ISO527-1:2012による決定で、800~1400MPaの範囲内、好ましくは900~1350MPaの範囲内、特に好ましくは1000~1300MPaの範囲内の弾性率を有する。
【0069】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)
本発明によれば、ポリマー組成物(PC)は、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタンを含む。
【0070】
例えば、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、各事例において成分(A)、(B)および(C)の質量百分率の合計に対して、5質量%~50質量%の範囲内の成分(A)と、20質量%~80質量%の範囲内の成分(B)と、5質量%~40質量%の範囲内の成分(C)とを重合させて得ることができる。
【0071】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、好ましくは、各事例において成分(A)、(B)および(C)の質量百分率の合計に対して、10質量%~40質量%の範囲内の成分(A)と、40質量%~70質量%の範囲内の成分(B)と、8質量%~30質量%の範囲内の成分(C)とを重合させて得ることができる。
【0072】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、より好ましくは、各事例において成分(A)、(B)および(C)の質量百分率の合計に対して、14質量%~35質量%の範囲内の成分(A)と、50質量%~65質量%の範囲内の成分(B)と、13質量%~24質量%の範囲内の成分(C)とを重合させて得ることができる。
【0073】
したがって、本発明はまた、熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、各事例において成分(A)、(B)および(C)の質量百分率の合計に対して、5質量%~50質量%の範囲内の成分(A)と、20質量%~80質量%の範囲内の成分(B)と、5質量%~40質量%の範囲内の成分(C)とを重合させて得ることができる、ラミネートも提供する。
【0074】
成分(A)、(B)および(C)の質量百分率が、成分(A)、(B)および(C)の重合前の質量百分率に関連することが明らかとなる。重合中、質量百分率はおそらくは変化し得る。これは、当業者にそれ自体公知である。
【0075】
成分(A)、(B)および(C)は、更に以下に詳細に説明される。
【0076】
本発明との関連で「少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)」により意味されるのは、厳密に1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)、または2種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の混合物(ブレンド)のいずれかである。
【0077】
ポリマー組成物(PC)が2種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含む場合、2種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の混合物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)についてこの後記載される性質を満たす。
【0078】
換言すると、この事例では、2種以上の熱可塑性ポリウレタン(TPU)のブレンドは、この後記載される性質を有する。これは、この事例で、ブレンド中に存在する個々の熱可塑性ポリウレタン(TPU)がまた、該ブレンドがこれらの性質を有する場合、以下の記載とは相違する性質も有し得ることを意味する。
【0079】
本発明によれば、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、成分(A)と(B)と(C)とを重合させて得ることができる。成分(A)は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールである。したがって、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)はまた、ポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)とも称される。
【0080】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも1種のポリエーテル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)である、ラミネートも提供する。
【0081】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の調製のための成分として、ポリエステルが使用されないことが好ましい。重合においてエステル結合を形成する成分が使用されないことが、特に好ましい。
【0082】
したがって、本発明はまた、重合においてエステル結合を形成する成分が、成分(A)と(B)と(C)との重合において使用されない、ラミネートも提供する。
【0083】
ポリエステル、および/または重合においてエステル結合を形成する成分を用いて調製される熱可塑性ポリウレタン(TPU)はまた、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)とも称される。少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、好ましくはポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)ではない。
【0084】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、ポリエステル系熱可塑性ポリウレタン(TPU)ではない、ラミネートも提供する。
【0085】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の調製のための成分(A)と(B)と(C)との重合では、連鎖移動剤(D)、触媒(E)および添加剤(F)からなる群から選択される少なくとも1種の更なる成分を使用することが追加的に可能である。
【0086】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、成分(A)、(B)および(C)と、連鎖移動剤(D)、触媒(E)および添加剤(F)からなる群から選択される少なくとも1種の更なる成分とを重合させて得ることができる、ラミネートも提供する。
【0087】
好適な連鎖移動剤(D)は、当業者にそれ自体公知である。
【0088】
本発明の文脈における「連鎖移動剤」は、イソシアネートに向けて反応性である厳密に1つの基を有する化合物を意味すると理解される。そのような連鎖移動剤は、単官能性アルコール、多官能性アミンおよび単官能性ポリオールである。好ましい連鎖移動剤は、メチルアミンである。
【0089】
例えば、連鎖移動剤(D)は、30g/mol~500g/molの範囲内の分子量を有する。
【0090】
連鎖移動剤(D)は、成分(A)、成分(C)および成分(D)の質量百分率の合計に対して、0質量%~5質量%の範囲内、好ましくは0.1質量%~1質量%の範囲内の量で好ましくは使用される。
【0091】
好適な触媒(E)は、成分(B)のイソシアネート基(NCO基)と、成分(A)および(C)のヒドロキシル基との間の反応を触媒する、当業者に公知の化合物である。例えば、触媒(E)は、第三級アミンおよび有機金属化合物からなる群から選択される。
【0092】
好適な第三級アミンは、当業者には公知であり、例えば、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、N-メチルモルホリン、N,N-ジメチルピペラジン、2-(ジメチルアミノエチル)エタノールおよびジアザビシクロ[2.2.2]オクタンからなる群から選択される。
【0093】
好適な有機金属化合物は、例えば、チタン酸エステル、アセチルアセトン酸鉄(III)、二酢酸スズ、ジオクタン酸スズ、ジラウリン酸スズ、二酢酸ジブチルスズおよびジラウリン酸ジブチルスズからなる群から選択される。
【0094】
触媒(E)は、典型的には、成分(A)および(C)の100質量%に対して、0.0001質量%~0.1質量%の量で使用される。
【0095】
好適な添加剤(F)は、例えば、加水分解安定剤および難燃剤である。
【0096】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。例えば、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、反応押出法、ベルト法、「ワンショット」法またはプレポリマー法等の連続的方法で調製される。これらの方法は、当業者にはそれ自体公知である。
【0097】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、典型的には、溶融温度(TM(TPU))を有する。少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の溶融温度(TM(TPU))は、ISO11357-3:2014による決定で、例えば、140~240℃の範囲内、好ましくは150~230℃の範囲内、特に好ましくは170~220℃の範囲内である。
【0098】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、140~240℃の範囲内の溶融温度(TM(TPU))を有する、ラミネートも提供する。
【0099】
ISO11357-3:2014による溶融温度(TM(TPU))の決定について、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、典型的には、ペレット化された形態において使用される。その事例における少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)のペレットは、典型的には、1mm~10mmの範囲内のサイズを有する。
【0100】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、典型的には、ガラス転移温度(TG(TPU))を有する。ガラス転移温度(TG(TPU))は、ISO11357-3:2014による決定で、例えば、-150~20℃の範囲内、好ましくは-80~0℃の範囲内、特に好ましくは-60~-20℃の範囲内である。
【0101】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、-150~20℃の範囲内にあるガラス転移温度(TG(TPU))を有する、ラミネートも提供する。
【0102】
本発明との関連で、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)のガラス転移温度(TG(TPU))は、ISO11357-2:2014に従って、乾燥形態にある少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)のガラス転移温度(TG(TPU))に対するものである。
【0103】
本発明との関連で、「乾燥」は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)の総質量に対して、1質量%未満、好ましくは0.5質量%未満、特に好ましくは0.1質量%未満の水を含むことを意味する。より好ましくは、「乾燥」は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、水を一切含まないことを意味し、最も好ましくは少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、溶媒を一切含まないことを意味する。
【0104】
少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、DIN EN ISO527-1:2012による決定で、例えば、800~1400MPaの範囲内、好ましくは900~1350MPaの範囲内、より好ましくは1000~1300MPaの範囲内の弾性率を有する。
【0105】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、800~1400MPaの範囲内の弾性率を有する、ラミネートも提供する。
【0106】
成分(A)
本発明によれば、成分(A)は、少なくとも1種のポリエーテルポリオールである。
【0107】
本発明との関連で、用語「成分(A)」と「少なくとも1種のポリエーテルポリオール」とは同義的に用いられ、したがって同じ意味を有する。
【0108】
本発明との関連で「少なくとも1種のポリエーテルポリオール」により意味されるのは、厳密に1種のポリエーテルポリオール、または2種以上のポリエーテルポリオールの混合物のいずれかである。
【0109】
本発明の脈絡における「ポリエーテルポリオール」は、2つ以上のアルコール基(ヒドロキシル基、OH基)を有するポリエーテルを意味すると理解される。好ましいポリエーテルポリオールは、ポリエーテルジオールである。「ポリエーテルジオール」は、厳密に2つのアルコール基(OH基、ヒドロキシル基)を有するポリエーテルを意味すると理解される。ポリエーテルポリオールは、当業者にはそれ自体公知である。
【0110】
好ましいポリエーテルポリオールは、触媒として、少なくとも1種の出発分子の添加と共に、例えば、アルキレンオキシドの、アルカリ金属水酸化物、例えば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、またはアルカリ金属アルコキシド、例えばナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドもしくはカリウムエトキシドもしくはカリウムイソプロポキシドとのアニオン性重合により得ることができ、出発分子は、2~3つの、好ましくは2つの反応性水素原子を含む。加えて、ポリエーテルポリオールは、アルキル基中に2~4個の炭素原子を有するアルキレンオキシドの触媒重合により、かつ触媒としてルイス酸を使用して得ることができる。
【0111】
好ましいアルキレンオキシドは、例えば、テトラヒドロフラン、1,3-プロピレンオキシド、エチレンオキシドおよび1,2-プロピレンオキシドからなる群から選択される。特に好ましいのは、テトラヒドロフラン、エチレンオキシドおよび1,2-プロピレンオキシドである。最も好ましいのは、テトラヒドロフランである。
【0112】
したがって、好ましくは本発明によれば、成分(A)は、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレンオキシドおよびポリ-1,2-プロピレンオキシドからなる群から選択される。好ましくは本発明によれば、成分(A)はポリテトラヒドロフランである。
【0113】
好ましい出発分子は、当業者にはそれ自体公知である。例えば、出発分子は、水、エタンジオール、プロパン-1,2-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ジエチレングリコール、ヘキサン-1,6-ジオールおよび2-メチルペンタン-1,5-ジオールからなる群から選択される。
【0114】
成分(A)は、好ましくは直鎖状であり、例えば100~8000g/molの範囲内、好ましくは200~7000g/molの範囲内、より好ましくは600~6000g/molの範囲内の数平均分子量(Mw)を有する。
【0115】
したがって、本発明はまた、成分(A)が100~8000g/molの範囲内の範囲内の数平均分子量(Mn)を有する、ラミネートも提供する。
【0116】
成分(B)
本発明によれば、成分(B)は、少なくとも1種のポリイソシアネートである。
【0117】
本発明との関連で、用語「成分(B)」と「少なくとも1種のポリイソシアネート」とは同義的に用いられ、したがって同じ意味を有する。
【0118】
本発明との関連で「少なくとも1種のポリイソシアネート」により意味されるのは、厳密に1種のポリイソシアネート、または2種以上のポリイソシアネートの混合物のいずれかである。
【0119】
本発明との関連で、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含む化合物を意味すると理解される。少なくとも1種のポリイソシアネートは、好ましくは有機ポリイソシアネートである。更に好ましくは、少なくとも1種のポリイソシアネートは、少なくとも1種のジイソシアネートである。
【0120】
したがって、成分(B)は、好ましくは、少なくとも1種の有機ジイソシアネートである。本発明との関連で、「有機ジイソシアネート」は、脂肪族、脂環式、芳香脂肪族および/または芳香族ジイソシアネートを意味すると理解される。
【0121】
例えば、成分(B)は、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘプタメチレンジイソシアネート、オクタメチレンジイソシアネート、2-メチルペンタメチレン1,5-ジイソシアネート、2-エチルブチレン1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート、IPDI)、1,4-および/または1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、シクロヘキサン1,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,4-ジイソシアネート、1-メチルシクロヘキサン2,6-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン2,2’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネート(2,2’-MDI)、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネート(2,4’-MDI)、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート(4,4’-MDI)、ナフチレン1,5-ジイソシアネート(NDI)、トリレン2,4-ジイソシアネート(2,4-TDI)、トリレン2,6-ジイソシアネート(2,6TDI)、3,3’-ジメチルジフェニルジイソシアネート、ジフェニルエタン1,2-ジイソシアネートおよびフェニレンジイソシアネートからなる群から選択される。
【0122】
より好ましくは、成分(B)は、ジフェニルメチレン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネートからなる群から選択される。
【0123】
したがって、本発明はまた、成分(B)が、ジフェニルメタン4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン2,4’-ジイソシアネートおよびジフェニルメタン2,2’-ジイソシアネートからなる群から選択される、ラミネートも提供する。
【0124】
成分(C)
成分(C)は、少なくとも1種のC2~C20ポリオールである。
【0125】
本発明との関連で、用語「成分(C)」と「少なくとも1種のC2~C20ポリオール」とは同義的に用いられ、したがって同じ意味を有する。
【0126】
本発明との関連で「少なくとも1種のC2~C20ポリオール」により意味されるのは、厳密に1種のC2~C20ポリオール、または2種以上のC2~C20ポリオールの混合物のいずれかである。
【0127】
本発明との関連で、「C2~C20ポリオール」は、2~20個の炭素原子および少なくとも2つのアルコール基 (ヒドロキシル基、OH基)を有する化合物を意味すると理解される。成分(C)は、2~20個の炭素原子および2つ以上のアルコール基 (OH基、ヒドロキシル基)を有する、脂肪族、芳香脂肪族、芳香族および/または脂環式化合物であってもよい。成分(C)は、好ましくは、厳密に2つのヒドロキシル基を有する。
【0128】
例えば、成分(C)は、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、3~8個の炭素原子を有するジアルキレングリコール、3~8個の炭素原子を有するトリアルキレングリコール、および3~8個の炭素原子を有するテトラアルキレングリコールからなる群から選択される。
【0129】
より好ましくは、成分(C)は、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールからなる群から選択される。
【0130】
したがって、本発明はまた、成分(C)が、エチレングリコール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオールおよびブタン-1,4-ジオールからなる群から選択される、ラミネートも提供する。
【0131】
製造
本発明のラミネートは、当業者に公知の任意の方法により製造することができる。ラミネートが連続的方法において製造されるのが好ましい。
【0132】
本発明のラミネートは、好ましくは、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する工程であり、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、工程と、
b)少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱する工程と、
c)工程b)からの加熱済み第1のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスして、ラミネートを得る工程と
を含む、方法において製造される。
【0133】
したがって、本発明はまた、本発明のラミネートを製造する方法であって、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する工程であり、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、工程と、
b)少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱する工程と、
c)工程b)からの加熱済み第1のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスして、ラミネートを得る工程と
を含む、方法も提供する。
【0134】
本発明のラミネートのポリマー組成物(PC)について上に記載した説明および優先傾向は、本発明の方法におけるポリマー組成物(PC)に相応して当てはまる。
【0135】
ラミネートの少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)についての説明および優先傾向は、本方法の少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)に同様に相応して当てはまる。
【0136】
工程a)は、ポリマー組成物(PC)のフィルムを生成することを含む。工程a)で生成されたフィルムは、ポリマー組成物(PC)からなる。ポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する方法は、当業者にはそれ自体公知である。工程a)は、好ましくは、押出方法によってフィルムを生成することを含む。
【0137】
したがって、本発明はまた、フィルムが工程a)で押出方法によって生成される、方法を提供する。
【0138】
ポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する好適な押出方法は、当業者には公知であり、例えば鋳造法、カレンダー法、吹出法またはマルチ吹出法が挙げられる。
【0139】
工程a)で生成されたポリマー組成物のフィルムは、任意の所望の厚さを有してもよい。工程a)で生成されたポリマー組成物(PC)のフィルムは、典型的には、製造されることになるラミネートの少なくとも1つの更なる層よりも1%~20%大きい範囲内、好ましくは製造されることになるラミネートの少なくとも1つの更なる層よりも2%~15%大きい範囲内、特に好ましくは製造されることになるラミネートの少なくとも1つの更なる層よりも4%~10%大きい範囲内の厚さを有する。
【0140】
工程b)は、少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱することを含む。第1のシートは、少なくとも1種の第1の金属で作製される。ラミネート中に存在する少なくとも1種の第1の金属について上に記載した詳細および優先傾向は、少なくとも1種の第1の金属に相応して当てはまる。第1のシートの加熱は、当業者に公知の任意の方法によって行うことができる。工程b)は、好ましくは、誘導手段によって第1のシートを加熱することを含む。
【0141】
したがって、本発明はまた、第1のシートが工程b)で誘導手段によって加熱される、方法も提供する。
【0142】
工程b)は、第1のシートを任意の所望の温度に加熱することを含んでもよい。工程b)は、好ましくは、第1のシートを、ポリマー組成物(PC)の溶融温度(TM(PC))超~分解温度未満の温度に加熱することを含む。工程b)は、好ましくは、第1のシートを、150~350℃の範囲内、より好ましくは180~280℃の範囲内、特に好ましくは200~220℃の範囲内の温度に加熱することを含む。
【0143】
したがって、本発明はまた、工程b)が第1のシートを150℃~350℃の範囲内の温度に加熱することを含む、方法も提供する。
【0144】
工程c)は、工程b)からの加熱済み第1のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスしてラミネートを得ることを含む。工程c)は、該フィルムを、第1のシートに接合する。工程c)は、フィルムの厚さを低減することができる。
【0145】
工程b)からの加熱済み第1のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共に工程c)でプレスする方法は、当業者にはそれ自体公知である。
【0146】
工程b)とc)とは、同時に実施されても連続して実施されてもよい。工程b)とc)とが同時に実施されるのが好ましい。その事例では、第1のシートは、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスされている間、加熱される。
【0147】
工程c)で得られたラミネートは、典型的には冷却される。冷却は、当業者に公知の任意の方法によって、例えば圧縮空気をラミネート上に吹出すことによって、行うことができる。ラミネートは、好ましくは、プレス圧力を維持する間、冷却される。
【0148】
得られたラミネート中、加熱済み第1のシートは、少なくとも1種の第1の金属の少なくとも1つの第1の層であり、フィルムは、ポリマー組成物(PC)の少なくとも1つの更なる層である。
【0149】
ラミネートが少なくとも1種の第2の層を含むことになる場合、少なくとも1種の第2の金属の第2のシートを加熱することを含む、追加の工程b1)が実施される。工程b)において第1のシートの加熱について上に記載した説明および優先傾向は、工程b1)における第2のシートの加熱に相応して当てはまる。
【0150】
次いで、工程c)は、加熱済み第1のシートを、工程b1)からの加熱済み第2のシートと共にプレスすることを含み、同時に、工程a)で生成されたフィルムは、その2つのシートの間に配置される。
【0151】
本発明のラミネートを製造する方法は、次いで、典型的には、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する工程であり、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、工程と、
b)少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱する工程と、
b1)少なくとも1種の第2の金属の第2のシートを加熱する工程と、
c)工程a)で生成されたフィルムを、工程b)で加熱された第1のシートと工程b1)で加熱された第2のシートとの間に位置させて、工程b)で加熱された第1のシートおよび工程b1)で加熱された第2のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスして、ラミネートを得る工程と
を含む。
【0152】
したがって、本発明はまた、少なくとも1種の第2の金属の少なくとも1つの第2の層を追加的に含み、少なくとも1つの第1の層が、少なくとも1つの第2の層に、少なくとも1つの更なる層を介して接合されている、本発明のラミネートを製造する方法であって、
a)少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)を含むポリマー組成物(PC)のフィルムを生成する工程であり、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン(TPU)が、少なくとも以下の成分:
(A)少なくとも1種のポリエーテルポリオールと、
(B)少なくとも1種のポリイソシアネートと、
(C)少なくとも1種のC2~C20ポリオールと
を重合させて得ることができる、工程と、
b)少なくとも1種の第1の金属の第1のシートを加熱する工程と、
b1)少なくとも1種の第2の金属の第2のシートを加熱する工程と、
c)工程a)で生成されたフィルムを、工程b)で加熱された第1のシートと工程b1)で加熱された第2のシートとの間に位置させて、工程b)で加熱された第1のシートおよび工程b1)で加熱された第2のシートを、工程a)で生成されたフィルムと共にプレスして、ラミネートを得る工程と
を含む、方法も提供する。
【0153】
ラミネート中に存在する少なくとも1つの第2の層の任意の少なくとも1種の第2の金属について上に記載した説明および優先傾向は、本発明の方法における第2のシートの少なくとも1種の第2の金属に相応して当てはまる。
【0154】
第1のシートおよびその第1のシートの加熱について上に記載した説明および優先傾向は、第2のシートおよびその第2のシートの加熱に相応して当てはまる。
【0155】
工程c)について上に記載した説明および優先傾向は、第2のシートが更に位置される工程c)に同様に相応して当てはまる。
【0156】
本発明は、以下に、実施例を参照し、それに限定されることなく、より詳細に説明される。
【実施例】
【0157】
以下の成分を使用した:
熱可塑性ポリウレタン
TPU1:Elastollan 1174 D(熱可塑性ポリウレタン、BASF SE製、MDI/ポリエーテロールコポリマー)
TPU2:Elastollan 1283 D11(熱可塑性ポリウレタン、BASF SE製、MDI/ポリエーテロールコポリマー)
TPU3:Elastollan C74 D(熱可塑性ポリウレタン、BASF SE製、MDI/ポリエステロールコポリマー)
第1および第2の金属:
鋼
【0158】
ラミネートの製造
表1に指定した量の表1に指定したポリマーを、CTW100押出機を備えたHaake PolyLab QCを用いて230℃にて化合して、ポリマー組成物を得、幅100mmのスロットフィルムダイを通して押出した。得られたストランドを、幅20cmの水冷ロールの手段によって加工して、少なくとも幅5mmおよび厚さ420μmのフィルムを形成し、巻き上げた。表1に指定する量は、すべて質量百分率である。
【0159】
ポリマー組成物のフィルム、ならびに鋼の第1のシートおよび第2のシートを、80℃および圧力<5ミリバールにて7日間乾燥させ、その後、ラミネートを製造した。
【0160】
鋼の第1のシートおよび鋼の第2のシートを機器中に挿入してラミネートを製造した。ポリマー組成物のフィルムを第1のシートと第2のシートとの間に置いた。シートを、油圧プレスを用いて250℃および30バールにて60秒間プレスした。
【0161】
冷却のために、ラミネートを熱いうちにプレスから取り出し、鋼シート(40×40mm、厚さ5mm)で覆った。冷却後、ラミネートを、空気下で相対湿度<1%で保管した。試験片を、DIN EN ISO11339に従って、Zwick試験機(空気圧クランプジョーを備えたZwicki BT1-FR5.0TN)中、測定速度200mm/分、試験片の厚さ0.85~0.9mmで測定した。100mmの測定距離から確認した、ニュートン(N)での引張力を、全体の測定にわたる平均を形成するために用い、計算して幅40mmに修正した。多様なラミネートについての結果(T-剥離)は同様に表1で見ることができる。
【0162】
ラミネートの弾性率は、ISO527-1:2012により決定した。結果を同様に表1で見ることができる。
【0163】
【0164】
本発明のラミネートは、特に良好な剥離特性および良好な弾性率を有する。