(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】真空チャンバ内で基板をコーティングするための気相堆積装置及び方法
(51)【国際特許分類】
C23C 14/54 20060101AFI20241016BHJP
C23C 14/24 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
C23C14/54 A
C23C14/24 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023024108
(22)【出願日】2023-02-20
(62)【分割の表示】P 2021534962の分割
【原出願日】2018-12-21
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロップ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】バンゲルト, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】イシカワ, デーヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】ウパディ, バーフバリ エス.
(72)【発明者】
【氏名】アチャリア, スメダ
(72)【発明者】
【氏名】シヴァラマクリシュナン, ヴィスウェスウォレン
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-216373(JP,A)
【文献】特開2003-313654(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/54
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ壁を有する真空チャンバと;
前記チャンバ壁を遮蔽するように構成された温度制御シールドと;
コーティングされる基板に面する熱シールドであって、1つ又は複数の開口部を有する熱シールドと;
少なくとも部分的に前記真空チャンバ内にある蒸発器であって、
前記1つ又は複数の開口部を通って延びる1つ又は複数のノズルを備える、蒸発器と;
コントローラであって、前記温度制御シールド上の漂遊コーティング材料を再蒸発させて前記基板上に堆積させることができるよう、前記温度制御シールドの温度を能動的に制御するように構成されているコントローラと
を備える、気相堆積装置。
【請求項2】
漂遊コーティングにより前記熱シールドの表面上に堆積される材料を再蒸発させるために、前記熱シールドが加熱される、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項3】
前記熱シールドの開口部が通路を形成し、前記ノズルが前記通路を通って延びている、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項4】
前記蒸発器の温度は、前記熱シールドの温度よりも高い、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記温度制御シールドを加熱するヒータ部に接続され、前記温度制御シールドの温度が前記蒸発器の温度より低くなるように制御する、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項6】
前記熱シールドが、2つ以上の熱シールド層を含む、請求項1に記載の気相堆積装置。
【請求項7】
前記蒸発器が、前記基板に面する側壁を有し、前記ノズルが、前記側壁に設けられている、請求項1から6のいずれか一項に記載の気相堆積装置。
【請求項8】
前記熱シールドが、前記側壁と前記基板との間に配置される、請求項7に記載の気相堆積装置。
【請求項9】
前記熱シールドが、前記蒸発器の前記側壁によって受動的に加熱される、請求項7に記載の気相堆積装置。
【請求項10】
真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、
前記真空チャンバ内で材料を蒸発させることと;
蒸発器の少なくとも一部を熱シールドで遮蔽することであって、前記熱シールドが通路を形成する開口部を有する、遮蔽することと;
前記真空チャンバのチャンバ壁を温度制御シールドで遮蔽することであって、ここで、前記蒸発器の温度は前記温度制御シールドの温度よりも高い、遮蔽することと;
前記温度制御シールド上の漂遊コーティング材料を再蒸発させて前記基板上に堆積させることができるよう、前記温度制御シールドの温度を能動的に制御すること
を含む、方法。
【請求項11】
前記温度制御シールドの前記温度が、前記蒸発器の前記温度よりも低く設定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記熱シールドが、放射によって受動的に加熱される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記蒸発器内部の圧力を設定することであって、前記蒸発器内部の前記圧力が、前記真空チャンバ内部の圧力よりも高い、設定すること
をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法であって、
前記真空チャンバ内で材料を蒸発させることと;
前記真空チャンバのチャンバ壁を温度制御シールドで遮蔽することであって、ここで、蒸発器の温度は前記温度制御シールドの温度よりも高い、遮蔽することと;
前記蒸発器の少なくとも一部を、受動的に加熱される熱シールドで遮蔽することであって、ここで、前記蒸発器の前記温度は、前記熱シールドの前記温度よりも高い、遮蔽することと;
前記温度制御シールド上の漂遊コーティング材料を再蒸発させて前記基板上に堆積させることができるよう、前記温度制御シールドの温度を能動的に制御すること
を含む、方法。
【請求項15】
チャンバ壁を有する真空チャンバと;
前記チャンバ壁を遮蔽するように構成された温度制御シールドと;
コーティングされる基板に面する熱シールドであって、1つ又は複数の開口部を有する、熱シールドと;
少なくとも部分的に前記真空チャンバ内にある蒸発器であって、
前記1つ又は複数の開口部を通
して突出し、且つ前記熱シールドの表面から突出する1つ又は複数のノズルを備える、蒸発器と
を備え、
漂遊コーティングにより前記熱シールドの表面上に堆積される材料を再蒸発させるために、前記熱シールドが加熱される、気相堆積装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示の実施態様は、真空チャンバ内での熱蒸発による基板コーティングに関する。本開示の実施態様はさらに、真空堆積装置の表面上に形成される凝縮物に関する。具体的には、実施態様は、真空チャンバ内で基板をコーティングするための気相堆積装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
基板上への堆積のための様々な技術、例えば、化学気相堆積(CVD)及び物理的気相堆積(PVD)が知られている。速い堆積速度での堆積のために、熱蒸発がPVDプロセスとして使用され得る。熱蒸発のために、ソース材料は、例えば基板上に堆積され得る蒸気を生成するために加熱される。加熱されたソース材料の温度を上昇させると、蒸気濃度を増加させ、速い堆積速度を促進することができる。速い堆積速度を達成するための温度は、ソース材料の物理的特性、例えば、温度の関数としての蒸気圧、及び基板の物理的限界、例えば、融点に依存する。
【0003】
例えば、基板上に堆積されるソース材料は、るつぼ内で加熱されて、高い蒸気圧で蒸気を生成することができる。蒸気は、るつぼから、加熱されたマニホールド内のコーティング容積に輸送することができる。ソース材料蒸気は、加熱されたマニホールドからコーティング容積内の基板、例えば真空チャンバ上に分配することができる。
【0004】
構成要素の表面、例えば、真空チャンバの真空チャンバ壁は、蒸発したソース材料にさらされてもよく、コーティングされてもよい。凝縮物を除去するための頻繁なメンテナンスは、大量の製造、例えば薄箔上のウェブ被覆には実用的ではない。
【0005】
さらに、コーティングされることが意図されていない堆積装置構成要素上のソース材料は、汚染され、及び/又は回収不能になり得る。したがって、真空堆積装置を作動させるためのコストは、非効率的なソース材料の利用のためにさらに増加し得る。
【0006】
したがって、保全周期を減少させることができ、且つ/又は予防的保全時間周期間の最小間隔を減少させることができる、真空チャンバ内で基板をコーティングするための気相堆積装置、材料を蒸発させる方法、及び方法を有することが有利である。さらに、ソース材料の利用が有利に改善される。したがって、例えば、製造コストを低減することができる。
【発明の概要】
【0007】
概要
以上の点に鑑み、独立請求項による、真空チャンバ内で基板をコーティングするための気相堆積装置及び方法が提供される。本開示のさらなる態様、利点及び特徴は、明細書、及び添付の図面から明らかとなる。
【0008】
一実施態様によれば、気相堆積装置が提供される。気相堆積装置は、チャンバ壁を有する真空チャンバと;チャンバ壁を遮蔽するように構成された温度制御シールドと;コーティングされる基板に面する熱シールドであって、1つ又は複数の開口部を有する熱シールドと;少なくとも部分的に真空チャンバ内にある蒸発器であって、1つ又は複数の開口部を通って延びる1つ又は複数のノズルを備える蒸発器とを含む。
【0009】
一実施態様によれば、真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法が提供される。本方法は、真空チャンバ内で材料を蒸発させることと;蒸発器の少なくとも一部を熱シールドで遮蔽することであって、熱シールドが通路を形成する開口部を有する、遮蔽することと;真空チャンバのシールドチャンバ壁を温度制御シールドで遮蔽することとを含み、ここで、蒸発器の温度は温度制御シールドの温度よりも高い。
【0010】
一実施態様によれば、真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法が提供される。本方法は、真空チャンバ内で材料を蒸発させることと;真空チャンバのチャンバ壁を、温度制御シールドで遮蔽することであって、ここで、蒸発器の温度は温度制御シールドの温度よりも高い、遮蔽することと;蒸発器の少なくとも一部を、受動的に加熱される熱シールドで遮蔽することであって、ここで、蒸発器の温度は、熱シールドの温度よりも高い、遮蔽することとを含む。
【0011】
本開示の上記の特徴を詳細に理解することができるように、上記で簡単に要約した本開示のより具体的な説明を、実施態様を参照することによって得ることができる。添付の図面は本開示の実施態様に関連しており、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1A】
図1Aは、本開示の実施態様による、1つ又は複数の温度制御シールド又は熱シールドを有する気相堆積装置の概略図を示す。
【
図1B】
図1Bは、本開示の実施態様による、1つ又は複数の温度制御シールド又は加熱シールド又は熱シールドを有するさらなる気相堆積装置の概略図を示す。
【
図2】
図2は、本開示の実施態様による、フレーム状の加熱シールド及び熱シールドの斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本開示の実施態様による、1つ又は複数の温度制御シールド又は加熱シールド又は熱シールドを有するさらなる気相堆積装置の概略図を示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施態様によるロールツーロール堆積装置であるさらなる気相堆積装置の概略図を示す。
【
図5】
図5は、本明細書に記載の実施態様による、真空チャンバ内で基板をコーティングする方法を説明するためのフロー図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施態様の詳細な説明
ここで、本開示の様々な実施態様を詳細に参照し、その1つ又は複数の例を図面に示す。以下の図面の説明では、同じ参照番号は同じ構成要素を指す。個々の実施態様に関する相違点のみが説明されている。各実施例は、本開示の説明のために提供され、本開示の限定を意味するものではない。さらに、1つの実施態様の一部として図示又は説明された特徴は、さらに別の実施態様を創出するために、他の実施態様で使用され得るか又は他の実施態様と併せて使用され得る。説明は、そのような修正及び変形を含むことが意図される。
【0014】
図面の以下の説明では、同じ参照番号は、同じ又は類似の構成要素を指す。概して、個々の実施態様に関する相違点のみが説明される。別段の指定がない限り、一実施態様における一部分又は一態様の説明は、別の実施態様における対応する部分又は態様にも同様に適用される。
【0015】
本開示の実施態様によれば、真空チャンバ内での蒸発によるコーティングのための装置及び方法が提供される。蒸発によってソース材料を基板に堆積させるために、ソース材料は、ソース材料の蒸発又は昇華温度を超えて加熱され得る。本開示の実施態様は、表面、例えば、より低い温度を有し得る基板以外の表面上の凝縮の低減をもたらす。このような表面は、例えば、チャンバ壁であり得る。
【0016】
本開示の実施態様は、例えば、シールド、マスク、及びチャンバ壁上のコーティング(例えば、漂遊コーティング)を防止するために、温度制御されたコーティングチャンバ環境を提供する。したがって、予防的保全周期間のより長い作動時間に加えて、有利に改善された基材コーティング品質及び歩留まりを提供することができる。
【0017】
一実施態様によれば、真空チャンバ内で基板をコーティングするための方法が提供される。この方法は、真空チャンバ内でソース材料を蒸発させることを含む。蒸発器の少なくとも一部は熱シールドで遮蔽されており、熱シールドは通路を形成する開口部を有する。真空チャンバのチャンバ壁は、温度制御シールドで遮蔽されており、ここで、蒸発器の温度はシールドの温度よりも高い。
【0018】
別の実施態様によれば、気相堆積装置が提供される。気相堆積装置は、チャンバ壁を有する真空チャンバを含む。真空チャンバ内には蒸発器が設けられている。コーティングされる基板に面するように配置され、通路を形成する開口部を有する熱シールドが提供される。蒸発器は、熱シールドの通路を通って延びるノズルを備える。装置は、真空チャンバの内部とチャンバ壁との間に温度制御シールドをさらに含む。
【0019】
図1Aは、真空堆積装置100を示す。真空堆積装置100は、真空チャンバ105を含む。真空チャンバ105は、1つ又は複数のチャンバ壁150を含む。いくつかの実施態様によれば、蒸発器135は、真空チャンバ105内に設けられ得るか、又は少なくとも部分的に真空チャンバ105内に設けられ得る。
図1Aは、蒸発器の分配器133を示す。分配器は、例えば、入口開口部101を通して、分配器に提供された蒸気を分配することができる。分配器は、1つ又は複数の開口部182を有し得る。堆積されるソース材料の蒸気は、開口部を通って分配器133を出ることができる。ソース材料は、基板110上に堆積される。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、1つ又は複数のノズル136を、1つ又は複数の開口部182にそれぞれ設けることができる。
【0020】
図1Aにおいて、分配器133は真空チャンバ105の下部に設けられ、基板110は上部に設けられている。堆積されるソース材料は、下部から上部へと誘導される。1つ又は複数の側壁150は、分配器133から、すなわち、真空チャンバ105の下部から、基板位置、すなわち、真空チャンバ105の上部まで延びる。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、真空チャンバの1つ又は複数のチャンバ壁を、蒸発器と基板位置との間に設けることができる。側壁150は、温度制御シールド又はフレーム140によってコーティングから保護することができる。温度制御シールドは、加熱されてもよい。したがって、加熱シールド上に堆積されている材料又はソース材料を再蒸発させることができる。
【0021】
いくつかの実施態様によれば、温度制御シールド又は加熱シールドは、1つ又は複数のチャンバ壁を覆うことができる。特に、加熱シールドは、複数のチャンバ壁を覆うことができる。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、加熱シールドは、フレーム又は温度制御フレームとすることができる。例えば、加熱シールドは、堆積ゾーンを取り囲むことができ、それを通して蒸発した材料が基板に向かって誘導される。さらに、加熱シールドは、連続した表面を形成することができる。実施態様によれば、加熱シールドは、加熱シールドの均質な又は均一な加熱を促進するために熱伝導性であり得る。
【0022】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、気相堆積装置は、温度シールド又は加熱シールドを加熱するヒータ部に接続されたコントローラを備える。コントローラは、加熱シールド温度が蒸発器の温度より低くなるように制御する。ヒータ部は、加熱シールドを加熱するように構成することができ、特に、生成された熱が加熱シールドに伝達される熱を生成するように構成することができる。ヒータ部は、例えば、加熱シールドに配置することができる。加熱シールドに配置されていることは、加熱シールドと直接的及び/又は物理的に接触していると理解することもできる。ヒータ部は、例えば、加熱コイル、加熱管、加熱支柱、加熱ランプなどを含むことができる。
【0023】
ヒータ部は、加熱シールドの外面上に配置することができ、ここで、加熱シールドの外面は、チャンバ壁に面し、加熱シールドの内面は、真空チャンバの内部に面する。また、ヒータ部は、加熱シールド内に一体化することができ、特に、加熱シールド内に配置することができる。
【0024】
図1Bは、本開示の実施態様による、1つ又は複数のフレーム又は加熱シールドを有するさらなる気相堆積装置の概略図を示す。堆積される材料170、すなわちソース材料は、材料170を加熱することによってるつぼ160内で蒸発される。材料170は、例えば、所与の条件下で気相を有する金属、特にリチウム、金属合金、及び他の気化可能な材料などを含むことができる。さらなる実施態様によれば、追加的又は代替的に、材料は、マグネシウム(Mg)、イッテルビウム(YB)及びフッ化リチウム(LiF)を含み得る。るつぼ160内で生成された蒸発材料は、矢印137cによって表される方向に沿って分配器133に入ることができる。分配器133は、例えば、堆積装置の幅及び/又は長さに沿って蒸発材料を分配するための輸送システムを提供するチャネル又は管を含むことができる。分配器は、「シャワーヘッド反応器」の設計を有することができる。
【0025】
例示的に示されるように、蒸発されたソース材料は、方向137a及び137bに沿って、分配器133内でそれぞれのチャンバ壁150に向かって誘導され得る。方向137a及び137bは、平坦な基板110に本質的に平行であり得、特に平坦な基板110の表面110aに平行であり得る。ロールツーロールコーターのコーティングドラムの場合、方向137a及び137bは、コーティングドラムの軸に平行であり得るか、又は供給源及びドラムの最短距離でコーティングドラムの接線に平行であり得る。蒸発材料は、ノズル136によって蒸発器135から真空チャンバ105の内部145に噴射される。ノズル136は、熱シールド180の開口部182内に配置される。ノズル136によって噴射された蒸発材料185は、基板110の表面110a上に堆積され、基板110のコーティングを形成する。
【0026】
熱シールド180は、蒸発器、例えば、分配器133から基板に向かって来る放射熱を低減する。本開示の実施態様によれば、熱シールド180は、開口部182を含む。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、分配器133のノズル136は、熱シールド180の開口部を通って延びることができる。
【0027】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、熱シールドの開口部は、ノズルの対応する寸法よりも大きくてもよい。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、ノズルの開口部サイズは、ノズル寸法と比較して、熱膨張をさらに可能にするのに十分に大きくすることができる。追加的に又は代替的に、分配器又は蒸発器のノズルは、熱シールドと機械的に接触していなくてもよく、特に直接機械的に接触していなくてもよい。したがって、コンダクタンスによる蒸発器から熱シールドへの温度伝達を低減又は回避することができ、例えば、熱シールドを断熱材で支持することができる。
【0028】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、ノズルは、熱シールドから突出している。特に、ノズルは、開口部を通して突出し、熱シールドの表面から突出することができる。
図1Bの例示的な実施態様を参照すると、ノズル136の上端136aと分配器133の側壁134とによって定義されるノズル長と、熱シールド180と側壁134とによって定義される距離との間の比率は、少なくとも1.1、特に少なくとも1.3、又はより具体的には少なくとも1.5とすることができる。追加的に又は代替的に、ノズル長は有利に短く、例えば、ノズル先端に良好なコンダクタンスを提供するために3以下の比率である。
【0029】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、分配器の側壁の面積と、ノズルによって覆われる真空チャンバの内部の表面の面積との間の比率は、少なくとも10:1、特に少なくとも20:1、又はより具体的には50:1を超える。本明細書に記載されるような、分配器の側壁とノズル領域との間の比率を有することにより、分配器内の圧力は、真空チャンバの内部の圧力よりもはるかに高くすることができる。特に、分配器内の圧力は、真空チャンバの内部の圧力よりも少なくとも10倍高く、特に少なくとも50倍高く、より具体的には100倍以上高くすることができる。
【0030】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、蒸発材料は、リチウム、Yb、若しくはLiFを含むことができ、又はそれらからなることができる。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、蒸発器及び/又はノズルの温度は、少なくとも600℃、又は特に600℃から1000℃の間、又はより具体的には600℃から800℃の間であり得る。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、加熱シールドの温度は、450℃から550℃の間、特に+/10℃の偏差で約500℃であり得る。
【0031】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、加熱シールドの温度は、蒸発器の温度よりも少なくとも100℃低く、特に300℃まで低く、より具体的には少なくとも100℃から300℃まで低い。
【0032】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、熱シールドは、2つ以上の熱シールド層を含む。熱シールド層は、互いに離間して配置することができる。熱シールド層を互いに離間して配置することにより、遮蔽効果を高めることができる。さらに、熱シールド層は、異なる熱伝導係数を有する異なる材料で作製することもできる。
【0033】
分配器の側壁に面する下部熱シールド層の温度は、基板に面する上部熱シールド層よりも高くすることができる。熱シールド層は、例えば、特に固定ピンにより分配器の側壁に取り付けて配置することができる。ピンは、絶縁合金又はセラミックなどの遮熱材料を含むことができる。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、熱シールドは、1~10の熱シールド層を含む。実施態様によれば、1つの熱シールド層は、例えば、金属シート又は鋼シートであり得る。実施態様によれば、熱シールド層の厚さは、0.1mmから1mmの間、より具体的には、0.2mmから0.5mmの間であり得る。
【0034】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、熱シールドは、側壁と基板との間に配置される。熱シールドは、基板よりも蒸発器に近づけることができる。
【0035】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、熱シールドは、蒸発器の側壁によって、例えば放射によって受動的に加熱される。熱シールドは、例えば、蒸発器、特に分配器の側壁からの放射熱によって加熱することができる。「受動的に」という用語は、熱シールドが真空堆積装置の他の構成要素によってのみ加熱されることを理解することができる。熱シールドは、例えば、熱、特に蒸発器の側壁の放射熱を吸収、反射及び/又は遮蔽するように構成することができる。本明細書で記載されるように、熱シールドによって基板の方へ向けられる熱を下げることによって、基板を蒸発器の近くに配置することができ、これにより、真空チャンバのより小型でよりコンパクトな設計が可能となる。
【0036】
さらに、熱シールドを加熱することによって、例えば漂遊コーティングによって熱シールドの表面上に堆積される材料は、再度蒸発させることもできる。熱シールド上の漂遊コーティング材料は、本明細書に記載されているように、再蒸発によって有利に除去することができる。さらに、熱シールドから材料を再蒸発させることによって、基板上のコーティングをより均一にすることもできる。
【0037】
図2は、本開示の実施態様による、フレーム状のシールド及び熱シールド180の斜視図を示す。加熱シールドは、長方形及び/又は正方形の形状のフレーム140を形成する。フレーム140は、熱シールド180の上部に配置されている。熱シールド180は、平坦又は均一な上面183を形成することができる。フレーム140は、熱シールド180の外周を囲んでいる。フレーム140は、フレーム140の内側142が真空チャンバの内部に露出している。熱シールド180の上面183に対するフレーム140の上方エッジ143との間の距離は、フレーム140の上方エッジと基板(図示せず)との間の距離よりも大きくすることができる。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができるいくつかの実施態様によれば、フレーム及び/又は熱シールドの形状は、複数の開口部又はノズルを設けるように構成される。例えば、少なくとも4列の開口部又はノズルを設けることができる。追加的に又は代替的に、開口部及び/又はノズルのアレイ又はパターンを設けることができ、ここで、4つ以上の開口部及び/又はノズルは、2つの異なる方向、例えば直交方向に配置される。
【0038】
本明細書の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、加熱シールドは、蒸発器と基板との間の真空チャンバの内部に面するチャンバ壁の大部分を覆う。ここで、「大部分」という用語は、加熱シールドが、蒸発器と基板との間の全チャンバ壁面積の面積の少なくとも50%、特に少なくとも75%、又はより具体的には90%以上を覆うように理解することができる。
【0039】
コントローラは、加熱シールドの温度を能動的に制御するように構成されている。能動的に制御することは、ヒータ部に供給される電力を制御することを含むことができ、且つ/又はヒータ部に供給される加熱液の流量を制御することを含むことができる。コントローラは、蒸発器、るつぼ、熱シールド及び/又は加熱シールド内の温度を測定するようにさらに構成することができる。さらに、コントローラは、蒸発器内及び真空チャンバの内部の圧力を測定するように構成することもできる。さらに、コントローラは、るつぼ及び/若しくは蒸発器内の蒸発速度、並びに/又は基板上の蒸発材料の堆積速度を制御するように構成することができる。それぞれのパラメータは、例えば、温度、速度、及び圧力とすることができる。それぞれのパラメータは、例えば、真空チャンバのそれぞれの構成要素に配置されたセンサによって測定することができる。
【0040】
図3は、本開示の実施態様による、1つ又は複数のフレーム又はシールドを有するさらなる気相堆積装置の概略図を示す。この装置は、
図1Aに示される気相堆積装置とは対照的に、垂直処理方向を有する。真空チャンバ105は、真空ポンプ210に接続されている。垂直に配向された分配器133は、基板110の表面100aに面する熱シールド180によって覆われている。材料はるつぼ160内で加熱され、分配器を通って流れ、ノズル136を通って真空チャンバ105の内部145に入る。材料は、本明細書に記載の実施態様による、熱シールド140によって、並びに熱シールド180によって再蒸発させることができる。
【0041】
図4は、本開示の実施態様によるロールツーロール堆積装置であるさらなる気相堆積装置400の概略図を示す。堆積される基板は、真空チャンバ105を通って2つのドラム450によって誘導されるウェブ410又はホイルであり得る。ウェブ410は、分配器133の側壁134及びノズル136に面する真空チャンバの内部145に沿って移動することができる。この例示的な気相堆積装置400内の基板は、ウェブ410とすることができる。気相堆積装置及びプロセスの構成要素は、本明細書の他の実施態様に記載されている構成要素及びプロセスと同様である。
【0042】
図5は、本明細書に記載の実施態様による、真空チャンバ内で基板をコーティングする方法を説明するためのフロー図を示す。ボックス501によって示されるように、材料は、例えば、本明細書に記載されるようにるつぼを含む蒸発器によって蒸発される。ボックス502によって示されるように、蒸発器の少なくとも一部は、本明細書に記載される実施態様による熱シールドで遮蔽される。ボックス503に示すように、真空チャンバのチャンバ壁は、温度制御された加熱シールドで遮蔽されており、ここで、蒸発器の温度は、本明細書に記載の実施態様による加熱シールドの温度よりも高い。
【0043】
本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、温度制御シールドの温度は能動的に制御される。本明細書に記載の他の実施態様と組み合わせることができる実施態様によれば、温度制御又は加熱シールドの温度は、蒸発器の温度よりも低く設定される。
【0044】
熱シールドの基板の通路を通って延びるノズルは、蒸発材料の出口を提供し、ここで、蒸発材料を蒸発器から真空チャンバの内部に移すことができる。
ノズルは、チャンバの内部と蒸発器との間の圧力、特に蒸気圧の差を可能にすることができる。特に、ノズルは、真空チャンバの内部のガス圧力を蒸発器内の蒸気圧よりも低くすることを可能にすることができる。
【0045】
本開示の実施態様は、いくつかの有利な効果を有する。温度制御シールドは、真空チャンバの内部の堆積プロセスを改善することができる。温度制御シールドの温度は、チャンバ壁上の蒸発材料の凝縮を低減するのに十分に高くすることができる。さらに、温度制御又は加熱シールドの温度も、基板の熱負荷を低く保つのに十分に低くすることができる。
【0046】
さらに、加熱シールド上の漂遊コーティング材料を再蒸発させて、基板上に堆積させることができる。さらに、熱シールドから材料を再蒸発させることによって、基板上のコーティングをより均一にすることもできる。加熱シールドによってチャンバ壁上の漂遊コーティングを低減することによって、真空堆積チャンバは、蒸発材料のより高いスループットで作動させることができ、これはコーティングされた基板の生産速度をさらに高める。
【0047】
本明細書に記載の実施態様による熱シールドは、本明細書に記載されるように、基板に向けられた蒸発器からの熱負荷を低下させることができ、基板は蒸発器のより近くに配置することができ、これにより真空チャンバのより小さくよりコンパクトな設計が可能になる。さらに、蒸発器は、放射熱によって基板を損傷することなく、より高い温度で作動させることができる。さらに、真空チャンバ内部の基板以外の構成要素、例えばマスク、シールド及びチャンバ壁などへの漂遊コーティングによる材料損失は、熱シールド及び加熱シールド上での再蒸発によって低減することができる。漂遊コーティングが少ないと、保全周期間の機械の稼働時間が長くなり、材料の利用率が高くなる可能性がある。
【0048】
上述の記載は実施態様を対象としているが、本開示の基本的な範囲を逸脱せずに他の実施態様及びさらなる実施態様が考案されてよく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲によって定められる。