(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】基板処理装置、情報処理方法及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20241016BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20241016BHJP
B05C 11/00 20060101ALI20241016BHJP
【FI】
H01L21/30 577
H01L21/30 564C
B05C5/00 101
B05C11/00
(21)【出願番号】P 2023538382
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(86)【国際出願番号】 JP2022026855
(87)【国際公開番号】W WO2023008124
(87)【国際公開日】2023-02-02
【審査請求日】2024-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2021121648
(32)【優先日】2021-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100183438
【氏名又は名称】内藤 泰史
(72)【発明者】
【氏名】下青木 剛
(72)【発明者】
【氏名】中野 響
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178238(JP,A)
【文献】特開2013-055191(JP,A)
【文献】特開2018-032766(JP,A)
【文献】特開2004-179211(JP,A)
【文献】国際公開第2020/250306(WO,A1)
【文献】特開2019-212804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
21/30
G03F 7/16
7/30
B05C 5/00
B05C 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の周縁部に対して処理液を吐出するノズルと、
前記処理液の供給源と前記ノズルとの間で前記処理液を通流させる処理液供給路と、
前記基板の周縁部を撮像する撮像部と、
前記処理液供給路に設けられ、前記処理液供給路における前記処理液の通流状態を観測する観測部と、
前記撮像部による撮像画像と前記観測部による観測結果とに基づき、前記基板に対する前記処理液の供給に係る異常要因を特定する分析部と、を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記撮像部は、前記処理液によって膜が除去された前記周縁部の画像を撮像し、
前記分析部は、前記画像における前記膜が除去された領域よりも前記基板の内周側の領域の各画素値に基づき欠陥モードを特定し、特定した欠陥モードと前記観測結果とに基づき前記異常要因を特定する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記欠陥モードは、その種別として、前記各画素値が離散的な値となる第1欠陥モードと前記各画素値が連続的な値となる第2欠陥モードとを含み、
前記観測部は、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記通流状態を観測し、
前記分析部は、前記欠陥モードの種別を特定すると共に、特定した前記欠陥モードの種別と、前記少なくとも一つの構成の前後の通流状態とに基づき、前記構成に係る前記異常要因を特定する、請求項2記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記分析部は、特定した前記異常要因毎に定められた所定の対策処理を実施する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記分析部は、特定した前記異常要因を、前記基板処理装置の使用者に通知する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記分析部は、前記観測部による前記観測結果のプロセスログを取得し、前記プロセスログに基づいて、複数の時間帯に係る前記異常要因それぞれの特定を、バッチ処理により実施する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記観測部は、前記処理液の流量を計測する流量計を含んでおり、
前記分析部は、前記流量計によって計測される前記処理液の流量が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記観測部は、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記処理液の液圧を計測する第1及び第2の液圧センサーを含んでおり、
前記分析部は、前記第1及び第2の液圧センサーによって計測される前記処理液の液圧の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記観測部は、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記処理液の表面電位を計測する第1及び第2の表面電位計を含んでおり、
前記分析部は、前記第1及び第2の表面電位計によって計測される前記処理液の表面電位の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項1記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板の周縁部に対して処理液を吐出するノズルと、前記処理液の供給源と前記ノズルとの間で前記処理液を通流させる処理液供給路と、を備える基板処理装置の情報を処理する情報処理方法であって、
前記処理液が供給された後の前記基板の周縁部の撮像画像を取得する撮像ステップと、
前記処理液供給路における前記処理液の通流状態の観測結果を取得する観測ステップと、
前記撮像画像と前記観測結果とに基づき、前記基板に対する前記処理液の供給に係る異常要因を特定する分析ステップと、を含む情報処理方法。
【請求項11】
前記撮像ステップでは、前記処理液によって膜が除去された前記周縁部の画像を撮像し、
前記分析ステップでは、前記画像における前記膜が除去された領域よりも前記基板の内周側の領域の各画素値に基づき欠陥モードを特定し、特定した欠陥モードと前記観測結果とに基づき前記異常要因を特定する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項12】
前記欠陥モードは、その種別として、前記各画素値が離散的な値となる第1欠陥モードと前記各画素値が連続的な値となる第2欠陥モードとを含み、
前記観測ステップでは、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記通流状態を観測し、
前記分析ステップでは、前記欠陥モードの種別を特定すると共に、特定した前記欠陥モードの種別と、前記少なくとも一つの構成の前後の通流状態とに基づき、前記構成に係る前記異常要因を特定する、請求項11記載の情報処理方法。
【請求項13】
前記分析ステップでは、特定した前記異常要因毎に定められた所定の対策処理を実施する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項14】
前記分析ステップでは、特定した前記異常要因を、前記基板処理装置の使用者に通知する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項15】
前記分析ステップでは、前記観測ステップにおける前記観測結果のプロセスログを取得し、前記プロセスログに基づいて、複数の時間帯に係る前記異常要因それぞれの特定を、バッチ処理により実施する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項16】
前記分析ステップでは、前記処理液の流量を計測する流量計によって計測される前記処理液の流量が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項17】
前記分析ステップでは、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記処理液の液圧を計測する第1及び第2の液圧センサーによって計測される前記処理液の液圧の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項18】
前記分析ステップでは、前記処理液供給路に設けられたバルブ、フィルタ、及びポンプの少なくとも一つの構成の前後の前記処理液の表面電位を計測する第1及び第2の表面電位計によって計測される前記処理液の表面電位の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、前記異常要因を特定する、請求項10記載の情報処理方法。
【請求項19】
情報処理方法を装置に実行させるためのプログラムを記憶した、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、
前記情報処理方法は、
基板の周縁部に対して処理液を吐出するノズルと、前記処理液の供給源と前記ノズルとの間で前記処理液を通流させる処理液供給路と、を備える基板処理装置の情報を処理する情報処理方法であって、
前記処理液が供給された後の前記基板の周縁部の撮像画像を取得する撮像ステップと、
前記処理液供給路における前記処理液の通流状態の観測結果を取得する観測ステップと、
前記撮像画像と前記観測結果とに基づき、前記基板に対する前記処理液の供給に係る異常要因を特定する分析ステップと、を含む、
記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、情報処理方法及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、調整用の半導体ウエハを塗布モジュールにて処理液で処理した後、撮像モジュールに搬送し、半導体ウエハの外端面及び裏面を撮像することが記載されている。また、特許文献1には、撮像結果に基づきベベル部の内縁に対する塗布膜の外縁の高さ寸法が許容値か否かを判定し、許容値でない場合に塗布モジュールの回転数を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、処理液の供給に係る異常要因を詳細且つ正確に特定可能な基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る基板処理装置は、基板の周縁部に対して処理液を吐出するノズルと、処理液の供給源とノズルとの間で処理液を通流させる処理液供給路と、基板の周縁部を撮像する撮像部と、処理液供給路に設けられ、処理液供給路における処理液の通流状態を観測する観測部と、撮像部による撮像画像と観測部による観測結果とに基づき、基板に対する処理液の供給に係る異常要因を特定する分析部と、を備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、処理液の供給に係る異常要因を詳細且つ正確に特定可能な基板処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】基板処理システムの概略構成を例示する模式図である。
【
図2】塗布ユニットの概略構成を例示する模式図である。
【
図3】処理液供給路におけるモニタリング構成を説明する図である。
【
図4】検査ユニットの概略構成を例示する模式図である。
【
図5】制御部の機能的な構成を例示する模式図である。
【
図6】欠陥モードの具体的な態様であるスプラッシュ及びラフネスを説明する図である。
【
図8】フローメーターを用いたモニタリングを説明する図である。
【
図9】液圧センサーを用いたモニタリングを説明する図である。
【
図10】表面電位計を用いたモニタリングを説明する図である。
【
図11】制御部のハードウェア構成を例示する模式図である。
【
図12】カップからの跳ね返りに起因するスプラッシュ発生時の欠陥解決処理手順を示すフローチャートである。
【
図13】吐出異常に起因するスプラッシュ発生時の欠陥解決処理手順を示すフローチャートである。
【
図14】ラフネス発生時の欠陥解決処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
〔基板処理システム〕
基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板としては、半導体ウエハ、ガラス基板、マスク基板、又はFPD(Flat Panel Display)等が挙げられる。基板は、半導体ウエハ等の上に、前段の処理において被膜等が形成されたものも含む。
【0010】
図1に示すように、基板処理システム1は、塗布・現像装置2と露光装置3とを備える。露光装置3は、基板W上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)の露光処理を行う。基板Wは、例えば円形であり、周方向における位置の基準となる位置指標(例えばノッチ)を周縁部に有する。具体的に、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分にエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、基板Wの表面にレジスト膜を形成する処理を行い、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。
【0011】
〔基板処理装置〕
以下、基板処理装置の一例として、塗布・現像装置2の構成を説明する。塗布・現像装置2は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6と、制御部100とを備える。
【0012】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内への基板Wの導入及び塗布・現像装置2内からの基板Wの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、基板W用の複数のキャリアC(収容部)を支持可能であり、受け渡しアームA1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚の基板Wを収容する。受け渡しアームA1は、キャリアCから基板Wを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5から基板Wを受け取ってキャリアC内に戻す。
【0013】
処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。処理モジュール11は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、これらのユニットに基板Wを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。
【0014】
処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により基板Wの表面上に下層膜を形成する。塗布ユニットU1は、下層膜形成用の処理液を基板W上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。熱処理ユニットU2は、例えば熱板及び冷却板を内蔵しており、熱板により基板Wを加熱し、加熱後の基板Wを冷却板により冷却して熱処理を行う。
【0015】
処理モジュール12(成膜処理部)は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、複数の検査ユニットU3と、これらのユニットに基板Wを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液を下層膜の上に塗布することで、基板Wの表面に被膜を形成する。以下、この被膜を「ベーク前レジスト膜」という。熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。これにより、ベーク前レジスト膜がレジスト膜となる。
【0016】
塗布ユニットU1は、レジスト膜の少なくとも一部(詳細には、基板Wの周縁部)を除去するように構成されている。レジスト膜の少なくとも一部を除去することは、熱処理ユニットU2による熱処理に先立って、ベーク前レジスト膜の一部を除去することを含む。例えば、塗布ユニットU1は、基板Wの表面にベーク前レジスト膜を形成した後に、基板Wの周縁部に除去液を供給することで、ベーク前レジスト膜の周縁部を除去する。
【0017】
検査ユニットU3は、基板Wの表面Wa(
図2参照)の状態を検査するための処理を行う。例えば、検査ユニットU3は、基板Wの表面Waの状態を示す情報を取得する。表面Waの状態を示す情報は、基板Wのうち、レジスト膜が除去された部分(基板Wの周縁部)の情報を含む。
【0018】
処理モジュール13は、複数の塗布ユニットU1と、複数の熱処理ユニットU2と、これらのユニットに基板Wを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。処理モジュール13の塗布ユニットU1は、上層膜形成用の液体をレジスト膜の上に塗布する。処理モジュール13の熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0019】
処理モジュール14は、複数の現像ユニットU4と、複数の熱処理ユニットU5と、これらのユニットに基板Wを搬送する搬送アームA3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU4及び熱処理ユニットU5により、露光後のレジスト膜の現像処理を行う。現像ユニットU4は、露光済みの基板Wの表面上に現像液を塗布した後、これをリンス液により洗い流すことで、レジスト膜の現像処理を行う。熱処理ユニットU5は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。
【0020】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームA7が設けられている。昇降アームA7は、棚ユニットU10のセル同士の間で基板Wを昇降させる。
【0021】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0022】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間で基板Wの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームA8を内蔵しており、露光装置3に接続される。受け渡しアームA8は、棚ユニットU11に配置された基板Wを露光装置3に渡し、露光装置3から基板Wを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0023】
制御部100は、塗布・現像装置2に含まれる各要素を制御する。以下、一枚の基板Wに対して制御部100が実行する一連の制御手順を例示する。例えば制御部100は、まずキャリアC内の基板Wを棚ユニットU10に搬送するように受け渡しアームA1を制御し、この基板Wを処理モジュール11用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0024】
次に制御部100は、棚ユニットU10の基板Wを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御する。また、制御部100は、この基板Wの表面上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御部100は、下層膜が形成された基板Wを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、この基板Wを処理モジュール12用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0025】
次に制御部100は、棚ユニットU10の基板Wを処理モジュール12内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送アームA3を制御する。また、制御部100は、この基板Wの下層膜上にレジスト膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。更に、制御部100は、基板Wの下層膜上に上記ベーク前レジスト膜を形成し、ベーク前レジスト膜の周縁部を除去するように塗布ユニットU1を制御し、ベーク前レジスト膜をレジスト膜とするための熱処理を基板Wに施すように熱処理ユニットU2を制御する。
【0026】
更に、制御部100は、基板Wを検査ユニットU3に搬送するように搬送アームA3を制御し、当該基板Wの表面の状態を示す情報を検査ユニットU3から取得する。その後制御部100は、基板Wを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、この基板Wを処理モジュール13用のセルに配置するように昇降アームA7を制御する。
【0027】
次に制御部100は、棚ユニットU10の基板Wを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送アームA3を制御し、この基板Wのレジスト膜上に上層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御部100は、基板Wを棚ユニットU11に搬送するように搬送アームA3を制御する。
【0028】
次に制御部100は、棚ユニットU11の基板Wを露光装置3に送り出すように受け渡しアームA8を制御する。その後制御部100は、露光処理が施された基板Wを露光装置3から受け入れて、棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように受け渡しアームA8を制御する。
【0029】
次に制御部100は、棚ユニットU11の基板Wを処理モジュール14内の現像ユニットU4及び熱処理ユニットU5に搬送するように搬送アームA3を制御し、この基板Wのレジスト膜に現像処理を施すように現像ユニットU4及び熱処理ユニットU5を制御する。その後制御部100は、基板Wを棚ユニットU10に戻すように搬送アームA3を制御し、この基板WをキャリアC内に戻すように昇降アームA7及び受け渡しアームA1を制御する。以上で1枚の基板Wに対する一連の制御手順が完了する。
【0030】
〔塗布ユニット〕
続いて、処理モジュール12における塗布ユニットU1の構成の一例を詳細に説明する。上述したように、塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液を基板Wの表面Waに供給し、上記ベーク前レジスト膜を形成する。また、塗布ユニットU1は、基板Wの表面Waにベーク前レジスト膜を形成した後に、基板Wの周縁部に除去液を供給することで、ベーク前レジスト膜の周縁部を除去する。
【0031】
図2に示すように、塗布ユニットU1は、回転保持部20を有する。回転保持部20は、基板Wを保持して回転させる。例えば回転保持部20は、保持部21と回転駆動部22とを有する。保持部21は、表面を上方に向けた状態で水平に配置された基板Wを支持し、当該基板Wを吸着(例えば真空吸着)により保持するスピンチャックである。回転駆動部22は、例えば電動モータを動力源として、鉛直な回転中心まわりに保持部21を回転させる。これにより基板Wが回転する。
【0032】
保持部21に保持された基板Wの周囲にはカップ220が設けられており、カップ220の下方側は、排気管221を介して排気されると共に、排液管222が接続されている。また、保持部21の下方側にはシャフトを囲むように円形板213が設けられており、この円形板213の周囲には断面形状が山型のリング状の山型部214が形成されている。この山型部214の頂部には、カップ220内を流れるミストの基板Wの裏面側への流入を抑えるための突片部215が設けられている。
【0033】
塗布ユニットU1は、塗布液を吐出する塗布液ノズル24と、塗布液の溶媒である溶剤を吐出する溶剤ノズル25と、を有する。塗布液ノズル24は、開閉バルブV1を備えた流路241を介して塗布液供給機構242に接続されている。溶剤ノズル25は、基板Wへの塗布液を吐出する前に行う前処理に用いられるノズルであり、開閉バルブV2を備えた流路251を介して溶剤供給機構252に接続されている。これら塗布液ノズル24及び溶剤ノズル25は、図示しない移動機構により基板Wの中心部上とカップ220の外側の退避位置との間で移動自在に構成されている。
【0034】
更に、塗布ユニットU1は、基板Wの周縁部の膜除去用のノズルである除去液ノズル26と、ベベル部の膜除去用のべベル洗浄ノズル27と、裏面洗浄ノズル28と、を有する。除去液ノズル26は、基板Wの周縁部に対して除去液(処理液)を吐出する、EBR(Edge Bead Removal)ノズルである。除去液ノズル26は、保持部21に保持された基板Wのべベル部よりも内側位置の表面に、除去液が基板Wの回転方向の下流側に向かうように、除去液を吐出するものである。除去液ノズル26は例えば直管状に形成され、その先端が除去液の吐出口として開口している。この除去液ノズル26は、図示しない移動機構により、例えば基板Wの周縁部に除去液を吐出する処理位置と、カップ220の外側の退避位置との間で移動自在に構成されている。
【0035】
べベル洗浄ノズル27は、保持部21に保持された基板Wの裏面側からベベル部に向かって除去液を吐出するものである。このべベル洗浄ノズル27は、基台271に沿って移動自在に構成されており、基台271は、例えば山型部214に形成された図示しない切り欠き部に設けられている。
【0036】
裏面洗浄ノズル28は、保持部21に保持された基板Wのべベル部よりも内側位置の裏面に洗浄液を吐出するものである。裏面洗浄ノズル28は、例えば基板Wに向けて洗浄液を吐出したときに、当該洗浄液の基板W上の着地点が基板Wの外縁から例えば70mmよりも内側になるように構成されている。べベル洗浄ノズル27及び裏面洗浄ノズル28は、例えば塗布ユニットU1に2個ずつ設けられている。
【0037】
この例における除去液及び洗浄液はいずれも塗布膜の溶剤であり、除去液ノズル26は開閉バルブV3を備えた流路261を介して溶剤供給機構252に接続されている。このように、流路261は、処理液である除去液の供給路(処理液供給路)であり、除去液の供給源である溶剤供給機構252と除去液ノズル26との間で除去液を通流させる。また、べベル洗浄ノズル27は、開閉バルブV4を備えた流路275を介して溶剤供給機構252に接続されている。また、裏面洗浄ノズル28は、開閉バルブV5を備えた流路281を介して溶剤供給機構252に接続されている。
【0038】
(処理液供給路)
図3を参照して、処理液供給路である流路261におけるモニタリング構成について説明する。流路261には、例えば、供給源からの除去液(処理液)を圧送するポンプ71と、フィルタ72と、バルブ73と、が上流側から下流側に向かって配置されている。すなわち、ポンプ71によって圧送された除去液は、フィルタ72を通過し、開状態のバルブ73を通過して、除去液ノズル26(
図2参照)に到達する。
【0039】
除去液ノズル26は、上述したように、基板Wの周縁部に対して除去液を吐出する。また、フィルタ72は、バルブ74を介して、ドレインに繋がっている。当該ドレインには導電性のグランドパーツ75が設けられていてもよい。また、流路261におけるバルブ73の下流且つ除去液ノズル26の上流の部分は、バルブ76を介してドレインに繋がっている。当該ドレインには導電性のグランドパーツ77が設けられていてもよい。
【0040】
塗布ユニットU1は、処理液供給路である流路261に設けられ、流路261における除去液(処理液)の通流状態を観測する各種センサー81,82,83,84,85,86,90(観測部)を備えている。センサー81,82は、流路261に設けられたポンプ71の前後における、除去液の通流状態を観測するセンサーである。センサー83,84は、流路261に設けられたフィルタ72の前後における、除去液の通流状態を観測するセンサーである。センサー85,86は、流路261に設けられたバルブ73の前後における、除去液の通流状態を観測するセンサーである。
【0041】
センサー81,82,83,84,85,86は、例えば、除去液の流量を計測するフローメーター(流量計)、除去液の液圧を計測する液圧センサー、及び、除去液の表面電位を計測する表面電位計のいずれかであってもよい。センサー81,82,83,84,85,86は、観測結果を制御部100に送信する。センサー90は、流路261を経て除去液ノズル26から吐出される除去液の吐出(通流)状態を観測するセンサーであり、例えば小型高速カメラである。センサー90は、小型高速カメラである場合においては、除去液ノズル26の吐出状態を撮像し、撮像結果を制御部100に送信する。
【0042】
〔検査ユニット〕
続いて、検査ユニットU3の構成の一例について詳細に説明する。検査ユニットU3は、基板Wの表面Waを撮像することによって、表面Waの状態を示す表面情報として画像データを取得する。
図4に示すように、検査ユニットU3は、保持部51と、回転駆動部52と、位置指標検出部53と、撮像部57とを有する。
【0043】
保持部51は、表面Waを上方に向けた状態で水平に配置された基板Wを支持し、当該基板Wを吸着(例えば真空吸着)により保持する。回転駆動部52は、例えば電動モータ等の動力源により、鉛直な回転中心まわりに保持部51を回転させる。これにより基板Wが回転する。
【0044】
位置指標検出部53は、基板Wのノッチを検出する。例えば位置指標検出部53は、投光部55と、受光部56とを有する。投光部55は、回転している基板Wの周縁部に向けて光を出射する。例えば、投光部55は、基板Wの周縁部の上方に配置されており、下方に向けて光を出射する。受光部56は、投光部55により出射された光を受ける。例えば、受光部56は、投光部55と対向するように基板Wの周縁部の下方に配置されている。
【0045】
撮像部57は、基板Wの表面Waの少なくとも周縁部を撮像するカメラである。例えば、撮像部57は、基板Wの表面Waのうち、レジスト膜が形成されていない(ベーク前レジスト膜が除去された)周縁部を撮像する。例えば撮像部57は、保持部51に保持されている基板Wの周縁部の上方に配置されており、下方に向けられている。撮像部57は、撮像結果を制御部100に送信する。
【0046】
〔制御部〕
上述した塗布ユニットU1及び検査ユニットU3は、制御部100により制御される。制御部100による塗布ユニットU1及び検査ユニットU3の制御手順は、基板Wの表面Waに形成されたレジスト膜の周縁部を塗布ユニットU1に除去させることを含む。更に、制御部100による制御手順は、除去液が供給された後の基板Wの周縁部の撮像画像を検査ユニットU3から取得することを含む。更に、制御部100による制御手順は、除去液(処理液)供給路である流路261における除去液の通流状態の観測結果を塗布ユニットU1から取得することを含む。更に制御部100による制御手順は、撮像画像と観測結果とに基づき基板Wに対する除去液の供給に係る異常要因を特定することを含む。
【0047】
除去液の供給に係る異常要因を特定するとは、除去液の供給について異常が発生している場合において、当該異常の発生に関して、どの部位がどのように悪いのかを特定することをいう。
【0048】
以下、
図5を参照し、塗布ユニットU1及び検査ユニットU3を制御するための制御部100の構成を具体的に例示する。
図5に示すように、制御部100は、機能上の構成要素(以下、「機能ブロック」という。)として、搬送制御部111と、成膜制御部112と、周縁除去部113と、記憶部114と、分析部115と、を有する。
【0049】
搬送制御部111は、記憶部114が記憶する動作プログラムに基づいて、基板Wを搬送するように搬送アームA3を制御する。搬送アームA3の動作プログラムは、少なくとも一つの制御パラメータにより定義される時系列の命令を含む。少なくとも一つの制御パラメータの具体例としては、基板Wの搬送目標位置及び当該搬送目標位置への移動速度等が挙げられる。
【0050】
成膜制御部112は、記憶部114が記憶する動作プログラムに基づいて、基板Wの表面にベーク前レジスト膜を形成するように塗布ユニットU1を制御する。周縁除去部113は、記憶部114が記憶する動作プログラムに基づいて、ベーク前レジスト膜の周縁部を除去するように塗布ユニットU1を制御する。
【0051】
分析部115は、撮像部57による撮像結果(除去液が供給された後の周縁部の撮像画像)と、塗布ユニットU1の各種センサー81,82,83,84,85,86,90による観測結果とに基づき、基板Wに対する除去液の供給に係る異常要因を特定する。
【0052】
分析部115は、最初に、例えば、撮像部57による撮像画像における、ベーク前レジスト膜が除去された周縁部の領域よりも基板Wの内周側の領域の各画素値に基づき欠陥モードを特定してもよい。ここでの内周側の領域とは、周縁部の領域よりも内側であって、ベーク前レジスト膜が除去されていないことが想定されている領域である。
【0053】
図6は、欠陥モードの具体的な態様であるスプラッシュ(
図6(a))及びラフネス(
図6(b))を説明する図である。
図6(a)(b)に示されるように、除去液によって周縁部のベーク前レジスト膜が除去された状態においては、基板Wの外周側から内周側に向かって、ベベル部BE、ベーク前レジスト膜が除去された周縁部PE、レジスト部REが順に形成されている。
【0054】
ここで、
図6(a)に示される態様では、何らかの異常によって、レジスト部REの一部に、除去液のスプラッシュSPが飛び散っている。このようなスプラッシュ異常は、欠陥モードの1種である。スプラッシュ異常の発生要因としては、例えば1度カップ220に当たった除去液の跳ね返りがレジスト部REに飛び散ることや、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)に異常が生じていること等が考えられる。
【0055】
また、
図6(b)に示される態様では、周縁部PEにおけるレジスト部REとの境界面において表面が粗く凸凹に形成されたラフネス部ROが生じている。このようなラフネス異常は、欠陥モードの1種である。ラフネス異常の発生要因としては、例えば、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)に異常が生じていること等が考えられる。
【0056】
図7は、分析部115が実施する欠陥モードの切り分けを説明する図である。分析部115は、最初に、撮像部57による撮像画像における、ベーク前レジスト膜が除去された周縁部の領域よりも基板Wの内周側の領域の各画素値に基づき欠陥モードの切り分けを行う。分析部115は、欠陥モードとして、スプラッシュ異常、ラフネス異常、又はその他の異常のいずれかに切り分けを行う。分析部115は、撮像画像において、周縁部の領域よりも基板Wの内周側の領域(
図6(a)の例ではレジスト部RE)の各画素値が離散的な値となる場合には、欠陥モードがスプラッシュ異常(第1欠陥モード)であると特定する。
【0057】
分析部115は、撮像画像において、周縁部の領域よりも基板Wの内周側の領域(
図6(b)の例ではレジスト部RE)の各画素値が連続的な値となる場合には、欠陥モードがラフネス異常(第2欠陥モード)であると特定する。上述したように、スプラッシュ異常の発生要因としては、カップ220からの除去液の跳ね返り、又は、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)が考えられる。また、ラフネス異常の発生要因としては、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)が考えられる。分析部115は、スプラッシュ異常及びラフネス異常のいずれにも切り分けることができない場合には、欠陥モードがその他の異常であると特定する。
【0058】
分析部115は、撮像部57による撮像画像に基づき欠陥モードがスプラッシュ異常であると特定した場合において、発生要因としてカップ220からの除去液の跳ね返りが疑われる場合には、以下の第1の欠陥解決処理を実施する。第1の欠陥解決処理では、分析部115は、周縁部の除去に係るレシピ変更が行われていないかを判定する。また、第1の欠陥解決処理では、分析部115は、カップ220の種別変更が行われていないか、ソルベントの変更が行われていないか、周縁部の除去に係る処理単位(モジュール単位)でスプラッシュ異常の発生傾向がないか等を判定する。
【0059】
分析部115は、レシピ変更が行われている場合にはレシピの差異を詳細に調査する。また、分析部115は、カップ220の種別変更が行われている場合にはカップ220の依存性を調査し、ソルベントの変更が行われている場合にはソルベント種類毎のレシピ最適化を検討し、モジュール毎の発生傾向がある場合にはカップ220の個体差を調査する。分析部115は、いずれにも該当しない場合には、もう1つの発生要因として考えられる、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)を発生要因として特定する。なお、第1の欠陥解決処理については、分析部115ではなく、全てユーザ(塗布・現像装置2の使用者)により実施されてもよい。
【0060】
分析部115は、撮像部57による撮像画像に基づき欠陥モードがスプラッシュ異常であり、発生要因として流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)が疑われる場合には、以下の第2の欠陥解決処理を実施する。同様に、分析部115は、欠陥モードがラフネス異常である場合には、以下の第2の欠陥解決処理を実施する。第2の欠陥解決処理では、分析部115は、特定した欠陥モードの種別と、塗布ユニットU1の各種センサー81,82,83,84,85,86,90による観測結果とに基づき、異常要因(どの部位がどのように悪いのか)を特定する。
【0061】
この場合、分析部115は、ポンプ71の前後の通流状態をセンサー81,82から取得し、フィルタ72の前後の通流状態をセンサー83,84から取得し、バルブ73の前後の通流状態をセンサー85,86から取得してもよい。分析部115は、センサー81,82から取得した通流状態が異常である場合にはポンプ71に係る異常要因を特定してもよい。また、分析部115は、センサー83,84から取得した通流状態が異常である場合にはフィルタ72に係る異常要因を特定してもよい。また、分析部115は、センサー85,86から取得した通流状態が異常である場合にはバルブ73に係る異常要因を特定してもよい。
【0062】
分析部115は、例えば、各種センサー81,82,83,84,85,86にフローメーターが含まれている場合において、フローメーターによって計測される除去液の流量が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。分析部115は、フローメーターによって計測される除去液の流量が所定の範囲外である場合に、当該フローメーターに対応する構成の通流状態が悪いと判定する。
【0063】
図8は、フローメーターを用いたモニタリングを説明する図である。
図8(a)~
図8(c)において横軸は時間、縦軸はフローメーターが示す流量を示しており、二本の線に挟まれた流量の範囲が、流量の正常な範囲を示している。
図8(a)は、フローメーターにおける通常波形(流量が正常である波形)を示している。
図8(a)に示される通常波形では、フローメーターが示す流量が正常範囲内にある。
【0064】
これに対して、
図8(b)では、一度流量が正常な範囲となった後に、すぐに流量が下がり、その後は流量が継続的に正常範囲外となっている。このような場合には、フローメーターが対応する構成において吐出量変動が生じていることが考えられる。
【0065】
また、
図8(c)では、一時的に流量が下がり正常範囲外となっている。このような一時的な流量の減少は、例えばフローメーターが対応する構成において泡混入が生じていることが考えられる。泡が混入した場合には、除去液ノズル26からの液切れが悪くなると共に除去液ノズル26の先端に液が溜まって処理中に落下しやすくなってしまう。また、泡が混入している除去液は、処理中に乱れが生じやすく予定よりも内側に進入してしまうことがある。
【0066】
分析部115は、フローメーターの流量が正常範囲外となっている場合には、当該流量が正常範囲外となっているフローメーターに対応する構成に対して、欠陥解決のための所定の対策処理を実施する。いま、例えば、フィルタ72の前後の流量を計測するセンサー83,84のフローメーターの計測結果が正常範囲外となっている場合には、分析部115は、フィルタ72周辺の通流状態が悪いと特定する。この場合、分析部115は、フィルタ72に繋がるドレイン及び除去液ノズル26において、特定の時間だけパージを実施させる。
【0067】
分析部115は、基板Wに係る処理前において、フローメーターの流量が正常範囲内となるまで、パージを繰り返し実施させる。分析部115は、パージを繰り返し実施してもフローメーターの流量の変化が見られない場合には、ハードの不具合の可能性が高いと判定する。この場合、基板Wの搬送処理等が停止される。
【0068】
分析部115は、例えば、各種センサー81,82,83,84,85,86に液圧センサーが含まれている場合において、各構成の前後の液圧を計測する一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分に基づき異常要因を特定してもよい。具体的には、分析部115は、一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。分析部115は、一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分が所定の範囲外である場合に、当該一対の液圧センサーに対応する構成の通流状態が悪いと判定する。
【0069】
図9は、液圧センサーを用いたモニタリングを説明する図である。
図9において、横軸は時間、縦軸は一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分を示しており、破線は液圧の差分の閾値を示している。分析部115は、
図9に示すように一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分が正常範囲外(閾値以上)となっている場合には、当該一対の液圧センサーに対応する構成に対して、欠陥解決のための所定の対策処理を実施する。
【0070】
いま、例えばフィルタ72の前後の液圧を計測するセンサー83,84の液圧センサー(一対の液圧センサー)によって計測される液圧の差分が閾値以上となっている場合には、分析部115は、フィルタ72周辺の通流状態が悪いと特定する。そして、分析部115は、フィルタ72に繋がるドレイン及び除去液ノズル26において、特定の時間だけパージを実施させる。分析部115は、基板Wに係る処理前において、一対の液圧センサーよって計測される液圧の差分が正常範囲内となるまで、パージを繰り返し実施させる。分析部115は、パージを繰り返し実施しても一対の液圧センサーによって計測される液圧の差分が閾値以下とならない場合には、ハードの不具合の可能性が高いと判定する。この場合、基板Wの搬送処理等が停止される。
【0071】
分析部115は、例えば、各種センサー81,82,83,84,85,86に表面電位計が含まれている場合において、各構成の前後の除去液の表面電位を計測する一対の表面電位計によって計測される除去液の表面電位に基づき異常要因を特定してもよい。具体的には、分析部115は、一対の表面電位計によって計測される除去液の表面電位の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。分析部115は、一対の表面電位計によって計測される表面電位の差分が所定の範囲外である場合に、当該一対の表面電位計に対応する構成の通流状態が悪いと判定する。
【0072】
図10は、表面電位計を用いたモニタリングを説明する図である。
図10において、横軸は時間、縦軸は一対の表面電位計によって計測される表面電位の差分(電位差)を示しており、破線は電位差の閾値を示している。分析部115は、
図10に示すように一対の表面電位計によって計測される電位差が正常範囲外(閾値以上)となっている場合には、当該一対の表面電位計に対応する構成に対して、欠陥解決のための所定の対策処理を実施する。
【0073】
いま、例えばバルブ73の前後の表面電位を計測するセンサー85,86の表面電位計(一対の表面電位計)によって計測される電位差が閾値以上となっている場合を考える。この場合、分析部115は、バルブ73周辺の通流状態が悪いと特定し、バルブ73に繋がるドレインのグランドパーツ77において除電を実施させ、一定の時間だけ除電状態をモニタする。分析部115は、基板Wに係る処理前において、電位差が正常範囲内となるまで、除電を繰り返し実施させる。分析部115は、除電を繰り返し実施しても電位差が閾値以下とならない場合には、ハードの不具合の可能性が高いと判定する。この場合、基板Wの搬送処理等が停止される。
【0074】
分析部115は、例えば、小型高速カメラであるセンサー90によって撮像された、除去液ノズル26から吐出される除去液の吐出(通流)状態に基づいて、異常要因を特定してもよい。分析部115は、例えば、除去液ノズル26の吐出開始時又は液切れ時において、センサー90による撮像画像が、除去液の液溜り等を示している場合には、除去液ノズル26の通流状態が悪いと判定する。この場合、分析部115は、除去液ノズル26に係るスピードコントローラ―(速度制御弁)の開度を調整(吐出状態を調整)することにより、上記液溜り等を解消する。
【0075】
なお、分析部115は、特定した異常要因(どの部位がどのように悪いのか)について、ユーザ(塗布・現像装置2の使用者)に通知してもよい。この場合、分析部115は、例えばディスプレイ等の表示装置(不図示)に特定した異常要因を表示させることにより、異常要因をユーザに通知してもよい。
【0076】
また、分析部115は、塗布ユニットU1の各種センサー81,82,83,84,85,86,90による観測結果のプロセスログを取得し、該プロセスログに基づいて、複数の時間帯に係る異常要因それぞれの特定を、バッチ処理により実施してもよい。
【0077】
図11は、制御部100のハードウェア構成を例示するブロック図である。制御部100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。
図11に示すように、制御部100は回路190を有する。回路190は、少なくとも一つのプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、入出力ポート194と、入力デバイス195と、表示デバイス196とを含む。
【0078】
ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。ストレージ193は、基板処理装置の情報処理方法を制御部100に実行させるためのプログラムを記憶している。例えばストレージ193は、上述した各機能ブロックを制御部100に構成させるためのプログラムを記憶している。
【0079】
メモリ192は、ストレージ193の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート194は、プロセッサ191からの指令に応じて搬送アームA3、塗布ユニットU1及び検査ユニットU3との間で電気信号の入出力を行う。
【0080】
入力デバイス195及び表示デバイス196は、制御部100のユーザインタフェースとして機能する。入力デバイス195は、例えばキーボード等であり、ユーザによる入力情報を取得する。表示デバイス196は、例えば液晶モニタ等を含み、ユーザに対する情報表示に用いられる。表示デバイス196は、例えば上記要因情報の表示に用いられる。入力デバイス195及び表示デバイス196は、所謂タッチパネルとして一体化されていてもよい。
【0081】
〔欠陥解決処理手順〕
以下、基板処理装置の情報処理方法の一例として、制御部100による塗布・現像装置2の制御手順(欠陥解決処理手順)を例示する。以下では、最初に、欠陥モードがスプラッシュ異常であると特定され且つ発生要因としてカップ220からの除去液の跳ね返りが疑われる場合の欠陥解決処理手順(
図12参照)を説明する。つづいて、欠陥モードがスプラッシュ異常である特定され且つ発生要因として流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)が疑われる場合の欠陥解決処理手順(
図13参照)を説明する。最後に、欠陥モードがラフネス異常である場合の欠陥解決処理手順(
図14参照)を説明する。なお、
図12に示される各処理については、その一部又は全部がユーザによって実施されてもよい。
【0082】
図12に示される欠陥解決処理手順では、スプラッシュ異常が発生すると、まず、制御部100によって周縁部の除去に係るレシピ変更が行われていないか否かが判定される(ステップS1)。レシピ変更が行われている場合には、制御部100によって変更前後のレシピの差異に関する調査が実施される(ステップS2)。
【0083】
一方で、レシピ変更が行われていない場合には、制御部100によって、カップ220の種別変更が行われていないか否かが判定される(ステップS3)。カップ220の種別変更が行われている場合には、制御部100によってスプラッシュ異常に係るカップ220の依存性に関する調査が実施される(ステップS4)。
【0084】
一方で、カップ220の種別変更が行われていない場合には、制御部100によって、ソルベントの変更が行われていないか否かが判定される(ステップS5)。ソルベントの変更が行われている場合には、制御部100によってソルベント種別毎のレシピ最適化が実施される。
【0085】
一方で、ソルベントの変更が行われていない場合には、制御部100によって、スプラッシュ異常の発生に関してモジュール毎に発生傾向がないか否かが判定される(ステップS7)。モジュール毎に発生傾向がある場合には、制御部100によって、カップ220の個体差に関する調査が実施される(ステップS8)。
【0086】
一方で、モジュール毎に発生傾向がない場合には、制御部100によって、流路261における除去液の通流状態(ひいては、除去液ノズル26からの吐出状態)の異常要因調査が必要であると判定される(ステップS9)。この場合、
図13に示される処理が実施される。
【0087】
図13に示される欠陥解決処理手順では、スプラッシュ異常が発生すると、まず、制御部100によって、除去液ノズル26の吐出位置が外側に所定量だけ変化させられ、挙動が変化するか(スプラッシュ異常が減少するか)否かが判定される(ステップS11)。挙動が変化しない場合には、制御部100によってカップ220の調査が実施される(ステップS12)。
【0088】
一方で、除去液ノズル26の吐出位置変更によって挙動が変化する場合には、制御部100によって、フローメーター又は液圧センサーの値に変化がないか(正常範囲外の値となっていないか)否かが判定される(ステップS13)。フローメーター又は液圧センサーの値が正常範囲外となっている場合には、制御部100によって、泡を排出するためのドレイン部や除去液ノズル26の先端でのパージ処理が実施される(ステップS14)。
【0089】
一方で、フローメーター又は液圧センサーの値が正常範囲外となっていない場合には、制御部100によって、表面電位計の値に変化がないか(正常範囲外の値となっていないか)否かが判定される(ステップS15)。表面電位計の値が正常範囲外となっている場合には、制御部100によって、ドレイン側に設置した構成における除電処理が実施される(ステップS16)。この場合、制御部100は、一定時間の経過を待って除電状態をモニタしてもよい。
【0090】
一方で、表面電位計の値が正常範囲外となっていない場合には、制御部100によって、小型高速カメラであるセンサー90によって撮像された除去液ノズル26の液切れ時の画像が異常を示していないか否かが判定される(ステップS17)。異常を示している場合には、制御部100によって、除去液ノズル26に係るスピードコントローラ―(速度制御弁)の開度の自動調整が実施される(ステップS18)。
【0091】
一方で、除去液ノズル26の液切れ時の画像が異常を示していない場合には、制御部100によって、その他の異常要因(例えば基板Wに係る異常等)が調査される(ステップS19)。
【0092】
図14に示される欠陥処理手順(欠陥モードがラフネス異常である場合の欠陥解決処理手順)は、
図13に示される欠陥処理手順と概ね同様である。詳細には、
図14のステップS21~S27は、
図13のステップS13~S19と同様である。すなわち、
図14に示される欠陥解決処理手順では、ラフネス異常が発生すると、まず、制御部100によって、フローメーター又は液圧センサーの値に変化がないか(正常範囲外の値となっていないか)否かが判定される(ステップS21)。フローメーター又は液圧センサーの値が正常範囲外となっている場合には、制御部100によって、泡を排出するためのドレイン部や除去液ノズル26の先端でのパージ処理が実施される(ステップS22)。
【0093】
一方で、フローメーター又は液圧センサーの値が正常範囲外となっていない場合には、制御部100によって、表面電位計の値に変化がないか(正常範囲外の値となっていないか)否かが判定される(ステップS23)。表面電位計の値が正常範囲外となっている場合には、制御部100によって、ドレイン側に設置した構成における除電処理が実施される(ステップS24)。この場合、制御部100は、一定時間の経過を待って除電状態をモニタしてもよい。
【0094】
一方で、表面電位計の値が正常範囲外となっていない場合には、制御部100によって、小型高速カメラであるセンサー90によって撮像された除去液ノズル26の液切れ時の画像が異常を示していないか否かが判定される(ステップS25)。異常を示している場合には、制御部100によって、除去液ノズル26に係るスピードコントローラ―(速度制御弁)の開度の自動調整が実施される(ステップS26)。
【0095】
一方で、除去液ノズル26の液切れ時の画像が異常を示していない場合には、制御部100によって、その他の異常要因(例えば基板Wに係る異常等)が調査される(ステップS27)。
【0096】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、塗布・現像装置2(基板処理装置)は、基板Wの周縁部に対して除去液を吐出する除去液ノズル26と、除去液の供給源と除去液ノズル26との間で除去液を通流させる処理液供給路である流路261とを備える。また、塗布・現像装置2は、基板Wの周縁部を撮像する検査ユニットU3の撮像部57と、流路261に設けられ、流路261における除去液の通流状態を観測する観測部としての各種センサー81,82,83,84,85,86,90と、を備える。また、塗布・現像装置2は、検査ユニットU3の撮像部57による撮像画像と各種センサー81,82,83,84,85,86,90による観測結果とに基づき、基板Wに対する除去液の供給に係る異常要因を特定する分析部115とを備える。
【0097】
本実施形態に係る塗布・現像装置2では、除去液が供給される基板Wの周縁部の撮像画像と、流路261における除去液の通流状態を示す観測結果とに基づいて、基板Wに対する除去液の供給に係る異常要因が特定される。このような塗布・現像装置2によれば、例えば、撮像画像によって基板Wの周縁部に対する除去液の供給状態の異常を検知して異常要因の検討をつけることができる。そして、塗布・現像装置2によれば、実際に流路261に設けられて除去液の通流状態を観測する観測部の観測結果が考慮されることによって、流路261におけるどの部位が処理液の供給状態の異常を発生させているかを適切に特定することができる。以上のように、本実施形態に係る塗布・現像装置2によれば、除去液の供給に係る異常要因を詳細且つ正確に(高精度に)特定することができる。
【0098】
撮像部57は、除去液によって膜が除去された周縁部の画像を撮像し、分析部115は、画像における膜が除去された領域よりも基板Wの内周側の領域の各画素値に基づき欠陥モードを特定し、特定した欠陥モードと上記観測結果とに基づき異常要因を特定してもよい。除去液によって基板Wの内周側の領域の各画素値が考慮されることにより、例えば除去液の飛び散りの状態(スプラッシュの発生)や除去液による膜の除去のムラに起因した凸凹(ラフネスの発生)等の欠陥モードを適切に検出することができる。このような欠陥モードを考慮して異常要因を特定することによって、より高精度に異常要因を特定することができる。
【0099】
欠陥モードは、その種別として、各画素値が離散的な値となる第1欠陥モードと各画素値が連続的な値となる第2欠陥モードとを含んでいてもよい。分析部115は、欠陥モードの種別を特定すると共に、特定した欠陥モードの種別と、ポンプ71、フィルタ72、及びバルブ73の少なくとも一つの構成の前後の通流状態とに基づき、上記各構成に係る異常要因を特定してもよい。撮像画像に基づき欠陥(異常)が検知される場合において、各画素値が離散的な値をとる場合にはいわゆるスプラッシュ(第1欠陥モード)が発生していると想定される。また、各画素値が連続的な値をとる場合にはいわゆるラフネス(第2欠陥モード)が発生している想定される。このような情報に加えて、流路261の各構成の前後の通流状態の観測結果が取得されることにより、欠陥モードの詳細を絞り込みながら異常が発生している部位を詳細に特定することができ、より高精度に異常要因を特定することができる。
【0100】
分析部115は、特定した異常要因毎に定められた所定の対策処理を実施してもよい。これにより、異常要因に応じた適切な対策処理を実施し、除去液の供給に係る異常を好適に解消することができる。
【0101】
分析部115は、特定した異常要因を、ユーザ(塗布・現像装置2の使用者)に通知してもよい。これにより、どの部位において異常が発生しているか等を装置の使用者に知らせることができ、当該使用者に異常の解消に向けたアクションを促すことができる。
【0102】
分析部115は、各種センサー81,82,83,84,85,86,90による観測結果のプロセスログを取得し、プロセスログに基づいて、複数の時間帯に係る異常要因それぞれの特定を、バッチ処理により実施してもよい。これにより、バッチ処理によって効率的に異常要因の特定を実施することができる。
【0103】
各種センサー81,82,83,84,85,86には、除去液の流量を計測するフローメーターが含まれており、分析部115は、フローメーターによって計測される除去液の流量が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。これにより、除去液の流量低下等を適切に検出し、検出した情報に基づいて異常要因を高精度に特定することができる。
【0104】
各種センサー81,82,83,84,85,86には、一対の液圧センサーが含まれており、分析部115は、一対の液圧センサーによって計測される除去液の液圧の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。これにより、各種構成の前後における液圧の差分に基づいて、異常要因を高精度に特定することができる。
【0105】
各種センサー81,82,83,84,85,86には、一対の表面電位計が含まれており、分析部115は、一対の表面電位計によって計測される除去液の表面電位の差分が所定の範囲内であるか否かに基づいて、異常要因を特定してもよい。これにより、各種構成の前後における表面電位の差分に基づいて、異常要因を高精度に特定することができる。
【符号の説明】
【0106】
2…塗布・現像装置(基板処理装置)、26…除去液ノズル(ノズル)、57…撮像部、81,82,83,84,85,86,90…センサー(観測部)、115…分析部、261…流路(処理液供給路)、W…基板。