(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-15
(45)【発行日】2024-10-23
(54)【発明の名称】双極型蓄電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/18 20060101AFI20241016BHJP
H01M 10/06 20060101ALI20241016BHJP
H01M 4/73 20060101ALI20241016BHJP
H01M 4/68 20060101ALI20241016BHJP
H01M 4/14 20060101ALI20241016BHJP
H01M 50/103 20210101ALN20241016BHJP
【FI】
H01M10/18
H01M10/06 Z
H01M4/73 Z
H01M4/68 A
H01M4/14 Q
H01M50/103
(21)【出願番号】P 2024538932
(86)(22)【出願日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 JP2023026672
(87)【国際公開番号】W WO2024029366
(87)【国際公開日】2024-02-08
【審査請求日】2024-08-16
(31)【優先権主張番号】P 2022124735
(32)【優先日】2022-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005382
【氏名又は名称】古河電池株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100115679
【氏名又は名称】山田 勇毅
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田井中 亮
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 篤志
【審査官】前田 寛之
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-112924(JP,A)
【文献】特開昭54-157238(JP,A)
【文献】特開昭59-138076(JP,A)
【文献】実開昭47-22430(JP,U)
【文献】実開昭47-33920(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/06-10/34
H01M10/00-10/04
H01M 4/00- 4/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および前記正極と前記負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、
複数の前記セル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、前記セル部材の前記正極の側および前記負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、前記セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、
を有し、
前記正極用活物質層及び前記負極用活物質層はそれぞれ活物質を有し、
前記正極用活物質層と前記負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が、活物質を保持する活物質保持体を有し、
前記活物質保持体は、前記正極用活物質層または前記負極用活物質層の厚み方向から見て、前記正極用活物質層または前記負極用活物質層の内部に配置され、かつ、前記活物質と化学的に非結合、及び、無反応な材質により形成される、複数の第1骨及び複数の前記第1骨と交差する複数の第2骨を備えていることを特徴とする双極型蓄電池。
【請求項2】
前記第1骨と前記第2骨とが交差するに当たって、前記第1骨の第1の中心軸が、前記第2骨の第2の中心軸と交わらず、前記第1骨と前記第2骨が交差することにより形成される前記活物質保持体の平面の一方に前記第1骨、或いは、前記第2骨のいずれか一方が突出することを特徴とする請求項1に記載の双極型蓄電池。
【請求項3】
前記活物質保持体が前記正極用活物質層と前記負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方に設けられる場合に、前記活物質保持体は、前記第1骨、或いは、前記第2骨が突出する面が前記正極用集電体、或いは、前記負極用集電体と対向するように配置されることを特徴とする請求項2に記載の双極型蓄電池。
【請求項4】
前記活物質保持体が前記正極用活物質層と前記負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方に設けられる場合に、前記セル部材において、前記活物質保持体は、前記正極用活物質層、或いは、前記負極用活物質層の内部にあって前記正極用集電体及び前記負極用集電体よりも前記セパレータにより近い位置に配置されることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項5】
前記活物質保持体が前記正極用活物質層と前記負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方に設けられる場合に、前記活物質保持体に保持される前記活物質の周縁の長さは、前記活物質保持体の周縁の長さと同じ、或いは、それ以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項6】
前記活物質保持体が前記正極用活物質層と前記負極用活物質層の両方、或いは、いずれか一方に設けられる場合に、前記活物質保持体に保持される前記活物質の周縁の長さは、前記活物質保持体の周縁の長さと同じ、或いは、それ以上であることを特徴とする請求項4に記載の双極型蓄電池。
【請求項7】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の双極型蓄電池。
【請求項8】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項4に記載の双極型蓄電池。
【請求項9】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項5に記載の双極型蓄電池。
【請求項10】
前記正極用集電体及び前記負極用集電体は、鉛又は鉛合金からなることを特徴とする請求項6に記載の双極型蓄電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施の形態は、双極型蓄電池に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光や風力等の自然エネルギーを利用した発電設備が増えている。このような発電設備においては、発電量を制御することができないことから、蓄電池を利用して電力負荷の平準化を図るようにしている。すなわち、発電量が消費量よりも多いときには差分を蓄電池に充電する一方、発電量が消費量よりも小さいときには差分を蓄電池から放電するようにしている。上述した蓄電池としては、経済性や安全性等の観点から、鉛蓄電池が多用されている。このような従来の鉛蓄電池としては、例えば、下記特許文献1に記載されているものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載された鉛蓄電池では、額縁形をなす樹脂からなるフレーム(リム)の内側に、樹脂からなる基板が取り付けられている。基板の一方面及び他方面には、正極用集電体及び負極用集電体が設けられている。正極用集電体には、正極用活物質層が隣接している。負極用集電体には、負極用活物質層が隣接している。そして、これらがまとまってバイポーラ極板を構成している。また、額縁形をなす樹脂からなるスペーサの内側には、電解液を含有するガラスマット(電解層)が配設されている。そして、フレームとスペーサとが交互に複数積層されて組み付けられている。
【0004】
このようなバイポーラ極板の構造上、活物質層における物質量が大きくなる。そのため、活物質を保持しつつ、正極用集電体、或いは、負極用集電体に対して当該活物質層(正極用活物質層、負極用活物質層)を密着させることが困難となる場合も考えられる。
【0005】
そこで当該特許文献1に開示されている鉛蓄電池用バイポーラ極板には、正極用集電体及び負極用集電体に凹凸が設けられている。そしてこの凹凸部に正極用活物質、負極用活物質が充填される。そのため、平坦なシートに活物質を塗布する構造のバイポーラ極板に比べ活物質の脱落や剥離がおきにくい、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示されているように、集電体に凹凸部を設けて活物質を充填したとしても活物質の脱落を完全になくすことはできない。活物質が脱落してしまうと、例えば正極側及び負極側においてそれぞれ脱落した活物質が互いに接触することで短絡が生じてしまい、電池性能の低下を招来する可能性がある。
【0008】
また、活物質を保持するために、通常の鉛蓄電池で採用されている、活物質が充填された鉛合金等で形成される格子基板を用いることも考えられる。但し、このような格子基板を用いた場合、活物質の熟成・乾燥の過程で格子基板の鉛と活物質との間において酸化反応が生じてしまう。この酸化反応は酸化反応熱の発生を伴うが、当該酸化反応熱により活物質の乾燥が急激に進み、活物質にクラック(活物質割れ)が発生する可能性がある。
【0009】
活物質にクラックが発生すると、どうしても活物質と正極用集電体や負極用集電体との間における密着性が低下し、蓄電池全体としての性能の低下につながりかねない。さらには、割れた活物質が脱落してしまうと、上述したように正極側及び負極側においてそれぞれ脱落した活物質が互いに接触することで短絡が生じてしまい、電池性能の低下を招来する可能性がある。
【0010】
そして、上述した金属製の格子基板を用いると、格子基板自体が相応の大きさを有していることから、蓄電池全体の重量が増加することによる活物質の容量低下にもつながりかねない。従って、蓄電池全体の軽量化や省スペース化の観点からもその採用を躊躇せざると得ない。
【0011】
本発明は、活物質との間で発熱が生ずるような反応の発生を回避しつつ充填された活物質の保持が適切に維持されるとともに、正極用集電体や負極用集電体との密着性を確保することが可能な双極型蓄電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池は、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用活物質層及び負極用活物質層はそれぞれ活物質を有し、正極用活物質層と負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が、活物質を保持する活物質保持体を有し、活物質保持体は、正極用活物質層または負極用活物質層の厚み方向から見て、正極用活物質層または負極用活物質層の内部に配置され、かつ、活物質と化学的に非結合、及び、無反応な材質により形成される、複数の第1骨及び複数の第1骨と交差する複数の第2骨を備えている。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様に係る双極型蓄電池によれば、正極用集電体と正極用活物質層を有する正極、負極用集電体と負極用活物質層を有する負極、および正極と負極との間に介在するセパレータを備え、間隔を開けて積層配置された、セル部材と、複数のセル部材を個別に収容する複数の空間を形成する、セル部材の正極の側および負極の側の少なくとも一方を覆う基板と、セル部材の側面を囲う枠体と、を含む空間形成部材と、を有し、正極用活物質層及び負極用活物質層はそれぞれ活物質を有し、正極用活物質層と負極用活物質層は、その両方、或いは、いずれか一方が、活物質を保持する活物質保持体を有し、活物質保持体は、正極用活物質層または負極用活物質層の厚み方向から見て、正極用活物質層または負極用活物質層の内部に配置され、かつ、活物質と化学的に非結合、及び、無反応な材質により形成される、複数の第1骨及び複数の第1骨と交差する複数の第2骨を備えている。このような構成を採用することによって、活物質との間で発熱が生ずるような反応の発生を回避しつつ充填された活物質の保持が適切に維持されるとともに、正極用集電体や負極用集電体との密着性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池の構造を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池における活物質保持体を含む活物質層の全体を示す説明図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る活物質保持体の全体を示す説明図である。
【
図4】
図1の断面図における破線の円形で囲まれる領域を拡大して示す部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下に説明する各実施の形態は、本発明の一例を示したものである。また、これらの各実施の形態には種々の変更又は改良を加えることが可能であり、その様な変更又は改良を加えた形態も本発明に含まれ得る。これらの各実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。なお、以下においては、様々な蓄電池の中から鉛蓄電池を例に挙げて説明する。
【0016】
〔全体構成〕
まず、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池の全体構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100の構造を示す断面図である。
【0017】
図1に示すように、本発明の実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、複数のセル部材110と、複数枚のバイポーラプレート(空間形成部材)120と、第1のエンドプレート(空間形成部材)130と、第2のエンドプレート(空間形成部材)140とを有する。
【0018】
ここで、
図1ではセル部材110が3個積層された双極型鉛蓄電池100を示しているが、セル部材110の数は電池設計により決定される。また、バイポーラプレート120の数はセル部材110の数に応じて決まる。
【0019】
なお、以下においては、
図1に示すように、セル部材110の積層方向をZ方向(
図1における上下方向)とする。また、Z方向に垂直な方向で且つ互いに垂直な方向をX方向およびY方向とする。
【0020】
セル部材110は、正極111、負極112、および電解質層(セパレータ)113を備えている。正極111は、鉛又は鉛合金からなる正極用集電体である正極用鉛箔111aと正極用活物質層111bとを有する。負極112は、鉛又は鉛合金からなる負極用集電体である負極用鉛箔112aと負極用活物質層112bとを有する。
【0021】
この正極用鉛箔111aは、バイポーラプレート120の一方の面(
図1の図面においては、紙面における上方を向く面)と正極用鉛箔111aとの間に設けられる、後述する接着剤150によってバイポーラプレート120の一方の面に設けられている。従って、バイポーラプレート120の一方の面の上に、接着層(接着剤150)、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111bが、この記載順に積層されている。
【0022】
一方負極用鉛箔112aは、バイポーラプレート120の他方の面(
図1の図面においては、紙面における下方を向く面)と負極用鉛箔112aの間に設けられる、後述する接着剤150によってバイポーラプレート120の他方の面に設けられている。従って、バイポーラプレート120の他方の面の上に、接着層(接着剤150)、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112bが、この記載順に積層されている。そしてこれら正極111と負極112は、後述する導通体160を介して電気的に接続されている。
【0023】
セパレータ113は、例えば、硫酸を含有する電解液が含浸されたガラス繊維マットによって構成されている。セパレータ113は、対向する一方のバイポーラプレート120に設けられる正極用活物質層111bと、他方のバイポーラプレート120に設けられる負極用活物質層112bとに挟まれるように設けられる。そしてセル部材110において、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、セパレータ113、負極用活物質層112b、および負極用鉛箔112aは、この順に積層されている。
【0024】
このような構成を有する本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100では、上述したように、バイポーラプレート120、正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、及び負極用活物質層112bによって、バイポーラ電極が構成されている。バイポーラ電極とは、1枚の電極で正極、負極両方の機能を有する電極である。
【0025】
そして、本発明の実施の形態における双極型鉛蓄電池100は、正極111と負極112との間にセパレータ113を介在させてなるセル部材110と、セル部材110を挟み込むように対をなして設けられるバイポーラプレート120を複数積層する。そして、最外層を第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140とで組み付けることにより、セル部材110同士を直列に接続した電池構成を有している。
【0026】
正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法は、正極用活物質層111bのX方向およびY方向の寸法より大きい。同様に、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法は、負極用活物質層112bのX方向およびY方向の寸法より大きい。また、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用鉛箔111aの方が負極用鉛箔112aより大きい(厚い)。同様に、Z方向の寸法(厚さ)は、正極用活物質層111bの方が負極用活物質層112bより大きい(厚い)。
【0027】
複数のセル部材110は、Z方向に間隔を開けて積層配置され、この間隔の部分にバイポーラプレート120の基板121が配置されている。すなわち、複数のセル部材110は、バイポーラプレート120の基板121を間に挟まれた状態で積層されている。
【0028】
このように、複数枚のバイポーラプレート120と第1のエンドプレート130と第2のエンドプレート140は、複数のセル部材110を個別に収容する複数の空間(セル)Cを形成するための空間形成部材である。
【0029】
すなわち、バイポーラプレート120は、基板121と、枠体122と、を含む空間形成部材である。基板121は、セル部材110の正極111側および負極112側の両方を覆い、平面形状が長方形である。枠体122は、セル部材110の側面を囲うとともに基板121の4つの端面を覆う。
【0030】
また、
図1に示すように、バイポーラプレート120は、さらに基板121の両面から垂直に突出する柱部123を備える。当該基板121の各面から突出する柱部123の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。
【0031】
バイポーラプレート120を構成する基板121と枠体122と柱部123は、一体に、例えば、熱可塑性樹脂で形成されている。バイポーラプレート120を形成する熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリプロピレンが挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、成形性に優れているとともに耐硫酸性にも優れている。よって、バイポーラプレート120に電解液が接触したとしても、バイポーラプレート120に分解、劣化、腐食等が生じにくい。
【0032】
Z方向において、枠体122の寸法は基板121の寸法(厚さ)より大きく、柱部123の突出端面間の寸法は枠体122の寸法と同じである。複数のバイポーラプレート120が枠体122および柱部123同士を接触させて積層されることにより、基板121と基板121との間に空間Cが形成される。そして、互いに接触する柱部123同士により、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0033】
正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部123を貫通させる貫通穴111c,111d,112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0034】
バイポーラプレート120の基板121は、板面を貫通する複数の貫通穴121aを有する。基板121の一方の面に第1の凹部121bが、他方の面に第2の凹部121cが形成されている。第1の凹部121bの深さは第2の凹部121cの深さより深い。第1の凹部121bおよび第2の凹部121cのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0035】
バイポーラプレート120の基板121は、Z方向で、隣り合うセル部材110の間に配置されている。そして、バイポーラプレート120の基板121の第1の凹部121bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121の第2の凹部121cに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。
【0036】
バイポーラプレート120の基板121の貫通穴121aには導通体160が配置される。導通体160の両端面は、正極用鉛箔111aおよび負極用鉛箔112aと接触し、接合されている。すなわち、導通体160により正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとが電気的に接続されている。その結果、複数のセル部材110の全てが電気的に直列に接続されている。
【0037】
正極用鉛箔111aの外縁部には、当該外縁部を覆うためのカバープレート170が設けられている。カバープレート170は、例えば、薄板状の枠体で、長方形の内形線および外形線を有する。そして、カバープレート170の内縁部が正極用鉛箔111aの外縁部と重なり、カバープレート170の外縁部が基板121の一面の第1の凹部121bの周縁部と重なっている。
【0038】
すなわち、カバープレート170の内形線をなす長方形は、正極用鉛箔111aの外形線をなす長方形より小さく、カバープレート170の外形線をなす長方形は、第1の凹部121bの開口面をなす長方形より大きい。
【0039】
接着剤150は、正極用鉛箔111aの端面から第1の凹部121bの開口側の外縁部まで回り込んで、カバープレート170の内縁部と正極用鉛箔111aの外縁部との間に配置される。また接着剤150は、カバープレート170の外縁部と基板121の一面との間にも配置されている。
【0040】
すなわち
図1に示すように、カバープレート170は接着剤150により、基板121の一方の面の第1の凹部121bの周縁部と正極用鉛箔111aの外縁部とに亘って固定されている。そして、接着剤150を介して正極用鉛箔111aとカバープレート170とにおいて互いに対向する向きに固定されている。
【0041】
これにより、正極用鉛箔111aの外縁部は、第1の凹部121bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。そしてカバープレート170が載置される場合には、正極用鉛箔111aに押圧されるように配されていることがより好ましい。
【0042】
なお、
図1では示していないが、負極用鉛箔112aの外縁部も正極用鉛箔111aの外縁部を覆っているカバープレート170と同様のカバープレートで覆われていても良い。また、カバープレートについては、薄板状の枠体であることを例に挙げて説明したが、例えば、耐電解液(耐硫酸)性を備えていればテープ状の物等であっても構わない。
【0043】
次に、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100における正極用活物質層111b、負極用活物質層112bの両方、或いは、いずれか一方は、活物質を保持する活物質保持体180を有している。
【0044】
すなわち、
図1に示すように本発明の実施の形態では、正極用活物質層111bと負極用活物質層112bは、いずれもその内部(正極用活物質層111b、負極用活物質層112bの厚み方向(Z方向)から見て、活物質同士の間)に活物質保持体180を備えている。但し、上述したように、活物質保持体180は、正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bのいずれか一方にのみ備えられていても良い。
【0045】
ここで
図2は、本発明の実施の形態に係る双極型鉛蓄電池100における活物質保持体180を含む活物質層の全体を示す説明図である。また、
図3は、本発明の実施の形態に係る活物質保持体180の全体を示す説明図である。
【0046】
なお、
図2で示す活物質層は、正極用活物質層111b、或いは、負極用活物質層112bのいずれであっても良いが、説明の都合上、正極用活物質層111bを例に挙げて説明する。従って、以下の説明は負極用活物質層112bにおいても当てはまるものである。
【0047】
また、
図2で示されている正極用活物質層111bは、バイポーラプレート120の積層方向上側から見た図である。従って、
図2の紙面において左右方向がX方向、上下方向がY方向、奥行き方向が積層方向であるZ方向である。
【0048】
図2に示す正極用活物質層111bは、活物質保持体180が活物質を保持した状態で示されている。すなわち、正極用活物質層111bを構成する活物質によって活物質保持体180が挟み込まれるように正極用活物質層111bの内部に活物質保持体180が配置されている。従って、
図2において活物質保持体180自体は直接的には見えていないことから破線で示されている。
【0049】
活物質保持体180は、正極用活物質層111bの厚み方向(Z方向)から見て、活物質同士の間、すなわち、正極用活物質層111bの内部にあり、正極用鉛箔111aと活物質保持体180とが直接接しない。このことにより、正極用活物質層111bと正極用鉛箔111aとの接合面積を増大させ、正極用活物質層111bの正極用鉛箔111aへの接合力を向上させる効果がある。また、正極用鉛箔111aの集電体として機能する表面積も増大させることができる。
【0050】
一方、
図3では、活物質が活物質保持体180に充填される前の状態が示されており、活物質保持体180そのものが示されている。活物質保持体180は、活物質と化学的に非結合、及び、無反応な材質により形成される。すなわち、活物質保持体180が活物質を保持した際に、活物質保持体180と活物質との間で酸化反応が生じない素材を用いて形成される。
【0051】
このような素材を用いることによって、酸化反応熱による活物質の急激な乾燥、及び、当該乾燥が引き起こすクラックの発生等を防止することができる。具体的な素材としては、樹脂、例えば、好適にはポリプロピレンを挙げることができる。また、金属素材を樹脂で被覆した素材を使用することも考えられる。さらには、活物質との間で酸化反応熱が発生しないのであれば、被覆されない金属素材の採用も可能である。
【0052】
なお、このように活物質保持体180が「無反応な材質」により形成され得る旨、記載したが、ここでの「無反応」については、活物質保持体180と活物質との間で酸化反応が全く生じない場合に限られない。換言すれば、当該「無反応」の意味には、若干の幅があっても良い。
【0053】
すなわち、活物質保持体180と活物質との間で酸化反応が生じたとしても、活物質に対して上述したようなクラック等が生じないのであれば、活物質保持体180として、ごく小さな反応が生ずる素材や双極型鉛蓄電池100の寿命との関係で膨大な時間を掛けて反応が進行するような素材であっても採用し得る。
【0054】
図3に示すように、活物質保持体180は、複数の第1骨181及び複数の第1骨181と交差する複数の第2骨182を備えている。すなわち、複数の第1骨181と複数の第2骨182とを、互いに交差するように組み合わせることによって、網目状(メッシュ状)の活物質保持体180が形成される。
【0055】
第1骨181と第2骨182は、縦横いずれの骨を指しても良い。但し、ここでは説明の便宜上、
図3において、例えば、Y方向に伸びる骨を第1骨181とし、X方向に伸びる骨を第2骨182とする。
【0056】
そして、第1骨181と第2骨182とが交差することによって開口183が形成される。
図2、或いは、
図3に示す活物質保持体180では、互いに概ね等間隔で配置される複数の第1骨181と複数の第2骨182とが互いに概ね直交するように交差する。このため、開口183は正方形の形状を有している。
【0057】
但し、第1骨181と第2骨182とが不等間隔に配置されることを排除するものではない。従って第1骨181と第2骨182とが不等間隔に配置された場合には、開口183は長方形となる。そこで、開口183を構成する第1骨181と第2骨182とのアスペクト比は、上述した正方形の場合(アスペクト比が1:1の場合)を含み、例えば、0.8:1から1:1.2の範囲であることが好ましい。
【0058】
なお、
図3に示す活物質保持体180では、第1骨181と第2骨182とが、X方向とY方向とにそれぞれ平行となるように互いに直交するように形成されているが、このような形状に限定されない。すなわち第1骨181と第2骨182とを、例えば、互いに斜めに交差させた状態に形成することもできる。このような場合には、開口183は菱形となる。
【0059】
また、第1骨181と第2骨182とで形成される開口183の形状として、多角形、円形、籠目形状、或いは、千鳥格子といった形状を採用することができ、開口183の形状については、どのように設定することも可能である。
【0060】
あるいは、
図3に示されるように、第1骨181と第2骨182とが互いに直交するように配置されている活物質保持体180を、例えば、45度回転させた状態とする。その上で、この状態の活物質保持体180に活物質を充填して正極用活物質層111bとして使用することも可能である。
【0061】
また、開口183の面積については、あまり大きすぎると活物質を保持しておくことができなくなってしまう。そのため、好適には、開口183の面積が、例えば、20~50mm2程度となるように第1骨181と第2骨182とが配置される。
【0062】
なお、ここで第1骨181と第2骨182とが交差する、と記載しているが、第1骨181と第2骨182とは、例えば、ポリプロピレンの板を打ち抜くことで形成されていても良い。或いは、布地の縦糸と横糸のように、例えば、第1骨181が複数の第2骨182を乗り越え、潜ることを繰り返すことで織り込まれるように形成されていても良い。
【0063】
また、
図2や
図3においては、第1骨181と第2骨182とはいずれも同じ太さ(直径)に形成された状態を示している。但し、このように両者が同じ太さである場合に限定されず、一方が他方よりも太く形成されていても良い。また図面において、活物質保持体180の四辺は外側に開いているように形成されているが、四辺全てが閉じているように形成されていても良い。一方、対向する二辺のみが開いて(閉じて)いるように形成されていても良い。
【0064】
さらに、第1骨181と第2骨182とが組み合わされる場合に、第1骨181と第2骨182とが互いにオフセットされた位置に配置されていても良い。すなわち、第1骨181と第2骨182とが交差するに当たって、第1骨181の第1の中心軸が、第2骨182の第2の中心軸と交わらず、第1骨181と第2骨182が交差するように形成されていても良い。このように形成されると、活物質保持体180の平面の一方に第1骨181、或いは、第2骨182のいずれか一方が突出した状態となる。
【0065】
図4は、
図1の断面図における破線の円形で囲まれる領域を拡大して示す部分拡大図である。
図4において、円内の最下部に正極用鉛箔111aが示されており、正極用活物質層111b、セパレータ113がZ方向上側に向けて順に積層されている。
【0066】
そして、正極用活物質層111bの内部に活物質保持体180が配置されている。
図4においては、第2骨182がX方向に伸びるように示されており、当該第2骨182と交差する第1骨181の断面が見えている。
【0067】
当該
図4の活物質保持体180が示すように、第1骨181の中心軸(第1の中心軸)と第2骨182の中心軸(第2の中心軸)とは、互いの中心軸の位置が一致せず、互いにずれた状態で組み合わされている。
【0068】
すなわち、第2骨182を基準に考えた場合、断面が見えている第1骨181の第1の中心軸は、第2骨182の第2の中心軸よりもZ方向下側にずれて配置されている。その結果、活物質保持体180に形成される平面、つまり、X方向とY方向とで規定される面(以下、このような面を適宜「X-Y平面」と表す)において、第1骨181がより正極用鉛箔111a側に突出した状態となるように正極用活物質層111b内に配置されている。
【0069】
正極用活物質層111bの内部においてこのような向きに活物質保持体180が配置されていることから、逆にセパレータ113側に対するX-Y平面における第1骨181の突出量は、正極用鉛箔111a側に比べて小さい。このように活物質保持体180におけるX-Y平面において、その表裏面において、骨(本発明の実施の形態においては第1骨181)の突出量に変化を付けている。
【0070】
このような構造とすることによって、活物質保持体180はより突出量の多い側、つまり、凸側に湾曲しようとする力が働く。すなわち、活物質保持体180の凸側を正極用鉛箔111a側に向けて配置することによって、正極用活物質層111bから正極用鉛箔111aに向けて活物質保持体180の凸側に湾曲しようとする力が作用する。そのため、より正極用活物質層111bを正極用鉛箔111aに密着させることが可能となる。
【0071】
また、このように活物質保持体180に凸側に湾曲しようとする力が働いた場合、X方向中央部において活物質保持体180が盛り上がった状態となるものの、その周縁部においては正極用鉛箔111a側へと力が掛かることになる。そのため当該周縁部において、より正極用活物質層111bが正極用鉛箔111aに密着することになるため、電解液が注液された場合であっても正極用活物質層111bと正極用鉛箔111aとの間から電解液が浸入することを防止することができる。
【0072】
なお、上述したように活物質保持体180のX-Y平面を構成する他方の面における第1骨181の突出量は、一方の面における第1骨181の突出量よりも小さい。これに対して、他方の面における第1骨181の突出量については、突出がなく、他方の面と面一となるように形成されていても良い。
【0073】
そして活物質保持体180上述したように凸側に湾曲することと関係して、活物質保持体180と当該活物質保持体180が保持する活物質の量との関係について、両者それぞれの周縁の長さを基に説明すると、以下の通りである。すなわち、活物質保持体180に保持される活物質の周縁の長さは、活物質保持体180の周縁の長さと同じ、或いは、それ以上である。
【0074】
つまり、活物質保持体180に必要十分な量の活物質が充填され、活物質を保持した状態の活物質保持体180の周縁を見ると、次のような状態にある。この状態の活物質保持体180の周縁は、第1骨181、或いは、第2骨182の端部が見えている状態、或いは、より多くの量の活物質が充填されてこれらの端部が隠れた状態である。
【0075】
そして、活物質保持体180の周縁の長さと活物質の周縁の長さとが同じ場合、すなわちこの場合の活物質保持体180に充填される活物質の量を100%とすると、活物質の量は100%を含み、120%程度までの量が活物質保持体180の保持されることがより好ましい。
【0076】
上述したような十分な量の活物質が活物質保持体180に充填されることによって、たとえ活物質保持体180が凸側に湾曲し、その中央部が正極用鉛箔111aから離れる方向に盛り上がったとしても、充填された活物質の重みにより相対的に正極用活物質層111bと正極用鉛箔111aとの密着度は向上することになる。
【0077】
さらに、活物質保持体180は、
図4に示すような位置に配置されている。すなわち、活物質保持体180は、正極用活物質層111bの内部にあって、正極用鉛箔111aとセパレータ113との略中央部に配置されているのではなく、よりセパレータ113に近い位置に配置されている。
【0078】
これは、まず正極用活物質層111bと正極用鉛箔111aとの関係で言えば、両者の密着性が良好であればあるほど、双極型鉛蓄電池100として導電性が良くなる。そのため、活物質を保持するための活物質保持体180が正極用鉛箔111a側よりもセパレータ113側に配置することでより正極用活物質層111bを正極用鉛箔111aへ密着させることとしたものである。
【0079】
さらに、セパレータ113に含浸された電解液は、セパレータ113と正極用活物質層111bとの間で接触面積が増加すればするほど活物質の利用率が向上することになる。このことは、双極型鉛蓄電池100の性能が向上することにつながる。しかしそのためには、活物質が密な状態にあるとセパレータ113から正極用活物質層111bを介して正極用鉛箔111aへ電解液が浸透していくことができない。
【0080】
また、正極用活物質層111bは、使用されるたびに膨張、収縮を繰り返すことになるが、活物質保持体180については、このような膨張、収縮は生じない。従って、活物質保持体180を内部に有した状態で正極用活物質層111bに膨張等が生ずると、徐々に活物質と活物質保持体180とが接している部分に空隙が生ずることになる。
【0081】
そして当該空隙は、正極用活物質層111bにおいて活物質保持体180と接している部分を中心に若干密な状態から粗な状態へと変化させるものとなる。そのため、この空隙が正極用鉛箔111aよりもセパレータ113側にできることによって、よりセパレータ113から正極用活物質層111bに向けて、ひいては正極用鉛箔111aに向けて当該空隙を液路として電解液が含浸しやすくなる。
【0082】
以上の観点から、活物質保持体180は、正極用活物質層111bの内部にあって、正極用鉛箔111aよりもセパレータ113により近い位置に配置される。そして、活物質保持体180からセパレータ113までの距離と活物質保持体180から正極用鉛箔111aまでの距離に関して、その比が1:9となる位置に配置されることがより好ましい。
【0083】
図1に戻って、第1のエンドプレート130は、セル部材110の正極側を覆う基板131と、セル部材110の側面を囲う枠体132と、を含む空間形成部材である。また、基板131の一面(最も正極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部133を備える。
【0084】
基板131の平面形状は長方形であり、基板131の4つの端面が枠体132で覆われ、基板131と枠体132と柱部133が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板131の一面から突出する柱部133の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。但し、柱部133と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0085】
Z方向において、枠体132の寸法は基板131の寸法(厚さ)より大きく、柱部133の突出端面間の寸法は枠体132の寸法と同じである。そして、第1のエンドプレート130は、最も外側(正極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体132および柱部133を接触させて積層される。
【0086】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第1のエンドプレート130の基板131との間に空間Cが形成される。そして、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第1のエンドプレート130の柱部133とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0087】
最も外側(正極側)に配置されるセル部材110の正極用鉛箔111a、正極用活物質層111b、およびセパレータ113には、柱部133を貫通させる貫通穴111c,111d,113aがそれぞれ形成されている。
【0088】
第1のエンドプレート130の基板131の一面に凹部131bが形成されている。凹部131bのX方向およびY方向の寸法は、正極用鉛箔111aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0089】
第1のエンドプレート130の基板131の凹部131bに、セル部材110の正極用鉛箔111aが接着剤150を介して配置されている。また、バイポーラプレート120の基板121と同様に、カバープレート170が接着剤150により基板131の一面側に固定される。そのため、正極用鉛箔111aの外縁部が、凹部131bの周縁部との境界部においてもカバープレート170で覆われている。
【0090】
なお、第1のエンドプレート130に設けられる正極用鉛箔111aと接して配置される正極用活物質層111bについては、その内部に上述したような活物質保持体180が設けられている。
【0091】
また、第1のエンドプレート130は、凹部131b内の正極用鉛箔111aと電気的に接続された、
図1では図示されていない正極端子を備えている。
【0092】
第2のエンドプレート140は、セル部材110の負極側を覆う基板141と、セル部材110の側面を囲う枠体142と、を含む空間形成部材である。また、基板141の一面(最も負極側に配置されるバイポーラプレート120の基板121と対向する面)から垂直に突出する柱部143を備える。
【0093】
基板141の平面形状は長方形であり、基板141の4つの端面が枠体142で覆われ、基板141と枠体142と柱部143が一体に、例えば、上述した熱可塑性樹脂で形成されている。なお、基板141の一面から突出する柱部143の数は一つであってもよいし、複数であってもよい。但し、柱部143と接触させるバイポーラプレート120の柱部123の数に対応した数となる。
【0094】
Z方向において、枠体142の寸法は基板141の寸法(厚さ)より大きく、二つの柱部143の突出端面間の寸法は枠体142の寸法と同じである。そして、第2のエンドプレート140は、最も外側(負極側)に配置されるバイポーラプレート120の枠体122および柱部123に対して、枠体142および柱部143を接触させて積層される。
【0095】
これにより、バイポーラプレート120の基板121と第2のエンドプレート140の基板141との間に空間Cが形成される。そして、互いに接触するバイポーラプレート120の柱部123と第2のエンドプレート140の柱部143とにより、空間CのZ方向の寸法が保持される。
【0096】
最も外側(負極側)に配置されるセル部材110の負極用鉛箔112a、負極用活物質層112b、およびセパレータ113には、柱部143を貫通させる貫通穴112c,112d,113aがそれぞれ形成されている。
【0097】
第2のエンドプレート140の基板141の一面に凹部141bが形成されている。凹部141bのX方向およびY方向の寸法は、負極用鉛箔112aのX方向およびY方向の寸法に対応させてある。
【0098】
第2のエンドプレート140の基板141の凹部141bに、セル部材110の負極用鉛箔112aが接着剤150を介して配置されている。そして、第2のエンドプレート140に設けられる負極用鉛箔112aと接して配置される負極用活物質層112bについても、その内部に上述したような活物質保持体180が設けられている。
【0099】
また、第2のエンドプレート140は、凹部141b内の負極用鉛箔112aと電気的に接続された、
図1では図示されていない負極端子を備えている。
【0100】
ここで、対向するバイポーラプレート120同士、第1のエンドプレート130と対向するバイポーラプレート120、或いは、第2のエンドプレート140と対向するバイポーラプレート120との接合の際には、各種溶着の方法を採用することができる。各種溶着の方法としては、例えば、振動溶着(振動溶接)、超音波溶着、熱板溶着を挙げることができる。このうち振動溶着は、接合の際に接合の対象となる面を加圧しながら振動させることで溶着するものであり、溶着のサイクルが早く、再現性も良い。そのためより好適には、振動溶着が用いられる。
【0101】
なお、溶着の対象としては、互いに対向するバイポーラプレート120、第1のエンドプレート130、第2のエンドプレート140において対向する位置に配置される枠体のみならず、各柱部も含まれる。
【0102】
〔製造方法〕
この実施の形態の双極型鉛蓄電池100は、例えば、以下に説明する各工程を有する方法で製造することができる。
【0103】
<正負極用鉛箔付きバイポーラプレートの作製工程>
先ず、バイポーラプレート120の基板121を、第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置く。そして第1の凹部121bに接着剤150を塗布し、第1の凹部121b内に正極用鉛箔111aを入れる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0104】
次に、基板121の第2の凹部121c側を上に向けて作業台に置き、貫通穴121aに導通体160を挿入する。そして、第2の凹部121cに接着剤150を塗布し、第2の凹部121c内に負極用鉛箔112aを入れる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cにバイポーラプレート120の柱部123を通す。この接着剤150を硬化させて、基板121の他面に負極用鉛箔112aを貼り付ける。
【0105】
次に、基板121の第1の凹部121b側を上に向けて作業台に置く。そして正極用鉛箔111aの外縁部の上および第1の凹部121bの縁部となる基板121の上面に接着剤150を塗布し、その上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板121の部分(第1の凹部121bの周縁部)の上に亘って固定する。
【0106】
次に、抵抗溶接を行って、導通体160と正極用鉛箔111aと負極用鉛箔112aとを接続する。これにより、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を得る。この正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を必要枚数だけ用意する。
【0107】
<正極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第1のエンドプレート130の基板131を、凹部131b側を上に向けて作業台に置く。そして凹部131bに接着剤150を塗布し、凹部131b内に正極用鉛箔111aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、正極用鉛箔111aの貫通穴111cにエンドプレート130の柱部133を通す。この接着剤150を硬化させて、基板131の一面に正極用鉛箔111aを貼り付ける。
【0108】
次に、正極用鉛箔111aの外縁部の上および凹部131bの縁部となる基板131の上面に接着剤150を塗布する。この接着剤150の上にカバープレート170を載せて接着剤150を硬化させる。これにより、カバープレート170を、正極用鉛箔111aの外縁部の上とその外側に連続する基板131の部分の上に亘って固定する。これにより、正極用鉛箔付きエンドプレートを得る。
【0109】
<負極用鉛箔付きエンドプレートの作製工程>
第2のエンドプレート140の基板141を、凹部141b側を上に向けて作業台に置く。そして凹部141bに接着剤150を塗布し、凹部141b内に負極用鉛箔112aを入れて接着剤150を硬化させる。その際に、負極用鉛箔112aの貫通穴112cに第2のエンドプレート140の柱部143を通す。この接着剤150を硬化させて、基板141の一面に負極用鉛箔112aが貼り付けられた第2のエンドプレート140を得る。
【0110】
<プレート同士を積層して接合する工程>
先ず、正極用鉛箔111aおよびカバープレート170が固定された第1のエンドプレート130を、正極用鉛箔111aを上に向けて作業台に置く。そしてカバープレート170の中に活物質保持体180が設けられている正極用活物質層111bを入れて正極用鉛箔111aの上に置く。その際、活物質保持体180の凸側が正極用鉛箔111a側に向くように正極用活物質層111bを配置する。また、正極用活物質層111bの貫通穴111dに第1のエンドプレート130の柱部133を通す。
【0111】
また、正極用活物質層111bの上に、セパレータ113、活物質保持体180が設けられている負極用活物質層112bを置く。その際、活物質保持体180の凸側が負極用鉛箔112a側に向くように負極用活物質層112bを配置する。
【0112】
次に、この状態の第1のエンドプレート130の上に、正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120の負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。その際に、バイポーラプレート120の柱部123を、セパレータ113の貫通穴113aおよび負極用活物質層112bの貫通穴112dに通して、第1のエンドプレート130の柱部133の上に載せる。そして、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122を載せる。
【0113】
この状態で、第1のエンドプレート130を固定し、バイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、第1のエンドプレート130の枠体132の上に、バイポーラプレート120の枠体122が接合される。また、第1のエンドプレート130の柱部133の上にバイポーラプレート120の柱部123が接合される。
【0114】
その結果、第1のエンドプレート130の上にバイポーラプレート120が接合される。第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とで形成される空間Cにセル部材110が配置され、バイポーラプレート120の上面に正極用鉛箔111aが露出した状態となる。
【0115】
次に、このようにして得られた、第1のエンドプレート130とバイポーラプレート120とが接合されている結合体の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せる。その後、さらに、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0116】
この状態で、この結合体を固定し、別の正負極用鉛箔付きのバイポーラプレート120を基板121の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。この振動溶接工程を、必要な枚数のバイポーラプレート120が第1のエンドプレート130の上に接合されるまで続けて行う。
【0117】
最後に、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、正極用活物質層111b、セパレータ113、および負極用活物質層112bをこの順に載せる。その後、さらに、第2のエンドプレート140を、負極用鉛箔112a側を下に向けて置く。
【0118】
この状態で、この結合体を固定し、第2のエンドプレート140を基板141の対角線方向に振動させながら振動溶接を行う。これにより、全てのバイポーラプレート120が接合された結合体の最も上側のバイポーラプレート120の上に、第2のエンドプレート140が接合される。
【0119】
なお、上記の説明においては、第1のエンドプレート130から第2のエンドプレート140に向けて順に積層する流れを説明した。但し、この積層順は、反対に第2のエンドプレート140から第1のエンドプレート130に向けて順に積層することとしても良い。
【0120】
<注液および化成工程>
上述の各プレート同士の積層、接合工程において、枠体の対向面同士の振動溶接による接合構造が形成され、対向する枠体の切り欠き部によって、貫通口が形成される。そして、さらに双極型鉛蓄電池100の当該貫通口を覆うように蓋が取り付けられる。
【0121】
この蓋に設けられた連通口から電解液を所定量注液することで、貫通口を介して空間Cに電解液が注液される。これにより、セパレータ113に電解液を含浸させることができる。その上で所定の条件で化成することで、双極型鉛蓄電池100を作製できる。
【0122】
なお、上述したように、本発明の実施の形態においては双極型鉛蓄電池を例に挙げて説明した。但し、集電板に鉛ではなく他の金属を用いるような他の蓄電池においても上記説明内容が当てはまる場合には、当然その適用を排除するものではない。
【符号の説明】
【0123】
100・・・双極型鉛蓄電池
110・・・セル部材
111・・・正極
112・・・負極
111a・・・正極用鉛箔
111aa・・・貯留部
112a・・・負極用鉛箔
111b・・・正極用活物質層
112b・・・負極用活物質層
113・・・セパレータ
120・・・バイポーラプレート
121・・・バイポーラプレートの基板
121a・・・基板の貫通穴
122・・・バイポーラプレートの枠体
130・・・第1のエンドプレート
131・・・第1のエンドプレートの基板
132・・・第1のエンドプレートの枠体
140・・・第2のエンドプレート
141・・・第2のエンドプレートの基板
142・・・第2のエンドプレートの枠体
150・・・接着剤
160・・・導通体
170・・・カバープレート
180・・・活物質保持体
181・・・第1骨
182・・・第2骨
183・・・開口
C・・・セル(セル部材を収容する空間)