(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】予備機管理装置、予備機管理方法、及び、予備機管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20241017BHJP
【FI】
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2023512501
(86)(22)【出願日】2021-04-05
(86)【国際出願番号】 JP2021014454
(87)【国際公開番号】W WO2022215107
(87)【国際公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-09-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100129230
【氏名又は名称】工藤 理恵
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 玲
【審査官】永野 一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0071317(US,A1)
【文献】特開2010-102461(JP,A)
【文献】特開2004-246468(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104573329(CN,A)
【文献】国際公開第2014/073553(WO,A1)
【文献】特開2014-2783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
各地の設備に向けた複数の予備機の各保管拠点を管理する予備機管理装置において、
複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、前記複数の予備機の再配置方法を計算する計算部と、
前記複数の予備機の再配置方法を通知する通知部と、
を備え、
前記ユーザ影響度は、設備の故障時に影響を受けるユーザの数と、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間と、を積算した積算値であり、
前記オンサイト稼働影響度は、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間であり、
前記計算部は、
n
H
m
通り(nは保管拠点の総数、mは予備機の総数)の前記再配置方法について前記ユーザ影響度と前記オンサイト稼働影響度との合計値をそれぞれ計算し、前記
n
H
m
通りの再配置方法のうち前記合計値が最小となる再配置方法を最適な再配置方法として決定する予備機管理装置。
【請求項2】
前記ユーザ影響度は、
建物に収容されている設備の数を更に積算した値である請求項
1に記載の予備機管理装置。
【請求項3】
前記予備機の配置状況に変更が発生した場合とは、
予備機の数が変化した場合、又は予備機の配置が変更した場合である請求項1
又は2に記載の予備機管理装置。
【請求項4】
前記計算部は、
前記予備機の配置状況に変更が発生した場合に代えて、予備機の配置状況に変更が発生しない場合に、前記複数の予備機の再配置方法を計算する請求項1
又は2に記載の予備機管理装置。
【請求項5】
前記複数の予備機の再配置方法に基づき、保管拠点間での予備機の移管方法を計算する計算部を更に備える請求項1乃至
4のいずれかに記載の予備機管理装置。
【請求項6】
各地の設備に向けた複数の予備機の各保管拠点を管理する予備機管理方法において、
予備機管理装置が、
複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、前記複数の予備機の再配置方法を計算する
第1のステップと、
前記複数の予備機の再配置方法を通知する
第2のステップと、
を行い、
前記ユーザ影響度は、設備の故障時に影響を受けるユーザの数と、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間と、を積算した積算値であり、
前記オンサイト稼働影響度は、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間であり、
前記第1のステップでは、
n
H
m
通り(nは保管拠点の総数、mは予備機の総数)の前記再配置方法について前記ユーザ影響度と前記オンサイト稼働影響度との合計値をそれぞれ計算し、前記
n
H
m
通りの再配置方法のうち前記合計値が最小となる再配置方法を最適な再配置方法として決定する予備機管理方法。
【請求項7】
請求項1乃至
5のいずれかに記載の予備機管理装置としてコンピュータを機能させる予備機管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予備機管理装置、予備機管理方法、及び、予備機管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
通信キャリアでは、通信装置等の設備を保守運用する保守運用体制が整備されている。
【0003】
例えば、遠隔監視部門は、ネットワークを構成する装置に故障が発生すると、故障アラームを検知し、どのエリアの装置故障であるかを確認する。そして、遠隔監視部門は、故障装置のビルが位置するエリアの故障修理班の出動拠点にビル名、装置名、交換部材名等を連絡し、故障装置の修理を指示する。例えば、遠隔監視部門は、北海道で装置故障が発生した場合、北海道の故障修理班に指示する。その後、故障修理班は、出動拠点から指示されたビルへ予備機を持参し、故障装置のパッケージ等を交換する。
【0004】
現地の故障修理班が出動拠点に設備の予備機を大量に保管していれば設備故障時に即応できるが、予備機の大量保管は経済的に無駄が多いため、一般には最低数の予備機で運用される。しかし、設備故障の発生が所定エリアで一時的に多くなると、当該所定エリアにおいて予備機が不足し、サービス低下の影響を長時間化させてしまう。そこで、予備機の所在、数量等を管理する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、予備機の所在、数量等を管理する単なる管理技術にすぎないため、所定エリアで予備機が一時的に不足した場合、予備機の再配置を人手で決定しなければならない。また、製造元による修理に数か月程度要する予備機もあるため、各エリアで故障が発生する度にサービス品質を維持できるかを検討しなければならない。通信キャリアのネットワークを構成する装置は多種多様であり、全ての装置についてサービス品質を維持できる予備機の配置状況になっているかを人手で管理するのは困難である。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、設備の予備機(設備の全部又は一部の予備機)の再配置方法を提示可能な技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の予備機管理装置は、各地の設備に向けた複数の予備機の各保管拠点を管理する予備機管理装置において、複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、前記複数の予備機の再配置方法を計算する計算部と、前記複数の予備機の再配置方法を通知する通知部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様の予備機管理方法は、各地の設備に向けた複数の予備機の各保管拠点を管理する予備機管理方法において、予備機管理装置が、複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、前記複数の予備機の再配置方法を計算するステップと、前記複数の予備機の再配置方法を通知するステップと、を行う。
【0010】
本発明の一態様の予備機管理プログラムは、上記予備機管理装置としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、設備の予備機(設備の全部又は一部の予備機)の再配置方法を提示可能な技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る予備機管理システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、予備機配置情報と予備機故障情報の例を示す図である。
【
図3】
図3は、予備機管理方法の処理フロー例を示す図である。
【
図4】
図4は、予備機情報の変更例を示す図である。
【
図5】
図5は、各出動拠点と各出動対象ビルとの配置例を示す図である。
【
図6A】
図6Aは、予備機の再配置方法1、2を示す図である。
【
図6B】
図6Bは、予備機の再配置方法3~5を示す図である。
【
図7】
図7は、予備機の移管方法の例を示す図である。
【
図8】
図8は、予備機管理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付し説明を省略する。
【0014】
[発明の概要]
本発明は、上記課題に対し、設備の予備機(設備の全部又は一部の予備機)の再配置方法を提示することを目的とする。特に、経済的な予備機の配置を実現しつつも、設備の故障数の片寄りによって一時的に予備機が足らないエリアが出たとしても、サービス低下の影響を最小限で対応できるように即時に判断できるようにすることを目的とする。
【0015】
そこで、本発明は、複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、複数の予備機の再配置方法を計算して通知する。これにより、人手による予備機の再配置の検討が不要となり、自動で設備の予備機の再配置方法を提示可能となる。
【0016】
また、本発明は、複数の再配置方法の中から、ユーザ影響度(少なくとも、設備の故障時に影響を受けるユーザの数と、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間と、を積算した積算値)と、オンサイト稼働影響度(少なくとも、保管拠点から設備の建物へ移動する最短の移動時間)と、を合計した合計値が最小となる再配置方法を計算する。これにより、サービス中断時間の増加リスクを抑え、サービス低下の影響を最小限で対応可能となる。
【0017】
[予備機管理システムの構成例]
図1は、本実施形態に係る予備機管理システム1の構成例を示す図である。当該予備機管理システム1は、予備機の最適な再配置の推奨機能を備えた情報処理システムである。当該予備機管理システム1は、例えば、予備機管理装置10と、設備管理DB20と、ビル位置情報DB30と、地図情報DB40と、を備える。
【0018】
予備機管理装置10は、各地の設備に向けた複数の予備機の各保管拠点を管理し、複数の予備機の再配置方法及び移管方法を計算して管理者又は故障修理班へ提示する装置である。当該予備機管理装置10は、設備管理DB20、ビル位置情報DB30、地図情報DB40に相互通信可能に接続されている。
【0019】
設備管理DB20は、通信装置等の設備に関する設備情報を管理するDBである。
【0020】
ビル位置情報DB30は、設備が設置されているビル(建物)の位置に関する位置情報を管理するDBである。
【0021】
地図情報DB40は、地図に関する地図情報を管理するDBである。
【0022】
[予備機管理装置の構成例]
予備機管理装置10は、
図1に示すように、例えば、予備機管理DB11と、変更確認部12と、最適配置計算エンジン13と、最適配置通知部14と、を備える。
【0023】
予備機管理DB11は、複数の予備機を各保管拠点(故障修理班の出動拠点)に配置した予備機配置情報を記憶管理するDBである。
図2(a)は、予備機配置情報の例を示す図である。予備機配置情報には、例えば、予備機のパッケージ名と、パッケージの固有情報と、予備機の保管拠点(出動拠点)と、が関連付けて格納されている。
【0024】
また、予備機管理DB11は、予備機の故障に関する予備機故障情報を記憶管理するDBである。
図2(b)は、予備機故障情報の例を示す図である。予備機故障情報には、例えば、予備機のパッケージ名と、パッケージの故障率と、製造元からの返却期間と、が関連付けて格納されている。
【0025】
変更確認部12は、予備機管理DB11の予備機配置情報と設備管理DB20の設備情報とを参照し、複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生したか否かを判定する判定部である。
【0026】
最適配置計算エンジン13は、予備機の最適な再配置を計算する計算エンジンであり、配置方法計算部131と、移管方法計算部132と、を備える。
【0027】
配置方法計算部131は、予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響度と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響度と、を基に、複数の予備機の最適な再配置方法を計算する計算部である。
【0028】
例えば、ユーザ影響度は、少なくとも、設備の故障時に影響を受けるユーザの数と、保管拠点(出動拠点)から設備のビル(建物)へ移動する最短の移動時間と、を積算した積算値である。オンサイト稼働影響度は、少なくとも、保管拠点(出動拠点)から設備のビル(建物)へ移動する最短の移動時間である。配置方法計算部131は、複数の再配置方法の中から、当該ユーザ影響度と当該オンサイト稼働影響度とを合計した合計値が最小となる再配置方法を最適な再配置方法として計算する。
【0029】
移管方法計算部132は、配置方法計算部131が計算した複数の予備機の最適な再配置方法に基づき、保管拠点間(出動拠点間)での予備機の移管方法を計算する計算部である。
【0030】
最適配置通知部14は、最適配置計算エンジン13が計算した予備機の最適な再配置方法及び移管方法を管理者や故障修理班へ通知する通知部である。
【0031】
[予備機管理装置の動作例]
図3は、予備機管理方法の処理フロー例を示す図である。当該予備機管理方法は、予備機管理装置10で実行される。
【0032】
ステップS1;
まず、変更確認部12は、予備機管理DB11の予備機配置情報と設備管理DB20の設備情報とを定期的又は不定期に参照し、予備機の配置状況に変更が発生したか否かを判定する。そして、変更確認部12は、予備機の配置状況に変更が発生した場合には、当該変更があったことを示す変更情報を最適配置計算エンジン13へ通知してステップS2へ進む。変更がない場合には、変更確認部12は、処理フローを終了する。
【0033】
例えば、変更確認部12は、出動拠点の1か所でも予備機がゼロになった場合等、予備機の使用又は修理により予備機の総数が変化した場合、予備機の再配置により予備機の配置が変更した場合に、予備機の配置状況に変更が発生したと判定する。
【0034】
具体的には、出動拠点の現地で予備機を修理する場合、製造元による修理から予備機の返却があった場合には、予備機管理システム1の管理者や出動拠点の故障修理班は、予備機管理DB11の予備機配置情報を変更(登録・更新)する(
図4参照)。これにより、予備機の配置状況に変更が発生するので、変更確認部12は、予備機配置情報から予備機の配置状況を把握し、予備機の配置状況や予備機の数に変更があったことを最適配置計算エンジン13へ通知する。
【0035】
具体的には、設備を増設又は減設する場合、サービスオーダの追加又は変更があった場合には、予備機管理システム1の管理者は、設備管理DB20の設備情報を変更(登録・更新・収容ユーザの変更)する。これにより、設備の数が増減し、それに伴い予備機の配置状況に変更が発生することがあるので、変更確認部12は、設備管理DB20から故障時のサービス低下の影響に関する各種情報を取得し、予備機の配置状況に変更があったことを最適配置計算エンジン13へ通知する。
【0036】
ステップS2;
次に、最適配置計算エンジン13において、配置方法計算部131は、予備機管理DB11の予備機配置情報から、現時点における予備機の総数、出動拠点の総数等を取得する。また、配置方法計算部131は、予備機管理DB11の予備機故障情報から、最近の予備機の故障率、返却期間等を取得する。また、配置方法計算部131は、ビル位置情報DB30から設備が設置されているビルの位置情報を取得する。また、配置方法計算部131は、地図情報DB40の地図情報を用いて各出動拠点から各ビルまでの移動時間をそれぞれ算出する。その後、配置方法計算部131は、それら取得・算出した各種情報を用いて、現在各出動拠点に配置されている各予備機について、出動拠点間での予備機の最適な再配置方法を計算する。
【0037】
予備機の最適な再配置方法の計算例を説明する。
【0038】
予備機を保管する出動拠点の総数をn個とする。予備機の総数をm個とする。n、mは、いずれも自然数である。このとき、n個の出動拠点に対してm個の予備機を配置する場合、数学的にはn個の要素からm個を選択する組み合せを検討すればよいので、nHm(=n+m-1Cm)通りの選択方法(予備機の再配置方法)があることになる。
【0039】
そこで、配置方法計算部131は、上記nHm通りの全ての選択方法について、式(1)を計算する。
【0040】
S=A+B ・・・(1)
但し、A=α・Σx=1~N{FU・Dx・Tmin(x)}であり、
また、B=β・Σx=1~N{W・Tmin(x)}である。
【0041】
変数Aは、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響値である。αは、ユーザに対するサービス低下の影響の重み係数であり、任意に定義可能である。Nは、設備が設置されているビルの総数である。FUは、設備の故障による罹障数に伴う重み係数である。罹障数とは、例えば、設備の故障時に影響を受けるユーザの数(契約回線数)である。例えば、FUは、予備機の故障率、返却期間等を基に定義可能である。Dxは、x番目のビルに収容されている設備の数である。Tmin(x)は、選択したm番目の出動拠点からx番目のビルへ移動する移動時間(分)について、mを1からNまで変更して計算した時の最短の移動時間である。つまり、複数ある出動拠点の中からx番目のビルへ到達するための最短時間をTmin(x)とする。
【0042】
変数Bは、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響値である。βは、オンサイト稼働の重み係数であり、任意に定義可能である。Nは、設備が設置されているビルの総数である。Wは、稼働単金である。Tmin(x)は、選択したm番目の出動拠点からx番目のビルへ移動する移動時間(分)について、mを1からNまで変更して計算した時の最短の移動時間である。つまり、複数ある出動拠点の中からx番目のビルへ到達するための最短時間をTmin(x)とする。
【0043】
その後、配置方法計算部131は、nHm通りの選択方法の中から、Sの値が「最小」となる「m個の拠点の選択」を求める。当該「m個の拠点の選択」が、n個の出動拠点に対してm個の予備機を配置する最適な配置方法となる。
【0044】
上記計算例の具体例を説明する。
【0045】
図5は、各出動拠点Pと各出動対象ビルBとの配置例を示す図である。エリア1には、1つの出動拠点P1と4つのビルB11~B14がある。ビルB13の罹障数は大きく、他のビルB11、B12、B14の罹障数は小さい。エリア2には、1つの出動拠点P2と3つのビルB21~B23がある。各ビルB21~B23の罹障数は小さい。エリア3には、1つの出動拠点P3と3つのビルB31~B33がある。各ビルB31~B33の罹障数は小さい。エリア4には、1つの出動拠点P4と4つのビルB41~B44がある。ビルB43の罹障数は大きく、他のビルB41、B42、B44の罹障数は小さい。エリア5には、1つの出動拠点P5と3つのビルB51~B53がある。各ビルB51~B53の罹障数は小さい。各出動拠点Pと各ビルBとの距離・位置関係は、
図5に示す通りとする。
【0046】
上記5つの出動拠点P1~P5に対し、予備機が一時的に4つしかない場合を考える。この場合、5つの出動拠点P1~P5に対して再配置可能な4つの予備機の再配置方法としては、
図6A及び
図6Bに示すように、出動拠点P1~P4に再配置する再配置方法1、出動拠点P1~P3、P5に再配置する再配置方法2、出動拠点P1、P2、P4、P5に再配置する再配置方法3、出動拠点P2~P5に再配置する再配置方法4、出動拠点P1、P3~P5に再配置する再配置方法5が考えられる。
【0047】
そこで、配置方法計算部131は、上記5つの再配置方法1~5について、式(1)をそれぞれ計算する。このとき、予備機が配置されないエリア内の各ビルに対する予備機の提供を考えると、再配置方法1では、予備機非配置エリア5のビルB51に対しては隣接エリア2の出動拠点P2から提供し、ビルB52、B53に対しては隣接エリア4の出動拠点P4から提供することになる。
【0048】
再配置方法2では、予備機非配置エリア4のビルB41、B42に対しては隣接エリア1の出動拠点P1から提供し、ビルB43に対しては隣接エリア2の出動拠点P2から提供し、ビルB44に対しては隣接エリア5の出動拠点P5から提供することになる。配置方法3~5については省略する。
【0049】
ここで、再配置方法1と再配置方法2とを比較すると、配置方法2の場合、予備機非配置エリア4には罹障数の大きいビルB43があり、当該ビルB43への移動時間が大きい。一方、配置方法1では、予備機非配置エリア5に罹障数の大きいビルはなく、予備機非配置エリア5の各ビルB51~B53への移動時間は小さい。
【0050】
そこで、配置方法計算部131は、式(1)に示したように、例えばユーザ影響値については、設備の故障時に影響を受けるユーザ数等の罹障数(FU)と、ビルに収容されている設備数(Dx)と、各ビルへの最短の移動時間(Tmin(x))と、を積算した積算値が最小となる再配置方法を最適な再配置方法として決定する。上記具体例の場合、配置方法計算部131は、再配置方法1を最適な再配置方法として決定する。なお、1つの出動拠点に複数の予備機を配置した方がよい場合についても、上記計算方法を適用可能である。
【0051】
ステップS3;
次に、最適配置計算エンジン13において、移管方法計算部132は、配置方法計算部131が決定した最適な再配置方法に予備機が再配置されるように、出動拠点間での予備機の移管方法を決定する(
図7参照)。例えば、移管方法計算部132は、予備機を再配置するべき出動拠点から最も距離的・時間的に近い出動拠点から予備機を移管する。
【0052】
ステップS4;
次に、移管方法計算部132は、ステップS2で決定した予備機の最適な再配置方法を、予備機管理DB11の予備機配置情報に格納されている現時点での予備機の配置状況と比較し、互いに異なる場合には、決定した予備機の再配置方法及び移管方法に関する最適配置変更情報を最適配置通知部14に通知する。互いが同じ場合、移管方法計算部132は、最適配置通知部14に何も通知しない。
【0053】
ステップS5;
最後に、最適配置通知部14は、最適配置変更情報に含まれる予備機の再配置方法及び移管方法を管理者や故障修理班等のオペレータの情報処理端末に出力表示し、予備機を配置すべきビルの変更や新規購入等の推奨を提示する。
【0054】
[応用例1]
ここまで、予備機の配置状況に変更が発生した場合(具体的には、予備機の使用又は修理により予備機の総数が変化した場合、予備機の再配置により予備機の配置が変更した場合)を前提に説明した。一方、予備機を配置する要因は様々であることから、本発明は、設備や予備機の生産が終了(EOL:End Of Life)して予備機の確保ができず新規購入ができない場合等、現在の予備機の配置状況に変更が発生しない場合についても適用可能である。
【0055】
[効果]
本実施形態によれば、複数の予備機を各保管拠点に配置した予備機の配置状況に変更が発生した場合、各地の設備の故障時にサービス劣化の影響を受けるユーザに関するユーザ影響値(A)と、各地の設備の修理に関するオンサイト稼働影響値(B)と、を基に、複数の予備機の再配置方法を計算して通知する。これにより、人手による予備機の再配置の検討が不要となり、自動で設備の予備機の再配置方法を提示可能となる。
【0056】
また、本実施形態によれば、複数の再配置方法の中から、ユーザに対するサービス低下の影響の重み(α)と、設備の故障時に影響を受けるユーザの数(FU)と、ビルに収容されている設備の数(Dx)と、出動拠点から設備のビルへ移動する最短の移動時間(Tmin(x))と、を積算したユーザ影響値(A)と、オンサイト稼働の重み(β)と、稼働単金(W)と、出動拠点から設備のビルへ移動する最短の移動時間(Tmin(x))と、を積算したオンサイト稼働影響値(B)と、を合計した合計値(A+B)が最小となる再配置方法を計算する。これにより、故障の一時的な地域エリア間の片寄りによって、予備機が枯渇した出動拠点があったとしても、製造元から返却されるまでの間の最適配置をシステムからほぼリアルタイムで提案できるため、サービス中断時間の増加リスクを最小限に抑えることが可能となる。
【0057】
また、本実施形態によれば、現在の予備機の配置状況に変更が発生しない場合についても適用できるので、EOLで修理不可となっても設備や予備機を継続利用する場合でも、現存する予備機の数で故障時のサービス影響を最小にする保管拠点を計算可能となり、予備機の最適配置を簡単に導き出すことが可能となる。
【0058】
[その他]
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明は、本発明の要旨の範囲内で数々の変形が可能である。
【0059】
上記説明した本実施形態の予備機管理装置10は、例えば、
図8に示すように、CPU901と、メモリ902と、ストレージ903と、通信装置904と、入力装置905と、出力装置906と、を備えた汎用的なコンピュータシステムを用いて実現できる。メモリ902及びストレージ903は、記憶装置である。当該コンピュータシステムにおいて、CPU901がメモリ902上にロードされた所定のプログラムを実行することにより、予備機管理装置10の各機能が実現される。
【0060】
予備機管理装置10は、1つのコンピュータで実装されてもよい。予備機管理装置10は、複数のコンピュータで実装されてもよい。予備機管理装置10は、コンピュータに実装される仮想マシンであってもよい。予備機管理装置10用のプログラムは、HDD、SSD、USBメモリ、CD、DVD等のコンピュータ読取り可能な記録媒体に記憶できる。予備機管理装置10用のプログラムは、通信ネットワークを介して配信することもできる。
【符号の説明】
【0061】
1:予備機管理システム
10:予備機管理装置
11:予備機管理DB
12:変更確認部
13:最適配置計算エンジン
131:配置方法計算部
132:移管方法計算部
14:最適配置通知部
20:設備管理DB
30:ビル位置情報DB
40:地図情報DB
901:CPU
902:メモリ
903:ストレージ
904:通信装置
905:入力装置
906:出力装置