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特許7572662遷移金属ドープシリカゾル及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】遷移金属ドープシリカゾル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/14 20060101AFI20241017BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241017BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20241017BHJP
   C09C 1/28 20060101ALI20241017BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
C01B33/14
C09D7/62
C09D201/00
C09C1/28
C09D17/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2024515941
(86)(22)【出願日】2023-11-30
(86)【国際出願番号】 JP2023042962
【審査請求日】2024-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2022191958
(32)【優先日】2022-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関口 和敏
(72)【発明者】
【氏名】奥永 友貴
【審査官】安積 高靖
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/101974(WO,A1)
【文献】特開2003-267720(JP,A)
【文献】特開2005-022896(JP,A)
【文献】特開2005-022897(JP,A)
【文献】特開2006-342023(JP,A)
【文献】国際公開第2007/007751(WO,A1)
【文献】特開2021-187732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/14
C09D 7/62
C09D 201/00
C09C 1/28
C09D 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする遷移金属ドープ着色シリカゾル;
(1)シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、
(2)電子顕微鏡像から画像解析法で算出した前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の個数平均粒子径(D1)が5nm以上、50nm未満、
(3)窒素吸着法から算出した前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子のBET粒子径(D2)が5nm以上、50nm未満、
(4)前記個数平均粒子径/前記BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下。
【請求項2】
前記遷移金属TがV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項3】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、窒素吸着法から得られた前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の比表面積SSAが、50m/g以上、550m/g以下である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項4】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の粒子密度PDが、少なくとも2.10g/cm以上である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項5】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを大気下100℃で乾燥した乾燥粉が、非晶質である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項6】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子がシリカ濃度1質量%以上50質量%以下で水分散媒に分散していることを特徴とする、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項7】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、動的光散乱法による前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の平均粒子径(D3)が5nm以上、100nm未満である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項8】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルの分散媒中に存在している遷移金属Tの有姿濃度が0.002質量%未満である、請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
【請求項9】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、
UVA-340型ランプにて、UV照射強度0.89W/m、温度50℃、照射時間500hの条件によるUV照射試験の前後において、
可視紫外スペクトル分析による、該遷移金属ドープ着色シリカゾルの着色をもたらす吸収波長における、下記式(3)で表される吸光度変化率が50~100%である、
請求項1に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル。
吸光度変化率(%)=[UV照射後の吸光度/UV照射前の吸光度]×100 (3)
【請求項10】
下記(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程及び(e)工程;
(a)ケイ酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂と接触させ、活性ケイ酸水溶液を調製する工程、
(b)ケイ酸アルカリ水溶液、活性ケイ酸水溶液、アルカリ水溶液、及び遷移金属塩化合物から選ばれる1種類又は2種類以上を混合してシリカ/アルカリ(モル比)が30未満のヒール液を調製する工程、
(c)活性ケイ酸水溶液、遷移金属塩化合物、及びアルカリ水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上からなるフィード液を調製する工程、
(d)容器内のヒール液を60℃以上105℃以下に保持しながら、フィード液をヒール液に添加して、
シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、かつ電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径D1が5nm以上、50nm未満、かつ窒素吸着法から算出したBET粒子径D2が5nm以上、50nm未満、かつ個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下、
である遷移金属ドープ着色シリカゾルを粒子合成する工程、
(e)(d)工程の後、60℃以上105℃以下の任意の温度で一定時間維持して整粒液を得る工程、
を含み、
ただし、前記遷移金属塩化合物は、前記ヒール液の調製時、前記フィード液の調製時、若しくは両者の調製時に添加されるか、及び/又は、前記遷移金属塩化合物が前記ケイ酸アルカリ水溶液、前記活性ケイ酸水溶液及び前記アルカリ水溶液の少なくとも一つに含有されている、
遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項11】
前記(e)工程の後、遷移金属ドープ着色シリカゾルを濃縮して濃縮液を得る工程(f)をさらに有する、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項12】
前記ケイ酸アルカリ水溶液が、ケイ酸リチウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、及びケイ酸カリウム水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項13】
前記アルカリ水溶液が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアの水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項14】
前記遷移金属塩化合物の金属が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項15】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、窒素吸着法から得られた前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の比表面積が、50m/g以上、550m/g以下である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項16】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の粒子密度が、少なくとも2.10g/cm以上である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項17】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを大気下100℃で乾燥した乾燥粉が、非晶質である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項18】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子がシリカ濃度1質量%以上50質量%以下で水分散媒に分散していることを特徴とする、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項19】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、動的光散乱法による前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の平均粒子径(D3)が5nm以上、100nm未満である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項20】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルの分散媒中に溶解している遷移金属Tの有姿濃度が0.002質量%未満である、請求項10に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法。
【請求項21】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルを少なくとも含む顔料組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の顔料組成物を少なくとも含む塗料、インク又は釉薬。
【請求項23】
請求項21に記載の顔料組成物を少なくとも含む印刷物、膜又は成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コロイダルシリカ粒子を含む着色シリカゾルであって、該コロイダルシリカ粒子は遷移金属がドープされてなる、着色シリカゾル(以下、遷移金属ドープ着色シリカゾルと称する)、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、顔料はインキ、塗料、プラスチック、ゴム、繊維およびトナーなどの用途の着色剤として幅広く用いられている。この顔料は、有機顔料と無機顔料の2種に大きく分類される。一般的に有機顔料は無機顔料と比較して、色の鮮明性、着色力及び耐薬品性に優れるが、耐光性、耐熱性及び耐溶剤性が低い傾向がある(非特許文献1参照)。他にも、カラーフィルターやインクジェットインキの用途では、着色剤である顔料の高透明性が求められており、有機顔料の粒子径を種々の手法で小さくすることで、光の散乱を小さくして透明性を高めている(非特許文献2、3参照)。
【0003】
ところで、シリカを主成分としたガラスを着色する手法の一つとして、ガラスに遷移金属をドープする手法が知られている。こうした着色ガラスは耐光性が高いものが多く、例えば、ステンドグラスや切子グラスのような意匠性が高い工芸品、装飾品、容器、家具及び建材などに利用されている(非特許文献4参照)。
【0004】
同様に、遷移金属を含有するシリカ粒子を提供する技術が種々提案されている。例えば特許文献1には、ケイ酸ナトリウム水溶液に活性ケイ酸水溶液およびCu(NO・3HOを添加したシリカ/アルカリ(モル比)44.9のヒール液に、活性ケイ酸水溶液をフィード液として添加して、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)が約0.0007のシリカゾルを得る方法が開示されている。特許文献2には、遷移金属を含まない平均粒子径76nmのシリカゾルをコアに、CuSO含有活性ケイ酸水溶液を用いてシリカ中にCuが分散する混合層を被覆することで、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)が約0.0005である平均粒子径89nmのシリカゾルを得る方法が開示されている。特許文献3には、酸素が存在する雰囲気中にて金属ケイ素およびFe源を燃焼させることで、シリカに対するFeの質量比(Fe/シリカ)が約0.009である体積平均粒子径が0.15μmの非晶質シリカ粒子を得る方法が開示されている。特許文献4には、ゾルゲル法で作製した平均粒径0.75μmのシリカ粒子をCuSO水溶液と接触させることで、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)が約0.04であるシリカ粒子を得る方法が開示されている。特許文献5には、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)が約0.01の比表面積が1000m/gを超える多孔質シリカ粉末を得る方法が開示されている。特許文献6には、平均粒子径61nmの中空シリカゾルをCuSO水溶液と接触させることで、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)が約0.05であるシリカ粒子を得る方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公平8-005657号公報
【文献】特開2022-106677号公報
【文献】特許第5389374号公報
【文献】特許第3400826号公報
【文献】特開2017-132687号公報
【文献】特開2022-115605号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】松浦 勝彦,“無機顔料(II)有彩色顔料”,色材,55(8),p590-599 (1982)
【文献】船倉 省二,“カラーフィルター用顔料”,色材協会誌,84(5),p179-183 (2011)
【文献】岡田 恭一,“インクジェット用有機顔料の現状”,日本画像学会誌,49(1),p40-47 (2010)
【文献】加藤 紘一,“アートなガラスの材料学(改訂版)” (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般的に有機顔料は粒子径を小さくすることで透明性が高まることが知られているが、その場合に耐光性も低下しやすく、透明性と耐光性の両立は難しい。一方、上記特許文献1及び2で提案されている遷移金属を含有するシリカ粒子は、遷移金属量が少なく着色力が不十分である。上記特許文献3及び4で提案されている遷移金属を含有するシリカ粒子は、粒子径が大きいため、光の散乱が大きくなり透明性が不十分である。上記特許文献5及び6で提案されている遷移金属を含有するシリカ粒子は、多孔質構造や中空構造の空孔部分には着色成分となる遷移金属が存在できず着色力が不十分となりやすい。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、透明性、耐光性、及び着色性に優れた遷移金属ドープ着色シリカゾル及びその製造方法、並びに遷移金属ドープ着色シリカゾルを少なくとも含む顔料組成物、塗料、インク、釉薬、膜又は成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の通りである。
本発明は第1観点として、下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする遷移金属ドープ着色シリカゾル;
(1)シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、
(2)電子顕微鏡像から画像解析法で算出した前記シリカゾル中の粒子の個数平均粒子径(D1)が5nm以上、50nm未満、
(3)窒素吸着法から算出した前記シリカゾル中の粒子のBET粒子径(D2)が5nm以上、50nm未満、
(4)前記個数平均粒子径/前記BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下、
第2観点として、前記遷移金属TがV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上である、第1観点に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第3観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、窒素吸着法から得られた前記シリカゾル中の粒子の比表面積SSAが、50m/g以上、550m/g以下である、第1観点又は第2観点に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第4観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該ゾル中の粒子の粒子密度PDが、少なくとも2.10g/cm以上である、第1観点乃至第3観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第5観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを大気下100℃で乾燥した乾燥粉が、非晶質である、第1観点乃至第4観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第6観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該ゾル中の粒子がシリカ濃度1質量%以上50質量%以下で水分散媒に分散していることを特徴とする、第1観点乃至第5観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第7観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、動的光散乱法による前記シリカゾル中の粒子の平均粒子径(D3)が5nm以上、100nm未満である、第1観点乃至第6観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第8観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルの分散媒中に存在している遷移金属Tの有姿濃度が0.002質量%未満である、第1観点乃至第7観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル、
第9観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、UVA-340型ランプにて、UV照射強度0.89W/m、温度50℃、照射時間500hの条件によるUV照射試験の前後において、可視紫外スペクトル分析による、該着色シリカゾルの着色をもたらす吸収波長における、下記式(3)で表される吸光度変化率が50~100%である、第1観点乃至第8観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾル:
吸光度変化率(%)=[UV照射後の吸光度/UV照射前の吸光度]×100 (3)、
第10観点として、下記(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程及び(e)工程;
(a)ケイ酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂と接触させ、活性ケイ酸水溶液を調製する工程、
(b)ケイ酸アルカリ水溶液、活性ケイ酸水溶液、アルカリ水溶液、及び遷移金属塩化合物から選ばれる1種類又は2種類以上を混合してシリカ/アルカリ(モル比)が30未満のヒール液を調製する工程、
(c)活性ケイ酸水溶液、遷移金属塩化合物、及びアルカリ水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上からなるフィード液を調製する工程、
(d)容器内のヒール液を60℃以上105℃以下に保持しながら、フィード液をヒール液に添加して、
シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、かつ電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径D1が5nm以上、50nm未満、かつ窒素吸着法から算出したBET粒子径D2が5nm以上、50nm未満、かつ個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下、
である遷移金属ドープ着色シリカゾルを粒子合成する工程、
(e)(d)工程の後、60℃以上105℃以下の任意の温度で一定時間維持して整粒液を得る工程、
を含み、
ただし、前記遷移金属塩化合物は、前記ヒール液の調製時、前記フィード液の調製時、若しくは両者の製造時に添加されるか、及び/又は、前記遷移金属塩化合物が前記ケイ酸アルカリ水溶液、前記活性ケイ酸水溶液及び前記アルカリ水溶液の少なくとも一つに含有されている、遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第11観点として、前記(e)工程の後、遷移金属ドープ着色シリカゾルを濃縮して濃縮液を得る工程(f)をさらに有する、第10観点に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第12観点として、前記ケイ酸アルカリ水溶液が、ケイ酸リチウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、及びケイ酸カリウム水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上である、第10観点又は第11観点に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第13観点として、前記アルカリ水溶液が、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアの水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上である、第10観点乃至第12観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第14観点として、前記遷移金属塩化合物の金属が、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上である、第10観点乃至第13観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第15観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、窒素吸着法から得られた前記シリカゾル中の粒子の比表面積が、50m/g以上、550m/g以下である、第10観点乃至第14観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第16観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該ゾル中の粒子の粒子密度が、少なくとも2.10g/cm以上である、第10観点乃至第15観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第17観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを大気下100℃で乾燥した乾燥粉が、非晶質である、第10観点乃至第16観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第18観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該ゾル中の粒子がシリカ濃度1質量%以上50質量%以下で水分散媒に分散していることを特徴とする、第10観点乃至第17観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第19観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、動的光散乱法による前記シリカゾル中の粒子の平均粒子径(D3)が5nm以上、100nm未満である、第10観点乃至第18観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第20観点として、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルの分散媒中に溶解している遷移金属Tの有姿濃度が0.002質量%未満である、第10観点乃至第19観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルの製造方法、
第21観点として、第1観点乃至第9観点のいずれか1項に記載の遷移金属ドープ着色シリカゾルを少なくとも含む顔料組成物、
第22観点として、第21観点に記載の顔料組成物を少なくとも含む塗料、インク又は釉薬、
第23観点として、第21観点に記載の顔料組成物を少なくとも含む印刷物、膜又は成形体、
第24観点として、前記(d)工程のフィード液をヒール液に添加して遷移金属ドープ着色シリカゾルを粒子合成する工程の後、前記(e)工程の前に、さらに容器内のヒール液を60℃以上105℃以下に保持しながら、活性ケイ酸水溶液をヒール液に添加して遷移金属ドープ着色シリカゾル中のシリカ粒子表面にシェル層を形成させる工程を含む、第10観点に記載の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明性、耐光性及び着色性に優れた遷移金属ドープ着色シリカゾル及びその製造方法を提供することができる。
【0011】
さらに本発明のこの遷移金属ドープ着色シリカゾルは、種々用途の着色剤としての顔料組成物とすることができる。この顔料組成物は、樹脂などと配合することで、塗料、インク、釉薬、印刷物、膜あるいは成形体などを製造することができる。また本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルは耐光性が高いため変色や退色がしにくく、種々の用途で長期的な使用が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾル、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾル、及び比較例1で得られたシリカゾルの透過型電子顕微鏡像(観察倍率100,000倍)である。
図2図2は、実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾル、及び比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液の外観である。
図3図3は、実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾル、及び比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて得た粉末の外観である。
図4図4は、実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾル、及び比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて得た粉末のX線回折パターンである。
図5図5は、実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾル、及び比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液の可視紫外透過スペクトルおよび可視紫外吸収スペクトルである。
図6図6は、実施例1から4で得られた各Coドープ着色シリカゾル、実施例13で得られたCrドープ着色シリカゾル、実施例14で得られたMnドープ着色シリカゾル、実施例15で得られたCuドープ着色シリカゾル、実施例16で得られたNiドープ着色シリカゾルの耐光性評価であり、UV照射を500時間した際の各吸収波長における吸光度の変化率の推移である。
図7図7は、比較例2から5の各PGME希釈有機顔料分散液の耐光性評価であり、UV照射を500時間した際の各吸収波長における吸光度の変化率の推移である。
図8図8は、実施例18で得られたCoドープ着色シリカゾルを含む着色膜のa)外観、b)断面SEM像(倍率2000倍)、及びc)可視紫外透過スペクトルである。
図9図9は、実施例20で得られたCoドープ着色シリカゾルを含む成形体、比較例14で得られたシリカゾルを含む成形体、及び比較例15で得られた成形体の外観である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳しく説明する。
[遷移金属ドープ着色シリカゾル]
本発明は、下記(1)~(4)を満たす遷移金属ドープ着色シリカゾルを対象とする。
(1)シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、
(2)電子顕微鏡像から画像解析法で算出した前記シリカゾル中の粒子の個数平均粒子径(D1)が5nm以上、50nm未満、
(3)窒素吸着法から算出した前記シリカゾル中の粒子のBET粒子径(D2)が5nm以上、50nm未満、
(4)前記個数平均粒子径/前記BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下。
【0014】
前記(1)について、本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルは、遷移金属Tがコロイダルシリカ粒子中にドープされてなる粒子のゾルであって、該シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下でドープされているシリカゾルである。好ましくは、質量比(T/シリカ)が0.001又は0.005以上、0.02以下である。質量比(T/シリカ)が0.0001未満の場合、着色性が不十分となり、0.05より大きいとシリカ粒子中に上手くドープされにくくなるため好ましくない。この遷移金属Tのドープ量は、前記シリカゾルを既知の適切な前処理を行った後に、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、原子吸光分析(AA)、蛍光X線分析(XRF)などで分析して定量することができる。なお遷移金属Tは、コロイダルシリカ粒子中に偏在してドープされていてもよいし、均一に分布してドープされていてもよい。
【0015】
前記(2)について、前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の粒子径は、電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)が5nm以上、50nm未満である。好ましくは、個数平均粒子径(D1)が7nm以上、30nm以下である。個数平均粒子径(D1)が5nmより小さい場合、粒子同士が凝集しやすいため分散液にした際の分散性が悪く、50nmより大きいとレイリー散乱やミー散乱といった光の散乱が強くなることで透明性が悪化するため好ましくない。前記シリカゾル中の粒子の個数平均粒子径(D1)は以下の手順で得ることができる。すなわち、前記シリカゾルを既知の適切な前処理を行った後に、透過電子顕微鏡(TEM)、走査電子顕微鏡(SEM)あるいは走査透過電子顕微鏡(STEM)などで観察し、得られた前記シリカゾルの電子顕微鏡像から、画像解析法で粒子の面積を求め、その面積と等しい真円の直径である円相当径が得られる。この円相当径の個数平均値を個数平均粒子径(D1)とすることができる。
【0016】
前記(3)について、前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子の粒子径は、更に窒素吸着法(BET法)から算出したBET粒子径(D2)が5nm以上、50nm未満である。好ましくは、BET粒子径(D2)が7nm以上、30nm以下である。BET粒子径(D2)が5nmより小さい場合、粒子同士が凝集しやすいため分散液にした際の分散性が悪く、50nmより大きいとレイリー散乱やミー散乱といった光の散乱が強くなることで透明性が悪化するため好ましくない。前記シリカゾル中の粒子のBET粒子径は、窒素吸着法(BET法)によって測定された粒子の比表面積SSA(m/g)および粒子密度PD(g/cm)から、下記式(1)によって計算される粒子径であり、同比表面積を有する球状粒子換算の直径を意味する;
BET粒子径D2(nm)=6000/[粒子密度PD(g/cm)×比表面積SSA(m/g)] (1)
【0017】
前記(4)について、前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、前記個数平均粒子径/前記BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下である。好ましくはD1/D2は1.3以下である。また、D1/D2の下限値は0.1以上、又は0.3以上、又は0.5以上、又は0.8以上、又は1.0以上の範囲から選択する事が可能である。
前記シリカゾル中のシリカ粒子は、非多孔質構造かつ非中空構造で、実質的に中実粒子であることが好ましい。D1/D2が1.5より大きい場合、シリカ粒子の多孔性あるいは中空性が高くなり、多孔質構造や中空構造の空孔部分には着色成分となる遷移金属が存在できず着色力が不十分となりやすいため好ましくない。個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比が小さくなるほど中実な粒子になっていると考えられる。
【0018】
他にも中実粒子と、多孔質粒子又は中空粒子との区別については、透過電子顕微鏡(TEM)で観察した際に、粒子のコントラストの違いで判別することもできる。
【0019】
なお前記シリカゾル中のシリカ粒子の粒子形状は、特に限定されない。例えば、球状、楕球体(ラグビーボール)状、繭状、金平糖状、鎖状、サイコロ状などが挙げられる。中でも、球状粒子は、分散性が高く、光の散乱が小さいため好ましい。
【0020】
なお前記シリカゾル中のシリカ粒子の粒子径分布は、特に限定されない。例えば、一山の粒子径分布、あるいは二山以上の粒子径分布、半値幅が狭い粒子径分布、及び半値幅が広い粒子径分布などが挙げられる。中でも、一山で半値幅が狭い粒子径分布が、光の散乱が小さいため好ましい。
【0021】
前記遷移金属Tは、周期表の第3族元素から第11族元素の間に存在する元素から選ばれる1種類又は2種類以上であることが好ましく、吸収波長帯に合わせて適宜選択することができる。遷移金属Tは、シリカゾル中のコロイダルシリカ粒子中に1種類を単独でドープさせてもよいし、シリカゾル中のコロイダルシリカ粒子中に複数元素の遷移金属Tを同時にドープさせてもよい。あるいは、コロイダルシリカ粒子中に1種類の遷移金属Tを単独でドープさせたシリカゾルを製造した後、別の種類の遷移金属Tをドープさせたシリカゾルを複数混合してもよい。遷移金属Tは、好ましくは第一遷移系列の遷移金属から選ばれる1種類又は2種類以上であり、更に好ましくはV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上である。
【0022】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、窒素吸着法から得られた前記シリカゾル中の粒子の比表面積SSAが、50m/g以上、550m/g以下であることが望ましい。比表面積SSAは、好ましくは、90m/g以上、400m/g以下である。比表面積が50m/gより小さいと、前記シリカゾルを樹脂コンポジット材料等に用いたとき、透明性が失われやすい。一方、比表面積が550m/gより大きいと、分散媒や樹脂への分散性が低下しやすく、高濃度に添加することが難しくなることが懸念される。加えて、多孔質構造のシリカ粒子となっているおそれもある。
【0023】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、該ゾル中の粒子の粒子密度PDが、少なくとも2.10g/cm以上であることが望ましい。また、粒子密度PDの上限値は3.0g/cm、又は2.80g/cm、又は2.70g/cm、又は2.60g/cm、又は2.50g/cm、又は2.40g/cm、又は2.30g/cm、又は2.25g/cmの範囲から選択する事が可能である。バルクのシリカの真密度は一般的に2.2~2.3g/cmであるため、2.10g/cmより小さい場合、多孔質構造や中空構造に由来する閉気孔が存在し、着色成分となる遷移金属が存在できず着色力が不十分となりやすいため好ましくない。この粒子密度PDは、例えば前記シリカゾルを大気中にて100℃で熱処理(乾燥)したものを、乾式自動密度計(マイクロメリティックス製、AccuPycII 1340TEC)にHeガスを使用して測定して得られる。
【0024】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、これを大気下100℃で熱処理(乾燥)した乾燥粉が非晶質であることが好ましい。該乾燥粉の結晶性はX線回折法により確認でき、X線回折で遷移金属Tに由来する結晶相が確認できない場合、遷移金属Tはシリカ粒子中にドープされていると考えられる。また、シリカ由来の結晶相としてクリストバライトやトリジマイト、石英などが知られているが、結晶性シリカは毒性が懸念され、安全性の観点からこれら結晶相が確認できない(非晶質である)方が好ましい。
【0025】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、遷移金属ドープされたコロイダルシリカ粒子がシリカ濃度1質量%以上50質量%以下で水分散媒に分散したシリカゾルであることが望ましい。シリカ濃度は、好ましくは2質量%以上40質量%以下である。1質量%より低い場合、生産性の低さや輸送コストの面から経済性が低くなり得、また50質量%より大きい場合、粒子個数の増大により分散性が悪化しやすくなり得る。シリカ濃度は、例えば所定温度、時間で前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを熱処理(乾燥)した固形残分から、遷移金属Tなどの金属元素を酸化物換算で除くことで算出することができる。水は、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水等を使用することができ、用途等に応じて適宜選択することができる。
【0026】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、動的光散乱法による前記シリカゾル中の粒子の平均粒子径(D3)が5nm以上、100nm未満であることが望ましい。平均粒子径(D3)は、好ましくは10nm以上、80nm未満である。動的光散乱法による平均粒子径(D3)の測定は、測定原理が動的光散乱法によるものである。例えば、前記シリカゾルを既知の適切な前処理を行った後に、動的光散乱法粒子径測定装置(スペクトリス製、ゼーターサイザー ナノ)で測定できる。5nmより小さい場合、分散媒や樹脂への分散性が低下しやすくなる。一方、100nmより大きい場合、レイリー散乱やミー散乱といった光の散乱が強くなることで透明性が悪化するため好ましくない。
【0027】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、そのpHが2以上12以下であることが望ましい。好ましくはpHが2以上4以下、8以上11以下である。該シリカゾルのpHが2より小さい場合、分散性が悪化しやすくなり得、加えて、遷移金属Tが分散媒へ溶出しやすくなるおそれがある。またpHが12より高い場合、シリカが溶解してゲル化しやすくなり得、加えて、シリカが溶解したことで遷移金属Tが分散媒へ溶出しやすくなるおそれがある。
【0028】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、その分散媒中に溶解している遷移金属Tの有姿濃度が0.002質量%未満(20質量ppm未満)であることが望ましい。有姿濃度は、好ましくは0.0002質量%未満(2質量ppm未満)である。より好ましくは0.0001質量%未満(1質量ppm未満)である。有姿濃度が0.002質量%より大きい場合、身体への安全性や環境への影響が懸念される。前記シリカゾルの分散媒中に溶解している遷移金属Tの有姿濃度は、前記シリカゾルを適切な分画分子量を有する限外ろ過(UF)膜や逆浸透(RO)膜などで処理したろ液に対して既知の適切な前処理を行った後に、誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP-OES)や誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)、原子吸光分析(AA)などで分析して定量することができる。
【0029】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルは、UVA-340型ランプにて、UV照射強度0.89W/m、温度50℃、照射時間500h(太陽光3.6か月相当)の条件によるUV照射試験の前後において、可視紫外スペクトル分析による、該着色シリカゾルの着色をもたらす吸収波長における、下記式(3)で表される吸光度変化率が50~100%であることが望ましい。
吸光度変化率(%)=[UV照射後の吸光度/UV照射前の吸光度]×100 (3)
前記UV照射試験前後の吸光度変化率は、好ましくは60~100%、70~100%、75~100%、80~100%である。
前記UV照射試験は、例えば該遷移金属ドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機(Q-Lab(株)製、商品名QUV/se)に設置し、UVA-340型ランプを用いて実施することができる。
また、吸光度変化を比較する吸収波長は、着色シリカゾルが呈する色によって異なり、すなわちシリカ粒子にドープする遷移金属Tの種類によって異なる。なお遷移金属Tに由来する吸収波長が複数存在する場合には、他の要因による吸収の影響が少ないことや吸収の大きさ等を考慮し、比較する吸収波長を適宜選択すればよい。例えば、但しこれに限定されないが、Coであれば640nm前後、Crであれば590nm前後、Mnであれば455nm前後、Cuであれば640nm前後、Niであれば670nm前後、Vであれば425nm前後及び625nm前後、Feであれば400nm前後の吸収波長にて、吸光度の比較を行うことができる。
なお得られた吸光度より、下記式(3)を用いて吸光度変化率を求めることができる。
吸光度変化率(%)の値が100%に近いほど、UV照射によって吸光度が変化していないことを意味し、耐光性が高いシリカゾルであると判断できる。本発明にあっては、遷移金ドープ着色シリカゾルの吸光度変化率が50~100%であることにより、太陽光に暴露される環境で用いても着色を維持することができる好適なシリカゾルとなる。
【0030】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾル中のシリカ粒子は、粒子表面にシェル層を形成させた態様としてもよい(この場合、シリカ粒子をコア粒子と称することがある)。シェル層は、遷移金属Tが意図的に含まれない(不可避不純物は除く)金属酸化物で被覆されたシェル層である。なお、「粒子表面にシェル層を形成させた態様」には、シェル層によってシリカ粒子の表面が被覆されている態様の他、シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面に結合している態様のいずれをも含む。
前者の「シェル層によってシリカ粒子の表面が被覆されている態様」には、シェル層がシリカ粒子の表面の少なくとも一部を被覆した態様であればよく、すなわち、シェル層がシリカ粒子の表面の一部を覆う態様(シリカ粒子の表面の一部にシェル層が存在する態様)や、シェル層がシリカ粒子の表面全体を覆う態様(シリカ粒子の表面の全面にシェル層が存在する態様)を包含するものである。この態様において、シェル層とシリカ粒子の表面との結合の有無は問わない。
また後者の「シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面に結合している態様」とは、シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面の少なくとも一部に結合した態様であればよく、すなわち、シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面の一部に結合してなる態様、シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面の一部に結合し、表面の少なくとも一部を覆う態様、さらには、シェル層を構成する成分がシリカ粒子の表面全体に結合し、表面全体を覆う態様などを包含するものである。
【0031】
前記遷移金属ドープ着色シリカゾルにおいて、シリカ粒子が粒子表面にシェル層を有する態様であるとき、該シェル層の厚さ(シェル厚)を例えば0.3nm以上、5nm以下とすることができ、また例えばシェル厚を0.4nm以上、4nm以下とすることができる。シェル厚を例えば0.3nm以上とすることで、遷移金属がドープされたコア域を十分被覆することができ、耐光性の向上の実現につながり得る。またシェル厚を例えば5nm以下とすることで、コア域にドープした遷移金属の着色力を確保することが可能となり、着色性に優れるゾルの実現につながり得る。
【0032】
なお前述したように、本態様において前記シリカ粒子は、表面がシェル層で部分的に被覆されていても、全て被覆されていてもよいが、全て被覆されていて非多孔質構造であることが好ましい。
本態様における前記着色シリカゾル中のシリカ粒子のシェル厚は、下記式(2)によって計算して得ることができる;
シェル厚=(シェル層が形成されたシリカ粒子の個数平均粒子径(D1)-(シェル層を有するシリカ粒子の製造に使用した)コア粒子(シェル層を有していないシリカ粒子)の個数平均粒子径(D1))÷2 (2)
前記シェル厚は、個数平均粒子径(D1)の代わりにBET粒子径(D2)を用いて算出してもよい。
【0033】
[遷移金属ドープシリカゾルの製造方法]
本発明の遷移金属ドープシリカゾルは、一般的に水ガラス法と言われるシリカゾルの製造方法を元に製造することができる。具体的には、下記(a)工程、(b)工程、(c)工程、(d)工程及び(e)工程;
(a)ケイ酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂と接触させ、活性ケイ酸水溶液を調製する工程、
(b)ケイ酸アルカリ水溶液、活性ケイ酸水溶液、アルカリ水溶液、及び遷移金属塩化合物から選ばれる1種類又は2種類以上を混合してシリカ/アルカリ(モル比)が30未満のヒール液を調製する工程、
(c)活性ケイ酸水溶液、遷移金属塩化合物、及びアルカリ水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上からなるフィード液を調製する工程、
(d)容器内のヒール液を添加し、ヒール液を60℃以上105℃以下に保持しながら、フィード液をヒール液に添加して、
シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、かつ電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径D1が5nm以上、50nm未満、かつ窒素吸着法から算出したBET粒子径D2が5nm以上、50nm未満、かつ個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下、
である遷移金属ドープ着色シリカゾルを粒子合成する工程、
(e)(d)工程の後、60℃以上105℃以下の任意の温度で一定時間維持して整粒液を得る工程、
を含み、
ただし、前記遷移金属塩化合物は、前記ヒール液の調製時、前記フィード液の調製時、若しくは両者の調製時に添加されるか、及び/又は、前記遷移金属塩化合物が前記ケイ酸アルカリ水溶液、前記活性ケイ酸水溶液及び前記アルカリ水溶液の少なくとも一つに含有されている、条件にて、
製造することができる。
【0034】
(a)工程に使用するケイ酸アルカリ水溶液は、ケイ酸リチウム水溶液、ケイ酸ナトリウム水溶液、及びケイ酸カリウム水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上とすることが好ましい。ケイ酸アルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。経済性の観点から、水ガラスと呼ばれるケイ酸ナトリウム水溶液が好ましい。これらケイ酸アルカリ水溶液は、必要に応じて水で希釈して使用することができる。
【0035】
(a)工程に使用する陽イオン交換樹脂は、公知のものを適宜選択して使用することができ特に制限されない。好ましくは、強酸性陽イオン交換樹脂である。例えば、ケイ酸アルカリ水溶液と陽イオン交換樹脂を接触させる工程では、ケイ酸アルカリ水溶液を水で希釈してシリカとして濃度1質量%以上10質量%未満の濃度にした水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂に接触させて脱陽イオン(脱アルカリ)する。必要に応じて陽イオン交換樹脂への接触前後で強塩基性アニオン交換樹脂に接触させて脱陰イオンすることもできる。前記接触条件の詳細は、従来から既に様々な提案があり、本発明ではそれら公知のいかなる条件も採用することができる。
【0036】
強酸性陽イオン交換樹脂の具体例としては、商品名アンバーライトIR-120B、商品名アンバージェット1020(オルガノ(株)製)、商品名DOWEX MARATHON GH(ダウ・ケミカル社製)、商品名ダイヤイオンSK104、商品名ダイヤイオンPK208(三菱ケミカルグループ(株)製)、商品名デュオライトC20J(住化ケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0037】
強塩基性陰イオン交換樹脂の具体例としては、商品名アンバーライトIRA400J、商品名アンバーライトIRA410J、商品名アンバージェット4400(オルガノ(株)製)、商品名ダイヤイオンSA10A、商品名ダイヤイオンSA20A(三菱ケミカルグループ(株)製)、商品名デュオライトUBA120(住化ケムテックス(株)製)等が挙げられる。
【0038】
(a)工程で得られた活性ケイ酸水溶液の濃度は、シリカとして1質量%以上、6質量%以下の濃度が好ましく、3質量%以上、4質量%以下の濃度が更に好ましい。シリカとして1質量%未満となると生産性が悪化し、6質量%より高くなると活性ケイ酸水溶液が不安定となりゲル化しやすい。活性ケイ酸水溶液のpHは1以上、5以下、あるいはpH7以上12以下が好ましく、2以上、4以下あるいはpH8以上11以下が更に好ましい。このpH範囲を外れると活性ケイ酸水溶液が不安定となりゲル化しやすい。
【0039】
(b)工程で得られるヒール液は、ケイ酸アルカリ水溶液、活性ケイ酸水溶液、アルカリ水溶液、及び遷移金属塩化合物から選ばれる1種類又は2種類以上を混合して、シリカ/アルカリ(モル比)が30未満となるように調製する。シリカ/アルカリ(モル比)が30より大きいと前記シリカゾルが粒子合成中に粒子同士が融着しやすくなり分散性が低下しやすくなるため好ましくない。ヒール液の調製に際し、これら水溶液等の混合・添加順序は、本発明の効果に悪影響が出ない限り特に限定はない。
なお(b)工程におけるケイ酸アルカリ水溶液、活性ケイ酸水溶液は、前記(a)工程で使用・調製したものと同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
(b)工程に使用するアルカリ水溶液は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びアンモニアの水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上であることが好ましい。アルカリ水溶液は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。アルカリ水溶液は様々な濃度で市販されており、この市販品を用いることもでき、必要に応じて水で希釈して使用することができる。
【0041】
(b)工程に使用する遷移金属塩化合物においては、有機塩、無機塩など特に限定はないが、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩及びリン酸塩から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。遷移金属塩化合物は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上使用してもよい。遷移金属塩化合物は、水に溶解させて使用することが好ましい。
【0042】
(b)工程に使用する遷移金属塩化合物の金属は、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuから選ばれる1種類又は2種類以上であることが好ましい。これら遷移金属塩化合物の金属は1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。
【0043】
(c)工程で得られるフィード液は、活性ケイ酸水溶液、遷移金属塩化合物、及びアルカリ水溶液から選ばれる1種類又は2種類以上からなる。単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。フィード液の調製に際し、これら水溶液等の混合する順序は、本発明の効果に悪影響が出ない限り特に限定はない。必要に応じて更に塩酸、硝酸および硫酸といった酸水溶液や、前記アルカリ水溶液を添加して活性ケイ酸水溶液が安定しやすいpHに調整してもよい。
なお(c)工程における活性ケイ酸水溶液は、前記(a)工程及び/又は(b)工程で使用・調製したものと同一であってもよいし、異なっていてもよい。また(c)工程におけるアルカリ水溶液及び遷移金属塩化合物は、(b)工程で使用したものと、それぞれ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
なお前記遷移金属塩化合物は、ヒール液やフィード液の調製時に添加してもよいし、前記ケイ酸アルカリ水溶液、前記活性ケイ酸水溶液、前記アルカリ水溶液に元々含まれていてもよく、その両者であってもよい。すなわち前記遷移金属塩化合物は、(b)工程のヒール液の調製時、(c)工程のフィード液の調製時、若しくはその両者の調製時に添加されるか、及び/又は前記遷移金属塩化合物は、前記ケイ酸アルカリ水溶液、前記活性ケイ酸水溶液、前記アルカリ水溶液の少なくとも一つに含有されてなる。
【0044】
(d)工程におけるヒール液の液温は60℃以上105℃以下である。好ましくは70℃以上100℃以下である。60℃未満であると、粒子合成の反応性が低く好ましくない。
本工程において、複数種のフィード液を使用する場合には、1種類をそれぞれ単独で添加してもよいし、2種類以上を同時に添加してもよい。フィード液をヒール液に添加する速度は、各々適宜設定することができる。
【0045】
また、(d)工程のフィード液をヒール液に添加して遷移金属ドープ着色シリカゾルを粒子合成する工程の後、後述する(e)工程の前に、さらに容器内のヒール液を60℃以上105℃以下に保持しながら、活性ケイ酸水溶液をヒール液に添加して遷移金属ドープ着色シリカゾル中の粒子表面にシリカのシェル層を形成させる工程を含むことができるい。
シェル層を形成させる工程において、ヒール液の液温は60℃以上105℃以下であり、好ましくは70℃以上100℃以下である。60℃未満であると、活性ケイ酸の反応性が低く粒子表面にシェル層が形成されにくくなる虞がある。前記活性ケイ酸水溶液をヒール液に添加する速度は、各々適宜設定することができる。前記(d)工程まで終了した後に、一度室温まで冷却してから、再度加熱しシェル層を形成させる工程に移ってもよい。必要に応じて、更に前記酸水溶液や、前記アルカリ水溶液を添加して粒子表面にシェル層が形成されやすいpHに調整してからシェル層を形成させる工程に移ってもよい。
【0046】
(e)工程において、(d)工程の後、60℃以上105℃以下の任意の温度で一定時間維持し、整粒液を得る。維持時間は0.5時間から24時間の間が好ましい。0.5時間より短い場合、未反応の活性ケイ酸が系内に残存して分散性が悪化しやすくなるため好ましくない。24時間より長い場合、生産性の観点から好ましくない。(e)工程を行う前に、必要に応じて更に塩酸、硝酸および硫酸といった酸水溶液や、前記アルカリ水溶液を添加してpHを調整してもよい。
【0047】
更に前記(e)工程の後、前記シリカゾルを濃縮して濃縮液を得る工程(f)を含むことができる。該濃縮工程(f)は、例えば限外ろ過(UF)膜を使用した濃縮、又は減圧下若しくは常圧下での蒸発濃縮により、シリカ濃度を1質量%以上50質量%以下に調整することができる。
【0048】
[顔料組成物]
本発明の顔料組成物は、本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルを少なくとも含む限り特に制限はない。この顔料組成物は、遷移金属ドープ着色シリカゾル中の遷移金属ドープ着色コロイダルシリカ粒子を顔料としてそのまま使用して、分散液状の顔料組成物としてもよいし、遷移金属ドープ着色シリカゾルを適切な処理温度、及び適切な処理時間で熱処理(乾燥)した固形分残渣を用いて、粉末状の顔料組成物としてもよい。この粉末は公知の技術で粉砕し、更に分級して用いてもよい。また、顔料組成物は、元素が異なる複数種類の遷移金属ドープ着色シリカゾルを任意の混合比で混合することで調色してもよいし、更に別の種類の顔料を添加することで調色してもよい。
【0049】
別の種類の顔料として、無機顔料、有機顔料を使用することができる。上記顔料として、酸化チタン、酸化亜鉛、マイカ等の無機白色顔料;カーボンブラック、グラファイト、鉄黒、銅・クロムブラック、コバルト・クロムブラック、銅・マンガン・鉄ブラック等の無機黒色顔料;ベンガラ等の無機赤・橙色顔料;黄色酸化鉄、チタンイエロー、チタン・アンチモン・クロムイエロー等の無機黄色顔料;クロムグリーン、三酸化二クロム、コバルトグリーン、コバルト・チタン・ニッケル・亜鉛系グリーン、コバルト・アルミ・クロム系ブルーグリーン等の無機緑色顔料;ウルトラマリンブルー、ベルリンブルー、コバルトブルー等の無機青色顔料;パーマネントレッド4R、ブリリアントカーミンFB、パーマネントレッドF5RK、ピラゾロンオレンジ、ピラゾロンレッド、ベンツイミダゾロンオレンジ、パーマネントレッド2B、レーキレッドR、ボルドー10B、ボンマルーンライト、チオインジゴボルドー、アントラキノンレッド、アンタントロンレッド、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット、ペリレンマルーン、キナクリドンレッド、ジクロロキナクリドンマゼンタ、キナクリドンマゼンタ等の有機赤・橙色顔料;ファーストイエローFGL、ベンツイミダゾロンイエローH3G、ベンツイミダゾロンイエローH4G、ジアリリドイエローHR、イソインドリンイエロー、アントラピリミジンイエロー、ニッケルアゾイエロー、キノフタロンイエロー等の有機黄色顔料;塩素化フタロシアニングリーン、臭素化フタロシアニングリーン等の有機緑色顔料;フタロシアニンブルーα、無金属フタロシアニンブルー、スレンブルー等の有機青色顔料;ジオキサンバイオレット、キナクリドンバイオレット等の有機紫色顔料;炭酸カルシウム、カオリン、珪藻土、シリカ、タルク、硫酸バリウム、炭酸バリウム等の体質顔料等を挙げることができる。耐光性の観点から、特に無機系顔料が好ましい。
【0050】
更に顔料組成物は、必要に応じて水及び/又は水溶性有機溶媒等の分散媒、樹脂(プラスチック)、ガラス原料、添加剤等を混合することができる。混合順序は、本発明の効果に影響がない限り任意の順序で添加可能である。混合後の顔料組成物は、分散液の状態を維持したまま(液状)使用してもよいし、適切な処理温度および処理時間で熱処理(乾燥)して粉末状にて使用してもよい。
あるいは、遷移金属ドープ着色シリカゾルを先に粉末状にした後に、前記樹脂、添加剤等を混合し、粉末状のまま使用してもよいし、これに前記分散媒等を加えて分散処理を行って分散液として使用してもよい。
顔料組成物は、透明性の観点から、特に分散液の状態を維持したまま使用することが好ましい。
【0051】
前記水溶性有機溶媒は、アルコール、エーテル、エステル又はケトンを使用することができる。前記水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブタノール、ジアセトンアルコール等のモノアルコール系溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール系溶媒;フルフリルアルコール等の芳香族アルコール系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノtert-ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、γ-ブチロラクトン、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル・エステル系溶媒;アセトン、4-ヒドロキ-4-メチル-2-ペンタノン等のケトン系溶媒;及びN,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン等の含窒素系溶媒等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0052】
前記樹脂(プラスチック)は、公知の樹脂を使用することができる。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、熱可塑性アクリル(例えばポリメチルメタクリレート:PMMA)樹脂、ポリビニルアルコール(PVA)樹脂、酢酸ビニル(PVAc)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリアセタール(POM)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、変性ポリフェニレンエーテル(m-PPE)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、超高分子量ポリエチレン(U-PE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂、ポリスルホン(PSU)樹脂、ポリエーテルスルホン(PESU)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリアリレート(PAR)樹脂、ポリアミドイミド(PAI)樹脂、ポリエーテルイミド(PEI)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、熱可塑性ポリイミド(TPI)樹脂、液晶ポリマー(LCP)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリメチルテルペン(PMP)樹脂、ポリフェニレンオキシド(ノリル、PPO)樹脂、熱可塑性ポリウレタン(TPU)樹脂、クマロン樹脂、アイオノマー(ION)樹脂、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ロジン、酢酸セルロース(CA)樹脂、ポリ乳酸(PLA)樹脂、ポリブチレンサクシネート(PBS)樹脂、ポリカプロラクトン(PCL)樹脂、ポリグリコール酸(PGA)樹脂、ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)樹脂、ポリビニルブチラール樹脂(PVB)、ポリアクリロニトリル(PAN)樹脂等を挙げることができる。熱硬化性樹脂としては、フェノール(PF)樹脂、ユリア(UF)樹脂、メラミン(MF)樹脂、不飽和ポリエステル(UP)樹脂、エポキシ(EP)樹脂、シリコーン(SI)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ジアリルフタレート(PDAP)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂、熱硬化性アクリル(TPA)樹脂、液状ポリブタジエン、シリコーンゴム、セラック、フラン樹脂、カゼイン樹脂等を挙げることができる。光硬化性樹脂としては、ビニル系光硬化性樹脂、アクリル系光硬化性樹脂、エポキシ系光硬化性樹脂、ウレタン系光硬化性樹脂、ポリエステル系光硬化性樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、2種以上の共重合体や変性体にして使用してもよい。
【0053】
前記樹脂は、水及び/又は水溶性有機溶媒に溶解する溶解型樹脂、あるいはコロイド又はエマルションで分散している分散型樹脂が好ましい。
【0054】
ガラス原料は、公知のガラス原料を使用することができる。例えば、珪砂、長石、カレット、ケイ酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、炭酸カリウム、硝酸カリウム、炭酸バリウム、硝酸バリウム、石灰石、苦灰石、酸化マグネシウム、硼砂、ホウ酸、リン酸、水酸化アルミニウム、鉛丹、リサージ、蛍石、クレオライト、ケイフッ化ナトリウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。ガラス原料は、釉薬の原料としても使用できる。
【0055】
前記添加剤は、公知の添加剤を使用することができる。前記添加剤としては、湿潤剤、分散剤、浸透剤、乾燥剤、乾燥抑止剤、消泡剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート剤、可塑剤、架橋剤、硬化触媒、ラジカル発生剤、酸発生剤、増感剤、重合防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤、防さび剤、防腐剤、防藻剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗ウィルス剤等を挙げることができる。これらの添加剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0056】
これら混合や分散処理の工程は、容器中で撹拌羽根やペイントシェーカー、ビーズミル、ボールミル、ディソルバー、ニーダー等の混合分散機を用いて行うことができる。常温で混合性や分散性が悪い場合は、必要に応じて加熱してもよい。
【0057】
更にこの顔料組成物は、混合前後に篩による分級処理、遠心分離処理やろ過処理等を行って不要な異物を除去してよい。
【0058】
顔料組成物における顔料(遷移金属ドープ着色シリカゾル中の遷移金属ドープ着色コロイダルシリカ粒子、及び所望によりその他顔料)の濃度は、顔料組成物を分散液として使用する場合、顔料組成物100質量%中、1質量%以上50質量%以下とすることができる。好ましくは、2質量%以上40質量%以下である。顔料組成物(分散液)中の顔料濃度が1質量%未満の場合、着色成分が少ないため着色性が低く、また50質量%より大きい場合、粒子個数の増大により分散性が悪化しやすく好ましくない。
一方、顔料組成物を粉末として使用する場合、顔料の濃度は、顔料組成物100質量%中、1質量%以上100以下とすることができる。好ましくは、5質量%以上90質量%以下である。顔料組成物(粉末)中の顔料濃度が1質量%未満の場合、着色成分が少ないため着色性が低く好ましくない。
【0059】
顔料組成物における水及び水溶性有機溶媒等の分散媒の割合については、顔料組成物を分散液として使用する場合、顔料組成物100質量%中、50質量%以上99質量%以下とすることができる。一方、顔料組成物を粉末として使用する場合、これら分散媒はできるだけ含有していないことが好ましい。
【0060】
顔料組成物における樹脂の割合については特に限定されないが、顔料組成物100質量%中、0質量%以上50質量%以下である。好ましくは、1質量%以上50質量%以下である。なお、顔料組成物中に樹脂を配合する場合は、1質量%以上とすることが好ましい。
【0061】
顔料組成物が樹脂を含む場合、樹脂に対する顔料の質量比(顔料/樹脂)は、1/99以上99/1以下である。好ましくは、5/95以上95/5以下である。
【0062】
顔料組成物における添加剤の割合は、顔料組成物100質量%中における残部、具体的には、顔料組成物100質量%中、0質量%以上10質量%以下である。
【0063】
[塗料、インク、釉薬]
本発明の顔料組成物は、塗料、インク又は釉薬として使用することができる。すなわち本発明は、前記顔料組成物を少なくとも含む該塗料、インク又は釉薬も対象とする。
【0064】
[印刷物、膜、成形体]
本発明はまた、前記顔料組成物を少なくとも含む印刷物、膜又は成形体を対象とする。
【0065】
本発明の印刷物又は膜は、本発明の顔料組成物を少なくとも含む限り特に制限はない。
ここで印刷物とは、インクにより基材に文字や、絵及び写真等の画像を印刷された物を意味する。
また膜は、基材に塗布した塗布膜でもよいし、自立膜でもよい。ここで塗布膜とは、基材上に塗料等を塗布することにより形成される膜を意味し、自立膜とは、基材の支えを必要としない膜を意味する。
【0066】
前記膜の厚みに特に制限はないが、0.01μm~10mm程度の範囲から選択できる。例えば、塗布膜の厚みは、0.05μm以上20μm以下である。好ましくは0.1μm以上10μm以下である。また自立膜の厚みは、5μm以上10mm以下である。好ましくは、50μm以上1mm以下である。
【0067】
本発明の顔料組成物を基材へ塗布する方法は、はけ塗り、ローラー塗り、ヘラ塗り、エアゾール、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、浸漬塗装、電着塗装、静電塗装、粉体塗装、フローコーティング法、カーテンコーティング法、シャワーコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、バーコーティング法、グラビアコーティング法、スリットコーター法、ディッピング法、スピンコーティング法、キャスト法、スクリーン印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。顔料組成物の塗布回数は、1回でもよいし、2回以上塗布してもよい。塗布する際、顔料組成物及び/又は基材を加熱しながら塗布してもよいし、塗布後に加熱してもよい。乾燥を施した後に、顔料組成物が塗布された基材は、加熱処理(ポストベーク)を行うこともできる。光硬化性樹脂を使用した場合、適切な波長の光源を所定強度、所定時間照射してもよい。
【0068】
前記基材は、公知の基材を使用することができる。前記基材としては、金属、セラミックス、ガラス、陶器、磁器、耐火物、コンクリート、モルタル、スレート、木材、紙、綿、麻、絹、ウール、プラスチック等を挙げることができる。好ましくは、ガラス、ポリエチレンテレフタラート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂等の可視域で透明な基材である。
【0069】
前記基材の形状は特に限定はなく、いかなる形状のものも含まれる。例えば、繊維、網布、編布、織布、不織布、フィルム、シート、板、棒、パイプ、皿、椀、コップ、箱等の形状が挙げられる。
【0070】
本発明の成形体は、本発明の顔料組成物を少なくとも含む限り特に制限はない。
ここで成形体とは、原料を所望の形状、表面又はデザインへと加工する工程から得られた物質を意味する。例えば樹脂や金属、ガラス等を含む種々の成形体であってよく、またこれらに限定されない。
【0071】
本発明の顔料組成物を成形する方法は、一例として、射出成形、ブロー成形、押出し成形、注型成形、ハンドレイアップ成形、プレス成形、圧縮成形、真空成形、圧空成形、Tダイ法、インフレーション法、カレンダー成形、液滴成形法、直接溶解法、マーブルメルト法、オーバーフロー法、フロート法等を挙げることができる。
【0072】
前記成形体の形状は特に限定はなく、いかなる形状のものも含まれる。例えば、繊維、網布、編布、織布、不織布、フィルム、シート、板、棒、パイプ、皿、椀、コップ、箱等の形状が挙げられる。
【実施例
【0073】
以下、本発明について、実施例に基づいてさらに詳述する。ただし、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
なお以下の実施例の手順等の説明をする上において、シリカ粒子におけるシェル層の有無や、遷移金属のドープの有無に関わらず、単に「シリカ粒子」や「シリカゾル」と記載して説明することがある。
【0074】
実施例及び比較例における物性等の測定手順・測定装置等は以下の通りである。
【0075】
<pH>
試料のpHは、pHメーター(東亞ディーケーケー(株)製)を用いて室温(20±5℃)で測定した。
【0076】
<シリカ濃度>
試料のシリカ濃度は質量法を用いて測定した。具体的には、測定対象となる所定質量のシリカゾルを1000℃の電気炉で焼成した際の焼成残分の質量から、下記金属元素分析で測定される無機元素のうちシリカ(分析上はケイ素として測定、酸化物に変換)を除く0.0001質量%以上(1質量ppm以上)の金属元素を酸化物換算した際の質量を差し引いた値をシリカ質量とし、[(シリカ質量/シリカゾル質量)×100]にてシリカ濃度(%)を算出した。
【0077】
<金属元素分析(無機元素分析)>
金属元素分析(シリカも含む)は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-OES、アジレント・テクノロジー(株)製、商品名Agilent 5110)を用いて測定した。具体的には、試料をマイクロウェーブ分解装置で処理し、その後適宜希釈してICP-OESで測定した。検量線は、0-1質量ppmの範囲で作製した検量液を用いて作成した。測定した金属元素量と上記シリカ質量より、シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)を算出した。
【0078】
<電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)>
多機能電子顕微鏡(日本電子(株)製、商品名JEM-F200)を用いて、粒子の電子顕微鏡像を得た。観察条件は、TEMモード、加速電圧200kVで行った。次に、小型汎用画像処理解析システム((株)ニレコ製、商品名ルーゼックスAP)を用いて、得られた電子顕微鏡像から画像解析法で粒子の面積を求め、その面積と等しい真円の直径である円相当径を算出した。個数平均粒子径(D1)は、少なくとも500個以上の任意の粒子の円相当径の個数平均値とした。標準偏差は1σであり、平均値±標準偏差として個数平均粒子径(D1)を求めた。
【0079】
<窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)>
窒素吸着法比表面積測定装置(ユアサアイオニクス(株)製、商品名Monosorb MS-22)を用いて、窒素吸着法(BET法)による比表面積SSA(m/g)を測定した。試料は、測定対象のシリカゾルと水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させた後に、大気下300℃、1時間で乾燥し、その後乳鉢で粉砕した粉末を使用した。次に、BET粒子径D2(nm)を、窒素吸着法(BET法)によって測定された比表面積SSA(m/g)および下記粒子密度PD(g/cm)の値を用いて式(1)から算出した。
BET粒子径D2(nm)=6000/[粒子密度PD(g/cm)×比表面積SSA(m/g)] (1)
【0080】
<個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比>
個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は、上述の個数平均粒子径(D1)及びBET粒子径(D2)の比を取って算出した。
【0081】
<動的光散乱法による平均粒子径(D3)>
動的光散乱法による平均粒子径(D3)は、動的光散乱法粒子径測定装置(スペクトリス(株)製、商品名ゼーターサイザー ナノS)を用いて測定した。
【0082】
<シェル厚>
粒子表面にシェル層を形成した態様において、シェル厚は、シェル層形成前の遷移金属ドープ着色シリカゾルの個数平均粒子径(D1)および、シェル層形成後の遷移金属ドープ着色シリカゾルの個数平均粒子径(D1)の値を用いて下記式(2)から算出した。
シェル厚=(シェル層形成後の粒子の個数平均粒子径(D1)-シェル層形成前の粒子の個数平均粒子径(D1))÷2 (2)
なお前記シェル厚は、個数平均粒子径(D1)の代わりにBET粒子径(D2)を用いて算出してもよい。
【0083】
<分散性>
評価対象のシリカゾルに波長532nmの緑色レーザーポインターを照射して、チンダル現象が発生するかどうか目視で確認し、シリカ粒子の分散性を評価した。チンダル現象が観察され、かつ沈降物が生じなかった場合は分散性:○、チンダル現象が観察されない、あるいは沈降物が生じた場合は分散性:×と評価した。
【0084】
<粒子密度PD>
粒子密度(g/cm)は、乾式自動密度計(マイクロメリティックス社製、商品名AccuPyc 1340 TEC)を用いて測定した。測定条件は、Heガス、導入圧力134kPaG、測定回数10回の平均値で行った。試料は大気下100℃で乾燥し、その後乳鉢で粉砕した粉末を使用した。
【0085】
<結晶相の同定>
結晶相は、デスクトップX線回折装置(XRD、(株)リガク製、商品名MiniFlex600)を用いて同定した。測定条件は、CuKα線(=0.15418nm)、θ-2θ法、測定範囲3°-80°で行った。試料は大気下100℃で乾燥し、その後乳鉢で粉砕した粉末を使用した。
【0086】
<可視紫外スペクトル分析>
紫外可視近赤外分光光度計((株)島津製作所製、商品名UV-3600)を用いて、測定対象のシリカゾルの可視紫外スペクトルを測定した。具体的には、光路長10mmの蓋付き石英セルを用い、対照は水又はプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を用いた。測定波長250-800nmの範囲で可視紫外透過スペクトルおよび可視紫外吸収スペクトルを測定した。
【0087】
<耐光性評価>
QUV促進耐候試験機(Q-Lab(株)製、商品名QUV/se)を用いて、遷移金属ドープ着色シリカゾルの耐光性を評価した。具体的には、試料である対象のシリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置した。測定条件は、UVA-340型ランプ、UV照射強度0.89W/m、温度50℃、照射時間500hで行った(太陽光3.6か月相当)。なお、UV照射500h後の試料の質量減少率は1%未満で、蓋付き石英セルの密閉性は問題なかった。また、UV照射時間のみ100時間又は250時間とした条件にて、対象のシリカゾルに対するUV照射を同様に実施した。
所定時間(100時間、250時間、500時間)UV照射後のシリカゾルについて、可視紫外スペクトル分析にて吸収スペクトルを測定し、任意の吸収波長でのUV照射前後の吸光度変化率を下記式(3)から算出した。
吸光度変化率(%)=[UV照射後の吸光度/UV照射前の吸光度]×100 (3)
吸光度変化率(%)の値が100%に近いほどUV照射で吸光度が変化していないことを意味し、耐光性が高いと判断した。
【0088】
<活性ケイ酸水溶液の調製>
純水2196gに、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度28.8質量%、NaO濃度9.5質量%、シリカ/NaOモル比3.1)304gを加えて均一に混合し、シリカ濃度3.5質量%に希釈したケイ酸ナトリウム水溶液2500gを作製した。この希釈したケイ酸ナトリウム水溶液を、水素型強酸性陽イオン交換樹脂(オルガノ(株)製、商品名アンバーライトIR-120B)1Lを充填したカラムに250mL/minの速度で通液することで陽イオン交換樹脂と接触させ、シリカ濃度3.5質量%、pH2.9の活性ケイ酸水溶液1684gを調製した。この活性ケイ酸水溶液中のV、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、及びCuの濃度は、全て検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。
得られた活性ケイ酸水溶液は、以下に示す各シリカゾルの製造工程において、適宜、フィード液やヒール液の調製時、またシリカ粒子の被覆(シェル層)時に使用した。
【0089】
[実施例1]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
純水780gに、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度28.8質量%、NaO濃度9.5質量%、シリカ/NaOモル比3.1)28gを加えて均一に混合し、シリカ濃度1.0質量%、NaO濃度0.33質量%、シリカ/NaOモル比3.1、pH11.0のヒール液808gを調製した。
次に予め純水にCoSO・7HO粉末を混合、溶解して作製した10質量%CoSO水溶液7.9gを、前記活性ケイ酸水溶液1684gに加えて均一に混合し、フィード液1692gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液808gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液1692gを100分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0090】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)13nm、Co濃度0.012質量%(120質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0044であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.3±2.8nmであった。
【0091】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液238g及び無色透明なUFろ液2062gを回収した。このCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.9、シリカ濃度26.1質量%、Co濃度0.12質量%(1200質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0046であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.4、Co濃度0.0004質量%(4質量ppm)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。このCoドープ着色シリカゾルの粉末外観を図3に示す。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.17g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0092】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.6、シリカ濃度22.1質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは377m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は7.3nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.27であった。
【0093】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0094】
<耐光性評価>
実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射500h後の吸光度変化率は78%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0095】
[実施例2]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
フィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持する工程を、1時間に変更した以外は実施例1と同様の操作で、Coドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0096】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.5、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)13nm、Co濃度0.012質量%(120質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0045であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.5±2.6nmであった。
【0097】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液220g及び無色透明なUFろ液2080gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.9、シリカ濃度28.2質量%、Co濃度0.13質量%(1300質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0046であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.4、Co濃度0.0003質量%(3質量ppm)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.13g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0098】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.4、シリカ濃度22.1質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは372m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は7.6nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.26であった。
【0099】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0100】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ96%、88%及び83%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0101】
[実施例3]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
ヒール液を、純水544g、前記活性ケイ酸水溶液(シリカ濃度3.5質量%、pH2.9)231g、アンモニア水(アンモニア濃度27質量%)33gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.28、pH10.9)808gに変更した以外は実施例1と同様の操作で、Coドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0102】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)17nm、Co濃度0.013質量%(130質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0049であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は11.6±4.3nmであった。
【0103】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液201g及び無色透明なUFろ液2099gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.8、シリカ濃度30.9質量%、Co濃度0.14質量%(1400質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0045であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.5、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.18g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0104】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.4、シリカ濃度25.2質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは271m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は10.1nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.14であった。
【0105】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルの整粒液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0106】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ84%、81%及び76%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0107】
[実施例4]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
フィード液を調製する際の10質量%CoSO水溶液7.9gを、35.3gに変更して調製したフィード液1719gを用いる以外は実施例3と同様の操作で、Coドープ着色シリカゾルの整粒液2527gを得た。
【0108】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.3、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)27nm、Co濃度0.054質量%(540質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.020であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.6±3.0nmであった。
【0109】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液190g及び無色透明なUFろ液2110gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.6、シリカ濃度27.5質量%、Co濃度0.56質量%(5600質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.020であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.2、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.21g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0110】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.8、シリカ濃度20.0質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは282m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は9.6nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.00であった。
【0111】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルの整粒液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0112】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ94%、90%及び87%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0113】
[実施例5]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
ヒール液を、純水765g、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液28g、アンモニア水15gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NaO濃度0.32質量%、NH濃度0.50質量%、シリカ/アルカリモル比0.48、pH11.2)808gに変更した以外は実施例1と同様の操作で、Coドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0114】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.7、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)20nm、Co濃度0.012質量%(120質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0045であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.2±3.0nmであった。
【0115】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液216g及び無色透明なUFろ液2084gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH10.3、シリカ濃度28.8質量%、Co濃度0.13質量%(1300質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0045であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.8、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.18g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0116】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.5、シリカ濃度19.4質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは332m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は8.3nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.11であった。
【0117】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルの整粒液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0118】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ77%、69%及び64%だった。結果を表2に示す。
【0119】
[実施例6]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
純水284gに、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液10gを加えて均一に混合し、シリカ濃度1.0質量%、NaO濃度0.33質量%、シリカ/NaOモル比3.1、pH11.0のヒール液294gを調製した。次に10質量%CoSO水溶液10.3gを、前記活性ケイ酸水溶液2205gに加えて均一に混合し、フィード液2215gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液294gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液2215gを360分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾルの整粒液2509gを得た。
【0120】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH9.4、シリカ濃度3.2質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)16nm、Co濃度0.0066質量%(66質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0020であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.7±3.2nmであった。
【0121】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2233gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液216g及び無色透明なUFろ液2017gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH8.6、シリカ濃度32.6質量%、Co濃度0.066質量%(660質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0020であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.2、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.17g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0122】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.1、シリカ濃度23.2質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは313m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は8.8nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.10であった。
【0123】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0124】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。結果を表2に示す。
【0125】
[実施例7]
<Coドープ着色シリカゾルの製造(シェル層あり)>
実施例1と同様の条件でCoドープ着色シリカゾルの粒子合成を実施した。
すなわち、まず純水284gに、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液10gを加えて均一に混合し、シリカ濃度1.0質量%、NaO濃度0.32質量%、シリカ/NaOモル比3.1、pH11.0のヒール液294gを調製した。
次に予め純水にCoSO・7HO粉末を混合、溶解して作製した10質量%CoSO水溶液2.9gを、前記活性ケイ酸水溶液613gに加えて均一に混合し、フィード液616gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液294gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液616gを100分かけて一定速度で連続的に供給し、粒子の合成を行った。
その後、80℃にて、更に前記活性ケイ酸水溶液1593gを260分かけて一定速度で連続的に供給し、粒子表面にシェル層を形成した。
この活性ケイ酸水溶液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾル(シェル層あり)の整粒液2503gを得た。
【0126】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH9.7、シリカ濃度3.1質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)14nm、Co濃度0.0043質量%(43質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0014であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は12.9±3.8nmであった。
【0127】
実施例1の粒子の個数平均粒子径(D1)9.5±2.6nmの値を用いて式(2)からシェル厚を算出したところ、シェル厚は1.7nmであった。
【0128】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液217g及び無色透明なUFろ液2082gを回収した。得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH8.9、シリカ濃度32.8質量%、Co濃度0.046質量%(460質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0014であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.7、Co濃度0.0001質量%(1質量ppm)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.21g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0129】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.2、シリカ濃度26.2質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは255m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は10.6nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.21であった。
【0130】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0131】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。粒子表面にシリカでシェル層を形成することで、実施例1と比べて耐光性が向上した。結果を表2に示す。
【0132】
[実施例8]
<Coドープ着色シリカゾルの製造(シェル層あり)>
実施例7で粒子を合成した後、粒子表面にシェル層を形成するべく、前記活性ケイ酸水溶液を一定速度で連続的に供給する際の容器内の液温を80℃から100℃に変更し、更に活性ケイ酸水溶液供給の終了後、容器内の液温も80℃から100℃に変更した以外は実施例7と同様に操作して、Coドープ着色シリカゾル(シェル層あり)の整粒液2503gを得た。
【0133】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH9.7、シリカ濃度3.3質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)12nm、Co濃度0.0044質量%(44質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0013であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は12.7±2.9nmであった。
【0134】
実施例1の粒子の個数平均粒子径(D1)9.5±2.6nmの値を用いて式(2)からシェル厚を算出したところ、シェル厚は1.6nmであった。
【0135】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液258g及び無色透明なUFろ液2042gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH8.9、シリカ濃度29.4質量%、Co濃度0.038質量%(380質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0013であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.5、Co濃度0.0001質量%(1質量ppm)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.22g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0136】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.1、シリカ濃度27.9質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは252m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は10.7nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.19であった。
【0137】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0138】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。粒子表面にシリカでシェル層を形成することで、実施例1と比べて耐光性が向上した。結果を表2に示す。
【0139】
[実施例9]
<Coドープ着色シリカゾルの製造(シェル層あり)>
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、実施例1で作製したCoドープ着色シリカゾルの整粒液343gおよび10質量%のNaOH水溶液9.2gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、前記活性ケイ酸水溶液2029gを900分かけて一定速度で連続的に供給し、粒子表面にシェル層を形成した。
この活性ケイ酸水溶液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾル(シェル層あり)の整粒液2381gを得た。
【0140】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.0、シリカ濃度3.4質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)17nm、Co濃度0.0017質量%(17質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0005であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は16.8±3.7nmであった。
【0141】
実施例1の粒子の個数平均粒子径(D1)9.5±2.6nmの値を用いて式(2)からシェル厚を算出したところ、シェル厚は3.7nmであった。
【0142】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液238g及び無色透明なUFろ液2062gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.4、シリカ濃度32.8質量%、Co濃度0.016質量%(160質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0005であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.8、Co濃度0.0001質量%(1質量ppm)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.23g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0143】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.2、シリカ濃度25.4質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは186m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は14.5nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.16であった。
【0144】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0145】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。粒子表面にシリカでシェル層を形成することで、実施例1と比べて耐光性が向上した。結果を表2に示す。
【0146】
[実施例10]
<Coドープ着色シリカゾルの製造(シェル層あり)>
実施例9において、粒子表面にシェル層を形成するべく、前記活性ケイ酸水溶液を一定速度で連続的に供給する際の容器内の液温を80℃から100℃に変更し、更に活性ケイ酸水溶液供給の終了後、容器内の液温も80℃から100℃に変更した以外は実施例9と同様に操作して、Coドープ着色シリカゾル(シェル層あり)の整粒液2381gを得た。
【0147】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.1、シリカ濃度3.6質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)25nm、Co濃度0.0017質量%(17質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0005であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は17.3±4.1nmであった。
【0148】
実施例1の粒子の個数平均粒子径(D1)9.5±2.6nmの値を用いて式(2)からシェル厚を算出したところ、シェル厚は3.9nmであった。
【0149】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液268g及び無色透明なUFろ液2032gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.6、シリカ濃度30.9質量%、Co濃度0.014質量%(140質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0005であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.0、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.24g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0150】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.1、シリカ濃度24.2質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは174m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は15.4nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.13であった。
【0151】
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長540nm、590nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0152】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。粒子表面にシリカでシェル層を形成することで、実施例1と比べて耐光性が向上した。結果を表2に示す。
【0153】
[実施例11]
<Coドープ着色シリカゾルの製造>
純水745g、前記活性ケイ酸水溶液317g、アンモニア水46gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.26、pH10.8)のヒール液1108gを調製した。
次に予め純水にCoSO・7HO粉末を混合、溶解して作製した10質量%CoSO水溶液29.0g、前記活性ケイ酸水溶液1384gを均一に混合し、フィード液1413gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液1108gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液1413gを60分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾルの整粒液2521gを得た。
【0154】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.4質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)27nm、Co濃度0.045質量%(450質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.019であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は10.5±3.3nmであった。
【0155】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2360gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液193g及び無色透明なUFろ液2167gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.7、シリカ濃度29.4質量%、Co濃度0.57質量%(5700質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.019であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.4、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.21g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0156】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.0、シリカ濃度20.5質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは296m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は9.2nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.14であった。
【0157】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルの整粒液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0158】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ89%、80%及び74%だった。結果を表2に示す。
【0159】
[実施例12]
<Coドープ着色シリカゾルの製造(シェル層あり)>
実施例11と同様の条件でCoドープ着色シリカゾルの粒子合成を実施した。
すなわち、まず純水315g、前記活性ケイ酸水溶液134g、アンモニア水19gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.26、pH10.8)のヒール液468gを調製した。
次に予め純水にCoSO・7HO粉末を混合、溶解して作製した10質量%CoSO水溶液12.3g、前記活性ケイ酸水溶液585gを均一に混合し、フィード液597gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液468gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液597gを60分かけて一定速度で連続的に供給し、粒子の合成を行った。
その後、80℃にて、更に前記活性ケイ酸水溶液1454gを144分かけて一定速度で連続的に供給し、粒子表面にシェル層を形成した。
この活性ケイ酸水溶液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCoドープ着色シリカゾル(シェル層あり)の整粒液2519gを得た。
【0160】
Coドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青紫色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.1、シリカ濃度3.0質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)24nm、Co濃度0.019質量%(190質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0063であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は11.1±3.8nmであった。
【0161】
比較例2の粒子の個数平均粒子径(D1)10.5±3.3nmの値を用いて式(2)からシェル厚を算出したところ、シェル厚は0.3nmであった。
【0162】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液2340gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青紫色のCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液232g及び無色透明なUFろ液2108gを回収した。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.4、シリカ濃度30.3質量%、Co濃度0.19質量%(1900質量ppm)、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)0.0063であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.2、Co濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CoがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCoがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.20g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
【0163】
次に得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.2、シリカ濃度21.5質量%の酸性Coドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Coドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青紫色の酸性Coドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは275m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は9.9nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.12であった。
【0164】
得られたCoドープ着色シリカゾルの整粒液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCoドープ着色シリカゾルの整粒液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmにCo由来の吸収が確認できた。
【0165】
<耐光性評価>
得られたCoドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ95%、92%及び90%だった。粒子表面にシリカのシェル層を形成することで、実施例11と比べて耐光性が向上していた。結果を表2に示す。
【0166】
[実施例13]
<Crドープ着色シリカゾルの製造>
純水543g、前記活性ケイ酸水溶液(シリカ濃度3.5質量%、pH2.9)231g、アンモニア水(アンモニア濃度27質量%)34gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.26、pH10.9)のヒール液808gを調製した。
次に予め純水にCr(NO・9HOを混合、溶解して作製した10質量%Cr(NO水溶液13.9gを、前記活性ケイ酸水溶液1684gに加えて均一に混合し、フィード液1698gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液808gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液1698gを100分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCrドープ着色シリカゾルの整粒液2506gを得た。
【0167】
得られたCrドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ青緑色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCrドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)23nm、Cr濃度0.012質量%(120質量ppm)、シリカに対するCrの質量比(Cr/シリカ)0.0044であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.3±3.0nmであった。
【0168】
次に得られたCrドープ着色シリカゾルの整粒液2340gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ青緑色のCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液210g及び無色透明なUFろ液2130gを回収した。このCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.7、シリカ濃度30.1質量%、Cr濃度0.13質量%(1300質量ppm)、シリカに対するCrの質量比(Cr/シリカ)0.0043であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.5、Cr濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CrがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCrがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な青緑色のCrドープ着色シリカゾルの粉末を得た。このCrドープ着色シリカゾルの粉末外観を図3に示す。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.16g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0169】
次に得られたCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.5、シリカ濃度21.2質量%の酸性Crドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Crドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な青緑色の酸性Crドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは307m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は9.0nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.07であった。
【0170】
得られたCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCrドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長425nm、及び590nmにCr由来の吸収が確認できた。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0171】
<耐光性評価>
得られたCrドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長590nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ99%、98%及び97%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0172】
[実施例14]
<Mnドープ着色シリカゾルの製造>
純水543g、前記活性ケイ酸水溶液(シリカ濃度3.5質量%、pH2.9)231g、アンモニア水(アンモニア濃度27質量%)34gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.26、pH10.9)のヒール液808gを調製した。
次に予め純水にMnSO・5HOを混合、溶解して作製した10質量%MnSO水溶液8.3gを、前記活性ケイ酸水溶液1684gに加えて均一に混合し、フィード液1692gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液808gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液1692gを100分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してMnドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0173】
得られたMnドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ赤茶色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたMnドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)19nm、Mn濃度0.012質量%(120質量ppm)、シリカに対するMnの質量比(Mn/シリカ)0.0045であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は10.0±2.8nmであった。
【0174】
次に得られたMnドープ着色シリカゾルの整粒液2340gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ赤茶色のMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液238g及び無色透明なUFろ液2102gを回収した。このMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.8、シリカ濃度26.5質量%、Mn濃度0.12質量%(1200質量ppm)、シリカに対するMnの質量比(Mn/シリカ)0.0045であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.5、Mn濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。MnがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にMnがドープされて着色していることが確認できた。
得られたMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な赤茶色のMnドープ着色シリカゾルの粉末を得た。このMnドープ着色シリカゾルの粉末外観を図3に示す。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.18g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0175】
次に得られたMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.3、シリカ濃度19.6質量%の酸性Mnドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Mnドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な赤茶色の酸性Mnドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは271m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は10.2nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は0.98であった。
【0176】
得られたMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてMnドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長455nmにMn由来の吸収が確認できた。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0177】
<耐光性評価>
得られたMnドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長455nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0178】
[実施例15]
<Cuドープ着色シリカゾルの製造>
純水543g、前記活性ケイ酸水溶液(シリカ濃度3.5質量%、pH2.9)231g、アンモニア水(アンモニア濃度27質量%)34gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NH濃度1.1質量%、シリカ/NHモル比0.26、pH10.9)のヒール液808gを調製した。
次に予め純水にCuSO・5HOを混合、溶解して作製した10質量%CuSO水溶液7.6gを、前記活性ケイ酸水溶液1684gに加えて均一に混合し、フィード液1692gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液808gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液1692gを100分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を80℃に6時間維持してCuドープ着色シリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0179】
得られたCuドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ空色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたCuドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH10.4、シリカ濃度2.7質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)19nm、Cu濃度0.011質量%(110質量ppm)、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)0.0041であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は9.7±2.9nmであった。
【0180】
次に得られたCuドープ着色シリカゾルの整粒液2340gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ空色のCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液207g及び無色透明なUFろ液2133gを回収した。このCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH9.7、シリカ濃度30.5質量%、Cu濃度0.13質量%(1300質量ppm)、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)0.0043であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH10.6、Cu濃度は検出下限値未満(0.0001質量%未満)であった。CuがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にCuがドープされて着色していることが確認できた。
得られたCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な空色のCuドープ着色シリカゾルの粉末を得た。このCuドープ着色シリカゾルの粉末外観を図3に示す。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.17g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0181】
次に得られたCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.2、シリカ濃度19.8質量%の酸性Cuドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Cuドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な空色の酸性Cuドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは280m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は9.9nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は0.98であった。
【0182】
得られたCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてCuドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長640nmにCu由来の吸収が確認できた。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0183】
<耐光性評価>
得られたCuドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長640nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ99%、99%及び99%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0184】
[実施例16]
<Niドープ着色シリカゾルの製造>
純水284g、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液10g、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度10質量%)10gを加えて均一に混合したヒール液(シリカ濃度1.0質量%、NO濃度0.57質量%、シリカ/NOモル比1.8、pH12.0)のヒール液304gを調製した。
次に予め純水にNiSO・6HOを混合、溶解して作製した10質量%NiSO水溶液19.6gを、前記活性ケイ酸水溶液2205gに加えて均一に混合し、フィード液2225gを調製した。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液304gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液2225gを100分かけて一定速度で連続的に供給し、その後100℃に昇温して260分かけて一定速度で連続的に供給し粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を100℃に6時間維持してNiドープ着色シリカゾルの整粒液2529gを得た。
【0185】
得られたNiドープ着色シリカゾルの整粒液は高透明かつ緑色で、沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。この得られたNiドープ着色シリカゾルの整粒液は、pH9.4、シリカ濃度3.1質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)14nm、Ni濃度0.031質量%(310質量ppm)、シリカに対するNiの質量比(Ni/シリカ)0.0099であった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は11.3±2.4nmであった。
【0186】
次に得られたNiドープ着色シリカゾルの整粒液2340gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、高透明かつ緑色のNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液236g及び無色透明なUFろ液2104gを回収した。このNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液は、pH8.8、シリカ濃度30.7質量%、Ni濃度0.29質量%(2900質量ppm)、シリカに対するNiの質量比(Ni/シリカ)0.0095であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.1、Ni濃度は0.0002質量%(2質量ppm)であった。NiがUFろ液側にほぼ存在せず、UF濃縮液側に存在したことから、コロイダルシリカ粒子にNiがドープされて着色していることが確認できた。
得られたNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、透明な緑色のNiドープ着色シリカゾルの粉末を得た。このNiドープ着色シリカゾルの粉末外観を図3に示す。その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.17g/cmであった。同様にこの粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0187】
次に得られたNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.3、シリカ濃度24.0質量%の酸性Niドープ着色シリカゾルを得た。この酸性Niドープ着色シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して透明な緑色の酸性Crドープ着色シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは262m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は10.6nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.07であった。
【0188】
得られたNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてNiドープ着色シリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長395nm、670nm及び750nmにNi由来の吸収が確認できた。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0189】
<耐光性評価>
得られたNiドープ着色シリカゾルを光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長670nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ100%、100%及び100%だった。結果を表2及び図6に示す。
【0190】
[比較例1]
<活性ケイ酸水溶液の調製>と同様の操作で、活性ケイ酸水溶液2300gを調製した。
【0191】
<シリカゾルの製造>
純水284gに、市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液(シリカ濃度28.8質量%、NaO濃度9.5質量%、シリカ/NaOモル比3.1)10gを加えて均一に混合し、シリカ濃度1.0質量%、NaO濃度0.33質量%、シリカ/NaOモル比3.1、pH11.0のヒール液294gを調製した。
遷移金属化合物は添加せず、前記活性ケイ酸水溶液2206gをフィード液とした。
撹拌機及びコンデンサー付き3Lのガラス製反応容器に、調製したヒール液294gを仕込み、オイルバスで容器内の液温を80℃に保った。次いで、撹拌下のこの容器内に、フィード液2206gを360分かけて一定速度で連続的に供給した。フィード液供給途中で、容器内の液温を昇温し、100℃に変更して粒子合成を行った。このフィード液供給の終了後、撹拌下で容器内の液温を100℃に6時間維持してシリカゾルの整粒液2500gを得た。
【0192】
得られたシリカゾルの整粒液は高透明で沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。コロイド色は僅かに確認できたが、無色透明で着色していなかった。この得られたシリカゾルの整粒液は、pH10.1、シリカ濃度3.3質量%、動的光散乱法による平均粒子径(D3)20nmであった。遷移金属化合物は検出下限値未満(0.0001質量%未満)だった。TEMモードの電子顕微鏡で粒子を観察したところ、中実な球状粒子であった。この電子顕微鏡像を図1に示す。この粒子の電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径(D1)は12.5±3.7nmであった。
【0193】
次に得られたシリカゾルの整粒液2300gを、分画分子量20万の限外ろ過(UF)膜を用いて、室温、撹拌下にて圧縮空気で加圧ろ過を行って濃縮し、無色透明なシリカゾルのUF濃縮液265g及び無色透明なUFろ液2034gを回収した。このシリカゾルのUF濃縮液の外観を図2に示す。
得られたシリカゾルのUF濃縮液は、pH9.5、シリカ濃度28.6質量%であった。遷移金属Tは検出下限値未満(0.0001質量%未満)だった。
得られたシリカゾルのUF濃縮液に沈降物は発生していなかった。更に波長532nmの緑色レーザーポインターを照射したところ、チンダル現象が観察され、分散性は良好であった。なおUF濃縮時に得られたUFろ液は、pH9.9であった。遷移金属Tは検出下限値未満(0.0001質量%未満)だった。
得られたシリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させて、無色透明なシリカゾルの粉末を得た。このシリカゾルの粉末外観を図3に示す。
その後、更に乳鉢で粉砕した粉末を乾式密度計で粒子密度PDを測定した結果、2.26g/cmであった。同様にこの粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。このXRDパターンを図4に示す。
【0194】
次に得られたシリカゾルのUF濃縮液と水素型強酸性陽イオン交換樹脂とを接触させて、pH2.4、シリカ濃度24.1質量%の酸性シリカゾルを得た。この酸性シリカゾルを大気下300℃、1時間で乾燥して無色透明な酸性シリカゾルの粉末を得た。
更に乳鉢で粉砕した粉末を窒素吸着法で測定した結果、比表面積SSAは224m/gであった。式(1)を用いて窒素吸着法から算出したBET粒子径(D2)は11.9nmで、個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比は1.05であった。
【0195】
シリカゾルのUF濃縮液を孔径0.45μmのナイロン製メンブレンフィルターでろ過した後、対照に純水を用いてシリカゾルのUF濃縮液の可視紫外スペクトルを測定した結果、測定波長250nmから800nmの範囲で、波長400nm以下のコロイダルシリカ粒子の光の散乱による吸収以外は確認できなかった。この可視紫外透過スペクトル及び可視紫外吸収スペクトルを図5に示す。
【0196】
[比較例2]
赤色系有機顔料分散液((株)トクシキ製、商品名MT-120レッド、顔料ピグメントバイオレット19、顔料濃度15質量%)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で顔料濃度0.01質量%まで希釈してPGME希釈赤色系有機顔料分散液を調製した。なお、純水で希釈した赤色系有機顔料分散液は、粒子が凝集し沈降物が発生したため耐光性評価に適さなかった。
対照にPGMEを用いて、このPGME希釈赤色系有機顔料分散液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長490nm、525nm及び560nmに吸収が確認できた。
<耐光性評価>
このPGME希釈赤色系有機顔料分散液を光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長560nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ35%、0.3%及び0.2%だった。結果を表3及び図7に示す。
【0197】
[比較例3]
黄色系有機顔料分散液((株)トクシキ製、商品名MT-150イエロー、顔料ピグメントイエロー110、顔料濃度15質量%)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で顔料濃度0.01質量%まで希釈してPGME希釈黄色系有機顔料分散液を調製した。なお、純水で希釈した黄色系有機顔料分散液は、粒子が凝集し沈降物が発生したため耐光性評価に適さなかった。
対照にPGMEを用いて、このPGME希釈黄色系有機顔料分散液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長325nm及び440nmに吸収が確認できた。
<耐光性評価>
このPGME希釈黄色系有機顔料分散液を光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長440nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ35%、0.4%及び0.4%だった。結果を表3及び図7に示す。
【0198】
[比較例4]
緑色系有機顔料分散液((株)トクシキ製、商品名MT-160グリーン、顔料ピグメントグリーン7、顔料濃度25質量%)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で顔料濃度0.01質量%まで希釈してPGME希釈緑色系有機顔料分散液を調製した。なお、純水で希釈した緑色系有機顔料分散液は、粒子が凝集し沈降物が発生したため耐光性評価に適さなかった。
対照にPGMEを用いて、このPGME希釈緑色系有機顔料分散液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長320nm、365nm及び650nmに吸収が確認できた。
<耐光性評価>
このPGME希釈緑色系有機顔料分散液を光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長650nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ74%、33%及び5%だった。結果を表3及び図7に示す。結果を表3及び図7に示す。
【0199】
[比較例5]
青色系有機顔料分散液((株)トクシキ製、商品名MT-170ブルー、顔料ピグメントブルー15、顔料濃度15質量%)をプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)で顔料濃度0.01質量%まで希釈してPGME希釈青色系有機顔料分散液を調製した。なお、純水で希釈した青色系有機顔料分散液は、粒子が凝集し沈降物が発生したため耐光性評価に適さなかった。
対照にPGMEを用いて、このPGME希釈青色系有機顔料分散液の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長345nm、630nm及び710nmに吸収が確認できた。
<耐光性評価>
このPGME希釈青色系有機顔料分散液を光路長10mmの蓋付き石英セルに入れ、QUV促進耐候試験機内に設置して耐光性を評価した。UV照射前を100%とした場合、吸収波長630nmにおけるUV照射100h後、250h後及び500h後の吸光度変化率は、それぞれ77%、31%及び6%だった。結果を表3及び図7に示す。
【0200】
表3及び図7に示すように、比較例2-比較例5の有機顔料は、UV照射500h後に吸光度変化率が0.2-6%とほぼ吸収が消失したのに対して、表2及び図6に示すように、実施例1-実施例16の遷移金属ドープ着色シリカゾルは、UV照射500h後に吸光度変化率は64-100%となり、全く低下しない(100%)か約4割程度の低下にとどまり、本発明の遷移金属ドープシリカゾルは耐光性が優れていることが明らかとなった。特に実施例7-実施例10及び実施例12に示すように、粒子表面にシェル層を形成することで、耐光性が向上することが確認された。
【0201】
【表1】
【0202】
【表2】
【0203】
【表3】
【0204】
[比較例6]
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)10gに、シリカに対するCoの質量比(Co/シリカ)が0.005となるよう10質量%CoSO水溶液0.46gを、撹拌下で添加したところシリカナノ粒子が凝集して沈降物が発生し、その後ゲル化した。
【0205】
[比較例7]
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)10gに、シリカに対するCrの質量比(Cr/シリカ)が0.005となるよう10質量%Cr(NO水溶液0.80gを、撹拌下で添加したところ直ちにゲル化した。
【0206】
[比較例8]
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)10gに、シリカに対するMnの質量比(Mn/シリカ)が0.005となるよう10質量%MnSO水溶液0.48gを、撹拌下で添加したところシリカナノ粒子が凝集して沈降物が発生し、その後ゲル化した。
【0207】
[比較例9]
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)10gに、シリカに対するCuの質量比(Cu/シリカ)が0.005となるよう10質量%CuSO水溶液0.44gを、撹拌下で添加したところシリカナノ粒子が凝集して沈降物が発生し、その後ゲル化した。
【0208】
[比較例10]
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)10gに、シリカに対するNiの質量比(Ni/シリカ)が0.005となるよう10質量%NiSO水溶液0.54gを、撹拌下で添加したところシリカナノ粒子が凝集して沈降物が発生し、その後ゲル化した。
【0209】
比較例6-比較例10に示すように、比較例1で得られたシリカゾル(シリカ粒子に対する遷移金属化合物のドープなし)に、後から遷移金属化合物を添加しても分散安定性が低く、後から添加した遷移金属化合物を構成するカチオン性遷移金属イオンがシリカゾルに含まれるアニオン性のシリカ粒子を凝集させることで、沈降物又はゲル化を生じさせたとみられる結果となった。一方、前述の実施例1-実施例16の遷移金属ドープ着色シリカゾルは、主にシリカ粒子内部に遷移金属がドープされることにより、凝集して沈降物又はゲル化が生じることなく分散安定性が高い結果が得られた。
【0210】
[実施例17]
<Coドープ着色シリカゾルを含む顔料組成物の製造>
実施例1で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液を大気下100℃で乾燥させた後、600℃、1時間熱処理することで、透明な青紫色のCoドープ着色シリカゾルの粉末を得た。その後、更に乳鉢で粉砕して粉末にした。なお、この粉砕した粉末をX線回折法で測定した結果、XRDパターンはブロードであったため、粉末の結晶性は非晶質であった。
この粉砕した粉末1gと市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液4gを混合して、顔料組成物を得た。
<Coドープ着色シリカゾルを含む着色ガラスの製造>
得られた顔料組成物0.5gを釉薬とし、磁気るつぼに入れ、100℃、30分で乾燥させた後、1000℃、60分で熱処理を行うことで青紫色の着色ガラスを得た。
【0211】
[比較例11]
市販のJIS3号ケイ酸ナトリウム水溶液0.5gを釉薬とし、磁気るつぼに入れ、100℃、30分で乾燥させた後、1000℃、60分で熱処理を行うことで無色透明なガラスを得た。
【0212】
[実施例18]
<Coドープ着色シリカゾルを含む顔料組成物の製造>
実施例4で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度27.5質量%)2.7g、水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランHW-171、DIC社製、固形分35質量%)2.1g及び水0.2gを混合して、顔料組成物100質量%中、シリカ濃度15質量%、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分15質量%、総固形分30質量%の青紫色の分散液からなる顔料組成物5.0gを得た。
<Coドープ着色シリカゾルを含む着色膜の製造>
得られた顔料組成物2gを塗料とし、青板ガラス基板上にドクターブレードで塗布し、100℃、5分で熱処理を行うことで青紫色の透明性がある膜を形成した。外観を図8(a)に示す。膜をカッターで切断し、その膜の断面について走査電子顕微鏡(SEM、日本電子(株)製、商品名JSM-6010LV)で膜厚を測定したところ、膜厚14μmであった。SEM像を図8(b)に示す。空気を対照にして、得られた膜の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmに吸収が確認できた。透過スペクトルを図8(c)に示す。
【0213】
[比較例12]
水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランHW-171、DIC社製、固形分35質量%)4.3g及び水0.7gを混合して、顔料組成物100質量%中、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分30質量%、総固形分30質量%の無色透明の顔料組成物5.0gを得た。得られた顔料組成物2gを塗料とし、青板ガラス基板上にドクターブレードで塗布し、100℃、5分で熱処理を行うことで無色透明な膜を形成した。
【0214】
[実施例19]
<Coドープ着色シリカゾルを含む顔料組成物の製造>
実施例3で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度30.9質量%)2.4g、水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランAP-40N、DIC社製、固形分35質量%)2.1g及び水0.5gを混合して、顔料組成物100質量%中、シリカ濃度15質量%、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分15質量%、総固形分30質量%の青紫色の分散液からなる顔料組成物5.0gを得た。
<Coドープ着色シリカゾルを含む着色フィルムの製造>
得られた顔料組成物3gを塗料とし、厚み125μmのPETフィルム上にバーコーターでウェット膜厚150μmになるよう4m/sで塗布し、100℃、5分で熱処理を行うことで青紫色の透明性がある膜を形成した。走査電子顕微鏡(SEM)で膜厚を測定したところ、膜厚35μmであった。空気を対照にして、得られた膜の可視紫外スペクトルを測定した。結果、波長525nm、580nm及び640nmに吸収が確認できた。
【0215】
[比較例13]
水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランAP-40N、DIC社製、固形分35質量%)4.3g及び水0.7gを混合して、顔料組成物100質量%中、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分30質量%、総固形分30質量%の無色透明の顔料組成物5.0gを得た。得られた顔料組成物3gを塗料とし、厚み125μmのPETフィルム上にバーコーターでウェット膜厚150μmになるよう4m/sで塗布し、100℃、5分で熱処理を行うことで無色透明な膜を形成した。走査電子顕微鏡(SEM)で膜厚を測定したところ、膜厚34μmであった。
【0216】
[実施例20]
<Coドープ着色シリカゾルを含む顔料組成物の製造>
実施例3で得られたCoドープ着色シリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度30.9質量%)2.4g、水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランAP-40N、DIC社製、固形分35質量%)2.1g及び水0.5gを混合して、顔料組成物100質量%中、シリカ濃度15質量%、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分15質量%、総固形分30質量%の青紫色の分散液からなる顔料組成物5.0gを得た。
<Coドープ着色シリカゾルを含む成形体の製造>
得られた顔料組成物3gをテフロン(登録商標)製シャーレに入れ、60℃、24時間乾燥させることで青紫色の透明性がある成形体を形成した。外観を図9に示す。成形体の厚みをノギスで測定したところ、膜厚1mmであった。
【0217】
[比較例14]
<シリカゾルを含む顔料組成物の製造>
比較例1で得られたシリカゾルのUF濃縮液(シリカ濃度28.6質量%)2.6g、水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランAP-40N、DIC社製、固形分35質量%)2.1g及び水0.3gを混合して、顔料組成物100質量%中、シリカ濃度15質量%、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分15質量%、総固形分30質量%の白色の分散液からなる顔料組成物5.0gを得た。
<シリカゾルを含む成形体の製造>
得られた顔料組成物3gをテフロン(登録商標)製シャーレに入れ、60℃、24時間乾燥させることで無色透明な成形体を形成した。外観を図9に示す。成形体の厚みをノギスで測定したところ、膜厚1mmであった。
【0218】
[比較例15]
水性ポリエステル系ウレタン樹脂(商品名ハイドランAP-40N、DIC社製、固形分35質量%)4.3g及び水0.7gを混合して、顔料組成物100質量%中、水性ポリエステル系ウレタン樹脂の固形分30質量%、総固形分30質量%の無色透明の顔料組成物5.0gを得た。
得られた顔料組成物3gをテフロン(登録商標)製シャーレに入れ、60℃、24時間乾燥させることで無色透明な成形体を形成した。外観を図9に示す。成形体の厚みをノギスで測定したところ、膜厚1mmであった。
【0219】
図9に示すように、実施例20で得られた成形体は着色しているのに対して、比較例14又は15で得られた成形体は着色しなかった。以上、本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルは、着色性が優れていることが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0220】
本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルが配合された顔料組成物は、自転車、バイク、自動車、鉄道車両、船舶、航空機、ロケット、建物、建材、屋根材、外壁材、壁材、床材、天井材、下地材、看板、掲示板、標識、信号、電柱、電線、街灯、ポスト、道路、橋りょう、窓ガラス、ガラス細工、産業用電気製品、家庭用電気製品、家具、厨房機器、衛生設備機器、調理道具、食器、容器、文房具、衣服、装飾品等を挙げることができる。特に、透明性や耐光性を求められる用途で使用することが好ましい。
また、本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルが配合された顔料組成物を、ガラスに塗布後に加熱・冷却させる、あるいはガラス原料に添加して溶融、冷却、ガラス化させる、ことで着色ガラスを製造することができる。
本発明の遷移金属ドープ着色シリカゾルが配合された顔料組成物は、その他、着色を目的として種々の製品に応用することができる。
【要約】
【課題】 透明性、耐光性及び着色性に優れた、コロイダルシリカ粒子に遷移金属がドープされている遷移金属ドープ着色シリカゾルを提供する。
【解決手段】本発明に係るシリカゾルは、下記(1)~(4)を満たすことを特徴とする遷移金属ドープ着色シリカゾルである。(1)シリカに対する遷移金属Tの質量比(T/シリカ)が0.0001以上、0.05以下、(2)電子顕微鏡像から画像解析法で算出した個数平均粒子径D1が5nm以上、50nm未満、(3)窒素吸着法から算出したBET粒子径D2が5nm以上、50nm未満、(4)個数平均粒子径/BET粒子径(D1/D2)比が1.5以下。また本発明は前記遷移金属ドープ着色シリカゾルを含む顔料組成物、塗料、インク、釉薬、膜、成形体を対象とする。
【選択図】 なし
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