(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】歯の再生治療のためのUSAG-1を標的分子とした中和抗体
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241017BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241017BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20241017BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20241017BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20241017BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20241017BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P1/02
C07K16/18 ZNA
C12P21/08
C07K16/46
C12N15/13
(21)【出願番号】P 2020119469
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2023-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2019130153
(32)【優先日】2019-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020080723
(32)【優先日】2020-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、難治性疾患実用化研究事業「希少疾患先天性無歯症治療薬の開発研究-Wntシグナル&BMPシグナルに関連する難治性疾患治療への展開-」 委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000116622
【氏名又は名称】愛知県
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 克
(72)【発明者】
【氏名】菅井 学
(72)【発明者】
【氏名】時田 義人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 淳一
(72)【発明者】
【氏名】三原 恵美子
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-504501(JP,A)
【文献】特表2011-502470(JP,A)
【文献】特表2012-530502(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0195856(US,A1)
【文献】CHO, Sung-Won et al.,"Interactions between Shh, Sostdc1 and Wnt signaling and a new feedback loop for spatial patterning,Development,2011年,Vol.138,pp.1807-1816
【文献】ABITBOL, Marc Mordekhai et al.,"Sostdc1, a secreted dual BMP and WNT antagonist, is differentially expressed in RCS rdy+ and rdy- r,ARVO Annual Meeting Abstract,2017年,Vol.58, No.610
【文献】CHEN, Xiaoyan et al.,"Mesenchymal Wnt/beta-catenin signaling induces Wnt and BMP antagonists in dental epithelium",Organogenesis,2019年,Vol.15,pp.55-67
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメント
を含む、歯の再生治療のための医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体が、USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のBMPシグナリング抑制活性を中和する
抗体である、請求項1記載の
医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体が、USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のWNTシグナリング抑制活性を中和する
抗体である、請求項1または2記載の
医薬組成物。
【請求項4】
前記抗体が、
(l)それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列
を含む3つの重鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列
を含む3つの軽鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3、
(m)それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列
を含む3つの重鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列
を含む3つの軽鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3、
または、
(o)それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列
を含む3つの重鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列
を含む3つの軽鎖相補性決定領域
CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む、請求項1~3のいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項5】
前記抗体が、
(q)配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(r)配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
または、
(t)配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項
4記載の
医薬組成物。
【請求項6】
前記抗体が、USAG-1への結合について、請求項
4または5に記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する抗体
である、請求項1~3のいずれか1項記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号31に示されるアミノ酸配列を含むエピトープに結合する抗体
である、請求項1~3のいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項8】
前記抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項1~
7のいずれか1項記載の
医薬組成物。
【請求項9】
(l)それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3、
(m)それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3、
または、
(o)それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域CDR1、CDR2、およびCDR3
を含む、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項10】
(q)配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(r)配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
または、
(t)配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、請求項9記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項11】
USAG-1への結合について、請求項9または10記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメント。
【請求項12】
抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、請求項9~11のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無歯症の治療または歯の再生のためのUSAG-1を標的とする中和抗体に関する。
【背景技術】
【0002】
無歯症(歯の欠損を有する患者)の原因の多くは、う蝕や歯周病等の後天的な原因によるが、先天性のものとしては、発症率が1%と高い先天性無歯症がある。現在、欠損歯の治療法としては歯科インプラントや義歯等の補綴治療のみであり、根本的な治療法は存在しない。組織工学的なアプローチを用いた歯の再生の研究は多数報告されている。細胞ソースとして幹細胞(非特許文献1)等、種々の細胞が用いられている。また、イン・ビトロで作製した歯を口腔内で機能させるために、コラーゲンのゲルの中で、器官のもととなる歯の器官原基を再生する細胞操作技術、「器官原基法」(非特許文献2)が報告されている。しかし、組織工学的なアプローチは、いずれも細胞ソースを確保するためのコストや安全性等の問題があり、臨床応用まで至っていない。
【0003】
一方、先天性無歯症の原因遺伝子は多数同定されており、多くのものがヒトとマウスで共通する。例えば、RUNX2、MSX1、EDA、WNT10A、PAX9、AXIN2等が知られている。なかでも、WNT10Aを原因遺伝子とする先天性無歯症は、患者数が最も多い。また、EDAは、症候群性先天性無歯症の代表疾患である無汗性外胚葉異形成症の原因遺伝子である。先天性無歯症は、原因遺伝子の欠損、機能抑制により、歯の発生が途中で停止するために引き起こされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Ohazama, J Denr Res, 2004
【文献】Nakao, Nat Methods, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先天性無歯症の新たな視点からの治療では、上述のように歯の発生が途中で停止した状態から、分化誘導を促して完全な歯を形成させることが考えられる。そこで、本発明は、外科的な組織移植を利用するのではなく、歯の器官に内在する分化誘導を利用した歯の無歯症の治療方法に関する技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究の結果、USAG-1を標的分子とした中和抗体の開発に成功した。さらに、該抗体の投与により、先天性無歯症モデルマウスの欠損歯を再生すること、および先天性無歯症モデルマウスまたは野生型マウスにおいて過剰歯を形成することができることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメント、
[2]USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のBMPシグナリング抑制活性を中和する、[1]記載の抗体またはその抗原フラグメント、
[3]USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のWNTシグナリング抑制活性を中和する、[1]または[2]記載の抗体またはその抗原フラグメント、
[4](a)それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(b)それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(c)それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(d)それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、あるいは、
(e)それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域
を含む、[1]~[3]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、
[5](f)配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(g)配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(h)配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(i)配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
あるいは、
(j)配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、[1]~[4]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、
[6](k)それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(l)それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(m)それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、
(n)それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域、または、
(o)それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域
を含む、[1]~[3]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、
[7](p)配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(q)配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(r)配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、
(s)配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域、または、
(t)配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域
を含む、[1]~[3]および[6]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、
[8]USAG-1への結合について、[4]~[7]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメントと競合する抗体またはその抗原結合フラグメント、
[9]抗体がヒト化抗体またはキメラ抗体である、[1]~[8]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメント、および
[10][1]~[9]のいずれか1項記載の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、歯の再生治療のための医薬組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、抗体製剤を用いることにより、イン・ビボで歯を再生することに成功した。本発明の抗体製剤による治療は、歯の再生医療として、従来の抜歯、歯科矯正、歯牙移植等の一般的な歯科口腔外科的アプローチにて臨床展開が十分可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において抗原として用いた大腸菌由来組換えヒトUASG-1蛋白のWnt抑制活性を示す。
【
図2】実施例において抗原として用いた大腸菌由来組換えヒトUASG-1蛋白のBMP抑制活性を示す。
【
図3】CRISPER-CAS9を利用して新たに樹立したUSAG-1KOマウスを示す。
【
図4-1】抗USAG-1中和抗体の1次スクリーニングの結果を示す。
【
図4-2】抗USAG-1中和抗体の1次スクリーニングの結果を示す。
【
図5】マウスN末PAタグ付きUSAG-1(WISE)の精製・濃縮の結果を示す。
【
図6】マウスUSAG-1蛋白の用量依存性のWNTシグナル抑制活性を示す。
【
図7】マウスUSAG-1蛋白の用量依存性のBMPシグナルの抑制活性を示す。
【
図8】用量依存性にマウスUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性を中和する抗体を示す。
【
図9】用量依存性にマウスUSAG-1によるBMPシグナルの抑制活性を中和する抗体を示す。
【
図10】抗USAG-1中和抗体が無歯症モデルマウスに歯を生やすことを示す。
【
図11】抗USAG-1中和抗体がUSAG-1KOと同等の効果のあることを示す。
【
図12】マウス抗USAG-1抗体のマウス/ヒトUSAG-1蛋白との結合実験の結果を示す。
【
図13】ヒトFLAGタグUSAG-1を一過性に強制発現させたHEK293細胞に対するマウス抗USAG-1抗体を用いた免疫染色を示す。
【
図14】抗体Aおよび抗体Bの重鎖および軽鎖可変領域の配列を示す。
【
図15】マウス抗USAG-1抗体のマウス/ヒトUSAG-1蛋白との結合実験の結果を示す。
【
図16】得られた6種の抗体の競合結合データを示す。6種の試験抗体のそれぞれについて、6種の抗体で捕捉されたUSAG-1センサーに反応させたときのセンサーグラムを重ねた図である。
【
図17】マウスUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性およびBMPシグナルの抑制活性に対する、本発明の抗体の中和活性を示す。
【
図18】先天性無歯症イヌに対するUSAG-1中和抗体投与の効果を示す、デンタルX線写真である。
【
図19】フェレットにおける、USAG-1中和抗体投与による下顎第3小臼歯部の第3生歯の誘導を示す、μCT画像とその3次元再構築像である。
【
図20】スンクスにおける、USAG-1中和抗体投与による下顎第3小臼歯部の第3生歯の誘導を示す、μCT画像とその3次元再構築像である。
【
図21】抗体Cの重鎖および軽鎖可変領域の配列を示す。
【
図22】抗体DおよびEの重鎖および軽鎖可変領域の配列を示す。
【
図23】フェレットにおける、USAG-1中和抗体投与による上顎前歯部の第3生歯の誘導を示す、μCTスライス画像とその3次元再構築像である。
【
図24】フェレットにおける、USAG-1中和抗体投与による下顎小臼歯部の第3生歯の誘導を示す、μCTデータに基づき作成した3次元再構築像である。
【
図25】マウスUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性およびBMPシグナルの抑制活性に対する、本発明の抗体の中和活性を示す。
【
図26】マウス抗USAG-1抗体とマウスUSAG-1蛋白との複合体と、LRP6-E1E2ドメインの相互作用を示すプルダウンアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
USAG-1(Uterine Sensitization Associated Gene-1)は、Sostdc-1、Ectodin、またはWiseとも呼ばれる、骨形成タンパク質(BMP)アンタゴニストおよびWntアンタゴニストである。USAG-1欠損モデルマウスでは、BMPシグナリングの増加がみられ、過剰歯の形成が導かれることが知られている。発明者らは、先天性無歯症モデルマウスであるRunx2欠損マウスと過剰歯(正常な歯数以上に存在する歯)モデルマウスであるUSAG-1の遺伝子欠損マウスを交配してダブルノックアウトマウスを作製し、解析したところ、歯の形成が回復することを見出した。したがって、USAG-1の阻害により、無歯症を治療できることが示唆された。
【0011】
今回、発明者らは、Runx2以外の原因遺伝子Msx1、Eda、およびWnt10aを欠損した先天性無歯症モデルマウスと、CRISPER-CAS9システムにて新たに作製した過剰歯モデルマウスであるUSAG-1の遺伝子欠損マウスを交配してダブルノックアウトマウスを作製し、解析したところ、すべての無歯症モデルマウスにおいて歯の形成が回復することを見出した。したがって、USAG-1の阻害による治療は、各種の遺伝子変異を原因とする先天性無歯症患者に適用可能であることが明らかになった。
【0012】
そこで、本発明では、活性の確認されたヒトUSAG-1組み換え蛋白を抗原として用いて抗体を作製し、USAG-1に特異的に結合する抗体を得た。これらの抗体は、BMPシグナリングおよび/またはWntシグナリングを増加させることが確認された。
【0013】
したがって、本発明の一の態様は、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体およびその抗原結合フラグメント、すなわち、抗USAG-1中和抗体およびその抗原結合フラグメントが提供される。本明細書において特記しない限り、USAG-1は、哺乳動物のUSAG-1を意味する。該哺乳動物としては、限定するものではないが、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ネズミ、フェレット、スンクス、ブタ、サル等が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0014】
本明細書において、中和とは、USAG-1の機能を阻害することをいう。USAG-1の機能には、例えば、BMPシグナリング抑制活性(「BMPアンタゴニスト活性」ともいう)およびWntシグナリング抑制活性(「Wntアンタゴニスト活性」ともいう)がある。本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、USAG-1のBMPシグナリング抑制活性および/またはWntシグナリング抑制活性を阻害する。したがって、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、USAG-1のBMPシグナリング抑制活性およびUSAG-1のWntシグナリング抑制活性のいずれか、または両方を中和する。例えば、限定するものではないが、USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のBMPシグナリング抑制活性を中和するが、USAG-1のWntシグナリング抑制活性を中和しない抗体またはその抗原フラグメントや、USAG-1に特異的に結合してUSAG-1のWntシグナリング抑制活性を中和するが、USAG-1のBMPシグナリング抑制活性を中和しない抗体またはその抗原フラグメントも、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントに包含される。なお、本明細書において「阻害」には、抑制および低減が包含される。
【0015】
抗体またはその抗原結合フラグメントの中和活性は常法により決定すればよい。USAG-1のBMPアンタゴニスト活性を中和する活性(「BMPアンタゴニスト中和活性」ともいう)は、例えば、ALP(アルカリフォスファターゼ)アッセイまたはレポーターアッセイによってイン・ビトロで測定することができる。ALPアッセイは、例えば、骨芽前駆細胞等をBMPの存在下、USAG-1蛋白および抗体またはその抗原結合フラグメントを加えて培養し、骨芽細胞への分化が誘導される際に生じるALPを測定することによって行う。USAG-1のWntアンタゴニスト活性を中和する活性(「Wntアンタゴニスト中和活性」ともいう)は、例えば、レポーターアッセイによってイン・ビトロで測定することができる。レポーターアッセイは、例えば、BMPまたはWntに反応するプロモーター領域をルシフェラーゼ等のレポーター遺伝子に連結したベクターを細胞に導入し、該細胞をBMPまたはWntの存在下、USAG-1蛋白および抗体またはその抗原結合フラグメントを加えて培養し、発現するルシフェラーゼ活性を測定することによって行う。本願の抗USAG-1抗体およびその抗原結合フラグメントによって中和されるBMPアンタゴニスト活性は、いずれのBMPファミリーに対するアンタゴニスト活性であってもよい。例えば、本願の抗USAG-1抗体およびその抗原結合フラグメントは、限定するものではないが、BMP2、BMP4、BMP6、BMP7等に対するアンタゴニスト活性を中和し得る。また、本願の抗USAG-1抗体およびその抗原結合フラグメントによって中和されるWntアンタゴニスト活性は、いずれのWntファミリーに対するアンタゴニスト活性であってもよい。例えば、本願の抗USAG-1抗体およびその抗原結合フラグメントは、限定するものではないが、Wnt-1、Wnt-3等に対するアンタゴニスト活性を中和し得る。
【0016】
さらに、本発明では、得られた抗体のうち5つ、抗体A、抗体B、抗体C、抗体Dおよび抗体Eの配列を決定および解析し、各抗体の可変領域および相補性決定領域も決定した。すなわち、抗体Aは、配列番号1で示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号2で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、上記重鎖は、配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域(配列番号3)を含み、上記軽鎖は、配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示される軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(配列番号4)を含む。抗体Bは、配列番号11で示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号12で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、上記重鎖は、配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示される重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域(配列番号13)を含み、上記軽鎖は、配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示される軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(配列番号14)を含む。抗体Cは、配列番号21で示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号22で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、上記重鎖は、配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示される重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域(配列番号23)を含み、上記軽鎖は、配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示される軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(配列番号24)を含む。抗体Dは、配列番号38で示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号39で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、上記重鎖は、配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示される重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域(配列番号40)を含み、上記軽鎖は、配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示される軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(配列番号41)を含む。抗体Eは、配列番号48で示されるアミノ酸配列を含む重鎖および配列番号49で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、上記重鎖は、配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示される重鎖相補性決定領域を含む重鎖可変領域(配列番号50)を含み、上記軽鎖は、配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示される軽鎖相補性決定領域を含む軽鎖可変領域(配列番号51)を含む。抗体Aおよび抗体Bおよび抗体Cは、特にBMPアンタゴニスト中和活性を有する。抗体Cは、特にBMPアンタゴニスト中和活性およびWntアンタゴニスト中和活性の両方を有する。抗体Dおよび抗体Eは、特にWntアンタゴニスト中和活性を有する。
【0017】
したがって、本発明の一態様において、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントとして、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、および抗体Eならびにそれらの変異体が提供される。抗体Aまたはその変異体の一例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0018】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0019】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0020】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0021】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0022】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号5、配列番号6、および配列番号7で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号8、配列番号9、および配列番号10で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0023】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0024】
抗体Aまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0025】
抗体Bまたはその変異体の一例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0026】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0027】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0028】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0029】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0030】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号15、配列番号16、および配列番号17で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号18、配列番号19、および配列番号20で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0031】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0032】
抗体Bまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号13で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号14で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0033】
抗体Cまたはその変異体の一例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0034】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0035】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または配列番号24で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0036】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号24で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0037】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0038】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号25、配列番号26、および配列番号27で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号28、配列番号29、および配列番号30で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0039】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0040】
抗体Cまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号23で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号24で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0041】
抗体Dまたはその変異体の一例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0042】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0043】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または配列番号41で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0044】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号41で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0045】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0046】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号42、配列番号43、および配列番号44で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号45、配列番号46、および配列番号47で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0047】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0048】
抗体Dまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号40で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号41で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0049】
抗体Eまたはその変異体の一例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0050】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、または、それぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0051】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0052】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、または、配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0053】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0054】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列を含む3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列を含む3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、それぞれ配列番号52、配列番号53、および配列番号54で示されるアミノ酸配列からなる3つの重鎖相補性決定領域、およびそれぞれ配列番号55、配列番号56、および配列番号57で示されるアミノ酸配列からなる3つの軽鎖相補性決定領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0055】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。さらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の配列同一性を有するアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0056】
抗体Eまたはその変異体のさらなる例として、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。好ましくは、USAG-1に特異的に結合して中和する抗体またはその抗原結合フラグメントであって、配列番号50で示されるアミノ酸配列からなる重鎖可変領域、および配列番号51で示されるアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、上記アミノ酸配列の1以上において1~数個のアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されている、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0057】
本明細書において「数個」とは、2~10個程度をいい、アミノ酸配列の長さにもよるが、好ましくは2~7個程度、例えば3個、4個、5個、または6個をいう。また、本明細書において、「置換」は、保存的置換または非保存的置換であってもよく、好ましくは保存的置換であってもよい。保存的置換は、当業者に既知であり、得られる分子の生物学的活性を変えることのない置換を指す。保存的アミノ酸置換の例は、アラニンからグリシンまたはセリンへの置換、アルギニンからリジンまたはヒスチジンへの置換、アスパラギンからグルタミンまたはヒスチジンへの置換、アスパラギン酸からグルタミン酸またはアスパラギンへの置換、システインからセリンまたはアラニンへの置換、グルタミンからアスパラギンへの置換、グルタミン酸からアスパラギン酸またはグルタミンへの置換、グリシンからアラニンへの置換、ヒスチジンからアスパラギンまたはグルタミンへの置換、イソロイシンからロイシンまたはバリンへの置換、ロイシンからイソロイシンまたはバリンへの置換、リジンからアルギニンまたはヒスチジンへの置換、メチオニンからロイシン、イソロイシンまたはチロシンへの置換、フェニルアラニンからチロシン、メチオニンまたはロイシンへの置換、プロリンからアラニンへの置換、セリンからスレオニンへの置換、スレオニンからセリンへの置換、トリプトファンからチロシンまたはフェニルアラニンへの置換、チロシンからトリプトファンまたはフェニルアラニンへの置換、およびバリンからイソロイシンまたはロイシンへの置換が挙げられる。
【0058】
本明細書において、配列同一性は、2つの配列を最適にアラインメントして常法にしたがって決定すればよい。例えばBLAST、FASTA等の当該分野で既知のアルゴリズムを用いて決定してもよい。本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、上記の配列同一性の範囲内でアミノ酸残基が置換、欠失、挿入または付加されていてもよい。
【0059】
さらに、本発明の別の態様では、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントとして、上記で示された抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、または抗体E、またはその変異体またはその抗原結合フラグメントが結合するUSAG-1上のエピトープと同一のエピトープの全部または一部に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。またさらに、本発明では、USAG-1への結合について、あるいはUSAG-1上のエピトープの全部または一部への結合について、上記で示された抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、または抗体E、またはその変異体またはその抗原結合フラグメントと競合する、抗体またはその抗原結合フラグメントが提供される。
【0060】
さらに、本発明では、抗体Aが、ヒトUSAG-1上のVNDKTRTQRI(配列番号31)(ヒトUSAG-1蛋白の134番目~143番目のアミノ酸配列に対応)を含むポリペプチド(エピトープ)を特異的に認識し、結合することを見出した。したがって、配列番号31で示されるアミノ酸配列を含むUSAG-1ポリペプチドに結合する抗体またはその抗原結合フラグメントも、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの一態様である。さらに、配列番号31で示されるアミノ酸配列を含むUSAG-1ポリペプチドへの結合について、上記で示された抗体Aまたはその変異体またはその抗原結合フラグメントと競合する抗体またはその抗原結合フラグメントも、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの一態様である。例えば、上記USAG-1ポリペプチドは、配列番号31で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドであってもよい。また、上記配列番号31で示されるアミノ酸配列を含むUSAG-1ポリペプチドは、該ポリペプチドに実質的に同一のポリペプチドであってもよい。該実質的に同一のポリペプチドとしては、例えば、ヒト以外の動物のUSAG-1蛋白上の対応する位置にあるポリペプチドが挙げられる。
【0061】
本明細書において、「競合」とは、抗体またはその抗原結合フラグメントが、USAG-1蛋白またはポリペプチドを使用する結合アッセイにおいて、参照抗体(例えば、抗体A、抗体B、抗体C、抗体D、抗体E、またはその変異体またはその抗原結合フラグメント)と競合することを意味する。例えば、試験抗体またはその抗原結合フラグメントが結合アッセイにおいて、USAG-1蛋白またはポリペプチドへの参照抗体の結合を低減させる場合、該試験抗体は、参照抗体と「競合する」。参照抗体に競合する抗体は、例えば、参照抗体の抗原蛋白またはポリペプチドへの結合を、少なくとも約40%、好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは少なくとも約80%、さらに好ましくは少なくとも90%低減させる。競合結合アッセイは、当該分野で既知の方法によって行うことができ、限定するものではないが、ELISA、フローサイトメトリー、SPR(surface plasmon resonance)法、BLI(Bio-Layer Interferometry)法等が例示される。
【0062】
例えばSPR法やBLI法を用いて、2以上の抗体をそのエピトープに基づき分類する技術がエピトープビニングである。エピトープビニングでは、例えば、参照抗体を固定したバイオセンサーに、抗原蛋白(標的)を加えて、参照抗体と標的とを結合させ、次いで、該参照抗体と標的との複合体を保持したバイオセンサーを試験抗体と反応させ、該試験抗体の該バイオセンサーへの結合(すなわち、バイオセンサー上に固定された参照抗体に捕捉された標的への結合)および解離を解析する。試験抗体が参照抗体と同じエピトープを共有する場合、標的上のエピトープは既に参照抗体との結合により占有されているため、該試験抗体は該バイオセンサーに結合することができない。逆に、試験抗体が参照抗体と異なるエピトープを認識する場合、該試験抗体は該バイオセンサーに結合することができる。さらに、試験抗体が参照抗体のエピトープに立体構造上で近い領域を認識する場合、該参照抗体と標的との結合により該試験抗体のエピトープへの結合が妨害されるため、該試験抗体は該バイオセンサーに結合することができない。かくして、エピトープビニングを用いれば、2以上の抗体クローンが標的タンパク質への結合について競合するか否かを判定することができる。
【0063】
本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、例えば1μM以下、好ましくは100nM以下、より好ましくは50nM以下、さらに好ましくは30nM以下、さらに好ましくは10nM以下、さらに好ましくは8nM以下、さらに好ましくは5nM以下のKD値で、USAG-1あるいはUSAG-1上のエピトープの全部または一部に結合する。
【0064】
本発明において、抗体は、好ましくは単離された抗体である。また、本発明において、抗体は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、本発明において、抗体は、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)であってもよい。ヒト化抗体は、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が、所望の特異性、親和性および結合能を有するヒト以外の種(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)を包含する。場合により、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されていてもよい。さらにヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体に見いだされない残基を含んでいてもよい。一般にヒト化抗体は、全てまたは実質的に全てのCDRが非ヒト免疫グロブリンのCDRに置換され、かつFR領域の全てまたは実質的に全てがヒト免疫グロブリン配列のものである、少なくとも1つ、典型的には2つの可変領域を含む。キメラ抗体は、ドナー抗体由来の可変領域をレシピエント抗体の定常領域に連結した、遺伝子組み換え技術によって作製された抗体を包含する。上記抗体の作製は、当該分野で既知の方法で行うことができる。
【0065】
本発明において、抗原結合フラグメントとしては、例えば、限定するものではないが、F(ab’)2、Fab’、Fab、Fv、rIgG、Fd、直鎖抗体、ScFv、Fv-clasp、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、単一ドメイン抗体(ナノボディ)、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体等が挙げられる。上記抗体フラグメントの作製は、当該分野で既知の方法で行うことができる。
【0066】
本願の抗体またはその抗原結合フラグメントをコードする単離された核酸も本発明に含まれる。
【0067】
本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、USAG-1に特異的に結合してUSAG-1の機能を阻害し、歯の形成を誘導する。したがって、本発明の別の態様は、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントを含む、歯の再生治療のための医薬組成物を提供する。ここで、歯の再生には、例えば、欠損した歯の再生(欠損歯の回復)および第3生歯などの新しい歯の形成が含まれる。
【0068】
本願の医薬組成物は、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの他に、医薬上許容される担体、安定化剤、賦形剤等の添加剤を含有していてもよい。医薬上許容される担体としては、例えば、限定するものではないが、生理食塩水、バッファー、グリコール、グリセロール、ゼラチン、ゼラチンハイドロゲル、ポリ乳酸、コラーゲンスポンジ、アガロース、ポリビニルアルコール、アルギン酸、フィブリンゲル、エチレンー酢酸ビニル共重合体、乳酸―グリコール酸共重合体等が挙げられる。添加剤としては、例えば、限定するものではないが、グルコース、スクロースまたはデキストラン等の炭水化物、アスコルビン酸またはグルタチオン等の抗酸化剤、キレート剤、低分子量タンパク質等が挙げられる。当業者は、医薬組成物の投与形態または投与経路等に基づいて、上記担体および添加剤を適宜選択することができる。また、本願の医薬組成物は、上記抗体またはその抗原結合フラグメントと、適宜上記添加剤を用いて常法によって製剤化することによって製造することができる。
【0069】
本願の医薬組成物の形態としては、例えば、錠剤、散剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、徐放錠、徐放性カプセル、腸溶剤、挿入剤、注入剤、注射剤等が挙げられ、好ましくは注射剤である。本願の医薬組成物は、全身投与または局所投与によって投与される。投与経路は、当業者が適宜選択すればよく、限定するものではないが、例えば、経口、経鼻、皮下、静脈内、筋肉内、骨内投与が挙げられる。本願の医薬組成物は、例えば、歯の形成部位に局所投与してもよい。
【0070】
本発明において、歯の再生治療には、先天性無歯症の治療、および後天的な歯の欠損の治療が包含される。本願の医薬組成物で治療可能な先天性無歯症は、特に限定されず、いずれの原因遺伝子による先天性無歯症であってもよい。本願の医薬組成物で治療可能な先天性無歯症の例としては、限定するものではないが、RUNX2、MSX1、EDA、WNT10A、PAX9、またはAXIN2が原因遺伝子である先天性無歯症が挙げられ、好ましくは、RUNX2、MSX1、EDA、またはWNT10Aが原因遺伝子である先天性無歯症が挙げられる。また、本願の抗体は、野生型マウスにおいての過剰歯の形成を誘導した。したがって、本願の医薬組成物は、無歯症の原因遺伝子が欠損していない正常個体および後天的に歯が欠損した個体においても歯の形成を誘導することができる。
【0071】
本願の医薬組成物の投与対象は、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、ネズミ、フェレット、スンクス、ブタ、サル等が挙げられ、好ましくはヒトである。
【0072】
本願の医薬組成物の投与量は特に限定されない。当該医薬組成物中の本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの含有量、投与対象の体重等に基づき、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの所望の投与量が投与されるように当業者が適宜決定することができる。例えば、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、非投与時と比べて、BMPシグナルを少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%増加させる中和活性および/またはWntシグナルを少なくとも30%、好ましくは少なくとも60%増加させる中和活性を示す量で投与される。上記中和活性は、例えばALPアッセイやレポーターアッセイ等でイン・ビトロで測定した活性に基づき決定してもよい。
【0073】
本発明のさらなる態様は、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントを治療の必要な対象に投与することを含む、歯の再生治療法を提供する。本願の抗体またはその抗原結合フラグメントとして、上記の医薬組成物を用いることができる。治療の必要な対象は、歯が欠損した対象であり、例えば、上記の哺乳動物が挙げられる。本願の抗体またはその抗原結合フラグメントの投与経路および投与量、ならびに歯の再生治療については、上記の本願の医薬組成物について記載したとおりである。
【0074】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0075】
抗体の作製1
マウスUSAG-1中和抗体作製のために、大腸菌発現系由来ヒトUSAG-1蛋白(R&D systems社)を抗原として用いた。HEK293細胞を用いたWntレポーターアッセイにおいて、大腸菌発現系由来ヒトUSAG-1蛋白のWnt抑制活性を確認した(
図1)。C2C12細胞を用いたBMP7添加ALPアッセイにおいて、大腸菌発現系由来ヒトUSAG-1蛋白のBMP抑制活性を確認した(
図2)。マウスUSAG-1中和抗体作製のために、CRISPER-CAS9を利用して、USAG-1KOマウス(#116,#118,#138)の3系統の過剰歯モデルマウスを新たに樹立した(
図3)。ITM社においてUSAG-1 KO(#116)マウスを用いて腸骨リンパ節法にて中和抗体を作製した。
【0076】
免疫した抗原を用いたELISAにて284ウェルの一次スクリーニングを行ったところ、数多くの陽性ウェルが認められた(
図4-1および
図4-2)。カットオフ値を0.7と設定し、79クローンを選択した。拡大培養を行い、免疫した抗原およびシスメックス社で作製したCHO細胞発現系由来のマウスUSAG-1蛋白を使用し、ELISAを行ったところ、吸光度のカットオフ値を0.025以上に設定すると半数ほどに陽性ウェルを認めた(
図4-1および
図4-2)。抗体のサブクラスを測定したところ、IgG1、2a、2b、および2cであった(
図4-1および
図4-2)。
【0077】
各抗体の中和活性を、抗原蛋白と同様に、C2C12細胞にBMP7(R&D systems社製)300ng/mlを添加にて上昇したALP活性を、哺乳類細胞発現系由来ラットUSAG-1蛋白300ng/ml(MyBiosource社)を添加し、抑制させる実験系に、各種抗体を添加してALP活性抑制の中和を確認した。軽度の中和活性を認めたもの(*:60-100%の中和活性)、中等度の中和活性を認めたもの(**:100-140%の中和活性)、高度の中和活性を認めたもの(***:140%以上の中和活性)に分類した。BMPレポーターアッセイは、BRE-Lucが組み込まれている市販の細胞株BMP Responsive Reporter Osteoblast Cell Line(Briter cell)(Kerafast社製)を用いた。BMP7を300ng/ml添加し、発現したルシフェラーゼ活性を哺乳類細胞発現系由来ラットUSAG-1蛋白300ng/mlを添加し抑制させる実験系に、各種抗体を添加してルシフェラーゼ活性抑制の中和を確認した。軽度の中和活性を認めたもの(*:40-60%の中和活性)、中等度の中和活性を認めたもの(**:60%以上の中和活性)に分類した。WNTレポーターアッセイには、WNTシグナルの下流で活性化する転写因子TCFに結合するDNA配列をもつTOP-Flashレポーター遺伝子、WNT1遺伝子、さらに内部標準値を得るためにHSV-チミジンキナーゼプロモーターで制御されるレポーター遺伝子を発現させる発現プラスミドを導入したHEK293細胞に、Wntシグナルの最大抑制効果の50%を抑制する濃度(EC50)で哺乳類細胞発現系由来マウスUSAG-1蛋白を添加し培養する系を用いた。USAG-1蛋白の添加量は予め決定した。抗体産生ハイブリドーマの培養上清がスクリーニング系の培地のそれぞれ25%、20%、10%になるように添加し、3回の実験を行い評価した。25%添加時は、軽度の中和活性を認めたもの(*:発光値の補正値が1.5-2.0)、中等度の中和活性を認めたもの(**:発光値の補正値が2.0以上)、20%添加時は、軽度の中和活性を認めたもの(*:発光値の補正値が1-1.1)、中等度の中和活性を認めたもの(**:発光値の補正値が1.1以上)、10%添加時は、軽度の中和活性を認めたもの(*:発光値の補正値が1-1.1)、中等度の中和活性を認めたもの(**:発光値の補正値が1.1以上)に分類した。なお、中和活性の%は、USAG-1蛋白無添加条件下での活性(100%)に基づいて算出した。また、発光値に基づく中和活性は、抗体無添加時の活性を1として算出した。
【0078】
WNTおよびBMPレポーターアッセイ、BMP7 ALPアッセイで測定したところ、BMPおよびWNTシグナリングのいずれかを活性化する抗体、ならびにBMPおよびWNTシグナリングの両者を同時に活性化する抗体の3種類の中和抗体が存在していた。中和活性の測定結果に基づき、6個の抗体を選択した(
図4-1および
図4-2)。拡大培養、精製の過程で1クローンの活性が消失した。最終的に5種のマウス抗USAG-1中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)を確保した。
【0079】
このうちE37(本明細書において、抗体Aと称される)およびE57(本明細書において、抗体Bと称される)の配列を決定した。抗体Aのシグナル配列を含む重鎖全長配列を配列番号1に、シグナル配列を含む軽鎖全長配列を配列番号2に示す。抗体Bのシグナル配列を含む重鎖全長配列を配列番号11に、シグナル配列を含む軽鎖全長配列を配列番号12に示す。さらに、抗体AおよびBの可変領域を
図14に示す。
【実施例2】
【0080】
抗体のイン・ビトロ試験1
Expi293F細胞においてN末にPAタグを付加したマウスUSAG-1(WISE)組み換え蛋白の一過性の発現を確認した後、安定発現株を樹立した。PAタグシステムを用いてアフィニティー精製を行い、150mLの培養上清から0.2mgのPA-mUSAG-1(WISE)を得た(
図5)。精製したPA-mUSAG-1(WISE)蛋白質は還元下(R)および非還元下(NR)の電気泳動で、理論値(24kDa)に近い、約28kDaの分子量を示した。哺乳類細胞Expi293F細胞発現系由来マウスのN末PAタグUSAG-1(WISE)蛋白は、WNTレポーターアッセイにおいて、用量依存性にWNTシグナルの抑制活性(
図6)、BMP ALPアッセイにおいて、用量依存性にBMPシグナルの抑制活性を示した(
図7)。この活性の確認されたマウスUSAG-1蛋白を用いて、5個のマウス抗USAG-1中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)の中和活性を確認した。WNTレポーターアッセイにおいて、プロモーターをルシフェラーゼ遺伝子に連結したベクター、およびWnt1発現ベクターを導入した細胞を、マウスUSAG-1組換え蛋白1.7μg、各種抗体を培地に対し1/1000、1/300、または1/100の割合となるように添加して培養し、ルシフェラーゼ活性を測定した。BMP ALPアッセイにおいて、C2C12細胞をBMP7 30ng/mlの存在下、マウスUSAG-1組換え蛋白30ng/ml、各種抗体を1倍量(30ng/ml)、10倍量(300ng/ml)、100倍量(3μg/ml)添加し、ともに培養し、ALP活性を測定した。
【0081】
その結果、WNTレポーターアッセイにおいて、用量依存性にマウスUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性を中和する抗体が存在することが確認された(
図8)。BMP ALPアッセイにおいて、用量依存性にマウスUSAG-1によるBMPシグナルの抑制活性を中和する抗体が存在することが確認された(
図9)。
【実施例3】
【0082】
抗体のイン・ビボ投与試験1
先天性無歯症モデルマウスEDA欠損ホモマウスは、下顎の第3臼歯(M3)の欠損が高率(約90%)に認められる。先天性無歯症モデルマウスEDA欠損マウスを妊娠した母親マウスに、マウス抗USAG-1中和抗体A(#37)を腹腔内に単回投与した。その結果、生まれたEDA欠損マウス8例中7例において下顎の第3臼歯(M3)の欠損が回復した(
図10)。マウス抗USAG-1中和抗体Aを投与した先天性無歯症モデルマウスEDA欠損マウスにおいては、過剰歯は認められなかった。したがって、抗体Aは欠損歯を回復できることが分かった。なお、ここで「回復」とは、生まれたEDA欠損マウスにおいて、EDA欠損マウスにおいて通常欠損している部位(M3)に歯が生えていること(M3が欠損していないこと)を言う。
【実施例4】
【0083】
抗体のイン・ビボ投与試験2
先天性無歯症モデルマウスEDA欠損マウスを妊娠した母親マウスに、マウス抗USAG-1中和抗体B(E57)を腹腔内に単回投与した。その結果、生まれたEDA欠損ホモマウス3例中2例において前歯部の過剰歯または、上顎臼歯部の癒合歯の形成が誘導された(
図10)。生まれたEDA欠損ヘテロマウスにおいては、前歯部の過剰歯または臼歯部の癒合歯が5例中5例に認められた。さらに、マウス抗USAG-1中和抗体B(E57)を野生型マウスを妊娠した母親マウスに腹腔内に単回投与することにより、12例中11例において前歯部の過剰歯または臼歯部の癒合歯が認められた(
図11)。したがって、抗体Bは、EDA欠損ホモマウス、EDA欠損ヘテロマウスおよび野生型マウスの全てにおいて、歯の数を増やすことができることが分かった。
【実施例5】
【0084】
抗体のイン・ビボ投与試験3
無歯症モデルマウスの一つであるWnt10a欠損マウスを妊娠した母親マウスに、中和抗体AおよびBを含む実施例1で得られた5種類の抗USAG-1中和抗体の混合物を腹腔内に単回投与した。その結果、上顎前歯部に過剰歯が形成された(
図10)。
【実施例6】
【0085】
抗体のヒトUSAG-1認識のデータ
実施例1で大腸菌発現系由来ヒトUSAG-1蛋白を抗原として用いて得られた5種のマウス抗USAG-1(WISE)中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)が、ヒトUSAG-1蛋白を認識することができるか確認した。マウス/ヒトN末PAタグUSAG-1蛋白を用いて、結合アッセイを行った。プロテインAセファロース(30μl)にそれぞれ実施例1で得られた5種のマウス抗USAG-1(WISE)中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)(1ml PBS中5μg)をキャプチャーさせた(室温、2.5時間)。そこにExpi293F細胞においてN末端にPAタグを付加したヒトまたはマウスUSAG-1(WISE)組み換え蛋白を一過性に発現させた培養上清(1mL)およびNZ1セファロース(30μl)を加えてインキュベートした(室温、2.5時間)。PBSバッファーで3回洗浄し、結合していない蛋白を除いた。セファロースに結合した蛋白質をすべて溶出し、SDS-PAGE電気泳動によりバンドを確認した。その結果、これら5つの抗体はすべて、マウスUSAG-1のみならずヒトUSAG-1蛋白にも結合した(
図12)。
【0086】
さらに、ヒトFLAGタグUSAG-1cDNAをHEK293細胞に一過性に強制発現させ、5種のマウス抗USAG-1中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)を用いて免疫染色を行った。その結果、中和抗体(E12、E37、E57)を用いた場合に明らかな陽性反応が認められた。したがって、イン・ビボで有効性の確認されたマウス抗USAG-1中和抗体A(E37)およびマウス抗USAG-1中和抗体B(E57)は、ともにヒトUSAG-1蛋白を認識できることが確認された(
図13)。
【実施例7】
【0087】
抗体の作製2
マウスUSAG-1中和抗体作製のために、バキュロウイルス発現系由来ラットUSAG-1蛋白を抗原として用いた。USAG-1 KO(#116)マウスを用いて腸骨リンパ節法にて中和抗体を作製した。該バキュロウイルス発現系由来ラットUSAG-1蛋白は、実施例1の記載と同様の方法によって、BMP抑制活性およびWnt抑制活性を有することを確認した。免疫した抗原(バキュロウイルス発現系由来ラットUSAG-1蛋白)、および大腸菌発現系由来ヒトUSAG-1蛋白を用いたELISAにて、得られた抗体クローンの一次スクリーニングを行ったところ、数多くの陽性ウェルが認められた。カットオフ値を1.0と設定し、111クローンを選択した。拡大培養し、免疫した抗原を使用し、サンドイッチELISAを行ったところ、吸光度のカットオフ値を0.5以上(Hisタグ)および1.4以上(Mycタグ)に設定すると半数ほどに陽性ウェルを認めた。抗体のサブクラスを測定したところ、IgG1、2a、2b、およびG3であった。さらに、得られた各抗体の中和活性を実施例1の記載と同様の方法によって測定し、最終的に4種のマウス抗USAG-1中和抗体(B14、B48、B103、B108)を確保した。
【0088】
さらに、実施例6と同様に、得られたマウス抗USAG-1中和抗体(B14、B48、B103、B108)がヒトUSAG-1蛋白を認識することができるか確認するため、マウス/ヒトN末PAタグUSAG-1蛋白を用いる結合アッセイを行った。プロテインAセファロース(30μl)にそれぞれ、各マウス抗USAG-1中和抗体(250μl プロテインA/G IgG結合バッファー(Pierce
TM)+250μl PBS中5μg)をキャプチャーさせた(室温、1.5時間)。そこに、Expi293F細胞においてN末端にPAタグを付加したヒトまたはマウスUSAG-1(WISE)組み換え蛋白を一過性に発現させた培養上清(0.75mL)を加えてインキュベートした(室温、2時間)。TBSバッファーで3回洗浄して、結合していない蛋白を除いた。セファロースについた蛋白質をすべて溶出し、SDS-PAGE電気泳動およびCBB(クマシーブリリアントブルー)染色によりバンドを確認した。その結果、B103およびB108の結合はB14およびB48と比べて弱いものの、試験したマウス抗USAG-1中和抗体はすべて、マウスUSAG-1およびヒトUSAG-1蛋白の両方に結合した(
図15)。
【0089】
このうちB14(本明細書において、抗体Cと称される)の配列を決定した。抗体Cのシグナル配列を含む重鎖全長配列を配列番号21に、シグナル配列を含む軽鎖全長配列を配列番号22に示す。さらに、抗体Cの可変領域を
図21に示す。さらに、B48(本明細書において、抗体Dと称される)およびB103(本明細書において、抗体Eと称される)の配列を決定した。抗体DおよびEのシグナル配列を含む重鎖全長配列をそれぞれ、配列番号38および配列番号48に、シグナル配列を含む軽鎖全長配列をそれぞれ、配列番号39および配列番号49に示す。さらに、抗体DおよびEの可変領域を
図22に示す。
【実施例8】
【0090】
エピトープビニング
実施例1で選択した5種のマウスUSAG-1中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57)および実施例7で作製した中和抗体(B14、B48、B103、B108)をエピトープビニングに供した。得られた競合結合データのうち6種の抗体について比較したものを
図16に示す。エピトープビニングは、Octet(登録商標)Red(Pall ForteBio社製)を用いて行った。簡単に言うと、9種の各抗体を捕捉抗体としてバイオセンサー上に固定し、精製した組換えマウスUSAG-1全長を含む標的を添加して結合させた後に試験抗体と反応させて結合シグナルを検出するというサイクルを、捕捉に使ったものと同じ抗体を含む9種の試験抗体について連続でおこなった。バイオセンサー上に固定した捕捉抗体と認識部位が競合しない抗体は、捕捉されたUSAG-1蛋白に結合することが出来てシグナルが上昇するが、競合する抗体は結合が減弱するためにこの上昇が無いか、あるいは低く抑えられる。得られたシグナルデータに基づき、9種の抗体をそのエピトープに関してグループ分けした。すなわち、ある試験抗体を9種の捕捉抗体のセンサーに反応させたときに、捕捉抗体と同じ抗体を添加したときのシグナル(
図16では太字下線で示す)と同等かそれよりも弱いシグナルを与える抗体は捕捉抗体と同じグループであると見なした。すると、E12抗体に対してはE37とE48が、E16抗体に対してはE48、E57、B14が、E37抗体に対してはE12が、E48抗体に対してはE16、E57、B14が、E57抗体に対してはE16、E48、B14が、B14抗体に対してはE16、E48、E57が、B103に対してはB108が、それぞれ競合し、この結果を踏まえて9種の抗体が4つのグループに分類された。表1に示す。但し、抗体E48は基本的にはグループ2に分類されるが、E12とも競合することからグループ1とも近かった。
【0091】
【実施例9】
【0092】
エピトープマッピング
グループ1の抗体E37(中和抗体A)のエピトープマッピングを行った。簡単に言うと、シグナルペプチドを除いたヒトUSAG-1蛋白配列(183アミノ酸長)を基に、先頭から1アミノ酸ずつずらして、重複する169種の15アミノ酸ペプチドのペプチドライブラリーを合成した。該169種ペプチドをセルロース膜上に結合させ、ペプチドアレイを作成した。1次抗体として抗体E37(0.3g/ml)を添加し、インキュベートした。洗浄後、HRP結合抗マウス抗体(1/25000希釈)を2次抗体として添加し、ECL溶液を用いて発色させた。
【0093】
その結果、抗体E37が6種のペプチド:QEWRCVNDKTRTQRI(配列番号32)、EWRCVNDKTRTQRIQ(配列番号33)、WRCVNDKTRTQRIQL(配列番号34)、RCVNDKTRTQRIQLQ(配列番号35)、CVNDKTRTQRIQLQC(配列番号36)、およびVNDKTRTQRIQLQCQ(配列番号37)に特異的に結合することが分かった。したがって、アミノ酸配列:VNDKTRTQRI(配列番号31)(シグナルペプチドを含めた全長USAG-1アミノ酸配列の134位~143位に相当する)がエピトープとして同定された。
【実施例10】
【0094】
抗体のイン・ビトロ試験2
実施例8でグループ分けした9種の抗体のうち8種について、実施例8と同様なOctetによるBLI法を用いて親和性(KD値)を求めた。具体的には、それぞれの抗体をバイオセンサーに固定した後、精製した組換えマウスUSAG-1蛋白を3種類の異なる濃度(10nM、30nM、100nM)で添加し、それぞれの結合と解離の曲線を得て、それらをOctet装置附属の解析プログラムによりグローバルフィッティングすることにより算出した。結果を表2に示す。
【0095】
【実施例11】
【0096】
抗体のイン・ビトロ試験3
実施例8でグループ2に分類された抗体B14について、BMPおよびWntシグナリング抑制中和活性を測定した。実験は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて行った。すなわち、WNTレポーターアッセイにおいて、プロモーターをルシフェラーゼ遺伝子に連結したベクター、およびWnt1発現ベクター(1μg)を導入した細胞を、マウスUSAG-1組換え蛋白1μg、抗体を培地に対し1.0、3.0、4.0、6.0、8.0、10.0、12.0、15.0、または30.0μg/mlとなるように添加して培養し、ルシフェラーゼ活性を測定した。BMP ALPアッセイにおいて、C2C12細胞をBMP7 30ng/mlの存在下、マウスUSAG-1組換え蛋白30ng/ml、各種抗体を30ng/ml、150ng/ml、300ng/ml、または1500ng/ml添加し、ともに培養し、ALP活性を測定した。結果を
図17に示す。WNTレポーターアッセイにおいて、抗体B14がUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性を中和することが確認された(最大で42%の中和活性)。BMP ALPアッセイにおいて、抗体B14がUSAG-1によるBMPシグナルの抑制活性を中和することが確認された。
【0097】
さらに、USAG-1によるBMPおよびWntシグナリング抑制に対する抗体B14のEC50値として、抗体無添加時を0として最大中和活性時を100%として、50%抑制時の濃度を算出した。その結果、BMPおよびWntシグナリング抑制に対して、それぞれ、298ng/mlおよび4.73μg/mlであった。
【実施例12】
【0098】
抗体のイン・ビボ投与試験4(マウス)
実施例8でグループ1および2に分類された6種の抗体を、先天性無歯症モデルマウスEDAホモ欠損マウス、先天性無歯症モデルマウスEDAヘテロ欠損マウス、または野生型マウスを妊娠した母親マウスの腹腔内に単回投与した。結果を表3に示す。6種の抗体はいずれも、EDA欠損マウスにおいて、過剰歯/癒合歯の形成を誘導し、EDA欠損マウスの歯数を増やすことができることが分かった。特に、グループ1の抗体は、EDA欠損マウスにおいて欠損歯を回復させた。グループ1の抗体では、野生型マウスにおいて過剰歯および癒合歯の形成は見られなかったが、グループ2の抗体のうち抗体E57およびB14は、野生型マウスにおいて過剰歯および癒合歯の形成を誘導した。抗体B14(抗体C)は、抗体E57(抗体B)と同様に、EDA欠損ホモマウス、EDA欠損ヘテロマウスおよび野生型マウスの全てにおいて、歯の数を増やすことができることが分かった。なお、ここで「回復」とは、生まれたEDA欠損マウスにおいて、EDA欠損マウスにおいて通常欠損している部位(M3)に歯が生えていること(M3が欠損していないこと)を言う。
【0099】
【実施例13】
【0100】
抗体のイン・ビボ投与試験5(イヌ)
抗マウスUSAG-1中和抗体B14(50μg/g体重)を生まれた直後の先天性無歯症モデルイヌの腹腔内に単回投与した。先天性無歯症モデルイヌは、先天性無歯症を発症しているTOYOビーグル系統であり、北山ラベス本郷ファームより入手した。該先天性無歯症モデルイヌには、上顎第3小臼歯を欠損する個体、および下顎第4小臼歯を欠損する個体がある。投与の10週後にデンタルX線写真にて歯胚の石灰化を評価したところ、欠損歯の回復を確認した(
図18)。結果を表4に示す。また、抗体投与の3日後、1、3、5、および7週間後に、各個体における投与抗体の血中濃度を測定した。その結果、個体差はあるが、半減期は1週で投与後7週まで維持されていた。
【0101】
【0102】
表4から明らかなように、先天性小臼歯欠損はUSAG-1中和抗体B14の単回全身投与により回復した。下顎の小臼歯欠損は回復率が低いのは、原因遺伝子が異なる可能性が示唆される。
【実施例14】
【0103】
抗体のイン・ビボ投与試験6(フェレット)
フェレットは、ヒトと同様に2生歯性であり、切歯3本、犬歯1本、小臼歯3本、大臼歯2本という哺乳類の基本歯式に類似した歯数を持つ。39匹のフェレットの生後1および3週間後に、実施例1および7で作製した抗体を含む39種類のUSAG-1中和抗体(16μg/g体重)を腹腔内投与した(各抗体につき1匹)。生後14週間にて、38匹が生存した。実施例8で同定したグループ1~4の抗体を含む4種の抗体を投与した4匹の個体を生後30週まで長期経過観察した。その結果、複数のフェレットにおいて、上下顎前歯および小臼歯にサイズの大きい歯が多数認められた。さらに、抗体B14を投与したフェレットにおいて、生後14週目に、下顎舌側の第3小臼歯部の第3生歯の誘導が認められた(
図19)。抗体B103を投与したフェレットにおいて、生後30週目に、上顎舌(口蓋)側に前歯が1本多く発生し、上顎前歯部の第3生歯の誘導が認められた(
図23)。該前歯は、永久歯よりも後に発生し、先行永久歯と形態が類似していた。該前歯は、短小な歯根を有していた。さらに、抗体B103を投与したフェレットにおいて、生後30週目に、下顎の左右の小臼歯部に第3生歯の誘導が認められた(
図24)。
【実施例15】
【0104】
抗体のイン・ビボ投与試験7(スンクス)
妊娠したスンクスを入手し、妊娠17日に、実施例1で作製した各種USAG-1中和抗体(16μg/g体重)を腹腔内投与した。生後7週目にμCT画像にて評価した。USAG-1中和抗体を投与したスンクスは出産しなかったが、抗体B(E57)および抗体C(B14)を投与した生後4~8か月齢の親スンクスの歯根周囲に、エナメル上皮幹細胞が局所で上皮間葉誘導を起こし形成された新しい歯の形成が観察された。抗体Bを投与したスンクスにおいて、下顎頬側の第1小臼歯と第2小臼歯の間に第3生歯の誘導が認められた(
図20)。したがって、本願発明のUSAG-1中和抗体は第3生歯の形成を誘導することが示された。
【実施例16】
【0105】
抗体のイン・ビトロ試験4
実施例8でグループ3に分類された抗体B48について、BMPおよびWntシグナリング抑制中和活性を測定した。実験は、実施例2に記載の方法と同様の方法を用いて行った。すなわち、WNTレポーターアッセイにおいて、プロモーターをルシフェラーゼ遺伝子に連結したベクター、およびWnt1発現ベクター(1μg)を導入した細胞を、マウスUSAG-1組換え蛋白1μg、抗体を培地に対し1、3、6、10、または30μg/mlとなるように添加して培養し、ルシフェラーゼ活性を測定した。BMP ALPアッセイにおいて、C2C12細胞をBMP7 30ng/mlの存在下、マウスUSAG-1組換え蛋白30ng/ml、抗体を0.1倍量(3ng/ml)、10倍量(300ng/ml)または100倍量(3μg/ml)添加し、ともに培養し、ALP活性を測定した。結果を
図25に示す。WNTレポーターアッセイにおいて、抗体B48がUSAG-1によるWNTシグナルの抑制活性をほぼ100%中和することが確認された。
【実施例17】
【0106】
抗体のイン・ビトロ試験5(PAタグ付加USAG-1およびE1E2を用いるプロテインAセファロースによるプルダウンアッセイ)
Wntは、Frizzledと共役受容体であるLRP(low-density lipoprotein receptor-related protein;低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質)5/6受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達する。LRP6には4つの細胞外ドメイン(E1~E4)があり、このうちE1E2がUSAG-1の結合に関与することが知られている。すなわち、USAG-1は、LRP6のE1E2領域に結合してWntのシグナル伝達を抑制する。そこで、実施例8でグループ分けされた9種のマウス抗USAG-1中和抗体(E12、E16、E37、E48、E57、B14、B48、B103、B108)について、USAG-1のLRP6-E1E2への結合を阻害するか否かを調べた。
【0107】
プロテインAセファロース(30μl)にそれぞれ、各マウス抗USAG-1中和抗体(1ml PBS中5μg)をキャプチャーさせた(室温、1.5時間)。そこにExpi293F細胞においてN末端にPAタグを付加したマウスUSAG-1組み換え蛋白を一過性に発現させた培養上清(1mL)を加えてインキュベートした(室温、2時間)。そこにLRP6-E1E2(ヒトLRP6のアミノ酸番号1~629までの領域にHisタグを融合したもの)を発現させた培養上清(1mL)を加えてインキュベートした(室温、2.5時間)。PBSバッファー(1mL)で3回洗浄して、結合していない蛋白を除いた。セファロースに結合した蛋白質をすべて溶出し、SDS-PAGE電気泳動およびOrioleゲル蛍光染色によりバンドを確認した。結果を
図26に示す。
図26において、陰性コントロールとして、マウス抗USAG-1中和抗体をキャプチャーさせないで同じ操作をした試料(no mAb)、陽性コントロールとしてマウスUSAG-1組み換え蛋白とLRP6-E1E2の複合体をPAタグ抗体NZ-1で免疫沈降したもの(WISE+E1E2 By NZ1)、そしてLRP6-E1E2のみの発現量をHisタグを吸着するNi-NTAレジンで沈降したもの(E1E2 By NiNTA)をそれぞれ右側のパネルに示した。
【0108】
その結果、いくつかの抗体(特に、グループ3および4の抗体B48、B103、B108)とUSAG-1との複合体には、LRP6-E1E2が結合しないことが分かった(
図26)。したがって、これらの抗体のエピトープは、USAG-1のLRP6結合部位と重複するかまたは立体構造上近い領域にあり、該抗体がUSAG-1に結合することによってUSAG-1のLRP6への結合を阻害し、それにより、USAG-1のWntシグナリング抑制が中和されることが分かった。
【実施例18】
【0109】
抗体のイン・ビボ投与試験8(マウス)
実施例8でグループ3および4に分類された3種の抗体を、先天性無歯症モデルマウスEDAホモ欠損マウス、先天性無歯症モデルマウスEDAヘテロ欠損マウス、または野生型マウスを妊娠した母親マウスの腹腔内に単回投与した(16μg/g体重)。生まれた仔マウスにおいて、過剰歯および癒合歯の存在ならびに欠損歯の回復の有無を調べた。結果を表5に示す。3種の抗体は特に、EDA欠損マウスにおいて欠損歯を回復させた。なお、ここで「回復」とは、生まれたEDA欠損マウスにおいて、EDA欠損マウスにおいて通常欠損している部位(M3)に歯が生えていること(M3が欠損していないこと)を言う。
【0110】
【実施例19】
【0111】
抗体のイン・ビボ投与試験9(マウス)
5種の抗体(E57、B14、B48、B103、B108)を、先天性無歯症モデルマウスWnt10aホモ欠損マウス、先天性無歯症モデルマウスWnt10aヘテロ欠損マウス、または野生型マウスを妊娠した母親マウスの腹腔内に単回投与した(B103は2μg/g体重、その他の抗体は16μg/g体重)。生まれた仔マウスにおいて、過剰歯および癒合歯の存在ならびに欠損歯の回復の有無を調べた。結果を表6に示す。グループ3および4の抗体のうちB48およびB103は、ホモ欠損マウスにおいて過剰歯および癒合歯の形成を誘導した。
【0112】
【産業上の利用可能性】
【0113】
本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、先天性無歯症や後天的な歯の欠損の治療に利用することができる。また、本願の抗体またはその抗原結合フラグメントは、第3生歯形成に対して有効であると考えられ、医薬品分野における歯の再生のための分子標的薬の開発、および第3生歯を形成させることにより歯を再生する治療法の確立につながる。
【配列表フリーテキスト】
【0114】
SEQ ID NO:32; 15 amino acid peptide for epitope mapping
SEQ ID NO:33; 15 amino acid peptide for epitope mapping
SEQ ID NO:34; 15 amino acid peptide for epitope mapping
SEQ ID NO:35; 15 amino acid peptide for epitope mapping
SEQ ID NO:36; 15 amino acid peptide for epitope mapping
SEQ ID NO:37; 15 amino acid peptide for epitope mapping
【配列表】