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特許7572795バリアメタルフリー金属配線構造の製造方法、およびバリアメタルフリー金属配線構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-16
(45)【発行日】2024-10-24
(54)【発明の名称】バリアメタルフリー金属配線構造の製造方法、およびバリアメタルフリー金属配線構造
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/321 20060101AFI20241017BHJP
   H01L 21/768 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 21/3205 20060101ALI20241017BHJP
   H01L 23/532 20060101ALI20241017BHJP
【FI】
H01L21/88 K
H01L21/88 N
H01L21/88 R
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020085049
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2021180264
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】飯泉 健
(72)【発明者】
【氏名】小篠 諒太
(72)【発明者】
【氏名】大田 真朗
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-212892(JP,A)
【文献】特開2007-081113(JP,A)
【文献】特開2012-253121(JP,A)
【文献】特開2008-270545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/321
H01L 21/3205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法であって、
7nmよりも小さい幅を持つ第1配線溝と、前記第1配線溝よりも幅の広い第2配線溝が形成された絶縁層上に金属間化合物を堆積させることで、前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たし、前記金属間化合物は、CuAl またはNiAlであり、
前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たした後、前記金属間化合物とは異なる第2金属を前記金属間化合物上に堆積させて、前記第2配線溝を前記第2金属で満たし、
前記絶縁層が露出するまで前記第2金属および前記金属間化合物を研磨する平坦化工程を行い、その後、
前記第1配線溝内の前記金属間化合物の高さが所定の高さに達するまで前記第2金属、前記金属間化合物、および前記絶縁層を研磨する高さ調整工程を行う、方法。
【請求項2】
前記平坦化工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、
前記高さ調整工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平坦化工程は、
前記金属間化合物が露出するまで前記第2金属を研磨する第1平坦化工程と、
前記絶縁層が露出するまで前記第2金属および前記金属間化合物を研磨する第2平坦化工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1平坦化工程は、前記第2金属の除去レートが前記金属間化合物の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、
前記第2平坦化工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われ、
前記高さ調整工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法であって、
7nmよりも小さい幅を持つ第1配線溝と、前記第1配線溝よりも幅の広い第2配線溝が形成された絶縁層上に金属間化合物を堆積させることで、前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たし、前記金属間化合物は、CuAl またはNiAlであり、
前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たした後、前記金属間化合物の上にシード層を形成し、
前記シード層上に前記金属間化合物とは異なる第2金属を堆積させて、前記第2配線溝を前記第2金属で満たし、
前記絶縁層が露出するまで前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物を研磨する平坦化工程を行い、その後、
前記第1配線溝内の前記金属間化合物の高さが所定の高さに達するまで前記第2金属、前記シード層、前記金属間化合物、および前記絶縁層を研磨する高さ調整工程を行う、方法。
【請求項6】
前記平坦化工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、
前記高さ調整工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記平坦化工程は、
前記金属間化合物が露出するまで前記第2金属および前記シード層を研磨する第1平坦化工程と、
前記絶縁層が露出するまで前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物を研磨する第2平坦化工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1平坦化工程は、前記第2金属および前記シード層の除去レートが前記金属間化合物の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、
前記第2平坦化工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われ、
前記高さ調整工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
7nmよりも小さい幅を持つ第1配線溝と、前記第1配線溝よりも幅の広い第2配線溝が形成された絶縁層と、
前記第1配線溝を満たす金属間化合物と、
前記第2配線溝内を満たす金属間化合物および第2金属を備え、前記金属間化合物は、CuAl またはNiAlである、バリアメタルフリー金属配線構造。
【請求項10】
前記第2金属は、銅、チタン、またはチタンナイトライドである、請求項に記載のバリアメタルフリー金属配線構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスなどの金属配線構造およびその製造方法に関し、特にバリアメタルを含まない金属配線構造およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銅(Cu)は、配線材料として一般に使用されている。銅は、酸化膜などの絶縁層に形成された配線溝にめっきによって埋め込まれ、銅配線を形成する。銅を絶縁層上に直接堆積させると、銅は絶縁層中に拡散してしまう。そこで、銅の拡散を防ぐために、絶縁層上にバリアメタル層が形成され、銅はバリアメタル層上に堆積される。
【0003】
図11(a)および図11(b)は、従来の配線構造の一例を示す断面図である。図11(a)に示すように、配線溝200が形成された絶縁層(例えば、シリコン酸化膜)201上にバリアメタル205が堆積される。めっき電極として機能するシード層207は、バリアメタル205の上に形成される。さらに銅208がめっきによりシード層207上に堆積される。銅208の一部は、配線溝200内に埋め込まれる。その後、CMP(化学機械研磨)により余剰の銅208およびシード層207、および絶縁層201の一部が除去され、図11(b)に示すように、銅208およびシード層207からなる配線が形成される。
【0004】
図12(a)および図12(b)は、従来の配線構造の他の例を示す断面図である。図12(a)に示すように、配線溝200が形成された絶縁層(例えば、シリコン酸化膜)201上にバリアメタル205が堆積される。シード層207は、バリアメタル205の上に堆積され、配線溝200はシード層207で満たされる。さらに銅208がシード層207上に堆積される。その後、CMP(化学機械研磨)により余剰の銅208およびシード層207、および絶縁層201の一部が除去され、図12(b)に示すように、シード層207からなる配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2010-536175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図11および図12から分かるように、配線幅が狭くなるにつれて、配線金属に占めるバリアメタルの比率が高くなる。バリアメタルの電気抵抗率は銅よりもかなり高いため、配線全体の抵抗が上昇する。このような理由から、低抵抗の微細配線を実現することが難しかった。
【0007】
そこで、本発明は、低抵抗のバリアメタルフリー金属配線構造の製造方法を提供する。また、本発明はそのようなバリアメタルフリー金属配線構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法であって、第1配線溝と、前記第1配線溝よりも幅の広い第2配線溝が形成された絶縁層上に金属間化合物を堆積させることで、少なくとも前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たし、前記絶縁層が露出するまで前記金属間化合物を研磨する平坦化工程を行い、その後、前記第1配線溝内の前記金属間化合物の高さが所定の高さに達するまで前記金属間化合物および前記絶縁層を研磨する高さ調整工程を行う、方法が提供される。
【0009】
一態様では、前記絶縁層上に前記金属間化合物を堆積させることで、前記第1配線溝および前記第2配線溝を前記金属間化合物で満たす。
一態様では、前記平坦化工程は、前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、前記高さ調整工程は、前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。
【0010】
一態様では、前記方法は、前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たした後、前記金属間化合物とは異なる第2金属を前記金属間化合物上に堆積させて、前記第2配線溝を前記第2金属で満たす工程をさらに含む。
一態様では、前記平坦化工程は、前記絶縁層が露出するまで前記第2金属および前記金属間化合物を研磨する工程であり、前記高さ調整工程は、前記第1配線溝内の前記金属間化合物の高さが前記所定の高さに達するまで前記第2金属、前記金属間化合物、および前記絶縁層を研磨する工程である。
一態様では、前記平坦化工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、前記高さ調整工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。
【0011】
一態様では、前記平坦化工程は、前記金属間化合物が露出するまで前記第2金属を研磨する第1平坦化工程と、前記絶縁層が露出するまで前記第2金属および前記金属間化合物を研磨する第2平坦化工程を含む。
一態様では、前記第1平坦化工程は、前記第2金属の除去レートが前記金属間化合物の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、前記第2平坦化工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われ、前記高さ調整工程は、前記第2金属および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる。
【0012】
一態様では、前記方法は、前記第1配線溝を前記金属間化合物で満たした後、前記金属間化合物の上にシード層を形成し、前記シード層上に前記金属間化合物とは異なる第2金属を堆積させて、前記第2配線溝を前記第2金属で満たす工程をさらに含む。
一態様では、前記平坦化工程は、前記絶縁層が露出するまで前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物を研磨する工程であり、前記高さ調整工程は、前記第1配線溝内の前記金属間化合物の高さが前記所定の高さに達するまで前記第2金属、前記シード層、前記金属間化合物、および前記絶縁層を研磨する工程である。
一態様では、前記平坦化工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、前記高さ調整工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。
【0013】
一態様では、前記平坦化工程は、前記金属間化合物が露出するまで前記第2金属および前記シード層を研磨する第1平坦化工程と、前記絶縁層が露出するまで前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物を研磨する第2平坦化工程を含む。
一態様では、前記第1平坦化工程は、前記第2金属および前記シード層の除去レートが前記金属間化合物の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第1研磨液を使用して行われ、前記第2平坦化工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートよりも高い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われ、前記高さ調整工程は、前記第2金属、前記シード層、および前記金属間化合物の除去レートが前記絶縁層の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる。
一態様では、前記金属間化合物は、CuAlまたはNiAlである。
【0014】
一態様では、第1配線溝と、前記第1配線溝よりも幅の広い第2配線溝が形成された絶縁層と、前記第1配線溝を満たす金属間化合物を備えている、バリアメタルフリー金属配線構造が提供される。
【0015】
一態様では、前記バリアメタルフリー金属配線構造は、前記第2配線溝を満たす金属間化合物をさらに備えている。
一態様では、前記バリアメタルフリー金属配線構造は、前記第2配線溝内を満たす金属間化合物および第2金属をさらに備えている。
一態様では、前記第2金属は、銅、チタン、またはチタンナイトライドである。
一態様では、前記第1配線溝の幅は、7nmよりも小さい。
一態様では、前記第1配線溝を満たす前記金属間化合物は、CuAlまたはNiAlである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、幅の狭い第1配線溝は金属間化合物によって満たされ、バリアメタルは第1配線溝内には存在しない。したがって、第1配線溝内の金属間化合物からなる低抵抗配線が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1(a)乃至図1(d)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法の一実施形態を説明する図である。
図2】電気抵抗率と配線幅との関係を示すグラフである。
図3図3(a)乃至図3(e)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法の他の実施形態を説明する図である。
図4図4(a)乃至図4(f)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
図5図5(a)乃至図5(d)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
図6図6(a)および図6(b)は、図5(a)乃至図5(d)に示す実施形態をさらに説明する図である。
図7図7(a)乃至図7(d)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。
図8図8(a)乃至図8(c)は、図7(a)乃至図7(d)に示す実施形態をさらに説明する図である。
図9】バリアメタルフリー金属配線構造を製造するための製造システムを示す模式図である。
図10図9に示す第1CMP装置を模式的に示す斜視図である。
図11図11(a)および図11(b)は、従来の配線構造の一例を示す断面図である。
図12図12(a)および図12(b)は、従来の配線構造の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1(a)乃至図1(d)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法の一実施形態を説明する図である。図1(a)に示すように、第1配線溝1と第2配線溝2が形成された絶縁層3が用意される。絶縁層3は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースに形成されている。絶縁層3を構成する材料は、例えば、二酸化ケイ素(SiO)であり、絶縁層3は、例えば、シリコン酸化膜である。第1配線溝1の幅W1は、第2配線溝2の幅W2よりも狭く、一実施形態では、第1配線溝1の幅W1は、7nmよりも小さい。
【0019】
図1(b)に示すように、金属間化合物6が絶縁層3上に堆積される。第1配線溝1および第2配線溝2の全体は、金属間化合物6で満たされる。金属間化合物6を堆積する方法は特に限定されないが、本実施形態では、スパッタリングが用いられている。金属間化合物6の具体例としては、CuAl、NiAlなどが挙げられる。例えば、CuAlをスパッタリングで形成する方法の一実施形態は、不活性ガス(典型的にはアルゴンガス)を流しながら、銅(Cu)とアルミニウム(Al)からなるターゲットとワークピースとの間に電圧を印加することで、CuAlを絶縁層3上に堆積させる。
【0020】
図1(c)に示すように、絶縁層3が露出するまで金属間化合物6を研磨する平坦化工程が行われる。この平坦化工程は、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第1研磨パッド(図示せず)上に第1研磨液を供給しながら、金属間化合物6を第1研磨パッドに摺接させる。金属間化合物6は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。
【0021】
第1研磨液は、金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。除去レートは、単位時間当たりに減少する材料の厚さの率である。このような除去レート選択比を持つ第1研磨液を用いると、絶縁層3の露出面は研磨ストッパとして機能する。したがって、絶縁層3が露出したときに、金属間化合物6の研磨を実質的に停止させることができる。金属間化合物6の厚さを膜厚センサで測定しながら、平坦化工程を実行してもよい。金属間化合物6の厚さの測定値に基づいて、絶縁層3が露出する時点を推定することができる。膜厚センサの構成は特に限定されないが、例えば、渦電流センサを膜厚センサに使用することができる。
【0022】
図1(d)に示すように、平坦化工程の後、第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達するまで金属間化合物6および絶縁層3を研磨する高さ調整工程が行われる。この高さ調整工程も、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第2研磨パッド(図示せず)上に第2研磨液を供給しながら、金属間化合物6および絶縁層3を第2研磨パッドに摺接させる。金属間化合物6および絶縁層3は、第2研磨液の化学的作用と、第2研磨液に含まれる砥粒および/または第2研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0023】
高さ調整工程は、金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。具体的には、第2配線溝2内の金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こることが予想される場合には、金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。一方、第2配線溝2内の金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こらないと予想される場合には、金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じ除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。
【0024】
高さ調整工程は、上記膜厚センサによって第1配線溝1内の金属間化合物6の高さ(すなわち配線高さ)を測定しながら行われる。膜厚センサによって測定された第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達したときに、高さ調整工程が停止される。このようにして、バリアメタルフリー金属配線構造が製造される。
【0025】
図1(d)に示すように、上述した方法に従って製造されたバリアメタルフリー金属配線構造は、第1配線溝1および第2配線溝2が形成された絶縁層3と、第1配線溝1および第2配線溝2を満たす金属間化合物6を備えている。幅の小さい第1配線溝1は金属間化合物6によって満たされ、バリアメタルは第1配線溝1内には存在しない。したがって、第1配線溝1内の金属間化合物6からなる低抵抗配線が実現できる。
【0026】
本実施形態で使用されている金属間化合物6は、CuAlである。図2は、電気抵抗率と配線幅との関係を示すグラフである。図2に示すように、配線幅がある程度小さいとき、金属間化合物6の電気抵抗率は、従来の配線材料である銅とバリアメタル層との組み合わせの電気抵抗率よりも小さい。図2に示すグラフでは、配線幅が7nmよりも小さいとき、CuAlからなる金属間化合物6の電気抵抗率は、銅とバリアメタル層との組み合わせの電気抵抗率よりも小さい。したがって、第1配線溝1の幅が7nmよりも小さいとき、金属間化合物6からなる配線は、銅とバリアメタル層からなる従来の配線よりも低い電気的効率を示す。このような観点から、本実施形態の第1配線溝1の幅は、7nm未満とされる。
【0027】
一方、第2配線溝2の幅は、7nm以上である。一実施形態では、第2配線溝2は、0.1μm以上であってもよく、あるいは1μm以上であってもよい。図2に示すグラフによれば、配線幅が7nm以上であるとき、CuAlの電気抵抗率は、銅とバリアメタル層との組み合わせの電気抵抗率よりも大きいが、配線の断面積が大きいので、電気抵抗は小さい。よって、第2配線溝2内の配線も、第1配線溝1内の配線と同様に、低抵抗とすることができる。
【0028】
図3(a)乃至図3(e)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法の他の実施形態を説明する図である。特に説明しない本実施形態の構成および工程は、図1(a)乃至図1(d)を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0029】
図3(a)に示すように、第1配線溝1と第2配線溝2が形成された絶縁層3が用意される。次に、図3(b)に示すように、金属間化合物6が絶縁層3上に堆積される。第1配線溝1の全体は、金属間化合物6で満たされ、第2配線溝2内には金属間化合物6の膜が形成される。第2配線溝2を構成する絶縁層3の表面は金属間化合物6で覆われるが、第2配線溝2の全体は金属間化合物6で満たされない。
【0030】
第1配線溝1を金属間化合物6で満たした後、図3(c)に示すように、金属間化合物6とは異なる第2金属10が金属間化合物6上に堆積され、第2配線溝2は第2金属10で満たされる。第2金属10の例としては、銅、チタン、チタンナイトライド等が挙げられる。第2金属10を堆積させる方法は特に限定されないが、例えば電解めっきが使用できる。
【0031】
図3(d)に示すように、絶縁層3が露出するまで第2金属10および金属間化合物6を研磨する平坦化工程が行われる。この平坦化工程は、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第1研磨パッド上に第1研磨液を供給しながら、第2金属10および金属間化合物6を第1研磨パッドに摺接させる。第2金属10および金属間化合物6は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第1研磨液は、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。
【0032】
図3(e)に示すように、平坦化工程の後、第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達するまで第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3を研磨する高さ調整工程が行われる。この高さ調整工程も、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第2研磨パッド上に第2研磨液を供給しながら、第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3を第2研磨パッドに摺接させる。第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3は、第2研磨液の化学的作用と、第2研磨液に含まれる砥粒および/または第2研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0033】
高さ調整工程は、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。具体的には、第2配線溝2内の第2金属10および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こることが予想される場合には、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。一方、第2配線溝2内の第2金属10および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こらないと予想される場合には、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じ除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。
【0034】
高さ調整工程は、上記膜厚センサによって第1配線溝1内の金属間化合物6の高さ(すなわち配線高さ)を測定しながら行われる。膜厚センサによって測定された第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達したときに、高さ調整工程が停止される。このようにして、バリアメタルフリー金属配線構造が製造される。幅の小さい第1配線溝1は金属間化合物6によって満たされ、バリアメタルは第1配線溝1内には存在しない。したがって、第1配線溝1内の金属間化合物6からなる低抵抗配線が実現できる。第2配線溝2は、金属間化合物6および第2金属10で満たされ、これらは幅の広い配線を形成する。
【0035】
図4(a)乃至図4(f)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。特に説明しない本実施形態の構成および工程は、図3(a)乃至図3(e)を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0036】
図4(a)乃至図4(c)に示す工程は、図3(a)乃至図3(c)に示す工程と同じである。図4(d)に示すように、金属間化合物6が露出するまで第2金属10を研磨する第1平坦化工程が行われる。より具体的には、第1研磨パッド上に第1研磨液を供給しながら、第2金属10を第1研磨パッドに摺接させる。第2金属10は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第1研磨液は、第2金属10の除去レートが金属間化合物6の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。したがって、金属間化合物6は研磨ストッパとして機能する。
【0037】
図4(e)に示すように、第1平坦化工程の後、第2平坦化工程が行われる。この第2平坦化工程は、絶縁層3が露出するまで、第2金属10および金属間化合物6を研磨する工程である。より具体的には、第2研磨パッド上に第2研磨液を供給しながら、第2金属10および金属間化合物6を第2研磨パッドに摺接させる。第2金属10および金属間化合物6は、第2研磨液の化学的作用と、第2研磨液に含まれる砥粒および/または第2研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第2研磨液は、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。したがって、絶縁層3は研磨ストッパとして機能する。
【0038】
図4(f)に示すように、第2平坦化工程の後、第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達するまで第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3を研磨する高さ調整工程が行われる。より具体的には、第3研磨パッド上に第3研磨液を供給しながら、第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3を第3研磨パッドに摺接させる。第2金属10、金属間化合物6、および絶縁層3は、第3研磨液の化学的作用と、第3研磨液に含まれる砥粒および/または第3研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0039】
高さ調整工程は、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる。具体的には、第2配線溝2内の第2金属10および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こることが予想される場合には、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液が使用される。一方、第2配線溝2内の第2金属10および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こらないと予想される場合には、第2金属10および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じ除去レート選択比を持つ第3研磨液が使用される。
【0040】
図5(a)乃至図5(d)、および図6(a)および図6(b)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。特に説明しない本実施形態の構成および工程は、図1(a)乃至図1(d)を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0041】
図5(a)に示すように、第1配線溝1と第2配線溝2が形成された絶縁層3が用意される。次に、図5(b)に示すように、金属間化合物6が絶縁層3上に堆積される。第1配線溝1の全体は、金属間化合物6で満たされ、第2配線溝2内には金属間化合物6の膜が形成される。第2配線溝2を構成する絶縁層3の表面は金属間化合物6で覆われるが、第2配線溝2の全体は金属間化合物6で満たされない。
【0042】
第1配線溝1を金属間化合物6で満たした後、図5(c)に示すように、シード層12が金属間化合物6上に形成される。シード層12は、その後に続く電解めっきの電極として機能する。シード層12は、例えば、銅から構成されている。シード層12は、無電解めっき、またはスパッタリングなどにより形成することができる。
【0043】
図5(d)に示すように、金属間化合物6とは異なる第2金属10がシード層12上に堆積され、第2配線溝2は第2金属10で満たされる。第2金属10の例としては、銅、チタン、チタンナイトライド等が挙げられる。本実施形態では、第2金属10として銅が使用され、第2金属10を形成する方法には電解めっきが使用されている。
【0044】
図6(a)に示すように、絶縁層3が露出するまで第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨する平坦化工程が行われる。この平坦化工程は、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第1研磨パッド上に第1研磨液を供給しながら、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を第1研磨パッドに摺接させる。第2金属10、シード層12、および金属間化合物6は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第1研磨液は、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。したがって、絶縁層3は研磨ストッパとして機能する。
【0045】
図6(b)に示すように、平坦化工程の後、第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達するまで第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3を研磨する高さ調整工程が行われる。この高さ調整工程も、CMP(化学機械研磨)工程であり、CMP装置によって実行される。より具体的には、第2研磨パッド上に第2研磨液を供給しながら、第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3を第2研磨パッドに摺接させる。第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3は、第2研磨液の化学的作用と、第2研磨液に含まれる砥粒および/または第2研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0046】
高さ調整工程は、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液を使用して行われる。具体的には、第2配線溝2内の第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こることが予想される場合には、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも低い除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。一方、第2配線溝2内の第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こらないと予想される場合には、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じ除去レート選択比を持つ第2研磨液が使用される。
【0047】
高さ調整工程は、上記膜厚センサによって第1配線溝1内の金属間化合物6の高さ(すなわち配線高さ)を測定しながら行われる。膜厚センサによって測定された第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達したときに、高さ調整工程が停止される。このようにして、バリアメタルフリー金属配線構造が製造される。幅の小さい第1配線溝1は金属間化合物6によって満たされ、バリアメタルは第1配線溝1内には存在しない。したがって、第1配線溝1内の金属間化合物6からなる低抵抗配線が実現できる。第2配線溝2は、金属間化合物6、第2金属10、およびシード層12で満たされ、これらは幅の広い配線を形成する。
【0048】
図7(a)乃至図7(d)、および図8(a)乃至図8(c)は、バリアメタルフリー金属配線構造を製造する方法のさらに他の実施形態を説明する図である。特に説明しない本実施形態の構成および工程は、図5(a)乃至図5(d)および図6(a)および図6(b)を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。
【0049】
図7(a)乃至図7(d)は、図5(a)乃至図5(d)と同様にして実行される。図8(a)に示すように、金属間化合物6が露出するまで第2金属10およびシード層12を研磨する第1平坦化工程が行われる。より具体的には、第1研磨パッド上に第1研磨液を供給しながら、第2金属10およびシード層12を第1研磨パッドに摺接させる。第2金属10およびシード層12は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第1研磨液は、第2金属10およびシード層12の除去レートが金属間化合物6の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。したがって、金属間化合物6は研磨ストッパとして機能する。
【0050】
図8(b)に示すように、第1平坦化工程の後、第2平坦化工程が行われる。この第2平坦化工程は、絶縁層3が露出するまで、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨する工程である。より具体的には、第2研磨パッド上に第2研磨液を供給しながら、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を第2研磨パッドに摺接させる。第2金属10、シード層12、および金属間化合物6は、第2研磨液の化学的作用と、第2研磨液に含まれる砥粒および/または第2研磨パッドの機械的作用により、平坦化される。第2研磨液は、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも高い除去レート選択比を有している。したがって、絶縁層3は研磨ストッパとして機能する。
【0051】
図8(c)に示すように、第2平坦化工程の後、第1配線溝1内の金属間化合物6の高さが所定の高さに達するまで第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3を研磨する高さ調整工程が行われる。より具体的には、第3研磨パッド上に第3研磨液を供給しながら、第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3を第3研磨パッドに摺接させる。第2金属10、シード層12、金属間化合物6、および絶縁層3は、第3研磨液の化学的作用と、第3研磨液に含まれる砥粒および/または第3研磨パッドの機械的作用により、研磨される。
【0052】
高さ調整工程は、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じか、またはそれよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液を使用して行われる。具体的には、第2配線溝2内の第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こることが予想される場合には、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートよりも低い除去レート選択比を持つ第3研磨液が使用される。一方、第2配線溝2内の第2金属10、シード層12、および金属間化合物6を研磨しているときにディッシングが起こらないと予想される場合には、第2金属10、シード層12、および金属間化合物6の除去レートが絶縁層3の除去レートと同じ除去レート選択比を持つ第3研磨液が使用される。
【0053】
上述した各実施形態によれば、幅の狭い第1配線溝1内の配線は、金属間化合物6のみから構成される。したがって、バリアメタルフリーの金属配線構造が実現できる。
【0054】
図9は、上述したバリアメタルフリー金属配線構造を製造するための製造システムを示す模式図である。製造システムは、金属間化合物6を形成するためのスパッタリング装置20と、第2金属10を形成するためのめっき装置22と、シード層12を形成するための成膜装置23と、複数のCMP装置(化学機械研磨装置)24,25,26と、研磨されたワークピースを洗浄する洗浄装置31と、洗浄されたワークピースを乾燥させる乾燥装置33と、ワークピースを搬送する搬送装置35を備えている。金属配線構造は、ウェーハ、基板、パネルなどのワークピースに形成される。
【0055】
図9に示す製造システムの構成は一例であり、製造すべき金属配線構造に基づいて適宜変更されうる。例えば、図1(a)乃至図1(d)を参照して説明した実施形態では、第2金属10およびシード層12は形成されないこともある。そのような場合には、めっき装置22および成膜装置23は省略してもよい。図9に示す製造システムは、3つのCMP装置24,25,26を備えているが、2種類の研磨液のみが使用される場合には、2つのCMP装置24,25のみを備えてもよい。
【0056】
第1CMP装置24、第2CMP装置25、および第3CMP装置26は、基本的に同じ構成を有している。したがって、以下に図10を参照して第1CMP装置24について説明する。図10に示すように、第1CMP装置24は、第1研磨パッド40を支持する第1研磨テーブル41と、ワークピースWを第1研磨パッド40に押し付ける第1研磨ヘッド42と、第1研磨テーブル41を回転させる第1テーブルモータ44と、第1研磨パッド40上に第1研磨液を供給するための第1研磨液供給ノズル45を備えている。第1研磨パッド40の上面は、ワークピースWを研磨する研磨面40aを構成する。
【0057】
第1研磨ヘッド42はヘッドシャフト48に連結されており、ヘッドシャフト48は図示しない第1研磨ヘッドモータに連結されている。第1研磨ヘッドモータは、第1研磨ヘッド42をヘッドシャフト48とともに矢印で示す方向に回転させる。第1研磨テーブル41は第1テーブルモータ44に連結されており、第1テーブルモータ44は第1研磨テーブル41および第1研磨パッド40を矢印で示す方向に回転させるように構成されている。
【0058】
ワークピースWは次のようにして研磨される。第1研磨テーブル41および第1研磨ヘッド42を図10の矢印で示す方向に回転させながら、第1研磨液供給ノズル45から第1研磨液が第1研磨テーブル41上の第1研磨パッド40の研磨面40aに供給される。ワークピースWは第1研磨ヘッド42によって回転されながら、第1研磨パッド40上に第1研磨液が存在した状態でワークピースWは第1研磨ヘッド42によって第1研磨パッド40の研磨面40aに押し付けられる。ワークピースWに形成されている金属配線構造は、第1研磨液の化学的作用と、第1研磨液に含まれる砥粒および/または第1研磨パッド40の機械的作用により研磨される。
【0059】
第1CMP装置24は、ワークピースWに形成されている金属配線構造の膜厚を測定する第1膜厚センサ50を備えている。第1膜厚センサ50の構成は特に限定されないが、本実施形態では渦電流センサが使用されている。第1膜厚センサ50は第1研磨テーブル41に取り付けられており、第1研磨テーブル41および第1研磨パッド40とともに一体に回転する。第1膜厚センサ50の位置は、第1研磨テーブル41および第1研磨パッド40が一回転するたびに第1研磨パッド40上のワークピースWの表面を横切る位置である。ワークピースWに形成されている金属間化合物6の厚さは、第1膜厚センサ50によって測定される。
【0060】
図示しないが、第2CMP装置25は、第2研磨パッドを支持する第2研磨テーブルと、ワークピースWを第2研磨パッドに押し付ける第2研磨ヘッドと、第2研磨テーブルを回転させる第2テーブルモータと、第2研磨パッド上に第2研磨液を供給するための第2研磨液供給ノズルと、ワークピースWの膜厚を測定する第2膜厚センサを備えている。同様に、第3CMP装置26は、第3研磨パッドを支持する第3研磨テーブルと、ワークピースWを第3研磨パッドに押し付ける第3研磨ヘッドと、第3研磨テーブルを回転させる第3テーブルモータと、第3研磨パッド上に第3研磨液を供給するための第3研磨液供給ノズル、ワークピースWの膜厚を測定する第3膜厚センサを備えている。第3CMP装置26は設けられない場合もある。
【0061】
洗浄装置31は、CMP装置24,25,26によって研磨されたワークピースWを洗浄するように構成されている。本実施形態では、洗浄装置31は、ワークピースWに洗浄液を供給しながら、ワークピースWの両面をロールスクラバーで擦り洗いするロール洗浄機である。一実施形態では、洗浄装置31は、ワークピースWに洗浄液を供給しながら、ワークピースWの一面をペンスポンジで擦り洗いするペンスポンジ洗浄機でもよい。
【0062】
乾燥装置33は、洗浄装置31によって洗浄されたワークピースWを乾燥するように構成されている。本実施形態では、乾燥装置33は、ワークピースWを回転させながら、ワークピースWにイソプロピルアルコールを供給するIPA乾燥装置である。一実施形態では、乾燥装置33は、ワークピースWを高速で回転させるスピン乾燥装置であってもよい。
【0063】
搬送装置35は、CMP装置24,25,26、洗浄装置31、乾燥装置33の間でワークピースを搬送するように構成されている。
【0064】
シード層12を形成するための成膜装置23は、スパッタリング装置、無電解めっき装置、PVD装置、またはCVD装置などから構成される。シード層12を持たない金属配線構造を製造する場合は、成膜装置23は省略してもよい。
【0065】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0066】
1 第1配線溝
2 第2配線溝
3 絶縁層
6 金属間化合物
10 第2金属
12 シード層
20 スパッタリング装置
22 めっき装置
23 成膜装置
24,25,26 CMP装置(化学機械研磨装置)
31 洗浄装置
33 乾燥装置
35 搬送装置
40 第1研磨パッド
41 第1研磨テーブル
42 第1研磨ヘッド
44 第1テーブルモータ
45 第1研磨液供給ノズル
48 ヘッドシャフト
50 第1膜厚センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12